IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-荷重センサ 図1
  • 特許-荷重センサ 図2
  • 特許-荷重センサ 図3
  • 特許-荷重センサ 図4
  • 特許-荷重センサ 図5
  • 特許-荷重センサ 図6
  • 特許-荷重センサ 図7
  • 特許-荷重センサ 図8
  • 特許-荷重センサ 図9
  • 特許-荷重センサ 図10
  • 特許-荷重センサ 図11
  • 特許-荷重センサ 図12
  • 特許-荷重センサ 図13
  • 特許-荷重センサ 図14
  • 特許-荷重センサ 図15
  • 特許-荷重センサ 図16
  • 特許-荷重センサ 図17
  • 特許-荷重センサ 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】荷重センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20241129BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G01L1/14 J
G01L5/00 101Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021553604
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2020040108
(87)【国際公開番号】W WO2021085380
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019196686
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】松本 玄
(72)【発明者】
【氏名】古屋 博之
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】浦上 進
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096901(WO,A1)
【文献】特開2002-340700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26
G01L 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重に応じて静電容量が変化する素子部と、
前記静電容量の変化を検出するために前記素子部から引き出される銅線と、
前記銅線を前記素子部に固定するための固定具と、を備え、
前記素子部は、前記静電容量の一方の極を構成する導電性の導電弾性体を含み、
前記固定具は、前記導電弾性体の弾性変形に応じて前記導電弾性体の表面に対し移動可能に、前記銅線を、前記導電弾性体の前記表面に押し付けて固定する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記固定具は、表面積の30%以上が前記導電弾性体に接触するように、前記銅線を、前記導電弾性体の前記表面に押し付けて固定する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷重センサにおいて、
前記固定具は、糸であり、
前記銅線は、前記導電弾性体の表面に載置された状態で前記糸により前記導電弾性体に縫い付けられている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の荷重センサにおいて、
前記固定具は、ハトメであり、
前記導電弾性体は、前記ハトメを通すための孔を有し、
前記ハトメの外周に前記銅線を沿わせつつ、前記孔に前記ハトメを通して、前記ハトメをかしめることにより、前記銅線が前記導電弾性体に接続されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記銅線は、前記導電弾性体の表面にループ状に沿わされた状態で、前記固定具により、前記導電弾性体の表面に固定されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記固定具は、導電性を有する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記銅線は、絶縁性の被覆部材で被覆された被覆付き銅線であって、前記導電弾性体に接続される接続部分において前記被覆部材が除去されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の荷重センサにおいて、
前記接続部分にはんだ付けがなされることにより前記被覆部材が除去されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項9】
請求項7または8に記載の荷重センサにおいて、
前記素子部が、複数設けられており、
前記複数の素子部からそれぞれ引き出された複数の前記銅線が束ねられている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項10】
荷重に応じて静電容量が変化する素子部と、
前記静電容量の変化を検出するために前記素子部から引き出される第1銅線と、
前記静電容量の変化を検出するために前記素子部から引き出され、誘電体で被覆された第2銅線と、
前記素子部を外部の電子回路に接続するための回路接続端子と、を備え、
前記素子部は、前記静電容量の一方の極を構成する導電性の導電弾性体を含み、
前記第1銅線は、前記導電弾性体に接続され、
前記第2銅線は、前記導電弾性体に接触した状態で前記素子部内に配置されて前記静電容量の他方の極を構成し、前記素子部から引き出された部分が、そのまま、前記回路接続端子に接続される、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の荷重センサにおいて、
前記素子部が、複数設けられており、
前記複数の素子部からそれぞれ引き出された複数の前記第2銅線が束ねられている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項12】
請求項10または11に記載の荷重センサにおいて、
第1方向に長い前記導電弾性体が、前記第1方向に垂直な第2方向に並んで複数配置され、
前記複数の導電弾性体に跨がる第2銅線が、前記第1方向に並んで複数配置され、
前記複数の第2銅線が、束ねられて、前記回路接続端子に接続されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項13】
請求項10ないし12の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記第2銅線は、前記導電弾性体の表面に対し相対移動可能に、前記荷重センサ内に留め具で留められている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項14】
請求項10ないし13の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記素子部から引き出された前記第2銅線を外部ノイズからシールドするためのシールド層を備える、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項15】
請求項14に記載の荷重センサにおいて、
前記導電弾性体が配置された基材を備え、
前記シールド層は、前記導電弾性体が配置された前記基材と同じ面に配置される、
ことを特徴とする荷重センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化に基づいて外部から付与される荷重を検出する荷重センサに関する。
【背景技術】
【0002】
荷重センサは、産業機器、ロボットおよび車両などの分野において、幅広く利用されている。近年、コンピュータによる制御技術の発展および意匠性の向上とともに、人型のロボットおよび自動車の内装品等のような自由曲面を多彩に使用した電子機器の開発が進んでいる。それに合わせて、各自由曲面に高性能な荷重センサを装着することが求められている。
【0003】
以下の特許文献1には、誘電性ゴム組成物と、誘電性ゴム組成物の上下に配置された一対の導電性ゴム組成物と、を備えるエラストマートランスデューサーが記載されている。このエラストマートランスデューサーでは、各導電性ゴム組成物に、導電性接着剤により銅電極が接着される。
【0004】
以下の特許文献2には、誘電層と、誘電層の表裏方向両側に配置される複数の電極ユニットと、を備える静電容量型センサが記載されている。この静電容量型センサでは、電極ユニットは、貫通孔を有する絶縁層と、絶縁層の表裏方向の一面に配置される電極層と、絶縁層の表裏方向の他面に配置され貫通孔を介して電極層と導通するジャンパー配線層と、を有し、ジャンパー配線層は、ゴムおよび導電性材料を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5278038号公報
【文献】国際公開第2017/022258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のような荷重センサでは、導電性ゴム組成物と銅電極との弾性が異なっているため、導電性ゴム組成物が伸縮すると、接着剤が剥離して、導電性ゴム組成物と銅電極とが接合しなくなる畏れがある。また、上記特許文献2のような荷重センサでは、ジャンパー配線層がゴムおよび導電性材料により構成されるため、電極層の伸縮には追従可能であるものの、ジャンパー配線層の抵抗値が高くなってしまう。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、荷重を検出するために素子部から引き出される配線自身の抵抗値を低くするとともに、素子部に対する配線の接続箇所における抵抗値が当該接続箇所に加わり得る外力によって変化することを抑制して、素子部と配線との接続の信頼性を高めることが可能な荷重センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、荷重センサに関する。本態様に係る荷重センサは、荷重に応じて静電容量が変化する素子部と、前記静電容量の変化を検出するために前記素子部から引き出される銅線と、前記銅線を前記素子部に固定するための固定具と、を備える。前記素子部は、前記静電容量の一方の極を構成する導電性の導電弾性体を含み、前記固定具は、前記導電弾性体の弾性変形に応じて前記導電弾性体の表面に対し移動可能に、前記銅線を、前記導電弾性体の前記表面に押し付けて固定する。
【0009】
本態様に係る荷重センサによれば、銅線は、導電弾性体の弾性変形に応じて導電弾性体に対し接触しつつ移動可能であるため、伸縮等により導電弾性体が弾性変形しても、導電弾性体との接続が維持される。また、導電弾性体に対する引き出しが銅線によって行われるため、引き出し用の配線の電気抵抗が高くなることがない。さらに、銅線が導電弾性体の表面に押し付けて固定されるため、銅線と導電弾性体との接続箇所に外力が加わったとしても、この外力により、当該接続箇所の抵抗値が変化することを抑制できる。よって、素子部から引き出される配線の抵抗値を低く抑えつつ、素子部に対する配線の接続箇所における抵抗値が外力により変化することを抑制でき、素子部と配線との接続の信頼性を高めることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、荷重センサに関する。本態様に係る荷重センサは、荷重に応じて静電容量が変化する素子部と、前記静電容量の変化を検出するために前記素子部から引き出される第1銅線と、前記静電容量の変化を検出するために前記素子部から引き出され、誘電体で被覆された第2銅線と、前記素子部を外部の電子回路に接続するための回路接続端子と、を備える。前記素子部は、前記静電容量の一方の極を構成する導電性の導電弾性体を含み、前記第1銅線は、前記導電弾性体に接続され、前記第2銅線は、前記導電弾性体に接触した状態で前記素子部内に配置されて前記静電容量の他方の極を構成し、前記素子部から引き出された部分が、そのまま、前記回路接続端子に接続される。
【0011】
本態様に係る荷重センサによれば、第2銅線が引き出し用の配線を兼ねているため、別途引き出し用の配線を付設する必要がない。また、第2銅線は導電弾性体に接触した状態であるため、導電弾性体が弾性変形した場合は、導電弾性体の表面に接触しながら、導電弾性体の表面に対して相対的に移動する。このため、伸縮等により導電弾性体が弾性変形しても、第2銅線と導電弾性体との接続が維持される。また、第2銅線が引き出し用の配線に兼用されているため、引き出し用の配線の電気抵抗が高くなることがない。よって、素子部から引き出される配線の抵抗値を低く抑えつつ、導電弾性体と配線との接続の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、荷重を検出するための素子部から引き出される配線の抵抗値を低くするとともに、素子部に対する配線の接続箇所における抵抗値が当該接続箇所に加わり得る外力によって変化することを抑制して、素子部と配線との接続の信頼性を高めることが可能な荷重センサを提供できる。
【0013】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)は、実施形態1に係る、基材および導電弾性体を模式的に示す斜視図である。図1(b)は、実施形態1に係る、被覆付き銅線、糸、配線固定基板および回路接続端子を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)、(b)は、実施形態1に係る、導電弾性体のY軸正側の端部、被覆付き銅線の接続部、および糸を模式的に示す斜視図である。図2(c)は、実施形態1に係る、接続部の中心を通るY-Z平面に平行な平面による切断面を模式的に示す側面図である。
図3図3(a)は、実施形態1に係る、下側の構造体の構成を模式的に示す斜視図である。図3(b)は、実施形態1に係る、組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
図4図4(a)、(b)は、実施形態1に係る、X軸負方向に見た場合の導電弾性体の上面に配置される被覆付き銅線を模式的に示す断面図である。
図5図5は、実施形態1に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサを模式的に示す平面図である。
図6図6(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1および比較例に係る、実験の構成を模式的に示す断面図である。図6(c)は、実施形態1および比較例に係る、外力と抵抗値との関係の実験結果を示すグラフである。
図7図7(a)、(b)は、実施形態1の変更例に係る、導電弾性体のY軸正側の端部、被覆付き銅線の接続部、およびハトメ模式的に示す斜視図である。図7(c)は、実施形態1の変更例に係る、接続部の中心を通るY-Z平面に平行な平面による切断面を模式的に示す側面図である。
図8図8(a)は、実施形態1の変更例に係る、導電弾性体のY軸正側の端部、被覆付き銅線の接続部、および糸を模式的に示す斜視図である。図8(b)、(c)は、実施形態1の変更例に係る、接続部の中心を通るY-Z平面に平行な平面による切断面を模式的に示す側面図である。
図9図9(a)は、実施形態2に係る、上側の構造体の構成を模式的に示す斜視図である。図9(b)は、実施形態2に係る、組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
図10図10(a)、(b)は、実施形態2に係る、X軸負方向に見た場合の導電弾性体の上面に配置される被覆付き銅線を模式的に示す断面図である。
図11図11(a)は、実施形態2の変更例に係る、接続部の中心を通るY-Z平面に平行な平面による切断面を模式的に示す側面図である。図11(b)は、実施形態2の変更例に係る、組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
図12図12(a)は、実施形態2の変更例に係る、接続部の中心を通るY-Z平面に平行な平面による切断面を模式的に示す側面図である。図12(b)は、実施形態2の変更例に係る、組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
図13図13(a)は、実施形態3に係る、シールド層、被覆付き銅線、および糸を模式的に示す斜視図である。図13(b)は、実施形態3に係る、下側の構造体の構成を模式的に示す斜視図である。
図14図14(a)は、実施形態3に係る、上側の構造体の構成を模式的に示す斜視図である。図14(b)は、実施形態3に係る、組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
図15図15(a)は、その他の変更例に係る、被覆付き銅線の構成を模式的に示す拡大図である。図15(b)は、その他の変更例に係る、被覆付き銅線の構成を模式的に示す断面図である。
図16図16(a)は、その他の変更例に係る、接続基板の構成を模式的に示す平面図である。図16(b)は、その他の変更例に係る、メイン基板の構成を模式的に示す平面図である。
図17図17(a)は、その他の変更例に係る、糸がミシン縫いにより縫い付けられた場合に、被覆付き銅線が糸により基材に固定される状態を模式的に示す斜視図である。図17(b)は、その他の変更例に係る、Y軸方向に延びる糸の位置で構造体をY-Z平面に平行な平面で切断したときの断面を模式的に示す側面図である。
図18図18(a)、(b)は、その他の変更例に係る、糸がミシン縫いにより縫い付けられた場合に、被覆付き銅線の接続部が糸により導電弾性体および基材に固定される状態を模式的に示す平面図である。図18(c)は、その他の変更例に係る、縫い目が全周にわたって設けられる場合の荷重センサの構成を模式的に示す斜視図である。
【0015】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、付与された荷重に応じて処理を行う管理システムや電子機器の荷重センサに適用可能である。
【0017】
管理システムとしては、たとえば、在庫管理システム、ドライバーモニタリングシステム、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムなどが挙げられる。
【0018】
在庫管理システムでは、たとえば、在庫棚に設けられた荷重センサにより、積載された在庫の荷重が検出され、在庫棚に存在する商品の種類と商品の数とが検出される。これにより、店舗、工場、倉庫などにおいて、効率よく在庫を管理できるとともに省人化を実現できる。また、冷蔵庫内に設けられた荷重センサにより、冷蔵庫内の食品の荷重が検出され、冷蔵庫内の食品の種類と食品の数や量とが検出される。これにより、冷蔵庫内の食品を用いた献立を自動的に提案できる。
【0019】
ドライバーモニタリングシステムでは、たとえば、操舵装置に設けられた荷重センサにより、ドライバーの操舵装置に対する荷重分布(たとえば、把持力、把持位置、踏力)がモニタリングされる。また、車載シートに設けられた荷重センサにより、着座状態におけるドライバーの車載シートに対する荷重分布(たとえば、重心位置)がモニタリングされる。これにより、ドライバーの運転状態(眠気や心理状態など)をフィードバックすることができる。
【0020】
コーチング管理システムでは、たとえば、シューズの底に設けられた荷重センサにより、足裏の荷重分布がモニタリングされる。これにより、適正な歩行状態や走行状態へ矯正または誘導することができる。
【0021】
セキュリティー管理システムでは、たとえば、床に設けられた荷重センサにより、人が通過する際に、荷重分布が検出され、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどが検出される。これにより、これらの検出情報をデータと照合することにより、通過した人物を特定することが可能となる。
【0022】
介護・育児管理システムでは、たとえば、寝具や便座に設けられた荷重センサにより、人体の寝具および便座に対する荷重分布がモニタリングされる。これにより、寝具や便座の位置において、人がどのような行動を取ろうとしているかを推定し、転倒や転落を防止することができる。
【0023】
電子機器としては、たとえば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー、PCキーボード、ゲームコントローラー、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、タッチパネル、電子ペン、ペンライト、光る衣服、楽器などが挙げられる。電子機器では、ユーザーからの入力を受け付ける入力部に荷重センサが設けられる。
【0024】
以下の実施形態は、上記のような管理システムや電子機器の荷重センサにおいて典型的に設けられる荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される場合もある。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。
【0026】
<実施形態1>
図1(a)~図3(b)を参照して、実施形態1の荷重センサ1の組み立て手順について説明する。
【0027】
図1(a)は、基材11と、基材11の上面に設置された3つの導電弾性体12とを模式的に示す斜視図である。
【0028】
基材11は、弾性を有する絶縁性の部材である。基材11はX-Y平面に平行な平板形状を有する。基材11は、非導電性を有する樹脂材料または非導電性を有するゴム材料から構成される。基材11に用いられる樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材11に用いられるゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0029】
導電弾性体12は、基材11の上面(Z軸正側の面)に接着剤等により設置される。図1(a)では、基材11の上面に、3つの導電弾性体12が設置される。導電弾性体12は、弾性を有する導電性の部材である。各導電弾性体12は、基材11の上面においてY軸方向に長い帯状の形状を有しており、互いに離間して設置されている。導電弾性体12は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
【0030】
導電弾性体12に用いられる樹脂材料は、上述した基材11に用いられる樹脂材料と同様、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(たとえば、PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。導電弾性体12に用いられるゴム材料は、上述した基材11に用いられるゴム材料と同様、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0031】
導電弾性体12に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In(酸化インジウム(III))、およびSnO(酸化スズ(IV))等の金属材料や、PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる複合物)等の導電性高分子材料や、金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
【0032】
図1(b)は、図1(a)の構造体に設置された、3つの被覆付き銅線13と、各被覆付き銅線13に設けられた糸14と、配線固定基材15と、回路接続端子16とを模式的に示す斜視図である。
【0033】
被覆付き銅線13は、一対の被覆付き銅線がY軸負側の接続部13aで繋がった形状を有している。被覆付き銅線13は、銅線と、銅線を被覆する絶縁性の被覆部材とにより構成される。被覆付き銅線13の被覆部材は、たとえばポリウレタンである。被覆付き銅線13の一方の端部である接続部13aからは、被覆部材が除去されている。たとえば、接続部13aの被覆部材は、接続部13aにはんだ付けがなされることにより除去される。すなわち、溶融した高温のはんだ槽に接続部13aが漬けられることにより、熱により被覆部材が溶融除去されて、接続部13aが露出し、露出した接続部13aにはんだが付着する。3つの被覆付き銅線13は、それぞれ、3つの導電弾性体12のY軸正側の端部付近において、糸14により設置される。
【0034】
図2(a)、(b)は、導電弾性体12のY軸正側の端部、被覆付き銅線13の接続部13a、および糸を模式的に示す斜視図である。
【0035】
被覆付き銅線13の接続部13aは、上述したように、被覆部材が除去されており内部の銅線が露出した状態となっている。被覆付き銅線13の接続部13aは、円形状に所定回数(たとえば1回)周回している。糸14は、導電性を有する材料により構成され、たとえば、繊維とその中に分散した導電性の金属材料から構成される。糸14に用いられる導電性の金属材料は、たとえば銀である。接続部13aの直径は約3mmであり、導電弾性体12のX軸方向の幅は約10mmである。
【0036】
組み立ての際には、図2(a)に示すように、接続部13aが、導電弾性体12のY軸正側の端部付近に上から(Z軸負方向に)押し当てられる。そして、図2(b)に示すように、接続部13aが、4つの糸14によって導電弾性体12に固定される。円形状に周回する接続部13aのX軸正側、X軸負側、Y軸正側およびY軸負側の4箇所に対して、4つの糸14が設置される。ここでは、円周方向に90°の間隔で、接続部13aが糸14で固定される。
【0037】
図2(c)は、接続部13aの中心を通るY-Z平面に平行な平面で図1(b)の構成を切断したときの断面を模式的に示す側面図である。図2(c)では、便宜上、X軸正側を通る被覆付き銅線13とX軸負側を通る被覆付き銅線13とがZ軸方向にずらして図示されている。
【0038】
糸14は、接続部13aにおいて露出した銅線を内側と外側の間で跨ぐように、かつ、導電弾性体12と基材11を貫通するようにして、刺繍縫いにより導電弾性体12と基材11に留められる。これにより、糸14は、接続部13aが導電弾性体12の表面に対して移動可能となるよう、白抜き矢印で示すように、接続部13aを導電弾性体12の表面に押し付けて固定する。
【0039】
図1(b)に戻り、基材11のY軸正側には、配線固定基材15と回路接続端子16が設置される。被覆付き銅線13の被覆部13bは、配線固定基材15の上面に、糸15aにより束ねられた状態で接続される。被覆部13bは、被覆付き銅線13において被覆部材が設けられている部分である。すなわち、上記はんだ付けにより被覆付き銅線13の被覆部材が除去されずに残っている部分が、被覆部13bである。
【0040】
ここで、「束ねられた状態」とは、隙間が抑制された状態で配線が密集するように位置を規制された状態のことである。以下の説明においても、「束ねられた状態」とは、同様の意味である。
【0041】
図1(b)では、3つの糸15aが、それぞれ、3つの位置において、被覆部13bを配線固定基材15に接続している。すなわち、各導電弾性体12から引き出された被覆付き銅線13は、3箇所において束ねられて、配線固定基材15の上面に固定されている。複数の被覆付き銅線13を他の糸で縛って束ねた後、糸15aでこれら被覆付き銅線13を配線固定基材15に固定してもよい。
【0042】
被覆付き銅線13の接続部13aと反対側の端部は、回路接続端子16に接続される。その後、3つの導電弾性体12に垂直に交差するように、これら導電弾性体12の上面に、他の3つの被覆付き銅線17が配置される。
【0043】
図3(a)は、図1(b)に示す構造体に設置された、3つの被覆付き銅線17を模式的に示す斜視図である。
【0044】
1つの被覆付き銅線17は、X軸正側の端部において折れ曲がっている。すなわち、被覆付き銅線17は、一対の被覆付き銅線がX軸正側の端部で繋がった形状を有している。3つの導電弾性体12の上面に、被覆付き銅線13が重ねて配置される。図3(a)では、3つの被覆付き銅線17が3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置される。
【0045】
被覆付き銅線17は、導電性の線材と、当該線材の表面を被覆する誘電体とからなる。3つの被覆付き銅線17は、導電弾性体12の長手方向(Y軸方向)に沿って並んで配置されている。被覆付き銅線17は、3つの導電弾性体12に跨がるよう、X軸方向に延びて配置される。被覆付き銅線17のX軸負側の端部は、基材11の上面に沿ってY軸正方向に折れ曲がっており、回路接続端子16に接続されている。すなわち、導電弾性体12に重なる領域から引き出された被覆付き銅線17の部分は、他の配線に接続されることなく、そのまま回路接続端子16に接続されている。被覆付き銅線17の構成については、追って図4(a)、(b)を参照して説明する。
【0046】
3つの被覆付き銅線17が配置された後、各被覆付き銅線17は、導電弾性体12の表面に対して相対移動可能に、糸11aで基材11に接続される。図3(a)では、12個の糸11aが、導電弾性体12と被覆付き銅線17とが重なる位置以外の位置において、被覆付き銅線17を基材11に接続している。
【0047】
続いて、基材11のX軸負側の端部付近においてY軸方向の延びる被覆付き銅線17が、基材11に、糸11bにより束ねられた状態で接続される。図3(a)では、3つの糸11bが、それぞれ、3つの位置において、被覆付き銅線17を基材11に接続している。3つの糸11bは、こうして、図3(a)に示す構造体1aが組み立てられる。
【0048】
続いて、図3(a)に示した構造体1aの上方から、図3(b)に示すように、基材20が設置される。基材20は、絶縁性の部材である。基材20は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリイミド等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材20は、X-Y平面に平行な平板形状を有する。基材20の四隅が、基材11に対してシリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、基材20が構造体1aに固定される。こうして、図3(b)に示すように、荷重センサ1が完成する。
【0049】
図4(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線17周辺を模式的に示す断面図である。図4(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、図4(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
【0050】
図4(a)に示すように、被覆付き銅線17は、銅線17aと、銅線17aを被覆する誘電体17bと、により構成される。銅線17aの直径は、たとえば、約60μmである。誘電体17bは、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。誘電体17bは、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料でもよく、AlおよびTaなどからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料でもよい。
【0051】
図4(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、導電弾性体12と被覆付き銅線17との間にかかる力、および、基材20と被覆付き銅線17との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、図4(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材20の上面に対して下方向に荷重が加えられると、被覆付き銅線17によって導電弾性体12が変形する。なお、基材11の下面または基材20の上面が静止物体に載置されて、他方の基材に対してのみ荷重が加えられた場合も、反作用により静止物体側から同様に荷重を受けることになる。
【0052】
図4(b)に示すように、荷重が加えられると、被覆付き銅線17は、導電弾性体12に包まれるように導電弾性体12に近付けられ、被覆付き銅線17と導電弾性体12との間の接触面積が増加する。これにより、被覆付き銅線17内の銅線17aと導電弾性体12との間の静電容量が変化し、この領域に対応する2つのライン間の静電容量が検出され、この領域にかかる荷重が算出される。
【0053】
図5は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1を模式的に示す平面図である。図5では、便宜上、3つの導電弾性体12の近傍のみが図示され、糸14、11a、11b、配線固定基材15、回路接続端子16、および基材20の図示が省略されている。
【0054】
図5に示すように、3つの導電弾性体12と3つの被覆付き銅線17とが交わる位置に、荷重に応じて静電容量が変化する素子部A11、A12、A13、A21、A22、A23、A31、A32、A33が形成される。各素子部は、導電弾性体12と被覆付き銅線17を含み、導電弾性体12は、静電容量の一方の極(たとえば陽極)を構成し、被覆付き銅線17は、静電容量の他方の極(たとえば陰極)を構成する。各素子部に対してZ軸方向に荷重が加わると、荷重により被覆付き銅線17が導電弾性体12に包み込まれる。これにより、導電弾性体12と被覆付き銅線17との間の接触面積が変化し、当該導電弾性体12と当該被覆付き銅線17との間の静電容量が変化する。
【0055】
回路接続端子16には、上述したように、3つの被覆付き銅線13および3つの被覆付き銅線17が接続されている。回路接続端子16は、上記の各素子部を外部の電子回路に接続するための端子である。荷重センサ1が用いられる場合、回路接続端子16が外部の電子回路に接続される。
【0056】
図5に示すように、3つの導電弾性体12から引き出された被覆付き銅線13をラインL11、L12、L13と称し、3つの被覆付き銅線17をラインL21、L22、L23と称する。ラインL21がラインL11、L12、L13に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A11、A12、A13であり、ラインL22がラインL11、L12、L13に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A21、A22、A23であり、ラインL23がラインL11、L12、L13に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A31、A32、A33である。
【0057】
素子部A11に対して荷重が加えられると、素子部A11において導電弾性体12と被覆付き銅線17との接触面積が増加する。したがって、ラインL11とラインL21との間の静電容量を検出することにより、素子部A11において加えられた荷重を算出することができる。同様に、他の素子部においても、当該他の素子部において交わる2つのライン間の静電容量を検出することにより、当該他の素子部において加えられた荷重を算出することができる。
【0058】
上述したように、3つのラインL11、L12、L13および3つのラインL21、L22、L23は、回路接続端子16に接続されている。回路接続端子16に接続された外部の装置により、3つの導電弾性体12と3つの被覆付き銅線17との組み合わせに応じた静電容量を検出することが可能になる。
【0059】
たとえば、3つのラインL11、L12、L13の何れか1つを選択的にグランドに接続し、グランドに接続したラインと、3つのラインL21、L22、L23の何れか1つとの間の電圧を検出することにより、当該2つのラインが接続された導電弾性体12および被覆付き銅線17とが交差する素子部の静電容量を検出できる。具体的には、素子部に所定の電荷が貯まるまでの時間に基づいて、当該素子部の静電容量が検出される。この静電容量に基づいて、当該素子部に付与された荷重が算出される。
【0060】
次に、発明者らは、図2(c)のように、被覆付き銅線13の接続部13aを糸14により導電弾性体12に押し付けて固定することによる効果を検証する実験を行った。
【0061】
本実験において、発明者らは、図6(a)、(b)に示すように、図2(b)に示す接続部13aの近傍のみに対応する構成を用いた。図6(a)、(b)には、便宜上、周回する接続部13aのうちY軸正側部分が示されている。図6(a)、(b)において、上記荷重センサ1と同様の構成には、同じ符号が付されている。
【0062】
図6(a)は、糸14によって、あらかじめ被覆付き銅線13の接続部13aが導電弾性体12に押し付けられた構成(実施形態1)を模式的に示す断面図である。図6(a)の実施形態1の構成では、接続部13aの表面積の30%以上が導電弾性体12に接触するように、接続部13aが、導電弾性体12の表面に押し付けて固定されている。これにより、図6(a)に示すように、接続部13aが導電弾性体12に沈み込む。他方、図6(b)は、被覆付き銅線13の接続部13aが導電弾性体12に固定されず、導電弾性体12の表面に載置された構成(比較例)を模式的に示す断面図である。
【0063】
発明者らは、図6(a)、(b)の構成において、接続部13aの位置に、上側の基材20から外力を加えて、接続部13aと導電弾性体12との間の抵抗値を計測した。
【0064】
図6(c)は、図6(a)、(b)に示す構成(実施形態1/比較例)に対する外力と抵抗値との関係の実験結果を示すグラフである。横軸は、接続部13aに対して加えた外力の大きさを示しており、縦軸は、接続部13aと導電弾性体12との間の抵抗値を示している。
【0065】
比較例の場合、接続部13aに付与される外力が4N以下の範囲では、抵抗値の変動が非常に大きく、荷重が4Nを超えてくると、抵抗値の変動は小さくなる。比較例の場合、接続部13aに付与される外力が小さいと、接続部13aと導電弾性体12との間の接触が不安定であるため、抵抗値の変動が非常に大きくなってしまう。他方、比較例の構成において、接続部13aに付与される外力が大きくなると、接続部13aが導電弾性体12に沈み込み、接続部13aと導電弾性体12との間の接触が安定するため、抵抗値の変動が小さくなる。このように、比較例の場合、接続部13aに付与される外力の大きさに応じて抵抗値が大きく変化してしまう。
【0066】
これに対し、実施形態1の場合、接続部13aに付与される外力の大小にかかわらず抵抗値の変動は小さい。実施形態1の場合、接続部13aに付与される外力がゼロである状態においても、糸14によって接続部13aが導電弾性体12に押し付けられ、図6(a)に示したように、接続部13aの表面積の30%以上が導電弾性体12と接触する。このため、外力の大小によらず、常に接続部13aが導電弾性体12に沈み込んでおり、接続部13aと導電弾性体12との間の接触が安定した状態にあるため、抵抗値の変動が小さく抑えられる。
【0067】
上述したように、荷重センサ1では、素子部に所定の電荷が貯まるまでの時間に基づいて、当該素子部の静電容量が検出される。しかしながら、荷重センサ1が設置される際には、接続部13aに対応する基材20の位置に、荷重センサ1以外の他の機構や他の部材等が当接して、接続部13aに外力が加わることが起こり得る。このような場合に、上記比較例のように、外力に対する接続部13aと導電弾性体12との間の抵抗値の変動が大きいと、外力の大きさに応じて、素子部に所定の電荷が貯まるまでの時間が意図せず変動してしまう。この場合、素子部の静電容量を適正に検出することができないため、当該素子部にかかる荷重を適正に算出できない。
【0068】
これに対し、実施形態1の構成によれば、接続部13aに外力が加わったとしても、外力の大きさに対する接続部13aと導電弾性体12との間の抵抗値の変動が小さく抑制されるため、素子部に所定の電荷が貯まるまでの意図しない時間変動が抑制される。よって、実施形態1の構成によれば、素子部の静電容量を適正に検出できるため、当該素子部にかかる荷重を適正に算出できる。
【0069】
<実施形態1の効果>
以上、実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
【0070】
被覆付き銅線13は、導電弾性体12の弾性変形に応じて導電弾性体12に対し接触しつつ移動可能であるため、伸縮等により導電弾性体12が弾性変形しても、導電弾性体12との接続が維持される。また、導電弾性体12に対する引き出しが被覆付き銅線13によって行われるため、引き出し用の配線の電気抵抗が高くなることがない。さらに、被覆付き銅線13の接続部13aが導電弾性体12の表面に押し付けて固定されるため、被覆付き銅線13と導電弾性体12との接続箇所、すなわち、接続部13aの位置に外力が加わったとしても、この外力により、当該接続箇所の抵抗値、すなわち、接続部13aと導電弾性体12との間の抵抗値が変化することを抑制できる。よって、図5に示した各素子部A11~A13、A21~A23、A31~A33から引き出される配線の抵抗値を低く抑えつつ、素子部に対する配線(被覆付き銅線13)の接続箇所における抵抗値が外力により変化することを抑制でき、素子部と配線との接続の信頼性を高めることができる。
【0071】
被覆付き銅線13の接続部13aは、表面積の30%以上が導電弾性体12に接触するように、導電弾性体12の表面に押し付けて固定される。これにより、図6(c)に示したように、外力が変化したとしても、接続部13aと導電弾性体12との間の抵抗値の変動が小さいため、素子部に所定の電荷が貯まるまでの意図しない時間変動が抑制される。よって、素子部の静電容量を適正に検出できるため、当該素子部にかかる荷重を適正に算出できる。なお、以下の実施形態および変更例においても、導電弾性体に接続される接続部は、表面積の30%以上が導電弾性体に接触するように、当該導電弾性体の表面に押し付けて固定されるのが好ましい。
【0072】
図2(a)~(c)に示したように、被覆付き銅線13は、導電弾性体12の表面に載置された状態で、糸14により導電弾性体12に縫い付けられている。これにより、導電弾性体12に対して糸14が付設される領域が極めて微少であるため、導電弾性体12の本来の特性を維持しつつ、被覆付き銅線13を導電弾性体12に接続できる。
【0073】
図2(b)に示したように、被覆付き銅線13の接続部13aは、導電弾性体12の表面にループ状に沿わされた状態で、糸14により導電弾性体12の表面に固定されている。これにより、被覆付き銅線13と導電弾性体12の表面との間の接触面積を高めることができる。よって、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触抵抗を低下させることができ、静電容量の変化をより精度よく検出できる。
【0074】
糸14は、繊維の表面に導電性の金属材料が付着されることにより構成される。これにより、糸14は導電性を有することになるため、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触抵抗を低くすることができる。よって、静電容量の変化をより精度よく検出できる。
【0075】
被覆付き銅線13は、絶縁性の被覆部材で被覆された被覆付き銅線であり、被覆付き銅線13の接続部13aにおいて、被覆部材が除去されている。これにより、各素子部から引き出された被覆付き銅線13が、導電性の他の材料に接触しても、絶縁性の被覆部材により被覆付き銅線13と他の材料とが電気的に絶縁される。このため、荷重センサ1の設置時等において、被覆付き銅線13の取り回しを簡易に行うことができる。
【0076】
被覆付き銅線13の接続部13aにはんだ付けがなされることにより、接続部13aから被覆部材が除去される。このように、はんだ付けを用いると、被覆部材を円滑に除去できる。
【0077】
図5に示したように、荷重センサ1には、荷重に応じて静電容量が変化する複数の素子部A11~A11~A13、A21~A23、A31~A33が設けられており、複数の素子部からそれぞれ引き出された複数の被覆付き銅線13が、束ねられた状態で配線固定基材15に固定されている。これにより、被覆付き銅線13をコンパクトに纏めることができ、また、被覆付き銅線13が占める容積を小さくすることができる。よって、被覆付き銅線13の取り回しを簡易に行うことができる。
【0078】
被覆付き銅線17が素子部からの引き出し用の配線を兼ねているため、別途引き出し用の配線を付設する必要がない。また、被覆付き銅線17は導電弾性体12に接触した状態であるため、導電弾性体12が弾性変形した場合は、導電弾性体12の表面に接触しながら、導電弾性体12の表面に対して相対的に移動する。このため、伸縮等により導電弾性体12が弾性変形しても、被覆付き銅線17と導電弾性体12との接続が維持される。また、被覆付き銅線17が引き出し用の配線に兼用されているため、引き出し用の配線の電気抵抗が高くなることがない。よって、素子部から引き出される配線の抵抗値を低く抑えつつ、導電弾性体12と配線との接続の信頼性を高めることができる。
【0079】
図5に示したように、荷重センサ1には、荷重に応じて静電容量が変化する複数の素子部A11~A11~A13、A21~A23、A31~A33が設けられており、複数の素子部からそれぞれ引き出された複数の被覆付き銅線17が、束ねられた状態で基材11に固定されている。これにより、被覆付き銅線17をコンパクトに纏めることができ、また、被覆付き銅線17が占める容積を小さくすることができる。よって、被覆付き銅線17の取り回しを簡易に行うことができる。
【0080】
Y軸方向に長い導電弾性体12が、X軸方向に並んで複数配置され、複数の導電弾性体12に跨がる被覆付き銅線17が、Y軸方向に並んで複数配置されている。これにより、図5に示したように、マトリクス状に複数の素子部A11~A11~A13、A21~A23、A31~A33を配置できる。
【0081】
被覆付き銅線17は、導電弾性体12の表面に対し相対移動可能に、荷重センサ1内の基材11に糸11aで留められている。これにより、伸縮等により導電弾性体12が弾性変形した場合、被覆付き銅線17を、導電弾性体12との間で相対移動させながら、荷重センサ1内における被覆付き銅線17の配置を所定位置に維持できる。
【0082】
<実施形態1の変更例>
上記実施形態1では、被覆付き銅線13の接続部13aは、糸14により導電弾性体12に接続されたが、接続部13aと導電弾性体12との接続手段は、これに限らない。
【0083】
図7(a)~(c)は、糸14に代えてハトメ21が用いられる変更例を示す図である。
【0084】
図7(a)に示すように、ハトメ21は、上下に貫通した孔を備える筒状部材である。ハトメ21は、導電性を有するアルミや銅により構成される。上側の端部21aおよび下側の端部21bには、いずれも内部の空洞と繋がる開口が形成されている。ハトメ21の高さ(Z軸方向の長さ)は、導電弾性体12の厚みと基材11の厚みとを合わせた厚みよりも僅かに長い。ハトメ21を用いる場合、ハトメ21を設置する位置に、導電弾性体12を上下方向に貫通する孔12aと、基材11を上下方向に貫通する孔11c(図7(c)参照)とが形成される。孔12a、11cの直径は、ハトメ21の外径と略同じである。
【0085】
図7(a)に示すように、組み立ての際には、ハトメ21の外周に接続部13aが沿わされ、ループ状の接続部13aの内側にハトメ21が挿入される。そして、ハトメ21が、導電弾性体12の孔12aおよび基材11の孔11cに通される。このとき、上側の端部21aが導電弾性体12の上面から僅かに上方向に突出し、下側の端部21bが基材11の下面から僅かに下方向に突出するよう、ハトメ21が、導電弾性体12および基材11に対して位置付けられる。
【0086】
この状態で、上側の端部21aが導電弾性体12の上面に対してかしめられ、下側の端部21bが基材11の下面に対してかしめられる。このとき、上側の端部21aは、図7(b)、(c)に示すように、外側に広がりつつ下方向に曲げられ、下側の端部21bは、図7(c)示すように、外側に広がりつつ上方向に曲げられる。これにより、ハトメ21は、接続部13aが導電弾性体12の表面に対して移動可能となるよう、白抜き矢印で示すように、接続部13aを導電弾性体12の表面に押し付けて固定する。こうして、実施形態1と同様、接続部13aが導電弾性体12に接続される。
【0087】
このようにハトメ21が用いられる場合も、上記実施形態1と同様、被覆付き銅線13は、導電弾性体12の弾性変形に応じて導電弾性体12に対し接触しつつ移動可能であるため、伸縮等により導電弾性体12が弾性変形しても、導電弾性体12との接続が維持される。よって、素子部と配線との接続の信頼性を高めることができる。また、ハトメ21が用いられる場合、糸14を縫い付ける場合に比べて、簡易に被覆付き銅線13を導電弾性体12に固定できる。
【0088】
また、上記実施形態1では、被覆付き銅線13の接続部13aは、円形状に周回するループ形状を有していたが、接続部13aの形状は、これに限らず、U字形状、矩形形状、渦巻き形状などでもよい。
【0089】
図8(a)は、接続部13aの形状がU字形状である変更例を示す図である。この変更例では、被覆付き銅線13の接続部13aは、U字形状になっている。この場合、3つの糸14により、接続部13aのX軸正側、X軸負側およびY軸負側の3箇所が導電弾性体12に留められる。この場合も、素子部と配線との接続の信頼性を高めることができる。ただし、図8(a)の場合、接続部13aと導電弾性体12との接触面積は、上記実施形態1に比べて小さくなる。したがって、接触面積の増加および接触抵抗の減少の観点では、上記実施形態1のように、接続部13aは円形状に周回するループ形状を有するのが好ましい。
【0090】
また、上記実施形態1では、被覆付き銅線13の接続部13aは、下側に位置する導電弾性体12および基材11にのみ固定されたが、上側に位置する基材20にも固定されてもよい。
【0091】
図8(b)は、糸14が用いられる場合に、糸14が上側の基材20にも固定される変更例を示す図である。
【0092】
図8(b)に示すように、本変更例の糸14は、接続部13aの内側と外側を通り、基材11、導電弾性体12および基材20を上下に貫通するように固定される。この場合、基材20が導電弾性体12に密着するように配置され、糸14が2つの基材11、20を互いに密接させる。これにより、糸14は、接続部13aが導電弾性体12の表面に対して移動可能となるよう、白抜き矢印で示すように、基材11、20を介して間接的に、接続部13aを導電弾性体12の表面に押し付けて固定する。こうして、接続部13aが、導電弾性体12に対して接続される。
【0093】
図8(c)は、ハトメ21が用いられる場合に、ハトメ21が上側の基材20にも固定される変更例を示す図である。
【0094】
図8(c)に示すように、本変更例のハトメ21の高さ(Z軸方向の長さ)は、基材11の下面から基材20の上面までの厚みよりも僅かに長い。そして、ハトメ21を設置する位置に、基材20を上下方向に貫通する孔20aと、導電弾性体12を上下方向に貫通する孔12aと、基材11を上下方向に貫通する孔11cとが形成される。孔20a、12a、11cの直径は、ハトメ21の外径と略同じである。
【0095】
この場合も、ハトメ21は、上側の端部21aが基材20の上面から僅かに上方向に突出し、下側の端部21bが基材11の下面から僅かに下方向に突出するよう位置付けられる。この状態で、上側の端部21aが基材20の上面に対してかしめられ、下側の端部21bが基材11の下面に対してかしめられる。
【0096】
そして、図8(b)と同様、ハトメ21は、接続部13aが導電弾性体12の表面に対して移動可能となるよう、白抜き矢印で示すように、基材11、20を介して間接的に、接続部13aを導電弾性体12の表面に押し付けて固定する。すなわち、接続部13aは、ハトメ21がかしめられることにより、上下から所定の押圧力を受けながら、基材11、20に挟まれて固定される。こうして、接続部13aが、導電弾性体12に対して接続される。
【0097】
<実施形態2>
実施形態1では、図3(a)に示す構造体1aの上面に対して基材20が設置されたが、実施形態2では、図3(a)に示す構造体1aの上面に対して、3つの導電弾性体32を有する他の構造体30が設置される。
【0098】
図9(a)は、構造体30の構成を模式的に示す斜視図である。
【0099】
構造体30は、基材31と、3つの導電弾性体32と、3つの被覆付き銅線33と、各被覆付き銅線33を導電弾性体32に固定するための複数の糸34と、を備える。基材31は、基材11と同じ材料により構成され、基材31の厚みは、基材11の厚みと同様である。基材11のZ軸負側の面には、基材11に設置された導電弾性体12と同様の導電弾性体32が設置される。3つの導電弾性体32は、構造体30を構造体1aに重ね合わせたときに、3つの導電弾性体12に重なるように配置される。導電弾性体32のY軸正側の端部付近には、被覆付き銅線33が接続される。被覆付き銅線33は、被覆付き銅線13と同様の構成であり、糸34は、糸14と同様の構成である。被覆付き銅線33の接続部33aは、糸14の場合と同様にして、4つの糸34によって導電弾性体32に接続される。こうして、図9(a)に示す構造体30が組み立てられる。
【0100】
続いて、図9(b)に示すように、図3(a)に示す構造体1aの上方から、図9(a)の構造体30が、上下反転した状態で設置される。基材31の四隅が、基材11に対してシリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、構造体30が基材11に固定される。このとき、被覆付き銅線33の被覆部33bは、被覆付き銅線13の被覆部13bと同様、配線固定基材15の上面に、糸15aにより束ねられた状態で固定される。この場合、被覆付き銅線33の被覆部33bと被覆付き銅線13の被覆部13bとが束ねられてもよい。被覆付き銅線33の接続部33aと反対側の端部は、回路接続端子16に接続される。こうして、図9(b)に示すように、実施形態2の荷重センサ1が完成する。
【0101】
図10(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線17周辺を模式的に示す断面図である。図10(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、図10(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
【0102】
図10(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、導電弾性体12と被覆付き銅線17との間にかかる力、および、被覆付き銅線17と導電弾性体32との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、図10(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材31の上面に対して下方向に荷重が加えられると、被覆付き銅線17によって、弾性を有する2つの導電弾性体12、32が変形する。
【0103】
図10(b)に示すように、荷重が加えられると、被覆付き銅線17は、2つの導電弾性体12、32に包まれるように2つの導電弾性体12、32に近付けられ、被覆付き銅線17と導電弾性体12との間の接触面積および被覆付き銅線17と導電弾性体32との間の接触面積が増加する。これにより、被覆付き銅線17内の銅線17aと導電弾性体12との間の静電容量および被覆付き銅線17内の銅線17aと導電弾性体32との間の静電容量が変化する。そして、2つの静電容量の和に基づいて、この領域にかかる荷重が算出される。
【0104】
<実施形態2の効果>
以上、実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果に加えて、以下の効果が奏される。
【0105】
図9(a)、(b)に示したように、構造体30は、導電弾性体32が被覆付き銅線17に重なるように、構造体1aの上側に配置される。そして、被覆付き銅線17内の銅線17aと導電弾性体12との間の静電容量と、被覆付き銅線17内の銅線17aと導電弾性体32との間の静電容量との和に基づいて、荷重が算出される。これにより、実施形態1と比較して静電容量が高められるため、荷重センサ1の感度を高めることができる。したがって、荷重センサ1による荷重の検出精度を高めることができる。また、被覆付き銅線17の上下が、それぞれ導電弾性体12、32によりシールドされるため、被覆付き銅線17の銅線17aに生じるノイズを抑制することができる。
【0106】
<実施形態2の変更例>
上記実施形態2では、構造体1a側の導電弾性体12および構造体30側の導電弾性体32から、それぞれ別々の被覆付き銅線13、33が引き出されたが、上下に重なる2つの導電弾性体12、32から共通の被覆付き銅線が引き出されてもよい。
【0107】
図11(a)は、上記実施形態2において、上下に重なる2つの導電弾性体12、32から共通の被覆付き銅線13が引き出され、糸14により被覆付き銅線13が固定される変更例を示す図である。
【0108】
図11(a)に示すように、この変更例では、導電弾性体12、32のY軸正側の端部付近において、図8(b)を参照して説明した変更例と同様、糸14が上下の部材を貫通するようにして縫い付けられている。これにより、被覆付き銅線13の接続部13aが、2つの導電弾性体12、32によって挟まれ、2つの導電弾性体12、32の表面に対して移動可能に、2つの導電弾性体12、32の表面に押し付けられて固定される。
【0109】
こうして、図11(b)に示すように、この変更例の荷重センサ1が完成する。この変更例では、基材31の上面側から見て、上下に重なる導電弾性体12、32に対応する3つの位置に、それぞれ4つの糸14が設けられ、4つの糸14により1つの被覆付き銅線13が固定される。
【0110】
図12(a)は、上記実施形態2において、上下に重なる2つの導電弾性体12、32から共通の被覆付き銅線13が引き出され、ハトメ21により被覆付き銅線13が固定される変更例を示す図である。
【0111】
図12(a)に示すように、この変更例では、導電弾性体12、32のY軸正側の端部付近において、図8(c)を参照して説明した変更例と同様、ハトメ21が、基材31の孔31a、導電弾性体32の孔32a、導電弾性体12の孔12a、および基材11の孔11cに通され、上下方向に各部材を貫通するように設置されている。これにより、被覆付き銅線13の接続部13aが、2つの導電弾性体12、32によって挟まれ、2つの導電弾性体12、32の表面に対して移動可能に、2つの導電弾性体12、32の表面に押し付けられて固定される。
【0112】
こうして、図12(b)に示すように、この変更例の荷重センサ1が完成する。この変更例では、基材31の上面側から見て、上下に重なる導電弾性体12、32に対応する3つの位置に、それぞれハトメ21が設けられ、1つのハトメ21により1つの被覆付き銅線13が固定される。
【0113】
また、上記実施形態2では、導電弾性体12および導電弾性体32にそれぞれ接続された2つの被覆付き銅線13、33は、いずれも糸により固定されたが、これに限らず、いずれもハトメにより固定されてもよく、いずれか一方が糸により固定され、他方がハトメにより固定されてもよい。
【0114】
<実施形態3>
実施形態1、2では、図3(a)に示したように、導電弾性体12上に設置された被覆付き銅線17のX軸負側の端部は、糸11bによって、基材11上に直接固定されたが、実施形態3では、被覆付き銅線17と基材11との間にシールド層41が設置される。
【0115】
図13(a)は、図1(b)の構造体に設置された、シールド層41と、被覆付き銅線42と、糸43とを模式的に示す斜視図である。図13(a)の基材11は、図1(b)に比べてX軸方向に長くなるよう構成されている。
【0116】
シールド層41は、導電弾性体12と同様の材料により構成され、シールド層41の厚みは、導電弾性体12の厚みと同様である。シールド層41は、X-Y平面において、左端の導電弾性体12の左側に位置する被覆付き銅線17をほぼ含み得る大きさに構成される。シールド層41は、基材11の上面に接着剤等により設置される。被覆付き銅線42は、シールド層41のY軸正側の端部付近に、糸43により設置される。被覆付き銅線42は、被覆付き銅線13と同様の構成であり、糸43は、糸14と同様の構成である。被覆付き銅線42の接続部42aは、被覆付き銅線13の接続部13aと同様に、糸43によりシールド層41に接続される。被覆付き銅線42の接続部42aと反対側の端部は、回路接続端子16に接続される。
【0117】
その後、図13(a)の構造体に対して、実施形態1と同様、3つの被覆付き銅線17と、糸11a、11bとが設置される。基材11のX軸負側の端部付近においてY軸方向の延びる被覆付き銅線17は、シールド層41の上面に、糸11bにより束ねられた状態で接続される。こうして、図13(b)に示すように、実施形態2の構造体1aが組み立てられる。
【0118】
図14(a)は、図9(a)の構造体に設置された、シールド層51と、被覆付き銅線52と、糸53とを模式的に示す斜視図である。図14(a)の基材31は、図9(a)に比べてX軸方向に長くなるよう構成されている。
【0119】
シールド層51は、導電弾性体32と同様の材料により構成され、シールド層51の厚みは、導電弾性体32の厚みと同様である。シールド層51は、X-Y平面において、図13(a)のシールド層41と同様の大きさに構成される。シールド層51は、基材31のZ軸負側の面に接着剤等により設置される。被覆付き銅線52は、シールド層51のY軸正側の端部付近に、糸53により設置される。被覆付き銅線52は、被覆付き銅線33と同様の構成であり、糸53は、糸34と同様の構成である。被覆付き銅線52の接続部52aは、被覆付き銅線33の接続部33aと同様に、糸53によりシールド層51に接続される。こうして、図14(a)に示すように、実施形態2の構造体30が組み立てられる。
【0120】
続いて、図14(b)に示すように、図13(b)の構造体1aの上方から、図14(a)の構造体30が、上下反転した状態で設置される。基材31の四隅が、基材11に対してシリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、構造体30が基材11に固定される。このとき、被覆付き銅線52の接続部52aと反対側の端部は、回路接続端子16に接続される。こうして、図14(b)に示すように、実施形態3の荷重センサ1が完成する。
【0121】
荷重センサ1が使用される際、シールド層41は、導電弾性体12と同じ極性の電位が印加され、シールド層51は、導電弾性体32と同じ極性の電位が印加される。これにより、シールド層41、51の範囲における被覆付き銅線17にノイズが生じることが抑制される。
【0122】
<実施形態3の効果>
以上、実施形態3によれば、実施形態1、2と同様の効果に加えて、以下の効果が奏される。
【0123】
シールド層41、51は、素子部から引き出された被覆付き銅線17を外部ノイズからシールドする。これにより、被覆付き銅線17に重畳されるノイズを低減できる。
【0124】
シールド層41は、導電弾性体12が配置された基材11と同じ面に配置され、シールド層51は、導電弾性体32が配置された基材31と同じ面に配置される。これにより、シールド層41、51の設置が容易になる。
【0125】
<その他の変更例>
荷重センサ1の構成は、上記実施形態1~3に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
【0126】
たとえば、上記実施形態1~3では、基材11の表面に3つの導電弾性体12が設置されたが、荷重センサ1に配置される導電弾性体12の数は、これに限られるものではない。たとえば、基材11の全面に1つの導電弾性体12が設置されてもよく、4つ以上の導電弾性体12が配置されてもよい。また、3つの導電弾性体12に対して3つの被覆付き銅線17が配置されたが、配置される導電弾性体12および被覆付き銅線17の数は、これに限らない。たとえば、Y軸方向に延びた1つの導電弾性体12に対して、X軸方向に延びた被覆付き銅線17がY軸方向に並ぶように複数配置されてもよい。あるいは、荷重センサ1が、1つの導電弾性体12と1つの被覆付き銅線17のみを備えていてもよい。
【0127】
このように、導電弾性体12の数と被覆付き銅線17の数とが変更されることに伴い、荷重に応じて静電容量が変化する素子部の数も変更される。すなわち、荷重センサ1に配置される素子部の数は、上記実施形態1~3に示した数に限られるものではなく、他の数の素子部が荷重センサ1に配置されてもよい。
【0128】
また、上記実施形態1~3において、複数の被覆付き銅線13は、密集空間の断面が平面形状となるよう糸15aにより束ねられたが、これに限らず、密集空間の断面が他の形状(たとえば、四角形状や三角形状)となるよう糸15aにより束ねられてもよい。同様に、複数の被覆付き銅線17も、密集空間の断面が他の形状となるよう糸11bにより束ねられてもよい。また、複数の被覆付き銅線33も、密集空間の断面は平面形状に限らず他の形状となるよう糸15aにより束ねられてもよい。
【0129】
また、上記実施形態1において、図2(c)に示したように、糸14は、被覆付き銅線13を導電弾性体12および基材11に縫い付けたが、これに限らず、被覆付き銅線13を導電弾性体12にのみ縫い付けてもよい。また、上記実施形態2において、糸34は、被覆付き銅線33を導電弾性体32および基材31に縫い付けたが、これに限らず、被覆付き銅線33を導電弾性体32にのみ縫い付けてもよい。同様に、糸43も、被覆付き銅線42をシールド層41にのみ縫い付けてもよく、糸53も、被覆付き銅線52をシールド層51にのみ縫い付けてもよい。
【0130】
また、上記実施形態1~3および変更例において、糸14、34、43、53およびハトメ21は、導電性を有する材料により構成されたが、必ずしも、導電性を有していなくてもよい。ただし、接触抵抗の減少の観点では、上記のように、糸14、34、43、53およびハトメ21は、導電性を有するように構成されるのが好ましい。
【0131】
また、上記実施形態3において、シールド層は、被覆付き銅線17の上下に配置されたが、被覆付き銅線17の上側または下側にのみ配置されてもよい。また、シールド層は、荷重センサ1の外側全体を覆うように設けられてもよい。
【0132】
また、上記実施形態1において、基材20は、弾性を有する絶縁性の部材であってもよい。この場合、基材20は、たとえば、基材11と同様の材料により構成される。
【0133】
また、上記実施形態1~3において、被覆付き銅線13、17、33、42、52は、回路接続端子16に直接的に接続されたが、これに限らず、回路接続端子16に接続された他の端子に接続され、他の端子を介して間接的に回路接続端子16に接続されてもよい。
【0134】
また、上記実施形態1~3において、被覆付き銅線13の接続部13aの被覆部材は、はんだ付けにより除去されたが、これに限らず、他の手段によって除去されてもよい。たとえば、接続部13aの被覆部材は、接続部13aをアンモニア系の試薬や水酸化カリウム等に浸漬させる等の化学的処理手法により除去されてもよい。同様に、被覆付き銅線33、42、52の接続部の被覆部材も、はんだ付けに限らず、他の手段によって除去されてもよい。
【0135】
また、上記実施形態1~3において、被覆付き銅線17に代えて、複数の被覆付き銅線17が束ねられた撚り線からなる被覆付き銅線60が用いられてもよい。
【0136】
図15(a)は、被覆付き銅線60の構成を模式的に示す拡大図である。図15(b)は、被覆付き銅線60の構成を模式的に示す断面図である。
【0137】
図15(a)に示すように、被覆付き銅線60は、上記実施形態1~3で用いられる被覆付き銅線17を撚ってなる撚り線である。図15(b)に示すように、被覆付き銅線60を構成する複数の被覆付き銅線17は、ほぼ円形に集まり、束となっている。被覆付き銅線60の直径は、たとえば、0.3mmである。
【0138】
図15(a)、(b)に示すように、被覆付き銅線60が撚り線として構成されることにより、1つの被覆付き銅線60の径は、1つの被覆付き銅線17の径よりも大きくなる。これにより、被覆付き銅線60と導電弾性体12との間の接触面積、および、被覆付き銅線60と導電弾性体32との間の接触面積が、実施形態1~3に比べて増加する。したがって、被覆付き銅線60と導電弾性体12との間の静電容量、および、被覆付き銅線60と導電弾性体32との間の静電容量が高められるため、荷重センサ1の感度を高めることができる。また、被覆付き銅線60が撚り線として構成されることにより、実施形態1~3に比べて、柔軟性を高めるとともに、曲げに対する強度を高めることができる。
【0139】
なお、被覆付き銅線13、33、42、52に代えて、複数の被覆付き銅線が束ねられた撚り線からなる被覆付き銅線が用いられてもよい。この場合も、撚り線からなる被覆付き銅線において、柔軟性を高めるとともに、曲げに対する強度を高めることができる。
【0140】
また、上記実施形態1~3において、3つの被覆付き銅線13および3つの被覆付き銅線17は、たとえば、以下の構成により、荷重センサ1の外部にある電子回路18に接続されてもよい。
【0141】
図16(a)は、この場合の変更例に係る、接続基板70の構成を模式的に示す平面図である。
【0142】
接続基板70は、6つの金属アイランド部71と、6つのパターン72と、6つの電極73と、コネクタ74と、を備える。
【0143】
金属アイランド部71は、接続基板70上に設けられている。3つの被覆付き銅線13および3つの被覆付き銅線17は、それぞれ、金属アイランド部71に、はんだ付けにより接続される。被覆付き銅線13の接続部13cの被覆部材および被覆付き銅線17の接続部17cの被覆部材は、金属アイランド部71への接続前に、予め除去される。被覆部材の除去は、上記接続部13aと同様、溶融した高温のはんだ槽に接続部13c、17cが漬けられることにより行われる。
【0144】
金属アイランド部71は、パターン72を介して、電極73に接続されている。パターン72と電極73は、接続基板70上に設けられている。コネクタ74は、接続基板70上に電極73を覆うように設けられている。コネクタ74の6つの端子は、それぞれ、6つの電極73に電気的に接続されている。コネクタ74は、荷重センサ1の各素子部を外部の電子回路18に接続するための回路接続端子である。
【0145】
電子回路18は、図示しないメイン基板に設置されている。このメイン基板に、コネクタ18aと、ケーブル18bとが接続されている。コネクタ18aは、コネクタ74側の6つの端子にそれぞれ接続される6つの端子を備える。コネクタ18aの各端子は、ケーブル18bを介して電子回路18と接続されている。コネクタ18aは、ケーブル18bの端部に設置されている。コネクタ18aが接続基板70のコネクタ74に接続されることにより、3つの導電弾性体12および3つの被覆付き銅線17が、電子回路18に対して電気的に接続される。
【0146】
このように接続基板70が構成されると、接続基板70と電子回路18とを円滑に接続することができる。また、被覆付き銅線13および被覆付き銅線17を外部の装置に接続させるための端子部分(電極73およびコネクタ74)をコンパクトに構成できる。
【0147】
なお、図16(a)に示した接続基板70に代えて、ボックスコネクタやカシメコネクタ等の他のコネクタを用いて、被覆付き銅線13、17を、電子回路18に接続してもよい。
【0148】
また、図16(b)に示すように、電子回路18が搭載されるメイン基板19に、6つの金属アイランド部71が設けられ、これら金属アイランド部71に、直接、被覆付き銅線13および被覆付き銅線17が、はんだで接続されてもよい。
【0149】
また、上記実施形態1~3において、糸11a、11b、14、15a、34、43、53は、刺繍縫いにより対象物に縫い付けられたが、これに限らず、ミシン縫いにより対象物に縫い付けられてもよい。糸がミシン縫いにより対象物に縫い付けられることにより、糸の縫い目が強固になる。
【0150】
図17(a)は、糸11aがミシン縫いにより縫い付けられた場合に、被覆付き銅線17が糸11aにより基材11に固定される状態を模式的に示す斜視図である。この場合、たとえば、Y軸方向に並ぶ3つの被覆付き銅線17を全て跨ぐようにして、糸11aがミシン縫いによりY軸方向に縫い付けられる。
【0151】
図17(b)は、17(a)においてY軸方向に延びる糸11aの位置で、構造体1aをY-Z平面に平行な平面で切断したときの断面を模式的に示す側面図である。糸11aがミシン縫いにより基材11に縫い付けられると、糸11aの上糸81と下糸82とが、基材11の上下方向の中央付近で互いに結ばれる。このように上糸81と下糸82とが上下からミシン縫いにより基材11に縫い付けられると、基材11の上面側に配置された被覆付き銅線17は、糸11aの上糸81により基材11に押し付けられて固定される。
【0152】
図18(a)、(b)は、糸14がミシン縫いにより縫い付けられた場合に、被覆付き銅線13の接続部13aが糸14により導電弾性体12および基材11に固定される状態を模式的に示す平面図である。図18(a)は、図2(b)の場合と同様、接続部13aの4箇所が糸14により固定される場合を示しており、図18(b)は、縫い目の形状が16個の頂点を有する場合を示している。図18(c)は、図18(b)のように縫い目が全周にわたって設けられる場合の荷重センサ1の構成を模式的に示す斜視図である。
【0153】
図18(a)、(b)に示すように、ミシン縫いの場合、縫い始めの位置から縫い終わりの位置に至るまで、1回の縫い動作により糸14が縫い付けられるため、上面側から見て縫い目が繋がって見えるようになる。また、図18(a)の場合、縫い目が接続部13aを跨いだ回数は6回であり、図18(b)の場合、縫い目が接続部13aを跨いだ回数は32回である。図18(b)のように、接続部13aが全周にわたって糸14により縫い付けられ、糸14が接続部13aを跨ぐ回数が多くなると、接続部13aがより確実に導電弾性体12に接続されるようになる。
【0154】
なお、図18(b)、(c)に示したように、糸14が全周にわたって縫い付けられる場合に、糸14は、ミシン縫いにより縫い付けられることに限らず、刺繍縫いにより縫い付けられてもよい。
【0155】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0156】
1 荷重センサ
11a 糸(留め具)
12 導電弾性体
12a 孔
13、33 被覆付き銅線(第1銅線)
13a、33a 接続部(接続部分)
14、34 糸
16 回路接続端子
17、60 被覆付き銅線(第2銅線)
21 ハトメ
41、51 シールド層
74 コネクタ(回路接続端子)
A11~A13、A21~A23、A31~A33 素子部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18