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特許7595162インデン誘導体プロドラッグの酸付加塩およびその製造方法{ACID ADDITION SALT OF INDENE DERIVATIVE PRODRUG AND METHOD FOR PREPARING SAME}
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】インデン誘導体プロドラッグの酸付加塩およびその製造方法{ACID ADDITION SALT OF INDENE DERIVATIVE PRODRUG AND METHOD FOR PREPARING SAME}
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/22 20060101AFI20241128BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07D211/22 CSP
A61K31/445
A61P25/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023526620
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2021015236
(87)【国際公開番号】W WO2022092813
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0144721
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェウン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェミン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ドンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソヒョン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ソンクォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,シンジョン
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-079151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0250278(US,A1)
【文献】国際公開第2019/228477(WO,A1)
【文献】特開2008-280248(JP,A)
【文献】国際公開第2020/204662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式3で表される化合物の酸付加塩。
【化15】

前記式中、Rは、C12-16アルキルであり、
前記酸(Acid)は、塩酸である。
【請求項2】
次の式4で表される2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート塩酸塩。
【化16】
【請求項3】
次の式3の化合物を含む徐放性医薬組成物。
【化17】

前記式中、Rは、C12-16アルキルであり、
前記酸(Acid)は、塩酸である。
【請求項4】
次の式4で表される2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート塩酸塩を含む徐放性医薬組成物。
【化15】
【請求項5】
認知症の予防または治療のためのものであることを特徴とする、請求項3または4に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項6】
2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテートおよび酸(Acid)を反応させる工程を含み、前記酸(Acid)は塩酸である、2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート酸付加塩の製造方法。
【請求項7】
(1)2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテートに溶媒を添加し、溶解させて溶液を製造する工程;
(2)前記(1)で製造された溶液に酸(Acid)を添加し、塩を形成する工程;および
(3)前記(2)で製造された塩を攪拌し、固体を得る工程;
を含み、前記酸(Acid)は塩酸である、請求項6に記載の2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート酸付加塩の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、イソプロピルエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロメタン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドネペジルプロドラッグの酸付加塩およびその製造方法に関するものである。具体的には、ドネペジルエーテルパルミテート(Donepezil ether palmitate、DEP)の酸付加塩およびその製造方法に関するものであって、従来の遊離塩基に比べて保存安定性に優れた2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート塩酸塩、これを含む医薬組成物、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
認知症は、脳に生じる様々な疾患によって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を意味する症候群であって、主な症状として言語力、理解力、判断力の低下および性格の変化などがある。アルツハイマー病は老人性認知症を引き起こす最も一般的な退行性脳疾患であり、根本的な治療法はまだ完全に開発されていないが、この疾患の症状を緩和し、進行を遅らせることができる様々な薬物が臨床的に使用されている。
【0003】
認知症患者の脳には、神経伝達物質であるアセチルコリン(Acetylcholine、ACh)という物質が健常人に比べて少ないことが判明しており、このことから、脳内のアセチルコリンの量を増加させる、またはコリン性神経細胞の活性を増加させる方向に研究が進められている。
【0004】
代表的な薬物としては、アセチルコリン分解酵素阻害剤がある。アセチルコリン分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(Acetylcholinesterase、AChE)は、アセチルコリンをコリンとアセテートで加水分解する酵素であり、この分解酵素を阻害するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤がアルツハイマー型認知症の治療剤として多く用いられている。その代表的なアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤としては、ドネペジル(Donepezil、商品名:アリセプト)があり、経口投与製剤が最も一般的である。しかし、ドネペジル錠を経口投与すると、一部の患者において、下痢、嘔吐、食欲不振、筋痙攣(muscle convulsion)などの消化器系副作用を引き起こすことが知られている。現在市販中の塩酸ドネペジル経口製剤は、就寝時5mgを1日1回投与することを始め、4~6週間使用した後、10mgまで増量して1日1回投与するのが一般的である。したがって、患者は、毎日経口投与する必要があるため、服薬コンプライアンスが非常に低下する。これを改善するために、口腔内で崩壊する錠剤が市販されているが、これもまた長期間にわたって有効成分を持続的に投与しなければならないという問題点がある。
【0005】
このような問題点を克服するために、薬物の濃度を長時間持続的に維持させ、薬物投与の頻度を減らし、最終的には患者の服用の利便性及びコンプライアンスを改善するために、次の式1に示すドネペジルエーテルパルミテートを開発した。
【化1】
【0006】
しかし、前記式1におけるドネペジルエーテルパルミテートの原料および剤形を研究する時、公知の類縁物質以外にも未知の類縁物質が大幅に増加することが確認された。未知の類縁物質を分離した後、構造分析を行ったところ、次の式2で表される2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-1-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート(PT類縁物質)化合物であることを知ることができた。
【化2】
【0007】
これに関連し、次の反応式1に示すように、インデン(indene)構造の骨格において、水素移動(1,3-proton transfer)による分子内転位(rearrangement)が起こり得ることが報告されている(Acta Chemica Scandinavia,1998,52,541-548)。
【化3】
【0008】
このような分子内転位は、インデン(indene)骨格およびアミン(amine)塩基、および熱(heat)という3つの要素の複合的作用によって起こる。これは、インデン骨格を含むドネペジルエーテルパルミテートにも適用し得る。ドネペジルエーテルパルミテートは、インデン骨格とアミン官能基が構造内に含まれているので、熱が加えられると次の反応式2に示すように、式2のPT類縁物質が生成し得る。
【化4】
【0009】
本発明者は、前述のようにPT類縁物質が発生する原因が、インデン骨格、アミン、および熱によるものであることを確認し、これらの要素を排除することによってPT類縁物質が発生することを抑制し、安定性が増加したドネペジルプロドラッグの開発を試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】日本公開特許公報特開(平)11-315016号
【文献】韓国登録特許第1980534号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Acta Chemica Scandinavia, 1998,52,541-548
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記PT類縁物質の生成を抑制するためには、インデン骨格、アミン、および熱の3つの要素のうち、1つ以上の除去が必要である。しかし、基本骨格であるインデン構造と熱要素を除去することが難しいため、アミン官能基を遮断して、PT類縁物質の発生を抑制しようとした。
【0013】
そこで、本発明は、ドネペジルエーテルパルミテートに酸付加塩を導入し、アミンの塩基作用を遮断することによって、安定性が改善されたドネペジルエーテルパルミテートの酸付加塩を提供することを目的とする。
【0014】
また、ドネペジルの初期放出を減少させ、薬物毒性などの副作用に対するリスクを減少させ、体内でドネペジルが長期間均一に放出され、認知症患者の薬物治療効果を向上させることができるドネペジルエーテルパルミテート酸付加塩およびこれを含む徐放性医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記目的を達成するために、次の式3で表される化合物の酸付加塩を提供する。
【化5】
【0016】
前記式中、Rは、C12-16アルキルであり、
前記酸(Acid)は、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、クエン酸、酢酸、ギ酸、フマル酸、グルカル酸、グルコン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、安息香酸、カンポスルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、オレイン酸、オルト酸、ベンゼンスルホン酸、酒石酸、バニリン酸、ナパジシル酸、トシル酸、メシル酸、コハク酸、エタンスルホン酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸、ニコチン酸、または、シュウ酸であってもよく、これらに限定されない。
【0017】
本発明は、前記式3の化合物を含む認知症の予防または治療用徐放性医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明は、次の式4のドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)化合物を提供する。
【化6】
【0019】
また、本発明は、前記式4のドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)化合物を含む認知症の予防または治療用徐放性医薬組成物を提供する。
【0020】
前記式4の化合物の化学名は、2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート塩酸塩であり、本発明では、ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩と呼ぶ。
【0021】
本発明におけるドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩は、ドネペジルエーテルパルミテートと塩酸を反応させて製造することができる。
【0022】
前記ドネペジルエーテルパルミテートは、次の工程を通じて製造することができる:
(1)1-テトラデカノール、クロロ酢酸ナトリウムおよび水酸化カリウムを混合し、2-(テトラデシルオキシ)アセテートナトリウムを得る工程;
(2)前記2-(テトラデシルオキシ)アセテートナトリウムをHCl水溶液と反応させ、2-(テトラデシルオキシ)酢酸を得る工程;
(3)前記2-(テトラデシルオキシ)酢酸を塩化オキサリルと反応させ、2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリドを得る工程;および
(4)前記2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリドとドネペジル遊離塩基を反応させる工程。
【0023】
本発明のドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩は、次の工程を通じて製造することができる:
(1)2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル
2-(テトラデシルオキシ)アセテートに溶媒を添加し、溶解させて溶液を製造する工程;
(2)前記(1)で製造された溶液に酸(Acid)を添加し、塩を形成する工程;および
(3)前記(2)で製造された塩を攪拌し、固体を得る工程。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ドネペジルエーテルパルミテートの未知の類縁物質であるPT類縁物質の生成を抑制することができるドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩およびその効率的な製造方法を提供する。
【0025】
ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩は、PT類縁物質の生成を抑制することができるだけでなく、原料物質の融点を上昇させ、優れた熱安定性と保管の容易さを有いため、アルツハイマー型認知症症状の治療剤として有用に用いられることができる。
【0026】
本発明のドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩は、ドネペジルよりはるかに優れた放出パターンを示し、初期放出が少ないので、急速な薬物放出なしに長期徐放性を維持することが可能なため、認知症患者の薬物治療コンプライアンスを向上させる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例6にて合成されたドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)の核磁気共鳴分析(H NMR)の結果である。
図2】実施例7にて合成されたドネペジルエーテルミリステート塩酸塩(DEM HCl)の核磁気共鳴分析(H NMR)の結果である。
図3】実施例8にて合成されたドネペジルエーテルペンタデカノエート塩酸塩(DEPD HCl)の核磁気共鳴分析(H NMR)の結果である。
図4】実施例9にて合成されたドネペジルエーテルヘプタデカノエート塩酸塩(DEHD HCl)の核磁気共鳴分析(H NMR)の結果である。
図5】実施例10にて合成されたドネペジルエーテルステアレート塩酸塩(DES HCl)の核磁気共鳴分析(H NMR)の結果である。
図6】実施例6にて合成されたドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)の示差走査熱量計(DSC)分析データである。
図7】実施例1にて合成したドネペジルエーテルパルミテート(DEP)の示差走査熱量計(DSC)分析データである。
図8】ドネペジル(D)をラットに投与した後、血中ドネペジルの濃度を測定した結果である。
図9】ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)をラットに投与した後、血中ドネペジルの濃度を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、以下の実施例は、本発明をより容易に理解させるために提供されるものに過ぎず、実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0029】
本発明において、ドネペジル(Donepezil)は、次の式9の構造を有し、化学名は、2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-2,3-ヒドロ-1H-インデン-1-オンである。本発明のドネペジル遊離塩基は、公知の方法で直接製造したものでもよく、購入したものでもよい。
【0030】
本発明は、次の式3で表される化合物の酸付加塩に関するものである。
【化7】
【0031】
前記式中、Rは、C12-16アルキルであり、
前記酸(Acid)は、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、クエン酸、酢酸、ギ酸、フマル酸、グルカル酸、グルコン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、安息香酸、カンポスルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、オレイン酸、オルト酸、ベンゼンスルホン酸、酒石酸、バニリン酸、ナパジシル酸、トシル酸、メシル酸、コハク酸、エタンスルホン酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸、ニコチン酸、またはシュウ酸である。
【0032】
本発明は、次の式4のドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)に関するものである。
【化8】
【0033】
本発明は、次の式5のドネペジルエーテルミリステート塩酸塩(DEM HCl)に関するものである。
【化9】
【0034】
本発明は、次の式6のドネペジルエーテルペンタデカノエート塩酸塩(DEPD HCl)に関するものである。
【化10】
【0035】
本発明は、次の式7のドネペジルエーテルヘプタデカノエート(DEHD HCl)に関するものである。
【化11】
【0036】
本発明は、次の式8のドネペジルエーテルステアレート塩酸塩(DES HCl)に関するものである。
【化12】
【0037】
本発明のドネペジル遊離塩基は、公知の方法で直接製造したものでもよく、購入したものでもよい。
【0038】
本発明の実施例に用いられた各種試薬および溶媒は、Sigma-Aldrich KoreaおよびTCI社、DAEJUNG CHEMICALS & METALS社などから購入したものである。本発明のドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩の構造は、核磁気共鳴分析(H NMR)および塩酸塩滴定(電位差滴定)により確認した。また、示差走査熱量計(DSC)および融点分析を通じてドネペジルエーテルパルミテートとその塩酸塩は、物理化学的性質において差があることを確認した。
【0039】
本発明において、HPLCは、Agilent Technoliges社の1260 infinity LCを用いて測定し、H NMRは、Bruker(ブルカー)社の400 ultrashield NMR Spectrometerを用いて測定した。純度は、HPLCの面積(%)で測定した。
【0040】
本発明にて用いられたHPLC条件は、次の通りであり、ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩の純度を測定した。
【0041】
1)検出器:紫外吸光光度計(測定波長:276nm)
2)カラム:YMC-Pack Pro C18(4.6×250mm、5μm)
3)移動相A:1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム1.88gを精密に測定して、精製水1000mLに溶かした後、リン酸1.0mLを正確に取り入れた液
4)移動相B:アセトニトリル
【表1】

5)流量:1.0mL/min
6)試料:ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩25mg/移動相10mL
7)注入量:5μl
8)カラム温度:50℃付近の一定温度
【0042】
[実施例1]
ドネペジルエーテルパルミテート(DEP)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート]の製造
【化13】
【0043】
1)2-(テトラデシルオキシ)アセテートナトリウム(EPS-Na)の製造
反応部に1-テトラデカノール(1-tetradecanol)400gを投入し、60℃で溶解した後、クロロ酢酸ナトリウム(sodium chloroacetate)108.7gとノルマルヘプタン(n-heptane)108mLを投入した。反応液に水酸化カリウム(Potassium hydroxide)78.5gを投入し、85℃まで昇温させ、3時間攪拌した。反応液にノルマルヘプタン(n-heptane)980mLとエタノール(EtOH)2.2Lを注入し、60℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却した後、濾過し、2-(テトラデシルオキシ)アセテートナトリウム化合物263.3gを得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.48(t、J=6.9 Hz、2H)、1.65~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、22H)、0.90(t、J=6.9 Hz、3H))。
【0044】
2)2-(テトラデシルオキシ)酢酸(EPS-acid)の製造
反応部に前記1)にて製造した2-(テトラデシルオキシ)アセテートナトリウム263.3gを酢酸エチル(EtOAc)2.2Lに投入し、攪拌した後、2M HCl水溶液1.45Lを注入し、常温で2時間攪拌した。層分離し、有機層を得た後、精製水1.45Lで2回洗浄した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液1.45Lで洗浄した。有機層を得た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、減圧濃縮した。濃縮した化合物をノルマルヘキサン(n-hexane)1.63Lで溶解した後、0℃で1時間攪拌した。析出された固体を濾過し、2-(テトラデシルオキシ)酢酸化合物110.6gを得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.11(s、2H)、3.56(t、J=6.7 Hz、2H)、1.66~1.59(m、2H)、1.36~1.25(m、22H)、0.88(t、J=7.2 Hz、3H))。
【0045】
3)2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリド(EPS-Cl)の製造
反応部に前記2)で製造された2-(テトラデシルオキシ)酢酸50.0gを投入した後、ジクロロメタン(Dicholoromethane)500mLとジメチルホルムアミド(Dimethylform amide)0.5mLを注入し、溶解した。反応液に塩化オキサリル(oxalyl chloride)16.5mLを注入し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、減圧蒸留により溶媒を除去し、2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリド化合物53.4gを得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.56(t、J=6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.36~1.25(m、22H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))
【0046】
4)2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート(DEP)の製造
反応部にドネペジル遊離塩基(free base)(「Jinan Chenghui-Shuangda Chemical Co.Ltd」で購買)63.3gを投入した後、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)190mLおよびDMPU(1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone)127mLを注入し、溶解させ、-20℃まで冷却した。反応液にNaHMDS(1.0M THF溶液)183.5mLを30分間注入し、-20℃で1時間攪拌した。反応液を前記「実施例1-3)」にて製造した2-(テトラデシルオキシ)アセチルクロリド53.4gが-20℃のテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)380mLおよびDMPU(1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone)253mLに溶解された溶液に40分間注入した後、同一温度で1時間攪拌した。
【0047】
反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液630mLを注入し、Celite濾過後、酢酸エチル(EtOAc)630mLで洗浄した。層分離し、有機層を得た後、酢酸エチル(EtOAc)630mLを用いて水層を逆抽出した。集められた有機層を5%の塩化ナトリウム水溶液630mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、減圧濃縮した。濃縮液にノルマルヘキサン(n-hexane)630mLを注入し、40℃で攪拌し、再び室温まで下げて1時間スラリー攪拌した。溶液を濾過し、得られた濾過液を減圧濃縮した。濃縮液をシリカカラムで精製した後、ノルマルヘプタン(n-heptane)630mLで再結晶し、ドネペジルエーテルパルミテート(DEP)33.1gを得た。
【0048】
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.37(s、2H)、3.88(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J=6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J=7.1 Hz、2H)、1.90(t、J=10.7 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.55~1.44(m、1H)、1.41~1.25(m、24H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))
【0049】
[実施例2]
ドネペジルエーテルミリステート(DEM)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ドデシルオキシ)アセテート]の製造
【0050】
1)2-(ドデシルオキシ)アセテートナトリウム(EMS-Na)の製造
1-ドデカノール(1-dodecanol)を用いて、実施例1の1)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDOD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.47(t、J=6.9 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、18H)、0.90(t、J=6.9 Hz、3H))。
【0051】
2)2-(ドデシルオキシ)酢酸(EMS-acid)の製造
前記1)で製造されたEMS-Naを用いて、実施例1の2)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.11(s、2H)、3.56(t、J=6.7 Hz、2H)、1.66~1.59(m、2H)、1.36~1.25(m、18H)、0.87(t、J=6.9 Hz、3H))。
【0052】
3)2-(ドデシルオキシ)アセチルクロリド(EMS-Cl)の製造
前記2)で製造されたEMS-Acidを用いて、実施例1の3)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.57(t、J=6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.36~1.26(m、18H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0053】
4)2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ドデシルオキシ)アセテート(DEM)の製造
前記3)で製造されたEMS-Clを用いて、実施例1の4)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.37(s、2H)、3.87(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J=6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J=7.1 Hz、2H)、1.91(t、J=10.8 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.55~1.44(m、1H)、1.41~1.25(m、20H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0054】
[実施例3]
ドネペジルエーテルペンタデカノエート(DEPD)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(トリデシルオキシ)アセテート]の製造
【0055】
1)2-(トリデシルオキシ)アセテートナトリウム(EPDS-Na)の製造
1-トリデカノール(1-tridecanol)を用いて、実施例1の1)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDOD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.47(t、J=6.9 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、20H)、0.90(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0056】
2)2-(トリデシルオキシ)酢酸(EPDS-acid)の製造
前記1)で製造されたEPDS-Naを用いて、実施例1の2)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.10(s、2H)、3.56(t、J=6.7 Hz、2H)、1.66~1.59(m、2H)、1.37~1.26(m、20H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0057】
3)2-(トリデシルオキシ)アセチルクロリド(EPDS-Cl)の製造
前記2)で製造されたEPDS-acidを用いて、実施例1の3)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.57(t、J=6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.36~1.26(m、20H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0058】
4)2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(トリデシルオキシ)アセテート(DEPD)の製造
前記3)で製造されたEPDS-Clを用いて、実施例1の4)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.37(s、2H)、3.87(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J=6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J=7.1 Hz、2H)、1.91(t、J=10.8 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.55~1.44(m、1H)、1.43~1.25(m、22H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0059】
[実施例4]
ドネペジルエーテルヘプタデカノエート(DEHD)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ペンタデシルオキシ)アセテート]の製造
1)2-(ペンタデシルオキシ)アセテートナトリウム(EHDS-Na)の製造
1-ペンタデカノール(1-pentadecanol)を用いて、実施例1の1)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDOD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.47(t、J=6.9 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、24H)、0.90(t、J=6.9 Hz、3H))。
【0060】
2)2-(ペンタデシルオキシ)酢酸(EHDS-acid)の製造
前記1)で製造されたEHDS-Naを用いて、実施例1の2)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.11(s、2H)、3.56(t、J=6.7 Hz、2H)、1.69~1.56(m、2H)、1.37~1.25(m、24H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0061】
3)2-(ペンタデシルオキシ)アセチルクロリド(EHDS-Cl)の製造
前記2)で製造されたEHDS-acidを用いて、実施例1の3)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.57(t、J=6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.39~1.25(m、24H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0062】
4)2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ペンタデシルオキシ)アセテート(DEHD)の製造
前記3)で製造されたEHDS-Clを用いて、実施例1の4)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.37(s、2H)、3.87(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J=6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J=7.1 Hz、2H)、1.91(t、J=10.8 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.53~1.45(m、1H)、1.41~1.25(m、26H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0063】
[実施例5]
ドネペジルエーテルステアレート(DES)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ヘキサデシルオキシ)アセテート]の製造
1)2-(ヘキサデシルオキシ)アセテートナトリウム(ESS-Na)の製造
1-ヘキサデカノール(1-hexadecanol)を用いて、実施例1の1)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDOD、400 MHz)δ 3.83(s、2H)、3.47(t、J=6.8 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.37~1.29(m、26H)、0.90(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0064】
2)2-(ヘキサデシルオキシ)酢酸(ESS-acid)の製造
前記1)で製造されたESS-Naを用いて、実施例1の2)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.10(s、2H)、3.57(t、J=6.7 Hz、2H)、1.66~1.59(m、2H)、1.37~1.26(m、26H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0065】
3)2-(ヘキサデシルオキシ)アセチルクロリド(ESS-Cl)の製造
前記2)で製造されたESS-acidを用いて、実施例1の3)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 4.39(s、2H)、3.56(t、J=6.6 Hz、2H)、1.64~1.57(m、2H)、1.36~1.25(m、26H)、0.88(t、J=6.8 Hz、3H))。
【0066】
4)2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ヘキサデシルオキシ)アセテート(DES)の製造
前記3)で製造されたESS-Clを用いて、実施例1の4)と類似する方法により製造して得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 7.32~7.21(m、5H)、6.96(s、1H)、6.59(s、1H)、4.38(s、2H)、3.87(s、3H)、3.87(s、3H)、3.64(t、J=6.7 Hz、2H)、3.47(s、2H)、3.25(s、2H)、2.87~2.84(m、2H)、2.27(d、J=7.1 Hz、2H)、1.91(t、J=10.9 Hz、2H)、1.71~1.63(m、4H)、1.52~1.45(m、1H)、1.41~1.25(m、28H)、0.88(t、J=6.7 Hz、3H))。
【0067】
[実施例6]
ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート塩酸塩]の製造
【化14】

反応部にドネペジルエーテルパルミテート(DEP)(5.0g、7.89mmol)およびAcetone100mLを入れ、40℃まで昇温させ、溶解させた後、再び10℃まで冷却させた。次いで、酢酸エチル(EtOAc)で希釈した1M HCl(7.73mL、7.73mmol)を1時間滴下した後、0℃まで冷却させて攪拌した。固体析出後、0℃で30分間さらに攪拌し、イソプロピルエーテル(Isopropyl ether)200mLを入れた後、同一温度で30分間攪拌した。析出された固体を濾過し、冷却させたイソプロピルエーテル(Isopropyl ether)15mLで洗浄し、2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(テトラデシルオキシ)アセテート塩酸塩(DEP HCl)4.86gを得た。
【0068】
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 12.42(br、1H)、7.67~7.57(m、2H)、7.43~7.39(m、3H)、6.98~6.93(m、1H)、6.57~6.56(m、1H)、4.40~4.37(m、2H)、4.17~4.09(m、2H)、3.87~3.85(m、6H)、3.63(t、J=6.7 Hz、2H)、3.43~3.40(m、2H)、3.25~3.21(m、2H)、2.57~2.49(m、2H)、2.40~2.33(m、2H)、2.11~2.02(m、2H)、1.84~1.80(m、2H)、1.70~1.61(m、3H)、1.37~1.24(m、22H)、0.87(t、J=6.8 Hz、3H)。
【0069】
[実施例7]
ドネペジルエーテルミリステート塩酸塩(DEM HCl)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ドデシルオキシ)アセテート塩酸塩]の製造
前記実施例2にて合成したドネペジルエーテルペンタデカノエート(DEM)を用いて、実施例6と類似する方法によりドネペジルエーテルミリステート塩酸塩(DEM HCl)を得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 12.44(br、1H)、7.68~7.58(m、2H)、7.43~ 7.39(m、3H)、6.98~6.93(m、1H)、6.57~6.56(m、1H)、4.40~4.37(m、2H)、4.17 ~4.09(m、2H)、3.87 ~3.85(m、6H)、3.63(t、J=6.7 Hz、2H)、3.43~3.40(m、2H)、3.24~3.21(m、2H)、2.58~2.50(m、2H)、2.40~2.33(m、2H)、2.12~2.01(m、2H)、1.84~1.80(m、2H)、1.70~1.60(m、3H)、1.39~1.24(m、18H)、0.86(t、J=6.8 Hz、3H)。
【0070】
[実施例8]
ドネペジルエーテルペンタデカノエート塩酸塩(DEPD HCl)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(トリデシルオキシ)アセテート塩酸塩]の製造
前記実施例3にて合成したドネペジルエーテルペンタデカノエート(DEPD)を用いて、実施例6と類似する方法によりドネペジルエーテルペンタデカノエート塩酸塩(DEPD HCl)を得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 12.39(br、1H)、7.67~7.57(m、2H)、7.42~7.38(m、3H)、6.97~6.92(m、1H)、6.57~6.55(m、1H)、4.39~4.37(m、2H)、4.16~4.08(m、2H)、3.89 ~3.84(m、6H)、3.62(t、J=6.7 Hz、2H)、3.42~3.39(m、2H)、3.24~3.20(m、2H)、2.58~2.50(m、2H)、2.40~2.32(m、2H)、2.11~2.00(m、2H)、1.82~1.79(m、2H)、1.69~1.59(m、3H)、1.38~1.23(m、20H)、0.86(t、J=6.8 Hz、3H)。
【0071】
[実施例9]
ドネペジルエーテルヘプタデカノエート(DEHD HCl)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ペンタデシルオキシ)アセテート塩酸塩]の製造
前記実施例4にて合成したドネペジルエーテルヘプタデカノエート(DEHD)を用いて、実施例6と類似する方法によりドネペジルエーテルヘプタデカノエート塩酸塩(DEHD HCl)を得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 12.44(br、1H)、7.68~7.57(m、2H)、7.43~7.39(m、3H)、6.98~6.93(m、1H)、6.57~6.56(m、1H)、4.40~4.37(m、2H)、4.19~4.09(m、2H)、3.87~3.85(m、6H)、3.63(t、J=6.7 Hz、2H)、3.43~3.40(m、2H)、3.24~3.21(m、2H)、2.58~2.50(m、2H)、2.40~2.33(m、2H)、2.12~2.01(m、2H)、1.84~1.80(m、2H)、1.70~1.58(m、3H)、1.39~1.24(m、24H)、0.87(t、J=6.8 Hz、3H)。
【0072】
[実施例10]
ドネペジルエーテルステアレート塩酸塩(DES HCl)[2-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル)-5,6-ジメトキシ-1H-インデン-3-イル2-(ヘキサデシルオキシ)アセテート塩酸塩]の製造
前記実施例5にて合成したドネペジルエーテルステアレート(DES)を用いて、実施例6と類似する方法によりドネペジルエーテルステアレート塩酸塩(DES HCl)を得た。
H NMR(CDCl、400 MHz)δ 12.41(br、1H)、7.67~7.57(m、2H)、7.42~7.38(m、3H)、6.97~6.93(m、1H)、6.57~6.56(m、1H)、4.40~4.37(m、2H)、4.17~4.09(m、2H)、3.87~3.84(m、6H)、3.63(t、J=6.7 Hz、2H)、3.42~3.39(m、2H)、3.24~3.21(m、2H)、2.58~2.50(m、2H)、2.40~2.33(m、2H)、2.11~2.01(m、2H)、1.83~1.80(m、2H)、1.69~1.59(m、3H)、1.38~1.23(m、26H)、0.86(t、J=6.8 Hz、3H)。
【0073】
[実施例11]
ドネペジル組成物の製造
ドネペジル(D)およびドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)を用いて、液相の組成物を製造した。
【0074】
次の表1の組成および含有量で主成分(DおよびDEP HCl)、キャスターオイル(castor oil)およびベンジルベンゾエート(benzyl benzoate)を混合し、常温で0.5~3時間攪拌し、液相の組成物を製造した。
【0075】
【表1】
【0076】
[実験例1]
DEPおよびDEP HCl原料加速安定性比較実験
ドネペジルエーテルパルミテート(DEP)とドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)の時間経過による原料加速安定性を評価するための実験を行った。
具体的に、実験は、それぞれの化合物を加速条件(40℃、RH 75%)下、遮光密封して保存し、化学的安定性をHPLC(純度および類縁物質の増加量)により分析し、その結果を表2に示した。
【表2】

DEPの場合、遮光密封して保存したにも拘わらず、加速6ヶ月目基準でPT類縁物質が0.13%まで増加し、純度は、約2.47%低下した。これに対し、DEP HClは、6ヶ月目にもPT類縁物質が全く形成されず、初期純度と大きな差が示されなかったので、優れた安定性を有することを確認した。
したがって、本発明によるDEP HClは、DEPに比べて加速条件(40℃、RH 75%)下、原料保存安定性に優れていることが確認された。
【0077】
[実験例2]
DEPおよびDEP HCl原料過酷安定性比較実験
ドネペジルエーテルパルミテート(DEP)とドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)の時間経過による原料過酷安定性を評価するための実験を行った。
具体的に、実験は、それぞれの化合物を60℃条件下、保存し、化学的安定性をHPLC(純度および類縁物質の増加量)により分析し、その結果を表3に示した。
【表3】

DEPの場合、PT類縁物質が持続的に増加し、2週目基準で4.39%まで増加し、その他多数の類縁物質の増加により、純度は約18.60%低下した。これに対し、本発明のDEP HClは、PT類縁物質が全く生成されず、全体の純度変化も大きくないことを確認した。
したがって、本発明によるDEP HClは、DEPに比べて60℃高温の過酷条件でも原料保存安定性に優れていることが分かった。
【0078】
[実験例3]
DEPおよびDEP HCl製剤の安定性比較実験
ドネペジルエーテルパルミテート(DEP)とドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)の時間経過による製剤安定性を評価するための実験を行った。
具体的に、それぞれのDEPおよびDEP HClをベンジルベンゾエート(Benzyl benzoate)、およびキャスターオイル(Castor oil)と混合し、懸濁液を製造した後、60℃および80℃条件下、保存し、化学的安定性をHPLC(純度および類縁物質の増加量)により分析し、その結果を表4に示した。
【表4】

DEPの場合、60℃と80℃条件の全部においてPT類縁物質が基準以上に増加し、これと比較して本発明のDEP HClは、各条件において全部PT類縁物質が生成されず、DEPに比べて非常に優れた安定性を有することを確認した。
したがって、本発明によるDEP HClは、類縁物質の発生を抑制し、高純度を長期間維持することができ、安定性に優れた化合物であることが分かった。
【0079】
[実験例4]
DEPおよびDEP HClの物理的特性比較実験
-示差走査熱量計(DSC)分析
示差走査熱量計分析によりドネペジルエーテルパルミテート(DEP)とドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)の物理的特性を比較した。分析は、示差走査熱量計(Mettler Toledo DSC 823)を用いて、窒素下で毎分10℃のスキャン速度とし、その結果を表5に示した。
【表5】

融点測定器(MPA100)によりドネペジルエーテルパルミテート(DEP)とドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)の物理的特性を比較した。このとき、25℃~200℃と範囲を定め、毎分5℃の温度を上昇させ、各試料が完全に溶けたときの温度を測定し、その結果を表6に示した。
【表6】

前記分析を総合してみた結果、DEPは、融点が約55℃で低い温度で容易に溶解された。このように低い融点は、短時間の熱の露出にも原料の性状や純度に変化をもたらす可能性が高い。これと比較して、DEP HClの融点は、約122℃と2倍以上高いため、容易に溶解されないことが確認された。
したがって、本発明によるDEP HClは、DEPに比べて、熱安定性が2倍以上優れており、原料保存時、優れた保存安定性を有することが確認された。
【0080】
[実験例5]
薬物動態評価の比較
平均300gの雄SDラット(rat)4匹に、ドネペジル(D)剤形は、ドネペジルとして4mg/kgの用量を、ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩(DEP HCl)剤形は、ドネペジルとして40mg/kgに該当する用量を筋肉注射し、SDラットの血漿サンプルからドネペジルの濃度をLC-MS/MSを用いて分析した。その結果を次の表7、図8および図9に示した。
【表7】

前記表7および図8に示すように、ドネペジル組成物を投与した場合、投与直後、薬物が速やかに放出され、Cmaxが27.5ng・h/mLと高いため、副作用や毒性を誘発する可能性が高いことを確認した。また、3日以内に薬物の放出が終了し、徐放性組成物として適合しないことを確認した。
その反面、表7および図9に示すように、ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩の組成物を投与した場合、ドネペジルとして約10倍に相当する量を投与したにもかかわらず、投与後、急激な薬物放出なしにCmaxが13.96 ng・h/mLと低く、Cmaxと維持濃度間の差が小さいことが確認された。また、ドネペジル組成物を投与した場合と異なり、ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩組成物は、単回投与でも8週以上の期間の間、有効な血中濃度を維持することを確認した。
結局、ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩は、ドネペジルよりより優れた放出パターンを示すことを知ることができた。ドネペジルエーテルパルミテート塩酸塩を体内に投与すると、投与後、急激な薬物放出なしに長期間徐放性の維持が可能であり、毒性反応を始めとした副作用のリスクを最小化しつつも、単回投与だけでも長時間の間、有効な治療薬濃度を維持することができる優れた特性を有することが分かった。
図1
図2
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図7
図8
図9