(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】醤油様香が抑制された非アルコールビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20241128BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241128BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241128BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20241128BHJP
C12H 3/00 20190101ALI20241128BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 H
A23L2/38 S
A23L2/52
A23L2/56
C12H3/00
(21)【出願番号】P 2023547400
(86)(22)【出願日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2023027923
(87)【国際公開番号】W WO2024134961
(87)【国際公開日】2024-06-27
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022207325
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 愛美
(72)【発明者】
【氏名】砂原 和允
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-023017(JP,A)
【文献】特開2015-027309(JP,A)
【文献】ALT-ALC [オンライン], 2020.05.26 [検索日 2024.06.19], インターネット:<URL:https://www.alt-alc.com/ノンアルコールビールの製造方法>
【文献】ソバキュリ! [オンライン], 2022.04.17 [検索日 2024.06.19], インターネット:<URL:https://sober-curios.com/non-al-beer-production-method>
【文献】日本トリム [オンライン], 2022.08.10 [検索日 2024.06.19], インターネット:<URL:https://www.nihon-trim.co.jp/media/30417/>
【文献】RIU-AUMATELL, M. et al.,Assessment of the aroma profiles of low-alcohol beers using HS-SPME-GC-MS,Food Research International,2014年,Vol.57,pp.196-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23L 2/38
A23L 2/52
A23L 2/56
C12H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-メチル-2-フルフラールの含有量が10ppb以上500ppb以下である非アルコールビールテイスト飲料であって、以下の条件:
(a)β-ユーデスモールの含有量が0.1ppb以上100ppb以下である;および(b)カプリル酸の含有量が0.3ppm以上10ppm以下である、
の両方を満たし、脱アルコール麦汁発酵液を原料とする、非アルコールビールテイスト飲料。
【請求項2】
アルコール(エタノール)濃度が0.005v/v%未満である、請求項1に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
【請求項3】
5-メチル-2-フルフラールの含有量
が10ppb以上500ppb以下である非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料が、以下の条件:
(a)β-ユーデスモールの含有量が0.1ppb以上100ppb以下である;および(b)カプリル酸の含有量が0.3ppm以上10ppm以下である、
の両方を満たすように、β-ユーデスモール
およびカプリル酸の含有量を調整する工程、を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法。
【請求項4】
前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.005v/v%未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
5-メチル-2-フルフラールの含有量
が10ppb以上500ppb以下である非アルコールビールテイスト飲料における醤油様香を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料が、以下の条件:
(a)β-ユーデスモールの含有量が0.1ppb以上100ppb以下である;および(b)カプリル酸の含有量が0.3ppm以上10ppm以下である、
の
両方を満たすように、β-ユーデスモール
およびカプリル酸の含有量を調整する工程、を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法。
【請求項6】
前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.005v/v%未満である、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコールビールテイスト飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康面の観点から、非アルコールビールテイスト飲料の需要が高まってきている。非アルコールビールテイスト飲料には、アルコール濃度が低いことに起因して、様々な香味バランス上の問題がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、非アルコールビールテイスト飲料において、5-メチル-2-フルフラールの濃度を増加させると、その飲料が醤油様香を呈し、飲用者の嗜好度を低下させるという問題を見出した。
【0004】
発明者らは、上記の問題について検討したところ、非アルコールビールテイスト飲料において、β-ユーデスモール(CAS: 473-15-4)またはカプリル酸(CAS:124-07-2)の濃度を調整することにより、5-メチル-2-フルフラールに起因する醤油様香を低減できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0005】
従って、本発明は、醤油様香が低減された非アルコールビールテイスト飲料およびその製造方法を提供する。
【0006】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)5-メチル-2-フルフラールの含有量が10ppb以上である非アルコールビールテイスト飲料であって、以下の条件:
(a)β-ユーデスモールの含有量が0.1ppb以上である;および
(b)カプリル酸の含有量が0.3ppm以上である、
のいずれかを満たす、非アルコールビールテイスト飲料。
(2)前記条件(a)および(b)の両方を満たす、前記(1)に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
(3)アルコール(エタノール)濃度が0.005v/v%未満である、前記(1)または(2)に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
(4)β-ユーデスモールの含有量が0.1~400ppbである、前記(1)または(2)に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
(5)カプリル酸の含有量が0.3~5.0ppmである、前記(1)または(2)に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
(6)5-メチル-2-フルフラールの含有量を10ppb以上である非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料が、以下の条件:
(a)β-ユーデスモールの含有量が0.1ppb以上である;および
(b)カプリル酸の含有量が0.3ppm以上である、
のいずれかを満たすように、β-ユーデスモールおよび/またはカプリル酸の含有量を調整する工程、を含んでなる、方法。
(7)前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.005v/v%未満である、前記(6)に記載の方法。
(8)5-メチル-2-フルフラールの含有量を10ppb以上である非アルコールビールテイスト飲料における醤油様香を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料が、以下の条件:
(a)β-ユーデスモールの含有量が0.1ppb以上である;および
(b)カプリル酸の含有量が0.3ppm以上である、
のいずれかを満たすように、β-ユーデスモールおよび/またはカプリル酸の含有量を調整する工程、を含んでなる、方法。
(9)前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.005v/v%未満である、前記(8)に記載の方法。
【0007】
本発明によれば、非アルコールビールテイスト飲料において、5-メチル-2-フルフラールに起因する醤油様香を低減することが可能となる。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ飲料をいう。「ビール様の風味」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを、その飲料が呈することを意味する。
【0009】
本発明において「非アルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味する。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料のアルコール濃度は、0.75%(v/v)未満、より好ましくは0.5%(v/v)未満、さらに好ましくは0.05%(v/v)未満、さらに好ましくは0.01%(v/v)未満、さらに好ましくは0.009%(v/v)未満、さらに好ましくは0.008%(v/v)未満、さらに好ましくは0.007%(v/v)未満、さらに好ましくは0.006%(v/v)未満、さらに好ましくは0.005%(v/v)未満とされる。
【0010】
本明細書において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義であり、「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
【0011】
本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、5-メチル-2-フルフラールを所定の濃度範囲で含む。本願明細書では、非アルコールビールテイスト飲料において、5-メチル-2-フルフラールの含有量が10ppb以上になると醤油様香が強くなり、100ppb以上になると醤油様香が極めて強くなることが確認されている。従って、本発明の非アルコールビールテイスト飲料における5-メチル-2-フルフラールの含有量は、10ppb以上とされ、好ましくは25ppb以上、より好ましくは50ppb以上、さらに好ましくは75ppb以上、さらに好ましくは100ppb以上、さらに好ましくは250ppb以上、さらに好ましくは500ppb以上とされる。5-メチル-2-フルフラール含有量の上限値は特に限定されるものではないが、例えば100000ppb、10000ppb、1000ppbとされ、好ましくは500ppbとされる。
【0012】
本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、次の条件:(a)β-ユーデスモールの含有量が0.1ppb以上、好ましくは0.2ppb以上、より好ましくは0.3ppb以上、さらに好ましくは0.5ppb以上であり、好ましくは400ppb以下、より好ましくは200ppb以下、さらに好ましくは100ppb以下である;および(b)カプリル酸の含有量が0.3ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、より好ましくは0.7ppm以上、さらに好ましくは1.0ppm以上であり、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5.0ppm以下である、のいずれかを満たす。また、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、上記の条件(a)および(b)の両方を満たす。
【0013】
本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、該非アルコールビールテイスト飲料の製造過程において、5-メチル-2-フルフラールの含有量を調整し、β-ユーデスモールおよび/またはカプリル酸の含有量を調整することにより製造することができる。
【0014】
5-メチル-2-フルフラール、β-ユーデスモールおよびカプリル酸の含有量の調整は、例えば、非アルコールビールテイスト飲料の製造過程において、これらの物質を添加することによって行ってもよく、また、非アルコールビールテイスト飲料にこれらの物質を与える原材料を増減することにより行ってもよく、さらには、製造時の各種条件(例えば、仕込み工程、糖化工程、発酵工程などにおける条件)を調整することにより行ってもよい。
【0015】
飲料中の5-メチル-2-フルフラールの定量は、GC/MS分析により行うことができる。具体的には、まず、飲料中の香気成分をC18固相抽出カラムで分離し、得られた分析用試料をGC/MSに供すればよい。また、内部標準物質としてボルネオール(Borneol)を用いることができる。GC/MS分析の条件としては、例えば、実施例に示す条件を用いることができる。より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0016】
飲料中のβ-ユーデスモールの定量は、GC/MS分析により行うことができる。このGC/MS分析は、例えば、次のように実施することができる。まず、飲料中の成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分を分析用試料として用いる。定量は内部標準法によって行い、内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、分析用試料中25ppbになるよう添加する。GC/MS分析の条件としては、例えば、実施例に示す条件を用いることができる。より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0017】
飲料中のカプリル酸の定量は、FID検出器付きガスクロマトグラフィー(GC)により行うことができる。具体的には、飲料中の香気成分を水酸化ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー固相カラムで抽出し、得られた抽出液をGC/FIDに供すればよい。また、内部標準物質としてトランス-2-ヘキサン酸およびカプリル酸メチルを用いることができる。GCの分析条件としては、例えば、実施例に示す条件を用いることができる。
【0018】
本発明の非アルコールビールテイスト飲料には、本発明の効果を妨げない範囲でその他の原料を配合してもよい。すなわち、本発明の非アルコールビールテイスト飲料では、着色料(例えば、カラメル色素)、甘味料(例えば、高甘味度甘味料)、調味成分(例えば、アミノ酸)、香料(例えば、ビールの代表的な香気成分である酢酸エチル、酢酸イソアミル、イソアミルアルコールなどを含んだ市販のビールフレーバー)、異性化ホップエキスなどの苦味成分、酵母エキスなどを原料として使用することができる。
【0019】
本発明の非アルコールビールテイスト飲料のpH(25℃で測定)は、好ましくは3.5以上4.5以下とされ、より好ましくはpH3.7以上pH4.5以下、さらに好ましくはpH3.8以上pH4.5以下、最も好ましくはpH3.8以上pH4.2以下とされる。本発明の非アルコールビールテイスト飲料のpH調整はpH調整剤を用いて行うことができる。
【0020】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、麦芽を原料とする非アルコールビールテイスト飲料、より好ましくは大麦麦芽を原料とする非アルコールビールテイスト飲料とされる。本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、麦汁を原料とする非アルコールビールテイスト飲料とされる。本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、ホップを原料とする非アルコールビールテイスト飲料とされる。本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、炭酸ガスが溶解した飲料、つまり、非アルコールビールテイスト炭酸飲料とされる。
【0021】
本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、当技術分野においてよく知られている一般的な方法において、いずれかの段階で5-メチル-2-フルフラールの含有量を調整することによって製造することができる。このような一般的な方法としては、例えば、麦汁の調製工程および濾過工程を含む方法が挙げられ、この方法は、例えば、(a)麦芽粉砕物と水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得る工程、(b)得られた麦汁にホップを添加した後、煮沸する工程、(c)煮沸した麦汁を冷却する工程、および(d)冷却した麦汁を濾過する工程を順次行うことによって実行することができる。さらに、このような一般的な方法としては、ビール等の発酵麦芽飲料を製造した後、得られた発酵麦芽飲料からアルコールを除去する方法も挙げられる。飲料からアルコールを除去する方法としては、(i)減圧若しくは常圧で蒸留してアルコールおよび低沸点成分を除去する方法、および(ii)逆浸透(RO)膜にてアルコールおよび低分子成分を除去する方法、および(iii)揮発成分を遠心力を使用しながら蒸気に吸着させて除去する方法が挙げられる。
【0022】
本発明の他の態様によれば、5-メチル-2-フルフラールの含有量を10ppb以上である非アルコールビールテイスト飲料における醤油様香を低減する方法が提供され、該方法は、前記非アルコールビールテイスト飲料が、以下の条件:
(a)β-ユーデスモールの含有量が0.1ppb以上である;および
(b)カプリル酸の含有量が0.3ppm以上である、
のいずれかを満たすように、β-ユーデスモールおよび/またはカプリル酸の含有量を調整する工程、を含んでなる。
【実施例】
【0023】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1:非アルコールビールテイスト飲料における5-メチル-2-フルフラール、β-ユーデスモールおよびカプリル酸の濃度調整による香味への影響
(1)サンプルの調製
麦芽1kgを適当な粒度に粉砕して仕込槽に入れ、これに3Lの温水を加え、65℃で20分保持後、徐々に昇温して76℃で15分間、糖化を行った。糖化終了後、78℃まで昇温後、濾紙を用いて濾過を行い、濾液を得た。この濾過液1Lにホップを約0.1g添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸後の液体について、濾紙を用いて濾過を行い、約5℃に冷却した。得られた液体に、適宜、糖度が3.0°Pになるよう湯を加えて麦汁を調整した。この麦汁に炭酸水および炭酸ガスを加え、2~4℃で24時間貯蔵し、その後濾過を行った。この濾過後の液にビール風味香料を添加し、得られた液体をベース飲料サンプルAとした。ベース飲料サンプルAのアルコール(エタノール)濃度は0.005v/v%未満であった。
【0025】
また、麦芽とホップを使用した発酵麦芽飲料を製造した後、この飲料に対してアルコール除去処理を行い、得られた液体をベース飲料サンプルBとした。具体的には、仕込槽に粉砕麦芽、酵素および温水を投入し、60℃~78℃の温度で糖化を行った。この糖化液を濾過し、煮沸釜に移してホップを添加し、70分間煮沸した。煮沸後、得られた混合物に蒸発分の温水を追加し、ワールプール槽にて熱トルーブを除去した後、10℃まで冷却し、冷たい麦汁を得た。この麦汁にビール酵母を加え、10℃前後で7日間発酵させた後、ビール酵母を除去した。得られた混合物を別のタンクに移し替えて7日間熟成させた後、-1℃付近まで冷却し、14日間安定化させた。その後、得られた混合物に脱気水を加えて希釈した後に濾過し、麦汁発酵液を得た。次に、脱ガスタンク内にスプレーして炭酸ガスを除去した後、50℃付近まで加熱した。その後、60 mbar付近の減圧カラム内で50℃付近に加熱した水蒸気と接触させ、揮発成分を水蒸気に吸着させ、アルコールおよび揮発成分を除去し、アルコール濃度0.005v/v%未満の脱アルコール麦汁発酵液を得た。この脱アルコール麦汁発酵液を、ベース飲料サンプルB(アルコール(エタノール)濃度は0.005v/v%未満)として用いた。
【0026】
さらに、ベース飲料サンプルに対して、下記の表に記載の濃度となるよう、5-メチル-2-フルフラール(5MF)、β-ユーデスモールまたはカプリル酸を添加した。
【0027】
実施例における各飲料サンプル中の5-メチル-2-フルフラール(5MF)の濃度の測定は、下記の条件によるGC/MS分析により行った。具体的には、飲料サンプル中の香気成分をC18固相カラムで分離し、得られた分析用試料をGC/MSに供した。定量は内部標準法によって行い、内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、分析用試料中50ppbになるよう添加した。GC/MS分析の条件は、下記の表に示す通りとした。
【0028】
実施例における各飲料サンプル中のβ-ユーデスモールの濃度の測定は、下記の条件によるGC/MS分析により行った。具体的には、飲料サンプル中の成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分を分析用試料として用いた。定量は内部標準法によって行い、内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、分析用試料中25ppbになるよう添加した。GC/MS分析の条件は、下記の表に示す通りとした。
【0029】
【0030】
実施例における各飲料中のカプリル酸の濃度の測定は、FID検出器付きガスクロマトグラフィー(GC)により行った。具体的には、飲料中の香気成分を水酸化ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー固相カラムで抽出し、得られた抽出液をGC/FIDに供した。また、内部標準物質として、トランス-2-ヘキサン酸およびカプリル酸メチルを用いた。GCの分析条件は、以下の表に示す通りとした。
【0031】
【0032】
(2)試飲サンプルの官能評価
上記(1)で調製された各試験区の試飲サンプルについて、訓練された7名のパネルによる官能評価を行った。官能評価の評価項目は、「醤油様香の強さ」とした。官能評価は、1(醤油様香が弱い)~10(醤油様香が強い)のスコアを用いて、1刻みの10段階で行った。
【0033】
この官能評価においては、5-メチル-2-フルフラール(5MF)、β-ユーデスモールおよびカプリル酸のいずれをも含有しない調合ベース飲料サンプルの評価スコアを1に固定し、5-メチル-2-フルフラール(5MF)1500ppbを含有する飲料サンプルの評価スコアを10に固定した。
【0034】
(3)結果
官能評価の結果を以下の表に示す。官能評価の結果は、7名のパネルのスコアの平均値と標準偏差として示す。
【0035】
【0036】
表3中の試験1の結果から、5-メチル-2-フルフラールの含有量が10ppb以上になると醤油様香が強く感じられ、特に100ppb以上になると醤油様香が極めて強く感じられることがわかった。次に、試験2の結果から、5-メチル-2-フルフラールによる醤油様香が強く感じられる非アルコールビールテイスト飲料において、β-ユーデスモールの含有量を0.1ppb以上に調整すると、醤油様香が顕著に低減されることがわかった。また、試験3の結果から、5-メチル-2-フルフラールによる醤油様香が強く感じられる非アルコールビールテイスト飲料において、カプリル酸の含有量を0.3ppm以上に調整すると、醤油様香が顕著に低減されることがわかった。さらに、試験4の結果から、β-ユーデスモールおよびカプリル酸の組み合わせの濃度調整により、優れた醤油様香低減効果が得られることがわかった。