IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコムの特許一覧

<>
  • 特許-位置指示器 図1
  • 特許-位置指示器 図2
  • 特許-位置指示器 図3
  • 特許-位置指示器 図4
  • 特許-位置指示器 図5
  • 特許-位置指示器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】位置指示器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20241128BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G06F3/03 400A
G01L5/00 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022527602
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016612
(87)【国際公開番号】W WO2021241102
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2020093803
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】邱 ▲寛▼和
(72)【発明者】
【氏名】蕭 鈞▲悦▼
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071573(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033225(WO,A1)
【文献】特開平09-305693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が筐体の開口部から突出し、前記先端部に印加された圧力に応じた変位が可能に配設されている芯体と、
前記芯体の前記変位に応じた変位を呈する端面と、
前記端面の前記圧力に応じた変位を検出する変位検出部と、
を備える電子ペンであって、
前記端面は、前記芯体の前記先端部とは反対側が嵌合されて、前記芯体の変位に応じて変位する芯体嵌合部材の端面であり、
前記変位検出部は、発光部と受光部とを備え、前記発光部からの発光光が前記端面に対して投光され、前記発光光が前記端面で反射されて戻ってくる受光光を前記受光部で受光するように構成され、前記発光光と前記受光光との位相差に基づいて前記端面の前記変位を検出し、
前記変位検出部で検出された前記変位に基づいて、前記芯体に印加される圧力を検出する
ことを特徴とする位置指示器。
【請求項2】
前記端面は、鏡面仕上げ加工が施されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【請求項3】
前記圧力の前記芯体の端への印加が消滅したときに、変位した前記芯体及び前記端面を、前記圧力が印加される前記変位の前の状態に復帰させるための弾性部材を備え、
前記変位検出部で検出された前記変位と前記弾性部材の弾性係数とに基づいて印加された前記圧力を算出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置指示器。
【請求項4】
記弾性部材は、前記筐体内において移動不可の状態の部材と、前記芯体嵌合部材との間に設けられる
ことを特徴とする請求項に記載の位置指示器。
【請求項5】
前記芯体は、前記筐体の開口部の大きさよりも小さい芯体本体部と、前記芯体本体部の軸心方向の一方の端部側に、前記筐体の開口部の大きさよりも大きい前記先端部とからなり、前記先端部と前記芯体本体部との間には、リング状端面を備え、
前記弾性部材は、前記リング状端面と前記筐体の開口部の端面との間に設けられる
ことを特徴とする請求項に記載の位置指示器。
【請求項6】
先端部が筐体の開口部から突出し、前記先端部に印加された圧力に応じた変位が可能に配設されている芯体と、
前記芯体の前記変位に応じた変位を呈する端面と、
前記端面の前記圧力に応じた変位を検出する変位検出部と、
を備える電子ペンであって、
前記変位検出部は、発光部と受光部とを備え、前記発光部からの発光光が前記端面に対して投光され、前記発光光が前記端面で反射されて戻ってくる受光光を前記受光部で受光するように構成され、前記発光光と前記受光光との位相差に基づいて前記端面の前記変位を検出し、
前記変位検出部で検出された前記変位に基づいて、前記芯体に印加される圧力を検出し、
前記筐体は、軸心方向の前記芯体が配される側に光透過部を備え、
前記発光部の発光光は、前記光透過部を通じて位置指示入力面に対して投光されるように構成され、
前記位置指示入力面からの反射光を前記受光部で受光して、当該受光光と前記発光光との間の位相差に基づいて、前記筐体の前記位置指示入力面に対する傾きを検出する
ことを特徴とする位置指示器。
【請求項7】
前記光透過部は、前記位置指示入力面からの前記反射光を収束して、前記受光部に導くようにするレンズで構成されている
ことを特徴とする請求項に記載の位置指示器。
【請求項8】
前記端面は、前記芯体の先端部とは反対側の端面である
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の位置指示器。
【請求項9】
前記端面は、前記芯体の前記先端部とは反対側が嵌合されて、前記芯体の変位に応じて変位する芯体嵌合部材の端面である
ことを特徴とする請求項6~請求項8のいずれかに記載の位置指示器。
【請求項10】
前記端面は、鏡面仕上げ加工が施されている
ことを特徴とする請求項に記載の位置指示器。
【請求項11】
前記変位検出部は、TOF(Time Of Flight)センサが用いられて構成されている
ことを特徴とする請求項1~請求項10のいずれかに記載の位置指示器。
【請求項12】
前記発光部からの発光光はパルス変調されている
ことを特徴とする請求項1~請求項11のいずれかに記載の位置指示器。
【請求項13】
前記芯体は、前記先端部に印加された圧力に応じて、前記芯体の軸心方向に変位するように構成されており、
前記変位検出部は、前記端面に対して対向して配置されている
ことを特徴とする請求項1~請求項12のいずれかに記載の位置指示器。
【請求項14】
前記端面は、前記芯体の軸心方向に直交する方向の端面であり、前記変位検出部は、前記芯体の軸心方向において前記端面に対して対向して配置されている
ことを特徴とする請求項13に記載の位置指示器。
【請求項15】
軸心方向の一方側を位置指示端とするように構成されている筐体と、
前記筐体内に設けられる変位検出部と、
を備え、
前記筐体の前記位置指示端側には光透過部が設けられ、
前記変位検出部は、発光部と受光部とを備え、前記発光部からの発光光は、前記光透過部を通じて位置指示入力面に対して投光されるように構成され、
前記位置指示入力面からの反射光を前記受光部で受光して、当該受光光と前記発光光との間の位相差に基づいて、前記筐体の前記位置指示入力面に対する傾きを検出する
ことを特徴とする位置指示器。
【請求項16】
前記光透過部は、前記位置指示入力面からの前記反射光を収束して、前記受光部に導くようにするレンズで構成されている
ことを特徴とする請求項15に記載の位置指示器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出センサを備える位置検出装置と共に使用され、圧力検出機能を有する位置指示器に関する。
【背景技術】
【0002】
位置検出センサを備える位置検出装置と、位置検出センサで位置検出が可能な面領域を位置指示入力面として指示入力を行う位置指示器とからなる座標入力装置は、位置検出センサと位置指示器との間での結合方式の違いにより、例えば電磁結合方式や静電結合方式など、種々の方式のものがある。
【0003】
この種の座標入力装置に用いられるペン型の位置指示器は、一般に、芯体の先端部(ペン先)に印加された圧力(筆圧)を検出して、位置検出装置に伝達する機能を備えるように構成されている。この場合に、位置指示器では、芯体に印加される圧力を検出するために、芯体の先端部を位置指示器の筐体の開口から突出させると共に、芯体を、筐体に対して、その軸心方向に移動可能となるようにしている。そして、芯体の先端部とは反対側には圧力検出部を設けて、この圧力検出部において、先端部に印加される圧力に応じた芯体の軸心方向の変位を、静電容量の変化、インダクタンス値の変化、抵抗変化などの電気的な変化として検出するように構成されている。
【0004】
静電容量の変化として検出する圧力検出部は、誘電体と導電性弾性部材との接触面積が印加される圧力に応じて変化することにより静電容量が変化する構成(例えば特許文献1(特開2016-126503号公報)参照)や、誘電体である空気層を介して互いに対向する2個の電極間の距離が印加される圧力に応じて変化する半導体デバイスからなるもの(例えば特許文献2(特開2013-161307号公報)参照)などが知れられている。
【0005】
また、印加される圧力に応じて芯体が軸心方向に変位するのをインダクタンス値の変化として検出する圧力検出部も知られている(例えば特許文献3(例えば特開2017-216002号公報)参照)。さらに、芯体が印加される圧力に応じて軸心方向に変位するのを抵抗値の変化として検出する圧力検出部は、ひずみゲージを用いるものが知られている(例えば特許文献4(特開2019-016038号公報)参照)。
【0006】
位置指示器では、芯体の先端部が位置検出センサの入力面に接触させられ、位置指示器の芯体の先端部が入力面に対して押し付けられることにより、芯体の先端部に圧力が印加される。圧力検出部は、この芯体の先端部に印加される圧力を検出する。そして、座標入力装置では、位置検出装置が、位置指示器の圧力検出部で検出された圧力に応じた情報を受信して、位置指示器の芯体の先端部に印加されている筆圧値の情報として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-126503号公報
【文献】特開2013-161307号公報
【文献】特開2017-216002号公報
【文献】特開2019-016038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1~4のいずれの圧力検出部も、位置指示器の芯体の先端部が入力面に対して押し付けられることにより芯体が軸心方向に変位することで発生する反力(圧力)を、静電容量の変化、インダクタンス値の変化、抵抗の変化に変換することで、直接的に検出する構造となっている。
【0009】
このため、芯体の先端部に印加された圧力を直接的に圧力検出部に印加させるようにする構造にする必要があり、複雑な構造となっている。また、圧力検出部に、芯体の先端部に印加された圧力が直接的に印加されるため、長年の使用により、圧力検出部を構成する部品に継続的に圧力がかかるために欠陥が生じたりする問題があると共に、圧力検出部を衝撃荷重から保護する構造を設ける必要があり、より構造が複雑となっていた。
【0010】
また、上述した特許文献1~4の圧力検出部では、位置指示器の芯体の先端部が入力面に対して接触してから僅かな圧力が芯体の先端部に印加された状態では、その印加された圧力に応じた静電容量や、インダクタンスや、抵抗値の変化は安定せず、即時応答が困難であり、正しく圧力を検出することが困難であるという問題もあった。
【0011】
このため、圧力検出部で、位置指示器の芯体の先端部に印加される圧力を検出するためには、ある大きさ以上の芯体の軸心方向の移動(ストローク)が必要であると共に、圧力の検出開始点(芯体の先端が入力面に対して接触してから、先端に印加された圧力が検出可能となって出力可能となる位置)を定めるのが困難であった。
【0012】
そこで、圧力検出部では、印加された圧力の検出が可能となるときの荷重が0グラムではなく、所定の大きさのオフセット荷重を設定して、このオフセット荷重以下の荷重では、位置指示器の圧力検出部の出力圧力値をゼロとして出力し、位置検出装置に送信するようにしているが、このオフセット荷重の設定が非常に厄介であった。
【0013】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした位置指示器及び座標入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、
先端部が筐体の開口部から突出し、前記先端部に印加された圧力に応じた変位が可能に配設されている芯体と、
前記芯体の前記変位に応じた変位を呈する端面と、
前記端面の前記圧力に応じた変位を検出する変位検出部と、
を備える電子ペンであって、
前記端面は、前記芯体の前記先端部とは反対側が嵌合されて、前記芯体の変位に応じて変位する芯体嵌合部材の端面であり、
前記変位検出部は、発光部と受光部とを備え、前記発光部からの発光光が前記端面に対して投光され、前記発光光が前記端面で反射されて戻ってくる受光光を前記受光部で受光するように構成され、前記発光光と前記受光光との位相差に基づいて前記端面の前記変位を検出し、
前記変位検出部で検出された前記変位に基づいて、前記芯体に印加される圧力を検出する
ことを特徴とする位置指示器を提供する。
【0015】
上述の構成の位置指示器においては、変位検出部では、発光部から出射された発光光が、先端部に印加された芯体の変位に応じて変位する端面に出射され、当該発光光が端面で反射されて戻ってくる受光光が、受光部で受光される。そして、変位検出部は、発光光と受光光との位相差に基づいて端面の変位を検出する。位置指示器では、この変位検出部で検出された変位に基づいて、芯体の先端部に印加される圧力を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明による位置指示器の第1の実施形態の電子ペンの構成例を説明するための図である。
図2】この発明による位置指示器の第1の実施形態の電子ペンに搭載される変位検出部の構成例を示す図である。
図3図2の変位検出部の構成例を説明するための波形図である。
図4】この発明による位置指示器の第2の実施形態の電子ペンの構成例を説明するための図である。
図5】この発明による位置指示器の第2の実施形態の電子ペンに搭載される変位検出部の機能を説明するための図である。
図6】この発明による位置指示器の第2の実施形態の電子ペンに搭載される変位検出部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明による位置指示器の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の位置指示器は、ペン型の筐体を有するアクティブ静電容量方式の電子ペンの場合の例である。図1(A)は、第1の実施形態の位置指示器としての電子ペン1のペン先側の構成を説明するための拡大断面図である。
【0019】
この例の電子ペン1おいては、導電性部材、例えばSUS(Steel Use Stainless)で構成される円筒状の筐体2のペン先側の端部に、フロントキャップ3が取り付けられている。
【0020】
フロントキャップ3は、絶縁性部材例えば樹脂で構成されており、内部に中空部を有するように構成されている。この例では、フロントキャップ3は、筐体2の内壁面の径よりもわずかに小さい径の筒状部3aと、この筒状部3aの軸心方向の一方のペン先側となる端部側に、ペン先に近づくほど径が小さくなるように形成されたテーパー部3bとが一体に形成されたものとなっている。
【0021】
フロントキャップ3は、筒状部3aが筐体2内に挿入されて嵌合され、必要に応じて接着されることで筐体2のペン先側に取り付けられる。
【0022】
フロントキャップ3のテーパー部3bの先細の先端には、開口3cが設けられており、この開口3cに、例えば弾性ゴムからなる弾性部材4が装着されている。この弾性部材4は、フロントキャップ3のテーパー部3bの開口3cと同一の径の開口4aを有する。
【0023】
そして、この例においては、芯体5は、導電性部材、例えば導電性金属からなる導体芯部51と、この導体芯部51の、先端側とは反対側の後端部51aを除く部分の全体を覆うカバー部52とからなる。カバー部52は、硬質の樹脂、例えばPOM(Polyoxymethylene)で構成されている。
【0024】
この例の芯体5は、形状的には、弾性部材4の開口4a及びフロントキャップ3の開口3cを通じて筐体2の中空部内に差し込まれる芯体本体部5aと、弾性部材4の開口4aから外部に突出する先端部5bとを備える。
【0025】
芯体本体部5aは、導体芯部51の後端部51aを除いて、カバー部52の樹脂で覆われている。この芯体本体部5aのカバー部52の樹脂で覆われている部分の外径は、弾性部材4の開口4a及びフロントキャップ3の開口3cの径よりも小さくされている。
【0026】
先端部5bは、導体芯部51の先端側が外部に露出しないようにカバー部52の樹脂で覆われて構成されている。そして、この先端部5bは、芯体本体部5aとの連結部の径は、弾性部材4の開口4a及びフロントキャップ3の開口3cの径よりも大きくされていると共に、ペン先になるほど径が小さくなる円錐形状とされている。先端部5bの、芯体本体部5aとの連結部には、リング状端面5cを備える段部が形成されている。
【0027】
そして、この例では、図1(A)に示すように、先端部5bの、芯体本体部5aとの連結部の径は、弾性部材4の先端側の径と同一とされている。これにより、図1に示すように、芯体5の先端部5bの外周側面と弾性部材4の外周側面とは、面一となって段差が生じないようにされている。
【0028】
芯体5は、以上のような構成を備えるので、芯体本体部5を、弾性部材4の開口4a及びフロントキャップ3の開口3cを通じて、筐体2の中空部内に差し込むことが可能である。そして、芯体5の芯体本体部5aを筐体2内に差し込んだときには、先端部5bの、芯体本体部5aとの連結部のリング状端面5cが、弾性部材4のリング状端面4bに衝合する状態となる。
【0029】
そして、この例では、フロントキャップ3の中空部内には、芯体5の軸心方向の変位を光学的に検出する変位検出部6と、芯体5の軸心方向の変位に応じて変位する端面7Sを有する芯体嵌合部材7が設けられる。
【0030】
変位検出部6は、この例では、図2に示すように、発光部、例えばレーザー光を出射する発光ダイオード61と、受光部、この例では3D(3 Dimension)センサ62と、TOFコントローラ63とを備えるTOF(Time Of Flight)センサを備えると共に、例えばマイクロプロセッサで構成される筆圧検出回路67を備える。
【0031】
TOFコントローラ63は、発光ドライバ64を制御して、発光部の例を構成する発光ダイオード61からパルス変調されたレーザー光の発光光Tp(図3(A)の波形図参照)を出射するように制御する。発光ダイオード61から出射されたレーザー光の発光光Tpは、レンズ65を通じて、この例では、端面7Sに投光され、端面7Sで反射される。この端面7Sで反射されたレーザー光は、レンズ66を通じて受光部の例を構成する3Dセンサで受光光Rpとして受光され、その受光結果がTOFコントローラ63に供給される。
【0032】
このとき、受光光Rpは、発光ダイオード61からの発光光の出射時点から、変位検出部6と端面7Sとの距離に応じた時間だけ遅延した時点で、3Dセンサ62で受光される。このため、受光光Rpは、図3(B)に示すように、図3(A)に示した出射光のレーザー光の発光光Tpに対して、変位検出部6と端面7Sとの距離に応じた遅延時間分だけの位相差PHdを有するものとなる。
【0033】
TOFコントローラ63は、発光光Tpと受光光Rpとの位相差PHdを検出し、その検出した位相差PHdの情報を後述する筆圧検出回路67に供給する。筆圧検出回路67は、TOFコントローラ63からの位相差PHdの情報に基づいて、芯体5の先端部5bに印加された筆圧を検出する。筆圧検出回路67は、検出した筆圧の情報を、後述するようにプリント基板10上に配設されている信号処理回路9に供給する。この筆圧検出回路67における筆圧検出の処理については、後で詳述する。
【0034】
なお、図1では、図示は省略するが、この実施形態の電子ペン1は、変位検出部6と信号処理回路9とを駆動するための電源電圧を供給するバッテリーを備えている。
【0035】
変位検出部6は、この例では、ホルダー部8により、電子ペン1の軸心中心位置の近傍に、レーザー光の発光部及び受光部が、電子ペン1の軸心方向に対して直交する方向となる状態で保持されて、フロントキャップ3の中空部内に配設される。
【0036】
この場合に、フロントキャップ3の先端側とは反対側の開口端側の円周方向の複数の位置には、図1(B)に示すように、開口端から鉤型に形成されている切り欠き溝3dが設けられている。一方、ホルダー部8には、この複数個の切り欠き溝3dのそれぞれに嵌合する複数個の突部8aが形成されている。そして、ホルダー部8は、突部8aが、切り欠き溝3dに嵌合された状態で軸心方向にフロントキャップ3に押し込まれた後、円周方向に回動されることで、図3(B)に示すように、突部8aが鉤型の切り欠き溝3dと係合するようにされる。これにより、ホルダー部8は、フロントキャップ3に対して軸心方向に移動しないように結合される。なお、ホルダー部8と、フロントキャップ3とは、図1(B)のように結合すると共に、接着するようにしてもよい。
【0037】
ホルダー部8の、フロントキャップ3との結合側とは反対側には、基板載置台部8bが形成されており、この基板載置台部8bには、プリント基板10が載置される。このプリント基板10上には、前述した信号処理回路9が配設されている。この例では、信号処理回路9は、IC(Integrated Circuit)で構成されている。
【0038】
信号処理回路9は、芯体5の導体芯部51に供給する信号を生成する。この実施形態では、この信号には、位置検出用信号と、この位置検出用信号の付加情報として、変位検出部6の筆圧検出回路67で検出された筆圧情報が含まれる。
【0039】
また、ホルダー部8は、フロントキャップ3の中空部内において、芯体嵌合部材7を保持すると共に、芯体5の導体芯部51をシールドするためのシールド部品(後述する導体ばね12)を保持するように構成されている。なお、芯体嵌合部材7や、シールド部品などは、前述したようにして、ホルダー部8をフロントキャップ3と結合する前に、予め、ホルダー部8に保持されるように構成されている。
【0040】
すなわち、ホルダー部8は、フロントキャップ3の中空部側に、円柱状空間部を形成する筒状部8cを備える。この筒状部8c内には、筒状の保持部材11が挿入されて結合される。保持部材11は、端面7Sを軸心方向に移動可能とする状態で、芯体嵌合部材7を保持する。この筒状の保持部材11の中空部11aは、変位検出部6からの発光光Tpを端面7Sに投光し、また、端面7Sからの反射光を受光するための空間を構成する。
【0041】
芯体嵌合部材7は、芯体嵌合部材本体部71と、この芯体嵌合部材本体部71の芯体5側に結合されて設けられる導電性部材72と、芯体嵌合部材本体部71の変位検出部6側に結合されて設けられる端面形成用部73とからなる。
【0042】
芯体嵌合部材本体部71は、軸心方向の芯体5側に、芯体5の導体芯部51の後端部51aが嵌合される嵌合凹部71aを備えると共に、軸心方向の変位検出部6側に、端面形成用部73に嵌合される嵌合突部71bと、軸心方向に直交する方向に張り出すフランジ部71cとを備えている。
【0043】
導電性部材72は、例えば導電性ゴムなどの弾性を有する部材で構成され、芯体嵌合部材本体部71の芯体5側に結合されたときに、芯体嵌合部材本体部71の嵌合凹部71aと連通する貫通孔72aを備える。この導電性部材72の貫通孔72aの径は、芯体5の導体芯部51の後端部51aの径と等しくされており、芯体5の導体芯部51の後端部51aは、導電性部材72の貫通孔72aに圧入された後、芯体嵌合部材本体部71の嵌合凹部71a内に嵌合される。なお、芯体5は、芯体嵌合部材7から引き抜くことが可能であり、交換が可能である。
【0044】
この場合に、芯体5の導体芯部51と導電性部材72とは、導電性部材72の弾性力により強く接触して、両者は電気的に良好に接続されることになる。この例では、導電性部材72には、導電材料例えば導電性金属で構成されているコイルばね12の一端12a側が結合されている。そして、コイルばね12は、図1(A)に示すように、保持部材11の外周部に巻回されるような状態で配設されると共に、その他端12b側は、ホルダー部8を貫通して、プリント基板10側に導出され、プリント基板10上において、信号処理回路9と電気的に接続されるように構成されている。図1(A)の例では、コイルばね12の他端12bは、プリント基板10の裏側からスルーホールを介して、表面側の信号処理回路9に電気的に接続されるように構成されている。
【0045】
信号処理回路9で生成された位置検出用信号及び筆圧情報を含む信号が、コイルばね12を通じて芯体5の導体芯部51に供給され、この導体芯部51から位置検出センサに対して静電結合により送信される。
【0046】
そして、この実施形態では、図1(B)に示すように、ホルダー部8の筒状部8cとフロントキャップ3の筒状部3aとに挟持されるようにして、シールド部材保持部13がフロントキャップ3の中空部内に設けられる。このシールド部材保持部13は、フロントキャップ3の中空部において、筒状部3aからテーパー部3b側にまで亘るように構成されている。そして、このシールド部材保持部13の外周に、この例では、導電性の金属からなるコイルが巻回されることで構成されるシールド部材14が配設されている。このシールド部材14は、芯体5の導体芯部51へのノイズの取り込み等を防止するためのものであり、例えばプリント基板10の接地導体に接続されている。
【0047】
端面形成用部73は、嵌合凹孔73aを備え、その嵌合凹孔73aに、芯体嵌合部材本体部71の嵌合突部71bが嵌合されることで、芯体嵌合部材本体部71に結合される。この端面形成用部73は、変位検出部6と、保持部材11の中空部11aの空間を介して対向する面を備え、当該面が端面7Sを構成するもので、当該端面7Sは光を良好に反射するようにするために鏡面仕上げ加工が施されている。端面形成用部73は、鏡面仕上げ加工を施すことができる材料、例えばSUS(Steel Use Stainless)などの金属で構成されている。
【0048】
端面形成用部73は、保持部材11の中空部11a内において、軸心方向に移動可能に配設されている。したがって、芯体嵌合部材7は、この端面形成用部73が保持部材11に対して軸芯方向に移動することで、移動可能となっている。ただし、保持部材11の中空部11aの芯体5側には、図1(A)に示すように、段部11bが形成されていて、この段部11bが端面形成用部73の芯体5側の端部と衝合することで、芯体嵌合部材7が芯体5側に抜け落ちないように構成されている。
【0049】
そして、この実施形態では、芯体嵌合部材本体部71のフランジ部71cと、保持部材11の芯体5側の端部との間に、弾性部材15が配設されている。この例では、この弾性部材15は、圧縮に対して高い復元性を有すると共に、耐衝撃吸収性能が高い、高機能ウレタン発泡部材、例えばマイクロポリマーシートPoron(登録商標)で構成されている。
【0050】
弾性部材15は、この実施形態では、上述した芯体5の先端部5bとフロントキャップ3との間の弾性部材4と共に、芯体5及び芯体嵌合部材7が、芯体5の先端部5bに印加された圧力(筆圧)により軸心方向に移動した後、圧力の印加がなくなったときに元の位置に復帰させるための復帰用の弾性部材となる。この実施形態では、芯体5の先端部5bに圧力が印加されると、芯体5及び芯体嵌合部材7は、弾性部材4及び弾性部材15の弾性力に抗して、軸心方向に、印加された圧力に応じた大きさの変位をし、この変位に対応して、端面7Sが軸心方向に変位する。
【0051】
変位検出部6の筆圧検出回路67の処理について説明する。筆圧検出回路67は、端面7Sの位置が、芯体5の先端部5bに圧力が印加されていないときの位置における発光光Tpと受光光Rpとの位相差の情報をTOFコントローラ63から受け、筆圧ゼロのときの発光光Tpと受光光Rpとの位相差の情報として記憶しておくようにする。この筆圧ゼロのときの発光光Tpと受光光Rpとの位相差の情報の記憶情報は、定期的に更新するようにしてもよいし、例えば電子ペン1のサイドスイッチなどを用いた使用者の指示により更新することができるように構成してもよい。
【0052】
前述したように、芯体5の先端部5bに圧力が印加されると、その印加された圧力の大きさに応じた軸心方向の変位を端面7Sが呈する。TOFコントローラ63は、この端面7Sの変位に応じて、筆圧ゼロのときの発光光Tpと受光光Rpとの位相差とは異なる発光光Tpと受光光Rpとの位相差を検出し、その検出した発光光Tpと受光光Rpとの位相差の情報を筆圧検出回路67に供給する。
【0053】
筆圧検出回路67は、記憶している筆圧ゼロのときの発光光Tpと受光光Rpとの位相差と、芯体5の先端部5bに圧力が印加されて端面7Sが軸心方向に変位した後の位置における発光光Tpと受光光Rpとの位相差との差ΔPHdから、印加された圧力に応じた端面7Sの変位Δdを検出する。
【0054】
すなわち、筆圧検出回路67においては、光についての前記位相差の差ΔPHdに対応する時間Δtを算出し、光の速度をCvとしたとき、
Δd=Δt×Cv/2・・・・(式1)
として、印加された圧力に応じた端面7Sの変位Δdを検出する。
【0055】
そして、この実施形態では、前述したように、芯体5の先端部5bに圧力が印加されたときに、芯体5及び芯体嵌合部材7は、弾性部材4及び弾性部材15の弾性力に抗して、軸心方向に変位するので、筆圧検出回路67は、これら弾性部材4及び弾性部材15の弾性係数を考慮して筆圧を検出するようにする。ここで、弾性部材4の弾性係数k1は既知であり、また、弾性部材15の弾性係数k2も既知であるので、筆圧検出回路67は、芯体5の先端部5bに印加された圧力、すなわち、筆圧Fを、
F=Δd×(k1×k2/(k1+k2))・・・・(式2)
として算出する。
【0056】
そして、以上のようにして算出された筆圧Fの情報が、筆圧検出回路67から信号処理回路9に供給される。信号処理回路9は、この筆圧Fの情報を、例えばデジタル信号に変換して、芯体5の導体芯部51に供給し、位置検出センサを通じて位置検出装置で検出される。
【0057】
以上説明したように、この実施形態の電子ペン1においては、芯体5の先端部5bに印加される圧力(筆圧)の大きさに応じて芯体5と共に軸心方向に変位する端面7Sの軸心方向の変位を、光学的に検出する変位検出部6を備え、この変位検出部6で検出した変位に基づいて、筆圧検出回路67で筆圧を検出するように構成されている。
【0058】
したがって、この実施形態の電子ペン1によれば、筆圧検出のための構成を簡略化することができると共に、印加された圧力に応じた芯体及び芯体嵌合部材の軸心方向の変位を圧力として筆圧検出部に直接的に伝達するものではないので、圧力を直接的に受けることによる従来のような圧力検出部の欠陥が発生したりする問題は生じない。
【0059】
また、この実施形態の電子ペン1においては、従来のような印加された圧力に応じた変位を静電容量や、インダクタンスや、抵抗値の変化として検出し、それらの検出結果により筆圧を検出するのではなく、印加された圧力に応じた変位を光学的に検出し、その検出した変位から筆圧を検出するので、応答性良く検出することが可能である。また、圧力(筆圧)の検出開始点を定めるのも容易である。
【0060】
また、上述の実施形態の電子ペン1では、変位検出部6を、普及しているTOFセンサを用いて構成することができるので、より構成を簡単にすることができるというメリットがある。
【0061】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態では、TOFセンサを用いて筆圧のみを検出するようにしたが、第2の実施形態では、TOFセンサを用いることで、電子ペン1の筐体の傾きを検出することができるように構成する。図4に、この第2の実施形態の電子ペン1Aのペン先側の拡大断面図を示す。
【0062】
図4の例の、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいて、上述した第1の実施形態の電子ペン1と同様の部分には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、第1の実施形態の電子ペン1における部品とは若干構成が異なっているが、対応する部品には、図3の例の第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、同一の参照符号にサフィックスAを付加して示すようにする。
【0063】
図4に示すように、芯体5及び芯体嵌合部材7は、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいても、第1の実施形態の電子ペン1と同様の構成を備える。変位検出部6Aは、後述する図6に示すように、発光光と受光光の位相差として、傾き検出用の位相差を検出する機能を有するTOFコントローラ63Aを備えると共に、傾き検出回路68が追加される点のみが異なるが、その他の構成は、第1の実施形態の電子ペン1の変位検出部6と同様である。
【0064】
この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、変位検出部6Aを保持するホルダー部8Aは、例えばSUSで構成される円筒状の筐体2Aのペン先側の端部に、軸心方向に移動不能の状態で固定されるように取り付けられている。図4の例では、筐体2Aの突部2Aaが、ホルダー部8Aの凹部8Adに嵌合することで、ホルダー部8Aが筐体2Aに対して固定されている。そして、このホルダー部8Aは、第1の実施形態の電子ペン1のホルダー部8と同様に基板載置台部8Abを備え、当該基板載置台部8Ab上に、信号処理回路9Aを構成するICが配設されているプリント基板10が載置される。
【0065】
信号処理回路9Aは、芯体5の導体芯部51に供給する信号に、変位検出部6Aの傾き検出回路68で検出された傾きの情報が含まれる点が異なるだけで、第1の実施形態の電子ペン1における信号処理回路9と同様の構成を有する。
【0066】
そして、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、変位検出部6Aを保持するホルダー部8Aが固定された筐体2Aの、軸心方向の芯体5が配設されるペン先側の端部に、光透過部16を介してフロントキャップ3Aが取り付けられる。
【0067】
この例では、光透過部16は、筒状の光透過性の樹脂、あるいはガラス部材で構成され、その内壁面側が、図4に示すように凹面レンズとなるように構成されている。光透過部16は、この例では、筐体2A及びフロントキャップ3Aに対して例えば接着材により接着されて接合される。なお、光透過部16がガラスの場合に、例えばレーザーにより溶融させることで、筐体2A及びフロントキャップ3Aに対して接合するようにしてもよい。
【0068】
フロントキャップ3Aは、絶縁性部材例えば樹脂で構成され、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、第1の実施形態の電子ペン1のフロントキャップ3のテーパー部3bに対応する部分のみを有するように構成されている。そして、この例では、フロントキャップ3Aの外周面の少なくとも芯体5の導体芯部51の周囲を囲むように位置には、導電性材料、この例では導電性金属からなるシールド部材14Aが設けられている。
【0069】
そして、この例では、フロントキャップ3Aには、一体的に、芯体嵌合部材7の保持部3Adが形成されており、この保持部3Adにより、第1の実施形態の電子ペン1と同様に、端面7Sが変位検出部6Aに対向する状態で、軸心方向に移動可能の状態で、芯体嵌合部材7が保持されている。
【0070】
そして、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、光透過部16で囲まれる、変位検出部6と端面7Sとの間の空間内には、変位検出部6Aの発光部からのレーザー光を、端面7Sのみではなく、光透過部16側に導くと共に、外部からの反射光を光透過部16を通じて集光して、変位検出部6Aの受光部で受光するようにするためのリング状のレンズ17が配設されている。
【0071】
なお、レンズ17に加えて、変位検出部6Aと端面7Sとの間に、変位検出部6Aの発光部からのレーザー光を端面7Sに投光し、その反射光を変位検出部6Aの受光部で受光するようにするためのレンズを別途設けてもよい。もっとも、これらのレンズは、必須のものではなく、設けなくてもよい。
【0072】
第2の実施形態の電子ペン1Aは、以上のように構成されているので、変位検出部6Aでは、端面7Sの軸心方向の変位が検出されることで、第1の実施形態の電子ペン1と同様にして、芯体5の先端部5bに印加される圧力(筆圧)が検出される。
【0073】
また、この第2の実施形態の電子ペン1Aでは、図5に示すように、変位検出部6Aの発光部からのレーザー光の発光光Tpが、光透過部16を通じて位置検出センサのセンサ面(位置指示入力面)100Sに投光され、当該センサ面100Sで反射された光の受光光Rpが、光透過部16を通じて変位検出部6Aの受光部で受光される。変位検出部6Aでは、このときの発光光Tpと、センサ面100Sからの反射光の受光光Rpとの位相差に基づいて、電子ペン1Aの、位置検出センサのセンサ面100Sに対する傾き角θを検出する。
【0074】
図6は、この第2の実施形態の電子ペン1Aの変位検出部6Aの構成例を示す図である。この図6に示すように、第2の実施形態の電子ペン1Aの変位検出部6Aにおいては、電子ペン1Aの傾き角の検出のための機能を備えるTOFコントローラ63Aを備えると共に、このTOFコントローラ63Aに対して、筆圧検出回路67と、傾き検出回路68が接続されて設けられる。その他の構成は、第1の実施形態の電子ペン1の変位検出部6と同様である。
【0075】
この例の変位検出部6AのTOFコントローラ63Aにおいては、端面7Sからの受光光Rpと発光光Tpとの位相差PHd1のみではなく、位置検出センサのセンサ面100Sからの反射光の受光光Rpと発光光Tpとの位相差PHd2とを検出する。この場合に、端面7Sと変位検出部6Aとの距離に比較して、位置検出センサのセンサ面100Sと変位検出部6Aとの間の距離は大きいので、位相差PHd1と位相差PHd2との大きさも大きく異なり、TOFコントローラ63Aでは、位相差PHd1と位相差PHd2とを分離して検出することができる。
【0076】
TOFコントローラ63Aは、位相差PHd1については、第1の実施形態の電子ペン1の変位検出部6のTOFコントローラ63と同様にして、芯体5の先端部5bに圧力が印加されていないときの位相差値と、芯体5の先端部5bに圧力(筆圧)が印加されたときの位相差値との差ΔPHd1を検出して、その差ΔPHd1を筆圧検出回路67に供給するようにする。筆圧検出回路67では、前述したように、(式1)及び(式2)を用いて、芯体5の先端部5bに印加された圧力(筆圧)を検出する。
【0077】
そして、TOFコントローラ63Aは、位相差PHd2については、位相差PHd2の情報を、傾き検出回路68に供給する。この例では、傾き検出回路68は、位相差PHd2の値と、電子ペン1Aのセンサ面100Sに対する傾き角θとの対応テーブルを備えており、この対応テーブルを、位相差PHd2の値により参照することで、そのときの電子ペン1Aの傾き角を検出するようにする。
【0078】
この場合に、対応テーブルの情報は、傾き角θが0度から90度の範囲で、例えば1度ごとの傾き角における状態での位相差PHd2の値を測定して、それぞれ対応付けて記憶することで形成することができる。なお、傾き角を、0度から90度の範囲で、粗い角度例えば5度ごとの傾き角における状態での位相差PHd2の値を測定して、それぞれ対応付けて記憶することで形成し、5度ごとの中間の傾きは、補間演算により算出するようにしてもよい。
【0079】
なお、傾き検出回路68は、位相差PHd2の値から、計算により、変位検出部6Aとセンサ面100Sとの距離を算出することができる。そして、芯体5の先端部5bと変位検出部6Aとの距離は一定であり、電子ペン1Aの軸心方向に対する、変位検出部6Aからの発光光及び受光光の光透過部16を通じた光の中心軸方向は定まっているので、傾き検出回路68は、位相差PHd2の値から算出した距離から、電子ペン1Aの傾き角θを計算により求めることもできる。
【0080】
以上のようにして検出された電子ペン1Aの傾き角θの情報は、傾き検出回路68から信号処理回路9Aに供給される。信号処理回路9Aは、位置検出用信号の付加情報として、筆圧検出回路67で検出された筆圧の情報と、傾き検出回路68で検出された傾き角θの情報を芯体5の導体芯部51に供給する。
【0081】
この第2の実施形態の電子ペン1Aによれば、筆圧の情報に加えて、電子ペン1Aの傾き角θの情報を、変位検出部6Aから得ることができるという顕著な効果を奏する。
【0082】
[その他の実施形態又は変形例]
上述の第1及び第2の実施形態の電子ペン1及び1Aでは、芯体5の先端部5bとフロントキャップ3,3Aの先端側端部との間に弾性部材4を設けるようにしたが、この弾性部材4は省略して、フロントキャップ3,3Aと芯体5の先端部5bの段部のリング状端面5cとの間に軸心方向の空間を設けるようにしてもよい。そして、このように、弾性部材4を省略する場合には、芯体5の先端部5bのリング状端面5cを備える段部を設ける必要がなくなるので、芯体5は、先端から後端まで一定の径の棒状のものであってもよいし、さらには、カバー部52を省略して、導体芯部51のみにより、芯体5を構成してもよい。
【0083】
また、弾性部材15は、上述の実施形態では高機能ウレタン発泡部材で構成したが、コイルばねなどの他の構成であってもよい。そして、弾性部材15の配設位置は、芯体嵌合部材7及び芯体5を圧力が印加される前の状態に復帰させることができればよいので、上述の実施形態の例のような、芯体嵌合部材7と保持部材11との間の位置に限られるものではない。例えば、弾性部材15は、変位検出部6,6Aからの発光光及び受光光に対して邪魔をしない、あるいは影響を与えない位置であれば、端面7Sと、変位検出部6,6Aを保持するホルダー部8,8Aとの間に設けてもよい。
【0084】
また、上述の実施形態では、端面7Sは、芯体5が嵌合される芯体嵌合部材7の後端側の、端面形成用部73の鏡面仕上げ加工を施した面とするように構成したが、芯体5の後端側に鏡面仕上げ加工を施した面を備える端面形成用部を嵌合させるように構成してもよい。さらには、芯体5自身の後端側の端面を鏡面仕上げ加工をして端面7Sとするようにしてもよい。
【0085】
なお、端面7Sは、上述の実施形態では、電子ペン1,1Aの軸心方向に直交するように配設されているが、直交している必要はない。また、変位検出部6,6Aも、端Bん面7Sに対して投光し、その反射光を受光することができれば、電子ペンの軸心中心位置に設けなくてもよい。
【0086】
上述の第2の実施形態の電子ペン1Aでは、光透過部16は、径が一定の筒状部の構成としたが、フロントキャップ3Aのテーパー部分の一部に亘るように形成するようにしてもよい。また、光透過部16は、フロントキャップ3Aのテーパー部にのみ、設けるようにしてもよい。
【0087】
上述の第2の実施形態の電子ペン1Aでは、光透過部16は、凹面レンズの構成としたが、必ずしも、この例のようなレンズ構成を備える必要はない。
【0088】
なお、上述の第2の実施形態の電子ペン1Aでは、変位検出部6Aは、傾き検出回路68と筆圧検出回路67との両方を備える構成としたが、傾き検出回路68のみであってもよい。その場合には、筆圧検出部としては、変位検出部による光学的な構成ではなく、冒頭で説明したような従来の筆圧検出部を用いることができる。
【0089】
上述の第1及び第2の実施形態の電子ペン1及び1Aは、アクティブ静電容量方式の電子ペンの場合の例であったが、これに限らず、例えば電磁誘導方式の電子ペンでもよい。
【0090】
また、この発明による位置指示器は、ペン形状の電子ペンの構成に限られるものではなく、芯体を備え、筆圧検出部を備えるものであれば、どのような形状のものであってもよい。
【0091】
また、変位検出部6,6Aは、TOFセンサを用いた構成に限られるものでもないことは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
1,1A…電子ペン、2,2A…筐体、3,3A…フロントキャップ、4…弾性部材、5…芯体、6,6A…変位検出部、7…芯体嵌合部材、8,8A…ホルダー部、9…信号処理回路、10…プリント基板、15…弾性部材、16…光透過部、17…レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6