(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】FTIRデータ品質最適化
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20241128BHJP
【FI】
G01N21/3563
(21)【出願番号】P 2022561553
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 US2021026454
(87)【国際公開番号】W WO2021207542
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-04-08
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520005303
【氏名又は名称】ティーピーアイ コンポジッツ,インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミグナッカ,リチャード
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-133963(JP,A)
【文献】特開2004-211077(JP,A)
【文献】特開2019-219331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0143145(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0010961(US,A1)
【文献】WANG, et al.,Surface Modification of Bamboo Fibers to Enhance the Interfacial Adhesion of Epoxy Resin-Based Composites Prepared by Resin Transfer Molding,Polymers,2019年,Vol.11, No.2107,pp.1-16,https://doi.org/10.3390/polym11122107
【文献】ALLONGUE, et al.,Covalent Modification of Carbon Surfaces by Aryl Radicals Generated from the Electrochemical Reduction of Diazonium Salts,Journal of the American Chemical Society,1997年,Vol.119, No.1,pp.201-207,https://doi.org/10.1021/ja963354s
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 33/44
F03D 13/00 - F03D 13/40
B29C 70/00 - B29C 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンブレードの製作のための方法であって、
鋳型内に複合風力タービンブレード構造体を形成するステップであって、前記形成が、前記複合風力タービンブレード構造体の少なくとも第1の部分の全体にわたって樹脂を分散させることを含む、ステップ、
前記複合風力タービンブレード構造体の少なくとも前記第1の部分に表面処理を適用するステップであって、前記表面処理が、様々なサイズの粒子を生じさせ、前記複合風力タービンブレード構造体の前記第1の部分の表面積を増加させるアブレージョンを含む、ステップ、
フーリエ変換赤外(FTIR)分光計を提供するステップ、
前記複合風力タービンブレード構造体の少なくとも前記第1の部分に赤外光を照射するステップであって、前記照射が前記様々なサイズの粒子及び前記複合風力タービンブレード構造体の前記第1の部分に適用される、ステップ、
前記複合風力タービンブレード構造体の前記少なくとも前記第1の部分に吸収される赤外光の量を決定して、前記複合風力タービンブレード構造体の化学結合を測定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記表面処理がサンディング処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アブレージョンが、様々なサイズの複数の粒子を前記複合風力タービンブレード構造体の前記第1の部分上に提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記FTIR分光計が、前記赤外光の拡散反射を測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複合風力タービンブレード構造体の少なくとも前記第1の部分の前記照射が、複数のFTIR分光計によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のFTIR分光計が、前記複合風力タービンブレード構造体に対して相対運動するように構成される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のFTIR分光計が、互いに対して相対運動するように構成される、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
複数の入射赤外ビームが、前記複合風力タービンブレード構造体の複数部分に向かって同時に投射される、請求項
5に記載の方法。
【請求項9】
複数の入射赤外ビームが、前記複合風力タービンブレード構造体に向かって連続式で投射される、請求項
5に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの入射赤外ビームが、およそ650cm
-1~およそ5200cm
-1の波長で投射される、請求項
5に記載の方法。
【請求項11】
前記複合風力タービンブレード構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの前縁である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記複合風力タービンブレード構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの後縁である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複合風力タービンブレード構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの先端である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複合風力タービンブレード構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの根元部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記複合風力タービンブレード構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの外表面である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、米国特許法第119条の下で、2020年4月8日に出願された米国仮出願第63/007,080号及び同第63/007,089号に対する優先権の利益を主張し、各々の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、繊維強化複合構造体の製造のための注入プロセスに関する。レジントランスファーモールディング(RTM)ともしばしば称される注入プロセスは、乾燥繊維状材料を鋳型中に積み、液体硬化性樹脂を鋳型に注入又は移入して繊維状材料に樹脂組成物を含浸させ、これを引き続いて硬化させるプロセスである。しばしば、乾燥繊維状材料は、真空エンクロージャー(vacuum enclosure)、例えば真空が適用され得る鋳型の内側に配置され、これにより減圧が樹脂を繊維状材料に引き込むので注入が補助される。このプロセスは、真空アシストレジントランスファーモールディング(VARTM)と称される。
【0003】
特に、本開示は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法中に得られるデータ品質を最適化するための、複合構造体に対する表面修飾の方法を提供する。
【0004】
本明細書において開示されているシステム及び方法は、多種多様な軽量高強度構成要素-典型的には、比較的大きな構成要素、例えば、航空宇宙及び自動車の構成要素、風力タービン構成要素、例えば、ブレード及びスパー(spar)、並びに海洋構成要素を製造するために使用することができる。繊維状材料は、織られていても不織であってもよく、典型的にはガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維のものである。
【発明の概要】
【0005】
開示されている主題の目的及び利点は、次に続く記載において説明され、そこから明らかであり、同様に、開示されている主題の実行によって学ばれる。開示されている主題の追加の利点は、本明細書及び特許請求の範囲において並びに添付の図面から特に指摘される方法及びシステムによって実現及び達成される。
【0006】
これらの及び他の利点を達成するため、並びに具現化及び広く記載されている通りの開示されている主題の目的に従って、開示されている主題は、風力タービンブレードの製作のための方法であって、鋳型内に複合構造体を形成するステップであって、複合構造体が、複合構造体の少なくとも第1の部分の全体にわたって分散された樹脂を含む、ステップ;複合構造体の少なくとも第1の部分に表面処理を適用するステップ;フーリエ変換赤外(FTIR)分光計を提供するステップ;複合構造体の少なくとも第1の部分に赤外光を照射するステップ;複合構造体の少なくとも第1の部分に吸収される赤外光の量を決定して、複合体製品の化学結合を測定するステップを含む、方法を含む。
【0007】
一部の実施形態において、表面処理は、アブレージョン(摩耗)、例えばサンディング処理を含む。
【0008】
一部の実施形態において、アブレージョンは、様々なサイズの複数の粒子を複合構造体の第1の部分上に提供する。
【0009】
一部の実施形態において、表面処理は、潤滑剤、例えば鉱物油を複合構造体の第1の部分に適用することを含む。
【0010】
一部の実施形態において、FTIR分光計は、赤外光の拡散反射を測定する。一部の実施形態において、FTIR分光計は、赤外光の減衰全反射率を測定する。一部の実施形態において、FTIR分光計は、赤外光の外部反射を測定する。
【0011】
一部の実施形態において、照射は、複合体製品に対して相対運動するように構成することができる複数のFTIR分光計によって行われる。一部の実施形態において、複数のFTIR分光計は、互いに対して相対運動するように構成される。一部の実施形態において、複数の入射赤外ビームは、複合体製品の複数部分に向かって同時に投射される。一部の実施形態において、複数の入射赤外ビームは、連続式で複合体製品に向かって投射される。一部の実施形態において、少なくとも1つの入射赤外ビームは、およそ650cm-1~およそ5200cm-1の波長で投射される。
【0012】
一部の実施形態において、複合構造体の第1の部分は、風力タービンブレードの前縁(リーディングエッジ)、風力タービンブレードの後縁(トレーリングエッジ)、風力タービンブレードの先端、及び/又は風力タービンブレードの根元部分である。一部の実施形態において、複合構造体の第1の部分は、風力タービンブレードの外表面である。
【0013】
さらに、開示されている主題は、風力タービンブレードの製作のための方法であって、鋳型内に複合構造体を形成するステップであって、複合構造体が、複合構造体の少なくとも第1の部分の全体にわたって分散された樹脂及び硬化剤混合物を含む、ステップ;フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルモデルのリポジトリを提供するステップであって、各スペクトルモデルが材料タイプに対応する、ステップ;複合構造体の少なくとも第1の部分に赤外光を照射するステップ;複合構造体からの振動の第1のスペクトルを発生させるステップ;第1のスペクトルを第2のスペクトルと比較して、照射された複合構造体の材料タイプを決定するステップであって、第2のスペクトルがスペクトルモデルのリポジトリから取得される、ステップ;較正モデルのリポジトリを提供するステップであって、各較正モデルが、割り当てられた樹脂硬化剤混合物比又は硬化度の少なくとも1つに対応する、ステップ;材料タイプの決定に基づき較正モデルのリポジトリから較正モデルを選択するステップを含む方法を含む。
【0014】
一部の実施形態において、各較正モデルは、割り当てられた樹脂硬化剤混合物比に対応する。
【0015】
一部の実施形態において、各較正モデルは、硬化度に対応する。
【0016】
一部の実施形態において、照射は、フーリエ変換赤外FTIR分光計(単数)又は複数のFTIR分光計で行われる。一部の実施形態において、複数のFTIR分光計は、複合体製品に対して相対運動するように構成される。一部の実施形態において、複数のFTIR分光計は、互いに対して相対運動するように構成される。一部の実施形態において、複数の入射赤外ビームは、複合体製品の複数部分に向かって同時に投射される。一部の実施形態において、複数の入射赤外ビームは、連続式で複合体製品に向かって投射される。一部の実施形態において、少なくとも1つの入射赤外ビームは、およそ650cm-1~およそ5200cm-1の波長で投射される。
【0017】
一部の実施形態において、複合構造体の第1の部分は、風力タービンブレードの前縁である。一部の実施形態において、複合構造体の第1の部分は、風力タービンブレードの後縁である。一部の実施形態において、複合構造体の第1の部分は、風力タービンブレードの先端である。一部の実施形態において、複合構造体の第1の部分は、風力タービンブレードの根元部分である。一部の実施形態において、複合構造体の第1の部分は、風力タービンブレードの外表面である。
【0018】
前述の一般的記載及び以下の詳細な記載の両方は、例示であり、特許請求される開示されている主題のさらなる説明を提供すると意図されると理解されるべきである。
【0019】
この明細書に組み込まれるとともにその一部を構成する添付の図面は、開示されている主題の方法及びシステムを例示するとともにそのさらなる理解を提供するために含まれる。図面は、明細書と共に、開示されている主題の原理を説明するのに役立つ。
【0020】
様々な態様、特徴、及び本明細書に記載されている主題の実施形態の詳細な記載は、下に簡潔に記載されている添付の図面を参照して提供される。図面は例示であり、必ずしも正確な比率ではなく、一部の構成要素及び特徴は明確性のため誇張されている。図面は、本主題の様々な態様及び特徴を例示しており、本主題の1つ以上の実施形態又は実施例を全体又は部分的に例示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、CO2のFTIRスペクトルを示し、IR吸収データとして異なる分子振動がどのように見られるかを示す。
【
図2A】開示されている主題に従って、様々なフーリエ変換赤外サンプリング技法の概略を示す図である。
【
図2B】開示されている主題に従って、様々なフーリエ変換赤外サンプリング技法の概略を示す図である。
【
図2C】開示されている主題に従って、様々なフーリエ変換赤外サンプリング技法の概略を示す図である。
【
図2D】開示されている主題に従って、様々なフーリエ変換赤外サンプリング技法の概略を示す図である。
【
図2E】開示されている主題に従って、様々なフーリエ変換赤外サンプリング技法の概略を示す図である。
【
図2F】開示されている主題に従って、様々なフーリエ変換赤外サンプリング技法の概略を示す図である。
【
図2G】開示されている主題に従って、様々なフーリエ変換赤外サンプリング技法の概略を示す図である。
【
図3】開示されている主題の一実施形態に従って、アブレージョンが拡散反射の強度及び量をどのように増加させるかの例示的な視覚的表示を示す図である。
【
図4】開示されている主題に従って、試料をサンディング処理せずに拡散反射(DR)界面を用いて取得されたFTIRスペクトルの例示的状態を示す図である。
【
図5】開示されている主題に従って、試料をサンディング処理して拡散反射(DR)界面を用いて取得されたFTIRスペクトルの例示的状態を示す図である。
【
図6】開示されている主題に従って、減衰全反射率(ATR)界面を用いて取得されたFTIRスペクトルの例示的状態を示す図である。
【
図7】開示されている主題に従って、剥離層技法を介して樹脂から取得されたスペクトルの例示的状態を示す図である。
【
図8】開示されている主題に従って、そのままの複合体からの樹脂から取得されたスペクトルの例示的状態を示す図である。
【
図9】開示されている主題の一実施形態に従って、較正スキームのためのスペクトル前処理機能の例示的概略を示す図である。
【
図10】開示されている主題の一実施形態に従って、較正スキームのためのスペクトル範囲選択の例示的概略を示す図である。
【
図11】開示されている主題の一実施形態に従って、較正スキームのための因子選択の例示的概略を示す図である。
【
図12】開示されている主題の一実施形態に従って、較正スキームのための特性予測の例示的概略を示す図である。
【
図13】開示されている主題の一実施形態に従って、較正スキームについての特性残差プロットの例示的概略を示す図である。
【
図14】開示されている主題の一実施形態に従って、較正スキームについてのスペクトル残差プロットの例示的概略を示す図である。
【
図15】開示の一態様に従って、FTIR動作の例示的概略を示す図である。
【
図16】開示の一態様に従って、FTIR動作よりも前に行うことができるアブレージョンプロセスの例示的概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
開示されている主題の例示的な実施形態がここで詳細に参照され、その例は添付の図面に例示されている。開示されている主題の方法及び対応するステップは、システムの詳細な記載と併せて記載されている。
【0023】
本明細書において提示されている方法及びシステムは、複合構造体構築-例えば自動車構成要素、海洋構成要素及び構築構成要素などのために使用することができる。開示されている主題は、特に、風力タービンブレードの構築に適している。説明及び例示の目的で、限定する目的でなく、開示されている主題に従ったシステムの例示的な実施形態は、添付されている図に示されている。
【0024】
ブレードは、剛性、座屈耐性及び/又は強度の増加をブレードに提供するように構成された1つ以上の構造構成要素を含むことができる。例えば、ブレードは、ブレードの正圧面及び負圧面の対向する内表面に対してそれぞれ係合されるように構成された1対の縦方向(長手方向)に延在するスパーキャップを含むことができる。さらに、ビーム様の構成を形成するように、1つ以上の剪断ウェブがスパーキャップ間に配置されてもよい。スパーキャップは、一般に、風力タービンの動作中に一般にスパン方向(ブレードのスパン(翼幅)に平行な方向)でブレードに作用する屈曲応力及び/又は他の負荷を制御するように設計することができる。同様に、スパーキャップは、風力タービンの動作中に起こるスパン方向の圧縮に持ちこたえるように設計することもできる。
【0025】
本開示に従って形成される複合体構成要素は、液体又は流動可能な状態で用いることができるエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びビスマレイド樹脂などの様々な樹脂を使用して構成することができる。一部の実施形態において、硬化性流動性流体樹脂組成物は、活性化剤、又は硬化プロセスを可能にする硬化薬を含有することができ、活性化剤は、促進剤と一緒に頻繁に使用される。例示の目的であって限定の目的ではないが、本開示に従えば、ジシアンジアミドは、尿素ベースの促進剤と一緒に使用することができる活性化剤である。使用されるべき活性化剤及びエポキシ樹脂の相対量は、樹脂の反応性、並びに繊維状補強物の性質及び分量に依存する。
【0026】
樹脂組成物の粘度及び樹脂組成物による繊維状材料の含浸のために用いられる条件は、鋳型内の樹脂の流動が繊維状材料の所望の含浸度を与えるのを可能にするように選択される。この発明において使用される樹脂構成要素としては、以下に限定されないが、ポリエステル、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ビニルエステル、エポキシ、又は同様のものが挙げられる。硬化性流動性流体樹脂組成物は、樹脂構成要素及び活性化剤構成要素、例えば、促進剤又は硬化剤を含むことができる。適当なエポキシ樹脂は、単官能性、二官能性、三官能性及び/又は四官能性エポキシ樹脂から選択される2種以上のエポキシ樹脂のブレンドを含むことができる。
【0027】
本開示において使用される硬化性流動性流体樹脂組成物は、エポキシ樹脂構成要素及び1つ以上のアミンベースの活性化剤構成要素、例えば、ビスアニリンベースの活性化剤、例えば、メチレンビスアニリンベースの活性化剤を含有することができる。一部の実施形態において、硬化性流動性流体樹脂組成物におけるアミン基とエポキシ基との比は、製造プロセス中にモニタリングされ調整される。
【0028】
本明細書において開示されているシステム及び方法において用いられる繊維状補強材料は、任意の補強繊維、例えば、ガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維であってよく、織られていても不織であってもよい。材料のトウが用いられ得、これは、複数の個々の、例えば何千に達するフィラメントからできていてよい。トウ、及びトウ内のフィラメントは、一般に一方向性であり、個々のフィラメントは実質的に平行に整列されている。本開示が適用され得る繊維状補強材料は、砕かれた(すなわち、伸縮-破断された)、選択的に不連続又は連続的なフィラメントを含むことができるマルチフィラメントトウであってよい。フィラメントは、多種多様な材料、例えば、炭素、玄武岩繊維、黒鉛、ガラス、金属化ポリマー、アラミド及びそれらの混合物から作製することができる。構造繊維は、多様な一方向性の個々の繊維からできている個々のトウである。ハイブリッド又は混合繊維システムも用いられ得る。砕かれた(すなわち、伸縮-破断された)又は選択的に不連続な繊維の使用は、製品のレイアップ(積み重ね)を容易にするために用いることもできる。一方向性の繊維整列が好ましいが、他の形態も使用することができる。典型的な織物形態としては、単純な織物生地、ニット生地、あや織り生地及び朱子織りが挙げられる。不織又は非捲縮繊維層を使用することを考えることもできる。
【0029】
個々の層又は複合体セグメント「キット」及び/又は「レイアップ」は、互いに積み重ねられ、任意の適当な手段を使用して、例えば、メンバーを一緒に真空注入することによって、又は接着剤、セミプレグ材料、プリプレグ材料、若しくは同様のものを介してメンバーを一緒に結合することによって、一緒に接合することができる。
【0030】
本開示は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法データの最適化を提供するための新たなツール及び技法を導入する。
【0031】
フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、材料の化学結合の赤外(IR)吸収を測定する化学分析方法である。材料は、典型的には650cm-1~5200cm-1の波長[nm]又は波数[cm-1]の範囲にわたる赤外(IR)光で照射される。所与の材料について、その中の化学結合は全て、振動、屈曲(変角)及び伸縮周波数を含む特有の分子振動を有する。結合はそれらが振動する同じ周波数で照射されると光を吸収する。FTIR分光法の目的は、ある範囲の周波数にわたって、特定の周波数においていかなる量の光が吸収されるかを定量化して、検査されている材料の化学結合含有量についての情報を提供することである。
【0032】
図1は、CO2についてのスペクトル、及び異なる分子振動がIR吸収データとしてどのように観察されるかを示している。示されている通り、複合構造体の非対称(逆対称)伸縮又は部分について、分子振動は、2640cm
-1で起こると予測されたが、2345cm
-1で起こることが観察され、複合構造体の対称的伸縮又は部分について、分子振動は、1537cm
-1で起こると予測されたが、実際にはIR活性ではないことが観察され、屈曲(変角)モード(縮退)は、546cm
-1と予測されたが、実際には900cm
-1を超えて起こることが観察された。
【0033】
FITR分光計は様々な形態があり、全ては干渉計を使用して、材料に照射する光のビームを作り出し、スプリット(分割)し、焦点を合わせる。装置が異なるところは、試料との界面である。基本的な透過セルにおいて、IRビームは、干渉計を出て、試料が入ったキュベットを通過し、他の側の検出器で収集される。一部の実施形態において、ハンドヘルド分光計、例えば、全内容が本明細書によって参照により組み込まれる米国特許第6,031,233号に記載されている装置が用いられ得る。
【0034】
本開示の実施形態は、硬化性流動性流体樹脂組成物の化学組成又は化学量論を、例えば、分光計、例えば近赤外分光計の使用によって、モニタリングすることを可能にする。例示的な分光計は、読取りを行うためのプローブ及びプローブによって収集された読取りを分析するための分析器(別個の構成要素であってよい)を含む。特に適当な分光計としては、フーリエ変換赤外(FTIR)及びフーリエ変換近赤外FT-NIR分光計が挙げられる。適当な分光計の例としては、例示の目的であり限定の目的ではないが、Agilent Technologies 4300ハンドヘルドFTIR分光計が挙げられる。一部の実施形態において、FTIR分析は、ブレードスパンに沿った選択位置、例えば、等距離メートルマークで行われる。付加的に又は代替的に、分析される選択位置は、非線形式に割り当てることができる(例えば、根元において、ブレードの先端と比較してより高い密度又は勾配の分析が行われる)。本開示は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法データ分析、及び特に、エポキシ樹脂のFTIR分析のための多重の構成要素較正を提供するための新たなツール及び技法を導入する。
【0035】
硬化性流動性流体樹脂組成物の化学組成又は化学量論を分光計の使用によってモニタリングする本発明の実施形態において、好ましくは、樹脂、及び存在する場合は任意の付随的な活性化剤が混合される器具の一部、又は別個の構成要素を、硬化性流動性流体樹脂組成物が通過するときに、モニタリングが実施される。別々の構成要素の例は、硬化性流動性流体樹脂組成物が混合された後に通過する構成要素、例えば、フィードバックループの一部を形成する導管(例えば、チューブ又はパイプ)、又は混合された硬化性流動性流体樹脂組成物が通って繊維状補強材料へ供給される導管である。
【0036】
動作中、分光計は、好ましくは、構成要素部品(部分)の外側、例えば、外部又は内部のブレード表面上に配置されることで、硬化性流動性流体樹脂組成物が分光計のいずれの部品(部分)とも接触しない。分光計を外部に位置することにより、硬化性流動性流体樹脂組成物と分光計の任意の部品との間の接触が防止され、それによって、分光計、特に測定プローブの起こり得る損傷、及び/又は分光計の接触部品上に存在する材料による硬化性流動性流体樹脂組成物の汚染が回避される。一部の実施形態において、分光計は、安定化させる構造、例えば、分光計の任意の所望されない運動を阻害又は防止するシュラウド(shroud)によって、ガイド又は収容され得る。
【0037】
本開示の一部の実施形態において、複数の界面で使用することが可能なハンドヘルドFTIR分光計が用いられる。用いられる分光計は、IR光を材料から反射するいくつかの界面で使用することができる。減衰全反射率(ATR)は、試料中に光を反射するために結晶(ダイヤモンド、ゲルマニウム、サファイアなど)を使用する界面である。光が結晶を通過すると、それは試料界面で反射し、試料に侵入して結合と相互作用するエバネッセント波を生じる。ATRは、結晶と密接に接触することができる液体及び非晶質固体をサンプリングするために使用することができる。鏡面反射界面又は外部反射(ER)界面は、IRビームを表面上で直接、特定の角度で反射し、次いで、同じ角度で試料を出るビームを収集する。一部の実施形態において、入射ビームはおよそ45度で試料表面に接触し、拡散アタッチメントもおよそ45度の入射ビームで構成することができる。また、入射ビーム角度を固定して一定の角度を維持することができる。外部反射率は、反射性基板上の膜の分析のために用いることができる。拡散反射(DR)界面は、外部反射界面と同様の方式で光を表面から反射するが、拡散反射率界面は、1つの反射角ではなく全ての方向に散乱された光を収集する。拡散反射率界面は、粉末及び粗い固体の分析に最も適当である。
【0038】
付加的に又は代替的に、
図2A~Gに開示されている例示的な技法を含めて、複数のFTIRサンプリング技法を、本開示に従って用いることができる。これらの図は、より短い波長、例えば
図2Aに示されている紫外線についてとともに、増加する波長のスペクトル全体に適用可能なFTIRサンプリング技法を図示し、試料は、FT-IR分光計のビーム中に直接配置され、これは、より長い波長、例えばマイクロ波長までを範囲とする近赤外用途において用いられる。
【0039】
こうした構成は、多くのデジタルライブラリーと適合性のある高品質の代表的なスペクトルデータを提供し、スペクトルは、バルク試料組成、並びに試料厚さ-スペクトルの特徴/感受性の強度を制御する能力を表す。しかしながら、厚い(濃い)試料は完全に吸収する可能性があり薄くするか又は希釈する必要があり、また、元の材料が試料調製プロセス及び時間において破壊される場合があり、Beerの法則は単純な線形吸収試料に限定される。
【0040】
図2Bは、様々な材料についての例示的な透過範囲を示している。
図2C~Dは、減衰全反射(ATR)又は内部反射を図示し、ここで試料は内部反射エレメント(IRE)との密接に接触して置かれ、異なる屈折率で入射ビームの角度を変えることによって及び/又は異なる屈折率を有する結晶を使用することによって、どのように侵入深さを制御することができるかを図示している。
【0041】
図2E~Fは、大きい試料の直接測定を可能にする例示的な拡散反射(又は散乱反射)、代表的な試料スペクトル(表面測定ではない)、並びに感受性及び多用性を示す。ここで、拡散反射スペクトルは、それらの透過同等物とは異なるように見え、Kubelka-Munk変換によりスペクトルを透過のようなフォーマットにする。また、排除されなければ、鏡面反射構成要素はスペクトルを歪めることがあり、高い屈折率を有する試料のスペクトルは、歪みを低減するために、より高度な希釈を要する。これは、粉末化試料、液体/液体残渣、粗面固体/コーティング表面の測定、アブレージョン測定、並びに温度及び触媒の研究のために用いることができる。
【0042】
図2Gは、試料が鏡面反射アクセサリの上部に置かれている鏡面反射(又は鏡様反射)を例示している。ここで、入射ビーム角度は、反射ビーム角度に等しい。また、試料中へ透過された入射ビームの角度は、Snellの法則によって反射される。厚い(濃い)反射試料の鏡面反射スペクトルは、異常分散により歪められることがある。Kramers-Kronig変換は、スペクトルを吸収のようなフォーマットにし、ここで、膜厚は以下の等式によって定義される。
【0043】
【数1】
これは、薄膜組成物及び厚膜組成物並びに薄膜厚さの測定;反射基板上の単層の分析;反射率測定-コーティング、光学の構成要素/ガラス、EPI、ハードドライブ上の潤滑剤-において用いることができる。
【0044】
したがって、本開示は、物体の構造一体性を、例えば表面構造での又は表面構造の下の欠陥(空気ポケット、空隙、割れ目など)の存在について、非破壊的に評価することを提供する。一部の実施形態において、トランスミッターとしては、マイクロ波の放出を標的領域に向かって方向付けるための1つ以上のアンテナ、レンズなどを挙げることができる。トランスミッターは、そこから放出されるマイクロ波放射野を複合体製品(例えば、タービンブレード)の異なる標的領域に選択的に向けるために、機械的に調整可能及び/又は電気的に調整可能であり得る。トランスミッターによって放出されたマイクロ波は、複合体製品の表面に突き当たり、複合体製品の内部へ所定の深さまで表面に侵入する。
【0045】
本開示の一態様に従って、表面処理又は表面修飾(例えば、アブレージョン)を複合体構成要素の一部分に付与して、FTIR分光計と界面で接するように指定された表面上の粒子の大きさ及び/又は形状の多様性を生じさせる又は増加させる。例示的なアブレージョン(例えば、サンディング処理)プロセスは、
図16に示されており、アプリケーション1600によってタービンブレードの前縁に適用されている;これは、FTIR分光計適用に先立って行うことができ、
図15に示されている通り、2つの個別の構成要素(カメラ1400及びマイクロ波エミッター1402、ただし両方の構成要素は組み合わせて単一のハンドヘルド収容体にすることができる)として示されている。この表面処理は、DR FTIR界面から得られるデータ品質を最適化する。DR界面は、材料(風力タービンブレード構成要素の実施形態においては、例えばエポキシ/アミン複合体部品)の表面で反射される散乱光を利用する。DR界面は、十分な量の拡散光又は散乱光を提供する粉末及び粗い固体を分析するように設計されている。複合体部品を摩耗させる(アブレージョンする)プロセスを介して、表面上に様々な大きさの表面粒子を作り出し、維持することができる。また、表面処理プロセスは、IR波を反射するための
表面積をより大きくする。粒子は、表面で光を拡散的に反射するための媒体として作用し、反射光のDR界面信号を高め、その結果として吸収スペクトルの全体的品質を向上させる。
【0046】
図3に図示されている図表は、アブレージョンがどのように拡散反射の強度及び量を増加させるかの視覚的表示を提供する。同じ強度の入射ビームに対して、表面処理部からより多くの反射が生じ、また、反射ビームの強度は、より大きい矢印の長さによって示されている通り、サンディング未処理部よりも大きい。
【0047】
本開示は、従来技術のFTIR技法に対して多数の向上をもたらす。例えば、先行して複合体表面を摩耗することを含まない従来技法は、スペクトルが樹脂の化学構造についての関連情報を含まないFTIR結果を生じさせる。したがって、複合体部品の表面を処置するプロセス、例えば摩耗(アブレーディング)は、本明細書において開示されている通り、拡散反射を介して得られるデータの品質を向上させ、スペクトル特性を樹脂の硬化度に相関させることを可能にする。一部の実施形態において、得られたデータの品質を視覚検査によって評価して、よく定義されたピーク(例えば、鋭い変曲点)を有するスムースな曲線を同定することができる。付加的に又は代替的に、得られたデータの品質は、定量的に(例えば数学的に/統計的に)評価することができ、ここで、より高品質のデータは、結果の変動が少ないこと及び測定ごとに必要とされる走査の数によって証明される。
図4は、試料がサンディング処理されていないときにDR界面にて得られたスペクトルを図示しており、これらのピークは純粋なノイズであるとともに
図5において見られるブロードな高いピーク及びブロードな水酸化物ピークを覆い隠すので問題がある。示されている例示的な実施形態において、図示されている関連のスペクトル構成要素は、水酸化物ピーク(これはエポキシド基が重合中に開環するとき初期に生成され、水酸化物は架橋反応中に消費される)である。
図5は、試料を本開示に従って表面処理した(例えば、サンディング処理した)ときにDR界面にて得られたスペクトルを図示している。
【0048】
本開示は、全ての3つの界面、すなわち、エポキシ樹脂を分析するために使用することができる減衰全反射率(ATR)、外部反射(ER)及び拡散反射(DR)に対して利点をもたらす。例えば、液体樹脂を用いて作業する場合にはATRが優れており、液体を結晶の全体に流動させて湿らせることができ、非常に密な接触及び非常に高い品質データをもたらす。さらに、ATRの欠点は固体を分析しようとする場合に明らかである。なぜなら、表面が一貫して結晶と完全接触することができず、一部のエバネッセント波が試料に当たりそこなうからである。その結果として、スペクトル品質が悪くなり、例えば、
図6に示されているプロットにおいて見られるように、狭い帯域幅範囲で振幅が著しく変動する。
【0049】
試料と界面との間の媒体として鉱物油を使用することで高品質のスペクトルを提供することができるが、油は様々な設定(セッティング)において使用することが難しく、部品から流れ出し、汚染物質であり、それ自体がスペクトルを幾分邪魔する独自の幾つかのピークを有する。
【0050】
また、外部反射率は、複合体部品での最適な使用のためには設計されていない。なぜならば、部品は、それらの化学組成を考えると、本質的に反射的で
ないからである。したがって、ER界面は、反射媒体として作用する剥離層が複合体部品に適用されている場合に使用することができる-しかしながら、スペクトル品質はあまり高くなく、データは、樹脂ガラス転移温度(Tg)にあまり相関しない。
図7は、剥離層を介して樹脂から取得したスペクトルを示しており、
図8は、そのままの(bare)複合体で取得したスペクトルを示している。
【0051】
したがって、表面を摩耗させて反射粉末/粒子を発生させる表面処理を複合体部品に行うことで、複合体構成要素の優位なFTIR分析がもたらされる。
【0052】
本開示の別の態様に従えば、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、複合体製造のための品質管理ツールとして複数の用途を有する強力な分析方法である。こうした用途の一つは、ガラス転移温度(Tg)の予測である。熱硬化型樹脂が硬化するとき、熱硬化型樹脂は初期重合し、続いて、ポリマー鎖架橋する。架橋は、結合の三次元ネットワークを作り出し、固化して樹脂及び補強を一緒に保持する。温度が高くなると、熱硬化型樹脂はTgで硬質ガラス状状態から軟質ゴム状態へ相変化する。Tgの値は、樹脂中で生じた架橋の量に依存し、架橋が多いほどTgが高い。Tgは、典型的に、熱分析法、例えば示差走査熱量測定(DSC)を介して決定され、ここで、試料への熱流量を測定しながら樹脂の試料を加熱し;Tgにおいて試料への熱流量のステップ変化がある。しかしながらDSCは時間のかかるプロセスである。FTIRは、試料の結合含有量を測定し、架橋度、及び関連により樹脂システムのTgを測定するために使用することができる。
【0053】
本開示の別の態様に従えば、複合体品質管理におけるFTIRの別の用途は、樹脂及び硬化剤の混合比の決定である。これは、混合した直後の液体樹脂で又は硬化した部分(部品)について行うことができる。混合比が変化すると、硬化反応が異なって働く。反応性結合の吸光度ピークは、異なる混合比について異なるピーク高さ比を示すこととなる。
【0054】
ガラス転移温度Tgの終端及び混合比は、較正モデルを必要とする分析のカテゴリーに入る。較正ステップは、ピーク比及び屈曲度を決定し、局所的に(例えば、装置において、試料、例えばブレード、表面の走査点で)行うことができる。較正モデルは、スペクトルを目的の特性に関連付けるように作成される。較正モデルは、スペクトルの差異がどのように特性に関連するかについてのトレーニングセットとして考えることができる。
【0055】
本開示の別の態様に従えば、FTIR分光法は、材料スペクトルのライブラリーを構築するために用いることができる。一部の実施形態において、これらのライブラリーは、材料を同定するために使用することができ、例えば、未知の材料からのスペクトルをライブラリースペクトルのホストと比較することができる。一部の実施形態において、同じ比較を使用して、受け取った材料の検査のためにバッチを比較することができ、例えば新たな樹脂バッチが以前のバッチと同一であると確認することができる。付加的に又は代替的に、材料タイプ間又は同様のタイプの個別の試料間の比較中に起こる差異は、汚染(コンタミネーション)又は分解(劣化)についての情報をもたらし得る。
【0056】
本開示の別の態様に従えば、ライブラリーは、それらがスペクトルを特性と相関させず、スペクトル比較のために使用されるという点において、較正とは異なる。
【0057】
較正モデルを作成するプロセスは、モデル型、パラメータ及び特性の選択から開始する。モデル「型」は、主成分分析(PCA)、多重線形回帰(MLR)及び部分的最小二乗回帰(PLSR)を含む統計的方法である。レポート詳細を、外れ値検出基準と共に選択し、最終的に目的の特性を定義する。一部の実施形態において、レポート詳細は、スペクトル残差及び予測残差を含む。スペクトル残差を算出及びグループ化して、任意の1つのスペクトルが残りのデータセットと異なるかを示すことができる。スペクトル残差は、典型的には0.001+-0.0005のオーダーであり、外れ値は、例えば0.002以上の著しく高いスペクトル残差を有するものと認定することができる。特性残差を算出して、モデルが厳格な予測ウィンドウを有するかを決定することができる。マハラノビス距離は、データポイントがポイントの分布の平均からどのくらい近いかの関係である。これらのパラメータの各々又は全てを用いて、不十分なデータ品質、不適合の材料、不正確な特性定義などのようなものによる外れ値を検出することができる。
【0058】
トレーニングスペクトルを定義する例示的なプロセスにおいて、目的の特性が知られている試料からいくつかのスペクトルを取得し、特性、例えば混合比を使用して、較正に入れる各スペクトルを定義する。示されている例示的な実施形態において、選択された特性は、中間点Tg(midpoint Tg)である。カラム(左から右)は、データファイル(スペクトル)、較正(これは、較正モデルを構築するために使用することができる)、検証(例えば、一部のスペクトルを使用して、モデルを構築することなく、モデルを検証することができる)であり、最後のカラムは目的の特性、ここでは中間点Tgであり、これは既知の特性をインプットするポイントである。
【0059】
図9は、上に記載されている通り、スペクトルを定義した後に行われる例示的な数学的前処理機能を示している。一部の実施形態において、使用される機能は、スペクトルスムージング、微分係数、正規化などを含む。前処理の目的は、スペクトル差異が、ノイズ又は信号強度ではなく特性に関連するように、データを正規化することである。の未処理スペクトルは、同じプロット上に一緒に示された場合、典型的には、わずかに異なるベースライン傾斜及び吸収スケールを有し、また、それらは互いにオフセットしていることがある。一緒にプロットされる場合、スペクトルは「積み重なる(スタックする)」ことができ、スペクトル変化を視覚により明らかにすることができる。
【0060】
スペクトル範囲を選択し、スペクトルを分析する波長範囲を定義する。その例示的説明を
図10に示す。一部の実施形態において全体のスペクトルが選択され、他の実施形態において個々のセグメントのみ又は複数のセグメントが選択される。示されている例において、スペクトルは設定範囲(これは、較正モデルが将来のスペクトルを分析するために使用する範囲を定義するものとして選択される)で選択される。また、複数の範囲を選択することができ、これは、関連するスペクトル情報がない領域(例えば、2750~1750cm
-1)を回避することにおいて有益であり得る。
【0061】
本開示は、モデルが分析する因子の数をオペレーターが選択/制御することを可能にする。これは、様々な仕方で、例えば、予測された残差平方和(PRESS)値を最小化することによって行うことができる。この例示的な技法について提供されたプロットは、
図11に示されており、ここでいくつかの因子がPRESS分析のために選択され、最小PRESSスコアを有する因子が選択される。較正モデルを作成する場合、データを分析するためにある特定数の因子を選択することができる(例えば、8つの因子が選択された)。PLSRアルゴリズムは、最初、1つの因子をデータセットに適用し、この第1の因子に従ってデータにフィットするモデルをアウトプットする。各増分因子について、モデルは、より良好にデータセットにフィットし始める。PRESSスコアが8番目の因子で最小化されたならば、8つの因子が選択されることになる。pressスコアが再び増加し始めた場合、追加の因子はモデルにとって何の利益もないため、追加の因子を使用する価値がない。
【0062】
次に、スペクトルをモデルに通し、予測、特性残差、スペクトル残差、因子スコアリングなどを含めたいくつもの値を含むレポートが提供される。ここで、外れ値を同定してモデルから除去して、精度を高めることができる。一部の実施形態において、外れ値は、主にスペクトル残差及び予測残差に基づき定義することができる。例えば、スペクトルがその他のものからと大きく異なる場合、又は予測が実際の値からはるかに遠い場合である。レポートにおけるいくつかの値は、モデルの能力及び信頼性を表す。例示的なレポートは、統計的値、因子スコア、残差などを含む。
【0063】
本開示は、また、特性予測分析を含み、その例は、ガラス転移温度Tgの予測値対実際値のプロットを示す
図12に示されている。これは、モデルがどれくらい良く予測しているかを示す。例示的な実施形態における目的の主要な特性は、ガラス転移温度の、開始Tg及び中間点Tgの両方である(そして一部の実施形態において、混合比も目的の特性である)。付加的に又は代替的に、特性残差プロット(
図13を参照されたい)及びスペクトル残差プロット(
図14を参照されたい)を示すグラフ表示が提供され得る。
【0064】
本開示に従って、較正がこの技法によって完了すると、動作のために結果をFTIR分光計(例えば、Agilent Technologies 4300ハンドヘルドFTIR装置)にロードすることができる。較正は、化学組成における非常にわずかな変化を同定するために行うことができる。例えば、特定の混合比で架橋結合が進むとき、Tgを予測することができる。また、様々な混合比でのTgデータを含む較正を行うことによって、混合比を決定することができる。異なる混合比は、同じTgを発生させることができるが、化学組成がわずかに異なり、スペクトルにおいて異なるピーク高さ比及び幅比として現れる。
【0065】
したがって、本開示は、複合体部品を走査し、分子振動のスペクトルをアウトプットするハンドヘルドFTIR分光計を提供する。どの材料が現在走査されているのかを決定するために、スペクトルを定義済みの材料からのスペクトルのライブラリーと比較する。また、様々な材料のための較正モデルを、部分最小二乗2変数回帰を使用して編集する。これらの較正ファイルは、様々な硬化度での様々な混合比の試料からのスペクトルを含むことができる。ライブラリー比較により材料を確認した後、正確な較正ファイルを適用するように装置を制御することができ、正確な結果を確実にする。
【0066】
このシステム及び技法は、従来のFTIR分析の限界を克服する点において有利である-すなわち、樹脂の硬化後に複合体構成要素の混合比を正確に決定する方法を提供する。ハンドヘルド分光計は、走査されている部分のスペクトルに基づき較正ファイルを選択することができ、そうして、オペレーター誤差を排除する。本明細書に記載されている解決法は、ライブラリー及び較正モデルの組合せであり、これは、個々の較正(これは、オペレーターが適切な較正ファイルを選択し、各較正、Tg、次いで混合比などについて複数の試験を行うことを必要とする)を使用するよりも、データ獲得、試験及びレポートを簡便且つ迅速にする。本明細書において提示されている通り、組み合わせられたTg/混合比較正は、標準的なTg較正よりも厳密な実験手法を使用して開発されている。
【0067】
開示されている主題は、本明細書において、ある特定の好ましい実施形態の点から記載されているが、当業者は、開示されている主題に対して、その範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改善を行うことができることを認識するであろう。さらに、開示されている主題の一実施形態の個々の特徴が、本明細書において論じられている又は一実施形態の図面において示されており、他の実施形態においては示されていないことがあるが、一実施形態の個々の特徴は、別の実施形態の1つ以上の特徴又は複数の実施形態からの特徴と組み合わせることができることは明らかであるはずである。
本開示の態様として、以下のものを挙げることができる。
[1]
風力タービンブレードの製作のための方法であって、
鋳型内に複合構造体を形成するステップであって、前記複合構造体が、前記複合構造体の少なくとも第1の部分の全体にわたって分散された樹脂を含む、ステップ、
前記複合構造体の少なくとも前記第1の部分に表面処理を適用するステップ、
フーリエ変換赤外(FTIR)分光計を提供するステップ、
前記複合構造体の少なくとも前記第1の部分に赤外光を照射するステップ、
前記複合構造体の少なくとも前記第1の部分に吸収される赤外光の量を決定して、複合体製品の化学結合を測定するステップ
を含む方法。
[2]
前記表面処理がアブレージョンを含む、態様1に記載の方法。
[3]
前記表面処理がサンディング処理を含む、態様1に記載の方法。
[4]
前記アブレージョンが、様々なサイズの複数の粒子を前記複合構造体の前記第1の部分上に提供する、態様3に記載の方法。
[5]
前記表面処理が、前記複合構造体の前記第1の部分に潤滑剤を適用することを含む、態様1に記載の方法。
[6]
前記潤滑剤が鉱物油を含む、態様5に記載の方法。
[7]
前記FTIR分光計が、前記赤外光の拡散反射を測定する、態様1に記載の方法。
[8]
前記FTIR分光計が、前記赤外光の減衰全反射率を測定する、態様1に記載の方法。
[9]
前記FTIR分光計が、前記赤外光の外部反射を測定する、態様1に記載の方法。
[10]
照射が、複数のFTIR分光計によって行われる、態様1に記載の方法。
[11]
前記複数のFTIR分光計が、前記複合体製品に対して相対運動するように構成される、態様10に記載の方法。
[12]
前記複数のFTIR分光計が、互いに対して相対運動するように構成される、態様10に記載の方法。
[13]
複数の入射赤外ビームが、前記複合体製品の複数部分に向かって同時に投射される、態様10に記載の方法。
[14]
複数の入射赤外ビームが、複合体製品に向かって連続式で投射される、態様10に記載の方法。
[15]
少なくとも1つの入射赤外ビームが、およそ650cm
-1
~およそ5200cm
-1
の波長で投射される、態様10に記載の方法。
[16]
前記複合構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの前縁である、態様1に記載の方法。
[17]
前記複合構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの後縁である、態様1に記載の方法。
[18]
前記複合構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの先端である、態様1に記載の方法。
[19]
前記複合構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの根元部分である、態様1に記載の方法。
[20]
前記複合構造体の前記第1の部分が、前記風力タービンブレードの外表面である、態様1に記載の方法。