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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵器および設備
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20220101AFI20241128BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20241128BHJP
   F24H 4/04 20060101ALI20241128BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20241128BHJP
   F24H 15/262 20220101ALI20241128BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20241128BHJP
   F24H 15/32 20220101ALI20241128BHJP
   F24H 15/37 20220101ALI20241128BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20241128BHJP
【FI】
F24H4/02 F
F24H1/00 621C
F24H4/04
F24H15/258
F24H15/262
F24H15/269
F24H15/32
F24H15/37
F24H15/375
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023547563
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 IB2022051073
(87)【国際公開番号】W WO2022168041
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】2101678.7
(32)【優先日】2021-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109593.0
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109594.8
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109596.3
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109597.1
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109598.9
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109599.7
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109600.3
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2111088.7
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523293529
【氏名又は名称】オクトパス エナジー ヒーティング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCTOPUS ENERGY HEATING LIMITED
【住所又は居所原語表記】UK House, 164-182 Oxford Street, London, W1D 1NN, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】コノワルチェク,ピーター
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02514179(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0293303(US,A1)
【文献】特開平05-026514(JP,A)
【文献】特開2005-009841(JP,A)
【文献】特開2015-185025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0327313(US,A1)
【文献】特開2012-180993(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007002797(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
F24D 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯システムであって、
プロセッサと、
全開時に所定の流量を有する制御可能な給湯口と、
太陽熱温水器またはヒートポンプを含む再生可能エネルギー源と、
熱エネルギーを貯蔵する熱貯蔵媒体を含み再生可能エネルギー源からエネルギーを受け取るように構成された熱エネルギー貯蔵部と、
を含み、
前記給湯システムは、プロセッサの制御の下で、前記再生可能エネルギー源と前記熱エネルギー貯蔵部からのエネルギーのうちの1つ以上を選択して使用して、前記給湯口に供給される水を目標システム供給温度まで加熱するように動作可能であり、
前記熱エネルギー貯蔵部は、完全にチャージされたときに、所定の流量で、前記目標システム供給温度で、少なくとも8分間、湯を前記給湯口に供給するのに十分なエネルギー貯蔵容量を有し、
前記再生可能エネルギー源は、前記プロセッサの制御下で建物の暖房を提供するようにも構成され、
前記プロセッサは、
前記給湯システムからの実際の給湯需要を監視し、
監視された前記実際の需要に基づいて、前記給湯システムからの将来の給湯需要を予測し、
前記予測された需要を満たすのに十分なエネルギーが蓄えられるように、前記熱エネルギー貯蔵部をプリチャージし、
前記再生可能エネルギー源からの熱を、建物の暖房ではなく、前記熱貯蔵媒体のチャージにも一時的に転用するように構成されてい
給湯システム。
【請求項2】
前記熱エネルギー貯蔵は、電気加熱要素からの熱を使用して前記熱貯蔵媒体をチャージすることを可能にするため、前記電気加熱要素を含む
請求項1に記載の給湯システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、予測される将来の需要に基づいて、使用する前記エネルギーのコストを考慮して、前記熱貯蔵媒体をいつ、どれだけチャージするのか決定するように構成されている
請求項1または2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、1つ以上の稼働率センサからのデータを使用するように構成されている
請求項1乃至3の何れか1項に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、天気予報情報を使用するように構成されている
請求項1乃至4の何れか1項に記載の給湯システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、1つ以上の周囲温度センサからのデータを使用するように構成されている
請求項1乃至5の何れか1項に記載の給湯システム。
【請求項7】
前記給湯システムは単一の世帯を対象として、前記プロセッサは、前記給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、前記世帯の居住者のカレンダーおよびスケジュール情報を使用するように構成されている
請求項1乃至6何れか1項に記載の給湯システム。
【請求項8】
前記給湯システムは前記熱エネルギー貯蔵部と前記給湯口との間にある補助温水器を含み、
前記給湯システムは、前記プロセッサの制御の下で、前記再生可能エネルギー源、前記熱エネルギー貯蔵部からのエネルギー、および前記補助温水器のうちの1つ以上を選択して使用して、前記給湯口に供給される水を目標システム供給温度まで加熱するように動作可能であるように構成される
請求項1乃至7何れか1項に記載の給湯システム。
【請求項9】
給湯システム内の暖房設備を制御する方法であって、
前記給湯システムはプロセッサ、全開時に所定の流量を有する制御可能な給湯口および前記暖房設備を有し、
前記暖房設備は、
熱エネルギーを貯蔵する熱貯蔵媒体を含み再生可能エネルギーの供給源からエネルギーを受け取るように構成された熱エネルギー貯蔵部と、
太陽熱温水器またはヒートポンプを含む再生可能エネルギー源と、
を含み、
前記給湯システムは、前記プロセッサの制御の下で、前記再生可能エネルギー源と前記熱エネルギー貯蔵部からのエネルギーのうちの1つ以上を選択して使用して、前記給湯口に供給される水を目標システム供給温度まで加熱するように動作可能であり、
前記熱エネルギー貯蔵部は、完全にチャージされたときに、所定の流量で、前記目標システム供給温度で、少なくとも8分間、湯を前記給湯口に供給するのに十分なエネルギー貯蔵容量を有し、
前記再生可能エネルギー源は、前記プロセッサの制御下で建物の暖房を提供するようにも構成され、
前記方法は、
前記給湯システムからの実際の給湯需要を監視する工程と、
監視された前記実際の需要に基づいて、前記給湯システムからの将来の給湯需要を予測する工程と、
前記予測された需要を満たすのに十分なエネルギーが蓄えられるように、前記熱エネルギー貯蔵部をプリチャージする工程と、
前記プロセッサが、前記再生可能エネルギー源からの熱を、建物の暖房ではなく、前記熱貯蔵媒体のチャージにも一時的に転用する工程と、を含む
方法。
【請求項10】
前記方法は、前記エネルギー貯蔵内の電気加熱要素を、前記電気加熱要素からの熱を使用して前記熱貯蔵媒体をチャージするために使用する工程をさらに含む
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、予測される将来の需要に基づいて、使用する前記エネルギーのコストを考慮して、前記熱貯蔵媒体をいつ、どれだけチャージするのか決定する工程をさらに含む
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記給湯システムからの給湯に対する将来の給湯需要を予測する工程において、1つ以上の稼働率センサからのデータを使用する工程をさらに含む
請求項9乃至11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記給湯システムからの給湯に対する将来の給湯需要を予測する工程において、天気予報情報を使用する工程をさらに含む
請求項9乃至12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記給湯システムからの給湯に対する将来の給湯需要を予測する工程において、1つ以上の周囲温度センサからのデータを使用する工程をさらに含む
請求項9乃至13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記給湯システムは単一の世帯用であり、前記方法は、前記給湯システムからの給湯に対する将来の給湯需要を予測する工程において、前記世帯の居住者のカレンダーおよびスケジュール情報を使用する工程をさらに含む
請求項9乃至14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記給湯システムは前記熱エネルギー貯蔵部と前記給湯口との間にある補助温水器を含み、
前記給湯システムは、前記プロセッサの制御の下で、前記再生可能エネルギー源、前記熱エネルギー貯蔵部からのエネルギー、および前記補助温水器のうちの1つ以上を選択して使用して、前記給湯口に供給される水を目標システム供給温度まで加熱するように動作可能であるように構成される
請求項9乃至15の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広く一般に、消費者がエネルギー使用を削減する一助となるために使用される方法、システムおよび装置に関し、より詳細には、エネルギー貯蔵器、設備およびそのような貯蔵器を含むシステム、ならびに対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
指令2012/27/EUによると、建物は最終エネルギー消費の40%、CO排出量の36%を占めている。2016年のEU委員会報告書「現在および将来(2020年~2030年)の冷暖房燃料配備(化石燃料/再生可能エネルギー)のマッピングと分析」は、EUの家庭では、暖房と給湯だけで最終エネルギー総使用量(192,5Mtoe)の79%を占めていると結論付けている。EU委員会はまた、「EU統計局の2019年の数字によると、暖房と冷房の約75%は依然として化石燃料から生成されており、再生可能エネルギーから生成されているのはわずか22%である」と報告している。EUの気候とエネルギーの目標を達成するためには、冷暖房の分野について、エネルギー消費を大幅に削減し、化石燃料の使用を削減しなければならない。ヒートポンプ(空気、地面または水からのエネルギーの取り入れを伴う)は、この問題に対処する上で重要な役割を果たす可能性があるとされている。
【0003】
多くの国において、二酸化炭素排出量を削減するための政策や圧力がある。例えば2020年に英国では、英国政府が「未来の住宅基準」に関する白書を発表し、2025年までに新築住宅からの二酸化炭素排出量を既存比で75~80%削減することを提案した。さらに、2019年の初頭には、2025年から新築住宅へのガスボイラーの設置を禁止することが発表された。発表時点において英国では、建物の暖房に使用される全エネルギーの78%がガス由来で、12%が電気由来であると報告されている。
【0004】
英国には、ガス焚きの集中暖房設備を備えた寝室が2~3部屋以下の小規模な物件が多数あり、これらの物件のほとんどは、ボイラーが瞬間湯沸かし器としても集中暖房設備用ボイラーとしても機能する、いわゆるコンビネーションボイラーを使用している。コンビネーションボイラーが人気である理由は、小型で、多かれ少なかれ直ちに「無制限」な温水の供給源となり(出力は20~35kW)、貯湯が不要だからである。このようなボイラーは、評判の良いメーカーから比較的安価に購入することができる。小型で貯湯タンクも不要であるため、狭いアパートや一軒家でも、一般的にこのようなボイラーを設置することが可能であり(多くの場合、台所の壁面に取り付けられる)、1人の作業員による1日の作業で新しいボイラーを設置することが可能である。そのため、新しいコンビガスボイラーを安価に設置することが可能である。新しいガスボイラーの設置禁止が間近に迫っており、ガスコンビボイラーに替わる代替熱源を提供する必要がある。また、以前から設置されているコンビボイラーも、いずれは何らかの代替品と交換する必要がある。
【0005】
ヒートポンプは、化石燃料への依存を減らし、CO排出量を削減するための可能性のある解決策として提案されているが、現在のところ、技術的、商業的および実用的な理由から、小規模な家庭用(および小規模な商業用)施設のガス焚きボイラーを置き換える問題には適していない。また、それらは一般的に非常に大型で、物件の外に大きなユニットを設置する必要がある。そのため、それらを一般的なコンビボイラーを備えた物件に簡単に後付けすることはできない。一般的なガスボイラーと同等の出力を提供できるユニットは、現在のところ高価であり、かなりの電気需要を必要とする可能性がある。そのユニット自体は、同等のガス炊きの同等物の何倍ものコストがかかるだけでなく、そのサイズと複雑さから、設置は技術的に複雑で、したがってコストも高くつく。さらなる技術的な問題として、ヒートポンプは需要に応じて熱を発生し始めるまでにかなりの時間を要する傾向があり、セルフチェックにおそらく30秒、その後の加熱にも時間がかかるため、給湯が必要になってからそれが供給されるまでに1分以上の遅れが生じる。こうした理由により、ヒートポンプやソーラーを使った再生可能エネルギーによるソリューションは、貯湯タンク(設置スペースを要し、熱損失があり、レジオネラ菌のリスクがある)を設置するスペースがある大型物件に適用されるのが一般的である。
【0006】
従って、特に小規模の家庭で用いるガスコンビボイラーに替わる適切な技術を見つけるという問題に対する解決策を提供する必要がある。
【0007】
より一般的には、ヒートポンプの適用範囲を広げるためのさらなる開発が求められている。本開示の態様は、このような長年の要望に対する解決策を提供するものである。
【0008】
また、大気中に放出される二酸化炭素の量を削減する必要性や、一般家庭におけるエネルギーの浪費を減らす必要性からも他の懸念が生じる。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様において、給湯システムであって、
全開時に所定の流量を有する制御可能な給湯口と、
エネルギーを潜熱として貯蔵する相変化材料を有するエネルギー貯蔵媒体を含み再生可能エネルギーの供給源からエネルギーを受け取るように構成された熱エネルギー貯蔵部と、
再生可能エネルギー源と、
を含み、
前記給湯システムは、前記プロセッサの制御の下で、前記再生可能エネルギー源、前記熱エネルギー貯蔵部からのエネルギー、および任意で前記熱エネルギー貯蔵部と前記給湯口との間にある補助温水器のうちの1つ以上を選択して使用して、前記給湯口に供給される水を目標システム供給温度まで加熱するように動作可能であり、
前記熱エネルギー貯蔵部は、完全にチャージされたときに、所定の流量で、前記目標システム供給温度で、少なくとも8分間、好ましくは少なくとも10分間、湯を前記給湯口に供給するのに十分なエネルギー貯蔵容量を有し、
前記再生可能エネルギー源は、前記プロセッサの制御下で建物の暖房を提供するようにも構成され、
前記プロセッサは、
前記給湯システムからの実際の給湯需要を監視し、
監視された前記実際の需要に基づいて、前記給湯システムからの将来の給湯需要を予測し、
前記予測された需要を満たすのに十分なエネルギーが蓄えられるように、前記熱エネルギー貯蔵部をプリチャージし、
前記再生可能エネルギー源からの熱を、建物の暖房ではなく、前記相変化材料のチャージにも転用するように構成されている給湯システムが提供される。
【0010】
このようなシステムであれば、例えば補助温水器に頼る必要がなくなり、より効率的にエネルギーを使用することができる。また、再生可能エネルギー源のみ、あるいはその大部分を利用することが容易になり、化石燃料への依存を減らすことができる。再生可能エネルギー源を、プロセッサの制御下で建物の暖房を行うように構成し、プロセッサが、再生可能エネルギー源からの熱を、建物の暖房を行うためではなく、相変化材料をチャージするために転用するように構成することにより、さらなるエネルギー節約を可能にすることができる。例えば、ヒートポンプが建物の暖房(例えば、空間暖房)に使用されている場合、その熱を建物の暖房に使用するよりも、ヒートポンプからの熱を一時的にPCMのチャージに転用する方が、エネルギー効率が高く、安価で、「環境に優しい」場合がある。
【0011】
前記再生可能エネルギーの供給源は、太陽熱温水器またはヒートポンプである。記載された給湯システムは、特に前述のような小規模な家庭用設備において、主要なエネルギー源としてのヒートポンプの使用を容易にするだけでなく、太陽熱温水設備にPCMエネルギー貯蔵器を統合する手段を提供し、化石燃料に由来する可能性のあるネットワーク化されたエネルギー供給への依存を潜在的に低減する。
【0012】
前記再生可能エネルギー源は、太陽熱温水器またはヒートポンプである。
【0013】
前記熱エネルギー貯蔵器がエネルギーを受け取るように構成されている前記再生可能エネルギーの供給源は、前記再生可能エネルギー源であってもよい。
【0014】
前記エネルギー貯蔵器は、電気加熱要素からの熱を使用して前記相変化材料をチャージすることを可能にするため、前記電気加熱要素を含んでもよい。これは、プロセッサが低料金で電力を供給できる場合に特に有益であるが、再生可能エネルギー源を利用できない場合の回復力も追加する。
【0015】
前記プロセッサは、予測される将来の需要に基づいて、使用する前記エネルギーの前記コストを考慮して、前記PCMをいつ、どれだけチャージするのか決定するように構成されてもよい。ユーザは化石燃料よりも再生可能エネルギーに頼りたいかもしれないが、給湯システムを運転する金銭的コストにも関心があるかもしれず、時に金銭的コストへの関心が優勢になることもあるであろう。
【0016】
前記熱エネルギー貯蔵器は、任意で潜熱として5~10Mジュールを貯蔵するのに十分な相変化材料を含む。この範囲のエネルギー貯蔵容量があれば、予想されるかなりの給湯需要を満たすために潜熱として十分な熱を貯蔵しつつ、エネルギー貯蔵器の物理的な大きさを管理可能な規模に(たとえば、典型的な小型住宅内に収容できるように)抑えることができるであろう。
【0017】
前記プロセッサは、前記給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、1つ以上の稼働率センサからのデータを使用するように構成されていてもよい。現在の稼働率を考慮することにより、プロセッサは、例えば、時間/日/季節の履歴データに基づく初期予測を上方修正または下方修正することにより、将来の需要をより適切に推測することができる。
【0018】
前記プロセッサは、前記給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、天気予報情報を使用するように構成されてもよい。これは、例えば、歴史的に、家庭は寒いときよりも暑いときにシャワーを浴びることが多いため、寒いときよりも暑い夏期に、より大きな給湯需要の予測を含んでもよい。
【0019】
前記プロセッサは、前記給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、1つ以上の周囲温度センサからのデータを使用するように構成されてもよい。実際の周囲の気候条件は、天気予報のデータ(場所を特定するのではなく、せいぜい地域を特定する傾向がある)とは大きく異なる可能性があるため、実際の周囲温度の知識は、例えば、天気予報データを考慮した場合よりも優れた予測を可能にする。
【0020】
前記給湯システムは単一の世帯を対象として、前記プロセッサは、前記給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、前記世帯の居住者のカレンダーおよびスケジュール情報を使用するように構成されてもよい。プロセッサがカレンダーやスケジュール情報を使用できるようにすることで、情報に基づいたより良い予測が可能になり、その結果、よりほぼ最適なエネルギー利用を可能にする。
【0021】
第2の態様によると、給湯システム内の暖房設備を制御する方法であって、
前記給湯システムは全開時に所定の流量を有する制御可能な給湯口を有し、
前記暖房設備は、
エネルギーを潜熱として貯蔵する相変化材料を有するエネルギー貯蔵媒体を含み再生可能エネルギーの供給源からエネルギーを受け取るように構成された熱エネルギー貯蔵部と、
再生可能エネルギー源と、
を含み、
前記給湯システムは、前記プロセッサの制御の下で、前記再生可能エネルギー源、前記熱エネルギー貯蔵部からのエネルギー、および任意で前記熱エネルギー貯蔵部と前記給湯口との間にある補助温水器のうちの1つ以上を選択して使用して、前記給湯口に供給される水を目標システム供給温度まで加熱するように動作可能であり、
前記熱エネルギー貯蔵部は、完全にチャージされたときに、所定の流量で、前記目標システム供給温度で、少なくとも8分間、好ましくは少なくとも10分間、湯を前記給湯口に供給するのに十分なエネルギー貯蔵容量を有し、
前記再生可能エネルギー源は、前記プロセッサの制御下で建物の暖房を提供するようにも構成され、
前記方法は、
前記給湯システムからの実際の給湯需要を監視する工程と、
監視された前記実際の需要に基づいて、前記給湯システムからの将来の給湯需要を予測する工程と、
前記予測された需要を満たすのに十分なエネルギーが蓄えられるように、前記熱エネルギー貯蔵部をプリチャージする工程と、
を含み、
前記プロセッサは、前記再生可能エネルギー源からの熱を、建物の暖房ではなく、前記相変化材料のチャージにも転用する方法が提供される。
【0022】
前記方法は、前記エネルギー貯蔵器内の電気加熱要素を、前記電気加熱要素からの熱を使用して前記相変化材料を充電するために使用する工程をさらに含んでもよい。
【0023】
前記方法は、予測される将来の需要に基づいて、使用する前記エネルギーの前記コストを考慮して、前記PCMをいつ、どれだけチャージするのか決定する工程をさらに含んでもよい。
【0024】
前記方法は、前記給湯システムからの給湯に対する将来の給湯需要を予測する工程において、1つ以上の稼働率センサからのデータを使用する工程をさらに含んでもよい。
【0025】
前記方法は、前記給湯システムからの給湯に対する将来の給湯需要を予測する工程において、天気予報情報を使用する工程をさらに含んでもよい。
【0026】
前記方法は、前記給湯システムからの給湯に対する将来の給湯需要を予測する工程において、1つ以上の周囲温度センサからのデータを使用する工程をさらに含んでもよい。
【0027】
前記第2の態様のあらゆる変形例による前記方法において、前記給湯システムは単一の世帯用であり、前記方法は、前記給湯システムからの給湯に対する将来の給湯需要を予測する工程において、前記世帯の居住者のカレンダーおよびスケジュール情報を使用する工程をさらに含んでもよい。
【0028】
前記第2の態様のあらゆる変形例による前記方法において、前記熱エネルギー貯蔵器は、潜熱として5~10Mジュールを貯蔵するのに十分な相変化材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、本開示の様々な態様の実施形態を、例示のみを目的として、添付の図面を参照しながら説明する。
図1図1は、ヒートポンプエネルギー源に結合された相変化材料および熱交換器を含むエネルギーバンクを示す概略図であり、エネルギーバンクは、相変化材料に潜熱として貯蔵されたエネルギー量を示す測定データを提供する1つ以上のセンサを含む。
図2図2は、図1のようなエネルギーバンクを含む設備によって実行される方法の高レベルフローチャートである。
図3図3は、図1のようなエネルギーバンクによって実行される別の方法のハイレベルフローチャートである。
図4図4は、図1のようなエネルギーバンクによって実行される別の方法のフローチャートである。
図5図5は、図1のようなエネルギーバンクによって実行される別の方法のフローチャートである。
図6図6は、本開示の一態様による建物内給水設備を概略的に示す図である。
図7図7は、本開示の一態様によるエネルギーバンクを組み込んだインターフェースユニットの構成要素の可能性のある配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ヒートポンプの適用性に関する多くの制約の一つは、給湯需要を満たす能力が比較的限られていることであり、少なくともコンビボイラーのような瞬間式ガス・電気湯沸かし器と比較した場合、それらの空間暖房用の熱源としての長所と比較すると、その能力は限られている。先に述べたように、英国の一般的な大きさの住宅では、空間暖房需要は6kWと低いことが普通である一方、ガスコンビボイラーは、1、2寝室の控えめなアパートであっても、瞬間湯沸かし用として20kWから30kWを供給できることが普通である。6kWのスペース暖房需要は、欧州では空気熱源ヒートポンプでも容易に達成可能であるが、20kWから30kWを供給できるユニットは、許容できないほど大きく高価になる。ヒートポンプは、家庭用給湯への適用に関してさらなる制限を受け、ヒートポンプが作動信号を受信してから、湯が実際にヒートポンプから供給されるまでの間に長いタイムラグがある。一般的に、このタイムラグは1分以上、時には2分以上にもなる。一見大したことはなさそうに思えるが、家庭で最もよく使われる湯の用途の一つである手洗いの場合、湯が出るまでの平均時間が30秒から1分であることを考えると、ヒートポンプには克服しなければならない大きなハードルがあることがわかる。
【0031】
さらに、ヒートポンプは一般的に、起動の間に大きな遅延がない限り、起動の繰り返しをサポートすることができず、その内部プロセッサは、起動要求が動作期間中にあまりにも早く続く場合、起動要求に応じて起動しない。このことはもちろん、起動要求の送信から熱が供給されるまでの間に発生する上述した不可避な遅れに加えて、ヒートポンプからの熱に対する需要があり、起動要求が送信されても、熱が利用できない場合があることを意味する。
【0032】
通常、これらの2つの問題には貯湯タンクに湯を貯めておき、オンデマンドで利用できるようにすることで対処する。しかし、この解決策は、現在ガスコンビネーションボイラーを使用している英国の1つ、2つ、そして3つの寝室がある住宅のような小規模住宅には魅力的ではなく、外部貯湯タンクなしで設置されているのがほとんどである。
【0033】
特に、家庭における熱の要求に対するヒートポンプの適用性を向上させる可能性のある技術のひとつに、湯の貯蔵ではなく、熱エネルギーの貯蔵がある。
【0034】
このような熱エネルギー貯蔵の代替形態は、相変化材料(PCM)の使用である。その名が示すように、相変化材料は熱により相変化が生じ、PCMを相転移温度まで加熱すると、エネルギーが(顕熱ではなく)潜熱として貯蔵される。多くの異なるPCMが知られており、特定の用途のための選択は、とりわけ、必要な動作温度、コストの制約、安全衛生上の制約(PCMの毒性、反応性、可燃性、安定性などを考慮し、PCMの封じ込めに必要な材料などにこれらが課す制約)によって決定される。PCMを適切に選択すれば、ヒートポンプからのエネルギーが(家庭用)給湯システムの水を瞬時に加熱できるように熱エネルギー貯蔵器を設計することができ、それによってかさばる湯タンクを必要とせずに、ヒートポンプの使用に固有のスロースタートの問題を解決するのに役立つ。
【0035】
ここで、PCMの使用に基づく、特にヒートポンプが給湯の水を加熱するために使用される設備に適したエネルギー貯蔵器を紹介し、説明する。このようなエネルギー貯蔵器は、筐体を有する熱交換器と、筐体内の、ヒートポンプなどのエネルギー源に接続するための入口側流路と、給湯設備などのエネルギーシンクに接続するための出口側流路と、エネルギーを貯蔵するための相変化材料とを含んでもよい。
【0036】
入口側流路は、熱源(この場合はヒートポンプであるが場合によっては太陽熱給湯設備)によって加熱された液体を受け取り、その液体が熱交換器内の材料よりも高温であれば、エネルギーは液体から熱交換器内の材料に伝達される。同様に、熱交換器内の材料からのエネルギーは、液体が熱交換器内の材料よりも低温であれば、出口側流路内の液体に伝達される。もちろん、出口側流路に流れがない場合、熱交換器から移動するエネルギー量は制限されるため、入力エネルギーのほとんどは熱交換器内に留まる。我々のケースでは、熱交換器には相変化材料、例えばパラフィンワックスや塩水和物(適切な材料の例は後述)が含まれ、入力エネルギーの大部分がPCMに伝達される。相変化材料とヒートポンプの動作温度を適切に選択すれば、ヒートポンプからのエネルギーを使用して、PCMに代表されるエネルギー「バンク」を「チャージ」することが可能になる。任意で、ヒートポンプからのエネルギー供給は、熱交換器に1つ以上の電気加熱要素を含めることによって補完することができ、加熱要素は、システムのプロセッサによって制御され、例えば、電力供給に低コストの料金が適用される場合、または例えば、風力発電、水力発電、太陽光発電などの地域または家庭での電力生産が、給湯に対する予想されるまたは望まれる将来の必要性がある場合に、「安価な」エネルギーを提供することができる場合に使用される。
【0037】
このような熱エネルギー貯蔵器を含む給湯システムでは、給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測し、その予測に基づいて熱エネルギー貯蔵器をプリチャージし、予測された需要を満たすのに十分なエネルギーが熱エネルギー貯蔵器に貯蔵されるようにすることが有用である。こうすることで、化石燃料を使用するネットワーク供給から供給されるエネルギーを使用する追加の瞬間熱源など、他のエネルギー源を要求する必要性を回避することができる。また、給湯需要が実際に発生したときに利用可能なエネルギーよりも低コストのエネルギーを使用して、エネルギー貯蔵器をプリチャージすることも可能である。
【0038】
ここで、エネルギーを潜熱として貯蔵する相変化材料からなるエネルギー貯蔵媒体を含み、再生可能エネルギーの供給源からエネルギーを受け取るように構成された熱エネルギー貯蔵器を含む給湯システムであって、監視された実際の需要に基づいて、給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測し、予測された需要を満たすのに十分なエネルギーが熱エネルギー貯蔵器に貯蔵されるように熱エネルギー貯蔵器をプリチャージするように構成されたプロセッサを含む給湯システムについて説明する。
【0039】
図1は、熱交換器を含む熱エネルギー貯蔵器またはエネルギーバンク10を概略的に示し、エネルギーバンクは筐体12を備えている。筐体12内には、再生可能エネルギーの供給源(ここではヒートポンプ16として示す)に接続するための熱交換器の入口側流路14と、エネルギーシンク(ここでは冷水供給源20に接続され、1つ以上の給湯口22を含む給湯システムとして示す)に接続するための熱交換器の出口側流路18とが含まれている。各給湯口22は、全開時に所定の流量を有する。このような所定の流量は、例えば毎分7、10、12または15リットルなど、毎分5~15リットルの範囲内である。
【0040】
筐体12内には、相変化材料の潜熱を利用してエネルギーを貯蔵するための相変化材料がある。熱エネルギー貯蔵器は、完全に充電されたときに、所定の流量で、目標システム供給温度で、1つ以上の給湯口22に、有用な長時間にわたって給湯するのに十分なエネルギー貯蔵容量を有する。その時間は一般に5分を超え、好ましくは少なくとも7分または8分、より好ましくは少なくとも10分、12分または15分である。好ましくは、熱エネルギー貯蔵器は、潜熱として5~10Mジュールを貯蔵するのに十分な相変化材料を含む。
【0041】
エネルギーバンク10はまた、PCMの状態を示す測定値を提供するために、1つ以上の状態センサ24を含む。例えば、状態センサ24の1つ以上は、筐体内の圧力を測定するための圧力センサであってもよい。相変化材料を使用するシステムを設計する際に考慮しなければならない相変化材料の特徴の1つは、相間の遷移に伴う体積変化であり、例えば、液体と固体の間の相変化では膨張し、固体と液体の間の相変化では収縮する。通常、体積変化は10%程度である。この体積変化は、相変化材料を収容するために使用される筐体の慎重な設計によって対応しなければならない欠点と考えることができるが、体積変化を積極的に利用することもできる。PCM筐体内の圧力の測定を提供する1つ以上のセンサを含めることにより、プロセッサが相変化材料の状態を決定することができるデータをプロセッサに提供することができる。例えば、プロセッサは相変化材料のエネルギー貯蔵値を決定することができる。
【0042】
相変化材料のエネルギー貯蔵量を決定する手段としての筐体内圧力の測定に加えて、またはその代替として、相変化に伴ってPCMに生じる光学特性または音波特性の変化を利用することも可能である。これらの代替アプローチの例については後述するが、まずはPCMのエネルギー貯蔵状態に関する情報を収集する手段としての圧力検知の使用について検討する。
【0043】
好ましくは、筐体はまた、PCM内の温度を測定するための1つ以上の温度センサ26を含む。好ましいように、複数の温度センサがPCM内に設けられる場合、これらは、好ましくは、熱交換器の入口側流路および出口側流路の構造から間隔をあけて配置され、PCMの状態の良好な「画像」を得るためにPCM内に適切な間隔をあけて配置される。
【0044】
エネルギーバンク10は、プロセッサ30を含む関連システム制御部28を有する。制御部は、エネルギーバンク10に一体化されてもよいが、より典型的には別個に取り付けられる。制御部28はまた、一体型または別体のユニットとして、または制御部28を含む本体に着脱可能に取り付けられるユニットとして、ユーザインターフェースモジュール31を備えることもできる。ユーザインターフェースモジュール31は、通常、例えばタッチセンシティブディスプレイの形態の表示パネルおよびキーパッドを含む。ユーザインターフェースモジュール31は、制御部28から分離または分離可能な場合、制御部28のプロセッサ30とユーザインターフェースモジュールが互いに通信できるように、無線通信機能を含むことが好ましい。ユーザインターフェースモジュール31は、システムステータス情報、メッセージ、アドバイス、および警告を使用者に表示し、使用者入力および使用者コマンド(開始および停止指示、温度設定、システムオーバーライドなど)を受信するために使用される。
【0045】
状態センサは、温度センサ26が存在する場合、同様にプロセッサ30に接続されている。プロセッサ30はまた、有線接続を介して、または関連するトランシーバ34および36を使用して無線で、あるいは有線接続および無線接続の両方を通じて、ヒートポンプ16内のプロセッサ/制御部32に接続される。このようにして、システム制御部28は、ヒートポンプ16の制御部32に、開始命令や停止命令などの命令を送信することができる。同様に、プロセッサ30は、ヒートポンプ16の制御部32から、ステータス更新、温度情報などの情報を受信することもできる。
【0046】
給湯設備は、給湯システム内の流量を測定する1つ以上の流量センサ38も含む。図示のように、このような流量センサは、システムへの冷水供給源20、および熱交換器の出口側流路18の出口間に設けることができる。任意で、1つ以上の圧力センサも給湯システムに含めることができ、この場合も、圧力センサー(複数可)は、熱交換器/エネルギーバンクの上流、および/または熱交換器/エネルギーバンクの下流に、例えば、1つ以上の流量センサ38の1つ以上と並んで設けることができる。各流量センサ、各温度センサ、および各圧力センサは、例えば1つ以上の無線送受信機またはトランシーバ40を使用して、有線接続または無線接続のいずれかまたは両方でシステム制御部28のプロセッサ30に接続される。様々なセンサ24、26、38の性質によっては、システム制御部28のプロセッサ30によって問い合わせ可能である場合もある。
【0047】
任意で、図示のように、給湯設備は、プロセッサ30の制御の下、冷水供給源からの冷水を熱エネルギー貯蔵器10からの湯と混合するための冷水混合弁42も含む。このようにして、プロセッサ30によって制御される目標システム供給温度で給湯することができる。温度計26は、弁42の出口または弁42のすぐ下流に設けられ、プロセッサ30に結合されており、プロセッサが弁によって供給される水の温度を監視し、したがって温度を調節できるようになっている。好ましくは、図示のように、設備はまた、エネルギー貯蔵器10がディスチャージされ、ヒートポンプ16が熱を供給できないときでも、水を加熱し、または熱を加えることができるように、プロセッサ30の制御下で、エネルギー貯蔵器10と混合弁42の間に補助瞬間温水器44を含む。補助瞬間温水器44は、誘導加熱または抵抗加熱の何れかを使用する電気ヒータであることが好ましいが、ガスなどの別のエネルギー源を替わりに使用してもよい。
【0048】
任意で、図示のように、エネルギーバンク10は、筐体12内に、システム制御部28のプロセッサ30によって制御されエネルギーバンクを再加熱するためにヒートポンプ16の代替として使用されることがある電気加熱要素48を含むことができる。電気加熱要素48は、太陽光発電アレイ、風力または水力タービンからの地域または家庭用電力供給などの再生可能エネルギー源に接続される。
【0049】
給湯システムは、プロセッサ30の制御の下、再生可能エネルギー源16、熱エネルギー貯蔵器10からのエネルギー、および任意で補助瞬間給湯器44のうちの1つ以上から選択されたものを使用して、給湯口22に供給されるべき水を目標システム供給温度まで加熱するように動作可能である。
【0050】
プロセッサ30は、給湯システムからの実際の給湯需要を監視するように構成されている。例えば、給湯の時間、持続時間、流量およびエネルギー含有量を記録する。また、プロセッサ30は、監視された実際の需要に基づいて、給湯システムからの将来の給湯需要を予測するように構成される。プロセッサ30はまた、給湯システムからの将来の給湯需要を予測する際に、例えば給湯システムが単一の世帯に給湯する場合、給湯システムによって給湯される世帯の居住者のカレンダーおよびスケジュール情報を使用するように構成されてもよい。
【0051】
再生可能エネルギーの供給源および/または再生可能エネルギー源が太陽熱温水設備である場合、プロセッサは、太陽熱温水設備からのエネルギーが要求される最適な期間を予測するように配置することができる。一般的に、このような設備は、一般的には貯湯器の形で、エネルギー貯蔵のいくつかの形態を含み、より一般的にはガスコンビボイラーが提供されているタイプのより小さな住宅でこのような設備を見つけることは珍しい。しかし、より大きな住居や、より小さな住居の一部では、そのような設備が時折使用され、エネルギーが貯湯器から転用されるか、またはソーラー設備からのホットシステム流体(一般に貯湯器内の熱交換器にのみ供給される)がプロセッサ30の制御下でPCMをチャージするために使用されることが想定される。
【0052】
プロセッサはまた、将来の需要を予測する際に、例えば1つ以上の稼働率センサ(音響センサやPIRセンサなどの動作センサ、活動センサ、電気活動センサなど)、「スマートスピーカ」などからの「スマートデバイス」データ、または「スマートレジデンス」設備やアプリケーションからの、稼働率レベルに関する知識を使用するように構成されてもよい。
【0053】
好ましくは、プロセッサは、給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する際に、天気予報情報を使用するように構成される。
【0054】
好ましくは、プロセッサは、給湯システムからの将来の給湯需要を予測する際に、1つ以上の周囲温度センサからのデータを使用するように構成される。
【0055】
予測された将来の給湯需要に基づいて、プロセッサ30は、予測された需要を満たすのに十分なエネルギーが熱エネルギー貯蔵器に貯蔵されるように、熱エネルギー貯蔵器をプリチャージするように構成される。
【0056】
好ましくは、プロセッサは、公益事業ネットワークから供給されるエネルギーの料金データ、および再生可能エネルギーの供給源(例えば、ヒートポンプ)の運転コストを含む、エネルギーコストに関するデータにアクセスできる。好ましくは、プロセッサは、インターネットなどの1つ以上のデータネットワーク、および公益事業提供者のデータベースにアクセスできる。好ましくは、プロセッサは、予測される将来の需要に基づいて、使用されるエネルギーのコストを考慮して、PCMをチャージするタイミングおよびチャージ量を決定するように構成される。プロセッサ30は、家庭の行動を学習し、需要の予測をサポートするための機械学習アルゴリズムを備えてもよい。
【0057】
図1では、ヒートポンプ16は、エネルギー貯蔵器10にのみ熱を供給し、給湯システムに直接エネルギーを供給しないものとして示されている。これは好ましい配置であり、流体はヒートポンプの熱交換器とエネルギーバンクの熱交換コイル14の間を流れる。しかし、ヒートポンプ内の熱交換器に、給湯システム用に加熱される水を供給し、こうして加熱された水を、エネルギーバンクをバイパスして給湯システムに供給することができ、この際ミキサー弁は、任意に、エネルギーバンク10の下流の給湯システムに挿入され、好ましくは、エネルギーバンクと混合弁42との間、特に、補助瞬間給湯器44が存在する場合はエネルギーバンクとその間に配置されることは理解されるであろう。
【0058】
図1は単なる概略図であり、給湯設備へのヒートポンプの接続を示しているに過ぎない。世界の多くの地域では、湯だけでなく空間暖房の必要性もあることが理解されよう。通常、ヒートポンプ16は空間暖房にも使用される。ヒートポンプが空間暖房を提供し、温水暖房のためにエネルギーバンクと協働する例示的な配置については、本明細書で後述する。説明を簡単にするために、例えば図1に示されるような、本発明の一側面によるエネルギーバンクの運転方法に関する以下の説明は、関連するヒートポンプが空間暖房/建物暖房を提供するか否かにかかわらず、エネルギーバンクの設置に等しく適用される。好ましくは、このような配置では、プロセッサは、空間/建物暖房を提供するのではなく、相変化材料をチャージするために再生可能エネルギー源からの熱を転用するように構成される。
【0059】
先に説明した様々な態様の配置は、各々が全開時に所定の流量を有する1つ以上の制御可能な給湯口を有する給湯システムを構成し、給湯システムは、再生可能エネルギーの供給源からエネルギーを受け取るように構成された、エネルギーを潜熱として貯蔵する相変化材料を備えるエネルギー貯蔵媒体を含む熱エネルギー貯蔵器と、再生可能エネルギー源と、を含むことが理解されよう。そして、様々な態様において、これらの給湯システムは、プロセッサの制御の下で、再生可能エネルギー源、熱エネルギー貯蔵器からのエネルギー、および任意に補助瞬間給湯器44のうちの1つ以上の選択を用いて、給湯口に供給されるべき水を目標システム供給温度まで加熱するように動作可能であり、熱エネルギー貯蔵器は、完全にチャージされたときに、所定の流量で、目標システム供給温度で、十分に長い時間、湯を給湯口に供給するのに十分なエネルギー貯蔵容量を有する。その時間は一般に5分以上、好ましくは少なくとも7分または8分、さらに好ましくは少なくとも10分、12分または15分である。
【0060】
目標システム供給温度は、一般に38℃から50℃の範囲であるが、レジオネラ菌を死滅させるために、例えば定期的な消毒サイクルの間、好ましくはプロセッサ30の制御の下で、時に60℃以上まで上昇させてもよい。
【0061】
このような設備および配置は、給湯システム内の暖房設備を制御する方法であって、給湯システムからの給湯に対する実際の需要を監視する工程と、監視された実際の需要に基づいて給湯システムからの給湯に対する将来の需要を予測する工程と、予測された需要を満たすのに十分なエネルギーが熱エネルギー貯蔵部に貯蔵されるように熱エネルギー貯蔵部をプリチャージする工程と、を備える方法を提供するように配置されてもよい。
【0062】
次に、本発明の一態様による設備を制御する方法を、図2を参照して説明する。図2は、本発明の第3または第4の態様の任意の変形例による設備に関連するプロセッサによって実行される様々な動作を示す簡略化されたフローチャートである。
【0063】
この方法は、220において、1つ以上の状態センサ24からの情報に基づいて、相変化材料に潜熱として蓄積されたエネルギー量の決定を生成することから始まる。
【0064】
次に、ステップ230において、その判断に少なくとも部分的に基づいて、プロセッサは、ヒートポンプに始動信号を供給するか否かの決定をする。PCMの状態に加えてプロセッサが考慮し得る様々な要因については、本明細書で後述する。
【0065】
図3は、本発明の第3または第4の態様の任意の変形例による設備に関連するプロセッサによって実行される様々な動作を示す別の簡略化されたフローチャートである。
【0066】
本方法は、プロセッサが給湯システムの給湯口の開放を示す信号を受信する300から開始する。この信号は、例えば、給湯システムの流量センサ38、または給湯システムへの冷水の供給から得られてもよい。302において、プロセッサは、例えば、開放された給湯口の識別情報または種類に基づいて、あるいは瞬間流量に基づいて、給湯システムからの給湯需要を推定する。プロセッサは、推定された需要を第1の閾値需要レベルと比較する。推定された需要が第1の閾値需要レベルを上回る場合、プロセッサは、304において、ヒートポンプ始動メッセージを生成する。推定された需要が第1の閾値需要レベルを下回る場合、プロセッサは、推定された需要を、第1の閾値需要レベルよりも低い第2の閾値需要レベルと比較する。推定需要が第2の閾値需要レベルを下回る場合、プロセッサは、306において、ヒートポンプ始動メッセージを生成しないことを決定する。
【0067】
推定された需要が第1の閾値需要レベルと第2の閾値需要レベルとの間にある場合、308において、プロセッサは、エネルギーバンクのエネルギー貯蔵レベルを考慮する。これは、プロセッサがエネルギーバンクのエネルギー貯蔵レベルを新たに確立することに関与してもよいし、プロセッサがエネルギーバンクのエネルギー貯蔵レベルに関する最近生成された情報を使用してもよい。
【0068】
エネルギーバンクのエネルギー貯蔵レベルの判定が第1のエネルギー貯蔵レベル閾値より大きい場合、プロセッサは304でヒートポンプ始動メッセージを生成しないことを決定する。一方、エネルギーバンクのエネルギー貯蔵レベルの判定が第1のエネルギー貯蔵レベル閾値より小さい場合、プロセッサは306でヒートポンプ始動メッセージを生成することを決定する。
【0069】
次に、本発明の一態様による設備を制御する方法を、図4を参照して説明する。図4は、図1に示されるようなエネルギーバンクに関連するプロセッサによって実行される様々な動作を示す簡略化されたフローチャートである。プロセスは、プロセッサ30が給湯システム内の水の流れを検出するステップ400で開始する。検出は、好ましくは、図1の流量センサ38のような流量センサからのデータに基づいて行われるが、替わりに、給湯システム内の圧力センサからのデータに基づいて行われることもあり得る。関連するセンサは、測定データをプロセッサ30に供給するように連続的に構成されてもよいし、測定データの変化を報告するようにのみ構成されてもよいし、プロセッサが関連するセンサ(複数可)を連続的または定期的に(例えば、少なくとも1秒に1回)読み取ってもよい。
【0070】
ステップ402で、プロセッサ30は、センサ(単数または複数)からのデータによって示される流量が、例えば特定の閾値を超えるか下回るかのように、高流量を示すか低流量を示すかを判定する。プロセッサは、複数の閾値を使用して、流量を高、中、低のいずれかに分類してもよく、あるいは、カテゴリには、非常に高、高、中、低が含まれ得る。また、流量が非常に少ない、または最小であるというカテゴリがあってもよい。プロセッサ30はまた、給湯システムの給湯口22の各々、または給湯口のタイプの各々についての流量および流量シグネチャに関する情報(例えば、データベース、モデル、またはMLAの形態で)を(例えば、本特許出願で後述するような技術を用いて)提供されてもよく、プロセッサは次に、検出された流量を、給湯口22の特定の1つまたは特定のタイプ(例えば、シャワー給湯口、浴室給湯口、キッチンシンク給湯口、洗面器給湯口、手洗い器給湯口)に関連するものとして特徴付ける。
【0071】
判定が給湯需要が低いことを示す403場合、プロセッサは次に、ステップ404において、少なくとも状態センサ24からの情報に基づいて、パワーバンク10の状態を考慮する。プロセッサ30は、この段階で状態センサ24(例えば、圧力センサ)に問い合わせをしてもよいし、最近更新されたエネルギーバンク状態をチェックしてもよく、いずれの場合も、エネルギーバンクが高エネルギー状態405(エネルギーバンクの潜在的な潜熱容量の大部分が使用可能な状態)にあるか、または低エネルギー状態406(エネルギーバンクの潜在的な潜熱容量のわずかな部分が使用可能な状態)にあるかを決定する。プロセッサはまた、例えば、エネルギーバンク10に貯蔵された顕熱エネルギーを考慮するために、温度センサ26からの情報を考慮してもよい。プロセッサ30が高エネルギー状態であると決定した場合、プロセッサは、ヒートポンプに始動命令を送信しないことを決定し、プロセスは407で終了する。プロセッサ30が低エネルギー状態であると決定した場合、プロセッサは、ヒートポンプに始動命令422を送信することを406において決定することができる。
【0072】
判定が温水の需要が高いことを示す408場合、プロセッサは次に、ステップ409において、少なくとも状態センサ24からの情報に基づいて、パワーバンク10の状態を考慮してもよい。プロセッサ30は、この段階で状態センサ24に問い合わせをしてもよいし、最近更新されたエネルギーバンクの状態をチェックしてもよく、いずれの場合も、エネルギーバンクが高エネルギー状態410(エネルギーバンクの潜在的な潜熱容量の大部分が使用可能な状態)にあるか、または低エネルギー状態412(エネルギーバンクの潜在的な潜熱容量のわずかな部分が使用可能な状態)にあるかを決定する。
【0073】
プロセッサは、例えば、エネルギーバンク10に蓄積された顕熱エネルギーを考慮するために、温度センサ26からの情報を考慮してもよい。プロセッサ30が高エネルギー状態410にあることを決定した場合、プロセッサは任意で、ステップ414において予測給湯需要を決定する。しかし、プロセッサは、替わりに、単に流量の大きさに基づいて、給湯需要を予測することなく(クロスハッチングされた矢印411で示すように)、422でヒートポンプを始動する命令を送信するように構成されてもよい。
【0074】
ステップ414において、プロセッサ30は、給湯需要を予測するために、決定された識別情報(すなわち、特定の給湯口)または給湯口のタイプを考慮することができる。例えば、給湯口が台所の流し台の給湯口として特定された場合、蛇口が30秒から1分以上運転される可能性は低い。一方、給湯口が風呂の蛇口であれば、おそらく120~150リットルの温水が必要で、蛇口は数分間開いたままになる可能性が高い。
【0075】
第1の状況において、プロセッサ30は、416において、ヒートポンプに始動信号を送信しないことを決定するが、その替わりに、プロセスを終了するか、より好ましくは、418において、流量がどのくらい続くのかを見るために流量の監視を継続する。流量が予測時間内に停止した場合、プロセスは420で終了するが、水の流れが予測よりも長く継続した場合、プロセッサは419でステップ409に戻る。第2の状況において、プロセッサ30は、421において、ヒートポンプに開始信号を送信すること422を決定する(そして、矢印411は、単に瞬間流量に基づいて、または、給湯システムからのかなりの量の湯の取出しに関連しているとして給湯口(または給湯口タイプ)の識別に基づいて、ヒートポンプを始動する決定を示す)。
【0076】
422でヒートポンプを始動させた後(406または421における決定から)、プロセッサ30は424でパワーバンクの状態をその状態がある閾値の充電レベル425に達するまで(定期的または連続的に)監視し続け、その時点でプロセッサはヒートポンプをオフにする信号426を送信する。
【0077】
図5は、図1のプロセッサ30など、エネルギーバンクに関連するプロセッサによって実行される様々な動作を示す別の簡略化されたフローチャートである。図4を参照して説明した方法とは異なり、図5の方法は、湯の要求の検出に依存しない、すなわち、給湯システムの給湯口の開放に依存しない。一般に、図5は、設置を制御する方法を示しており、この方法は、相変化材料に潜熱として蓄積されたエネルギー量の決定を生成する工程と、その決定に基づいて、ヒートポンプに始動信号を供給するかどうかを決定する工程とを含む。しかし、後述するように、相変化材料に潜熱として蓄積されたエネルギー量の決定を生成する工程と、その決定に基づいて、ヒートポンプに始動信号を供給するかどうかを決定する工程との間に、任意ではあるが好ましい工程を設けてもよい。
【0078】
本方法は、ステップ500において、プロセッサ30が、エネルギーバンク10の相変化材料に潜熱として蓄積されているエネルギー量を推定することから始まる。熱量は、kジュール単位の絶対量であってもよいが、同様に、現在利用可能な潜在的な潜熱容量の割合の単なる尺度であってもよい。言い換えれば、プロセッサは、まだより高いエネルギー状態の相にある相変化材料の割合を効果的に決定してもよい。すなわち、例えば相変化材料がパラフィンワックスで、液体から固体に相変化する場合、液相は融解潜熱を取り込んだ高エネルギー相であり、固相は融解潜熱を固化時に放出した低エネルギー相である。
【0079】
プロセッサが、潜熱として蓄積されたエネルギー量が十分であると判断した場合502、すなわちある所定の閾値を超えた場合、本方法はステップ504に移行し、そこでプロセスは停止し、プロセッサは次のチェック500を待つ。
【0080】
プロセッサが、潜熱として蓄積されたエネルギー量が十分でないと判断した場合506、すなわち、ある所定の閾値以下である場合、方法はステップ508に移行する。ステップ508で、プロセッサは、今後一定期間内(例えば、今後30分、1時間、2時間、3時間または4時間以内)に大きな給湯需要が発生する可能性を決定する。考慮される期間は、エネルギーバンクの熱容量、決定されたエネルギー不足の大きさ、およびその状況下でエネルギーバンクを再チャージするヒートポンプの能力の要因である。考慮される需要期間は、ヒートポンプがその期間内にエネルギーバンクを十分に再チャージし、エネルギーバンクが予測または予想される需要に対処できるように最適に充電される(場合によっては完全に充電される)ことを可能にするのに十分な期間であるべきであることが理解されよう。逆に、ヒートポンプは、エネルギーバンクが放射、伝導または対流によってかなりの量のエネルギーを失うような、予測される/予想されるエネルギー需要よりかなり前にエネルギーバンクを再チャージするために使用されるべきではない。
【0081】
プロセッサは、データベース、モデル、カレンダーまたはスケジュールに依存してもよく、これらのいずれかおよびすべてに、学習された行動や行動パターン、および予定されたイベント(予定された欠席や他の場所で予定されたイベントなど)が含まれていてもよい。また、プロセッサは、例えばインターネットを介して、または無線通信で提供される(プッシュまたは受信される)現地の天気予報、および/または外部の温度計にアクセスしてもよい。
【0082】
プロセッサが、期間内に大きな給湯需要が発生する可能性が低いと判断した場合510、方法はステップ504に移行し、そこでプロセスは停止し、プロセッサは次のチェック500を待つ。
【0083】
プロセッサが、期間内にかなりの給湯需要が発生する可能性が高いと判断した場合512、方法はステップ514に移行し、ヒートポンプがオンにされる。例えば、プロセッサ30がヒートポンプ16に命令を送り、ヒートポンプのプロセッサ32がヒートポンプ始動手順を開始し、その後、ヒートポンプが
熱交換器の入口側に熱を供給し始め、それによって相変化材料にエネルギーが投入される。次いで、プロセッサは、ステップ516において、十分なエネルギーが相変化材料の潜熱としてエネルギーバンクに蓄積されたかどうかを繰り返し判定する。プロセッサが、十分なエネルギーが相変化材料の潜熱としてエネルギーバンクに現在貯蔵されていると判断すると518、方法はステップ520に移行し、例えばプロセッサ30が適切な命令を送信することによって、ヒートポンプがオフにされる。プロセッサが、不十分なエネルギーが貯蔵されていると判断する522限り、方法は継続される。
【0084】
図1に戻り、筐体内の圧力を測定するために1つ以上の状態センサ24を設ける替わりに、またはそれに加えて、PCMの透明度、吸収、屈折、屈折率などの光学特性を測定するために他の種類のセンサを設けることができる。さらに、これらの特性の様々なものは、位相の変化とともに変化する波長依存性を示すことがある。
【0085】
したがって、エネルギーバンクは、相変化材料に光を発射するための1つ以上の光源をさらに含んでもよく、1つ以上の状態センサ24は、光が相変化材料を通過した後に光源から発射された光を検出するための光検出器を含んでもよい。相変化材料における相間の変化は、相変化材料の光学特性における可逆的な変化を生じさせ、したがって、PCMの光学特性を観察することは、PCMの状態に関する情報を得るために使用することができる。好ましくは、PCMの光学特性はPCMの複数の領域で、好ましくは材料内の異なる方向で観察される。例えば、光源およびセンサは、光源からの光が1つ以上の位置でPCMを長さ方向に通過するように配置されてもよく、他の光源およびセンサは、光源からの光が1つ以上の位置でPCMを幅方向に通過し、1つ以上の方向(幅方向および厚さ方向)で通過するように配置されてもよい。
【0086】
光源は、異なる色の光を生成するように制御可能であり、光検出器は、異なる色の少なくともいくつかを検出するように構成される。あらゆる用途に選択された特定のPCMに基づいて適切な色の光を選択することにより、PCMの位相が変化した程度をより正確に決定することができる。
【0087】
好ましくは、光源は、別々に作動可能な複数の装置から構成される。
【0088】
光学的検知器を、光学的検知器から受信した情報に基づいて相変化材料に蓄積されたエネルギー量を推定するように構成されたプロセッサに結合することにより、PCM内に潜熱として蓄積されたエネルギー量を決定する手段が提供され、この情報をヒートポンプの制御に使用することができる。特に、このような情報により、PCMエネルギーバンクの蓄熱におけるヒートポンプのより効率的で適切な使用が可能になることがある。
【0089】
さらなるオプションとして、相変化材料に潜熱として蓄積されたエネルギー量を示す測定データを提供するための1つ以上の状態センサ24は、相変化材料に音を発射するように構成された音源と、音が相変化材料を通過した後に音源から発射された音を検出する音検出器とを含むことができる。相変化材料の相間の変化は、相変化材料の吸音特性に可逆的な変化を生じさせるため、PCMの音響特性を観察することにより、PCMの状態に関する情報を得ることができる。音源は超音波を発生するように構成してもよい。
【0090】
図6は、複数の制御可能な給水口(後でより詳細に説明される様々な蛇口およびシャワー)と、水の供給源105と、水の供給源105と複数の制御可能な給水口との間の水流路に設けられた少なくとも1つの流量測定器110と、少なくとも1つの流量調整器115と、少なくとも1つの流量測定器110および少なくとも1つの流量調整器115に動作可能に接続されたプロセッサ120とを有する建物内給水設備100を概略的に示す。図示された給水設備は、マスターバスルーム121、第1のエンスウィートシャワールーム122、第2のエンスウィートシャワールーム123、クロークルーム124、およびキッチン125を有する住居を表している。マスターバスルームと第1のエンスイートシャワールームは住居の同じ階にあり、クロークルーム、第2のエンスイートシャワールームおよびキッチンは住居の別の階にあってもよい。
【0091】
このような状況では、図示のように、2つの別個の流路130と131を設けて、様々な給湯口に水を供給するのが便利であろう。
【0092】
マスターバスルーム121は、シャワー給湯口135、バスタブ用蛇口または水栓136、およびシンク用蛇口137を含むものとして示されている。エンスイートシャワールーム122と123も、シャワー給湯口135と、シンク用の蛇口137を含む。逆に、クロークルームには、トイレ(図示せず)と蛇口138付きの洗面台があるだけである。最後に、キッチンには蛇口139付きのシンクがある。
【0093】
関連するメモリ141を備えたプロセッサ、またはシステム制御部140が、少なくとも1つの流量測定器110および少なくとも1つの流量調整器115に結合されている。2つの流路130および131の各々は、それぞれの流量測定器110および流量調整器115を備えることが理解されよう。プロセッサはまた、任意に、流路130および131の各々に対して1つずつ配置されている、1つ以上の温度センサ143に接続される。このプロセッサは、先に説明したようなエネルギーバンクに関連してもよい。
【0094】
プロセッサはまた、Wi-Fi、Bluetoothなどを介した双方向通信のために、少なくとも1つのRF送信機および少なくとも1つのRF受信機を含むRFトランシーバ142に接続されてもよく、好ましくは、サーバまたは中央局145への接続のためにインターネット144にも接続されてもよく、任意選択でセルラー無線ネットワーク(LTE、UMTS、4G、5Gなど)にも接続されてもよい。RFトランシーバ142および/またはインターネットへの接続によって、プロセッサ140は、例えばスマートフォンまたはタブレットであってもよい携帯端末150と通信することができ、これは、建物内給水設備のマッピングにおいて設置エンジニアが使用するためである。携帯端末150は、システム制御部140内の対応するソフトウェア、および潜在的にはサーバ145内の対応するソフトウェアと協働する、特定のアプリなどのソフトウェアを含み、本発明の実施形態によるマッピング方法を容易にし、特に、エンジニアによって行われるアクションをシステム制御部140/サーバ145のクロックに同期させる。メモリ141は、例えば、新しい設備を試運転するプロセス中に、プロセッサが建物内給水設備のマッピングをする方法を実行することを可能にするコードを含む。説明の便宜上、図6は給湯設備を示しているが、冷水供給設備も同様に考えられる。
【0095】
試運転プロセス中に、エンジニアは、プロセッサ/システム制御部140から、すべての給湯口(蛇口、シャワー、浴槽、台所など)を定義するよう求められる。システム制御部は、エンジニアに、各給湯口(蛇口、シャワー給湯口など)を完全に開き、関連する流量測定器110によって、結果として生じる水の流れを監視する。このプロセスの間、関連する流量測定器110は水流を測定し、プロセッサはこれらのデータを受け取り、その結果をデータベースに追加する。この情報に基づいて、システムは、その後、いずれかの給湯口が開かれたときに、関連する流量調整器115を制御することによって、各単一の蛇口に最も効率的な流量を供給することができる。
【0096】
次に、本開示の第1の側面による建物内給水設備のマッピング方法を、図6を参照して説明する。
【0097】
この方法は、複数の制御可能な給湯口のうちの第1の給湯口を開き、少なくとも第1の流量特性が決定されるまで、少なくとも1つの流量測定器110からの信号をプロセッサ140で処理し、その後、複数の制御可能な給湯口のうちの第1の給湯口を閉じることを含む。複数の制御可能な給湯口のうちの第1の給湯口の開放は、好ましくは、プロセッサまたはシステム制御部140が、関連するエンジニアが携帯する携帯端末150にメッセージを送信することによって指示される。例えば、命令はWi-Fiによって送信され、マスターバスルーム121の湯用の蛇口136を開けるようにエンジニアに伝えることができる。携帯端末150を携帯したエンジニアは、マスターバスルームに行き、湯用の蛇口136を全開にする。携帯端末は、エンジニアにいつ正確に蛇口を開けるかを伝えるために、好ましくは可聴でカウントダウンを伴うプロンプトを提供してもよい。あるいは、携帯端末上のアプリは、蛇口136が開かれる瞬間に、ボタンの押下または解放などのエンジニアからの入力を受け付けるように構成されてもよい。いずれの場合も、アプリは、プロンプトまたはその瞬間のローカル時刻を取得し、次に、このローカル時刻を、関連する制御可能な給湯口の識別情報とともに、システム制御部140またはサーバ145に送信することができる。このようにして、携帯端末150に到達するプロンプトの遅延、または制御部140またはサーバ145に到達する命令のタイミングの遅延に対応することができる(携帯端末150およびシステム制御部140は、好ましくは、マッピングプロセスの前または後のいずれかで、何らかのハンドシェイク工程を経るので、2つのデバイスのクロック間のオフセットは排除されるか、またはそれらに対応することができる)。
【0098】
その後、エンジニアは、アプリ上のリストまたはメニューから給湯口の識別情報を選択するか、または明確な識別情報を入力して、各給湯口を順番に開きながら、構内を回ることができる。あるいは、システム制御部には、すべての蛇口などのリスト(一般に「制御可能な給湯口」)がすでに提供されており、携帯端末150に別のメッセージを送信することによって、エンジニアに関連する給湯口に行くように促すこともできる。このアプリは、好ましくは、エンジニアがシステム制御部140/サーバ145に、所定の位置にいて、次の制御可能な給湯口を開ける指示を受け取る準備ができているというメッセージを送信するためのオプションを含む。そして、すべての給湯口とその流量特性、すなわち流量が検出されるまでの遅れ、流量の上昇率、最大流量、およびその他の識別可能な特性が捕捉され、データベースに保存されるまで、他の給湯口のそれぞれについてこのプロセスが繰り返される。データベースに格納された特性を使用することにより、プロセッサ140は、その後、検出された流量特性とそれぞれの流量特性との類似性に基づいて、複数の制御可能な給湯口のうちの特定の1つの給湯口の開放を認識することができる。
【0099】
また、プロセッサは、給湯口のタイプ(風呂の蛇口、台所の蛇口、洗面台の蛇口、クロークの蛇口)およびその場所(例えば、メインの浴室、バスルーム、子供部屋、大人の部屋、クローク、台所)に基づいて、好ましい流量および任意で流量の持続時間に関するいくつかの規則を備え、これらの規則を、検出された流量特性から認識される給湯口の識別情報と共に使用して、目標流量を決定する。そして、目標流量は、システム制御部140によって、関連する流量制御器115を制御することによって設定され、好ましくは、対応する流量測定器110によって監視される。このようにして、関連する給湯口の識別に基づいて少なくとも1つの流量調整器を制御することにより、プロセッサ140は、識別された制御可能な給湯口への水の供給を制御することができる。
【0100】
それぞれの流量特性は、それぞれの安定した流量を含んでもよい。そして、本方法は、プロセッサ140を、それぞれの安定流量に基づいて、複数の制御可能な給湯口の各々への流量について少なくとも10%カットを課すように少なくとも1つの流量調整器115を制御するように構成することをさらに含んでもよい。任意で、本方法は、それぞれの安定流量に基づいて、それぞれの安定流量が毎分7リットルより大きい複数の制御可能な給湯口のいずれかに、少なくとも10%の流量カットを課すように少なくとも1つの流量調整器115を制御するようにプロセッサ140を構成することをさらに含んでもよい。これは、特に、バスルーム、スイートルーム、特にクロークルームの洗面台で使用される蛇口に適用されるものであり、蛇口は、手洗い用の水(かなり控えめな流量で効果的に達成することができる)を供給するために使用されることが多い。
【0101】
給湯設備のマッピングについての上述した技術は、データベースに入力するため、またはニューラルネットワークまたは機械学習アルゴリズム(MLA)などのロジックを訓練するために使用されてもよく、このロジックは、前述のようにエネルギーバンクに関連付けられたプロセッサによって使用されてもよく、これにより、プロセッサは、検出された流量挙動から特定の給湯口または給湯口タイプを特定し、給湯設備からの給湯需要をより容易に推定することができる。これにより、ヒートポンプの制御効率やエネルギーバンクの使用効率が向上する。
【0102】
エネルギーバンクと、給湯設備におけるエネルギーバンクの設置、運転について説明してきたが、次にエネルギーバンクとヒートポンプを、給湯設備と暖房設備の両方にどのように組み込むかについて検討する。
【0103】
図7は、本開示の一態様によるインターフェースユニット10の構成要素の配置の可能性を概略的に示している。インターフェースユニットは、ヒートポンプ(この図には示されていない)と建物内給湯システムとの間のインターフェースとなる。インターフェースユニットは、筐体(別途番号を付さない)を備える熱交換器12を含み、この筐体内には、ヒートポンプに接続するための、非常に簡略化した形で14として示す入口側流路と、建物内給湯システム(この図には示さない)に接続するための、やはり非常に簡略化した形で16として示す出口側流路とがある。熱交換器12には、エネルギーを貯蔵するための蓄熱媒体も含まれているが、これは図には示されていない。これから図7を参照して説明する実施例では、蓄熱媒体は相変化材料である。インターフェースユニットは、先に説明したエネルギーバンクに相当することが理解されよう。特許請求の範囲を含む本明細書を通じて、エネルギーバンク、蓄熱媒体、エネルギー貯蔵媒体および相変化材料への言及は、文脈上明らかにそうでないことが要求されない限り、交換可能であると考えられるべきである。
【0104】
通常、熱交換器の相変化材料は、2~5Mジュールのエネルギー貯蔵容量(融解潜熱によって貯蔵されるエネルギー量)を持つが、それ以上のエネルギー貯蔵も可能であり、有用である。もちろん、より少ないエネルギー貯蔵量も可能であるが、一般的には、(物理的寸法、重量、コスト、安全性に基づく実用的な制約条件に従って)インターフェースユニット10の相変化材料におけるエネルギー貯蔵の可能性を最大化することが望まれる。適切な相変化材料とその特性、および寸法などについては、本明細書で後述する。
【0105】
入口側流路14は、ノード20から、ヒートポンプからの供給に接続するためのカップリング24を有するパイプ22の順に経て供給されるパイプまたは導管18に接続される。ノード20はまた、ヒートポンプからの流体をパイプ26に送り、このパイプ26は、例えば、床暖房やラジエーター、あるいはその両方への配管などの、家屋やアパートの暖房ネットワークに接続するためのカップリング28で終端する。従って、インターフェースユニット10が完全に設置され作動すると、ヒートポンプ(家屋またはアパートの外部にある)によって加熱された流体は、カップリング24を通り、パイプ22に沿ってノード20に至り、そこから三方弁32の設定に応じて、流体の流れはパイプ18に沿って熱交換器の入口側流路14に至り、またはパイプ26に沿って、カップリング28を通って施設の暖房インフラに至る。
【0106】
ヒートポンプからの加熱流体は、熱交換器の入口側流路14を通り、パイプ30に沿って熱交換器12から流出する。使用中、ある状況下では、ヒートポンプからの加熱流体によって運ばれる熱は、そのエネルギーの一部を熱交換器内の相変化材料に、一部を出口側流路16内の水に与える。他の状況では、後で説明するように、熱交換器の入口側流路14を流れる流体が相変化材料から実際に熱を取得する。
【0107】
パイプ30は、入口側流路14を出た流体を電動三方弁32に送り、弁の状態に応じてパイプ34に沿ってポンプ36に送り出す。ポンプ36は、カップリング38を介して外部ヒートポンプに流れを押し出す役割を果たす。
【0108】
電動三方弁32はまた、カップリング42を介して、家屋またはアパートの暖房インフラ(例えば、ラジエーター)から戻る流体を受けるパイプ40からも流体を受ける。
【0109】
電動三方弁32とポンプ36の間には、温度変換器44、流量変換器46、圧力変換器48の3つの変換器が設けられている。さらに、温度変換器49が、ヒートポンプの出力から流体を取り入れるパイプ22に設けられている。これらの変換器は、インターフェースユニット10内の他のすべての変換器と同様に、通常はインターフェースユニットの一部として提供されるが、別個のモジュールに提供することもできる、図示されていないプロセッサに動作可能に接続されているか、またはそのプロセッサによってアドレス指定可能である。
【0110】
図7には図示されていないが、ヒートポンプの出口から流体を受け取る連結器24の間の流路に、追加の電気加熱要素を設けることもできる。この追加の電気加熱要素は、再び誘導加熱要素または抵抗加熱要素であってもよく、ヒートポンプの潜在的な故障を補償する手段として提供されるだけでなく、(例えば、現在のエネルギーコスト、および暖房および/または給湯の予測に基づいて)蓄熱ユニットにエネルギーを追加するために使用することも可能である。追加の電気加熱要素も、もちろんシステムのプロセッサによって制御可能である。
【0111】
また、パイプ34には膨張容器50が接続されており、この膨張容器50には、加熱流路内の流体を補充するための充填ループが接続される弁52が接続されている。また、インターフェースユニットの加熱流路の一部として、ノード20と入口側流路14の中間にある圧力開放弁54と、カップリング42と三方弁32の中間にあるストレーナ56(粒子状汚染物質を捕捉する)が示されている。
【0112】
熱交換器12はまた、図示のように、より多く(例えば最大4つ以上)備えることが好ましいが、少なくとも1つの温度変換器58を含む複数の変換器と、圧力変換器60を備える。図示の例では、熱交換器には相変化材料内に均一に分布した4つの温度変換器が含まれており、温度変化を測定することができる(したがって、相変化材料の容積全体の状態に関する知識を得ることができる)。このような設備は、追加的な伝熱設備の最適化も含む、熱交換器の設計を最適化する手段として、設計/実装段階において特に有益である。しかし、このような設備は、複数のセンサを有することで、プロセッサおよびプロセッサ(インターフェースユニットのみ、および/またはインターフェースユニットを含むシステムのプロセッサのいずれか)によって採用される機械学習アルゴリズムに有用な情報を提供することができるため、配備されたシステムにおいても引き続き利益をもたらす可能性がある。
【0113】
次に、インターフェースユニット10の冷水供給源と給湯流路の配置について説明する。カップリング62は、水道本管からの冷水供給源に接続するために設けられている。通常、水道本管からの水がインターフェースユニット10に到達する前に、水は反サイフォン逆止弁を通過し、圧力が低下している可能性がある。冷水はカップリング62からパイプに沿って熱交換器12の出口側流路16に流れる。インターフェースユニット内の多数のセンサを監視するプロセッサを提供することを考えると、同じプロセッサに、任意でもう1つのするべきタスクを与えることができる。それは、主給水源からの冷水の供給圧力を監視することである。この目的のために、カップリング62の上流、特に設備内の減圧装置の上流の冷水供給ラインに、さらなる圧力センサを導入することができる。プロセッサは、供給される水圧を継続的または定期的に監視し、水道本管が法定最低圧力を下回る圧力で水を供給する場合、所有者/使用者が水道会社に補償を求めるよう促すこともできる。
【0114】
熱交換器を通過することによって加熱された水が、出口側流路16からパイプ66を通って電気加熱ユニット68に送られる。前述したプロセッサの制御下にある電気加熱ユニット68は、プロセッサからの指示に従って熱出力を調節することができる抵抗加熱または誘導加熱装置を備えてもよい。
【0115】
プロセッサは、相変化材料およびヒートポンプの状態に関する情報に基づいて、電気ヒータを制御するように構成される。
【0116】
典型的には、電気加熱ユニット68は、10kW以下の定格電力を有するが、状況によっては、より強力な、例えば12kWのヒータを設けてもよい。
【0117】
今度は湯が電気ヒータ68からパイプ70を通ってカップリング74に至り、このカップリング74に家屋やアパートの蛇口やシャワーなどの制御可能な給湯口を含む給湯流路が接続される。
【0118】
温度変換器76は、電気ヒータ68の後、例えば電気ヒータ68の出口に設けられ、給湯システムの給湯口の水温に関する情報を提供する。圧力逃し弁77も給湯設備に設けられ、これは電気ヒータ68と給湯口温度変換器76の間に位置するように示されているが、図6に示された多くの部品がそうであるように、その正確な位置は重要ではない。
【0119】
また、給湯ラインのどこかには、圧力変換器79と流量変換器81があり、そのいずれかをプロセッサが使用して、給湯の要求を検知する、すなわち、蛇口やシャワーなどの制御可能な給湯口が開いたことを検知することができる。流量変換器は、可動部のないもの、例えば音波式流量検出器や磁気式流量検出器などが好ましい。プロセッサは、これらの変換器の一方または両方からの情報を、記憶されたロジックと共に使用して、ヒートポンプに始動信号を送るかどうかを決定することができる。
【0120】
プロセッサは、空間暖房の需要(例えば、プロセッサ内または外部制御部に保存されたプログラムに基づいて、および/または1つ以上のサーモスタット(例えば、部屋のスタット、外部のスタット、床暖房のスタット)からの信号に基づいて)または湯の需要に基づいて、ヒートポンプの起動を要求できることが理解されよう。ヒートポンプの制御は、単純なオン/オフコマンドの形態であってもよく、同様にまたは代替的に、(例えばModBusを使用した)変調の形態であってもよい。
【0121】
インターフェースユニットの加熱流路と同様に、冷水供給パイプ64に沿って、温度変換器78、流量変換器80および圧力変換器82の3つの変換器が設けられている。別の温度変換器84も、熱交換器12の出口側流路16の出口と電気ヒータ68の中間のパイプ66に設けられている。これらの変換器は、やはりすべて、前述したプロセッサに動作可能に接続されているか、またはアドレス可能である。
【0122】
また、冷水供給ライン64上には、磁気式または電気式の水調整器86、電動式で調節可能な弁88(これは、すべての電動式弁と同様に、先に述べたプロセッサによって制御されてもよい)、逆止弁86、および膨張容器92が示されている。調節可能な弁88は、湯の所望の温度(例えば温度変換器76によって測定される)を維持するために、冷水の流れを調節するように制御することができる。
【0123】
弁94と96はまた、それぞれ冷水と温水を貯蔵するための外部貯蔵タンクに接続するために設けられていてもよい。最後に、二重逆止弁98は、冷水供給管64を加熱流路に多くの水または水と腐食防止剤の混合物を充填するために、前述の弁52に接続する充填ループと共に使用することができる別の弁100に接続するために設けられてもよい。
【0124】
図7には、交差する様々なパイプが示されているが、これらの交差がノード20のようにノードとして示されていない限り、前述の図の説明から明らかなように、交差するように示された2つのパイプは互いに連通しないことに注意すべきである。
【0125】
図7には示されていないが、熱交換器12は、蓄熱媒体に熱を入れるように構成された1つ以上の追加の電気加熱要素を含んでもよい。これは直感に反するように見えるかもしれないが、これから説明するように、そうすることが経済的に理にかなっている時に、蓄熱媒体をプリチャージするために電気エネルギーを使用することを可能にする。
【0126】
エネルギー供給会社では、需要が増加または減少する時間帯を考慮し、需要量と供給能力のバランスをより良くするために、顧客の行動を形成するのに役立つように、時間帯によって電力料金単価が変化する料金プランを設定することが長い間行われてきた。歴史的に、料金プランは発電と消費の両方の技術を反映した粗いものであった。しかし、太陽光発電(太陽電池、パネル、発電所など)や風力発電など、再生可能エネルギーによる電力が各国の発電設備に導入されるようになり、よりダイナミックなエネルギー価格設定の開発に拍車がかかっている。このアプローチは、天候に左右される発電に固有の変動性を反映したものである。このようなダイナミックな価格設定は、当初は大規模な利用者に限定されていたが、次第に家庭における消費者にも提供されるようになってきている。
【0127】
価格設定のダイナミズムの程度は国によって、また同じ国でも生産者によって異なる。極端な言い方をすれば、「ダイナミックな」価格設定とは、1日のうちで異なる時間帯に異なる料金体系を提供することにすぎず、そのような料金体系は、数週間、数ヵ月、あるいは数シーズン、変更されることなく適用される。しかし、ダイナミックな価格設定の中には、サプライヤーが1日以内の予告で価格を変更できるものもあり、例えば、明日の30分間の枠について今日の価格で提供することもできる。国によっては6分という短い時間枠もあり、また、エネルギー消費機器に「インテリジェンス」を組み込むことで、消費者に今後の料金を通知するリードタイムをさらに短縮できる可能性もある。
【0128】
短期・中期の気象予測を用いて、太陽光発電や風力発電設備で生産されるエネルギー量と、冷暖房のための電力需要の規模を予測することができるため、膨大な需要が生じる時期を予測することが可能になる。再生可能エネルギーによる発電能力が大きい発電事業者の中には、マイナス料金で電力を供給している(文字通り、余剰電力を使用するためにお金を支払っている)。さらに多くの場合、電力は通常の料金の数分の一で提供されることもある。
【0129】
電気ヒータを、本開示によるシステムの熱交換器などのエネルギー貯蔵ユニットに組み込むことにより、消費者が低コストの供給期間を利用し、エネルギー価格の高い時期に電力への依存を減らすことが可能になる。これは個々の消費者に利益をもたらすだけでなく、化石燃料の燃焼によって過剰な需要を満たさなければならない時期の需要を削減できるため、より一般的にも有益である。
【0130】
インターフェースユニットのプロセッサは、インターネットなどのデータネットワークへの有線または無線接続(またはその両方)を有し、プロセッサがエネルギー供給業者からダイナミックな価格設定の情報を受信できるようにする。プロセッサはまた、ヒートポンプに命令を送信し、ヒートポンプから情報(ステータス情報や温度情報など)を受信するために、ヒートポンプへのデータリンク接続(ModBusなど)を備えていることが好ましい。プロセッサは、家庭の行動を学習するロジックを備えており、これとダイナミックな価格設定の情報とにより、プロセッサは、暖房システムのプリチャージに安い電力を使うかどうか、またいつ行うかを決定することができる。これは、熱交換器内の電気要素を使用してエネルギー貯蔵媒体を加熱することによってもよいが、ヒートポンプを通常よりも高い温度(例えば40~48℃ではなく60℃)に駆動することによっても可能である。ヒートポンプが高温で作動すると効率は低下するが、これは安い電気をいつどのように使うのが最適であるか、プロセッサが決定の際に考慮することができる。
【0131】
システムプロセッサは、インターネットやプロバイダのイントラネットなどのデータネットワークに接続可能であるため、ローカルのシステムプロセッサは、外部のコンピューティングパワーの恩恵を受けることができる。例えば、インターフェースユニットの製造元は、クラウド(またはイントラネット)を持っている可能性が高く、そこでは、例えば、予測される稼働率、活動、料金(短期/長期)、天気予報(天気予報は、ローカルプロセッサが簡単に使用できるように前処理することができ、また、インターフェースユニットが設置されている物件の状況、場所、露出に合わせて特別に調整することができるため、一般に入手可能な天気予報よりも望ましいかもしれない)、偽陽性および/または偽陰性の識別などの計算のためにコンピューティングパワーが提供される。
【0132】
給湯システムからの過熱水による火傷のリスクから使用者を保護するために、火傷防止機能を設けることが賢明である。これは、熱交換器の出口側流路から出る際に、冷水供給源からの冷水を湯に混合する電気的に制御可能な(調節可能な)弁を設けるという形をとることができる(追加の弁は、先に述べた既存の弁94と96があるノードの間に取り付けることができる)。
【0133】
図7は、インターフェースユニットの「臓器」と考えられるものを概略的に示しているが、これらの「臓器」の容器は示していない。本開示によるインターフェースユニットの重要な用途は、ヒートポンプを、以前はガス焚きコンビネーションボイラーが設置されていた(または、そうでなければそのようなボイラーが設置されている可能性がある)住居の空間暖房および給湯要件に実用的に寄与するものとして使用できるようにするための手段であり、従来のコンビボイラーの場合と同様に、美観と安全性の両方のために容器を提供することがしばしば便利であることが理解されるであろう。さらに、好ましくは、そのような容器は、通常、壁に取り付けられ、多くの場合、キッチンキャビネットと共存するキッチンに設置されるコンビボイラーを直接交換できるようなフォームファクタ内に収まるような寸法にされる。高さ、幅および奥行きを有する概ね長方形の立方体(もちろん、美観、人間工学、または安全性のために、容器の表面のいずれかまたはすべてに曲面が使用されてもよい)の形状に基づき、適切なサイズは、おおよその範囲に見出すことができ、高さが650mm~800mm、幅が350mm~550mm、奥行きが260mm~420mm、例えば、高さが800mm、幅が500mm、奥行きが400mmであるが、より大きな、特に背の高いユニットが収容可能な状況で設置するために提供されてもよい。
【0134】
本開示によるインターフェースユニットのガスコンビボイラーに対する1つの顕著な違いは、後者の容器は一般に、高温の燃焼室が存在するため、鋼鉄などの不燃性材料で作らなければならないが、インターフェースユニットの内部温度は一般的に、100℃よりかなり低く、通常は70℃以下、また時には60℃以下であることである。そのため、インターフェースユニットの容器を製造する際には、木や竹、あるいは紙などの可燃性材料を使用することが現実的となる。
【0135】
燃焼がないことにより、一般にガスコンビボイラーの設置に適しているとは決して考えられない場所にインターフェースユニットを設置する可能性も広がり、そしてもちろん、ガスコンビボイラーとは異なり、本開示によるインターフェースユニットは、排気ガス用の煙道を必要としない。そのため、例えば、キッチンのワークトップの下に設置するためのインターフェースユニットを構成することが可能になり、カウンター下のコーナーに代表される悪名高いデッドスポットを利用することもできる。このような場所に設置する場合、好ましくはキッチンキャビネットの製造業者と協力することにより、インターフェースユニットをカウンター下の食器棚に組み込むこともできる。しかし、配置のための最大の柔軟性は、何らかの形のキャビネットの後ろに効果的に設置されるインターフェースユニットを持ち、そのキャビネットがインターフェースユニットにアクセスできるように構成されることによって得られるであろう。インターフェースユニットは、好ましくは、循環ポンプ36が入口側流路の流路から切り離される前に、循環ポンプ36をスライドさせて熱交換器12から離すことができるように構成される。
【0136】
また、フィットキッチンでよく無駄になるスペース、すなわちカウンター下の食器棚の下のスペースを活用することも検討できる。高さが150mm以上、奥行きが600mm前後、幅が300mm、400mm、500mm、600mm以上のスペースがあることが多い(ただし、キャビネットを支える脚を考慮する必要がある)。特に新規に設置する場合、あるいはキッチンの改修に伴ってコンビボイラーを交換する場合、少なくともインターフェースユニットの熱交換器を収容するためにこれらのスペースを使用すること、または特定のインターフェースユニットに対して複数の熱交換器ユニットを使用することは理にかなっている。
【0137】
特に、壁掛け用に設計されたインターフェースユニットの場合、インターフェースユニットの用途が何であれ、潜在的に有益なことであるが、インターフェースユニットを複数のモジュールとして設計することが望ましい場合が多い。このような設計の場合、相変化材料の存在により、熱交換器だけで25kgを超える重量になる可能性があるため、熱交換器をモジュールの1つとするのが便利である。衛生上および安全上の理由から、また一人の作業による据付を容易にするために、インターフェースユニットは、どれも約25kgを超えないモジュールのセットとして納入されることが望ましい。
【0138】
このような重量制約は、モジュールの1つを、インターフェースユニットを構造物に取り付けるためのシャーシにすることで対応できる。例えば、インターフェースユニットを既存のガスコンビボイラーの代わりに壁に取り付ける場合、他のモジュールを支持するシャーシをまず壁に固定すると便利である。好ましくは、シャーシは、交換されるコンビボイラーを支持するために使用される既存の固定点の位置と対応するように設計される。これは、一般的なガスコンビボイラーの間隔および位置に応じて予め形成された固定穴を有する「ユニバーサル」シャーシを提供することによって潜在的に行うことができる。あるいは、特定のメーカーのボイラーに適合する穴の位置/サイズ/間隔を持つさまざまなシャーシを製造することもコスト的に効果的である。そうすれば、該当するメーカーのボイラーを交換するのに適したシャーシを指定するだけでよい。この方法には複数の利点がある。固定ボルトを通すためにプラグ用の穴をさらに開ける必要がなくなるだけでなく、墨出し、穴あけおよび清掃に必要な時間がなくなるだけでなく、設置場所の住宅の構造をさらに弱くする必要がなくなり、これは、「スターターハウス」やその他の低価格住宅で頻繁に使われる低コストの建設技術や材料を考えると、重要な考慮事項となりうる。
【0139】
好ましくは、熱交換器モジュールとシャーシモジュールは結合するように構成される。このようにすることで、分離可能な締結具の必要性を回避することが可能となり、再び設置時間を節約することができる。
【0140】
好ましくは、追加モジュールは、熱交換器12の出口側流路16を建物内給湯システムに結合するための第1の相互接続部、例えば62と74を含む。好ましくは、追加モジュールは、熱交換器12の入口側流路14をヒートポンプに結合するための第2の相互接続部、例えば38と24も含む。好ましくは、追加モジュールには、インターフェースユニットを、インターフェースユニットが使用される建物内の熱回路に接続するための第3の相互接続部、例えば42と28も含む。最初に接続部をシャーシに取り付けるのではなく、熱交換器を壁に直接接続されているシャーシに取り付けることにより、熱交換器の重量を壁に近づけ、インターフェースユニットを壁に固定する壁の固定具への片持ち梁荷重の影響を軽減することができる。
【0141】
相変化材料
相変化材料の1つの適切なクラスは、家庭用給湯やヒートポンプとの併用において想定される温度で固液相変化するパラフィンワックスである。特に興味深いのは、40~60℃の範囲で溶融するパラフィンワックスであり、この範囲内であれば、特定の用途に合わせて異なる温度で溶融するワックスを見つけることができる。典型的な潜熱容量は約180kJ/kgから230kJ/kgの間であり、比熱はおそらく液相では2.27Jg-1-1、固相では2.1Jg-1-1である。融解潜熱を利用することで、非常に多くのエネルギーを貯蔵できることがわかる。相変化液体を融点以上に加熱することで、より多くのエネルギーを貯蔵することもできる。例えば、電気代が比較的安く、間もなく湯が必要になることが予測できる場合(電気代が高くなりそうな、あるいは高くなることが分かっている場合)、通常よりも高い温度でヒートポンプを作動させ、熱エネルギー貯蔵器を「過熱」することは理にかなっている。
【0142】
ワックスとしては、n-トリコサンC23やパラフィンC20-C33など、融点が約48℃のものが適している。熱交換器全体(ヒートポンプから供給される液体と熱交換器内の相変化物質との間)に標準的な3Kの温度差を適用すると、ヒートポンプの液体温度は約51℃になる。出口側でも同様に、3Kの温度降下を許容すると、一般家庭の温水としては十分な45℃の水温になり、これは台所の蛇口には十分熱いが、シャワーや浴室の蛇口には少し高い可能性があるが、水温を下げるために、明らかに常に冷水を流路に追加可能になっている。もちろん、家庭がより低い湯温を受け入れるように訓練されている場合や、その他の理由で受け入れられる場合には、融点の低い相変化材料が検討される可能性があるが、一般的には45~50の範囲の相転移温度が良い選択となる可能性が高い。もちろん、このような温度で水を貯蔵することによるレジオネラ菌のリスクも考慮したいところであり、先に述べた殺菌技術は、このリスクを管理する手段を提供するものである。
【0143】
ヒートポンプ(地中熱源ヒートポンプや空気熱源ヒートポンプなど)の運転温度は60℃まで(ただし、プロパンを冷媒として使用すれば72℃まで可能)だが、45~50℃の範囲で運転した方が効率がはるかに高くなる傾向がある。したがって、相転移温度の48℃から51℃の温度で運転すれば、満足のいく結果が得られるだろう。
【0144】
ヒートポンプの温度性能についても考慮する必要がある。一般的に、ΔT(ヒートポンプによって加熱される流体の入力温度と出力温度の差)の最大値は5~7℃の範囲に保たれることが望ましいが、10℃まで高くすることも可能である。
【0145】
パラフィンワックスはエネルギー貯蔵媒体として使用するのに好ましい材料であるが、適した材料はそれだけではない。塩水和物も本発明のような潜熱エネルギー貯蔵システムに適している。ここでいう塩水和物とは、無機塩と水の混合物であり、その相変化は水の全部または多くの喪失を伴う。相転移の際、水和物の結晶は無水(または水分の少ない)塩と水に分かれる。塩水和物の利点は、パラフィンワックスよりも熱伝導率が非常に高く(2倍から5倍)、相転移に伴う体積変化が非常に小さいことである。本用途に適した塩水和物はNa.5HOで、融点は48~49℃、潜熱は200/220kJ/kgである。
【0146】
単にエネルギー貯蔵という点では、40~50℃の範囲を大幅に超える相転移温度を持つPCMの使用も考慮できる。例えばパラフィンワックスで、ワックスには幅広い融点がある。
【0147】
約40℃の融点を有するn-ヘンイコサンC24
約44.5℃の融点を有するn-ドコサンC21
約52℃の融点を有するn-テトラコサンC23
約54℃の融点を有するn-ペンタコサンC25
約56.5℃の融点を有するn-ヘキサコサンC26
約59℃の融点を有するn-ヘプタコサンC27
約64.5℃の融点を有するn-オクタコサンC28
約65℃の融点を有するn-ノナコサンC29
約66℃の融点を有するn-トリアコサンC30
約67℃の融点を有するn-ヘントリアコサンC31
約69℃の融点を有するn-ドトリアコサンC32
約71℃の融点を有するn-トリアトリアコサンC33
約58~60℃の融点を有するパラフィンC22-C45
約66~68℃の融点を有するパラフィンC21-C50
約69~71℃の融点を有する
約71℃の融点を有するRT70HC
【0148】
あるいは、融点が約58℃で潜熱が226/265kJ/kgのCHCOONa.3HOのような塩水和物を使用してもよい。
【0149】
これまでのところ、熱エネルギー貯蔵器は、1つ以上のコイルまたはループの形をした入口側流路および出口側流路をそれぞれ有する熱交換器内に、単一の質量の相変化材料を有するものとして主に説明されてきた。しかし、例えば、出口側流路(好ましくは、(家庭用)給湯システムに給湯を供給するために使用される)が熱を抽出する熱伝導液によって取り囲まれている複数の密閉体、例えば、金属(例えば、銅または銅合金)シリンダー(または他の細長い形状)に相変化材料を封入することも、熱伝導速度の点で有益である。
【0150】
このような構成によると、熱伝導液は熱交換器内に密閉されていてもよいし、より好ましくは、熱伝導液はエネルギー貯蔵器内を流れていてもよく、エネルギー貯蔵器内の入口側伝熱コイルを使用することなく、グリーンエネルギー源(例えばヒートポンプ)から熱を伝達する熱伝導液であってもよい。このようにして、入口側流路は、単に1つの(またはより一般的には複数の)入口と1つ以上の出口によって提供されてもよく、熱伝導液が、コイルまたは他の規則的な導管によって閉じ込められることなく、熱交換器内を自由に通過し、熱伝導液が封入化PCMに熱を伝達し、またはこれから熱を伝達し、次に出口側流路に(したがって出口側流路内の水に)熱を伝達する。このように、入口側流路は、熱伝導液のための1つ以上の入口と1つ以上の出口、および封入化PCMを通過してエネルギー貯蔵器を通る自由形状の経路(複数可)によって定義される。
【0151】
好ましくは、PCMは、1つ以上の間隔を空けて配置された複数の細長い閉端パイプ(パイプの千鳥列など、各列は間隔を空けて配置された複数のパイプを有する)に封入され、熱伝導液は、好ましくは、入口から出口への経路で、または入口側コイルが使用される場合には、熱エネルギー貯蔵器内に設けられた1つ以上の羽根車によって導かれるように、パイプ上を横方向(またはパイプまたは他の封入容器の長さ方向に対してこれを横切る方向)に流れるように配置される。
【0152】
任意で、出口側流路はエネルギー貯蔵器の上部に配置され、封入されたPCMの上方に配置されてもよく、その容器は水平に配置され、入口側ループまたはコイルの上方に配置されてもよく(対流がエネルギー貯蔵器を通して上方へのエネルギー伝達をサポートするように)、または封入されたPCMに対して、また任意で上方の出口側流路に向かって、流入する熱伝導液を導く入口を備えてもよい。1つ以上の羽根車が使用される場合、好ましくは、羽根車または各羽根車は、エネルギー貯蔵器の筐体の完全性を損なわないように、外部に取り付けられたモーターに磁気的に結合される。
【0153】
任意に、PCMは、典型的には円形断面の細長い管に封入することができ、公称外径は20~67mmの範囲、例えば22mm、28mm、35mm、42mm、54mm、または67mmであり、典型的にはこれらの管は配管用に適した銅で形成される。好ましくは、パイプの外径は22mmから54mmの間、例えば28mmから42mmの間である。
【0154】
熱伝導液は、好ましくは、水または流動添加剤、腐食防止剤、凍結防止剤、殺生物剤のうちの1つ以上と混合された水のような水性液体であり、例えば、セントラルヒーティングシステムで使用するために設計されたタイプの防止剤、例えば、適度に水で希釈されたSentinel X100またはFernox F1(両方ともRTM)を含んでもよい。
【0155】
したがって、本出願の明細書および特許請求の範囲を通して、入口側流路という表現は、文脈上明らかにそうでないことが要求されない限り、上述したような配置を含み、入口側流路の入口からその出口への液体の流れの経路が、通常の導管によって画定されるのではなく、むしろ、エネルギー貯蔵器の筐体内を実質的に自由に流れる液体を含むと解釈されるべきである。
【0156】
PCMは、円形または概ね円形の断面を有する複数の細長い円筒に封入されてもよく、円筒は好ましくは1つ以上の列に間隔を空けて配置される。好ましくは、隣接する列のシリンダーは、熱伝導液からの熱伝導および熱伝導液への熱伝導を容易にするために、互いに対してずらして配置されている。任意で、入口側マニホールドによって供給される封入体に向かって、封入上に入力伝熱液を導く、複数の入力ノズルの形態であってもよい1つ以上の入力ポートによって、封入体に関する空間に熱伝導液が導入される入口配置が提供される。ノズルの出口の穴は、断面が概ね円形であってもよいし、封入されたPCMにより効果的に熱を伝達する液体のジェットまたはストリームを生成するために細長くてもよい。マニホールドは、流量を増加させ圧力損失を減少させる目的で、一端から供給してもよく、対向する両端から供給してもよい。
【0157】
熱伝導液は、グリーンエネルギー源(ヒートポンプや太陽熱給湯システムなど)のポンプ、または他のシステムのポンプの作用の結果としてエネルギー貯蔵器12に送り込まれることもあれば、熱エネルギー貯蔵器が独自のポンプを含むこともある。入口側流路の1つ以上の出口でエネルギー貯蔵器から出た後、熱伝導液はエネルギー源(例えばヒートポンプ)に直接戻るか、または1つ以上の弁を使用して、グリーンエネルギー源に戻る前に暖房設備(例えば床暖房、ラジエーターまたは他の形態の空間暖房)を最初に通過するように切り替え可能であってもよい。
【0158】
封入体は、出口側流路のコイルが封入体の上方に配置された状態で水平に配置されてもよい。これは、単に多くの可能な配置と向きのうちの1つであることが理解されよう。同じ配置で、封入体を垂直に配置することも同様に可能である。
【0159】
あるいは、PCM封入を使用するエネルギー貯蔵器は、再び、先に説明したような円筒形の細長い封入体を使用することができるが、この場合、入口側流路は、例えばコイルの形の導管の形態である。封入体は、その長軸が垂直に配置され、入口側コイル14と出口側コイル18がエネルギー貯蔵器12の両側に配置されてもよい。しかし、この配置は、入口側流路を下部に、出口側流路を上部に配置し、封入体をその長軸を水平に配置するなど、別の向きで使用することもできる。好ましくは、入口側コイル14の周囲から封入体に向かってエネルギー伝導液を推進するために、1つ以上の羽根車がエネルギー貯蔵器12内に配置される。好ましくは、羽根車または各羽根車は、磁気駆動システムを介して、外部に取り付けられた駆動ユニット(例えば、電気モーター)に連結され、これにより、エネルギー貯蔵器12の筐体は、駆動軸を受け入れるために穿孔される必要がなく、それにより、そのような軸が筐体に入る箇所における漏れの危険性が低減される。
【0160】
PCMが封入されていることにより、エネルギー貯蔵のために複数の相変化材料を使用するエネルギー貯蔵器を容易に構築することが可能になり、特に、異なる転移(例えば融解)温度を有するPCMを組み合わせることができるエネルギー貯蔵器を作成することができ、それによりエネルギー貯蔵器の動作温度を拡張することができる。
【0161】
上述したタイプの実施形態では、エネルギー貯蔵器12は、熱伝導液(水または水/抑制剤溶液など)と組み合わせて潜熱としてエネルギーを貯蔵するための1つ以上の相変化材料を含むことが理解されよう。
【0162】
相変化材料の相変化によって引き起こされる圧力の上昇に応答して体積が減少し、相変化材料の逆相変化によって引き起こされる圧力の低下に応答して再び膨張するように構成されている複数の弾性体が、好ましくは、封入体内の相変化材料と共に提供される(それらはまた、本明細書の他の箇所に記載されているように、「かさばる」PCMを使用するエネルギーバンクに使用されてもよい)。
【0163】
図1を参照して前述したように、相変化材料の状態は、その内部圧力に基づいて決定されてもよい。圧力変換器は、インターフェースユニットのプロセッサに結合されてもよい。したがって、インターフェースユニットのプロセッサは、相変化材料のエネルギー貯蔵量に関する情報を提供する、相変化材料の固化/液化の程度に関連する信号を受信する。インターフェースユニットのプロセッサは、相変化材料の固化の度合い(より一般的には状態)を圧力変換器からの圧力信号にマッピングできるように、製造中に、またはその後、プロトタイプの経験的分析に基づいてプログラムすることができる。例えば、生産前のプロトタイプにはガラス製のサイドパネルが取り付けられ、検査/分析によって相変化材料の状態を判断し、その状態を圧力変換器からの圧力信号に対してマッピングすることができ、使用されている相変化材料の融解潜熱を知ることで、測定された圧力ごとに熱交換器に蓄えられる潜熱量を計算することができる。このようにして得られたデータは、生産インターフェースユニットのプロセッサのプログラミングや、このプロセッサやシステム内の他のプロセッサに機械学習アルゴリズムを知らせる際に使用することができる。
【0164】
先に述べたように、相変化材料の状態を監視する別の方法は、先に述べた方法の代替として、またはこれらの1つ以上に加えて提供され得るが、1つまたは複数の適切に配置された光センサ(光検出器)による検出のために、相変化材料の本体に光放射線を放出する1つ以上の光源を提供することであろう。1つ以上の光源は、単一の波長、または波長の範囲(すなわち、実質的に単一の色)で動作してもよく、または2つ以上の間隔をあけた波長(すなわち、異なる色)で動作してもよい。放射は、スペクトルの可視領域または赤外領域であってもよく、複数の色の光が使用される場合はその両方であってもよい。光源は、LEDなどのインコヒーレント光源であってもよいし、レーザー、例えばLEDレーザーであってもよい。光源は、単一の赤、緑、または青色の発光ダイオードであってもよい。光検出器は、光検出器から受信した情報に基づいて相変化材料に蓄積されたエネルギー量を推定するように構成されたプロセッサ(例えば、インターフェースユニットのプロセッサ)に結合されてもよい。
【0165】
先に述べたように、相変化材料の状態を監視する別の方法は、先に述べた方法の代替として、またはこれらの1つ以上に加えて提供され得るが、熱交換器内の相変化材料に音を発射するように構成された音響源と、音が相変化材料を通過した後に音響源から発射された音を検出する音響検出配置とを提供することであろう。好ましくは、音響源は超音波を発生するように構成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7