(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】密閉メンブレンを支持及び断熱するために適した自立式ケース
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20241128BHJP
F17C 9/00 20060101ALI20241128BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20241128BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20241128BHJP
B63B 27/30 20060101ALI20241128BHJP
B63B 27/34 20060101ALI20241128BHJP
B63B 27/24 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F17C3/04 A
F17C9/00 A
B65D90/02 B
B63B25/16 F
B63B25/16 103
B63B27/30
B63B27/34
B63B27/24 A
B63B25/16 A
(21)【出願番号】P 2022572481
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2021062018
(87)【国際公開番号】W WO2021239432
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-19
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】サッシ モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ブーゴール ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ウンジョ ムスターファ
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-263322(JP,A)
【文献】特開平05-310289(JP,A)
【文献】国際公開第2020/039134(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/04
F17C 9/00
B65D 90/02
B63B 25/16
B63B 27/30
B63B 27/34
B63B 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉メンブレン(6)を支持及び断熱するために適した、流体を入れるための自立式ケース(5)であって、
底部パネル(23)と、
前記底部パネルに固定され、当該底部パネルの片側から直角に突出して前記ケースの内部スペースの外形を決定する側方ウェブ(24,27)と、
前記側方ウェブの上縁部に支持及び固定されるカバーパネル(7)であって、前記底部パネルに対して平行かつ前記底部パネルから離隔し、前記ケースの前記内部スペースを閉じるものであり、互いに重なって固定された上部プレート(21)及び下部プレート(22)を備えたカバーパネル(7)と、
前記カバーパネルに形成された少なくとも1つの溝(30)であって、前記カバーパネルの上面で開口し
ている溝(30)と、
長手方向、上下方向に、前記溝(30)に沿って前記溝に対して平行に延在する少なくとも1つの支持仕切部(26,126,226)であって、前記底部パネル(23)と前記カバーパネル(7)とに対して直角に配置されており、前記側方ウェブ(27)間に延在して前記内部スペースを、断熱詰め物を入れる複数の区画に分割し、前記カバーパネルの前記下部プレート(22)と接触する上面と、前記底部パネルと接触する下面と、を有する支持仕切部(26,126,226)と、
前記下部プレート(22)と前記支持仕切部(26,126,226)の前記上面とに直角に係合し、前記支持仕切部を前記カバーパネルに固定する固定具(35)と、
を備えたケース(5)において、
前記溝(30)は、前記上部プレートの厚さ方向に順に、広幅の底部分(32)と狭
幅の開口部分(31)とを有し、
前記溝は、前記カバーパネル(7)に密閉メンブレン(6)を固定するための溶接サポート(8)であって直角に曲がった翼部の形態の溶接サポート(8)を入れるように形成されており、
前記支持仕切部(26,126,226)の前記上面は前記溝の前記
広幅の底部分(32)より広幅であり、
前記固定具(35)は、前記下部プレート(22)における前記溝の前記
広幅の底部分(32)から側方にずれた領域に係合する
ことを特徴とするケース。
【請求項2】
前記溝(30)は前記カバーパネルの前記上部プレート(21)にのみ形成されている、
請求項1記載のケース。
【請求項3】
前記固定具(35)は、前記上部プレート(21)とは独立して前記支持仕切部(26,126,226)を前記カバーパネルに固定する、
請求項1又は2記載のケース。
【請求項4】
前記溝(30)はT字形の部位を有し、当該溝の
広幅の底部分(32)が前記T字形の横の棒部分に相当し、前記
狭幅の開口部分(31)が前記T字形の縦の棒部分に相当する、
請求項1から3までのいずれか1項記載のケース。
【請求項5】
前記溝の前記
広幅の底部分(32)は20~30mmの幅を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載のケース。
【請求項6】
前記溝の前記
広幅の底部分(32)の幅と前記支持仕切部の前記上面の幅(W)との差は10mm超である、
請求項1から5までのいずれか1項記載のケース。
【請求項7】
前記溝の前記
広幅の底部分(32)の中央線は、前記支持仕切部(26,126,226)の中央平面に沿って上下方向に配されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のケース。
【請求項8】
前記固定具(35)は、前記支持仕切部の中央平面の両側に配置されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のケース。
【請求項9】
前記支持仕切部(26,126,226)は木材、合板又は複合材料から作製されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のケース。
【請求項10】
前記支持仕切部(26,226)の幅は均一であり、前記溝の前記
広幅の底部分より広幅である、
請求項1から9までのいずれか1項記載のケース。
【請求項11】
前記
支持仕切部(226)は、前記下部プレート(22)に対して平行に配置された上部敷板(52)と、前記上部敷板の下方に配置される中央部分(51)と、を有し、
前記上部敷板(52)は前記溝の前記
広幅の底部分(32)より広幅であり、前記中央部分(51)の幅は前記溝の前記
広幅の底部分(32)の幅以下である、
請求項1から9までのいずれか1項記載のケース。
【請求項12】
前記支持仕切部(126)は幅方向に多層構造を有し、
前記多層構造は、断熱材料により作製されたコア(41)と、前記断熱材料より高剛性の2つの側方プレート(42)と、を備えており、
前記固定具(35)は前記側方プレート(42)に係合する、
請求項1から10までのいずれか1項記載のケース。
【請求項13】
2つの前記溝(30)が互いに平行に前記カバーパネルに形成されており、前記各溝に沿ってそれぞれ内部仕切部(26,126,226)が上下方向に延在する、
請求項1から12までのいずれか1項記載のケース。
【請求項14】
支持壁(2)に固定されるタンク壁(1)を備えた、流体を貯蔵するための密閉断熱タンクであって、
前記タンク壁は、厚さ方向に前記密閉断熱タンクの外側から内側に向かって、前記支持壁(2)に固定される二次断熱バリア(3)と、前記二次断熱バリアに固定された二次密閉メンブレン(4)と、前記二次密閉メンブレンに固定された一次断熱バリアと、前記一次断熱バリアに固定された一次密閉メンブレン(6)と、を備えた密閉断熱タンクにおいて、
前記一次断熱バリアは
、請求項1から13までのいずれか1項記載の複数のケース(5)を並べて断熱詰め物を充填したもの
を含み、
前記一次密閉メンブレン(6)は、前記溝(30)に入れられた溶接サポート(8)によって前記ケースの前記カバーパネルに固定されている
ことを特徴とする密閉断熱タンク。
【請求項15】
流体を輸送するための船舶(70)であって、
二重船殻(72)と、前記二重船殻(72)内に配置された請求項14記載の密閉断熱タンクと、を備えている
ことを特徴とする船舶(70)。
【請求項16】
流体のための移送システムであって、
請求項15記載の船舶(70)と、
前記船舶の前記密閉断熱タンク(71)を浮体式又は沿岸貯蔵設備(77)に連結するように配置された断熱パイプライン(73,79,76,81)と、
前記断熱パイプラインを介して前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備から前記船舶の前記密閉断熱タンクへ又は前記船舶の前記密閉断熱タンクから前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備へ流体を駆動するためのポンプと、
を備えていることを特徴とする移送システム。
【請求項17】
請求項15記載の船舶(70)の積込み又は揚げ荷を行うための方法であって、
断熱パイプライン(73,79,76,81)を介して前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備(77)から前記船舶の前記密閉断熱タンク(71)へ又は前記船舶の前記密閉断熱タンク(71)から前記浮体式若しく沿岸貯蔵設備(77)へ流体を搬送する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持構造に組み込まれる流体を入れるための密閉断熱タンクの分野に関し、特に、液化ガス、特に燃料ガス等を入れるためのメンブレンを備えたタンクの分野に関する。本発明は特に、上述のタンクのメンブレンを支持及び断熱するために適した木製の自立式ケースにも関する。
【0002】
密閉断熱タンクは、種々の産業において流体を貯蔵するために用いることができる。例えばエネルギー分野では、液化天然ガス(LNG)は、浮体構造物に組み込まれたタンク又は沿岸貯蔵タンクに大気圧かつ約-163℃で貯蔵可能な高メタン含有量の液体である。液化石油ガス(LPG)は-50℃~0℃の温度で貯蔵可能である。
【0003】
浮体構造物の場合、タンクは当該浮体構造物の推進用ガスとして用いられる液化ガスを入れるため、又は液化ガスを輸送するためのものとすることができる。
【背景技術】
【0004】
例えば仏国特許出願公開第2867831号明細書から、流体を入れるための密閉メンブレンを支持及び断熱するために適した木製の自立式ケースが公知であり、このケースは、
底部パネルと、
前記底部パネルに固定され、当該底部パネルの片側から直角に突出して前記ケースの内部スペースの外形を決定する側方ウェブと、
前記側方ウェブの上縁部に支持及び固定されるカバーパネルであって、前記底部パネルに対して平行かつ前記底部パネルから離隔し、前記ケースの前記内部スペースを閉じるものであり、互いに重なって固定された上部プレート及び下部プレートを備えたカバーパネルと、
前記カバーパネルに形成された少なくとも1つの溝であって、前記カバーパネルの上面で開口し(debouchant)、密閉メンブレンを前記カバーパネルに固定する溶接サポートを入れる溝と、
長手方向、上下方向に、前記又は各溝に沿って前記溝に対して平行に延在する少なくとも1つの支持仕切部であって、前記底部パネルと前記カバーパネルとに対して直角に配置されており、前記側方ウェブ間に延在して前記内部スペースを、断熱詰め物を入れる複数の区画に分割し、前記カバーパネルの前記下部プレートと接触する上面と、前記底部パネルと接触する下面と、を有する支持仕切部と、
前記下部プレートと前記支持仕切部の前記上面とに直角に係合し、前記支持仕切部を前記カバーパネルに固定する固定具と、
を備えている。
【0005】
仏国特許出願公開第2867831号明細書では、上述の自立式ケースは一次密閉メンブレンを支持する一次断熱バリアを製造するために用いられる。一次密閉メンブレンは溶接サポートに溶接され、この溶接サポートは、溝にステープル留めされた取付ストリップと合わさってスリップジョイントを形成する。こうするためには、長手方向の溝は2つのステープル列間において、カバーパネルの2つのボードとその下方の支持仕切部の上部分とを貫通する。
【0006】
また、直角に曲がった翼部の形態の溶接サポートを入れるためにT字形の部位を有する溝が形成された簡単なカバープレートを備える二次自立式ケースを用いることも公用となっており、例えば仏国特許出願公開第2867831号明細書又は国際公開第8909909号に記載されている。仏国特許出願公開第2867831号明細書では、溝に沿った上下方向の支持仕切部は設けられていない。国際公開第8909909号ではカバープレートは、溝の底部に収容されたねじによって下方の支持仕切部に固定される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの目的は、貨物の揺れにより生じる動圧や衝撃を受けやすいタンクの一次断熱バリアを製造するために使用可能な高強度の自立式ケースを提供することである。本発明の他の1つの目的は、例えば部品の製造手順を簡素化又は標準化して部品在庫を削減するため、直角に曲がった翼部の形態の溶接サポートを一次密閉メンブレンでも使用できるようにすることである。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は上述の自立式ケースであって、前記溝は、前記上部プレートの厚さ方向に順に、広幅の底部分と狭福の開口部分とを有する部位を有し、前記支持仕切部の前記上面は前記溝の前記底部分より広幅であり、前記固定具は、前記下部プレートにおける前記溝の前記底部分から側方にずれた領域に係合することを特徴とするケースを提供する。
【0009】
上記の構成により、下部プレートに係合して支持仕切部をカバーパネルに固定する固定具が、溝に沿った上下方向のカバーパネルを脆化させることがなくなる。よって上記の構成により、支持仕切部を高信頼性で固定すると同時に、カバーパネルの機械的強度を従来のケースと比較して向上させることができる。
【0010】
実施形態では、上記の自立式ケースは以下の構成のうち1つ又は複数を備えることができる。
【0011】
好適には、前記溝は前記カバーパネルの前記上部プレートにのみ形成される。
【0012】
好適には、前記固定具は、前記上部プレートとは独立して前記支持仕切部を前記カバーパネルに固定する。かかる構成により、カバーパネルの上部プレートは固定具の存在により脆化することがなくなる。
【0013】
一実施形態では、前記溝はT字形の部位を有し、当該溝の底部分が前記T字形の横の棒部分に相当し、前記開口部分が前記T字形の縦の棒部分に相当する。
【0014】
一実施形態では、前記溝の前記底部分は20~30mmの幅を有する。
【0015】
一実施形態では、前記溝の前記底部分の幅と前記支持仕切部の前記上面の幅との差は10mm超である。
【0016】
一実施形態では、前記溝の前記底部分の中央線は、前記支持仕切部の中央平面に沿って上下方向に配されている。
【0017】
一実施形態では、前記固定具は、前記支持仕切部の中央平面の両側に(de part et d’autres)配置されている。
【0018】
一実施形態では、前記支持仕切部は木材、合板又は複合材料から作製されている。
【0019】
一実施形態では、前記支持仕切部の幅は均一であり、前記溝の前記底部分より広幅である。
【0020】
他の一実施形態では、前記内部仕切部は、前記下部プレートに対して平行に配置された上部敷板と、前記上部敷板の下方に配置される中央部分と、を有し、前記上部敷板は前記溝の前記底部分より広幅であり、前記中央部分の幅は前記溝の前記底部分の幅以下である。
【0021】
一実施形態では、前記支持仕切部は幅方向に多層構造を有し、前記多層構造は、断熱材料により作製されたコアと、前記断熱材料より高剛性の2つの側方プレートと、を備えており、前記固定具は前記側方プレートに係合する。例えば、上記の断熱材料はポリマー発泡体、特にポリウレタン発泡体、鉱物繊維、特にガラスウール、コットンウール及び膨張ポリスチレンから選択されたものである。
【0022】
一実施形態では、2つの前記溝が互いに平行に前記カバーパネルに形成されており、前記各溝に沿ってそれぞれ内部仕切部が上下方向に延在する。
【0023】
一実施形態では、前記ケースの全体形状は矩形の平行六面体形である。
【0024】
一実施形態では、本発明は、支持壁に固定されるタンク壁を備えた、流体を貯蔵するための密閉断熱タンクも提供するものであり、
前記タンク壁は、厚さ方向に前記タンクの外側から内側に向かって、前記支持壁に固定される二次断熱バリアと、前記二次断熱バリアに固定された二次密閉メンブレンと、前記二次密閉メンブレンに固定された一次断熱バリアと、前記一次断熱バリアに固定された一次密閉メンブレンと、を備えており、前記一次断熱バリアは実質的に、複数の上記ケースを並べて断熱詰め物を充填したものから成り、前記一次密閉メンブレンは、前記溝に入れられた溶接サポートによって前記ケースの前記カバーパネルに固定されている。
【0025】
一実施形態では、前記流体は、例えば液化天然ガス、液化石油ガス又は液化エチレン等の液化ガスである。
【0026】
上述のタンクは、例えばLNG貯蔵用等の沿岸貯蔵設備、海底に設置される貯蔵設備の一部とすることができ、又は、浮体式、沿岸若しくは深海構造物、特にメタンタンカー船、浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)、浮体式生産貯蔵沖合施設(FPSO)等に設置することができる。
【0027】
一実施形態では、流体を輸送するための船舶は二重船殻と、前記二重船殻内に配置された上記のタンクと、を備えている。一実施形態では、前記二重船殻の内部船殻は前記タンクの支持壁となる。
【0028】
一実施形態では、本発明は上記の船舶の積込み又は揚げ荷を行うための方法も提供するものであり、前記断熱パイプラインを介して前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備から前記船舶の前記タンクへ又は前記船舶の前記タンクから前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備へ流体を搬送する。
【0029】
一実施形態では、本発明は流体のための移送システムも提供するものであり、当該移送システムは、上記の船舶と、前記船舶の船殻内に設置された前記タンクを浮体式又は沿岸貯蔵設備に連結するように配置された断熱パイプラインと、前記断熱パイプラインを介して前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備から前記船舶の前記タンクへ又は前記船舶の前記タンクから前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備へ流体を駆動するためのポンプと、を備えている。
【0030】
添付の図面を参照して、本発明の複数の特定の実施形態についての以下の説明を読めば、本発明をより良好に理解できると共に、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点がより明らかとなる。以下の説明の特定の実施形態はあくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】自立式ケースを使用できる密閉断熱タンク壁の一部を切り取った斜視図である。
【
図2】
図1のタンク壁の一次断熱バリアに適した自立式ケースの側面図である。
【
図3】支持仕切部の一実施形態を示す
図2の領域 III の拡大図である。
【
図4】支持仕切部の他の一実施形態を示す
図2の領域 III の拡大図である。
【
図5】支持仕切部の他の一実施形態を示す
図2の領域 III の拡大図である。
【
図6】メタンタンカー船タンクと、当該タンクの荷役作業を行うためのターミナルと、を示す概略的な抜粋図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に密閉断熱性のタンク壁1の全体構造を示しており、このタンク壁1は支持壁2に組み込まれて固定される。タンク壁1は、例えば多面体形状等の種々の幾何学的形状のタンクの一部とすることができる。
図1はタンク壁1の構造を示すべく、一部を切り取った当該壁を上から見た様子を示している。かかる構造は種々の向きの広範な表面にて実現することができ、例えば多面体タンクの底壁、天井壁及び側壁を覆うように実現することができる。よって、この点において
図1の向きは本発明を限定するものではない。慣例により、地球の重力場に対するタンク壁の向きにかかわらず、「上」はタンクの内側により近い位置を表し、「下」は支持壁2により近い位置を示す。
【0033】
タンク壁1はその厚さ方向で順に、支持壁2に複数のケースを並べて二次固定部材により当該支持壁2に固定したものから成る二次断熱バリア3と、二次断熱バリア3に支持される二次密閉メンブレン4と、二次密閉メンブレン4に複数のケース5を並べて、二次固定部材に固定された一次固定部材により当該二次密閉メンブレン4に固定したものから成る一次断熱バリアと、ケース5に支持される一次密閉メンブレン6と、により構成される。二次及び一次固定部材は、例えば仏国特許出願公開第2798902号明細書に記載されている。
【0034】
一次密閉メンブレン6は、インバー(Invar、登録商標)との名称で知られているニッケル含有量が例えば37%と高い鋼により作製されたストレーキ10の連続した層から成ることができ、その膨張係数は典型的には1.2×10
-6~2×10
-6K
-1である。また、膨張係数が典型的には7~9×10
-6K
-1のオーダである鉄とマンガンの合金を使用することも可能である。ストレーキ10はその隆起した側縁部で、ケース5のカバーパネル7の溝に保持された平行な溶接サポート8に密閉するよう溶接される。二次密閉メンブレン4も、
図1に示されているように同一に作製することができ、又は異なって作製することができる。符号9は、二次密閉メンブレン4の溶接サポートを入れるための溝を示す。
【0035】
ケース5は
図1においてその一部が示されており、ケース5の全体形状は平行六面体となっている。
図2は、
図1の矢印 II ににおけるケース5の平面側面図である。
【0036】
図2を参照すると、下部プレート22と上部プレート21とが例えばねじ留め、接着及び/又はステープル留めによって互いにしっかり固定されて、カバープレートを構成する。上部プレート21と下部プレート22との固定は例えば、上部プレート21と下部プレート22とを二次仕切部25によって固定しつつ、支持仕切部26、126又は226の周囲部で、二次仕切部25に沿って上下方向に行われる。底部パネル23及びカバーパネル7は矩形の外形を有し、2つの長手方向端部ウェブ27と2つの側方端部ウェブ24とによって互いに離隔して、ケース5の内部スペースの外形を形成する。この内部スペースは、溝30に沿って上下方向に配された2つの支持仕切部26と、場合によっては二次仕切部25とによって区画分けされ、二次仕切部25は支持仕切部26より狭幅とすることができる。支持仕切部26及び二次仕切部25は、2つの長手方向端部ウェブ27に対して直角かつ2つの側方端部ウェブ24に対して平行に長手方向に延在する。上記の要素は全て、ステープル留め、ねじ留め、及び/又は接着によって、必要な分だけ固定される。例えば、二次仕切部25は12mmの幅を有し、長手方向端部ウェブ27及び側方端部ウェブ24は12~24mmの幅を有する。
【0037】
ケース5が断熱機能を果たすため、上記の区画には断熱詰め物が充填され、これは例えば、膨張パーライト、微粒子状又は繊維状のエアロゲル材料、膨張ポリスチレン、ガラスウール、セルルースコットンウール、ポリエチレン又はポリウレタン等の低密度ポリマー発泡体の中から選択された材料により作製されたものである。
【0038】
ケース5の寸法は、もちろん、
図2に示されている事例と異なった寸法とすることができる。ケース5は幅において1つの支持仕切部26と1つの溝30とを有することができ、また、ケース5の幅において支持仕切部26及び溝30をそれぞれ2つより多くすることもできる。
【0039】
図3から分かるように、溝30は公知技術の直角に曲がった翼部を入れるため、横の広幅の底部分32と、縦の狭幅の開口部分31とを有する逆T字形の部位を有する。代替的に、溝がL字形の部位を有するように底部分32を開口部分の片側に延在させることも可能である。
【0040】
支持仕切部26は1枚の合板であり、その幅は底部分32の幅より大きい。その余剰幅により、ステープル35の列を底部分32から側方にずらして、すなわち上下方向に溝30に直に沿って配された領域の外に配置して、支持仕切部26を下部プレート22に固定することが可能になる。かかる構成により、溝30の幅が比較的大きく、例えばその底部分32が24mm幅となるにもかかわらず、カバーパネル7の剛性を確保することができる。実際、ステープル35がカバーパネルの下部プレート22の剛性を局所的に低下させ得るとしても、この弱化が生じる箇所は、溝30の狭幅箇所と同じにはならない。好適には、支持仕切部26の余剰幅は10mm超である。例えば、幅Wは36mm以上、好適には42mmである。
【0041】
図3では、カバーパネル7の剛性は以下の措置によってさらに向上する:
-溝30をカバーパネルの上部プレート21にのみ形成する。これにより、溝30が下部プレート22の剛性に影響を及ぼすことがなくなる。
-固定具35は上部プレート21の剛性に影響しない。
-支持仕切部26は溝30の下方にセンタリングされ、中央平面を基準として対称である。
-固定具35は、支持仕切部の中央平面の両側に配置される。
【0042】
図4は支持仕切部126の他の一実施形態を示しており、この支持仕切部126は幅方向に、断熱材料製のコア41と、当該断熱材料より高剛性の2つの側方プレート42と、を備えた多層構造を有し、これら2つの側方プレート42はコア41の両側に設けられている。固定具35は、例えば合板製である側方プレート42に係合している。かかる構成により、支持仕切部26に対して熱橋及び重量を抑えることができる。例えば、側方プレート42は12mmの幅を有する。
【0043】
図5は支持仕切部226の他の一実施形態を示しており、この支持仕切部226はケース5の厚さ方向に順に、下部プレート22に対して平行に配された上部敷板52と、上部敷板52の下方に配された中央部分51と、を有する。上部敷板52の幅は底部分32の幅より大きい。逆に、中央部分51の幅は溝30の底部分32の幅以下とすることができる。上部敷板52及び中央部分51は例えば合板製である。かかる構成により、支持仕切部26に対して熱橋及び重量を抑えることができる。例えば、中央部分51の幅は18~30mm、好適には24mmである。例えば、上部敷板52の幅は24mm超、例えば42mm、50mm又は60mm等である。
【0044】
一実施形態では、上部敷板52の幅は支持仕切部226と支持仕切部226の隣の二次仕切部との間の間隔に等しいか、又はこの間隔未満とすることができる。一実施形態では、支持仕切部226と、二次仕切部25が設けられている場合には二次仕切部25が、均一な間隔ピッチで分布し、上部敷板52の幅はこの均一な間隔ピッチに等しいか、又は当該間隔ピッチ未満とすることができる。
【0045】
図2には、以下の要求に応じて使用可能な自立式ケース5の他の構成も示されている:
-一次断熱バリア内を不活性ガスを循環させるため、ケース5のウェブ27に孔28を形成する。
-断熱詰め物の漏れを回避するため、各孔28の手前において、グラスファイバー織物により作製されたガス透過性栓17をウェブ27の内表面に接着する。
-一次固定部材に対する支持面として供される固定用ほぞ19が、底部パネル23の縁部においてウェブ27に固定される。
-ウェブ24の間において、支持仕切部26と二次仕切部25とに対して直角のスチフナ櫛状部16が、底部パネル23に対して直角に延在する。スチフナ櫛状部16は支持仕切部26と二次仕切部25との交差部に、支持仕切部26及び二次仕切部25との嵌合部となるノッチを有する。
-底部パネル23及び支持仕切部26に形成された溝18により、二次密閉メンブレン4の突出部分を入れることができる。
【0046】
合板に代えて、複合材料を使用して自立式ケースの全部又は一部を作製することができる。例えば、国際公開第2015/079135号に適切な複合材料が教示されている。
【0047】
上記のケース5を用いて一次断熱バリアの全部を構成し、又はタンクの特定の一部のみにおいて構成することができる。例えば、タンクの縁部付近において上記のケース5を使用すると共に、タンク壁の他の部分において他の断熱ブロックを用いることができる。かかる構成は、例えば国際公開第2019/077253号に記載されている。
【0048】
図6を参照すると、メタンタンカー船70の一部を切り取った図が、当該船の二重船殻72内に取り付けられた全体形状が角柱形の密閉断熱タンク71を示している。タンク71の壁は、当該タンクに入った液化ガスと接触する一次密閉バリアと、一次密閉バリアと船舶の二重船殻72との間に配置された二次密閉バリアと、一次密閉バリアと二次密閉バリアとの間及び二次密閉バリアと二重船殻72との間にそれぞれ配置された2つの断熱バリアと、を備えている。簡略化された一変形形態では、船舶は1つの船殻を備えている。
【0049】
自明の通り、液化ガスの貨物をタンク71へ又はタンク71から移送するため、適切なコネクタを用いて、船舶の上甲板上に配置された荷役パイプライン73を海上又は港湾ターミナルに接続することができる。
【0050】
図6は、荷役ステーション75と海中ライン76と沿岸設備77とを備えた海上ターミナルの一例を示す。荷役ステーション75は、可動アーム74と、当該可動アーム74を支持するタワー78とからなる固定式の沖合設備である。可動アーム74は、荷役パイプライン73に接続可能な断熱可撓性パイプ79の束を支持する。方向調整可能なこの可動アーム74は、メタンタンカーのあらゆる型式に適合する。タワー78の内部には、不図示の連結ラインが延在する。荷役ステーション75は、メタンタンカー70から沿岸設備77への揚げ荷及び沿岸設備77からメタンタンカーへの積込みを行えるものである。沿岸設備77は、液化ガス貯蔵タンク80と、海中ライン76によって荷役ステーション75に連結される連結ライン81と、を備えている。海中ライン76は、荷役ステーション75と沿岸設備77との間で例えば5km等の長距離にわたって液化ガスを移送するためのものであり、これにより、荷役作業中にメタンタンカー船70を海岸から遠距離の場所に離しておくことができる。
【0051】
液化ガスの移送に必要な圧力を発生させるため、船舶70に組み込まれたポンプ及び/又は沿岸設備77に装備されたポンプ及び/又は荷役ステーション75に装備されたポンプが設けられている。
【0052】
複数の特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの特定の実施形態に何ら限定されず、上記の手段の技術的均等物や、上記の手段の技術的に均等な組み合わせは全て、本発明の枠組みに属することが極めて明らかである。
【0053】
動詞「含む(comprise)」又は「含む(include)」及びその共役形の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を排除しない。
【0054】
特許請求の範囲において、いかなる括弧書きの符号も、特許請求の範囲の限定と解すべきものではない。