(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】連続的な触媒脱れきプロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 17/00 20060101AFI20241128BHJP
C10G 21/14 20060101ALI20241128BHJP
B01J 27/188 20060101ALI20241128BHJP
B01J 27/19 20060101ALI20241128BHJP
B01J 23/28 20060101ALI20241128BHJP
B01J 23/30 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C10G17/00
C10G21/14
B01J27/188 M
B01J27/19 Z
B01J23/28 M
B01J23/30 M
(21)【出願番号】P 2022579904
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 US2020052148
(87)【国際公開番号】W WO2021262210
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ミョウ
(72)【発明者】
【氏名】シュ、チー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チュンリン
(72)【発明者】
【氏名】シャイク、ソヘル ケイ
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0102507(US,A1)
【文献】特開平05-202370(JP,A)
【文献】特表2014-507519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減されたアスファルテン濃度の脱れき油を製造するための連続的な触媒脱れきプロセスであって、前記触媒脱れきプロセスが触媒脱れき用の反応器システムを含み、前記触媒脱れき用の反応器システムが、少なくとも、並列に配置された第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器を備え、前記第1の触媒脱れき用の反応器および前記第2の触媒脱れき用の反応器が各々、固体ヘテロポリ酸化合物を有する触媒を含み、かつ前記触媒脱れきプロセスが、
原油および非パラフィン系溶媒を含む供給物を前記第1の触媒脱れき用の反応器に導入して、前記供給物を脱れきする工程であって、脱れきによって、触媒に吸着された重合アスファルテンおよび脱れき油を生成する工程と、
前記脱れきする工程が前記第1の触媒脱れき用の反応器で実施される間に、前記第2の触媒脱れき用の反応器内で触媒を再生するた
め非パラフィン系溶媒を前記第2の触媒脱れき用の反応器に導入する工程と、
脱れき後に重合アスファルテンを除去するため非パラフィン系洗浄溶媒を前記第1の触媒脱れき用の反応器に導入する工程であって、それによって、前記第1の触媒脱れき用の反応器内の前記触媒が再生され、かつ溶媒および重合アスファルテンを含む混合物が生成される工程と、
前記非パラフィン系洗浄溶媒を前記重合アスファルテンから分離するため前記触媒脱れき用の反応器システムの下流のセパレータに前記混合物を送る工程と、
前記分離された非パラフィン系洗浄溶媒の少なくとも一部を、前記触媒脱れき用の反応器システムの前記第1の触媒脱れき用の反応器および前記第2の触媒脱れき用の反応器の少なくとも1つに再導入する工程と、
前記第1の触媒脱れき用の反応器が触媒再生を実施するべく変更されるように、前記触媒脱れき用の反応器システムにおいて動作モードを切り替える工程と、および
前記第2の触媒脱れき用の反応器が脱れきを実施するべく変更されるように、前記触媒脱れき用の反応器システムにおいて動作モードを切り替える工程と、を含む、連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項2】
前記非パラフィン系洗浄溶媒が芳香族炭化水素溶媒を含む、請求項1記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項3】
前記非パラフィン系洗浄溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびそれらの2つまたはそれ以上の混合物からなる群より選択される、請求項1または2に記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項4】
前記セパレータは、前記重合アスファルテンから前記非パラフィン系洗浄溶媒を蒸発させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項5】
前記蒸発した非パラフィン系洗浄溶媒を冷却する工程、および前記冷却した非パラフィン系洗浄溶媒を溶媒リザーバに貯蔵する工程をさらに含む、請求項4記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項6】
前記第1の触媒脱れき用の反応器および前記第2の触媒脱れき用の反応器と並列の第3の触媒脱れき用の反応器をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項7】
前記供給物は、前記非パラフィン系溶媒を少なくとも前記第2の触媒脱れき用の反応器に導入すると同時に、脱れきするために前記第1の触媒脱れき用の反応器および前記第3の触媒脱れき用の反応器に導入される、請求項6記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項8】
前記固体ヘテロポリ酸化合物が、ケギン型ヘテロポリ酸、セシウム置換ヘテロポリ酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項9】
前記触媒は、リンタングステンヘテロポリ酸(H
3PW
12O
40)、リンモリブデンヘテロポリ酸(H
3PMo
12O
40)、ケイ素タングステンヘテロポリ酸(H
4SiW
12O
40)、ケイ素モリブデンヘテロポリ酸(H
4SiMo
12O
40)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、少なくとも1つのケギン型ヘテロポリ酸を含む、請求項8記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項10】
前記触媒は、Cs
xH
yPMo
12O
40、ここで0<x<4であり、かつyが3-xに等しい、Cs
xH
yPW
12O
40、ここで0<x<4であり、かつyが4-xに等しい、Cs
xH
ySiMo
12O
40、ここで0<x<4であり、かつyが3-xに等しい、Cs
xH
ySiW
12O
40、ここで0<x<4であり、かつyが4-xに等しい、およびそれらの組み合わせとからなる群より選択される、少なくとも1つのセシウム置換ヘテロポリ酸を含む、請求項8記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項11】
前記脱れき油中の低減されたアスファルテン濃度は、前記脱れき油に対して1重量%未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項12】
前記脱れき油中の低減されたアスファルテン濃度は、供給油の0.01重量%から前記脱れき油に対して0.5重量%までである、請求項11記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【請求項13】
前記第1の触媒脱れき用の反応器における触媒失活のレベルが触媒失活の許容レベルを超える場合に、前記触媒脱れき用の反応器システムにおける動作モードの変更を引き起こす制御システムをさらに含む、請求項1記載の連続的な触媒脱れきプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、開示全体が引用により本明細書に組み込まれる、2020年6月25日に出願された米国出願番号16/911,800の優先権を主張する。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、原油流の脱れきに関し、特に、低減されたアスファルテン濃度の脱れき油を製造するための連続的な触媒脱れきプロセスに関係する。
【背景技術】
【0003】
アスファルテンは、原油中で自然起源である最も重く、最も極性の高い化合物であり、通常、原油は1重量%から17重量%の範囲の濃度のアスファルテンを含み、それらは、原油の輸送および精製の際に困難を引き起こす主要な要因としても特定されている。アスファルテンは、大気圧および周囲温度で原油中に可溶であると考えられる4つの主要物質の1つであり、それ以外は、飽和化合物、芳香族化合物、および樹脂である。しかし、樹脂とは異なり、アスファルテンは、凝集する傾向のある極性の高い化学種を含有し、結果として、アスファルテンと環境との相互作用は非常に複雑である。
【0004】
アスファルテンは、高分子量の多環芳香族炭化水素と複素環式化合物の混合物であり、主に、炭素、水素、窒素、酸素、および硫黄、ならびに微量のバナジウムおよびニッケルを含む。アスファルテンでは、水素と炭素の比率は約1.2:1である。アスファルテンは、運用上、原油などの炭素質材のn-ヘプタン不溶性、トルエン可溶性の成分として定義され、蒸留プロセスの粘着性、黒色、高粘度の残留物である。
【0005】
原油の生産および精製のすべての態様は、アスファルテンによって悪影響を受け得る。たとえば、アスファルテンの沈殿または堆積は、裸孔、パイプライン、および地表施設で生じかねず、良好な生産性および流体の流れが制限される。さらに、アスファルテンは精製システムを詰まらせ、石油精製業者に損害を与え、生産性を損なわせる可能性がある。
【0006】
溶媒脱れき(SDA)技術を利用し得る従来のアスファルテン分離は、液液抽出を実施して、より価値の高い脱れき油(DAO)を生成するために、パラフィン系溶媒(n-プロパン、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、またはn-ヘプタン)を適用することを含む。しかし、SDAプロセスは、かなりの量の高価なパラフィン系溶媒を必要とする(溶媒と原油の比率は、一般的には容積比で2:1~10:1である)。さらに、DAOからのパラフィン系溶媒の分離および回収は、エネルギーを大量に消費するプロセスである。
【0007】
アスファルテン分離の他の方法は、アスファルテンを含有する油供給物を、アスファルテンを重合するための触媒を含有する脱れき用のカラムに通す工程を含む。しかし、触媒は経時的に失活し、脱れき用のカラムが作動しない運転休止時間を引き起こす。
【発明の概要】
【0008】
DAOを生成するための新規のプロセスが継続的に必要とされている。本開示の実施形態は、この必要性に対処することに焦点を当てた連続的な触媒脱れきプロセスに向けられている。
【0009】
一実施形態によれば、低減されたアスファルテン濃度の脱れき油を製造するための連続的な触媒脱れきプロセスは、触媒脱れき用の反応器システムを含み、触媒脱れき用の反応器システムは、少なくとも、並列に配置された第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器を備え、ここで、第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器は各々、固体ヘテロポリ酸化合物を有する触媒を備えている。当該プロセスは、原油および非パラフィン系溶媒を含む供給物を第1の触媒脱れき用の反応器に導入して供給物を脱れきする工程であって、該脱れきする工程は、触媒に吸着された重合アスファルテンおよび脱れき油を生成する工程と、脱れきする工程が第1の触媒脱れき用の反応器中で実施される間に、第2の触媒脱れき用の反応器中で触媒を再生するため非パラフィン系溶媒を第2の触媒脱れき用の反応器に導入する工程と、脱れき後に重合アスファルテンを除去するため非パラフィン系洗浄溶媒を第1の触媒脱れき用の反応器に導入する工程であって、それによって、第1の触媒脱れき用の反応器中の触媒が再生され、かつ溶媒および重合アスファルテンを含む混合物が生成される工程と、洗浄溶媒を重合アスファルテンから分離するため触媒脱れき用の反応器システムの下流のセパレータに混合物を送る工程と、および分離された洗浄溶媒の少なくとも一部を触媒脱れき用の反応器システムの第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器の少なくとも1つに再導入する工程と、を含む。
【0010】
本明細書に記載される実施形態の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に明記され、部分的には、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または詳細な説明および以下に提供される請求項を含む、記載される実施形態を実施することによって認識される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の具体的な実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むときに最もよく理解することができる。
【0012】
【
図1】本明細書に記載される触媒脱れきプロセスの実施形態のための触媒脱れきシステムの概略図である。
【
図2】本明細書に記載される実施形態による2つの反応器を有する触媒脱れき用の反応器ゾーンの概略図である。
【
図3】本明細書に記載される実施形態による3つの反応器を有する触媒脱れき用の反応器ゾーンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つまたは複数の実施形態では、低減されたアスファルテン濃度の脱れき油を製造するための連続的な触媒脱れきプロセスは、少なくとも、並列に配置された第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器を有する触媒脱れき用の反応器システムを使用する。第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器は各々、固体ヘテロポリ酸化合物を有する触媒を含む。当該プロセスは、原油および非パラフィン系溶媒を含む供給物を第1の触媒脱れき用の反応器に導入し、該供給物を脱れきする工程と、該脱れきする工程が第1の触媒脱れき用の反応器中で実施される間に、第2の触媒脱れき用の反応器中で触媒を再生するため非パラフィン系溶媒を第2の触媒脱れき用の反応器に導入する工程と、脱れき後に重合アスファルテンを除去し、かつ溶媒と重合アスファルテンを含む混合物を生成するため非パラフィン系洗浄溶媒を第1の触媒脱れき用の反応器に導入する工程と、洗浄溶媒を重合アスファルテンから分離するため触媒脱れき用の反応器システムの下流のセパレータに混合物を送る工程と、および分離された洗浄溶媒の少なくとも一部を触媒脱れき用の反応器システムの第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器の少なくとも1つに再導入する工程と、を含んでいる。
【0014】
ここで
図1を参照すると、原油からアスファルテンを除去するために触媒脱れきシステム10が使用され得る。触媒脱れきシステム10は、最初の原油供給物12を含み、これは、導管14からの溶媒と混合され、導管18を通って触媒脱れき用の反応器ゾーン16に送られる。本明細書で使用されるように、「導管」という用語は、ケーシング、ライナー、パイプ、チューブ、コイルドチュービング、および内部空隙を有する機械的構造を含む。
図2に示されるように、触媒脱れき用の反応器ゾーン16は、第1の触媒脱れき用の反応器20aおよび第2の触媒脱れき用の反応器20bを含み得る。少なくとも2つの触媒脱れき用の反応器20a、20bを含むことによって、触媒の再生、洗浄、または一般的な保守のために1つの触媒脱れき用の反応器を停止しなければならない場合でも、少なくとも1つの触媒脱れき用の反応器の連続運転が可能になる。
【0015】
図1および
図2の両方を参照すると、各触媒脱れき用の反応器20a、20bは、2つのモードのうちの1つのモードとなり得る。反応モードでは、アスファルテン含有原油と溶媒タンク22からの洗浄溶媒との混合物が、反応器内に含まれる触媒組成物に送られ、その結果、DAOおよび洗浄溶媒は、導管24を通って触媒脱れき用の反応器ゾーン16を出て、かつ重合アスファルテンが、触媒脱れき用の反応器ゾーン16内の触媒組成物に吸着される。再生モードでは、溶媒タンク22からのアスファルテン含有原油を含まない洗浄溶媒が、導管18を通って触媒脱れき用の反応器ゾーン16に加えられ、再生中の触媒脱れき用の反応器を通って流され、溶媒およびアスファルテンの流れを生成し、その流れは導管26を通って保持タンク28に送られる。
【0016】
その後、洗浄溶媒とアスファルテンの混合物は、保持タンク28から導管32を通ってセパレータ30に送られる。セパレータ30は、導管34を通って直接溶媒タンク22または任意の冷却器36のいずれかに送られる洗浄溶媒を、導管38を通ってセパレータ30を出るアスファルテンから分離するために使用される。任意の冷却器36が使用される場合、洗浄溶媒は、冷却器36によって凝縮され、その後、導管40を通って溶媒タンク22に送られる。結果として、洗浄溶媒は当該プロセス全体にわたってリサイクルされ得る。さらに、溶媒タンク22はまた、導管42を通して補充され得る。洗浄溶媒をリサイクルすることによって、触媒脱れきプロセスに使用される溶媒の量の大幅な削減が可能になり、コストおよび生態学的影響が低減される。
【0017】
再び
図2を参照すると、触媒脱れき用の反応器ゾーン16は、第1の触媒脱れき用の反応器20aおよび第2の触媒脱れき用の反応器20bを含み得る。溶媒タンク22からの洗浄溶媒または洗浄溶媒と混合されたアスファルテン含有原油を供給する導管18が、2つの並列の導管18aおよび18bに分割され得る。並列の導管18a、18bの各々は、個々の触媒脱れき用の反応器20a、20bに供給される。同様に、DAOと洗浄溶媒の混合物が触媒脱れき用の反応器20a、20bを出ることを可能にする導管24が、2つの並列の導管24a、24bに分割され得る。洗浄溶媒とアスファルテンの混合物が触媒脱れき用の反応器20a、20bを出ることを可能にする導管26もまた、2つの並列の導管26a、26bに分割され得る。DAOと洗浄溶媒の混合物の単一の流れを提供するために、導管24a、24bを単一の導管24に組み合わせることができる。同様に、洗浄溶媒とアスファルテンの混合物の単一の流れを提供するために、導管26a、26bを単一の導管26に組み合わせることができる。
【0018】
ここで
図3を参照すると、触媒脱れき用の反応器ゾーン16は、第1の触媒脱れき用の反応器20a、第2の触媒脱れき用の反応器20b、および第3の触媒脱れき用の反応器20cを含み得、その動作は、
図2に示される触媒脱れき用の反応器ゾーンの動作と同様である。溶媒タンク22からの洗浄溶媒または洗浄溶媒と混合されたアスファルテン含有原油を供給する導管18が、3つの並列の導管18a、18b、18cに分割され得る。並列の導管18a、18b、18cの各々は、個々の触媒脱れき用の反応器20a、20b、20cに供給される。同様に、DAOと洗浄溶媒の混合物が触媒脱れき用の反応器20a、20b、20cを出ることを可能にする導管24が、3つの並列の導管24a、24b、24cに分割され得る。洗浄溶媒とアスファルテンの混合物が触媒脱れき用の反応器20a、20b、20cを出ることを可能にする導管26が、それぞれ、3つの並列の導管26a、26b、26cに分割され得る。DAOと洗浄溶媒の混合物の単一の流れを提供するために、導管24a、24b、24cを単一の導管24に組み合わせることができる。同様に、洗浄溶媒とアスファルテンの混合物の単一の流れを提供するために、導管26a、26b、26cを単一の導管26に組み合わせることができる。
【0019】
2つおよび3つの触媒脱れき用の反応器20を有する実施形態が、それぞれ、
図2および
図3に示されているが、追加の触媒脱れき用の反応器20を有する実施形態も想定される。たとえば、代替の実施形態は、4、5、6、7、8、9、またはさらには10の触媒脱れき用の反応器20を含み得る。
【0020】
一態様によれば、連続的な触媒脱れきプロセスは、原油および非パラフィン系溶媒を含む供給物を第1の触媒脱れき用の反応器に導入する工程を含み、結果として、DAOおよび重合アスファルテンがもたらされる。非パラフィン系溶媒は、限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびそれらの混合物などの、芳香族炭化水素溶媒を含む。脱れきは、第1の触媒脱れき用の反応器(したがって反応モードにある)で実施されるが、非パラフィン系溶媒が第2の触媒脱れき用の反応器に加えられて、第2の触媒脱れき用の反応器(したがって再生モードにある)の触媒を再生する。触媒再生に使用される非パラフィン系溶媒は、混合物を第1の触媒脱れき用の反応器に導入する前に原油と混合された同じ非パラフィン系溶媒であり得るが、そうである必要はない。本明細書で使用されるように、「非パラフィン系溶媒」と「洗浄溶媒」は同義語である。第2の触媒脱れき用の反応器の触媒が、そこに含まれる重合アスファルテンを洗い流すことによって再生された後、第2の触媒脱れき用の反応器は、原油流を脱れきするために使用される反応器となり得、第1の触媒脱れき用の反応器の触媒は、そこに含まれる重合アスファルテンを洗い流すことによって再生される。別の言い方をすれば、第2の触媒脱れき用の反応器の触媒が再生された後、第1の触媒脱れき用の反応器は再生モードに切り替えられ、かつ第2の触媒脱れき用の反応器は反応モードに切り替えられ得る。反応モードと再生モードのこのサイクルは、所定の量の原油を処理するために必要に応じて連続的に繰り返され得る。
【0021】
3つの触媒脱れき用の反応器が使用されるなど、2つを超える触媒脱れき用の反応器が使用される場合、任意の所望の数の触媒脱れき用の反応器が反応モードにあり、任意の所望の数の触媒脱れき用の反応器が再生モードにあり得る。たとえば、3つの触媒脱れき用の反応器が使用される場合、原油供給物は、脱れきのために第1および第3の触媒脱れき用の反応器に導入され得、一方で、原油供給物を含まない非パラフィン系溶媒は、触媒再生のために第2の触媒脱れき用の反応器に加えられ得る。
【0022】
各触媒脱れき用の反応器は、固体ヘテロポリ酸化合物を有する触媒組成物で満たされ得る。実施形態において、固体ヘテロポリ酸化合物は、ケギン型ヘテロポリ酸、セシウム置換ヘテロポリ酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ケギン型ヘテロポリ酸の例としては、限定されないが、リンタングステンヘテロポリ酸(phosphortungstic heteropolyacid)(H3PW12O40)、リンモリブデンヘテロポリ酸(phosphormolybdic heteropolyacid)(H3PMo12O40)、ケイ素タングステンヘテロポリ酸(silicotungstic heteropolyacid)(H4SiW12O40)、ケイ素モリブデンヘテロポリ酸(silicomolybdic heteropolyacid)(H4SiMo12O40)、およびそれらの組み合わせを含む。セシウム置換ヘテロポリ酸の例としては、限定されないが、CsxHyPMo12O40、ここで0<x<4であり、かつyが3-xに等しい、CsxHyPW12O40、ここで0<x<4であり、かつyが4-xに等しい、CsxHySiMo12O40、ここで0<x<4であり、かつyが3-xに等しい、CsxHySiW12O40、ここで0<x<4であり、かつyが4-xに等しい、およびそれらの組み合わせを含む。
【0023】
実施形態において、反応モードでの触媒脱れき用の反応器の各々は、20℃~100℃、20℃~95℃、20℃~90℃、20℃~85℃、20℃~80℃、20℃~75℃、20℃~70℃、20℃~65℃、25℃~100℃、30℃~100℃、35℃~100℃、40℃~100℃、45℃~100℃、50℃~100℃、またはさらには55℃~100℃の温度で加熱される。触媒脱れき用の反応器の温度が、本明細書に記載される上記温度の下限のいずれかから本明細書に記載される上記温度の上限のいずれかまで形成される範囲内にあり得ることを理解されたい。
【0024】
実施形態において、触媒脱れき用の反応器の各々内の圧力は、反応器が反応温度に向かって加熱されるため、反応モードにおいて大気圧より高くなり得る。たとえば、圧力は、0.1MPa(1バール)~0.5MPa(5バール)、0.1MPa(1バール)~0.4MPa(4バール)、0.1MPa(1バール)~0.3MPa(3バール)、0.1MPa(1バール)~0.2MPa(2バール)、0.2MPa(2バール)~0.5MPa(5バール)、0.3MPa(3バール)~0.5MPa(5バール)、またはさらには0.4MPa(4バール)~0.5MPa(5バール)であり得る。反応モードでの各触媒脱れき用の反応器内の圧力が、本明細書に記載される上記圧力の下限のいずれかから本明細書に記載される上記圧力の上限のいずれかまで形成される範囲内にあり得ることを理解されたい。
【0025】
触媒脱れき用の反応器が再生モードにあるときに、洗浄溶媒と重合アスファルテンの混合物が生成される。この混合物は、触媒脱れき用の反応器ゾーンの下流のセパレータに送られ得、洗浄溶媒を重合アスファルテンから分離する。セパレータの非限定的な例の1つは、洗浄溶媒が蒸発させられて、重合アスファルテンの残留物が残る、蒸発システムである。実施形態において、蒸発した洗浄溶媒は冷却されることによって凝縮され得る。たとえば、蒸発した洗浄溶媒を冷却するために冷却器が使用され得る。その後、冷却された洗浄溶媒は、連続的な触媒脱れきプロセスへとリサイクルされ得る。重合アスファルテンから洗浄溶媒を分離する他の方法が想定されており、これらの他の方法のいくつかは、洗浄溶媒を冷却するための冷却器を必要としない場合がある。
【0026】
連続的な触媒脱れきプロセスの結果として、DAOは、1重量%未満のアスファルテンなど、低減されたアスファルテン濃度を有し得る。たとえば、生成されたDAOは、0.01重量%~0.5重量%、0.01重量%~0.4重量%、0.01重量%~0.3重量%、0.01重量%~0.2重量%、0.01重量%~0.1重量%、0.02重量%~0.4重量%、0.03重量%~0.4重量%、0.04重量%~0.4重量%、0.05重量%~0.4重量%、0.06重量%~0.4重量%、0.07重量%~0.4重量%、0.08重量%~0.4重量%、またはさらには0.09重量%~0.4重量%に低減されたアスファルテン濃度を有し得る。DAOが、アスファルテンの完全な除去(DAOの0重量%)および微量のアスファルテンを除くすべての除去を含む、本明細書に記載される上記の範囲に対する任意の下限から本明細書に記載される上記の範囲に対する任意の上限まで形成される範囲内の低減されたアスファルテン濃度を有することを理解されたい。触媒脱れきプロセスを出るDAOは、触媒脱れきプロセスに入る原油と比較して、粘度が低く、有毒な元素(たとえば、S、N、Ni、V)が少ない。
【0027】
上記のように、プロセスの実施形態は、触媒脱れき用の反応器の各々の動作モード(すなわち、反応モードおよび再生モード)を切り替えることを含み得る。この切り替えを制御するさまざまな手段が可能である。たとえば、触媒脱れき用の反応器の1つにおける触媒失活のレベルが触媒失活の許容レベルを超えると、制御システムが動作モードの変化を引き起こし得る。いくつかの実施形態では、制御システムは、複数の触媒脱れき用の反応器の動作モードを同時に切り替え得る。たとえば、制御システムは、第1の触媒脱れき用の反応器を再生モードから反応モードに切り替えると同時に、第2の触媒脱れき用の反応器を反応モードから再生モードに切り替え得る。
【0028】
第1の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、脱れき油中のアスファルテンの濃度を低下させるための連続的な触媒脱れきプロセスは、触媒脱れき用の反応器システムを含み、触媒脱れき用の反応器システムは、少なくとも、並列に配置された第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器を備え、ここで、第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器は各々、固体ヘテロポリ酸化合物を有する触媒を備えている。当該プロセスは、脱れきするため原油および非パラフィン系溶媒を含む供給物を第1の触媒脱れき用の反応器に導入する工程を含み、ここで、触媒に吸着された重合アスファルテンおよび脱れき油を生成する脱れき工程と、脱れき工程が第1の触媒脱れき用の反応器中で実施される間に、第2の触媒脱れき用の反応器内で触媒を再生するため非パラフィン系溶媒を第2の触媒脱れき用の反応器に導入する工程と、脱れき後に重合アスファルテンを除去するため非パラフィン系洗浄溶媒を第1の触媒脱れき用の反応器に導入する工程であって、それによって、第1の触媒脱れき用の反応器内の触媒が再生され、かつ溶媒と重合アスファルテンを含む混合物を生成する工程と、洗浄溶媒を重合アスファルテンから分離するため触媒脱れき用の反応器システムの下流のセパレータに混合物を送る工程と、および分離された洗浄溶媒の少なくとも一部を触媒脱れき用の反応器システムの第1の触媒脱れき用の反応器および第2の触媒脱れき用の反応器の少なくとも1つに再導入する工程と、を含む。
【0029】
第2の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、非パラフィン系洗浄溶媒は芳香族炭化水素溶媒を含む。
【0030】
第3の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、非パラフィン系洗浄溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびそれらの2つまたはそれ以上の混合物からなる群から選択される。
【0031】
第4の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、セパレータは、重合アスファルテンから非パラフィン系洗浄溶媒を蒸発させる。
【0032】
第5の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、当該方法は、蒸発した洗浄溶媒を冷却する工程、および冷却した洗浄溶媒を溶媒リザーバに貯蔵する工程をさらに含む。
【0033】
第6の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、当該方法は、第1および第2の触媒脱れき用の反応器と並列の第3の触媒脱れき用の反応器をさらに含む。
【0034】
第7の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、供給物は、非パラフィン系溶媒を少なくとも第2の触媒脱れき用の反応器に導入すると同時に、脱れきするために第1および第3の触媒脱れき用の反応器に導入される。
【0035】
第8の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、固体ヘテロポリ酸化合物は、ケギン型ヘテロポリ酸、セシウム置換ヘテロポリ酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0036】
第9の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、触媒は、リンタングステンヘテロポリ酸(H3PW12O40)、リンモリブデンヘテロポリ酸(H3PMo12O40)、ケイ素タングステンヘテロポリ酸(H4SiW12O40)、ケイ素モリブデンヘテロポリ酸(H4SiMo12O40)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、少なくとも1つのケギン型ヘテロポリ酸を含む。
【0037】
第10の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、触媒は、CsxHyPMo12O40、ここで0<x<4であり、かつyが3-xに等しい、CsxHyPW12O40、ここで0<x<4であり、かつyが4-xに等しい、CsxHySiMo12O40、ここで0<x<4であり、yが3-xに等しい、CsxHySiW12O40、ここで0<x<4であり、かつyが4-xに等しい、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、少なくとも1つのセシウム置換ヘテロポリ酸を含む。
【0038】
第11の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、脱れき油中の低減されたアスファルテン濃度は、脱れき油に対して1重量%未満である。
【0039】
第12の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、脱れき油中の低減されたアスファルテン濃度は、供給油の0.01重量%から脱れき油に対して0.5重量%までである。
【0040】
第13の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、当該方法は、第1の触媒脱れき用の反応器が触媒再生を実施するべく変更されるように、触媒脱れき用の反応器システムにおいて動作モードを切り替える工程をさらに含む。
【0041】
第14の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、当該方法は、第1の触媒脱れき用の反応器における触媒失活のレベルが触媒失活の許容レベルを超える場合に、触媒脱れき用の反応器システムにおける動作モードの変更を引き起こす制御システムをさらに含む。
【0042】
第15の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、当該方法は、第2の触媒脱れき用の反応器が脱れきを実施するべく変更されるように、触媒脱れき用の反応器システムにおいて動作モードを切り替える工程をさらに含む。
【0043】
特定の特性を具体化する、または特定の方法で機能させるために、特定の方法で「動作可能」または「十分」である本開示の構成要素の本開示における記述が、意図した使用の記述とは対照的な構造的記述であることに留意されたい。より具体的には、構成要素が「動作可能」または「十分」である方法への本開示における言及は、構成要素の既存の物理的状態を示し、したがって、構成要素の構造的特徴の明確な記述として解釈されるべきである。
【0044】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0045】
本開示全体を通して範囲が提供されている。範囲に包含される各離散値も含まれることが想定される。さらに、明示的に開示された範囲に包含される各離散値によって形成され得る範囲も同様に想定される。
【0046】
本開示および添付の請求項で使用されるように、「含む(comprise)」、「有する」、および「包含する(include)」という単語、ならびにそれらのすべての文法的変形は、各々、追加の要素または工程を除外しないオープンで非限定的な意味を有するように意図されている。
【0047】
本開示で使用されるように、「第1の」および「第2の」などの用語は、恣意的に割り当てられ、単に2つまたはそれ以上の例または構成要素を区別するように意図されている。「第1の」および「第2の」という単語が、他の目的を果たさず、構成要素の名称または記述の一部ではなく、構成要素の相対的な場所、位置、または順序を必ずしも定義するものでもないことを理解されたい。さらに、「第1の」および「第2の」という用語の単なる使用が、任意の「第3の」構成要素が存在することを必要としないが、その可能性が本開示の範囲の下で企図されることを理解されたい。
【0048】
詳細におよび具体的な実施形態を参照することによって本開示の主題を説明しているが、本開示に開示されるさまざまな詳細が、本開示に記載されるさまざまな実施形態の必須構成要素である要素に関連することを暗示すると解釈されるべきではないことに留意されたい。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、限定されないが、添付の請求項で定義される実施形態を含む修正および変形が可能であることは明らかであろう。