(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20241129BHJP
C30B 29/16 20060101ALI20241129BHJP
C30B 25/02 20060101ALI20241129BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20241129BHJP
H01L 29/24 20060101ALI20241129BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241129BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241129BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241129BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20241129BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20241129BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241129BHJP
H01L 21/365 20060101ALI20241129BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20241129BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241129BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L29/86 301D
C30B29/16
C30B25/02 Z
C23C16/40
H01L29/24
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/86 301F
H01L29/91 K
H01L29/91 F
H01L29/86 301E
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L21/365
H01L21/368 Z
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2020003249
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勲
(72)【発明者】
【氏名】則松 和良
(72)【発明者】
【氏名】四戸 孝
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082144(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035696(WO,A1)
【文献】特開2019-003971(JP,A)
【文献】特開2009-076866(JP,A)
【文献】特開平06-275817(JP,A)
【文献】特開2015-032730(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
C30B 29/16
C30B 25/02
C23C 16/40
H01L 29/24
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/861
H01L 29/06
H01L 21/365
H01L 21/368
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コランダム構造を有する半導体層と、前記半導体層の第1面側に配置された第1の電極と、前記第1面側の反対側である第2面側に配置された第2の電極とを少なくとも有する半導体装置であって、前記第2の電極が前記第1の電極よりも少なくとも第1の方向に延びており、前記第1の方向が前記半導体層のc軸方向であ
り、前記半導体層のキャリア濃度が、1×10
19
/cm
3
以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層が、ガリウム、インジウム、ロジウムおよびイリジウムから選択される少なくとも1つの金属を含む金属酸化物を含有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体層が、少なくともガリウムを含む金属酸化物を主成分とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
パワーデバイスである請求項1~
3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
パワーモジュール、インバータまたはコンバータである請求項
4記載の半導体装置。
【請求項6】
パワーカードである請求項
4記載の半導体装置。
【請求項7】
さらに、冷却器および絶縁部材を含んでおり、前記半導体層の両側に前記冷却器がそれぞれ少なくとも前記絶縁部材を介して設けられている請求項
6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層の両側にそれぞれ放熱層が設けられており、前記放熱層の外側に少なくとも前記絶縁部材を介して前記冷却器がそれぞれ設けられている請求項
7記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、請求項1~
8のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーデバイス等に有用な半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異種基板上に結晶成長させる際に、クラックや格子欠陥が生じる問題がある。この問題に対し、基板と膜の格子定数や熱膨張係数を整合させること等が検討されている。また、不整合が生じる場合には、ELOのような成膜手法等も検討されている。
【0003】
特許文献1には、異種基板上にバッファ層を形成し、前記バッファ層上に酸化亜鉛系半導体層を結晶成長させる方法が記載されている。特許文献2には、ナノドットのマスクを異種基板上に形成して、ついで、単結晶半導体材料層を形成することが記載されている。非特許文献1には、サファイア上に、GaNのナノカラムを介して、GaNを結晶成長させる手法が記載されている。非特許文献2には、周期的なSiN中間層を用いて、Si(111)上にGaNを結晶成長させて、ピット等の欠陥を減少させる手法が記載されている。
【0004】
しかしながら、いずれの技術も、成膜速度が悪かったり、基板にクラック、転位、反り等が生じたり、また、エピタキシャル膜に転位やクラック等が生じたりして、高品質なエピタキシャル膜を得ることが困難であり、基板の大口径化やエピタキシャル膜の厚膜化においても、支障が生じていた。
【0005】
また、高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大きな酸化ガリウム(Ga2O3)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装置への適用が期待されている。しかも、広いバンドギャップからLEDやセンサー等の受発光装置としての応用も期待されている。当該酸化ガリウムは、インジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは組み合わせて混晶することによりバンドギャップ制御することが可能であり、InAlGaO系半導体として極めて魅力的な材料系統を構成している。ここでInAlGaO系半導体とはInXAlYGaZO3(0≦X≦2、0≦Y≦2、0≦Z≦2、X+Y+Z=1.5~2.5)を示し、酸化ガリウムを内包する同一材料系統として俯瞰することができる。
【0006】
しかしながら、酸化ガリウムは、最安定相がβガリア構造であるので、特殊な成膜法を用いなければ、コランダム構造の結晶膜を成膜することが困難であり、結晶品質等においてもまだまだ課題が数多く存在している。これに対し、現在、コランダム構造を有する結晶性半導体の成膜について、いくつか検討がなされている。
特許文献3には、ガリウム又はインジウムの臭化物又はヨウ化物を用いて、ミストCVD法により、酸化物結晶薄膜を製造する方法が記載されている。特許文献4~6には、コランダム型結晶構造を有する下地基板上に、コランダム型結晶構造を有する半導体層と、コランダム型結晶構造を有する絶縁膜とが積層された多層構造体が記載されている。
【0007】
また、最近では、特許文献7~9に記載されているように、コランダム構造の酸化ガリウム膜をELO成長等させることが検討されている。特許文献7~9に記載されている方法によれば、良質なコランダム構造の酸化ガリウム膜を得ることは可能であるが、特許文献7記載の熱膨張係数差を利用したELO成膜手法等をもってしても、実際に結晶膜を調べてみると、ファセット成長する傾向があり、このファセット成長に起因する転位やクラックなどの課題もあって、また、特許文献10に記載されているように、主面をm面とすることにより電気特性が向上することも検討されているが、電気特性に優れた半導体装置に適用するには、まだまだ満足のいくものではなかった。
なお、特許文献3~10はいずれも本出願人による特許または特許出願に関する公報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-232623号公報
【文献】特表2010-516599号公報
【文献】特許第5397794号
【文献】特許第5343224号
【文献】特許第5397795号
【文献】特開2014-72533号公報
【文献】特開2016-98166号公報
【文献】特開2016-100592号公報
【文献】特開2016-100593号公報
【文献】特開2018-082144号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Kazuhide Kusakabe., et al., “Overgrowth of GaN layer on GaN nano-columns by RF-molecular beam epitaxy”, Journal of Crystal Growth 237-239 (2002) 988-992
【文献】K. Y. Zang., et al.,”Defect reduction by periodic SiNx interlayers in gallium nitride grown on Si (111)”, Journal of Applied Physics 101, 093502 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、半導体特性、特に電気特性に優れた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、コランダム構造を有する酸化ガリウムの主面ではなく、それぞれの結晶軸と、電流の流れる方向との関係において、電気特性が異方性を有することを知見し、コランダム構造を有する半導体層と、前記半導体層の第1面側に配置された第1の電極と、前記第1面側の反対側である第2面側に配置された第2電極とを少なくとも有する半導体装置であって、前記第2の電極が第1の電極よりも少なくとも第1の方向に延びており、前記第1の方向が前記半導体層のc軸方向またはm軸方向である半導体装置の創製に成功し、このような半導体装置が、半導体特性、特に電気特性に優れており、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1]
コランダム構造を有する半導体層と、前記半導体層の第1面側に配置された第1の電極と、前記第1面側の反対側である第2面側に配置された第2電極とを少なくとも有する半導体装置であって、前記第2の電極が第1の電極よりも少なくとも第1の方向に延びており、前記第1の方向が前記半導体層のc軸方向またはm軸方向であることを特徴とする半導体装置。
[2]
前記半導体層が、ガリウム、インジウム、ロジウムおよびイリジウムから選択される少なくとも1つの金属を含む金属酸化物を含有する前記[1]記載の半導体装置。
[3]
前記半導体層が、少なくともガリウムを含む金属酸化物を主成分とする前記[1]記載の半導体装置。
[4]
前記半導体層のキャリア濃度が、1×1019/cm3以下である前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体装置。
[5] 前記第1面が、c面である前記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体装置。
[6]
パワーデバイスである前記[1]~[5]のいずれかに記載の半導体装置。
[7]
パワーモジュール、インバータまたはコンバータである前記[6]記載の半導体装置。
[8]
パワーカードである前記[6]記載の半導体装置。
[9]
さらに、冷却器および絶縁部材を含んでおり、前記半導体層の両側に前記冷却器がそれぞれ少なくとも前記絶縁部材を介して設けられている前記[8]記載の半導体装置。
[10]
前記半導体層の両側にそれぞれ放熱層が設けられており、前記放熱層の外側に少なくとも前記絶縁部材を介して前記冷却器がそれぞれ設けられている前記[9]記載の半導体装置。
[11]
半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、前記[1]~[10]のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体装置は、半導体特性、特に電気特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明で好適に用いられる成膜装置の概略構成図である。
【
図2】本発明で好適に用いられる
図1とは別態様の成膜装置(ミストCVD)の概略構成図である。
【
図3】電源システムの好適な一例を模式的に示す図である。
【
図4】システム装置の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図5】電源装置の電源回路図の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図6】長方形状の半導体層を用いたショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な一例を模式的に示す図であり、長手方向の断面図を示す。
【
図7】長方形状の半導体層を用いた金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の好適な一例を模式的に示す図であり、長手方向の断面図を示す。
【
図8】
図7の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の製造工程の一部を説明するための模式図である。
【
図9】長方形状の半導体層を用いた絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)の好適な一例を模式的に示す図であり、長手方向の断面図を示す。
【
図10】長方形状の半導体層を用いたジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一例を模式的に示す図であり、長手方向の断面図を示す。
【
図11】長方形状の半導体層を用いたジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一例を模式的に示す図であり、長手方向の断面図を示す。
【
図12】パワーカードの好適な一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の半導体装置は、コランダム構造を有する半導体層と、前記半導体層の第1面側に配置された第1の電極と、前記第1面側の反対側である第2面側に配置された第2電極とを少なくとも有する半導体装置であって、前記第2の電極が第1の電極よりも少なくとも第1の方向に延びており、前記第1の方向が前記半導体層のc軸方向またはm軸方向であることを特長とする。
【0016】
本発明の実施態様においては、前記半導体層が、ガリウム、インジウム、ロジウムおよびイリジウムから選択される少なくとも1つの金属を含む金属酸化物を含有する。また、本発明の実施態様においては、前記半導体層が、少なくともガリウムを含む金属酸化物を主成分とするのが、高耐圧等においてより優れた半導体特性を奏することができる。なお、前記「主成分」とは、前記半導体層中の全成分に対し、前記金属酸化物が、原子比で、50%以上含むものを意味し、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上含まれることを意味し、実施態様によっては100%であってもよいことを意味する。また、前記金属酸化物が少なくともガリウムを含み、さらに、インジウム、ロジウムまたはイリジウムを含むのが好ましく、前記金属酸化物が少なくともガリウムを含み、さらに、インジウムまたは/およびアルミニウムを含むのも好ましい。前記金属酸化物が少なくともガリウムを含むのが、例えばスイッチング特性等のパワーデバイスとしての特性をより優れたものとすることができるのでより好ましい。また、本発明においては、前記第1面が、c面であるのが、電気特性をより優れたものとすることができるので好ましい。
【0017】
前記半導体層は結晶性酸化物半導体層であって、結晶性酸化物半導体を含むのが好ましい。前記結晶性酸化物半導体は、前記金属酸化物を含み、上記のように、少なくともガリウムを含むのが好ましく、酸化ガリウムおよびその混晶を主成分として含むのがより好ましい。また、前記結晶性酸化物半導体の結晶構造等は特に限定されないが、本発明においては、前記結晶性酸化物半導体がコランダム構造を有する金属酸化物を主成分として含むのが好ましい。前記金属酸化物は、特に限定されないが、少なくとも周期律表第4周期~第6周期の1種または2種以上の金属を含むのが好ましく、少なくともガリウム、インジウム、ロジウムまたはイリジウムを含むのがより好ましく、ガリウムを含むのが最も好ましい。また、本発明においては、前記金属酸化物が、ガリウムと、インジウムまたは/およびアルミニウムとを含むのも好ましい。ガリウムを含む前記金属酸化物としては、例えば、α-Ga2O3またはその混晶などが挙げられる。このような好ましい金属酸化物を主成分として含む半導体層は、結晶性や放熱性がより優れたものとなり、半導体特性もさらに優れたものになり得る。例えば、前記金属酸化物がα-Ga2O3である場合、前記半導体層に含まれるガリウムの原子比が、前記半導体層中の全金属成分に対し50%以上の割合で、α-Ga2O3が前記半導体層に含まれていればそれでよい。本発明においては、前記半導体層の金属元素中のガリウムの原子比が、前記半導体層中の全金属成分に対し70%以上であることが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。なお、前記半導体層は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。また、前記半導体層は、通常、膜状であるが、本発明の目的を阻害しない限りは特に限定されず、板状であってもよいし、シート状であってもよい。
【0018】
前記半導体層には、ドーパントが含まれていてもよい。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。n型ドーパントであってもよいし、p型ドーパントであってもよい。前記nドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブなどが挙げられる。キャリア濃度は、適宜設定されるものであってよく、具体的には例えば、約1×1016/cm3~1×1022/cm3であってもよいし、また、キャリア濃度を例えば約1×1017/cm3以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、実施態様の一例として、例えば、半導体層のキャリア濃度を約1×1020/cm3以上の高濃度で含有させてもよいが、本発明の実施態様においては、半導体層のキャリア濃度を低くする方が異方性をより効果的なものとし、半導体特性をより良好なものとすることができるので、例えば1×1019/cm3以下とするのが好ましく、5×1018/cm3以下とするのがより好ましく、1×1018/cm3以下とするのが最も好ましい。
【0019】
前記半導体層は例えば次の好適な成膜方法により得ることができる。例えば、第2の辺を第1の辺よりも短くした結晶基板を用いて、前記第2の電極が第1の電極よりも少なくとも第1の方向に延びており、前記第1の方向が前記半導体層のc軸方向またはm軸方向となるように、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法によりエピタキシャル結晶成長させて前記半導体層を形成し、半導体装置を作製することにより得ることができる。
【0020】
<結晶基板>
前記結晶基板は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基板であってよい。絶縁体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいし、半導体基板であってもよい。単結晶基板であってもよいし、多結晶基板であってもよい。前記結晶基板としては、例えば、コランダム構造を有する結晶物を主成分として含む基板が挙げられる。なお、前記「主成分」とは、基板中の組成比で、前記結晶物を50%以上含むものをいい、好ましくは70%以上含むものであり、より好ましくは90%以上含むものである。前記コランダム構造を有する結晶基板としては、例えば、サファイア基板、α型酸化ガリウム基板などが挙げられる。
【0021】
本発明においては、前記結晶基板が、サファイア基板であるのが好ましい。前記サファイア基板としては、例えば、c面サファイア基板、m面サファイア基板、a面サファイア基板、r面サファイア基板などが挙げられる。また、前記サファイア基板はオフ角を有していてもよい。前記オフ角は、特に限定されず、例えば、0.01°以上であるが、好ましくは0.2°以上であり、より好ましくは0.2°~12°である。前記サファイア基板は、結晶成長面がc面であるのが好ましく、0.2°以上のオフ角を有するc面サファイア基板であるのも好ましい。
なお、前記結晶基板の厚さは、特に限定されないが、通常、10μm~20mmであり、より好ましくは10~1000μmである。
【0022】
また、本発明においては、ELOマスクを用いて、前記半導体層において、第2の辺を第1の辺よりも短くし、第1の結晶軸方向の線熱膨張係数を第2の結晶軸方向の線熱膨張係数よりも小さく、第1の辺方向を第1の結晶軸方向と平行または略平行とし、第2の辺方向を第2の結晶軸方向と平行または略平行となりやすいように、結晶成長の方向等を制御してもよい。
前記結晶基板の好適な形状としては、例えば、三角形、四角形(例えば長方形若しくは台形等)、五角形若しくは六角形等の多角形状、U字形状、逆U字形状、L字形状またはコの字形状等が挙げられる。
【0023】
なお、本発明においては、前記結晶基板上にバッファ層や応力緩和層等の他の層を設けもよい。バッファ層としては、前記結晶基板または前記半導体層の結晶構造と同一の結晶構造を有する金属酸化物からなる層などが挙げられる。また、応力緩和層としては、ELOマスク層などが挙げられる。
【0024】
前記エピタキシャル結晶成長の手段は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の手段であってよい。前記エピタキシャル結晶成長手段としては、例えば、CVD法、MOCVD法、MOVPE法、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法、MBE法、HVPE法、パルス成長法またはALD法などが挙げられる。本発明においては、前記エピタキシャル結晶成長手段が、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法であるのが好ましい。
【0025】
前記のミストCVD法またはミスト・エピタキシー法では、金属を含む原料溶液を霧化し(霧化工程)、液滴を浮遊させ、得られた霧化液滴をキャリアガスでもって前記結晶基板近傍まで搬送し(搬送工程)、ついで、前記霧化液滴を熱反応させること(成膜工程)により行う。
【0026】
(原料溶液)
原料溶液は、成膜原料として金属を含んでおり、霧化可能であれば特に限定されず、無機材料を含んでいてもよいし、有機材料を含んでいてもよい。前記金属は、金属単体であっても、金属化合物であってもよく、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、ガリウム(Ga)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、ロジウム(Rh)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、レニウム(Re)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびジルコニウム(Zr)から選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられるが、本発明においては、前記金属が、少なくとも周期律表第4周期~第6周期の1種または2種以上の金属を含むのが好ましく、少なくともガリウム、インジウム、ロジウムまたはイリジウムを含むのがより好ましい。また、本発明においては、前記金属が、ガリウムと、インジウムまたは/およびアルミニウムとを含むのも好ましい。このような好ましい金属を用いることにより、半導体装置等により好適に用いることができる前記半導体層を成膜することができる。
【0027】
本発明においては、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
【0028】
前記原料溶液の溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましい。
【0029】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H2O2)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化バリウム(BaO2)、過酸化ベンゾイル(C6H5CO)2O2等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0030】
前記原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはニオブ等のn型ドーパントまたはp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、通常、約1×1016/cm3~1×1022/cm3であってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm3以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、本発明によれば、ドーパントを約1×1020/cm3以上の高濃度で含有させてもよい。
【0031】
(霧化工程)
前記霧化工程は、金属を含む原料溶液を調整し、前記原料溶液を霧化し、液滴を浮遊させ、霧化液滴を発生させる。前記金属の配合割合は、特に限定されないが、原料溶液全体に対して、0.0001mol/L~20mol/Lが好ましい。霧化手段は、前記原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段であってよいが、本発明においては、超音波振動を用いる霧化手段であるのが好ましい。本発明で用いられるミストは、空中に浮遊するものであり、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、初速度がゼロで、空間に浮かびガスとして搬送することが可能なミストであるのがより好ましい。ミストの液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1~10μmである。
【0032】
(搬送工程)
前記搬送工程では、前記キャリアガスによって前記霧化液滴を前記基体へ搬送する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、不活性ガス(例えば窒素やアルゴン等)、または還元ガス(水素ガスやフォーミングガス等)などが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、1LPM以下が好ましく、0.1~1LPMがより好ましい。
【0033】
(成膜工程)
成膜工程では、前記霧化液滴を反応させて、前記結晶基板上に成膜する。前記反応は、前記霧化液滴から膜が形成される反応であれば特に限定されないが、本発明においては、熱反応が好ましい。前記熱反応は、熱でもって前記霧化液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、原料溶液の溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度以下が好ましく、650℃以下がより好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが蒸発温度の計算がより簡単になり、設備等も簡素化できる等の点で好ましい。また、膜厚は成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0034】
以下、図面を用いて、本発明に好適に用いられる成膜装置19を説明する。
図1の成膜装置19は、キャリアガスを供給するキャリアガス源22aと、キャリアガス源22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源22bと、キャリアガス(希釈)源22bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、成膜室30と、ミスト発生源24から成膜室30までをつなぐ石英製の供給管27と、成膜室30内に設置されたホットプレート(ヒーター)28とを備えている。ホットプレート28上には、基板20が設置されている。
【0035】
そして、
図1に記載のとおり、原料溶液24aをミスト発生源24内に収容する。次に、基板20を用いて、ホットプレート28上に設置し、ホットプレート28を作動させて成膜室30内の温度を昇温させる。次に、流量調節弁23(23a、23b)を開いてキャリアガス源22(22a、22b)からキャリアガスを成膜室30内に供給し、成膜室30の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量と、キャリアガス(希釈)の流量とをそれぞれ調節する。次に、超音波振動子26を振動させ、その振動を、水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを微粒子化させて霧化液滴24bを生成する。この霧化液滴24bが、キャリアガスによって成膜室30内に導入され、基板20まで搬送され、そして、大気圧下、成膜室30内で霧化液滴24bが熱反応して、基板20上に膜(半導体層)が形成される。
【0036】
また、
図2に示すミストCVD装置(成膜装置)19を用いるのも好ましい。
図2のミストCVD装置19は、基板20を載置するサセプタ21と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段22aと、キャリアガス供給手段22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給手段22bと、キャリアガス(希釈)供給手段22bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる供給管27と、供給管27の周辺部に設置されたヒーター28と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排出する排気口29とを備えている。サセプタ21は、石英からなり、基板20を載置する面が水平面から傾斜している。成膜室となる供給管27とサセプタ21をどちらも石英で作製することにより、基板20上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。このミストCVD装置19は、前記の成膜装置19と同様に扱うことができる。
【0037】
前記の好適な成膜装置を用いれば、前記結晶基板の結晶成長面上に、より容易に前記半導体層を形成することができる。なお、前記半導体層は、通常、エピタキシャル結晶成長により形成される。
【0038】
前記半導体層は半導体装置、特にパワーデバイスに有用である。前記結晶性酸化物半導体を用いて形成される半導体装置としては、MISやHEMT等のトランジスタやTFT、半導体‐金属接合を利用したショットキーバリアダイオード、JBS、他のP層と組み合わせたPN又はPINダイオード、受発光素子などが挙げられる。本発明においては、前記結晶性酸化物半導体を、所望により前記結晶基板と剥離等して、半導体装置に用いることができる。前記半導体層は、例えば、前記結晶基板よりも熱伝導性の高い基板上に配置して用いることもできる。
【0039】
また、前記半導体装置は、縦型デバイスであるのが好ましい。前記半導体装置の好適な例としては、例えば、ショットキーバリアダイオード(SBD)、ジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)、金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、静電誘導トランジスタ(SIT)、接合電界効果トランジスタ(JFET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)または発光ダイオード(LED)などが挙げられる。
【0040】
以下、主面をc軸とし、長手方向をm軸とした長方形状のn型半導体層(n+型半導体層やn-半導体層等)を含む前記半導体装置の好適な例を、図面を用いて説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0041】
図6は、本発明に係るショットキーバリアダイオード(SBD)の一例を示している。
図6のSBDは、n-型半導体層101a、n+型半導体層101b、ショットキー電極105aおよびオーミック電極105bを備えている。
【0042】
ショットキー電極およびオーミック電極の材料は、公知の電極材料であってもよく、前記電極材料としては、例えば、Al、Mo、Co、Zr、Sn、Nb、Fe、Cr、Ta、Ti、Au、Pt、V、Mn、Ni、Cu、Hf、W、Ir、Zn、In、Pd、NdもしくはAg等の金属またはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化レニウム、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロ-ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物並びに積層体などが挙げられる。
【0043】
ショットキー電極およびオーミック電極の形成は、例えば、真空蒸着法またはスパッタリング法などの公知の手段により行うことができる。より具体的に例えば、前記金属のうち2種類の第1の金属と第2の金属とを用いてショットキー電極を形成する場合、第1の金属からなる層と第2の金属からなる層を積層させ、第1の金属からなる層および第2の金属からなる層に対して、フォトリソグラフィの手法を利用したパターニングを施すことにより行うことができる。
【0044】
図6のSBDに逆バイアスが印加された場合には、空乏層(図示せず)がn型半導体層101aの中に広がるため、高耐圧のSBDとなる。また、順バイアスが印加された場合には、オーミック電極105bからショットキー電極105aへ電子が流れる。このようにして前記半導体構造を用いたSBDは、高耐圧・大電流用に優れており、スイッチング速度も速く、耐圧性・信頼性にも優れている。
【0045】
(MOSFET)
本発明の半導体装置がMOSFETである場合の一例を
図7に示す。
図7のMOSFETは、トレンチ型のMOSFETであり、n-型半導体層131a、n+型半導体層131b及び131c、ゲート絶縁膜134、ゲート電極135a、ソース電極135bおよびドレイン電極135cを備えている。
【0046】
ドレイン電極135c上には、例えば厚さ100nm~100μmのn+型半導体層131bが形成されており、前記n+型半導体層131b上には、例えば厚さ100nm~100μmのn-型半導体層131aが形成されている。そして、さらに、前記n-型半導体層131a上には、n+型半導体層131cが形成されており、前記n+型半導体層131c上には、ソース電極135bが形成されている。
【0047】
また、前記n-型半導体層131a及び前記n+型半導体層131c内には、前記n+半導体層131cを貫通し、前記n-型半導体層131aの途中まで達する深さの複数のトレンチ溝が形成されている。前記トレンチ溝内には、例えば、10nm~1μmの厚みのゲート絶縁膜134を介してゲート電極135aが埋め込み形成されている。
【0048】
図7のMOSFETのオン状態では、前記ソース電極135bと前記ドレイン電極135cとの間に電圧を印可し、前記ゲート電極135aに前記ソース電極135bに対して正の電圧を与えると、前記n-型半導体層131aの側面にチャネル層が形成され、電子が前記n-型半導体層131aに注入され、ターンオンする。オフ状態は、前記ゲート電極の電圧を0Vにすることにより、チャネル層ができなくなり、n-型半導体層131aが空乏層で満たされた状態になり、ターンオフとなる。
【0049】
図8は、
図7のMOSFETの製造工程の一部を示している。例えば
図8(a)に示すような半導体構造を用いて、n-型半導体層131aおよびn+型半導体層131cの所定領域にエッチングマスクを設け、前記エッチングマスクをマスクにして、さらに、反応性イオンエッチング法等により異方性エッチングを行って、
図8(b)に示すように、前記n+型半導体層131c表面から前記n-型半導体層131aの途中にまで達する深さのトレンチ溝を形成する。次いで、
図8(c)に示すように、熱酸化法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の公知の手段を用いて、前記トレンチ溝の側面及び底面に、例えば50nm~1μm厚のゲート絶縁膜134を形成した後、CVD法、真空蒸着法、スパッタリング法等を用いて、前記トレンチ溝に、例えばポリシリコン等のゲート電極材料135aをn-型半導体層の厚み以下に形成する。
【0050】
そして、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の公知の手段を用いて、n+型半導体層131c上にソース電極135bを、n+型半導体層131b上にドレイン電極135cを、それぞれ形成することで、パワーMOSFETを製造することができる。なお、ソース電極およびドレイン電極の電極材料は、それぞれ公知の電極材料であってもよく、前記電極材料としては、例えば、Al、Mo、Co、Zr、Sn、Nb、Fe、Cr、Ta、Ti、Au、Pt、V、Mn、Ni、Cu、Hf、W、Ir、Zn、In、Pd、NdもしくはAg等の金属またはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロ-ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0051】
このようにして得られたMOSFETは、従来のトレンチ型MOSFETに比べて、さらに耐圧性に優れたものとなる。なお、
図7では、トレンチ型の縦型MOSFETの例を示したが、本発明においては、これに限定されず、種々のMOSFETの形態に適用可能である。例えば、
図7のトレンチ溝の深さをn-型半導体層131aの底面まで達する深さまで掘り下げて、シリーズ抵抗を低減させるようにしてもよい。
【0052】
(IGBT)
図9は、n型半導体層151、n-型半導体層151a、n+型半導体層151b、p型半導体層152、ゲート絶縁膜154、ゲート電極155a、エミッタ電極155bおよびコレクタ電極155cを備えている絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)の好適な一例を示す。
【0053】
図10は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を示す。
図10の半導体装置は、半導体領域(半導体層)3と、前記半導体領域上に設けられておりかつ前記半導体領域との間にショットキーバリアを形成可能なバリア電極2と、バリア電極2と半導体領域3との間に設けられておりかつ前記半導体領域3との間にバリア電極2のショットキーバリアのバリアハイトよりも大きなバリアハイトのショットキーバリアを形成可能なバリアハイト調整層とを含んでいる。なお、バリアハイト調整層1は半導体領域3に埋め込まれている。本発明においては、バリアハイト調整層が一定間隔ごとに設けられているのが好ましく、前記バリア電極の両端と前記半導体領域との間に、前記バリアハイト調整領域がそれぞれ設けられているのがより好ましい。このような好ましい態様により、熱安定性および密着性により優れ、リーク電流がより軽減され、さらに、より耐圧等の半導体特性に優れるようにJBSが構成されている。なお、
図10の半導体装置は、半導体領域3上にオーミック電極4を備えている。
【0054】
図10の半導体装置の各層の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段であってよい。例えば、真空蒸着法やCVD法、スパッタ法、各種コーティング技術等により成膜した後、フォトリソグラフィ法によりパターニングする手段、または印刷技術などを用いて直接パターニングを行う手段などが挙げられる。
【0055】
図11は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を示す。
図11の半導体装置は、
図10の半導体装置とは、バリア電極の外周辺部にガードリング5が設けられている点において異なる。このように構成することによって、より耐圧等の半導体特性に優れた半導体装置を得ることができる。なお、本発明においては、ガードリング5の一部を半導体領域(半導体層)3表面にそれぞれ埋め込むことにより、耐圧をより効果的により良好なものとすることができる。またさらに、ガードリングにバリアハイトの高い金属を用いることにより、バリア電極の形成とあわせてガードリングを工業的有利に設けることができ、半導体領域にあまり影響を与えることなく、オン抵抗も悪化させずに形成することができる。
【0056】
前記ガードリングには、通常、バリアハイトの高い材料が用いられる。前記ガードリングに用いられる材料としては、例えば、バリアハイトが1eV以上の導電性材料などが挙げられ、前記電極材料と同じものであってもよい。本発明においては、前記ガードリングに用いられる材料が、耐圧構造の設計自由度が高く、ガードリングを多く設けることもでき、柔軟に耐圧をより良好なものとすることができるので、前記金属であるのが好ましい。また、ガードリングの形状としては、特に限定されず、例えば、ロの字形状、円状、コ字形状、L字形状または帯状などが挙げられる。ガードリングの本数も特に限定されないが、好ましくは3本以上、より好ましくは6本以上である。
【0057】
本発明の半導体装置は、上記した事項に加え、さらに公知の方法を用いて、パワーモジュール、インバータまたはコンバータとして好適に用いられ、さらには、例えば電源装置を用いた半導体システム等に好適に用いられる。前記電源装置は、常法により、配線パターン等に接続するなどすることにより、前記半導体装置からまたは前記半導体装置として作製することができる。
図3は、複数の前記電源装置171、172と制御回路173を用いて電源システム170を構成している。前記電源システムは、
図4に示すように、電子回路181と電源システム182とを組み合わせてシステム装置180に用いることができる。なお、電源装置の電源回路図の一例を
図5に示す。
図5は、パワー回路と制御回路からなる電源装置の電源回路を示しており、インバータ192(MOSFETA~Dで構成)によりDC電圧を高周波でスイッチングしACへ変換後、トランス193で絶縁及び変圧を実施し、整流MOSFET194(A~B’)で整流後、DCL195(平滑用コイルL1,L2)とコンデンサにて平滑し、直流電圧を出力する。この時に電圧比較器197で出力電圧を基準電圧と比較し、所望の出力電圧となるようPWM制御回路196でインバータ192及び整流MOSFET194を制御する。
【0058】
本発明においては前記半導体装置が、パワーカードであるのが好ましく、冷却器および絶縁部材を含んでおり、前記半導体層の両側に前記冷却器がそれぞれ少なくとも前記絶縁部材を介して設けられているのがより好ましく、前記半導体層の両側にそれぞれ放熱層が設けられており、放熱層の外側に少なくとも前記絶縁部材を介して前記冷却器がそれぞれ設けられているのが最も好ましい。
図12は、本発明の好適な実施態様の一つであるパワーカードを示す。
図12のパワーカードは、両面冷却型パワーカード201となっており、冷媒チューブ202、スペーサ203、絶縁板(絶縁スペーサ)208、封止樹脂部209、半導体チップ301a、金属伝熱板(突出端子部)302b、ヒートシンク及び電極303、金属伝熱板(突出端子部)303b、はんだ層304、制御電極端子305、ボンディングワイヤ308を備える。冷媒チューブ202の厚さ方向断面は、互いに所定間隔を隔てて流路方向に延在する多数の隔壁221で区画された流路222を多数有している。このような好適なパワーカードによればより高い放熱性を実現することができ、より高い信頼性を満たすことができる。
【0059】
半導体チップ301aは、金属伝熱板302bの内側の主面上にはんだ層104で接合され、半導体チップ301aの残余の主面には、金属伝熱板(突出端子部)302bがはんだ層304で接合され、これによりIGBTのコレクタ電極面及びエミッタ電極面にフライホイルダイオードのアノード電極面及びカソード電極面がいわゆる逆並列に接続されている。金属伝熱板(突出端子部)302bおよび303bの材料としては、例えば、MoまたはW等が挙げられる。金属電熱板(突出端子部)302および303bは、半導体チップ101a、101bの厚さの差を吸収する厚さの差をもち、これにより金属伝熱板102の外表面は平面となっている。
【0060】
樹脂封止部209は例えばエポキシ樹脂からなり、これら金属伝熱板302bおよび303bの側面を覆ってモールドされており、半導体チップ301aは樹脂封止部209でモールドされている。但し、金属伝熱板302bおよび303bの外主面すなわち接触受熱面は完全に露出している。金属伝熱板(突出端子部)302bおよび303bは樹脂封止部209から
図12中、右方に突出し、いわゆるリードフレーム端子である制御電極端子305は、例えばIGBTが形成された半導体チップ301aのゲート(制御)電極面と制御電極端子305とを接続している。
【0061】
絶縁スペーサである絶縁板208は、例えば、窒化アルミニウムフィルムで構成されているが、他の絶縁フィルムであってもよい。絶縁板208は金属伝熱板302bおよび303bを完全に覆って密着しているが、絶縁板208と金属伝熱板302bおよび303bとは、単に接触するだけでもよいし、シリコングリスなどの良熱伝熱材を塗布してもよいし、それらを種々の方法で接合させてもよい。また、セラミック溶射などで絶縁層を形成してもよく、絶縁板208を金属伝熱板上に接合してもよく、冷媒チューブ上に接合または形成してもよい。
【0062】
冷媒チューブ202は、アルミニウム合金を引き抜き成形法あるいは押し出し成形法で成形された板材を必要な長さに切断して作製されている。冷媒チューブ202の厚さ方向断面は、互いに所定間隔を隔てて流路方向に延在する多数の隔壁221で区画された流路222を多数有している。スペーサ203は、例えば、はんだ合金などの軟質の金属板であってよいが、金属伝熱板302bおよび303bの接触面に塗布等によって形成したフィルム(膜)としてもよい。この軟質のスペーサ3の表面は、容易に変形して、絶縁板208の微小凹凸や反り、冷媒チューブ202の微小凹凸や反りになじんで熱抵抗を低減する。なお、スペーサ203の表面等に公知の良熱伝導性グリスなどを塗布してもよく、スペーサ203を省略してもよい。
【0063】
(試験例1~3)
ミストCVD法を用いて、m面αGa
2O
3半導体膜及びc面αGa
2O
3半導体膜をそれぞれ成膜し、テラヘルツ分光装置(日邦プレシジョン株式会社製の汎用テラヘルツ分光装置「TeraProspector(登録商標 商標登録第5550188号)」(2019年))を用いて、電気抵抗率とキャリア濃度×移動度(導電率)との関係を分析し、c軸とa軸の異方性について評価した。結果を
図13(試験例1)及び
図14(試験例2)に示す。
図13及び
図14から明らかなようにc軸方向に対して抵抗率が低くなる異方性が確認され、またさらに、m軸もやや抵抗率が低くなる異方性が確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、試験例1の各サンプルのキャリア濃度を調べたところ、
図15(試験例3)に示す結果となり、キャリア濃度が低い方が、異方性が大きくなることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の半導体装置は、半導体(例えば化合物半導体電子デバイス等)、電子部品・電気機器部品、光学・電子写真関連装置、工業部材などあらゆる分野に用いることができるが、特に、パワーデバイス等に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 バリアハイト調整層
2 バリア電極
3 半導体領域(半導体層)
4 オーミック電極
5 ガードリング
19 ミスト装置(成膜装置)
20 基板
21 サセプタ
22a キャリアガス供給手段
22b キャリアガス(希釈)供給手段
23a 流量調節弁
23b 流量調節弁
24 ミスト発生源
24a 原料溶液
25 容器
25a 水
26 超音波振動子
27 供給管
28 ヒーター
29 排気口
30 成膜室
101a n-型半導体層
101b n+型半導体層
105a ショットキー電極
105b オーミック電極
131a n-型半導体層
131b 第1のn+型半導体層
131c 第2のn+型半導体層
134 ゲート絶縁膜
135a ゲート電極
135b ソース電極
135c ドレイン電極
141a n-型半導体層
141b 第1のn+型半導体層
141c 第2のn+型半導体層
145a ゲート電極
145b ソース電極
145c ドレイン電極
151 n型半導体層
151a n-型半導体層
151b n+型半導体層
152 p型半導体層
154 ゲート絶縁膜
155a ゲート電極
155b エミッタ電極
155c コレクタ電極
170 電源システム
171 電源装置
172 電源装置
173 制御回路
180 システム装置
181 電子回路
182 電源システム
192 インバータ
193 トランス
194 整流MOSFET
195 DCL
196 PWM制御回路
197 電圧比較器
201 両面冷却型パワーカード
202 冷媒チューブ
203 スペーサ
208 絶縁板(絶縁スペーサ)
209 封止樹脂部
221 隔壁
222 流路
301a 半導体チップ
302b 金属伝熱板(突出端子部)
303 ヒートシンク及び電極
303b 金属伝熱板(突出端子部)
304 はんだ層
305 制御電極端子
308 ボンディングワイヤ