(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】イムノグロブリン結合タンパク質、及びそれを用いたアフィニティー担体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/195 20060101AFI20241128BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07K14/195 ZNA
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K1/22
(21)【出願番号】P 2023109911
(22)【出願日】2023-07-04
(62)【分割の表示】P 2020538498の分割
【原出願日】2019-08-23
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2018157620
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019073529
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502066476
【氏名又は名称】ジェイエスアール マイクロ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】316008086
【氏名又は名称】ジェイエスアール マイクロ エヌ.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】JSR Micro N.V.
【住所又は居所原語表記】Technologielaan 8, B-3001, Leuven, BELGIUM
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 智亮
(72)【発明者】
【氏名】市居 敬
(72)【発明者】
【氏名】小野木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】本田 俊成
(72)【発明者】
【氏名】上出 倫敬
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-538693(JP,A)
【文献】特表2016-523959(JP,A)
【文献】特表2014-508118(JP,A)
【文献】特表2017-533924(JP,A)
【文献】特表2012-515160(JP,A)
【文献】特開2007-252368(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133342(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/125811(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/009006(WO,A1)
【文献】特開2010-156687(JP,A)
【文献】特開2010-081866(JP,A)
【文献】国際公開第2015/034056(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/067596(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/033446(WO,A1)
【文献】NOSRATI MASOUMEH ET AL,PROTEIN ENGINEERING, DESIGN AND SELECTION,2017年09月,vol. 30, no. 9,pages 593-601,ISSN: 1741-0126, DOI: 10.1093/protein/gzx023
【文献】GUNNERIUSSON ELIN ET AL,APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,1999年09月,vol. 65, no. 9,pages 4134-4140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異ポリペプチド鎖を含むイムノグロブリン結合タンパク質であって、
該変異ポリペプチド鎖が、配列番号3のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有する親ポリペプチド鎖に対して、以下の(a
23)~(a
28)及び(g
1)~(g
8)からなる群より選択されるいずれかの変異が導入されており:
(a
23)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
24)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
25)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
26)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
27)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
28)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(g
1)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び23位に相当する位置におけるThrからArgへの置換;
(g
2)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び23位に相当する位置におけるThrからLeuへの置換;
(g
3)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び23位に相当する位置におけるThrからSerへの置換;
(g
4)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(g
5)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び58位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(g
6)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、23位に相当する位置におけるThrからArgへの置換、及び49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(g
7)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、23位に相当する位置におけるThrからLeuへの置換、及び49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(g
8)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、23位に相当する位置におけるThrからSerへの置換、及び49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換、
かつ、
配列番号3のアミノ酸配列の1位に相当する位置にVal、及び29位に相当する位置にAlaを含
み、かつ、該親ポリペプチド鎖と比べてアルカリ耐性が向上している、変異ポリペプチド鎖である(ただし、配列番号11、23~35のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖ではない)、
イムノグロブリン結合タンパク質。
【請求項2】
前記
変異ポリペプチド鎖のアミノ酸配列の
、配列番号3のアミノ酸配列との同一性が少なくとも95%である、請求項1記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
【請求項3】
前記親ポリペプチド鎖が、配列番号3のアミノ酸配列の1位に相当する位置にVal、及び/又は配列番号3のアミノ酸配列の29位に相当する位置にAlaを含む、請求項1記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
【請求項4】
前記変異ポリペプチド鎖を2個以上含む、請求項1記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項
5記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項7】
請求項
6記載のベクターを含む形質転換体。
【請求項8】
固相担体と、該固相担体に結合した請求項1~
4のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質とを含む、アフィニティー担体。
【請求項9】
請求項
8のアフィニティー担体を含む、クロマトグラフィーカラム。
【請求項10】
請求項
8記載のアフィニティー担体を用いる、抗体又はその断片の単離方法。
【請求項11】
請求項
9記載のクロマトグラフィーカラムを用いる、抗体又はその断片の単離方法。
【請求項12】
請求項1~
4のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質を、請求項
7記載の形質転換体、もしくは無細胞タンパク質合成系において発現させるか、又は化学合成することを含む、イムノグロブリン結合タンパク質の製造方法。
【請求項13】
変異ポリペプチド鎖の製造方法であって、
配列番号3のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有する親ポリペプチド鎖に対して、以下の(a
23)~(a
28)及び(g
1)~(g
8)からなる群より選択されるいずれかの変異を導入することを含み:
(a
23)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
24)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
25)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
26)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
27)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a
28)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(g
1)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び23位に相当する位置におけるThrからArgへの置換;
(g
2)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び23位に相当する位置におけるThrからLeuへの置換;
(g
3)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び23位に相当する位置におけるThrからSerへの置換;
(g
4)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(g
5)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、及び58位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(g
6)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、23位に相当する位置におけるThrからArgへの置換、及び49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(g
7)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、23位に相当する位置におけるThrからLeuへの置換、及び49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(g
8)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、23位に相当する位置におけるThrからSerへの置換、及び49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換、
該変異ポリペプチド鎖は、配列番号3のアミノ酸配列の1位に相当する位置にVal、及び29位に相当する位置にAlaを含
み、かつ、該親ポリペプチド鎖と比べてアルカリ耐性が向上している、
方法。
【請求項14】
前記
変異ポリペプチド鎖のアミノ酸配列の
、配列番号3のアミノ酸配列との同一性が少なくとも95%である、請求項
13記載の方法。
【請求項15】
前記親ポリペプチド鎖が、配列番号3のアミノ酸配列の1位に相当する位置にVal、及び/又は配列番号3のアミノ酸配列の29位に相当する位置にAlaを含む、請求項
13記載の方法。
【請求項16】
固相担体に、請求項1~
4のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質を固定化することを含む、アフィニティー担体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノグロブリン結合タンパク質、それを用いたアフィニティー担体、ならびに該アフィニティー担体を用いた抗体の単離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は近年、研究用試薬、抗体医薬などに広く利用されている。これら試薬や医薬用の抗体は、一般に、アフィニティークロマトグラフィーによる精製を経て製造される。抗体のアフィニティー精製には、イムノグロブリンと特異的に結合する物質であるリガンドを固定化したカラムが用いられ、該リガンドには、一般に、プロテインAなどのイムノグロブリン結合タンパク質が用いられる。
【0003】
プロテインAは、グラム陽性細菌スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来の細胞壁タンパク質である。プロテインAは、Eドメイン、Dドメイン、Aドメイン、BドメインおよびCドメインと呼ばれる5つのイムノグロブリン結合ドメインを有し、各ドメインは単独でイムノグロブリンに結合することができる。プロテインAの天然型イムノグロブリン結合ドメインとならんで、これらにタンパク質工学的改変を加えた改変イムノグロブリン結合ドメインもまた、アフィニティー精製用のリガンドとして利用されている。
【0004】
抗体のアフィニティー精製用カラムは、通常、アルカリ溶液で洗浄されて繰り返し使用される。しかし、プロテインAの天然型イムノグロブリン結合ドメインはアルカリ耐性が低いため、該天然型ドメインを固定化したアフィニティー精製用カラムは、繰り返し使用の間に抗体結合性が大きく低下する。そこで、アルカリ耐性を向上させた改変プロテインAドメインが開発されてきた。例えば、プロテインAのイムノグロブリン結合ドメインが、そのアミノ酸配列の29位のGlyをAlaに置換することで、化学的な安定性が向上することは広く知られている(非特許文献1)。特許文献1には、イムノグロブリン結合ドメインのアミノ酸配列中のAsnをGln及びCys以外のアミノ酸に置換するか、又は欠失させることにより、該ドメインのアルカリ耐性を向上させる手法が開示されている。さらに、特許文献2には、プロテインAのC、B又はZドメインにおいて、N末端から位置1又は2で始まる3以上の連続したアミノ酸を欠失させることにより、該ドメインのアルカリ耐性を向上させる手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開公報第2000/023580号
【文献】国際公開公報第2013/109302号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of Chromatography B,2007,848(1):40-47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アルカリ耐性がより向上したアフィニティー担体が求められている。本発明は、イムノグロブリン結合ドメイン由来のアルカリ耐性が向上した変異ポリペプチド鎖を含有する、イムノグロブリン結合タンパク質、及びそれを用いたアフィニティー担体を提供する。また本発明は、該アフィニティー担体を用いた抗体の単離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を提供する。
〔1〕 配列番号1~6及び57~62のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列であって、且つ以下の(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖を含む、イムノグロブリン結合タンパク質:
(a)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位、11位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(b)配列番号3のアミノ酸配列の24位及び25位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(c)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(d)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(e)配列番号3のアミノ酸配列の4位、49位及び58位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;及び
(f)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入。
〔2〕前記ポリペプチド鎖が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し且つ前記(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である、〔1〕記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
〔3〕前記(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異が、
(a1)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a2)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換;
(a3)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換;
(a4)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a5)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換;
(a6)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換;
(a7)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a8)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換;
(a9)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからArgへの置換;
(a10)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換;
(a11)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからCysへの置換;
(a12)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGluへの置換;
(a13)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからHisへの置換;
(a14)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからIleへの置換;
(a15)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからLeuへの置換;
(a16)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからLysへの置換;
(a17)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからMetへの置換;
(a18)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからPheへの置換;
(a19)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからThrへの置換;
(a20)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからTrpへの置換;
(a21)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからTyrへの置換;
(a22)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからValへの置換;
(b1)配列番号3のアミノ酸配列の24位に相当する位置におけるGluからAspへの置換;
(b2)配列番号3のアミノ酸配列の25位に相当する位置におけるGluからAspへの置換;
(c1)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるSerからLysへの置換;
(c2)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるSerからArgへの置換;
(d1)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからAspへの置換;
(d2)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからGluへの置換;
(d3)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからLysへの置換;
(d4)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからArgへの置換;
(e1)配列番号3のアミノ酸配列の4位に相当する位置におけるLysの欠失;
(e2)配列番号3のアミノ酸配列の49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(e3)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるLysの欠失;
(e4)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるLysからArgへの置換、
(f1)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるThrからArgへの置換;
(f2)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるThrからLeuへの置換;及び
(f3)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけThrからSerへの置換、
からなる群より選択される少なくとも1種の変異である、〔1〕又は〔2〕記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
〔4〕前記(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異が、
(a1)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a2)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換;
(a3)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換;
(a4)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a5)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換;
(a6)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換;
(a7)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a8)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換;
(a9)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからArgへの置換;
(a10)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換;
(a11)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからCysへの置換;
(a12)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGluへの置換;
(a13)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからHisへの置換;
(a14)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからIleへの置換;
(a15)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからLeuへの置換;
(a16)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからLysへの置換;
(a17)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからMetへの置換;
(a18)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからPheへの置換;
(a19)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからThrへの置換;
(a20)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからTrpへの置換;
(a21)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからTyrへの置換;
(a22)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからValへの置換;
(a23)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a24)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a25)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a26)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a27)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(a28)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換;
(b1)配列番号3のアミノ酸配列の24位に相当する位置におけるGluからAspへの置換;
(b2)配列番号3のアミノ酸配列の25位に相当する位置におけるGluからAspへの置換;
(c1)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるSerからLysへの置換;
(c2)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるSerからArgへの置換;
(d1)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからAspへの置換;
(d2)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからGluへの置換;
(d3)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからLysへの置換;
(d4)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからArgへの置換;
(e1)配列番号3のアミノ酸配列の4位に相当する位置におけるLysの欠失;
(e2)配列番号3のアミノ酸配列の49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(e3)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるLysの欠失;
(e4)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるLysからArgへの置換;
(f1)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるThrからArgへの置換;
(f2)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるThrからLeuへの置換;
(f3)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけThrからSerへの置換;
(g1) (a7)と(f1)の組み合わせ;
(g2) (a7)と(f2)の組み合わせ;
(g3) (a7)と(f3)の組み合わせ;
(g4) (a7)と(e2)の組み合わせ;
(g5) (a7)と(e4)の組み合わせ;
(g6) (a7)と(f1)と(e2)の組み合わせ;
(g7) (a7)と(f2)と(e2)の組み合わせ;及び
(g8) (a7)と(f3)と(e2)の組み合わせ、
のいずれか1種である、〔3〕記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
〔5〕前記(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異が、配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位、11位、24位、25位、39位、46位、4位、49位、58位及び23位のうちの少なくとも2つの位置に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
〔6〕前記少なくとも1種の変異が、前記(a23)~(a28)のいずれかであるか、又は前記(a1)~(a28)のいずれか1つと前記(b1)~(f3)のいずれか1つ以上との組み合わせである、〔5〕記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
〔7〕前記アミノ酸配列の同一性が少なくとも90%である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
〔8〕前記ポリペプチド鎖が、配列番号3のアミノ酸配列の1位に相当する位置におけるアミノ酸残基のValへの置換、及び/又は配列番号3のアミノ酸配列の29位に相当する位置におけるアミノ酸残基のAlaへの置換をさらに含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
〔9〕前記ポリペプチド鎖を2個以上含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質。
〔10〕〔1〕~〔9〕のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔11〕〔10〕記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
〔12〕〔11〕記載のベクターを含む形質転換体。
〔13〕固相担体と、該固相担体に結合した〔1〕~〔9〕のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質とを含む、アフィニティー担体。
〔14〕〔13〕のアフィニティー担体を含む、クロマトグラフィーカラム。
〔15〕〔13〕記載のアフィニティー担体又は〔14〕記載のクロマトグラフィーカラムを用いる、抗体又はその断片の単離方法。
〔16〕〔1〕~〔9〕のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質を、〔12〕記載の形質転換体、もしくは無細胞タンパク質合成系において発現させるか、又は化学合成することを含む、イムノグロブリン結合タンパク質の製造方法。
〔17〕変異ポリペプチド鎖の製造方法であって、
配列番号1~6及び57~62のいずれかのアミノ酸配列又はこれらと少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖に対して、以下の(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を導入することを含む、方法:
(a)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位、11位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(b)配列番号3のアミノ酸配列の24位及び25位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(c)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(d)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(e)配列番号3のアミノ酸配列の4位、49位及び58位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;及び
(f)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入。
〔18〕固相担体に、〔1〕~〔9〕のいずれか1項記載のイムノグロブリン結合タンパク質を固定化することを含む、アフィニティー担体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の変異ポリペプチド鎖、及びそれを含有するイムノグロブリン結合タンパク質は、イムノグロブリン結合を有し、且つアルカリ耐性が向上している。したがって本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、アフィニティーリガンドとして有用である。該イムノグロブリン結合タンパク質を固定化した本発明のアフィニティー担体は、アルカリ性溶液を使用した繰り返しの洗浄(Cleaning-in-place、以降CIPとも呼ぶ)を実施後においてもイムノグロブリン結合活性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、アミノ酸配列やヌクレオチド配列の同一性は、カーリンとアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,1993,90:5873-5877)を用いて決定することができる。このBLASTアルゴリズムに基づいて、BLASTN、BLASTX、BLASTP、TBLASTN及びTBLASTXとよばれるプログラムが開発されている(J.Mol.Biol.,1990,215:403-410)。これらのプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いることができる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である([www.ncbi.nlm.nih.gov]参照)。
【0011】
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する「少なくとも85%の同一性」とは、85%以上の同一性、好ましくは90%以上の同一性、より好ましくは95%以上の同一性、さらに好ましくは97%以上の同一性、さらに好ましくは98%以上の同一性、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。また、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上の同一性、好ましくは95%以上の同一性、さらに好ましくは97%以上の同一性、さらに好ましくは98%以上の同一性、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。
【0012】
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列上の「相当する位置」は、目的配列と参照配列(例えば、配列番号3のアミノ酸配列)とを、各アミノ酸配列又はヌクレオチド配列中に存在する保存アミノ酸残基又はヌクレオチドに最大の相同性を与えるように整列(アラインメント)させることにより決定することができる。アラインメントは、公知のアルゴリズムを用いて実行することができ、その手順は当業者に公知である。例えば、アラインメントは、Clustal Wマルチプルアラインメントプログラム(Thompson, J. D. et al, 1994, Nucleic Acids Res., 22:4673-4680)をデフォルト設定で用いることにより行うことができる。Clustal Wは、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute: EBI [www.ebi.ac.uk/index.html])や、国立遺伝学研究所が運営する日本DNAデータバンク(DDBJ [www.ddbj.nig.ac.jp/index.html])のウェブサイト上で利用することができる。
【0013】
本明細書において、アミノ酸残基は次の略号でも記載される:アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン(Gln又はQ)、グルタミン酸(Glu又はE)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リジン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、トレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Trp又はW)、チロシン(Tyr又はY)、バリン(Val又はV)、及び任意のアミノ酸残基(Xaa又はX)。また本明細書において、ペプチドのアミノ酸配列は、常法に従って、アミノ末端(以下N末端という)が左側、カルボキシル末端(以下C末端という)が右側に位置するように記載される。
【0014】
本明細書において、アミノ酸配列の特定の位置に対する「前」及び「後」の位置とは、それぞれ、該特定の位置のN末端側及びC末端側に隣接する位置をいう。例えば、特定の位置の「前」及び「後」の位置へアミノ酸残基を挿入する場合、該特定の位置のN末端側及びC末端側に隣接する位置に、挿入後のアミノ酸残基が配置される。
【0015】
本明細書において、「イムノグロブリン結合タンパク質」とは、抗体もしくはその断片に対する結合活性を有するタンパク質をいう。本明細書における「抗体」は、例えば、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、及びこれらのサブクラス等の任意のクラスのイムノグロブリン、その断片、それらの変異体を含み得る。また本明細書における「抗体」は、ヒト化抗体等のキメラ抗体、抗体複合体、及び抗原認識部位を含む他のイムノグロブリン修飾体などであってもよい。また本明細書における「抗体の断片」は、抗原認識部位を含む抗体の断片であっても、抗原認識部位を含まない抗体の断片であってもよい。抗原認識部位を含まない抗体の断片としては、例えばイムノグロブリンのFc領域のみからなるタンパク質、Fc融合タンパク質、及びそれらの変異体や修飾体などが挙げられる。
【0016】
本明細書において「イムノグロブリン結合ドメイン」とは、イムノグロブリン結合タンパク質に含まれる、単独でイムノグロブリン(又は抗体もしくは抗体の断片)結合活性を有するポリペプチドの機能単位をいう。該「イムノグロブリン結合ドメイン」の好ましい例としては、プロテインAのイムノグロブリン結合ドメイン、ならびにイムノグロブリン結合活性を有するその変異体が挙げられる。
【0017】
1.イムノグロブリン結合タンパク質
本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のプロテインA(以下、SpAともいう)のイムノグロブリン結合ドメインに由来する変異ポリペプチド鎖を、少なくとも1つ含む。本発明のイムノグロブリン結合タンパク質に含まれる該変異ポリペプチド鎖は、イムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖であり、以下の本明細書において、「本発明の変異イムノグロブリン結合ドメイン」とも称される。当該本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、親ドメインであるSpA由来のイムノグロブリン結合ドメイン又はその変異体に、所定の変異を加えることによって得ることができる。当該本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、イムノグロブリン結合活性を有し、且つ親ドメインと比べてアルカリ耐性が向上している。当該本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインを含有する本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、アフィニティー担体のリガンドとして使用することができる。
【0018】
本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインの親ドメインとしては、SpAのイムノグロブリン結合ドメイン、例えば、Aドメイン、Bドメイン、Cドメイン、Dドメイン、Eドメイン、またはBドメインの改変型ドメインであるZドメイン、及びそれらの変異体が挙げられる。このうち、Bドメイン、Zドメイン、Cドメイン及びその変異体が好ましく、Cドメイン及びその変異体がより好ましい。
【0019】
SpAのBドメイン、Zドメイン、Cドメイン、Dドメイン、Aドメイン、及びEドメイン、ならびにそれらの変異体は、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインの親ドメインとして使用され得る。SpAのBドメインは、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該Bドメインの変異体としては、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。SpAのZドメインは、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該Zドメインの変異体としては、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。SpAのCドメインは、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該Cドメインの変異体としては、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。SpAのDドメインは、配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該Dドメインの変異体としては、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。SpAのAドメインは、配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該Aドメインの変異体としては、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。SpAのEドメインは、配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該Eドメインの変異体としては、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。
【0020】
したがって、本発明における好ましい親ドメインの例としては、配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖、及び配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。より好ましい親ドメインの例としては、配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖、及び配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。さらに好ましい親ドメインの例としては、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖、及び配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。
【0021】
形質転換体におけるタンパク質の発現量の増加の観点(PNAS,1989,86:8247-8251,Fig.2)や、複数のドメインを連結したイムノグロブリン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの作製が容易となる観点(WO2010/110288)から、当該親ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列の1位に相当する位置におけるAlaからValへの置換を含んでいてもよい。また、イムノグロブリン結合タンパク質の化学的な安定性が向上しアルカリ耐性が増大する観点から、当該親ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列の29位に相当する位置におけるGlyからAlaへの置換をさらに含んでいてもよい(非特許文献1)。
【0022】
天然イムノグロブリン結合ドメインのN末端領域が欠失した、当該天然イムノグロブリン結合ドメインより安定性の高いタンパク質構造を有する、イムノグロブリン結合ドメイン変異体が報告されている(WO2013/109302、WO2017/194596等)。したがって、当該親ドメインは、イムノグロブリン結合活性を有する限りにおいて、配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列のN末端から少なくとも2残基(例えば、2残基、4残基、6残基又は7残基)に相当するアミノ酸残基を欠失したイムノグロブリン結合ドメイン変異体であってもよい。そのような親ドメインの例としては、配列番号57~62のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖が挙げられ、これらは、それぞれ配列番号1~6のアミノ酸配列のN末端2~7残基を欠失した変異イムノグロブリン結合ドメインである。
【0023】
したがって、上述した親ドメインについての配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号57~62のいずれかのアミノ酸配列、又はこれと少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。さらに、該配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列の1位に相当する位置にValを含むか、及び/又は配列番号3のアミノ酸配列の29位に相当する位置にAlaを含んでいてもよい。
【0024】
当該SpAのイムノグロブリン結合ドメインの変異体は、SpAのイムノグロブリン結合ドメインのアミノ酸配列に対して、アミノ酸残基の挿入、削除、置換又は欠失や、アミノ酸残基の化学的修飾等の改変を施すことによって作製することができる。アミノ酸残基の挿入、削除、置換又は欠失の手段としては、該ドメインをコードするポリヌクレオチドに対する部位特異的突然変異(Site-specific mutaion)等の公知の手段が挙げられる。
【0025】
本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、上述した親ドメインに対して、以下の(a)~(f):
(a)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位及び11位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(b)配列番号3のアミノ酸配列の24位及び25位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(c)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(d)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;
(e)配列番号3のアミノ酸配列の4位、49位及び58位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入;及び
(f)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入、
からなる群より選択される少なくとも1種の変異を導入して得られたポリペプチド鎖である。
【0026】
当該(a)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位及び11位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入である。該3位、6位及び11位に相当する位置において、該置換前のアミノ酸残基は、好ましくはAsnであり、これらと置換される該他のアミノ酸残基は、好ましくはSer以外のアミノ酸残基であり、より好ましくは、Ala、Arg、Asp、Cys、Gln、Glu、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr又はValであり、さらに好ましくは、Glnである。当該(a)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位又は11位に相当する位置におけるアミノ酸残基の単独変異であってもよいが、該3位、6位及び11位に相当する位置におけるアミノ酸残基のうちの2つ又は3つが変異した多重変異であってもよい。例えば、当該(a)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位又は11位に相当する位置におけるアミノ酸残基の単独置換であってもよいが、該3位、6位及び11位に相当する位置におけるアミノ酸残基のうちの2つ又は3つを置換した多重置換であってもよい。好ましくは、当該(a)の変異は、(a1)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、(a2)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、(a3)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、(a4)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、(a5)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、(a6)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、(a7)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、(a8)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、(a9)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからArgへの置換、(a10)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、(a11)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからCysへの置換、(a12)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからGluへの置換、(a13)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからHisへの置換、(a14)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからIleへの置換、(a15)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからLeuへの置換、(a16)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからLysへの置換、(a17)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからMetへの置換、(a18)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからPheへの置換、(a19)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからThrへの置換、(a20)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからTrpへの置換、(a21)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからTyrへの置換、(a22)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsnからValへの置換、(a23)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、(a24)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、(a25)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、(a26)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、(a27)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換、又は(a28)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsnからAlaへの置換、6位に相当する位置におけるAsnからAspへの置換、及び11位に相当する位置におけるAsnからGlnへの置換である。
【0027】
当該(b)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の24位及び25位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入である。該24位及び25位に相当する位置において、該置換前のアミノ酸残基は、好ましくはGluであり、これらと置換される該他のアミノ酸残基は、好ましくはAspである。当該(b)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の24位又は25位に相当する位置におけるアミノ酸残基の単独変異であってもよいが、該24位及び25位に相当する位置におけるアミノ酸残基の両方が変異した二重変異であってもよい。例えば、当該(b)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の24位又は25位に相当する位置におけるアミノ酸残基の単独置換であってもよいが、該24位及び25位に相当する位置におけるアミノ酸残基の両方を置換した二重置換であってもよい。好ましくは、当該(b)の変異は、(b1)配列番号3のアミノ酸配列の24位に相当する位置におけるGluからAspへの置換、又は(b2)配列番号3のアミノ酸配列の25位に相当する位置におけるGluからAspへの置換である。
【0028】
当該(c)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入である。該39位に相当する位置において、該置換前のアミノ酸残基は、好ましくはSerであり、これと置換される当該他のアミノ酸残基は、好ましくはLys又はArgである。好ましくは、当該(c)の変異は、(c1)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるSerからLysへの置換、又は(c2)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるSerからArgへの置換である。
【0029】
当該(d)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入である。該46位に相当する位置において、該置換前のアミノ酸残基は、好ましくはAlaであり、これと置換される当該他のアミノ酸残基は、好ましくはAsp、Glu、Lys又はArgであり、より好ましくはAsp、Glu又はArgである。好ましくは、当該(d)の変異は、(d1)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからAspへの置換、(d2)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからGluへの置換、(d3)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからLysへの置換、又は(d4)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAlaからArgへの置換である。
【0030】
当該(e)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の4位、49位及び58位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入である。該4位、49位及び58位に相当する位置における欠失アミノ酸残基は、好ましくはLysである。該4位、49位及び58位に相当する位置において、該置換前のアミノ酸残基は、好ましくはLysであり、これらと置換される当該他のアミノ酸残基は、好ましくはArgである。当該(e)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の4位、49位又は58位に相当する位置におけるアミノ酸残基の単独変異であってもよいが、該4位、49位及び58位に相当する位置におけるアミノ酸残基のうちの2つ又は3つが変異した多重変異であってもよい。例えば、当該(e)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の4位、49位又は58位に相当する位置におけるアミノ酸残基単独での欠失又は置換であってもよいが、該4位、49位又は58位に相当する位置におけるアミノ酸残基のうちの2つ又は3つを欠失又は置換した多重変異であってもよい。好ましくは、当該(e)の変異は、(e1)配列番号3のアミノ酸配列の4位に相当する位置におけるLysの欠失、(e2)配列番号3のアミノ酸配列の49位に相当する位置におけるLysからArgへの置換、(e3)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるLysの欠失、又は(e4)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるLysからArgへの置換である。
【0031】
当該(f)の変異は、配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換もしくは欠失、又は当該位置の前もしくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入である。該23位に相当する位置において、該置換前のアミノ酸残基は、好ましくはThrであり、これと置換される当該他のアミノ酸残基は、好ましくはArg、Leu又はSerである。好ましくは、当該(f)の変異は、(f1)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるThrからArgへの置換、(f2)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるThrからLeuへの置換、又は(f3)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけThrからSerへの置換である。
【0032】
好ましい実施形態において、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖に対して、当該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を導入することによって製造される。別の好ましい実施形態において、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖に対して、当該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を導入することによって製造される。
より好ましい実施形態において、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖に対して、当該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を導入することによって製造される。
別のより好ましい実施形態において、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖に対して、当該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を導入することによって製造される。
さらに好ましい実施形態において、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖、又はこれと少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖に対して、当該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を導入することによって製造される。
該導入される変異は、該(a)~(f)のいずれか1種であっても、2種以上の組み合わせ(すなわち、配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位、11位、24位、25位、39位、46位、4位、49位、58位及び23位のうちの少なくとも2つの位置に相当する位置におけるアミノ酸残基の変異)であってもよく、好ましくは、上記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)、(a12)、(a13)、(a14)、(a15)、(a16)、(a17)、(a18)、(a19)、(a20)、(a21)、(a22)、(b1)、(b2)、(c1)、(c2)、(d1)、(d2)、(d3)、(d4)、(e1)、(e2)、(e3)、(e4)、(f1)、(f2)及び(f3)からなる群より選択される少なくとも1種、又は2種以上の変異の組み合わせである。該2種以上の変異の組み合わせの例としては、上記(a23)~(a28)が挙げられる。該2種以上の変異の組み合わせの別の例としては、上記(a1)~(a28)のいずれか1つと上記(b1)~(f3)のいずれか1つ以上との組み合わせが挙げられ、好ましくは上記(a1)~(a22)のいずれか1つと上記(e1)~(f3)のいずれか1つ以上との組み合わせが挙げられ、より好ましくは上記(a7)~(a22)のいずれか1つと上記(e2)、(e4)、(f1)、(f2)及び(f3)のいずれか1つ以上との組み合わせが挙げられ、さらに好ましくは上記(a7)と上記(e2)、(e4)、(f1)、(f2)及び(f3)のいずれか1つ以上との組み合わせが挙げられ、さらに好ましくは、以下が挙げられる:
(g1) 上記(a7)と(f1)の組み合わせ;
(g2) 上記(a7)と(f2)の組み合わせ;
(g3) 上記(a7)と(f3)の組み合わせ;
(g4) 上記(a7)と(e2)の組み合わせ;
(g5) 上記(a7)と(e4)の組み合わせ;
(g6) 上記(a7)と(f1)と(e2)の組み合わせ;
(g7) 上記(a7)と(f2)と(e2)の組み合わせ;及び
(g8) 上記(a7)と(f3)と(e2)の組み合わせ。
【0033】
好ましい実施形態において、該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異は、上記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)、(a12)、(a13)、(a14)、(a15)、(a16)、(a17)、(a18)、(a19)、(a20)、(a21)、(a22)、(a23)、(a24)、(a25)、(a26)、(a27)、(a28)、(b1)、(b2)、(c1)、(c2)、(d1)、(d2)、(d3)、(d4)、(e1)、(e2)、(e3)、(e4)、(f1)、(f2)、(f3)、(g1)、(g2)、(g3)、(g4)、(g5)、(g6)、(g7)、又は(g8)である。別の一例において、該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異は、該(a1)~(g8)の変異のうちのいずれか1種を含むが、該(a1)~(g8)の変異のうちの他の変異を含まない。さらに別の一例において、該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異は、該(e2)、(e3)もしくは(e4)の単独変異のみの場合、又は(e2)と(e3)もしくは(e2)と(e4)の二重変異のみの場合を含まないことがある。
【0034】
親ドメインを変異させる手段としては、該親ドメインをコードするポリヌクレオチドに対して、所望のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入等が生じるように変異導入する方法が挙げられる。ポリヌクレオチドに対する変異導入のための具体的な手法としては、部位特異的突然変異、相同組換え法、SOE(splicing by overlap extension)-PCR法(Gene,1989,77:61-68)などを挙げることができ、これらの詳細な手順は当業者に周知である。
【0035】
製造された本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、イムノグロブリン結合活性を有し、イムノグロブリン結合ドメインとして機能する。また本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、変異前のドメイン(親ドメイン)と比べてアルカリ耐性が向上している。したがって、これらの本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、アフィニティーリガンドとして好適に使用することができる。
【0036】
上記手順で得られる本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインの好ましい例としては、配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し且つ上記(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を有するアミノ酸配列からなり、イムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。
本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインのより好ましい例としては、配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し且つ上記(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を有するアミノ酸配列からなり、イムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。
本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインのさらに好ましい例としては、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し且つ上記(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異を有するアミノ酸配列からなり、イムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。
該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異は、好ましくは、上記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)、(a12)、(a13)、(a14)、(a15)、(a16)、(a17)、(a18)、(a19)、(a20)、(a21)、(a22)、(b1)、(b2)、(c1)、(c2)、(d1)、(d2)、(d3)、(d4)、(e1)、(e2)、(e3)、(e4)、(f1)、(f2)及び(f3)からなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、上記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)、(a12)、(a13)、(a14)、(a15)、(a16)、(a17)、(a18)、(a19)、(a20)、(a21)、(a22)、(a23)、(a24)、(a25)、(a26)、(a27)、(a28)、(b1)、(b2)、(c1)、(c2)、(d1)、(d2)、(d3)、(d4)、(e1)、(e2)、(e3)、(e4)、(f1)、(f2)、(f3)、(g1)、(g2)、(g3)、(g4)、(g5)、(g6)、(g7)、又は(g8)である。別の一例において、該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異は、該(a1)~(g8)の変異のうちのいずれか1種を含むが、該(a1)~(g8)の変異のうちの他の変異を含まない。さらに別の一例において、該(a)~(f)からなる群より選択される少なくとも1種の変異は、該(e2)、(e3)もしくは(e4)の単独変異のみの場合、又は(e2)と(e3)もしくは(e2)と(e4)の二重変異のみの場合を含まないことがある。
【0037】
あるいは、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインの好ましい例としては、配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、且つ下記(A1)~(F3):
(A1)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるGln;
(A2)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAla;
(A3)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsp;
(A4)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるGln;
(A5)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAla;
(A6)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsp;
(A7)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるGln;
(A8)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAla;
(A9)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるArg;
(A10)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsp;
(A11)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるCys;
(A12)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるGlu;
(A13)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるHis;
(A14)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるIle;
(A15)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるLeu;
(A16)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるLys;
(A17)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるMet;
(A18)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるPhe;
(A19)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるThr;
(A20)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるTrp;
(A21)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるTyr;
(A22)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるVal;
(B1)配列番号3のアミノ酸配列の24位に相当する位置におけるAsp;
(B2)配列番号3のアミノ酸配列の25位に相当する位置におけるAsp;
(C1)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるLys;
(C2)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるArg;
(D1)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAsp;
(D2)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるGlu;
(D3)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるLys;
(D4)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるArg;
(E1)配列番号3のアミノ酸配列の4位に相当する位置におけるLysの欠失;
(E2)配列番号3のアミノ酸配列の49位に相当する位置におけるArg;
(E3)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるLysの欠失;
(E4)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるArg;
(F1)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるArg;
(F2)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるLeu;及び
(F3)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるSer、
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基、又はこれらのアミノ酸残基の2種以上の組み合わせを有するアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖が挙げられる。該配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列は、好ましくは配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列であり、より好ましくは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列である。
該2種以上のアミノ酸残基の組み合わせの例としては、下記(A23)~(A28)が挙げられる:
(A23)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位及び11位に相当する位置におけるGln;
(A24)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAla、6位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln;
(A25)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln;
(A26)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln;
(A27)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsp、6位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln;
(A28)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAla、6位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln。
該2種以上のアミノ酸残基の組み合わせの別の例としては、上記(A1)~(A28)のいずれか1つと上記(B1)~(F3)のいずれか1つ以上との組み合わせが挙げられ、好ましくは上記(A1)~(A22)のいずれか1つと上記(E1)~(F3)のいずれか1つ以上との組み合わせが挙げられ、より好ましくは上記(A7)~(A22)のいずれか1つと上記(E2)、(E4)、(F1)、(F2)及び(F3)のいずれか1つ以上との組み合わせが挙げられ、さらに好ましくは上記(A7)と上記(E2)、(E4)、(F1)、(F2)及び(F3)のいずれか1つ以上との組み合わせが挙げられ、さらに好ましくは、以下が挙げられる:
(G1) 上記(A7)及び(F1);
(G2) 上記(A7)及び(F2);
(G3) 上記(A7)及び(F3);
(G4) 上記(A7)及び(E2);
(G5) 上記(A7)及び(E4);
(G6) 上記(A7)、(F1)及び(E2);
(G7) 上記(A7)、(F2)及び(E2);又は
(G8) 上記(A7)、(F3)及び(E2)。
【0038】
あるいは、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインのより好ましい例としては、配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、且つ下記:
(A1)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるGln;
(A2)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAla;
(A3)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsp;
(A4)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるGln;
(A5)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAla;
(A6)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsp;
(A7)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるGln;
(A8)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAla;
(A9)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるArg;
(A10)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるAsp;
(A11)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるCys;
(A12)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるGlu;
(A13)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるHis;
(A14)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるIle;
(A15)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるLeu;
(A16)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるLys;
(A17)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるMet;
(A18)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるPhe;
(A19)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるThr;
(A20)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるTrp;
(A21)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるTyr;
(A22)配列番号3のアミノ酸配列の11位に相当する位置におけるVal;
(A23)配列番号3のアミノ酸配列の3位、6位及び11位に相当する位置におけるGln;
(A24)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAla、及び11位に相当する位置におけるGln;
(A25)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln;
(A26)配列番号3のアミノ酸配列の6位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln;
(A27)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAsp、6位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln;
(A28)配列番号3のアミノ酸配列の3位に相当する位置におけるAla、6位に相当する位置におけるAsp、及び11位に相当する位置におけるGln;
(B1)配列番号3のアミノ酸配列の24位に相当する位置におけるAsp;
(B2)配列番号3のアミノ酸配列の25位に相当する位置におけるAsp;
(C1)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるLys;
(C2)配列番号3のアミノ酸配列の39位に相当する位置におけるArg;
(D1)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるAsp;
(D2)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるGlu;
(D3)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるLys;
(D4)配列番号3のアミノ酸配列の46位に相当する位置におけるArg;
(E1)配列番号3のアミノ酸配列の4位に相当する位置におけるLysの欠失;
(E2)配列番号3のアミノ酸配列の49位に相当する位置におけるArg;
(E3)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるLysの欠失;
(E4)配列番号3のアミノ酸配列の58位に相当する位置におけるArg;
(F1)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるArg;
(F2)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるLeu;
(F3)配列番号3のアミノ酸配列の23位に相当する位置におけるSer;
(G1) 上記(A7)及び(F1);
(G2) 上記(A7)及び(F2);
(G3) 上記(A7)及び(F3);
(G4) 上記(A7)及び(E2);
(G5) 上記(A7)及び(E4);
(G6) 上記(A7)、(F1)及び(E2);
(G7) 上記(A7)、(F2)及び(E2);又は
(G8) 上記(A7)、(F3)及び(E2)、
を含むアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖が挙げられる。該配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列は、好ましくは配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列であり、より好ましくは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列である。別の一例において、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、上記(A1)~(G8)のアミノ酸残基又はその欠失のうちのいずれか1種を含むが、該(A1)~(G8)のアミノ酸残基又は欠失のうちの他のアミノ酸残基又は欠失を含まない。さらに別の一例において、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインの有する(A1)~(F3)からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基もしくはその欠失は、(E2)K49R、(E3)ΔK58、又は(E4)K58Rの単独変異、又はK49RΔK58、もしくはK49RK58Rの二重変異を含まないことがある。
【0039】
本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインにおいて、当該配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号57~62のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列であり得る。また、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインにおいて、当該配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号57~59のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列であり得る。ただし、これら配列番号57~62のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなる本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、上述した(a)~(f)の変異のうち、配列番号3のアミノ酸配列の3位及び4位に相当する位置におけるアミノ酸残基の変異を含まないことがある。
【0040】
好ましくは、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列の1位に相当する位置におけるValを含むか、及び/又は配列番号3のアミノ酸配列の29位に相当する位置におけるAlaを含む。
【0041】
本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインのさらに好ましい例としては、配列番号7~53のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖が挙げられる。
【0042】
本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、上述した本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインを1つ以上含んでいればよい。好ましくは、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインを2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上、さらに好ましくは6個以上含む。一方、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインを、好ましくは12個以下、より好ましくは8個以下、さらに好ましくは7個以下含む。例えば、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインを、好ましくは2~12個、より好ましくは3~8個、さらに好ましくは4~7個含む。本発明のイムノグロブリン結合タンパク質が2個以上の本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインを含む場合、それらの変異イムノグロブリン結合ドメインは、同じ種類のものであっても、異なる種類のものであってもよいが、好ましくは同じ種類である。
【0043】
本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、上述した本発明の変異イムノグロブリン結合ドメイン以外の、他のイムノグロブリン結合ドメインを含んでいてもよい。当該他のドメインの例としては、天然型SpAイムノグロブリン結合ドメイン(例えば、SpAのBドメイン、Zドメイン、Cドメイン又はDドメイン)、又は本発明の変異イムノグロブリン結合ドメイン以外のそれらの変異体が挙げられる。
【0044】
本発明のイムノグロブリン結合タンパク質の好ましい例としては、2個以上の本発明の変異イムノグロブリン結合ドメインのアミノ酸配列が直鎖状に連結されたポリペプチドが挙げられる。本発明のイムノグロブリン結合タンパク質に含まれる該変異イムノグロブリン結合ドメインの数は、好ましくは2~12個、より好ましくは3~8個、さらに好ましくは4~7個である。本発明のイムノグロブリン結合タンパク質のより好ましい例としては、各々が配列番号7~53のアミノ酸配列から選択される2個以上のアミノ酸配列が直鎖状に連結されたアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。本発明のイムノグロブリン結合タンパク質のさらに好ましい例としては、各々が配列番号7~53のアミノ酸配列から選択される2~12個、さらに好ましくは3~8個、なお好ましくは4~7個のアミノ酸配列が直鎖状に連結されたアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。さらに好ましい例としては、配列番号7~53のいずれかのアミノ酸配列が2~12個、さらに好ましくは3~8個、なお好ましくは4~7個直鎖状に連結されたアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。しかしながら、本発明のタンパク質の好ましい例は、これらに限定されない。なお、本発明において、アミノ酸配列が「直鎖状に連結」とは、2個以上のアミノ酸配列がリンカーを介して又はリンカーを介さずに直列に連結された構造を意味する。例えば、リンカーを介する場合、「直鎖状に連結」とは、1つのアミノ酸配列のC末端と別のアミノ酸配列のN末端とがリンカーを介して直列に連結された構造を意味し、一方、リンカーを介さない場合、「直鎖状に連結」とは、1つのアミノ酸配列のC末端と別のアミノ酸配列のN末端とがペプチド結合によって直列に連結された構造を意味する。
【0045】
本発明のイムノグロブリン結合タンパク質の担体への固定化量増大、担体への結合点の増加、抗体結合容量の増大などの観点から、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質に含まれるイムノグロブリン結合ドメインのN末端、C末端、及びドメイン間のいずれか1箇所以上に、任意のアミノ酸残基又はペプチドを付加又は挿入してもよい。当該付加又は挿入されるアミノ酸残基又はペプチドの好ましい例としては、Cys、Lys、Pro、(Pro)m、(Ala-Pro)n、及び(Glu-Ala-Ala-Ala-Lys)p(mは2~300、好ましくは12~24の整数であり、nは4以上の整数、好ましくは4~10の整数であり、pは2以上の整数、好ましくは2~6の整数である)が挙げられる。
【0046】
2.イムノグロブリン結合タンパク質の製造
本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、当該分野で公知の手法、例えばアミノ酸配列に基づく化学合成法や、リコンビナント法などにより製造することができる。例えば、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、Frederick M. AusbelらによるCurrent Protocols In Molecular Biologyや、Sambrookら編集のMolecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press,3rd edition,2001)などに記載されている公知の遺伝子組換え技術を利用して製造することができる。すなわち、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを大腸菌などの宿主に形質転換し、得られた組換え体を適切な液体培地で培養することにより、培養後の細胞から、目的のタンパク質を大量且つ経済的に取得することができる。好ましい発現ベクターとしては、宿主細胞内で複製可能な既知のベクターのいずれをも用いることができ、例えば、米国特許第5,151,350号明細書に記載されているプラスミドや、Sambrookら編集のMolecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 3rd edition, 2001)などに記載されているプラスミドが挙げられる。また、形質転換のための宿主としては、特に限定されないが、大腸菌などのバクテリア、真菌類、昆虫細胞、哺乳類細胞等の組換えタンパク質を発現させるために用いられる公知の宿主を用いることができる。宿主中に核酸を導入することにより宿主を形質転換させるためには、各宿主に応じて当該技術分野において知られるいずれの方法を用いてもよく、例えば、Sambrookら編集のMolecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press,3rd edition,2001)などに記載されている公知の方法を利用することができる。得られた形質転換体(好ましくは細菌等の細胞)を培養して発現されたタンパク質を回収する方法は、当業者によく知られている。あるいは、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、無細胞タンパク質合成系を用いて発現させてもよい。
【0047】
したがって、本発明はまた、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(DNA等)、それを含むベクター、及びそれらを含む形質転換体を提供する。
【0048】
3.アフィニティー担体
本発明のイムノグロブリン結合タンパク質は、アフィニティーリガンドとして使用することができる。本発明のイムノグロブリン結合タンパク質を固相担体に固定化することによって、該本発明のイムノグロブリン結合タンパク質をリガンドとしたアフィニティー担体を製造することができる。当該アフィニティー担体は、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質をリガンドとする担体であり、イムノグロブリン結合活性を有する。また当該アフィニティー担体は、野生型プロテインAやそのドメインをリガンドとする担体に比べて、アルカリ耐性が向上している。
【0049】
本発明のアフィニティー担体に含まれる固相担体の形状としては、粒子、膜、プレート、チューブ、針状、繊維状等の任意の形態であることができる。該担体は、多孔性でも非多孔性でもよい。これらの担体は充填ベッドとして使用することもでき、又は懸濁形態で使用することもできる。懸濁形態には流動層(expanded bed)及び純然たる懸濁物として知られるものが包含され、該形態中では粒子が自由に運動できる。モノリス、充填床及び流動層の場合、分離手順は一般に濃度勾配による従来のクロマトグラフィー法に従う。純然たる懸濁物の場合は、回分法が用いられる。好ましくは、当該担体は充填剤である。あるいは、担体は、チップ、キャピラリー又はフィルターのような形態であってもよい。
【0050】
一実施形態において、当該固相担体は、粒子の場合、粒径が好ましくは20μm以上200μm以下である。例えば、担体が合成ポリマーの場合、粒径は好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、且つ好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、例えば、好ましくは20~100μm、より好ましくは30~80μmである。例えば、担体が多糖の場合、粒径が好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、且つ好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、例えば、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~150μmである。粒径が20μm未満であると、高流速下でカラム圧力が高くなり、実用に耐えない。粒径が200μmを超えると、イムノグロブリンがアフィニティー担体に結合する量(結合容量)に劣る場合がある。なお、本明細書における「粒径」とは、ISO 13320及びJIS Z 8825-1に準じたレーザー回折法で測定した体積平均粒子径を意味する。具体的には、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置(例えば、LS 13 320((株)ベックマン・コールター等)により粒径分布を測定し、Fluid R.I.Real 1.333、Sample R.I.Real 1.54 Imaginary 0等を光学モデルとして使用し、体積基準の粒度分布を測定して求められる平均粒子径のことをいう。
【0051】
一実施形態において、当該固相担体は、多孔質であり、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上、且つ好ましくは150m2/g以下、より好ましくは130m2/g以下、例えば、好ましくは50~150m2/g、より好ましくは、80~130m2/gの比表面積を有する。ここで、比表面積が50m2/g未満であると、結合容量が劣る場合があり、一方、150m2/gを超えると、担体の強度が劣るために高流速下で担体が破壊されて、カラム圧力が上昇する場合がある。なお、本明細書における「比表面積」とは、水銀ポロシメーターにより得られる細孔径10~5000nmの細孔の有する表面積を粒子の乾燥重量で除した値である。
【0052】
一実施形態において、当該固相担体は、体積平均細孔径が好ましくは100nm以上1500nm以下である。例えば、担体が合成ポリマーの場合、体積平均細孔径は好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、且つ好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下であり、例えば、好ましくは100~400nm、さらに好ましくは200~300nmである。例えば、担体が多糖の場合、体積平均細孔径は好ましくは500nm以上、より好ましくは800nm以上、且つ好ましくは1500nm以下、より好ましくは1400nm以下であり、例えば、好ましくは500~1500nm、さらに好ましくは800~1400nmである。ここで、体積平均細孔径が100nm未満であると、高流速下の結合容量低下が顕著になる場合があり、一方、1500nmを超えると、流速にかかわらず結合容量が低下する場合がある。なお、本明細書における「体積平均細孔径」とは、水銀ポロシメーターにより得られる細孔径10~5000nmの細孔の体積平均細孔径である。
【0053】
当該固相担体が上記範囲の粒径、比表面積、及び細孔径分布を満たす場合、精製対象溶液の流路となる粒子間の隙間及び粒子内の比較的大きな細孔径と、精製対象分子の結合表面積のバランスが最適化され、高流速下の結合容量が高いレベルに維持される。
【0054】
当該固相担体の材質としては、例えば、親水性表面を有するポリマーであり、例えば、親水化処理により外表面に(及び存在する場合には内表面にも)ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、アミノカルボニル基(-CONH2、又はN置換型)、アミノ基(-NH2、又は置換型)、又はオリゴもしくはポリエチレンオキシ基を有するポリマーである。一実施形態において、該ポリマーは、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール系等の合成ポリマーであり得、好ましくは、多官能(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の多官能モノマーで架橋された共重合体のような合成ポリマーである。かかる合成ポリマーは公知の方法により容易に製造される(例えば、J.MATER.CHEM1991,1(3):371-374に記載の方法を参照されたい)。あるいは、トヨパール(東ソー社)のような市販品も使用される。他の実施形態におけるポリマーは、デキストラン、デンプン、セルロース、プルラン、アガロース等の多糖類である。かかる多糖類は公知の方法により容易に製造される(例えば特許第4081143号に記載の方法を参照されたい)。あるいは、セファロース(GEヘルスケアバイオサイエンス社)のような市販品も使用される。その他の実施形態ではシリカ、酸化ジルコニウムなどの無機担体であってもよい。
【0055】
一実施形態において、当該固相担体として使用される多孔性粒子の一具体例としては、例えば、20~50質量%の架橋性ビニル単量体と3~80質量%のエポキシ基含有ビニル単量体、20~80質量%のジオール基含有ビニル単量体との共重合体を含有し、粒径が20~80μmであり、比表面積が50~150m2/gであり、体積平均細孔径が100~400nmである多孔性有機重合体粒子が挙げられる。
【0056】
なお、当該固相担体を水銀ポロシメーターで測定した場合の細孔径10~5000nmの細孔の浸入体積(細孔体積)は、好ましくは1.3mL/g以上、7.0mL/g以下である。例えば、担体が合成ポリマーの場合、細孔体積は、好ましくは1.3mL/g以上、且つ好ましくは7.0mL/g以下、より好ましくは5.0mL/g以下、さらに好ましくは2.5mL/g以下であり、例えば、好ましくは1.3~7.0mL/g、より好ましくは1.3~5.0mL/g、さらに好ましくは1.3~2.5mL/gである。また、例えば、担体が多糖の場合、細孔体積は、好ましくは3.0~6.0mL/gである。
【0057】
当該固相担体へのリガンド(すなわち本発明のイムノグロブリン結合タンパク質)の結合方法としては、タンパク質を担体に固定化する一般的方法を用いて行うことができる。例えば、カルボキシ基を有する担体を用い、このカルボキシ基をN-ヒドロキシコハク酸イミドにより活性化させリガンドのアミノ基と反応させる方法;アミノ基又はカルボキシ基を有する担体を用い、水溶性カルボジイミド等の脱水縮合剤存在下でリガンドのカルボキシ基又はアミノ基と反応させアミド結合を形成する方法;水酸基を有する担体を用い、臭化シアン等のハロゲン化シアンで活性化させてリガンドのアミノ基と反応させる方法;担体の水酸基をトシル化又はトレシル化しリガンドのアミノ基と反応させる方法;ビスエポキシド、エピクロロヒドリン等によりエポキシ基を担体に導入し、リガンドのアミノ基、水酸基又はチオール基と反応させる方法;エポキシ基を有する担体を用い、リガンドのアミノ基又、水酸基又はチオール基と反応させる方法、などが挙げられる。上記のうち、反応を実施する水溶液中での安定性の観点からは、エポキシ基を介してリガンドを結合させる方法が望ましい。
【0058】
エポキシ基が開環して生成する開環エポキシ基である水酸基は、担体表面を親水化し、タンパク質などの非特異吸着を防止すると共に、水中で担体の靱性を向上させ、高流速下の担体の破壊を防止する役割を果たす。したがって、リガンドを固定化させた後の担体中にリガンドと結合していない残余のエポキシ基が存在している場合、当該残余のエポキシ基を開環させることが好ましい。担体中のエポキシ基の開環方法としては、例えば、水溶媒中で、酸又はアルカリにより、加熱又は室温で該担体を撹拌する方法を挙げることができる。また、メルカプトエタノール、チオグリセロール等のメルカプト基を有するブロッキング剤やモノエタノールアミン等のアミノ基を有するブロッキング剤で、エポキシ基を開環させても良い。より好ましい開環エポキシ基は、担体に含まれるエポキシ基をチオグリセロールにより開環させて得られる開環エポキシ基である。チオグリセロールは、原料としてメルカプトエタノール等よりも毒性が低く、またチオグリセロールが付加したエポキシ開環基は、アミノ基を有するブロッキング剤による開環基よりも非特異吸着が低い上に、動的結合量が高くなる、といった利点を有する。
【0059】
必要に応じて固相担体とリガンドの間に任意の長さの分子(スペーサー)を導入してもよい。スペーサーの例としてはポリメチレン鎖、ポリエチレングリコール鎖、糖類などが挙げられる。
【0060】
本発明のアフィニティー担体は、アルカリ耐性の向上したリガンドを有しているため、例えば、アフィニティー精製における該担体の繰り返し利用のためのアルカリ性条件下での洗浄(例えば0.01~1.0M水酸化ナトリウム等のアルカリ性溶液を用いた洗浄)に対しても性能の著しい低下がない。
【0061】
4.抗体又はその断片の単離方法
本発明の一実施形態に係る抗体又はその断片(以下、単に抗体と表記する。)の単離方法を説明する。本実施形態に係る抗体の単離方法は、好適には、本発明のイムノグロブリン結合タンパク質を固定化したアフィニティー担体に、抗体を含有する試料を通液し、該担体に該抗体を吸着させる工程(第一の工程)、及び、該担体から該抗体を溶出させる工程(第二の工程)を含み、好ましくは該第二の工程の後に、該担体をアルカリ性液で洗浄する工程(第三の工程)をさらに含む。
【0062】
当該第一の工程では、本発明のアフィニティー担体を充填したカラム等に抗体を含有する試料を、リガンド(本発明のイムノグロブリン結合タンパク質)に抗体が吸着する条件にて流す。この第一の工程では、試料中の抗体以外の物質のほとんどは、リガンドに吸着されずカラムを通過する。この後、必要に応じて、リガンドに弱く保持された一部の物質を除去するため、担体をNaClなどの塩を含む中性の緩衝液で洗浄してもよい。
【0063】
第二の工程では、pH2~5の適切な緩衝液を流し、リガンドに吸着された抗体を溶出させる。この溶出液を回収することで、試料から抗体を単離することができる。
【0064】
抗体の純度を高めるために、上記第二の工程で得られた溶出液に含まれる抗体をさらに精製してもよい。抗体の精製は、例えば、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、ミックスモードクロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて使用して行うことができる。例えば、該第二の工程で得られた溶出液を、陽イオン交換クロマトグラフィー、続いて陰イオン交換クロマトグラフィーにかけることで、抗体を精製することができる。陽イオン交換クロマトグラフィーは、SP-セファロースFF(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、BioPro IEX S(YMC社製)、BioPro IEX SmartSep S(YMC社製)等を用いて行うことができる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、Q-セファロースFF(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、BioPro IEX Q(YMC社製)、BioPro IEX SmartSep Q(YMC社製)等を用いて行うことができる。
【0065】
本実施形態に係る抗体の単離方法においては、好ましくは、上記第二の工程に続いて第三の工程が行われる。第三の工程では、アルカリ性溶液で該アフィニティー担体を洗浄(CIP洗浄)する。第三の工程に使用されるアルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、トリエチルアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。また、第三の工程で使用される該アルカリ性溶液中のアルカリ塩のモル濃度は、下限値が、0.001M以上、好ましくは0.01M以上、より好ましくは0.1M以上であり、上限値が、6.0M以下、好ましくは4.0M以下、より好ましくは2.0M以下である。使用される該アルカリ性溶液のpHとしては、下限値が、pH11.0以上、好ましくはpH12.0以上、より好ましくはpH12.5以上であり、上限値が、pH16.0以下、好ましくはpH15.5以下、より好ましくはpH15.0以下である。
【0066】
本発明のアフィニティー担体は、タンパク質リガンドのアルカリ耐性向上により上記第三の工程での洗浄後も抗体結合活性を安定に保持しているため、抗体単離に繰り返し使用することができる。
【0067】
本発明の抗体の単離方法の一実施形態において、単離された抗体は、抗体医薬として使用される。したがって、一実施形態において、本発明は、本発明のアフィニティー担体を用いる抗体医薬の製造方法を提供する。当該方法の手順は、目的とする抗体医薬を含有する試料を用いる以外は、基本的に上述した抗体の単離方法の手順と同様である。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。また、以下の記載は本発明の態様を概括的に示すものであり、特に理由なく、かかる記載により本発明は限定されるものではない。
【0069】
参考例1 多孔質粒子の合成
(1)360gの純水にポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA-217)3.58gを添加し、加熱撹拌してポリビニルアルコールを溶解させ、冷却した後、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.36g、硫酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.36g、及び亜硝酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.18gを添加し、撹拌して水溶液Sを調製した。
(2)グリシジルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製)12.00g及びジビニルベンゼン(新日鐵化学社製)1.33gからなる単量体組成物を、ジイソブチルケトン(三井化学社製)24.43gに溶解させ、単量体溶液を調製した。
(3)(1)で得た水溶液Sを、セパラブルフラスコ内に全量投入し、温度計、撹拌翼及び冷却管を装着して、温水バスにセットし、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。セパラブルフラスコ内に(2)で得た単量体溶液を全量投入して、温水バスにより加温した。内温が85℃に到達したところで2,2’-アゾイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)0.53gを添加した。
(4)(3)で得た反応液を、86℃に温度を維持しながら、3時間撹拌した。次いで、反応液を冷却した後、ろ過し、純水とエタノールで洗浄した。洗浄した粒子を純水に分散させてデカンテーションを3回行い、小粒子を除いた。次いで、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させ、多孔質粒子(PB)分散液を得た。
【0070】
実施例1 イムノグロブリン結合タンパク質(PrAt-0~32)の作製
イムノグロブリン結合タンパク質PrAt-0~32を取得した。PrAt-0は、プロテインAのCドメイン(配列番号3)のA1V/G29A変異体(アルカリ耐性向上変異体;非特許文献1)がペプチド結合によって直列に連結したホモテトラマーを含むイムノグロブリン結合タンパク質である。PrAt-1~32は、PrAt-0の各イムノグロブリン結合ドメインに対して表1記載の変異を導入した変異体である。
【0071】
【0072】
PrAt-0~32の発現と精製はそれぞれ以下のように行った。PrAt-0~32をコードするプラスミドを用いて大腸菌BL21(DE3)(NEW ENGLAND BIOLABS社製)を形質転換し、得られた形質転換体を富栄養培地中37℃で対数増殖期まで培養した。その後、培地に終濃度1mMイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(和光純薬工業社製)を添加して、さらに37℃で4時間培養することにより、目的タンパク質を発現させた。続いて培養液を遠心分離して上清を除き、得られた菌体に卵白由来リゾチーム(和光純薬工業社製)及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(和光純薬工業社製)を含むpH9.5の30mMトリス緩衝液を添加して菌体を破砕した。得られた細胞破砕液から、陽イオン交換クロマトグラフィー(SP-セファロースFF、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)及び陰イオン交換クロマトグラフィー(Q-セファロースFF、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)によって組み換えイムノグロブリン結合タンパク質を精製した。精製したイムノグロブリン結合タンパク質を、10mMクエン酸緩衝液pH6.0に対して透析した。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0073】
実施例2 イムノグロブリン結合タンパク質(PrAp-0~41)の作製
イムノグロブリン結合タンパク質PrAp-0~39を取得した。PrAp-0は、プロテインAのCドメイン(配列番号3)のA1V/G29A変異体がペプチド結合によって直列に連結したホモペンタマーを含むイムノグロブリン結合タンパク質であり、PrAp-21は、プロテインAのCドメイン(配列番号3)のA1V/G29A変異体がペプチド結合によって直列に連結したホモペンタマーのC末端にシステイン(C)を連結したイムノグロブリン結合タンパク質である。PrAp-1~20は、PrAp-0の各イムノグロブリン結合ドメインに対して表2記載の変異を導入した変異体であり、PrAp-22~41は、PrAp-21の各イムノグロブリン結合ドメインに対して表3記載の変異を導入した変異体である。
【0074】
【0075】
【0076】
PrAp-0~41の発現と精製はPrAt-0~32と同様に行った。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0077】
実施例3 イムノグロブリン結合タンパク質(PrAh-0~41)の作製
イムノグロブリン結合タンパク質PrAh-0~41を取得した。PrAh-0は、プロテインAのCドメイン(配列番号3)のA1V/G29A変異体がペプチド結合によって直列に連結したホモヘキサマーを含むイムノグロブリン結合タンパク質であり、PrAh-21は、プロテインAのCドメイン(配列番号3)のA1V/G29A変異体がペプチド結合によって直列に連結したホモヘキサマーのC末端にシステイン(C)を連結したイムノグロブリン結合タンパク質である。PrAh-1~20は、PrAh-0の各イムノグロブリン結合ドメインに対して表4記載の変異を導入した変異体であり、PrAh-22~41は、PrAh-21の各イムノグロブリン結合ドメインに対して表5記載の変異を導入した変異体である。
【0078】
【0079】
【0080】
PrAh-0~41の発現と精製はPrAt-0~32と同様に行った。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0081】
実施例4 リガンド固定化粒子の調製
参考例1で取得した多孔質粒子(PB)8mgに対して、実施例1で調製したPrAt-0を1.16mg溶解した、1.1M硫酸ナトリウムを含む0.1M炭酸緩衝液(pH8.8)450μLを加え、混合液を25℃で5時間振盪して、PrAt-0をPBに結合させた。粒子に残存するエポキシ基をチオグリセロールを用いてブロッキングした後、0.5M NaOH及び0.1Mクエン酸バッファー(pH3.2)を用いて粒子を洗浄し、リガンド固定化粒子(PrAt-0/PB)を得た。同様の手順で、PrAt-1~32のいずれかが結合したリガンド固定化粒子(PrAt-1/PB~PrAt-32/PB)を得た。また、同様の手順でPrAp-0~41のいずれかが結合したリガンド固定化粒子(PrAp-0/PB~PrAp-41/PB)を得た。さらに、同様の手順でPrAh-0~41のいずれかが結合したリガンド固定化粒子(PrAh-0/PB~PrAh-41/PB)を得た。
【0082】
実施例5 イムノグロブリン結合タンパク質(PrAs-0~22)の作製
イムノグロブリン結合タンパク質PrAs-0~22を取得した。PrAs-0は、プロテインAのCドメイン(配列番号3)のA1V/G29A変異体のN末端に6回繰り返しヒスチジンタグ(HHHHHH配列)を連結したイムノグロブリン結合タンパク質である。PrAs-1~22は、PrAs-0の各イムノグロブリン結合ドメインに対して表6記載の変異を導入した変異体である。
【0083】
【0084】
PrAs-0~22の発現と精製は、アフィニティークロマトグラフィー(HisTrap FF、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)によって組み換えイムノグロブリン結合タンパク質を精製したこと以外は、PrAt-0~32と同様に行った。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0085】
試験例1
実施例4で作製した、変異ドメインを含むリガンド固定化粒子PrAt-1/PB~PrAt-29/PBについて、親ドメインを含むリガンド固定化粒子PrAt-0に対する相対アルカリ耐性を評価した。
【0086】
(1)静的結合容量(SBC)の測定
2mgのリガンド固定化粒子(PrAt-0/PB)に2.0mgのIgGを含む20mMリン酸バッファー(pH7.5)400μLを添加し、30分間インキュベートした。次いで20mMリン酸バッファー(pH7.5)400μLで洗浄した後、50mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH2.5)400μLを添加し、IgGを含む溶出液を回収した。溶出液中のIgG量を吸光度測定により算出し、溶出IgG量と担体体積からPrAt-0/PBの静的結合容量(SBC)を求めた。同様の手順で、PrAt-1/PB~PrAt-29/PBのSBCを求めた。また、同様の手順で、PrAh-21/PB~PrAh-41/PBのSBCを求めた。
【0087】
(2)アルカリ耐性の評価:PrAt-1~29
2mgのリガンド固定化粒子(PrAt-0/PB)を1.0M NaOHで平衡化させた後、24時間インキュベートした。次いで20mMリン酸バッファー(pH7.5)で粒子を平衡化させた後、2.0mgのIgGを含む20mMリン酸バッファー(pH7.5)400μLを添加し、30分間インキュベートした。次いで20mMリン酸バッファー(pH7.5)400μLで洗浄した後、50mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH2.5)400μLを添加し、IgGを含む溶出液を回収した。溶出液中のIgG量を吸光度測定により算出し、溶出IgG量と担体体積からアルカリに暴露したPrAt-0/PBのSBCを求めた。同様の手順で、アルカリに暴露したPrAt-1~29/PBのSBCを求めた。各リガンド固定化粒子について、(1)で求めたSBCに対するアルカリ暴露後のSBCの相対値(SBC維持率)を算出し、次いで以下の式に従って各リガンド固定化粒子(PrAt-1~29)のPrAt-0に対する相対アルカリ耐性(%)を算出した。
相対アルカリ耐性(%)=(PrAt-N(N=1~29)のSBC維持率)/(PrAt-0のSBC維持率)×100
【0088】
(3)アルカリ耐性の評価:PrAh-22~38
(2)と同様の手順でアルカリに暴露したPrAh-21~38/PBのSBCを求め、PrAh-22~38のPrAh-21に対する相対アルカリ耐性(%)を算出した。
【0089】
(4)アルカリ耐性の評価:PrAh-39~41
リガンド固定化粒子(PrAh-21/PB及びPrAh-39~41/PB)を、(2)と同様の手順で、ただし1.0M NaOHの代わりに0.5M NaOHで平衡化させた後、24時間インキュベートした。その後は、(2)と同様の方法で、アルカリに暴露したPrAh-21、及び39~41/PBのSBCを求め、PrAh-39~41のPrAh-21に対する相対アルカリ耐性(%)を算出した。
【0090】
(1)で測定したSBC及び(2)~(4)で測定した相対アルカリ耐性の測定結果を表7~9に示す。PrAt-1~29/PBのSBCは、PrAt-0/PBと比較して大きな相違は見られなかった。一方、PrAt-1~29/PBの相対アルカリ耐性はPrAt-0/PBと比較して14~64%向上していた。また、PrAh-22~38/PBは、SBCはPrAh-21/PBと比較して大きな相違は見られなかった一方、相対アルカリ耐性はPrAh-21/PBと比較して28~69%向上していた。さらに、PrAh-39~41/PBは、SBCはPrAh-21/PBと比較して大きな相違は見られなかった一方、相対アルカリ耐性はPrAh-21/PBと比較して22~26%向上していた。これらの結果から、変異ドメインを含む実施例1~3のイムノグロブリン結合タンパク質は、変異導入前と比べてアルカリ耐性が高く、1.0M又は0.5M水酸化ナトリウムに24時間曝露するという比較的過酷な条件に置いた後も抗体結合活性を維持することができることが示された。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
試験例2
実施例5で作製した、変異ドメインを含むイムノグロブリン結合タンパク質PrAs-1~PrAs-19について、親ドメインを含むイムノグロブリン結合タンパク質PrAs-0に対する相対アルカリ耐性を評価した。
【0095】
(1)試料溶液の調製
0.13mgのイムノグロブリン結合タンパク質(PrAs-0及びPrAs-1~19)を1.0M水酸化ナトリウム水溶液中でインキュベートした。インキュベート開始直後又はインキュベート開始24時間後に、液を1.0Mクエン酸により中和した。次いで中和溶液を、0.1%ウシ血清由来アルブミン(和光純薬工業社製)及び0.02%Triton X-100(和光純薬工業社製)を含むD-PBSバッファーを用いてタンパク質濃度10μg/mLに希釈し、試料溶液を調製した。これら試料溶液について、PrAs-N(N=0~19)を水酸化ナトリウム中でインキュベート開始直後に中和した試料溶液をPrAs-Naとし、インキュベート開始24時間後に中和した試料溶液をPrAs-Nbとする。
【0096】
(2)IgG結合バイオセンサーの調製
1.0mgのIgGを3.9μgのEZ-Link NHS-PEG4-Biotin(Thermo Fisher Scientific社製)と反応させ、IgGをビオチン化した。これをOctet RED 96eシステム(Pall ForteBio社製)を用いてストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio社製)に接触させ、センサー上にIgGを固定化した。
【0097】
(3)アルカリ耐性の評価
Octet RED 96eシステムを用いてIgG結合バイオセンサーを試料溶液に接触させて、センサー上のIgGにイムノグロブリン結合タンパク質を結合させた。センサグラムから結合速度を決定し、PrAs-Naの結合速度に対するPrAs-Nbの結合速度の相対値(結合速度維持率)を算出した。次いで、以下の式に従って各イムノグロブリン結合タンパク質(PrAs-0~19)のPrAs-0に対する相対アルカリ耐性(%)を算出した。
相対アルカリ耐性(%)={(PrAs-N(N=1~19)の結合速度維持率)/(PrAs-0の結合速度維持率)}×100
PrAs-N(N=0~19)の結合速度維持率=(PrAs-N(N=0~19)bの結合速度)/(PrAs-N(N=0~19)aの結合速度)
【0098】
相対アルカリ耐性の測定結果を表10に示す。PrAs-17~19の相対アルカリ耐性がPrAs-0と比較して低下していた一方、PrAs-1~16の相対アルカリ耐性はPrAs-0と比較して60~338%向上していた。これらの結果から、変異ドメインを含むイムノグロブリン結合タンパク質PrAs-1~16は、変異導入前と比べてアルカリ耐性が高く、1.0M水酸化ナトリウムに24時間曝露するという比較的過酷な条件に置いた後も抗体結合活性を維持することができることが示された。
【0099】
【0100】
試験例3
実施例5で作製したイムノグロブリン結合タンパク質(PrAs-0及びPrAs-20~22)について、0.5M水酸化ナトリウム水溶液中でインキュベートしたこと以外は試験例2と同様の手順で、アルカリ耐性を算出した。相対アルカリ耐性の測定結果を表11に示す。PrAs-20~22は、相対アルカリ耐性がPrAs-0と比較して21~31%向上していたことから、変異導入前と比べアルカリ耐性が高いことが示された。
【0101】
【配列表】