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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】接着剤樹脂組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20241128BHJP
   C09J 175/00 20060101ALI20241128BHJP
   C09J 171/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J175/00
C09J171/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024056401
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2023116403
(32)【優先日】2023-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】品川 由衣
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特許第7340110(JP,B2)
【文献】特開2018-035363(JP,A)
【文献】特開2018-188609(JP,A)
【文献】国際公開第2021/193961(WO,A1)
【文献】特表2014-522426(JP,A)
【文献】特開2019-077847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)およびポリエーテルポリアミン(E)を含む硬化剤と、液状エポキシ樹脂(F)を含む主剤とを含有し、
末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)がポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、ポリアミン(C)(但し、ポリエーテルポリアミン(E)を除く)との反応生成物であり、
ポリエーテルポリアミン(E)の数平均分子量が230以上3,000以下であり、
かつ、下記(i)~(iii)の全てを満たすことを特徴とする、接着剤樹脂組成物。
(i)接着剤樹脂組成物中に含まれる1級アミノ基を有する有機成分と、2級アミノ基を有する有機成分と、エポキシ基を有する有機成分との合計100質量%中、ポリウレタンウレア樹脂(D)を15~40質量%含む。
(ii)ポリアミン(C)が、数平均分子量300未満である。
(iii)ポリウレタンウレア樹脂(D)中の1級アミノ基と2級アミノ基のモル数の合計が、ポリエーテルポリアミン(E)中の1級アミノ基と2級アミノ基のモル数の合計100モル%に対し、3~40モル%である。
【請求項2】
請求項1に記載の接着剤樹脂組成物からなる硬化物。
【請求項3】
基材上に、請求項に記載の硬化物から形成される層を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤樹脂組成物とその硬化物、及び当該硬化物を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材や船舶の分野において、信頼性向上や機能化が進められており、アルミニウムやマグネシウム等の軽金属や繊維強化プラスチック材料(以下、FRPと略する)等の使用比率が高まっている。接合方法としては接着剤の利用が増加しており、中でも、2液硬化型エポキシ接着剤は、各種部材に対する接着力や耐久性が高く、又混合後の粘度上昇が緩やかであり作業性にも優れることから、構造用接合剤として広範囲に使用されている。
【0003】
しかしながら、例えば外壁や床材等の接着に使用した場合、接着剤層の厚み方向に高い衝撃が加わると、従来のエポキシ接着剤はその硬さと脆さから、衝撃により簡単に破壊してしまうという課題がある。
【0004】
この様な課題に対し、柔軟性を高めるための成分として、エポキシ基末端のポリブタジエン、ポリウレタン、ポリエステル等の高分子エポキシや、エポキシ基を有するゴム状ポリマー微粒子、アミノ基末端ポリブタジエンやポリアミドアミン等の高分子アミン等が検討されている。(特許文献1~5)
【0005】
しかし一般に、高分子エポキシや高分子アミンを使用すると、架橋状態やその他成分との相溶性のバランスが崩れるため単純な混合では柔軟性や強度が悪化する場合がある。また、ゴム状ポリマー微粒子成分を混合すると、高分子エポキシや高分子アミンと比較して架橋状態や相溶性の調整が容易であるものの、添加量に伴う粘度の増加量が大きく、柔軟性を高めると作業性が低下する課題がある。このため、柔軟性を適切に付与するために、現在も様々な組み合わせが検討されている。
【0006】
ここで特許文献5には、エーテル基を有するジアミンで鎖延長したアミノ基末端のウレタンウレアを耐衝撃性改良剤として用いることで、高い耐衝撃性が得られることが開示されている。しかしながら、接着剤の厚み方向に垂直方向の耐衝撃性は高まるが、接着剤の厚み方向への耐衝撃性は未だ十分ではなく、また、追従性も不足するため、連続した衝撃で劣化するという課題もある。このため、接着剤の厚み方向への耐衝撃性と追従性に優れる接着剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-182248号公報
【文献】特開2015-063595号公報
【文献】特開2017-002130号公報
【文献】特開2018-002766号公報
【文献】特表2013-521361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い接着性と、優れた耐衝撃性及び追従性を有し、また硬化温度による物性の差異が小さい、建材、船舶等の分野に特に適した、無溶剤で使用可能な接着剤樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)およびポリエーテルポリアミン(E)を含む硬化剤と、液状エポキシ樹脂(F)を含む主剤とを含有し、末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)がポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、ポリアミン(C)(但し、ポリエーテルポリアミン(E)を除く)との反応生成物であり、かつ、下記(i)~(iii)の全てを満たすことを特徴とする、接着剤樹脂組成物に関する。
(i)接着剤樹脂組成物中に含まれる1級アミノ基を有する有機成分と、2級アミノ基を有する有機成分と、エポキシ基を有する有機成分との合計100質量%中、ポリウレタンウレア樹脂(D)を15~40質量%含む。
(ii)ポリアミン(C)が、数平均分子量300未満である。
(iii)ポリウレタンウレア樹脂(D)中の1級アミノ基と2級アミノ基のモル数の合計が、ポリエーテルポリアミン(E)中の1級アミノ基と2級アミノ基のモル数の合計100モル%に対し、3~40モル%である。
【0011】
また、本発明は前記ポリエーテルポリアミン(E)が、数平均分子量300以上である、前記接着剤樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は前記接着剤樹脂組成物からなる硬化物に関する。
【0013】
また、本発明は基材上に、前記硬化物から形成される層を有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、接着力が高く、優れた耐衝撃性と追従性を有し、建材、船舶等の分野に特に適した無溶剤で使用可能な接着剤樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の接着剤樹脂組成物は、末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)およびポリエーテルポリアミン(E)を含む硬化剤と、液状エポキシ樹脂(F)を含む主剤とを含有し、末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)がポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、ポリアミン(C)(但し、ポリエーテルポリアミン(E)を除く)との反応生成物であり、かつ、下記(i)~(iii)の全てを満たすことを特徴とする。
(i)接着剤樹脂組成物中に含まれる1級アミノ基を有する有機成分と、2級アミノ基を有する有機成分と、エポキシ基を有する有機成分との合計100質量%中、ポリウレタンウレア樹脂(D)を15~40質量%含む。
(ii)ポリアミン(C)が、数平均分子量300未満である。
(iii)ポリウレタンウレア樹脂(D)中の1級アミノ基と2級アミノ基のモル数の合計が、ポリエーテルポリアミン(E)中の1級アミノ基と2級アミノ基のモル数の合計100モル%に対し、3~40モル%である。
(i)~(iii)の全てを満足することで、硬化剤が液状エポキシ樹脂(F)と架橋反応した際に適度な相分離構造を形成し、強度を維持したまま優れた柔軟性を発揮する。ま
たこの様にして得られる硬化膜は、接着剤の厚み方向への極めて高い衝撃耐性と追従性を有している。したがって、本発明の接着剤樹脂組成物は建材、船舶等の分野で、構造用接着剤として好適に用いられる。また、本発明の接着剤樹脂組成物は、液状の無溶剤型接着剤として用いることができ、安全性や環境対応の観点からも優れるものである。
【0017】
≪末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)≫
本発明の末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)は、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)およびポリアミン(C)を、ポリアミン(C)中のアミノ基が残存するように反応させて得られる反応生成物であり、その製造方法は制限されないが、好ましくは下記の方法で製造することができる。
工程1:ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを、水酸基に対しイソシアネート基が過剰となる条件下でウレタン化反応を行い、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る。
工程2:ウレタンプレポリマー とポリアミン(C)とを、イソシアネート基に対しアミ
ノ基が過剰となる条件下でウレア化反応を行い、末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)を得る。
【0018】
工程1、2の反応は、いずれも溶剤を用いて行ってもよく、また溶剤を用いずに行ってもよい。工程1、2において溶剤を用いる場合は、反応の途中段階又は反応終了後に、減圧下又は常圧下で溶剤を除去することで無溶剤型のポリウレタンウレア樹脂(D)を得ることができる。
【0019】
工程1の反応は、公知のウレタン化反応を用いて行い、反応性を調整する目的で触媒を用いてもよい。
【0020】
<触媒>
触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒等が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、2-エチルヘキソエート鉛、チタン酸2-エチルヘキシル、チタンエチルアセテート、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としては、テトラメチルブタンジアミン等の3級アミン等が挙げられる。触媒の使用量は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)の合計質量を基準として、0.01~0.05質量%の範囲が好ましい。
【0021】
ポリウレタンウレア樹脂(D)の数平均分子量は、特に制限されないが、2,000~15,000であると好ましい。2,000以上であると凝集力が良好になるため接着力に優れ、15,000以下であると低粘度であるため、無溶剤下での粘度の調整が容易である。
【0022】
<ポリオール(A)>
ポリオール(A)は分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物であり、代表的なものとしてポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、植物由系ポリオール等が挙げられる。
【0023】
さらに前記分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、低分子ポリオール、脂肪族アミン化合物類、芳香族アミン化合物類、アルカノールアミン類又はビスフェノール類のような少なくとも2個の活性水酸基を有する化合物を出発原料として、これに酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン、もしくはポリオキシテトラメチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオー
ル等が挙げられる。
【0024】
前記低分子ポリオールとしては、例えば、2官能の低分子ポリオール又は3官能以上の低分子ポリオールが挙げられる。
【0025】
2官能の低分子ポリオールとしては、特に制限されず、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールA、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0026】
3官能以上の低分子ポリオールとしては、特に制限されず、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ブタントリオール、トリメチロールブテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールノネン、トリメチロールデセン、トリメチロールウンデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、トリメチロールヘキセン、1,2,3-オクタントリオール、1,3,7-オクタントリオール、3,7-ジメチル-1,2,3-オクタントリオール、1,1,1-、1,1,1-トリメチロールデカン、1,2,10-デカントリオール、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-sec-ブタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ペンタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ノナン、1,1,1-トリメチロール-tert-トリデカン、1,1,1-トリメチロール-tert-ヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,2,3,4-ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ベンゼン-1,3,5-トリオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、スチルベン-3,4’、5-トリオール、シュークロース、イノシトール、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、サッカロース、セルロース、キシリトール等が挙げられる。
【0027】
脂肪族アミン化合物類としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパンが挙げられる。芳香族アミン化合物類としては、例えば、トルエンジアミン、ジフェニルメタン-4,4-ジアミンが挙げられる。
アルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミン及びジエタノールアミンが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF等が挙げられる。
【0028】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール等のグリコール類等が挙げられる。また、ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールあるいは、これらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えば上述の低分子ポリオールと二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0030】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸、及びそれらの無水物等が挙げられる。
また、ε-カプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応により得られるものを挙げることができる。
また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート等を、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
【0032】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水添した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水添した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0033】
植物油系ポリオールとしては、植物由来のひまし油、ダイマー酸、もしくは大豆油を原料としたポリオール等が挙げられる。
【0034】
これらの中でもポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールが柔軟性に優れるため好ましい。
【0035】
上記ポリオール(A)の数平均分子量は、好ましくは500~5,000であり、700~3,500であるとより好ましい。数平均分子量が500~5,000であると、得られる硬化物の接着力、柔軟性により優れるため好ましい。
【0036】
さらに、ポリオール(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ウレタン結合濃度の調節や各種官能基導入を目的として上述の低分子ポリオールを併用してもよい。
【0037】
<ポリイソシアネート(B)>
ポリイソシアネート(B)は、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物であればよく、例えば、芳香族、脂肪族又は脂環式のジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアナネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
<ポリアミン(C)>
ポリアミン(C)は、後述のポリエーテルポリアミン(E)を除く、分子内にアミノ基を2つ以上有する化合物で、かつ数平均分子量300未満ものであればよく、例えば、芳香族、脂肪族又は脂環式のジアミン等が挙げられる。数平均分子量が300未満であると、ウレア結合が近接するため相分離構造の形成が促進され、耐衝撃性と追従性に優れる。好ましくは数平均分子量が200未満である。
【0042】
芳香族ジアミンとしては、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン等の芳香族アミン等が挙げられる。
【0043】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン等が挙げられる。
【0044】
脂環式ジアミンとしては、イソホロンジアミン、メタセンジアミン等の脂環式アミン等が挙げられる。
【0045】
≪ポリエーテルポリアミン(E)≫
ポリエーテルポリアミン(E)としては、分子内にアミノ基を2つ以上有する化合物で
、エーテル鎖の繰り返し構造を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、ポリ(プロピレングリコール)トリアミン、ポリ(エチレングリコール)ジアミン、ポリ(エチレングリコール)トリアミン、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)ジアミン、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)トリアミン、ポリ(プロピレン/エチレングリコール)ジアミン、ポリ(プロピレン/エチレングリコール)トリアミン等が挙げられる。
中でも、数平均分子量が300以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、3,000以下であることが好ましい。数平均分子量が300~3,000であると、後述の相分離構造の形成が容易となり、柔軟性に優れるため好ましい。
【0046】
本発明のポリエーテルポリアミン(E)は、ポリウレタンウレア樹脂(D)中の1級アミノ基と2級アミノ基の合計モル数が、ポリエーテルポリアミン(E)中の1級アミノ基と2級アミノ基の合計モル数100モル%に対し、3~40モル%となる範囲で使用する。
3モル%未満又は40モル%を超えて使用すると、耐衝撃性が著しく低下する。8~30モル%の範囲で使用すると、耐衝撃性に特に優れるため好ましい。
【0047】
<硬化剤>
本発明の接着剤樹脂組成物は、硬化剤として末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)およびポリエーテルポリアミン(E)を含有する。ここで、本明細書において、硬化剤とは2液硬化型接着剤における硬化剤を指し、主剤のエポキシ樹脂との架橋反応に寄与するポリウレタンウレア樹脂(D)およびポリエーテルポリアミン(E)に限らず、ポリエーテルポリアミン(E)以外のアミン硬化剤、硬化促進剤および必要に応じて用いられる添加剤等も含む。
【0048】
ポリウレタンウレア樹脂(D)の含有量は、接着剤樹脂組成物中に含まれる1級アミノ基を有する有機成分と、2級アミノ基を有する有機成分と、エポキシ基を有する有機成分との合計100質量%中、15~40質量%である。この範囲とすることで、相分離形成が促進され、耐衝撃性と追従性に優れる。接着剤樹脂組成物中に含まれる1級アミノ基を有する有機成分および2級アミノ基を有する有機成分とは、硬化剤であるポリウレタンウレア樹脂(D)(1級アミノ基を有する有機成分)、ポリエーテルポリアミン(E)(1級アミノ基を有する有機成分)、及びその他アミン硬化剤、硬化促進剤のうち、1級アミノ基を有する有機成分および2級アミノ基を有する有機成分の合計を指す。また、接着剤樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する有機成分とは、主剤である液状エポキシ樹脂(F)及び任意成分であるその他エポキシ化合物の合計を指す。
【0049】
ポリエーテルポリアミン(E)以外のアミン硬化剤としては、柔軟性を阻害しない範囲で、エポキシ樹脂を硬化させる公知のアミンを使用することができる。例えば、アミン化合物、アミド化合物等が挙げられる。
【0050】
アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミンポリエチレンイミンのダイマー酸エステル等の脂肪族アミン類;
イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式アミン類;
テトラクロロ-p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノアニゾール、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、2,4-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,
4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-アミノフェノール、m-アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2-ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α-(m-アミノフェニル)エチルアミン、α-(p-アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン類;
2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイ
ミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール誘導体類;
三フッ化ホウ素-モノエチルアミン,三フッ化ホウ素-ピペリジン、三フッ化ホウ素-トリエチルアミン、三フッ化ホウ素-アニリン錯体等の三フッ化ホウ素-アミン錯体類;
ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン、2,3-グアニルウレア、ベンゾイルジシアンジアミド、2,6-キシレニルビグアニド、フェニルビグアニド等のグアニジン誘導体類;アミン変性ポリプロピレン、アミン変性ポリエチレン、アミン変性ポリブタジエン、アミン変性ブタジエンアクリロニトリル共重合体等のアミノ基を有するポリオレフィン化合物類等を挙げることができる。
【0051】
アミド化合物としては、リノレン酸やオレイン酸の2量体(ダイマー酸)とジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどのポリアミンとを反応させて成る、分子中に一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミン等が挙げられる。
【0052】
硬化促進剤としては、3級アミン及びその塩類、イミダゾール類及びその塩類、尿素系化合物、リン化合物、有機ホスフィン化合物及びその塩類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズなどの金属塩、フェノール類やアルコール類等の水酸基を有する化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0053】
硬化促進剤の添加量は、硬化剤の全有機成分100質量%に対し、0.01~20質量%含むことが好ましい。なお、硬化剤の全有機成分とは、無機フィラーを除く有機成分を指す。
【0054】
必要に応じて用いられる添加剤としては、シランカップリング剤、レベリング剤又は消泡剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤及び着色剤等の公知の添加剤が挙げられる。このような添加剤は、好ましくは以下の化合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0055】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、硬化剤の全有機成分100質量%に対して、0.05~10質量%が好ましい。
【0056】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン等が挙げられる。
【0057】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等、公知のものが挙げられる。
【0058】
≪液状エポキシ樹脂(F)≫
本発明の接着剤樹脂組成物は主剤としてエポキシ樹脂(F)を含有する。液状エポキシ樹脂(F)は、硬化時の架橋構造に組み込まれることで、優れた接着力を発現する。
【0059】
液状エポキシ樹脂(F)としては、常温(23℃)で液体の化合物であれば、特に限定されないが、分子内にエポキシ基を2つ以上有することが好ましい。また、エポキシ当量が200g/eq以下であることが好ましく、150~200g/eqがより好ましい。液状エポキシ樹脂(F)のエポキシ当量は、JIS K-7236に準拠して測定することにより求めることができる。
【0060】
液状エポキシ樹脂(F)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易であり、粘度と接着力が良好であることからビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0061】
接着剤樹脂組成物に含まれる、全てのエポキシ基の合計のモル数の比と、全ての1級及び2級アミノ基の合計のモル数の比(エポキシ基/1級及び2級アミノ基の活性水素基)は、0.5~2.0の範囲が好ましく、0.6~1.5であるとより好ましい。0.5~2.0の範囲であると未反応の官能基が残らず、良好な架橋密度を形成することで優れた接着力及び柔軟性を発現できる。
【0062】
<その他エポキシ化合物>
主剤には液状エポキシ樹脂(F)の他に、必要に応じてアミン硬化剤によって硬化する任意のエポキシ化合物を用いることができる。例えば、固形のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0063】
≪接着剤樹脂組成物≫
本発明の接着剤樹脂組成物は、ポリウレタンウレア樹脂(D)と、ポリエーテルポリアミン(E)と、液状エポキシ樹脂(F)とを適切な範囲で混合して架橋反応させることで、柔軟性の高い相分離構造を形成し、優れた耐衝撃性と折り曲げ耐性を発揮する。特に無溶剤下若しくは揮発性成分の少ない条件下でこれらを混合すると、架橋反応時に相分離構造の形成が促進され、耐衝撃性と追従性がさらに高まるため、無溶剤下若しくは揮発性成分の少ない条件下で使用することが好ましい。
【0064】
本発明の接着剤樹脂組成物は、ポリウレタンウレア樹脂(D)と、ポリエーテルポリアミン(E)、及び液状エポキシ樹脂(F)とを公知の方法により混合することで得られる。
【0065】
≪硬化物≫
本発明の硬化物は、接着剤樹脂組成物を硬化したものであり、上記ポリウレタンウレア樹脂(D)、ポリエーテルポリアミン(E)、液状エポキシ樹脂(F)、及びその他の成分を公知の方法で混合し、5~150℃の条件で硬化させることで得ることができる。混合時も含めて20~40℃で使用すると、相分離構造の形成が促進され、耐衝撃性と追従性に優れるため好ましい。
【0066】
≪積層体≫
本発明の積層体は、基材上に上記硬化物からなる層を有するものである。積層体は、公知の積層方法を用いて形成することができる。例えば、基材の一方の面に接着剤樹脂組成物を塗布して接着剤層を形成し、次いで、硬化処理前の接着剤層に他の基材を重ね、5~150℃の条件で接着剤層を硬化させることで、基材と接着剤樹脂組成物からなる硬化物の層を有する積層体を得ることができる。
【0067】
積層体に用いられる基材は特に限定されない。好適な基材としては、例えば、ステンレス等の金属、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート及びポリカーボネート及びそれらのコポリマー等の熱可塑性ポリマー、加硫ゴム等の熱硬化性ポリマー、尿素-ホルムアルデヒドフォーム、メラミン樹脂、木材、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック及びその他の繊維強化プラスチックが挙げられる。
【0068】
本発明の接着剤樹脂組成物は、多種の基材間の接着に用いることができる。接着される基材は、同一であってもよいし異なっていてもよい。接着剤樹脂組成物の膜厚は0.1μm~30mmであることが望ましい。
【0069】
本発明の接着剤樹脂組成物は、高い接着力と優れた耐衝撃性と追従性を有しており、該接着剤樹脂組成物を用いた積層体は、建材、船舶等の構造部材(床材、外壁等)として有用である。
【実施例
【0070】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0071】
<数平均分子量(Mn)>
ポリウレタンウレア樹脂(D)の数平均分子量の算出は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、標準ポリスチレンによる換算値として求めた。測定は、ACQUITY UPLC(Waters社製)、溶離液として3mMトリエチルアミン及び10mM LiBrのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を用い、カラムとしてTSKgelSuperHM-M(東ソー社製)を3本直列に連結し、流速0.6mL/分、注入量10μL、カラム温度40℃の条件で行った。
【0072】
<アミン価>
アミン価は、JIS K-7237に準拠して測定した。
【0073】
本明細書における化合物の略称を以下に示す。
<ポリオール(A)>
・P-2000:2官能ポリプロピレングリコール、数平均分子量2,000、ADEKA社製
・C-1090:2官能ポリカーボネートポリオール、数平均分子量1,000、クラレ社製
<ポリイソシアネート(B)>
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
・TODI:3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート
<ポリアミン(C)>
・IPDA:イソホロンジアミン、数平均分子量222、アミン価506mgKOH/g・PRIAMINE 1075:ダイマージアミン、数平均分子量550、アミン価205mgKOH/g、カーギル社製
<ポリエーテルポリアミン(E)>
・D-400:ポリオキシプロピレンジアミン、数平均分子量430、アミン価520mgKOH/g、HUNTSMAN社製
・D-2000:ポリオキシプロピレンジアミン、数平均分子量2000、アミン価110mgKOH/g、HUNTSMAN社製
・T-403:ポリオキシプロピレンジアミン、数平均分子量440、アミン価765mgKOH/g、HUNTSMAN社製
・T-3000:ポリオキシプロピレンジアミン、数平均分子量3000、アミン価445mgKOH/g、HUNTSMAN社製
・D-230:ポリオキシプロピレンジアミン、数平均分子量230、アミン価490mgKOH/g、HUNTSMAN社製
<アミン硬化剤>
・P-1:比較製造例1で製造したポリウレタンウレア樹脂:1級アミノ基を有する有機成分
・P-2:比較製造例2で製造したポリウレタンウレア樹脂:1級アミノ基を有する有機成分
・P-3:比較製造例3で製造したポリウレタンウレア樹脂:1級アミノ基を有する有機成分
・P-4:比較製造例4で製造したポリウレタンウレア樹脂:1級アミノ基を有する有機成分
・トリエチレンテトラミン:1級アミノ基および2級アミノ基を有する有機成分
<硬化促進剤>
・ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール:3級アミノ基を有する有機成分
<液状エポキシ樹脂(F)>
・jER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/eq、三菱ケミカル社製:エポキシ基を有する有機成分
・jER806:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq、三菱ケミカル社製:エポキシ基を有する有機成分
【0074】
(製造例1)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた滴下容器に、ポリオール(A)としてP-2000を46.6部およびC-1090を22.7部、ポリイソシアネート(B)としてIPDIを20.2部、触媒としてジブチル錫ジラウレートをポリオール(A)とポリイソシアネート(B)の全質量に対して0.01%を仕込んで均一に撹拌し、窒素雰囲気下90℃で4時間半させイソシアネート基末端プレポリマーを合成した後、酢酸エチルを50部加え、イソシアネート基末端プレポリマー溶液とした。続いて、窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた別の容器にヘキサメチレンジアミンを10.5部、酢酸エチルを50部仕込み、窒素雰囲気下40℃で均一に攪拌しながら、イソシアネート基末端プレポリマー溶液を30分かけて滴下した後、1時間攪拌反応させて、末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂溶液を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂溶液中の溶剤を減圧条件下で除去し、ポリウレタンウレア樹脂(D-1)を得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。得られたポリウレタンウレア樹脂(D-1)は1級アミノ基を有する有機成分であり、数平均分子量は3900、アミン価は50.9mgKOH/gであった。
【0075】
(製造例2~3、比較製造例1~3)
表1に示す化合物、及び配合組成に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、製造例2~3および比較製造例1~3のポリウレタンウレア樹脂(D-2~3、P-1~3)を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂(D-2~3、P-1~3)は1級アミノ基を有する有機成分であり、これらの数平均分子量とアミン価は表1の通りである。
【0076】
【表1】
【0077】
(比較製造例4)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、水分トラップを備えた反応容器に、市販の重合脂肪酸865g、大豆油脂肪酸600g、テトラエチレンペンタミン945g及び鉄粉0.3gを添加し、窒素雰囲気下200℃で1時間反応させ、ポリアミドアミン(P-3)を得た。得られたポリアミドアミン(P-4)のアミン価は390mgKOH/gであった。
【0078】
<接着剤樹脂組成物の調製>
[実施例1]
製造例1で得られたポリウレタンウレア樹脂(D-1)3.6部、ポリエーテルポリアミン(E)としてD-400を3.6部、トリエチレンテトラミン0.4部、ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.4部、液状エポキシ樹脂(F)10部を室温で撹拌脱泡混合し、実施例1の接着剤樹脂組成物を調製した。
【0079】
[実施例2~10及び比較例1~8]
表2、3に示す配合組成に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2~10、及び比較例1~8の接着剤樹脂組成物を調製した。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
なお、表2、3中、「(D)中のアミノ基/(E)中のアミノ基」とは、ポリエーテルポリアミン(E)中の1級アミノ基と2級アミノ基の合計モル数100モル%に対するポリウレタンウレア樹脂(D)中の1級アミノ基と2級アミノ基の合計モル数の比率(モル%)を意味する。
【0083】
<接着剤樹脂組成物の評価>
実施例及び比較例で調製した接着剤樹脂組成物について、以下の試験を行った。判定結果を表2に記載する。
【0084】
[せん断接着力]
各接着剤樹脂組成物を、炭素繊維強化プラスチック基板(長さ100mm、幅25mm、厚み2mm)上に長さ10mm、幅25mm、厚み0.1mmとなるよう塗布し、炭素繊維強化プラスチック基板と貼りあわせ、厚み0.1mmを保持するよう圧着した状態で25℃7日硬化させて、試験片を得た。得られた試験片を温度25℃、相対湿度50%の条件下、引張り速度1mm/分で引張り試験機を用いてせん断接着力を測定し、以下の評価基準で判定した。
(評価基準)
○:せん断接着力が、15MPa以上(良好)
△:せん断接着力が、10MPa以上、15MPa未満(使用可能)
×:せん断接着力が、10MPa未満(使用不可)
【0085】
[耐衝撃性]
各接着剤樹脂組成物を、ステンレス基板(長さ100mm、幅25mm、厚み2mm)上に長さ10mm、幅25mm、厚み0.1mmとなるよう塗布し、ステンレス基板と貼りあわせ、厚み0.1mmを保持するよう圧着した状態で25℃7日硬化させて、試験片を得た。温度25℃、相対湿度50%の条件下、デュポン式衝撃試験を用いて、得られた試験片の接着部分に対し厚み方向に衝撃を加え、破断するまでの回数を測定し、以下の基準で判定した。デュポン式衝撃試験は、試験片の両端をステンレス基板の厚み方向が地面と垂直になるよう固定し、固定した試験片の接着剤部分に、先端に1/2インチの丸みを持つ撃ち型の先端を垂直に接地させ、この接地した撃ち型に、10cmの高さから500gの重りを自由落下させて行った。
(評価基準)
○:100回試験しても破断しない。(良好)
△:20~99回目で破断(使用可能)
×:19回以下で破断(使用不可)
【0086】
[追従性(折り曲げ耐性)]
厚さ2mmのシート状型枠に各樹脂組成物接着剤を充填し、表面を整えて、25℃7日の硬化後、3号ダンベル型で打ち抜き、評価用のダンベル型試験片を作製した。試験片を長軸方向中央部で折り曲げて2つ折りに重ねた後、屈曲部を中心にして反対側に反転させて2つ折りに重ね返した。この操作を100回行い、屈曲部の状態を目視で観察し追従性を評価した。
(評価基準)
○:100回試験しても破断せず、屈曲部に亀裂も見られない。(良好)
△:100回試験しても破断しないが、屈曲部に亀裂が見られる。(使用可能)
×:100回以下で破断(使用不可)
【0087】
<総合評価>
実施例及び比較例で調製した接着剤樹脂組成物について、以下の判定基準で総合評価を行った。判定結果を表2、3に記載した。
【0088】
(総合評価基準)
〇:評価項目全てにおいて、判定が〇である。(良好)
△:評価項目全てにおいて、判定が△以上である。(使用可能)
×:いずれかの評価項目において、×の判定がある。(使用不可)
【0089】
本発明の接着剤樹脂組成物は、接着力、追従性、耐衝撃性のいずれにおいても良好な結果が得られた。一方で、比較例の接着剤樹脂組成物は、接着力、追従性、耐衝撃性の一部又は全てが、実施例よりも劣る結果であった。
【要約】
【課題】
高い柔軟性と、優れた耐衝撃性及び追従性を有し、建材、船舶等の分野に特に適した、無溶剤で使用可能な接着剤樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、ポリアミン(C)(但し、ポリエーテルポリアミン(E)を除く)との反応生成物である末端にアミノ基を有するポリウレタンウレア樹脂(D)およびポリエーテルポリアミン(E)を含む硬化剤と、液状エポキシ樹脂(F)を含む主剤とを含有し、かつ、下記(i)~(iii)の全てを満たすことを特徴とする、接着剤樹脂組成物。
(i)接着剤樹脂組成物中に含まれる1級アミノ基を有する有機成分と、2級アミノ基を有する有機成分と、エポキシ基を有する有機成分との合計100質量%中、ポリウレタンウレア樹脂(D)を15~40質量%含む。
(ii)ポリアミン(C)が、数平均分子量300未満である。
(iii)ポリウレタンウレア樹脂(D)中の1級アミノ基と2級アミノ基のモル数の合計が、ポリエーテルポリアミン(E)中の1級アミノ基と2級アミノ基のモル数の合計100モル%に対し、3~40モル%である。
【選択図】なし