(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
F25B1/00 396Z
F25B1/00 321K
(21)【出願番号】P 2024506460
(86)(22)【出願日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2023034707
【審査請求日】2024-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】多田 修平
(72)【発明者】
【氏名】松村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏治
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038014(JP,A)
【文献】特開2018-031336(JP,A)
【文献】特開2018-025372(JP,A)
【文献】国際公開第2022/025202(WO,A1)
【文献】特開2018-096652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均化反応を起こす可能性のある冷媒を用いる冷凍サイクル装置であって、
前記冷媒を圧縮する圧縮機を備え、
融解潜熱により吸熱する吸熱部材が、前記吸熱部材よりも融点の高い容器に収容された状態で、前記圧縮機の外壁
または内部に配置され、
前記吸熱部材の融点は、前記圧縮機の最大吐出温度よりも高く、かつ、前記圧縮機の吐出圧力範囲内の各吐出圧力に応じた温度で、前記冷媒が不均化反応を起こし得る温度である開始温度の最大値よりも低い、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記吸熱部材の融点は、150℃以上300℃未満である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記吸熱部材は、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリプロピレン(PP)を含む樹脂で構成される、請求項
1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記吸熱部材は、前記容器の容量よりも小さい量の前記吸熱部材が前記容器に収容される、請求項
1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記圧縮機は、高圧チャンバ方式の圧縮機である、請求項
1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内に炭素原子-炭素原子間に不飽和結合を有するトリフルオロエチレン(HFO-1123)やトランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(R1132a)は、分子内二重結合により化学反応性が高いことが知られる。特に、これら冷媒単一もしくはこれら冷媒を一定濃度以上含む混合冷媒は、自己分解反応(不均化反応と呼ぶ)を起こすことが知られている。自己分解反応とは、高温、高圧力条件において、放電などのエネルギーが一定以上加わると発熱しながら冷媒の分解反応が発生し爆発的な反応を起こす現象である。この自己分解反応が発生すると急激な圧力上昇により冷凍装置内での自己分解反応の発生位置が破裂し、冷凍装置周囲に危険を及ぼす可能性がある。
【0003】
一方で、これらの冷媒やこれら冷媒を一定濃度以上含有する混合冷媒は、空気調和機をはじめとする冷凍装置に多く使用されている冷媒R32やR410Aと圧力レベルが近く、R32やR410AのようなHFC系冷媒と比較して、冷媒分子の安定性が低く、大気中での寿命が短いためODP(オゾン破壊係数、Ozone Depletion Potential)やGWP(地球温暖化係数、Global Warming Potential)が極めて低い特徴がある。
【0004】
モントリオール議定書のキガリ改定や欧州F-gas規制、日本のフロン排出抑制法により、冷凍装置や空気調和機に使用される冷媒R32(GWP675)よりも、GWPの削減が求められている。そのため、これらの不飽和結合を有する冷媒を含む混合冷媒によって冷凍装置の環境影響を低減していく必要がある。
【0005】
特許文献1には、冷凍装置内において、高温の条件下であっても、不均化反応を抑制又は緩和するために、液体又は固体の吸熱剤を備え、特定の温度で吸熱反応を起こす技術が開示されている。また、特許文献2には、不均化反応を起こす可能性のある冷媒を使用する冷凍装置内において、冷媒回路中に融点が1000℃以上で、かつ熱容量が6.5J/K以上の吸熱部分を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-38014号公報
【文献】特開2022-27634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、不均化反応を抑制しつつ、冷凍装置内部において設置空間の制約から吸熱材料の体積をより小さくしたいという要望があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、不均化反応を起こす可能性がある冷媒を利用する冷凍サイクル装置において、吸熱材料の体積をより小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、不均化反応を起こす可能性のある冷媒を用いる冷凍サイクル装置であって、前記冷媒を圧縮する圧縮機を備え、融解潜熱により吸熱する吸熱部材が、前記吸熱部材よりも融点の高い容器に収容された状態で、前記圧縮機の外壁または内部に配置され、前記吸熱部材の融点は、前記圧縮機の最大吐出温度よりも高く、かつ、前記圧縮機の吐出圧力範囲内の各吐出圧力に応じた温度で、前記冷媒が不均化反応を起こし得る温度である開始温度の最大値よりも低い。
【0010】
本発明によれば、不均化反応を起こす可能性がある冷媒を利用する冷凍サイクル装置において、吸熱材料の体積をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】圧縮機の吐出圧力と不均化反応の開始温度の関係を示す図である。
【
図3】圧縮機の内部に収容された吸熱部材を示す図である。
【
図5】第1の変形例に係る吸熱部材の配置を示す図である。
【
図6】第2の変形例に係る吸熱部材の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1を示す図である。冷凍サイクル装置1は、冷凍機や空気調和機に用いられる。冷凍サイクル装置1は、熱源側装置10と、利用側装置20とを備えている。熱源側装置10と利用側装置20の間は、液接続配管50とガス接続配管51で接続されている。熱源側装置10は、圧縮機11、凝縮器12、受液器13、アキュムレータ15を備えている。利用側装置20は、蒸発器31と、減圧機構33とを備えている。
【0013】
圧縮機11は、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する。このガス冷媒は、凝縮器12において、空気や水などの別媒体と熱交換する。これにより、ガス冷媒は凝縮する。運転状態により余剰となる冷媒は、受液器13で貯留される。その後、液阻止弁16を経由して液接続配管50を流れた冷媒は、利用側装置20の減圧機構33において、液または気液二相の低温低圧の冷媒に膨張する。その後、冷媒は、蒸発器31において、空気ないし水などの別媒体と熱交換し空間や物体への冷却を行う。蒸発した乾き度の高い、もしくは飽和、過熱状態の低温低圧の冷媒は、ガス阻止弁17を経由してガス接続配管51を通り利用側熱源側装置10へ移動する。圧縮機11に気液二相状態で冷媒が吸入され、圧縮機11において不良が発生するのを回避するため、アキュムレータ15にて気液分離を行う。これにより、運転過渡時に液冷媒が急激に圧縮機11の吸入側に流れた場合でも適切な乾き度以上に調整し圧縮機11の信頼性を確保する。
【0014】
冷凍サイクル装置1の冷媒としては、不均化反応を起こす可能性のある冷媒が用いられる。このような冷媒としては、例えば、分子内に炭素原子-炭素原子間に不飽和結合を有するトリフルオロエチレン(HFO-1123)やトランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(R1132a)等の単一冷媒、または、これらを一定濃度以上含む混合冷媒が挙げられる。これらの冷媒は、自己分解反応(不均化反応と呼ぶ)を起こすことが知られている。自己分解反応とは、高温、高圧力条件において、放電などのエネルギーが一定以上加わると発熱しながら冷媒の分解反応が爆発的な反応を起こす現象である。この自己分解反応が発生すると急激な圧力上昇により冷凍サイクル装置1での自己分解反応の発生位置が破裂する場合がある。
【0015】
不均化反応をおこす可能性がある冷媒と混合する冷媒としてはHFC(ハイドロフルオロカーボン)やフルオロプロペン、CO2や炭化水素などから、選択されることが望ましい。これらから不均化反応を起こす可能性がある冷媒との混合成分として選択する際には、混合冷媒のGWPや使用する冷凍サイクル装置の能力や必要温度帯から混合冷媒の蒸気圧力や温度勾配、混合冷媒の燃焼性や毒性を含めた観点から組成比を調整されていることが望ましい。
【0016】
HFCとしては、ジフルオロメタン(HFC32)、ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、トリフルオロエタン(HFC143a)、ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、および1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)が例示される。フルオロプロペンとしては、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)などが例示される。
【0017】
このような不均化反応を防ぐべく、本実施形態の冷凍サイクル装置1においては、冷媒が流れる冷媒経路Qに、吸熱部材が配置される。吸熱部材は、融解潜熱により吸熱する部材である。ここで、吸熱部材の融点について説明する。
図2は、分子内に炭素原子-炭素原子の不飽和結合を有する分子をある濃度含有する混合冷媒における、圧縮機11の不均化反応が発生しうる冷媒温度と冷媒圧力の関係を示すグラフを示す図である。図中の領域Aに温度圧力が達した上でスパークやショートなどの放電エネルギーが冷媒に与えられると不均化反応が発生する。不均化反応を発生しうる単一冷媒もしくは混合冷媒の不均化反応発生領域Aが通常運転中の最大吐出温度Tdmax以上になっていることが望ましい。従来の空気調和機では温度保護制御も含め通常Tdmaxは120℃以下である。
図2に示すように、圧縮機11の吐出圧力が高くなるにつれて、不均化反応の開始温度は低くなる。吸熱部材の融点は、圧縮機11の吐出圧力範囲に対応した開始温度範囲における開始温度の最大値よりも低いものとする。これにより、不均化反応が開始する前に、吸熱が開始する。また、吸熱部材の融点は、圧縮機11の最大吐出温度よりも高いものとする。これにより、不均化反応が起こり得ない低温の温度範囲において、吸熱が開始するのを防ぐことができる。
【0018】
このような条件の下、吸熱部材としては、融点が150℃以上300℃未満の材料であることが好ましい。吸熱部材は周囲温度の上昇時に材料自身の不均化反応が発生する。吸熱部材としては、例えば、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン12、ポリプロピレン(PP)を含む樹脂が挙げられる。これら材料は比較的入手性が良好であり、コスト面からも冷凍サイクル装置1に設置しやすい。ここで、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン12、ポリプロピレン(PP)の融点は、順に、267℃、255℃、176℃、168℃である。これら物質の様に融点を300℃未満程度のものを選択するのが望ましい。これ以上融点が高い材料を選択した場合には、不均化反応発生時の吸熱が顕熱変化のみとなる吸熱作用時間が長く、不均化反応抑制作用が小さくなってしまう。このことからも融点がこれ以上に高い吸熱材料は好ましくない。
【0019】
また、圧縮機11の内部の流動により圧縮機吐出配管からは冷媒とともに冷媒の質量循環量に対し、最大5wt%程度の冷凍機油も冷媒とともに循環する。したがって、これら吸熱材料は、冷媒とともに冷凍機油とも冷凍サイクル装置内で接触する。したがってこれら吸熱材料のうちで、冷媒と冷凍機油と反応性が低く、冷媒の分解や吸熱材料自身の劣化により冷凍機油の全酸価上昇が発生し、圧縮機摺動部への影響や配管腐食への影響が少ないものが選択されることが望ましい。
【0020】
吸熱部材は、冷媒が流れる冷媒経路Qのうち、高圧側の経路に配置されるのが好ましい。高圧側の経路は、圧縮機11から凝縮器12及び受液器13を経由し、減圧機構33に至る経路である。冷凍サイクル装置1が運転中は常に冷凍サイクル装置内を冷媒が循環する。この際、冷媒を圧縮する圧縮機11から凝縮器12、減圧機構33の入口までが高温高圧の過熱度のついた冷媒が通過し、凝縮器内で冷媒は空気ないし水等の別媒体と熱交換し放熱することで、凝縮し高圧液の冷媒となる。このことから冷凍サイクル中で不均化反応の発生要因のうち、高温および高圧の条件が発生するのは、圧縮機内部、圧縮機から凝縮器入り口までの配管および凝縮器内部である。冷房、暖房を切り替えることが可能な四方弁を備えるような冷凍サイクル装置においては、圧縮機から四方弁を接続する配管、四方弁、四方弁から暖房時の凝縮器、冷房時の凝縮器の配管および凝縮器が高温高圧の冷媒が流動する可能性がある。吸熱材料は以上の冷凍サイクル中の箇所の一部ないしすべての箇所に備えることがのぞましい。
【0021】
図3は、圧縮機11の概略断面図である。圧縮機11としては、高圧チャンバ方式のスクロール圧縮機やロータリ圧縮機が用いられる。
図3はスクロール圧縮機の断面図を示している。これらの圧縮機では、圧縮機のチャンバ内は圧縮後の高温かつ高圧の冷媒が圧縮室の吐出口からチャンバ内を流れ最終的に圧縮機の吐出配管から冷凍サイクル中へ流出していく。そのため、圧縮機内部は冷凍サイクル中では常に相対的に高温高圧の冷媒が存在する。高温高圧の冷媒が冷凍機油に溶け込む量は減少するため、冷凍機油が冷媒によって希釈され摺動部での給油粘度が低下してしまうという問題が回避される。一方で、ある一定以上に冷媒が高温、高圧になると冷媒自身の不均化反応の発生可能性が高くなる。本実施形態においては、吸熱部材は、圧縮機11の内部に配置される。圧縮機11は、主に、固定スクロール106と旋回スクロール107とを有する圧縮機構部105と、旋回スクロール107を旋回運動させるシャフト110と、シャフト110を駆動するモータ104と、を密閉容器103に収容する。
【0022】
固定スクロール106と旋回スクロール107を?合わせることで圧縮室109が形成され、旋回スクロール107が旋回運動することで、圧縮室109の容積が減少して圧縮動作が行われる。圧縮動作では、旋回スクロール107の旋回運動に伴って、冷媒ガスの作動流体が吸込口101から圧縮室109へ吸い込まれ、吸い込まれた作動流体は、固定スクロール106の吐出口106aから吐出空間に吐出される。吐出空間に吐出された作動流体は、その後、モータ104が配置された空間103aに流入し、さらに吐出管102を介して密閉容器103から冷凍サイクルに吐出する。また、圧縮機底部には冷凍機油が貯留されている。冷凍機油は圧縮機底部からシャフト内部の流路を通じ,各軸受部に給油される。冷凍機油としてはポリビニルエーテル油、ポリオールエステル油、ポリアルキレングリコール油から冷媒との溶解性や潤滑時の必要粘度によって選択されていることが望ましい。
【0023】
高温、高圧力に加えエネルギーの3つの条件が揃うと不均化反応が発生する。冷凍サイクル装置1の運転時には、圧縮機11の内部は、高温、高圧力になっている。したがって、エネルギーが加わると不均化反応が発生する。これに対し、圧縮機11の内部においては、モータ104の上下に配置された、コイルの巻線部115においては、圧縮機摺動不良などにより発生した摩耗紛の付着や、巻線の被覆損傷などにより巻線間においてショートが発生し、エネルギーが投入される可能性がある。そこで、吸熱部材200は、コイルの巻線部115の近傍に配置される。
図3に示す例においては、吸熱部材200は、上側の巻線部115の上部及び下側の巻線部115の下部に配置されている。これにより、不均化反応に伴う発熱を低減することができる。
【0024】
さらに、吸熱部材200は、
図4に示すように、容器300に収容された状態で、圧縮機11の内部に配置される。容器300は、例えば金属など、吸熱部材200に比べて融点が高い物質で形成されているものとする。これにより、吸熱部材200を製品寿命相当の長期にわたり設置することが可能となる。これにより、通常運転中において、吸熱部材200が冷媒や冷凍機油に触れる頻度を減らすことができる。さらに、この場合には、容器300に収容される吸熱部材200の体積は、容器300の容積に比べて小さいものとする。より好ましくは、吸熱部材200の体積は、吸熱部材200が融解し、体積が膨張した状態においても、容器300の容積を超えないような体積であるものとする。さらには、容器300には、孔302が設けられているものとする。これにより、容器300の破裂を防止することができる。
【0025】
例えば、PAの線膨張係数はおよそ8~10×10-5/℃である。圧縮機が長期にわたって停止している場合でも冷凍機油へ冷媒の溶け込みを回避するため、ヒータなどの過熱手段を備え極端な温度低下を回避していることが多い。常温(15~30度)から圧縮機内部で不均化反応が発生しうる温度である150℃~300℃付近まで上昇した場合の体積変化分を考慮して、吸収部材200を容器内に収めておくことが望ましい。吸熱部材200の線膨張係数をα、融解までの温度変化を吸熱部材200の融点Tとしたとき考慮すべき体積変化率ΔV=α×(T-15)以下であることを考慮して、吸熱部材200を容器内に封入することが望ましい。
【0026】
以上のように、本実施形態の冷凍サイクル装置1においては、融解潜熱により吸熱する吸熱部材が冷媒経路に配置されているので、不均化反応が発生するのを防ぐことができる。さらに、吸熱部材として、融解潜熱により吸熱する材料が用いられるので、顕熱変化によって吸熱する材料を用いる場合に比べて、単位面積当たりで吸熱できる熱量を増加させることができる。したがって、顕熱変化による吸熱部材を用いる場合に比べて、吸熱部材の体積をより小さくすることができる。これにより、冷凍サイクル装置1への吸熱部材の搭載性を高めることができる。
【0027】
なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、例えばある実施形態の変形例を他の実施形態に適用するなど、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0028】
そうした第1の変形例としては、吸熱部材は、圧縮機11の内部に配置されていればよく、内部における配置位置は、実施形態に限定されるものではない。他の例としては、
図5に示すように、吸熱部材200は、圧縮機11においてコイルが接続される接続端子117の近傍に配置されてもよい。
図5に示す例においては、吸熱部材200は、接続端子117の上部に配置されている。接続端子117においては、スパークが発生し、エネルギーが投入される可能性がある。これに対し、吸熱部材200が接続端子117の近傍に配置されることで、不均化反応に伴う発熱を低減することができる。
【0029】
また、第2の変形例としては、圧縮機11の外壁に吸熱部材200が配置されてもよい。例えば、
図6に示すように、吸熱部材200は、円筒状の密閉容器103の周囲を円状に囲うように配置されてもよい。
図6に示す例においては、吸熱部材200は、モータ104及び巻線部115に対応した外壁に配置されている。例えば、圧縮機11の内部に吸熱部材200を配置するのに十分な空間が存在しない場合には、このように圧縮機11の外壁に吸熱部材200が配置されるのが好ましい。
【0030】
また、第3の変形例としては、吸熱部材は、冷媒経路のうち高圧側に設置された受液器13の内部や外壁に設けられてもよく、また他の例としては、凝縮器12の伝熱管の内部や外壁に設けられてもよい。また、吸熱部材は、凝縮器12と受液器13の間の配管など、高圧側の配管の内部や外壁に設けられてもよい。なお、伝熱管や配管の内部に吸熱部材が配置される場合には、吸熱部材が配置される部分の内径を吸熱部材が配置されない部分の内径よりも大きくするのが好ましい。これにより、圧力損失が大きくなるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 冷凍サイクル装置
10 熱源側装置
11 圧縮機
12 凝縮器
13 受液器
15 アキュムレータ
20 利用側装置
31 蒸発器
33 減圧機構
101 吸込口
102 吐出管
103 密閉容器
103a 空間
104 モータ
105 圧縮機構部
106 固定スクロール
106a 吐出口
107 旋回スクロール
110 シャフト
115 巻線部
117 接続端子
200 吸熱部材
【要約】
【課題】不均化反応を起こす可能性がある冷媒を利用する冷凍サイクル装置において、不均化反応の発生を防ぎつつ、吸熱材料の体積をより小さくする。
【解決手段】不均化反応を起こす可能性のある冷媒を用いる冷凍サイクル装置であって、冷媒を圧縮する圧縮機を備え、冷媒が流れる冷媒経路に、融解潜熱により吸熱する吸熱部材が配置され、吸熱部材の融点は、圧縮機の最大吐出温度よりも高く、かつ、圧縮機の吐出圧力範囲内の各吐出圧力に応じた温度で、冷媒が不均化反応を起こし得る温度である開始温度の最大値よりも低い。