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特許7595153含フッ素ピラゾール化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】含フッ素ピラゾール化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/22 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
C07D231/22 A
C07D231/22 CSP
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023517214
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016469
(87)【国際公開番号】W WO2022230599
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2021075090
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】青津 理恵
(72)【発明者】
【氏名】清野 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-230029(JP,A)
【文献】特開2020-079269(JP,A)
【文献】特開2015-027978(JP,A)
【文献】特表2016-539945(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116296(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/013131(WO,A1)
【文献】BARGAMOVA, M. D. et al.,5-Fluoro-substituted pyrazoles,Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya,1990年,11,2583-2589
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 231/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、含フッ素ピラゾール化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
【請求項2】
前記環Zを構成するπ電子数が6個、10個、14個、18個または22個である、請求項1に記載の含フッ素ピラゾール化合物。
【請求項3】
前記置換基を有するフェニル基が、ハロゲン原子、アルキル基、ニトロ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、またはスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有する、請求項1または2に記載の含フッ素ピラゾール化合物。
【請求項4】
前記置換基を有するフェニル基が、アルキル基、ニトロ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、またはスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有する、請求項1または2に記載の含フッ素ピラゾール化合物。
【請求項5】
下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
【請求項6】
下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xはハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、または-NAを表し、
、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、
環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
【請求項7】
前記含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われる、請求項またはに記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【請求項8】
前記環Zを構成するπ電子数が6個、10個、14個、18個または22個である、請求項からまでの何れか1項に記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【請求項9】
前記置換基を有するフェニル基が、ハロゲン原子、アルキル基、ニトロ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、またはスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有する、請求項5から8までの何れか1項に記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【請求項10】
前記置換基を有するフェニル基が、アルキル基、ニトロ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、またはスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有する、請求項5から8までの何れか1項に記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ピラゾール化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、含フッ素ピラゾール化合物は種々の生物活性を有することが報告されている。なかでも、ピラゾール環の1位に置換基として環原子であるヘテロ原子を有さない環構造を有し、ピラゾール環の3位および5位に置換基を有する化合物について、医薬・農薬分野においての使用が有望視されている。
【0003】
より具体的には、特許文献1には、1-フェニル-ピラゾール構造を有する化合物がイネいもち病やコムギさび病等に殺菌活性を有することが報告されている。特許文献2には、1-フェニル-ピラゾール構造を有する化合物がシロザやイチビ等に対し除草活性を有することが報告されている。特許文献3には、1-フェニル-ピラゾール構造を有する化合物がヘプシジン抑制に関わるマトリプターゼ2の阻害活性を有することが報告されている。
【0004】
従って、生物活性等の有用な活性の向上を期待して、ピラゾール環の1位に環原子としてヘテロ原子を有さない環構造からなる置換基を有し、ピラゾール環の3位および5位に置換基を有し、さらにピラゾール環の4位にトリフルオロメチル基を有する化合物の開発に興味が持たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/051161号
【文献】国際公開第2015/089003号
【文献】国際公開第2020/072580号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピラゾール環の1位に環原子としてヘテロ原子を有さない環構造からなる置換基を有し、3位および5位に置換基を有する化合物について、さらに4位にトリフルオロメチル基を導入するためには、基質の反応性や反応選択性を厳密に制御する必要があり、従来からこのような化合物の製造例は報告されていなかった。このため、1位に環原子としてヘテロ原子を有さない環構造からなる置換基を有し、3位および5位に置換基を有し、さらに4位にトリフルオロメチル基を有する含フッ素ピラゾール化合物に関する更なる開発が待望されていた。
【0007】
そこで、本発明者らは、特定の原料を反応させることにより、ピラゾール環の1位に環原子としてヘテロ原子を有さない特定の環構造からなる置換基、4位にトリフルオロメチル基、3位および5位に特定の置換基を導入できることを発見し、本発明を完成させるに至ったものである。すなわち、本発明は、従来から知られていなかった、1位に環原子としてヘテロ原子を有さない特定の環構造からなる置換基、4位にトリフルオロメチル基、3位および5位に特定の置換基を有する新規な含フッ素ピラゾール化合物、および、該含フッ素ピラゾール化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)で表される、含フッ素ピラゾール化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
[2]前記環Zを構成するπ電子数が6個、10個、14個、18個または22個である、上記[1]に記載の含フッ素ピラゾール化合物。
[3]下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
[4]下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xはハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、または-NAを表し、
、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、
環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
[5]前記含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われる、上記[3]または[4]に記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
[6]前記環Zを構成するπ電子数が6個、10個、14個、18個または22個である、上記[3]から[5]までの何れか1つに記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
1位に環原子としてヘテロ原子を有さない特定の環構造からなる置換基、4位にトリフルオロメチル基、3位および5位に特定の置換基を有する新規な含フッ素ピラゾール化合物、および、該含フッ素ピラゾール化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(含フッ素ピラゾール化合物)
本発明の含フッ素ピラゾール化合物は下記一般式(1)で表される。
【化4】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
【0011】
本発明の含フッ素ピラゾール化合物は、ピラゾール環の1位上に置換基を有するフェニル基、または、環構造を構成する環原子としてN(窒素)、S(硫黄)、O(酸素)などのヘテロ原子を含まない縮合環(例えば、多環芳香族炭化水素)Zの基、ピラゾール環の3位、4位、および5位上に特定の置換基(-OR、-CF、-F)を有するため、構造拡張性の観点から優れた効果を有することができる。特に、所望の生物活性(例えば、ホルモンや酵素の阻害活性、殺菌活性、殺虫活性、除草活性)を期待できる。ピラゾール環の1位上に位置する環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環(例えば、多環芳香族炭化水素)Zは、置換基を有していても、有していなくてもよい。環Zは、環の大きさ、環原子数、環Zを構成するπ電子数、置換基の数・種類・有無等により、含フッ素ピラゾール化合物に所望の特性を付与することができる。また、ピラゾール環の3位および5位上の置換基は異なる基(-ORと-F)であるため、これらの基が脱離または反応して非対称な構造へ容易に誘導体化を行うことができ、中間体としての使用も期待することができる。より具体的には、酸性条件下で含フッ素ピラゾール化合物を反応させることにより-ORを修飾して誘導体を得ることができる。また、塩基性条件下で含フッ素ピラゾール化合物を反応させることにより-Fを修飾して誘導体を得ることができる。一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物は例えば、有機半導体、液晶などの電子材料の分野において有用である。
【0012】
Rは炭素数1~12の、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基などを挙げることができる。鎖状炭化水素基は合計の炭素数が1~12であれば特に限定されず、分岐した鎖状炭化水素基であっても、分岐していない鎖状炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は合計の炭素数が5~12であれば特に限定されず、置換基を有する芳香族炭化水素基であっても、置換基を有さない芳香族炭化水素基であってもよい。また、芳香族炭化水素基は、縮合多環構造を有していてもよい。脂環式炭化水素基は合計の炭素数が3~12であれば特に限定されず、置換基を有する脂環式炭化水素基であっても、置換基を有さない脂環式炭化水素基であってもよい。また、脂環式炭化水素基は、橋かけ環構造を有していてもよい。
【0013】
鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。
【0014】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0015】
脂環式炭化水素基としては、飽和又は不飽和の環状の炭化水素基が挙げられ、環状の炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0016】
好ましくはRは、炭素数1~10のアルキル基であるのがよい。Rが炭素数1~10のアルキル基であることにより、含フッ素ピラゾール化合物の原料である一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体、および一般式(4)のフルオロイソブタン誘導体を容易に調製することができる。
【0017】
環Zは、単環構造の置換基を有するフェニル基であっても、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環構造からなる基であってもよい。
【0018】
典型的には環Zを構成するπ電子数は4n+2(nは正の整数である)であるが、π電子数は6個、10個、14個、18個または22個であることが好ましい。環Zを構成するπ電子数が6個または10個であることがより好ましい。環Zが上記のような構成を有することにより、含フッ素ピラゾール化合物の極性や平面性が制御されることで、動態が改善され、より有効な生物活性を付与することができる。
【0019】
より具体的には、環Zから構成される基として、置換基を有するフェニル基、ナフチル基、クロロナフチル基、ブロモナフチル基、メトキシナフチル基、ジヒドロアセナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フェナレニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ベンズ[a]アントラセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ペリレニル基、ペンタセニル基、ベンゾ[a]ピレニル基、ベンゾ[e]ピレニル基、ベンゾ[a]テトラセニル基、コランニュレニル基、ペンタセニル基、ピセニル基、ジベンゾ[a,j]アントラセニル基等を挙げることができる。これらの基の中でも、環Zから構成される基は、置換基を有するフェニル基、ナフチル基、置換基を有するナフチル基、ジヒドロアセナフチル基、フェナントリル基であることが好ましい。また、環Zが環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環である場合、環Zから構成される基中の環原子にはさらに置換基が結合していても、置換基が結合していなくてもよい。環Zが環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環である場合、環Zの置換基はヘテロ原子を有していても有していなくてもよく、置換基としては、Cl、Brなどのハロゲン原子、アルキル基、OMeなどのアルコキシ基、CFなどのハロゲン化アルキル基などを挙げることができる。また、環Zが置換基を有するフェニル基の場合、該置換基の数は1~5個であれば特に限定されず、該置換基としてはF、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、メチル基などのアルキル基、CFなどのハロゲン化アルキル基、ニトロ基、OMeなどのアルコキシ基、OCFなどのハロゲン化アルコキシ基、スルホニル基などを挙げることができる。
【0020】
(含フッ素ピラゾール化合物の製造方法)
一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法は、
(a)下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程
を有する。
【化5】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
好ましくは、上記(a)の含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われるのが好ましい。すなわち、上記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤はフッ素イオンを捕捉する機能を有する物質であれば特に限定されず、フッ化物イオン捕捉剤としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、テトラメチルアンモニウム、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を挙げることができる。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出させることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。
【0021】
上記一般式(1)および(3)において、環Zを構成するπ電子数が6個、10個、14個、18個または22個であることが好ましい。また、上記一般式(1)および(2)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。
【0022】
一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との、上記(a)の反応は、下記反応式(A)として表される。
【化6】
【0023】
上記反応式(A)において、一般式(3)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分が、カチオン化され(-NH )および(=NH )となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0024】
一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法では例えば、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で上記(a)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。なお、上記(a)の反応では、フルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピラゾール構造が形成される。該ピラゾール構造の1位には、一般式(3)の化合物の環構造Zに由来する基が位置する。また、該ピラゾール構造の3位、4位および5位にはそれぞれ、フルオロイソブチレン誘導体に由来する-OR、CF、およびFが位置する。
【0025】
ハロゲン化水素捕捉剤は、上記(A)の反応式において一般式(3)の化合物中のアミジノ基に由来する水素原子と、一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体に由来するフッ素原子とから形成されるフッ化水素(HF)を捕捉する機能を有する物質である。ハロゲン化水素捕捉剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムや、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、メチルトリアザビシクロデセン、ジアザビシクロオクタン、ホスファゼン塩基といった有機窒素誘導体を用いることができる。
【0026】
上記(a)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記(a)の反応時の反応時間は、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。
【0027】
上記(a)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(a)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0028】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法は、
(b)下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程
を有する。
【化7】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xはハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、または-NAを表し、
、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、
環Zは置換基を有するフェニル基、または、環原子としてヘテロ原子を含まない縮合環を表す。)
好ましくは、上記(b)の含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われるのが好ましい。上記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤はフッ素イオンを捕捉する機能を有する物質であれば特に限定されず、フッ化物イオン捕捉剤としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、テトラメチルアンモニウム、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を挙げることができる。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出させることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。
【0029】
上記一般式(1)および(3)において、環Zを構成するπ電子数が6個、10個、14個、18個または22個であることが好ましい。また、上記一般式(1)および(4)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。
【0030】
一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との、上記(b)の反応は、下記反応式(B)として表される。
【化8】
【0031】
上記反応式(B)において、一般式(3)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分が、カチオン化され(-NH )および(=NH )となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0032】
Xであるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iを挙げることができる。Xである-OA、-SO(mは0~3の整数である)に含まれるAは水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Xである-NAに含まれるA、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。A、Aが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0033】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法では例えば、上記(B)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。なお、上記(b)の反応では、フルオロイソブタン誘導体(4)と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピラゾール構造が形成される。該ピラゾール構造の1位には、一般式(3)の化合物の環構造Zに由来する基が位置する。また、該ピラゾール構造の3位、4位および5位にはそれぞれ、フルオロイソブタン誘導体に由来する-OR、CF、およびFが位置する。
【0034】
上記(b)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記(b)の反応時の反応時間は、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。上記(b)の反応では、上記(a)と同様のハロゲン化水素捕捉剤を使用できる。
【0035】
上記(b)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(b)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0037】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(9-フェナントリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
THF(テトラヒドロフラン)10mlに、9-フェナントリルヒドラジン塩酸塩0.3g(1.0mmol)および1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.3g(1.4mmol)を溶解させ、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(以下、場合により「DBU」と記載する)を0.6g(3.9mmol)滴下した。室温で約64.3時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(C)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(9-フェナントリル)-4-トリフルオロメチルピラゾール0.3g(0.9mmol)を単離した。5-フルオロ-3-メトキシ-1-(9-フェナントリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの単離収率は2.5%であった。
【0039】
【化9】
【0040】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):360.4([M]
H-NMR(300MHz、CDCl) δppm:8.77(d,8.3Hz,1H),8.74(d,J=8.3Hz,1H),7.95(dd,J=7.3,0.6Hz,1H),7.86(s,1H),7.74-7.80(m,2H),7.66-7.70(m,3H),4.02(s,3H)
【0041】
(実施例2)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-[2,6-ジクロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
2,6-ジクロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニルヒドラジン0.5g(2.1mmol)をアセトニトリル12mlに溶解し、テトラフェニルホウ酸ナトリウム2.1g(6.1mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.5g(2.4mmol)とDBU0.9g(5.9mmol)を加え室温で88時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(D)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-[2,6-ジクロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-トリフルオロメチルピラゾール0.3g(0.9mmol)の粗生成物を痕跡量得た。
【0042】
【化10】
【0043】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):396.7([M]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-59.5(d,3F)、-108.4(dd,1F)
【0044】
(実施例3)
実施例1の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、5-フルオロ-3-メトキシ-1-(9-フェナントリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
THF(テトラヒドロフラン)10mlに、9-フェナントリルヒドラジン塩酸塩0.3g(1.0mmol)および1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン0.3g(1.4mmol)を溶解させ、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを0.6g(3.9mmol)滴下した。室温で約64.3時間攪拌後、得られた化合物の分析結果は、実施例1の生成物と同様であった。
【0045】
(実施例4)
実施例2の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、5-フルオロ-3-メトキシ-1-[2,6-ジクロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル])-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
2,6-ジクロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニルヒドラジン0.5g(2.1mmol)をアセトニトリル12mlに溶解し、テトラフェニルホウ酸ナトリウム2.1g(6.1mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン0.6g(2.4mmol)とDBU0.9g(5.9mmol)を加え室温で88時間攪拌後、得られた化合物の分析結果は、実施例2の生成物と同様であった。
【0046】
(実施例5)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(1-ナフチル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
1-ナフチルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.6mmol)をテトラヒドロフラン26mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.6g(2.8mmol)とDBU1.6g(10.5mmol)を加え室温で64.3時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(E)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(1-ナフチル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.005gを得た。
【0047】
【化11】
【0048】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):311.6([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.07(d,J=10.1Hz,3F),-120.47(q,J=10.1Hz,1F)
【0049】
(実施例6)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-ブロモ-1-ナフチル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
(4-ブロモ-1-ナフチル)ヒドラジン塩酸塩0.5g(1.8mmol)をテトラヒドロフラン18mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.4g(1.9mmol)とDBU1.1g(7.2mmol)を加え室温で87.5時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(F)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-ブロモ-1-ナフチル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.01gを得た。
【0050】
【化12】
【0051】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):389.3([M]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.15(d,J=10.1Hz,3F),-120.16(q,J=10.1Hz,1F)
【0052】
(実施例7)
1-(4-クロロ-1-ナフチル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
(4-クロロ-1-ナフチル)ヒドラジン塩酸塩0.5g(2.2mmol)をテトラヒドロフラン22mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.5g(2.4mmol)とDBU1.3g(8.5mmol)を加え室温で88.9時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(G)で表される1-(4-クロロ-1-ナフチル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.01gを得た。
【0053】
【化13】
【0054】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):345.3([M]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.15(d,J=10.1Hz,3F),-120.20(q,J=10.1Hz,1F)
【0055】
(実施例8)
1-(1,2-ジヒドロアセナフチレン-5-イル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
(1,2-ジヒドロアセナフチレン-5-イル)ヒドラジン塩酸塩0.5g(2.2mmol)をテトラヒドロフラン23mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.6g(2.8mmol)とDBU1.4g(9.2mmol)を加え室温で70.3時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(H)で表される1-(1,2-ジヒドロアセナフチレン-5-イル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.03gを得た。
【0056】
【化14】
【0057】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):337.6([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.00(d,J=10.1Hz,3F),-120.82(q,J=10.1Hz,1F)
【0058】
(実施例9)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ナフチル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
2-ナフチルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.6mmol)をテトラヒドロフラン26mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.6g(2.8mmol)とDBU1.6g(10.5mmol)を加え室温で66.4時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(I)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ナフチル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.01gを得た。
【0059】
【化15】
【0060】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):311.5([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.25(d,J=10.1Hz,3F),-120.43(q,J=10.1Hz,1F)
【0061】
(実施例10)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(6-メトキシナフタレン-2-イル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
(6-メトキシナフタレン-2-イル)ヒドラジン塩酸塩0.5g(1.9mmol)をテトラヒドロフラン19mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.5g(2.4mmol)とDBU1.2g(7.9mmol)を加え室温で71.3時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(J)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(6-メトキシナフタレン-2-イル)-4-トリフルオロメチルピラゾール0.01g(0.02mmol)を得た。5-フルオロ-3-メトキシ-1-(6-メトキシナフタレン-2-イル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの収率は1.2%であった。
【0062】
【化16】
【0063】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):341.4([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.17(d,J=10.1Hz,3F),-120.92(q,J=10.1Hz,1F)
【0064】
(実施例11)
1-(6-ブロモナフタレン-2-イル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
(6-ブロモナフタレン-2-イル)ヒドラジン塩酸塩0.5g(1.8mmol)をテトラヒドロフラン18mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.4g(1.9mmol)とDBU1.1g(7.2mmol)を加え室温で64.4時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(K)で表される1-(6-ブロモナフタレン-2-イル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.01gを得た。
【0065】
【化17】
【0066】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):389.4([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.32(d,J=10.1Hz,3F),-120.13(q,J=10.1Hz,1F)
【0067】
(実施例12)
5-フルオロ-1-(4-フルオロフェニル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
4-フルオロフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(3.1mmol)をテトラヒドロフラン19.2mlに溶解し、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド3.0g(9.2mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.8g(3.8mmol)、ホスファゼン塩基P-t-Bu-トリス(テトラメチレン)2.9g(9.3mmol)を加え室温で69.5時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(L)で表される5-フルオロ-1-(4-フルオロフェニル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物を得た。
【0068】
【化18】
【0069】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):279.5([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.31(d,J=10.1Hz,3F),-114.55--114.47(m,1H),-121.14(q,J=10.1Hz,1F)
【0070】
(実施例13)
1-(4-クロロフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
p-クロロフェニルヒドラジン塩酸塩0.8g(2.8mmol)をアセトニトリル28mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.7g(3.3mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.9g(14.6mmol)を加え室温で72.4時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(M)で表される1-(4-クロロフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.02gを得た。
【0071】
【化19】
【0072】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):295.4([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.40(d,J=10.1Hz,3F),-120.32(q,J=10.1Hz,1F)
【0073】
(実施例14)
1-(2,4-ジクロロフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
2,4-ジクロロフェニルヒドラジン塩酸塩0.8g(2.4mmol)をアセトニトリル23mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.6g(2.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.6g(12.3mmol)を加え室温で63.3時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(N)で表される1-(2,4-ジクロロフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.02gを得た。
【0074】
【化20】
【0075】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):329.2([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.41(d,J=10.1Hz,3F),-118.40(q,J=10.1Hz,1F)
【0076】
(実施例15)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-メトキシフェニル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
4-メトキシフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.9mmol)をアセトニトリル29mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.7g(3.3mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン2.0g(15.2mmol)を加え室温で89.5時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(O)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-メトキシフェニル)-4-トリフルオロメチルピラゾール0.1g(0.3mmol)を得た。5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-メトキシフェニル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの収率は11.9%であった。
【0077】
【化21】
【0078】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):391.2([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.17(d,J=10.1Hz,3F),-121.85(q,J=10.1Hz,1F)
【0079】
(実施例16)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-ニトロフェニル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
4-ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.7mmol)をアセトニトリル26mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.6g(2.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.8g(14.1mmol)を加え室温で65.8時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(P)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-ニトロフェニル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物を得た。
【0080】
【化22】
【0081】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.72(d,J=11.6Hz,3F),-117.87(q,J=10.1Hz,1F)
【0082】
(実施例17)
1-(4-ブロモフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
4-ブロモフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.2mmol)をアセトニトリル22mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.5g(2.4mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.5g(12.0mmol)を加え室温で62.8時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(Q)で表される1-(4-ブロモフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.05gを得た。
【0083】
【化23】
【0084】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):338.9([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.42(d,J=10.1Hz,3F),-120.17(q,J=10.1Hz,1F)
【0085】
(実施例18)
1-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
4-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.2mmol)をアセトニトリル22mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.6g(2.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.5g(11.3mmol)を加え室温で43.2時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(R)で表される1-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.05gを得た。
【0086】
【化24】
【0087】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):345.0([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.42(d,J=10.1Hz,3F),-59.21(s,3H),-120.47(q,J=10.1Hz,1F)
【0088】
(実施例19)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-メチルフェニル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
p-トリルヒドラジン塩酸塩0.5g(3.2mmol)をアセトニトリル32mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.8g(3.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン2.1g(16.4mmol)を加え室温で71.6時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(S)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-メチルフェニル)-4-トリフルオロメチルピラゾール0.01g(0.04mmol)を得た。5-フルオロ-3-メトキシ-1-(4-メチルフェニル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの収率は1.3%であった。
【0089】
【化25】
【0090】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):274.9([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.21(d,J=10.1Hz,3F),-120.20(q,J=10.1Hz,1F)
【0091】
(実施例20)
5-フルオロ-1-(2、4-ジフルオロフェニル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
2,4-ジフルオロフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.8mmol)をアセトニトリル28mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.7g(3.3mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.8g(14.1mmol)を加え室温で67.9時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(T)で表される5-フルオロ-1-(2、4-ジフルオロフェニル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.03gを得た。
【0092】
【化26】
【0093】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):296.8([M]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.46 (d,J=10.1Hz,3F),-107.49--107.41(m, 1F),-118.04--117.92(m,1F),-119.55(q,J=10.1Hz,1F)
【0094】
(実施例21)
5-フルオロ-1-(ペンタフルオロフェニル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
ペンタフルオロフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.6mmol)をアセトニトリル25mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.6g(2.7mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.8g(13.8mmol)を加え室温で74.3時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(U)で表される5-フルオロ-1-(ペンタフルオロフェニル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.07gを得た。
【0095】
【化27】
【0096】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):350.1([M]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.79 (d,J=10.1Hz,3F),-119.17(tq,J=5.8,10.1Hz,1F),-145.58--145.47(m,2F),-150.52(ddd,J=2.9,2.9,21.7Hz,1F),-160.90--160.75(m,2F)
【0097】
(実施例22)
5-フルオロ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
4-(トリフルオロメチル)フェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.9mmol)をアセトニトリル28mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.7g(3.3mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン2.1g(15.9mmol)を加え室温で64.5時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(V)で表される5-フルオロ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.07gを得た。
【0098】
【化28】
【0099】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):328.8([M]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.53(d,J=10.1Hz,3F),-63.74(s,3H),-119.30(q,J=10.1Hz,1F)
【0100】
(実施例23)
1-(2、4、6-トリクロロフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
2、4、6-トリクロロフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.9mmol)をアセトニトリル24mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン約0.6g(2.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.6g(12.3mmol)を加え室温で17日攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(W)で表される1-(2、4、6-トリクロロフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物を得た。
【0101】
【化29】
【0102】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):364.3([M+H]
【0103】
(実施例24)
1-(3、4-ジクロロフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
3、4-ジクロロフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.4mmol)をアセトニトリル23mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン約0.6g(2.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.6g(12.3mmol)を加え室温で72時間攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(X)で表される1-(3、4-ジクロロフェニル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.04gを得た。
【0104】
【化30】
【0105】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):330.2([M+H]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.56 (d,J=10.1Hz,3F),-119.47(q,J=10.1Hz,1F)
【0106】
(実施例25)
5-フルオロ-1-(4-ヨードフェニル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
4-ヨードフェニルヒドラジン塩酸塩0.5g(2.2mmol)をアセトニトリル21mlに溶解し、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.5g(2.4mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.5g(11.2mmol)を加え室温で17日攪拌後、反応液をカラム精製し、下記式(Y)で表される5-フルオロ-1-(4-ヨードフェニル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの粗精製物0.02gを得た。
【0107】
【化31】
【0108】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):386.2([M]
19F-NMR(400MHz、CDCl) δppm:-58.43 (d,J=10.1Hz,3F),-120.01(q,J=10.1Hz,1F)