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特許7595198太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0236 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 31/0745 20120101ALN20241128BHJP
【FI】
H01L31/04 280
H01L31/06 450
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024002084
(22)【出願日】2024-01-10
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】202311297963.8
(32)【優先日】2023-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522171073
【氏名又は名称】晶科能源(海▲寧▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】張彼克
(72)【発明者】
【氏名】張博
(72)【発明者】
【氏名】金井昇
(72)【発明者】
【氏名】徐夢微
(72)【発明者】
【氏名】チン カ ニ
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/211729(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/098955(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122257(WO,A1)
【文献】特開2018-129511(JP,A)
【文献】特開2017-028292(JP,A)
【文献】特開2021-185625(JP,A)
【文献】特開2023-024204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0236
H01L 31/04-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期N型シリコン基板を提供し、前記初期N型シリコン基板は対向する第1面と第2面を備えることと、
前記第1面と前記第2面の両方にピラミッド構造を形成するように、前記初期N型シリコン基板に対してテクスチャ形成処理を行うことと、
初期溝を形成するように、第1エッチング工程で前記第2面をエッチングすることと、
第2エッチング工程で前記第2面をエッチングし続け、前記初期溝の寸法を増やし、これによって、溝を備えたN型シリコン基板を形成し、且つ、一部の前記溝が同じ方向に沿って順次配列され、ここで、前記第1エッチング工程による前記第2面のエッチング速度が前記第2エッチング工程による前記第2面のエッチング速度よりも小さく、前記ピラミッド構造が形成された前記第1面を前記N型シリコン基板の前面とし、前記第1エッチング工程と前記第2エッチング工程で処理された前記第2面を前記N型シリコン基板の裏面とすることと、
前記裏面から離れた方向において、前記裏面にトンネル誘電体層及びドーピング導電層を順次形成することと、を含む、
ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1エッチング工程で前記第2面をエッチングすることは、前記初期N型シリコン基板を第1エッチング液に浸すことを含み、
前記第2エッチング工程で前記第2面をエッチングし続けることは、前記初期N型シリコン基板を第2エッチング液に浸すことを含み、
ここで、前記第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、前記第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率以下である、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記第1エッチング液と前記第2エッチング液には、いずれも保護剤が含まれており、且つ、前記保護剤は、前記第1エッチング液における質量分率が前記第2エッチング液における質量分率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記第1エッチング工程で前記第2面をエッチングする時の周囲温度を第1温度とし、前記第2エッチング工程で前記第2面をエッチングする時の周囲温度を第2温度とし、前記第1温度は、前記第2温度よりも低い、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記第1エッチング工程による前記第2面のエッチング時間を第1時間とし、前記第2エッチング工程による前記第2面のエッチング時間を第2時間とし、前記第1時間は、前記第2時間以上である、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、太陽電池の分野に関し、特に、太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、化石エネルギーの漸進的な枯渇に伴い、太陽電池は、新エネルギーの代替品として、ますます広く使用されている。太陽電池は、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。太陽電池は光起電力の原理を利用してキャリアを生じさせ、そして、電極を使ってキャリアを引き出し、電気エネルギーの効果的な利用に役立つ。
【0003】
現在の太陽電池には、主にIBC(インターディジティテッドバックコンタクト、Interdigitated Back Contact)セル、TOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト)セル、PERC(裏面不動態型セル、Passivated emitter and real cell)セル及びヘテロ接合型セルなどが含まれている。
【0004】
しかしながら、太陽電池の光電変換効率を向上させるために、太陽電池におけるフィルム層の表面形態について、さらなる検討が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願実施例には、少なくとも、N型シリコン基板の裏面の形態を変更することで太陽電池の光電変換効率を向上させることに有利である太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願のいくつかの実施例によれば、本願実施例の一態様では、太陽電池が提供され、この太陽電池は、対向している前面と裏面とを備えたN型シリコン基板と、前記前面に位置するパッシベーション層と、前記裏面に位置するトンネル誘電体層と、前記トンネル誘電体層に位置するドーピング導電層と、を含み、前記前面が複数のピラミッド構造を備え、前記裏面が複数の溝を備え、一部の前記溝が同じ方向に沿って順次配列されている。
【0007】
いくつかの実施例では、複数の前記溝は、N個の溝群を含み、いずれかの前記溝群は、同じ方向に沿って順次配列された複数の前記溝を含み、且つ、異なる前記溝群における複数の前記溝の配列方向は、同じであるか、または、異なっており、Nが2以上の正整数である。
【0008】
いくつかの実施例では、隣接する前記溝群の間に間隔があり、及び/又は、隣接する前記溝群における少なくとも一部の前記溝の間には、重複領域がある。
【0009】
いくつかの実施例では、少なくとも一部の隣接する前記溝の間に間隔があり、及び/又は、少なくとも一部の隣接する前記溝の間には、重複領域がある。
【0010】
いくつかの実施例では、前記裏面から離れた方向において、前記溝は、対向して設置された底面及び上部開口と、前記底面と前記上部開口の間に位置する側壁と、を備え、前記底面の前記N型シリコン基板における正投影の面積が前記上部開口の前記N型シリコン基板における正投影の面積よりも小さい。
【0011】
いくつかの実施例では、前記溝の前記N型シリコン基板における正投影の形状は、M角形であり、Mは3以上の正整数である。
【0012】
いくつかの実施例では、前記裏面から離れた方向において、前記溝は、上部開口を備え、前記上部開口の1次元寸法は、1μm~20μmである。
【0013】
いくつかの実施例では、前記裏面における前記溝の分布密度は、1,000個/mm~50,000個/mmである。
【0014】
いくつかの実施例では、前記裏面から離れた方向において、前記溝の深さの最大値は、50nm~2,000nmである。
【0015】
いくつかの実施例では、前記ドーピング導電層は、N型ドーピング元素を備え、且つ前記ドーピング導電層は、前記トンネル誘電体層の前記N型シリコン基板から離れた表面を覆っている。
【0016】
いくつかの実施例では、前記ドーピング導電層は、P型ドーピング元素を備え、且つ前記ドーピング導電層は、前記トンネル誘電体層の前記N型シリコン基板から離れた表面を覆っている。
【0017】
いくつかの実施例では、前記ドーピング導電層は、互いに間隔をあけて設置された第1部分及び第2部分を含み、前記第1部分と前記第2部分のうちの一方が前記N型シリコン基板と同じ導電型のドーピング元素を備え、他方が前記N型シリコン基板と異なった導電型のドーピング元素を備える。
【0018】
本願のいくつかの実施例によれば、本願実施例の別の態様では、太陽電池の製造方法が提供され、この太陽電池の製造方法は、初期N型シリコン基板を提供し、前記初期N型シリコン基板は対向する第1面と第2面を備えることと、前記第1面と前記第2面の両方にピラミッド構造を形成するように、前記初期N型シリコン基板に対してテクスチャ形成処理を行うことと、初期溝を形成するように、第1エッチング工程で前記第2面をエッチングすることと、第2エッチング工程で前記第2面をエッチングし続け、前記初期溝の寸法を増やし、これによって、溝を備えたN型シリコン基板を形成し、且つ、一部の前記溝が同じ方向に沿って順次配列され、ここで、前記第1エッチング工程による前記第2面のエッチング速度が前記第2エッチング工程による前記第2面のエッチング速度よりも小さく、前記ピラミッド構造が形成された前記第1面を前記N型シリコン基板の前面とし、前記第1エッチング工程と前記第2エッチング工程で処理された前記第2面を前記N型シリコン基板の裏面とすることと、前記裏面から離れた方向において、前記裏面にトンネル誘電体層及びドーピング導電層を順次形成することと、を含む。
【0019】
いくつかの実施例では、前記第1エッチング工程で前記第2面をエッチングすることは、前記初期N型シリコン基板を第1エッチング液に浸すことを含み、前記第2エッチング工程で前記第2面をエッチングし続けることは、前記初期N型シリコン基板を第2エッチング液に浸すことを含み、ここで、前記第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、前記第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率以下である。
【0020】
いくつかの実施例では、前記第1エッチング液と前記第2エッチング液には、いずれも保護剤が含まれており、且つ、前記保護剤は、前記第1エッチング液における質量分率が前記第2エッチング液における質量分率よりも小さい。
【0021】
いくつかの実施例では、前記第1エッチング工程で前記第2面をエッチングする時の周囲温度を第1温度とし、前記第2エッチング工程で前記第2面をエッチングする時の周囲温度を第2温度とし、前記第1温度は、前記第2温度よりも低い。
【0022】
いくつかの実施例では、前記第1エッチング工程による前記第2面のエッチング時間を第1時間とし、前記第2エッチング工程による前記第2面のエッチング時間を第2時間とし、前記第1時間は、前記第2時間以上である。
【0023】
本願のいくつかの実施例によれば、本願実施例の別の態様では、光起電力モジュールが提供され、この光起電力モジュールは、複数の上記実施例のいずれかの太陽電池又は上記実施例のいずれかの太陽電池の製造方法で製造された複数の太陽電池を接続してなるセルストリングと、前記セルストリングの表面を覆うための封止用接着フィルムと、前記封止用接着フィルムの前記セルストリングから離れた表面を覆うためのカバープレートと、を含む。
【発明の効果】
【0024】
本願実施例に提供された技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0025】
N型シリコン基板では、前面が代表的なピラミッド構造を備えていることと異なり、裏面は、水平面より突出したピラミッド構造を備えておらず、水平面より凹んだ複数の溝を備えている。このように、複数の溝を備えた裏面は、頂部が鋭いピラミッド構造に比べて、より平坦であり、裏面に形成されたトンネル誘電体層とドーピング導電層のフィルム層均一性を高め、N型シリコン基板に対するパッシベーション効果を向上させることに寄与する。一方、複数の溝を備えた裏面は、N型シリコン基板の比表面積を高め、トンネル誘電体層とドーピング導電層の比表面積を向上させ、電極とドーピング導電層及びトンネル誘電体層との接触面積を高め、電極とドーピング導電層及びトンネル誘電体層との接触抵抗を下げ、電極のキャリアに対する収集効率を向上させることに寄与する。これにより、両方を組み合わせて、太陽電池の短絡電圧と太陽電池の光電変換効率の向上に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
一つ又は複数の実施例は、対応する添付の図面における図で例示的に説明されるが、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、添付の図面において同じ符号で示す部品は類似する部品であり、特に断りのない限り、添付の図面における図は縮尺に制限されない。本開示の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例に使用する必要がある図面を簡単に紹介するが、明らかに、以下に記載される図面は本開示のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労働をしなくても、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1図1は、本願の一実施例で提供された太陽電池の局所断面構造を示す図である。
図2図2は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の裏面の電子顕微鏡模式図である。
図3図3は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の裏面の別の電子顕微鏡模式図である。
図4図4は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の裏面の別の電子顕微鏡模式図である。
図5図5は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の裏面の別の電子顕微鏡模式図である。
図6図6は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の局所断面構造を示す図である。
図7図7は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板における単一の溝の局所断面構造を示す図である。
図8図8は、本願の一実施例で提供された単一の溝における上部開口の上面視構造を示す図である。
図9図9は、本願の一実施例で提供された単一の溝における上部開口の他の上面視構造を示す図である。
図10図10は、本願の一実施例で提供された太陽電池の別の局所断面構造を示す図である。
図11図11は、本願の一実施例で提供された太陽電池の別の局所断面構造を示す図である。
図12図12は、本願の別の実施例で提供された初期N型シリコン基板の局所断面構造を示す図である。
図13図13は、本願の別の実施例で提供されたテクスチャ形成処理後の初期N型シリコン基板の局所断面構造を示す図である。
図14図14は、本願の別の実施例で提供された第1エッチング工程による第2面エッチング後の初期N型シリコン基板の局所断面構造を示す図である。
図15図15は、本願の別の実施例で提供された光起電力モジュールの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
背景技術から分かるように、太陽電池の光電変換効率は、さらに向上する必要がある。
【0028】
分析によると、N型TOPCon結晶シリコン太陽電池の裏面にトンネル酸化層と高濃度ドーピングN型多結晶シリコン層を設置し、トンネル酸化パッシベーションコンタクト構造を形成していることがわかった。そのフィルム層構造のパッシベーション性能と金属電極コンタクト効果は、基板構造の裏面に大きく依存しており、現在、基板構造の裏面には、主にテクスチャ形成面、酸研磨面及びアルカリ研磨面などの形態が含まれ、これらの形態には、それぞれ下記の問題がある。
【0029】
テクスチャ形成面の場合、テクスチャ形成面は、比表面積が大きく、この優れた形態特徴によって、電極ペーストが焼結されやすく、電極と基板構造が良好なオーミック接触を形成しているため、テクスチャ形成面は、電極と基板構造の接触抵抗率を下げる上で大きな優位性を持っている。しかし、テクスチャ形成面の比表面積が大きいと、基板構造の裏面の再結合サイトの数が多くなることを招きやすく、即ちキャリアに多くの再結合中心を与えて電極のキャリアに対する収集効率が低下することを招くとともに、トンネル酸化層がテクスチャ形成面上に均一に分布しにくくなり、裏面のパッシベーション効果が悪くなることを招く。
【0030】
酸研磨面の場合、フッ化水素酸と硝酸の混合酸でテクスチャ形成面を処理し、上部が研磨されたピラミッド近似構造を形成し、ある程度で比表面積を下げてパッシベーション効果を高めているが、電極と基板構造の接触抵抗率が明らかに上昇するようになるとともに、酸類の高いコストによってそのさらなる普及が制限されている。
【0031】
アルカリ研磨面の場合、アルカリ性研磨液で、テクスチャ形成面の裏面のピラミッド構造を除去し、方形の織り目構造を形成し、比表面積が著しく低下しているが、その超高いバックパッシベーション効果は、接触抵抗率が低下する劣位性をある程度で補っており、アルカリ研磨面に関する電極ペーストの開発に伴って、裏面接触の劣位性のさらなる緩和が認められている。しかし、如何にしてバックパッシベーション性能を両立する上で、裏面の形態を一層最適化して電極と基板構造との接触性能を向上させることかは、早急に解決すべき問題である。
【0032】
本願は、太陽電池及びその製造方法、光起電力素子を提供している。太陽電池では、複数の小さな溝を備えた裏面は、頂部が鋭いピラミッド構造に比べて、より平坦であり、裏面に形成されたトンネル誘電体層とドーピング導電層のフィルム層均一性を向上させ、N型シリコン基板に対するパッシベーション効果を高めることに寄与する一方、複数の溝を備えた裏面は、N型シリコン基板の比表面積を高め、トンネル誘電体層とドーピング導電層の比表面積を向上させ、電極とドーピング導電層及びトンネル誘電体層との接触面積を増やし、電極とドーピング導電層及びトンネル誘電体層との接触抵抗を下げ、電極のキャリアに対する収集効率を高めることに寄与する。これにより、両方を組み合わせて、太陽電池の短絡電圧と太陽電池の光電変換効率の向上に役立つ。
【0033】
以下、本願の各実施例について図面を結合して詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をよりよく理解させるために、本願の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部及び以下の各実施例に基づく種々の変更や修正がなくても、本願が保護を要求している技術案を実現することができる。
【0034】
本願の一実施例は、太陽電池を提供する。以下、図面を参照しながら、本願の一実施例で提供された太陽電池について、詳しく説明する。
【0035】
図1図5に示すように、太陽電池は、対向している前面aと裏面bとを備えたN型シリコン基板100と、前面aに位置するパッシベーション層105と、裏面bに位置するトンネル誘電体層101と、トンネル誘電体層101に位置するドーピング導電層102と、を含み、前面aが複数のピラミッド構造120を備え、裏面bが複数の溝110を備え、一部の溝110が同じ方向に沿って順次配列されている。
【0036】
なお、図1は、本願の一実施例で提供された太陽電池の局所断面構造を示す図であり、溝110の寸法が小さいため、裏面bの溝110が図示されていない。図2は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の裏面の電子顕微鏡模式図(SEM)であり、図3は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の裏面の別の電子顕微鏡模式図(SEM)であり、図4は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の裏面の別の電子顕微鏡模式図(SEM)であり、図5は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板100の裏面bの別の電子顕微鏡模式図(SEM)である。
【0037】
場合によって、N型シリコン基板100では、前面aが代表的なピラミッド構造を備えていることと異なり、裏面bが位置する水平面e(図6を参照)について、裏面bは、水平面eより突出したピラミッド構造を備えておらず、水平面より凹んだ複数の溝110を備えている。なお、裏面bが位置する水平面eとは、N型シリコン基板100全体において、溝110を除く裏面bの殆どの表面が位置する平面を指し、図6では点線で水平面eを示しており、且つ図6に示す水平面eが一例のみである。
【0038】
このように、複数の溝110を備えた裏面bは、頂部が鋭いピラミッド構造に比べて、より平坦であり、裏面bに形成されたトンネル誘電体層101とドーピング導電層102のフィルム層均一性を高め、N型シリコン基板100に対するパッシベーション効果を向上させることに寄与する。一方、複数の溝110を備えた裏面bは、N型シリコン基板100の比表面積を高め、トンネル誘電体層101とドーピング導電層102の比表面積を向上させ、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触面積を高め、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触抵抗を下げ、電極のキャリアに対する収集効率を向上させることに寄与する。これにより、両方を組み合わせて、太陽電池の短絡電圧と太陽電池の光電変換効率の向上に役立つ。
【0039】
なお、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101については、後で詳しく説明する。
【0040】
以下、図面を参照しながら、本願の実施例についてより詳しく説明する。いくつかの実施例では、図2図5に示すように、複数の溝110は、N個の溝群130を含み、いずれかの溝群130は、同じ方向に沿って順次配列された複数の溝110を含み、且つ、異なる溝群130における複数の溝110の配列方向は、同じであってもよいし、異なってもよく、Nが2以上の正整数である。
【0041】
言い換えれば、いずれかの溝群130について、溝群130に属した複数の溝110が同じ方向に沿って順次配列されることで、裏面bの形態変化の規則性を強めることに寄与し、裏面bに形成されるトンネル誘電体層101とドーピング導電層102のフィルム層均一性をさらに高め、N型シリコン基板100に対するパッシベーション効果を向上させるのに役立つ。
【0042】
また、異なる溝群130について、異なる溝群130に属する溝110の配列方向は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。一例として、図2に示すように、1つの溝群130がAとマークされ、別の溝群130がBとマークされ、溝群Aにおける複数の溝110の配列方向がX1であり、溝群Bにおける複数の溝110の配列方向がX2であり、方向X1と方向X2とが異なり、即ち方向X1と方向X2とが交差しており、実際の応用では、方向X1と方向X2とが同じであってもよく、即ち方向X1と方向X2とが互いに平行であってもよい。
【0043】
同じ溝110について、異なる少なくとも2つの溝群130に属することができる。例えば、図2に示すように、別の溝群がCとマークされ、溝群Bと溝群Cが同じ溝110を備え、図2ではこの溝110をB1とマークしている。
【0044】
なお、図2図5では点線枠で囲まれた複数の溝110によって溝群130を示し、且つ図2図5では一部の溝群130のみを示しているが、実際の応用において、裏面bにおける溝群130の数は、点線枠で示された溝群130を含むが、これに限定されず、複数の溝群130のいずれかが溝群A又は溝群Bであってもよい。
【0045】
いくつかの実施例では、図2に示すように、隣接する溝群130の間に間隔があり、言い換えれば、隣接する溝群130のN型シリコン基板100における正射影、例えば、図2における溝群Aと溝グループBは、重なり合っていない。他のいくつかの実施例では、図2を引き続き参照すると、隣接する溝群130における少なくとも一部の溝110の間には、重複領域150(図6を参照)があり、言い換えれば、隣接する溝群130のN型シリコン基板100における正投影は、重なり合っており、隣接する溝群130の正投影の重なり合う部分、即ち重複領域150のN型シリコン基板100における正投影、例えば図2における溝群Bの溝B1と溝群Cの溝C1は、重複領域150を備えている。他のいくつかの実施例では、図2を引き続き参照すると、裏面bには複数セットの溝群130があり、隣接する一部の溝群130の間に間隔があり、且つ他の隣接する一部の溝群130のうち、少なくとも一部の溝110の間に重複領域150がある。
【0046】
また、図6は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板の局所断面構造を示す図であり、図6では、隣接する2つの溝110が重なり合う部分、即ち重複領域150を間隔の小さい点線で示している。
【0047】
一例では、図2に示すように、3つの異なる溝群130は、それぞれA、B、Cとマークされており、溝群Aと溝群Bは、隣接しており、且つ両者の間に間隔があり、溝群Bと溝群Cは、隣接しており、且つ溝群Bと溝群Cの少なくとも一部の溝110の間に重複領域150がある(図6を参照)。
【0048】
なお、複数の溝群130のいずれかは、いずれも溝群A、溝群B又は溝群Cであってもよい。また、図6では重複領域150を1つの立体領域とした例を示しているが、実際の応用では、隣接する2つの溝群130は互いに隣接しており、この場合、隣接する2つの溝群130の重複領域150が1本の線であるか、又は、1つの平面である。
【0049】
以下、隣接する溝群130のうち、少なくとも一部の溝110の間に重複領域150があることについて、詳しく説明する。
【0050】
いくつかの実施例では、隣接する2つの溝群130のうち、1つの溝群130における1つの溝110ともう1つの溝群130における1つの溝110は、重複領域150を備える。一例として、図2に示すように、隣接する溝群BとCでは、溝群Bにおける1つの溝110がB1とマークされ、溝群Cにおける1つの溝110がC1とマークされ、溝B1は、溝C1のみと重複領域150(図6を参照)を備える。
【0051】
他のいくつかの実施例では、隣接する2つの溝群130のうち、1つの溝群130における1つの溝110ともう1つの溝群130における少なくとも2つの溝110とは、いずれも重複領域150を備える。一例では、図3に示すように、隣接する2つの溝群130は、それぞれDとEとマークされ、溝群Dにおける1つの溝110がD1とマークされ、溝群Eにおける2つの溝110がそれぞれE1とE2とマークされ、溝B1は、少なくとも溝E1と溝E2の両方といずれも重複領域150(図6を参照)を備える。
【0052】
なお、いずれかの溝群130にとって、溝群130の隣接する溝110の間は、重複領域150を備えてもよいし、互いに間隔をあけてもよい。いずれかの溝群130におけるいずれかの溝110について、この溝110は、他のいずれかの溝110と互いに間隔をあけてもよいし、他の少なくとも1つの溝110と重複領域150を備えてもよい。
【0053】
いくつかの実施例では、少なくとも隣接する一部の2つの溝110、例えば、図2に示すように、FとGとマークされた2つの溝110の間に間隔がある。他のいくつかの実施例では、少なくとも隣接する一部の2つの溝110、例えば、図3に示すように、それぞれIとJとマークされた2つの溝110の間に重複領域150(図6を参照)がある。他のいくつかの実施例では、隣接する一部の2つの溝110の間に間隔があり、隣接する他の一部の2つの溝110の間に重複領域150があり、例えば、図2の溝Fと溝Gとの間に間隔があり、且つ溝B1と溝C1との間に重複領域150がある。
【0054】
なお、隣接する2つの溝110は、同じ溝群130に属してもよいし、隣接する2つの溝110は、それぞれ隣接する2つの溝群130に属してもよい。あるいは、隣接する2つの溝110の少なくとも一方は、独立した1つの溝110であり、この独立した溝、例えば、図2でFとマークされた溝110は、いずれかの溝群130にも属していない。また、図2図5における裏面bの形態では、隣接する一部の2つの溝110の間に間隔があり、且つ隣接する他の一部の2つの溝110の間に重複領域150があることを例としているが、実際の応用では、裏面bの形態では、隣接する2つの溝110の間にいずれも間隔があるか、又は、隣接する2つの溝110の間にいずれも重複領域150がある。
【0055】
いくつかの実施例では、図7に示すように、図7は、本願の一実施例で提供されたN型シリコン基板100における単一の溝110の局所断面構造を示す図であり、裏面bから離れた方向Yにおいて、溝110は、対向して設置された底面110a及び上部開口110bと、底面110aと上部開口110bの間に位置する側壁110cと、を備え、底面110aのN型シリコン基板100における正投影の面積が上部開口110bのN型シリコン基板100における正投影の面積よりも小さい。言い換えれば、裏面bから離れた方向において、溝110は、上が広くて下が狭い構造であり、且つ、底面110aに垂直な断面において、溝110の断面形状は、上が広くて下が狭い逆台形である。
【0056】
なお、図7では、上部開口110bのほぼ位置する領域を点線で示している。
【0057】
これにより、底面110aに比べて、寸法がより大きな上部開口110bは、トンネル誘電体層が溝110を均一に充填するようにすることに寄与し、溝110とトンネル誘電体層101との間に隙間を形成することを回避し、さらにトンネル誘電体層101とドーピング導電層102の間に隙間を形成することを回避し、裏面bに形成されるトンネル誘電体層101及びドーピング導電層102のフィルム層均一性をさらに向上させ、裏面bに形成される複合サイトの数を減らし、N型シリコン基板100に対するパッシベーション効果を高める。一方、溝110は、上が広くて下が狭い構造であるため、N型シリコン基板100の比表面積をさらに高め、トンネル誘電体層101とドーピング導電層102の比表面積をさらに高め、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触面積を増やし、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触抵抗を下げ、電極のキャリアに対する収集効率を高めることができる。
【0058】
いくつかの実施例では、底面110aのN型シリコン基板100における正投影の面積と上部開口110bのN型シリコン基板100における正投影の面積の比は、0.5~0.99である。例えば、底面110aのN型シリコン基板100における正投影の面積と上部開口110bのN型シリコン基板100における正投影の面積の比は、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85又は0.9などである。
【0059】
いくつかの実施例では、溝110のN型シリコン基板100における正投影の形状は、M角形であり、Mは2以上である。
【0060】
いくつかの実施例では、図2図5に示すように、溝110のN型シリコン基板100における正射影の形状は、四角形であることが多く、実際の応用では、溝110のN型シリコン基板100における正射影の形状は、四角形以外の多角形であってもよい。いくつかの実施例では、四角形は、矩形、ひし形、方形及び台形を含み、不規則な四角形も含む。
【0061】
いくつかの実施例では、図7図8に示すように、図8は、本願の一実施例で提供された単一の溝110における上部開口110bの上面視構造を示す図であり、裏面bから離れた方向Yにおいて、溝110は、上部開口110bを備え、上部開口110bの1次元寸法Lは、1μm~20μmであり、例えば、1次元寸法Lは、3μm、5μm、7μm、10μm、13μm、16μm又は19μmなどであってもよい。図7に示すように、溝110は、上部開口110bに対向して設置された底面110aと、底面110a及び上部開口110bの間に位置する側壁110cと、を備える。
【0062】
なお、図8に示すように、上部開口110bの1次元寸法Lは、上部開口110bの長さ、上部開口110bの幅又は上部開口110bの対角線の長さのいずれかを含む。また、図8では、上部開口110bのN型シリコン基板100における正射影の形状が規則的な四角形であることを例として、この場合、上部開口110bの1次元寸法Lは規則的な四角形の長さ、幅又は対角線の長さのいずれかである。
【0063】
実際の応用では、上部開口110bのN型シリコン基板100における正射影の形状は、不規則な多角形であってもよく、この場合、上部開口110bの長さ、上部開口110bの幅又は上部開口110bの対角線の長さは、絶対的なものではなく、上部開口110bの1次元寸法を表現するために人為的に定義されたものである。例えば、図9に示すように、図9は、本願の一実施例で提供された単一の溝110における上部開口110bの他の上面視構造を示す図であり、上部開口110bのN型シリコン基板100における正射影の形状は、不規則な四角形であり、この場合、上部開口110bの長さL1は、不規則な四角形のうちの最も長い辺の長さであると定義され、上部開口110bの幅L2は、不規則な四角形のうちの最も短い辺の長さであると定義され、上部開口110bの対角線の長さL3は、不規則な四角形のうちの最も長い対角線の長さであると定義される。理解できるように、以上は、単なる例示的な説明であり、実際には実際のニーズに応じて柔軟に定義できる。
【0064】
また、上部開口110bのN型シリコン基板100における正射影の形状は、不規則な多角形のほか、円形又は円形に近い不規則な形状であってもよい。この場合、上部開口110bの1次元寸法Lは、上部開口110bで異なる特定面積の領域を複数選んで、当該特定面積の領域が実際のニーズに応じて柔軟に定義し、そして、複数の異なる特定面積の領域における長さ、幅、対角線又は直径の平均値を求めることができる。
【0065】
いくつかの実施例では、裏面bにおける溝110の分布密度は、100個/mm~200,000個/mmである。いくつかの例では、裏面bにおける溝110の分布密度は、1,000個/mm~50,000個/mmであり、例えば、溝110の分布密度は、1,850個/mm、3,550個/mm、6,500個/mm、25,000個/mm、34,000個/mm、45,000個/mm又は49,000個/mmなどであってもよい。
【0066】
いくつかの実施例では、裏面bから離れた方向において、溝110の深さの最大値は、50nm~2,000nmであり、例えば、溝110の深さは、65nm、87nm、500nm、650nm、1,200nm、1,400nm又は1,700nmなどであってもよい。
【0067】
場合によって、裏面b全体に対して、単一の溝110の占めるレイアウト面積が非常に小さいため、頂部が鋭いピラミッド構造に比べて、裏面bにおける溝110が裏面bの平坦さに与える影響は、非常に小さく、溝110によってN型シリコン基板100の比表面積を高めるとともに、裏面bが高い平坦さを持つことを確保し、トンネル誘電体層101とドーピング導電層102の比表面積を高め、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触面積を増やすと同時に、トンネル誘電体層101及びドーピング導電層102のフィルム層均一性を高め、トンネル誘電体層101及びドーピング導電層102のN型シリコン基板100に対するパッシベーション効果を高める。
【0068】
以下、4つの実施例によって、裏面bの形態について詳しく説明する。
【0069】
いくつかの実施例では、図2に示すように、単一の溝110の1次元寸法は、2μm~8μmであり、溝110の分布密度は、5,000個/mm~200,000個/mmであり、裏面bから離れた方向において、溝110の深さの最大値は、200nm~2,000nmである。
【0070】
他のいくつかの実施例では、図3に示すように、単一の溝110の1次元寸法は、5μm~13μmであり、溝110の分布密度は、100個/mm~50,000個/mmであり、裏面bから離れた方向において、溝110の深さの最大値は、50nm~1,200nmである。
【0071】
他のいくつかの実施例では、図4に示すように、単一の溝110の1次元寸法は、3μm~15μmであり、溝110の分布密度は、100個/mm~100,000個/mmであり、裏面bから離れた方向において、溝110の深さの最大値は、100nm~2,000nmである。
【0072】
他のいくつかの実施例では、図5に示すように、単一の溝110の1次元寸法は、7μm~20μmであり、溝110の分布密度は、100個/mm~20,000個/mmであり、裏面bから離れた方向において、溝110の深さの最大値は、50nm~1,000nmである。
【0073】
いくつかの実施例では、図1図10又は図11に示すように、前面aに位置するパッシベーション層105は、正面パッシベーション層又はフロントパッシベーション層と見なすことができる。パッシベーション層105は、単層構造又は積層構造であってもよく、積層構造では、各層の材料は、互いに異なってもよいし、一部の層の材料は、互いに異なり、残りの部分の材料は、同じであってもよい。パッシベーション層105の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ハフニウム又は酸化アルミニウムなどの材料のうち少なくとも1種であってもよい。
【0074】
いくつかの実施例では、図10又は図11に示すように、太陽電池は、裏面bに位置する裏面パッシベーション層106をさらに含み、裏面パッシベーション層106がリアパッシベーション層と見なすことができる。図10及び図11中の裏面パッシベーション層106については、それぞれ後に詳しく説明する。
【0075】
いくつかの実施例では、裏面パッシベーション層106は、単層構造又は積層構造を含んでもよく、裏面パッシベーション層106の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ハフニウム又は酸化アルミニウムなどの材料のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施例では、図10又は図11に示すように、太陽電池は、P型エミッタ170をさらに含み、P型エミッタ170は、一部の厚さのN型シリコン基板100と見なすことができ、且つ少なくとも一部の前面aがP型エミッタ170の上面となっている。いくつかの例では、図10又は図11に示すように、前面a全体がP型エミッタ170の上面となっている。他のいくつかの例では、前面aの一部がP型エミッタ170の上面となっており、選択性エミッタを形成している。
【0077】
P型エミッタ170のドーピング元素の種類は、N型シリコン基板100のドーピング元素の種類と異なっており、P型エミッタ170とN型シリコン基板100とがPN接合を形成している。
【0078】
いくつかの実施例では、図10又は図11に示すように、パッシベーション層105は、P型エミッタ170のN型シリコン基板100から離れた表面に位置し、N型シリコン基板100の前面aに対して良好なパッシベーション作用を発揮し、N型シリコン基板100の前面aの欠陥準位密度を下げ、N型シリコン基板100の前面aのキャリア再結合を効果的に抑制する。パッシベーション層105は、さらに良好な反射防止効果を発揮し、N型シリコン基板100の前面aの入射光に対する反射を低減し、N型シリコン基板100の入射光に対する利用率を高めることができる。場合によって、本願の一実施例で提供された太陽電池は、TOPConセル又はIBCセルであってもよい。
【0079】
いくつかの実施例では、図1に示すように、太陽電池は、TOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト)セルであってもよく、ドーピング導電層102は、N型ドーピング元素を備え、且つドーピング導電層102は、トンネル誘電体層101のN型シリコン基板100から離れた表面を覆っている。言い換えれば、ドーピング導電層102とN型シリコン基板100は、同じ導電型のドーピング元素を備え、且つN型ドーピング元素のドーピング導電層102におけるドーピング濃度がN型シリコン基板100におけるドーピング濃度よりも高くなり、フロントコンタクトTOPConセルを形成している。
【0080】
他のいくつかの実施例では、図1を引き続き参照すると、太陽電池はTOPConセルであってもよく、ドーピング導電層102は、P型ドーピング元素を備え、且つドーピング導電層102は、トンネル誘電体層101のN型シリコン基板100から離れた表面を覆っている。言い換えれば、ドーピング導電層102とN型シリコン基板100は、異なる導電型のドーピング元素を備え、バックコンタクトTOPConセルを形成している。
【0081】
上記の2つの実施例では、図11に示すように、図11は、本願の一実施例で提供された太陽電池の別の局所断面構造を示す図であり、太陽電池は、電極103をさらに含み、電極103とドーピング導電層102がオーミック接触を形成し、ドーピング導電層102とトンネル誘電体層101とがパッシベーションコンタクト構造を形成している。なお、図11では、電極103をドーピング導電層102に嵌め込んだことを例としているが、実際の応用では、電極103は、ドーピング導電層102を貫通し、トンネル誘電体層101と接触しかつ電気的に接続されてもよい。いくつかの実施例では、図11を引き続き参照すると、太陽電池は、前面aとオーミック接触を形成した第1電極104をさらに含む。なお、裏面bに位置した電極103は、第2電極とみなすことができる。
【0082】
いくつかの実施例では、電極103及び第1電極104は、金属導電性ペーストを焼結することによって形成されることができる。いくつかの実施例では、電極103及び第1電極104の材料は、銀、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0083】
上記の2つの実施例では、図11に示すように、裏面パッシベーション層106は、ドーピング導電層102の裏面bから離れた側に位置し、且つ電極103が裏面パッシベーション層106を貫通している。
【0084】
他のいくつかの実施例では、図10に示すように、図10は、本願の一実施例で提供された太陽電池の別の局所断面構造を示す図であり、太陽電池は、IBCセル(インターディジテッドバックコンタクトセル、Interdigitated Back Contact)であってもよく、ドーピング導電層102は、互いに間隔をあけている第1部分112及び第2部分122を含み、第1部分112と第2部分122のうちの一方がN型シリコン基板100と同じ導電型のドーピング元素を備え、他方がN型シリコン基板100と異なった導電型のドーピング元素を備える。言い換えれば、第1部分112と第2部分122のうちの一方は、N型ドーピング導電層であり、他方は、P型ドーピング導電層である。この場合、N型ドーピング導電層と接触しているトンネル誘電体層101にもN型ドーピング元素があり、P型ドーピング導電層と接触しているトンネル誘電体層101にもP型ドーピング元素がある。
【0085】
いくつかの実施例では、図10に示すように、第2部分122と第2部分122の間にギャップ(gap)又は隔離構造(図示せず)があり、これによって、異なる導電型領域間の自動的な隔離を実現しており、IBCセルの裏面における高濃度ドーピングされたP型ドーピング領域とN型ドーピング領域がトンネル接合を形成することに起因するリーク電流の電池効率に与える影響を解消することができる。
【0086】
いくつかの実施例では、図10を引き続き参照すると、裏面パッシベーション層106は、第1部分112及び第2部分122の裏面bから離れた側に位置している。
【0087】
いくつかの実施例では、太陽電池は、裏面パッシベーション層106を貫通して第1部分112と電気的に接続されている第1サブ電極113と、裏面パッシベーション層106を貫通して第2部分122と電気的に接続されている第2サブ電極123と、を含む。なお、図10では、第1サブ電極113を第1部分112に嵌め込み、第2サブ電極123を第2部分122に嵌め込んだことを例としているが、実際の応用では、第1サブ電極113は、第1部分112を貫通してトンネル誘電体層101と接触してもよく、第2サブ電極123は、第2部分122を貫通してトンネル誘電体層101と接触してもよい。いくつかの実施例では、第1サブ電極113と第2サブ電極123は、金属導電性ペーストを焼結することで形成されることができる。いくつかの実施例では、第1サブ電極113及び第2サブ電極123の材料は、銀、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0088】
上記のように、複数の溝110を備えた裏面bは、頂部が鋭いピラミッド構造に比べて、より平坦であり、裏面bに形成されるトンネル誘電体層101及びドーピング導電層102のフィルム層均一性を高め、N型シリコン基板100に対するパッシベーション効果を高めることに寄与する。一方、複数の溝110を備えた裏面bは、N型シリコン基板100の比表面積を高め、ひいてはトンネル誘電体層101及びドーピング導電層102の比表面積を向上させ、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触面積を増やし、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触抵抗を下げ、電極のキャリアに対する収集効率を高めるのにも寄与する。これにより、両方を組み合わせて、太陽電池の短絡電圧と太陽電池の光電変換効率の向上に役立つ。
【0089】
本願の別の実施例では、上記実施例で提供された太陽電池を形成するための太陽電池の製造方法を提供する。以下、図面を参照しながら、本願の別の実施例で提供された太陽電池の製造方法について、詳しく説明する。図12図14は、本願の別の実施例で提供された太陽電池の製造方法における各ステップに対応する断面構造を示す図である。ここで、図12は、本願の別の実施例で提供された初期N型シリコン基板の局所断面構造を示す図であり、図13は、本願の別の実施例で提供されたテクスチャ形成処理後の初期N型シリコン基板の局所断面構造を示す図であり、図14は、本願の別の実施例で提供された第1エッチング工程による第2面エッチング後の初期N型シリコン基板の局所断面構造を示す図である。なお、上記実施例と同じ部分又は対応する部分について、上記実施例の対応する説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0090】
図1図14に示すように、太陽電池の製造方法は、以下のステップを含む。
【0091】
ステップS101:図12に示すように、初期N型シリコン基板140を提供し、初期N型シリコン基板140は対向する第1面cと第2面dを備える。いくつかの実施例では、初期N型シリコン基板140がシリコンウェーハをダイシング処理した後に形成されたものである。
【0092】
ステップS102:図13に示すように、第1面cと第2面dの両方にピラミッド構造120を形成するように、初期N型シリコン基板140に対してテクスチャ形成処理を行う。これにより、ピラミッド構造120が形成された第1面cをN型シリコン基板100の前面aとすることができる。
【0093】
ステップS103:図13及び図14に示すように、初期溝160を形成するように、第1エッチング工程で第2面dをエッチングする。なお、本願の他の実施例において、初期溝160の断面形状について限定せず、図14が初期溝160の一例のみにすぎない。
【0094】
ステップS104:図14及び図2図5のいずれかに示すように、第2エッチング工程で第2面dをエッチングし続け、初期溝160の寸法を増やし、これによって、溝110を備えたN型シリコン基板100を形成し、且つ、一部の溝110が同じ方向に沿って順次配列され、ここで、第1エッチング工程による第2面dのエッチング速度が第2エッチング工程による第2面dのエッチング速度よりも小さく、ピラミッド構造120が形成された第1面cをN型シリコン基板100の前面aとし、第1エッチング工程と第2エッチング工程で処理された第2面dをN型シリコン基板100の裏面bとする。
【0095】
ステップS105:図1に示すように、裏面bから離れた方向において、裏面bにトンネル誘電体層101及びドーピング導電層102を順次形成する。
【0096】
場合によって、頂部が鋭いピラミッド構造120を備えた前面aに比べて、複数の溝110を備えた裏面bは、より平坦であり、裏面bに形成されるトンネル誘電体層101及びドーピング導電層102のフィルム層均一性を高め、ひいてはN型シリコン基板100に対するパッシベーション効果を向上させることに寄与する。一方、複数の溝110を備えた裏面bは、N型シリコン基板100の比表面積を高め、ひいてはトンネル誘電体層101及びドーピング導電層102の比表面積を向上させ、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触面積を増やし、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触抵抗を下げ、電極のキャリアに対する収集効率を高めるのにも寄与する。これにより、両方を組み合わせて、太陽電池の短絡電圧と太陽電池の光電変換効率の向上に役立つ。
【0097】
以下、ステップS101~ステップS105について、詳しく説明する。
【0098】
いくつかの実施例では、図12に示すように、ステップS101で提供された初期N型シリコン基板140の材料は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン又は微結晶シリコンの少なくとも1つを含むことができる。
【0099】
いくつかの実施例では、図13に示すように、ステップS102において、初期N型シリコン基板140に対してテクスチャ形成処理を行うことは、初期N型シリコン基板140に対して両面テクスチャ形成処理を行うことを含む。例えば、湿式化学腐食の方式でピラミッド構造120を製造し、ピラミッド構造120は、初期N型シリコン基板140の表面の光に対する反射を低減し、初期N型シリコン基板140の光に対する吸収利用率を増やし、太陽電池の変換効率を高めることができる。なお、本願の別の実施例では、テクスチャ形成の具体的な操作方式について限定しない。例えば、湿式テクスチャ形成工程を選択してテクスチャ形成処理を行うことができるが、これに限定されるものではなく、例えば水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性溶液を利用してテクスチャ形成処理を行うことができる。水酸化ナトリウム溶液の腐食に異方性があるため、ピラミッド状微細構造の製造に寄与する。ピラミッド状微細構造は、四面体、近似四面体、五面体又は近似五面体などの構造であってもよい。また、テクスチャ形成工程は、化学エッチング、レーザーエッチング、機械法又はプラズマエッチングなどであってもよい。
【0100】
場合によって、金属ペーストをスクリーン印刷して第1電極104(図11を参照)を形成するときに、ピラミッド構造120は、金属ペーストをピラミッド構造120中によりよく充填させ、より優れた電極接触を獲得し、太陽電池の直列抵抗を効果的に低減し、バッキングファクターを高めることができる。
【0101】
いくつかの実施例では、ステップS102の後からステップS103の前まで、製造方法は、第1面cに対してP型ドーピングイオンのドーピング処理、例えば、ホウ素拡散処理を行うことをさらに含み、これによって、第1面cにP型エミッタ170(図10を参照)を形成し、P型エミッタ170は初期N型シリコン基板140の太陽側に向かう表層空間の一部を占める。
【0102】
場合によって、P型エミッタ170は、ホウ素源を利用して拡散工程によりホウ素原子を第1面cの一定の深さに拡散して形成されたP型ドーピング層であってもよい。例えば、ホウ素源は、液状の三臭化ホウ素であってもよい。ホウ素拡散処理された基板の微結晶シリコン相は、多結晶シリコン相に変換される。半導体基板の表面は、比較的高い濃度のホウ素を備えているため、通常、第1面cと第2面dの両方にもホウケイ酸ガラス層(BSG、Borosilicate glass)が形成される。
【0103】
いくつかの実施例では、P型エミッタ170を形成してからステップS103の前まで、製造方法は、第2面dに形成されたホウケイ酸ガラス層を混合酸で除去し、混合酸が質量分率0.1%~10%のフッ化水素酸溶液と、質量分率10%~20%の硫酸溶液と、質量分率25%~50%の硝酸溶液とを含むことができることと、酸洗浄後の第2面dを水洗かつ乾燥処理することとをさらに含む。
【0104】
場合によって、ホウ素拡散処理時に、初期N型シリコン基板140の第2面dに一部のホウケイ酸ガラスをメッキして形成することがあり、混合酸で除去する必要なのは、この一部のホウケイ酸ガラス層である。
【0105】
いくつかの実施例では、第2面dに形成されたホウケイ酸ガラス層を調製した混合酸で除去するのに10s~180sの時間がかかり、反応温度が7℃~20℃であり、即ち常温状態で第2面dにおけるホウケイ酸ガラス層を酸洗浄で除去する。
【0106】
いくつかの実施例では、図13及び図14に示すように、ステップS103において、第1エッチング工程で第2面dをエッチングするステップは、初期N型シリコン基板140を第1エッチング液に浸すことを含み、図14図15を組み合わせて参照すると、ステップS104において、第2エッチング工程で第2面dをエッチングし続けるステップは、初期N型シリコン基板140を第2エッチング液に浸すことを含み、ここで、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率以下である。
【0107】
場合によって、第1エッチング工程で第2面dをエッチングするのは、主に第2面dにおけるピラミッド構造120の寸法を縮小し、乃至少なくとも一部のピラミッド構造120を除去して初期溝160を形成するためのものである。なお、初期N型シリコン基板140に対して両面テクスチャ形成を行ってピラミッド構造120を形成する場合、隣接するピラミッド構造120同士は隣接しているか、又はピッチを備えている。第1エッチング工程で第2面dにおけるピラミッド構造120の寸法を縮小する場合、隣接するピラミッド構造120同士がピッチを備えるようにし、且つピッチを徐々に初期溝160に変換するまで増やし、第2面dの形態を改善する。
【0108】
また、第2エッチング工程で第2面dをエッチングし続けるのは、主に初期溝160の寸法を増やし、溝110を備えたN型シリコン基板100を形成し、且つ一部の数の溝110を同じ方向に沿って順次配列するためのものである。言い換えれば。第2エッチング工程で第2面dをエッチングし続けることで、第2面dにおけるピラミッド構造120の寸法をさらに縮小し、乃至少なくとも一部のピラミッド構造120を除去し、より多くの溝110を形成し、また、隣接するピラミッド構造120間のピッチをさらに増やし、初期溝160の深さを増加させ、より大きな溝110を形成することに寄与する。
【0109】
場合によって、溝110の周りの一部の領域は、隣接するピラミッド構造120間のピッチから変化してきたものではなく、除去されたピラミッド構造120に対応する領域がさらにエッチングされて変化してくるものであるため、溝110の中央領域がエッチング環境に暴される時間がより長く、即ち隣接するピラミッド構造120間のピッチに対応する領域がエッチングされる程度は、より深く、溝110の周りの一部の領域がエッチング環境に暴される時間がより短く、即ち、除去されたピラミッド構造120に対応する領域がエッチングされる程度は、より浅く、これによって、図7に示すような断面形状が逆台形である溝110を形成することに寄与する。
【0110】
また、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率以下であり、即ち第1エッチング液のアルカリ性が第2エッチング液のアルカリ性よりも低いため、第1エッチング工程による第2面dのエッチング速度が第2エッチング工程による第2面dのエッチング速度よりも小さくなることに寄与する。なお、第1エッチング工程による第2面dのエッチング速度を第2エッチング工程による第2面dのエッチング速度よりも小さくする手段には、第1エッチング液のアルカリ性を第2エッチング液のアルカリ性よりも低く制御することが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0111】
いくつかの実施例では、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、0.5%~2%であってもよく、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、2%~4%であってもよい。
【0112】
いくつかの実施例では、第1エッチング液と第2エッチング液には、いずれも保護剤が含まれており、且つ、保護剤は、第1エッチング液における質量分率が第2エッチング液における質量分率よりも小さい。場合によって、ホウ素拡散処理時に第1面cに形成されたホウケイ酸ガラス層が処理されておらず、第1エッチング液と第2エッチング液が第1面cに形成されたピラミッド構造120をエッチングしないように、保護剤とホウケイ酸ガラス層とを調合することができる。また、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率以上であり、即ち第2エッチング液のアルカリ性がより強い上で、保護剤の第1エッチング液における質量分率が保護剤の第2エッチング液における質量分率より小さいようにし、即ち保護剤の第2エッチング液における質量分率を高めることで、第2エッチング液の第1面に形成されたピラミッド構造120に対するエッチングを回避することに寄与する。
【0113】
いくつかの実施例では、保護剤は、酸化層保護剤である。
【0114】
いくつかの実施例では、第1エッチング液中の保護剤の質量分率は、0.5%~0.8%であり、第2エッチング液中の保護剤の質量分率は、1%~1.5%である。
【0115】
いくつかの実施例では、第1エッチング工程で第2面dをエッチングする時の周囲温度を第1温度Temp1とし、第2エッチング工程で第2面dをエッチングする時の周囲温度を第2温度Temp2とし、第1温度Temp1は、第2温度Temp2よりも低い。場合によって、第2面dをエッチングする時の周囲温度が高いほど、エッチング工程の第2面dに対するエッチング速度が高くなるため、第1温度Temp1が第2温度Temp2よりも低いことによって、第1エッチング工程による第2面dのエッチング速度が第2エッチング工程による第2面dのエッチング速度よりも小さくなることに寄与する。
【0116】
いくつかの実施例では、第1温度Temp1は、30℃~45℃であってもよく、第2温度Temp2は、70℃~85℃であってもよい。
【0117】
なお、第1エッチング液のアルカリ性と第2エッチング液のアルカリ性の大きさを調整し、又は、第1エッチング工程の周囲温度と第2エッチング工程の周囲温度の大きさを調整することで、第1エッチング工程による第2面dのエッチング速度を第2エッチング工程による第2面dのエッチング速度よりも小さくすることができる。本願の別の実施例では、第1エッチング工程と第2エッチング工程のエッチング速度の大きさを調整することは、上記の2つの考案が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
いくつかの実施例では、第1エッチング工程による第2面dのエッチング時間を第1時間Time1とし、第2エッチング工程による第2面dのエッチング時間を第2時間Time2とし、第1時間Time1は、第2時間Time2以上である。場合によって、第1エッチング工程による第2面dのエッチング時間は、より長くなり、主に第2面に対して低速アルカリ研磨を行い、第2面dにおける大部分のピラミッド構造120を除去し、溝110の形成のために使われる。第2エッチング工程による第2面dのエッチング時間が短いことは、主に初期溝160の深さを増やすために使われる。
【0119】
いくつかの実施例では、第1時間Time1は、300s~600sであってもよく、第2時間Time2は、50s~300sであってもよい。
【0120】
以下、4つの実施例によって、製造後の表面bの形態について、詳しく説明する。
【0121】
いくつかの実施例では、図2に示すような裏面bを形成するために、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、0.5%~2%であり、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、2%~5%であり、第1エッチング液中の保護剤の質量分率は、0.5%~0.8%であり、第2エッチング液中の保護剤の質量分率は、1%~1.5%であり、第1温度は、30℃~45℃であり、第2温度は、70℃~85℃であり、第1時間は、300s~400sであり、第2時間は、150s~300sである。
【0122】
他のいくつかの実施例では、図3に示すような裏面bを形成するために、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、0.5%~2%であり、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、2%~5%であり、第1エッチング液中の保護剤の質量分率は、0.5%~0.8%であり、第2エッチング液中の保護剤の質量分率は、1%~1.5%であり、第1温度は、30℃~45℃であり、第2温度は、70℃~85℃であり、第1時間は、400s~550sであり、第2時間は、50s~200sである。
【0123】
他のいくつかの実施例では、図4に示すような裏面bを形成するために、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率が0.5%~2%であり、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率が2%~5%であり、第1エッチング液中の保護剤の質量分率は、0.5%~0.8%であり、第2エッチング液中の保護剤の質量分率は、1%~1.5%であり、第1温度は、30℃~45℃であり、第2温度は、70℃~85℃であり、第1時間は、400s~550sであり、第2時間は、100s~300sである。
【0124】
他のいくつかの実施例では、図5に示すような裏面bを形成するために、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、0.5%~2%であり、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率は、2%~5%であり、第1エッチング液中の保護剤の質量分率は、0.5%~0.8%であり、第2エッチング液中の保護剤の質量分率は、1%~1.5%であり、第1温度は、30℃~45℃であり、第2温度は、70℃~85℃であり、第1時間は、450s~600sであり、第2時間は、50s~200sである。
【0125】
なお、上記の図2図5に示す4つの形態の裏面bを形成する4つの例において、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率、第1エッチング液中の保護剤の質量分率、第2エッチング液中の保護剤の質量分率、第1温度及び第2温度は、いずれも統一された基準に基づいて定められてもよく、即ち、4つの例における上記パラメーターの数値は同じであってもよいし、同じ数値範囲内で数値を取ってもよく、4つの例のエッチング時間のみを区別させ、即ち4つの例における第1時間及び第2時間が異なる数値又は数値範囲を取ってもよい。実際の応用では、図2図5に示す4種類の異なる形態の裏面bを形成するために、実際のニーズに応じて、第1エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率、第2エッチング液中の水酸化ナトリウムの質量分率、第1エッチング液中の保護剤の質量分率、第2エッチング液中の保護剤の質量分率、第1温度、第2温度、第1時間及び第2時間の数値及び数値範囲を柔軟に調整することができる。
【0126】
いくつかの実施例では、ステップS105において、図1に示すように、トンネル誘電体層101とドーピング導電層102を形成することは、以下のステップを含むことができる。
【0127】
いくつかの実施例では、堆積工程でトンネル誘電体層101を形成する。具体的には、トンネル誘電体層101の材料は、酸化ケイ素を含み、堆積工程は化学気相成長工程を含む。他の実施例では、in situ生成工程でトンネル誘電体層を形成してもよい。具体的には、N型シリコン基板100をもとに、熱酸化工程及び硝酸酸化などの工程でトンネル誘電体層101をin situ生成することができる。
【0128】
いくつかの実施例では、トンネル誘電体層101を形成した後、真性多結晶シリコンを堆積して多結晶シリコン層を形成し、イオン注入と熱源拡散によってリンイオンをドープし、N型ドーピング多結晶シリコン層を形成し、N型ドーピング多結晶シリコン層をドーピング導電層102とする。方向Xにおいて、ドーピング導電層102の厚さは、50nm~200nm、例えば100nm、120nm又は140nmに設定されることができる。
【0129】
なお、以上、フロントコンタクトTOPConセルを形成することを例として、トンネル誘電体層101とドーピング導電層102を形成する製造工程について説明した。実際の応用では、バックコンタクトTOPConセル又はIBCセルを形成することもできる。本願の別の実施例では、バックコンタクトTOPConセル又はIBCセルにおけるトンネル誘電体層101及びドーピング導電層102を形成する製造工程について限定しない。
【0130】
いくつかの実施例では、図10に示すように、製造方法は、第1部分112とオーミック接触を形成する第1サブ電極113を形成することと、第2部分122とオーミック接触を形成する第2サブ電極123を形成することと、をさらに含む。本願の他の一実施例では、第1サブ電極113と第2サブ電極123を形成する製造工程について、限定しない。他のいくつかの実施例では、図11に示すように、製造方法は、ドーピング導電層102とオーミック接触を形成する電極103を形成することと、前面aとオーミック接触を形成する第1電極104を形成することと、をさらに含む。本願の他の一実施例では、電極103と第1電極104を形成する製造工程について限定しない。
【0131】
いくつかの実施例では、図10又は図11に示すように、製造方法は、前面aに位置するパッシベーション層105を形成することと、ドーピング導電層102の裏面bから離れた側に位置する裏面パッシベーション層106を形成することと、をさらに含む。本願の他の一実施例では、パッシベーション層105と裏面パッシベーション層106を形成する製造工程について、限定しない。上記のように、初期N型シリコン基板140の第2面dに対して、第1エッチング工程と第2エッチング工程を順次行い、且つ、第1エッチング工程による第2面dのエッチング速度を第2エッチング工程による第2面dのエッチング速度よりも小さくすることで、複数の溝110を備えた裏面bを形成することに寄与し、且つ複数の溝110を備えた裏面bは、頂部が鋭いピラミッド構造120に比べて、より平坦であり、裏面bに形成されるトンネル誘電体層101及びドーピング導電層102のフィルム層均一性を高め、N型シリコン基板100に対するパッシベーション効果を向上させることに寄与する。また、複数の溝110を備えた裏面bは、N型シリコン基板100の比表面積を高め、ひいてはトンネル誘電体層101とドーピング導電層102の比表面積を高め、電極103とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触面積を増やし、電極とドーピング導電層102及びトンネル誘電体層101との接触抵抗を下げ、電極のキャリアに対する収集効率を高めるのにも寄与する。これによって、両方を組み合わせて、太陽電池の短絡電圧と太陽電池の光電変換効率の向上に寄与する。
【0132】
本願の別の実施例は、受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換するための光起電力モジュールをさらに提供する。図15は、本願の別の実施例で提供された光起電力モジュールの構造を示す図である。なお、上記実施例と同じ部分又は相応する部分については、上記実施例の関係説明を参照することができる。ここでは、繰り返して説明しない。
【0133】
図15に示すように、光起電力モジュールは、複数の上記実施例のいずれかの太陽電池40又は上記実施例のいずれかの太陽電池の製造方法で製造された複数の太陽電池40を接続してなるセルストリングと、セルストリングの表面を覆うための封止用接着フィルム41と、封止用接着フィルム41のセルストリングから離れた表面を覆うためのカバープレート42と、を含む。太陽電池40は、全体又は複数分割の形で電気的に接続されて複数のセルストリングを形成し、複数のセルストリングは、直列及び/又は並列の方式で電気的に接続する。
【0134】
具体的には、いくつかの実施例では、複数のセルストリングの間は伝導バンド402で電気的に接続される。図15は、一種類の太陽電池間の位置関係のみを示しており、即ち、電池セルの極性が同じ電極の配列方向が同じか、あるいは、各電池セルの正極性を持つ電極がいずれも同じ側に配列され、伝導バンドが隣接する2つの電池セルの異なる側をそれぞれ接続する。いくつかの実施例では、電池セルは、異なる極性の電極が同じ側を向くことができ、即ち、隣接する複数の電池セルの電極がそれぞれ第1極性、第2極性、第1極性の順に配列されてもよく、伝導バンドが同じ側の隣接する2つの電池セルを接続する。
【0135】
いくつかの実施例では、電池セル間に間隔が設けられておらず、即ち電池セル同士が重なり合っている。
【0136】
いくつかの実施例では、封止用接着フィルム41は、太陽電池40の前面又は裏面の一方を覆う第1封止層と、太陽電池40の前面又は裏面の他方を覆う第2封止層と、を含み、具体的には、第1封止層又は第2封止層の少なくとも一方は、ポリビニルブチラール(Polyvinyl Butyral、PVB)接着フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)接着フィルム、ポリエチレン-オクテン共重合体(POE)接着フィルム又はポリエチレンテレフタレート(PET)接着フィルムなどの有機封止用接着フィルムであってもよい。
【0137】
場合によっては、第1封止層及び第2封止層には、積層前に境界線があるが、積層処理後に光起電力モジュールを形成するときに、第1封止層及び第2封止層という概念がなく、即ち、第1封止層と第2封止層とが一体化された封止用接着フィルム41を形成している。
【0138】
いくつかの実施例では、カバープレート42は、ガラスカバープレート、プラスチックカバープレートなどの光透過機能を持つカバープレートであってもよい。具体的には、カバープレート42の封止用接着フィルム41に向かう表面は、入射光の利用率を高めるために、凹凸面であってもよい。カバープレート42は、第1カバープレートと、第2カバープレートと、を含み、第1カバープレートが第1封止層に対向し、第2カバープレートが第2封止層に対向する。
【0139】
当業者であれば、前記の各実施形態は本願を実現する具体的な実施例であるが、実用上では本願の実施例の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更が可能であることが理解できる。いずれの当業者も、本願の実施例の精神と範囲を逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことが可能であるため、本願の実施例の保護範囲は、請求項に限定された範囲を基準にすべきである。

【要約】
【課題】本願実施例は、太陽電池の分野に関し、太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池は、対向している前面と裏面とを備えたN型シリコン基板と、前面に位置するパッシベーション層と、裏面に位置するトンネル誘電体層と、トンネル誘電体層に位置するドーピング導電層と、を含み、前面が複数のピラミッド構造を備え、裏面が複数の溝を備え、一部の溝が同じ方向に沿って順次配列されている。本願実施例は、少なくともN型シリコン基板の裏面の形態を変更することで太陽電池の光電変換効率を向上させることに有利である。
【選択図】図6

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15