(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】固形化粧料および固形化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20241128BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241128BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241128BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20241128BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/02
A61K8/73
A61Q1/04
A61Q1/10
(21)【出願番号】P 2022556798
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039060
(87)【国際公開番号】W WO2022079886
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】湊 彩や香
(72)【発明者】
【氏名】老川 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 希佳
(72)【発明者】
【氏名】山脇 竹生
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503604(JP,A)
【文献】特開2017-095452(JP,A)
【文献】特開2007-261949(JP,A)
【文献】特開2020-105096(JP,A)
【文献】特開2005-089337(JP,A)
【文献】特開平08-302400(JP,A)
【文献】特表2017-509361(JP,A)
【文献】Kailijumei, Lipstick Bright Surplus, 2016.09,Mintel GNPD [online],[retrieved on 2021.01.04], Internet:<URL:https://www.gnpd.com>, Accession No.4300049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 40/00-40/30
C11D 1/00-19/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体と基剤とを含む固形化粧料であって、
前記基剤が透明または半透明であり、
前記磁性体が非ランダムに配向して1つまたは複数のパターンを形成してな
り、前記パターンにおいて前記磁性体が前記化粧料の厚み方向に徐々に減少して配向し、前記パターンが化粧料表面において奥行きのある立体的なグラデーション状に視認される、固形化粧料 。
【請求項2】
融点または熱転移温度が25℃より大きく、硬度が5gf以上である請求項
1記載の固形化粧料。
【請求項3】
前記基剤がゲル化剤を含む請求項1
または2項記載の固形化粧料。
【請求項4】
前記ゲル化剤がパルミチン酸デキストリン、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ポリアミド‐8、水添野菜油トリ脂肪酸(C10-18)グリセリル、および水添ダイズポリグリセリズ(C15-23)アルカン、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマーの中から選ばれる少なくとも1種である請求項
3記載の固形化粧料。
【請求項5】
さらに粉末を含み、該粉末が化粧料全量に対して5質量%以下である請求項1~
4いずれか1項記載の固形化粧料。
【請求項6】
前記磁性体が基材と磁性材料を含むものであって、前記磁性材料が磁性体全量に対し3質量%以上である請求項1~
5いずれか1項記載の固形化粧料。
【請求項7】
前記基材が、アルミニウム、アルミナ、ガラス、天然マイカ、合成マイカ、タルクおよびシリカの中から選ばれる少なくとも1種である請求項
6記載の固形化粧料。
【請求項8】
磁性体と透明または半透明の基剤とを含む組成物を混合し、該混合した組成物を溶融し、該溶融組成物に磁場を印加して前記磁性体を非ランダムに配向させて1つまたは複数のパターンを形成させたのち固化する固形化粧料の製造方法であって、
前記パターンにおいて前記磁性体が前記化粧料の厚み方向に徐々に減少して配向し、前記パターンが化粧料表面において奥行きのある立体的なグラデーション状に視認され、前記溶融組成物のB型粘度計の粘度が300000mPa・s以下である固形化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形化粧料に関するものであって、詳細には磁性体を含む固形化粧料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料において、単一容器内に所望の文字、模様を形成させる方法としては、粉末化粧料の表面にプレス等により、所望の文字や摸様を形成する方法、容器内に仕切りを設け、この仕切りによって形成された各室毎に色調の異なる粉末をスラリー充填等により充填した後、仕切りを取り去って成型する方法、固形化粧料の表面に、この固形化粧料とは色調の異なる粉末を揮発性溶剤に分散させ、その分散液を所望の文字、模様等の輪郭に応じて付着させた後、溶剤を蒸発させて固形化粧料表面に所望の文字-模様等を形成させる方法、成型された粉末化粧料の表面に所望の文字、模様を施したスクリーンメッシュを置き、地の粉末化粧料とは色の異なる粉末をスクリーンメッシユの上より通過させて、地の粉末化粧料の上に所望の文字、模様を圧着させる製造方法等が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、立体像が現像された固形化粧料として、雲母に磁性材料を被覆した複合体を化粧料基剤中に配合して混合した後、この混合物の流動状態において磁場を印加し、次いで、上記混合物を非流動化して成形物とすることにより、磁束の強さと方向の制御によって形成される像が表面に現像された固形化粧料が記載されている。この固形化粧料は、磁場を利用することによって化粧料の表面に所望の文字、模様を施すことができ、しかも立体像として現像できるものである。
【0004】
特許文献2には、スティックあるいはキューペルで注型された製品の形態の固体組成物であって、外面を有しかつ磁化率がゼロではない1つまたは複数の磁性体を含有し、これらの磁性体が外面の少なくとも一部において固体組成物中で非ランダムに配向されることによって、外面上に1つまたは複数のパターンを形成してなる固体組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3279659号公報
【文献】特表2015-503604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や2に記載されている固形化粧料は、いずれも磁性体を利用して固形化粧料の表面(あるいは外面)に立体像やパターンを形成するものであり、外観を美麗にする観点から立体像やパターンが明確である必要がある。このため、色や濃淡を連続した階調で表現した、いわゆるグラデーションを形成することは、明確でなければならない立体像やパターンを不明瞭にすることにつながるため、そもそも考慮されていない。
【0007】
今般、発明者らが、透明基剤と磁性体を組み合わせて固形化粧料を製造したところ、従来の非透明基剤を使用した固形化粧料からは到底考えられない奥行きのある立体的なグラデーションを形成できることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は透明基剤を使用した磁性体を含む固形化粧料であって、奥行きのある立体的なグラデーションを形成することが可能な固形化粧料およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の固形化粧料は、
磁性体と基剤とを含む固形化粧料であって、
基剤が透明または半透明であり、
磁性体が非ランダムに配向して1つまたは複数のパターンを形成してなるものである。
【0010】
パターンにおいて磁性体が所定方向に徐々に減少して配向し、パターンが化粧料表面においてグラデーション状に視認されることが好ましい。
【0011】
所定方向は化粧料の厚み方向であってよい。
【0012】
本発明の固形化粧料は、融点または熱転移温度が25℃より大きく、硬度が5gf以上であることが好ましい。
【0013】
基剤はゲル化剤を含むことが好ましい。
【0014】
ゲル化剤はパルミチン酸デキストリン、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ポリアミド‐8、水添野菜油トリ脂肪酸(C10-18)グリセリル、および水添ダイズポリグリセリズ(C15-23)アルカン、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマーの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
本発明の固形化粧料がさらに粉末を含む場合、粉末は化粧料全量に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0016】
磁性体が基材と磁性材料を含むものである場合、磁性材料は磁性体全量に対し3質量%以上であることが好ましい。
【0017】
基材は、アルミニウム、アルミナ、ガラス、天然マイカ、合成マイカ、タルクおよびシリカの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
本発明の固形化粧料の製造方法は、磁性体と透明または半透明の基剤とを含む組成物を混合し、混合した組成物を溶融し、溶融組成物に磁場を印加して磁性体を非ランダムに配向させて1つまたは複数のパターンを形成させたのち固化する固形化粧料の製造方法であって、溶融組成物のB型粘度計の粘度が300000mPa・s以下である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の固形化粧料は、
磁性体と基剤とを含む固形化粧料であって、
基剤が透明または半透明であり、
磁性体が非ランダムに配向して1つまたは複数のパターンを形成してなるので、奥行きのある立体的なグラデーションを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は本発明の固形化粧料の第一の態様を示す正面図である。
【
図2】
図2は
図1のI-I線断面図(便宜的に磁気装置の配置も示している)である。
【
図3】
図3は本発明の固形化粧料の第二の態様を示す正面図である。
【
図4】
図4は
図3のII-II線断面図(便宜的に磁気装置の配置も示している)である。
【
図5】
図5は本発明の固形化粧料の第三の態様を示す模式図(便宜的に磁気装置の配置も示している)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の固形化粧料は、
磁性体と、磁性体と基剤とを含む固形化粧料であって、
基剤が透明または半透明であり、
磁性体が非ランダムに配向して1つまたは複数のパターンを形成してなるものである。 以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
[磁性体]
本発明の固形化粧料に含まれる磁性体は、基材と磁性材料を含むものであってもよいし、基材はなく磁性材料のみから構成(磁性材料が100質量%であるもの)、例えば板状の黒酸化鉄のみであってもよい。磁性体が基材と磁性材料を含むものである場合、例えば磁性体は基材に磁性材料を被覆したものであってもよいし、基材に非磁性材料(例えば、酸化チタン)を被覆し、その上にさらに磁性材料を被覆するような多層構造を形成していてもよい。
【0023】
磁性材料としては、鉄、マグネタイト、ヘマタイト、ネオジミウム、ホウ素、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、それらの合金および酸化物、例えば酸化鉄(Fe3O4)等が挙げられる。磁性体が基材と磁性材料を含む場合、磁性材料は、磁性体全量に対し3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらには15質量%以上であることが望ましい。磁性材料が磁性体全量に対し3質量%以上であることで、より立体的なグラデーションを形成することができる。
【0024】
磁性体が基材を含む場合、基材は、アルミニウム、アルミナ、ガラス、天然マイカ、合成マイカ、タルクおよびシリカの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
磁性体が例えば多層構造である場合、その他に含んでいてもよい非磁性材料としては、特に限定されるものではないが、酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、シリカ、酸化スズ、カーミン、紺青等が挙げられる。
【0026】
磁性体の大きさは、平均径0.5~30μmであることが好ましく、2~20μmがより好ましい。平均径が0.5μm以上であることで、パール感があり、立体的なグラデーションを形成することができる。磁性体の平均厚みは0.3μm以下であることが好ましく、板状比は10:1~500:1であることが好ましい。平均厚みが0.3μm以下であることで、また、板状比が10:1以上であることで、立体的なグラデーションを形成することができる。
【0027】
磁性体は市販品であってよく、メルク社製のコロロナブラックスターグリーン、コロロナブラックスターブルー、コロロナブラックスターレッド、コロロナブラックスターゴールド、コロロナマイカブラック、BASF社製のクロイゾネNuアンチークルージュフランベ、チミカNuアンチークカッパー等を好適に挙げることができる。
【0028】
磁性体の配合量はパターンの構成や数等によって異なるため一概には言えないが、固形化粧料全量に対し0.05~10質量%含むことが好ましく、より好ましくは0.1~5質量%である。磁性体が、固形化粧料全量に対し0.05質量%以上であることで、立体的なグラデーションを形成することができ、10質量%以下であることで、基剤とのバランスがよい化粧料とすることができる。
【0029】
(磁性体の配向)
磁性体は、非ランダムに配向して1つまたは複数のパターンを形成してなる。本発明の固形化粧料は基剤が透明または不透明であるので、固形化粧料の表面(外表面)から見たときに、磁性体が非ランダムに配向する状態が、パターンにおいてグラデーション状に視認される。
以下、図面を用いてさらに詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明の固形化粧料の第一の態様を示す正面図、
図2は
図1のI-I線断面図であり、
図2では便宜的に磁気装置の配置も示している。
図1に示すように、磁性体2は非ランダムに配向して複数(
図1では3つ)のパターン3を形成している。より詳細には、磁性体2は所定方向、すなわち化粧料底面(
図2に示す磁気装置4に配された磁石5に対応する化粧料底面部分)から放射状に徐々に減少して配向して複数のパターン3を形成する。第一の態様において、磁性体が徐々に減少して配向する所定方向の少なくとも一部は、化粧料の厚み方向となっている。そして、このパターン3は化粧料表面(
図1においては紙面の上側)から、奥行きのあるグラデーション状に視認される。
図1に示すパターン3は波状の磁石4を備えた磁気装置5により製造することができるが、パターンはこれに限定されず、葉脈状、斜線状、ドット状、チェック状、ヘリンボーン状、ペイズリー状等の連続模様、あるいは丸、四角、三角、ハート、クローバー、ダイヤ、スペード、星等の単独模様など、様々な模様とすることができる。
【0031】
図3は本発明の固形化粧料の第二の態様を示す正面図、
図4は
図3のII-II線断面図であり、
図4では、
図2と同様に便宜的に磁気装置の配置も示している。なおこの
図3および4において、
図1および2に示したものと同等の要素には同じ番号を付してあり、それらについては特に必要の無い限り説明を省略する(以下、同様)。
図3に示すように、磁性体2は非ランダムに配向して1つのパターン3を形成している。より詳細には、磁性体2は所定方向、すなわち化粧料底面から放射状に徐々に減少して配向して1つのパターン3を形成する。第二の態様においても、所定方向の少なくとも一部は化粧料の厚み方向となっている。そして、このパターン3は化粧料表面(
図3においては紙面の上側)から、奥行きのあるグラデーション状に視認される。
【0032】
図5は本発明の固形化粧料の第三の態様を示す模式図であり、
図2や
図4と同様に便宜的に磁気装置の配置も示している。
図5に示す固形化粧料は透明の容器に入ったボトルグロスである。
図5に示すように、パターン3は固形化粧料の側面に形成されており、磁性体2は少なくとも化粧料の厚み方向に徐々に減少して配向している。そして、このパターン3は化粧料の容器側面、換言すれば化粧料の外表面から奥行きのあるグラデーション状に視認される。このように、本発明において「パターンが化粧料表面においてグラデーション状に視認されるという」時の化粧料表面は、いわゆる化粧料を使用するときの上面に限られず、容器の側面のような化粧料の外表面をも含む意味である。なお、
図5ではボトルグロスの例を示しているが、ボトルのない、いわゆるスティック形状の固形化粧料にも適用可能である。
【0033】
上記第一の態様、第二の態様の固形化粧料は、いずれも固形化粧料1の底面から磁石4を備えた磁気装置5により、第三の態様の固形化粧料は固形化粧料1の側面から磁石4を備えた磁気装置5により、磁場を印加しているが、磁気装置の配置は例えば第三の態様の固形化粧料において角から磁場を印加してもよく、この場合には角を中心に磁性体が放射状に配向し、角から離れる方向に徐々に減少する。なお、第一の態様~第三の態様の固形化粧料では、磁気装置が化粧料の一面に配されている実施態様を示しているが、磁気装置は複数の面や角に配置してもよく(例えば、
図5において磁気装置を側面と角に配置)、そのように配置をすることで、さらに多様で複雑なグラデーションを表現することが可能である。
【0034】
[基剤]
本発明の固形化粧料に含まれる基剤は、透明または半透明の基剤(本明細書において単に透明基剤ともいう)である。ここで、透明または半透明とは、化粧料表面から非ランダムに配向して1つまたは複数のパターンを形成する磁性体を視認できる限り、化粧料の分野で一般的に用いられる意味での透明から半透明の範囲を包含する。より詳細には、基剤を光路長10mmのセルに充填し冷却固化させたものを25℃にて1時間放置した後、分光光度計で900nmの光の透過率が少なくとも50%以上のものを意味する。本発明の固形化粧料は基剤が透明または半透明であるので、非ランダムに配向して1つまたは複数のパターンを形成してなる磁性体を、化粧料表面からグラデーション状に視認することができる。
【0035】
本発明における基剤は、上記の透明または半透明という要件を満たすものであれば、油性成分のみからなる形態でも、水性成分を含む油中水型または油中水中油型等の乳化形態でもよい。また、透明性が確保できる範囲内で、無色であっても着色されていてもよい。
【0036】
基剤は溶融状態においてB型粘度計による粘度が300000mPa・s以下である。粘度が300000mPa・s以下であることで、磁性体の移動が良好となり、立体的なグラデーションを形成することができる。
【0037】
本発明の固形化粧料に含まれる基剤は、ゲル化剤を含むことが好ましい。
ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、グリセリル脂肪酸エステル、アミノ酸ゲル化剤、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸もしくはその塩、コポリマー、またはシリコーンワックスであることが好ましい。
【0038】
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンまたは還元デキストリンと高級脂肪酸とのエステルであり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。デキストリンまたは還元デキストリンは平均糖重合度が3~100のものを用いるのが好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸を用いるのが好ましい。具体的には、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等を挙げることができる。
【0039】
グリセリル脂肪酸エステルは、グリセリン、炭素数18~28の二塩基酸および炭素数8~28の脂肪酸(ただし、二塩基酸を除く)を反応させることにより得られるエステル化反応生成物であり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。具体的には、水添野菜油トリ脂肪酸(C10-18)グリセリル、水添ダイズポリグリセリズ(C15-23)アルカン、(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル-10等を挙げることができる。
【0040】
アミノ酸ゲル化剤は、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド(ジブチルラウロイルグルタミド)、N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド(ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド)、ポリアミド‐8、ポリアミド-3等を挙げることができる。
【0041】
ショ糖脂肪酸エステルは、その脂肪酸が直鎖状あるいは分岐鎖状の、飽和あるいは不飽和の、炭素数12から22のものを好ましく用いることができる。具体的には、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等を挙げることができる。
【0042】
脂肪酸は、常温で固形のものを使用することができ、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等を挙げることができる。また、脂肪酸の塩としては、これらのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等を挙げることができる。
【0043】
コポリマーとしては、例えば(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマー等を挙げることができる。
【0044】
シリコーンワックスは、通常化粧料に配合できる原料であれば特に限定されないが、高重合ジメチルポリシロキサン、高重合メチルフェニルシロキサン、高重合メチルビニルポリシロキサン等の高重合メチルポリシロキサン、高重合アミノ変性メチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーン(例えば、ステアリルジメチコン、アルキル(C30-C45)メチコン等)、ポリアミド変性シリコーン、長鎖アルコキシ変性シラン(ステアロキシトリメチルシラン等)等を挙げることができる。
【0045】
ゲル化剤の配合量は、ゲル化剤でゲル化した固形化粧料の硬度が5gf以上となるように調整することが好ましい。具体的な配合量としては、用いるゲル化剤の種類に応じて適宜変更することができるが、概ね、化粧料全量に対し2~20質量%であり、より好ましくは4~16質量%であり、さらには6~14質量%である。
【0046】
基剤は、磁場を印加する溶融状態の組成物におけるB型粘度計の粘度が300000mPa・sとなるように適宜液状油分を含んでいてもよい。液状油分は、ゲル化剤によって増粘(ゲル化)されて透明基剤を形成できるものであれば特に限定されず、化粧料に通常配合される常温(25℃)で液状の油分から選択することができる。代表例としては、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、および液体油脂から選択される液状油分が好ましく使用される。以下に具体例を例示するが、これらに限定されない。なお、液状油分は、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、水添ポリデセン、スクワラン、プリスタン、パラフィン、スクワレン、トリエチルヘキサノイン、α-オレフィンオリゴマー、イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質イソパラフィン等が挙げられる。
【0048】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ピバリン酸イソデシル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、クエン酸トリエチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。
【0049】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサンなどの環状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0050】
液体油脂としては、例えば、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0051】
液状油分の配合量は特に制限されないが、通常、透明基剤全量に対して20~99.5質量%、好ましくは50~90質量%の範囲で、目的とする化粧料の形態や硬度等に応じて適宜決定される。
【0052】
透明基剤には、ゲル化剤および液状油分に加えて、他の任意成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において配合することができる。他の任意成分としては、限定されないが、固形または半固形の油分、保湿剤、水性成分、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、高分子、界面活性剤、色素、染料、顔料、消泡剤剤(シメチコン等)、各種薬剤(トコフェロール等)、低級アルコール(炭素数6未満)、溶剤、香料などが例示される。
【0053】
固形または半固形の油分は、化粧料に配合可能なものであれば特に限定されない。
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0054】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル(POEはポリオキシエチレンの略、以下同様)、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、 POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0055】
炭化水素油(固形または半固形)としては、例えば、オゾケライト、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0056】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール等の分岐鎖アルコール等があげられる。
【0057】
保湿剤としては、多価アルコールおよび糖アルコール等が挙げられ、具体例としては、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0058】
[粉末]
本発明の固形化粧料がさらに粉末(粉末には磁性体は含まない)を含む場合、粉末は化粧料全量に対して5質量%以下であることが好ましい。粉末を化粧料全量に対して5質量%以下とすることで、奥行きのある立体的なグラデーションをより際立たせることができる。
【0059】
配合可能な粉末の具体例としては、限定されないが、タルク、カオリン、雲母(マイカ)、絹雲母(セリサイト)、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、焼セッコウ,リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)の無機粉末;ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末等)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)粉末、スチレン-アクリル酸共重合体樹脂粉末、べンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等の有機粉末;酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色系顔料;酸化鉄(べンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料;赤色202号、赤色205号、赤色220号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号等の有機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色202号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキ等の有機顔料;クロロフィル、β-カロチン等の天然色素が挙げられる。
粉末は1種でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
(固形化粧料の物性)
本発明の固形化粧料は融点または熱転移温度が25℃より大きく、硬度が5gf以上であることが好ましい。組成の構成にもよるが、融点または熱転移温度が25℃より大きく、また硬度が5gf以上であることで、化粧料を固形とすることができ、また移動した磁性体の保持をより良好なものとすることができる。固形化粧料の融点または熱転移温度はより好ましくは25~200℃、さらには30~200℃、特には45~200℃の範囲であってもよい。硬度はより好ましくは15~6000gfの範囲、さらには30~6000gfの範囲であってもよい。
【0061】
ここで、融点または熱転移温度は、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。また、硬度は試料(固形化粧料)にレオメーターのアダプターを浸入させた時の進入硬度であり、測定温度25℃で、11.3mmφのアダプターを20mm/minのスピードで上方から試料中に3mm進入させたときの応力のピーク値(単位はgf)である。
【0062】
(固形化粧料の製造方法)
本発明の固形化粧料の製造方法について、容器に中皿を備え、組成物が磁性体と透明基剤よりなる固形化粧料を例にとって説明する。まず、磁性体と透明基剤を混合する。混合した組成物を溶融し、溶融組成物を容器の中皿に充填する。中皿の底面から溶融組成物に磁場を印加する。このとき、溶融組成物(溶融状態)の粘度は10~300000mPa・sの範囲(B型粘度計)であり、好ましくは10~200000mPa・sの範囲であり、さらには10~100000mPa・sの範囲であることが望ましい。溶融組成物の粘度が10~300000mPa・sの範囲であることで、磁性体の移動が良好となり、立体的なグラデーションを形成することができる。磁場の印加によって磁性体を非ランダムに配向させて、1つまたは複数のパターンを形成させる。磁場を印加した状態で、放置あるいは冷却して溶融組成物を固化することで本発明の固形化粧料を製造することができる。
【0063】
磁場は、混合した組成物を溶融し基剤が溶融状態のときに容器底面(
図2や
図4の磁気装置4の位置)、あるいは側面(
図5の磁気装置4の位置)、あるいは容器の角等から印加する。得ようとする模様に対応した形状の磁石を、溶融状態にある基剤に近づけることによって、磁性体を非ランダムに配向させて1つまたは複数のパターンを形成することができる。磁場を発生する磁気装置は所望の模様となるように位置を調整することができる。磁場は、表面磁束密度が100~50000ガウスのゴム磁石、焼結磁石、電磁石等を用いることができる。磁場の印加時間は磁性体の配合量や種類、磁場の強さ等によって異なるが、所望のグラデーションが形成され、そのグラデーションが固化したところで印加を終了すればよい。印加時間は一概には言えないが、1秒~10分の範囲であることが好ましい。
【0064】
本発明の化粧料の製品形態は、特に限定されないが、例えば、口紅、リップグロス、アイシャドゥ等の固形化粧料の製品が挙げられる。
【実施例】
【0065】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
[実施例1~17、比較例1および2]
表1および2に示す処方で、磁性体と基剤と(色材を含む場合には色材と)を混合し、混合した組成物を100℃で溶融した。化粧料容器の中皿(アルミ)の底面に、表面磁束密度が5000ガウスの電磁石を備える磁気装置を配置した。溶融組成物を中皿に充填した後、磁場を60秒印加した。磁場を印加した状態で、溶融組成物を冷却し固形化粧料を得た。
【0067】
(基剤粘度の測定)
表1および2に示す処方の基剤について、溶融状態(100℃)における粘度をVDA型粘度計(芝浦システム株式会社 DIGITAL VISMETRON VDA)、ローターNo.6、回転数10rpm、1分間の条件で測定した。
【0068】
(立体感の評価)
製造した固形化粧料について、磁性体が形成したパターンを観察して以下の基準で評価した。
AA:はっきりとした立体感のあるグラデーションが見える
A:立体感のあるグラデーションが見える
B:ぼやけた立体感のあるグラデーションが見える
C:グラデーションが見えない
【0069】
表1および2に評価結果を処方とともに示した。
なお、表中の原料の製品名等の詳細は下記のとおりである。
・酸化鉄/マイカ*1:コロロナブラックスターレッド(黒酸化鉄0.52)(メルク社製)
・酸化鉄/マイカ*2:コロロナブラックスターゴールド(黒酸化鉄0.44)(メルク社製)
・マイカ/酸化チタン/酸化鉄*3:チミカNuアンチークシルバー(酸化鉄含有率0.15)(エンゲルハードコーポレーション製)
・マイカ/酸化チタン/酸化鉄*4:ジェムトーンアンバー(酸化鉄含有率0.10)(BASFコーポレーション製)
・マイカ/酸化チタン/酸化鉄*5:チミカブリリアントゴールド(酸化鉄含有率0.03)(BASFコーポレーション製)
・酸化鉄/マイカ/酸化チタン*6:クロイゾネNuアンチークルージュF(黒酸化鉄0.15)(メルク社製)
【0070】
【0071】
【0072】
表1の実施例1~5は磁性体の種類を変更したもの、実施例6~比較例1は色材の配合量を変更したものであるが、実施例1~7ではいずれも立体感のあるグラデーションが得られた。一方、比較例1は色材(粉末)が化粧料全量に対して5質量%であるため、化粧料の透明性が低下(半透明よりもさらに透明性が悪い状態)して化粧料表面からグラデーションが見えなかった。表2の実施例8~11は磁性体の配合量を変更したもの、実施例12~比較例2は溶融粘度を変更したものであるが、実施例8~17ではいずれも立体感のあるグラデーションが得られた。一方、比較例2は基剤の溶融時の粘度が398000mPa・sであるため、磁場を印加しても磁性体が動きづらくて磁性体がパターンを形成できず、化粧料表面からグラデーションが見えなかった。
【0073】
[実施例18~20および比較例3]
表3の処方で実施例1と同様にして、固形化粧料を得た。得られた化粧料について、硬度を測定するとともに、立体感を評価した。なお、硬度は以下のようにして測定した。
【0074】
(硬度の測定)
上記で得られた化粧料に対し、測定温度25℃で、11.3mmφのアダプターを2cm/minのスピードで上方から試料中に3mm進入させ応力のピーク値(単位はgf)を測定した。
【0075】
【0076】
表3に示すように、実施例18~20では立体感のあるグラデーションが得られたが、比較例3は固化後の基剤がやわらかい(固形ではない)ためグラデーションを保持することができなかった。
【0077】
[実施例21]
表4の処方で磁性体と基剤とを混合し、混合した組成物を200℃で溶融した。スティック形状の成形型(アルミ)の側面に、表面磁束密度が5000ガウスの電磁石を備える磁気装置を配置した。溶融組成物を成形型に充填した後、磁場を300秒印加した。磁場を印加した状態で、溶融組成物を冷却しスティック状の固形化粧料を得た。得られた化粧料は、その側面から立体感のあるグラデーションが視認された。
【0078】
【符号の説明】
【0079】
1 固形化粧料
2 磁性体
3 パターン
4 磁気装置
5 磁石