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特許7595234分子標的薬nCoVshRNA・2ACE2の合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】分子標的薬nCoVshRNA・2ACE2の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241129BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C07K14/705
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022180750
(22)【出願日】2022-11-11
(65)【公開番号】P2023071635
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】202111329892.6
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210116885.6
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210473225.3
(32)【優先日】2022-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210643026.2
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210917146.7
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522441714
【氏名又は名称】杭州痴創生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(73)【特許権者】
【識別番号】524316500
【氏名又は名称】浙江大学医学院附属婦産科医院
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】翁炳煥
(72)【発明者】
【氏名】李蘭娟
(72)【発明者】
【氏名】汪輝
(72)【発明者】
【氏名】賀林
(72)【発明者】
【氏名】朱智勇
(72)【発明者】
【氏名】盛国平
(72)【発明者】
【氏名】馬端
(72)【発明者】
【氏名】姚旭峰
(72)【発明者】
【氏名】兪佳玲
(72)【発明者】
【氏名】羅玉琴
(72)【発明者】
【氏名】師越
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/151096(WO,A2)
【文献】特表2011-505846(JP,A)
【文献】特表2013-510584(JP,A)
【文献】Frontiers in Molecular Biosciences,2020年,Vol.7,Article 197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 14/00-14/825
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による細胞への感染を遮断する分子標的薬の合成方法であって、
前記新型コロナウイルスの遺伝子を標的とするRNAi配列のセンス鎖siRNAとアンチセンス鎖siRNAを含む二本鎖RNAを合成し、前記センス鎖siRNA及び前記アンチセンス鎖siRNAのそれぞれの一方の未端にヒトアンジオテンシン変換酵素IIを連結することを特徴とする分子標的薬の合成方法。
【請求項2】
前記二本鎖RNAの合成において、前記センス鎖siRNA及び前記アンチセンス鎖siRNAのそれぞれの他方の未端を所定の塩基を用いて連結し、前記二本鎖RNAを前記所定の塩基を中間とするヘアピン状に形成することを特徴とする請求項1記載の分子標的薬の合成方法。
【請求項3】
前記センス鎖siRNA及び前記アンチセンス鎖siRNAをリポソームに包み、前記センス鎖siRNA及び前記アンチセンス鎖siRNAのそれぞれの一方の未端に連結された前記ヒトアンジオテンシン変換酵素IIを、前記リポソーム外に露出させることを特徴とする請求項1又は2記載の分子標的薬の合成方法。
【請求項4】
前記ヒトアンジオテンシン変換酵素IIが、ヒトアンジオテンシン変換酵素IIの全長のアミノ酸配列における第1-740位の細胞外ACE2、前記アミノ酸配列における第741-763位の膜貫通ACE2、及び前記アミノ酸配列における764-805位の細胞内ACE2の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載の分子標的薬の合成方法。
【請求項5】
前記新型コロナウイルスには、B.1.617.1及びB.1.617.2が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の分子標的薬の合成方法。
【請求項6】
前記センス鎖siRNA及び前記アンチセンス鎖siRNAが、それぞれ21~25ntのsiRNAであることを特徴とする請求項1又は2記載の分子標的薬の合成方法。
【請求項7】
前記センス鎖siRNA又は前記アンチセンス鎖siRNAが、SEQ ID NO.1-58に示されるいずれかの塩基配列からなることを特徴とする請求項1又は2記載の分子標的薬の合成方法。
【請求項8】
前記センス鎖siRNA又は前記アンチセンス鎖siRNAが、SEQ ID NO.1, 2, 5, 16, 21, 30, 49, 52に示されるいずれかの塩基配列からなることを特徴とする請求項7記載の分子標的薬の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子標的薬nCoVshRNA・2ACE2の合成方法に関し、生物製薬分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ヒトアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)は標的細胞発現のI型膜貫通糖タンパク質であり、ACE2の全長は805個のアミノ酸から構成され、その中の第1-740位アミノ酸は細胞膜外に位置し、細胞外ACE2と呼ばれる、第741-763位アミノ酸は膜貫通領域に位置し、膜貫通ACE2と呼ばれる、764-805位のアミノ酸は細胞内に位置し、細胞内ACE2と呼ばれる。
【0003】
コロナウイルスの構造には、一本鎖プラス鎖核酸(ssRNA)、スパイクタンパク質(S)、膜タンパク質(M)、エンベロープタンパク質(E)、およびコアシェルタンパク質(N)が含まれ、ここでSタンパク質のN端は、ドメイン(S1-NTD)と受容体結合ドメイン(S1-RBD)から構成される。
【0004】
コロナウイルスはそのS1-RBDを介して標的細胞のACE2と結合し、細胞膜融合とエンドサイトーシスを経て、ACE2チャネルを介して標的細胞に入る。これはコロナウイルスRBDと標的細胞ACE2がリガンドと受容体の関係であることを表明し、それに基づいてACE2ポリペプチドをターゲティングベクターとして設計し、ACE2ポリペプチドとRNAi配列をACE2でshRNAを標的化送達するnCoVshRNA・2ACE2を合成した。ACE2の膜透過性ペプチド特性により、nCoVshRNA・2ACE2中のsiRNA薬物をACE2により標的的に送達し、標的細胞のACE2チャンネルを通過させ、ウイルス感染細胞に対する特異的な作用を発揮させた、ACE2はウイルスRBDと結合することができるため、nCoVshRNA・2ACE2とウイルスを結合させて複合体を形成し、さらにその中のsiRNA薬物をウイルス感染に伴って標的細胞に侵入させ、ウイルス感染細胞に対する特性的な役割を果たす。また、ACE2はRBDと結合することができるため、nCoVshRNA・2ACE2はウイルスRBDを閉鎖する役割を果たし、ウイルスから標的細胞への感染を遮断する役割を果たす。
【0005】
RNA干渉(RNA interference、RNAi)は高効率な配列特異的遺伝子サイレンシング技術として、疾病の治療に想像できない応用の将来性をもたらしており、すでにFDAにより多種のsiRNA薬物が承認されて発売されている。しかし、現在のsiRNA薬物は、ある単一ウイルス株を用いてsiRNAを設計し、単鎖siRNA(アンチセンスRNA)を用いてsiRNA薬物を調製したり、非ターゲティングベクターを用いてsiRNA薬物の非特異的送達を行ったりすることが多い。絶えず変異するコロナウイルスにとって、上記のある単一ウイルス株に基づいて設計されたsiRNAはコロナウイルス変異によって標的から外れ、失効するので、変異したウイルス株の中から比較し、好ましいウイルス変異によって変化しない各ウイルス株に共通されたsiRNAを抽出し、変異したと変異するウイルス株に対する広範なsiRNA薬物を製造するために使用する必要がある。非ターゲティングベクターを用いると、ACE2を発現しないことによりコロナウイルスに感染しにくい細胞にsiRNA薬物が送達されるため、標的細胞にsiRNAを特異的に送達できるターゲティングベクターを設計する必要がある。さらに重要なのは、HreAらが報告したRNAiメカニズムによると、センスRNAとアンチセンスRNAが混合して製造された二本鎖RNAサイレント相同性mRNAの効率は一本鎖RNA(アンチセンスRNA)より100倍以上高く、正確で有効なRNAi技術は一本鎖siRNAを用いて薬物を製造するのではなく、センスsiRNA、アンチセンスsiRNAを同時に含む二本鎖RNA(shRNA)を採用すべきであることを示している。
【0006】
小さな干渉RNAであるsiRNAは、細胞漿に送達されたsiRNAがRNAiに関与するように遺伝子発現を調節し、それに相補的な標的シグナリングRNA(mRNA)を特異的に分解する。siRNA自体が細胞膜を通過しにくく、RNA酵素によって分解されやすいため、従来の脂質ナノ粒子を使用して包むなどの方法で非特異的に輸送し、siRNAを保護することが多い。本願はsiRNAをshRNAに合成し、shRNA二本鎖末端にACE2ポリペプチドを連結し、特異的な輸送とsiRNA保護の目的を達成する。
【0007】
COVID-19の予防治療において、nCoVsiRNAを適切なターゲティングベクターで安定的に、特異的に順次標的器官、標的組織、標的細胞に送達し、標的細胞に局在化し、標的細胞膜を通過し、標的細胞スラリーに放出することができ、そして多種変異ウイルス株のブロードスペクトラムに有効であれば、より良いCOVID-19標的化遺伝子治療を展開することができるはずである。
【0008】
この問題を解決するために、本発明は分子標的薬nCoVshRNA・2ACE2を設計し合成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ACE2でshRNAを標的化送達するnCoVshRNA・2ACE2薬物及びその合成方法及び用途を提供し、二価ACE2がRBDと結合してウイルス中和とshRNAの標的化送達の作用を発揮し、ACE2で標的化送達されたshRNAを間接的にRBDに結合させて「shRNA-ACE2-RBD-ウイルス」の複合体を形成し、さらにshRNAを複合体で標的化送達させ、ウイルスの感染に伴い標的細胞に入り、ブロードスペクトラムにわたって標的化された抗変異ウイルス株の役割を果たす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、以下の技術的態様により実施される:
抗変異ウイルス株標的siRNAをスクリーニングし、shRNAを合成し、さらにshRNA二本鎖末端にACE2ポリペプチドをそれぞれ延着し、新型コロナウイルスの分子標的薬nCoVshRNA・2ACE2を合成する。
【0011】
抗変異ウイルス株標的のスクリーニング:各種病原性コロナウイルス及び変異ウイルス株の共通遺伝子からsiRNAをスクリーニングし、この共通遺伝子にはコンセンサス遺伝子、超コンセンサス遺伝子及び/又はコンセンサスマイクロサテライトが含まれ、スクリーニングされたsiRNAをウイルス変異によって変化しない各変異ウイルス株の共通ス標的とし、ブロードスペクトラム抗変異ウイルス株の作用を持たせる。
【0012】
抗変異ウイルス株標的siRNAの合成:スクリーニングされたsiRNAを2つの相補的な21-25ntのオリゴヌクレオチドsiRNAに合成し、スペーサーとして機能する塩基配列を合成する。
【0013】
shRNAの合成:合成された2つの相補的オリゴヌクレオチドポリペプチドsiRNAとスペーサーとして機能する塩基配列をさらに合成し、中間塩基配列からloop環としてスペーサーするように、ヘアピン状のshRNA二重鎖を合成した。
【0014】
好ましいsiRNA:合成されたshRNAを干渉ベクターに構築し、そのmRNA発現、蛋白発現、干渉効果を検出し、siRNA設計、合成、スクリーニング、イテレーション設計、検証を経て、高い沈黙効率(silencing efficiency)を有するsiRNAであることが好ましい。
【0015】
好ましいsiRNAおよびshRNAの合成:好ましいsiRNA配列を用いて上記のように合成したsiRNA、shRNAは安定性を高め、脱標的を回避するための化学修飾を含む。
【0016】
ACE2ポリペプチドまたはタンパク質の合成:合成されたACE2は、全長ACE2、第741-763位アミノ酸の膜貫通ACE2、764-805位アミノ酸の細胞内ACE2、第1-740位アミノ酸の細胞外ACE2、およびアミノ酸配列コドンによって最適化されたACE2ポリペプチドまたはタンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0017】
nCoVshRNA・2ACE2の合成:合成されたshRNAとACE2をジスルフィド結合、リン酸ジエステル結合、ジチオホスホリピド結合、ジスルフィド結合、オキシム結合、アミド結合またはマレイミド-メルカプト結合などのカップリング方法で連結し、化合物に合成し;または、ACE2-shRNA-ACE2は、shRNAのヌクレオチド配列およびACE2のアミノ酸配列に基づいてアミノ酸レベルから直接的に合成される。
【0018】
nCoVshRNA・2ACE2の精製:高効率液体クロマトグラフィー、逆相高効率液体クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーで精製する。
【0019】
nCoVshRNA・2ACE2のリポソーム修飾:リポソーム修飾化合物は負の電荷を帯びたshRNAによる正の電荷を帯びたリポソームの吸着により、調製され;PEG内化リポソーム修飾化合物は、ACE2アミノ基のメルカプト化によりメルカプト基とリポソームのマレイン酸アミドとマレイミド-メルカプト結合を形成することにより調製され;リポソーム修飾化合物はACE2アミノ基とリポソームとのウレタン結合形成により調製され;リポソーム修飾化合物は、ACE2またはACE2フラグメントに連結されたリポソームで修飾されたsiRNAにより調製される。
【0020】
nCoVshRNA・2ACE2の検証:In vitro細胞レベルでnCoVshRNA・2ACE2の2種類以上の異なる変異ウイルス株に対する抗ウイルス効果を測定し、コンセンサス遺伝子を標的とするブロードスペクトラムにわたって抗変異ウイルス株作用の有無を観察し;動物体内でshRNAを標的化送達する作用の有無、宿主への刺激によるACE2-Abの産生の有無を検査する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有益な効果は、
本発明は、ACE2を標的としてshRNAのsiRNA薬物を送達するように設計される。
【0022】
本発明と伝統的なsiRNA薬物の区別特徴は、本発明では各種コロナウイルス及びその変異株の中から、ウイルス変異によって変化しない各ウイルス株共通標的siRNAをスクリーニングし、このsiRNAにブロードスペクトラム抗変異ウイルス株作用を持たせることである。
【0023】
本発明と伝統的なsiRNA薬物の区別特徴は、伝統的なsiRNA薬物はセンス鎖siRNAまたはアンチセンス鎖siRNAを使用し、すなわち単鎖siRNAを使用することに対して、本発明はセンス鎖siRNAをshRNAに合成して使用することである。RNAiメカニズムによれば、二本鎖RNAはより効果的なRNAi作用を有する。したがって、本発明の設計はより正確で、RNAiメカニズムに適合している。
【0024】
本発明と伝統的なsiRNA薬物の区別特徴は、本発明では、コロナウイルスがその受容体結合領域RBDと宿主易感細胞に発現されるACE2と結合することによって感染を行う特性に基づいて、ACE2でshRNAのnCoVshRNA・2ACE2を標的化送達するように設計し、ショートヘアピン状のshRNA領域と二本鎖ACE2領域で構成し、ACE2はshRNAを送達する役割とコロナウイルスRBDを結合する役割を果たし、ACE2とウイルスRBDとの結合によって形成された「shRNA-ACE2-RBD-ウイルス」複合体は、ウイルス感染に伴ってshRNAを標的細胞に侵入させることができ、このようなACE2がウイルスとともに、shRNAを送達する方法は、shRNAを非特異的に感染されていない細胞に送達する副作用を回避し、shRNAにウイルス感染細胞に対する抗変異ウイルス株作用を発生させることができる。
【0025】
siRNA/shRNAは負の電荷、脂溶性、透過性と安定性が悪いため、siRNA/shRNAとACE2をnCoVshRNA・2ACE2に合成した後、siRNA/shRNAの透過性、安定性と達性しやすさを最適化した。
【0026】
さらに、2分子ACE2と1分子shRNAで合成されたnCoVshRNA・2ACE2は、2価ACE2がウイルスRBDと結合し、ウイルスを中和し、ウイルスの標的細胞への感染を遮断する役割を果たす。
【0027】
さらに、nCoVshRNA・2ACE2には2つのACE2分子と1つのshRNA分子が含まれている。shRNAは抗ウイルスのほか、オリゴヌクレオチド系免疫アジュバントでもあるため、nCoVshRNA・2ACE2は単分子ACE2よりも抗原性が強く、宿主を刺激してより高効率なACE2-Abを産生して、ACE2-Abがウイルスと競合して標的細胞のACE2受容体を結合し、さらにnCoVshRNA・2ACE2(ACE2-Ab)にウイルスによる感染を遮断する作用を発生させる。
【0028】
さらに、リポソームの修飾は、shRNAを体内でゆっくり放出させ、薬効を延長し、細胞質にエンドサイトーシスするなどの作用のほか、免疫アジュバントとしてnCoVshRNA・2ACE2中のACE2免疫効果を増強することができる。
【0029】
さらに、In vitro細胞実験は合成したnCoVshRNA・2ACE2が2種類の異なる変異ウイルス株に同時に有効であることを表明し、コンセンサス遺伝子を標的とする抗変異ウイルス株への作用を有することを説明した、In Vivo動物実験により、nCoVshRNA・2ACE2は動物体内でRNAiの標的化送達の作用を有し、刺激によるACE2-AbはACE2受容体を閉鎖することによりウイルスによる感染を抑制できることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明によるnCoVshRNA・2ACE2の製造技術の路線図である。
図2】本発明のnCoVshRNA・2ACE2の構成概略図である。
図3】本発明のnCoVshRNA・2ACE2及びその適用例を示す図である。
図4】本発明のACE2標的化送達リポソーム修飾shRNAの概略図である。
図5】本発明のACE2標的化送達リポソーム修飾siRNAの概略図である。
【0031】
図1において、コンセンサス遺伝子のスクリーニング、コンセンサス遺伝子を標的とするのブロードスペクトラム抗変異ウイルス株の標的siRNAスクリーニング、shRNA合成、ACE2合成を経って、最終的にnCoVshRNA・2ACE2またはACE2shRNAを合成する。
【0032】
図2において、1はloop環であり、2は2つの相補的なセンス、アンチセンス鎖から形成されたshRNAであり、3は2つのACE2ポリペプチド(蛋白質)であり、2つのACE2ポリペプチドはそれぞれshRNAのセンス、アンチセンス鎖に連結されている。shRNAはACE2によって保護され、ACE2によってウイルス受容体結合領域RBDまたはACE2受容体チャネルに標的化送達され、その後、ウイルスRBDがACE2チャネルを通過して標的細胞の細胞質に特異的に侵入し、ウイルス標的遺伝子を分解する。
【0033】
図3において、1はloop環であり、スペーサーの小さなヘアピン状のshRNAの正逆義鎖の塩基配列間隔から形成される。2はshRNAであり、2本のセンス鎖、アンチセンス鎖のsiRNAの相補的結合により形成され、このsiRNAはコロナウイルスコンセンサス遺伝子を干渉標的とするため、ブロードスペクトラム抗変異ウイルス株の標的化遺伝子治療作用を持つ、3はshRNAのセンス鎖、アンチセンス鎖に連結されたACE2であり、4はコロナウイルス、5はコロナウイルスSタンパク質受容体結合領域RBDであり、6は細胞7によって発現されるACE2受容体であり、8はACE2を発現しない細胞である。図2に示すように、loopループ1、shRNA2及びACE2 3からなるnCoVshRNA・2ACE2、コロナウイルス4はその受容体結合領域RBD5と受容体ACE2 6との特異的結合によって細胞7に感染するが、コロナウイルス4はACE2を発現しない細胞8に感染することはない、nCoVshRNA・2ACE2中のACE2 3は細胞7が発現するACE2 6と同様に、コロナウイルス4のRBD5とも結合することができるので、ACE2 3はACE2 6と競合してRBD5を結合することができ、ACE2 3にウイルス4が細胞7に感染するのを抑制する作用を持たせる、nCoVshRNA・2ACE2は後期にワクチンの役割を果たす。ACE2 3は宿主を刺激して抗ーACE2を産生し、抗ーACE2はACE2 6を閉鎖し、それによってウイルス4感染細胞7を抑制する作用を産生するからである。さらに重要なのは、ACE2 3のブリッジによって、「shRNA2-ACE2 3-RBD5-ウイルス4」の複合体が形成され、shRNA2がウイルス4とともに細胞7に入り、ウイルス4の細胞7中での複製を標的化干渉し、shRNA2が非特異的にウイルス4に感染していない細胞8に入ることによる毒副作用を回避する。
【0034】
図4において、1と2はそれぞれリポソーム4に包まれたloop環とshRNAであり、ここでshRNAは2つのセンス鎖、アンチセンス鎖siRNAの相補結合によって形成され、このsiRNAはコロナウイルスのコンセンサス遺伝子を標的として干渉するため、3はACE2であり、リポソーム4外に露出し、標的化送達作用を果たし、リポソーム4はshRNAを保護し、細胞エンドサイトーシスを引き起こす役割を果たし、5はPEGであり、PEGにより、siRNAの緩慢な放出と長期的な循環を可能にし、図3のようにACE2-shRNA/Lipの複合体を構成する。
【0035】
図5において、1はリポソームに包まれたsiRNA、2はリポソーム層、3はPEG層、4はACE2である。その中で、siRNAはRNAiの役割を果たし、リポソームはsiRNAを保護し、細胞エンドサイトーシスを引き起こす役割を果たし、PEGはsiRNAをゆっくりと放出させ、長効率的に循環させ、ACE2は最外層で、siRNAを標的化送達する役割を果たし、図4のようにACE2-siRNA/Lipの複合体を構成する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施方法について、図1、2、3、4及び5を用いて詳細に説明するが、これらの例示的な説明は、本発明の請求項に限定された保護範囲を限定するものではない。
【0037】
一、超コンセンサス遺伝子、コンセンサス遺伝子又はコンセンサスマイクロサテライトを標的とするsiRNAの設計
【0038】
1、超コンセンサス遺伝子、コンセンサス遺伝子及びコンセンサスマイクロサテライトの設計
【0039】
技術的な線路図1に示すように、Genbankデータベース(http://www.NCBI.nlm.nih.gov/genome/)からダウンロードβコロナウイルス属(特に新型コロナウイルス及び変異ウイルス株)の全ゲノム(cDNA)配列は、全ゲノム配列の中で最も長いコンセンサス子配列を探し、超コンセンサス遺伝子又はコンセンサス遺伝子を獲得し、Clustal Wソフトウェアを用いてGenbankデータベースからダウンロードされた全ゲノムを配列比較し、異なる配列間の類似度を検出し、コンセンサスマイクロサテライトの配列をスクリーニングし、MEGA6.0分子進化遺伝解析ソフトウェアを用いて、ダウンロードしたコロナウイルスアミノ酸配列に対して隣接法(Neighbour-Joning,N-J)を用いてアミノ酸種系分子進化木を構築し、アミノ酸配列の分子変異特徴に対して分析と最適化を行い、コンセンサス遺伝子配列を推定した。
【0040】
以下の3段の最長及びその次の長さの超コンセンサスサブシーケンスが得られ、それらの長さは22-30bpであり、小RNAの長さに相当するが、高等生物、特に人間にはこれらの3つのサブシーケンスは含まれていない。具体的なシーケンスは次のとおりである。
【0041】
SEQ ID NO.1(Subsequence 1) = ttaatacgacctctctgttggattttgaca (30bp);
SEQ ID NO.2(Subsequence 2) = ggttcgcaacttcacaca gagt (22bp);
SEQ ID NO.3(Subsequence 3) = caggcgtttgttggttgattaa (22bp)。
【0042】
以下の3段の最長及びその次の長さの超コンセンサスサブシーケンスが得られ、それらの長さは22-30bpであり、小RNAの長さに相当するが、高等生物、特に人間にはこれらの3つのサブシーケンスは含まれていない。具体的なシーケンスは次のとおりである。
【0043】
SEQ ID NO.4(Subsequence 1) = gttttacgacaacgatgttggtttaggaca (30bp);
SEQ ID NO.5(Subsequence 2) = ggttcggttgttatatacgata (22bp);
SEQ ID NO.6(Subsequence 3) = ggttcagagagtctcctattta (22bp)。
【0044】
以下の5つのヌクレオチドから複数回繰り返されたコンセンサスマイクロサテライトが得られ、マイクロサテライトはそれぞれCTCTCT、AGAGAG、AAAAA、TATA、CACAである。
【0045】
2、新型コロナウイルス変異ウイルス株の共通標的siRNAの設計
【0046】
Genbankデータベース(http://www.NCBI.nlm.nih.gov/genome/)からダウンロードしたβコロナウイルス属(特に新型コロナウイルス及び変異ウイルス株)の完全なゲノム(cDNA)配列は、Ambion社のshRNAオンライン設計ソフトウェア(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNAtools.html)やDSIRなどのソフトウェアを用いて、長さが約19ntの複数のsiRNA候補シーケンスを得て、RNA結合のTm値と特異的な比較結果に基づいて、siRNAが好ましい。これにより、現在発見されている18株の新型コロナウイルス及びその変異ウイルス株のE、M、N、ORF1ab及びS遺伝子から、各ウイルス株のそれぞれのRNAi配列(siRNA)と各ウイルス株の共通RNAi配列である共通標的siRNAを得ることができ、そのうち各ウイルス株の共通siRNAは表1に示し、その配列はSEQ ID NO.7-40と標識されている。例えば、表2-5中の配列番号標識済みのsiRNA(SEQ ID NO.41-58)はNC _04551.2、Delta株、Omicron株の共通標的siRNA、配列番号標識されていないsiRNAはそれぞれのRNAi配列(siRNA)であり、最初に出現したNC_04551.2株はデルタ株と最近のオミクロン株に変異したが、各ウイルス株の中にはそれぞれ独自の標的干渉配列siRNA(配列標識をしていない部分)を除いて、依然として不変で理論的に標的化干渉作用を持つ共通コンセンサス配列SEQ ID NO.41-58が保有している。
【0047】
表1 18株の新型コロナウイルス変異ウイルス株からスクリーニングした共通標的siRNA(SEQ ID NO.7-40)
【0048】
表2新型コロナウイルスNC_04551.2、DELTA、OMICRON株E遺伝子のsiRNA候補配列
【0049】
表3新型コロナウイルスNC _04551.2、DELTA、OMICRON株M遺伝子のsiRNA候補配列
【0050】
表4新型コロナウイルスNC _04551.2、DELTA、OMICRON株N遺伝子のsiRNA候補配列
【0051】
表5新型コロナウイルスNC _04551.2、DELTA、OMICRON株ORF 1 ab遺伝子のsiRNA候補配列
【0052】
表6新型コロナウイルスNC _04551.2、DELTA、OMICRON株S遺伝子のsiRNA候補配列
【0053】
3、超コンセンサス遺伝子、コンセンサス遺伝子またはコンセンサスマイクロサテライトを標的とするsiRNAのスクリーニング
【0054】
Clustal Wソフトウェアまたはその他のソフトウェアを利用して、上述の設計された超コンセンサス遺伝子、コンセンサス遺伝子およびコンセンサスマイクロサテライトを通常スクリーニングされたsiRNAと遺伝子配列の比較を行い、異なる配列間の類似度を測定し、超コンセンサス遺伝子、コンセンサス遺伝子またはコンセンサスマイクロサテライトでもあり、RNAi標的部位でも複数のsiRNA(超コンセンサス遺伝子、コンセンサス遺伝子またはコンセンサスマイクロサテライトを標的とするsiRNAを設計する)を設計する。
【0055】
(1)超コンセンサス遺伝子とコンセンサスマイクロサテライトを標的とするsiRNA(S1/S2):
SEQ ID NO.1(Subsequence 1) = ttaatacgacctctctgttggattttgaca (30bp);
SEQ ID NO.2(Subsequence 2) = ggttcgcaacttcacaca gagt (22bp);
【0056】
(2)コンセンサス遺伝子とコンセンサスマイクロサテライトを標的とするsiRNA(S3/S4):
SEQ ID NO.5(Subsequence 3) = ggttcggttgttatatacgata (22bp);
SEQ ID NO.6(Subsequence 4) = ggttcagagagtctcctattta (22bp)。
【0057】
上記の設計により、超コンセンサス遺伝子、コンセンサス遺伝子またはコンセンサスマイクロサテライトを干渉標的とする理論的にコロナウイルス変異に抵抗するウイルス株のsiRNAが得られ、siRNA 1/2/3/4と命名された。
【0058】
二、共通標的siRNAの検証
【0059】
1、siRNA/shRNAの合成
【0060】
RNAiメカニズムによると、siRNAがS遺伝子のmRNA発現を効果的に干渉すると、感染性を失うSタンパク質欠陥型ウイルスが形成される。siRNAがN遺伝子のmRNA発現を効果的に干渉すると、ウイルスパッケージ、複製が抑制される。siRNAがORF 1 aまたは1 b遺伝子のmRNA発現を効果的に干渉すると、ウイルスRNAポリメラーゼ(RdRp)またはタンパク質加工酵素(3 CLpro)の合成に影響を与える。一方、MとE遺伝子はウイルスの膜遺伝子であり、その欠陥によるウイルスの抑制作用は明らかではない可能性がある。そこで本発明は、標的とするN遺伝子のsiRNA(SEQ ID NO.16-18、SEQ ID NO.49-51)、標的とするORF 1 ab遺伝子のsiRNA(SEQ ID NO.20-22、SEQ ID NO.52-54)及び標的とするS遺伝子のsiRNA(SEQ ID NO.30-32、SEQ ID NO.56-58)、並びにSEQ ID NO.1-2、SEQ ID NO.5-6を用いて合成する。またpSilencer 4.1.CMV.neo干渉ベクターへのポリクローナル酵素カット部位はヘアピン構造を発現できるshRNAテンプレートを設計し、各テンプレートは2本の大部分相補的な55 bpの単鎖DNAから構成され、アニール相補後、BamH IとHind III酵素カット部位の粘性末端を持つDNA二重鎖を形成でき、線形化されたpSilencer 4.1.CMV.neoとの連結に用いる。その後、設計されたsiRNAとそのshRNAテンプレートに基づいて、会社に合成を依頼する。
【0061】
2、shRNA発現ベクターの構築
【0062】
上述の合成されたshRNAをそれぞれ線形化された干渉ベクターpSilencer 4.1.CMV.neoと連結して同定し、shRNA発現プラスミドを構築し、DH 5 aをトランスフォーメーションし、それぞれshRNA発現ベクターを得た。
【0063】
3、shRNA発現(干渉)ベクターの効果同定
【0064】
合成されたsiRNA/shRNAおよびその構築された発現プラスミドに基づいて、対応する標的遺伝子を選択して合成またはPCR増幅を行い、その後蛍光標識ベクターを構築し、それぞれshRNA発現プラスミドとII型肺胞上皮細胞(AEC 2 s)または293 T細胞を同時トランスフェクションし、同定を行った。PCR増幅の通常の方法は以下の通りである:
プライマー設計:設計上、下流プライマー、上流プライマー5'端に開始コードを添加し、増幅産物をpEGFP-N 1にクローニングするため、プライマーの5'端にベクターと相同的組換えを行うための相同アームを添加する。
【0065】
標的遺伝子の増幅:上海生工キットに提供される遺伝子増幅反応システム及び反応条件に基づいて遺伝子増幅、産物回収と精製を行い、増幅産物を獲得する。
【0066】
pEGFP-N 1の線形化:pEGFP-N 1プラスミドを含むDH5a菌種を回復し、試薬キットに基づいてプラスミドを抽出し、濃度を測定した後、酵素切断を行い、0.8%アガロースゲル電気泳動により線形化された担体を同定し、回収した。
【0067】
増幅された標的遺伝子と蛍光標識ベクター(pEGFP-N 1)との連結:Genscript
社製の相同組換えキットを用いて連結し、連結終了後に-20℃で予備保存したり、すぐにトランスフォーメーションしたりすることができる。
【0068】
shRNA干渉ベクターの効果同定:干渉ベクター(pSilencer-shRNA)と蛍光標識ベクター(pEGFP-N/S/OAF 1 ab)をそれぞれ293 T細胞に同時トランスフェクションし、干渉ベクターと標識ベクターの質量比を1:2とし、同時に対照を設立し、トランスフェクション後48 hに細胞内GFP蛋白の融合発現を観察し、蛍光強度に基づいて干渉効果を評価する。
【0069】
フローサイトメトリー:異なる干渉ベクターの干渉効果を定量的に分析するために、フローサイトメトリーを用いて測定し、全細胞数における蛍光タンパク質発現細胞の割合を分析する。
【0070】
Westernbolt分析:(i)細胞収集と分解:RIPAで細胞を分解する。(ii)SDS-PAGEタンパク質電気泳動:SDS-PAGEゲルを調製し、サンプルを等体積の2×SDS緩衝液に添加し、沸騰水浴を5 min、氷浴を2 min、12000 xg、10 min。(iii)Western blot検査:転写膜、閉鎖、一次抗体結合、洗浄、二次抗体結合と発色を経て、結果を観察する。
【0071】
RT-PCRによるmRNAの検出:relative quantitative real time RT-PCRを用いてトランスフェクション細胞中の標的遺伝子の相対発現量を検出し、標準曲線に基づいて、CT値から目的遺伝子及びB-actin内部参考遺伝子コピー数を換算し、B-actin内部参考遺伝子でウイルス遺伝子mRNA相対発現量(目的遺伝子コピー数/B-actinコピー数)を補正し、干渉効果を定量的に評価する。
【0072】
4、高い沈黙効率のsiRNA/shRNAを得る
【0073】
上述の設計、合成、スクリーニング、イテレーション設計、再合成、細胞レベルの検証を経て、高沈黙効率のsiRNAが得られ、その配列はそれぞれSEQ ID NO.1(shRNA 1と命名、以下同じ)、SEQ ID NO.2(shRNA 2)、SEQ ID NO.5(shRNA3)、および標的とするN遺伝子のSEQ ID NO.16(shRNA 4)、SEQ ID NO.49(shRNA 5)、標的とするORF 1 ab遺伝子のSEQ ID NO.21(shRNA 6)、SEQ ID NO.52(shRNA 7)であり、標的とするS遺伝子のSEQ ID NO.30(shRNA 8)は、沈黙効率がそれぞれ78%、76%、88%、89%、89%、84%、91%、90%であった。
【0074】
三、shRNAの合成
【0075】
上記スクリーニングされた共通標的(SEQ ID NO.1-58)に基づいて、標的遺伝子配列が短いSEQ ID NO.5(shRNA3)、SEQ ID NO.49(shRNA 5)及びSEQ ID NO.30(shRNA 8)を選択し、生物会社に合成を依頼し、shRNAごとに相補的な19-25 ntのオリゴヌクレオチドポリペプチドsiRNAを2本合成し、スペーサー作用する9 ntの塩基配列を合成し、次いで、合成されたsiRNA(薬物)および塩基配列を、中間塩基配列からloop環としてスペーサーするように、小さなヘアピン状のshRNA二重鎖に連結し、合成されたshRNA二重鎖の各単一鎖は、ACE2ポリペプチドまたはタンパク質をそれぞれ連結することができる。
【0076】
例えば、SEQ ID NO.1(shRNA1)、SEQ ID NO.2(shRNA2)、およびSEQ ID NO.5(shRNA3)を使用して、5'-ttaatacgacctctctgttggattttgacattcaagagatgtcaaatccaacagagaggtcgtattaa-3'(shRNA1)(SEQ ID NO: 77)、5'-ggttcgcaacttcacacagagtttcaagagaactctgtgtgaagttgcgaacc-3'(shRNA2)(SEQ ID NO: 78)及び5'-ggtt cggt tgtta tatac gata ttcaagaga tatc gtata taaca accg aacc-3'(shRNA3)(SEQ ID NO: 79)を合成して、その中、「TTCAAGA」がloop環であり、右側がそれぞれ相補的なセンス鎖、アンチセンス鎖であり、その3’及び/又は5’にACE2タンパク質又はそのポリペプチドが連結されている。同様に、他の高いサイレンシング効率のsiRNAが好ましく、それぞれshRNAを合成する。
【0077】
四、標的化送達ベクターACE2の設計と合成
【0078】
1、ACE2のアミノ酸配列
【0079】
GeneBankデータベースから(http://www.ncbi.nlm.gov/genbank)においてヒトACE2遺伝子配列情報を検索し、ACE2は805個のアミノ酸から構成され、そのうち第1-740位アミノ酸配列(SEQ ID NO.59)は細胞膜外に位置し、第741-763位アミノ酸(SEQ ID NO.60)は膜横断領域に位置し、第764-805位アミノ酸(SEQ ID NO.61)は細胞内に位置する。ACE2タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、ロイシンが9.4%を占め、システインとヒスチジンがそれぞれ1.0%と2.0%を占め、負電荷を持つアミノ酸残基(アスパラギン+グルタミン酸)と正電荷を持つアミノ酸残基(アルギニン+リジン)など、SARS-CoVおよびSARS-CoV 2はウイルス受容体結合領域を介してACE2の細胞外触媒構造領域と相互結合し、この相互作用は細胞エンドサイトーシス、膜融合を引き起こすことができ、したがって、SARS-CoVは高発現ACE2またはACE2受容体を含む細胞内に入る。
【0080】
2、ACE2の受容体作用
【0081】
ACE2は脂肪溶性のI型膜貫通糖タンパク質であり、アミノ末端触媒ドメインとカルボキシル末端ドメインがあり、その中でN末端は細胞膜の外にあり、C末端は細胞膜内にあり、N末端シグナルペプチド領域、カルボキシポリペプチダーゼ活性化領域と膜貫通領域に分けられる。コロナウイルスSpike蛋白質がACE2触媒ドメインのサブドメインIの先端(サブドメインIIとペプチド酵素活性に影響しない)に接触すると、ACE2の外ドメインが分解され、膜貫通ドメインが内在化され、ウイルス-宿主細胞をさらに融合させるため、膜貫通領域がウイルス-受容体複合体の細胞膜から細胞質への輸送に関与していると考えられる。
【0082】
3、本願ACE2の設計
【0083】
ACE2のアミノ酸配列及びACE2の受容体作用から、ACE2発現細胞の細胞壁と細胞膜にはACE2受容体チャネルが存在し、全長ACE2、膜貫通領域ACE2、細胞内ACE2及び細胞外ACE2はいずれも膜貫通ポリペプチドに属し、siRNAを標的化送達する機能を有し、細胞外ACE2のN端にコロナウイルスRBDを結合する中和ウイルス機能を有する。全長ACE2、第1-740位アミノ酸の細胞外ACE2、第741-763位アミノ酸の膜貫通ACE2または第764-805位アミノ酸の細胞内ACE2、またはアミノ酸配列を最適化するACE2ポリペプチドをsiRNAの標的化送達ベクターとして設計、合成することができる。
【0084】
4、本願ACE2の合成
【0085】
2つのアミノ酸が脱水縮合してペプチド結合を形成し、複数のアミノ酸残基がペプチド結合で結合してポリペプチドを形成する。会社を委託してポリペプチド合成装置を用いてポリペプチドの自動合成を行うことができ、基本方法は、合成ポリペプチドの配列に従ってアミノ酸を一つ一つ加え、ペプチド鎖をC端からN端まで徐々に延長させ、各アミノ酸残基を一端保護と他端活性化の形で縮合させ、そして、各ペプチド鎖の延長サイクル後にアミノ基上の一時的保護基を除去し、目標ポリペプチドの全アミノ酸配列の縮合が完了する。現在よく使われている固相合成ポリペプチドの反応原理は、密閉された防爆ガラス反応器にアミノ酸を既知の配列に従ってC端-カルボキシル端からN端-アミノ端の順に必要なアミノ酸を絶えず添加し、合成反応を行い、最終的にポリペプチドを得ることである。その工程は以下を含む:(i)脱保護:アルカリ性溶媒でアミノ基の保護基を除去し、(ii)活性化と架橋:次のアミノ酸のカルボキシル基を活性化し、活性化されたモノマーカルボキシル基と遊離アミノ基を架橋させ、ペプチド結合を形成し、ポリペプチド合成が完了するまで2段階の反応を繰り返し循環する。
【0086】
五、ACE2とshRNAでnCoVshRNA・2ACE2を合成する
【0087】
1、nCoVshRNA・2ACE2の設計
【0088】
shRNAと細胞外、膜貫通または細胞内ACE2の合成を例に、合成されたsiRNA/shRNAのセンス鎖/アンチセンス鎖の一端をloop環(5'-TTCAAGAGA-3')に連結し、他端をACE2(C端)にそれぞれ連結し、「ACE2-siRNAセンス鎖-loop環-siRNAアンチセンス鎖-ACE2」の構造に連結し、「2ACE2-shRNA」と表現し、そのうち2本の相補的なセンス鎖/アンチセンス鎖は二重鎖を形成するが、2本のACE2ポリペプチドは二重鎖を形成しない、図2に示すように、2本のACE2ポリペプチド、2本のsiRNAセンス鎖/アンチセンス鎖とloop環を有するヘアピン状リンカーを有するshRNAである。ウイルスRBDはC端を介してACE2のN端感染細胞を結合し、ACE2ポリペプチドとsiRNAの結合はsiRNAの透過性、安定性及び干渉効果を増加させることができるため、図3に示すように、本設計におけるACE2はウイルスを中和し、ウイルス感染を阻止するだけでなく、ウイルス受容体結合領域RBDにsiRNA/shRNAを標的化送達し、「shRNA-ACE2-RBD-ウイルス」の複合体を形成し、さらにshRNAがウイルスによって送達されることができ、そして、shRNAがウイルスの感染に伴って標的細胞に入り、標的干渉作用を発揮する。
【0089】
2、ACE2-shRNA-ACE2(2ACE2-shRNA)の合成
【0090】
会社を委託して、設計(図2)に従って、細胞外ACE2、SEQ ID NO.5(shRNA3)、膜貫通ACE2、SEQ ID NO.49(shRNA 5)、SEQ ID NO.30(shRNA 8)の配列に基づいて、ポリペプチドとオリゴヌクレオチドの通常の合成方法を用いて、上記合成したポリペプチド(ACE2)とオリゴヌクレオチド(shRNA/siRNA)をカルボキシヒドラゾン結合、オキシム結合、アミド結合、スルフィド結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、ホスホニル結合、ヒドラゾン結合、ウレイド結合、リン酸ジエステル結合、ジチオホスホリピド結合、マレイミド-メルカプト結合などの形で結合された複合体は、ポリペプチドとオリゴヌクレオチドのセンス鎖(5'末端、3'末端)またはアンチセンス鎖(3'末端)が強固な共通結合、緩いイオン結合、疎水結合、またはスペーサアーム付きカルボキシヒドラゾン結合で非共通結合または共通結合で架橋され、ポリペプチド-オリゴヌクレオチド結合体(POCs)を合成することを含む。現在最も一般的な合成POCs法は結合架橋-液相断片合成法であり、すでに各種POCsの合成に広く応用されており、その主要なステップは:それぞれ固相基質上でポリペプチドとオリゴヌクレオチドを合成し、それから同時に2つの合成物を固相基質上から分離させ、分離されたポリペプチドとオリゴヌクレオチドは溶液中で反応活性基を通じてカップリングする。合成POCsは主に以下を含む:(i)マレイミド-メルカプトカップリング:ポリペプチドまたはオリゴヌクレオチド上でマレイミドを修飾し、別のモノマー上でメルカプト基を修飾し、2つのモノマーを同じ溶液に加えることで反応してPOCsを得ることができ、(ii)スルフィド結合またはチオエーテル結合のカップリング:チオール基を用いてオリゴヌクレオチドの5'または3'位を修飾し、次いでC末端を臭素アセチル基で修飾したポリペプチドとをpH 7.0の緩衝溶液中で反応させ、ジスルフィド結合カップリングは2つのメルカプト基によって直接酸化することができ、または先にビピリジンジチオエーテルなどの活性化剤によってメルカプト基を活性化してから別のメルカプト基を含むオリゴマーとカップリングすることができ、一般的にジスルフィド結合によってsiRNAとポリペプチドのカップリングを合成することができ、(iii)オキシム結合カップリング:アルデヒド基とアミノ基は相互反応してオキシムを産生し、この反応条件は温和で、反応効率が高く、しかも直接に二本鎖DNAと特定ポリペプチドのカップリング生成物を生成することができ、同時に、二機能化オリゴヌクレオチドとポリペプチドあるいは糖類を通じてオキシム結合を通じて核酸の5’と3’端に同時に2本のポリペプチドを連結することができ、この方法は各種の保護過程を必要とせず、一段階で完成することができ、「ペプチド-オリゴヌクレオチド-ペプチド」生成物を合成するために用いられ、具体的な方法はオリゴヌクレオチドの5’と3’にアルデヒド基を導入し、さらにヒドロキシルアミンに修飾されたポリペプチドと反応し、「ペプチド-オリゴヌクレオチド-ペプチド」を得て、得られた収率は比較的に高く、このような二官能化オリゴヌクレオチドとポリペプチドの一段階反応はいかなる保護対応策と架橋剤も必要なく、微酸の条件下で高い収率を得ることができる、(iv)アミド結合カップリング:活性化カルボン酸またはチオエステルを含むオリゴマーとアミノ基を修飾した別のポリマーとの反応を直接利用して生成物を得、(v)ヒドラゾン結合カップリング:まずヒドラジン基をポリペプチドに導入し、その後pHが3-5の間のクエン酸緩衝液を添加し、アセトアルデヒド基を修飾したオリゴヌクレオチドと反応し、ヒドラゾン結合で結合したPOCsを得て、それぞれ「2ACE2-shRNA3」、「2ACE2-shRNA 5」、「2ACE2-shRNA 8」と発現する。
【0091】
3、ACE2-shRNA-ACE2の精製
【0092】
クロマトグラフィー方法は、ポリペプチドとオリゴヌクレオチドのカップリングを精製・分析する最も一般的な方法の1つである。カップリングの複雑さに応じて異なるクロマトグラフィー方法を選択して分離する必要があり、主な方法は高効率液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆高効率液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC、通常はアニオン交換クロマトグラフィー)、またはその中の2つまたはいくつかを直列に使用し、具体的には操作説明に従って、2ACE2-shRNA3、2ACE2-shRNA 5、2ACE2-shRNA 8を抽出する。
【0093】
4、ACE2でshRNAを標的化送達する他の化合物の合成
【0094】
同様に、shRNA(SEQ ID NO.1-58)と細胞内ACE2またはコドン最適化のACE2ポリペプチドとを化合物に連結することができ、「膜貫通ACE2-shRNA-膜貫通ACE2」、「細胞内ACE2-shRNA-細胞内ACE2」を含むが、これらに限定されない、あるいは、shRNA/siRNAをACE2ポリペプチドの中間に挿入し、「膜貫通ACE2-shRNA-細胞外ACE2」、「細胞内ACE2-shRNA-細胞外ACE2」を合成し、ACE2またはその最適化されたポリペプチドを標的化送達ベクターとする化合物も同様に設計することができ、「ACE2-siRNA、細胞外ACE2-siRNA、膜貫通ACE2-siRNA、細胞内ACE2-siRNA」を含むが、これらに限定されない。
【0095】
六、化合物のリポソーム修飾
【0096】
リポソーム(Liposomes、Lipと略称する)修飾には、負の電荷を帯びたshRNAで正の電荷を帯びたリポソームを吸着する方法、ACE2ポリペプチド中のアミノ基のメルカプト化でメルカプト基とリポソームとのメルカプト-マレイミド結合を形成する方法、またはACE2アミノ基とリポソームとのウレタン結合を形成する方法が含まれる(図4-5)。
【0097】
実施例1:リポソームDOTAP/Cholによるリポソーム修飾化合物の製造
【0098】
(1)脂質溶液の調製
【0099】
DOTAP(MW=698.5):10 mg/ml、正確にDOTAP[N-1-(2、3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N、N、N-トリメチルメタンスルホン酸アンモニウム:N-1-(2,3-di-oleoyloxy)propyl)-N,N,N,N-trimethylammoniumethyl sulfate]粉末100 mgを秤量し、10 ml容量瓶に加え、クロロホルム溶液を目盛線まで加えた。
【0100】
Chol(MW=386):5 mg/ml、正確にChol[コレステロール:cholesterol]粉末50 mgを秤量し、10 ml容量瓶に加え、クロロホルム溶液を目盛線まで加えた。
【0101】
m-PEG2000-DPE(MW=2778):10 mg/ml、m-PEG2000-DPE(メトキシポリエチレングリコールジステアレイルホスファチジエタノールアミン:Methoxy-polyethylene glycol-distearoyl phosphatidyi-ethanolamine)粉末10 mgを秤量し、lml DEPC水を加え、ボルテックス後1min超音波し、完全に溶解させた。
【0102】
Mal-PEG2000-DSPE(MW=2941.6):10mg/ml、Mal-PEG2000-DPE(ポリエチレングリコールジステアレイルホスファチジエタノールアミン:Methoxy-polyethylene glycol-distearoyl phosphatidyi-ethanolamine)粉末10mgに、lml DEPC水を加え、ボルテックス後1min超音波し、完全に溶解させた。
【0103】
(2)リポソームDOTAP/Cholの製造(膜水和法)
【0104】
膜水和法(Lipid-film method)を用いてリポソームDOTAP/Cholを製造し、脂質濃度は10 mMであり、主な工程は以下の通りである:1mlリポソームDOTAP/Cholの製造量に従って、それぞれDOTAP、Cholの2種類の脂質のクロロホルム溶液を採取し、DOTAP:Chol=1:1(M:M)の割合で500ml三角フラスコに添加し、3-4 mlクロロホルム溶液を添加する。37℃で45-60 min真空回転蒸発させ、均一な脂質膜にし、高純度窒素ガスで微量クロロホルムを吹き尽くし、DEPC水1mlを加えて振動させ、脂質膜を瓶壁から洗浄し、脂質懸濁液を得た、十分に水和した後、超音波lminして、400 nm、200 nm、80 nm、50 nmポリカーボネート膜を順に通して押出され、各10-20回、リポソームDOTAP/Cholを得た。
【0105】
(3)ACE2及び2ACE2-shRNAのメルカプト化
【0106】
2-IT(Traut'S reagent)は蛋白質メルカプト基化の常用試薬であり、ACE2蛋白質Nアミノ基でメルカプト基化を行うことができ、ステップは以下の通りである:2ACE2-shRNAと2-IT(Traut'S reagent、2-iminotiolane-HCl)を取り、均一に混合し(2-ITと2ACE2-shRNAのモル比は200:1)、室温条件下で2h反応する。透析法により余分な2-ITを除去し、毎回十分な量の透析液(1×PBS、5 mM EDTA、pH=7.4)、4℃保存、隔夜透析、磁気攪拌、6-8時間透析液交換、それぞれBCA法とEllman法を用いて蛋白質濃度とメルカプト化度を測定した。
【0107】
(4)リポソームDOTAP/Cholによるリポソーム修飾化合物の製造
【0108】
(A)負電荷を帯びたsiRNA/shRNAを用いて正電荷を帯びたリポソームを吸着して製造する。
【0109】
(i)120μlのDOTAP/Cholリポソーム(10 mM)をとり、20μ1の2ACE2-shRNA(約2μg/μ1、40μg)を加え、DEPC水11μlを加え、室温で10 min静置し、リポソーム修飾複合体2ACE2-shRNA/ch1を得た。
【0110】
(ii)siRNA 90μ1(24μg、20 mM)またはshRNA 90μ1(24μg、10 mM)をとり、DEPC水57.6μ1を加え、室温で10 min静置し、600μ1のDOTAP/Cholリポソーム(50 mM)を加え、siRNA/ch1とshRNA/ch1を得た。
【0111】
(iii)(i)で調製したリポソーム修飾複合体2ACE2-shRNA/ch1と(ii)調製したリポソーム修飾複合体siRNA/chまたはshRNA/chを等量混合し、対応する混合型リポソーム修飾複合体を得た。
【0112】
(B)ACE2中のメルカプト基とPEG中のマレイミドとの架橋反応による製造
【0113】
リポソームの循環時間と標的特異性を増加させるために、(A)調製した各種リポソーム修飾複合体にさらなるPEG化とACE2修飾を行い、RBDを配位子とするPEG化リポソーム修飾複合体を得た。
【0114】
9.53μl(6.36μlと12.7μlを対照とする)の10 mg/mlのMAL-DSPE-PEGをとり、それぞれ上記(A)で調製したリポソーム修飾複合体2ACE2-shRNA/ch1、siRNA/ch1またはshRNA/ch1に挿入し(それぞれ両者を混合し)、50℃の水浴で10 minインキュベートし、室温で10 min静置した後、上記メルカプト基化されたACE2または2ACE2-shRNA/ch1を約200μg加え、ACE2中のメルカプト化アミノ上のメルカプト基とMAL-DSPE-PEG中のマレイミドとを架橋反応させ、それぞれACE2で修飾された且つPEG化(PEG化されたPEG濃度はそれぞれ5 mo 1%PEG、7.5 mo 1%PEG、10 mo 1%PEG)された複合体を得た、すなわちこの複合体は、まずsiRNA、shRNA、および/または2ACE2-shRNA静電吸着脂質体DOTAP/CHolであり、それからMAL-DSPE-PEGで外層に包まれ、最後にMAL-DSPE-PE-PEGでACE2または2ACE2-shRNAを連結することにより、リポソーム(ch)修飾複合体を調製し、ACE2-siRNA/ch1、ACE2-shRNA/ch1、ACE2-(2ACE2-shRNA/ch1)、(2ACE2-shRNA)-siRNA/ch1、(2ACE2-shRNA)-shRNA/ch1、(2ACE2-shRNA)-(2ACE2-shRNA/ch1)を含み、それぞれACE2-siRNA/ch1、ACE2-shRNA/ch1、3ACE2-shRNA/ch1、2ACE2-shRNA/siRNA/ch1、2ACE2-2shRNA /ch1、4ACE2-2shRNA/ch1と略称する。図3に示すように、ACE2はsiRNA/shRNAを標的化送達する役割を果たし、リポソームとPEGはsiRNA/shRNAを保護し、siRNA/shRNAをゆっくりと放出し、細胞内にsiRNA/shRNAトランスフェクションする役割または免疫アジュバントの役割を果たす。
【0115】
実施例2:リポソームliposomalによるリポソーム修飾化合物の製造
【0116】
pH>8の場合、ACE2のアミノ基とpNP-PEG-DPPE(PEG-PE)との反応は安定なウレタン結合の結合物を形成し、リポソームの外層膜を定量的に挿入し、リポソーム修飾化合物を作製する。本実施例は、ACE2断片及びsiRNAを用いて、ACE2でsiRNA(ACE2-siRNA)を標的化送達するリポソーム修飾化合物を調製した。
【0117】
(1)ACE2の合成
【0118】
上述のACE2合成方法を用いてACE2またはその断片を合成した。
【0119】
(2)pNP-PEG-DPPEの合成
【0120】
DPPE(ジパルミトイルエタノールアミン)のクロロホルム溶液20 mg/mLを10 mlとり、丸底フラスコ50 mLに入れ、トリエチルアミン(TEA)0.65 mLを滴下し、濃度200 mg/mLの(pNP)2-PEG3400(ポリエチレングリコール3400ジp-ニトロフェニルカーボネート)のクロロホルム溶液約4.0 gを上記混合液に加え、窒素ガスを吹き込み、密封、光を避け、室温で一晩磁力攪拌し、溶剤を減圧蒸発乾燥し、残留クロロホルムを真空除去し、0.01 mol/L HCl水溶液100 mLを加え、超音波処理して、透明なミセル溶液を形成した。0.01 mol/L HCI水溶液は溶離液であり、CL-4 B Sepharoseを経て分離し、未反応の(pNP)2-PEG3400と放出されたpNPを除去し、pNP-PEG-DPPEミセルを含む溶離液を収集し、凍結乾燥し、TLC、HPLC、MSとNMRを用いてpNP-PEG-DPPEを定性と定量した。
【0121】
(3)ACE2-PEG-DPPEの合成:pNP-PEG-DPPE 100 mgを取って10 mLクロロホルムに溶解し、50 mLフラスコに入れ、回転蒸発器上で減圧してクロロホルムを除去し、脂質膜を形成し、残留クロロホルムを真空除去し、25 mg ACE2を0.01 mol/L HCl 4 mLに溶解し、内壁塗布脂質膜のフラスコに入れ、室温で30分間インキュベートし、軽く振って脂肪膜を分散させる。懸濁液に10 mum/L(pH 9.0)Tris緩衝液20 mLを加え、混合し、窒素保護し、4℃で一晩インキュベートした。試料を分子質量5 kDの透析バッグに入れ、10 mmol/L(pH 7.4)Tris緩衝液中で約4時間透析し、さらに脱イオン水で4℃で24時間透析し、バッグ内溶液を取り出し、凍結乾燥し、-20℃の冷蔵庫内で保存した。
【0122】
(4)ACE2-siRNA/liposomalの合成:ePC(卵黄リン脂質)、Ch(コレステロール)、PEG2000-DPE(ジステアレルエタノールアミンポリエチレングリコール2000)とDOTAP(ジオレイルトリメチルアミンプロパン)のクロロホルム溶液をモール比(60:34:3.0:3.0)で混合し、脂質膜を標識する必要があれば、上記混合液に全脂質の質量モル比0.1%のRho-PEを添加し、クロロホルムを減圧除去し、脂膜を形成する。DEPC処理された超純水に一定量のsiRNAを溶解し、siRNAの使用量はDOTAPに帯電した正電荷を完全に中和する必要がある。50℃の水浴中でsiRNA含有水溶液を用いて上記リン脂質膜を30分間水和し、siRNAを包むリポソームを形成した。手動押出装置(Avanti Polar Lipids)を用いて、初歩的に形成されたリポソームをそれぞれ0.4μmと0.1μmのpolycarbonate track-etched membranes(Whatman)を10回通過させ、粒径の均一なリポソームを調製した。適量のACE2-PEG-DPPEをメタノールに溶解し、フラスコを置き、窒素ガスを吹き込んで成膜し、調製したリポソーム懸濁液を加え、37℃の水浴で2時間インキュベーションして、ACE2-PEG-DPPEをリポソームの外層膜上にオリエンテーション的に挿入させ、そしてACE2が総脂質に占めるモル比を0.5%-1.O%(適切に調整可能)にし、動的レーザー散乱、Freeze fracture-transmission electron microscopy(凍結エッチング電子顕微鏡)と核酸電気泳動検査を用いて、図3-4に示すリポソーム(ch/lip)複合体ACE2-shRNA/siRNA/lipを作製した。
【0123】
nCoVshRNA・2ACE2は、ACE2またはそのポリペプチドからshRNA/siRNAと合成され、さらにリポソーム修飾された。
【0124】
七、化合物(nCoVshRNA・2ACE2)の検証
【0125】
1、体外でブロードスペクトラム抗ウイルス効果の検証
【0126】
(1)ウイルス液の準備
【0127】
Vero E 6細胞を30%のコンフルエンスまで成長させたDMEM培養液(10%FBS)にウイルス株を加え、36℃、5%CO2培養箱で5-7d培養し、細胞病変効果(CPE)が現れた際に、ウイルスを分離し、培養液を用いて103-105 TCID50/mlウイルス液に配合して準備した。これに基づいて、本発明のshRNA/siRNAがコンセンサス遺伝子を標的とするブロードスペクトラム抗ウイルス効果の有無を証明するように、nCoVshRNA・2ACE2が同じコンセンサス遺伝子を含む2種又は2種以上の変異ウイルスに対して同時に有効であるかどうかを検証するために、それぞれ新型コロナウイルスの2種類の変異ウイルス株B.1.617.1とB.1.617.2のウイルス液を用意した。
【0128】
(2)化合物(nCoVshRNA・2ACE2)とウイルスを同時に培養
【0129】
試験グループと対照グループをそれぞれ設け、化合物の抗B.1.617.1とB.1.617.2の効果について試験した。接種プレート8ウェル、1ウェル2×105個のVero-E 6細胞、2 mLのDMEM培養液(10%FBS)を36℃、5%CO2培養箱で30%のコンフルエンスまで培養した時、培養液を交換し、同時に試験化合物、B.1.617.1とB.1.617.2株のウイルス液を添加した。
【0130】
試薬:2ACE2-shRNA3グループ(0.1nmol 2ACE2-shiRNA3+0.6mlウイルス液)、2ACE2-shARNA3/ch1グループ(0.1nmol 2ACE2-shRNA3/ch1+0.6mlウイルス液)、4ACE2-2SHRNA3/ch1グループ(0.1nmol 4ACE2-2SHRNA3/ch1+0.6mLウイルス液)、ACE2-siRNA3/lipグループ(0.1nmol ACE2-siRNA3/lip+0.6mlウイルス液);対照グループ:naked shRNA3グループ(0.1nmol naked shRNA3+0.6mlウイルス液)、naked siRNA3グループ(0.1nmol naked siRNA3+0.6mlウイルス液)、ACE2対照グループ(0.1nmol ACE2+0.6mlウイルス液)、陽性対照グループ(0.6mlウイルス液)、陰性対照グループ(0.6ml DMEM培養液)(表1-6)。2ACE2-shRNA5と2ACE2-shRNA8の実験を同様に行った(表1a-6a)。
【0131】
その後、培養1時間、24時間及び72時間後に各グループごとに清液を取り、1:4、1:12、1:36、1:108、1:324、1:972、1:2916、1:8748倍で希釈し、RT-PCR検査を行った。
【0132】
(3)蛍光リアルタイムRT-PCRによる各グループウイルスRNAの検出
【0133】
ウイルス核酸抽出と核酸(ORF1ab/N)検出はキットの説明書に従って操作された。
【0134】
(4)ウイルスRNAの検出結果
【0135】
(i)B.1.617.1株の検査結果
【0136】
表1に示すように、各グループの細胞培養1時間後、陰性対照グループのウイルスRNA検査結果は陰性であり、陽性対照グループのRNA検査結果のタイターは1:36であり、その他の各グループのRNA検査結果のタイターはすべて1:12であった。
【0137】
表2に示すように、各グループの細胞培養24時間後、陰性対照グループのウイルスRNA検出結果は依然として陰性であり、各対照グループのウイルスRNA検出結果は1:324-1:2916であり、実験グループのウイルスRNA検出結果はすべて1:108であり、陽性対照グループとACE2対照グループ(p<0.01)より明らかに低かった。
【0138】
表3に示すように、各グループの細胞培養72時間後、陰性対照グループのウイルスRNA検査結果は依然として陰性であり、各対照グループのRNA検査結果のタイター>1:2916、対照グループのRNA検査結果のタイター>1:2916-1:8748、対照グループのRNA検査結果のタイターは1:324-1:972であり、対照グループ(p<0.01)より明らかに低かった。
【0139】
表1-3から分かるように、実験グループは明らかな抗B.1.617.1株作用を示し、ACE2に連結されたshRNAまたはsiRNAが標的細胞内に送達されてRNA干渉を行うことができ、ACE2に連結されていないshRNAまたはsiRNAは標的細胞内に入ることができず、細胞外でRNA干渉の役割を果たすことができないことを示している。表1a-3aの結果は、表1-3とほぼ一致した。
【0140】
表1化合物(shRNA3)とB.1.617.1株の同時に1時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0141】
表1a 2ACE2-shRNA5/8とB.1.617.1株の同時に1時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0142】
表2化合物(shRNA3)とB.1.617.1株の同時に24時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0143】
表2a 2ACE2-shRNA5/8とB.1.617.1株の同時に24時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0144】
表3化合物(shRNA3)とB.1.617.1株の同時に72時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0145】
表3a 2ACE2-shRNA 5/8とB.1.617.1株の同時に72時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0146】
(ii)B.1.617.2株の検査結果
【0147】
表4に示すように、各グループの細胞培養1時間後、陰性対照グループのウイルスRNA検査結果は陰性であり、陽性対照グループとACE2対照グループのRNA検査結果はすべて1:36であり、その他の各グループのRNA検査結果はすべて1:12であった。表5に示すように、各グループの細胞培養24時間後、陰性対照グループウイルスRNA検査結果は依然として陰性であり、各対照グループRNA検査結果のタイターは1:324-1:972であり、4つグループの実験グループのRNA検査結果のタイターは1:36-1:108であり、対照グループより明らかに低かった(p<0.01)。表6に示すように、各グループの細胞培養72時間後、陰性対照グループウイルスRNA検査結果は依然として陰性であり、各対照グループRNA検査結果は1:2916-1:8748であり、4つグループの実験グループのRNA検査結果のうち2つグループは1:324、他の2つグループは1:972であり、対照グループと比較して明らかな差異があった(p<0.01)。表4-6は、実験グループが明らかな抗B.1.617.2株作用を示し、ACE2に連結されたshRNAまたはsiRNAが標的細胞内に送達されてRNA干渉を行うことができ、RBDに連結されていないshRNAまたはsiRNAは標的細胞内に入ることができず、RNA干渉の役割を果たすことができないことを示している。表4a-6aの結果は、表4-6の結果とほぼ一致した。表1-6及び表1a-6は、実験グループ(nCoVshRNA・2ACE2)が同時に抗B.1.617.1とB.1.617.2の作用を有し、実験グループがコンセンサス遺伝子を干渉標的とするnCoVshRNA・2ACE2がブロードスペクトラムにわたって抗変異ウイルス株効果を有することを示している。
【0148】
表4化合物(shRNA3)とB.1.617.2株の同時に1時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0149】
表4a 2ACE2-shRNA5/8とB.1.617.2株の同時に1時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0150】
表5化合物(shRNA3)とB.1.617.2株の同時に24時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0151】
表5a 2ACE2-shRNA5/8とB.1.617.2株の同時に24時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0152】
表6化合物(shRNA3)とB.1.617.2株の同時に72時間培養した培養液におけるウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0153】
表6a 2ACE2-shRNA5/8とB.1.617.2株の同時に72時間培養した培養液ウイルスRNA RT-PCR検査結果
【0154】
2、ACE2の標的化送達機能のIn Vivo 検証
【0155】
(1)動物のグループ分けと接種
【0156】
動物のグループ分け:6-8週齢、40グラム程度のSPF級雌性BALB/cマウスを選択し、2ACE2-shRNA3を例に、ランダムに2ACE2-shRNA3(shRNA5/8)グループ(2ACE2-shRNA3+B.1.617.2接種)、2ACE2-shRNA3/ch1グループ(2ACE2-shRNA3/ch1+B.1.617.2接種)、4ACE2-2shRNA3/ch1グループ(4ACE2-2shRNA3/ch1+B.1.617.2接種)、ACE2-siRNA3/lipグループ(ACE2-siRNA3/lip+B.1.617.2接種)、shRNA3グループ(shRNA3+B.1.617.2接種)、陽性対照グループ(B.1.617.2+生理食塩水接種)と陰性対照グループ(生理食塩水のみ接種)、各グループ20匹である。
【0157】
動物接種:鼻腔スプレーによる40μlのタイター105/mlTCID50のB.1.617.2株のウイルス液を接種、陰性対照グループは鼻腔スプレーによる40μl生理食塩水を接種した。腹腔内に5%塩化アルデヒド水和物溶液を注射して麻酔し、それぞれ0.1nmolの2ACE2-shRNA、2ACE2-shRNA/ch1、4ACE2-2shRNA/ch1、ACE2-siRNA/lipとshRNAをマウス気管にゆっくり注入し、感染後7日目に各グループで10匹のマウスを殺し、ウイルス検査を行った。また、各グループ10匹は抗体を観察するために使用された。
【0158】
(2)細胞の半数感染量(TCID50)の百分率でウイルスを検出する
【0159】
感染後7日目に殺したマウスの肺組織を10%均質パルプ調製し、それぞれ100pl遠心分離後の上清を採取し、10倍で累次希釈し、VeroE6単層成長の96孔板に接種し、1孔ごとに30μl、希釈度ごとに4つの孔に接種し、均質なスラリーを軽く振り、37℃でl時間を吸着し、Hank液で洗浄し、培養液を加え、37℃ CO2培養箱で培養し、細胞病変効果(CPE)を観察し、各グループのVeroE6半数感染量(TCID50)の百分率を計算し、百分率が大きいほどウイルス含有量が多いことであった(表7-13)。
【0160】
表7 2ACE2-shRNA3グループのマウス肺組織均質パルプによるVeroE6半数感染量の百分率
【0161】
表8 2ACE2-shRNA3/ch1グループマウス肺組織均質パルプによるVeroE6半数感染量の百分率
【0162】
表9 4ACE2-2shRNA3/ch1グループマウス肺組織均質パルプによるVeroE6半数感染量の百分率
【0163】
表10 ACE2-siRNA3/lipグループマウス肺組織均質パルプによるVeroE6半数感染量の百分率
【0164】
表11 shRNA3グループマウス肺組織均質パルプによるVeroE6半数感染量の百分率
【0165】
表12陽性対照グループマウス肺組織均質パルプによるVeroE6半数感染量の百分率
【0166】
表13陰性対照グループマウスの肺組織均質パルプによるVeroE6半数感染量の百分率
【0167】
(3)ACE2の標的化送達の効果
【0168】
表7-13から、各グループのマウス肺の均質パルプによるVeroE6の半数感染量の百分率(101ウェル)は、それぞれ2ACE2-shRNA3グループが35.0%、2ACE2-shRNA3/ch1グループが27.5%、4ACE2-2shRNA3/ch1グループが32.5%、ACE2-siRNA3/lipグループが30.0%、shRNA3グループが95.0%、陽性対照グループが95.0%、陰性対照グループが5.0%であった。RNAiは主に細胞漿内で発生し、shRNA3グループ中のshRNA3は細胞膜を通過しにくいため、RNAiの作用はほとんどなく、その結果は陽性対照と一致した、一方、2ACE2-shRNA3グループ、2ACE2-shRNA3/ch1グループ、4ACE2-2shRNA3/ch1グループ及びACE2-siRNA3/lipグループのshRNA3はACE2によって標的細胞の細胞質に標的化送達されたため、RNAi効果が高く、そのVeroE6半数感染量の百分率は陽性対照グループと比較して有意差があった(p<0.05)。
【0169】
上記TCID50試験方法に従って、2ACE2-shRNA8と2ACE2-shRNA 8/ch1に対してTCID50試験を行った結果、2ACE2-shRNA8グループ、2ACE2-shRNA8/ch1グループ、shRNA8グループ、陽性対照グループと陰性対照グループのTCID50はそれぞれ25%、17.5%、82.5%、95%、7.5%であり、その試験グループのTCID50は陽性対照グループより明らかに低かった。
【0170】
3、ACE2-Abの検出と機能検証
【0171】
(1)サンプルと検出方法
【0172】
上記の別のマウスグループごとに10匹の第2、4、6週静脈血を採取し、血清を分離し、各グループの同じ週でのマウス血清を混合し、-20℃で保存して準備した。ACE2-Abを二重抗原サンドイッチ法で測定し、具体的にはキットに従って操作した。
【0173】
(2)検出結果
【0174】
表14から、各実験グループ(ACE2を含む)のマウスの肺組織均質パルプACE2-Abは対照グループ(ACE2を含まない)のマウスの肺組織均質パルプACE2-Ab(p<0.05)より顕著に高く、実験グループのACE2により、マウスを刺激してACE2-Abが産生されたことができ、しかも産生したACE2-Ab含有量はACE2分子組成とリポソーム修飾と関与していることを示している。
【0175】
表14 各試験グループ(ACE2持ち)マウスの肺組織均質パルプのACE2-Ab検査結果(ng/L)
【0176】
(3)ACE2-Abの機能検証
【0177】
2ACE2-shRNAグループ、2ACE2-shRNA/ch1グループ、4ACE2-2shRNA/ch1グループ及びACE2-siRNA/lipグループを試験グループ(いずれもACE2-Abを含む)とし、shRNAグループを対照グループ(ウイルスを含むがACE2-Abを含まない)とした。ACE2-Ab検査後の各グループの第2、4、6週の血清を混合し、各グループの混合血清を倍比希釈し、その後VeroE6単層成長96ウェルプレートに各30μl接種し、各試験グループは同時にshRNAグループの未希釈混合血清30μlを接種し、陰性対照グループは生理食塩水30μlのみを接種した。軽く揺動混合し、37℃でl時間吸着し、Hank液で洗浄し、培養液を加え、37℃、CO2培養箱で培養し、1週間以内に細胞病変効果(CPE)を観察し、「+」で細胞の正常成長を表し、表15のようにしましている。
【0178】
表15 ACE2-AbによるVeroE6細胞表面ACE2の中和による抗ウイルス感染結果(+/CPE)
【0179】
表15から分かるように、陰性対照グループはウイルスを接種していないため、各ウェルVeroE6にCPEが現れていない、陽性対照グループはACE2-Ab中和作用なしにウイルスを接種した(shRNA3グループは混合血清を希釈していない)ため、各ウェルVeroE6はすべてCPEを産生し、shRNA3グループはACE2-Abの中和作用がないため、ウイルスを含む自己血清を1:128倍希釈した後のみにVeroE6にCPEが出現してなかった、一方、各試験グループは陽性対照グループと同様にウイルスも接種したが、ACE2-Abの中和作用があるため、血清すなわちACE2-Ab含量が1:64以上希釈されたときにVeroE6にCPEが出現した。ACE2-AbはVeroE6細胞表面のウイルス受容体ACE2を中和することができ、それによって抗ウイルス作用があることを示している。
【0180】
本発明のshRNAは抗変異ウイルス株として作用し、ACE2はshRNAを標的化送達し、二価結合RBD、ウイルスのRBDによる感染を競合抑制し、shRNA3を保護し、宿主を刺激してACE2を閉鎖できるACE2-Abを産生する役割を果たし、また、多分子ACE2およびアジュバント作用のshRNA3とリポソームはいずれもACE2-Abの産生と作用を促進することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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