(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体
(51)【国際特許分類】
E04H 9/12 20060101AFI20241129BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
E04H9/12
E04H9/14 Z
(21)【出願番号】P 2020192207
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】518302139
【氏名又は名称】株式会社九建総合開発
(74)【復代理人】
【識別番号】100136928
【氏名又は名称】高宮 章
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【氏名又は名称】穴見 健策
(72)【発明者】
【氏名】新永 隆一
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特公昭54-019682(JP,B2)
【文献】特開昭60-013125(JP,A)
【文献】特公昭62-015687(JP,B2)
【文献】特許第6585787(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/047696(WO,A1)
【文献】特開2019-196597(JP,A)
【文献】米国特許第04683691(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/12,9/14
E02D 3/10
E02D 23/08
E03B 3/10 - 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型の管本体であって、その一端側内部に管本体の他端側から供給される基盤用コンクリート材を管本体内壁へ後発嵌合させる後発嵌合手段を取り付けた管本体の内側の土を排出しながら該管本体を地中鉛直方向に圧入する工程と、
管本体を計画深さまで圧入後に管本体内の後発嵌合手段取付部分に対応する高さまで生コンクリートを投入する工程と、
管本体の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋であって生コンクリートの硬化後に、管本体内で該底蓋を吊下ろして硬化コンクリートの上部に配置する工程と、
底蓋の外縁と管本体の内壁面とを溶接して管本体と底蓋とを接合する工程と、を含むこ
とを特徴とする大型有底管体の建込み方法。
【請求項2】
後発嵌合手段は、管本体の一端側の管内壁に設けたリブ部であって、管の長手方向に間隔を空けながら取り付けられ管の中心側に向けて周状に突設した複数のリブを有するリブ部を含むことを特徴とする請求項1記載の大型有底管体の建込み方法。
【請求項3】
管本体の下端側の管縁に掘削ビットを間隔を設けて環状に複数個固定した掘削ビット部を設けていることを特徴とする請求項1又は2記載の大型有底管体の建込み方法。
【請求項4】
内側の土を排出しながら地中に圧入される管本体と、
管本体の一端側内部に取り付けられ管本体の他端側から供給される基盤用コンクリート材を管本体内壁へ後発嵌合させる後発嵌合手段と、
管本体を計画深さまで圧入後に管本体内の後発嵌合手段取付部分に対応する高さまで投入される生コンクリートが硬化して後発嵌合手段を介して後発的に管本体内壁に嵌合するコンクリート材と、を
含み、
後発嵌合手段は、管本体の長手下端側の管内壁に設けたリブ部であって、管の長手方向に間隔を空けながら取り付けられ管の中心側に向けて周状に突設した複数のリブを有するリブ部を含むことを特徴とする大型有底管体。
【請求項5】
管本体の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋であって、生コンクリートの硬化後に硬化コンクリートの上部に配置され外周縁を管本体の内壁面と溶接接合される底蓋を含むことを特徴とする
請求項4記載の大型有底管体。
【請求項6】
管本体の下端側の管縁に掘削ビットを間隔を設けて環状に複数個固定した掘削ビット部を設けていることを特徴とする請求項4
又は5記載の大型有底管体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、津波、台風等自然災害や人災時に人や物の一時避難、物や食物保管用のシェルター、レジャー用その他多目的空間を形成可能な大型有底管体に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、地震、津波、台風等自然災害や人災時に人や物の一時避難、物や食物保管用のシェルター、レジャー用その他多目的空間を、比較的短期で地下設置可能であり、低コストで簡易に施工でき、しかも占有平面スペースが小さくて地上構築物や設備に左右されにくい大型有底管体について、特許文献1において提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は大型管体を地中に圧入後、管体の上端開口から水中コンクリートを供給して大型管体の下端より下方の凹部に投入して管の下端外部のコンクリート基盤を形成し、この後に管体内を下降させて充填孔付きの底蓋を管体の下端部分に配置し、さらにその充填孔を介して底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間にモルタルを注入して底蓋と管外のコンクリート基盤とを一体化させて管体底部を構築しようとするものである。
【0005】
この方法では、大型管体の地中建込みについて管体の地中圧入後に管の下端側において管内への水の進入を抑制しながら底蓋の端部を管の内壁に溶接接合することができる。しかしながら、管体を地中に圧入後にコンクリートを供給していったん大型管体の下端の下方の凹部に該コンクリートを投入し、その後管体の下端側に配置した底蓋の充填孔からモルタル注入して底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間にモルタルを注入するので、底蓋下面側のコンクリート基盤の状態を確認できないままに作業を行わなければならない。また、底蓋の充填孔からのモルタル注入作業は限られたスペースでの狭所作業であり、作業段取りや注入作業に時間がかかり、作業コストがかかる。また、注入後の底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間の充填を確認できないので必要以上のモルタル注入を行って作業全体、あるいは材料に無用なコストがかかる問題があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、管本体の改良により作業工程を簡略化でき、各作業自体が簡単、明確で作業時間を大幅に短縮でき、さらに作業コストを大幅に低減できる改良された大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、大型の管本体1であって、その一端側内部に管本体の他端側から供給される基盤用コンクリート材3を管本体内壁へ後発嵌合させる後発嵌合手段2を取り付けた管本体の内側の土を排出しながら該管本体を地中鉛直方向に圧入する工程と、管本体1を計画深さまで圧入後に管本体内の後発嵌合手段2取付部分に対応する高さまで生コンクリート(3)を投入する工程と、管本体1の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋であって生コンクリートの硬化後に、管本体内で該底蓋を吊下ろして硬化コンクリート(3)の上部に配置する工程と、底蓋6の外縁と管本体1の内壁面1kとを溶接して管本体と底蓋とを接合する工程と、を含む大型有底管体の建込み方法から構成される。
【0008】
その際、後発嵌合手段2は、管本体1の一端側の管内壁1kに設けたリブ部であって、管の長手方向に間隔sを空けながら取り付けられ管の中心側に向けて周状に突設した複数のリブ4aを有するリブ部4を含むようにしてもよい。
【0009】
また、管本体1の下端側の管縁に掘削ビット5aを間隔を設けて環状に複数個固定した掘削ビット部5を設けるとよい。
【0010】
また、本発明は、内側の土を排出しながら地中に圧入される管本体1と、管本体1の一端側内部に取り付けられ管本体の他端側から供給される基盤用コンクリート材3を管本体内壁1kへ後発嵌合させる後発嵌合手段2と、管本体1を計画深さまで圧入後に管本体内の後発嵌合手段2取付部分に対応する高さまで投入される生コンクリートが硬化して後発嵌合手段を介して後発的に管本体内壁1kに嵌合するコンクリート材3と、を含み、後発嵌合手段2は、管本体1の長手下端側の管内壁1kに設けたリブ部であって、管の長手方向に間隔sを空けながら取り付けられ管の中心側に向けて周状に突設した複数のリブ4aを有するリブ部4を含む大型有底管体から構成される。
【0011】
さらに、管本体1の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋であって、生コンクリート(3)の硬化後に硬化コンクリートの上部に配置され外周縁を管本体1の内壁面1kと溶接接合される底蓋6を含むとよい。
【0012】
さらに、管本体1の下端側の管縁に掘削ビット5aを間隔を設けて環状に複数個固定した掘削ビット部5を設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体によれば、管本体の改良により作業工程を大幅に簡略化でき、各作業自体が簡単、明確で作業時間を大幅に短縮でき、さらに作業コストを大幅に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態にかかる大型有底管体の一部省略一部断面説明図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる大型有底管体の一部省略正面説明図である。
【
図3】
図2の一部を破断した内部構造説明図である。
【
図4】(a)は、
図2の一部を拡大して示した一部拡大断面説明図である。(b)は、
図4(a)のさらに一部を拡大して示した拡大断面説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る大型有底管体の建込み方法の管本体の圧入用チュービング装置による圧入状態を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係る管本体の地中圧入を実施するチュービング装置の斜視説明図である。
【
図7】管本体の上端開口から生コンクリートを投入する状態を示す説明図である。
【
図8】
図7のコンクリートの投入後に管本体の中空部で底蓋を降下させる状態を示す説明図である。
【
図9】(a)は、底蓋の拡大斜視説明図、(b)は、底蓋の縁壁とコンクリート材の上面側での管本体の内壁部分との配置関係を示す一部省略拡大断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体の一実施形態について説明する。
【0016】
本発明に係る大型有底管体は、基本的には地震その他の自然災害、戦争その他の人的災害からの避難用シェルターとして使用され、また食品、書類等の保管庫等としても用可能な大型の有底管体である。本発明の大型有底管体は内部に空間を有し底部が底蓋で閉鎖された中空の有底管体であり、例えば直径が2メートル以上~5メートル程度で、地中深さが例えば5メートル~20メートル程度で埋設される管体であり、特に地中に水を含む地域において有効に用いられる。
【0017】
図1ないし
図4は、本発明の実施形態に係る大型有底管体の構成要素である管本体1を示しており、図において管本体1は、ケーシングチューブと称される鋼製の円筒管であり両端を開口した中空筒管で構成される。単一鋼管で目的の地中深さに到達できる場合には1本の鋼管で構成されるが、複数鋼管を連結して使用することもできる。管本体1は公道運搬の点から例えば軸方向最長は11メートル程度に設定されるが、設置現場の状況に応じて任意の長さの鋼管を複数連結して用いてよい。管本体は、地中埋設時の防錆、防蝕のために例えば、亜鉛メッキ、樹脂ライニング、複数層コーティング、アスファルトシート等の防水、防錆処理を行ったものが好ましい。鋼管の水中に没した部分は錆びにくいので地面に近い部分の鋼管に十分な防錆、防蝕処理を施したものを用いるのが好ましい。
【0018】
管本体1は、長手方向を地中に突き刺すように縦に配置し管内の土を排出しながら専用の圧入用装置で地中に圧入される。実施形態において、管本体1の一端側(下端側)内部に後発嵌合手段2が取り付けられている。後発嵌合手段2は、管本体1の他端(上端)開口を介して供給される基盤用コンクリート材3(
図6参照)と硬化後に後発的に嵌合する(嵌合される)手段であり、この結果、管本体下端側内壁1kと硬化コンクリート材とが一体化する。すなわち、コンクリート投入後所要の時間経過時に該コンクリートが硬化して後発的に管本体内壁1kに取り付けた後発嵌合手段と嵌合状態となる。これによって、硬化したコンクリートと後発嵌合手段を取り付けた管本体の下端内壁部分が一体連結する。後発嵌合手段は、管本体の一端内壁に固定して取り付けられるものであり、管本体に一体あるいは一体的に取り付けられていてもよい。管本体の中空穴を完全に塞ぐことがなく、さらに投入する水中コンクリートや速硬性コンクリートが通過し得る程度の開口を有する多孔網、多孔ブロック、格子棚、穴の軸心と交差方向に管内壁に取り付けられた1又は複数の杆部材、それらの多段構造、その他の構造体等でもよい。
【0019】
実施形態において、後発嵌合手段2は、管本体の長手下端側の管内壁1kに取り付けられたリブ部4を含む(
図2ないし
図4参照)。本実施形態においてリブ部4は、管本体の下端から他端側へ向けて約2メートル程度の間隔にわたって設けられている。リブ部4は、管本体の長手方向に間隔Sを空けながら取り付けられ管本体1の中心C側に向けて周状に突設した複数のリブ4aを有している。実施形態ではリブ4aと隣接するリブ4aとの間隔は30cm間隔で各リブの幅は3cmに設定されている。隣接するリブ
4aどうしの間隔やリブ4a自体の幅サイズはこれらに限定される必要はなく、任意に設定してもよい。リブ4aは、管本体の周壁の断面が波型状に一体成型で管本体に設けられた構成でもよいが、本実施形態では、
図4(b)に示すように断面コ字形の円弧状枠部材4cを管本体内壁に周状に固定している。必ずしも円形に連続しなくともよく、間欠的に環状に固定してもよい。
【0020】
図1,2において、管本体の下端側の管縁には円筒形の下端縁から下方に向けて突設する掘削ビット部5が取り付けられている。掘削ビット部5は、掘削ビット5aを間隔を設けて管本体の下端縁に環状に複数個固定して構成されている。後述するように、管本体1を地中に圧入するには専用機械装置により管本体の長手軸周り方向に回転させながら圧入するが、管本体1の下端縁に掘削ビット部5を取り付けることにより圧入途中に硬い岩盤層などが存在している場合でも管本体を回転させながらこれらを切り崩して地中に進入させることができる。
【0021】
図1において、大型有底管体100は、管本体1の下端側に取り付けられた後発嵌合手段2に対応する部分に投入される基盤用コンクリート材3を含み、基盤用コンクリート材3は、上述のように管本体の他端開口から供給され硬化時に後発嵌合手段2と経時的に嵌合する。基盤用コンクリート材3は、硬化により後発嵌合手段2と嵌合しこれによって管本体1の下端開口を閉鎖し管本体の底部を構成する。
【0022】
基盤用コンクリート材3の硬化後に該硬化コンクリートの上部に底蓋6が配置される。実施形態において、底蓋6は、管本体1の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底板であって、その外周縁6aを管本体の内壁面1kと溶接接合されて基板用コンクリート材側と気密遮断される。即ち、実施形態において、
図9(a)、(b)に示すように底蓋
6は円形板状の底板
61と、その外周縁全周に連結されて上方に断面直角状に立ち上がる縁壁
62を備え、該縁壁と管本体の片側内壁面部分で溶接して気密遮断している。
【0023】
なお、大型有底管体100の利用形態に応じて、底蓋6は必ずしも設けなくともよい。また、基板用コンクリート材3側と気密遮蔽することなく単に基板用コンクリート材3の上に底蓋を設置するだけでもよい。実施形態において、底蓋は厳密には、管本体1の内側の円形内に挿入される管本体1の内周より小さなサイズの円形状の金属製板状部材である底板で構成されている。
【0024】
次に、上述した大型有底管体100の建込み方法について、説明する。
[第1工程]
図5ないし
図9は、本発明の一実施形態の大型有底管体の建込み方法を示しており、この方法では、建て込み位置が設定された地盤G中に管本体1を鉛直方向に圧入して埋設される。
図5において、地面上にチュービング装置10が設置されており、このチュービング装置10の中央に軸心を縦方向に配置した管本体1をチャックで掴み、管本体1を回転させながら地中に押し込みさせる。チュービング装置10は、
図6に示すように、機体枠12に支持された図示しない管本体回転用の回転体、回転体を回転可能に支持する昇降フレーム、昇降装置、チャック部材、チャックシリンダ等を有する公知の全回転チュービング装置である。
【0025】
チュービング装置10の下面で地面上には受板14が予め載置されている。また、チュービング装置10を両側から挟みつけるようにカウンタウエイト16が配置されている。カウンタウエイト16は、大型の管体の圧入操作に際してチュービング装置10が反動で移動しないようにチュービング装置10全体を安定化させる。
【0026】
例えば20m以上程度の長さの管本体は、作業上、運搬上などの点から1本の管体を圧入するものではなく、1から数メートル程度の長さの複数の管体を接続しながらチュービンス装置10で地中に打ち込まれる。その際、接続すべき管本体の端部どうしを溶接やカップリング部材等を用いて連結して例えば20m程度の長さの一体の管本体1を形成する。
【0027】
チュービング装置10で管本体1を回転させながら地中に圧入する際、同時に管本体1の内側の土を図示しない排土機で地上側に排出させる。排土機は、クローラクレーン等重機により吊支され、落下力によって地盤に打ち込み、土砂をつかみ取る方式のグラブハンマー等の公知の大口径掘削機械でよい。
【0028】
[第2工程]
図7において、管本体1を計画深さまで圧入すると、この状態でトレミー管等の鋼管等からなる配送管18を管本体1内に挿入し先端を管本体1の後発嵌合手段2の上部近傍付近まで降下させ配置させる。配送管18は、例えば直径30cm程度の円筒管であり、地上側から生コンクリート状態の基盤用コンクリート材3を供給し管本体1の下端部分から後発嵌合手段2の上端高さ程度まで生コンクリートを投入し、管本体1の下端からリブ部4の上端高さ程度の高さ位置まで基板用コンクリート材を充填する。生コンクリートは、砂、砂利、セメント、水を所要の割合で混錬したものであり、特に、水中不分離性混和剤を用いて粘性を高くし、水中でも材料が分離しにくく硬化する水中コンクリートが用いられる。なお、コンクリートはこれに限定されず、速硬性の他のコンクリート材を用いてもよい。
【0029】
[第3工程]
生コンクリート状態の基盤用コンクリート材3を後発嵌合手段2の上端部分に対応する高さ位置まで投入後、底蓋6を重機などで吊支して降下させ管本体1の下端近傍に配置させる。なお、管本体1内に管本体の下端開口側から侵入した水が滞留している場合等では、底蓋6の下降前に図示しない排水ポンプに接続した排水ホース7を介して管本体1内の水等を排水するとよい。実施形態において、
図8に示すように底蓋6にはポンプ20が取り付けられて底蓋ユニット6Uを形成しており、ポンプ20に排水ホース7を接続して一体化した底蓋ユニット6Uの状態で管本体内を吸水並びに地上側に排水しつつ管本体内を下降させる。基板用コンクリート材3の上面に底蓋を着床後にポンプ20を取り外し、排水ホース孔を塞ぎ底蓋の上下面を遮断する。なお、管本体内に水が滞留していない場合には、単に底蓋のみを管内で降下させて後述のように管の下側内壁に接合するようにしてもよい。
[第4工程]
【0030】
実施形態において、
図9に示すように底蓋6は円形板状の底板61と、その外周縁全周に連結されて上方に断面直角状に立ち上がる縁壁62を備えている。つまり、底蓋6は短尺円筒管の一端を閉鎖したシャーレ状の有底筒体形状を呈している。縁壁62は、管本体1の略下端に底板61を位置合わせて底蓋6を配置する際に万一管内の水が排水しきれないときに管本体内に管外の水が浸入しにくくするものである。すなわち、底蓋6の縁壁62と管本体1の下端側内壁面1kとの間には縁壁62の高さに対応する薄板円筒状の狭い空隙63を形成し(
図9(b)参照)、この状態で縁壁62の上端部と管本体1の内壁面1kとを溶接接合させる。縁壁62の底板61外周縁からの立上り高さは、もしも水が管内部に流入したような場合に備えて高いほど好ましいが、比較的に低い高さとしてもよい。例えば、2.5メートルの直径の管本体に対して1センチメートルでもよいが、5センチメートル以上程度の高さであるのが好ましい。なお、底蓋6の外縁全周に立設した縁壁62は必ずしも設けなくとも管体内壁と底蓋の外周に跨る円弧状アングル材などを介して溶接接合してもよい。
【0031】
上記のように、底部を閉鎖した大型有底管体(管本体)を地中に縦に埋め込む状態で建て込んで、この内部に例えば動力付きの昇降ラックや、換気装置、人の居住用の施設、設備、備品、食料、物品の保管設備等を設置し、通路等を設けることにより天然災害やテロ等凶悪犯罪、戦争等の際の避難用シェルターとし得る。具体的な管体内部の構造や構成は任意に設計することができる。
【0032】
上記のように、第1~第4工程により大型有底管体を建て込みするので直径2.5m、高さ(深さ)20m程度の縦長大型の円筒空間を短い工期で建て込み完成させることができる上、材料コスト、人件コストも大きく抑制することができる。また、占有平面スペースが小さくて地上構築物や設備に左右されにくい筐体を構築できる。
【0033】
以上のように、本発明の大型有底管体の建込み方法は、大型の管本体であって、その一端側内部に管本体の他端側から供給される基盤用コンクリート材を管本体内壁へ後発嵌合させる後発嵌合手段を取り付けた管本体の内側の土を排出しながら該管本体を地中鉛直方向に圧入する工程と、管本体を計画深さまで圧入後に管本体内の後発嵌合手段取付部分に対応する高さまで生コンクリートを投入する工程と、管本体の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋であって生コンクリートの硬化後に、管本体内で該底蓋を吊下ろして硬化コンクリートの上部に配置する工程と、底蓋の外縁と管本体の内壁面とを溶接して管本体と底蓋とを接合する工程と、を含む構成であるから、管本体の下端部分にコンクリート材を投入固化後、硬化したコンクリート材の上部にすぐに底蓋を配置させて管内壁で接合して管本体の底部を形成することができ、作業の工数が少なく、簡単で、段取り替え作業なども単純であり、かつ工期を大幅に短縮可能なうえ、作業コストを低廉に維持することが可能である。
【0034】
また、後発嵌合手段は、管本体の一端側の管内壁に設けたリブ部であって、管の長手方向に間隔を空けながら取り付けられ管の中心側に向けて周状に突設した複数のリブを有するリブ部を含むようにすることにより、管本体の一端内壁側に例えば地上でコ字枠状の環状部材を取り付けておくだけの簡単な構成により、後発嵌合手段を形成でき工期短縮、コスト低減に資する。
【0035】
また、管本体の下端側の管縁に掘削ビットを間隔を設けて環状に複数個固定した掘削ビット部を設けることにより、管本体の地中打ち込み時に硬い岩盤地質でも比較的容易に圧入操作を実現させることができ、工期短縮を図れる。
【0036】
また、本発明の大型有底管体によれば、内側の土を排出しながら地中に圧入される管本体と、管本体の一端側内部に取り付けられ管本体の他端側から供給される基盤用コンクリート材を管本体内壁へ後発嵌合させる後発嵌合手段と、管本体を計画深さまで圧入後に管本体内の後発嵌合手段取付部分に対応する高さまで投入される生コンクリートが硬化して後発嵌合手段を介して後発的に管本体内壁に嵌合するコンクリート材と、を含む構成であるから、地中に圧入後に管本体の上端側からコンクリート材を供給し下端側に投入して固化させるだけで管本体の底部の基礎を形成することができ、その後の管本体底部の構築を短時間で、容易、低コストで実現させることが可能である。また、地中に圧入した管本体の下端部に硬化したコンクリートが管本体と一体化した状態で下端に錘を配置した状態で保持されるから、管外の地下の状態により浮力を受けたり、種々の方向から力を受ける場合にも管本体を安定化させる機能を保持し得る。
【0037】
また、後発嵌合手段は、管本体の長手下端側の管内壁に設けたリブ部であって、管の長手方向に間隔を空けながら取り付けられ管の中心側に向けて周状に突設した複数のリブを有するリブ部を含むことにより、管本体の一端内壁側に例えば地上でコ字枠状の環状部材を取り付けておくだけの簡単な構成により、後発嵌合手段を形成でき工期短縮、コスト低減に資する。
【0038】
また、管本体の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋であって、生コンクリートの硬化後に硬化コンクリートの上部に配置され外周縁を管本体の内壁面と溶接接合される底蓋を含むことにより、硬化したコンクリート材の基礎の上にさらに底蓋を水密状に管内壁に接合することができ、管本体の底部を完成させることができる。
【0039】
また、管本体の下端側の管縁に掘削ビットを間隔を設けて環状に複数個固定した掘削ビット部を設けているので、管本体の地中打ち込み時に硬い岩盤地質でも比較的容易に圧入操作を実現させることができ、工期短縮を図れる。
【0040】
以上説明したように、大型管本体の下端部内壁に後発嵌合手段2を取り付ける簡単な管本体の構成とすることにより、(1)大型管体の地中圧入、(2)基盤用コンクリート部材の管本体下端部分への投入、(3)基盤用コンクリート部材の硬化嵌合後に管本体内の基盤用コンクリート部材上に底蓋6を設置、するだけの簡単で少ない工程により大型有底管体を地中に建込みすることが可能となる。
【0041】
以上説明した本発明の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、他の実施形態を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体は、地震、津波、土砂災害、戦時危険状態等でシェルターとして利用できるうえ、通常には種々の物品の収納、保管倉庫などでも利用することができる。また、光や空気についての生育条件がそれほど厳しくないきのこ類栽培空間を形成することもできる。
【符号の説明】
【0043】
100 大型有底管体
1 管本体
1k 管本体の下端側内壁面
2 後発嵌合手段
3 基板用コンクリート材
4 リブ部
4a リブ
s 間隔
5 掘削ビット部
6 底蓋