(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】薬剤排出装置及び薬剤排出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20241129BHJP
B65B 1/30 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
B65B1/30 A
(21)【出願番号】P 2022515359
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015095
(87)【国際公開番号】W WO2021210516
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2020073984
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】小池 直樹
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-119902(JP,A)
【文献】特開2007-297066(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119276(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/136523(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/091375(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形状の薬剤を撒き入れる複数の凹部を備えた手撒き部材と、前記凹部に撒き入れられた薬剤を直接的に又は他の部材を介在させて下流側に排出する排出手段と、前記排出手段を制御する制御装置を有する薬剤排出装置において、
前記排出手段は、任意の前記凹部に対応する薬剤を個別に排出することが可能であり、
前記制御装置は、複数人または一人の患者に提供されるべき薬剤の情報を含む処方情報に基づいて、同一の薬剤を近接し
ていてまとまった領域の前記凹部に割り当て、
前記排出手段は、所定の順番に、薬剤を排出する、薬剤排出装置。
【請求項2】
前記凹部には、一服用分であって、1又は複数個の薬剤が撒き入れられ、
前記一服用分の薬剤は一種類又は複数種類の薬剤であり、
薬剤の種類と個数が同じものが、近接し
ていてまとまった領域の前記凹部に割り当てられる、請求項1に記載の薬剤排出装置。
【請求項3】
表示手段を有し、当該表示手段は、前記凹部の配列を模した模擬図表を表示可能であり、前記模擬図表及び/又は前記模擬図表と同一の画面に、撒き入れるべき薬剤に関連する情報が表示される、請求項1又は2に記載の薬剤排出装置。
【請求項4】
前記模擬図表の、同一の薬剤を入れるべき凹部に統一された印が表示される、請求項3に記載の薬剤排出装置。
【請求項5】
手撒き部材は、薬剤を入れるべき凹部を指示する指示手段を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の薬剤排出装置。
【請求項6】
手撒き部材の下部に分割器が配され、
前記分割器は、一時収容部材と、底構成部材を有し、
前記一時収容部材は枡部を有し、前記枡部は、前記手撒き部材の前記凹部に対応するものであって底側が開口し、
前記底構成部材は、特定の部分を開閉して落下開口を形成することが可能であり、
前記一時収容部材と、前記底構成部材は、相対移動が可能であり、前記一時収容部材と前記底構成材の少なくともいずれかを移動して、特定の前記枡部を前記底構成部材の前記落下開口が形成される位置に移動させることが可能である、請求項1乃至5のいずれかに記載の薬剤排出装置。
【請求項7】
前記手撒き部材の前記凹部は底側が開口し、前記手撒き部材の下部に底構成部材があり、
前記底構成部材は、特定の部分を開閉して落下開口を形成することが可能であり、
前記手撒き部材と、前記底構成部材は、相対移動が可能であり、前記手撒き部材と前記底構成部材の少なくともいずれかを移動して、特定の前記凹部を前記底構成部材の前記落下開口が形成される位置に移動させることが可能である、請求項1乃至5のいずれかに記載の薬剤排出装置。
【請求項8】
前記底構成部材は、全面閉止領域と、開口可能領域があり、
前記開口可能領域は、幅が狭い平面を有する移動床部材が並べられて構成され、
前記移動床部材は、個別に平行移動可能であり、前記移動床部材を平行移動させて、前記全面閉止領域と、前記移動床部材の間に前記落下開口を形成するものである、請求項6又は7に記載の薬剤排出装置。
【請求項9】
薬剤の種類に基づいて撒き入れるべき凹部を決定する凹部決定手段と、決定した凹部を案内する案内手段とを備えた
請求項1乃至8のいずれかに記載の薬剤排出装置。
薬剤排出装置。
【請求項10】
複数の薬剤フィーダと、
前記手撒き部材と、を有し、
前記薬剤フィーダには複数の薬剤を充填可能な薬剤カセットが装着されており、前記薬剤フィーダは前記薬剤カセットから薬剤を排出するものであり、
前記薬剤フィーダから排出可能な薬剤と、排出不能な薬剤を区別し、前記排出不能な薬剤を前記手撒き部材を介して排出するのに際し、薬剤の種類に基づいて撒き入れるべき凹部を決定する凹部決定手段を備えた
請求項1乃至9のいずれかに記載の薬剤排出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の薬剤排出装置と、当該薬剤排出装置から排出された薬剤を包装する包装装置を有する薬剤包装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手撒き装置と称されるものであり、固形状の薬剤を下流側の包装装置等に排出する薬剤排出装置に関するものである。また本発明は、薬剤排出装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル等の固形状の薬剤を一包ずつ包装する薬剤包装装置が知られている(特許文献1)。一般に薬剤包装装置は、複数の薬剤フィーダを備えた薬剤貯留部と薬剤を包装する薬剤包装部とを備えている。そして薬剤フィーダに錠剤等が充填された薬剤カセットが取り付けられている。
上記した薬剤包装装置では、薬剤フィーダによって薬剤カセットに貯留された錠剤を一個ずつ取り出し、当該錠剤を薬剤包装部に送り、包装紙等によって一回服用分ずつ包装する。
【0003】
また薬剤包装装置には、下記の特許文献2に開示された様な、当業者の間で「手撒き」と称される機能を備えたものがある。ここで「手撒き」とは、薬剤フィーダを介さず、手指やロボット等によって所定の錠剤等を一包分ずつ投入し、薬剤包装部に送って包装するものである。
【0004】
図28は、特許文献2に開示された薬剤包装装置で採用された手撒き装置の斜視図である。
特許文献2に開示された手撒き装置100は、手撒き部材102及び分割枡ユニット103を備えている。特許文献2に開示された薬剤包装装置では、分割枡ユニット103は図示しない本体内に配されている。また手撒き部材102は、図示しない本体に対して手動でスライドできる様に取付けられている。
手撒き部材102は、凹部が縦横の行列状に設けられた板状体である。
また分割枡ユニット103には、枡部が縦横の行列状に設けられている。分割枡ユニット103の枡部の配列は、手撒き部材102の凹部の配列に対応している。
手撒き部材102は、引き出し枠101に着脱自在に装着される。
特許文献2に開示された薬剤包装装置では、手撒き部材102を引き出し枠101ごと本体から引き出す。
そして当該手撒き部材102の凹部に手指をもって錠剤を投入する。
その後、手撒き部材102を薬剤包装装置の図示しない本体内に挿入する。
【0005】
手撒き部材102は、本体内に挿入された状態においては分割枡ユニット103の上部に位置する。そして手撒き部材102の各凹部の底部が開き、各凹部内の錠剤が分割枡ユニット103の枡部に投入される。
その後、分割枡ユニット103の底部が順次開かれ、下部に設けられた薬剤包装部105に錠剤が一包分ずつ送られて、包装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-269621号公報
【文献】特開2001-335002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の手撒き装置では、分割枡ユニット103の枡部を開く順番が決まっており、分割枡ユニット103の枡部は、端部から一個ずつ順番に開かれてゆく。
【0008】
例えば一人の患者(例えば患者a)の処方が、朝に薬剤Aを服用し、昼に薬剤Bを服用し、夜に薬剤Cを服用するものであるならば、薬剤師は、手撒き部材102の1行1列目の凹部に朝用の薬剤Aを入れ、続く1行2列目の凹部に昼用の薬剤Bを入れ、続く1行列目の凹部に夜用の薬剤Cを入れ、以後、この作業を繰り返す。
手撒き装置から、薬剤が投入順に下流側の包装部に排出され、一服用分ずつ順次包装されてゆく。
その結果、薬剤排出装置からは、患者aが服用する薬剤包装が、朝、昼、夜等の服用時期順に排出されていく。
従来技術の手撒き装置100は、上記した様に、薬剤を包装するべき順番に、手撒き部材102の凹部に入れる必要があり、慎重を要する作業であった。そのため、薬剤師の精神的負担が大であった。
【0009】
また近年、薬局が介護施設等に薬剤を提供する際に、薬局側で、複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分けてほしいという介護施設側の要求がある。
例えば、施設に収容されている患者が患者a、患者b、患者cの三名とすると、患者三名が朝に服用する薬剤をひとまとめにして朝用集合を作り、患者三名が昼に服用する薬剤をひとまとめにして昼用集合を作り、患者三名が夜に服用する薬剤をひとまとめにして夜用集合を作って、介護施設に搬入する。
例えば
図29に示す様な、患者a、患者b、患者c、それぞれが朝に服用する薬剤包装が連続した分包帯、患者a、患者b、患者c、それぞれが昼に服用する薬剤包装が連続した分包帯、患者a、患者b、患者c、それぞれが夜に服用する薬剤包装が連続した分包帯を作って、介護施設に搬入する。
あるいは、投薬カレンダーと称されるシートに薬剤を配置して介護施設に搬入する。
【0010】
、
そのため、複数の患者に対する薬剤包装を一度に実施したいという要求がある。例えば、患者a、患者b、患者cに処方された薬剤を一つの手撒き部材102に投入して、個別に排出する。
この場合、薬剤師は、例えば手撒き部材102の1行1列目の凹部に朝用の患者a用の薬剤Aを入れ、続く1行2列目の凹部に朝用の患者b用の薬剤Bを入れ、続く1行3列目の凹部に朝用の患者c用の薬剤Cを入れ、続く1行4列目の凹部に昼用の患者a用の薬剤Dを入れるというような煩雑な作業を強いられ、薬剤師の負担が極めて大であった。
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、手撒き装置に薬剤を撒き入れる際の煩雑さを軽減することが可能な、薬剤排出装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するための態様は、固形状の薬剤を撒き入れる複数の凹部を備えた手撒き部材と、前記凹部に撒き入れられた薬剤を直接的に又は他の部材を介在させて下流側に排出する排出手段と、前記排出手段を制御する制御装置を有する薬剤排出装置において、前記排出手段は、任意の前記凹部に対応する薬剤を個別に排出することが可能であり、前記制御装置は、複数人または一人の患者に提供されるべき薬剤の情報を含む処方情報に基づいて、同一の薬剤を近接した領域の前記凹部に割り当て、前記排出手段は、所定の順番に、薬剤を排出する、薬剤排出装置である。
【0012】
経験則上、個人が朝、昼、夜、寝る前等の様に、複数回に分けて薬剤を服用する場合、服用する薬剤に重複するものが含まれている場合がある。
また複数の患者に処方された薬剤には、同一の薬剤が含まれている場合が多い、例えば、老人介護施設に収容されている患者には、血圧を安定化させる薬剤や、中性脂肪を低下させる薬剤が処方されていることが多く、これらの薬剤が同じものである場合が多い。
本発明は、この事実に注目したものであり、複数人または一人の患者に提供されるべき薬剤の情報を含む処方情報に基づいて、同一の薬剤を近接した領域の凹部に割り当てる。
本態様によると、手撒き部材のまとまった領域に、同じ薬剤を集中的に撒くことができるので、作業が簡単であり、薬剤師の負担が軽減される。
また本態様によると、排出手段は、任意の凹部に対応する薬剤を個別に排出することが可能であり、所定の順番に薬剤を排出して、所望の薬剤集合を作ることができる。例えば、患者三名が朝服用する薬剤をひとまとめにした朝用集合を作り、患者三名が昼服用する薬剤をひとまとめにして昼用集合を作り、患者三名が夜服用する薬剤をひとまとめにして夜用集合を作ることができる。
【0013】
上記した態様において前記凹部には、一服用分であって、1又は複数個の薬剤が撒き入れられ、前記一服用分の薬剤は一種類又は複数種類の薬剤であり、薬剤の種類と個数が同じものが、近接した領域の前記凹部に割り当てられることが望ましい。
【0014】
本態様によると、手撒き部材のまとまった領域に、数と種類とが同じ薬剤を集中的に撒くことができるので、作業が簡単であり、薬剤師の負担が軽減される。
【0015】
上記した態様において、表示手段を有し、当該表示手段は、前記凹部の配列を模した模擬図表を表示可能であり、前記模擬図表及び/又は前記模擬図表と同一の画面に、撒き入れるべき薬剤に関連する情報が表示されることが望ましい。
【0016】
薬剤師等の作業者は、表示装置を参照しつつ、所定の凹部に薬剤を入れることができる。
【0017】
上記した態様において、前記模擬図表の、同一の薬剤を入れるべき凹部に統一された印が表示されることが望ましい。
【0018】
印には、例えば着色や、図形が考えられる。例えば、同一の薬剤が入れられる領域ごとに色分けする構成が考えられる。
【0019】
上記した各態様において、手撒き部材は、薬剤を入れるべき凹部を指示する指示手段を有することが望ましい。
【0020】
本態様によると、薬剤を入れるべき凹部が指示されるので、入れ間違いが少ない。
【0021】
上記した各態様において、手撒き部材の下部に分割器が配され、前記分割器は、一時収容部材と、底構成部材を有し、前記一時収容部材は枡部を有し、前記枡部は、前記手撒き部材の前記凹部に対応するものであって底側が開口し、前記底構成部材は、特定の部分を開閉して落下開口を形成することが可能であり、前記一時収容部材と、前記底構成部材は、相対移動が可能であり、前記一時収容部材と前記底構成部材の少なくともいずれかを移動して、特定の前記枡部を前記底構成部材の前記落下開口が形成される位置に移動させることが可能であることが望ましい。
【0022】
本態様の薬剤排出装置は、手撒き部材の下部に分割器が配され、分割器の一時収容部は、手撒き部材の凹部に対応した枡部を有している。
本態様の薬剤排出装置では、手撒き部材に撒き入れられた薬剤を一旦、下部の分割器に移し、その後、分割器の枡部を一つ一つ開いて、薬剤を排出する。
本態様では、枡部から薬剤を排出する方策として、分割器に、枡部を構成する一時収容部材と、底構成部材を備えた構成を採用している。
本態様の薬剤排出装置では、枡部の底側が開口しているが、各枡部の底側は、底構成部材で封鎖されている。
また底構成部材は、特定の部分を開閉して落下開口を開くことが可能である。
本態様の薬剤排出装置では、一時収容部と、底構成部材は、相対移動が可能であり、一時収容部と底構成部材のいずれかを移動して、特定の前記枡部を前記底構成部材の前記落下開口が形成可能な位置に移動させ、特定の枡部の底を開き、特定の枡部から薬剤を排出することができる。
【0023】
他に、前記手撒き部材の前記凹部は底側が開口し、前記手撒き部材の下部に底構成部材があり、前記底構成部材は、特定の部分を開閉して落下開口を形成することが可能であり、前記手撒き部材と、前記底構成部材は、相対移動が可能であり、前記手撒き部材と前記底構成部材の少なくともいずれかを移動して、特定の前記凹部を前記底構成部材の前記落下開口が形成される位置に移動させることが可能である態様も考えられる。
【0024】
上記した各態様において、前記底構成部材は、全面閉止領域と、開口可能領域があり、前記開口可能領域は、幅が狭い平面を有する移動床部材が並べられて構成され、前記移動床部材は、個別に平行移動可能であり、前記移動床部材を平行移動させて、前記全面閉止領域と、前記移動床部材の間に前記落下開口を形成するものであることが望ましい。
【0025】
本態様を採用した分割器は、簡単な構造であり、且つ全体形状が小さい。
【0026】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、固形状の薬剤を撒き入れる複数の凹部を備えた手撒き部材と、前記凹部に撒き入れられた薬剤を直接的に又は他の部材を介在させて下流側に排出する排出手段を有する薬剤排出装置において、前記凹部には、一服用分であって、1又は複数個の薬剤が撒き入れられ、薬剤の種類に基づいて撒き入れるべき凹部を決定する凹部決定手段と、決定した凹部を案内する案内手段とを備えた薬剤排出装置である。
【0027】
ここで、「案内手段」には、表示手段に表示される凹部の配列を模した模擬図表や、 手撒き部材に設けられ、薬剤を入れるべき凹部を指示する指示手段が含まれる。
本態様の薬剤排出装置では、凹部決定手段によって、薬剤を撒き入れるべき凹部が決められる。
薬剤師等の作業者は、案内手段を参照しつつ、所定の凹部に薬剤を入れることができる。
【0028】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、複数の薬剤フィーダと、固形状の薬剤を撒き入れる複数の凹部を備えた手撒き部材と、前記凹部に撒き入れられた薬剤を直接的に又は他の部材を介在させて下流側に排出する排出手段を有し、前記薬剤フィーダには複数の薬剤を充填可能な薬剤カセットが装着されており、前記薬剤フィーダは前記薬剤カセットから薬剤を排出するものである薬剤排出装置において、前記凹部には、一服用分であって、1又は複数個の薬剤が撒き入れられ、前記薬剤フィーダから排出可能な薬剤と、排出不能な薬剤を区別し、前記排出不能な薬剤を前記手撒き部材を介して排出するのに際し、薬剤の種類に基づいて撒き入れるべき凹部を決定する凹部決定手段を備えた薬剤排出装置である。
【0029】
本態様の薬剤排出装置は、複数の薬剤フィーダと、手撒き部材を有し、薬剤は、主として薬剤フィーダを使用して排出される。本態様の薬剤排出装置では、薬剤フィーダから排出不能な薬剤が手撒き部材を介して排出されるが、その際に、薬剤の種類に基づいて撒き入れるべき凹部が決定される。
【0030】
上記したいずれかの薬剤排出装置と、当該薬剤排出装置から排出された薬剤を包装する包装装置によって、薬剤包装装置が構成される。
【0031】
方法に関する態様は、固形状の薬剤を撒き入れる複数の凹部を備えた手撒き部材と、前記凹部に撒き入れられた薬剤を直接的に又は他の部材を介在させて下流側に排出する排出手段を有する薬剤排出装置の制御方法において、複数の患者の処方に対応し、複数の患者に供給される薬剤の内、同一の薬剤がある場合には、当該同一の薬剤を近接した領域の前記凹部に投入し、服用時期の順に、薬剤を排出する薬剤排出装置の制御方法である。
【0032】
本態様の薬剤排出装置の制御方法によると、まとまった領域に、同じ薬剤を集中的に撒くことができるので、薬剤師の精神的負担が軽減される。
【発明の効果】
【0033】
本発明の薬剤排出装置によると、まとまった領域に、同じ薬剤を集中的に撒くことができるので、手撒き装置に薬剤を撒き入れる際の煩雑さが軽減される効果がある。
また薬剤排出装置によると、薬剤を撒き入れる凹部が分かりやすく、間違いを少なくすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態の薬剤包装装置の正面図である。
【
図2】
図1の薬剤包装装置における本体部の挿入口と、手撒き部材を斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】手撒き装置(薬剤排出装置)を制御する制御装置のブロック図である。
【
図4】
図1の薬剤包装装置の表示装置の表示画面の一例を示す表示画面図であり、複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を1錠ずつ服用する場合における割り付け状況を示す。
【
図6】手撒き部材の平面図であり、(a)は、準備段階を示し、(b)は、薬剤Aを撒き入れる際の手撒き部材の平面図であり、(c)は、薬剤Bを撒き入れる際の手撒き部材の平面図であり、(d)は、凹部の拡大図である。
【
図7】手撒き装置(薬剤排出装置)の斜視図である。
【
図8】
図7の手撒き装置の斜視図であって、手撒き部材と分割器を離して図示したものである。
【
図9】(a)は、
図7の分割器の分解斜視図であり、(b)は、一時収容部材の断面図である。
【
図10】(a)は、手撒き部材を略した状態における手撒き装置の平面図であり、(b)はそのA-A断面図である。
【
図11】一時収容部材の番号1の枡部にある薬剤を排出する際の動作の一段階を示し、(a)は、その際の、手撒き部材を略した状態における手撒き装置の平面図であり、(b)はそのA-A断面図である。
【
図12】一時収容部材の番号1の枡部にある薬剤を排出する際の動作であって
図11に続く段階を示し、(a)は、その際の、手撒き部材を略した状態における手撒き装置の平面図であり、(b)は、そのA-A断面図である。
【
図13】一時収容部材の番号33の枡部にある薬剤を排出する際の動作の一段階を示し、(a)は、その際の、手撒き部材を略した状態における手撒き装置の平面図であり、(b)は、そのA-A断面図である。
【
図14】一時収容部材の番号33の枡部にある薬剤を排出する際の動作であって
図13に続く段階を示し、(a)は、その際の、手撒き部材を略した状態における手撒き装置の平面図であり、(b)は、そのA-A断面図である。
【
図15】
図1の薬剤包装装置の表示装置の表示画面の一例を示す表示画面図であり、一人の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を1錠ずつ服用する場合における割り付け状況を示す。
【
図16】
図1の薬剤包装装置の表示装置の表示画面の一例を示す表示画面図であり、一人の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を複数個、服用することがある場合における割り付け状況を示す。
【
図17】
図1の薬剤包装装置の表示装置の表示画面の一例を示す表示画面図であり、複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を複数個、服用することがある場合における割り付け状況を示す。
【
図18】
図1の薬剤包装装置の表示装置の表示画面の一例を示す表示画面図であり、一人又は複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に複数種類の薬剤を服用することがある場合における割り付け状況を示す。
【
図19】鑑査装置の表示画面であって、(a)は、通常表示であり、(b)は、患者別にソートした患者別表示であり、(c)は、特定箇所の前後を表示する確認表示を示す。
【
図20】本発明の他の実施形態で採用する手撒き部材の分割器を示し、(a)は、開閉機構部の平面図であり、(b)は、開閉機構部の斜視図であってクラッチが解除されている状態を示し、(c)は、開閉機構部の斜視図であってクラッチが繋がった状態を示す。
【
図21】
図20に示す分割器の一時収容部材の枡部と、開閉機構部との関係を示し、(a)は、枡部の底が閉じられている状態を示し、(b)は、枡部の底が開かれた状態を示す。
【
図22】本発明のさらに他の実施形態で採用する手撒き部材の分割器を示し、(a)は、開閉機構部の斜視図であり、(b)、(c)、(d)は、開閉機構部の動作を示す説明図である。
【
図23】本発明のさらに他の実施形態で採用する手撒き部材の分割器を示し、(a)は、その分解斜視図であり、(b)、(c)は、開閉機構部の動作を示す説明図である。
【
図24】本発明のさらに他の実施形態で採用する手撒き部材の分割器の一時収容部材であって、(a)は、本体部に閉止板を挿入する前の状態を示し、(b)は、本体部に閉止板を挿入した状態を示す。
【
図25】薬剤排出装置の薬剤包装排出口の近傍を示す正面図であり、(a)は、ソータが待機位置にある状態を示し、(b)、(c)、(d)は、ソータを動作させた状態を示す。
【
図27】(a)は、投薬カレンダー及び薬剤収容部の拡大図であり、(b)は、清掃具及び薬剤収容部の斜視図であって清掃具を薬剤収容部に挿入する前の状態を示し、(c)は、清掃具及び薬剤収容部の斜視図であって清掃具を薬剤収容部に挿入して清掃する際の状態を示す。
【
図28】従来技術の薬剤包装装置で採用する手撒き装置の斜視図である。
【
図29】服用時期別に薬剤包装が連続した分包帯の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の薬剤包装装置1は、
図1に示す様な外形形状をしている。薬剤包装装置1は、大きく分けて錠剤供給部2、手撒き部3、散剤供給部5及び薬剤包装部6に分かれている。手撒き部3には、手撒き装置(薬剤排出装置)10が内蔵されている。
【0036】
ここで錠剤供給部2は、薬剤包装装置1の上半分を占める。錠剤供給部2は、カプセルや錠剤等の固形状の薬剤(以下、単に錠剤と称する場合がある)が多種類かつ多量の錠剤が収納された薬剤棚部8と、錠剤輸送路部9によって構成されている。
薬剤棚部8には、内部に多数の薬剤フィーダ(図示せず)が内蔵されている。そして各薬剤フィーダには薬剤カセット(図示せず)が装着されている。
【0037】
薬剤カセットには、多数の錠剤が収納されており、薬剤カセットから一個ずつ錠剤が排出される。排出された錠剤は、薬剤包装部6に送られ、一回服用分ずつ小袋に包装される。
【0038】
散剤供給部5及び薬剤包装部6は、薬剤包装装置1の下半分を占め、両者は当該部分に内蔵されている。
散剤供給部5から掻き出された散薬についても、錠剤等と同様に包装される。
【0039】
薬剤包装装置1には、表示装置11が設けられている。表示装置(案内手段)11は、公知のタッチパネル等であり、表示画面12がある。
【0040】
次に本実施形態の特徴部分たる手撒き装置10について、その概要を説明する。
手撒き装置10は、
図7の様に、手撒き部材15と、分割器16によって構成されている。
手撒き部材15は、全体形状が板状の部材であり、凹部20が行列状に配されている。 各凹部20には、図示しない底がある。当該底は、開閉可能であり、後記するように、底を開いて凹部20内の薬剤を下方の分割器16に移すことができる。
手撒き部材15の各凹部20には、
図6(d)の様に指示灯(指示手段 案内手段)22が設けられており、特定の凹部20を照らして目立たせることができる。
【0041】
分割器16は、前記した手撒き部材15の凹部20と同様に多数の枡部30が設けられた部材である。分割器16に設けられた枡部30のレイアウト、即ち、個数及び配置は、前記した手撒き部材15の凹部20のレイアウトと同じであり、分割器16の枡部30は、手撒き部材15の凹部20と一対一に対応している。
分割器16は、任意の位置にある枡部30を順不同に開くことができる。分割器16は、排出手段であり、任意の前記凹部に対応する薬剤を個別に排出することが可能である。
【0042】
図7の様に、分割器(排出手段)16の下部には集合ホッパー28が設けられている。集合ホッパー28の終端部は、前記した薬剤包装部6に至る通路に連通している。
手撒き装置(薬剤排出装置)10の分割器16は、薬剤包装装置1の本体部分に収容されている。これに対して、手撒き部材15は、引き出し状の構造であり、薬剤包装装置1の本体部から出入りする。
手撒き部材15が薬剤包装装置1の本体部内に収容されると、
図7の様に手撒き部材15は分割器16の真上の位置に至り、凹部20の底をすべて開いて凹部20内の薬剤を分割器16の枡部30に移す。
【0043】
次に、制御装置40について説明する。
図3に示す様に、制御装置40は、複数人または一人の患者に提供されるべき薬剤の情報を含む処方情報に基づいて、同一の薬剤を近接した領域の凹部に割り当てる制御を実行する。
制御装置40は、薬剤の種類に基づいて撒き入れるべき凹部20を決定する凹部決定手段として機能する。
また制御装置40は、薬剤フィーダから排出可能な薬剤と、排出不能な薬剤を区別する機能を備えている。
これらの機能は、仕分けプログラムによって実現される。
【0044】
制御装置40は、公知のCPUやメモリ等を有するものであり、当該メモリに、仕分けプログラムが内蔵されている。また制御装置40は、処方情報入力部を有している。
制御装置40には、外部のサーバーが接続されている。
本実施形態では、当該サーバーから処方情報が入力される。処方情報には、要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれている。また処方情報には、他に数量や服用時期等の情報が含まれている。
制御装置の出力側には、表示装置11と、分割器16および、手撒き部材15の指示灯22が接続されている。
【0045】
仕分けプログラムは、複数の患者の処方情報を参照し、共通する薬剤がある場合には、これをまとめて一つの集合を作るプログラムである。
ここで処方情報には、薬剤の種類、薬剤の量、服用時期、服用方法等が含まれている。
仕分けプログラムは、処方情報に含まれている薬剤の内、手撒きが必要な薬剤が選別され、当該薬剤の情報が参照される。具体的には手撒きが必要な薬剤の種類、服用量、服用時期等が参照される。
即ち、処方情報に含まれる薬剤には、固形状の薬剤や、散薬、塗り薬等がある。また固形の薬剤には、錠剤供給部2に現に保管されていて薬剤フィーダから排出することができるものと、錠剤供給部2に保管されていないものがある。処方情報の概念には、調剤用に加工された調剤情報と称されるものも含まれる。
仕分けプログラムは、少なくとも、現に錠剤供給部2に保管されておらず、手撒き装置10を使用して排出されるべき固形状の薬剤の情報を参照し、共通する薬剤がある場合には、これをまとめて一つの集合を作るプログラムである。
【0046】
そして、その集合の薬剤が収容されるべき枡部30を一つの領域にまとめて割り当てる。なお分割器16の枡部30は、前記した様に、手撒き部材15の凹部20と一対一に対応しているから、薬剤が分割器16の枡部30に割り付けられことにより、実質的に各薬剤が撒き入れられる凹部20(手撒き部材15)が割り当てられる。
即ち、仕分けプログラムは、薬剤の種類に基づいて撒き入れるべき凹部20を決定するプログラムである。
【0047】
そして
図4の様に、表示装置11の表示画面12に、手撒き部材15を模した模擬図表(案内手段)18が表示され、割り当てられた結果が示される。
例えば、
図4の様に、薬剤の種類ごとに色分け表示され、当該領域に撒き入れるべき薬剤が例えば、A,B,Cというように表示される。
また手撒き部材15の指示灯(案内手段)22を点灯して、特定の薬剤が撒き入れられるべき凹部20を表示する。
【0048】
本実施形態の薬剤包装装置1は、外部から入力される処方情報に基づいて必要な薬剤を排出させ、一服用分ずつ包装し、排出することができる。
ここで、本実施形態の薬剤包装装置1は、一服用分ずつ包装するパターンとして、以下の3種類がある。
(1)錠剤供給部2で排出した薬剤のみを一服用分ずつ包装する。
(2)手撒き装置10で排出した薬剤のみを一服用分ずつ包装する。
(3)錠剤供給部2と手撒き装置10から、それぞれ排出された薬剤をあわせて一服用分ずつ包装する。
なお、他に、散剤供給部5から排出した薬剤を、単独または錠剤等とともに包装するパターンがあるが、散剤供給部5から排出される薬剤の取り扱いは、錠剤供給部2から排出される薬剤と同様であるから、説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、錠剤供給部2に保管されていない薬剤が処方情報に含まれている場合は、手撒き装置10から、薬剤包装部6に送られ、包装される。
本実施形態の薬剤包装装置1では薬剤フィーダから排出可能な薬剤と、排出不能な薬剤を区別し、錠剤供給部2に保管されていなくて、薬剤フィーダから排出不能な薬剤は、手撒き装置10から排出される。
【0050】
薬剤師等の作業者は、表示装置11に表示された模擬図表18及び、手撒き部材15の指示灯22を参照して、手撒き部材15の所定の領域に属する凹部20に、特定の薬剤を入れる。
そして、当該特定の薬剤を排出する時期が到来すると、当該薬剤がまとめられている領域に属する枡部30の内のいずれか一個を開き、開いた枡部30から当該薬剤を排出する。
【0051】
以下、
図5の表の様に、患者a乃至jを対象として、薬剤包装を作る場合を例に説明する。また説明の便宜上、
図4の様に、手撒き部材15の凹部20に端から番号を付する。
設例に従うと、患者a乃至jに対して、それぞれ、朝、昼、夜、寝る前の4回に渡って薬剤が提供される。ここで、空白欄は、錠剤供給部2から供給可能な薬剤が服用されるときであり、当該空白欄に該当する薬剤は、錠剤供給部2から自動供給される。
なお、錠剤供給部2等と手撒き部材15の双方から薬剤供給を受けて、それを一つの薬剤包装に同包する場合も多い。
例えば患者aが、朝に
図5の表に記した薬剤Aの他に、図示しない薬剤を服用する場合であって、当該薬剤が、錠剤供給部2に保管されているものである場合は、錠剤供給部2と手撒き部材15の双方から薬剤供給を受け、双方の薬剤が、同時に薬剤包装部6に送られて、包装される。
【0052】
設例に従うと、薬剤Aは、患者a,c,f,g,iに対して処方されている。薬剤Bは、患者b,d,g,iに対して処方されている。薬剤Cは、患者e,hに対して処方されている。薬剤Dは、患者jに対して処方されている。
【0053】
仮に、5日分の薬剤包装を作る場合、薬剤Aは25包必要であり、薬剤Bは20包必要であり、薬剤Cは10包必要であり、薬剤Dは5包必要である。
例えば、各患者や服用時期ごとに凹部20に撒くべき薬剤Aが同数である場合、仮に各患者や服用時期ごとに処方されている薬剤Aが全て1錠の場合、凹部20の番号1から25までの領域に薬剤Aを1錠ずつ割り当てる。他の薬剤B~Dについても同様に割り当てる。具体的には、仮に各患者や服用時期ごとに凹部20に撒くべき薬剤B~Dが全て1錠の場合、凹部20の番号26から45までの領域に、薬剤Bを1錠ずつ割り当て、凹部20の番号46から55までの領域に薬剤Cを1錠ずつ割り当て、凹部20の番号56から60までの領域に薬剤Dを1錠ずつ割り当てられる。
【0054】
上記した様な処方情報が制御装置40入力された場合は、凹部20の番号1から25までの領域を薬剤A用領域とする。また凹部20の番号26から45までの領域を薬剤B用領域とする。同様に、凹部20の番号46から55までの領域を薬剤C用領域とし、凹部20の番号56から60までの領域を薬剤D用領域とする割り付けが行われる。
【0055】
そして、
図4の様に、表示装置11の表示画面12に、模擬図表18が表示され、割り付けられた結果が示される。模擬図表18は、薬剤を入れる領域ごとに色分けされている。また凹部20に相当する枠に、薬剤の種類が表示される。このように、模擬図表18の、同一の薬剤を入れるべき凹部20の枠に統一された印が表示される。
【0056】
前記した様に、薬剤師等の作業者は、表示装置11に表示された模擬図表18及び、手撒き部材15の指示灯22を参照して、手撒き部材15の所定の領域に属する凹部20に、特定の薬剤を入れる。
【0057】
なお、各患者や服用時期ごとに凹部20に撒くべき薬剤の数が同数でない場合、同数の薬剤を集合させたり、患者の順番で薬剤を集合させたりして、凹部20の番号1から25まで薬剤Aに割り当てる。他の薬剤B~Dについても同様に割り当てられる。
【0058】
本実施形態では、
図6(b)の様に、最初に手撒き部材15の薬剤A用領域の指示灯22が点灯する。薬剤A用領域に対する薬剤Aの撒き入れが終了すると、図示しない終了スイッチを押す。
その結果、手撒き部材15の点灯領域が変化し、
図6(c)の様に、手撒き部材15の薬剤B用領域の指示灯が点灯する。以下、同様に、手撒き部材15の点灯領域が変化してゆく。
終了スイッチに代わって、カメラ、センサ、重量で撒き入れの終了を自動検知して点灯領域を変化させてもよい。
【0059】
手撒き部材15に対する薬剤の撒き入れが終了すると、所定の終了スイッチを押す。その結果、手撒き部材15は、薬剤包装装置1の本体部内に収容され、手撒き部材15は、分割器16の真上の位置に至り、凹部20の底をすべて開いて凹部20内の薬剤を分割器16の枡部30に移す。なお、手撒き部材15を手動で本体部内に押し込んで収容する構造を採用してもよい。
【0060】
手撒き作業が終了し、手撒き装置(薬剤排出装置)10から薬剤を排出する時期が到来すると、当該薬剤がまとめられている領域に対応する分割器16の枡部30のいずれかひとつが開かれ、当該薬剤を排出する。
例えば患者aの朝用の薬剤を包装する順番がまわってきたときには、凹部20の番号1から25までの薬剤A用領域のいずれかに対応する枡部30を開いて薬剤Aを排出する。例えば患者hの昼用の薬剤を包装する順番がまわってきたときには、凹部20の番号46から55までの薬剤C用領域のいずれかに対応する枡部30を開いて、薬剤Cを排出する。
【0061】
本実施形態の手撒き装置によると、薬剤を任意の順番に排出することができ、前記した介護施設に薬剤を納入するのに適した仕分けを行うことができる。
即ち各患者が朝服用する薬剤をひとまとめにして朝用集合を作り、各患者が昼服用する薬剤をひとまとめにして昼用集合を作り、各患者が夜服用する薬剤をひとまとめにして夜用集合を作り、患者が寝る前に服用する薬剤をひとまとめにして寝る前用集合を作って、介護施設等に搬入することができる。また必要に応じて投薬カレンダーに薬剤包装をセットして介護施設等に搬入する。
【0062】
例えば、各患者が朝服用する薬剤をひとまとめにして朝用集合を作る場合は、次の様にして行う。
図5の表に従うと、朝服用する薬剤は、患者aは薬剤A、患者b及び患者cは錠剤供給部2から排出される薬剤、患者dは薬剤B、患者eは薬剤C、患者fは薬剤A、患者gは薬剤B、患者hは錠剤供給部2から排出される薬剤、患者iは薬剤A、患者jは錠剤供給部2から排出される薬剤である。
【0063】
各患者が朝服用する薬剤をひとまとめにして朝用集合を作る場合は、上記した順番に薬剤を排出してゆく。
具体的には、最初に、薬剤A用領域に属する番号1の凹部20に対応する枡部30を開いて患者a用の薬剤Aを排出する。続いて、錠剤供給部2から患者b用の薬剤と、患者c用の薬剤を順次排出する。続いて、薬剤B用領域に属する番号26の凹部20に対応する枡部30を開いて患者d用の薬剤Bを排出する。続いて、薬剤C用領域に属する番号46の凹部20に対応する枡部30を開いて、患者e用の薬剤Cを排出する。続いて、薬剤A用領域に属する番号2の凹部20に対応する枡部30を開いて、患者f用の薬剤Aを排出する。続いて、薬剤B用領域に属する番号27の凹部20に対応する枡部30を開いて、患者g用の薬剤Bを排出する。続いて、錠剤供給部2から患者h用の薬剤を排出する。続いて、薬剤A用領域に属する番号3の凹部20に対応する枡部30を開いて、患者i用の薬剤Aを排出する。続いて、錠剤供給部2から患者j用の薬剤を排出する。
このように、各患者が朝服用する薬剤を順次排出して、朝用集合を作ることができる。
【0064】
次に、推奨される分割器16の構造について説明する。
本実施形態の手撒き装置10は、
図7の様に、手撒き部材15と、分割器16を有している。
また分割器16は、
図8、
図9(a)の様に、一時収容部材50と、底構成部材51を有している。
一時収容部材50は、複数の枡部30を有し、当該枡部30の配列は、手撒き部材15の凹部20のそれに一対一に対応している。
図9(b)の様に、一時収容部材50の枡部30には底がなく、枡部30自体は、常時開放状態である。ただし、一時収容部材50の底側には底構成部材51があり、枡部30の底側は底構成部材51によって塞がれている。
【0065】
底構成部材51は、全面閉止領域55と、開口可能領域56によって構成されている。
全面閉止領域55は、一枚の板によって構成されており、実質的に開口を持たない。
これに対して、開口可能領域56は、6個の移動床部材58が平面的に並べられて構成されている。移動床部材58には、幅が狭い平面状の短冊状部材60がある。
移動床部材58は、例えばソレノイド等の駆動源57によって、個別に一枡分だけ、平行移動させることができる。その結果、全面閉止領域55と、開口可能領域56との境界部分に落下開口61が形成される。
前記した全面閉止領域55は、一時収容部材50の底の全域を覆うことができるだけの面積をもっている。
同様に、開口可能領域56は、6枚の短冊状部材60を長方形に組み合わせた状態において、一時収容部材50の底の全域を覆うことができるだけの面積をもっている。
【0066】
また本実施形態で採用する分割器16は、図示しない駆動源によって、一時収容部材50が平行移動し、任意の位置で停止させることができる。
本実施形態の手撒き装置10においても手撒き部材15が薬剤包装装置1の本体部内に収容されると、手撒き部材15は、分割器16の真上の位置に至り、凹部20の底をすべて開いて凹部20内の薬剤が一時収容部材50の枡部30に移される。
【0067】
本実施形態の手撒き装置(薬剤排出装置)10は、任意の位置の枡部30の底を一時的に開放して当該枡部30から薬剤を排出する排出手段を有している。排出手段は、前記した一時収容部材50と、底構成部材51によって構成されている。
以下、排出手順について説明する。
例えば、番号1の凹部20に相当する枡部30を開放する場合は、
図11の様に、一時収容部材50を一枡分だけ移動させる。続いて、
図12の様に、一列目の移動床部材58を一枡分移動し、全面閉止領域55と開口可能領域56の間に一枡分の落下開口61を形成させる。その結果、番号1の凹部に相当する枡部30の底が解放され、番号1の凹部から薬剤62が放出される。
【0068】
次に、中央の番号28の凹部20の相当する枡部30を解放する場合について説明する。番号28に相当する枡部30は、右側から5行目であり、下から4列目の位置にある。
番号28に相当する枡部30を解放する場合は、
図13の様に、一時収容部材50を5枡分だけ移動させる。
このとき、一時収容部材50は、全面閉止領域55から大きくはみ出すが、開口可能領域56は、一時収容部材50の底部全域を覆うだけの面積を持つから、各枡部30の底は閉塞された状態が維持される。
続いて、
図14に示す様に、下から4列目の移動床部材58を一枡分移動し、全面閉止領域55と開口可能領域56の間であって、4列目の部分に一枡分の落下開口61を形成させる。その結果、番号28の凹部20に相当する枡部30の底が解放され、番号28の凹部20から薬剤62が放出される。
【0069】
以上説明した実施形態は、移動床部材58を複数設け、各移動床部材58を独立して移動させることによって、落下開口61を一つだけ作るものであるが、特定の位置に、開閉部材を設け、モータや、ソレノイドで開閉部材を開閉するものであってもよい。
例えば、全面閉止領域55と、開口可能領域56境界部分に例えば6個の開口を列方向に並べて形成し、各開口に開閉可能なヒンジ等の開閉部材を設け、当該ヒンジ等モータや、ソレノイドで開閉してもよい。
【0070】
手撒き部材15の各凹部20に入れる薬剤数は任意であり1個であっても複数個であってもよい。
患者が同一薬剤を同一時期に複数個服用する必要がある場合、凹部20に一個ずつ薬剤を入れ、枡部30から薬剤を排出する作業を複数回行うことにより、複数の薬剤を薬剤包装部6に供給してもよい。
異なる薬剤が収容された凹部20から、複数の枡部30に薬剤を移し、当該複数の枡部30から、一つの薬剤包装に薬剤を供給してもよい。
また一回服用分の薬剤を複数の薬剤包装に分けて収容することを否定するものではない。
【0071】
以上説明した実施形態の手撒き装置(薬剤排出装置)10は、手撒き部材15の凹部20に撒き入れられた薬剤を、分割器16を介して排出するものであるが、手撒き部材15の凹部20を個別に開閉して手撒き部材15から直接薬剤を排出してもよい。
【0072】
例えば、手撒き部材15の凹部20として、底が無く底部が開口している構造とする。そして手撒き部材15の下部に前記した様な底構成部材51を配し、手撒き部材15と、底構成部材51の相対移動が可能とし、手撒き部材15と底構成部材51の少なくともいずれかを移動して、特定の凹部20を底構成部材51の落下開口61が形成される位置に移動させる。
【0073】
以上説明した実施形態では、手撒き装置10を使用して、複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合の動作を説明した。上記した使用形態は、手撒き部材15の凹部20に撒き入れるべき薬剤が1錠ずつである場合の例である。
上記した使用形態によると、
図19に示す様な、同一時期に服用する薬剤包装が連続した分包帯を作ることができる。
他の使用形態として、次の様な使用例があげられる。いずれにしても、一つの凹部20には、手撒き装置(薬剤排出装置)10から供給されるべき薬剤であって、一回に服用される薬剤が撒き入れられる。またいずれの場合でも、薬剤の種類と個数が同じものが、近接した領域の前記凹部に割り当てられる。
(1)一人の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を1錠ずつ服用する場合。
(2)一人の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を複数個、服用することがある場合。
(3)複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を複数個、服用することがある場合。
(4)一人又は複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に複数種類の薬剤を服用することがある場合。
以下、説明する。
【0074】
(1)一人の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を1錠ずつ服用する場合。
例えば、患者aは、朝と夜に薬剤Aを服用し、昼に薬剤Bを服用するものとする。
仮に、4日分の薬剤包装を作る場合、薬剤Aは8包必要であり、薬剤Bは4包必要である。
この場合、
図15に示す様に、凹部20の番号1から8まで薬剤Aを1錠ずつ割り当てる。続く凹部20の番号9から12まで薬剤Bを1錠ずつ割り当てる。
【0075】
(2)一人の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を複数個、服用することがある場合。
例えば、患者aは、朝に薬剤Aを1錠服用し、昼に薬剤Bを1錠服用し、夜に薬剤Aを2錠服用するものとする。
仮に、4日分の薬剤包装を作る場合、薬剤Aが1錠包装された薬剤包装が4包必要であり、薬剤Aが2錠包装された薬剤包装が4包必要であり、薬剤Bが1錠包装された薬剤包装が4包必要である。
この場合、
図16に示す様に、凹部20の番号1から4までを薬剤Aを1錠ずつ入れる領域として割り当てる。続く凹部20の番号5から8までを薬剤Aを2錠ずつ入れる領域として割り当てる。続く凹部20の番号9から12までを剤Bを1錠ずつ入れる領域として割り当てる。
【0076】
(3)複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に固形状の薬剤を複数個、服用することがある場合。
例えば、患者aは、朝に薬剤Aを1錠服用し、昼に薬剤Bを1錠服用し、夜に薬剤Aを2錠服用するものとする。例えば、患者bは、朝に薬剤Aを1錠服用し、昼に薬剤Bを1錠服用し、夜に薬剤Aを2錠服用するものとする。
仮に、4日分の薬剤包装を作る場合、薬剤Aが1錠包装された薬剤包装が8包必要であり、薬剤Aが2錠包装された薬剤包装が8包必要であり、薬剤Bが1錠包装された薬剤包装が8包必要である。
この場合、
図17に示す様に、凹部20の番号1から8までを薬剤Aを1錠ずつ入れる領域として割り当てる。続く凹部20の番号9から16までを薬剤Aを2錠ずつ入れる領域として割り当てる。続く凹部20の番号17から24までを薬剤Bを1錠ずつ入れる領域として割り当てる。
【0077】
(4)一人又は複数の患者向けの薬剤包装を服用時期別に仕分ける場合であって、各服用時期に複数種類の薬剤を服用することがある場合。
例えば、患者aは、朝に薬剤Aを1錠、薬剤Bを1錠服用し、昼に薬剤Bを1錠服用し、夜に薬剤Aを2錠服用するものとする。例えば、患者bは、朝に薬剤Aを2錠服用し、昼に薬剤Bを1錠服用し、夜に薬剤Aを1錠、薬剤Bを1錠服用するものとする。
仮に、4日分の薬剤包装を作る場合、薬剤Aが1錠、薬剤Bが1錠、一袋に包装された薬剤包装が8包必要であり、薬剤Aが2錠包装された薬剤包装が8包必要であり、薬剤Bが1錠包装された薬剤包装が8包必要である。
この場合、
図18に示す様に、凹部20の番号1から8までを薬剤Aを1錠、薬剤Bを1錠入れる領域として割り当てる。続く凹部20の番号9から16までを薬剤Aを2錠ずつ入れる領域として割り当てる。続く凹部20の番号17から24までを剤Bを1錠ずつ入れる領域として割り当てる。
【0078】
以上説明した実施形態では、
図4、
図15乃至
図18の様に、図面の右詰めであって、且つ縦列に沿う状態にして、同一の薬剤を近接した領域の凹部に割り当てたが、本発明は、この構成に限定されるものではない。
例えば、左詰めに並べてもよく、横列に沿う状態に集めてもよい。
【0079】
以上説明した実施形態で採用した手撒き部材15は、凹部20が
図4の様に、10行、6列に配列されているが、手撒き部材15の行数や列数は任意である。
推奨される列数は、7列である。例えば、患者aの1日目~7日目を1列目~7列目として、1行目~4行目を服用時期の朝、昼、夜、眠前とすると、撒き易い。さらに、5行目を空けて、6行目~9行目を患者bの服用時期の朝、昼、夜、眠前として続けていくと、患者間の手撒きの誤りを回避しつつ撒き易い。
【0080】
以上説明した実施形態の薬剤包装装置1は、錠剤供給部2、手撒き部3、散剤供給部5及び薬剤包装部6を有しており、手撒き部3に特徴的な手撒き装置(薬剤排出装置)10が採用されている。
薬剤包装装置は、前記した実施形態の様に、錠剤供給部2や散剤供給部5を備えていることが望ましいが、錠剤供給部2等を持たない薬剤包装装置に、本発明の手撒き装置(薬剤排出装置)10を採用してもよい。
即ち、薬剤包装装置に入力された処方情報(処方情報を調剤用に加工した調剤情報を含む)に含まれる薬品すべてを薬剤排出装置(手撒き部材)から排出する装置にも本発明を適用することができる。
【0081】
次に、望ましい鑑査装置について説明する。当該鑑査装置は、薬剤包装装置1に内蔵されたものであってもよく、別途独立したものであってもよい。
上記した実施形態の薬剤包装装置1は、前記した様に、複数の患者が、それぞれ朝に服用する薬剤包装が連続した分包帯、複数の患者が、それぞれ昼に服用する薬剤包装が連続した分包帯、複数の患者が、それぞれ夜に服用する薬剤包装が連続した分包帯、複数の患者が、それぞれ寝る前に服用する薬剤包装が連続した分包帯を作ることができる。
薬剤包装装置1から排出される薬剤包装は、患者a、患者b、患者c・・・、患者i、患者jが、朝に服用する薬剤包装が繋がって排出され、続いてこれらの患者が、昼に服用する薬剤包装が繋がって排出される。
本実施形態の鑑査装置は、カメラを有し、薬剤包装装置1から排出される薬剤包装を排出される順に撮影し、薬剤の刻印や、形状等から包装されている薬剤を特定する。撮影された映像は、画像処理され、形状、大きさ、色等が近似する薬剤が検索される。そして、薬剤包装内の薬剤が、検索された薬剤と推認される。
そして、処方情報を参照し、薬剤包装に包装されている薬剤が、当該患者に投与されるべきものであるか否かを判定する。
【0082】
また薬剤師は、
図19(a)の様に、撮影された映像をモニター等に再生し、目視によっても鑑査を行う。
ここで本実施形態の鑑査装置は、画像を並べ替えるソート機能を有し、
図19(b)の様に、患者ごとに薬剤包装を表示することができる。
例えば、
図19(b)の様に、患者aを選択すると、当該患者aが服用する薬剤のみが、服用日と、服用時期(朝、昼、夜)が分かる状態で表示される。
仮に処方が二週間分であるならば、二週間分の薬剤包装が表示される。
【0083】
また、所定の操作を行うことにより、
図19(a)の様な撮影順の表示に戻すこともできる。即ち、薬剤包装装置1から排出された順に薬剤包装を表示することができる。
さらに特定の患者の、特定薬剤包装を指定して、当該薬剤包装の前後に排出された薬剤包装の中身を確認することができる。
【0084】
例えば、患者aの10月7日の昼に服用予定の薬剤は、処方情報によると、3錠であるが、実際の包装中には2錠しか含まれておらず、1錠不足している。
この原因として、他人の薬剤包装に、患者aが服用すべき薬剤が、紛れ込んでしまった可能性がある。
本実施形態の鑑査装置は、
図19(c)の様に、患者aの10月7日服用予定の薬剤が封入された薬剤包装の、前後に排出された薬剤包装を表示することができる。そのため、薬剤が正確に包装されなかった理由を調査することができる。
また鑑査装置の判定により、薬剤包装中の薬剤が異なっていたり、数が違うというような不具合があった場合に、自動的に、画面が
図19(c)の状態に切り替わってもよい。
【0085】
また、同時期に薬剤包装装置1から排出される薬剤に、形状や大きさが似ているものがある場合、注意を喚起する表示がモニター等に現れる。また、音による警告がなされてもよい。
形状や大きさが似ている薬剤は、画像処理による判定が困難である場合があり、薬剤師は、より慎重に目視確認を行うべきである。
そのため、例えば、
図19の画面のいずれかに注意を促す表示がなされることが望ましい。
【0086】
(分割器の変形例1)
次に、分割器の変形例について
図20、
図21を参照しつつ説明する。以下に説明する分割器63は、
図21の様に、一時収容部材64を有している。一時収容部材64は、前記した分割器16と同様に、行列状に配列された枡部30を有している。枡部30は、手撒き部材15の凹部20のそれに一対一に対応している。
本実施形態では、
図21の様に、各枡部30の底に、開閉部材65が設けられている。開閉部材65は、板状であり、中間部が枡部30の一部に軸支されている。開閉部材65は板状であり、軸支部66を中心として揺動する。開閉部材65は、軸支部66を境として一方側が蓋部材67として機能し、他方側が力点部68として機能する。
開閉部材65の蓋部材67は、枡部30の下部の開口の下に位置している。開閉部材65の力点部68は、枡部30から離れた位置にある。
開閉部材65は、付勢手段70によって、蓋部材67が、枡部30の底を封鎖する方向に付勢されている。
【0087】
本実施形態の分割器63は、駆動機構71と、作用部材72と、クラッチ機構73を有している。
作用部材72は、開閉部材65を付勢して、開閉部材65を揺動させるものである。
駆動機構71は、作用部材72を駆動するものである。クラッチ機構73は、駆動機構71と作用部材72の間にあって、両者を断続するものである。
【0088】
駆動機構71は、図面の横方向にのびるラック77a~fが、縦方向に6列に並べられたものである。各ラック77a~fには、モータ76で駆動するピニオン79が係合しており、モータ76を駆動することによって、ラック77a~fが直線移動する。
【0089】
作用部材72は、カムである。作用部材72の一部には、歯車の歯74が形成されている。
クラッチ機構73は、連結棒73a~jと、ソレノイド75を有している。
本実施形態では、6個の作用部材72が連結棒73a~jで連結されている。作用部材72は、連結棒73a~jに対して回動可能である。その一方、作用部材72は、連結棒73a~jに対して軸方向には一体である。
各連結棒73a~jにはそれぞれソレノイド75が取り付けられており、当該ソレノイド75を駆動することにより、各連結棒73a~jが個別に直線移動する。
本実施形態では、連結棒73a~jは、図面の縦方向にのび、横方向に10列、配置されている。
各作用部材72は、常時においては、
図20(b)の様に、ラック77a~fの脇にあり、各作用部材72の歯車の歯74は、ラック77a~fとは係合していない。
図20(a)における図面の最も右に位置するソレノイド75に通電して、連結棒73aを移動させると、
図20(c)の様に、当該連結棒73aに取り付けられた全ての作用部材72の歯車の歯74が、ラック77a~fと係合する。
【0090】
本実施は形態の分割器63についても、任意の位置にある枡部30を順不同に開くことができる。分割器63についても、任意の前記凹部20に対応する薬剤を個別に排出することが可能である。
即ち、開放しようとする枡部30が属する縦列の連結棒73a~jをソレノイド75で駆動し、開放しようとする枡部30が属する縦列の全ての作用部材72をラック77a~fと係合させる。
そして、開放しようとする枡部30が属する横列のラック77a~fだけを駆動させる。その結果、特定の作用部材72だけが回動し、作用部材72が、開閉部材65の力点部68を押し上げて、開閉部材65を回動させ、蓋部材67を下げて枡部30の底を開放する。
【0091】
以上説明した分割器63では、ラック77a~fをモータで駆動し、連結棒73a~jをソレノイドで駆動した。ラック77a~fや連結棒73a~jを駆動する駆動源は限定されるものではなく、ラック77a~fをソレノイドで駆動してもよい。また連結棒73a~jをモータで駆動してもよい。
【0092】
(分割器の変形例2)
上記した実施形態では、複数の動力源で連結棒73a~jを駆動しているが、ワンウェイクラッチ等を利用することにより、動力源の数を減らすことができる。
図22に示す分割器80では、全ての連結棒73a~jを一つのステッピングモータ89で駆動するものである。
分割器80は回動軸81を有し、回動軸81に駆動側部材82が、連結棒73a~jに相当する数だけ取り付けられている。回動軸81は、ステッピングモータ89によって回転される。
駆動側部材82は、一部に段状係合部84が設けられた円板である。段状係合部84の一辺は、円周に対して鋭角状となっており、他方の辺は、円周に対してなだらかに連続している。駆動側部材82は、段状係合部84の位置を少しずつずらせた状態で、回動軸81に固定されている。
【0093】
各連結棒73a~jには、従動側部材83が取り付けられている。従動側部材83は、先端に係合部85が設けられた部材である。係合部85は、鋭角に曲がった鉤状を呈している。
従動側部材83の係合部85は、駆動側部材82と接している。
図22(b)様に、駆動側部材82が破線の矢印の方向に回動させる場合、駆動側部材82の段状係合部84は、係合部85と係合することはない。
一方、
図22(c)様に、駆動側部材82を実線の矢印の方向に回動させると、
図22(d)の様に、駆動側部材82の段状係合部84が係合部85と係合し、連結棒73a~jが引っ張られて移動する。
ここで、駆動側部材82は、段状係合部84の位置を少しずつずらせた状態で、回動軸81に固定されているので、複数の駆動側部材82の段状係合部84が同時に従動側部材83と係合することはない。
【0094】
本実施形態では、開放しようとする枡部30が属する縦列の従動側部材83を駆動側部材82と係合させ、特定の連結棒73a~jを移動させて開放しようとする枡部30が属する縦列の全ての作用部材72をラック77a~fと係合させる。
具体的には、
図22(b)様に、駆動側部材82を破線の矢印の方向に回動させて、特定の連結棒73a~jに繋がっている係合部85を対応する駆動側部材82の段状係合部84に嵌りこむ位置で停止させる。ここで、駆動側部材82は、段状係合部84の位置を少しずつずらせた状態で、回動軸81に固定されているので、駆動側部材82の段状係合部84に嵌りこむ係合部85は、特定の連結棒73a~jに繋がっているものに限られる。
【0095】
続いて
図22(c)、(d)の様に、駆動側部材82を実線の矢印の方向に回動させると、駆動側部材82の段状係合部84が係合部85と係合し、連結棒73a~jが引っ張られて移動する。その結果、特定の連結棒73a~jだけが移動して、当該連結棒73a~jに取り付けられた全ての作用部材72の歯車の歯74が、ラック77a~fと係合する。
その他の動作は、前記分割器63と同じである。
【0096】
(分割器の変形例3)
図23に示す分割器87は、一時収容部材50と、開口形成装置90によって構成されている。一時収容部材50は、第1実施形態のものと同じ構造であり、枡部30には底がなく、枡部30自体は、常時開放状態である。
開口形成装置90は、開口特定部91と、開閉部92及び開閉機構部94を有している。
開口特定部91は、引き出し側部材93と巻き取り側部材95及びベルト96をそれぞれ6個ずつ有している。
引き出し側部材93は、図示しない支持軸に引き出しプーリ121が複数個、直列に配されたものである。引き出しプーリ121は、モータが内蔵されている。
巻き取り側部材95は、図示しない支持軸に巻き取りプーリ122が複数個、直列に配されたものである。巻き取りプーリ122にはゼンマイが内蔵されており、常時、巻き取り側に回転するように付勢されている。
巻き取りプーリ122には、ベルト96が巻回されており、当該ベルト96の一端が引き出しプーリ121に接続されている。
そのため、引き出しプーリ121を回転すると、巻き取りプーリ122に巻き付けられているベルト96が繰り出される。
各ベルト96には、それぞれ一か所に開口97が設けられている。そのため引き出しプーリ121の回転数に応じて、開口97の位置が変わる。
【0097】
開閉部92は、一時収容部材50の枡部30の縦列に対応して11個の揺動扉98を有している。各揺動扉98には、操作片110が突出している。
【0098】
開閉機構部94は、ガイド部材111と、当該ガイド部材111によって上下方向にのみ移動可能に規制された昇降部材112を有している。
昇降部材112は、長孔113を有し、当該長孔113に、揺動扉98の操作片110が係合している。
また図示しないモータによって回転する回転板115を有し、当該回転板115に設けられた係合片116も、昇降部材112の長孔113と係合している。
回転板115は、常時、係合片116が上部の位置にある状態で停止している。その結果、昇降部材112は、上部の位置にあり、全ての開閉部92は、枡部30の底を封鎖し得る位置にある。
回転板115を回転し、係合片116を下部側に移動させることにより、昇降部材112が下部側に移動し、全ての開閉部92が解放状態となる。
【0099】
本実施形態の分割器87では、いずれかの引き出しプーリ121を駆動して、開放しようとする枡部30の下部にベルト96の開口97を移動させる。
その後、
図23(c)の様に、回転板115を回転し、全ての開閉部92を解放状態とする。その結果、下部にベルト96の開口97が移動している枡部30のみが、実質的に開放状態となり、当該枡部30内の薬剤が落下する。
【0100】
(分割器の変形例4)
分割器の構造は任意であり、
図24に示す公知の一時収容部材117の様に、各枡部30のそれぞれの下部に、開閉扉123を有するものを使用してもよい。
この構造の一時収容部材117は、清掃するために、定期的に薬剤包装装置から取り外され、再度薬剤包装装置に装着される。
ここで、各枡部30の下部に、開閉扉123を有する一時収容部材117は、薬剤包装装置に装着する際に、開閉扉123が開かないように、押さえておかなければならず、装着するのに熟練を要する。
【0101】
本態様の一時収容部材117は、この問題を解決するものである。
本態様の一時収容部材117は、本体部の底面に閉止板挿入ガイド118が設けられており、本体部の底面に閉止板120が装着されている。
閉止板120は、閉止板挿入ガイド118に沿って挿入され、各枡部30の下部の開閉扉123を押さえて閉止状態とすることができる。
本態様の一時収容部材117は、閉止板120を装着した状態で、薬剤包装装置に装着される。
一時収容部材117は、手撒き部材102から各枡部30に薬剤が投入された後、集合ホッパー側に移動する。
ここで、一時収容部材117の移動経路上に、閉止板120の移動を阻止する部材があり、一時収容部材117の本体部分だけが、集合ホッパー側に移動し、閉止板120は、その場に残る。
【0102】
(分包帯のソータ装置)
薬剤包装装置から薬剤包装が帯状に繋がって排出される従来技術においては、各患者の薬剤包装や、各施設に搬送すべき薬剤包装が、分包帯状に繋がって排出される。例えば、患者aが21日間に服用する薬剤が連続的に繋がった状態で排出され、これに続いて患者bが21日間に服用する薬剤が繋がった状態で排出される。
多くの場合、薬剤包装装置の排出部の下にバスケットが置かれ、当該バスケットに分包帯が落とされる。
従来技術の薬剤包装装置では、患者a用の分包帯と、続く患者b用の分包帯が続いて排出部から排出される。実際にはより多人数の分包帯が排出され、多数の分包帯が同じバスケットに入れ混じる。
そのため、作業者は、分包帯を整理する必要がある。しかしながら、分包帯を整理する作業は面倒であり改良が望まれていた。
【0103】
この課題を解決するための方策として、
図25の様な、ソータ装置130を設けることが推奨される。
ソータ装置130は、複数のガイド部132、133を有している。本実施形態では、ガイド部132、133が2個あるが、ガイド部132、133の数は任意である。また各ガイド部132、133には、図示しない包装体保持手段が設けられている。包装体保持手段は、包装体の一部を挟んで保持するものである。
【0104】
ソータ装置130は、
図25に示す様に、薬剤包装装置の薬剤包装排出口131の近傍に設置されるものであり、図示しない昇降手段によって昇降する。
【0105】
ソータ装置130によって、包装帯を仕分ける際には、
図25(b)の様に、下部側の第1ガイド部132を薬剤包装排出口131の位置に移動させる。
例えば、患者a用の薬剤包装が、薬剤包装排出口131から排出されると、当該患者a用の包装帯138が第1ガイド部132と接触した状態で垂れ下がる。
患者a用の薬剤が全て包装されると、薬剤包装装置内で包装帯138が切断され、包装体保持手段によって包装帯138の端部が、第1ガイド部132に保持される。
【0106】
続いて
図25(c)の様に、ソータ装置130を下降させ、上部側の第2ガイド部133を薬剤包装排出口131の位置に移動させる。そして患者b用の薬剤包装が、薬剤包装排出口131から排出されると、前記と同様に、患者b用の包装帯139が第2ガイド部133と接触した状態で垂れ下がり、包装帯139が切断され、包装体保持手段によって包装帯139の端部が、第2ガイド部133に保持される。
【0107】
本実施形態では、ガイド部132、133が2個であるから、続く患者c用の包装帯は、そのまま薬剤包装排出口131から排出されることとなる。
【0108】
(包装紙のロス対策)
例えば
図26の様なレイアウトの薬剤包装部6を採用する場合、包装帯が切り替わる際に、包装紙143の一部に廃棄しなければならない領域が発生する場合がある。
図26に示す薬剤包装部6は、ホッパ135の上流側に、プリンタ136があり、ホッパ135の下流側に、ヒータローラ137がある。
薬剤包装部6では、プリンタ136で包装紙143に必要な印字をしたのち、ホッパ135から薬剤が包装紙143に薬剤が供給される。この状態で、包装紙143が下流側に移動し、ヒータローラ137で個別の袋に成型される。
【0109】
例えば患者aの21日間に服用する薬剤が、連続的に排出され、これに続いて患者bが21日間に服用する薬剤が排出される場合を想定すると、ホッパ135から患者a用の最後の薬剤が包装紙143に供給され、続いて患者b用の最初の薬剤が包装紙143に供給されるので、包装紙143に対して連続的に薬剤が供給され、包装紙143の無駄は発生しない。
【0110】
これに対して、例えば患者aの21日間に服用する薬剤が、連続的に排出された後、ホッパ135からの薬剤供給が途絶えると、包装紙143の無駄が生じる。
即ち、患者a用の薬剤が包装紙143に供給されると、当該包装紙143をヒータローラ137の位置まで移動させて袋状に成型されるが、包装紙143をヒータローラ137の位置まで移動させる際に、後続の包装紙143が引っ張られてホッパ135の下部や、プリンタ136の位置に移動する。
しかしながら、ホッパ135に到達した包装紙143には、薬剤が供給されない。またプリンタ136の位置に到達した包装紙143には、何も印字されない。そのため、プリンタ136からヒータローラ137までの領域の包装紙143が無駄になってしまう。
【0111】
この課題を解決するための方策として、一連の薬剤包装が終了し、次の薬剤包装を行う情報が入力されていない場合には、最後またはその近傍の薬剤包装を停止し、一定の時間、次の処方が薬剤包装装置に送られてくるのを待つ。
一定時間内に、次の処理すべき処方が送られてきた場合には、薬剤包装を再開する。例えば、患者a用の処方に続いて、患者b用の処方を処理すべき事態となった場合には、残っていた患者a用の薬剤包装を再開し、これに引き続いて患者b用の薬剤包装を実施する。
一定時間内に、次の処理すべき処方が送られて来なかった場合には、残っていた患者a用の薬剤包装を再開し、患者a用の薬剤包装を完結させる。
【0112】
前記した投薬カレンダーは、カレンダーに薬剤を収容する薬剤収容部141を設けたものである。
代表的な投薬カレンダー140は、
図27(a)の様に、日付けの下方に、それぞれ4個の薬剤収容部が141が並べられている。4個の薬剤収容部141は、それぞれ服用のタイミング(用法)に対応するものであり、例えば「朝」「昼」「夜」「寝る前」と表示されている。
そして投薬カレンダー(お薬カレンダー)140の薬剤収容部141に、服用のタイミングに対応した薬剤を収容しておく。服用のタイミングが到来すると、該当する薬剤収容部141から薬剤を取り出して服用する。
【0113】
一般的に、薬剤収容部141は、ポケット状である。そのため、薬剤収容部141の底にごみ145が溜まることがある。また薬剤収容部141の底は、角ばっているものが多く、隅の部分のごみを除去することが困難な場合がある。
この課題を解決するための方策として、
図27(b)の様な清掃具150を使用することが推奨される。
清掃具150は、真空掃除機の先端に取り付けるアタッチメントである。清掃具150は、外観形状が直方体である。清掃具150の正面壁及び裏面壁は、幅が広く、側面壁は、幅が狭い。
清掃具150の内部は、中空であり、先端側の角の部分に開口152がある。
また清掃具150の正面壁と裏面壁及び底面壁には、ブラシ151が取り付けられている。ブラシ151は、面状であって薄く、図示しない接着手段により、清掃具150の本体部分に取り付けられている。
【0114】
清掃具150は、図示しない真空掃除機に取り付けられる。そして
図27(c)の様に、清掃具150を投薬カレンダー140の薬剤収容部141に挿入し、薬剤収容部141内で、清掃具150を出し入れ方向に動かす。
その結果、ブラシ151で薬剤収容部141の内面がこすられ、薬剤収容部141の内面に付着したごみやほこりが除去さる。また除去されたごみやほこりは、開口152から吸引される。特に本実施形態では、清掃具150の先端側の角の部分に開口152があるので、ごみが溜まりやすい薬剤収容部141の隅の部分もきれいに清掃することができる。
ブラシ151は、取り換え可能であることが望ましい。
【符号の説明】
【0115】
1:薬剤包装装置、6:薬剤包装部、10:手撒き装置(薬剤排出装置)、
11:表示装置、12:表示画面、15:手撒き部材、16:分割器(排出手段)、
18:模擬図表(案内手段)、20:凹部、22:指示灯(指示手段 案内手段)、
30:枡部、40:制御装置、50:一時収容部材、51:底構成部材、
55:全面閉止領域、56:開口可能領域、58:移動床部材、61:落下開口、
62:薬剤