(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】集電体、該集電体を含む電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2022563959
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2020099426
(87)【国際公開番号】W WO2022000309
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張益博
(72)【発明者】
【氏名】胡喬舒
(72)【発明者】
【氏名】厳坤
(72)【発明者】
【氏名】張楠
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-257712(JP,A)
【文献】特開2012-230916(JP,A)
【文献】特開2010-277862(JP,A)
【文献】特開2007-335206(JP,A)
【文献】特開2010-170833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0190030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子基材と、導電性材料とを含む集電体であって、
前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は10Ω・cm~1000Ω・cmであり、前記集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~30Ω・cmであり、
前記導電性材料は、一次元導電性材料および二次元導電性材料のうちの少なくとも1種を含み、前記一次元導電性材料の長さ方向または前記二次元導電性材料の平面方向と集電体のZ方向との夾角は0°~30°であ
り、
前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率と前記集電体のZ方向における電子抵抗率との比は、5~4000であり、
前記導電性材料は、炭素材料であり、
前記炭素材料は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、導電性炭素繊維、導電性カーボンブラック、フラーレン、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含む、集電体。
【請求項2】
前記導電性材料の質量は、前記集電体の質量の10%~70%である、請求項1に記載の集電体。
【請求項3】
前記集電体の厚さは、2μm~500μmである、請求項1に記載の集電体。
【請求項4】
前記導電性材料の一端または両端は、前記高分子基材の表面に露出している、請求項1に記載の集電体。
【請求項5】
前記一次元導電性材料は、長さが0.1μm~200μmであり、直径が2nm~500nmであり、比表面積が5m2/g~2000m2/gである、請求項1に記載の集電体。
【請求項6】
前記二次元導電性材料は、長さが2μm~10μmであり、厚さが6nm~20μmであり、比表面積が0.5m2/g~1000m2/gである、請求項1に記載の集電体。
【請求項7】
前記集電体は、
(a)前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は50Ω・cm~1000Ω・cmであること、
(b)前記集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~1Ω・cmであること、
(c)前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率と前記集電体のZ方向における電子抵抗率との比は100~1000であること、
(d)前記導電性材料と前記Z方向との夾角は0°~10°であること、
(e)前記集電体の厚さは5μm~50μmであること、
(f)前記導電性材料の質量は前記集電体の質量の20%~60%であること、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の集電体。
【請求項8】
前記集電体は、
(a)前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は100Ω・cm~1000Ω・cmであること、
(b)前記集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~0.05Ω・cmであること、
(c)前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率と前記集電体のZ方向における電子抵抗率との比は200~600であること、
(d)前記集電体の厚さは5μm~20μmであること、
(e)前記導電性材料の質量は前記集電体の質量の40%~50%であること、
(f)前記集電体の引張強度は80MPa~100MPaであること、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の集電体。
【請求項9】
前記高分子基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン樹脂、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、およびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の集電体。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の集電体を備える、電気化学装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の電気化学装置を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学の技術分野に関し、特に、集電体、該集電体を含む電気化学装置および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、比エネルギーが大きく、動作電圧が高く、自己放電率が低く、体積が小さく、軽量である等の利点を有しており、電子応用の分野で幅広く応用されている。電気自動車や携帯電子機器の急速な発展に伴い、リチウムイオン電池の性能に対する需要がますます高まって、例えば、リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度、高い安全性、優れたサイクル性能等を有することが求められている。
【0003】
しかしながら、リチウムイオン電池は、その固有の電気化学システムによって制限されており、通常、単一の電池の動作電圧は5Vを超えることが困難である。しかし、リチウムイオン電池を実際に使用する中では、例えば電気自動車(EV,Electric vehicle)やエネルギー貯蔵システム(ESS,Energy Storage System)などの高電圧で使用する場合が多い。
【0004】
従来技術において、リチウムイオン電池の出力電圧を向上させるために、複数のリチウムイオン電池を外部の配線で直列に接続することが一般的であるが、この直列接続方法では、個々のリチウムイオン電池自体の容量差により、直列に接続されたリチウムイオン電池全体のエネルギー密度(ED)が低くなり、リチウムイオン電池の適用範囲を制限する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させるために、集電体、該集電体を含む電気化学装置および電子装置を提供する目的とする。具体的な技術案は、下記の通りである。
【0006】
本発明の第一の態様は、高分子基材と、導電性材料とを含む集電体を提供し、ここで、前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は10Ω・cm~1000Ω・cmであり、前記集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~30Ω・cmである。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記導電性材料の質量は、前記集電体の質量の10%~70%である。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記導電性材料は、一次元導電性材料および二次元導電性材料のうちの少なくとも1種を含み、前記一次元導電性材料の長さ方向または前記二次元導電性材料の平面方向と集電体のZ方向との夾角は0°~30°である。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率と前記集電体のZ方向における電子抵抗率との比は5~4000である。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記集電体の厚さは、2μm~500μmである。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記導電性材料の一端または両端は、前記高分子基材の表面に露出している。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記一次元導電性材料は、長さが0.1μm~200μmであり、直径が2nm~500nmであり、比表面積が5m2/g~2000m2/gである。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記二次元導電性材料は、長さが2μm~10μmであり、厚さが6nm~20μmであり、比表面積が0.5m2/g~1000m2/gである。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記集電体は、
(a)前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は50Ω・cm~1000Ω・cmであること、
(b)前記集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~1Ω・cmであること、
(c)前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率と前記集電体のZ方向における電子抵抗率との比は100~1000であること、
(d)前記導電性材料と前記Z方向との夾角は0°~10°であること、
(e)前記集電体の厚さは5μm~50μmであること、
(f)前記導電性材料の質量は前記集電体の質量の20%~60%であること、
のうちの少なくとも1つを満たす。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記集電体は、
(a)前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は100Ω・cm~1000Ω・cmであること、
(b)前記集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~0.05Ω・cmであること、
(c)前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率と前記集電体のZ方向における電子抵抗率との比は200~600であること、
(d)前記集電体の厚さは5μm~20μmであること、
(e)前記導電性材料の質量は前記集電体の質量の40%~50%であること、
(f)前記集電体の引張強度は80MPa~100MPaであること、
のうちの少なくとも1つを満たす。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記導電性材料は、炭素材料および金属材料のうちの少なくとも1種を含む。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記炭素材料は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、導電性炭素繊維、導電性カーボンブラック、フラーレン、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含む。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記金属材料は、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、および、ステンレス鋼およびその合金のうちの少なくとも1種を含む。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記高分子基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン樹脂、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、およびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種を含む。
【0020】
本発明の第二の態様は、少なくとも2つの電極組立体と、上記実施形態のいずれか1項に記載の集電体と、を含み、前記集電体は2つの電極組立体の間に位置している、電気化学装置を提供する。
【0021】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様に記載の電気化学装置を含む、電子装置を提供する。
【0022】
本発明において、「配向度」との用語は、一次元導電性材料の長さ方向または二次元導電性材料の平面方向と集電体のZ方向との夾角を意味する。
【0023】
「単方向導通比」は、((R2-R1)×H)/(R0×(L2-L1))で表し、ここで、R0はサンプルのX-Y面の両側に正対する2つの金属円柱電極間のインピーダンスであり、L1は、金属円柱電極がX-Y面に沿って一回目の平行移動を行った後の位置と該金属円柱電極の最初位置との距離であり、R1は、一回目の平行移動を行った後に2つの金属円柱電極間のインピーダンスであり、L2は、同一の金属円柱電極がX-Y面に沿って二回目の平行移動を行った後の位置と該金属円柱電極の最初位置との距離であり、R2は二回目の平行移動を行った後に2つの金属円柱電極間のインピーダンスであり、Hはサンプルの厚さである。
【0024】
本発明により提供される集電体、該集電体を含む電気化学装置および電子装置について、一方では、集電体における高分子基材は、耐酸化性、耐還元性、イオン絶縁性、機械的強度、および熱安定性に優れ、集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~30Ω・cmであるため、本発明の集電体を備えるバイポーラ電気化学装置は優れたZ方向における電子伝導性能を有し、さらに、集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は10Ω・cm~1000Ω・cmであるため、X-Y面内全体の電流密度がより均一に分布し、電極シートは異なる位置における充電および放電がより良い一致性を有し、電気化学装置の長期安定サイクルに有利になる。他方では、高分子基材の密度はより低いため、バイポーラ電気化学装置全体の不活性物質の含有量を低下することができ、それにより、バイポーラ電気化学装置のエネルギー密度を向上することができる。本発明の集電体は、従来の金属箔集電体に比べて、より低コストであり、特に大量生産に適している。さらに、本発明は、単一の電気化学装置の高電圧出力を達成し、従来の複数の電気化学セルを1つの電気化学装置に直列に接続することに比べて、一部の外装材料の体積と重量を節約し、それにより、エネルギー密度を向上させることができ、また電気化学装置の製造プロセス全体を簡素化し、製造コストを削減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下、本発明と従来技術の技術案とを明確に説明するために、実施例または従来技術に用いられた図面を簡単に説明する。明らかに、下記に記載の図面は本発明の実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、進歩性を有する努力をせずに、これらの図面に基づいて他の技術案を得ることができる。
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる集電体の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の別の一実施形態にかかる集電体の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態にかかる電気化学装置の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明における四探針法を用いてバイポーラ集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率を測定する模式図である。
【
図5】
図5は、本発明におけるバイポーラ集電体の単方向導通比を測定する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の目的、技術案および利点をより明確にするために、図面および実施例を参照し、さらに本発明を詳しく説明する。明らかに、本発明に記載された実施例は、すべての実施例ではなく、本発明の実施例の一部にすぎない。当業者であれば、進歩性を有する努力をせずに、本発明の実施例に基づいて得られた他の全ての技術案が本発明の保護範囲に含まれる。
【0028】
なお、本発明の具体的な実施形態では、電気化学装置としてリチウムイオン電池を挙げて本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限定されない。
【0029】
新型のリチウムイオン電池であるバイポーラリチウムイオン電池は、内部に複数の電池コアを直列に接続して1つのリチウムイオン電池を構成することにより、リチウムイオン電池の出力電圧を高める。このリチウムイオン電池に使用されている集電体はバイポーラ集電体である。バイポーラ集電体は、一方側が正極活物質に接触し、他方側が負極活物質に接触するため、集電体は耐酸化性や耐還元性を有することが求められる。バイポーラ集電体は通常にアルミニウム/銅複合箔などの金属箔である。しかし、従来のバイポーラリチウムイオン電池には通常に下記の問題がある。一方では、アルミニウム/銅複合箔の金属間の界面結合が悪いため、バイポーラリチウムイオン電池のサイクル安定性に不利であり、他方では、金属箔はより高価であるため、バイポーラリチウムイオン電池の製造コストが増加する。
【0030】
また、従来のバイポーラ集電体は、通常にCu箔とAl箔を直接に複合して得られた多層金属複合集電体を更に含んでもよい。このような集電体は一定の耐酸化性や耐還元性を有するが、金属間の界面結合が悪く、集電体の薄型化が困難であるなどの問題がある。
【0031】
上記に鑑み、本発明は、高分子基材と、導電性材料とを含む集電体を提供する。ここで、いかなる理論に制限されなく、前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は10Ω・cm~1000Ω・cmであることにより、集電体のX-Y面内全体の電流密度はより均一に分布し、電極シートが異なる位置における充電および放電はより良い一致性を有し、リチウムイオン電池が長時間で安定にサイクルすることに有利になる。前記集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~30Ω・cmであり、それにより、集電体はZ方向において優れた電子伝導性能を有することができる。
【0032】
本発明において、前記高分子基材はフィルムであってもよく、具体的には、高分子材料からなるフィルムであってもよい。高分子基材についての詳細な説明は後述する。前記Z方向は集電体の厚み方向を指し、前記X-Y面は前記Z方向に垂直な平面を指し、前記X-Y面内方向はZ方向に垂直でX-Y面に平行な任意の方向を指す。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記導電性材料の質量は前記集電体の質量の10%~70%であり、前記集電体の質量の20%~60%であることが好ましく、前記集電体の質量の40%~50%であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記導電性材料は、一次元導電性材料および二次元導電性材料のうちの少なくとも1種を含み、前記一次元導電性材料の長さ方向または前記二次元導電性材料の平面方向と集電体のZ方向との夾角は0°~30°であり、すなわち導電性材料の配向度は0°~30°である。
【0035】
本発明において、一次元導電性材料はストライプ状や棒状の導電性材料であってもよく、二次元導電性材料はシート状の導電性材料であってもよい。一次元導電性材料の長さ方向または二次元導電性材料の平面方向と集電体のZ方向との夾角は0°~30°である場合、集電体はZ方向において優れた電子伝導性能を有するとともに、集電体はX-Y面内方向においてより低い電子伝導性能を有することができ、それにより、集電体のX-Y面内全体の電流密度がより均一に分布し、電極シートが異なる位置における充電および放電はより良い一致性を有する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態にかかる集電体の模式図である。
図1に示すように、一次元導電性材料が高分子基材内に嵌め込むことができ、且つ、該一次元導電性材料の長さ方向と集電体のZ方向との夾角は0°~30°であり、0°~10°であることが好ましく、3°~10°であることがさらに好ましい。
【0037】
図2は、本発明の別の一実施形態にかかる集電体の模式図である。
図2に示すように、二次元導電性材料も高分子基材内に嵌め込むことができ、且つ、該二次元導電性材料の長さ方向と集電体のZ方向との夾角は0°~30°であり、0°~10°であることが好ましく、3°~10°であることがさらに好ましい。
【0038】
さらに、前記一次元導電性材料または二次元導電性材料の一端または両端は、前記高分子基材の表面に露出していることができる。
図1および
図2に示すように、集電体は、A面とB面として示される2つの面を有する。集流体のA面の任意の点Mにおいて導電性材料が高分子基材から露出することができ、この際、集流体のB面の他の点Nにおいて、同様に、導電材が高分子基材から露出することができ、且つ点Mと点Nは、高分子基材における導電性材料によって接続され、集電体のA面とB面との間の電子導通を実現すると考えられている。高分子基材における導電性材料は、高分子基材を貫通する一次元導電性材料または二次元導電性材料でもよく、互いに接続されている複数の一次元導電性材料または二次元導電性材料によってA面とB面との電子導通を形成してもよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率と集電体のZ方向における電子抵抗率との比は5~4000であることにより、集電体はZ方向において優れた電子伝導性能を有し、集電体はX-Y面内方向においてより低い電子伝導性能を有することができ、集電体のX-Y面内全体の電流密度が均一に分布していることができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、集電体の単方向導通比は5.4~4240であることにより、集電体はZ方向において優れた電子伝導性能を有し、集電体はX-Y面内方向においてより低い電子伝導性能を有することができ、集電体のX-Y面内全体の電流密度が均一に分布していることができる。
【0041】
本発明において、集電体の厚さは、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されず、本発明の一実施形態において、集電体の厚さは2μm~500μmであり、5~50μmであることが好ましく、5μm~20μmであることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は50Ω・cm~1000Ω・cmであることが好ましく、100Ω・cm~1000Ω・cmであることがさらに好ましく、それにより、集電体のX-Y面内全体の電流密度がより均一に分布することができる。前記集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~1Ω・cmであることが好ましく、0.01Ω・cm~0.05Ω・cmであることがさらに好ましく、それにより、集電体はZ方向において優れた電子伝導性能を有することができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率と集電体のZ方向における電子抵抗率との比は100~1000であることが好ましく、200~600であることがさらに好ましい。それにより、集電体はZ方向においてより優れた電子伝導性能を有し、集電体はX-Y面内方向においてより低い電子伝導性能を有することができ、集電体のX-Y面内全体の電流密度が均一に分布していることができる。
【0044】
本発明において、一次元導電性材料のサイズは、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されず、例えば、一次元導電性材料は、長さが0.1μm~200μmであり、直径が2nm~500nmであり、比表面積が5m2/g~2000m2/gである。
【0045】
例えば、一次元導電性材料において、一般的に、カーボンナノチューブは、直径が2nm~30nmであり、長さが0.1nm~200μmであり、比表面積が100m2/g~2000m2/gであり、導電性炭素繊維(VGCF)は、直径が30nm~500nmであり、長さが0.5μm~50μmであり、比表面積が5m2/g~100m2/gである。
【0046】
本発明において、二次元導電性材料のサイズは、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されず、例えば、二次元導電性材料は、長さが2μm~10μmであり、厚さが6nm~20μmであり、比表面積が0.5m2/g~1000m2/gである。
【0047】
例えば、二次元導電性材料において、グラフェンの平均長さが50nm~20μmであり、シート層は、一般的に1層~15層であり、厚さに換算すると、厚さが0.4nm~6nmであり、比表面積が10m2/g~1000m2/gであり、導電性黒鉛シートは、厚さが0.3μm~20μmであり、直径が2μm~10μmであり、比表面積が0.5m2/g~10m2/gである。
【0048】
本発明において、導電性材料は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されず、例えば、前記導電性材料は、炭素材料および金属材料のうちの少なくとも1種を含むことができる。また、本発明の導電性材料は優れた導電性を有し、その電子抵抗率は一般的に10-4Ω・m未満である。
【0049】
本発明において、炭素材料は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されず、例えば、前記炭素材料は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、導電性炭素繊維、導電性カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)、フラーレン、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0050】
本発明において、金属材料は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されず、例えば、前記金属材料は、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、および、ステンレス鋼およびその合金のうちの少なくとも1種を含むことができる。さらに、上記金属材料は、一次元材料であってもよく、二次元材料であってもよく、その物理的な形状を変更すればよい。例えば、一次元金属材料は、ストライプ状のNi、Tiなどの金属であってもよく、二次元金属材料は、シート状(または平面状)のNi、Tiなどの金属であってもよい。
【0051】
本発明において、高分子基材は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されず、例えば、前記高分子基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン樹脂、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、およびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種を含むことができる。前記高分子基材自体がイオン不活性を有し、すなわちイオンが前記高分子基材を通過しにくいことが理解されている。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記集電体の引張強度は80Mpa~100Mpaであることにより、前記集電体の機械的強度が優れており、該集電体を含むバイポーラリチウムイオン電池が良好な安全性を有している。
【0053】
本発明の集電体は、従来の集電体に比べて以下の有益な効果を有する。
【0054】
本発明における集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率は10Ω・cm~1000Ω・cmであり、集電体のZ方向における電子抵抗率は0.01Ω・cm~30Ω・cmであるため、本発明の集電体を備えるリチウムイオン電池はZ方向における優れた電子伝導性能を有し、且つX-Y面内全体の電流密度がより均一に分布し、さらに電極シートは異なる位置における充電および放電がより良い一致性を有し、バイポーラリチウムイオン電池が長時間で安定にサイクルすることにより有利になる。
【0055】
本発明の集電体における高分子基材の密度は、金属集電体に比べて低いため、バイポーラリチウムイオン電池における不活性物質全体の割合を低下することができ、それにより、バイポーラ電気化学装置のエネルギー密度を向上させる。
【0056】
本発明の集電体は、従来の金属集電体に比べて、釘刺し、衝撃、押圧などの機械的乱用の場合、導電性破片が発生する可能性が低くなり、且つ機械的破損表面への被覆効果が高いため、前記の機械的乱用の場合の安全限界を改善し、バイポーラリチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。
【0057】
本発明の集電体は、従来のステンレス鋼集電体またはチタン集電体などの従来の金属集電体に比べて、さらに低コストであり、特に大量生産に適している。
【0058】
本発明は、更に、少なくとも2つの電極組立体と、上記実施形態のいずれか1項に記載の集電体と、を含む電気化学装置を提供し、前記集電体は2つの電極組立体の間に位置している。それにより、少なくとも2つの電極組立体を、本発明の集電体を含むバイポーラ電極を介して内部に直列に接続させてバイポーラリチウムイオン電池を形成することで、より高い動作電圧を有することができる。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記電気化学装置は、少なくとも2つの電極組立体と、上記実施形態のいずれか1項に記載の集電体と、を含み、前記集電体は2つの電極組立体の間に位置し、そして、前記集電体から電気化学装置の電圧を監視するためのタブを引き出すことができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記電気化学装置は少なくとも2つの電極組立体と、バイポーラ電極シートと、を含み、前記バイポーラ電極シートは2つの電極組立体の間に位置し、前記バイポーラ電極シートは上記実施形態のいずれか1項に記載の集電体と、前記集電体の両面に塗布された正極活物質層および負極活物質層と、を含む。
【0061】
これで分かるように、前記バイポーラ電極シートは、集電体の両面にそれぞれ正極活物質と負極活物質を塗布することで得られるため、電気化学装置にはより多くの電極活物質が含まれ、電気化学装置のエネルギー密度を向上させることができる。
【0062】
本発明の一実施形態において、前記電気化学装置は、少なくとも2つの電極組立体と、バイポーラ電極シートと、を含み、前記バイポーラ電極シートは2つの電極組立体の間に位置し、前記バイポーラ電極シートは、上記実施形態のいずれか1項に記載の集電体と、前記集電体の両面に塗布されたアンダーコートと、前記集電体の両面に塗布された正極活物質層および負極活物質層と、を含む。
【0063】
アンダーコートは、集電体と活物質との間の接着性を改善し、かつ集電体と活物質との間の電子伝導性能を向上させることができる。
【0064】
前記アンダーコートは、通常に、集電体を、導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴム、および脱イオン水を混合して形成されたスラリーで塗布して乾燥させることによって得られる。そして、バイポーラ集電体の両面のアンダーコートは同一であってもよく、異なってもよい。正極活物質層、負極活物質層、正極アンダーコート、および負極アンダーコートの製造工程を下記実施例に示す。
【0065】
図3は、本発明の一実施形態にかかる電気化学装置の模式図である。
図3に示すように、該電気化学装置は、バイポーラ集電体300によって第1の電極組立体100と第2の電極組立体200のような2つの電極組立体に分離される。ここで、
図3において、第1の電極組立体100は、負極101と、第1の負極活物質層102と、第1のセパレータ103と、第1の正極活物質層104と、バイポーラ集電体300の一部と、を上から順に含み、第2の電極組立体200は、正極201と、第2の正極活物質層202と、第2のセパレータ203と、第2の負極活物質層204と、バイポーラ集電体300の別の部分と、を上から順に含む。加えて、電気化学装置は、封止部材400により封止されることができることにより、該電気化学装置は2つの独立したチャンバ構造に形成し、2つのチャンバはそれぞれ第1の電極組立体100と第2の電極組立体200に対応する。
【0066】
本発明は、更に、本発明の実施形態にかかる電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0067】
本発明により提供される電気化学装置において、その電極組立体の間のセパレータとしては、本発明により提供される集電体を使用することができ、当然に、電極組立体における集電体としては、本発明により提供される集電体を使用することもできる。本発明に記載されたセパレータは、2つの電極組立体間の分離部材であることができる。
【0068】
本発明の正極シートは、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されない。例えば、前記正極シートは、通常に正極集電体と、正極活物質と、を含む。ここで、前記正極集電体は特に限定されず、例えばアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、または複合集電体などの本分野で公知の任意の正極集電体を使用することができる。前記正極活物質は特に限定されず、従来技術における任意の正極活物質であってもよい。前記正極活物質は、NCM811、NCM622、NCM523、NCM111、NCA、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、およびチタン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0069】
本発明の負極シートは、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されない。例えば、負極シートは、通常に負極集電体と、負極活物質層と、を含む。ここで、負極集電体は特に限定されず、例えば銅箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、および複合集電体などの本分野で公知の任意の負極集電体を使用することができる。負極活物質層は、負極活物質を含み、負極活物質は特に限定されず、本分野で公知の任意の負極活物質を使用することができる。前記負極活物質は、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン、シリコンカーボン、およびチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0070】
本発明の電解液は特に限定されず、本分野で公知の任意の電解液を使用することができ、前記電解液は、例えば、ゲル状、固体状、および液体状のいずれか1種であってもよく、例えば、液体電解液はリチウム塩および非水溶媒を含むことができる。
【0071】
リチウム塩は、特に限定されず、本発明の目的を達成できる限り、本分野で公知の任意のリチウム塩を使用することができる。例えば、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLiN(CF3SO2)2(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SO2F)2)(LiFSI)、リチウムビス(オキサレート)ボレートLiB(C2O4)2(LiBOB)、およびリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートLiBF2(C2O4)(LiDFOB)のうちの少なくとも1種を含んでもよい。例えば、リチウム塩としては、LiPF6を選択して使用することができる。
【0072】
非水溶媒は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されない。例えば、非水溶媒は、炭酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、ニトリル化合物、および他の有機溶媒のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0073】
例えば、炭酸エステル化合物は、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、およびトリフルオロメチルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0074】
本発明のセパレータは、特に限定されないが、例えば、本発明の電解液に対して安定な材料からなるポリマー、または無機物などを含む。
【0075】
セパレータは、例えば、基材層と表面処理層とを含むことができる。基材層は、多孔質構造を有する不織布、フィルム、または複合膜であってもよく、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。セパレータは、任意的に、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を使用することができる。任意的に、基材層の少なくとも一方側の表面には、表面処理層が設けられ、表面処理層は、ポリマー層または無機物層であってもよく、ポリマーと無機物を混合して形成された層であってもよい。
【0076】
例えば、無機物層は、無機粒子と接着剤とを含む。前記無機粒子は、特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、および硫酸バリウムからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記接着剤は、特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリヘキサフルオロプロピレンからなる群から選択される1種または複数種類の組み合わせであってもよい。ポリマー層はポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリレート重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、およびポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)のうちの少なくとも1種を含む。
【0077】
本発明は、上記実施形態のいずれか1項に記載の集電体の製造方法を提供し、該製造方法は、
高分子材料層を製造するステップ:ステンレス鋼基材の表面に、高分子材料層の厚さが2μm~800μmとなるように、静電スプレー法によって高分子材料をスプレーして、高分子材料層を製造することと、
高分子材料層を加熱させるステップ:得られた高分子材料層を250℃~300℃まで加熱し、高分子材料層を軟化させることと、
導電性材料を植え付けるステップ:静電植毛加工によって一次元導電性材料または二次元導電性材料を高分子材料層の表面に垂直な方向に高分子材料層に植え付けて、高分子材料層の軟化状態を維持するステップと、
過熱の条件で高分子材料層のロールプレス:高分子材料層の表面が滑らかで厚さが均一にするように、得られた高分子材料層を過熱の条件でロールプレスによりプレスし、ここで、過熱温度とは前記加熱温度より10℃~20℃高い温度であり、ロールプレスによりプレスした後の高分子材料層の厚さは2μm~500μmであるステップと、
集電体の製造:得られた高分子材料層をドクターブレードでステンレス鋼基材から取り外し、巻き取って集電体を得るステップと、を含む。
【0078】
本発明の一実施形態において、上記で得られた、導電性材料が植え付けられた高分子材料層の表面に、静電スプレー法を利用して、さらに一層の高分子材料層をスプレーし、高分子材料層の軟化状態を維持し、そして、過熱の条件でロールプレスによりプレスすることもできる。さらに一層の高分子材料層をスプレーする目的は、導電性材料を高分子材料層によりよく嵌め込むことであり、導電性材料の端部が高分子材料層に露出するように該高分子材料層の厚さを合理的に制御することができることは当然である。
【0079】
本発明において、静電植毛加工は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されず、例えば、静電植毛加工において、外部電界強度を5kV~500kVとすることで、導電性材料が高分子材料層に植え付けられた速度を制御することができ(外部電界が大きいほど、導電性材料の速度は大きくなる)、それにより、導電性材料が高分子材料層の一方側の面から植え付けられた後、その「植え付ける端」が該高分子材料層の他方側の面から露出する。
【0080】
本発明において、静電スプレー工程は、一層の高分子材料層を得ることができる限り、特に限定されない。本発明で製造された集電体は、バイポーラ集電体としてバイポーラ電極シートに用いられる。本発明の電極組立体は、特に限定されず、本発明の目的を達成できる限り、従来技術における任意の電極組立体を使用することができ、例えば、積層型電極組立体または巻回型電極組立体を使用することができる。電極組立体は、通常に正極シートと、負極シートと、セパレータと、を含む。
【0081】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。各実験および評価は、以下の方法で行う。なお、特に説明しない限り、「重量部」、「%」は重量基準である。
実施例1
【0082】
<バイポーラ電極シートの製造>
<バイポーラ集電体の製造>
ステップa:静電スプレー法によってステンレス鋼基材の表面にポリエチレンテレフタレート(PET)粒子をスプレーし、PET層の厚さが20μmである。
ステップb:得られたPET層を260℃まで加熱して軟化させる。
ステップc:静電植毛加工によって一次元導電性材料である多層カーボンナノチューブ(MWCNT)をPET層の表面に垂直な方向にPET層に植え付けて、温度260℃を維持することで、前記PET層が軟化状態にある。ここで、静電植毛加工における外部電界強度は50kVである。
ステップd:静電スプレー法を利用して、ステップcで得られた、導電性材料が植え付けられたPET層の表面にさらに一層のPET粒子をスプレーし、温度260℃を維持することで、前記PET層が軟化状態にある。ここで、再びスプレーした後で得られたPET層の厚さが30μmである。
ステップe:PET層の表面が滑らかで厚さが均一にするように、ステップdで得られたPET層を過熱の条件でロールプレスによりプレスし、ここで、過熱温度が270℃である。
ステップf:ステップeで得られたPET層をドクターブレードでステンレス鋼基材から取り外し、巻き取ってバイポーラ集電体を得た。集電体には、導電性材料の配向度が5°であり、導電性材料の質量が集電体の質量の30%であり、厚さが20μmである。
【0083】
<バイポーラ電極シートにおける負極活物質層の製造>
負極活物質である黒鉛(Graphite)、導電性カーボンブラック(Super P)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を96:1.5:2.5の重量比で混合し、そして、溶媒としての脱イオン水(H2O)を加入し、固形分含有量が70%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。バイポーラ集電体の一方側の面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが130μmである負極活物質層を得た。
【0084】
<バイポーラ電極シートにおける正極活物質層の製造>
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電性カーボンブラック(Super P)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を97.5:1.0:1.5の重量比で混合し、そして、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)を加入し、固形分含有量が75%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。バイポーラ集電体の他方側の面にスラリーを均一に塗布し、90℃で乾燥させ、厚さが110μmである正極活物質層を得た。
【0085】
上記のステップが完了した後、バイポーラ電極シートを得て、電極シートを41mm×61mm仕様にカットした。
【0086】
<負極シートの製造>
負極活物質である黒鉛(Graphite)、導電性カーボンブラック(Super P)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を96:1.5:2.5の重量比で混合し、そして、溶媒としての脱イオン水を加入し、固形分含有量が70%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。厚さが10μmである銅箔の一方側の面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、被覆層の厚さが150μmである片面に負極活物質層が塗布された負極シートを得て、そして、該負極シートの他方側の面に上記の塗布ステップを繰り返し、両面に負極活物質層が塗布された負極シートを得た。負極シートを41mm×61mm仕様にカットし、タブに溶接された。
【0087】
<正極シートの製造>
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電性カーボンブラック(Super P)、PVDFを97.5:1.0:1.5の重量比で混合し、そして、溶媒としてのNMPを加入し、固形分含有量が75%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。厚さが12μmであるアルミ箔の一方側の面にスラリーを均一に塗布し、90℃で乾燥させ、被覆層の厚さが100μmである正極シートを得て、そして、該正極シートの他方側の面に上記ステップを繰り返し、両面に正極活物質層が塗布された正極シートを得た。正極シートを38mm×58mm仕様にカットし、タブに溶接された。
【0088】
<電解液の調製>
乾燥のアルゴンガス雰囲気において、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)を30:50:20の質量比で混合し、そして、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を有機溶媒中に加入して溶解し、均一に混合させ、電解液を得た。ここで、電解液におけるLiPF6のモル濃度は1.15mol/Lである。
【0089】
<電極組立体の製造>
<第1の電極組立体の製造>
セパレータとして厚さが15μmであるポリエチレン(PE)膜を使用し、負極シートの両面にそれぞれ正極シート一枚を配置し、正極シートと負極シートとの間にセパレータを配置することにより、積層体を形成し、その後、積層体全体の四隅を固定し、第1の電極組立体を得た。
【0090】
<第2の電極組立体の製造>
セパレータとして厚さが15μmであるポリエチレン(PE)膜を使用し、正極シートの両面にそれぞれ負極シート一枚を配置し、正極シートと負極シートとの間にセパレータを配置することにより、積層体を形成し、その後、積層体全体の四隅を固定し、第2の電極組立体を得た。
【0091】
<バイポーラリチウムイオン電池の製造>
<バイポーラ電極組立体の製造>
ピットパンチング(pit punching)成形された厚さ90μmのアルミプラスチックフィルムをそのピット面が上になるように置いて、第1の電極組立体を、正極シートが上になるようにアルミプラスチックフィルムのピット内に配置し、そして、バイポーラ電極シートを、負極活物質層が下になるように第1の電極組立体の上に配置することで、第1の電極組立体の正極シートがバイポーラ電極シートの負極活物質層に合わせて、押し付けた後、第1の組立体を得た。
【0092】
第2の電極組立体を、負極シートが下になり、第1の組立体のバイポーラ電極シートの正極活物質層が上になるように、バイポーラ電極シートの上に配置することで、第2の電極組立体の負極シートがバイポーラ電極シートの正極活物質層に合わせて、その後、ピットパンチング成形された厚さ90μmの別のアルミプラスチックフィルムは、ピット面が下になるように第2の電極組立体を被覆し、そして、2つのアルミプラスチックフィルムをホットプレスでヒートシールすることにより、第1の電極組立体と第2の電極組立体とはバイポーラ電極シートによって分離されて、バイポーラ電極組立体を得た。該バイポーラ電極組立体は、2つの独立のチャンバを有し、ここで、第1の電極組立体は第1のチャンバに対応し、第2の電極組立体は第2のチャンバに対応する。
【0093】
<電極組立体の注液および封止>
バイポーラ電極組立体は、2つのチャンバにそれぞれ電解液を注入した後封止された。第1のチャンバ内の正極タブと第2のチャンバ内の負極タブとは直列に接続されて導通することにより、バイポーラリチウムイオン電池を得た。該バイポーラリチウムイオン電池の2つのチャンバ間でイオン交換は行われない。
【0094】
実施例2~3
導電性材料の配向度はそれぞれ10°と20°であること以外、実施例1と同じにする。
【0095】
実施例4
導電性材料の配向度は30°であり、集電体に対する導電性材料の質量分率は10%であること以外、実施例1と同じにする。
【0096】
実施例5
導電性材料の配向度は3°であり、集電体に対する導電性材料の質量分率は70%であること以外、実施例1と同じにする。
【0097】
実施例6
導電性材料の配向度は3°であり、集電体に対する導電性材料の質量分率は10%であること以外、実施例1と同じにする。
【0098】
実施例7
導電性材料の配向度は30°であり、集電体に対する導電性材料の質量分率は70%であること以外、実施例1と同じにする。
【0099】
実施例8
導電性材料はグラフェンであること以外、実施例2と同じにする。
【0100】
実施例9
導電性材料はVGCFであること以外、実施例2と同じにする。
【0101】
実施例10
高分子材料はポリエチレンナフタレート(PEN)であること以外、実施例2と同じにする。
【0102】
実施例11
高分子材料はポリブチレンテレフタレート(PBT)であること以外、実施例2と同じにする。
【0103】
実施例12
バイポーラ集電体の厚さは500μmであること以外、実施例2と同じにする。
【0104】
実施例13
バイポーラ集電体の厚さは2μmであること以外、実施例2と同じにする。
【0105】
実施例14
バイポーラ集電体の厚さは10μmであること以外、実施例2と同じにする。
【0106】
実施例15
集電体に対する導電性材料の質量分率は50%であること以外、実施例14と同じにする。
【0107】
実施例16
バイポーラ電極シートに負極アンダーコートと正極アンダーコートとを配置すること以外、実施例15と同じにする。
【0108】
<バイポーラ電極シートにおける負極アンダーコートの製造>
導電性カーボンブラック(Super P)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を95:5の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水(H2O)を加入し、固形分含有量が80%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。バイポーラ集電体の一方側の面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが5μmである負極アンダーコートを得た。
【0109】
<バイポーラ電極シートにおける負極活物質層の製造>
負極活物質である黒鉛(Graphite)、導電性カーボンブラック(Super P)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を96:1.5:2.5の重量比で混合し、そして、溶媒としての脱イオン水(H2O)を加入し、固形分含有量が70%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。負極アンダーコートにスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが120μmである負極活物質層を得た。
【0110】
<バイポーラ電極シートにおける正極アンダーコートの製造>
導電性カーボンブラック(Super P)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を97:3の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水(H2O)を加入し、固形分含有量が85%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。バイポーラ集電体の他方側の面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、正極アンダーコートを得た。
【0111】
<バイポーラ電極シートにおける正極活物質層の製造>
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電性カーボンブラック(Super P)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を97.5:1.0:1.5の重量比で混合し、そして、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)を加入し、固形分含有量が75%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。正極アンダーコートにスラリーを均一に塗布し、90℃で乾燥させ、厚さが100μmである正極活物質層を得た。
【0112】
上記のステップが完了した後、厚さが245μmであるバイポーラ電極シートを得た。電極シートを41mm×61mm仕様にカットした。
【0113】
実施例17
負極アンダーコートと正極アンダーコートとの製造工程以外、実施例16と同じにする。
【0114】
<バイポーラ電極シートにおける負極アンダーコートの製造>
ポリピロール(PPy)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を95:5の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水(H2O)を加入し、固形分含有量が80%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。バイポーラ集電体の一方側の面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが3μmである負極アンダーコートを得た。
【0115】
<バイポーラ電極シートにおける正極アンダーコートの製造>
ポリピロール(PPy)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を97:3の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水(H2O)を加入し、固形分含有量が85%であるスラリーを調製し、均一に攪拌する。バイポーラ集電体の他方側の面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、正極アンダーコートを得た。
【0116】
実施例18
負極アンダーコートと正極アンダーコートとの製造工程以外、実施例16と同じにする。
【0117】
<バイポーラ電極シートにおける負極アンダーコートの製造>
物理気相成長(PVD)法により、バイポーラ集電体の一方側の面に一層のCuメッキ層を製造し、厚さが1μmである負極アンダーコートを得た。
【0118】
<バイポーラ電極シートにおける正極活物質層の製造>
PVD法により、バイポーラ集電体の他方側の面に一層のAlメッキ層を製造し、厚さが1μmである正極アンダーコートを得た。
【0119】
実施例19
バイポーラリチウムイオン電池の製造工程以外、実施例17と同じにする。
【0120】
バイポーラリチウムイオン電池の製造工程:
第1のバイポーラ電極シートの正極活物質層が第2のバイポーラ電極シートの負極活物質層に隣接するように、第1のバイポーラ電極シートと、第1のセパレータと、第2のバイポーラ電極シートと、第2のセパレータと、を順に積層した。そして、電極シートの周りにシール接着剤を塗布するとともに電解液の注入口を予めに設置し、次に積層された電極シートとセパレータとを電極組立体に巻回し、シール接着剤の固化及び上側の封止を行った後、電解液を電極組立体に注入し、注入が完了した後、予めに設置された電解液の注入口を封止し、バイポーラリチウムイオン電池を得た。
【0121】
比較例1
バイポーラ集電体としてCu/Al複合集電体を使用すること以外、実施例1と同じにする。
【0122】
Cu/Al複合集電体の厚さは、20μmである。
【0123】
比較例2
バイポーラ集電体としてステンレス鋼集電体を使用すること以外、実施例1と同じにする。
【0124】
ステンレス鋼集電体の厚さは、20μmである。
【0125】
比較例3
バイポーラ集電体は、ゼロ次元構造の導電性材料と高分子基材とを複合することによって得られたものであること以外、実施例1と同じにする。
【0126】
バイポーラ集電体において、ゼロ次元構造の導電性材料はドット状のカーボンブラック粒子であり、高分子基材はPET基材であり、ドット状のカーボンブラック粒子は3次元分布の基体に均一かつ配向なしに分散し、バイポーラ集電体の厚さは約50μmである。
【0127】
比較例4
バイポーラ集電体は、一次元構造の導電性材料と高分子基材とを複合することによって得られたものであること以外、実施例1と同じにする。
【0128】
バイポーラ集電体において、一次元構造の導電性材料はMWCNTであり、高分子基材はPET基材であり、MWCNTは3次元分布の基体に均一かつ配向なしに分散し、バイポーラ集電体の厚さは約50μmである。
【0129】
比較例5
バイポーラ集電体は、二次元構造の導電性材料と高分子基材とを複合することによって得られたものであること以外、実施例1と同じにする。
【0130】
バイポーラ集電体において、二次元構造の導電性材料はグラフェンであり、高分子基材はPET基材であり、グラフェンは3次元分布の基体に均一かつ配向なしに分散し、バイポーラ集電体の厚さは約50μmである。
【0131】
<性能測定>
下記の方法を使用して、各実施例および各比較例で製造されたバイポーラ集電体およびバイポーラリチウムイオン電池を測定した。
【0132】
バイポーラ集電体における導電性材料の配向度の測定:
バイポーラ集電体の走査型電子顕微鏡(SEM)の断面画像を取得し、ここで、バイポーラ集電体の断面はプラズマ切断、研磨によって取得された。画像に基づいて繊維(一次元導電性材料)またはナノシート(二次元導電性材料)とZ方向との夾角を測定し、いずれの画像において、一次元導電性材料または二次元導電性材料の少なくとも半分が角度要件を満たしていればよい。
【0133】
バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率の測定:
10cm×10cmのバイポーラ集電体サンプルを取得し、バイポーラ集電体のA面およびB面を、面積が固定である2つの金属製の挟み板で挟み込み、挟み板の面積はバイポーラ集電体の面積と同じであり、2つの挟み板の間に0.1Vの電圧を印加し、2つの挟み板の間の電流値を測定し、抵抗値Rを計算し、そして、下記の式ρ=RS/Lに基づいて電子抵抗率を算出した。ここで、Rは抵抗値を表し、Sはバイポーラ集電体の面積を表し、Lはバイポーラ集電体の厚さを表す。
【0134】
バイポーラ集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率の測定:
図4に示すように、4探針法を使用してバイポーラ集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率を測定した。該4探針法において、バイポーラ集電体の表面に4本の金属探針を直線に配列し、一定の圧力(通常2N)でサンプル表面に押し付け、a、dの2箇所で探針を通過した電流Iを測定し、探針bと探針cの間の電圧差Vを測定し、材料の電子抵抗率は、
式ρ=C×V/Iによって算出した。
ここで、探針係数Cは、以下の式により算出する。
【式1】
【0135】
ここで、探針aと探針b、探針bと探針c、探針cと探針dの間の距離はそれぞれS1、S2、S3である。探針係数Cを得た後、バイポーラ集電体のX-Y面内方向における電子抵抗率を取得することができる。
【0136】
バイポーラ集電体の単方向導通比の測定:
ステップA:
図5に示すように、バイポーラ集電体サンプルの両側の対向位置に、それぞれ1つの面積Sの金属円柱電極(図面の1の電極、Sは通常約1cm
2)を配置し、マルチメータを使用して2つの電極間のインピーダンスを測定し、R0と表す。
ステップB:1つの金属円柱電極を距離L1(図面の2の電極の位置)の平行移動を行い、マルチメータを使用して2つの電極間のインピーダンスを測定し、R01と表し、ここで、L1>2000H、Hはサンプルの厚さである。
ステップC:前記金属円柱電極をステップBと同じ方向に沿って距離L2(図面の3の電極の位置)の平行移動を行い続けて、マルチメータを使用して2つの電極間のインピーダンスを測定し、R2と表し、ここで、L2>4000H、Hはサンプルの厚さであり、L2-L1>2000H。
ステップD:下記の式((R2-R1)×H)/(R0×(L2-L1))に基づいてバイポーラ集電体の単方向導通比を算出した。
【0137】
バイポーラ集電体の厚さの測定:
ネジマイクロメーターを使用してバイポーラ集電体の厚さを測定した。
【0138】
バイポーラ集電体の引張強度の測定:
バイポーラ集電体サンプルを適切なサイズ(例えば、100mm×10mm)の小片にカットして、引張試験機でサンプルの引張強度を測定した。
集電体に対する導電性材料の質量分率の測定:
当該測定は、測定方法1または測定方法2を採用して行うことができる。
【0139】
測定方法1:
10cm×10cmのバイポーラ集電体サンプルを秤量した後、この時の重量をM0とする。適切な溶剤を選択し、バイポーラ集電体における高分子基材を溶解させ、その中の導電性材料粒子を濾過した。使用された溶剤はバイポーラ集電体における高分子基材を溶解させることができる限り、特に限定されない。濾過した導電性材料粒子を洗浄して乾燥させ、秤量した後、この時の重量をM1とし、この場合、集電体に対する導電性材料の質量分率は(M1/M0)×%である。
【0140】
測定方法2:
10cm×10cmのバイポーラ集電体サンプルを秤量した後、この時の重量をM0とする。王水でバイポーラ集電体における導電性材料を溶解させ、その中の高分子基材を濾過した。高分子基材を洗浄して乾燥させ、秤量した後、この時の重量をM2とし、この場合、集電体に対する導電性材料の質量分率は(M0-M2)/M0×%である。
【0141】
02Cの放電エネルギー密度の測定:
比較例1におけるリチウムイオン電池に対し、0.5Cにて4.45Vまで充電した後、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.2Cにて3.0Vまで放電した。
【0142】
比較例1以外の他の比較例および実施例におけるリチウムイオン電池に対し、0.5Cにて8.90Vまで充電した後、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.2Cにて6.0Vまで放電した。
【0143】
以下の式:エネルギー密度(Wh/kg)=放電エネルギー(Wh)/電気化学装置の重量(kg)に基づいて02Cの放電エネルギー密度を算出した。
【0144】
サイクル測定:
比較例1におけるリチウムイオン電池に対し、測定温度が25℃である場合、0.5Cにて定電流で4.45Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cにて3.0Vまで放電し、この段階で得られた容量を初期容量とし、そして、0.5C充電/0.5C放電にてサイクルを50回行った後、初期容量に対するリチウムイオン電池の容量の比を算出した。
【0145】
比較例1以外の他の比較例および実施例におけるリチウムイオン電池に対し、測定温度が25℃である場合、0.5Cにて定電流で8.9Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cにて6.0Vまで放電し、この段階で得られた容量を初期容量とし、そして、0.5C充電/0.5C放電にてサイクルを50回行った後、初期容量に対するリチウムイオン電池の容量の比を算出した。
【0146】
2C/02Cの放電エネルギー密度の測定:
まず、上記の02Cの放電エネルギー密度の測定方法と同様の方法により02Cの放電エネルギー密度を測定し、そして、2Cの放電エネルギー密度を測定し、その後、2Cの放電エネルギー密度と02Cの放電エネルギー密度との比を算出した。
【0147】
ここで、2Cの放電エネルギー密度の測定方法は以下に示す。
比較例1におけるリチウムイオン電池に対し、0.5Cにて4.45Vまで充電した後、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、2Cにて3.0Vまで放電した。
【0148】
比較例1以外の他の比較例および実施例におけるリチウムイオン電池に対し、0.5Cにて8.90Vまで充電した後、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、2Cにて6.0Vまで放電した。
【0149】
以下の式:エネルギー密度(Wh/kg)=放電エネルギー(Wh)/電気化学装置の重量(kg)に基づいて02Cの放電エネルギー密度を算出した。
【0150】
釘刺し試験:
比較例1におけるリチウムイオン電池に対し、0.05Cのレートにて定電流で電圧が4.45Vになるまで充電し、定格電圧に達し、その後、電流が0.025Cになるまで定電圧で充電し、カットオフ電流に達することにより、電池が満充電の状態にあり、測定前の電池の外観を記録した。
【0151】
比較例1以外の他の比較例および実施例におけるリチウムイオン電池に対し、測定対象としてのリチウムイオン電池を0.05Cのレートにて定電流で電圧が8.90Vになるまで充電し、定格電圧に達し、その後、電流が0.025Cになるまで定電圧で充電し、カットオフ電流に達することにより、電池が満充電の状態にあり、測定前の電池の外観を記録した。
【0152】
25±3℃の環境で電池に対して釘刺し試験を行う。釘の直径が4mmであり、釘刺速度が30mm/sであり、釘刺し位置は、それぞれ、Alタブ(Tab)側の電気化学セルのエッジから15mmの位置であり、およびNi Tab側の電気化学セルのエッジから15mmの位置であり、釘刺し試験を3.5min行う場合、または電池コアの表面温度が50℃に下がった場合、試験を停止させた。10個のリチウムイオン電池を1つのグループとして試験中の電池の状態を観察した。判定基準は、電池が燃焼しない、または爆発しないことであり、合格率が90%以上である場合は釘刺し試験の合格を示す。
【0153】
各実施例と比較例の製造パラメータおよび測定の結果は下記の表1に示す。
【0154】
【0155】
実施例1~19および比較例1~2から、本発明のバイポーラ集電体を備えるリチウムイオン電池は、02Cの放電エネルギー密度が著しく向上することが分かる。
【0156】
実施例1~19および比較例1~5から、本発明のバイポーラ集電体を備えるリチウムイオン電池は、サイクル容量維持率が著しく向上することが分かる。
【0157】
実施例1~3、5~11、13~19および比較例3~5から、本発明のバイポーラ集電体を備えるリチウムイオン電池は、従来の高分子バイポーラ集電体を備えるリチウムイオン電池(例えば比較例3~5)に比べて、放電エネルギー密度が著しく向上することが分かる。
【0158】
実施例1~19および比較例1~2から、本発明のバイポーラ集電体を備えるリチウムイオン電池は、従来の金属箔バイポーラ集電体を備えるリチウムイオン電池(例えば比較例1と2)に比べて、釘刺しの合格状況が著しく改善することが分かる。
【0159】
実施例4から、導電性材料の配向度、バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率、および集電体に対する導電性材料の質量分率は、リチウムイオン電池の放電エネルギー密度に影響を一緒に与えることが分かる。
【0160】
実施例12~14から、バイポーラ集電体の厚さはリチウムイオン電池の放電エネルギー密度に影響を与えることが分かるが、実施例12の放電エネルギー密度が比較例1と2の放電エネルギー密度に近いため、バイポーラ集電体の厚さは、リチウムイオン電池の放電エネルギー密度に影響を与える程度が大きくないことが分かる。
【0161】
また、実施例12~14から、バイポーラ集電体の厚みが大きくなるにつれて、釘刺し試験に合格するリチウムイオン電池の数が増加することが更に分かる。
【0162】
表1から分かるように、実施例17は最適な実施例であり、実施例19は実施例17とは異なる電極組立体構造に基づいて設計されており、同様に優れた性能を取得することもできる。
【0163】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の旨および原則の範囲内で行われた修正、同等の置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。