(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20241128BHJP
C08F 20/06 20060101ALI20241128BHJP
C08F 2/10 20060101ALI20241128BHJP
C08F 2/01 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
C08F20/06
C08F2/10
C08F2/01
(21)【出願番号】P 2022552033
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034800
(87)【国際公開番号】W WO2022065365
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020161054
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】従野 剛
(72)【発明者】
【氏名】荒毛 知幸
(72)【発明者】
【氏名】林 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】若林 亮太
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】片倉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 芳史
(72)【発明者】
【氏名】光上 義朗
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/126079(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/002387(WO,A1)
【文献】特開2004-002562(JP,A)
【文献】特開平11-188727(JP,A)
【文献】特表2014-524956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28、99/00、
C08C19/00-19/44、C08F6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、
上記重合工程後に、上記含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕装置を用いて粉砕して、粒子状含水ゲル状架橋重合体を得るゲル粉砕工程と、
上記粒子状含水ゲル状架橋重合体を乾燥して、乾燥物を得る乾燥工程と、を含んでおり、
上記ゲル粉砕装置は、投入口と、排出口と、複数の回転軸を内蔵する本体と、を備え、上記回転軸は、それぞれ粉砕手段を有しており、
上記含水ゲル状架橋重合体は、上記投入口から、上記排出口に向かって上記複数の回転軸が延在する方向に進行するものであり、
上記ゲル粉砕工程において、上記含水ゲル状架橋重合体を上記投入口から連続的に投入し、上記含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で上記粉砕手段により連続的に粉砕し、上記排出口から粒子状含水ゲル状架橋重合体を連続的に取り出し、
上記投入口に投入する上記含水ゲル状架橋重合体の重合率が90質量%以上であり、
上記排出口から排出される粒子状含水ゲル状架橋重合体の固形分換算の質量平均粒子径d1が3mm以下である、吸水性樹脂粉末の製造方法。
【請求項2】
上記投入口に投入される上記含水ゲル状架橋重合体のゲル温度T1が50℃以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記ゲル粉砕装置が連続式の複軸型混練機である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記ゲル粉砕装置が加熱及び/又は保温手段を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記ゲル粉砕装置の排出口におけるゲル温度T2が上記投入口におけるゲル温度T1よりも高い、請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記含水ゲル状架橋重合体は、上記粉砕手段によって粉砕されながら、上記投入口から、上記排出口に向かって上記複数の回転軸の軸方向に進行する、請求項1~5の何れか1項に記載の吸水性樹脂粉末の製造方法。
【請求項7】
上記ゲル粉砕装置において、上記投入口が上記回転軸の一方の端部付近、上記排出口が上記回転軸のもう一方の端部付近に備えられている、請求項1~6の何れか1項に記載の吸水性樹脂粉末の製造方法。
【請求項8】
上記ゲル粉砕装置において、上記排出口が上記本体の後方付近に備えられている、請求項1~7の何れか1項に記載の吸水性樹脂粉末の製造方法。
【請求項9】
上記単量体水溶液は、酸基含有不飽和単量体を主成分として含む、請求項1~
8の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
上記各回転軸が有する粉砕手段がディスク、チップ、パドル、エレメント、ニーディング、およびローターから選択される少なくとも1種である、請求項1~9の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記ゲル粉砕装置の最小クリアランスCは、
上記ディスクの最大径Dに対して0.2~20%である、請求項
10に記載の製造方法。
【請求項12】
上記ディスクの最大径Dに対する本体内部の有効長さL(Length)の比 L/Dが5~40である、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
上記ゲル粉砕装置の排出口におけるゲル温度T2が60~140℃である、請求項1~
12の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
上記含水ゲル状架橋重合体を上記投入口から投入する前に、上記本体の内部を50℃以上に加熱する、請求項1~
13の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
上記重合工程後に得られる含水ゲル状架橋重合体がシート状であり、上記ゲル粉砕工程前に、シート状の含水ゲル状架橋重合体を細断する細断工程をさらに含む、請求項1~
14の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
上記ゲル粉砕工程において、上記本体の内部に水及び/又は水蒸気が供給される、請求項1~
15の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
上記本体の内部に供給される水及び/又は水蒸気の温度が50~120℃である、請求項
16に記載の製造方法。
【請求項18】
上記本体の内部に供給される水蒸気の圧力が0.2~0.8MPaである、請求項
16または17に記載の製造方法。
【請求項19】
上記投入口に投入される含水ゲル状架橋重合体の固形分率が25~75質量%である、請求項1~
18の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
上記排出口から排出される粒子状含水ゲル状架橋重合体の固形分率が25~75質量%である、請求項1~
19の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
上記含水ゲル状架橋重合体が、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)を主成分とする架橋体である、請求項1~
20の何れか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツや生理用ナプキン等の吸収性物品、農園芸用の保水剤、工業用の止水剤等、様々な分野で多用されている。
【0003】
上記吸水性樹脂は、その原料として多くの単量体や親水性高分子が使用されているが、吸水性能の観点から、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、工業的に最も多く生産されている。
【0004】
上記吸水性樹脂には、主用途である紙オムツの高性能化に伴い、様々な機能(高物性化)が求められている。具体的には、基本物性である無加圧下吸水倍率や加圧下吸水倍率の他に、ゲル強度、水可溶分、含水率、吸水速度、通液性、粒度分布、耐尿性、抗菌性、耐ダメージ性、粉体流動性、消臭性、耐着色性、低粉塵、低残存モノマー等の様々な物性が吸水性樹脂に対して要求されている。特に、紙オムツ等衛生用品の用途では、製品の薄型化に伴って、吸水速度のさらなる向上が望まれている。
【0005】
上記粉末状又は粒子状の吸水性樹脂の商業的な製造方法は、代表的には、重合工程、重合後又は重合と同時におこなうゲル粉砕(細粒化)工程、細粒化したゲルの乾燥工程、乾燥物の粉砕工程、粉砕物の分級工程、粉砕及び分級により発生する微粉の回収工程、並びに分級後の吸水性樹脂粉末の表面架橋工程を含む。
【0006】
これまでに提案された吸水性樹脂の製造方法の一つとして、粉砕機構を有する重合装置を使用して重合工程とゲル粉砕工程とを同時に行う製造方法がある。この製造方法の場合、液状モノマーの重合反応の進行とともに、生成する含水ゲルが粉砕され、細粒化された含水ゲルが重合装置から排出される。この具体例として、バッチ式ニーダーや連続式ニーダーを使用する方法が、特許文献1~3に示されている。
【0007】
しかし、これらの装置で得られるゲル粒子のサイズは、数mm~数cm程度であり、吸水速度の更なる向上が求められる近年の状況では、不十分なゲル粉砕であり、追加のゲル粉砕装置が必要であった。特許文献4では、バッチ式ニーダー又は連続式ニーダーを使用して、吸水性樹脂の製品粒子径となるゲル粒子よりも小さいサイズまで湿式粉砕する方法が提案されているが、過度に装置サイズが大きくなるため現実的ではない。
【0008】
また、重合工程で、モノマーの重合反応が進行中の付着性の高い含水ゲルをゲル粉砕することから、装置内部の構成部品へ含水ゲルが付着しやすく、さらに付着した状態で反応が進行することで含水ゲルが固着するため、構成部品の破損の原因となったり、メンテナンス時の清掃に時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭57-34101号公報
【文献】特開昭60-55002号公報
【文献】国際公開第2001/038402号パンフレット
【文献】特開平05-112654号公報
【発明の概要】
【0010】
近年、特に求められている吸水速度に優れた吸水性樹脂を得るためには、ゲル粉砕工程において、従来以上に小さい粒子径まで含水ゲルを粉砕する必要があるが、従来の重合工程とゲル粉砕工程を、複数軸を有する混練機を用いて同時に行ういわゆるニーダー重合では、所望の粒子径の含水ゲルを得ることができなかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、吸水速度に優れる吸水性樹脂を提供することである。
【0012】
本発明者らは、まず、含水ゲル状架橋重合体を、従来は多孔板を備えた押出機(ミートチョッパー)を用いて粒子状含水ゲル状架橋重合体(以下、「粒子状含水ゲル」とも称する)を得るところを、複数軸混練機(特に2軸混練機)を用いてゲル粉砕を行うことにより、連続的に粒子状含水ゲルを得ることができることを見出した。さらに、この粉砕手段において、含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で連続的に粉砕することにより、吸水速度に優れた吸水性樹脂粉末を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は、単量体水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、上記重合工程後に、上記含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕装置を用いて粉砕して、粒子状含水ゲル状架橋重合体を得るゲル粉砕工程と、上記粒子状含水ゲル状架橋重合体を乾燥して、乾燥物を得る乾燥工程と、を含んでおり、上記ゲル粉砕装置は、投入口と、排出口と、複数の回転軸を内蔵する本体と、を備え、上記回転軸は、それぞれ粉砕手段を有しており、上記ゲル粉砕工程において、上記含水ゲル状架橋重合体を上記投入口から連続的に投入し、上記含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で上記粉砕手段により連続的に粉砕し、上記排出口から粒子状含水ゲル状架橋重合体を連続的に取り出し、上記投入口に投入する上記含水ゲル状架橋重合体の重合率が90質量%以上であり、上記排出口から排出される粒子状含水ゲル状架橋重合体の固形分換算の質量平均粒子径d1が3mm以下である、吸水性樹脂粉末の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る製造方法に用いられるゲル粉砕装置の一例が示された一部切り欠き側面図である。
【
図2】
図1のゲル粉砕装置の拡大図(本体中央部を上から見た図)である。
【
図3】吸水性樹脂の代表的な製造工程を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下に例示する以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲内で適宜変更して、実施することが可能である。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。複数の実施形態についてそれぞれ開示された技術的手段を、適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0016】
〔1〕用語の定義
〔1-1〕「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、下記の物性を満たすものをいう。即ち、水膨潤性としてERT441.2-02で規定されるCRC(遠心分離機保持容量)が5g/g以上であり、かつ、水不溶性としてERT470.2-02で規定されるExt(水可溶分)が50質量%以下である高分子ゲル化剤を指す。
【0017】
上記吸水性樹脂は、その用途・目的に応じた設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量が架橋重合体である形態に限定されず、上記の各物性(CRC、Ext)が上記数値範囲を満たす限り、添加剤等を含んだ組成物であってもよい。
【0018】
本発明における「吸水性樹脂」は表面架橋(別称;後架橋、2次架橋)されたものであってもよく、表面架橋されていないものであってもよい。なお、本明細書において、「吸水性樹脂粉末」とは、粉末状の吸水性樹脂を指し、好ましくは、所定の固形分率(含水率)及び粒度(粒子径)に調整された吸水性樹脂である。また、所定の表面架橋処理が完了した吸水性樹脂粉末は、別途、表面架橋(後架橋)された吸水性樹脂粉末ないし吸水剤と称することもある。
【0019】
〔1-2〕「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」
本発明における「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」とは、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分として(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(以下、「(メタ)アクリル酸(塩)」とも称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む架橋重合体を意味する。
【0020】
上記「主成分」とは、(メタ)アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体全体(架橋剤を除く全単量体)に対して、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは70モル%~100モル%、更に好ましくは90モル%~100モル%、特に好ましくは実質100モル%であることを意味する。
【0021】
ここで、「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」は、未中和でもよいが、好ましくは部分中和または完全中和されたポリ(メタ)アクリル酸塩であり、より好ましくは一価の塩、さらに好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、よりさらに特に好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0022】
〔1-3〕評価方法の定義
「EDANA」は、European Disposables and Nonwovens Associationsの略称である。また、「ERT」は、EDANA Recommended Test Methodsの略称であり、吸水性樹脂の評価方法を規定した欧州標準である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定)に記載されている測定法に関しては、それに準拠して測定する。に記載のない評価方法に関しては、実施例に記載された方法及び条件で測定する。
【0023】
〔1-3-1〕「CRC」(ERT441.2-02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下での吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、重合後及び/又はゲル粉砕後の含水ゲルについては、含水ゲル0.4gを使用し、測定時間を24時間に変更し、且つ固形分補正してCRCを求める。
【0024】
〔1-3-2〕「Moisture Content」(ERT430.2-02)
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の乾燥減量で規定される含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂4.0gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;質量%)のことをいう。なお、本発明において、乾燥後の吸水性樹脂については、吸水性樹脂1.0gの180℃、3時間の乾燥減量で規定され、乾燥前の含水ゲルについては、含水ゲル2.0gの180℃、24時間の乾燥減量で規定される。
【0025】
〔1-3-3〕「PSD」(ERT420.2-02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される吸水性樹脂の粒度分布を意味する。なお、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号に記載された方法と同様の方法で測定される。なお、本発明において粒子状含水ゲルの粒度分布(PSD)は後述の方法で湿式に篩分級することで規定される。さらに、粒子状含水ゲルの固形分換算の粒子径(μm)は、粒子状含水ゲルの粒子径(μm)とその固形分率(質量%)から後述の計算方法で規定される。
【0026】
〔1-3-4〕「AAP」(ERT442.2-02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下における吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm2、0.3psi)の荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。本明細書では荷重条件を4.83kPa(約49g/cm2、約0.7psiに相当)に変更して測定した値として定義される。
【0027】
〔1-3-5〕「Vortex」
本明細書における「Vortex」とは、吸水性樹脂の吸水速度を表す指標であり、2gの吸水性樹脂が50mlの0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液を所定の状態まで吸水するのに要する時間(単位;秒)を意味する。
【0028】
〔1-4〕「ゲル粉砕」
本明細書における「ゲル粉砕」とは、重合工程(好ましくは水溶液重合、無攪拌水溶液重合(静置水溶液重合)、特に好ましくはベルト重合)で得られた含水ゲル状架橋重合体(以下、単に「含水ゲル」とも称する)の乾燥を容易にすることを目的に、せん断、圧縮力を加えてその大きさを小さくし表面積を高くする操作のことを意味する。
【0029】
尚、重合機の形式によって得られる含水ゲルの形状が異なる場合がある。例えば、静置重合(特にベルト重合)で得られる含水ゲルの形状は、シート状又はブロック状である。ここで、シート状とは、平面に厚みを持った重合体であり、その厚みは、好ましくは1mm~30cm、特に好ましくは0.5~10cmである。シート状含水ゲルは、代表的には、ベルト重合、ドラム重合及びバッチ薄膜重合により得られる。シート状含水ゲルの長さ及び幅は、用いられる重合装置のサイズにより適宜決定される。連続重合(連続ベルト重合又は連続ドラム重合)の場合、その長さがエンドレスのシート状含水ゲルが得られ、その幅は、重合装置のベルト又はドラムの幅であり、好ましくは、0.1~10m、より好ましくは1~5mである。このエンドレスのシート状含水ゲルは、重合後に、長さ方向に適宜裁断して用いられてもよい。また、ブロック状の含水ゲルは、タンク重合等により得られる。このブロック状の含水ゲルは、重合後に、適宜数cm~数m角に解砕されてもよい。これに対して、ニーダー重合の場合、重合工程において、同一装置内で、重合とゲル粉砕とが連続的に行われるため、ある程度細粒化した含水ゲルが得られる。しかし、ニーダー重合で得られる含水ゲル粒子は、本発明に係る製造方法で得られるレベルの粒子径まで細粒化されたものではない。また、ニーダー重合によって、本発明において得られるレベルの粒子径まで粉砕するためには、過大な装置が必要となり、工業的製造方法としては現実的ではない。従って、このような重合工程でのゲル粉砕は、本発明における「ゲル粉砕」の概念には含まれない。尚、本発明においては、重合率が後述する範囲に到達した段階で、重合工程が終了したと見なすものとする。ニーダー重合等の方法によりある程度細粒化された含水ゲルを、本発明で求めるレベルの粒子径まで粉砕する操作は、本発明における「ゲル粉砕」の概念に含まれる。
【0030】
〔1-5〕その他
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「質量ppm」又は「重量ppm」を意味する。更に、「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」はそれぞれ同義語として扱う。また、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
【0031】
〔2〕吸水性樹脂粉末の製造方法
本発明に係る吸水性樹脂粉末の製造方法は、重合工程、この重合工程とは別途のゲル粉砕工程及び乾燥工程を有している。好ましくは、この製造方法は、更に、冷却工程、乾燥物の粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、表面架橋後の整粒工程を有している(
図3参照)。その他には、単量体水溶液の調整工程、各種添加剤の添加工程、微粉除去工程及び微粉リサイクル工程(微粉回収工程)、充填工程を含んでもよい。更に、目的に応じて各種の公知の工程を含むことができる。
【0032】
本発明に係る製造方法によれば、重合率が90質量%以上の含水ゲル状架橋重合体を、複数軸を有する混練機(特に2軸混練機)を用いてゲル粉砕を行い、固形分換算の質量平均粒子径d1が3mm以下である粒子状含水ゲルを乾燥工程に供することにより、吸水速度に優れた吸収性樹脂が得られる。
【0033】
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0034】
〔2-1〕単量体水溶液の調製工程
本工程は、好ましくは酸基含有不飽和単量体を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を調製する任意の工程である。なお、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本項では便宜上、単量体水溶液について説明を行う。
【0035】
また、上記「主成分」とは、酸基含有不飽和単量体の使用量(含有量)が、吸水性樹脂の重合反応に供される単量体(内部架橋剤は除く)全体に対して、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。
【0036】
(酸基含有不飽和単量体)
本発明に規定する酸基は、特に限定されないが、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等が例示される。この酸基含有不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等が挙げられる。吸水性能の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸であり、特に好ましくはアクリル酸である。
【0037】
(酸基含有不飽和単量体以外の単量体)
酸基含有不飽和単量体以外の単量体としては、重合して吸水性樹脂となり得る化合物であればよい。例えば、(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和単量体;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;N-ビニルピロリドン等のラクタム基含有不飽和単量体等が挙げられる。
【0038】
(中和塩)
本発明において、酸基含有不飽和単量体に含まれる酸基の一部又は全部が中和された中和塩を用いることができる。この場合、酸基含有不飽和単量体の塩としては一価のカチオンとの塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、アルカリ金属塩であることが更に好ましく、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であることがより更に好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0039】
(中和剤)
上記酸基含有不飽和単量体を中和するために使用される中和剤としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、アミノ基やイミノ基を有するアミン系有機化合物等の塩基性物質が適宜選択されて用いられる。中和剤として、無機塩及び塩基性物質から選択される2種以上が併用されてもよい。なお、本発明における単量体は、特に断りのない限り、中和塩を含む概念である。
【0040】
(中和率)
吸水性能の観点から、酸基含有不飽和単量体とその中和塩の合計モル数に対する中和塩のモル数(以下、「中和率」と称する)は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは40モル%~80モル%、更に好ましくは45モル%~78モル%、特に好ましくは50モル%~75モル%である。
【0041】
上記中和率を調整する方法としては、酸基含有不飽和単量体とその中和塩とを混合する方法;酸基含有不飽和単量体に公知の中和剤を添加する方法;予め所定の中和率に調整された酸基含有不飽和単量体の部分中和塩(即ち、酸基含有不飽和単量体とその中和塩との混合物)を用いる方法;等が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0042】
上記中和率の調整は、酸基含有不飽和単量体の重合反応開始前に行ってもよいし、酸基含有不飽和単量体の重合反応中で行ってもよいし、酸基含有不飽和単量体の重合反応終了後に得られる含水ゲル状架橋重合体に対して行ってもよい。また、重合反応開始前、重合反応中又は重合反応終了後のいずれか一つの段階を選択して中和率を調整してもよいし、複数の段階で中和率を調整してもよい。なお、紙オムツ等の吸収性物品等、人体に直接接触する可能性のある用途では、好ましくは重合反応の開始前及び/又は重合反応の期間中、より好ましくは重合反応の開始前に、中和率を調整すればよい。
【0043】
(内部架橋剤)
吸水性樹脂粉末の製造方法において、好ましくは内部架橋剤が用いられる。該内部架橋剤によって、得られる吸水性樹脂の吸水性能や吸水時のゲル強度等が調整される。
【0044】
上記内部架橋剤としては、1分子内に合計2以上の不飽和結合又は反応性官能基を有していればよい。例えば、分子内に(単量体と共重合しうる)重合性不飽和基を複数有する内部架橋剤として、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェートなどが挙げられる。分子内に(単量体の官能基(例;カルボキシ基)と反応しうる)反応性官能基を複数有する内部架橋剤として、トリアリルアミン、ポリアリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。また、分子内に重合性不飽和基及び反応性官能基を有する内部架橋剤として、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
【0045】
これら内部架橋剤の中でも、本発明の効果の面から、好ましくは、分子内に重合不飽和基を複数有する化合物であり、より好ましくは、分子内に(ポリ)アルキレン構造単位を有する化合物であり、さらに好ましくはポリエチレングリコール構造単位を有する化合物であり、特に好ましくは、ポリエチレングリコール構造単位を有するアクリレート化合物である。これら内部架橋剤を用いて得られる含水ゲルは、粘着性が低い。この粘着性の低い含水ゲルを乾燥することにより、乾燥時の融着や凝集を低減できるため好ましい。
【0046】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体及び内部架橋剤の種類等に応じて適宜設定される。得られる吸水性樹脂のゲル強度の観点から、単量体に対して、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上である。また、吸水性樹脂の吸水性能向上の観点から、好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。なお、単量体の自己架橋反応が有効な重合条件においては、上記内部架橋剤を使用しなくともよい。
【0047】
(重合禁止剤)
重合に使用される単量体は、重合の安定性から、好ましくは少量の重合禁止剤を含む。好ましい重合禁止剤はp-メトキシフェノールである。単量体(特にアクリル酸及びその塩)中に含まれる重合禁止剤の量は、通常1ppm~250ppm、好ましくは10ppm~160ppm、より好ましくは20ppm~80ppmである。
【0048】
(その他の物質)
本発明に係る製造方法において、本発明の目的が達成される範囲内で、以下に例示する物質(以下、「その他の物質」と称する)を単量体水溶液に添加することもできる。
【0049】
その他の物質の具体例として、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜リン酸塩類等の連鎖移動剤;炭酸塩、重炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスフィン酸)やその金属塩、エチレンジアミン4酢酸やその金属塩、ジエチレントリアミン5酢酸やその金属塩等のキレート剤;ポリアクリル酸(塩)及びこれらの架橋体(例えばリサイクルされる吸水性樹脂微粉)、澱粉、セルロース、澱粉-セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子等が挙げられる。その他の物質は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0050】
その他の物質の使用量は、特に限定されないが、リサイクルされる微粉では単量体に対して30質量%以下、微粉以外ではその他の物質の全濃度としては、好ましくは単量体に対して10質量%以下、より好ましくは0.001質量%~5質量%、特に好ましくは0.01質量%~1質量%である。
【0051】
(単量体水溶液中の単量体濃度)
本工程において、単量体水溶液中の単量体濃度(=総単量体量/(総単量体量+総重合溶媒量(通常は水))は、吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、好ましくは10質量%~90質量%、より好ましくは20質量%~80質量%、更に好ましくは30質量%~70質量%、特に好ましくは40質量%~60質量%である。以下、単量体濃度を「モノマー濃度」と称する場合がある。
【0052】
(重合開始剤)
本発明で使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、若しくはこれらの併用、又は重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第7265190号に開示された重合開始剤のうち、1種又は2種以上が用いられる。なお、重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が使用される。
【0053】
該重合開始剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.001モル%~1モル%、より好ましくは0.001モル%~0.5モル%である。また、必要によりレドックス重合を行う場合、酸化剤と併用される該還元剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.0001モル%~0.02モル%である。
【0054】
(溶存酸素量)
なお、重合前の単量体水溶液中の溶存酸素を、昇温又は不活性ガスとの置換により低減させてもよい。例えば、溶存酸素は、好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは1ppm以下に低減される。
【0055】
また、単量体水溶液に気泡(特に上記不活性ガス等)を分散させることもできる。この場合には、重合反応において発泡重合となる。
【0056】
〔2-2〕重合工程
本工程は、前記単量体水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体を得る工程である。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)を主成分とする架橋体である含水ゲルを得る工程である。
【0057】
なお、上記重合開始剤を添加することで重合反応を行う方法以外に、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法がある。また、重合開始剤を添加したうえで、活性エネルギー線の照射を併用してもよい。
【0058】
(重合形態)
重合形態としては、バッチ式又は連続式の水溶液重合である。また、ベルト重合でもニーダー重合でもよい。さらに、連続水溶液重合がより好ましく、連続ベルト重合及び連続ニーダー重合の何れでも適用される。具体的な重合形態として、連続ベルト重合は米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に、連続ニーダー重合は米国特許第6987151号、同第6710141号等に、それぞれ開示されている。これらの連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
【0059】
また、上記連続水溶液重合の好ましい形態として、「高温開始重合」や「高濃度重合」が挙げられる。「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する形態をいい、「高濃度重合」とは、単量体濃度を好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上(上限は飽和濃度)で重合を行う形態をいう。これらの重合形態を併用することもできる。
【0060】
(含水ゲルの重合率)
重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の重合率は、90質量%以上である。好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。重合率が低い状態(すなわち、重合率90質量%未満の状態)でゲル粉砕を行った場合(例えば、ニーダー重合のように重合およびゲル粉砕を同時に行った場合)、粉砕されたゲル粒子中に含まれる多量の未反応モノマーが重合して、粉砕されたゲル粒子同士を接着するため、再度大粒子径のゲル粒子が生成される。従って、重合工程中にゲル粉砕を行う場合には、再生した大粒子径のゲル粒子を再度粉砕する必要があり、粉砕に要するエネルギーが増大し、重合装置が過大なものになるという問題がある。また、重合工程後に、重合率の低い含水ゲルを粉砕して、多量の未反応モノマーを含む状態で乾燥工程を行った場合、乾燥中に重合反応が進行して、粒子径の小さいゲル粒子から大粒子径の含水ゲル粒子が再生されるため、得られる吸水性樹脂の吸水速度の低下、乾燥物の粒子径の増大等の問題が発生する。なお、重合率の上限は特に限定されず、100質量%が理想的であるが、高い重合率には長い重合時間や厳しい重合条件が必要であり、生産性や物性面の低下を招くこともあり、上限は99.95質量%、さらに99.9質量%、通常99.8質量%程度で十分である。代表的には、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の重合率は、98~99.99質量%である。
【0061】
〔2-3〕細断工程
細断工程は、重合工程後ゲル粉砕工程前に、含水ゲル状架橋重合体を、ゲル粉砕装置に投入可能な大きさに切断又は粗砕する任意の工程である。特に、上記重合工程がベルト重合であり、シート状又はブロック状の含水ゲルが得られる場合に、この細断工程を実施することが好ましい。したがって、本発明の一実施形態では、重合工程後に得られる含水ゲル状架橋重合体がシート状であり、ゲル粉砕工程前に、シート状の含水ゲル状架橋重合体を細断する細断工程をさらに含む。細断工程における含水ゲルを切断又は粗砕する手段は特に限定されず、ロータリーカッター、ローラーカッター、ギロチンカッター等が用いられる。細断するサイズは、後述するゲル粉砕装置に投入できる範囲であれば特に限定されないが、細断後の含水ゲルの大きさとして、好ましくは1mm~3mであり、より好ましくは5mm~2.5mであり、特に好ましくは1cm~2mである。なお、本発明の目的が達成される場合、細断工程を実施しなくてもよい。
【0062】
〔2-4〕ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合後に、この重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を粉砕して細粒化することにより、粒子状含水ゲル状架橋重合体(以下、「粒子状含水ゲル」)を得る工程である。目的とする形状及び性能の(表面架橋された)吸水性樹脂粉末が高収率で得られるように、粒子状含水ゲルの粒子径が、後述する好ましい範囲に調整される。尚、所定の粒子径の粒子状含水ゲルを得るために、本工程を2回以上実施してもよい。
【0063】
(ゲル粉砕装置)
本発明に係る製造方法では、
図1、
図2に示すように、重合工程後のゲル粉砕工程において、投入口、複数の回転軸を内蔵する本体、排出口を有するゲル粉砕装置が用いられる。それぞれの回転軸は粉砕手段を有する。このゲル粉砕装置では、投入口から本体内に連続的に投入された含水ゲル状架橋重合体が、各回転軸が有する粉砕手段により50℃以上で粉砕され、粒子状含水ゲル状架橋重合体として、排出口から連続的に取り出される。尚、本発明において、本体とは、複数の回転軸及び粉砕手段が設置される胴体部分(
図1の符号208)を意味し、バレル、トラフ、ケーシング等とも称される。
【0064】
本発明に係る製造方法に用いるゲル粉砕装置は、連続式である限り、縦型(含水ゲルの進行方向が上下方向)であってもよく、横型又は水平型(含水ゲルの進行方向が左右方向又は水平方向)であってもよい。また、縦型及び横型のゲル粉砕装置において、水平方向に対して0°~90°の傾斜を有してもよい。例えば、
図1に示される横型連続粉砕装置の場合、必要に応じて適宜傾斜が設けられるが、その傾斜は、投入口から排出口に向かって(即ち、含水ゲルの進行方向に対して)、下向きであってもよく、上向きであってもよい。通常、その傾斜角度は0°~10°であり、好ましくは0°~1°であり、特に好ましくは0°である。
【0065】
なお、従来の製造方法においてゲル粉砕に用いられる押出機(ミートチョッパー)の場合、押出口に設置されたダイス付近で実質的に含水ゲルが粉砕され、含水ゲルの搬送に係るスクリュー部分では殆どゲル粉砕が行われない。これに対し、本発明に係る製造方法に用いるゲル粉砕装置(特に、混練機)の場合、投入された含水ゲルが、排出口に到達するまでの間に、回転軸が有する粉砕手段によって、粒子径3mm以下にまで粉砕されることに特徴を有する。
【0066】
詳細には、このゲル粉砕装置では、投入口から投入された含水ゲルは、排出口から排出されるまでの間に、目的とする粒度にまで粉砕される。したがって、このゲル粉砕装置では、従来の押出機(ミートチョッパー)のように、ダイスから押し出すことを必須とせず、目的とする粒度に調整された粒子状含水ゲルが排出口から取り出される。本発明に係る製造方法では、このゲル粉砕装置を用いることにより、吸水速度に優れた吸水性樹脂が得られる。
【0067】
50℃以上で連続的にゲル粉砕を行う観点から、ゲル粉砕装置は、加熱手段及び/又は保温手段を有することが好ましい。加熱手段及び/又は保温手段としては特に限定されないが、含水ゲル及び粒子状含水ゲルの付着及び凝集防止の観点から、対流伝熱による直接伝熱及び/又は熱媒で加熱されたゲル粉砕装置の加熱面(含水ゲルとの接触面、熱源部分)からの熱伝導による間接伝熱による加熱手段が好ましい。より好ましい加熱手段は、直接伝熱では通気加熱式、間接伝熱では外壁加熱式である。
【0068】
含水ゲルへのダメージ低減の観点から、好ましくは、本体の外面に、加熱手段及び/又は保温手段、より好ましくは加熱手段を備える。この保温手段としては、例えば、本体の外面の一部または全面(好ましくは本体の外表面(面積)の50%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは全面)を、断熱材で被覆する方法が挙げられる。また、加熱手段としては、本体の外面の一部または全面(好ましくは本体の外表面(面積)の50%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは全面)を覆うように設置された電気トレス、スチームトレス、熱媒で加熱されたジャケット等が例示される。本発明において求められる粒子状含水ゲルの粒子径は、従来よりもかなり小さい。そのため、従来技術の範囲で想定されるよりも、温度変化による含水ゲル粒子の付着性及び流動性の変動が大きいことがわかった。その結果として、含水ゲルの粉砕に必要なエネルギーや、粉砕されたゲル粒子同士の凝集性が、温度によって大きく変動することが、本発明における検討により明らかになった。ゲル粉砕装置が、上記加熱手段及び/又は保温手段を備えることにより、より好ましい温度域でゲル粉砕工程を実施することができる。また、季節や昼夜といった気温差の影響によるゲル粉砕の質の悪化を避けることができる。さらに、ゲル粉砕装置の立ち上げ時にも、スムーズに安定運転に誘導することも可能になる。
【0069】
本発明の効果が得られる限り、それぞれの回転軸が有する粉砕手段の種類は特に限定されない。例えば、含水ゲルに対する剪断作用を有するものとして、各種形状のディスクが挙げられる。ディスクは、チップ、パドル、エレメント、ニーディング、ローター等と称される場合がある。ディスクの形状は特に限定されず、円板状、楕円状、略三角形状等から適宜選択される。異なる形状のディスクを組み合わせて使用することも可能であり、その配列は、目的とする粒子状含水ゲルの粒子径、粉砕に要するエネルギーの観点から適宜調整される。また、粉砕手段として、アーム、羽根、ブレード、カットディスク(CD)等が併用されてもよい。
【0070】
例えばそれぞれの回転軸が粉砕手段として、円板状又は楕円状のディスクを有する場合、このディスクの最大径D(Diameter;直径の異なる複数のディスクを使用する場合は、最大ディスクの直径)に対する本体内部の有効長さL(Length)の比は、L/Dとして定義される。このL/Dは、5~40が好ましく、6~30がより好ましく、6.5~20がさらに好ましい。尚、この有効長さLとは、
図1に示されるように、投入口から排出口を含めた本体(バレル)部分の軸方向長さ(全長)を意味する。
【0071】
また、ディスクおよび本体(バレル)の間の距離(クリアランス)は、場所によって異なる場合もある。ディスク外周と本体(バレル)の内壁との距離が最短となる距離を最小クリアランスCとしたとき、最小クリアランスCは、ディスクの最大径Dに対して、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらにより好ましく、5%以下が特に好ましい。上記上限値以下であれば、ゲル粉砕時にバレルとディスクとの間でのせん断力が強くなり、ゲル粉砕効率が良好となる。また、最小クリアランスCは、ディスクの最大径Dに対して、0.2%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましく、1%以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、ディスクと本体(バレル)内壁との接触が抑制され、磨耗による金属異物混入が抑制される。本発明の好適な形態は、最小クリアランスCは、ディスクの最大径Dに対して、0.2~20%である。
【0072】
後述する通り、このゲル粉砕装置では、粉砕手段を有する複数の回転軸の回転によって、含水ゲルが所定粒度まで粉砕される。この複数の回転軸の回転数は、等速でもよく、非等速でもよく、装置によって適宜設定されるが、好ましくは1rpm~1000rpm、より好ましくは3rpm~500rpm、さらに好ましくは5rpm~300rpmの範囲である。また、各回転軸の回転数が異なる場合、一の回転軸の回転数に対する他の回転軸の回転数の比率は、通常1~10の範囲であり、好ましくは1~2の範囲である。
【0073】
また、この複数の回転軸が、粉砕手段としてディスクを有する場合、下記(式3)で定義されるディスクの周速(V)は、等速でもよく、非等速でもよく、装置によって適宜設定されるものであるが、0.05m/s~5m/sが好ましく、0.1m/s~5m/sがより好ましく、0.15m/s~3m/sがさらに好ましく、0.2m/s~2m/sが特に好ましい。上記範囲を超えると、含水ゲルに係る剪断力が過大になり、粉砕後の含水ゲル粒子の物性劣化及び過度の圧密が発生するため好ましくない。また、上記範囲を下回ると、ゲル粉砕工程における単位時間当たりの処理量が減少するため好ましくない。また、各回転軸が有するディスクの周速が異なる場合、一の回転軸における周速に対する他の回転軸における周速の比率は、通常1~10の範囲であり、好ましくは1~2の範囲である。
【0074】
周速(V)(m/s)=πD×n/60 ・・・ (式3)
ここで、(式3)中、Vはディスクの周速(単位;m/s)、Dはディスクの最大径(単位;m)、nは単位時間当たりのディスクの回転数(単位;rpm)である。
【0075】
また、複数の回転軸の回転方向は、それぞれの回転軸が同じ方向に回転する同方向型であってもよく、それぞれの回転軸が反対方向に回転する異方向型であってもよい。同方向型装置ではセルフクリーニング性が期待でき、異方向型装置では強力な剪断力が期待できる。各回転軸の回転方向は、前述した粉砕手段の配列(ディスクパターン)との組み合わせにより適宜選択される。
【0076】
このゲル粉砕装置は、本体内部に、水及び/又は水蒸気を供給する機能を備えることが好ましい。水及び/又は水蒸気(好ましくは、水及び水蒸気)を供給しながらゲル粉砕を行うことで、吸水速度により優れた吸水性樹脂粉末を得ることができる。したがって、本発明の一実施形態によれば、ゲル粉砕工程において、本体の内部に水及び/又は水蒸気が供給される。他の好ましい一実施形態は、ゲル粉砕工程において、本体の内部に水及び水蒸気が供給される。水及び/又は水蒸気を供給する手段として、ゲル粉砕装置に、複数の投入口を備えてもよい。この水及び/又は水蒸気の投入口の設置位置は問わないが、好ましくは、含水ゲルの投入口側に設置される。また、水と水蒸気とが、それぞれ異なる投入口から供給されてもよい。
【0077】
水蒸気添加に際しては特に限定されないが、例えば、空気、ドライエアー、窒素等のガスを水蒸気に混合し、混合気体として添加してもよい。添加される水蒸気の圧力は特に限定されないが、好ましくは0.2~0.8MPaであり、より好ましくは0.3~0.7MPaである。水及び/又は水蒸気(混合気体を含む)の温度は特に限定されないが、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である。過度の昇温と含水ゲルの乾燥を抑制する観点から、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、120℃以下がさらにより好ましく、100℃以下が特に好ましい。好ましい形態は、本体の内部に供給される水及び/又は水蒸気の温度が50~120℃である。ゲル粉砕装置中の含水ゲル及び粒子状含水ゲルの温度を、用いられる水及び/又は水蒸気(混合気体を含む)の温度並びに投入量によって調整することも可能である。この場合、水蒸気及び/又は混合気体は直接伝熱の熱媒とし作用して、本体内部の含水ゲル及び粒子状含水ゲルが所定の温度に加熱又は保温される。尚、添加する水及び/又は水蒸気(混合気体を含む)に、後述するゲル流動化剤、架橋剤、酸化剤、還元剤、重合開始剤等の添加剤を配合してもよい。
【0078】
この水及び/又は水蒸気の供給量としては、含水ゲルの固形分換算による質量に対して、それぞれ、0.1質量%~50質量%が好ましく、0.5質量%~40質量%がより好ましく、1質量%~30質量%が更に好ましい。
【0079】
本発明に係る製造方法に用いるゲル粉砕装置は、好ましくは本体の外面に、加熱手段及び/又は保温手段を備えるが、本体の外面に設置されたジャケット等に温水やオイルのような液状の熱媒を導入してもよく、加熱されたガス(熱風)を熱媒として導入してもよい。これら熱媒は、間接伝熱の熱媒として作用する。間接伝熱の加熱効率及び/又は保温効率の観点から、熱媒の温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である。一方、過度の昇温と含水ゲルの乾燥を抑制する観点から、熱媒の温度は、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、130℃以下がさらにより好ましく、110℃以下が特に好ましい。特に好ましい熱媒は、温水又は水蒸気である。また、熱媒の温度は一定温度でもよいし、ゲル粉砕途中で適宜変更してもよい。
【0080】
より好ましくは、含水ゲルがゲル粉砕装置に投入される前に、本体内部(内表面)の温度が、50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、さらにより好ましくは80℃以上に加熱されていることが好ましい。これにより、本体の内表面への含水ゲルの付着が低減される。また、これにより、得られる吸水性樹脂粉末の吸水速度がさらに向上する。すなわち本発明に係る製造方法では、含水ゲルの投入前、ゲル粉砕開始時に、本体の内表面が前述した温度以上に加熱されていることが好ましい。より好ましくは、本体の内表面及び複数の回転軸並びに各回転軸が有する粉砕手段の外表面が、前述した温度以上に加熱されていることが好ましい。一方、過度の昇温と含水ゲルの乾燥を抑制する観点から、含水ゲルがゲル粉砕装置に投入される前において、本体内部(内表面)の加熱温度は、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、130℃以下がさらにより好ましく、110℃以下が特に好ましい。例えば、本体に備えられたジャケット内部に熱媒を循環させて保持することにより、本体内部(内表面)の温度を所望の範囲に調節することができる。ゲル粉砕工程における温度を50℃以上に保持する観点から、ゲル粉砕工程において本体内部(内表面)の温度は上記範囲に保持されていることが好ましい。
【0081】
ここで、「含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で連続的に粉砕する」とは、
図1の(A)で示す区間、つまり投入口を過ぎてから排出口に至るまでの区間において、含水ゲル状架橋重合体の温度を50℃以上に維持しながら、含水ゲル状架橋重合体を連続的に粉砕することをいう。換言すれば、「含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で連続的に粉砕手段により粉砕する」とは、「含水ゲル状架橋重合体を50℃以上に維持した状態で粉砕手段により連続的に粉砕する」ことを指す。例えば、ゲル粉砕装置の投入口に投入される含水ゲル状架橋重合体の温度T1を50℃以上とし、装置本体の外側に設置されたジャケットの熱媒温度を50℃以上とすれば、
図1の(A)の区間において含水ゲル状架橋重合体の温度を50℃以上に維持でき、含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で連続的に粉砕することができる。また、例えば、ゲル粉砕装置の投入口に投入される含水ゲル状架橋重合体の温度T1が50℃以下であっても、投入口部分で高温の水及び/又は水蒸気を供給する、装置本体のジャケット熱媒温度を高温に設定するなどして、含水ゲル状架橋体重合体を急速に昇温させ、(A)部分では50℃以上として連続的に粉砕する場合も含まれる。
【0082】
含水ゲル状架橋重合体を連続的に粉砕する温度は、50℃以上であるが、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。
【0083】
含水ゲル状架橋重合体を連続的に粉砕する温度の上限は、特に制限されるものではないが、過度の昇温と含水ゲルの乾燥を抑制する観点から、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、130℃以下がさらにより好ましく、110℃以下が特に好ましい。
【0084】
さらに、大型のゲル粉砕装置の場合には、複数の回転軸の内部にも熱媒を循環させて、加熱手段及び/又は保温手段とすることが好ましい。これにより、ゲル粉砕装置の始動時に、本体内部を昇温する時間が短縮できる。
【0085】
含水ゲルが目的とする粒度に調整される限り、このゲル粉砕装置における含水ゲルの平均滞留時間は特に限定されないが、含水ゲルに対する機械的ダメージの低減の観点から、好ましくは30秒~30分である。このゲル粉砕装置において、含水ゲルの平均滞留時間は、回転軸の回転速度及び含水ゲルの投入速度により調整される。
【0086】
本発明に係る製造方法に用いるゲル粉砕装置では、ダイス(ダイプレート)を使用しないことが最も好ましいが、本発明の効果が得られる限り、排出口にダイスを設置してもよい。ダイスを使用する場合には、ダイスの開口率が25%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上がさらに好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。開口率の上限は特に限定されない。開口率100%とは、ダイスを使用しない場合と同義である。尚、ダイス(ダイプレート)とは、本体内部の材料を排出するための(複数)の貫通孔を有する板であり、粉砕装置の排出口付近に設置される。また、開口率とは、全貫通孔の平面視面積合計の、ダイスの平面視面積に対する割合を指す。開口率が大きいほど、本体内部の材料がせき止められにくく、排出されやすくなるため、本発明の効果がより顕著になる。
【0087】
図1及び2には、本発明に係る製造方法で用いるゲル粉砕装置200の一例が示されている。
図1は、このゲル粉砕装置200の一部切り欠き側面図であり、
図2は、このゲル粉砕装置200の拡大図(本体中央部を上から見た図)である。以下、
図1及び2を用いて、このゲル粉砕装置200の基本構成及び使用方法を説明する。
【0088】
図示される通り、このゲル粉砕装置200は、投入口204、本体208、2本の回転軸206、排出口210、駆動装置214及びガス投入口216を備えている。尚、本体208は、バレルとも称される。
図1においては、紙面の直交方向に沿って2本の回転軸206が設けられている。回転軸206は、本体208の長さ方向に延在している。回転軸206は、その一端が本体208を貫通して、駆動装置214に接続されている。図示されないが、このゲル粉砕装置200では、回転軸206の他端は
、軸受けベアリング
により本体208の後方に回転自在に支持されている。つまり、回転軸206はその両端で保持された形態となっている。但し、本発明に係る製造方法におけるゲル粉砕装置は、このような両軸持ちの形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限り、排出口210の後方に軸受けベアリングを有さない、所謂片軸持ち構造であってもよい。投入口204、ガス投入口216及び排出口210は、それぞれ、本体208に固定され、本体208の内部と連通している。
図1における左右方向は、本体208の長さ方向であり、回転軸206の軸方向である。図示されないが、本体208はジャケット構造を有している。
【0089】
図2には、ゲル粉砕装置200の本体208の一部が示されている。
図2は、
図1のゲル粉砕装置の拡大図(本体中央部を上から見た図)である。図示される通り、このゲル粉砕装置200では、2本の回転軸206が、本体208に内蔵されている。2本の回転軸206の外周には、それぞれ、粉砕手段212が設けられている。すなわち、粉砕手段212および回転軸206は、別体として構成されている。この実施形態では、回転軸206は、粉砕手段212として複数のディスクを有している。
図2における上下方向は、本体208の幅方向である。
図2における左右方向は、本体208の長さ方向であり、回転軸206の軸方向である。
【0090】
このゲル粉砕装置200を用いてゲル粉砕工程を実施する好適な一形態では、始めに、図示されないジャケットに熱媒体を循環させて、本体208を加温する。その後、駆動装置214(例えば、モーター)により各回転軸206を回転させる。回転軸206の回転にともなって、回転軸206及び粉砕手段212である複数のディスクが回転する。
【0091】
次に、含水ゲルを投入口204に連続的に投入する。この際、投入口204には、同時に水及び/又は水蒸気を投入してもよい。また、ガス投入口216には水蒸気及び/又は水を投入してもよい。水及び/又は水蒸気により、含水ゲル及び本体208が加温され、所定の温度に保温される。
【0092】
本体208に投入された含水ゲルは、排出口210に向かって移動する。
【0093】
含水ゲルは、本体208内において、粉砕手段212(即ち、複数のディスク)と接触する。含水ゲルは、回転する複数のディスクによる剪断作用によって細粒化される。含水ゲルは、粉砕手段212の剪断作用により、粉砕されつつ、排出口210に向かって移動する。排出口210では、所定の粒度に調整された粒子状含水ゲルが取り出される。
【0094】
ゲル粉砕装置の回転軸は、複数のディスクを有している。複数のディスクの形状は、同一であっても異なっていてもよいが、異なることが好ましい。ディスクの組合せは、例えば特許文献(特開2005-35212号公報)などを参考に含水ゲルの物性、得たい粉砕ゲルのサイズ等に応じて、適宜変更される。
【0095】
このような基本構成を備えたゲル粉砕装置の例として、例えば、二軸以上の複軸型混練機(ニーダー)が挙げられる。具体的には、2軸、3軸、4軸または8軸の混練機が挙げられる。このゲル粉砕装置は、生産効率の観点から連続式が好適に用いられる。具体的には、ゲル粉砕装置として、CKH型連続混練機(本田鐵工(株))、2軸押出機TEX((株)日本製鋼所)、2軸押出機TEXαIII((株)日本製鋼所)、コンティニュアースニーダー(CONTINUOUS KNEADER、(株)ダルトン)、KRCハイブリッドリアクタ(KRC HYBRID REACTER、(株)栗本鐵工所)、KRCニーダー(KURIMOTO-READCO CONTINUOUS KNEADER、(株)栗本鐵工所)、KEXエクストルーダー(KEX EXTRUDER、(株)栗本鐵工所)、KEXDエクストルーダー(KEXD EXTRUDER、(株)栗本鐵工所)、双腕型ニーダールーダー(KNEADER-RUDER、(株)モリヤマ)、2軸混練押出機TEX-SSG(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-CS(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-SX(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-DS(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-A(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-B(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-BS(東芝機械(株))4軸、8軸混練押出機WDRシリーズ((株)テクノベル)等が例示される。したがって、本発明の好ましい実施形態において、ゲル粉砕装置は、連続式の複軸型混練機である。
【0096】
(ゲル粉砕エネルギー)
ゲル粉砕エネルギー(Gel Grinding Energy,GGE)とは、国際公開第2011/126079号(米国特許出願公開第2013/026412号明細書、米国特許出願公開第2016/332141号明細書に対応)に記載され、含水ゲルをゲル粉砕する際、ゲル粉砕装置が必要とする単位質量(含水ゲルの単位質量)あたりの機械的エネルギーを意味し、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合、下記(式5)により算出される。
【0097】
ゲル粉砕エネルギー[J/g]={31/2×電圧×電流×力率×モーター効率}/{1秒間にゲル粉砕装置に投入される含水ゲルの質量} ・・・(式5)
ここで、力率及びモーター効率は、ゲル粉砕装置の稼働条件等によって変化する装置固有の値であり、0~1までの値をとる。ゲル粉砕装置が単相交流電力で駆動する場合、上記式中の31/2を1に変更することで算出される。上記(式5)において、電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲルの質量の単位は[g]である。本発明で適用される好ましいゲル粉砕エネルギー(GGE)は、15J/g以上であればよく、好ましくは25J/g以上、より好ましくは40J/g以上、さらに好ましくは50J/g以上、さらに好ましくは100J/g以上、最も好ましくは120J/g以上である。上限としては200J/g以下であればよい。
【0098】
(ゲル温度)
含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で連続的に粉砕する観点から、ゲル粉砕工程において、ゲル粉砕装置の投入口に投入される含水ゲル状架橋重合体の温度T1(以下、「投入口におけるゲル温度T1」または単に「ゲル温度T1」とも称する)は、50℃以上であることが好ましい。このゲル温度T1は、好ましくは、投入口に設置された温度計にて測定される。ゲル粉砕された含水ゲル同士の付着防止の観点から、このゲル温度T1は、60℃以上が好ましく、吸水性樹脂粉末の吸水速度をさらに向上させる観点から、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。過度の乾燥を抑制する観点から、ゲル温度T1は130℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましく、90℃以下が特に好ましい。これと同様の理由から、粉砕時のゲル温度は、好ましくは130℃以下である。なお、ゲル温度T1は、ゲル粉砕装置に投入される含水ゲル状架橋重合体について、重合熱で温度が上昇した含水ゲル状架橋重合体を保温する、あるいは得られた含水ゲル状架橋重合体を加温することにより、所望の範囲内に調節することができる。
【0099】
ゲル粉砕された含水ゲル同士の凝集抑制の観点から、ゲル粉砕装置から排出される粒子状含水ゲル状架橋重合体の温度T2(以下、「排出口におけるゲル温度T2」または単に「ゲル温度T2」とも称する)は、60℃~140℃が好ましく、70℃~130℃がより好ましく、80℃~125℃、85℃~120℃がさらにより好ましく、90℃~115℃が特に好ましく、100~115℃が最も好ましい。好ましくは、温度T2が係る温度範囲であり、かつ温度T1が前述した温度範囲となるように設定される。このゲル温度T2は、好ましくは、排出口に設置された温度計にて測定される。なお、ゲル温度T2は、ゲル粉砕装置の加熱手段及び/又は保温手段の設定温度、さらには、ゲル粉砕装置内部での含水ゲル状架橋重合体の滞留時間を適宜調整することにより、所望の範囲内に調節することができる。
【0100】
吸水性樹脂粉末の吸水速度をさらに向上させる観点から、排出口におけるゲル温度T2は、投入口におけるゲル温度T1より高いことが好ましい。差ΔT=(T2-T1)は、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは8℃以上であり、さらに好ましくは10℃以上である。また、差ΔT=(T2-T1)は、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは40℃以下であり、特に好ましくは35℃以下である。好ましくは、差ΔT=(T2-T1)が係る温度範囲であり、かつ、温度T1及び温度T2が前述した温度範囲となるように設定される。なお、ΔTは、上記のようにT1およびT2のそれぞれを調節することにより、所望の範囲内に調節することができる。
【0101】
(ゲル固形分率)
ゲル粉砕工程において、ゲル粉砕装置の投入口に投入される含水ゲルの固形分率(以下、ゲル固形分率と称する)は、後述する実施例に記載した測定方法によって求められる。ゲル粉砕された含水ゲル同士の凝集度合い、粉砕に要するエネルギー、乾燥効率及び吸収性能の観点から、ゲル固形分率は25質量%~75質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましく、35質量%~65質量%がさらに好ましく、40質量%~60質量%が特に好ましい。
【0102】
(ゲル流動化剤)
本発明に係る製造方法において、好ましくは、ゲル粉砕工程前及び/又はゲル粉砕工程中に、ゲル流動化剤が添加される。これにより、ゲル流動化剤を含む粒子状含水ゲルが、排出口から取り出される。ゲル流動化剤の添加によって、微細に粉砕されたゲル微粒子同士の強固な付着又は接着が抑制され、得られる吸水性樹脂の吸水速度が向上するという効果が得られる。また、後述する乾燥工程後の粉砕工程および整粒工程中の解砕ステップにおける負荷が低減され、微粉発生量が減少するという効果も得られる。得られる粒子状含水ゲルの各粒子が均一にゲル流動化剤を含むとの観点から、ゲル粉砕工程中の添加がより好ましく、含水ゲルの投入と同時の添加がさらにより好ましい。
【0103】
ゲル流動化剤の添加量は、含水ゲル又は粒子状含水ゲルの固形分率やゲル流動化剤の種類に応じて適宜設定される。その添加量は、含水ゲルの固形分に対して、好ましくは0.001質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~3質量%、更に好ましくは0.02質量%~2質量%、特に好ましくは0.03質量%~1質量%である。
【0104】
このゲル流動化剤の例として、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤、並びにこれらの低分子型又は高分子型の界面活性剤、高分子滑剤等が挙げられる。中でも、界面活性剤が好ましい。
【0105】
(界面活性剤)
具体的には、ゲル流動化剤に用いられる界面活性剤として、(1)ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステルなどのノニオン性界面活性剤、(2)カプリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン;ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルヒドロキシスルホベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、(3)ラウリルアミノジ酢酸モノナトリウム、ラウリルアミノジ酢酸カリウム、ミリスチルアミノジ酢酸ナトリウム等のアルキルアミノジ酢酸モノアルカリ金属などのアニオン性界面活性剤、(4)長鎖アルキルジメチルアミノエチル4級塩などのカチオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。中でも、吸水性樹脂粉末の吸水速度のさらなる向上の観点から、両性界面活性剤が好ましく、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインがより好ましい。
【0106】
(高分子滑剤)
本発明に係る製造方法において、本発明の目的が達成される範囲内で、以下に例示する高分子滑剤を、上記単量体水溶液や含水ゲルに添加することができる。
【0107】
上記高分子滑剤として、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレンオキサイド、側鎖及び/又は末端ポリエーテル変性ポリシロキサン等が挙げられる。これらの分子量(重量平均分子量)は、好ましくは200~200万、より好ましくは400~100万の範囲で適宜選択される。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
【0108】
また、ゲル流動化剤として、これらの高分子滑剤と上記界面活性剤とを併用してもよい。界面活性剤と高分子滑剤とを併用する場合、その合計添加量は、重合形態、単量体水溶液の組成及び含水ゲルの含水率に応じて適宜設定される。単量体水溶液に添加する場合には単量体成分に対する濃度として、含水ゲルに添加する場合にはその固形分に対して、両方に添加する場合には上記の合計として設定される。
【0109】
界面活性剤と高分子滑剤との合計添加量は、含水ゲルの固形分に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であり、好ましくは0.001質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上である。
【0110】
(表面張力)
ゲル流動化剤の種類と添加量とは、ゲル粉砕工程及び乾燥工程における粒子状含水ゲルの凝集抑制等を考慮して適宜調整される。得られる吸水性樹脂粉末の吸収性物品(おむつ)での実使用における戻り量等から、最終製品の吸水性樹脂の表面張力が過度に低下しない種類や量のゲル流動化剤が好ましい。例えば、吸水性樹脂の表面張力(生理食塩水中の吸水性樹脂の分散液の表面張力)が、好ましくは55mN/m以上、より好ましくは60mN/m以上、更に好ましくは65mN/m以上となるように、ゲル流動化剤の種類及び量が選択される。この表面張力はWO2015/129917に記載の方法で測定される。表面張力をかかる範囲内にできるゲル流動化剤としては、両性界面活性剤が例示される。
【0111】
(その他添加剤)
ゲル粉砕工程中、或いは、ゲル粉砕工程から次の乾燥工程に移行する間に、〔2-7-1〕に記載する表面架橋剤又は〔2-10〕に記載するその他の添加剤を添加してもよい。
【0112】
(粒子状含水ゲルの粒度)
本発明に係る製造方法において、製造される吸水性樹脂粉末の吸収速度の観点から、ゲル粉砕装置の排出口から排出される粒子状含水ゲル架橋重合体の固形分換算の質量平均粒子径d1は、3mm以下である。d1が3mmを超える場合には、後工程に供することができないため、吸水性樹脂粉末を得ることができない(後述の実験例5)。d1は、1μm~3mmが好ましく、10μm~3mmがより好ましく、30μm~2mmがさらに好ましく、50μm~1mmがさらにより好ましく、100μm~200μmが特に好ましい。ゲル粉砕装置の排出口から排出される粒子状含水ゲル架橋重合体の固形分換算の質量平均粒子径d1は、例えば、粉砕時の含水ゲル状架橋重合体の温度(例えば、粉砕装置本体内部の温度や本体内部に供給される水及び/又は水蒸気の温度によって制御される)、ゲル粉砕装置のディスク最大径に対する最小クリアランス、含水ゲルの投入速度、ゲル粉砕装置の回転軸の回転数、ゲル破砕エネルギー(GGE)等によって制御することができる。なお、粒子状含水ゲルの固形分換算の質量平均粒子径d1は、後述の物性測定方法(g)及び(h)により規定される。
【0113】
また、粒子状含水ゲルの粒度分布としては、固形分換算で、150μm未満の範囲にあるものが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、粒子状含水ゲルの粒度分布としては、固形分換算で、850μm未満の範囲にあるものが、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、上限は100質量%である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.2~1.0であり、より好ましくは0.2~0.8、更に好ましくは0.2~0.7とされる。
【0114】
(粒子状含水ゲルの固形分率)
ゲル粉砕装置の排出口から排出された粒子状含水ゲルの固形分率は、25質量%~75質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましく、35質量%~65質量%がさらに好ましく、40質量%~60質量%が特に好ましい。固形分率が上記範囲の粒子状含水ゲルを乾燥工程に供することにより、CRCが高く、かつ乾燥によるダメージ(水可溶分の増加等)が少ない粒状乾燥物が得られる。
【0115】
(粒子状含水ゲルの重合率)
ゲル粉砕装置から排出された粒子状含水ゲルの重合率は、上記ゲル粉砕装置に投入する前の重合率の範囲であり、ゲル粉砕工程でさらに重合を進行させてもよい。重合の進行の程度は、ゲル粉砕装置における加熱及び滞留時間、重合後の含水ゲル中の重合開始剤の残存量、任意の重合開始剤の後添加量等で適宜調整される。ゲル粉砕工程後の重合率は、ゲル粉砕前の重合率と同様に、後述する物性測定方法で規定される。ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルの重合率は、90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは、98~99.99質量%であり、理想的には、100%である。重合率が上記範囲の粒子状含水ゲルでは、乾燥時の凝集及び付着が回避される。
【0116】
〔2-5〕乾燥工程
本工程は、粒子状含水ゲル架橋重合体、好ましくは、ゲル流動化剤を含む粒子状含水ゲル架橋重合体を所望する固形分率まで乾燥させることで乾燥物を得る工程である。当該「固形分率」とは、乾燥減量(試料1.0gを180℃で3時間乾燥した際の質量変化)から算出される値を意味する。
【0117】
乾燥工程を経た乾燥物の固形分率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%~99.8質量%、更に好ましくは90質量%~99.7質量%、更により好ましくは92質量%~99.5質量%、特に好ましくは96質量%~99.5質量%、極めて好ましくは98質量%~99.5質量%の順である。乾燥後の固形分率が過度に高いと長時間の乾燥が必要であるだけでなく、乾燥後の物性劣化や着色が生じる恐れがある。また乾燥後の固形分率が低い場合、後述の整粒工程での生産性低下や、吸水倍率(CRC)の低下が生じる場合がある。乾燥工程後に後述の表面架橋工程を実施する場合、上記固形分率まで乾燥することで、より物性が向上するため好ましい。なお、乾燥物の含水率(=100-固形分率)は上記固形分率から求められる。
【0118】
本発明の乾燥工程における乾燥方法としては、特に制限はなく、静置乾燥、攪拌乾燥、流動層乾燥等が適宜用いられる。また、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水乾燥、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の乾燥方法が採用されうる。
【0119】
(乾燥装置)
乾燥工程で使用される乾燥装置としては、特に限定されず、伝熱伝導型乾燥機、輻射伝熱型乾燥機、熱風伝熱型乾燥機、誘電加熱型乾燥機等の1種又は2種以上が適宜選択される。バッチ式でもよく、連続式でもよい。また、直接加熱式でもよく、間接加熱式でもよい。例えば、通気バンド式、通気回路式、通気縦型式、平行流バンド式、通気トンネル式、通気攪拌式、通気回転式、流動層式、気流式等の伝熱型乾燥機が挙げられる。
【0120】
加熱手段としては、特に限定されないが、乾燥効率及び吸水性樹脂への熱的ダメージ低減の観点から、粒子状含水ゲルの加熱手段として、対流伝熱による直接伝熱及び/又は熱媒で加熱された乾燥機の加熱面(粒子状含水ゲルとの接触面、熱源部分)からの熱伝導による間接伝熱による加熱手段が好ましい。より好ましい加熱手段は、直接伝熱では通気加熱式、間接伝熱では外壁加熱式、管状加熱式である。
【0121】
乾燥工程において、乾燥機内部に、ガスを導入してもよい。該ガスとしては、特に限定されないが、例えば、空気、ドライエアー、窒素、水蒸気及びこれらの混合気体等が挙げられる。ガスはキャリアーガスとして作用し、乾燥時に発生した水蒸気を乾燥機外に排出することで乾燥を促進する。さらに、加熱したガスを使用する場合、ガスは熱媒としても作用し、さらに乾燥が促進する。好ましくは、窒素、水蒸気、及びこれらと空気との混合気体等が用いられる。水蒸気を含む混合気体(以下、高湿混合気体とも称される)を用いる場合、該乾燥機内部が低酸素状態となり、乾燥時の酸化や劣化が抑制される。その結果として、吸水性樹脂の性能向上と低着色を達成することができる。また、このガスの移動方向は、被乾燥物である粒子状含水ゲルの移動方向に対して、並流であっても向流であってもよく、これらが混ざったものでもよい。
【0122】
乾燥条件は、乾燥装置の種類及び粒子状含水ゲルの固形分率等により、適宜選択されるが、乾燥温度は100℃~300℃が好ましく、150℃~250℃がより好ましく、160℃~220℃がさらに好ましく、170℃~200℃が特に好ましい。上記範囲を下回る場合、乾燥時間が過度に長くなるため不経済である。上記範囲を上回る場合、吸水性樹脂の物性劣化や顕著な着色が生じるため好ましくない。また、乾燥時間は、好ましくは1分~10時間、より好ましくは5分~2時間、さらに好ましくは10分~120分、特に好ましくは20分~60分である。上記範囲を下回る場合、乾燥温度を過度に高くする必要があり、吸水性樹脂の物性劣化や顕著な着色が生じるため好ましくない。上記範囲を上回る場合、乾燥機が巨大化し、また処理量が低下するため不経済である。
【0123】
〔2-6〕粉砕及び分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られ乾燥物を粉砕及び/又は分級して、好ましくは特定粒度の吸水性樹脂粉末を得る工程である。なお、上記(2-4)ゲル粉砕工程とは、粉砕対象物が乾燥工程を経ている点で異なる。
【0124】
本工程は、〔2-7〕表面架橋工程の前、及び/又は、後に実施され、好ましくは〔2-7〕表面架橋工程の前に実施され、〔2-7〕表面架橋工程の前後の少なくとも2回実施されてもよい。
【0125】
本発明の粉砕工程で使用される機器(粉砕機)としては、例えばロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられ、必要により併用される。
【0126】
(粒度)
表面架橋前の吸水性樹脂粉末の重量平均粒子径(D50)は、吸水速度、加圧下吸水倍率等の観点から、好ましくは200μm以上であり、より好ましくは200μm~600μm、さらに好ましくは250μm~550μm、特に好ましくは300μm~500μmである。
【0127】
また、標準篩分級で規定される粒子径150μm未満の微粒子の含有量は少ない程よく、吸水性樹脂粉末全体に対して0~5重量%が好ましく、0~3重量%がより好ましく、0~2重量%がさらに好ましい。
【0128】
さらに、標準篩分級で規定される粒子径850μm以上の粗大粒子も少ない程よく、吸水速度等の観点から、吸水性樹脂粉末全体に対して0~5重量%が好ましく、0~3重量%がより好ましく、0~1重量%がさらに好ましい。
【0129】
また、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子の割合は、吸水速度、加圧下吸水倍率等の面から、吸水性樹脂粉末全体に対して90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、98重量%以上がさらに好ましく、99重量%以上が特に好ましい(上限は100重量%)。
【0130】
〔2-7〕表面架橋工程
本工程は、〔2-6〕粉砕及び分級工程を経て得られた吸水性樹脂粉末の官能基(特にカルボキシル基)と反応する表面架橋剤を添加して架橋反応させる工程であり、後架橋工程とも称される。本発明に係る製造方法では、本工程において、吸水性樹脂粉末に表面架橋剤を添加した後、加熱処理することにより、架橋反応させる。本工程は、表面架橋剤添加工程と熱処理工程とを有し、必要に応じて熱処理工程後に冷却工程を有していてもよい。
【0131】
〔2-7-1〕表面架橋剤添加工程
本工程は、上記吸水性樹脂粉末と、表面架橋剤とを混合することで、表面架橋工程に供する表面架橋剤を含有する吸水性樹脂粉末を調製する工程である。
【0132】
(表面架橋剤)
上記表面架橋剤として、吸水性樹脂の複数の官能基(好ましくは複数のカルボキシル基)と反応しうる表面架橋剤、好ましくは共有結合またはイオン結合、さらには共有結合しうる表面架橋剤が使用される。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールポリグリシジルエーテル、グリシドール、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物及びこれらの無機塩又は有機塩;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;ポリアジリジン等のアジリジン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン、ビスオキサゾリン、ポリオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミド、2-オキサゾリジノン等の炭酸誘導体;1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物及びこれらの多価アミン付加物;オキセタン化合物;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノブロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩又は炭酸塩等の多価金属化合物;等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。上記表面架橋剤の中でも、多価金属イオン、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、アルキレンカーボネート化合物から選択された1又は2以上が好ましい。
【0133】
(表面架橋剤溶液)
上記表面架橋剤の添加量は、吸水性樹脂の固形分に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。また、下限値としては、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。
【0134】
上記表面架橋剤の添加形態は、そのままでもよいが、添加の容易さからすると水や有機溶媒に溶かした溶液として添加するのが好ましい。この表面架橋剤溶液の濃度は好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。水及び有機溶媒から選択される溶媒の合計量は、吸水性樹脂の固形分に対して、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0.1質量%~8質量%、更に好ましくは0.5質量%~5質量%である。水と有機溶媒とを併用する場合、水が主成分であることが好ましい。
【0135】
水溶液として添加する場合、表面架橋剤と接触する時点での吸水性樹脂粉末の含水率に応じて水溶液濃度を調整することができるので好ましい。表面架橋剤の水に対する溶解度が低いために溶液とならない場合には、アルコール等の親水性溶媒を適宜添加して、均一溶液にすることが好ましい。
【0136】
〔2-6-2〕熱処理工程
本工程は、表面架橋剤を含有する吸水性樹脂粉末を加熱処理して、表面架橋された乾燥物を得る工程である。
【0137】
(表面架橋温度)
本工程では、表面架橋剤を含有する吸水性樹脂粉末を100℃以上に加熱することで吸水剤が得られる。好ましい最高温度は、表面架橋剤の種類により異なるが、100℃~250℃であり、より好ましくは120℃~230℃であり、さらに好ましくは150℃~210℃である。
【0138】
(時間)
熱処理工程の時間は、粒状乾燥物の含水率、表面架橋剤の種類、加熱装置の熱効率などから適宜設定すればよい。一応の目安としては、含水率が10質量%以下になるまで加熱すればよく、時間としては10分間~120分間の範囲であり、好ましくは30分間~90分間である。
【0139】
(加熱形態)
表面架橋工程に用いる加熱装置は特に限定されないが、加熱ムラが発生しにくいとの観点から、固体-固体接触による伝導伝熱形式で撹拌機構を有する加熱装置が好適に用いられる。
【0140】
〔2-7〕冷却工程
好ましくは、前述の乾燥工程又は表面架橋工程後、後述する整粒工程前に、乾燥物又は表面架橋された乾燥物を強制冷却して、所望の温度に調整する冷却工程を有している。冷却工程は、従来公知の冷却手段を用いて行うことができる。また、冷却温度は適宜調節することができる。
【0141】
〔2-8〕整粒工程
本工程は、表面架橋された乾燥物の粒度を調整する工程である。この整粒工程によって、粒子径又は粒度分布がより積極的に制御された吸水性樹脂粉末が得られる。
【0142】
好ましくは、整粒工程は、解砕ステップ及び/又は分級ステップを含む。解砕ステップは、表面処理工程を経て緩く凝集した粒状乾燥物を解砕機で解して粒子径を整えるステップである。分級ステップは、分級機を用いて、表面架橋された粒状乾燥物又は、それらの解砕物から、粗大粒子及び微粉を除去する工程である。
【0143】
解砕機としては、特に限定されず、例えば、振動ミル、ロールグラニュレーター、ナックルタイプ粉砕機、ロールミル、高速回転式粉砕機(ピンミル、ハンマーミル、スクリューミル)、円筒状ミキサー等を挙げることができる。乾燥物又は表面架橋された乾燥物へのダメージが少ないものが好ましく、具体的にはロールグラニュレーター(株式会社マツボー)、グラニュレータ(株式会社栗本鐵工所)やランデルミル(株式会社徳寿工作所)等が挙げられる。分級機としては、篩網を用いた振動式または揺動式の篩分級機が用いられる。
【0144】
〔2-9〕微粉リサイクル工程
「微粉リサイクル工程」とは、分級ステップで除去された微粉をそのまま、又は微粉を造粒した後に何れかの工程に供給する工程を意味する。好ましくは、微粉又は微粉造粒物を、乾燥工程以前の工程に投入して再利用する工程である。乾燥工程以前の工程としては、重合前の単量体水溶液、重合途中の含水ゲル、重合後の含水ゲルの粉砕工程、粒状含水ゲルの乾燥工程等が挙げられる。これらの工程に、微粉をそのまま添加してもよく、微粉を水で膨潤ゲル化ないし造粒してから添加してもよい。また、微粉とともに、水、架橋剤、水以外のバインダー(例;水溶性ポリマー、熱可塑性樹脂)、重合開始剤、還元剤、キレート剤、着色防止剤などを添加してもよい。
【0145】
好ましい微粉回収量は目的粒度により適宜設定される。
【0146】
〔2-10〕その他の工程
本発明に係る製造方法は、上述した各工程以外に、必要に応じて、粉砕工程、分級工程、再湿潤工程、造粒工程、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等を更に含んでもよい。
【0147】
(その他の添加剤)
上記任意に使用される表面架橋剤やゲル流動化剤以外にも、その他の添加剤として、乾燥前又は乾燥後に、高分子粉末(例えば、タピオカ酢酸デンプンなどのデンプン)、無機微粒子、粉塵防止剤、乾燥した吸水性樹脂(微粉)、通液性向上剤、還元剤(例えば亜硫酸ナトリウム)等の従来公知の成分を、更に加えることが可能である。
【0148】
〔3〕製品としての吸水性樹脂粉末の物性
本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂粉末(特に、表面架橋された吸水性樹脂粉末を吸水剤とも称する)については、該吸水性樹脂粉末又は吸水剤を吸収性物品、特に紙オムツに使用する場合に、下記の(3-1)~(3-7)に掲げた物性のうち、少なくとも1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、更に好ましくは全ての物性が、所望する範囲に制御されることが望まれる。以下の全ての物性が下記の範囲を満たさない場合、本発明の効果が十分に得られず、特に、紙オムツ一枚当たりの吸水剤の使用量が多い、所謂、高濃度紙オムツにおいて十分な性能を発揮しないおそれがある。
【0149】
〔3-1〕CRC(遠心分離機保持容量)
本発明の吸水性樹脂粉末(吸水剤)のCRC(遠心分離機保持容量)は、通常5g/g以上であり、好ましくは15g/g以上、より好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されず、より高いCRCが好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは70g/g以下、より好ましくは50g/g以下、更に好ましくは40g/g以下である。
【0150】
上記CRCが5g/g未満の場合、吸収量が少なく、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。また、上記CRCが70g/gを超える場合、尿や血液等の体液等を吸収する速度が低下するため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適さない。なお、CRCは、内部架橋剤や表面架橋剤等の種類や量を変更することで制御することができる。
【0151】
〔3-2〕含水率及び固形分率
表面架橋された吸水性樹脂粉末(吸水剤)の含水率は、好ましくは0質量%を超えて20質量%以下、より好ましくは1質量%~15質量%、更に好ましくは2質量%~13質量%、特に好ましくは2質量%~10質量%である。この含水率を上記範囲内とすることで、粉体特性(例えば、流動性、搬送性、耐ダメージ性等)に優れた吸水剤が得られる。また、表面架橋された吸水性樹脂粉末(吸水剤)の固形分率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%~99質量%、更に好ましくは87質量%~98質量%、特に好ましくは90質量%~98質量%である。
【0152】
〔3-3〕粒度
吸水性樹脂粉末(吸水剤)の質量平均粒子径d3(D50)は、好ましくは200μm以上、より好ましくは200μm~600μm、さらに好ましくは250μm~550μm、特に好ましくは300μm~500μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。また、粒径850μm超の吸水性樹脂粒子の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。この吸水剤は、粒子径150μm~850μmの粒子を、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含む。理想的には100質量%である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50、より好ましくは0.25~0.40、更に好ましくは0.27~0.35である。
【0153】
〔3-4〕AAP(加圧下吸水倍率)
吸水性樹脂粉末(吸水剤)のAAP(加圧下吸水倍率)は、好ましくは15g/g以上、より好ましくは20g/g以上、更に好ましくは23g/g以上、特に好ましくは24g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは30g/g以下である。
【0154】
AAPが15g/g未満の場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り量(「Re-Wet(リウェット)」と称する場合がある)が多くなるので、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。なお、AAPは、粒度の調整や表面架橋剤の変更等により制御することができる。
【0155】
〔3-5〕Vortex(吸水速度)
吸水性樹脂粉末(吸水剤)のVortex(吸水速度)は、好ましくは65秒以下、より好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下、更により好ましくは40秒以下、特に好ましくは30秒以下、最も好ましくは25秒以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上である。
【0156】
Vortexを上記範囲とすることで、短時間で所定量の液を吸収することができるようになる。紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用した際に、使用者が肌の濡れを感じる時間が少なくなり、不快感を与えにくくなるとともに、漏れ量も減少することができる。
【0157】
〔4〕吸水性樹脂粉末(吸水剤)の用途
吸水性樹脂粉末(吸水剤)の用途は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体用途が挙げられる。特に、高濃度紙オムツの吸収体として使用することができる。更に、吸水剤は、吸水時間に優れ、かつ粒度分布が制御されているので、上記吸収体の上層部に使用する場合に、顕著な効果が期待できる。
【0158】
また、上記吸収体の原料として、上記吸水剤と共にパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の吸水剤の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30質量%~100質量%、より好ましくは40質量%~100質量%、更に好ましくは50質量%~100質量%、更により好ましくは60質量%~100質量%、特に好ましくは70質量%~100質量%、最も好ましくは75質量%~95質量%である。
【0159】
上記コア濃度を上記範囲とすることで、該吸収体を吸収性物品の上層部に使用した場合に、この吸収性物品を清浄感のある白色状態に保つことができる。更に、該吸収体は尿や血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配がなされることにより、吸収量の向上が見込める。
【実施例】
【0160】
以下の実験例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの説明に限定解釈されるものではなく、各実験例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実験例も、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0161】
なお、以下に記載する「吸水性樹脂」は、乾燥工程を経た粒状乾燥物、表面架橋された粒状乾燥物又は吸水性樹脂粉末及び表面架橋された吸水性樹脂粉末を意味し、「含水ゲル」は、乾燥工程を経ていない含水ゲル状架橋重合体又は粒子状含水ゲル状架橋重合体を意味する。
【0162】
また、実験例で使用する電気機器(吸水性樹脂の物性測定用機器も含む)には、特に注釈のない限り、60Hzで200V又は100Vの電源を使用した。また、以下に記載する吸水性樹脂及び含水ゲルの諸物性は、特に注釈のない限り、室温(20℃~25℃)、相対湿度50%RH±10%の条件下で測定された。
【0163】
また、便宜上、「リットル」を「l」又は「L」、「質量%」又は「重量%」を「wt%」と表記することがある。微量成分の測定を行う場合、検出限界以下をN.D(Non Detected)と表記する場合がある。
【0164】
[物性測定方法]
(a)吸水性樹脂粉末のCRC(遠心分離機保持容量)
吸水性樹脂粉末のCRC(遠心分離機保持容量)を、EDANA法(ERT441.2-02)に準拠して測定した。
【0165】
(b)吸水性樹脂粉末の含水率及び固形分率
吸水性樹脂粉末の含水率を、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定した。なお、測定に際し、試料の質量を1.0gに、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更し、3時間乾燥した際の乾燥減量から、吸水性樹脂粉末の含水率及び固形分率を算出した。
【0166】
(c)吸水性樹脂粉末の質量平均粒子径(d3)
吸水性樹脂粉末の質量平均粒子径(d3)を、米国特許第7638570号のカラム27及び28に記載された方法に準拠して測定した。
【0167】
(d)含水ゲルの重合率
室温のイオン交換水1000gにサンプリングした含水ゲル1.00gを投入し(この時点で重合反応は実質的に停止した)、300rpmで2時間攪拌した後に濾過することにより、不溶分を除去した。上記操作で得られた濾液中に抽出された単量体の量を、液体クロマトグラフを用いて測定した。該単量体の量を残存モノマー量m(g)としたときに、下記(式8)にしたがって、含水ゲルの重合率C(質量%)を求めた。尚、含水ゲルをサンプリング後、直ちに重合率を測定することが好ましいが、サンプリングから測定までに時間がかかる場合には、強制冷却(ドライアイス、液体窒素、氷水との接触等)によって、重合停止操作をおこなう必要がある。
【0168】
C(質量%)=100×{1-m/(M×α/100)} ・・・ (式8)
ただし、(式8)中、Mは含水ゲルの質量(g)、αは含水ゲルの固形分率(質量%)を意味する。
【0169】
(e)含水ゲルの固形分率
含水ゲルの含水率を、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定した。なお、測定に際し、試料の質量を2.0gに、乾燥温度を180℃に、乾燥時間を24時間にそれぞれ変更した。具体的には、底面の直径が50mmのアルミカップに含水ゲル2.0gを投入した後、試料(含水ゲル及びアルミカップ)の総質量W1(g)を正確に秤量した。次に、上記試料を、雰囲気温度180℃に設定されたオーブン内に静置した。24時間経過後、該試料を上記オーブンから取り出し、総質量W2(g)を正確に秤量した。本測定に供された含水ゲルの質量をM(g)としたときに、下記(式10)にしたがって、含水ゲルの固形分率α(質量%)を求めた。
【0170】
α(質量%)=100-{(W1-W2)/M}×100 ・・・ (式10)。
【0171】
(f)粒子状含水ゲルの粒度
WO2016/204302に記載の方法に準拠して、粒子状含水ゲルの質量平均粒子径(D50)を測定した。
【0172】
即ち、温度20~25℃の含水ゲル(固形分率α(質量%))20gを、0.08質量%エマール20C(界面活性剤、花王株式会社製)を含む20質量%塩化ナトリウム水溶液(以下、「エマール水溶液」と称する)1000g中に添加して分散液とし、長さ50mm×直径7mmのスターラーチップを300rpmで16時間攪拌した(高さ21cm、直径8cmの円柱のポリプロピレン製、約1.14L容器を使用)。
【0173】
攪拌終了後、回転盤の上に設置したJIS標準の篩(内径20cm、篩の目開き;8mm/4mm/2mm/1mm/0.60mm/0.30mm/0.15mm/0.075mm)の中央部に、上記分散液を投入した。エマール水溶液100gを使用して全含水ゲルを篩上に洗い出した後、上部からエマール水溶液6000gを、篩を手で回転させながら(20rpm)、30cmの高さからシャワー(孔72個あき、液量;6.0[L/min])を使って注水範囲(50cm2)が篩全体にいきわたるよう満遍なく注ぐ作業を4回繰り返し、含水ゲルを分級した。分級した一段目の篩上の含水ゲルを約2分間水切り後、秤量した。二段目以降の篩についても同様の操作で分級し、水切り後にそれぞれの篩の上に残留した、含水ゲルを秤量した。なお、上記篩の種類は、含水ゲルの粒径によって適宜変更するものとした。例えば、含水ゲルの粒径が細かく、目開き0.15mmや0.075mmの篩で目詰まりが発生する場合には、より直径の大きいJIS標準篩(直径30cm、目開き0.15mm及び0.075mm)を使用した。
【0174】
各篩の上に残留した含水ゲルの質量から下記(式11)より、全含水ゲル中の割合(質量%)を算出した。水切り後の篩の目開きは下記(式12)に従い、含水ゲルの粒度分布を対数確率紙にプロットした。プロットの積算篩上%Rが50質量%に相当する粒子径を、固形分率α(質量%)の含水ゲルの質量平均粒子径(D50)とした。
【0175】
X(%)=(w/W)×100 ・・・ (式11)
R(α)(mm)=(20/W)1/3
×r ・・・ (式12)
尚、ここで、
X;分級、水切り後に各篩上に残留した含水ゲルの質量%(%)
w;分級、水切り後に各篩上に残留した含水ゲルのそれぞれの質量(g)
W;分級、水切り後に各篩上に残留した含水ゲルの総質量(g)
R(α);固形分率α(質量%)の含水ゲルに換算したときの篩の目開き(mm)
r;20質量%塩化ナトリウム水溶液中で膨潤した含水ゲルが分級された篩の目開き(mm)である。
【0176】
(g)粒子状含水ゲルの固形分換算の質量平均粒子径(d1)
WO2016/204302に準じて、上記(e)で求めた粒子状含水ゲルの固形分率α(質量%)及び上記(f)で求めた固形分率α(質量%)の含水ゲルの質量平均粒子径(D50)から、粒子状含水ゲルの固形分換算の粒子径(粒子状含水ゲルの乾燥物に固形分に換算した質量平均粒子径)d1を、下記(式14)に従って算出した。
SolidD50(d1)=GelD50×(α/100)1/3 ・・・ (式14)
尚、ここで、
GelD50:固形分率α(質量%)の粒子状含水ゲルの質量平均粒子径(μm)
α:粒子状含水ゲルの固形分率(質量%)
SolidD50(d1):含水ゲルの固形分に換算した質量平均粒子径(μm)である。
【0177】
(h)吸水性樹脂粉末のVortex(吸水時間)
吸水性樹脂粉末のVortex(吸水時間)は、以下の手順にしたがって測定した。先ず、予め調整された生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)1000質量部に、食品添加物である食用青色1号(ブリリアントブルー)0.02質量部を添加した後、液温を30℃に調整した。
【0178】
続いて、容量100mlのビーカーに、上記生理食塩水50mlを量り取り、長さ40mm、直径8mmのスターラーチップを用いて600rpmで攪拌しながら、吸水性樹脂粉末2.0gを投入した。吸水性樹脂粉末の投入時を始点とし、その吸水性樹脂粉末が生理食塩水を吸液してスターラーチップを覆うまでの時間をVortex(吸水時間)(単位;秒)として、測定した。
【0179】
(i)吸水性樹脂粉末のAAP(加圧下吸水倍率)
吸水性樹脂粉末のAAP(加圧下吸水倍率)を、EDANA法(ERT442.2-02)に準拠して測定した。なお、測定に当たり、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更した。
【0180】
(j)平均滞留時間
以下の方法にしたがって、ゲル粉砕装置における含水ゲルの平均滞留時間(秒)を求めた。
【0181】
始めに、後述する製造例1において、単量体水溶液に青色1号を1質量%(対単量体水溶液)を添加した以外は同様にして重合をおこなって、青色に着色した含水ゲルを別途作成した。次に、着色していない含水ゲルを用いて所定の投入スピードでゲル粉砕装置に投入して安定稼働させた。含水ゲルの投入スピードを変えることなく、含水ゲルの代わりに、青色に着色した含水ゲルを2±5秒間投入した後、引き続き、着色していない含水ゲルを同一のスピードで投入してゲル粉砕を続行した。青色の含水ゲルの投入開始時を0秒として、5秒毎に、ゲル粉砕装置から排出される粒子状含水ゲルをサンプリングした。
【0182】
サンプリングした含水ゲル15gを、チャック付きポリエチレン袋サイズA(株式会社生産日本社製、縦70mm、横50mm、厚み0.04mm)に入れた後、この袋の上に、底面が縦横80mmの正方形である錘(15kg)を5秒間載置して、シート状に成形した。その際、袋内に空気が噛みこまないよう注意した。続いて、分光式色差計SZ-Σ80COLOR MEASURING SYSTEM(日本電色工業株式会社製)を使用して、反射測定/標準白板No.1/30φ投光パイプの測定条件にて、得られたシート状のサンプルのb値を測定した。1つのサンプルにつき5回測定をおこない、平均値を算出した。尚、測定毎に錘を載置してサンプルの形状を整えた。5秒毎にサンプリングした含水ゲルについて、同様にb値を算出した。含水ゲルの青みが強いほど、b値は小さい(0未満かつ絶対値が大きい)。青みが最も強い(b値が最小となる)含水ゲルのサンプリング時間を、平均滞留時間(min)とした。なお、ゲル粉砕工程を複数回実施する場合、各回の平均滞留時間を測定し、その合計を平均滞留時間(min)とした。
【0183】
[製造例1]
アクリル酸300質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、脱イオン水273.2質量部からなる単量体水溶液を作成した。
【0184】
次に、38℃に調温した上記単量体水溶液を定量ポンプで連続供給した後、更に48質量%水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部をラインミキシングにて連続混合した。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液の液温は87℃まで上昇した。
【0185】
更に、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部をラインミキシングにて連続混合した後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、単量体水溶液を厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合時間3分間で連続的に重合をおこなって、帯状(シート状)の含水ゲル状架橋重合体(1a)を得た。得られた帯状の含水ゲル(1a)を、後述するゲル粉砕装置での処理スピードと投入間隔に合わせて切断し、幅数cmの短冊状含水ゲル(1b)を得た。例えば、ゲル粉砕装置の処理スピードを0.64kg/minとし、短冊状含水ゲルを2.5秒間隔で投入する場合、短冊状含水ゲル1枚当たりの質量を0.0267kgとする。尚、短冊状含水ゲル(1b)の重合率は98.5質量%、固形分率は53質量%であった。
【0186】
[実験例1]
<ゲル粉砕>
ゲル粉砕装置として、同方向に回転する2本の回転軸を内蔵する本体(バレル)を備えた2軸混練機を使用して、短冊状含水ゲル(1b)のゲル粉砕をおこなった。それぞれの回転軸には、主に粉砕手段である円板状ディスクが設けられている。バレルはジャケット構造であり、このジャケットを貫通し、本体内部に水蒸気を投入するガス投入口を有するものであった。
【0187】
始めに、ジャケットの内部に60℃の熱媒を循環させ、本体(バレル)内部の温度を60℃に保持した。その後、回転数40rpmに設定して、60℃に加温した短冊状含水ゲル(1b)を0.64kg/minの速度で、2軸混練機の投入口に投入した。その際、含水ゲル(1b)と同時に、60℃の水を投入口から供給し、さらに、0.6MPaの水蒸気をガス投入口から供給した。60℃の水の供給量は、短冊状含水ゲル(1b)の固形分に対して11.8質量%であった。0.6MPaの水蒸気の投入量は、短冊状含水ゲル(1b)の固形分に対して9.7質量%であった。ゲル粉砕に使用したディスクの直径Dはいずれも表1に記載のとおりであり、バレルとディスクとの間の最小クリアランスは6mm(ディスク直径Dの15%)であった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られる粒子状含水ゲル(A)の特性を表2に示す。なお、ゲル粉砕時のGGEは19J/gであった。
【0188】
<乾燥/表面処理>
得られた粒子状含水ゲル(A)を、熱風乾燥機を用いて乾燥した。この乾燥機は、目開き1.2mmの金網からなる籠(底面のサイズ30cm×20cm)を備えている。粒子状含水ゲル(A)500gを、この籠の底面に略均一になるように広げ、下方から190℃の熱風を30分間送風することにより、乾燥物を得た。その後、冷却した乾燥物をロールミルに供給して粉砕し、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない成分を採取して、吸水性樹脂粉末(AP1)を得た。
【0189】
次に、吸水性樹脂粉末(AP1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部及び脱イオン水2.0質量部からなる表面架橋剤溶液を噴霧して混合した。この混合物を200℃で35分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂粉末(AP2)を得た。表面架橋された吸水性樹脂粉末(AP2)の物性を表3に示す。
【0190】
[実験例2]
バレルとディスクとの間の最小クリアランスを2mm(ディスク直径Dの4.16%)に変更した以外は、実験例1と同様にして、粒子状含水ゲル(B)を得た。ディスク配置パターンは実験例1と同様にしたが、ゲル粉砕時のGGEは41J/gであった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られる粒子状含水ゲル(B)の特性を表2に示す。
【0191】
上記の粒子状含水ゲル(B)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(BP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(BP2)を得た。物性を表3に示す。
【0192】
[実験例3]
短冊状含水ゲル(1b)の加温温度(ゲル粉砕装置の投入口に投入されるゲル温度T1)を80℃に変更し、短冊状含水ゲル(1b)と同時に、10質量%ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液を投入口から供給し、供給する水の温度を90℃に変更し、回転軸の回転数を100rpmに変更し、ジャケットの熱媒温度を105℃に変更し(すなわち、本体内部の温度を105℃に保持し)、バレルとディスクとの間の最小クリアランスを1mm(ディスク直径Dの2%)に変更した以外は実験例1と同様にして、粒子状含水ゲル(C)を得た。なお、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの固形分としての供給量は、短冊状含水ゲル(1b)の固形分に対して0.15質量%であった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られた粒子状含水ゲル(C)の特性を表2に示す。なお、ゲル粉砕時のGGEは125J/gであった。
【0193】
上記の粒子状含水ゲル(C)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(CP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(CP2)を得た。物性を表3に示す。
【0194】
[実験例4]
短冊状含水ゲル(1b)の加温温度(ゲル粉砕装置の投入口に投入されるゲル温度T1)を70℃に変更し、水及び水蒸気を供給せず、回転軸の回転数を100rpmに変更し、ジャケットの熱媒温度を80℃に変更し(すなわち、本体内部の温度を80℃に保持し)、バレルとディスク間の最小クリアランスを1mm(ディスク直径Dの2%)に変更した以外は実験例1と同様にして、粒子状含水ゲル(D)を得た。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られた粒子状含水ゲル(D)の特性を表2に示す。なお、ゲル粉砕時のGGEは54J/gであった。
【0195】
上記の粒子状含水ゲル(D)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(DP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(DP2)を得た。物性を表3に示す。
【0196】
[実験例5]
短冊状含水ゲル(1b)の加温温度(ゲル粉砕装置の投入口に投入されるゲル温度T1)を80℃に変更し、短冊状含水ゲル(1b)を0.45kg/minの速度に変更し、供給する水の温度を90℃に変更し、バレルとディスク間の最小クリアランスを1mm(ディスク直径Dの2%)に変更し、回転軸の回転数を70rpmに変更し、ジャケットの熱媒温度を105℃に変更した以外は実験例1と同様にして、粒子状含水ゲル(E)を得た。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られた粒子状含水ゲル(E)の特性を表2に示す。なお、ゲル粉砕時のGGEは10J/gであった。
【0197】
上記の粒子状含水ゲル(E)について、実験例1と同様にして乾燥処理を行ったところ、粒子状含水ゲル(E)中に存在した10mm程度の粗大ゲルの乾燥が不十分となり、後工程のロールミル粉砕に供しうる乾燥物とはならなかった。
【0198】
[実験例6]
短冊状含水ゲル(1b)の温度を室温(20℃)に変更し、水及び水蒸気を供給せず、ジャケットの熱媒温度を室温(20℃)に変更した(すなわち、本体内部の温度を室温(20℃)に保持した)こと以外は実験例4と同様の操作をおこなった。その結果、過負荷のため装置が停止した。停止後に、バレルを開いて内容物を確認したところ、含水ゲル(F)は餅状に一体化しており、以降の製造工程に供しうるものではなかった。
【0199】
[実験例7]
短冊状含水ゲル(1b)と同時に、90℃の水を投入口から供給とする以外は、実験例4と同様にして、粒子状含水ゲル(G)を得た。ディスクのパターンは実験例4と同じであるが、ゲル粉砕時のGGEは48J/gとなった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られた粒子状含水ゲル(G)の特性を表2に示す。
【0200】
上記の粒子状含水ゲル(G)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(GP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(GP2)を得た。物性を表3に示す。
【0201】
[実験例8]
0.6MPa水蒸気の供給を行わなかったこと以外は、実験例3と同様にして、粒子状含水ゲル(H)を得た。ディスクのパターンは実験例3と同じであるが、ゲル粉砕時のGGEは157J/gとなった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られた粒子状含水ゲル(H)の特性を表2に示す。
【0202】
上記の粒子状含水ゲル(H)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(HP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(HP2)を得た。物性を表3に示す。
【0203】
[実験例9]
ジャケットの熱媒温度を60℃に変更した(すなわち、本体内部の温度を60℃に保持した)こと以外は実験例3と同様にして、粒子状含水ゲル(I)を得た。ディスクのパターンは実験例3と同じであるが、ゲル粉砕時のGGEは135J/gとなった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られた粒子状含水ゲル(I)の特性を表2に示す。
【0204】
上記の粒子状含水ゲル(I)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(IP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(IP2)を得た。物性を表3に示す。
【0205】
[実験例10]
短冊状含水ゲル(1b)と同時に、ポリエチレングリコール2000(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量2,000)の10質量%水溶液を投入口から供給した以外は、実験例2と同様にして、粒子状含水ゲル(J)を得た。なお、ポリエチレングリコール2000の固形分としての供給量は、短冊状含水ゲル(1b)の固形分に対して0.8質量%であった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られる粒子状含水ゲル(J)の特性を表2に示す。なお、ゲル粉砕時のGGEは38J/gであった。
【0206】
上記の粒子状含水ゲル(J)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(JP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(JP2)を得た。物性を表3に示す。
【0207】
[実験例11]
短冊状含水ゲル(1b)と同時に、KF-354L(信越化学工業株式会社製、側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサン)の10質量%水溶液を投入口から供給した以外は、実験例2と同様にして、粒子状含水ゲル(K)を得た。なお、KF-354Lの固形分としての供給量は、短冊状含水ゲル(1b)の固形分に対して0.05質量%であった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られる粒子状含水ゲル(K)の特性を表2に示す。なお、ゲル粉砕時のGGEは36J/gであった。
【0208】
上記の粒子状含水ゲル(K)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(KP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(KP2)を得た。物性を表3に示す。
【0209】
[実験例12]
短冊状含水ゲル(1b)の加温温度(ゲル粉砕装置の投入口に投入されるゲル温度T1)を80℃に変更し、短冊状含水ゲル(1b)の処理スピードを0.36kg/minの速度に変更し、短冊状含水ゲル(1b)と同時に、タピオカ酢酸デンプンBK-V(東海澱粉株式会社製)の粉体を投入口から供給し、回転軸の回転数を50rpmとし、水の供給量を短冊状含水ゲル(1b)の固形分に対して52.2質量%とし、ジャケットの熱媒温度を90℃に変更した(すなわち、本体内部の温度を90℃に保持した)こと以外は、実験例7と同様にして、粒子状含水ゲル(L)を得た。なお、タピオカ酢酸デンプンBK-Vの固形分としての供給量は、短冊状含水ゲル(1b)の固形分に対して25質量%であった。ゲル粉砕条件を表1に示す。粉砕して得られた粒子状含水ゲル(L)の特性を表2に示す。なお、ゲル粉砕時のGGEは30J/gであった。
【0210】
上記の粒子状含水ゲル(L)について、実験例1と同様にして乾燥/表面処理を行い、吸水性樹脂粉末(LP1)及び表面架橋された吸水性樹脂粉末(LP2)を得た。物性を表3に示す。
【0211】
表1中、ゲル温度T1は、ゲル粉砕装置の投入口におけるゲル温度を、ゲル温度T2は、ゲル粉砕装置の排出口におけるゲル温度を、それぞれ表す。表2中、d1は、粒子状含水ゲルの固形分換算の質量平均粒子径を表す。表3中、d3は、吸水性樹脂粉末の質量平均粒子径を表す。なお、実施例6を除くすべての実施例において、粉砕手段により含水ゲル状架橋重合体は50℃以上で連続的に粉砕されていた。また、実施例6を除くすべての実施例において、含水ゲルを投入する前に、本体内部は50℃以上に加熱されていた。
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
本発明に係る製造方法では、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を、複数軸を有する混練機を用いたゲル粉砕し、後工程に供しうるゲル粉砕物を得られた。さらに、得られる吸水性樹脂粉末も優れた吸収速度を示した(実験例1~4、7~12)。
【0216】
実験例1および2の対比から、バレルとディスクとの間のクリアランスを小さくすることで、粒子状含水ゲルの粒径が減少し、さらに吸水性樹脂粉末の吸水速度が向上することが確認された。
【0217】
実験例4および7の対比から、本体内部に水を供給しながらゲル粉砕を行うことで、粒子状含水ゲルの粒径は増大するものの、吸水性樹脂粉末の吸水速度が向上することが確認された。
【0218】
実験例3、8および9の対比から、本体内部に水蒸気を供給しながら、高温(100℃以上)でゲル粉砕を行うことで、吸水性樹脂粉末の吸水速度が向上することが確認された。
【0219】
実験例2、10および11の対比から、ゲル流動化剤を含水ゲルと同時に投入してゲル粉砕を行うことで、粒子状含水ゲルの粒径は増大するものの、吸水性樹脂粉末の吸水速度が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明によって得られる吸水性樹脂粉末は、紙オムツ等の衛生用品の吸収体用途に適している。
【0221】
本出願は、2020年9月25日に出願された、日本特許出願 特願2020-161054号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。
【符号の説明】
【0222】
200・・・ゲル粉砕装置
204・・・投入口
206・・・回転軸
208・・・本体(バレル)
210・・・排出口
212・・・粉砕手段
214・・・駆動装置
216・・・ガス投入口