(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電気かみそり
(51)【国際特許分類】
B26B 19/04 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
B26B19/04 U
(21)【出願番号】P 2021058821
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊治
(72)【発明者】
【氏名】小森 俊介
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輝
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-210871(JP,A)
【文献】特開平09-313755(JP,A)
【文献】特開2011-067421(JP,A)
【文献】特開2016-101366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B19/00-19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより把持される本体部と、
外刃及び当該外刃の内方に配置され前記外刃に対して摺動する内刃を備えた
5つ以上の刃ブロックを有するヘッド部と、
前記ヘッド部及び前記本体部を繋ぐヘッド支持部とを備え、
前記ヘッド支持部は、前記本体部に対して前記ヘッド部を浮沈自在に支持しており、
前記ヘッド部は、
前記
5つ以上の刃ブロックを支持するケース部と、
前記
5つ以上の刃ブロックのそれぞれを前記ケース部に対して浮沈自在とする刃フロート部とを備え、
前記ヘッド支持部が前記ヘッド部に対して浮く方向へ付勢する第一付勢力は、前記刃フロート部が前記
5つ以上の刃ブロックのうち
4つの刃ブロックに対して浮く方向へ付勢する第二付勢力よりも大きく、前記刃フロート部が前記
5つ以上の刃ブロックの全てに対して浮く方向へ付勢する第三付勢力よりも小さい
電気かみそり。
【請求項2】
前記
5つ以上の刃ブロックは、前記外刃としてメッシュ刃を有するメッシュ刃ブロックと、前記外刃として複数のスリットが形成されたスリット刃を有するスリット刃ブロックとを含み、
前記刃フロート部により前記第二付勢力が付与される対象は、前記メッシュ刃ブロックである
請求項
1に記載の電気かみそり。
【請求項3】
ユーザにより把持される本体部と、
外刃及び当該外刃の内方に配置され前記外刃に対して摺動する内刃を備えた3つ以上の刃ブロックを有するヘッド部と、
前記ヘッド部及び前記本体部を繋ぐヘッド支持部とを備え、
前記ヘッド支持部は、前記本体部に対して前記ヘッド部を浮沈自在に支持しており、
前記ヘッド部は、
前記3つ以上の刃ブロックを支持するケース部と、
前記3つ以上の刃ブロックのそれぞれを前記ケース部に対して浮沈自在とする刃フロート部とを備え、
前記ヘッド支持部が前記ヘッド部に対して浮く方向へ付勢する第一付勢力は、前記刃フロート部が前記3つ以上の刃ブロックのうち1つ以上少ない複数の刃ブロックに対して浮く方向へ付勢する第二付勢力よりも大きく、前記刃フロート部が前記3つ以上の刃ブロックの全てに対して浮く方向へ付勢する第三付勢力よりも小さく、
前記3つ以上の刃ブロックは、前記外刃としてメッシュ刃を有するメッシュ刃ブロックと、前記外刃として複数のスリットが形成されたスリット刃を有するスリット刃ブロックとを含み、
前記刃フロート部により前記第二付勢力が付与される対象は、前記メッシュ刃ブロックである
電気かみそり。
【請求項4】
前記メッシュ刃ブロックの初期位置は、前記スリット刃ブロックの初期位置よりも前記ケース部から突出している
請求項
2または3に記載の電気かみそり。
【請求項5】
前記メッシュ刃ブロックに対する付勢力は、前記スリット刃ブロックに対する付勢力よりも小さい
請求項4に記載の電気かみそり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気かみそりにおいては、ユーザにより把握される本体と、毛を剃る機能を有するヘッドと、本体及びヘッドを繋げるヘッド支持部とを備えている(例えば特許文献1参照)。ヘッド支持部は、ヘッドを本体に対して浮沈するように支持している。一方、ヘッドは、毛を剃るための複数の刃ブロックを有しており、各刃ブロックがヘッドに対して浮沈するように刃フロート部で支持されている。ここで、ヘッド支持部がヘッドに対して浮くように付与する付勢力は、刃フロート部が一つの刃ブロックに対して浮くように付与する付勢力よりも大きく設定されている。これにより、一つの刃ブロックのみを肌に当てた場合にはヘッドが沈まないので違和感のない操作が可能である。
【0003】
さらに、ヘッド支持部がヘッドに対して浮くように付与する付勢力は、刃フロート部が各刃ブロックに対して浮くように付与する付勢力の合計よりも小さく設定されている。これにより、全ての刃ブロックを肌に当てて急に力を加えた場合には、瞬時にヘッドが沈み込むために、一部の刃ブロックが肌に強く当たることが抑制され、肌への刺激が抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、全ての刃ブロックを肌に押し当て続けた場合、ヘッドが沈んだとしても各刃ブロックに力が分散されるために、いずれの刃ブロックもヘッドに対して沈まず初期高さを維持し続けることがある。このため、一部の刃ブロックが肌に強く当たり続け、肌への刺激を増加させるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、肌に対する刺激をより抑えられる電気かみそりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る電気かみそりは、ユーザにより把持される本体部と、外刃及び当該外刃の内方に配置され外刃に対して摺動する内刃を備えた3つ以上の刃ブロックを有するヘッド部と、ヘッド部及び本体部を繋ぐヘッド支持部とを備え、ヘッド支持部は、本体部に対してヘッド部を浮沈自在に支持しており、ヘッド部は、3つ以上の刃ブロックを支持するケース部と、3つ以上の刃ブロックのそれぞれをケース部に対して浮沈自在とする刃フロート部とを備え、ヘッド支持部がヘッド部に対して浮く方向へ付勢する第一付勢力は、刃フロート部が3つ以上の刃ブロックのうち1つ以上少ない複数の刃ブロックに対して浮く方向へ付勢する第二付勢力よりも大きく、刃フロート部が3つ以上の刃ブロックの全てに対して浮く方向へ付勢する第三付勢力よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電気かみそりによれば、肌に対する刺激をより抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電気かみそりの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るヘッド部及びヘッド支持部の各フロート部を示す模式図である。
【
図3】実施の形態に係るヘッド部の全体にかかる押付荷重と、各刃ブロック及びヘッド部の沈み込み量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電気かみそりの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係及び比率とは異なる。
【0011】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0012】
(電気かみそりの構成)
図1は、電気かみそりを示す斜視図である。なお、電気かみそり100は、エッジはアール面取りがなされ、滑り止め用の凹凸などが設けられる部分が存在するが、これらの図示は省略している。
【0013】
図1に示すように、電気かみそり1は、電気かみそり1を構成する複数の要素を備える本体部10と、毛を剃る機能を備えるヘッド部20と、本体部10とヘッド部20とを繋げるヘッド支持部50とを備えている。本体部10は、ユーザにより把握されるグリップ11と、本体部10の電源のオン及びオフを切り替える電源スイッチ12と、ヘッド部20に内蔵された駆動源(図示省略)に電力を供給する電力供給部(図示省略)を備えている。
【0014】
図2は、実施の形態に係るヘッド部20及びヘッド支持部50の各フロート部を示す模式図である。
図2に示すように、ヘッド支持部50は、本体部10に対してヘッド部20を浮沈自在に支持するためのヘッドフロート部51を有している。ヘッドフロート部51は、ヘッド部20に対して本体部10から浮く方向(離れる方向)へ付勢力を付与する、例えばバネまたはゴムなどの弾性体52を有している。ヘッドフロート部51は、ヘッド部20が外力を受けていない場合にはヘッド部20を本体部10から最も浮かせた状態で維持している。ヘッド部20が外力を受けると、ヘッドフロート部51では弾性体52が収縮するので、ヘッド部20が本体部10に向けて沈降することになる。
【0015】
ヘッド部20は、外観を構成するケース部21と、複数の刃ブロック30と、刃フロート部40と、駆動源とを備えている。駆動源は、例えばリニアモータであり、図示しない伝達機構を介して各刃ブロック30に連結されている。これにより、駆動源からの動力が伝達機構を介して各刃ブロック30に伝達され、各刃ブロック30が動作するようになっている。
【0016】
ケース部21は、刃フロート部40と、駆動源とを収容するとともに、複数の刃ブロック30を支持する部位である。ケース部21は、刃フロート部40及び複数の刃ブロック30が配置される上部ケース部21Aと、駆動源を収容する下部ケース部21Bとを備える。上部ケース部21Aの上面からは、各刃ブロック30の上端部が突出している。上部ケース部21A及び下部ケース部21Bが結合されることによりケース部21が構成されている。
【0017】
複数の刃ブロック30は、それぞれの延在方向がY軸方向に平行になるように配置されている。複数の刃ブロック30はスリット刃ブロック31と、メッシュ刃ブロック32とを含んでいる。本実施の形態では、複数の刃ブロック30は、2つのスリット刃ブロック31と、4つのメッシュ刃ブロック32とを含んでいる。2つのスリット刃ブロック31は、X軸方向に所定の間隔をあけて配置されている。各スリット刃ブロック31においてX軸方向の両側方に一つずつメッシュ刃ブロック32が配置されている。言い換えると、複数の刃ブロック30は、X軸方向に沿って、メッシュ刃ブロック32、スリット刃ブロック31、メッシュ刃ブロック32、メッシュ刃ブロック32、スリット刃ブロック31、メッシュ刃ブロック32の順に配置されている。
【0018】
スリット刃ブロック31は、メッシュ刃ブロック32で剃りにくい長く伸びた毛を切断するための部位である。スリット刃ブロック31は、外刃としてスリット刃311と、内刃312とを有している。スリット刃311は、Y軸方向に長尺状、かつ、Y軸方向視で逆U字状の部材である。
図1に示すように、スリット刃311の上面においてX軸方向の両端部には、X軸方向に延設された複数のスリット313が形成されている。複数のスリット313は、Y軸方向に沿って並んでおり、スリット313同士の間の部位が刃として機能する。スリット刃311において上部開口部の高さ方向の大きさは、後述するメッシュ刃321よりも大きく形成されているので、メッシュ刃ブロック32が導入する毛よりも長い毛を導入し、切断できるようになっている。
【0019】
図2に示すように、内刃312は、スリット刃311の内方に配置されており、スリット刃311の内面に対して摺動することにより、各スリット313に入り込んだ毛を各スリット313同士の間の部位との間で切断する部材である。内刃312の形状や動作態様は、スリット刃311との関係で定められるものであり特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、内刃312の形状は、スリット刃311の内面形状に合致したブレードを複数枚、スリット刃311の延在方向(図中Y軸方向)に並べて配置された形状である。内刃312には、伝達機構を介して駆動源の動力が伝達されるようになっている。内刃312は、伝達機構を介して伝達された駆動源からの動力によって、スリット刃311の延在方向に沿って往復動するものである。これにより、各スリット313に入り込んだ毛をスリット313同士の間の部位と内刃312のブレードとの間で挟んで切断する。
【0020】
メッシュ刃ブロック32は、スリット刃311よりも短く毛を切断するための部位である。メッシュ刃ブロック32は、外刃としてメッシュ刃321と、内刃322とを有している。メッシュ刃321は、Y軸方向に長尺状、かつ、Y軸方向視で逆U字状の部材であり、その上面がY軸方向断面にて凸状に湾曲するように形成されている。メッシュ刃321は、スリット刃311の上面の肉厚よりも厚みの薄い部材である。メッシュ刃321は、多数の孔が設けられた薄板を湾曲させたネット刃であり、短い毛を根元から剃る深剃りの機能を担っている。
【0021】
内刃322は、メッシュ刃321の内方に配置されており、メッシュ刃321の内面に対して摺動することにより、メッシュ刃321の各孔に入り込んだ毛を各孔との間で切断する部材である。内刃322の形状や動作態様は、メッシュ刃321との関係で定められるものであり特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、内刃322の形状は、メッシュ刃321の内面形状に合致したブレードを複数枚、メッシュ刃321の延在方向(図中Y軸方向)に並べて配置された形状である。内刃322には、伝達機構を介して駆動源の動力が伝達されるようになっている。内刃322は、伝達機構を介して伝達された駆動源からの動力によって、メッシュ刃321の延在方向に沿って往復動するものである。これにより、メッシュ刃321の各孔に入り込んだ毛を各孔と内刃312のブレードとの間で挟んで切断する。
【0022】
刃フロート部40は、各刃ブロック30をケース部21に対して浮沈自在とする部位である。刃フロート部40は、各刃ブロック30に対して個別にケース部21から浮く方向(離れる方向)へ付勢力を付与する、例えばバネまたはゴムなどの複数の弾性体42を有している。具体的には、弾性体42は、各刃ブロック30に対して設けられているので、各刃ブロック30を個別に付勢できるようになっている。各弾性体42は、各刃ブロック30の内刃312、322の動作を制限せずに、各刃ブロック30を付勢する構造であればよい。刃フロート部40は、各刃ブロック30が外力を受けていない場合には、各刃ブロック30をケース部21から最も浮かせた状態で維持している。各刃ブロック30がケース部21内に沈む方向(近づく方向)に外力を受けると、刃フロート部40では各弾性体42が収縮するので、各刃ブロック30がケース部21に向けて沈降することになる。
【0023】
ここで、各刃ブロック30の初期位置について説明する。初期位置とは、各刃ブロック30が外力を受けていない場合、つまり各刃ブロック30が肌に触れていない場合での各刃ブロック30の位置である。
図2では、各刃ブロック30が初期位置にある状態を図示している。
【0024】
図2に示すように、複数の刃ブロック30のうち、最内方に位置する2つのメッシュ刃ブロック32の初期位置は、同じ位置に設定されており、先端部(上端部)が他の刃ブロック30よりもケース部21から突出した位置となっている。
【0025】
また、複数の刃ブロック30のうち、最外方に位置する2つのメッシュ刃ブロック32の初期位置は、同じ位置に設定されており、先端部(上端部)が各スリット刃ブロック31よりもケース部21から突出した位置となっている。つまり、各スリット刃ブロック31の初期位置は、他の刃ブロック30よりもケース部21から突出していない位置であって、同じ位置に設定されている。
【0026】
なお、各刃ブロック30が最も沈み込んだ状態では、各刃ブロック30の先端部(上端部)は同位置となるように、各刃ブロック30の最下点が設定されている。
【0027】
(各フロート部の付勢力)
次に、各フロート部(ヘッドフロート部51及び刃フロート部40)が付与する付勢力の関係について説明する。以降、ヘッドフロート部51がヘッド部20に付与する付勢力を第一付勢力と称す。また、刃フロート部40が4つのメッシュ刃ブロック32に付与する付勢力をメッシュ用付勢力と称す。メッシュ用付勢力は第二付勢力の一例である。第二付勢力は、刃フロート部40が3つ以上の刃ブロック30のうち1つ以上少ない複数の刃ブロック30に対して浮く方向へ付勢する力のことである。このため、本実施の形態では、6つの刃ブロック30のうち、一つ以上少ない4つの刃ブロック30(メッシュ刃ブロック32)に付与される付勢力を第二付勢力の一例としている。換言すると第二付勢力(メッシュ用付勢力)は、各メッシュ刃ブロック32に付与される付勢力の合計である。本実施の形態では、各メッシュ刃ブロック32に付与される付勢力は同等とされている。このため、最内方に位置する2つのメッシュ刃ブロック32に付与される付勢力の合計と、最外方に位置する2つのメッシュ刃ブロック32に付与される付勢力の合計も同じとなっている。なお、各メッシュ刃ブロック32に付与される付勢力は異なっていてもよい。
【0028】
刃フロート部40が2つのスリット刃ブロック31に付与する付勢力をスリット用付勢力と称す。本実施の形態では、このスリット用付勢力よりもメッシュ用付勢力(第二付勢力)が小さく設定されている場合を例示するが、同等であってもよいし、大きくてもよい。
【0029】
ここで、メッシュ用付勢力と、スリット用付勢力とを合計したものを第三付勢力とすると、第一付勢力は、第二付勢力よりも大きく、第三付勢力よりも小さく設定されている。この関係性を満たすように、ヘッドフロート部51の弾性体52及び刃フロート部40の各弾性体42のばね定数が設定されている。
【0030】
図3は、実施の形態に係るヘッド部20の全体にかかる押付荷重と、各刃ブロック30及びヘッド部20の沈み込み量との関係を示すグラフである。
図3において、薄いドットハッチング部分は各刃ブロック30の沈み込み量を示す、濃いドットハッチング部分はヘッド部20の沈み込み量を示している。
【0031】
まず、肌には、初期位置が最も突出している最内方の2つのメッシュ刃ブロック32が当接しており、この状態で押付荷重が増加していく。
図3に示すように、押付荷重が点p1に達し、最内方に位置する2つのメッシュ刃ブロック32に付与される付勢力の合計よりも大きくなると、当該2つのメッシュ刃ブロック32が沈み始める。
【0032】
ついで、押付荷重が点p2に達すると、初期位置がスリット刃ブロック31よりも突出している最外方の2つのメッシュ刃ブロック32に対して肌が当接する。この時点から、押付荷重がメッシュ用付勢力を超えるまでの間(点p2~点p3の間)は、最外方の2つのメッシュ刃ブロック32は動作しないので、沈み込み量が一定となる。
【0033】
ついで、押付荷重が点p3に達し、メッシュ用付勢力よりも大きくなると、最外方の2つのメッシュ刃ブロック32が沈み始める。
【0034】
ついで、押付荷重が点p4に達すると、2つのスリット刃ブロック31に対して肌が当接する。この地点から、押付荷重が第三付勢力を超えるまでの間(点p4~点p6の間)は、2つのスリット刃ブロック31は動作しないので、各刃ブロック30の沈み込み量が一定となる。
【0035】
ここで、点p5は、押付荷重が第一付勢力と同等となる地点である。押付荷重が点p5を超えると、ヘッド部20が沈み始める。つまり、ヘッド部20は、肌に対して全ての刃ブロック30が当接した状態で沈み始めることになる。
【0036】
ついで、押付荷重が点p6に達し、第三付勢力よりも大きくなると、2つのスリット刃ブロック31が沈み始める。この時点から、各刃ブロック30が最下点に達するまでの間(点p6~点p7)は、各刃ブロック30は均等に沈み込む。同様に、ヘッド部20も徐々に沈み込み量を大きくしていく。
【0037】
ついで、押付荷重が点p7に達して各刃ブロック30が最下点まで沈むと、それ以降では各刃ブロック30の沈み込み量が一定となるものの、ヘッド部20の沈み込み量は増加していく。最終的に、押付荷重が点p8に達してヘッド部20が最下点に沈むと、ヘッド部20の沈み込み量も一定となる。
【0038】
(効果など)
以上のように、本実施の形態に係る電気かみそり100は、ユーザにより把持される本体部10と、外刃(スリット刃311、メッシュ刃321)及び当該外刃の内方に配置され外刃に対して摺動する内刃312、322を備えた3つ以上の刃ブロック30を有するヘッド部20と、ヘッド部20及び本体部10を繋ぐヘッド支持部50とを備えている。ヘッド支持部50は、本体部10に対してヘッド部20を浮沈自在に支持している。ヘッド部20は、3つ以上の刃ブロック30を支持するケース部21と、3つ以上の刃ブロック30のそれぞれをケース部21に対して浮沈自在とする刃フロート部40とを備えている。ヘッド支持部50がヘッド部20に対して浮く方向へ付勢する第一付勢力は、刃フロート部40が3つ以上の刃ブロック30のうち1つ以上少ない複数の刃ブロック30に対して浮く方向へ付勢する第二付勢力よりも大きく、刃フロート部40が3つ以上の刃ブロック30の全てに対して浮く方向へ付勢する第三付勢力よりも小さい。
【0039】
これによれば、第一付勢力が第二付勢力よりも大きく、かつ第三付勢力よりも小さいので、ヘッド部20が沈み始める前に、複数の刃ブロック30(本実施の形態では4つのメッシュ刃ブロック32)が沈むことになる。つまり、複数の刃ブロック30が肌に当接し、初期位置に対して沈んだ状態となってから、ヘッド部20が沈み始める。これにより、ヘッド部20が沈む前に一つの刃ブロック30が肌に対して強く当たり続けることが抑制される。したがって、肌に対する刺激をより抑えることが可能である。
【0040】
また、過大な力(例えば第三付勢力よりも大きな力)が急峻に刃ブロック30に作用した場合は、刃ブロック30とともにヘッド部20も沈み始める。この場合においても、肌に対する刺激をより抑えることが可能である。
【0041】
また、ヘッド部20は、5つ以上の刃ブロック30を有している。刃フロート部40は、5つ以上の刃ブロック30のそれぞれをケース部21に対して浮沈自在としている。第二付勢力は、刃フロート部40が5つ以上の刃ブロックのうち4つの刃ブロック30に対して浮く方向へ付勢する付勢力である。第三付勢力は、刃フロート部40が5つ以上の刃ブロック30の全てに対して浮く方向へ付勢する付勢力である。
【0042】
これによれば、第二付勢力が4つの刃ブロック30に対して浮く方向へ付勢する付勢力であり、第三付勢力が5つ以上の刃ブロック30の全てに対して浮く方向へ付勢する付勢力である。このため、4つの刃ブロック30が沈み始めてから全ての刃ブロック30が沈み始めるまでの間に、ヘッド部20が沈み始めることとなる。つまり、ヘッド部20が沈み始める前には、4つの刃ブロック30が肌に当接した状態で初期位置から沈んでいるので、肌への当接面積を大きくでき、肌に対する刺激をより抑制することができる。
【0043】
また、3つ以上の刃ブロック30は、外刃としてメッシュ刃321を有するメッシュ刃ブロック32と、外刃として複数のスリット313が形成されたスリット刃311を有するスリット刃ブロック31とを含む。刃フロート部40により第二付勢力が付与される対象は、メッシュ刃ブロック32である。
【0044】
メッシュ刃ブロック32は、スリット刃ブロック31よりも深剃りに適した部位であるため、スリット刃ブロック31よりも確実に肌に当接させることが望まれる。つまり、スリット刃ブロック31よりも肌に当接させたいメッシュ刃ブロック32に対して第二付勢力が付与されているのであれば、メッシュ刃ブロック32が肌に当接して沈み始めた後に、確実にヘッド部20を沈み始めさせることができる。
【0045】
また、メッシュ刃ブロック32の初期位置は、スリット刃ブロック31の初期位置よりもケース部21から突出している。
【0046】
これによれば、メッシュ刃ブロック32の初期位置がスリット刃ブロック31の初期位置よりもケース部21から突出しているので、スリット刃ブロック31よりも先にメッシュ刃ブロック32を確実に当接させることができる。このため、メッシュ刃ブロック32を例えば鼻下などの入り組んだ箇所に当接させやすい。
【0047】
また、メッシュ刃ブロック32に対する付勢力は、スリット刃ブロック31に対する付勢力よりも小さい。
【0048】
これによれば、メッシュ刃ブロック32に対する付勢力がスリット刃ブロック31に対する付勢力よりも小さいので、メッシュ刃ブロック32の方がスリット刃ブロック31よりも沈みやすい。つまり、先に肌に当たるメッシュ刃ブロック32の衝撃吸収力を高めることができ、肌に対する刺激をより抑制することができる。
【0049】
(その他)
以上、本発明に係る電気かみそりについて、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0050】
例えば、上記実施の形態では、刃ブロック30が6つ備えられた電気かみそり100を例示した。しかしながら、刃ブロックの総数は3つ以上であればよい。例えば刃ブロックが3つである場合には、第二付勢力を2つの刃ブロックに対する付勢力とし、第三付勢力を3つの刃ブロックの全てに対する付勢力とし、第一付勢力は第二付勢力よりも大きく、第三付勢力よりも小さくすればよい。また、刃ブロックが5つである場合には、第二付勢力を4つの刃ブロックに対する付勢力とし、第三付勢力を5つの刃ブロックの全てに対する付勢力とし、第一付勢力は第二付勢力よりも大きく、第三付勢力よりも小さくすればよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、第二付勢力が付与される対象がメッシュ刃ブロックのみである場合を例示した。しかしながら第二付勢力が付与される対象は、スリット刃ブロックのみであってもよいし、メッシュ刃ブロックとスリット刃ブロックとの両者であってもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、各刃ブロック30の個数としてメッシュ刃ブロックを4つ、スリット刃ブロックを2つであるものを例示した。しかしながらメッシュ刃ブロックとスリット刃ブロックは1つ以上のいずれの個数であってもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、各刃ブロック30の配置として、メッシュ刃ブロックを最外方に2つ、最内方に2つとし、それらの間に2つのスリット刃ブロックをそれぞれ1つずつであるものを例示した。しかしながら最外方の両方または一方がスリット刃ブロックであってもよいし、同種の刃ブロックが3つ以上連続して配置されていてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、メッシュ刃ブロックの初期位置が、スリット刃ブロックの初期位置よりもケース部から突出しているものを例示した。しかしながらスリット刃ブロックの初期位置が、メッシュ刃ブロックの初期位置よりも、ケース部から突出していてもよい。
【0055】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、髭を剃毛するいわゆる電気シェーバーなど、人を含む動物の体毛を剃毛することができる電気かみそりに適用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 本体部
11 グリップ
12 電源スイッチ
20 ヘッド部
21 ケース部
21A 上部ケース部
21B 下部ケース部
30 刃ブロック
31 スリット刃ブロック
32 メッシュ刃ブロック
40 刃フロート部
42、52 弾性体
50 ヘッド支持部
51 ヘッドフロート部
311 スリット刃
312、322 内刃
313 スリット
321 メッシュ刃