(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20241128BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20241128BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20241128BHJP
C04B 35/195 20060101ALI20241128BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
B01D39/20 D
B01D46/00 302
C04B35/195
F01N3/022 C
(21)【出願番号】P 2024058116
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 広晃
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-166635(JP,A)
【文献】特開2010-029848(JP,A)
【文献】特開2005-270755(JP,A)
【文献】特開2014-195783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
B01D 46/00-46/90
C04B 38/00-38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側壁と、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面に開口部を有し、第二底面に目封止部を有する複数の第1セルと、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面に目封止部を有し、第二底面に開口部を有する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは隔壁を挟んで交互に隣接配置されているハニカム構造体であって、
前記目封止部は、MgO:9.0~13.4質量%、Al
2O
3:29.0~35.5質量%、SiO
2:50.0~58.0質量%を含有するセラミックスで構成されており、
第一底面及び第二底面における前記目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、18.0μm以下である、
ハニカム構造体。
【請求項2】
前記目封止部は、MgO:9.0~12.0質量%、Al
2O
3:29.8~32.0質量%、SiO
2:54.0~57.2質量%を含有するセラミックスで構成されている請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
第一底面及び第二底面における前記目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、5.0~17.5μmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
第一底面及び第二底面における前記目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、5.0~12.0μmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記目封止部は未焼成の状態である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記目封止部を構成する前記セラミックスは、コージェライト粒子と当該粒子同士を結合するコロイダルシリカとを含有する請求項5に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記目封止部は焼成されている請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記目封止部を構成するセラミックスは、コージェライトの焼結体である請求項7に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記目封止部を構成するセラミックスのメジアン径は、5~25μmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
第一底面及び第二底面における前記目封止部の平均気孔率はそれぞれ、30~70%である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記隔壁はコージェライトを主成分とするセラミックスで構成されている請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
第一底面及び第二底面における前記目封止部の平均深さはそれぞれ、3~7mmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、環境汚染の原因となる炭素を主成分とするパティキュレート(粒子状物質)が多量に含まれている。そのため、一般的にディーゼルエンジン等の排気系には、パティキュレートを捕集するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)が搭載されている。また近年ではガソリンエンジンから排出されるパティキュレートも問題視されており、ガソリンエンジンにもフィルタ(Gasoline Particulate Filter:GPF)が搭載されるようになってきている。
【0003】
フィルタとしては、外周側壁と、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面が開口して第二底面に目封止部を有する複数の第1セルと、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面に目封止部を有し、第二底面が開口する複数の第2セルとを、隔壁を挟んで交互に隣接配置したウォールフロー式のハニカム構造体が知られている。
【0004】
ウォールフロー式のハニカム構造体において、目封止部は捕捉された粒子状物質がフィルタから漏れ出す(エロージョン)のを防止する役割を果たしている。このため、目封止部が剥離することなく、所定の位置に所定の深さで形成されていることがフィルタ性能を確保する上で重要となる。
【0005】
特許文献1には、目封止部及び基材にクラックが発生したり、目封止部が基材からの剥離や脱落を起こしたりすることのないハニカムフィルタを提供することを課題として、目封止材が該セラミックス基材と同じ材質のセラミックス粉砕物から構成されていることを特徴とするハニカムフィルタが記載されている。
【0006】
特許文献2には、耐熱衝撃性に優れたセラミックハニカムフィルタを得ることを課題として、コージェライトを主結晶とする材料からなるハニカムフィルタであって、少なくとも目封止部の一部が、セラミック粒子及びそれらの間に存在するコロイド状酸化物から形成された非晶質酸化物マトリックスで構成されているハニカムフィルタが記載されている。
【0007】
特許文献3には、キャニング時の目封止剥がれ等の不良を抑制できると共に、エロージョンを効果的に予防できるハニカム構造体を提供することを課題として、目封止部の平均空隙率が4%以下に制御されたハニカム構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-136817号公報
【文献】特開2005-125318号公報
【文献】特開2021-159868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目封止部を形成する際は、目封止部を形成すべきセルとそれ以外のセルを区別するためにマスキング用のフィルムがハニカム構造体の底面に一時的に貼着される。フィルムは最終的に剥がされるが、その際に局所的に目封止部剥がれが発生し、修正時間にかなりの時間を要してしまい、場合によっては不良品になることもある。従来技術では、フィルム剥離時の目封止部剥がれについては十分な対策ができているとは言えず改善の余地が残されている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一実施形態において、フィルム剥離時の目封止部剥がれを抑制可能なハニカム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討したところ、目封止部の組成と表面粗さを制御することが上記課題を解決する上で重要であることを見出した。本発明は当該知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0012】
[態様1]
外周側壁と、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面に開口部を有し、第二底面に目封止部を有する複数の第1セルと、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面に目封止部を有し、第二底面に開口部を有する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは隔壁を挟んで交互に隣接配置されているハニカム構造体であって、
前記目封止部は、MgO:9.0~13.4質量%、Al2O3:29.0~35.5質量%、SiO2:50.0~58.0質量%を含有するセラミックスで構成されており、
第一底面及び第二底面における前記目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、18.0μm以下である、
ハニカム構造体。
[態様2]
前記目封止部は、MgO:9.0~12.0質量%、Al2O3:29.8~32.0質量%、SiO2:54.0~57.2質量%を含有するセラミックスで構成されている態様1に記載のハニカム構造体。
[態様3]
第一底面及び第二底面における前記目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、5.0~17.5μmである態様1又は2に記載のハニカム構造体。
[態様4]
第一底面及び第二底面における前記目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、5.0~12.0μmである態様1又は2に記載のハニカム構造体。
[態様5]
前記目封止部は未焼成の状態である態様1~4の何れかに記載のハニカム構造体。
[態様6]
前記目封止部を構成する前記セラミックスは、コージェライト粒子と当該粒子同士を結合するコロイダルシリカとを含有する態様5に記載のハニカム構造体。
[態様7]
前記目封止部は焼成されている態様1~4の何れかに記載のハニカム構造体。
[態様8]
前記目封止部を構成するセラミックスは、コージェライトの焼結体である態様7に記載のハニカム構造体。
[態様9]
前記目封止部を構成するセラミックスのメジアン径は、5~25μmである態様1~8の何れかに記載のハニカム構造体。
[態様10]
第一底面及び第二底面における前記目封止部の平均気孔率はそれぞれ、30~70%である態様1~9の何れかに記載のハニカム構造体。
[態様11]
前記隔壁はコージェライトを主成分とするセラミックスで構成されている態様1~10の何れかに記載のハニカム構造体。
[態様12]
第一底面及び第二底面における前記目封止部の平均深さはそれぞれ、3~7mmである態様1~11の何れかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、フィルム剥離時の目封止部剥がれを抑制可能なハニカム構造体が提供される。目封止部剥がれが抑制されることで、捕捉された粒子状物質エロージョンを防止するといった目封止部に要求される所期の性能を安定して発揮することができるようになる。従って、当該ハニカム構造体は、品質安定性に優れたハニカムフィルタ等として好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ウォールフロー型のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【
図2】ウォールフロー型のハニカム構造体をセルの延びる方向に平行な断面で観察したときの模式的な断面図である。
【
図3】ハニカム構造体の隔壁をセルの延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図である。
【
図4】目封止部の深さの測定方法を説明するための模式的な部分断面図である。
【
図5】スキージ方式による目封止部の形成方法の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0016】
(1.ハニカム構造体)
図1及び
図2には、ウォールフロー型の自動車用排ガスフィルタ及び/又は触媒担体として適用可能なハニカム構造体100の模式的な斜視図及び断面図がそれぞれ例示されている。ハニカム構造体100は、外周側壁102と、外周側壁102の内周側に配置され、第一底面104から第二底面106まで平行に延び、第一底面104に開口部を有し、第二底面106に目封止部109を有する複数の第1セル108と、外周側壁102の内周側に配置され、第一底面104から第二底面106まで平行に延び、第一底面104に目封止部109を有し、第二底面106に開口部を有する複数の第2セル110とを備える。このハニカム構造体100においては、第1セル108及び第2セル110が隔壁112を挟んで交互に隣接配置されている。
【0017】
例えば、ハニカム構造体100の上流側の第一底面104にスス等の粒子状物質を含む排ガスが供給されると、排ガスは第1セル108に導入されて第1セル108内を下流に向かって進む。第1セル108は下流側の第二底面106が目封止されているため、排ガスは第1セル108と第2セル110を区画する多孔質の隔壁112を透過して第2セル110に流入する。粒子状物質は隔壁112を通過できないため、第1セル108内に捕集され、堆積する。粒子状物質が除去された後、第2セル110に流入した清浄な排ガスは第2セル110内を下流に向かって進み、下流側の第二底面106から流出する。
【0018】
ハニカム構造体100の底面形状に制限はないが、例えば円形状、楕円形状、レーストラック形状及び長円形状等のラウンド形状、三角形状及び四角形状等の多角形状、並びに、その他の異形形状とすることができる。ハニカム構造体100は、柱体状の外形を有することができる。図示のハニカム構造体100は、底面形状が円形状であり、全体として円柱状である。
【0019】
ハニカム構造体の高さ(第一底面から第二底面までの長さ)は特に制限はなく、用途や要求性能に応じて適宜設定すればよい。ハニカム構造体の高さは、例えば40mm~450mmとすることができる。ハニカム構造体の高さと各底面の最大径(ハニカム構造体の各底面の重心を通る径のうち、最大長さを指す)の関係についても特に制限はない。従って、ハニカム構造体の高さが各底面の最大径よりも長くてもよいし、ハニカム構造体の高さが各底面の最大径よりも短くてもよい。
【0020】
セルの延びる方向に垂直な断面におけるセルの開口形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらのなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体に流体を流したときの圧力損失が小さくなり、浄化性能が優れたものとなる。
【0021】
セル密度(単位断面積当たりのセルの数)についても特に制限はなく、例えば6~2000セル/平方インチ(0.9~311セル/cm2)、更に好ましくは50~1000セル/平方インチ(7.8~155セル/cm2)、特に好ましくは100~600セル/平方インチ(15.5~92.0セル/cm2)とすることができる。ここで、セル密度は、セルの全数(目封止されたセルを含む。)を、ハニカム構造体の外周側壁を除く一方の底面積で割ることにより算出される。
【0022】
隔壁の平均厚みは、ハニカム構造体の強度及びフィルタ用途の場合に捕集効率を高めるという観点から150μm以上であることが好ましく、170μm以上であることがより好ましく、190μm以上であることが更により好ましい。また、隔壁の平均厚みは圧力損失を抑制するという観点から260μm以下であることが好ましく、240μm以下であることがより好ましく、220μm以下であることが更により好ましい。従って、隔壁の平均厚みは、例えば150~260μmであることが好ましく、170~240μmであることがより好ましく、190~220μmであることが更により好ましい。
【0023】
図3には、ハニカム構造体100の隔壁112をセルの延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図が示されている。隔壁の厚みは、セルの延びる方向(ハニカム構造体の高さ方向)に直交する断面において、隣接するセルの重心O同士を線分Nで結んだときに当該線分Nが隔壁を横切る長さを指す。隔壁の厚み方向Dは、当該線分Nに平行な方向を指す。隔壁の平均厚みは、すべての隔壁の厚みの平均値を指す。
【0024】
隔壁は多孔質とすることができる。隔壁の平均気孔率は、用途に応じて適宜調整すればよいが、流体の圧力損失を低く抑えるという観点からは、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更により好ましい。また、隔壁の平均気孔率は、ハニカム構造体の強度を確保するという観点から、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更により好ましい。従って、隔壁の平均気孔率は、例えば、40~80%であることが好ましく、50~75%であることがより好ましく、60~70%であることが更により好ましい。隔壁の気孔率は、JIS R1655:2003に準拠して水銀圧入法によって測定される。隔壁の試験片をハニカム構造体の中心部及び外周部を含めて満遍なく20個採取してそれぞれの気孔率を測定し、その平均値を平均気孔率とする。
【0025】
隔壁及び外周側壁を構成する材料については、特に制限はないが、強度や耐熱性の観点からセラミックスであることが好ましい。セラミックスとしては、例えば、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、珪素-炭化珪素複合材、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有するセラミックスであることが好ましい。そして、これらのセラミックスは、1種類を単独で含有するものでもよいし、2種類以上を同時に含有するものであってもよい。隔壁及び外周側壁はこれらのセラミックスを合計で50質量%以上含む材料で形成されていることが好ましく、80質量%以上含む材料で形成されていることがより好ましい。
【0026】
好ましい実施形態において、ハニカム構造体の外周側壁、隔壁及び目封止部はそれぞれ、主成分としてコージェライトを含有する。このことは、外周側壁、隔壁及び目封止部をそれぞれ構成する材料100質量%中のコージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)の合計質量割合が50質量%以上であることを意味する。外周側壁、隔壁及び目封止部をそれぞれ構成する材料100質量%中のコージェライトの質量割合は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0027】
コージェライトの含有率は、X線回折法により測定可能である。具体的には、CuのKα線を用いたX線回折装置(例:PANalytical社製のX’pert PRO装置)を使用し、外周側壁、隔壁又は目封止部の試料に対して、X線回折法により2θ=8~100°の範囲のX線解析測定を行ない、リートベルト解析プログラムRIETANを用いて解析することでコージェライト結晶相比率を測定し、これをコージェライトの含有率とする。
【0028】
目封止部の化学組成を微調整することは、フィルム剥離時の目封止部剥がれを抑制する上で有利である。具体的には、目封止部は、MgO:9.0~13.4質量%、Al2O3:29.0~35.5質量%、SiO2:50.0~58.0質量%を含有するセラミックスで構成されていることが好ましく、MgO:9.0~12.0質量%、Al2O3:29.8~32.0質量%、SiO2:54.0~57.2質量%を含有するセラミックスで構成されていることがより好ましく、MgO:10.2~11.5質量%、Al2O3:30.5~32.0質量%、SiO2:54.5~56.2質量%を含有するセラミックスで構成されていることが更により好ましい。当該組成は、一般的なコージェライトよりもMgOが若干少なく、SiO2が若干多いが、このことで目封止部の外面が平滑化しやすいという効果が得られる。また、目封止部自体の機械的強度が向上するという効果も得られる。
【0029】
目封止部の化学組成は、ハニカム構造体から目封止部を切り出して測定試料を準備し、当該測定試料に対し測定することが望ましいが、ハニカム構造体から測定試料を10.0g採取することが困難である場合には、以下の方法で測定試料を用意する。
目封止部の作製に使用したものと同じ目封止部形成用スラリーを調合し、直径60mmで長さ15mmのステンレス製の型に流し込む。その後、実際の目封止部と同じ条件で乾燥させステンレス製の型から外す。その後、実際の目封止部が焼成されている場合には同じ条件で焼成する。得られたバルク体を粉砕して測定試料を作製する。ハニカム構造体から目封止部を切り出して測定試料を準備できる場合は、切り出した目封止部を粉砕して測定試料を作製する。粉砕は、乳棒回転数:100/120rpm、乳鉢回転数:6/7rpm、粉砕時間:5分の条件で実施する。
測定試料10.0gを合金るつぼに入れて、四ホウ酸リチウム6.0gを添加し、白金棒で混ぜる。合金るつぼをガラス化装置(例:HERZOG社製 自動ビードサンプラー HA-HF16)にセットし1200℃・15分間の条件(ガラスビード法)でガラス化させる。各試料のガラスビードをSiのKα線、AlのKα線、MgのKα線を用いた蛍光X線分析により定性分析を行い、SiO2、Al2O3、MgOの質量%を求める。
【0030】
目封止部の外面の平滑性は、算術平均高さSaを指標として表すことができる。算術平均高さSaはISO 25178で定められている面粗さのパラメータの一種であり、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表す。具体的な第一底面及び第二底面における目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、18.0μm以下であることが好ましく、17.5μm以下であることがより好ましく、12.0μm以下であることが更により好ましい。目封止部の算術平均高さSaには下限は特段に設定されないが、製造コストとの兼ね合いからは、第一底面及び第二底面における目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、5.0μm以上であることが好ましく、8.0μm以上であることがより好ましく、10.5μm以上であることが更により好ましい。従って、第一底面及び第二底面における目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、例えば5.0~18.0μmであることが好ましく、5.0~17.5μmであることがより好ましく、8.0~17.5μmであることがより好ましく、5.0~12.0μmであることが更により好ましい。
【0031】
本明細書において、第一底面及び第二底面における目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、レーザー顕微鏡を用いて偏りなく5箇所の目封止部の算術平均高さSaを測定した時の平均値を測定値とする。
一箇所の目封止部については、以下の条件で測定可能である。
測定機器名:形状解析レーザー顕微鏡(KEYENCE VK-X250 /260)又はそれと同等の性能を有する顕微鏡
解析ソフト:マルチファイル解析アプリケーション(VK-1HXM)又はそれと同等の性能を有するソフト
対物レンズ倍率:10倍
サンプルサイズ:20mm×20mm×10mm(目封止部の深さ方向)
測定モード:表面形状
一視野当たりの測定サイズ:標準(1024pixel×768pixel)
測定品質:高精度
測定時間:1分
平面処理:750μm×750μmの正方形領域を指定して計測の基準とする平面(基準面)を決めるための処理を実施する。設定された基準面が水平になるように、高さデータ全体が回転され、基準面高さが0になるように高さ方向にオフセットされる。
基準面の位置:-3μm(深さが3μmの位置が高さ0となるようにオフセットする。)
微小領域を無視:無視する(微小領域のPixel数:≧6pixel(6pixel未満の表面凹凸は孔として認識しない。))
【0032】
一実施形態において、目封止部は焼成されていてもよい。焼成された目封止部を構成するセラミックスは、例えばコージェライトの焼結体として提供可能である。コージェライトの焼結体は、コージェライト化原料を含有する目封止部形成用スラリーを焼成することにより得ることができる。
別の一実施形態において、目封止部は未焼成の状態であってもよい。この場合、目封止部を構成するセラミックスは、例えばコージェライト粒子と当該粒子同士を結合する無機バインダーとを含有することが好ましい。無機バインダーとしてはコロイダルシリカが好適である。
【0033】
目封止部が焼成されているか否かに関らず、目封止部を構成するセラミックスのメジアン径は微細であることが好ましい。これにより、目封止部の外面が平滑化しやすくなるという効果が得られる。具体的には、目封止部を構成するセラミックスのメジアン径の上限は、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更により好ましい。また、目封止部のヒケ抑制の観点からは、目封止部を構成するセラミックスの下限は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることが更により好ましい。従って、目封止部を構成するセラミックスのメジアン径は、例えば5~25μmであることが好ましく、10~20μmであることがより好ましく、12~15μmであることが更により好ましい。
【0034】
目封止部を構成するセラミックスのメジアン径は、ハニカム構造体から目封止部を切り出して測定試料を準備し、当該測定試料に対して測定することが望ましいが、ハニカム構造体から測定試料を2.0g用意することが困難である場合には、以下の方法で測定試料を用意する。
目封止部の作製に使用したものと同じ目封止部形成用スラリーを調合し、直径60mmで長さ15mmのステンレス製の型に流し込む。その後、実際の目封止部と同じ条件で乾燥させステンレス製の型から外す。その後、実際の目封止部が焼成されている場合には同じ条件で焼成する。得られたバルク体を自動乳鉢で粉砕して測定試料を作製する。ハニカム構造体から目封止部を切り出して測定試料を準備できる場合は、切り出した目封止部を粉砕して測定試料を作製する。粉砕は、乳棒回転数:100/120rpm、乳鉢回転数:6/7rpm、粉砕時間:5分の条件で実施する。測定試料2.0gをレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(実施例ではHORIBA社製 Partica LA-960を使用した。)にセットし、レーザ回折・散乱法により体積基準の累積粒度分布におけるメジアン径(D50)を測定する。
【0035】
一実施形態において、第一底面及び第二底面の目封止部は共に、目封止部の平均深さが3~7mmであり、好ましくは4.2~6mmである。目封止部の平均深さの下限が3mm以上であることで目封止部の強度を確保することができる。目封止部の平均深さは好ましくは4.2mm以上である。また、目封止部の平均深さの上限が7mm以下であることで、セル内で粒子状物質を捕集する隔壁の面積が小さくなるのを防止できる。目封止部の平均深さの上限は好ましくは6mm以下である。目封止部の深さを各底面について偏りなく20箇所測定し、その平均値を各底面における目封止部の平均深さとする。
【0036】
本明細書において、各目封止部の深さは以下の手順で測定する。まず、深さを測定する目封止部を、ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に平行な切断面で半分に切断し、目封止部の断面を切り出す。得られた目封止部一箇所の一方の断面全体をレーザー顕微鏡(例:キーエンス社製形状解析レーザー顕微鏡VK X250/260)で撮影し、目封止部の断面画像を生成する。当該断面画像において観察される目封止部が形成されているセルの中心軸M(対向する一対の隔壁112までの距離が等しい直線)における外面側の端部から目封止部109が存在する最も深い位置までの、セルの延びる方向における長さを測定し、これを目封止部の深さEとする(
図4参照)。
【0037】
一実施形態において、第一底面及び第二底面の目封止部の平均気孔率はそれぞれ、30%~70%であり、35~60%であることが好ましく、40~50%であることがより好ましい。目封止部の平均気孔率の下限を30%以上とすることは、熱応力を緩和して耐熱衝撃性を高めるのに有利である。目封止部の平均気孔率の下限は35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。また、目封止部の平均気孔率の上限を70%以下とすることは、エロージョンを防止する上で有利である。目封止部の平均気孔率の上限は60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
【0038】
目封止部の気孔率は、目封止部のみを採取して直接測定するのが困難であるため、JIS 1655:2003で規定される水銀圧入法により以下の手順で測定することができる。
・目封止部の形成されていない隔壁部の試験片を採取し、当該試験片の気孔率P1(隔壁部の気孔率)を測定する。
・目封止部を含む隔壁部の試験片を採取し、当該試験片の気孔率P(隔壁部+目封止部の気孔率)を測定する。
・目封止部を含む隔壁部の試験片において、隔壁部の気孔を含む体積V1を測定する。
・目封止部を含む隔壁部の試験片において、目封止部の気孔を含む体積V2を測定する。
目封止部の気孔率をP2とすると、P、P1、P2、V1及びV2は式(1)の関係を満たす。
P=P1×V1/(V1+V2)+P2×V2/(V1+V2) ・・・(1)
従って、P2は式(2)により求めることができる。
P2=P×(V1+V2)/V2-P1×V1/V2 ・・・(2)
目封止部における気孔率P2を各底面について任意の20箇所測定し、その平均値を各底面における目封止部の平均気孔率とする。
なお、目封止部を含む隔壁部の試験片において、隔壁部の気孔を含む体積V1の体積割合をv1、目封止部の気孔を含む体積V2の体積割合をv2とすると、P2は式(3)により求めてもよい。
P2=P×(v1+v2)/v2-P1×v1/v2 ・・・(3)
【0039】
ハニカム構造体を触媒担体として使用する場合、隔壁の表面に目的に応じた触媒をコーティングすることができる。触媒としては、限定的ではないが、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化燃焼させて排気ガス温度を高めるための酸化触媒(DOC)、スス等のPMの燃焼を補助するPM燃焼触媒、窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒及びNSR触媒、並びに、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に除去可能な三元触媒が挙げられる。触媒は、例えば、貴金属(Pt、Pd、Rh等)、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba、Sr等)、希土類(Ce、Sm、Gd、Nd、Y、La、Pr等)、遷移金属(Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Ti、Zr、V、Cr等)等を適宜含有することができる。
【0040】
(2.製造方法)
目封止部を有するハニカム構造体は、目封止部の形成方法を除いて公知の製造方法によって製造可能であるが以下に例示的に説明する。まず、セラミックス原料、分散媒、造孔材及びバインダーを含有する原料組成物を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形することにより所望のハニカム成形体に成形する。原料組成物中には分散剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0041】
セラミックス原料は、金属酸化物及び金属等の焼成後に残存し、セラミックスとしてハニカム焼成体の骨格を構成する部分の原料である。セラミックス原料は例えば粉末の形態で提供することができる。セラミックス原料としては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、珪素-炭化珪素複合材、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア等のセラミックスを得るための原料が挙げられる。具体的には、限定的ではないが、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、蛇紋石、パイロフェライト、ブルーサイト、ベーマイト、ムライト、マグネサイト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。セラミックス原料は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0042】
DPF及びGPF等のフィルタ用途の場合、セラミックスとしてコージェライトを好適に使用することができる。この場合、セラミックス原料としてはコージェライト化原料を使用することができる。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料である。コージェライト化原料は、アルミナ(Al2O3)(アルミナに変換される水酸化アルミニウムの分を含む):30~45質量%、マグネシア(MgO):11~17質量%及びシリカ(SiO2):42~57質量%の化学組成からなることが望ましい。
【0043】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば、特に限定されず、例えば、小麦粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル、炭素(例:グラファイト)、セラミックスバルーン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂、フェノール等を挙げることができる。造孔材は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。造孔材の含有量は、焼成後のハニカム構造体の気孔率を高めるという観点からは、セラミックス原料100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であるのがより好ましく、3質量部以上であるのが更により好ましい。造孔材の含有量は、焼成後のハニカム構造体の強度を確保するという観点からは、セラミックス原料100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、27量部以下であるのがより好ましく、24質量部以下であるのが更により好ましい。
【0044】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを例示することができる。また、バインダーの含有量は、ハニカム成形体の強度を高めるという観点から、セラミックス原料100質量部に対して4質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であるのがより好ましく、6質量部以上であるのが更により好ましい。バインダーの含有量は、焼成工程での異常発熱によるキレ発生を抑制する観点から、セラミックス原料100質量部に対して9質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であるのがより好ましく、7質量部以下であるのが更により好ましい。バインダーは、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0045】
分散剤には、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。分散剤は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。分散剤の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して0~2質量部であることが好ましい。
【0046】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0047】
乾燥工程が実施される前のハニカム成形体の水の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して、20~90質量部であることが好ましく、60~85質量部であることがより好ましく、70~80質量部であることが更により好ましい。ハニカム成形体の水の含有量が、セラミックス原料100質量部に対して、20質量部以上であることで、ハニカム構造の品質が安定し易いという利点が得られやすい。ハニカム成形の水の含有量が、セラミックス原料100質量部に対して、90質量部以下であることで、乾燥時の収縮量が小さくなり、変形を抑制することができる。本明細書において、ハニカム成形体の水の含有量は、乾燥減量法により測定される値を指す。
【0048】
ハニカム成形体の乾燥は、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。なかでも、ハニカム成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0049】
この後の工程は、製品であるハニカム構造体が、焼成された目封止部を有するのか、未焼成の状態の目封止部を有するのかによって異なるので、場合分けして説明する。
【0050】
(1)ハニカム構造体が焼成された目封止部を有する場合
ハニカム構造体が焼成された目封止部を有する場合について説明する。ハニカム成形体を乾燥した後、ハニカム成形体の両底面に未焼成の目封止部を形成する。未焼成の目封止部は、第1セル及び第2セルの目封止部を形成すべき開口部に目封止部形成用スラリーを充填し、その後、乾燥することで形成することができる。次いで、未焼成の目封止部をハニカム成形体と共に焼成する。これにより、焼成された目封止部が形成される。
【0051】
目封止部形成用スラリーは一実施形態において、コージェライト化原料、分散媒、造孔材、及びバインダーを含有する。例示的には、目封止部形成用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に対して、分散媒を30~60質量部、造孔材を5~20質量部、バインダーを0.2~2.0質量部含有する。好ましい実施形態において、目封止部形成用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に対して、分散媒を35~50質量部、造孔材を8~16質量部、バインダーを0.2~1.5質量部含有する。
【0052】
目封止部形成用スラリーに使用するコージェライト化原料としては、例えば、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、蛇紋石、パイロフェライト、ブルーサイト、ベーマイト、ムライト、マグネサイト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これら原料の配合比は焼成後に得られる目封止部が、先述した化学組成をもつように選定される。
【0053】
コージェライト化原料は、目封止部の外面の平滑性を高める観点から、できるだけ微細であることが好ましい。例えば、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の累積粒度分布におけるメジアン径(D50)は、タルク:9~31μm、アルミナ(及び水酸化アルミニウム):3~8μm、カオリン:2~9μm、シリカ:2~8μmが好適である。
【0054】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0055】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば、特に限定されず、例えば、小麦粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル、炭素(例:グラファイト)、セラミックスバルーン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂、フェノール等を挙げることができる。造孔材は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。造孔材のレーザー回折・散乱法により求めた体積基準の累積粒度分布におけるメジアン径(D50)は、35~55μmが好適である。
【0056】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを例示することができる。バインダーは、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0057】
目封止部形成用スラリーは適宜増粘剤を含有してもよい。増粘剤は、例えば、コージェライト化原料100質量部に対して、0.1~0.5質量部含有することができ、好ましくは0.2~0.4質量部含有することができる。目封止部形成用スラリーに使用する増粘剤としては、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、プロピレングリコール、ポリエチレンオキシドが挙げられる。この中でも、溶液は低濃度でも高い粘度を示し、流動性改質効果のあるポリエチレンオキシドが好ましい。増粘剤は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0058】
目封止部形成用スラリーは適宜分散剤を含有してもよい。分散剤は、例えば、コージェライト化原料100質量部に対して、0.1~3質量部含有することができ、好ましくは0.2~2質量部含有することができる。分散剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、及びポリアルコール等を列挙することができる。分散剤は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0059】
目封止部形成用スラリーのセルの開口部への充填は、例えば以下の「スキージ方式」で実施することができる。
図5に示すように、チャック120を用いて固定された乾燥後のハニカム成形体500の上側の底面(ここでは図中の第二底面106)にフィルム121を貼着し、当該フィルム121に目封止部の配設条件(例えば、「市松模様」等)に対応する位置にレーザーを照射し、フィルム121に複数の孔126を穿設する。
【0060】
その後、フィルム121の上に目封止部形成用スラリー124を載せ、スキージ122をフィルム121に沿って
図5における矢印方向に移動させる操作を行う。これにより、フィルム121の孔126に対応する位置に開口したセル125に一定量の目封止部形成用スラリー124が充填される。
【0061】
目封止部の深さは、スキージ122の移動操作の回数、スキージ122とフィルム121との間の接触角度、スキージ122のフィルム121に対する押付圧力、及び、目封止部形成用スラリー124の粘度等によって変化させることが可能である。
【0062】
目封止部形成用スラリー124の充填後は、フィルム121の表面に残っている過剰な目封止部形成用スラリー124をスキージ122で拭った後、フィルム121を剥がし、ハニカム成形体500全体を乾燥する。これにより、セル125に充填された目封止部形成用スラリー124が乾燥し、焼成前の目封止部が形成される。乾燥は、例えば、100~230℃の乾燥温度で60~150秒程度の条件で実施することができる。
【0063】
フィルムの材料は、特に制限はないが、孔を形成するための熱加工が容易であるため、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、又はテフロン(登録商標)であることが好ましい。また、フィルムは粘着層を備えていることが好ましく、粘着層の材料は、アクリル系樹脂、ゴム系(例えば、天然ゴム又は合成ゴムを主成分とするゴム)、又はシリコン系樹脂であることが好ましい。フィルムは、例えば厚みが20~50μmの粘着フィルムを好適に使用することができる。
【0064】
上記「スキージ方式」以外に、目封止部形成用スラリーをセルの開口部へ充填する方法としては、「圧入方式」が挙げられる。「圧入方式」は、フィルムを貼着し、孔を穿けたハニカム成形体の底面部を、目封止部形成用スラリーを溜めた液槽に浸し、セルに目封止部形成用スラリーを充填する方法である。この場合、目封止部の深さは、ハニカム成形体を目封止部形成用スラリーに浸す深さによって変化させることができる。
【0065】
乾燥後、目封止部はフィルムの厚み分だけハニカム成形体の底面から突出するので、削り取って均すこと(以下、「平滑化加工」ともいう。)が好ましい。この際、目封止部が好適な組成を有していると目封止部の外面が平滑化されやすい。平滑化加工の方法は、限定的ではないが、平滑化加工の対象である目封止部の外表面に、焼成されたセラミックス製のハニカム構造体(以下、「平滑化治具」ともいう。)の一方の底面を押し当てながら擦る方法が好適である。平滑化治具は、例えば、平滑化加工の対象となっているハニカム成形体の焼成後の材質と同じもの、例えばコージェライト製のものを好適に使用可能である。但し、平滑化治具は、目封止部を有していてもいなくてもよい。
【0066】
平滑化治具の底面は平滑であることが好ましい。具体的には、平滑化治具の底面を構成する隔壁の表面の算術平均高さSaはそれぞれ、例えば1.0~5.0μmであることが好ましく、2.0~4.0μmであることがより好ましく、2.5~3.5μmであることが更により好ましい。平滑化治具の底面を構成する隔壁の表面の算術平均高さSaは、先述した目封止部の算術平均高さSaの測定方法と同様の方法で測定可能である。
【0067】
また、平滑化加工の際は、平滑化加工の対象となっているハニカム成形体のセルの開口形状を画定する辺(隔壁)の方向と、平滑化治具のセルの開口形状を画定する辺(隔壁)の方向が平行にならないように、例えば、両辺のなす角度が30°~60°となるように、両者を相対移動させることが好ましい。平滑化加工の対象となっているハニカム成形体のセルの開口形状を画定する辺(隔壁)の方向と、平滑化治具のセルの開口形状を画定する辺(隔壁)の方向が平行であると、チッピングが発生しやすくなるためである。
【0068】
目封止部形成用スラリーが充填されたハニカム成形体に対しては、この後、脱脂工程及び焼成工程を行う。これにより焼成された目封止部を有するハニカム構造体が製造される。バインダーの燃焼温度は200℃程度、造孔材の燃焼温度は300~1000℃程度である。従って、脱脂工程はハニカム成形体を200~1000℃程度の範囲に加熱して実施すればよい。加熱時間は特に限定されないが、通常は、10~100時間程度である。脱脂工程を経た後のハニカム成形体は仮焼体と称される。焼成工程は、ハニカム構造体の材料組成にもよるが、例えば仮焼体を1300~1450℃に加熱して、3~24時間保持することで行うことができる。
【0069】
(2)ハニカム構造体が未焼成の目封止部を有する場合
次に、ハニカム構造体が未焼成の目封止部を有する場合について説明する。この場合は、ハニカム成形体を乾燥した後、目封止部を形成することなく、脱脂工程及び焼成工程を行う。脱脂工程及び焼成工程の条件は先述した通りである。これにより目封止部のないハニカム構造体が製造される。次いで、ハニカム構造体の両底面に未焼成の目封止部を形成する。未焼成の目封止部は、第1セル及び第2セルの目封止部を形成すべき開口部に目封止部形成用スラリーを充填し、その後、乾燥することで形成することができる。
【0070】
目封止部形成用スラリーは一実施形態において、コージェライト粒子、分散媒、及び無機バインダーを含有する。例示的には、目封止部形成用スラリーは、コージェライト粒子100質量部に対して、分散媒を10~35質量部、無機バインダーを10~25質量部含有する。好ましい実施形態において、目封止部形成用スラリーは、コージェライト粒子100質量部に対して、分散媒を15~30質量部、無機バインダーを11~20質量部含有する。これら原料の配合比は乾燥後に得られる目封止部が、先述した化学組成をもつように選定される。
【0071】
コージェライト粒子は、主成分としてコージェライトを含有する。このことは、コージェライト粒子100質量%中のコージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)の合計質量割合が50質量%以上であることを意味する。コージェライト粒子100質量%中のコージェライトの質量割合は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。コージェライトの含有率の測定法は先述した通りである。
【0072】
コージェライト粒子は、目封止部の外面の平滑性を高める観点から、微細であることが好ましい。但し、コージェライト粒子が微細になりすぎると気孔率が低下する。このため、所望の気孔率が得られるようにコージェライト粒子は微細になり過ぎない方がよい。コージェライト粒子は、例えば、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の累積粒度分布におけるメジアン径(D50)が、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。コージェライト粒子のメジアン径(D50)に下限は特段設定されない。入手容易性の観点からは、コージェライト粒子のメジアン径(D50)は10μm以上であるのが通常であり、20μm以上であるのが典型的である。従って、コージェライト粒子のメジアン径(D50)は、例えば、10~40μmであることが好ましく、20~30μmであることがより好ましい。
【0073】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0074】
無機バインダーとしては、コロイダルシリカを好適に使用可能である。
【0075】
目封止部形成用スラリーは、無機バインダーに加えて有機バインダーを含有してもよい。例えば、コージェライト粒子100質量部に対して、0.2~2.0質量部含有することができ、好ましくは0.2~1.5質量部含有することができる。有機バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ダイユータンガム、ウェランガム、キサンタンガム、グアーガム等の有機バインダーを例示することができる。有機バインダーは、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0076】
目封止部形成用スラリーは適宜分散剤を含有してもよい。分散剤は、例えば、コージェライト粒子100質量部に対して、0.1~3質量部含有することができ、好ましくは0.2~2質量部含有することができる。分散剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、及びポリアルコール等を列挙することができる。分散剤は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0077】
目封止部形成用スラリーのセルの開口部への充填は、先述した「スキージ方式」及び「圧入方式」など公知の充填方法を採用できる。その後のフィルム剥がし及び乾燥条件も先述した通りである。
【0078】
乾燥後は、先述した平滑化加工を行うことが好ましい。この際、目封止部が好適な組成を有していると目封止部の外面が平滑化されやすい。平滑化加工の条件は先述した通りである。
【実施例】
【0079】
<比較例1~2、実施例1>
(1)ハニカム成形体の作製
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を25質量部、分散媒を80質量部、バインダーを5質量部、分散剤を1質量部それぞれ添加することで得られた原料組成物を混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては吸水性樹脂、シリカゲルを使用し、バインダーとしてはメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0080】
この坏土を押出成形機に投入し、所定形状の口金を介して押出成形することにより円柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を誘電乾燥及び熱風乾燥した後、所定の寸法となるように両底面を切断し、70℃×2時間の条件で更に熱風乾燥した。
【0081】
(2)目封止部の形成
表1に記載の質量配合比で各原料を含有するコージェライト化原料の合計100質量部に、造孔材、分散媒、有機バインダー、及び分散剤を表1に記載の質量配合比で添加し、混練して目封止部形成用スラリーを調合した。コージェライト化原料としては、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、及びシリカを使用した。これら原料のメジアン径(D50)は表1に記載のとおりである。造孔材としては発泡樹脂を使用し、分散媒としては水を使用し、有機バインダーとしてはメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。先述した「スキージ方式」を用いて、第1セル及び第2セルが交互に隣接配置するように、この目封止部形成用スラリーを両底面に充填した。その後、フィルムに付着した過剰な目封止部形成用スラリーをスキージで拭った後、フィルムを剥がし、大気雰囲気下で180℃×200秒の条件で乾燥を行った。
【0082】
各ハニカム成形体について、フィルム剥がし直後の目封止部の外面の状態を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察しながら、無作為に5個の剥離箇所における剥離深さをスケールで測定し、以下の基準で目封止部剥がれを評価した。結果を表1に示す。
○:≦1.0mm
△:1.1~1.5mm
×:≧1.6mm
【0083】
(3)平滑化加工
平滑化治具として、焼成されたコージェライト製のハニカム構造体を用意した。このハニカム構造体の仕様は以下である。
全体形状:直径118mm×高さ20mmの円柱状
セルの流路方向に垂直な断面におけるセル形状:正方形
セル密度(単位断面積当たりのセルの数):750セル/平方インチ(118セル/cm2)
隔壁の平均厚み:2.5mil(64μm)(口金の仕様に基づく公称値)
平滑化治具の底面を構成する隔壁の表面の算術平均高さSa:3.3μm
【0084】
次いで、乾燥後の各ハニカム成形体に対して、目封止部の平滑化加工を人手で行った。平滑化加工の際は、平滑化加工の対象となっているハニカム成形体のセルの開口形状を画定する辺(隔壁)と、平滑化治具のセルの開口形状を画定する辺(隔壁)のなす角度が45°となるように、両者を相対移動させて行った。
【0085】
(4)焼成
次いで、大気雰囲気下、約200℃で加熱脱脂し、更に大気雰囲気下、1400℃で10時間焼成することにより、焼成された目封止部を有する円柱状のハニカム構造体を得た。ハニカム構造体は下記の特性を調査するのに必要な数だけ用意した。
【0086】
(5)ハニカム構造体の仕様
得られたハニカム構造体の仕様は以下である。
全体形状:直径132mm×高さ152mmの円柱状
セルの流路方向に垂直な断面におけるセル形状:正方形
セル密度(単位断面積当たりのセルの数):300セル/平方インチ(47セル/cm2)
隔壁の平均厚み:8.5mil(216μm)(口金の仕様に基づく公称値)
隔壁の平均気孔率:63%
目封止部の平均深さ:5mm
当該柱状ハニカム構造体の外周側壁、隔壁及び目封止部について、CuのKα線を用いたPANalytical社製のX’pert PRO装置を使用し、X線回折法により2θ=8~100°の範囲のX線解析測定を行ない、リートベルト解析プログラムRIETANを用いて解析して求めたコージェライト結晶相比率を分析したところ、75~94質量%であった。
【0087】
(6)目封止部の化学組成
ハニカム構造体から測定試料を採取することが困難であったことから、目封止部の作製に使用したものと同じ目封止部形成用スラリーを調合して、先述した手順で測定試料を作製し、化学組成を先述した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0088】
(7)目封止部のメジアン径
ハニカム構造体から測定試料を採取することが困難であったことから、目封止部の作製に使用したものと同じ目封止部形成用スラリーを調合して、先述した手順で測定試料を作製し、目封止部を構成するセラミックスのメジアン径を先述した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0089】
(8)目封止部の算術平均高さSa
得られたハニカム構造体の一方の底面における目封止部の算術平均高さSaを先述した方法でキーエンス社製形状解析レーザー顕微鏡VK X250/260を用いて測定した。結果を表1に示す。なお、表1には他方の底面における目封止部の算術平均高さSaを記載していないが、一方の底面と同程度であった。
【0090】
(9)目封止部の平均気孔率
得られたハニカム構造体の一方の底面における目封止部の平均気孔率を先述した方法で測定した。結果を表1に示す。なお、表1には他方の底面における目封止部の平均気孔率を記載していないが、一方の底面と同程度であった。
【0091】
(10)目封止部強度
得られたハニカム構造体の一方の底面における外周縁から5mm以内の領域にあるものを除く9個の目封止部(底面の重心部と、重心部をXY座標の原点Oとして、そこからX軸の±方向及びY軸の±方向に等間隔に2個ずつ)を、他方の底面側から挿入したステンレス鋼製の押し棒(直径1.1mm×長さ40mmの円柱状)で押し、徐々に印加力を増加させた。印加力の増加に伴い、押し棒はやがて目封止部を突き抜ける。突き抜けるまでの最大荷重(目封止部強度)をロードセルで測定した。他方の底面における目封止部についても同様に測定した。このようにして、一つのハニカム構造体について合計18個の目封止部強度を測定した時の平均値を求めた。そして、比較例1の平均値を1.0としたときの相対的な値を表1に示す。
【0092】
<実施例2~4>
(1)目封止部のない円柱状のハニカム構造体の作製
実施例1と同じ条件で、円柱状のハニカム成形体を作製した。その後、得られたハニカム成形体を誘電乾燥及び熱風乾燥した後、所定の寸法となるように両底面を切断し、70℃×2時間の条件で更に熱風乾燥した。次いで、大気雰囲気下、約200℃で加熱脱脂し、更に大気雰囲気下、1400℃で10時間焼成することにより、目封止部のない円柱状のハニカム構造体を得た。
【0093】
(2)目封止部の形成
表1に記載の質量配合比で配合したコージェライト粒子A(コージェライトの含有率=90質量%)とコージェライト粒子B(コージェライトの含有率=90質量%)の合計100質量部に、分散媒、有機バインダー、コロイダルシリカ(無機バインダー)、及び分散剤を表1に記載の質量配合比で添加し、混練して目封止部形成用スラリーを調合した。コージェライト粒子A及びコージェライト粒子Bの化学組成を蛍光X線分析による定量分析の方法で測定したところ、コージェライト粒子Aについては、SiO2が53.0質量%、Al2O3が32.1質量%、MgOが11.1質量%であった。コージェライト粒子Bについては、SiO2が54.5質量%、Al2O3が30.9質量%、MgOが12.4質量%であった。これらのメジアン径(D50)は表1に記載のとおりである。分散媒としては水を使用し、有機バインダーとしてはダイユータンガムを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。先述した「スキージ方式」を用いて、第1セル及び第2セルが交互に隣接配置するように、この目封止部形成用スラリーを両底面に充填した。その後、フィルムに付着した過剰な目封止部形成用スラリーをスキージで拭った後、フィルムを剥がし、大気雰囲気下で180℃×200秒の条件で乾燥を行った。
【0094】
各ハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で目封止部剥がれを評価した。結果を表1に示す。
【0095】
(3)平滑化加工
平滑化治具として、焼成されたコージェライト製のハニカム構造体を用意した。このハニカム構造体の仕様は実施例1で用いた平滑化治具と同じである。
【0096】
次いで、目封止部を乾燥した後の各ハニカム構造体に対して、目封止部の平滑化加工を人手で行った。平滑化加工の際は、平滑化加工の対象となっているハニカム成形体のセルの開口形状を画定する辺(隔壁)と、平滑化治具のセルの開口形状を画定する辺(隔壁)のなす角度が45°となるように、両者を相対移動させて行った。このようにして、未焼成の目封止部を有するハニカム構造体を製造した。ハニカム構造体は下記の特性を調査するのに必要な数だけ用意した。
【0097】
(4)ハニカム構造体の仕様
得られたハニカム構造体の仕様は以下である。
全体形状:直径132mm×高さ152mmの円柱状
セルの流路方向に垂直な断面におけるセル形状:正方形
セル密度(単位断面積当たりのセルの数):300セル/平方インチ(49セル/cm2)
隔壁の平均厚み:8.5mil(216μm)(口金の仕様に基づく公称値)
目封止部の平均深さ:5mm
隔壁の平均気孔率:63%
当該柱状ハニカム構造体の外周側壁、隔壁及び目封止部について、CuのKα線を用いたPANalytical社製のX’pert PRO装置を使用し、X線回折法により2θ=8~100°の範囲のX線解析測定を行ない、リートベルト解析プログラムRIETANを用いて解析して求めたコージェライト結晶相比率を分析したところ、75~94質量%であった。
【0098】
(5)目封止部の特性
目封止部の化学組成、メジアン径、算術平均高さSa、平均気孔率、及び目封止部強度を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0099】
【符号の説明】
【0100】
100 :ハニカム構造体
102 :外周側壁
104 :第一底面
106 :第二底面
108 :第1セル
109 :目封止部
110 :第2セル
112 :隔壁
120 :チャック
121 :フィルム
122 :スキージ
124 :目封止部形成用スラリー
125 :セル
126 :孔
500 :ハニカム成形体
【要約】
【課題】フィルム剥離時の目封止部剥がれを抑制可能なハニカム構造体を提供する。
【解決手段】外周側壁と、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面に開口部を有し、第二底面に目封止部を有する複数の第1セルと、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面に目封止部を有し、第二底面に開口部を有する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは隔壁を挟んで交互に隣接配置されているハニカム構造体であって、前記目封止部は、MgO:9.0~13.4質量%、Al
2O
3:29.8~35.0質量%、SiO
2:49.8~57.2質量%を含有するセラミックスで構成されており、第一底面及び第二底面における前記目封止部の算術平均高さSaはそれぞれ、18.0μm以下である、ハニカム構造体。
【選択図】
図2