(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】最小表面構造を積層製造する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20241128BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20241128BHJP
G06T 17/20 20060101ALI20241128BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20241128BHJP
G06F 113/10 20200101ALN20241128BHJP
【FI】
B29C64/386
G06F30/10 100
G06T17/20
B33Y50/00
G06F113:10
(21)【出願番号】P 2022569110
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2020063727
(87)【国際公開番号】W WO2020229692
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】521500524
【氏名又は名称】スフィリーン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】spherene AG
【住所又は居所原語表記】Elias-Canetti-Strasse 7, 8050 Zuerich,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルチ, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトフォーゲル, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン, ラスムス
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0023584(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110008529(CN,A)
【文献】JIAWEI FENG ET AL,A review of the design methods of complex topology structures for 3D printing,VISUAL COMPUTING FOR INDUSTRY, BIOMEDICINE, AND ART,2018年09月05日,vol. 1, no. 1,p.1-16,XP055720669
【文献】XIN YAN ET AL,Strong 3D Printing by TPMS Injection,IEEE TRANSACTIONS ON VISUALIZATION AND COMPUTER GRAPHICS,2019年04月30日,VOL.26,NO.10,pages 1-14,XP055720673
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
G06F 30/10
G06T 17/20
B33Y 50/00
G06F 113/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物品(100、200)の最小表面構造(61、62、63)を積層製造する方法であって、前記方法は、
コンピュータ(10)であって、
前記コンピュータ(10)内に前記3次元物品(100、200)のエンベロープ(11、12)を記録するステップ;
前記3次元物品(100、200)のそれぞれの位置における少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値に対応する密度を有する前記エンベロープ(12)によって囲まれたボリューム(121)にわたる密度場(2)を生成するステップ;
前記密度場(2)を用いて前記ボリューム(121)の適応的ボロノイ分割(VO)を生成するステップ;
前記適応的ボロノイ分割(VO)に関連する第1のスケルトングラフ(A)を生成するステップ;
前記第1のスケルトングラフ(A)に関連する第2のスケルトングラフ(B)を生成するステップ;及び、
前記第1及び第2のスケルトングラフ(A;B)からデジタル最小表面モデル(5)を生成するステップ;
を実行するコンピュータ(10)
を含み、
前記方法は、更に、前記デジタル最小表面モデル(5)に従って前記最小表面構造(61、62、63)を積層製造する3Dプリンタ(30)を含む、方法。
【請求項2】
前記適応的ボロノイ分割(VO)を生成するステップは、
前記密度場(2)の前記密度の分布に対応する一連の散乱点(21)を生成するステップ;
前記エンベロープ(12)によって囲まれた前記ボリューム(21)にわたって前記散乱点(21)をランダムに分配するステップ;及び、
ランダムに分配された前記散乱点(21)を生成点として用いて、前記適応的ボロノイ分割(VO)の複数のボロノイセルを生成するステップ;
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記密度場(2)を用いて前記適応的ボロノイ分割(VO)を生成するステップは、前記密度場(2)を用いて重み付けされたスティップリングによって前記適応的ボロノイ分割(VO)の複数のボロノイセルを反復的に生成するステップを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のボロノイセルを反復的に生成するステップは、
a)前記密度場(2)を用いて各ボロノイセルの重み付けされた重心(C)を計算し、前記ボロノイセルの生成点をそれぞれの前記重心(C)にシフトさせるステップ;及び、
b)シフトされた前記生成点を用いて前記適応的ボロノイ分割(VO)の新しいボロノイセルを生成し、ステップa)の前記ボロノイセルを前記新しいボロノイセルによって置き換えるステップ;
を、計算された前記重心(C)がステップa)における前記ボロノイセルの前記生成点と一致するまで反復することを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のボロノイセルを反復的に生成するステップは、請求項4のステップb)の後に、
c)それぞれの前記ボロノイセルにわたって前記密度場(2)を積分することにより、各ボロノイセルについてセル重みを計算するステップ;
d)前記コンピュータ内に第1の重み閾値及び第2の重み閾値を記録するステップであって、前記第1の重み閾値は前記第2の重み閾値より大きいステップ;及び、
e)前記第1の重み閾値を超えるセル重みを有するボロノイセルを分割し、前記第2の重み閾値を下回るセル重みを有するボロノイセルを削除するステップ;
を実行することを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)~e)は、請求項4のステップa)~b)の反復の最初の10~30
%に対して実行されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記密度場(2)を生成するステップは、
前記エンベロープ(12)によって囲まれた前記ボリューム(121)を、複数
のボクセル(122)に分割し、各ボクセル(122)に対して少なくとも1つの局所要件値を生成するステップ;
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のスケルトングラフ(A)は、前記適応的ボロノイ分割(VO)のボロノイセルのエッジによって形成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のスケルトングラフ(B)は、前記適応的ボロノイ分割(VO)の生成点のドロネー四面体分割によって生成されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記3次元物品の前記エンベロープを横断する前記第1及び/又は第2のスケルトングラフ(A;B)のセグメントから、前記エンベロープ(12)によって囲まれた前記ボリューム(121)の外側にある第1のセグメント部分が除去され、前記第1及び/又は第2のスケルトングラフの前記セグメントが前記エンベロープ(12)を横断する位置における前記エンベロープ(12)に関する鏡像化により得られるセグメント部分によって置き換えられ、第2のセグメント部分は前記ボリュームの内側にあり、前記第1のセグメント部分に隣接することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記3次元物品(100、200)の前記エンベロープ(12)を超えて延びるボロノイセルは前記エンベロープでトリミングされ、トリミングされた前記ボロノイセルの前記重心が前記密度場を用いて再計算されることを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2のスケルトングラフ(A;B)から前記デジタル最小表面モデル(5)を生成するステップは、
前記第1及び第2のスケルトングラフから最小表面前駆体(3)を生成するステップ;
前記最小表面前駆体(3)を平滑化することにより最小表面形状(4)を生成するステップ;
前記最小表面形状(4)に壁幅を割り当てるステップ;及び、
前記最小表面形状(4)及び割り当てられた前記壁幅に従って、前記デジタル最小表面モデル(5)を生成するステップ;
を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び第2のスケルトングラフ(A;B)から前記デジタル最小表面モデル(5)を生成するステップは、
前記第1のスケルトングラフ(A)に第1の電荷を割り当てるステップ;
前記第2のスケルトングラフ(B)に第2の電荷を割り当てるステップであって、前記第2の電荷は、前記第1の電荷と絶対値において等しいが符号が逆であるステップ;及び、
前記第1及び第2のスケルトングラフ(A;B)及びそれらの電荷に基づいて計算されたクーロン力場を用いて、前記第1及び第2のスケルトングラフ(A;B)間の等電位面として、前記最小表面前駆体(3)を生成するステップ;
を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの物理パラメータは、機械的荷重、剛性、貯蔵可能な流体の量、流体流れ、熱輸送のうち少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
3Dプリンタ(30)に、デジタル最小表面モデル(5)に従って3次元物品(100、200)の最小表面構造(61、62、63)を積層製造させるように適合されたコンピュータ実行可能命令を記憶した持続性コンピュータ可読媒体(101)であって、前記コンピュータ実行可能命令は、
コンピュータ(10)内に前記3次元物品(100、200)のエンベロープ(11、12)を記録するステップ;
前記3次元物品(100、200)のそれぞれの位置における少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値に対応する密度を有する前記エンベロープ(12)によって囲まれたボリューム(121)にわたる密度場(2)を生成するステップ;
前記密度場(2)を用いて前記ボリューム(121)の適応的ボロノイ分割(VO)を生成するステップ;
前記適応的ボロノイ分割(VO)に関連する第1のスケルトングラフ(A)を生成するステップ;
前記第1のスケルトングラフ(A)に関連する第2のスケルトングラフ(B)を生成するステップ;及び、
前記第1及び第2のスケルトングラフ(A;B)から前記デジタル最小表面モデル(5)を生成するステップ;
を実行する前記コンピュータ(10)を含む、持続性コンピュータ可読媒体(101)。
【請求項16】
3Dプリンタ(30)によって、デジタル最小表面モデル(5)に従って3次元物品(100、200)の最小表面構造(61、62、63)を積層製造するのに適合した、前記デジタル最小表面モデル(5)を生成するための、コンピュータによって実行される方法であって、
コンピュータ(10)内に前記3次元物品(100、200)のエンベロープ(11、12)を記録するステップ;
前記3次元物品(100、200)のそれぞれの位置における少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値に対応する密度を有する前記エンベロープ(12)によって囲まれたボリューム(121)にわたる密度場(2)を生成するステップ;
前記密度場(2)を用いて前記ボリューム(121)の適応的ボロノイ分割(VO)を生成するステップ;
前記適応的ボロノイ分割(VO)に関連する第1のスケルトングラフ(A)を生成するステップ;
前記第1のスケルトングラフ(A)に関連する第2のスケルトングラフ(B)を生成するステップ;
前記第1及び第2のスケルトングラフ(A;B)から前記デジタル最小表面モデル(5)を生成するステップ;及び、
コンピュータ可読媒体(20)上に前記デジタル最小表面モデル(5)を記憶するステップ;
を実行する前記コンピュータ(10)を含む、方法。
【請求項17】
コンピュータ(10)が
請求項16に記載の方法のステップを実行するように前記コンピュータ(10)を制御するように構成されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元物品の最小表面構造を積層製造する方法、及び、前記方法によって積層製造された最小表面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
積層製造は、典型的には材料の層ごとの付加を通じて物品を構築することにより、デジタル3次元モデルから物品が作製される製造技術である。積層製造プロセスは、従来の、例えば除去製造プロセスと比較して、設計の自由度を大幅に増大させ、非常に複雑な形状及びジオメトリを生成することを可能にする。積層製造によって任意の3次元物品を製造するための前提条件は、それに従って物品が3Dプリンタによって積層製造され得る、デジタル3次元モデル又はコンピュータ支援設計ファイルである。
【0003】
現在の積層製造プロセスは、中空の物体の内部を充填するために、管状足場に、又は複雑なケースでは三重周期最小表面(TPMS)充填構造に、依存している。1対の周期的スケルトングラフを用いた自己交差のない三重周期最小表面の生成は、非特許文献1に記載されている。
【0004】
1対のスケルトングラフから生成された自己交差のない三重周期最小表面は、空間を2つの互いに素なラビリンス領域に分割する。非特許文献1によれば、三重周期最小表面はスケルトングラフの周りの管状近傍を同時に膨張させることによって生成されると概念的に説明することができ、この場合、2つの膨張領域が衝突すると、三重周期最小表面が現れる。
【0005】
TPMSのような最小表面は、有利な力の流れ及び荷重の分配を可能にする。しかしながら、従来の周期的な最小表面の場合、周期性に起因する高い対称性は、構造内の好ましい方向をもたらし、これは、対称性によって与えられる好ましい方向に起因する応力又は歪みのような物理的要件に対する全体的な応答を低減する。更に、TPMSのような従来の周期的な最小表面は、境界ジオメトリ又は特定の境界条件のような要件に適応する能力が乏しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】NASA technical report NASA TN D-5541 of Alan H. Schoen
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術を少なくとも部分的に改善し、従来技術の欠点の少なくとも一部を回避する、3次元物品の最小表面構造を積層製造する方法、及び、前記方法によって積層製造された最小表面構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。加えて、更なる有利な実施形態は、従属請求項、並びに、明細書及び図面から得られる。
【0009】
本発明の一態様によれば、目的は特に、3次元物品の最小表面構造を積層製造する方法であって、前記コンピュータ内に前記3次元物品のエンベロープを記録するステップ;前記3次元物品のそれぞれの位置における少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値に対応する密度を有する前記エンベロープによって囲まれたボリュームにわたる密度場を生成するステップ;前記密度場を用いて前記ボリュームの適応的ボロノイ分割を生成するステップ;前記適応的ボロノイ分割に関連する第1のスケルトングラフを生成するステップ;前記第1のスケルトングラフに関連する第2のスケルトングラフを生成するステップ;及び、前記第1及び第2のスケルトングラフからデジタル最小表面モデルを生成するステップを実行するコンピュータを含む方法によって達成され、前記方法は、更に、前記デジタル最小表面モデルに従って前記最小表面構造を積層製造する3Dプリンタを含む。
【0010】
3次元物品のエンベロープは、物品の外側境界を表す物品エンベロープであってもよい。デジタル最小表面モデルを生成するときの処理能力を低減するために、簡略化されたジオメトリを有する簡略化された物品エンベロープを表すいわゆる密度場エンベロープが、3次元物品のエンベロープとして使用されてもよい。好ましくは、物品エンベロープは、密度場エンベロープ内に完全に収容される。例えば、多角柱の形状であって、円筒の形状の物品エンベロープを囲む密度場エンベロープが使用されてもよい。更なる例では、n角柱の形状であって、m角柱の形状の物品エンベロープを囲む密度場エンベロープが使用されてもよい(ここで、m>n)。
【0011】
本発明の文脈において説明される適応的ボロノイ分割は、3次元ボロノイセルを使用する3Dボロノイ分割として理解されるべきである。「適応的」という用語は、本明細書で説明するように、適応的ボロノイ分割が密度場の特性に適応可能であることを示す。
【0012】
第1及び第2のスケルトングラフは、好ましくは互いに交差することなく絡み合っている。特に、第2のスケルトングラフは、第1のスケルトングラフのデュアルグラフに基づいていてもよい。更に、第2のスケルトングラフは、以下で更に説明されるように、それぞれドロネー三角分割又はドロネー四面体分割のような、ボロノイ分割のデュアル分割に基づいていてもよい。したがって、第2のスケルトングラフは、第1のスケルトングラフと本質的に二重であってもよい。しかしながら、第2のスケルトングラフは、以下で更に説明されるように、局所トポロジー条件に適応するために、第1のスケルトングラフのデュアルグラフから逸脱する1つ又は複数の補正されたセグメントを特徴としていてもよい。任意選択的に、第1のスケルトングラフは、局所的トポロジー条件に適応するために、第2のスケルトングラフとの二重関係から逸脱する1つ又は複数の補正されたセグメントを特徴としていてもよい。デジタル最小表面モデルを生成するために2つスケルトングラフを使用することによって、各々がスケルトングラフに由来する2つの互いに素なラビリンスを生成することができ、それらは最小表面構造の壁によって分離される。2つのラビリンスを生成することによって、最小表面構造の2つのチャネルを得ることができる。チャネルは、チャネルの周縁開口上でクロージャによって閉じられてもよく、又は、開いたままであってもよい。
【0013】
密度場を生成することによって、物品のそれぞれの位置における密度場の密度が、前記それぞれの位置における少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値に対応するので、少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値の空間マッピングを得ることができる。例えば、密度場は、エンベロープによって囲まれたボリュームにわたる応力及び/又は歪のような物理パラメータによってパラメータ化された荷重ケース要件の空間マッピングを表すことができる。3次元物品にわたる応力の局所要件値をマッピングする例では、密度場の密度は応力に比例し得る。
【0014】
密度場を用いて、適応的ボロノイ分割を、デジタル最小表面モデルのスケルトングラフの生成のための出発点として生成することができ、これにより、少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値の空間マッピングを、デジタル最小表面モデルに、したがって積層製造された最小表面構造に関連付けることが可能になる。したがって、少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値による要件のパラメータ化は、密度場と、密度場に適合された適応的ボロノイ分割とを使用することによって、デジタル最小表面モデルのパラメータ化に置き換えることができる。そうすることで、密度場を用いるデジタル最小表面モデルの生成のおかげで、設計によって3次元物品にわたる物理的要件及び特定の境界条件にそれぞれ構造的に適合された、積層製造された最小表面構造を得ることができる。
【0015】
例えば、3次元物品にわたる応力要件に比例する密度を有する密度場は、増大した応力値を有する3次元物品のそれぞれの位置においてより密度が高いスケルトングラフに変換されることができ、これは、次いで、前記位置において優勢なより高い応力値に耐えることができるように、前記位置において構造的により密度が高い最小表面構造をもたらす。
【0016】
したがって、いわゆる適応密度最小表面(ADMS)構造は、入力要件パラメータに本質的に局所的に適応された本方法によって得ることができる。本方法は、それに従って最小表面構造が積層製造されるデジタル最小表面モデル自体をパラメータ化しながら、入力要件パラメータへの前記局所的適応をボトムアップ方式で含めることができるという利点を提供する。
【0017】
3次元物品はシェルを含むことができ、最小表面構造は、3次元物品のシェル内に充填構造を形成する。シェルは、物品エンベロープと一致してもよい。
【0018】
代替的に、最小表面構造は、3次元物品又はシェルのない3次元物品の一部を形成してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、適応的ボロノイ分割を生成することは、密度場の密度の分布に対応する一連の散乱点を生成することと、エンベロープによって囲まれたボリュームにわたって散乱点をランダムに分布させることと、ランダムに分布された散乱点をボロノイセルの生成点として使用して、適応的ボロノイ分割の複数のボロノイセルを生成することとを含む。
【0020】
一連の散乱点を生成することによって、適応的ボロノイ分割のボロノイセルの数は、密度場の密度におけるコントラストに対応する構造的詳細を有する最小表面構造を得るために、密度の分布に適合させることができる。例えば、3次元物品にわたる応力の物理パラメータについて、応力の分布は、コンピュータに記憶されたヒストグラムに記録することができ、散乱点の数は、最大応力とビンの数との積に対する、ヒストグラムのビン内の全ての応力の合計の比に比例する。したがって、散乱点の数を計算するために使用され得る他の物理的パラメータ値がヒストグラムに記録され得ることは、当業者には明らかである。
【0021】
いくつかの実施形態では、ランダムに分配された散乱点が、散乱点の再分配された分布が密度場に対応するよう、密度場に従って再分配される。次いで、再分配された散乱点は、適応的ボロノイ分割のボロノイセルを生成するための初期生成点として使用され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、密度場を用いて適応的ボロノイ分割を生成するステップは、密度場を用いて重み付けされたスティップリングによってボロノイ分割の複数のボロノイセルを反復的に生成するステップを含む。
【0023】
密度場を用いて重み付けされたスティップリングによって、複数のボロノイセルのための一連の生成点を生成することができ、生成点の位置は、密度場の密度値によって決定される。特に、密度場を用いて重み付けされたスティップリングは、典型的には、密度場が、適応的ボロノイ分割のボロノイセルのパッキングを重み付けすることができるよう、より高い密度値を有する領域が、より低い密度値を有する領域よりも、多くの生成点を含むことを引き起こす。したがって、密度場によるボロノイセルのパッキングの重み付けは、密度場の特性が、適応的ボロノイ分割に由来する最小表面構造の構造特性に伝達され得るという利点を提供する。更に、重み付けされたスティップリングによってボロノイセルを反復的に生成することは、複数のボロノイセルの生成点の初期の、例えばランダムな分布から開始し、重み付けされたスティップリングを反復することによって、生成点の位置付け又はボロノイセルのパッキングをそれぞれ密度場に反復的に適応させることを可能にする。
【0024】
いくつかの実施形態では、重み付けされたスティップリングによるボロノイセルの反復的な生成は、上述したように、ランダムに分配された散乱点又は再分配された散乱点で開始する。したがって、ランダムに分配された又は再分配された散乱点は、適応的ボロノイ分割のボロノイセルの初期の生成点として機能することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、複数のボロノイセルを反復的に生成することは、a)密度場を用いて各ボロノイセルの重み付けされた重心を計算し、ボロノイセルの生成点をそれぞれの重心にシフトさせるステップ;及び、b)シフトされた生成点を用いて適応的ボロノイ分割の新しいボロノイセルを生成し、ステップa)のボロノイセルを新しいボロノイセルによって置き換えるテップを、計算された重心がステップa)におけるボロノイセルの生成点と一致するまで反復することを含む。
【0026】
複数のボロノイセルを反復的に生成するために、a)及びb)のステップを反復することによって、密度場に従って重み付けされた3次元重心ボロノイ分割が、適応的ボロノイ分割として達成され得る。ステップa)及びb)の反復は、好ましくは、計算された重心がステップa)におけるボロノイセルの生成点と一致するときに終了する。しかしながら、いくつかの実施形態では、ステップa)及びb)の反復は、ステップa)における計算された重心とボロノイセルの生成点との間の距離が、所定の許容値よりも小さいときに終了するよう、許容差が許容される。例えば、許容値は、最小面構造の最小壁幅の10-3倍であることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、複数のボロノイセルを反復的に生成することは、c)それぞれのボロノイセルにわたって密度場を積分することにより、各ボロノイセルについてセル重みを計算するステップ;d)コンピュータ内に第1の重み閾値及び第2の重み閾値を記録するステップであって、第1の重み閾値は第2の重み閾値より大きいステップ;及び、e)第1の重み閾値を超えるセル重みを有するボロノイセルを分割し、第2の重み閾値を下回るセル重みを有するボロノイセルを削除するステップを実行することを含む。
【0028】
ステップc)~e)を実行することによって、適応的ボロノイ分割を密度場に更に適応させることができる。更に、適応的ボロノイ分割の重心ボロノイ分割への収束を改善することができる。ステップc)~e)は、有利には、分割することによってより小さいボロノイセルを、隣接するボロノイセルを削除又は融合することによってより大きいボロノイセルを、それぞれ作成することにより、密度場に従ってボロノイセルのサイズを適応させることを可能にする。
【0029】
ボロノイセルの分割は、ボロノイセル内に2つの生成点をランダムに生成し、2つの生成点から2つの新しいボロノイセルを生成することによって達成され得る。
【0030】
通常、第1の重み閾値と第2の重み閾値との間のセル重みを有するボロノイセルは、変更されないままであってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1の重み閾値は、エンベロープによって囲まれたボリュームにわたる密度場の積分の、重心の数に係数(1+a)を乗じたものに対する比として定義され、第2の重み閾値は、エンベロープによって囲まれたボリュームにわたる密度場の積分の、重心の数に係数(1-a)を乗じたものに対する比として定義され、好ましくは、aは0.3~0.7であり、更に好ましくはa=0.5である。
【0032】
ステップc)~e)は、ボロノイセルのセル重みが第1の重み閾値と第2の重み閾値との間にあり、ボロノイセルの分割及び/又は融合がもはや必要とされなくなるまで、実行され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、ステップc)~e)は、ステップa)~b)の反復の最初の5~30%、好ましくは10%に対して実行される。
【0034】
ステップb)の後にステップc)~e)を実行することは、重心ボロノイ分割への収束が改善され得るという利点を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、密度場を生成することは、エンベロープによって囲まれたボリュームを、複数の、好ましくは四面体の一次ボクセルに分割することと、各一次ボクセルについて少なくとも1つの局所要件値を生成することとを含む。
【0036】
好ましくは、一次ボクセルには、それぞれ、特定の物理パラメータのための局所要件値が割り当てられる。例えば、各一次ボクセルには、特定の応力値が割り当てられ得る。更なる例では、各一次ボクセルに、特定の応力値及び特定の歪値が割り当てられ得る。
【0037】
一次ボクセルに対する局所要件値は、好ましくはFEMシミュレーションによって生成される。FEMシミュレーションによって生成された一次ボクセルの局所要件値は、コンピュータに記憶されたヒストグラムに出力されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、適応的ボロノイ分割を生成する前に、以下の前処理ステップがコンピュータによって実行される:エンベロープによって囲まれたボリュームを、複数の、好ましくは四面体の一次ボクセルに分割するステップ;エンベロープを取り囲む直方体エンベロープBBBを生成するステップ;エンベロープによって囲まれたボリュームenv_volを、エンベロープ内の全ての一次ボクセルのボリュームの総和として、直方体エンベロープによって囲まれたボリュームbbb_volを、直方体エンベロープ内の全てのボクセルのボリュームの総和として、それぞれ計算するステップ;最大グリッドサイズmax_gridを、最小表面構造の最大のチャネルの直径を表す最大チャネル直径max_channelと、最小表面構造の最小の壁幅を表す最小壁幅min_wallの総和の0.5倍として計算するステップ;最大グリッドサイズにおける直方体ボリューム内の点の数pts_bbbを、pts_bbb = (BBB_width/max_grid)x(BBB_depth/max_grid)x(BBB_height/max_grid)として計算するステップ(ここで、BBB_width、BBB_depth、BBB_heightは、それぞれ、直方体エンベロープBBBの幅、深さ及び高さを意味する);及び、最大グリッドサイズにおけるエンベロープ内の点の数pts_envを、pts_env = pts_bbb x (env_vol/bbb_vol)として計算するステップ。
【0039】
いくつかの実施形態では、散乱点の数pts_useが、pts_use = pts_env x prop_histとして計算され、ここで、prop_histは、物理パラメータの値が記録されるヒストグラムのビン内の特定の物理パラメータの全ての値の総和の、物理パラメータの最大値とビンの数との積に対する比である。
【0040】
いくつかの実施形態では、上述した前処理ステップによって生成された一次ボクセルは、複数の二次ボクセル、好ましくは立方体ボクセルによって置き換えられる。典型的には、二次ボクセルの数は、一次ボクセルの数よりも、好ましくは1桁以上大きい。二次ボクセルは、好ましくは、一次ボクセルの密度場値を内挿することによって生成される。
【0041】
いくつかの実施形態では、任意選択でステップc)~e)を含む反復a)~b)の後に、ボロノイセルが10個未満の二次ボクセルを含む場合、二次ボクセルの数が増加され、適応的ボロノイ分割の生成と、任意選択でステップc)~e)を含む反復a)~b)とが再開される。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1のスケルトングラフは、適応的ボロノイ分割のボロノイセルのエッジによって形成される。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2のスケルトングラフは、適応的ボロノイ分割の生成点のドロネー四面体分割によって形成される。
【0044】
好ましくは、第1及び第2のスケルトングラフは、上述したように、適応的ボロノイ分割が密度場に従って重心ボロノイ分割ンに収束した後に生成される。
【0045】
特に、自己交差のない最小表面構造を生成するために、2つの絡み合うスケルトングラフが達成され得る。
【0046】
ドロネー四面体分割を用いて生成されるが、第2のスケルトングラフは、トポロジー条件に適応するために、ドロネー四面体分割のエッジと一致しない1つ又は複数の補正されたセグメントを備え得る。例えば、そのようなトポロジー条件は、隣接するボロノイセルの生成点を接続する第2のスケルトングラフのセグメントが、隣接するボロノイセル内でのみ走ることを必要とし得る。そのようなセグメントが第3のボロノイセルを通過する場合、隣接するボロノイセルが隣接する平面に追加の点を挿入することができ、その結果、セグメントが、第3のボロノイセルの交差を回避する前記点を迂回することができる。そのような補正されたセグメントは、代替的に又は付加的に、第1のスケルトングラフに適用され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、3次元物品のエンベロープを横断する第1及び/又は第2のスケルトングラフのセグメントから、エンベロープによって囲まれたボリュームの外側にある第1のセグメント部分が除去され、第1及び/又は第2のスケルトングラフのセグメントがエンベロープを横断する位置におけるエンベロープに関する鏡像化により得られるセグメント部分によって置き換えられ、第2のセグメント部分はボリュームの内側にあり、第1のセグメント部分に隣接する。
【0048】
そうすることで、3次元物品のエンベロープ上の最小表面構造の本質的に垂直な隣接が達成され得る。これは、最小表面構造がシェルに荷重が作用する場所で本質的に垂直にシェルと交わり得るよう、最小表面構造が充填構造を形成するシェルを有する3次元物品にとって特に有利である。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のスケルトングラフの終端は、最小表面構造が造形支持体の使用なしには3Dプリントされ得ないオーバーハングを生成することを回避するために、変更される。これは、第1及び/又は第2のスケルトングラフの端部を、当該端部におけるセグメントが3次元物品の中心に向かって傾斜するよう変更することによって、達成され得る。これは、最小表面構造が造形支持体の使用なしに3Dプリントされるように設計されている、シェルのない3次元物品に特に有利である。
【0050】
最小表面の特徴としてのゼロ平均曲率は、本明細書に記載されるように、3次元物品の境界で変更された最小表面構造についてもはや満たされ得ない。しかしながら、ゼロ平均曲率は最小表面構造の実質的な部分に対して依然として満たされてもよく、本発明の文脈において、そのような最小表面構造は、依然として最小表面に基づくものと見なされるべきである。
【0051】
いくつかの実施形態では、3次元物品のエンベロープを超えて延びるボロノイセルはエンベロープでトリミングされ、トリミングされたボロノイセルの重心が密度場を用いて再計算される。
【0052】
代替的に、エンベロープを超えて延びるボロノイセルは、エンベロープを超えて延びることに関係なく、トリミングされなくてもよい。
【0053】
ラビリンス又はチャネルは、それぞれ、チャネルの周縁開口上でクロージャによって閉じられてもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、周縁開口上にクロージャを配置し、等角化平均曲率流アルゴリズムによる平滑化を適用することによって、閉じられる。そうすることによって、チャネルの内部空間平滑性は、有利には最大化され得る。いくつかの実施形態では、チャネルは、クロージャの中心を保持しながら、周縁開口上にクロージャを配置し、等角化平均曲率流アルゴリズムによる平滑化を適用することによって、閉じられる。そうすることによって、チャネルの内部ボリュームは、有利には最大化され得る。いくつかの実施形態では、V字形又は丸みを帯びたV字形のクロージャが、チャネルの周縁開口を閉じるために使用される。これは、壁幅を、チャネルの周縁開口における局所的なチャネル直径の半分よりも大きくすることによって達成され得る。丸み付けは、等角化平均曲率流アルゴリズムによって達成され得る。いくつかの実施形態では、最小表面構造がそれぞれ、エンベロープ若しくはシェルがそれぞれのチャネルを閉じるように、別個のクロージャを適用することなく又は最小表面構造の形状を変更することなく、それぞれ、最小表面構造がエンベロープ若しくはシェルに衝突する位置で、エンベロープ若しくはシェルと接合される。異なる閉鎖スキームが、チャネルの異なる周縁開口のために用いられてもよい。任意選択的に、理想的な力の伝達を可能にし、より高いレベルのアセンブリにおける最小表面構造の一体性を確実にするために、元の最小表面構造(クロージャなし)は、全ての閉鎖スキームのためにエンベロープに付加的に支持されてもよい。
【0054】
典型的には、2つのラビリンスが互いに素であってもよく、相互接続を示さなくてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、最小表面構造の壁が、2つのラビリンスが相互接続されることを可能にする1つ又は複数の穿孔を示してもよい。1つ以上の穿孔は、2つのラビリンス間に付加的な連結ラビリンスを生成することによって達成されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、2つのラビリンスは、エンベロープにおける接触空間を通じて相互接続されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、3次元物品が、異なるチャネル又は同じチャネルの1つ又は複数の周縁開口を相互接続する、エンベロープを超えて配置された1つ又は複数の外部配管要素を備えてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、各チャネルの2つの周縁開口を除く全ての周縁開口は、閉じられていない各開口部がそれぞれのチャネルの流体入口及び出口を形成することができるよう、閉じられる。そうすることで、2つの別個の媒体が、最小表面構造を通って流れること、特に対向して流れることを可能にし得る。これは、熱交換器又は均熱器構造にとって特に有利であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、2つのチャネル又はラビリンスがそれぞれ、異なるチャネルの1つ又は複数の周縁開口を相互接続することによって接続され、2つの周縁開口は開いたままであり、残りの周縁開口は閉じられる。開放されたままの2つの周縁開口は、好ましくは3次元物品の両側に配置される。開放されたままの2つの周縁開口は、入口及び出口として機能し得る。このような実施形態は、例えばヘリコプタの耐衝突性燃料タンク、又は、例えば宇宙船のゼロG対応燃料タンクに使用することができる。入口はタンクを燃料で満たすために使用されてもよく、タンクを動作させている間、ガスは入口を通じて充填され、燃料を、タンクを出るために出口に押しやることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、2つのラビリンスは、タンクを出る際に混合され得る、例えば水素及び酸素のような燃料の2つの成分を貯蔵するためのタンクの貯蔵区画として使用される。そのような実施形態は、例えばロケットにおいて使用され得る。いくつかの実施形態では、最小表面構造が、当該最小表面構造の壁の内部に埋め込まれた付加的なラビリンスを備えてもよい。例えば、3チャンバシステムが形成され得るよう、単一の付加的なラビリンスが、最小表面構造の壁の内部に埋め込まれ得る。これは、初期加熱及び/又は冷却を加速するために内部冷媒ループを有する熱交換器構造に特に有利であり得る。更なる例では、4チャンバシステムが形成され得るよう、2つの付加的なラビリンスが、最小表面構造の壁の内部に埋め込まれ得る。これは、初期加熱及び/又は冷却を加速するために2つの対向循環内部冷媒ループを有する熱交換器構造に特に有利であり得る。
【0060】
上述したような3又は4のチャンバシステムを有するいくつかの実施形態では、元のラビリンスによって生成された2つのチャンバは、最小表面構造の壁の内部に埋め込まれた1つ又は2つのチャンバよりも大きい。極低温燃料の場合、より大きいチャンバは1つの燃料成分又は2つの燃料成分を含むことができ、より小さいチャンバは冷媒ループを含むことができる。3又は4チャンバシステムのそのような実施形態は、ロケットの耐荷重構造として使用され得るロケットの燃料タンクとして機能し得る。耐荷重構造は、ロケットが大気中を上昇する間の空気力学的抵抗を低減するのに役立ち得る、超軽量エンベロープ又はスキンで囲まれてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のスケルトングラフからデジタル最小表面モデルを生成するステップは、第1及び第2のスケルトングラフから最小表面前駆体を生成するステップ;最小表面前駆体を平滑化することにより最小表面形状を生成するステップ;最小表面形状に壁幅を割り当てるステップ;及び、最小表面形状及び割り当てられた壁幅に従って、デジタル最小表面モデルを生成するステップを含む。
【0062】
好ましくは、最小表面前駆体は、第1及び第2のスケルトングラフに対して等距離にある面として生成される。いくつかの実施形態では、最小表面前駆体は、第1のスケルトングラフまでの第1の距離d及び第2のスケルトングラフまでの第2の距離sを有する面として生成される。いくつかの実施形態では、第1の距離d及び/又は第2の距離sは、第1及び/又は第2のスケルトングラフに沿って変化する。
【0063】
壁幅は、最小表面形状に割り当てられたグローバル壁幅値を有するグローバル壁幅であってもよい。代替的に、壁幅は、最小表面形状に沿って割り当てられている間に変化し、したがってデジタル最小表面モデルに従って生成された最小表面構造に沿って変化する、変化する壁幅であってもよい。したがって、異なる局所壁幅値が、最小表面形状の異なる位置で最小表面形状に割り当てられ得る。最小表面形状及び割り当てられた壁幅に従ってデジタル最小表面モデルを生成することによって、デジタル最小表面モデルは、最小表面構造がデジタル最小表面モデルに従って3Dプリントされ得るよう、最小表面形状によって定義されたジオメトリ、及び、割り当てられた壁幅を有する壁を取得し得る。
【0064】
局所壁幅値は、壁幅密度場から推測され得る。代替的に、局所壁幅値は、最小表面構造又は3次元物品の異なる位置における壁幅をそれぞれ特定する一連のルールと組み合わせて、密度場から推測されてもよく、一連のルールは、最小表面構造又は3次元物品の要件によってそれぞれ定義される。
【0065】
例えば、局所最大壁幅は、壁が最小表面構造内のチャネルを閉じることを防止するために、最小表面構造の最小チャネル直径に関連し得ると共に、一連のルールにおける局所壁幅の上限として定義され得る。更なる例では、局所壁幅に対するルールは、最小表面構造の1つ又は複数のチャネルを閉じるために、局所壁幅をチャネル直径に関連付けることによって定義され得る。更なる例では、局所壁幅に対するルールは、プリントされる材料の量が最小表面構造のあらゆる断面で一定であるべきという要件によって定義されてもよい。
【0066】
デジタル最小表面モデルの壁を生成するために、いくつかの実施形態では、最小表面形状から離れる両方向において最小表面形状から等間隔にある一対の等値面が生成され得る。いくつかの実施形態では、一対の等値面h、最小表面形状から等間隔ではない。いくつかの実施形態では、デジタル最小表面モデルの生成された壁が割り当てられた局所壁幅に従って有限の壁幅を示し得るよう、等値面の最小表面形状までの距離は、最小表面形状に割り当てられた局所壁幅に従って変化する。一対の等値面は、2つの等値面を連結する端面を生成することにより、等値面の周縁端で結合され得る。
【0067】
デジタル最小表面モデルを生成した後、エンベロープの外側に位置するデジタル最小表面モデルの部分は、その部分をエンベロープに戻すように突出させることによって除去されてもよく、ここでは重なり合う、自己交差する及び/又はゼロ面積表面部品及び/又は一致点が除去される。閾値面積を下回る面積を有する小さい表面部分は、融合され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のスケルトングラフからデジタル最小表面モデルを生成するステップは、第1のスケルトングラフに第1の電荷を割り当てるステップ;第2のスケルトングラフに第2の電荷を割り当てるステップであって、第2の電荷は、第1の電荷と絶対値において等しいが符号が逆であるステップ;及び、第1及び第2のスケルトングラフ及びそれらの電荷に基づいて計算されたクーロン力場を用いて、第1及び第2のスケルトングラフ間の等電位面として、最小表面前駆体を生成するステップを含む。
【0069】
そうすることで、第1及び第2のスケルトングラフに対して等距離にある最小表面前駆体を得ることができる。クーロン力場を用いて、第1及び第2のスケルトングラフ間の等電位面として、最小表面前駆体を生成することは、第1及び第2のスケルトングラフに対して等距離であると共に、スケルトングラフによって定義された2つのラビリンスを分離する最小表面前駆体を生成するための、効率的で処理電力を節約するスキームの利点を提供する。
【0070】
最小表面形状は、例えばK. Crane, U. Pinkall, P. Schroder, ACM Transactions on Graphics, July 2013, Article No.: 61, "Robust fairing via conformal curvature flow"に記載されているように、等角化平均曲率流アルゴリズムを用いることにより平滑化することによって生成され得る。得られた最小表面形状は、ゼロ平均曲率の条件について分析されることができ、等角化平均曲率流アルゴリズムがゼロ平均曲率条件に関して最小表面形状を最適化するために再適用され得る。代替的に、最小表面形状は、例えば、最小表面前駆体の二乗平均曲率を最小化し、ラプラス演算子及び/又はLS3ループ細分割を用いて平滑化することにより、最小表面前駆体から生成されてもよい。更なる平滑化スキームは、本出願人の出願PCT/IB2019/054076に記載されており、その記載は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
好ましくは、少なくとも1つの物理パラメータは、以下のうちの少なくとも1つから選択される:機械的荷重、応力値及び/又は分布、最大許容応力、歪、局所変形許容量、剛性、柔軟性、振動、特定の周波数範囲にわたる減衰、貯蔵可能な流体量、流体流れ、熱輸送、最小表面構造に沿った(壁の内部の)熱輸送、最小表面構造を横断する(第1のスケルトングラフのラビリンスから第2のスケルトングラフのラビリンスまで)熱輸送、質量量、質量分布、運動量分布、例えば物品の外周に沿って増大された材料密度のような物品ジオメトリ、最小表面構造の最小及び/又は最大チャネル直径、最小表面構造の最小及び/又は最大壁幅、所与の断面位置(3次元物品にわたって全体的に均一化された又は局所的に特定された)における最小表面構造のチャネルの又は最小表面構造の壁の強制断面積、例えばオーバーハングに隣接して又は水平な外側シェルの下で増大された密度のような3Dプリント適性、3次元物品の質量中心の位置、インプラント用途のための骨再成長に向けたジオメトリ最適化、材料吸収、透水性、ラビリンス間のボリューム比(スケルトングラフに関して非対称な壁幅又は最小表面前駆体の非対称なアライメントによって変化し得る)、ラビリンスの最小及び/又は最大ボイド。
【0072】
更なる態様によれば、本発明はまた、本発明による方法によって積層製造された最小表面構造に関する。
【0073】
最小表面構造の一実施形態では、最小表面構造は準周期構造である。
【0074】
最小表面構造の一実施形態では、最小表面構造は非晶構造である。
【0075】
更なる態様によれば、本発明は、3Dプリンタに、本明細書に記載されたデジタル最小表面モデルに従って最小表面構造を積層製造させるように適合されたコンピュータ実行可能命令を記憶した持続性コンピュータ可読媒体であって、コンピュータ実行可能命令は、コンピュータ内に3次元物品のエンベロープを記録するステップ;3次元物品のそれぞれの位置における少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値に対応する密度場の密度を有するエンベロープによって囲まれたボリュームにわたる密度場を生成するステップ;密度場を用いてボリュームの適応的ボロノイ分割を生成するステップ;適応的ボロノイ分割に関連する第1のスケルトングラフを生成するステップ;第1のスケルトングラフに関連する第2のスケルトングラフを生成するステップ;及び、第1及び第2のスケルトングラフからデジタル最小表面モデルを生成するステップを実行するコンピュータを含むものも対象としている
【0076】
更なる態様によれば、本発明は、本明細書に記載されているように、3Dプリンタによってデジタル最小表面モデルに従って最小表面構造を積層製造するのに適合した、デジタル最小表面モデルを生成するためのコンピュータによって実行される方法であって、コンピュータ内に3次元物品のエンベロープを記録するステップ;3次元物品のそれぞれの位置における少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値に対応する密度場の密度を有するエンベロープによって囲まれたボリュームにわたる密度場を生成するステップ;密度場を用いてボリューム(の適応的ボロノイ分割を生成するステップ;適応的ボロノイ分割に関連する第1のスケルトングラフを生成するステップ;第1のスケルトングラフに関連する第2のスケルトングラフを生成するステップ;第1及び第2のスケルトングラフからデジタル最小表面モデルを生成するステップ;及び、コンピュータ可読媒体上にデジタル最小表面モデルを記憶するステップを実行するプロセッサを含むものも対象としている。
【0077】
コンピュータ可読媒体は、持続性コンピュータ可読媒体又は搬送波として具現化されたデータ信号であり得る。
【0078】
更なる態様によれば、本発明はまた、本発明によるコンピュータ実行方法のステップをコンピュータが実行するようにコンピュータを制御するように構成されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0079】
本発明が、概略的な図面を参照して、例示的な実施形態によって、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】物品エンベロープ及び密度場エンベロープの斜視図を示す。
【
図2】
図1の密度場エンベロープ及び直方体エンベロープの斜視図を示す。
【
図3】四面体ボクセル場によって細分化された囲まれたボリュームを有する密度場エンベロープ及び物品エンベロープの斜視図を示す。
【
図4】
図3の密度場エンベロープの斜視図を、当該密度場エンベロープ内の計算された密度場と共に示す。
【
図5】物品エンベロープによって囲まれた容積にわたってランダムに分配された散乱点のセットの斜視図を示す。
【
図6】適応的ボロノイ分割、及び、
図5の散乱点を用いて、密度場エンベロープで囲まれたボリュームの適応的ボロノイ分割から生成された第1のスケルトングラフの斜視図を示す。
【
図7】
図6の適応的ボロノイ分割のドロネー四面体分割から生成される第2のスケルトングラフの斜視図を示す。
【
図8】
図6及び
図7の第1及び第2のスケルトングラフの斜視図を示す。
【
図9】第1及び第2のスケルトングラフから生成され、物品エンベロープから突出する、最小表面前駆体の斜視図を示す。
【
図10】
図9のもののような最小表面前駆体から得られ、物品エンベロープにトリミングされた最小表面形状の斜視図を示す。
【
図11】
図10のもののような最小表面形状の斜視図を、スケルトングラフと共に示す。
【
図12】
図11の最小表面形状から得られるデジタル最小表面モデルの斜視図を示す。
【
図13】
図12のデジタル最小表面の斜視図を、付加的に示された第2のスケルトングラフと共に示す。
【
図14】最小表面構造の実施形態を含む3次元物品としての熱交換器又は均熱器を有する人工衛星筐体の斜視図を示す。
【
図15】最小表面構造の実施形態によって形成される3次元物品としての脊椎ケージの斜視図を示す。
【
図16a】ポロジー条件に適応させるために、ドロネー四面体分割のエッジが修正される一連のステップを示す。
【
図16b】ポロジー条件に適応させるために、ドロネー四面体分割のエッジが修正される一連のステップを示す。
【
図16c】ポロジー条件に適応させるために、ドロネー四面体分割のエッジが修正される一連のステップを示す。
【
図17】3次元物品の最小表面構造を積層製造する方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図18】本発明による方法の一実施形態のブロック図を示す。
【
図19】3次元物品のエンベロープを横断するスケルトングラフのセグメントを処理する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1は、積層製造されるべき3次元物品の物品エンベロープ11と、物品エンベロープ11を囲む密度場エンベロープ12と、の斜視図を示す。物品エンベロープ11は円筒形状を有し、円筒状の3次元物品の境界を表す。密度場エンベロープ12は、デジタル最小表面モデルを生成するコンピュータの処理能力を低減するために、物品エンベロープ11の単純化を提供する7角柱である。
【0082】
図2は、
図1の密度場エンベロープ12と、密度場エンベロープ12を囲む直方体エンベロープ13(BBB)と、の斜視図を示す。直方体エンベロープ13、並びに、密度場エンベロープ12及び直方体エンベロープ13によって囲まれたボリュームのボクセルへの細分を使用して、最大グリッドサイズmax_gridにおける立方体ボリュームbbb_vol内の点pts_bbbの数は、
pts_bbb = (BBB_width/max_grid) x (BBB_depth/max_grid) x (BBB_height/max_grid)
として計算することができ、ここで、BBB_width、BBB_depth、BBB_heightは、直方体エンベロープBBBの幅、深さ及び高さを示す。最大グリッドサイズmax_gridは、最小表面構造の最大のチャネルの直径を表す最大チャネル直径max_channelと、3Dプリントされるべき最小表面構造の最小の壁幅を表す最小壁幅min_wallとの合計の0.5倍として計算される。このことから、最大グリッドサイズにおける密度場エンベロープ内の点の数pts_envは、
pts_env = pts_bbb x(env_vol/bbb_vol)
として計算することができる。
【0083】
図3は、四面体一次ボクセル122を有する四面体ボクセル場によって細分された密閉ボリューム121を有する密度場エンベロープ12の斜視図を示す。
図1の物品エンベロープ11が付加的に示されている。FEM(有限要素法)シミュレーションが、一次ボクセル122の各々について3次元物品の歪のような物理パラメータの局所的要件値を生成するために、コンピュータによって実行される。
【0084】
図4は、密度場エンベロープ12によって囲まれたボリューム121内の局所的要件値から生成された密度場2を示す。歪の本例では、密度場2の密度は、一次ボクセル122内の局所歪値に比例する。したがって、密度場2は、密度場エンベロープ12内の局所歪の空間マッピングを表す。したがって、密度は、ボリューム121に亘って変化する。例えば、
図4のボリューム121の下側中央領域(白色領域/ボクセル)の密度は、
図4のボリューム121の上側(黒色領域/ボクセル)よりも高く、これは応力がボリューム121の下側から上側に向かって減少することを示している。
図4から、密度は、ボリューム121の七角柱の前面上のより明るいボクセルによって示されるように、(
図4に示された向きにおいて)左右に隣接する2つの面のボクセルと比較して、ボリューム121の前側に向かってより高いことも認識され得る。
【0085】
図5は、物品エンベロープによって囲まれたボリューム121にわたってランダムに分配された後、
図4の密度場2に従って再分配された散乱点21のセットの斜視図を示す。密度場特性は、
pts_use=pts_env x are_prop
ここで、are_prop=area_histo / area_full
として、散乱点21(pts_use)の数の計算に更に含まれる。area_histo及びarea_fullは、FEMシミュレーションによって得られた全ての応力値又は密度値が記録されたヒストグラムによって得られる。area_histoは、ヒストグラム・ビン内の全ての応力又は密度の合計であり、area_fullは、ヒストグラム内の最大応力とヒストグラム内のビンの数との積である。pts_envは、上述したように、最大グリッドサイズにおける密度場エンベロープ内の点の数である。散乱点21は、適応的ボロノイ分割のボロノイセルの初期生成点として機能する。
【0086】
図6は、密度場エンベロープによって囲まれたボリューム121の適応的ボロノイ分割VOから導出された適応的ボロノイ分割VO及び第1のスケルトングラフAの斜視図を示しており、適応的ボロノイ分割VOは、初期生成点としての
図5の散乱点21から出発し、その後、
図3の密度場を用いて、上述したように重み付けされたスティップリングによって適応的ボロノイ分割VOのボロノイセルを反復的に生成するステップを実行することによって生成され、密度場に従って重み付けされた重心ボロノイ分割VOをもたらす。スケルトングラフAは、適応的ボロノイ分割VOのボロノイセルのエッジに沿って走る。スケルトングラフAに対しては、上述したように、ボロノイセルの生成点21を、密度場を用いてボロノイセルの重心にシフトさせるためのステップa)及びb)の反復が実行されている。更に、ステップc)~e)の反復も、上述したように、ボロノイセルのセル重みを用いてボロノイセルを分割及び/又は融合させるために実行されている。したがって、スケルトングラフAは、密度場に従ってボロノイセルの適応したサイズを有する密度場に従って、重み付き重心ボロノイ分割VOから生成されている。
【0087】
図7は、
図6の重心ボロノイ分割のドロネー四面体分割から生成される第2のスケルトングラフの斜視図を示す。
図6のボロノイセルの重心Cも示されている。第2のスケルトングラフBは、第1のスケルトングラフAと本質的に二重である。2つのスケルトングラフA及びBは、互いに交差することなく絡み合っている。
【0088】
図8は、
図6及び
図7の絡み合う第1及び第2のスケルトングラフの斜視図を示す。
【0089】
図9は、
図6~8に示された第1及び第2のスケルトングラフから生成され、物品エンベロープ11から突出する、最小表面前駆体3の斜視図を示す。最小表面前駆体3は、第1及び第2のスケルトングラフに対して等距離にある面である。最小表面前駆体3は、上述したように、第1及び第2のスケルトングラフに割り当てられた正及び負の電荷を用いて計算されたクーロン力場を用いて、等電位面として生成される。
【0090】
図10は、
図9のもののような最小表面前駆体から平滑化によって得られる最小表面形状4の斜視図を示す。最小表面形状4は、等角化平均曲率流アルゴリズムを用いることによって生成され、最小表面前駆体の境界は、等角化平均曲率流アルゴリズムを実行しながら、最小表面前駆体の収縮を防止するために保持される。
図8の第1及び第2のスケルトングラフ、したがって物品エンベロープから突出する
図9の最小表面前駆体3は、最小表面形状4を得るために最小表面前駆体3を平滑化するときに、物品エンベロープの位置においても、等角化平均曲率流アルゴリズムの最適な性能を保証する。
【0091】
図11は、
図10のもののような最小表面形状3の斜視図を示す。
図7の第2のスケルトングラフBは、説明のために付加的に示されている。第1のスケルトングラフは、改善された表現のために省略されている。
【0092】
図12は、
図11の最小表面形状3から得られるデジタル最小表面モデル5の斜視図を示す。デジタル最小表面モデル5は、
図10の最小表面形状3から等間隔にあるように生成された一対の等値面52.1及び52.2によって生成された壁51を含む。等値面52.1及び52.2間の距離は、壁51が壁幅を示すように
図10の最小表面形状3に割り当てられた当該壁幅に等しい。この例では、一定のグローバル壁幅が適用されている。等値面52.1及び52.2は、端面53によって接続される。当業者には、デジタル最小表面モデル5に従って積層製造された最小表面構造の図示が、
図12に示されるようなデジタル最小表面モデル5の表現と本質的に同じに見えることは明らかである。デジタル最小表面モデル5に従って3Dプリントされた最小表面構造は、3次元物品を構成することができる。代替的に、3次元物品は、デジタル最小表面モデル5に従って3Dプリントされた最小表面構造の境界に配置されたシェルを含んでもよい。シェルは、チャネル54を閉じてもよい。いくつかの実施形態では、チャネル54は、上述した方法のうちの1つによって閉じられてもよい。
【0093】
図13は、
図12のデジタル最小表面5の斜視図を、説明のために付加的に示された第2のスケルトングラフBと共に示す。第1のスケルトングラフは、改善された表現のために省略されている。
【0094】
図14は、本発明に従って積層製造された最小表面構造61の実施形態を含む3次元物品としての熱交換器又は均熱器を有する人工衛星筐体100の斜視図を示す。人工衛星筐体100の最小表面構造61は、黒いパイプ及び第1のスケルトングラフに関連する最小表面構造61の第1のラビリンスを通って流れる第1の伝熱媒体FAと、白いパイプ及び第2のスケルトングラフに関連する最小表面構造61の第2のラビリンスを通って流れる第2の伝熱媒体FBと、を有する熱交換器として機能する。媒体FA及びFBは逆方向に流れ、したがって、人工衛星筐体100を横断する(日光が当たる領域と日陰の領域との間の)温度平衡を提供し、これにより、温度差による筐体100の応力及び変形の低減が可能になる。
【0095】
図15は、本発明に従って積層製造された最小表面構造62の実施形態によって形成される3次元物品としての脊椎ケージ200の斜視図を示す。スケールバーは1cmである。最小表面構造62の小さな周縁チャネル621は、理想的な骨内部成長に向けて最適化される。より大きなチャネル622は、安定性を向上するのに役立つ。最小表面構造の壁幅は、3Dプリンタの能力に応じて、0.4mm以下である。脊椎ケージ200の図示された例では、骨の内部成長特性が密度場のための一連の局所的要件値を提供する。骨内部成長は、通常、インプラント手術の前に、脊椎ケージ200内に自身の、ドナーの又は人工の骨髄を挿入することによって支持される。マグネシウム又はbTCP若しくはHAのようなバイオセラミックから作製された吸収性インプラントの場合、機械的耐荷重能力に関連する吸収曲線が、密度場のための一連の局所的要件値を提供する。例えば、骨接触が生じる最小表面構造62の周縁領域は、骨内部成長を最適化するために、0.8~1.2mmのチャネル直径を示すことが要求される。更に、マグネシウム又はバイオセラミックから作製され得る図示の脊椎ケージ200については、最小表面構造62の中央領域の壁は、十分な耐荷重能力(バイオセラミックの場合)を保証するために十分な壁幅を示すこと、並びに、骨内部成長が起こる時間スケールに亘って、最小表面構造62の耐荷重能力が保護される量の材料のみを生体吸収が除去することが必要とされる。
【0096】
図16(a)~(c)は、隣接するボロノイセルの生成点を接続するドロネー四面体分割に関連する第2のスケルトングラフのセグメントが、隣接するボロノイセル内のみを走ることを要求するトポロジー条件に適応するために、ドロネー四面体分割のエッジが補正される一連のステップを示す。説明のために、
図16(a)~(c)は、2次元構成について示されている。当業者は、示された補正スキームが、相応して3次元の場合に置き換えられ得ることを認識する。
図16(a)は、点線によって境界付けられたボロノイセルを有する適応的ボロノイ分割を、生成点並びにボロノイセルのコーナー及びエッジの中点を示す点と共に示す。
図16(b)は、ボロノイセルの生成点を実線で接続することによる、ドロネー三角分割を示す。エッジEは、トポロジー条件を満たさず、破線曲線に従って補正されなければならないドロネー三角分割のエッジを示す。
図16(c)は、トポロジー条件が満たされるよう、
図16(b)のエッジEが、
図16(b)の破線曲線に従って、迂回を行うと共に隣接するボロノイセルのエッジの中点を通るエッジによって置き換えられた、補正されたドロネー三角形分割を示す。補正されたドロネー三角分割から得られた第2のスケルトングラフは、適応的ボロノイ分割から得られた第1のスケルトングラフと、本質的に二重である。
【0097】
図17は、本発明に従って3次元物品の最小表面構造を積層製造する方法の一実施形態を示すフローチャートである。ステップS1において、コンピュータは、3次元物品のエンベロープをそれ自体に記録する。ステップS2において、コンピュータは、3次元物品のそれぞれの位置における少なくとも1つの物理パラメータの局所要件値に対応する密度場の密度を有するエンベロープによって囲まれたボリュームにわたる密度場を生成する。ステップS3において、コンピュータは、密度場を用いて、ボリュームの適応的ボロノイ分割を生成する。ステップS4において、コンピュータは、適応的ボロノイ分割に関連する第1のスケルトングラフを生成する。ステップS5において、コンピュータは、第1のスケルトングラフに関連する第2のスケルトングラフを生成する。ステップS6において、コンピュータは、第1及び第2のスケルトングラフから、デジタル最小表面モデルを生成する。ステップS7において、3Dプリンタが、デジタル最小表面モデルに従って最小表面構造を積層製造する。
【0098】
図18は、本発明による方法の実施形態のブロック図を示す。まず、
図17に示されるような方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を記憶した、記憶装置のような持続性コンピュータ可読媒体101を有するコンピュータ10が、デジタル最小表面モデル5を生成する。デジタル最小表面モデル5は、記憶装置のような持続性コンピュータ可読媒体20上にCADファイルとして記憶される。CADファイルを用いて、3Dプリンタ30が、デジタル最小表面モデル5に従って最小表面構造63をプリントする。
【0099】
図19は、3次元物品のエンベロープを横断するスケルトングラフのセグメントを処理する例を示しており、3次元物品のエンベロープを横断する第1及び/又は第2のスケルトングラフのセグメントから、エンベロープによって囲まれたボリュームの外側にある第1のセグメント部分が除去され、第1及び/又は第2のスケルトングラフのセグメントがエンベロープを横断する位置におけるエンベロープに関する鏡像化により得られるセグメント部分によって置き換えられ、第2のセグメント部分はボリュームの内側にあり、第1のセグメント部分に隣接する。
図19に見られるように、開放端セグメントA"'(x)、すなわち更なるセグメントに接続せずボイドに終わるセグメントが除去されている。更に、最も外側のセグメント、すなわち物品のスキン25を横断するセグメントから、スキンの外側の部品A"'(o)が除去され、物品の内側のセグメント部分A"'(i)の鏡像A"'(m)と置き換えられ、それによって、鏡像は、セグメントが横断する場所で、その内側でスキン25に関して鏡映される部分の鏡像である。これは、結果として生じる最小表面構造が、本質的に垂直な方向でエンベロープ25に接触し、したがって、理想的な荷重導管を提供することを確実にする。