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特許7595091配光制御装置、車両用灯具システムおよび配光制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】配光制御装置、車両用灯具システムおよび配光制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20241128BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20241128BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20241128BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20241128BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241128BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20241128BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20241128BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20241128BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20241128BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
F21S41/153
F21S41/663
B60Q1/14 H
F21Y105:10
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y115:20
F21Y115:15
F21W102:14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022569870
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2021044657
(87)【国際公開番号】W WO2022131043
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2024-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2020207082
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021109511
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】角谷 大樹
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117155(JP,A)
【文献】特開2009-214801(JP,A)
【文献】特開2016-107743(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111837023(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0031200(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
F21S 41/153
F21S 41/663
F21Y 105/10
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21Y 115/20
F21Y 115/15
F21W 102/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
車両の前方領域を撮像する撮像装置に基づく画像を用いて、強度分布が可変である可視光ビームを前記前方領域に照射可能な配光可変ランプを制御する配光制御方法であって、
前記画像に含まれる所定の高輝度画素に対応する前方領域に照射する光を照度調節の対象光に定め、前記高輝度画素の示す輝度値が所定の目標低輝度に徐々に近づくように前記対象光の照度を調節し、当該調節において前記照度を上げる際は前記照度を下げる際よりも小さい変化量で前記照度を変化させることを含む、
配光制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配光制御装置、車両用灯具システムおよび配光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の周囲の状態に基づいて配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)制御が提案されている。ADB制御は、自車前方に位置する、高
輝度の光照射を避けるべき減光対象の有無をカメラで検出し、減光対象に対応する領域を減光あるいは消灯するものである(例えば、特許文献1参照)。減光対象としては、先行車や対向車等の前方車両が挙げられる。前方車両に対応する領域を減光あるいは消灯することで、前方車両の運転者に与えるグレアを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-088224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のADB制御では、減光対象としてもっぱら前方車両が検討されてきた。これに対し、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、道路標識、視線誘導標(デリニエータ)、看板等の光反射物も、重要な減光対象であることを見出した。すなわち、近年は車両用灯具の高輝度化が進み、光反射物によって反射する光の強度が高まる傾向にある。このため、光反射物から高輝度の光が反射されて、自車両の運転車がグレアを受けるおそれが高まってきた。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、光反射物に起因するグレアの低減を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、車両の前方領域を撮像する撮像装置に基づく画像を用いて、強度分布が可変である可視光ビームを前方領域に照射可能な配光可変ランプを制御する配光制御装置である。この配光制御装置は、画像に含まれる所定の高輝度画素に対応する前方領域に照射する光を照度調節の対象光に定め、高輝度画素の示す輝度値が所定の目標低輝度に徐々に近づくように対象光の照度を調節し、当該調節において照度を上げる際は照度を下げる際よりも小さい変化量で照度を変化させる。
【0007】
本発明の他の態様は、車両用灯具システムである。この車両用灯具システムは、車両の前方領域を撮像する撮像装置と、強度分布が可変である可視光ビームを前方領域に照射可能な配光可変ランプと、上記態様の配光制御装置と、を備える。
【0008】
また、本発明の他の態様は、車両の前方領域を撮像する撮像装置に基づく画像を用いて、強度分布が可変である可視光ビームを前方領域に照射可能な配光可変ランプを制御する配光制御方法である。この配光制御方法は、画像に含まれる所定の高輝度画素に対応する前方領域に照射する光を照度調節の対象光に定め、高輝度画素の示す輝度値が所定の目標低輝度に徐々に近づくように対象光の照度を調節し、当該調節において照度を上げる際は照度を下げる際よりも小さい変化量で照度を変化させることを含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光反射物に起因するグレアの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
図2図2(a)は、基準配光パターンの形成下で得られる画像を示す図である。図2(b)は、輝度解析部の解析結果を示す図である。
図3】対象光の照度の推移を示す図である。
図4】対象光の照度の推移を示す図である。
図5】対象光の照度の推移を示す図である。
図6】配光制御の一例を示すフローチャートである。
図7】変形例1における対象光の照度の推移を示す図である。
図8】変形例2における対象光の照度の推移を示す図である。
図9】変形例2に係る配光制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。図1では、車両用灯具システム1の構成要素の一部を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0014】
車両用灯具システム1は、配光可変ランプ2と、撮像装置4と、配光制御装置6とを備える。これらは全て同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は筐体の外部に設けられてもよい。例えば、配光可変ランプ2、撮像装置4および配光制御装置6は、灯室に収容される。灯室は、車両前方側に開口部を有するランプボディと、ランプボディの開口部を覆うように取り付けられた透光カバーとによって区画される。なお、撮像装置4および配光制御装置6は、車体に収容されてもよい。
【0015】
配光可変ランプ2は、強度分布が可変である可視光ビームL1を自車両の前方領域に照射可能である。配光可変ランプ2は、前方領域に並ぶ複数の個別領域Rに照射する光の照度を個別に変更可能である。複数の個別領域Rは、例えばマトリクス状に配列される。配光可変ランプ2は、配光制御装置6から配光パターンPTNを指示する情報を受け、配光パターンPTNに応じた強度分布を有する可視光ビームL1を出射する。これにより、自車前方に配光パターンPTNが形成される。配光パターンPTNは、配光可変ランプ2が自車前方の仮想鉛直スクリーン900上に形成する照射パターン902の2次元の照度分布と把握される。
【0016】
配光可変ランプ2の構成は特に限定されず、例えばマトリクス状に配列された複数の光源と、各光源を独立に駆動して点灯させる点灯回路と、を含む。光源の好ましい例としては、LED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)、有機または無機EL(エレクトロルミネセンス)等の半導体光源が挙げられる。各個別領域Rと各光源とが対応付けられて、各光源から各個別領域Rに対して個別に光が照射される。なお、配光可変ランプ2は、配光パターンPTNに応じた照度分布を形成するために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイス等のマトリクス型のパターン形成デバイスや、光源光で自車
前方を走査するスキャン光学型のパターン形成デバイス等を含んでもよい。
【0017】
配光可変ランプ2のフレームレートは、例えば60fpsである。つまり、配光可変ランプ2は、1秒間に60回、配光パターンPTNを更新することができる。この場合、配光可変ランプ2が1つの配光パターンPTNを形成する時間(1フレーム)は、約16.7ミリ秒である。また、配光可変ランプ2の解像度、言い換えれば配光分解能は、例えば10ピクセル~200万ピクセルである。配光可変ランプ2の解像度は、配光パターンPTNにおいて独立に照度を変更できる単位領域の数を意味する。一例として各単位領域は、各個別領域Rと対応する。
【0018】
撮像装置4は、可視光領域に感度を有し、車両の前方領域を繰り返し撮像する。撮像装置4は、車両前方の物体による可視光ビームL1の反射光L2を撮像する。撮像装置4は、少なくとも可視光ビームL1の波長域に感度を有していればよい。撮像装置4が生成した画像IMGは、配光制御装置6に送られる。また、画像IMGは車両ECUにも送られる。車両ECUは、取得した画像IMGをADASや自動運転における物標認識に利用することができる。
【0019】
なお、配光制御装置6が取得する画像IMGは、RAW画像データであってもよいし、撮像装置4あるいは他の処理部によって所定の画像処理が施された画像データであってもよい。以下の説明において、「撮像装置4に基づく画像IMG」は、RAW画像データおよび画像処理が施されたデータのどちらであってもよいことを意味する。また、両画像データを区別せずに「画像IMG」と表現する場合もある。撮像装置4のフレームレートは、例えば60fps~120fps(1フレームあたり約8.3~16.7ms)である。また、撮像装置4の解像度は、例えば30万ピクセル~500万ピクセルである。
【0020】
配光制御装置6は、撮像装置4に基づく画像IMGを用いて、配光可変ランプ2からの光照射を制御し、配光パターンPTNを動的、適応的に制御する。配光制御装置6は、デジタルプロセッサで構成することができ、例えばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array
)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。配光制御装置6は、一例として輝度解析部8と、パターン決定部10と、ランプ制御部12とを有する。各部は、自身を構成する集積回路が、メモリに保持されたプログラムを実行することで動作する。
【0021】
輝度解析部8は、撮像装置4に基づく画像IMGを用いて、各個別領域Rの輝度を解析する。輝度解析において、例えば輝度解析部8は、所定の輝度しきい値を用いて画像IMGにおける各画素の輝度値を2値化する。そして、輝度解析部8は、2値化画像に含まれる所定の高輝度画素を特定する。輝度解析部8は、解析結果をパターン決定部10に送る。輝度しきい値は、実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能であり、輝度解析部8が予めメモリに保持している。
【0022】
パターン決定部10は、輝度解析部8の解析結果に基づいて各個別領域Rに照射する光の照度を定めて、前方領域に形成する配光パターンPTNを決定する。配光パターンPTNの決定において、パターン決定部10は、画像IMGに含まれる高輝度画素の示す輝度値(画素値)が所定の目標低輝度に徐々に近づくように、高輝度画素に対応する前方領域に照射する光の照度を調節する。パターン決定部10は、目標低輝度に関する情報を予めメモリに保持している。目標低輝度は、光反射物からの反射光で運転者が受けるグレアを低減し且つ運転者が光反射物を視認可能な輝度であり、実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。パターン決定部10は、決定した配光パターンPTNに関する情報をランプ制御部12に送る。
【0023】
ランプ制御部12は、パターン決定部10が決定した配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ2を制御する。例えば、光源の調光方法がアナログ調光である場合、ランプ制御部12は、光源に流れる駆動電流の直流レベルを調節する。また、光源の調光方法がPWM(Pulse Width Modulation)調光である場合、ランプ制御部12は、光源に流れる電流をスイッチングし、オン期間の比率を調節することで、駆動電流の平均レベルを調節する。また、配光可変ランプ2がDMDを含む場合、ランプ制御部12は、DMDを構成する各ミラー素子のオン/オフ切り替えを制御してもよい。配光可変ランプ2が液晶デバイスを有する場合、ランプ制御部12は、液晶デバイスの光透過率を制御してもよい。これにより、自車前方に配光パターンPTNが形成される。
【0024】
以下、配光制御装置6が実行する配光制御についてより詳細に説明する。図2(a)は、基準配光パターンPTN0の形成下で得られる画像IMG0を示す図である。図2(b)は、輝度解析部8の解析結果を示す図である。図3図4および図5は、対象光の照度の推移を示す図である。なお、図3~5における縦軸は、配光可変ランプ2の最大定格での照度(最大照度)を100%としたときの照度の割合を示している。
【0025】
配光制御装置6が実行する配光制御の一例において、まずランプ制御部12は、基準配光パターンPTN0を形成するよう配光可変ランプ2を制御する。ランプ制御部12は、基準配光パターンPTN0に関する情報を予め保持している。基準配光パターンPTN0が形成されると、図2(a)に示すように、基準配光パターンPTN0の形成下にある自車前方の状況を映す画像IMG0が撮像装置4によって生成される。基準配光パターンPTN0は、各画素、つまり各個別領域Rの輝度値に依存しない固定照度の配光パターンである。したがって、基準配光パターンPTN0は、後述する遮光部や減光部を含まない。一例としての基準配光パターンPTN0は、撮像装置4の撮像範囲の略全体を最大定格での照度で照らす配光パターンである。以下の説明では、基準配光パターンPTN0の照度を基準照度という。
【0026】
輝度解析部8は、基準配光パターンPTN0を形成したときに得られる画像IMG0を用いて高輝度画素を特定する。すなわち、輝度解析部8は、上述した輝度しきい値を用いて画像IMG0に輝度値の2値化処理を施す。図2(a)に示す例では、前方領域に道路標識102と、先行車104と、対向車106とが存在する。光反射物である道路標識102は、基準配光パターンPTN0の形成下では高輝度体として撮像される。本実施の形態において、光反射物とは、道路標識102、視線誘導標および看板からなる群から選択される少なくとも1種である。あるいは、光反射物は、少なくとも自車から視認される部分に再帰性反射面を有する物体である。また、先行車104のリアランプおよび対向車106のヘッドランプは、自発光体であるため高輝度体として撮像される。
【0027】
したがって、図2(b)に示すように、画像IMG0の2値化処理によって得られる2値化画像IMG1には、道路標識102に対応する高輝度画素202と、先行車104のリアランプに対応する高輝度画素204と、対向車106のヘッドランプに対応する高輝度画素206とが含まれる。よって、輝度解析部8は、2値化画像IMG1から高輝度画素202~206を特定することができる。なお、高輝度画素202~206はそれぞれ、一例として複数の画素の集合である。
【0028】
パターン決定部10は、輝度解析部8によって特定された高輝度画素202~206と重なる前方領域(個別領域R)に照射する光を照度調節の対象光に定める。また、本実施の形態のパターン決定部10は、高輝度画素202~206に対応する前方領域に照射する光に加え、高輝度画素202~206の周囲に位置する周囲画素302~306に対応する前方領域に照射する光も対象光に含める。
【0029】
各周囲画素の範囲、言い換えれば各周囲画素の形状は特に限定されないが、例えば各高輝度画素と相似形状に設定される。先行車104の運転者や対向車106の運転者に対する遮光部は、別の配光制御において設定される。なお、本実施の形態の配光制御の中で前方車両の運転者に対する遮光部が決定されてもよい。この場合、高輝度画素が前方車両のランプに由来するものであることは、高輝度画素のペア性、つまり2つの高輝度画素が車幅方向に所定の間隔をあけて配列されていることや、2値化画像IMG1中の位置に基づいて推定することができる。また、前方車両の運転者が存在する位置は、高輝度画素の位置に基づいて推定することができる。
【0030】
そしてパターン決定部10は、図3図5に示すように、基準配光パターンPTN0形成後の最初(1フレーム目)に形成する配光パターンPTNを決定する際、対象光の照度を所定の最低照度まで下げる。最低照度は、目標低輝度に対応する照度よりも低い値である。本実施の形態では、最低照度は0%(遮光)であるが、これに限らず実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。対象光以外の光の照度は、例えば基準照度(最大照度)を維持する。パターン決定部10は、決定した配光パターンPTNに関する情報をランプ制御部12に送る。ランプ制御部12は、決定した配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ2を制御する。これにより、前方領域には、道路標識102、先行車104および対向車106と重なる遮光部(照度0%の減光部ともいえる)を含む配光パターンPTNが形成される。なお、光反射物に起因する高輝度画素と重なる前方領域に遮光部が形成されることで、この高輝度画素の輝度値は高輝度ではなくなるが、このような画素も便宜的に「高輝度画素」と表記し、基準配光パターンPTN0の形成下で高輝度画素でなかった画素と区別する。
【0031】
その後、パターン決定部10は、2フレーム目以降に形成する配光パターンPTNを決定する際、高輝度画素の輝度値が目標低輝度に徐々に近づくように対象光の照度を調節する。これにより、配光パターンPTN中に減光部が形成される。また、この配光パターンPTNの決定に際し、パターン決定部10は、更新された配光パターンPTNの形成下で得られる画像IMGにおいて、配光パターンの更新前に特定していた各高輝度画素の画素値、つまり対象光を照射した前方領域に対応する画素の画素値を検出し、検出結果に基づいて次の配光パターンPTNを決定する。また、輝度解析部8は、当該画像IMGを用いて高輝度画素の特定処理を実行する。これにより、新たな高輝度画素の出現を検出することができる。
【0032】
対象光の照度調節において、パターン決定部10は、照度を上げる際は照度を下げる際よりも小さい変化量で対象光の照度を変化させる。本実施の形態のパターン決定部10は、対象光の照度を固定減少量と固定増加量とを用いて調節する。固定減少量および固定増加量は、固定の照度変化量である。一例としての固定減少量は、最大照度と最小照度との差よりも小さい。また、固定増加量は、固定減少量よりも小さい。固定減少量および固定増加量は、実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能であり、パターン決定部10が予めメモリに保持している。
【0033】
つまり、次の配光パターンPTNを決定する際、対象光の照度を増加させる場合は固定増加量だけ照度を増加させ、対象光の照度を減少させる場合は固定減少量だけ照度を減少させる。したがって、高輝度画素の輝度値が目標低輝度より低い状態では、配光パターンPTNを更新する毎に、当該高輝度画素の輝度値が固定増加量分だけ漸増していく。一方、高輝度画素の輝度値が目標低輝度より高い状態では、配光パターンPTNを更新する毎に、当該高輝度画素の輝度値が固定減少量分だけ漸減していく。
【0034】
高輝度画素202に対応する対象光の照度は、パターン決定部10によって次のように調整される。すなわち、高輝度画素202の基である道路標識102は、光反射物であり自発光体ではない。したがって、対象光の照度が最低照度となった状態では、高輝度画素202の輝度値は目標低輝度を下回っている。そこで、パターン決定部10は、次フレームの配光パターンPTNを決定する際に、対象光の照度を固定増加量だけ増加させる。これにより、図3および図4に示すように、対象光の照度が段階的に増加していく。
【0035】
そして、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えたとき、パターン決定部10は、対象光の照度の増加を停止する。図3に示す例では、8フレーム目の配光パターンPTNを形成したとき、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えている。図4に示す例では、5フレーム目の配光パターンPTNを形成したとき、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えている。また、パターン決定部10は、照度の増加を停止した後に形成する配光パターンPTNを決定する際、照度しきい値の大きさに応じて、異なる態様で対象光の照度を定める。照度しきい値は、目標低輝度に対応する照度である。つまり、照度しきい値の光を照射したとき、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度となる。
【0036】
目標低輝度は、光反射物に起因するグレア抑制等の観点から定まるため、光反射物の種類に依らず一律に同じ値にすることができる。これに対し照度しきい値は、目標低輝度が同じであっても、各光反射物における可視光の反射率によって変化する。光反射物の反射率は、総じて高い傾向にあるが必ずしも同一ではない。反射率が相対的に高い場合、高輝度画素202の輝度値を目標低輝度まで下げるためには、対象光の照度を大きく低下させる必要がある。したがって、照度しきい値は低い値になる。一方、反射率が相対的に低い場合、高輝度画素202の輝度値を目標低輝度まで下げるために必要な照度の低減量は少なくて済む。したがって、照度しきい値は高い値になる。なお、照度しきい値は、目標低輝度と光反射物の反射率とから自ずと定まる。したがって照度しきい値は、パターン決定部10によって予め保持されない。
【0037】
パターン決定部10は、対象光の照度が照度しきい値を超えたとき、つまり高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えたときの対象光の照度が、固定減少量より大きい場合と固定減少量以下である場合とで、次フレームの配光パターンPTNにおける対象光の照度を異ならせる。上述のとおり、固定減少量の情報は予めメモリに保持されている。また、パターン決定部10は、直前の配光パターンPTNを決定する際に定めた対象光の照度を記憶している。したがって、固定減少量と対象光の照度との大小を判断することができる。
【0038】
高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えたときの対象光の照度が固定減少量より大きい場合、パターン決定部10は、図3に示すように9フレーム目の配光パターンPTNにおいて、対象光の照度を固定減少量だけ下げる。これにより、対象光の照度が照度しきい値を下回り、よって高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を下回る。高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を下回ったら、パターン決定部10はその後の配光パターンPTNの決定において、再び対象光の照度を固定増加量だけ上げていく。以降は、対象光の照度の段階的な増加と1回の減少とが繰り返される。
【0039】
高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えたときの対象光の照度が固定減少量以下である場合、パターン決定部10は、図4に示すように6フレーム目以降の配光パターンPTNにおいて対象光の照度を固定する。
【0040】
また、高輝度画素204,206に対応する対象光の照度は、パターン決定部10によって次のように調整される。すなわち、高輝度画素204,206の基である前方車両のランプは、自発光体である。このため、1フレーム目の配光パターンPTNで高輝度画素204,206に対応する前方領域に照射する対象光の照度を最低照度まで下げても、高輝度画素204,206の輝度値は変化しない。よって、パターン決定部10は、対象光の照度を上げる制御に転じることができない。この結果、図5に示すように、高輝度画素204,206に対応する前方領域に照射する対照光の照度は最低照度に維持される。
【0041】
ランプ制御部12は、配光制御における最初の配光パターンPTNの形成時に、遮光部や減光部を含まない基準配光パターンPTN0を形成するよう配光可変ランプ2を制御する。それ以降の配光制御では、画像IMGに高輝度画素が含まれていれば、上述のように対象光の照度が調整された、つまり一部に遮光部や減光部を含む配光パターンPTNが形成される。高輝度画素の基となる光反射物等が移動した場合(画像IMG内での移動と画像IMG外への移動とを含む)、当該光反射物等が存在していた位置に照射されていた対象光の照度は、配光パターンPTNの更新毎に漸増していき、最終的には基準照度に戻る。一例として、対象光の照度が基準照度に戻ると、パターン決定部10は、当該対象光について対象光の指定を解除する。光反射物等の移動や新たな出現により、高輝度画素が新たに出現した場合は、当該高輝度画素と重なる前方領域に照射する光の照度が基準照度から最低照度まで下げられた後、高輝度画素の輝度値が目標低輝度に徐々に近づくように調節される。
【0042】
図6は、配光制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、例えば図示しないライトスイッチによって配光制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0043】
配光制御装置6は、配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ2を制御する(S101)。配光制御の最初の配光パターン形成である場合、配光制御装置6は、基準配光パターンPTN0を形成するよう配光可変ランプ2を制御する。また、配光制御装置6は、配光パターンPTNの形成フラグを生成してメモリに保持する。最初の配光パターン形成であるか否かは、この形成フラグの有無に基づいて判断することができる。最初の配光パターン形成でない場合、前ルーチンで決定した配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ2を制御する。続いて、配光制御装置6は、撮像装置4から画像IMGを取得し(S102)、画像IMGに高輝度画素が存在するか判断する(S103)。
【0044】
高輝度画素が存在する場合(S103のY)、配光制御装置6は、対象光の照度を基準照度から最低照度に下げる。つまり、次に形成する配光パターンPTN中に遮光部を定める(S104)。なお、対象光の照度が基準照度未満である場合、つまり対象光が減光部を形成している場合は、本ステップでは対象光の照度を維持する。高輝度画素が存在しない場合(S103のN)、配光制御装置6は、ステップS104をスキップする。続いて、配光制御装置6は、ステップS101で形成した配光パターンPTNが減光部(遮光部を含む)を有するか判断する(S105)。配光パターンPTNが減光部を有しない場合(S105のN)、配光制御装置6は、各個別領域Rに照射される光の照度を基準照度に維持し(S106)、本ルーチンを終了する。なお、ステップS104で遮光部を定めた場合、ステップS106において遮光部の照度は維持される。ステップS106を経て決定された配光パターンPTNは、次ルーチンにおけるステップS101で形成される。
【0045】
ステップS101で形成した配光パターンPTNが減光部を有する場合(S105のY)、配光制御装置6は、対応する個別領域Rの輝度値が目標低輝度を超える減光部があるか判断する(S107)。輝度値が目標低輝度を超える減光部がある場合(S107のY)、この場合は該当する減光部の照度が照度しきい値を超えていることを意味するため、配光制御装置6は、該当する減光部の照度を低減または固定する(S108)。輝度値が目標低輝度を超える減光部がない場合(S107のN)、配光制御装置6は、ステップS108をスキップする。続いて、配光制御装置6は、ステップS101で形成した配光パターンPTNにおいて、対応する個別領域Rの輝度値が目標低輝度以下である減光部の照度を固定増加量だけ増加させ(S109)、本ルーチンを終了する。ステップS109を経て決定された配光パターンPTNは、次ルーチンにおけるステップS101で形成される。なお、輝度値が目標低輝度を超える減光部のみを配光パターンPTNが有する場合、ステップS109における処理は、実質的に省略される。また、配光パターンPTNの形成フラグは、ライトスイッチによって配光制御の停止指示がなされた際や、イグニッションがオフになったときに削除される。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態に係る配光制御装置6は、車両の前方領域を撮像する撮像装置4に基づく画像IMGを用いて、前方領域に強度分布が可変である可視光ビームL1を照射可能な配光可変ランプ2を制御する。配光制御装置6は、画像IMGに含まれる所定の高輝度画素202~206に対応する前方領域に照射する光を照度調節の対象光に定め、高輝度画素202~206の示す輝度値が所定の目標低輝度に徐々に近づくように対象光の照度を調節する。パターン決定部10は、当該調節において照度を上げる際は照度を下げる際よりも小さい変化量で照度を変化させる。
【0047】
自車のヘッドランプから光反射物に光を照射した際、光反射物から高輝度の光が反射されて運転者が眩しく感じることがある。一方で、光反射物は自発光体ではないため、光反射物への光照射を弱めると光反射物に対する運転者の視認性が低下し得る。したがって、光反射物に光を照射する際には、光反射物に起因するグレアの低減と、光反射物に対する視認性の低下抑制との両立が求められる。
【0048】
また、近年ドライバーの運転操作を支援する技術として、先進運転支援システム(ADAS:Advanced driver-assistance systems)や自動運転技術の研究開発が進められている。
ADASや自動運転技術では、機械の目であるカメラ等の撮像装置によって自車前方の状況を把握して、状況に応じた車両制御を実行する。光反射物から高輝度の光が反射されると、撮像装置が生成する画像に白飛びが発生し状況把握の妨げとなり得る。また、光反射物への光照射を弱めると、撮像装置によって光反射物が検知され難くなる。このため、光反射物に対する光照射の制御は、ADASや自動運転技術の精度向上にも有用である。
【0049】
これに対し、本実施の形態に係る配光制御装置6は、光反射物に起因する高輝度画素202の輝度値が目標低輝度に近づくように対象光の照度を調節している。これにより、光反射物に対する視認性を維持しながら、光反射物に起因するグレアを低減することができる。
【0050】
また、光反射物に起因するグレアを低減する方法としては、1回の最大照度での光照射と1回以上の最低照度での光照射(照度ゼロの場合も含む)とを組み合わせて、光反射物への光の平均照射量を抑えることが考えられる。しかしながら、この方法の場合は、最大照度で光を照射したときと最低照度で光を照射したときとで光反射物の輝度差が大きくなり、光反射物の明滅が運転者や撮像装置にちらつきとして視認されやすくなる。ちらつきが視認されないようにするためには、高フレームレート(例えば800fps以上)の配光可変ランプを用いる必要がある。
【0051】
これに対し、本実施の形態の配光制御装置6は、高輝度画素202の輝度値を目標低輝度に徐々に近づけていく。つまり、光反射物の輝度が最大照度時と最低照度時との輝度差よりも小さく変化するように、対象光の照度を変化させている。これにより、配光可変ランプのフレームレートが低い場合(例えば60fps程度)であっても、運転者や撮像装置がちらつきを視認することを抑制できる。よって、車両用灯具システム1の低コスト化を図りながら、光反射物に起因するグレアを低減することができる。また、光反射物に対する運転者や撮像装置の視認性をより向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態の配光制御装置6は、対象光の照度調節において、照度を上げる際の変化量を照度を下げる際の変化量よりも小さくしている。配光可変ランプ2の照度の分解能によっては、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を跨いで上下に繰り返し変化し得る。これに対し、照度の増加量を低下量よりも小さくすることで、上下の繰り返しの周期を延ばすことができる。これにより、光反射物の輝度を目標低輝度の近傍でより安定化させることができる。
【0053】
また、本実施の形態の配光制御装置6は、対象光の照度を固定減少量と当該固定減少量よりも小さい固定増加量とを用いて調節する。そして、対象光の照度を下げて高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を下回ったら対象光の照度を上げていき、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えたとき対象光の照度を固定する。これにより、光反射物の輝度をより安定化させることができるとともに、配光制御の簡素化を図ることができる。また、本実施の形態の配光制御装置6は、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えたときの対象光の照度が、固定減少量以下であるとき、対象光の照度を固定する。これにより、光反射物に照射される光の総量が過度に減少して光反射物に対する視認性が低下することを抑制できる。
【0054】
また、本実施の形態の配光制御装置6は、対象光の照度を所定の最低照度まで下げた後に、高輝度画素の輝度値が目標低輝度に近づくように対象光の照度を調節する。これにより、高輝度画素の基が前方車両のランプであった場合に、当該前方車両に照射される光の照度を早急に低減することができる。この結果、前方車両の運転者にグレアを与える可能性を低減することができる。また、道路標識102等の光反射物は、照度しきい値が50%を下回る可能性が高く、10%程度のものも多い。したがって、対象光の照度を最低照度まで下げた後に照度しきい値に近づけていく方が、高輝度画素の輝度値をより早期に目標低輝度に近づけることができる。
【0055】
また、本実施の形態の配光制御装置6は、高輝度画素202~206に対応する前方領域に照射する光に加え、高輝度画素202~206の周囲に位置する周囲画素302~306に対応する前方領域に照射する光も対象光に含める。これにより、配光可変ランプ2の画角と撮像装置4の画角とに位置ずれが生じた場合でも、光反射物によって自車両の運転者がグレアを受ける可能性や、配光可変ランプ2からの光照射によって前方車両の運転者にグレアを与える可能性を低減することができる。また、配光可変ランプ2および撮像装置4の位置決めに要求される精度を低減することができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0057】
(変形例1)
図7は、変形例1における対象光の照度の推移を示す図である。実施の形態の配光制御装置6は、高輝度画素を特定した直後(1フレーム目)に形成する配光パターンPTNにおいて対象光の照度を最低照度に下げている。しかしながらこれに限らず、図7に示すように、対象光の照度を1フレーム目から固定減少量分だけ漸減させていってもよい。
【0058】
(変形例2)
実施の形態の配光制御装置6は、高輝度画素の特定後の1フレーム目に、対象光の照度を最低照度まで下げる。そして、2フレーム目以降は配光パターンPTNの更新毎に固定増加量だけ増加させる。その後、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えたとき、次フレームで照度を固定減少量1つ分だけ下げるか固定する。また、配光制御装置6は、対象光以外の光の照度、つまり光反射物等の物標が存在しない領域に照射する光の照度を基準照度に調節(維持)する。
【0059】
また各画素について、高輝度画素を生じさせていた物標が消失すると、当該物標が存在していた位置に照射していた対象光の照度を配光パターンPTNの更新毎に固定増加量だけ漸増させ、最終的に基準照度に戻す。したがって、対象光の照度を基準照度に戻すためには、対象光の現状の照度と基準照度との差分を埋めるために必要な固定増加量の数だけ配光パターンPTNを更新する必要がある。
【0060】
ここで、高輝度画素の基となる物標が消失した位置に照射する対象光の照度が基準照度に戻っていく過程で、当該位置に対応する画素が目標低輝度を超えた状況を考える。このような状況は、物標が消失した位置に新たに物標が出現した状況(以下では適宜、第1の状況という)に生じ得る。第1の状況であれば、配光制御装置6は、次の配光パターンPTNを決定する際に対象光の照度を最低照度まで下げる制御を実行すべきである。
【0061】
一方で、上述した状況を局所的に見れば、物標が継続して存在していて、対象光の照度を目標低輝度に近づけるべく最低照度から漸増させる制御の中で、輝度値が目標低輝度を超えた状況(以下では適宜、第2の状況という)と捉えることもできる。第2の状況であれば、配光制御装置6は、次の配光パターンPTNを決定する際に対象光の照度を固定減少量1つ分だけ下げるか固定する制御を実行すべきである。
【0062】
しかしながら、配光制御装置6は、物標の有無を直に検出して配光パターンPTNを決定しているのではなく、画像IMGにおける各画素の輝度値に基づいて配光パターンを決定している。したがって、画像IMG中に目標低輝度より高い輝度値の画素が出現した際に、これが第1の状況に起因するのか、第2の状況に起因するのかを判別することができない。また、判別しようとすると制御の複雑化を招く。そこで一例としての配光制御では、物標の輝度を目標低輝度の近傍で安定化させることを優先し、上述した状況が生じた場合は第2の状況であると決めて、対象光の照度を固定減少量1つ分だけ下げるか固定する制御を実行する。また、基準照度光の照射下で検出された高輝度画素と重なる前方領域に対してのみ、次フレームで最低照度の光を照射する。
【0063】
しかしながら、上述した状況の原因が新たな物標の出現であったとき、つまり第1の状況であったときは、その際の対象光の照度が照度しきい値から大きく乖離している可能性がある。したがって、上述した配光制御を実施する場合、固定減少量1つ分だけの照度の低下では、対象光の照度が照度しきい値を下回らない可能性が高い。したがって、対象光の照度を照度しきい値以下に下げるために必要な配光パターンPTNの更新回数が多くなり、対象光の照度を最低照度に下げてから漸増させていく場合に比べて、物標の輝度が安定化するまでに時間がかかるおそれがある。
【0064】
これに対し、本変形例に係る配光制御装置6は、高輝度画素を生じさせていた物標が消失したことを示す所定のリセット条件を満たしたとき、対象光の照度を固定増加量よりも大きい増加量で上げる制御を実行する。図8は、変形例2における対象光の照度の推移を示す図である。本変形例の配光制御装置6は、リセット条件の一例として、所定のリセット回数を予め保持している。そして、対象光の照度を固定増加量だけ増加させた回数がリセット回数に達したとき、リセット条件を満たしたとして対象光の照度を固定増加量よりも大きい増加量で増加させる。リセット回数は、実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能であり、例えば10~30回(10~30フレーム)である。
【0065】
このような制御により、対象光の照度を早期に基準照度に復帰させることができる。また、これにより、高輝度画素の検出後に最低照度の光を照射する制御を実行する機会を確保することができる。好ましくは、配光制御装置6は、リセット条件を満たしたとき対象光の照度を基準照度とする。これにより、対象光の照度をより早期に基準照度に復帰させることができる。
【0066】
図8に示す例では、5フレーム目の配光パターンPTNの形成中に物標が消失している。このため、配光制御装置6は、6フレーム目から対象光の照度の漸増を開始している。そして、対象光の照度の漸増がaフレーム目まで連続したとき、リセット回数に到達したため、次のbフレーム目で対象光の照度を基準照度まで上げている。その後、cフレーム目で基準照度の光を照射した状態で、高輝度画素が検出されている。このため、次のdフレーム目で対象光の照度を最低照度まで下げている。
【0067】
また、配光制御装置6は、リセット条件の他の例として、所定のリセット照度を予め保持していてもよい。そして、対象光の照度がリセット照度に達したとき、リセット条件を満たしたとして対象光の照度を固定増加量よりも大きい増加量で増加させる。リセット照度は、実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能であり、例えば照度が256階調である場合に階調値50~70である。
【0068】
図9は、変形例2に係る配光制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、例えば図示しないライトスイッチによって配光制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0069】
配光制御装置6は、配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ2を制御する(S201)。配光制御の最初の配光パターン形成である場合、配光制御装置6は、基準配光パターンPTN0を形成するよう配光可変ランプ2を制御する。また、配光制御装置6は、配光パターンPTNの形成フラグを生成してメモリに保持する。最初の配光パターン形成でない場合、前ルーチンで決定した配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ2を制御する。続いて、配光制御装置6は、撮像装置4から画像IMGを取得し(S202)、画像IMGに高輝度画素が存在するか判断する(S203)。
【0070】
高輝度画素が存在する場合(S203のY)、配光制御装置6は、対象光の照度を基準照度から最低照度に下げる(S204)。なお、対象光の照度が基準照度未満である場合は、本ステップでは対象光の照度を維持する。高輝度画素が存在しない場合(S203のN)、配光制御装置6は、ステップS204をスキップする。続いて、配光制御装置6は、ステップS201で形成した配光パターンPTNが減光部(遮光部を含む)を有するか判断する(S205)。配光パターンPTNが減光部を有しない場合(S205のN)、配光制御装置6は、各個別領域Rに照射される光の照度を基準照度に維持し(S206)、本ルーチンを終了する。なお、ステップS204で遮光部を定めた場合、ステップS206において遮光部の照度は維持される。ステップS206を経て決定された配光パターンPTNは、次ルーチンにおけるステップS201で形成される。
【0071】
ステップS201で形成した配光パターンPTNが減光部を有する場合(S205のY)、配光制御装置6は、リセット条件を満たす減光部があるか判断する(S207)。リセット条件を満たす減光部がある場合(S207のY)、配光制御装置6は、該当する減光部の照度を基準照度に上げる(S208)。リセット条件を満たす減光部がない場合(S207のN)、配光制御装置6は、ステップS208をスキップする。続いて、配光制御装置6は、ステップS201で形成した配光パターンPTNにおいて、対応する個別領域Rの輝度値が目標低輝度を超える減光部があるか判断する(S209)。
【0072】
輝度値が目標低輝度を超える減光部がある場合(S209のY)、配光制御装置6は、該当する減光部の照度を低減または固定する(S210)。輝度値が目標低輝度を超える減光部がない場合(S209のN)、配光制御装置6は、ステップS210をスキップする。続いて、配光制御装置6は、ステップS201で形成した配光パターンPTNにおいて、対応する個別領域Rの輝度値が目標低輝度以下である減光部の照度を固定増加量だけ増加させ(S211)、本ルーチンを終了する。ステップS211を経て決定された配光パターンPTNは、次ルーチンにおけるステップS201で形成される。
【0073】
(その他の変形例)
実施の形態では、高輝度画素が目標低輝度を超えたときの対象光の照度が固定減少量以下であるとき、対象光の照度を固定している。しかしながらこれに限らず、対象光の照度と固定減少量との大小関係によらず、高輝度画素202の輝度値が目標低輝度を超えたとき対象光の照度を固定してもよい。また、対象光の照度を段階的に下げていき、照度しきい値を下回ったときに照度を固定してもよい。
【0074】
上述した実施の形態に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
(項目1)
車両の前方領域を撮像する撮像装置(4)に基づく画像(IMG)を用いて、強度分布が可変である可視光ビーム(L1)を前方領域に照射可能な配光可変ランプ(2)を制御する配光制御装置(6)であって、
画像(IMG)に含まれる所定の高輝度画素(202~206)に対応する前方領域に照射する光を照度調節の対象光に定め、高輝度画素(202~206)の示す輝度値が所定の目標低輝度に徐々に近づくように対象光の照度を調節し、当該調節において照度を上げる際は照度を下げる際よりも小さい変化量で照度を変化させる、
配光制御装置(6)。
【0075】
(項目2)
車両の前方領域を撮像する撮像装置(4)と、
強度分布が可変である可視光ビーム(L1)を前方領域に照射可能な配光可変ランプ(2)と、
上記態様の配光制御装置(6)と、を備える、
車両用灯具システム(1)。
【0076】
(項目3)
車両の前方領域を撮像する撮像装置(4)に基づく画像(IMG)を用いて、強度分布が可変である可視光ビーム(L1)を前方領域に照射可能な配光可変ランプ(2)を制御する配光制御方法であって、
画像(IMG)に含まれる所定の高輝度画素(202~206)に対応する前方領域に照射する光を照度調節の対象光に定め、高輝度画素(202~206)の示す輝度値が所定の目標低輝度に徐々に近づくように対象光の照度を調節し、当該調節において照度を上げる際は照度を下げる際よりも小さい変化量で照度を変化させることを含む、
配光制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、配光制御装置、車両用灯具システムおよび配光制御方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 車両用灯具システム、 2 配光可変ランプ、 4 撮像装置、 6 配光制御装置、 8 輝度解析部、 10 パターン決定部、 12 ランプ制御部、 202,204,206 高輝度画素、 302,304,306 周囲画素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9