(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】負極板及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241128BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20241128BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241128BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/131
H01M4/134
(21)【出願番号】P 2023510320
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2021087568
(87)【国際公開番号】W WO2022033065
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】202010811820.4
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD Company Limited
【住所又は居所原語表記】No. 3009, BYD Road, Pingshan, Shenzhen, Guangdong 518118, P. R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲凱▼翔
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼小▲締▼
(72)【発明者】
【氏名】曾彪
(72)【発明者】
【氏名】▲顔▼海▲鵬▼
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-251250(JP,A)
【文献】特表2015-511389(JP,A)
【文献】特開2015-041434(JP,A)
【文献】特開2010-192230(JP,A)
【文献】特開2014-143152(JP,A)
【文献】特開2005-071918(JP,A)
【文献】特開2014-154317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含む負極板であって、
前記第1負極活物質層及び第2負極活物質層の屈曲度は、1<t
1≦5、1<t
2≦5、かつ0.5≦t
2-t
1≦3.2を満たし、
式中、前記t
1は、前記第1負極活物質層の屈曲度を表し、前記t
2は、前記第2負極活物質層の屈曲度を表し、前記t
2-t
1は、前記第2負極活物質層の屈曲度と前記第1負極活物質層の屈曲度との差を表
し、
前記第1負極活物質層の空隙率は、20%~30%であり、前記第2負極活物質層の空隙率は、30%~40%であり、かつ前記第2負極活物質層の空隙率は、前記第1負極活物質層の空隙率より大きいことを特徴とする、負極板。
【請求項2】
前記第1負極活物質層は、第1負極活物質を含み、前記第2負極活物質層は、第2負極活物質を含み、前記第1負極活物質のD50粒径と前記第2負極活物質のD50粒径は、いずれも8μm~20μmの範囲内にあり、かつ前記第2負極活物質のD50粒径は、前記第1負極活物質のD50粒径より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の負極板。
【請求項3】
前記第1負極活物質のD50粒径は、8μm~13μmであり、前記第2負極活物質のD50粒径は、13μm~20μmであることを特徴とする、請求項2に記載の負極板。
【請求項4】
前記第2負極活物質のD50粒径と前記第1負極活物質のD50粒径との差は、3μm以上であることを特徴とする、請求項
2に記載の負極板。
【請求項5】
前記第1負極活物質層の厚さ及び第2負極活物質層の厚さは、いずれも30μm~100μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項6】
前記第1負極活物質層の面密度及び前記第2負極活物質層の面密度は、いずれも0.30g/dm
2~0.73g/dm
2の範囲内にあることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項7】
前記第1負極活物質の重量は、前記第1負極活物質層の重量の90%~98%を占め、前記第2負極活物質の重量は、前記第2負極活物質層の重量の90%~98%を占めることを特徴とする、請求項
4に記載の負極板。
【請求項8】
前記第1負極活物質及び前記第2負極活物質は、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸リチウム、ケイ素系材料及びスズ系材料のうちの1種又は複数種から独立して選択されることを特徴とする、請求項2に記載の負極板。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の負極板を含むことを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、ビーワイディーカンパニーリミテッドが2020年8月13日に提出した、出願名称が「負極板及び二次電池」である中国特許出願第「202010811820.4」号の優先権を主張するものである。
【0002】
本願は、電池の分野に関し、具体的には、負極板及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
経済及び科学技術の発展に伴い、携帯型電子機器(携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン)から無人航空機、電気自動車に至るまで、これらの業界では、エネルギー密度がより高く、電力密度がより高いエネルギー貯蔵デバイスが切望されている。現在、黒鉛などの負極に基づくリチウムイオン電池において、負極活物質層が単一のコーティングであり、圧延後の単一の負極活物質層の屈曲度が均一ではなく、集電体から離れる側の表層の屈曲度が小さいため、電池が高レートで充放電する場合、集電体から離れる側の活物質層におけるリチウムイオンの液相の拡散速度が低く、電池が高容量を発揮しにくく、サイクル減衰が速く、かつ負極板の表面にリチウム析出現象が発生しやすいことを引き起こして、サイクル性能に大きな影響を与え、かつ安全上の潜在的なリスクをもたらす。
【発明の概要】
【0004】
本願は、従来技術における技術的課題の1つを少なくとも解決することを目的とする。このために、本願は、電池の容量保持率を向上させ、電池のリチウム析出現象の発生を回避できる負極板を提供する。
【0005】
負極板は、集電体と、前記集電体に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、前記第1負極活物質層及び第2負極活物質層の屈曲度は、1<t1≦5、1<t2≦5、かつ0.5≦t2-t1≦3.2を満たし、式中、前記t1は、前記第1負極活物質層の屈曲度を表し、前記t2は、前記第2負極活物質層の屈曲度を表し、前記t2-t1は、前記第2負極活物質層の屈曲度と前記第1負極活物質層の屈曲度との差を表す。
【0006】
これにより、上記条件を満たすように上下の2つの負極活物質層の屈曲度を制御することにより、同じ面密度及びプレス密度の条件下で、屈曲度が高い第2活物質層は、より多くの空隙構造を提供することができるため、電池がサイクル過程に電解液に浸潤され、挿入可能なリチウムの容量を向上させ、負極板の表面におけるリチウム析出現象の発生を回避することに役立つとともに、屈曲度が小さい第1活物質層は、構造が緊密であるため、電池のサイクル過程におけるリチウムイオンの固相輸送効率を保持することに役立ち、両者の間の適切な屈曲度の差により、電池が高レートでサイクルする場合の容量保持率が高く、かつリチウム析出現象が発生しない。
【0007】
二次電池は、前記のような負極板を含む。該二次電池は、高レートでサイクルする場合、高容量を保持することができ、サイクル安定性が高い。
【0008】
本願の追加的な態様及び利点は、一部が以下の説明において示され、他の部分が以下の説明において明らかになるか、又は、本願の実施により把握される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本願の上記及び/又は追加的な態様及び利点は、以下の図面を参照して実施例を説明することにより、明らかになって理解されやすくなる。
【0010】
【
図1】本願の実施例に係る負極板の概略構造図である。
【
図2】本願の実施例の負極板と比較例の負極板で製造された電池の常温でのサイクル曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の実施例を詳細に説明し、上記実施例の例は、図面に示され、全体を通して同一又は類似の符号は、同一又は類似する部品、或いは同一又は類似の機能を有する部品を示す。以下、図面を参照して説明される実施例は、例示的なものであり、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を限定するものであると理解すべきではない。
【0012】
なお、本願の説明において、用語「中心」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などで示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本願を容易に説明し説明を簡略化するためのものに過ぎず、示された装置又は部品が特定の方位を有するとともに、特定の方位で構成されて動作しなければならないことを示すか又は示唆するものではないため、本願を限定するものであると理解すべきではない。
【0013】
なお、用語「第1」、「第2」は、説明のためのものに過ぎず、相対的な重要性を示すか又は示唆し、或いは示された技術的特徴の数を暗示的に示すものであると理解すべきではない。これにより、「第1」、「第2」で限定された特徴は、1つ以上の該特徴を明示的又は暗示的に含んでもよい。本願の説明において、特に明記しない限り、「複数」は、2つ以上を意味する。
【0014】
以下、本願の実施例における図面を参照して、本願の実施例を説明する。
【0015】
図1に示すように、本願の実施例に係る負極板100は、集電体10と、集電体に順に設置された第1負極活物質層11及び第2負極活物質層12とを含み、第1負極活物質層11及び第2負極活物質層12の屈曲度は、1<t
1≦5、1<t
2≦5、かつ0.5≦t
2-t
1≦3を満たし、式中、t
1は、第1負極活物質層11の屈曲度を表し、t
2は、第2負極活物質層12の屈曲度を表し、t
2-t
1は、第2負極活物質層12の屈曲度と第1負極活物質層11の屈曲度との差を表す。
【0016】
本願において、屈曲度は、活物質層におけるリチウムイオンの輸送経路と層の厚さの比率を示す。上記負極板において、集電体10から離れる側の第2負極活物質層12の屈曲度t2は、集電体に近い第1負極活物質層11の屈曲度t1より大きい。同じ面密度及びプレス密度の条件下で、屈曲度が高い第2負極活物質層12は、より多くの空隙構造を提供することができるため、電池がサイクル過程に電解液に多く浸潤され、リチウムイオンの液相輸送を促進し、挿入可能なリチウムの容量を向上させ、負極板と電解液との界面におけるリチウム析出現象の発生を回避することに役立つとともに、屈曲度が小さい第1活物質層11は、構造が緊密であるため、電池のサイクル過程におけるリチウムイオンの固相輸送を保持することに役立つ。全体としては、2層の活物質層を有する負極板により、該負極板で製造された電池を充電する場合に負極にリチウムが均一に挿入されるため、電池は、高い容量及びエネルギー密度を有し、かつサイクル過程に高い容量保持率を有し、容量減衰が小さい。
【0017】
一般的には、屈曲度が大きいほど、コーティングが疎となり、リチウムイオンの輸送を容易にするが、屈曲度が大きすぎると、電子の導電性が急激に低くなり、電池のインピーダンスを増加させ、本願の実施例において、いずれも(1,5]の範囲内にあるように第2負極活物質層12の屈曲度t2及び第1負極活物質層11の屈曲度t1を制御することにより、この2つの負極活物質層がいずれも優れたイオン伝導性及び電子伝導性を有する。また、面密度及びプレス密度が一定であるという条件下で、t1及びt2が0.5≦t2-t1≦3.2を満たすと、電池が高レートでサイクルする場合の容量保持率が高く、サイクル安定性が高い。t2-t1>3.2であると、リチウムイオンが主に第2負極活物質層で反応するため、電池の全容量の損失を招くことになり、t2-t1<0.5であると、t2及びt1は、負極板の面密度及びプレス密度の要求により制限されるため、一般的に小さく、第2負極活物質層が浸潤されにくいため、負極板全体におけるリチウムイオンの液相拡散が困難になり、リチウム析出を引き起こしやすく、さらに電池の高レートでのサイクル曲線に短期間の急落の現象が発生する。したがって、t2-t1が適切な範囲に制御されてこそ、電池が高レートでサイクルする場合に容量保持率が高く、かつリチウム析出現象が発生しない。
【0018】
本願の一実施形態において、0.5≦t2-t1≦3である。本願の他の実施形態において、1≦t2-t1≦3である。
【0019】
一般的に、活物質のD50粒径が大きいほど、活物質層の屈曲度が大きい。本願の一実施形態において、第1負極活物質層11は、第1負極活物質を含み、第2負極活物質層12は、第2負極活物質を含み、かつ第2負極活物質のD50粒径は、第1負極活物質のD50粒径より大きく、第1負極活物質及び第2負極活物質のD50粒径は、いずれも8μm~20μmの範囲内にある。すなわち、集電体10から離れる(又は「電解液に近い」)第2負極活物質層12における負極活物質のD50粒径が大きく設定され、集電体10に近い(又は「電解液から離れる」)第1負極活物質層11における負極活物質のD50粒径が小さく設定され、このように、電解液に近い第2負極活物質層12が電池のサイクル過程に電解液に多く浸潤され、電池の挿入可能なリチウムの容量を向上させ、リチウム析出現象の発生を回避するため、電池は、高いサイクル安定性を有し、さらに2層の負極活物質層のリチウム脱離/挿入速度の一致性を保証することができる。
【0020】
第1負極活物質のD50粒径は、8μm~13μmであり、第2負極活物質のD50粒径は、13μm~20μmである。第2負極活物質のD50粒径と第1負極活物質のD50粒径との差は、3μm以上であり、このように、第2負極活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差が適切な範囲内にあることをよりよく保証し、さらに2層の負極活物質層のリチウム脱離/挿入速度の一致性に役立つことができる。例えば、第2負極活物質のD50粒径と第1負極活物質のD50粒径は、それぞれ、13μmと8μm、15μmと13μm、又は17μmと13μmなどであってもよい。
【0021】
本願の他の実施形態において、さらにレーザエッチング、造孔剤、段階的圧延などの方式で第1負極活物質層及び第2負極活物質層の屈曲度を変更することができる。
【0022】
本願において、第1負極活物質層11及び第2負極活物質層12は、いずれも導電剤及び結着剤を含む。すなわち、第1負極活物質層11は、第1負極活物質、導電剤及び結着剤を含み、第2負極活物質層12は、第2負極活物質、導電剤及び結着剤を含む。導電剤、結着剤、負極活物質の含有量は、限定されない。第1負極活物質の重量は、第1負極活物質層11の重量の90%~98%を占め、第2負極活物質の重量は、第2負極活物質層12の重量の90%~98%を占める。これにより、該負極板100は、高い負極活物質の担持量を有して、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0023】
第1負極活物質層11の厚さ及び第2負極活物質層12の厚さは、いずれも30μm~100μmの範囲内にある。各負極活物質層の厚さが100μmより大きいと、電池のエネルギー密度が向上するが、電力密度が低下し、厚さが30μmより小さいと、電池の電力密度が向上するが、エネルギー密度が低下する。第1負極活物質層11の厚さ及び第2負極活物質層12の厚さは、いずれも40μm~75μmの範囲内にある。第1負極活物質層11の厚さと第2負極活物質層12の厚さは、等しくてもよく、等しくなくてもよい。第1負極活物質層11と第2負極活物質層12の厚さの和は、80μm~150μmの範囲内にある。
【0024】
一般的に、活物質層の空隙率が大きいほど、活物質層の屈曲度が大きい。しかしながら、活物質層の空隙率が40%より大きいと、電池のエネルギー密度が大幅に低下する。第1負極活物質層11の空隙率は、20%~30%であり、第2負極活物質層12の空隙率は、30%~40%であり、かつ第2負極活物質層の空隙率は、第1負極活物質層の空隙率より大きい。例えば、第1負極活物質層11の空隙率と第2負極活物質層12の空隙率は、それぞれ、20%と30%、25%と36%、又は30%と40%などであってもよい。
【0025】
第1負極活物質層11の面密度と第2負極活物質層12の面密度は、いずれも0.3g/dm2~0.8g/dm2の範囲内にある。
【0026】
負極板100のプレス密度は、1.45-1.70g/cm3である。
【0027】
本願において、集電体10は、負極板の集電体として適用される材料であってもよく、金属箔、合金箔、金属と高分子との複合箔などを含むが、これらに限定されない。例えば、銅、ニッケル、ステンレスなどであってもよい。好ましくは、集電体10は、銅箔である。集電体10は、第1負極活物質層11と緊密かつ効果的に接触しやすくするために、二次構造を形成するようにエッチング処理又は粗化処理することができる。
【0028】
上記第1負極活物質及び第2負極活物質は、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸リチウム、ケイ素系材料及びスズ系材料のうちの1種又は複数種から独立して選択される。すなわち、上記第1負極活物質と第2負極活物質の材質は、同じであってもよく、異なってもよい。ケイ素系材料について、ケイ素単体、シリコン合金、シリコン酸化物、シリコン炭素複合材料などが挙げられる。スズ系材料について、スズ単体、スズ酸化物、スズ系合金などが挙げられる。
【0029】
本願において第1負極活物質層11及び第2負極活物質層12における結着剤及び導電剤は、いずれも特に限定されず、本分野の一般的な材料を用いればよい。例えば、結着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリレート(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチルなど)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸ナトリウムなどのうちの1種又は複数種を含んでもよい。例えば、導電剤は、分岐鎖状の導電剤、一次元鎖状/線状の導電剤、二次元板状の導電剤、三次元球形状の導電剤などのうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。具体的には、導電剤は、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン、導電性カーボンブラック、ファーネスブラック、メソカーボンマイクロビーズなどのうちの1種又は複数種を含んでもよい。導電性カーボンブラックは、具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、Supper P、350Gカーボンブラックなどを含んでもよい。黒鉛は、天然黒鉛(例えば、鱗状黒鉛、膨張黒鉛など)及び人造黒鉛(例えば、KS-6、球状黒鉛)などを含んでもよい。
【0030】
本願の第1態様に係る負極板は、本分野の公知の方法で製造することができる。例えば、上記負極板の製造方法は、集電体の一方の表面に第1負極活物質スラリー及び第2負極活物質スラリーを塗布し、乾燥させ、プレスした後に、集電体に第1負極活物質層及び第2負極活物質層を順に形成するステップを含んでもよい。
【0031】
塗布の方式は、具体的には、滴下塗布、ハケ塗り、スプレー塗布、浸漬塗布、ナイフ塗布、スピン塗布のうちの1種又は複数種の方式の組み合わせを含んでもよい。塗布の時間及び温度は、実際の需要に応じて設定されてもよく、塗布操作は、乾燥室内又は保護雰囲気で行われてもよい。第1負極活物質スラリーは、第1負極活物質、導電剤、結着剤及び溶媒を含んでもよく、第2負極活物質スラリーは、第2負極活物質、導電剤、結着剤及び溶媒を含んでもよい。本願の一実施形態において、二層塗布ダイヘッドを用いて第1負極活物質スラリー及び第2負極活物質スラリーを順に塗布する。
【0032】
本願の実施例は、上記負極板を含む二次電池をさらに提供する。
【0033】
該二次電池は、正極板、正極板と上記負極板との間に設置されたセパレータ、及び電解液をさらに含む。
【0034】
上記正極板は、二次電池に適用される正極板であってもよく、具体的には、リン酸鉄リチウム正極板、ニッケルコバルトマンガン三元系正極板、ニッケルコバルトアルミニウム三元系正極板、コバルト酸リチウム正極板、マンガン酸リチウム正極板のうちの1種又は複数種の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0035】
上記セパレータは、本分野の二次電池に適用される様々なセパレータであってもよく、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、不織布、ポリ繊維材質など及びそれらの多層複合膜などのうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。上記電解液は、電解液塩及び有機溶媒を含み、電解質塩及び有機溶媒の具体的な種類及び組成は、いずれも電池の分野の一般的な選択であり、実際の需要に応じて選択することができる。
【0036】
以下、複数の具体的な実施例を参照して本願の技術的解決手段をさらに説明する。
【実施例1】
【0037】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、第1負極活物質層の屈曲度は、3.42であり、第2活物質層の屈曲度は、4.55であり、第2活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差は、1.13である。
【0038】
実施例1において、第1負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、11μmであり、第2負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、17μmであり、第1負極活物質層は、厚さが40μmであり、面密度が0.675g/dm2であり、第2負極活物質層は、厚さが42μmであり、面密度が0.688g/dm2である。
【0039】
該負極板の製造方法は、
(1)負極活物質(具体的には黒鉛)、導電剤Supper P、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)及び水を100:2:1.6:1.8:128の重量比に応じて2つのスラリーに調製し、2つのスラリーにおける固形分は、いずれも45.2%であり、スラリー粘度は、いずれも2300cpsであり、第1負極活物質スラリーにおける黒鉛のD50粒径は、11μmであり、第2負極活物質スラリーにおける黒鉛のD50粒径は、17μmであり、
(2)二層塗布ダイヘッドを用いて上記負極活物質スラリー及び第2負極活物質スラリーを厚さが6μmの銅箔に順に均一に塗布し、120℃のオーブンで15minベーキングし、冷却した後、2MPaで圧延して、負極板を得て、該負極板は、面密度が1.363g/dm2であり、プレス密度が1.60g/cm3であり、2つの活物質層の厚さの和が82μmである。
【0040】
本願において、FIB-SEM(集束粒子線-走査電子顕微鏡)を用いて実施例1における各活物質層の屈曲度を測定し、測定方法について、測定サンプルをFIBスライス加工し、50nm厚さごとに1回スライス加工し、次にSEM走査を行う。複数回繰り返し、全ての走査結果を三次元再構成して、極板の3D画像を得て、さらに専門的なソフトウェアで分析して屈曲度を得る。
【実施例2】
【0041】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、第1負極活物質層の屈曲度は、1.88であり、第2活物質層の屈曲度は、4.06であり、第2活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差は、2.18である。
【0042】
実施例2において、第1負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、8μmであり、第2負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、15μmである。
【実施例3】
【0043】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、第1負極活物質層の屈曲度は、1.75であり、第2活物質層の屈曲度は、4.92であり、第2活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差は、3.17である。
【0044】
実施例3において、第1負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、8μmであり、第2負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、20μmである。
【実施例4】
【0045】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、第1負極活物質層の屈曲度は、2.33であり、第2活物質層の屈曲度は、3.02であり、第2活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差は、0.69である。
【0046】
実施例4において、第1負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、9μmであり、第2負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、11μmである。
【実施例5】
【0047】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、第1負極活物質層の屈曲度は、1.81であり、第2活物質層の屈曲度は、4.62であり、第2活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差は、2.81である。
【0048】
実施例5において、第1負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、8μmであり、第2負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、17μmである。
【0049】
本願の実施例の有益な効果を強調するために、特に以下の比較例1~4を提供する。
(比較例1)
【0050】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、第1負極活物質層の屈曲度は、2.97であり、第2活物質層の屈曲度は、3.11であり、第2活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差は、0.14である。
【0051】
比較例1において、第1負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、14μmであり、第2負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、15μmである。
(比較例2)
【0052】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、第1負極活物質層の屈曲度は、3.90であり、第2活物質層の屈曲度は、2.01であり、第2活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差は、-1.89である。
【0053】
比較例2において、第1負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、14μmであり、第2負極活物質層における負極活物質(具体的には黒鉛)のD50粒径は、9μmである。
(比較例3)
【0054】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に順に設置された第1負極活物質層及び第2負極活物質層とを含み、第1負極活物質層の屈曲度は、1.18であり、第2活物質層の屈曲度は、5.22であり、第2活物質層の屈曲度と第1負極活物質層の屈曲度との差は、4.04である。
(比較例4)
【0055】
負極板は、厚さが6μmの銅箔と、銅箔に設置された厚さが82μmの負極活物質層を含み、活物質層における黒鉛のD50粒径は、15μmであり、該負極活物質層の屈曲度は、3.06であり、表層の屈曲度は僅かに小さい。
【0056】
本願の実施例の技術的解決手段による有益な効果を強力にサポートするために、上記各例における負極板をいずれも以下の方法で対応する電池に製造し、グローブボックスにおいて、正極板、セパレータ及び負極板を順に積層して、ベアセルを得て、次にセルをケースに入れて、ベーキングして乾燥させた後、三元系電池専用の電解液を注入し、溶接して密封し、高温エージング、化成、老化などの工程を経て電池を得る。
【0057】
上記各例における負極板で製造された各電池に対して、それぞれ以下の直流抵抗(DCIR)測定及びサイクル性能測定を行い、DCIR測定の結果を表1にまとめ、サイクル性能測定の結果を表1にまとめ、一部の例のサイクル曲線を
図2に示す。
【0058】
DCIR測定方法:1)常温(25℃)で電池をカットオフ電圧が2.5Vになるまで0.2Cで放電し、30min放置し、常温で4.2Vになるまで0.2Cで充電し、30min放置し、常温で2.5Vになるまで0.2Cで放電することにより、電池の初期容量C0を計算し、かつ0.2Cで充電(50%C0)することにより電池の充電状態(state of charge、SOC)を50%SOCに調整し、2)-10℃で12h放置し、1Cレートで30s充電した後のDCIRを測定する。
【0059】
サイクル性能測定方法:1)充電:25℃で、1Cの定電流で4.1Vになるまで充電し、さらに0.5Cで4.15Vになるまで充電し、さらに0.2Cで4.2Vになるまで充電し、30min放置し、2)放電:1Cの定電流で2.5Vになるまで放電し、30min放置し、3)終了条件:このように500回サイクルする。
【表1】
【0060】
表1から分かるように、本願の実施例の負極板で製造された電池のDCIR値は、各比較例のものよりはるかに低く、これは本願の実施例の電池が優れた電力性能を有することを説明する。
【0061】
図2及び表1から分かるように、実施例1及び実施例2の負極板で製造された電池の容量保持率が最も高く、実施例3~5の負極板で製造された電池の容量保持率が実施例1及び実施例2のものより低いが、いずれも各比較例の負極板で製造された電池の容量保持率よりはるかに高い。その理由としては、本願の各実施例の負極における2つの活物質層の屈曲度がいずれも0.5≦t
2-t
1≦3.2を満たすため、高レートの条件下で、上の第2負極活物質層は、より多くの空隙構造を提供することができ、電解液に浸潤され、液相リチウムイオンの液相輸送を促進することに役立つとともに、第1活物質層は、より多くの緊密な構造を有し、サイクル過程におけるリチウムイオンの固相輸送及び電子輸送を保持することに役立つことであり、t
2-t
1>3である場合(比較例3)、電池の容量保持率が低下し、その理由としては、リチウムイオンが主に第2負極活物質層で反応し、第1負極活物質層におけるリチウムイオンの固相導電性が低く、インピーダンスが高いため、電池の全容量の損失を招くことであり、t
2-t
1<0.5である場合(比較例1~2)、電池のサイクル曲線に短期間の急落の現象が発生し、その理由としては、リチウムイオンの液相拡散が困難であり、リチウム析出現象が発生することである。
【0062】
上記結果によると、負極板が2層の負極活物質層を含み、かつ集電体から離れる側の第2負極活物質層の屈曲度と集電体に近い第1負極活物質層の屈曲度との間の差が0.5~3.2である場合、上記負極板で製造された電池のDCIR値が低く、高レートで依然として安定したサイクル性能を有し、耐用年数がより長いことを保証することができる。
【0063】
本願の実施例を示して説明したが、当業者であれば理解できるように、本願の原理及び趣旨から逸脱しない場合、これらの実施例に対して、様々な変更、修正、置換及び変形を行うことができ、本願の範囲が特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。