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特許7595106焼却炉設備及び焼却炉設備の立ち上げ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】焼却炉設備及び焼却炉設備の立ち上げ方法
(51)【国際特許分類】
   F23L 15/00 20060101AFI20241128BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20241128BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20241128BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20241128BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F23L15/00 A
F22B1/18 G
F23G5/00 F
F23G5/46 Z
F23G5/50 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023055343
(22)【出願日】2023-03-30
(65)【公開番号】P2024142927
(43)【公開日】2024-10-11
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】今西 久尚
(72)【発明者】
【氏名】黒岡 達男
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-150508(JP,A)
【文献】特開2015-075299(JP,A)
【文献】特開昭58-205016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00 - 37/78
F23G 5/00 - 5/50
F23L 15/00
F23C 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却対象物を燃焼させる第1の焼却炉と、当該第1の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第1ボイラとを含む第1処理系統と、
焼却対象物を燃焼させる第2の焼却炉と、当該第2の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第2ボイラとを含む第2処理系統と、
前記第1ボイラ及び前記第2ボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の運転を制御する制御部と、を備え、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、
前記制御部は、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、
前記所定の条件は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉の炉内温度が所定温度以上となることである焼却炉設備。
【請求項2】
焼却対象物を燃焼させる第1の焼却炉と、当該第1の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第1ボイラとを含む第1処理系統と、
焼却対象物を燃焼させる第2の焼却炉と、当該第2の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第2ボイラとを含む第2処理系統と、
前記第1ボイラ及び前記第2ボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の運転を制御する制御部と、を備え、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、
前記制御部は、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、
前記所定の条件は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率が所定値未満になることである焼却炉設備。
【請求項3】
焼却対象物を燃焼させる第1の焼却炉と、当該第1の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第1ボイラとを含む第1処理系統と、
焼却対象物を燃焼させる第2の焼却炉と、当該第2の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第2ボイラとを含む第2処理系統と、
前記第1ボイラ及び前記第2ボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の運転を制御する制御部と、を備え、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、
前記制御部は、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、
前記制御部は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉の加温状態に基づいて、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気の量を変更する焼却炉設備。
【請求項4】
前記第1の焼却炉及び前記第2の焼却炉は、それぞれ第1燃焼部と第2燃焼部とを有しており、
前記制御部は、前記対象処理系統に含まれる前記第1燃焼部に前記燃焼気体を導入して加温し、前記所定の条件に到達した場合にバーナを作動させて前記第1燃焼部を加温すると共に、前記対象処理系統に含まれる前記第2燃焼部に前記燃焼気体を導入して加温し、前記所定の条件に到達した場合にバーナを作動させて前記第2燃焼部を加温する請求項1~3のいずれか一項に記載の焼却炉設備。
【請求項5】
第1処理系統と、第2処理系統と、前記第1処理系統のボイラ及び前記第2処理系統のボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、を備えた焼却炉設備の立ち上げ方法であって、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、
前記所定の条件は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉の炉内温度が所定温度以上となることである、焼却炉設備の立ち上げ方法。
【請求項6】
第1処理系統と、第2処理系統と、前記第1処理系統のボイラ及び前記第2処理系統のボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、を備えた焼却炉設備の立ち上げ方法であって、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、
前記所定の条件は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率が所定値未満になることである、焼却炉設備の立ち上げ方法。
【請求項7】
第1処理系統と、第2処理系統と、前記第1処理系統のボイラ及び前記第2処理系統のボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、を備えた焼却炉設備の立ち上げ方法であって、
前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、
前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気の量は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉の加温状態に基づいて変更される、焼却炉設備の立ち上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1処理系統と第2処理系統とを備えた焼却炉設備及び焼却炉設備の立ち上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1処理系統と第2処理系統とを備えた焼却炉設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の焼却炉設備(文献では廃棄物処理設備)は、停止中の処理系統における集塵装置の保温を行っている。
【0003】
具体的には、第1処理系統の第1ボイラ及び第2処理系統の第2ボイラで生成された蒸気受入れ部の蒸気を凝縮させ、この凝縮熱により停止中の処理系統における集塵装置の保温を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-75299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の焼却炉設備では、焼却炉の立ち上げ制御について言及されていない。通常、焼却炉の立ち上げ制御には、バーナにより焼却炉を加温し、炉内温度が所定温度(例えば500℃)以上となれば、バーナを停止する。しかしながら、従来の立ち上げ制御では、バーナにより冷えた炉内を急激に加熱するため、コストの増大を招き、炉の耐火物の寿命も短くなるおそれがあった。
【0006】
そこで、停止中の炉の立ち上げ制御を安価に行いながら、耐久性を高めた焼却炉設備及び焼却炉設備の立ち上げ方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る焼却炉設備の特徴構成の一つは、焼却対象物を燃焼させる第1の焼却炉と、当該第1の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第1ボイラとを含む第1処理系統と、焼却対象物を燃焼させる第2の焼却炉と、当該第2の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第2ボイラとを含む第2処理系統と、前記第1ボイラ及び前記第2ボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の運転を制御する制御部と、を備え、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記制御部は、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、前記所定の条件は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉の炉内温度が所定温度以上となることである点にある。
【0012】
本構成では、高圧蒸気溜め部から供給される蒸気が保有する大きな熱量を燃焼空気に与えるため、停止中の焼却炉を効率的に加温できる。また、制御部は、停止中の焼却炉を稼働させるとき、焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて焼却炉を加温するため、バーナの燃料コストを節約できる。
しかも、制御部は、焼却炉の加温状態が所定の条件を充足するまで高圧蒸気溜め部から供給される蒸気が保有する熱量を燃焼空気に与えて停止中の焼却炉を加温するため、バーナで最初から加温する場合に比べて昇温勾配が緩やかになり、焼却炉の耐火物に与える負荷が小さくなり、焼却炉の寿命を延ばすことができる。
このように、停止中の炉の立ち上げ制御を安価に行いながら、耐久性を高めた焼却炉設備となっている。
また、本構成のように、例えば昇温率が所定値以上である場合でも、炉内温度が所定温度以上であれば、バーナを作動させても温度勾配が急峻になることがないため、焼却炉の安定した立ち上げ制御を実現できる。
【0013】
本発明に係る焼却炉設備の特徴構成の一つは、焼却対象物を燃焼させる第1の焼却炉と、当該第1の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第1ボイラとを含む第1処理系統と、焼却対象物を燃焼させる第2の焼却炉と、当該第2の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第2ボイラとを含む第2処理系統と、前記第1ボイラ及び前記第2ボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の運転を制御する制御部と、を備え、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記制御部は、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、前記所定の条件は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率が所定値未満になることである点にある。
【0014】
本構成では、高圧蒸気溜め部から供給される蒸気が保有する大きな熱量を燃焼空気に与えるため、停止中の焼却炉を効率的に加温できる。また、制御部は、停止中の焼却炉を稼働させるとき、焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて焼却炉を加温するため、バーナの燃料コストを節約できる。
しかも、制御部は、焼却炉の加温状態が所定の条件を充足するまで高圧蒸気溜め部から供給される蒸気が保有する熱量を燃焼空気に与えて停止中の焼却炉を加温するため、バーナで最初から加温する場合に比べて昇温勾配が緩やかになり、焼却炉の耐火物に与える負荷が小さくなり、焼却炉の寿命を延ばすことができる。
このように、停止中の炉の立ち上げ制御を安価に行いながら、耐久性を高めた焼却炉設備となっている。
また、本構成のように、焼却炉の加温状態を昇温率でモニタリングすれば、焼却炉の加温度合いを正確に把握することができる。また、昇温率が所定値未満、つまり、加温度合いが頭打ちになったときにバーナを作動させることにより、バーナの燃料コストを節約することができる。
【0015】
本発明に係る焼却炉設備の特徴構成の一つは、焼却対象物を燃焼させる第1の焼却炉と、当該第1の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第1ボイラとを含む第1処理系統と、焼却対象物を燃焼させる第2の焼却炉と、当該第2の焼却炉により生成される排ガスの熱を用いて蒸気を発生させる第2ボイラとを含む第2処理系統と、前記第1ボイラ及び前記第2ボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の運転を制御する制御部と、を備え、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記制御部は、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、前記制御部は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉の加温状態に基づいて、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気の量を変更する点にある。
【0016】
本構成では、高圧蒸気溜め部から供給される蒸気が保有する大きな熱量を燃焼空気に与えるため、停止中の焼却炉を効率的に加温できる。また、制御部は、停止中の焼却炉を稼働させるとき、焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて焼却炉を加温するため、バーナの燃料コストを節約できる。
しかも、制御部は、焼却炉の加温状態が所定の条件を充足するまで高圧蒸気溜め部から供給される蒸気が保有する熱量を燃焼空気に与えて停止中の焼却炉を加温するため、バーナで最初から加温する場合に比べて昇温勾配が緩やかになり、焼却炉の耐火物に与える負荷が小さくなり、焼却炉の寿命を延ばすことができる。
このように、停止中の炉の立ち上げ制御を安価に行いながら、耐久性を高めた焼却炉設備となっている。
また、本構成のように、焼却炉の加温状態に基づいて高圧蒸気溜め部から供給される蒸気の量を変更すれば、焼却炉の昇温勾配が安定し、焼却炉の耐火物に与える負荷が小さくなる。
【0017】
他の特徴構成は、前記第1の焼却炉及び前記第2の焼却炉は、それぞれ第1燃焼部と第2燃焼部とを有しており、前記制御部は、前記対象処理系統に含まれる前記第1燃焼部に前記燃焼気体を導入して加温し、前記所定の条件に到達した場合にバーナを作動させて前記第1燃焼部を加温すると共に、前記対象処理系統に含まれる前記第2燃焼部に前記燃焼気体を導入して加温し、前記所定の条件に到達した場合にバーナを作動させて前記第2燃焼部を加温する点にある。
【0018】
本構成では、焼却炉がガス化流動床炉(第1燃焼部)と溶融炉(第2燃焼部)とを有する流動床式ガス化溶融炉や第1燃焼部と第2燃焼部とを有するストーカ式焼却炉であっても、両燃焼部の立ち上げ制御を安価に行いながら、耐久性を高めることができる。
【0019】
本発明に係る焼却炉設備の立ち上げ方法の特徴の一つは、第1処理系統と、第2処理系統と、前記第1処理系統のボイラ及び前記第2処理系統のボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、を備えた焼却炉設備の立ち上げ方法であって、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、前記所定の条件は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉の炉内温度が所定温度以上となることである点にある。
本方法では、上述したように、停止中の炉の立ち上げ制御を安価に行いながら、耐久性を高めることができる。
また、本方法のように、例えば昇温率が所定値以上である場合でも、炉内温度が所定温度以上であれば、バーナを作動させても温度勾配が急峻になることがないため、焼却炉の安定した立ち上げ制御を実現できる。
本発明に係る焼却炉設備の立ち上げ方法の特徴の一つは、第1処理系統と、第2処理系統と、前記第1処理系統のボイラ及び前記第2処理系統のボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、を備えた焼却炉設備の立ち上げ方法であって、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、前記所定の条件は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率が所定値未満になることである点にある。
本方法では、上述したように、停止中の炉の立ち上げ制御を安価に行いながら、耐久性を高めることができる。
また、本方法のように、焼却炉の加温状態を昇温率でモニタリングすれば、焼却炉の加温度合いを正確に把握することができる。また、昇温率が所定値未満、つまり、加温度合いが頭打ちになったときにバーナを作動させることにより、バーナの燃料コストを節約することができる。
【0020】
本発明に係る焼却炉設備の立ち上げ方法の特徴の一つは、第1処理系統と、第2処理系統と、前記第1処理系統のボイラ及び前記第2処理系統のボイラにて生成された蒸気を受け入れる高圧蒸気溜め部と、を備えた焼却炉設備の立ち上げ方法であって、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか一方が稼働中で、前記第1処理系統及び前記第2処理系統の何れか他方が停止中である場合において、前記何れか他方から成る対象処理系統を稼働させるとき、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気と熱交換した燃焼気体を前記対象処理系統に含まれる焼却炉に導入して加温し、当該焼却炉の加温状態が所定の条件を充足した場合にバーナを作動させて前記焼却炉を加温し、前記高圧蒸気溜め部から供給される蒸気の量は、前記対象処理系統に含まれる前記焼却炉の加温状態に基づいて変更される点にある。
本方法では、上述したように、停止中の炉の立ち上げ制御を安価に行いながら、耐久性を高めることができる。
また、本方法のように、焼却炉の加温状態に基づいて高圧蒸気溜め部から供給される蒸気の量を変更すれば、焼却炉の昇温勾配が安定し、焼却炉の耐火物に与える負荷が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】焼却炉設備を示す概念図である。
図2】焼却炉設備を示すブロック図である。
図3】立ち上げ制御を実行するときのブロック図である。
図4】第一実施形態に係る制御部の制御フローを示す図である。
図5】第二実施形態に係る制御部の制御フローを示す図である。
図6】第三実施形態に係る制御部の制御フローを示す図である。
図7A】第四実施形態に係る制御部の制御フローを示す図である。
図7B】第四実施形態に係る制御部の制御フローを示す図である。
図8】第五実施形態に係る制御部の制御フローを示す図である。
図9】立ち上げ時における焼却炉の炉内温度を示す比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る焼却炉設備及び焼却炉設備の立ち上げ方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、焼却炉設備1が備える焼却炉2の一例として、流動床式ガス化溶融炉として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0023】
〔焼却炉の基本構成〕
図1に示すように、焼却炉設備1は、ホッパ2a及び給塵機2bを含む焼却炉2と、給水装置31を含むボイラ3と、制御部8と、高圧蒸気溜め部9とを少なくとも備えている。また、焼却炉設備1は、蒸気タービン発電機30と、ガス冷却器4と、バグフィルタ5と、脱硝装置6と、煙突7とを備えている。本実施形態における焼却炉2は、流動床炉21(第1燃焼部の一例)と溶融炉22(第2燃焼部の一例)とで構成されている。制御部8は、焼却炉設備1の作動を制御するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムを含んでおり、コンピュータのASIC,FPGA,CPU又は他のハードウェアを含むプロセッサにより実行される。
【0024】
流動床炉21は、珪砂を主成分とする砂層10と、砂層10に空気を押し込む送風装置11とを備えている。送風装置11は、砂層10よりも下側に設けられ、下側から砂層10に空気を供給する。送風装置11は、通常運転時に押込空気用送風機及び噴出ノズル(いずれも不図示)により砂層10に空気(押込空気、燃焼気体の一例)を送り込み、焼却炉2の立ち上げ時に、押込空気用送風機から導入された空気が押込空気用予熱器Hpにより加温された加温空気(押込空気、燃焼気体の一例)として砂層10に送り込む。砂層10は流動床炉21の下部領域に設けられ、約450℃~約600℃に加熱されて、砂層10上に投入された廃棄物D(焼却対象物の一例)を焼却する。廃棄物Dはホッパ2aに一時貯留されており、給塵機2bを経て流動床炉21の炉内に搬送される。また、流動床炉21の中央領域から上部領域にかけて二次空気用送風機(不図示)により空気(二次空気、燃焼気体の一例)が送り込まれ、廃棄物Dがガス化されて熱分解ガスが生成される。また、流動床炉21には、運転停止時に砂層10の砂を外部に排出可能な排出口16が設けられている。なお、本実施形態における廃棄物Dはごみで構成されているが、その他に汚泥、籾殻や木材チップ等で構成してもよい。また、焼却炉2の立ち上げ時に、二次空気用送風機から導入された空気が二次空気用予熱器Hsにより加温された加温空気(二次空気、燃焼気体の一例)として流動床炉21の中央領域から上部領域にかけて送り込んでもよい。
【0025】
流動床炉21には、下部領域に熱電対等で構成される第1温度計測部T1が設けられている。第1温度計測部T1は、焼却炉2の稼働中において砂層10の温度を計測し、焼却炉2の停止中において流動床炉21の下部領域の炉内温度を計測することができる。また、流動床炉21の中央領域には、焼却炉2の停止中において、流動床炉21の炉内温度を上昇させるための始動バーナB(バーナの一例)が設けられている。
【0026】
溶融炉22は、流動床炉21の下流側に連通路12を介して接続されており、旋回流により約1200℃~1300℃で高温燃焼を行う炉である。連通路12には、公知の温度センサ等で構成される第2温度計測部T2が設けられている。第2温度計測部T2は、流動床炉21の上部領域の炉内温度として計測することができる。溶融炉22の上部には、公知の温度センサ等で構成される第3温度計測部T3が設けられている。第3温度計測部T3は、溶融炉22の炉内温度を計測することができる。この溶融炉22では、流動床炉21から導入された熱分解ガスを燃焼させ、熱分解ガスに含まれる灰分を溶融してスラグを生成する。溶融炉22の頂部13には、補助バーナ(不図示)が取り付けられており、熱分解ガスの燃焼を補助するために必要に応じて点火される。この溶融炉22には、二次空気用送風機(不図示)により空気(二次空気、燃焼気体の一例)が送り込まれる。また、溶融炉22の下部には出滓口14が設けられており、生成されたスラグが出滓口14を介して排出される。本実施形態では、焼却炉2の立ち上げ時に、二次空気用送風機から導入された空気が二次空気用予熱器Hsにより加温された加温空気(二次空気、燃焼気体の一例)として溶融炉22の炉内に送り込まれる。
【0027】
ボイラ3では、溶融炉22の下流側で二次燃焼が行われ、この二次燃焼により生成された排ガスが導入される。二次燃焼では、溶融炉22からの排ガス中の未燃焼物が完全燃焼される。ボイラ3は、二次燃焼で生成された排ガスの熱を利用して蒸気を発生させる。ボイラ3には、給水装置31より水が供給され、排ガスとの熱交換により蒸気を発生する。このボイラ3で廃熱が回収されたガスは、ガス冷却器4にて冷却された後、バグフィルタ5で除塵され、脱硝装置6を経て煙突7から系外に排出される。
【0028】
蒸気タービン発電機30は、ボイラ3が発生させる蒸気が供給され、蒸気によってタービンを回して発電を行う。蒸気タービン発電機30に供給される蒸気量が所定の蒸気量を下回らないように、焼却炉2の運転条件が設定され、ボイラ3にて高圧蒸気が生成される。一方、高圧蒸気が余剰に生成され、所定の蒸気量を上回る場合、蒸気タービン発電機30に供給されず開閉弁25を開いて復水器(不図示)に送られる。給水装置31は、蒸気タービン発電機30のタービンの出口から排出される低圧湿り蒸気を冷却して凝縮させることにより、飽和水に戻す復水器31aと、飽和水を貯留する復水タンク31bと、給水ポンプPにより復水器からボイラ3に戻される飽和水の脱気処理を行う脱気器31cとを含んでいる(図2も参照)。
【0029】
ボイラ3は、流動床炉21で生成された排ガスの熱エネルギーにより、給水装置31からボイラ3に供給された水を沸騰させて高圧蒸気を生成する。この生成された高圧蒸気は、蒸気タービン発電機30に供給される前に、高圧蒸気溜め部9にて一時的に貯留される。高圧蒸気は、高圧蒸気溜め部9から蒸気タービン発電機30のタービンに導入され、タービンを駆動することにより動力を生成すると共に降圧する。そして、蒸気の一部がタービン中段から抽出されて低圧蒸気として低圧蒸気溜め部32に貯留される。この低圧蒸気溜め部32で溜められた低圧蒸気は、脱気器31cへ導入され、脱気処理に利用される等の用途で使用される。なお、高圧蒸気の圧力は、ゲージ圧にして2~6MPaであり、タービン出口から排出される低圧湿り蒸気の圧力がゲージ圧にして-95~-70KPaの圧力であり、タービン中段から抽出される低圧蒸気の圧力は、ゲージ圧にして0.6~1.2MPaである。このように、低圧蒸気を取り出すことにより、高圧蒸気をそのまま減温,減圧させる場合に比べ、エネルギー回収効率を高めることができる。なお、低圧蒸気溜め部32を省略してもよい。
【0030】
〔焼却炉設備の概要〕
図2に示すように、焼却炉設備1は、第1処理系統1Aと第2処理系統1Bと制御部8と高圧蒸気溜め部9とを備えている。以下、「第1処理系統1A」、「第2処理系統1B」は、それぞれ1つ又は2つ以上の処理系統を意味する。
【0031】
第1処理系統1Aは、第1始動バーナB1を含む第1の焼却炉2(以下、「第1焼却炉2A」という)と、第1のボイラ3(以下、「第1ボイラ3A」という)と、第1押込空気用送風機Aa1から空気が供給される第1の押込空気用予熱器Hp(以下、「第1押込空気用予熱器Hp1」という)と、高圧蒸気溜め部9と第1押込空気用予熱器Hp1との間にある第1の蒸気ダンパVp(「第1蒸気ダンパVp1」という)と、第1二次空気用送風機Ab1から空気が供給される第1の二次空気用予熱器Hs(以下、「第1二次空気用予熱器Hs1」という)と、高圧蒸気溜め部9と第1二次空気用予熱器Hs1との間にある第1の蒸気ダンパVs(「第1蒸気ダンパVs1」という)と、第1の給水ポンプP(「第1給水ポンプPa」という)と、を備えている。第1焼却炉2Aには、上述した第1温度計測部T1~第3温度計測部T3で構成される第1の温度計測部Taが設けられている。
【0032】
第2処理系統1Bは、第2始動バーナB2を含む第2の焼却炉2(以下、「第2焼却炉2B」という)と、第2のボイラ3(以下、「第2ボイラ3B」という)と、第2押込空気用送風機Aa2から空気が供給される第2の押込空気用予熱器Hp(以下、「第2押込空気用予熱器Hp2」という)と、高圧蒸気溜め部9と第2押込空気用予熱器Hp2との間にある第2の蒸気ダンパVp(「第2蒸気ダンパVp2」という)と、第2二次空気用送風機Ab2から空気が供給される第2の二次空気用予熱器Hs(以下、「第2二次空気用予熱器Hs2」という)と、高圧蒸気溜め部9と第2二次空気用予熱器Hs2との間にある第2の蒸気ダンパVs(「第2蒸気ダンパVs2」という)と、第2の給水ポンプP(「第2給水ポンプPb」という)と、を備えている。第2焼却炉2Bには、上述した第1温度計測部T1~第3温度計測部T3で構成される第2の温度計測部Tbが設けられている。
【0033】
押込空気用予熱器Hp及び二次空気用予熱器Hsは、高圧蒸気と空気との熱交換により高温空気を生成させることが可能なものであれば、特に限定されない。例えば、フィンチューブ式熱交換器、ボアチューブ式熱交換器、プレート式熱交換器等が挙げられる。本実施形態における焼却炉設備1は、第1処理系統1A及び第2処理系統1Bにおいて、高圧蒸気溜め部9、蒸気タービン発電機30、復水器31a、復水タンク31b、脱気器31c及び低圧蒸気溜め部32が共有化されている。なお、第1処理系統1A及び第2処理系統1Bにおいて、高圧蒸気溜め部9、蒸気タービン発電機30、復水器31a、復水タンク31b、脱気器31c及び低圧蒸気溜め部32が個別に設けられてもよい。
【0034】
図3には、第1処理系統1A及び第2処理系統1Bの何れか一方(以下、稼働処理系統を「第1処理系統1A」とする)が稼働中で、第1処理系統1A及び第2処理系統1Bの何れか他方(以下、停止処理系統を「第2処理系統1B」とする)が停止中である場合において、停止中である何れかの他方から成る対象処理系統(以下、対象処理系統を「第2処理系統1B」とする)を稼働させるときの立ち上げ制御のブロック図が示されている。ここで、「停止中である何れかの他方から成る対象処理系統」とは、停止処理系統が1つである場合には当該停止処理系統のことであり、停止処理系統が2つ以上である場合には、1つの停止処理系統又は2つ以上の任意の数から成る停止処理系統のことを意味する。第1処理系統1Aは稼働中であるため、給水装置31から第1ボイラ3Aに供給された水を沸騰させてから高圧蒸気を発生させ、この高圧蒸気が高圧蒸気溜め部9にて一時的に貯留され、蒸気タービン発電機30のタービンに導入され、タービンを駆動することにより動力を生成する(図2も参照)。
【0035】
一方、第2処理系統1Bは停止中であるため、第2焼却炉2Bの流動床炉21の砂層10の砂が、排出口16を介して外部に排出されている(図1も参照)。制御部8は、第2処理系統1Bを再稼働させるとき、立ち上げ制御を実行する。制御部8は、第2焼却炉2Bを稼働させるとき、第2押込空気用送風機Aa2や第2二次空気用送風機Ab2を作動させて第2押込空気用予熱器Hp2や第2二次空気用予熱器Hs2に燃焼気体(押込空気や二次空気)を流通させる。そして、第2蒸気ダンパVp2,Vs2を開いて高圧蒸気溜め部9から高圧蒸気を第2押込空気用予熱器Hp2や第2二次空気用予熱器Hs2に流通させ、高圧蒸気と熱交換した燃焼気体を第2処理系統1Bに含まれる第2焼却炉2Bに導入して加温する。このとき、燃焼気体と熱交換した高圧蒸気は、脱気器31cに導入される。次いで、制御部8は、第2焼却炉2Bの加温状態が所定の条件を充足した場合(「昇温限界に到達した場合」として説明することもある。)に第2始動バーナB2を作動させて第2焼却炉2Bを加温する(図2も参照)。
【0036】
本実施形態では、高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気が保有する大きな熱量を燃焼空気に与えるため、停止中の第2焼却炉2Bを効率的に加温できる。また、制御部8は、停止中の第2焼却炉2Bを稼働させるとき、第2焼却炉2Bの昇温限界に到達した場合に第2始動バーナB2を作動させて第2焼却炉2Bを加温するため、第2始動バーナB2の燃料コストを節約できる。しかも、制御部8は、昇温限界となるまで高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気が保有する熱量を燃焼空気に与えて停止中の第2焼却炉2Bを加温するため、図9に示すように、第2始動バーナB2で最初から加温する場合(図9の破線)に比べて昇温勾配が緩やかになり(図9の実線)、第2焼却炉2Bの耐火物に与える負荷が小さくなり、第2焼却炉2Bの寿命を延ばすことができる。
【0037】
以下、停止中の処理系統として第2焼却炉2Bにおける立ち上げ制御について詳述するが、第1焼却炉2Aの立ち上げ制御についても同様である。
【0038】
〔第一実施形態に係る立ち上げ制御〕
図4には、第一実施形態に係る焼却炉2の立ち上げ制御フロー(焼却炉設備1の立ち上げ方法)が示されている。図4に示す空気予熱器は、第2焼却炉2Bの流動床炉21及び溶融炉22の少なくとも1つの立ち上げ制御に用いられる、第2押込空気用予熱器Hp2や第2二次空気用予熱器Hs2のことである。以下、第2押込空気用予熱器Hp2を作動させて、第2焼却炉2Bの流動床炉21の予熱を行った後、第2始動バーナB2を点火する立ち上げ制御について説明する。
【0039】
制御部8は、第1処理系統1Aが稼働中であり、第2処理系統1Bが停止中である場合において、第2処理系統1Bの第2焼却炉2Bを稼働させるとき、高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気と熱交換した加温空気を第2焼却炉2Bの流動床炉21に導入して加温し、当該流動床炉21の加温状態が所定の条件を充足した場合に到達した場合に第2始動バーナB2を作動させて流動床炉21を加温する。この所定の条件は、第2焼却炉2Bの流動床炉21における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)が所定値(基準昇温率X1(℃/h))未満(昇温限界)になることである。ここで、基準昇温率X1(℃/h)は、焼却炉設備1ごとに事前に試運転等により予め設定される値であり、例えば20(℃/h)~70(℃/h)、好ましくは40(℃/h)~60(℃/h)である。
【0040】
図3に示すように、第1処理系統1Aは稼働中であるため、給水装置31の脱気器31cから第1給水ポンプPaにより第1ボイラ3Aに供給された水を沸騰させてから高圧蒸気を発生させ、この高圧蒸気が高圧蒸気溜め部9にて一時的に貯留され、蒸気タービン発電機30のタービンに導入され、タービンを駆動することにより動力を生成している(図2も参照)。そして、制御部8は、第2焼却炉2Bを稼働させるとき、第2押込空気用送風機Aa2を作動させる。次いで、所定の開度(例えば全開に対して10~50%)で第2蒸気ダンパVp2を開いて高圧蒸気溜め部9から高圧蒸気を第2押込空気用予熱器Hp2に流通させ、高圧蒸気と熱交換した押込空気を第2焼却炉2Bの流動床炉21に導入して加温する(図4の#41、空気予熱器の作動)。なお、第2焼却炉2Bは、停止中であったため、砂層10に砂がなく、第1温度計測部T1で計測される温度は、流動床炉21の炉内温度に相当する。
【0041】
次いで、制御部8は、第1温度計測部T1あるいは第2温度計測部T2の計測値及び経過時間に基づいて、流動床炉21における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)を演算し、この昇温率(℃/h)が基準昇温率X1(℃/h)以上であるか否かを判定する(図4の#42)。このとき、制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X1(℃/h)以上且つ基準昇温率X1(℃/h)の近傍値となるように、第2蒸気ダンパVp2の開度を調整している。制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X1(℃/h)以上であれば(図4の#42Yes)、このまま継続し、昇温率(℃/h)が基準昇温率X1(℃/h)未満であれば(図4の#42No)、第2蒸気ダンパVp2の開度が全開か否かを判定する(図4の#43)。第2蒸気ダンパVp2の開度が全開でなければ(図4の#43No)、第2蒸気ダンパVp2の開度を上昇させて、第2押込空気用予熱器Hp2への供給蒸気量を増加させる(図4の#44)。つまり、制御部8は、第2焼却炉2Bの加温状態に基づいて、高圧蒸気溜め部9から供給される高圧蒸気の量を変更している。
【0042】
制御部8は、第2蒸気ダンパVp2の開度が全開となるまで、#42~#44のステップを繰り返し、第2蒸気ダンパVp2の開度が全開であっても昇温率(℃/h)が基準昇温率X1(℃/h)未満(昇温限界)であれば(図4の#42No,#43Yes)、第2始動バーナB2を点火して、流動床炉21を加温する(図4の#45)。なお、図示していないが、第2始動バーナB2を点火して流動床炉21を加温中に砂層10に砂を投入する。そして、流動床炉21の炉内温度が予熱完了温度(例えば500℃)となれば、流動床炉21に廃棄物Dを投入して、第2始動バーナB2を停止し、第2処理系統1Bを本格稼働させる。
【0043】
このように、制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X1(℃/h)となる昇温限界まで高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気が保有する大きな熱量を押込空気に与えて停止中の第2焼却炉2Bを加温するため、図9に示すように、第2始動バーナB2で最初から加温する場合(図9の破線:QthにてTthまで保持)に比べて昇温勾配が緩やかになる(図9の実線)。昇温勾配が頭打ち(昇温限界)になったときに第2始動バーナB2を点火すれば、概ね基準昇温率X1で炉内温度が上昇するため、第2焼却炉2Bの流動床炉21の予熱を効率的に行うことができる。また、昇温限界を昇温率でモニタリングすれば、第2焼却炉2Bの加温度合いを正確に把握することができる。さらに、昇温率が基準昇温率X1未満、つまり、加温度合いが頭打ちになったときに第2始動バーナB2を作動させることにより、第2始動バーナB2を用いて最初から加温する場合に比べて、第2始動バーナB2の燃料コストを節約することができる。
【0044】
〔第二実施形態に係る立ち上げ制御〕
図5には、第二実施形態に係る焼却炉2の立ち上げ制御フロー(焼却炉設備1の立ち上げ方法)が示されている。図5に示す空気予熱器は、第2焼却炉2Bの流動床炉21及び溶融炉22の少なくとも1つの立ち上げ制御に用いられる、第2押込空気用予熱器Hp2や第2二次空気用予熱器Hs2のことである。以下、第2押込空気用予熱器Hp2を作動させて、第2焼却炉2Bの流動床炉21の予熱を行った後、第2始動バーナB2を点火する立ち上げ制御について説明する。
【0045】
制御部8は、第1処理系統1Aが稼働中であり、第2処理系統1Bが停止中である場合において、第2処理系統1Bの第2焼却炉2Bを稼働させるとき、高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気と熱交換した加温空気を第2焼却炉2Bの流動床炉21に導入して加温し、当該流動床炉21の加温状態が所定の条件を充足した場合に第2始動バーナB2を作動させて流動床炉21を加温する。この所定の条件は、下記の2つのパターンがある。1つ目のパターンは、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が所定温度(基準炉内温度Y2(℃))以上となることである。2つ目のパターンは、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が所定温度(基準炉内温度Y2(℃))未満であるときに、第2焼却炉2Bの流動床炉21における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)が所定値(基準昇温率X2(℃/h))未満(昇温限界)になることである。ここで、基準炉内温度Y2(℃)や基準昇温率X2(℃/h)は、焼却炉設備1ごとに事前に試運転等により予め設定される値であり、例えば基準炉内温度Y2(℃)は50(℃)~250(℃)、好ましくは80(℃)~150(℃)であり、基準昇温率X2(℃/h)は20(℃/h)~70(℃/h)、好ましくは40(℃/h)~60(℃/h)である。
【0046】
図3に示すように、第1処理系統1Aは稼働中であるため、給水装置31から第1ボイラ3Aに供給された水を沸騰させてから高圧蒸気を発生させ、この高圧蒸気が高圧蒸気溜め部9にて一時的に貯留され、蒸気タービン発電機30のタービンに導入され、タービンを駆動することにより動力を生成している(図2も参照)。そして、制御部8は、第2焼却炉2Bを稼働させるとき、第2押込空気用送風機Aa2を作動させて第2押込空気用予熱器Hp2に押込空気を流通させる。次いで、所定の開度(例えば全開に対して10~50%)で第2蒸気ダンパVp2を開いて高圧蒸気溜め部9から高圧蒸気を第2押込空気用予熱器Hp2に流通させ、高圧蒸気と熱交換した押込空気を第2焼却炉2Bの流動床炉21に導入して加温する(図5の#51、空気予熱器の作動)。なお、第2焼却炉2Bは、停止中であったため、砂層10に砂がなく、第1温度計測部T1で計測される温度は、流動床炉21の炉内温度に相当する。
【0047】
次いで、制御部8は、第1温度計測部T1あるいは第2温度計測部T2の計測値に基づいて、流動床炉21の炉内温度(℃)が基準炉内温度Y2(℃)以上であるか否かを判定する(図5の#52)。制御部8は、炉内温度(℃)が基準炉内温度Y2(℃)以上であれば(図5の#52Yes)、第2始動バーナB2を点火して、流動床炉21を加温する(図5の#56)。
【0048】
一方、制御部8は、炉内温度(℃)が基準炉内温度Y2(℃)未満であれば(図5の#52No)、第1温度計測部T1あるいは第2温度計測部T2の計測値及び経過時間に基づいて、流動床炉21における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)を演算し、この昇温率(℃/h)が基準昇温率X2(℃/h)以上であるか否かを判定する(図5の#53)。このとき、制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X2(℃/h)以上且つ基準昇温率X2(℃/h)の近傍値となるように、第2蒸気ダンパVp2の開度を調整している。制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X2(℃/h)以上であれば(図5の#53Yes)、炉内温度(℃)が基準炉内温度Y2(℃)以上となるまで、このまま継続する。一方、制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X2(℃/h)未満(昇温限界)であれば(図5の#53No)、第2蒸気ダンパVp2の開度が全開か否かを判定する(図5の#54)。第2蒸気ダンパVp2の開度が全開でなければ(図5の#54No)、第2蒸気ダンパVp2の開度を上昇させて、第2押込空気用予熱器Hp2への供給蒸気量を増加させる(図5の#55)。つまり、制御部8は、第2焼却炉2Bの加温状態に基づいて、高圧蒸気溜め部9から供給される高圧蒸気の量を変更している。
【0049】
制御部8は、第2蒸気ダンパVp2の開度が全開となるまで、#52~#55のステップを繰り返し、炉内温度(℃)が基準炉内温度Y2(℃)未満且つ第2蒸気ダンパVp2の開度が全開であっても、昇温率(℃/h)が基準昇温率X2(℃/h)未満(昇温限界)であれば(図5の#52No,#53No,#54Yes)、第2始動バーナB2を点火して、流動床炉21を加温する(図5の#56)。なお、図示していないが、第2始動バーナB2を点火して流動床炉21を加温中に砂層10に砂を投入する。そして、流動床炉21の炉内温度が予熱完了温度(例えば500℃)となれば、流動床炉21に廃棄物Dを投入して、第2始動バーナB2を停止し、第2処理系統1Bを本格稼働させる。
【0050】
このように、制御部8は、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が所定温度(基準炉内温度Y2(℃))未満であるときに、昇温率(℃/h)が基準昇温率X2(℃/h)となる昇温限界まで高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気が保有する大きな熱量を押込空気に与えて停止中の第2焼却炉2Bを加温するため、図9に示すように、第2始動バーナB2で最初から加温する場合(図9の破線:QthにてTthまで保持)に比べて昇温勾配が緩やかになる(図9の実線)。昇温勾配が頭打ちになったときに第2始動バーナB2を点火すれば、概ね基準昇温率X2で炉内温度が上昇するため、第2焼却炉2Bの流動床炉21の予熱を効率的に行うことができる。加えて、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が基準炉内温度Y2(℃)以上であれば、第2始動バーナB2を作動させても温度勾配が急峻となることがないため、第2焼却炉2Bの安定した立ち上げ制御を実現できる。また、昇温限界を炉内温度と昇温率でモニタリングすれば、第2焼却炉2Bの加温度合いを正確に把握することが可能となり、より正確な立ち上げ制御を実現できる。さらに、昇温率が基準昇温率X2未満、つまり、加温度合いが頭打ちになったときに第2始動バーナB2を作動させることにより、第2始動バーナB2を用いて最初から加温する場合に比べて、第2始動バーナB2の燃料コストを節約することができる。
【0051】
〔第三実施形態に係る立ち上げ制御〕
図6には、第三実施形態に係る焼却炉2の立ち上げ制御フロー(焼却炉設備1の立ち上げ方法)が示されている。図6に示す空気予熱器は、第2焼却炉2Bの流動床炉21及び溶融炉22の少なくとも1つの立ち上げ制御に用いられる、第2押込空気用予熱器Hp2や第2二次空気用予熱器Hs2のことである。以下、第2押込空気用予熱器Hp2を作動させて、第2焼却炉2Bの流動床炉21の予熱を行った後、第2始動バーナB2を点火する立ち上げ制御について説明する。
【0052】
制御部8は、第1処理系統1Aが稼働中であり、第2処理系統1Bが停止中である場合において、第2処理系統1Bの第2焼却炉2Bを稼働させるとき、高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気と熱交換した加温空気を第2焼却炉2Bの流動床炉21に導入して加温し、当該流動床炉21の加温状態が所定の条件を充足した場合に第2始動バーナB2を作動させて流動床炉21を加温する。この所定の条件は、下記の2つのパターンがある。1つ目のパターンは、第2焼却炉2Bの流動床炉21における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)が所定値(基準昇温率X3(℃/h))未満(昇温限界)となることである(第一実施形態と同じ条件)。2つ目のパターンは、第2焼却炉2Bの流動床炉21における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)が所定値(基準昇温率X3(℃/h))未満(昇温限界)である場合において、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が所定温度(基準炉内温度Y3(℃))以上となることである。ここで、基準炉内温度Y3(℃)や基準昇温率X3(℃/h)は、焼却炉設備1ごとに事前に試運転等により予め設定される値であり、例えば基準炉内温度Y3(℃)は50(℃)~250(℃)、好ましくは80(℃)~150(℃)であり、基準昇温率X3(℃/h)は20(℃/h)~70(℃/h)、好ましくは40(℃/h)~60(℃/h)である。
【0053】
図3に示すように、第1処理系統1Aは稼働中であるため、給水装置31から第1ボイラ3Aに供給された水を沸騰させてから高圧蒸気を発生させ、この高圧蒸気が高圧蒸気溜め部9にて一時的に貯留され、蒸気タービン発電機30のタービンに導入され、タービンを駆動することにより動力を生成している(図2も参照)。そして、制御部8は、第2焼却炉2Bを稼働させるとき、第2押込空気用送風機Aa2を作動させて第2押込空気用予熱器Hp2に押込空気を流通させる。次いで、所定の開度(例えば全開に対して10~50%)で第2蒸気ダンパVp2を開いて高圧蒸気溜め部9から高圧蒸気を第2押込空気用予熱器Hp2に流通させ、高圧蒸気と熱交換した押込空気を第2焼却炉2Bの流動床炉21に導入して加温する(図6の#61、空気予熱器の作動)。なお、第2焼却炉2Bは、停止中であったため、砂層10に砂がなく、第1温度計測部T1で計測される温度は、流動床炉21の炉内温度に相当する。
【0054】
次いで、制御部8は、第1温度計測部T1あるいは第2温度計測部T2の計測値及び経過時間に基づいて、流動床炉21における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)を演算し、この昇温率(℃/h)が基準昇温率X3(℃/h)以上であるか否かを判定する(図6の#62)。このとき、制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X3(℃/h)以上且つ基準昇温率X3(℃/h)の近傍値となるように、第2蒸気ダンパVp2の開度を調整している。制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X3(℃/h)以上であれば(図6の#62Yes)、このまま継続し、昇温率(℃/h)が基準昇温率X3(℃/h)未満であれば(図6の#62No)、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が基準炉内温度Y3(℃)以上か否かを判定する(図6の#63)。第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が基準炉内温度Y3(℃)以上であれば(図6の#63Yes)、第2始動バーナB2を点火して、流動床炉21を加温する(図6の#66)。なお、図示していないが、第2始動バーナB2を点火して流動床炉21を加温中に砂層10に砂を投入する。そして、流動床炉21の炉内温度が予熱完了温度(例えば500℃)となれば、流動床炉21に廃棄物Dを投入して、第2始動バーナB2を停止し、第2処理系統1Bを本格稼働させる。
【0055】
#63の判定の結果、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が基準炉内温度Y3(℃)未満であれば(図6の#63No)、第2蒸気ダンパVp2の開度が全開か否かを判定する(図6の#64)。第2蒸気ダンパVp2の開度が全開でなければ(図6の#64No)、第2蒸気ダンパVp2の開度を上昇させて、第2押込空気用予熱器Hp2への供給蒸気量を増加させる(図6の#65)。つまり、制御部8は、第2焼却炉2Bの加温状態に基づいて、高圧蒸気溜め部9から供給される高圧蒸気の量を変更している。
【0056】
制御部8は、第2蒸気ダンパVp2の開度が全開となるまで、#62~#65のステップを繰り返し、第2蒸気ダンパVp2の開度が全開であっても昇温率(℃/h)が基準昇温率X3(℃/h)未満(昇温限界)、且つ、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が基準炉内温度Y3(℃)未満であれば(図6の#62No,#63No,#64Yes)、第2始動バーナB2を点火して、流動床炉21を加温する(図6の#66)。
【0057】
このように、制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X3(℃/h)となる昇温限界まで高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気が保有する大きな熱量を押込空気に与えて停止中の第2焼却炉2Bを加温するため、図9に示すように、第2始動バーナB2で最初から加温する場合(図9の破線:QthにてTthまで保持)に比べて昇温勾配が緩やかになる(図9の実線)。昇温勾配が頭打ちになったときに第2始動バーナB2を点火すれば、概ね基準昇温率X3で炉内温度が上昇するため、第2焼却炉2Bの流動床炉21の予熱を効率的に行うことができる。また、本実施形態のように、昇温率(℃/h)が基準昇温率X3(℃/h)未満(昇温限界)である場合において、第2焼却炉2Bの炉内温度(℃)が基準炉内温度Y3(℃)以上であれば、第2始動バーナB2を作動させても温度勾配が急峻になることがないため、第2焼却炉2Bの安定した立ち上げ制御を実現できる。さらに、昇温率が基準昇温率X3未満(昇温限界)、つまり、加温度合いが頭打ちになったときに第2始動バーナB2を作動させることにより、第2始動バーナB2を用いて最初から加温する場合に比べて、第2始動バーナB2の燃料コストを節約することができる。
【0058】
以下、第四実施形態及び第五実施形態では、流動床炉21の立ち上げ制御を実行すると共に溶融炉22の立ち上げ制御を実行する実施形態について説明する。
【0059】
〔第四実施形態に係る立ち上げ制御〕
図7A及び図7Bには、第四実施形態に係る焼却炉2の立ち上げ制御フロー(焼却炉設備1の立ち上げ方法)が示されている。第四実施形態では、第一実施形態に係る流動床炉21の立ち上げ制御に加え、溶融炉22の立ち上げ制御を並列して行うものである。図7Aに示す流動床炉21の立ち上げ制御に関しては、図4に記載の#41~#45が、図7Aに記載の#71~#75に相当し、図4の空気予熱器及び基準昇温率X1が図7Aの押込空気用予熱器及び基準昇温率X4αに相当するため、説明を省略する。以下、第2二次空気用予熱器Hs2を作動させて、第2焼却炉2Bの溶融炉22の予熱を行った後、頂部13に設けられた補助バーナを始動バーナとして点火する立ち上げ制御について説明する。本実施形態では、流動床炉21の立ち上げ制御と溶融炉22の立ち上げ制御とを並列して行うが、それぞれの開始の時期や終了の時期は任意に設定可能である。
【0060】
制御部8は、第1処理系統1Aが稼働中であり、第2処理系統1Bが停止中である場合において、第2処理系統1Bの第2焼却炉2Bを稼働させるとき、高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気と熱交換した加温空気を第2焼却炉2Bの溶融炉22に導入して加温し、当該溶融炉22の加温状態が所定の条件を充足した場合に到達した場合にガス燃焼用バーナを作動させて溶融炉22を加温する。この所定の条件は、第2焼却炉2Bの溶融炉22における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)が所定値(基準昇温率X4β(℃/h))未満(昇温限界)になることである。ここで、基準昇温率X4β(℃/h)は、焼却炉設備1ごとに事前に試運転等により予め設定される値であり、例えば20(℃/h)~70(℃/h)、好ましくは40(℃/h)~60(℃/h)である。
【0061】
図3に示すように、第1処理系統1Aは稼働中であるため、給水装置31から第1ボイラ3Aに供給された水を沸騰させてから高圧蒸気を発生させ、この高圧蒸気が高圧蒸気溜め部9にて一時的に貯留され、蒸気タービン発電機30のタービンに導入され、タービンを駆動することにより動力を生成している(図2も参照)。そして、制御部8は、第2焼却炉2Bを稼働させるとき、第2二次空気用送風機Ab2を作動させて第2二次空気用予熱器Hs2に二次空気を流通させる。次いで、所定の開度(例えば全開に対して10~50%)で第2蒸気ダンパVs2を開いて高圧蒸気溜め部9から高圧蒸気を第2二次空気用予熱器Hs2に流通させ、高圧蒸気と熱交換した二次空気を第2焼却炉2Bの溶融炉22に導入して加温する(図7Bの#76、二次空気用予熱器の作動)。
【0062】
次いで、制御部8は、第3温度計測部T3の計測値及び経過時間に基づいて、溶融炉22における単位時間あたりの炉内温度の上昇度合いである昇温率(℃/h)を演算し、この昇温率(℃/h)が基準昇温率X4β(℃/h)以上であるか否かを判定する(図7Bの#77)。このとき、制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X4β(℃/h)以上且つ基準昇温率X4β(℃/h)の近傍値となるように、第2蒸気ダンパVs2の開度を調整している。制御部8は、昇温率(℃/h)が基準昇温率X4β(℃/h)以上であれば(図7Bの#77Yes)、このまま継続し、昇温率(℃/h)が基準昇温率X4β(℃/h)未満であれば(図7Bの#77No)、第2蒸気ダンパVs2の開度が全開か否かを判定する(図7Bの#78)。第2蒸気ダンパVs2の開度が全開でなければ(図7Bの#78No)、第2蒸気ダンパVs2の開度を上昇させて、第2二次空気用予熱器Hs2への供給蒸気量を増加させる(図7Bの#79)。つまり、制御部8は、第2焼却炉2Bの加温状態に基づいて、高圧蒸気溜め部9から供給される高圧蒸気の量を変更している。
【0063】
制御部8は、第2蒸気ダンパVs2の開度が全開となるまで、#77~#79のステップを繰り返し、第2蒸気ダンパVs2の開度が全開であっても昇温率(℃/h)が基準昇温率X4β(℃/h)未満(昇温限界)であれば(図7Bの#77No,#78Yes)、補助バーナを始動バーナとして点火し、溶融炉22を加温する(図7Bの#80)。なお、図示していないが、補助バーナを点火して溶融炉22の炉内温度が予熱完了温度(例えば1200℃)となれば、第2焼却炉2Bの溶融炉22の予熱を完了して補助バーナを停止して、第2処理系統1Bを本格稼働させる。なお、溶融炉22の本格稼働に際しては、必要に応じて補助バーナを作動させる。
【0064】
本実施形態では、第一実施形態の作用効果に加えて、流動床炉21及び溶融炉22の予熱に際し、高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気が保有する大きな熱量を押込空気及び二次空気に与えて、流動床炉21及び溶融炉22を並列して加温するため、流動床炉21及び溶融炉22の互いの炉内温度に差が生じ難い。このため、流動床炉21及び溶融炉22の一方から他方に向かって冷たい空気が流れて炉内冷却されることがないため、第2始動バーナB2や補助バーナの燃料コストを更に節約することができる。しかも、流動床炉21及び溶融炉22の何れか一方における始動バーナを先に点火することにより、他方の炉内温度を高める効果も期待できる。
【0065】
〔第五実施形態に係る立ち上げ制御〕
図8には、第五実施形態に係る焼却炉2の立ち上げ制御フロー(焼却炉設備1の立ち上げ方法)が示されている。第五実施形態では、第一実施形態に係る流動床炉21の立ち上げ制御と溶融炉22の立ち上げ制御とを順番に行うものである。図8に示す流動床炉21の立ち上げ制御に関しては、図7Aに記載の#71~#75が、図8に記載の#81~#85に相当し、図7の基準昇温率X4αが図8の基準昇温率X5αに相当するため、説明を省略する。また、図8に示す溶融炉22の立ち上げ制御に関しては、図7Bに記載の#76~#80が、図8に記載の#86~#90に相当し、図7の基準昇温率X4βが図8の基準昇温率X5βに相当するため、説明を省略する。
【0066】
本実施形態では、第一実施形態の作用効果に加えて、流動床炉21及び溶融炉22の予熱に際し、高圧蒸気溜め部9の高圧蒸気が保有する大きな熱量を押込空気及び二次空気に与えて、流動床炉21及び溶融炉22を順番に加温し、流動床炉21における始動バーナBを先に点火することにより、溶融炉22の炉内温度の予熱初期温度を高めることができる。
【0067】
〔その他の実施形態〕
(1)焼却炉2は、流動床式ガス化溶融炉に限定されず、ストーカ式焼却炉や流動床式ガス化炉等であってもよい。
(2)第一実施形態~第三実施形態において、第2押込空気用予熱器Hp2を作動させる例を示したが、第2二次空気用予熱器Hs2を作動させて流動床炉21や溶融炉22を予熱してもよい。
(3)第一実施形態~第五実施形態において、第1処理系統1A及び第2処理系統1Bという2つの処理系統で構成されている場合を説明したが、処理系統は、3つ以上の処理系統で構成されていてもよい。上述した立ち上げ制御は、停止中の第2処理系統1Bについて説明したが、停止中の処理系統であれば同様に実行することができる。また、停止中の対象処理系統が複数ある場合、何れかの対象処理系統は、最初からバーナを用いて加温する一般的な立ち上げ制御を実行し、他の対象処理系統は、上述した第一実施形態~第三実施形態における立ち上げ制御を実行してもよい。
(4)第四実施形態及び第五実施形態において、流動床炉21及び溶融炉22の立ち上げ制御として、第一実施形態における立ち上げ制御を用いて説明したが、第二実施形態や第三実施形態における立ち上げ制御を用いてもよい。また、流動床炉21及び溶融炉22の立ち上げ制御として、第一実施形態~第三実施形態における立ち上げ制御を組み合わせてもよい。また、焼却炉設備1の立ち上げ方法としては、上述した立ち上げ制御に限定されず、例えば作業員が昇温率等をモニタニングして、焼却炉2の加温状態が所定の条件を充足したタイミングにてバーナ点火を実行させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、第1処理系統と第2処理系統とを備えた焼却炉設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 :焼却炉設備
1A :第1処理系統
1B :第2処理系統(対象処理系統)
2 :焼却炉
2A :第1焼却炉
2B :第2焼却炉
3 :ボイラ
3A :第1ボイラ
3B :第2ボイラ
8 :制御部
9 :高圧蒸気溜め部
21 :流動床炉(第1焼却部)
22 :溶融炉(第2焼却部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9