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特許7595280カード読み取り装置、カードを読み取るための装置、及び、カード読み取り方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】カード読み取り装置、カードを読み取るための装置、及び、カード読み取り方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241129BHJP
   G06V 30/14 20220101ALI20241129BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H04N1/00 519
G06V30/14
H05K5/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021137265
(22)【出願日】2021-08-25
(62)【分割の表示】P 2020122995の分割
【原出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019708
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-07-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月15日にPHC株式会社メディコム事業部が主催したインターネット上の展示会「Partners Virtual Convention 2020」にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠平
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/021716(WO,A1)
【文献】特開平11-003406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G06V 30/14
H05K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、カードの表面を撮影する撮像部と、
前記撮像部が撮像可能な範囲に包含されるカード定置領域と、前記筐体の前面から前記カード定置領域に向かって下方傾斜する面とを含むカード載置面とを備え、
前記カード載置面において、前記筐体の前面から前記カード定置領域へ向かう途中の所定位置までの傾斜角度が、当該所定位置から前記カード定置領域までの傾斜角度よりも小さい、
カード読み取り装置。
【請求項2】
前記所定位置が、前記カード定置領域の端と略一致する、
請求項に記載のカード読み取り装置。
【請求項3】
前記カード載置面の表面が、前記カードの面積より狭い範囲で凹凸が繰り返し現れる形状を持つ、
請求項1または2に記載のカード読み取り装置。
【請求項4】
前記カード載置面にシボ加工が施されている、
請求項に記載のカード読み取り装置。
【請求項5】
前記カード載置面に前方から後方に向かう複数の直線状の凸線が設けられている、
請求項に記載のカード読み取り装置。
【請求項6】
前記カード定置領域は、左右方向が前後方向よりも短い、
請求項1または2に記載のカード読み取り装置。
【請求項7】
前記撮像部の撮影した画像または前記カードの読み取り結果を外部の表示装置に出力する、
請求項1に記載のカード読み取り装置。
【請求項8】
前記撮像部の撮影した画像または前記カードの読み取り結果を表示する表示部をさらに備える、
請求項1に記載のカード読み取り装置。
【請求項9】
カードを読み取るための装置であって、カード読み取り装置と表示装置とを備え、
前記カード読み取り装置は、
筐体と、
前記筐体内に設けられ、カードの表面を撮影する撮像部と、
前記撮像部が撮像可能な範囲に包含されるカード定置領域と、前記筐体の前面から前記カード定置領域に向かって下方傾斜する面とを含むカード載置面とを備え、
前記カード載置面において、前記筐体の前面から前記カード定置領域へ向かう途中の所定位置までの傾斜角度が、当該所定位置から前記カード定置領域までの傾斜角度よりも小さく、
前記撮像部の撮影した画像または前記カードの読み取り結果を前記表示装置に出力する、
カードを読み取るための装置。
【請求項10】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、カードの表面を撮影する撮像部と、
前記撮像部が撮像可能な範囲に包含されるカード定置領域と、
前記筐体の前面から前記カード定置領域に向かって下方傾斜する面とを含むカード載置面とを備えるカード読み取り装置を用いたカード読み取り方法であって、
前記カード載置面において、前記筐体の前面から前記カード定置領域へ向かう途中の所定位置までの傾斜角度が、当該所定位置から前記カード定置領域までの傾斜角度よりも小さく、
ユーザによって前記カードが前記カード載置面に載置された場合、前記カードに前記下方傾斜する面を滑走させることで前記カード定置領域に移動させる、
カード読み取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カード読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カードに印刷されたバーコードを読み取るカード読み取り装置が開示されており、当該カード読み取り装置は、次の構成を採る。すなわち、カード読み取り装置は、カードを外部から挿入するためのカード挿入部と、挿入されたカードに印刷されたバーコードを読み取るデータ読取部とを備える。カード挿入部は、カードを横方向に案内するガイド部材を有する。ガイド部材は、カードが挿入される手前側が開放された横長の偏平な箱状に形成されており、その縦横高さ寸法は、各方向ともに横向きのカードの最大寸法に若干の余裕を加えた寸法に設定されている。加えて、ガイド部材は、挿入及び定置されたカードの端がカード挿入部から露出するように形成されている。この構成によれば、カード挿入部に横方向に挿入されたカードは、自重により、ガイド部材に案内されながら傾斜面を滑り落ち、カードの端が露出した状態で定置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-25352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている上記の構成では、ガイド部材の縦横高さ寸法は、各方向ともに横向きのカードの最大寸法に若干の余裕を加えた程度しかないため、
カードの挿入時から正確な位置合わせが必要となる。また、カードを定置した場合に、カードの露出した部分を詰まんで抜き出す必要があるため、カードの取り出しの利便性も低い。しかしながら、単純に縦横高さ寸法の余裕を大きくすると、カードに記録された情報の読み取りに適した位置にカードを定置することが難しくなり、読み取りの失敗が発生し易くなる。
【0005】
本開示の目的は、ユーザが簡単な動作でカードを読み取らせることができ、かつ、カードに記録された情報の読み取り失敗を低減するカード読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るカード読み取り装置は、筐体と、前記筐体内に設けられ、カードの表面を撮影する撮像部と、前記撮像部が撮像可能な範囲に包含されるカード定置領域と、前記筐体の前面から前記カード定置領域に向かって下方傾斜する面とを含むカード載置面とを備える。
本開示に係るカードを読み取るための装置は、カードを読み取るための装置であって、カード読み取り装置と表示装置とを備え、前記カード読み取り装置は、筐体と、前記筐体内に設けられ、カードの表面を撮影する撮像部と、前記撮像部が撮像可能な範囲に包含されるカード定置領域と、前記筐体の前面から前記カード定置領域に向かって下方傾斜する面とを含むカード載置面とを備え、前記撮像部の撮影した画像または前記カードの読み取り結果を前記表示装置に出力する。
本開示に係るカード読み取り方法は、筐体と、前記筐体内に設けられ、カードの表面を撮影する撮像部と、前記撮像部が撮像可能な範囲に包含されるカード定置領域と、前記筐体の前面から前記カード定置領域に向かって下方傾斜する面とを含むカード載置面とを備えるカード読み取り装置を用いたカード読み取り方法であって、ユーザによって前記カードが前記カード載置面に載置された場合、前記カードに前記下方傾斜する面を滑走させることで前記カード定置領域に移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ユーザが簡単な動作でカードを読み取らせることができ、かつ、カードに記録された情報の読み取り失敗を低減するカード読み取り装置、カードを読み取るための装置、及び、カード読み取り方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るカードが載置される前のカード読み取り装置の構成例を示す斜視図
図2】本実施の形態に係るカードが載置された後のカード読み取り装置の構成例を示す斜視図
図3】本実施の形態に係るカード読み取り装置の構成例を示す断面図
図4】本実施の形態に係るカード読み取り装置におけるカード載置面の部分の構成例を示す拡大図
図5】本実施の形態に係るカード読み取り装置における撮像領域とカード定置領域との関係を説明するための図
図6】本実施の形態に係るカード載置面に直線状の凸線を設けたカード読み取り装置の構成例を示す斜視図
図7】本実施の形態に係るカード読み取り装置の変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、
必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
(本実施の形態)
図1及び図2は、本実施の形態に係るカード読み取り装置の構成例を示す斜視図である。図1は、カードが載置される前のカード読み取り装置を示し、図2は、カードが載置された後のカード読み取り装置を示す。図3は、本実施の形態に係るカード読み取り装置の構成例を示す断面図である。図3は、図1に示すカード読み取り装置のA-A断面図に相当する。図4は、本実施の形態に係るカード読み取り装置におけるカード載置面の部分の構成例を示す拡大図である。図5は、本実施の形態に係るカード読み取り装置における撮像領域とカード定置領域との関係を説明するための図である。
【0011】
カード読み取り装置1は、カード2の表面に印刷された文字、数字及び/又は記号等(以下「文字等」という)を読み取る装置である。カード2の例として、個人番号カード、
運転免許証、健康保険被保険者証、病院の診察券、及び、店舗の会員証等が挙げられる。
カード2のサイズは、ISO/IEC 7810「ID-1」の規格に準拠してよい。また、カード2の素材は、プラスチックであってよい。ただし、本実施の形態のカード2は、これら例示したカードに限定されない。なお、以下の説明では、カード2の長辺の長さを「横幅」、カード2の短辺の長さを「縦幅」と称する場合がある。また、カード2の形状は、長方形に限定されず、正方形であってもよい。また、カード2の形状における角は、丸められていてもよいし、直角等の尖った形であってもよい。
【0012】
カード読み取り装置1の筐体10は、例えば、図1図3に示すように、略四角錐台の形状を呈し、前面11、後面12、左側面13、右側面14、底面15及び上面16を有する。
【0013】
なお、説明の便宜上、筐体10の底面15に対して垂直かつ高さ方向に延びる軸をZ軸とする。Z軸に対して垂直(つまり筐体10の底面15に平行)かつ筐体10の前面11から後面12に延びる軸をY軸とする。Y軸及びZ軸に対して垂直な軸をX軸とする。また、説明の便宜上、Z軸の正方向を「上」、Z軸の負方向を「下」、Y軸の負方向を「前」、Y軸の正方向を「後」、X軸の負方向を「左」、X軸の正方向を「右」と称する場合がある。なお、これらの方向に係る表現は、説明の便宜上用いられるものであって、当該構造の実使用時における姿勢を限定する意図ではない。
【0014】
カード読み取り装置1は、筐体10の内部に、撮像部20及び制御部(図示しない)を備える。カード読み取り装置1は、筐体10の前面11に表示部22を備える。
【0015】
撮像部20は、カード2の表面(上面)を撮像し、撮像画像を生成する。撮像部20の例として、CCDカメラ又はCMOSカメラが挙げられる。また、撮像部20は、カードの表面の文字等の全体を撮像するため、底面15から高さ方向に離れた位置に設置されている。
【0016】
制御部は、撮像部20から撮像画像を受信し、撮像画像に含まれる文字等を認識する。
すなわち、制御部は、撮像部20と連携して、カード2の表面に対してOCR(Optical Character Recognition)を行う。なお、制御部は、プロセッサ及びメモリを含む装置であってよい。OCRは、メモリに格納された所定のプログラムがプロセッサに実行されることにより実現されてもよい。
【0017】
表示部22は、カード読み取り装置1が提供する機能に関する情報を表示する。例えば、表示部22は、撮像画像を表示したり、OCRの成功又は失敗を表示したりする。表示部22の例として、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイが挙げられる。
【0018】
OCRの失敗を回避するためには、図5に示すように、撮像部20が撮像可能な領域(以下「撮像領域」という)101内にカード2を載置することが求められる。そこで以下では、ユーザが簡単な動作で、撮像領域101内にカード2を載置できる構成を有するカード読み取り装置1について説明する。
【0019】
図1図3に示すように、筐体10の前面11の下方部分には、略四角形の開口部30が形成される。そして、開口部30から後方に向けて、カード2が投入される空間であるカード投入空間40が形成される。
【0020】
カード読み取り装置1は、開口部30の下辺31から後方に向かって延出し、カード2が載置される面であるカード載置面41を有する。カード載置面41は、後方(Y軸の正方向)に向かって下方傾斜している。
【0021】
また、カード読み取り装置1は、開口部30の左辺32から後方に向かって延出する面である左内側面42を有する。カード読み取り装置1は、開口部30の右辺33から後方に向かって延出する面である右内側面43を有する。カード読み取り装置1は、左内側面42の後方の辺と右内側面43の後方の辺とに繋がる面である内奥面44を有する。すなわち、カード投入空間40は、開口部30、カード載置面41、左内側面42、右内側面43、及び、内奥面44によって囲まれた空間である。ここで、カード投入空間40を、
囲んだ形にすることにより、カード2に対する外光の影響(反射や影など)を低減することができる。これにより、撮像部20はより安定した環境で、カード2の表面の文字等を撮影することができる。
【0022】
また、カード載置面41上には、左内側面42よりも右方に位置し、後方に向かって形成される壁である左内側壁51が設けられる。カード載置面41上には、右内側面43よりも左方に位置し、後方に向かって形成される壁である右内側壁52が設けられる。図5に示すように、左内側壁51と右内側壁52との間の距離L1の最小値は、カード2の横幅よりも長く、撮像領域101の左右方向(X軸方向)の幅よりも小さくてよい。
【0023】
このような構成によれば、図1に示すように、ユーザがカード2を横向きにしてカード載置面41に載置した場合、カード2は次のように移動する。すなわち、カード2は、当該カード2の短辺が左内側壁51及び右内側壁52にガイドされながら、下方傾斜しているカード載置面41上を、後方に向かって滑走し、当該カード2の長辺が内奥壁53に衝突して停止する。なお、左内側壁51及び右内側壁52は、開口部30の下辺31から後方に向かって、カード載置面41が狭くなるように構成されている。すなわち、左内側壁51及び右内側壁52との間の間隔は開口部30の後方に向かうほど狭まる。これにより、カード2が奥に向かって滑走していくにつれて、カード2の左右方向の位置も是正され、内奥壁53に衝突した状態では左右方向においても所望の位置に収まるよう移動する。
なお、内奥壁53に衝突した状態で所望の位置に収まるのであれば、カード載置面41の幅が単調に狭くなるように構成する必要はない。すなわち、幅が一定である区間が含まれていたり、或いは、いったん幅が広がる区間が含まれていたりしてもよい。本実施の形態では、このような場合も含めて、「カード載置面41が狭くなるよう構成されている」と称する。
【0024】
すなわち、カード2は、図4及び図5に示すように、予め定められたカード2の読み取りに適した領域(以下「カード定置領域」という)102内に定置する。本実施の形態では、カード定置領域102は、左内側壁51、右内側壁52及び内奥壁53によって囲まれた領域としているが、より狭い領域又は広い領域であっても構わない。ここで、図4及び図5に示すように、左内側壁51、右内側壁52及び内奥壁53は、カード定置領域102が撮像領域101に包含されるように配置される。
【0025】
これにより、ユーザはカード2をカード載置面41に置くという簡単な動作を行うことで、カード2をカード定置領域102に定置させることができる。図3に示すように、撮像部20は、筐体10内において開口部30よりも上方に設けられ、図5に示すように、
カード定置領域102を包含する撮像領域101を有する。よって、カード読み取り装置1は、カード定置領域102に定置されたカード2の表面を撮像して、カード2の表面の文字等を正常に読み取ることができる。
【0026】
左内側壁51と右内側壁52との間の距離L1は、前方が最も長く、後方に向かうにつれて短くなってよい。これにより、カード載置面41の前方の面積が広がるので、ユーザはより簡単にカード2を載置できる。
【0027】
カード載置面41は、図4に示すように、開口部30の下辺31から後方へ向かう途中の所定位置(以下「屈折位置」という)45までの傾斜角度が、当該屈折位置45から内奥壁53までの傾斜角度よりも小さくてよい。屈折位置45から内奥壁53までの傾斜角度は、例えば、13.5度である。加えて、開口部30の下辺31から屈折位置45までの距離L2は、屈折位置45から内奥壁53までの距離L3よりも短く、屈折位置45から内奥壁53までの距離L3は、カード2の縦幅以上であってよい。
【0028】
これにより、開口部30の下辺31から内奥壁53までの傾斜角度が一定である場合と比較して、カード2がカード定置領域102に到達するまでの滑走距離が短くなるため、
カード2が滑走途中で停止してしまう可能性を低減できる。すなわち、傾斜角度が一定の場合、内奥壁53へカード2を滑り込ませようとすると、カード2の底面のより広い部分が筐体10に触れることとなり、より大きな摩擦力が発生する。これによって、カード2の滑走が途中で停止してしまう可能性が高まる。これに対し、屈折位置45から内奥壁53までの傾斜角度を、開口部30から屈折位置45までの傾斜角度よりも大きくすることにより、次の作用が得られる。すなわち、カード2の載置角度を屈折位置45から内奥壁53までの傾斜角度に合わせた場合に、開口部30から屈折位置45までの部分において、カード2が筐体10と接しなくなる。したがって、発生する摩擦力が抑制され、その結果、カード2が内奥壁53まで滑走しやすくなる。
【0029】
また、屈折位置45で傾斜角度が変わることにより、開口部30の陰影は屈折位置45の手前と奥で変化する。具体的には、開口部30の外から見た場合、屈折位置45から内奥壁53までの方が暗く見える。したがって、屈折位置45から内奥壁53までの距離L3をカード定置領域102の端と略同一にすることにより、この陰影の差によってカード定置領域102の境界をユーザに認識させることができる。すなわち、カード定置領域102が明確になるので、ユーザはカード2が正しくカード定置領域102に定置されているか否かを一目で確認できる。なお、屈折位置45を、カード定置領域102を認識させる目的で用いないのであれば、屈折位置45から内奥壁53までの距離L3をより長くしてもよいし、短くしてもよい。上述したとおり、距離L3を短くするほど摩擦力の発生を抑制することができるが、距離L3は、カード2が内奥壁53に接した状態において、カード2の重心が屈折位置45から内奥壁53に収まる範囲の長さであるとよい。距離L3をこの長さよりも短くした場合、カード2が屈折位置45よりも手前側に倒れてしまい、
撮像部20の撮影に適した角度で安定しなくなるためである。
【0030】
図4に示すように、カード読み取り装置1において、左内側壁51の上辺から左内側面42に向かって上方に傾斜している左内側壁上面54が設けられてよい。カード読み取り装置1において、右内側壁52の上辺から右内側面43に向かって上方に傾斜している右内側壁上面55が設けられてよい。カード読み取り装置1において、内奥壁53の上辺から内奥面44に向かって上方に傾斜している内奥壁上面56が設けられてよい。
【0031】
これにより、カード投入空間40に投入されたカード2が、左内側壁上面54、右内側壁上面55、又は、内奥壁上面56に乗り上げてしまったとしても、カード2は、壁上面54、55、56の傾斜により、カード定置領域102内に滑り落ちる。したがって、ユーザはカード投入空間40にカード2を投入するという簡単な動作を行うことで、カード2をカード定置領域102に定置させることができる。よって、カード読み取り装置1は、カード定置領域102に定置されたカード2の表面を撮像して、カード2の表面の文字等を正常に読み取ることができる。特に、カード2の記載内容によっては、カード2の表面の上端又は下端に読み取るべき文字等が記載されている場合がある。この場合、カード定置領域102が内奥側に余裕を持たない範囲に設定された場合、内奥側に位置する文字等が撮像部20の撮像範囲から外れてしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、
内奥壁上面56にも傾斜を設けることによって、カード2が奥に滑り込み過ぎないように規制している。これにより、カード2を滑り込ませる方向の上下を規定しなくとも、上端又は下端に記載された文字等をより確実に撮像部20の撮影範囲に収めることができる。
なお、カード2を滑り込ませた状態において、読み取り対象の文字等が撮像部20の撮影範囲の中央付近に配置されることが保証されている場合、内奥壁上面56に傾斜を設けなくともよい。例えば、読み取り対象の文字等がカード2の中央付近以外には記載されていない場合、あるいは、カード2を滑り込ませる方向に人為的又は機構的に制限が設けられている場合である。
【0032】
なお、図4に示すように、左内側壁51、左内側壁上面54、右内側壁52、右内側壁上面55、内奥壁53、及び、内奥壁上面56は、一体的に形成されてよい。あるいは、
左内側壁51及び左内側壁上面54と、右内側壁52及び右内側壁上面55と、内奥壁53及び内奥壁上面56とは、それぞれ、別体として形成されてもよい。
【0033】
カード定置領域102は、左内側壁51、右内側壁52、内奥壁53、左内側壁上面54、右内側壁上面55、及び、内奥壁上面56の位置関係によって定まるので、カードを挿抜する従来構成と比較して、開口部30の設計の自由度が向上する。よって、ユーザがカード2をより簡単にカード投入空間40に投入できるように、開口部30を広く採ることができる。加えて、開口部30を広く採ることにより、ユーザは、開口部30に手を入れて、カード定置領域102に載置したカード2を容易に取り出すことができる。
【0034】
また、プラスチック素材で構成されたカード載置面41の表面には、細かな凹凸を設ける加工が施されてよい。これにより、カード載置面41に載置されたカード2の滑りが向上する。特に、カード2が微細な水滴等によって湿っている場合、凹凸のないカード載置面上に載置されたカード2は、水滴の表面張力によってカード載置面に張り付いてしまい、滑走が止まってしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、カード載置面41に細かな凹凸を設けることによって、カード2が滑走途中で停止してしまう可能性を低減している。細かな凹凸を設ける加工の例として、シボ加工、エンボス加工、又は、デボス加工等が挙げられる。
【0035】
ただし、カード載置面41におけるカード2の滑りを向上させる構成は、上述した例に限られない。例えば、図6に示すように、カード載置面41の表面に、前方から後方に向かう複数の直線状の凸線61を設けてもよい。これにより、カード載置面41に載置されたカード2の滑りが向上する。
【0036】
なお、上述した各形状以外の加工であっても同様の効果は得られる。例えば、カード2の面積より狭い範囲で凹凸が繰り返し現れる形状を用いるとよい。カード2の面積よりも広い範囲で凹凸が繰り返し現れる形状の場合、カード2が凹凸の間に落ち込んだときに、
凹凸に引っかかってカード2の移動がかえって規制されてしまうためである。また、左内側壁上面54、右内側壁上面55、内奥壁上面56についても上記と同様の凹凸形状にすることで、これらの壁上面54、55、56に乗り上げてしまったカード2の滑りを向上させることができる。
【0037】
図1図3に示すように、前面11と底面15との間の角度は90度よりも小さくてよい。これにより、前面11が傾斜し、ユーザは表示部22を見やすくなる。加えて、当該構成によれば、カード載置面41の前方が少し露出するようになるので、ユーザはカード2をカード載置面41に載置し易くなる。
【0038】
<変形例>
上述では、カード2を横向きに載置する例を説明したが、本実施の形態は、カード2を縦向きに載置する場合にも適用可能である。この場合、上述では左右方向が長く、前後方向が短かったカード定置領域102が、左右方向が短く、前後方向が長くなるように、左内側壁51、右内側壁52及び内奥壁53を配置すればよい。この場合、左内側壁51と右内側壁52との間の距離L1の最小値は、カード2の縦幅よりも長く、撮像領域101の左右方向(X軸方向)の幅よりも小さくてよい。
【0039】
上述では、カード2及びカード載置面41がプラスチック素材で構成される例を説明した。しかし、カード2及びカード載置面41は、紙や金属といった他の素材で構成されていてもよい。すなわち、カード2がカード載置面41上を滑走することを阻害しない限り、カード2及びカード載置面41は、どのような素材で構成されてもよい。
【0040】
上述では、カード定置領域102が平面である例を説明した。これにより、ユーザは、
読み取りが完了した後のカード2を手前に滑らせるだけで容易に取り出すことができる。
しかし、滑り込ませた状態のカード2の位置をより正確に規制する場合、カード定置領域102の一部をカード2の大きさに合わせて凹ませてもよい。
【0041】
上述では、左内側壁51と左内側壁上面54、並びに、右内側壁52と内側壁上面55により、左右両方のカード2の移動を規制している。しかし、撮像領域101が左右いずれかに偏って広い場合などには、必ずしも左右両方の移動を規制しなくてもよい。すなわち、内側壁および内側壁上面は、左右いずれか一方のみに設けてもよい。
【0042】
上述では、カード2の表面の文字等を撮像部20が撮像する構成を説明した。しかし、
本実施の形態は、これに限られない。例えば、カード2が近距離無線通信を行うICチップを内蔵したカード等である場合は、そのICチップの送信回路がカード読み取り装置1に配置された受信回路と合致する位置を、カード定置領域102としてもよい。すなわち、本実施の形態の思想は、カード2を所望の位置に定置させるべき任意の装置に適用することができる。また、ICチップ等のカードとの距離を確保する必要がない読み取り手段を使用する場合は、カード載置面41に受信回路を埋め込んでもよい。この場合、開口部30の上方にカメラ等を設ける必要はないため、開口部30を、上方に壁や他の構成要素がない形状にしてもよい。
【0043】
上述では、開口部30の上端が、表示部22の下端と略一致している例を説明した。しかし、表示部22が別装置として実現されているなど、開口部30の上方に表示部22がない構成の場合は、更に開口部30の高さ寸法を大きくしてよい。この場合、例えば、上述したようなカード2の表面の文字等を上方向から撮像する構成であれば、撮像部20が設置されている位置まで開口部30の高さ寸法を大きくしてよい。このように、開口部30の高さ寸法を広げることで、ユーザはより容易に開口部30に手を入れやすくなるため、カード2の投入と取り出しをより容易に実施することができる。
【0044】
上述では、内側壁51、52および内側壁上面54、55は、内側面42、43よりも短く構成されている例を説明した。また、上述では、内側壁51、52と、内側壁上面54、55と、内側面42、43とを分けて説明した。しかし、本実施の形態は、これに限らない。例えば、図7に示すように、内側壁51、52、内側壁上面54、55、及び、
内側面42、43は、一体型の面(例えば連続する曲面)として形成されてもよい。
【0045】
(本開示のまとめ)
本開示に係るカード読み取り装置1は、筐体10と、筐体10の前面11に形成される開口部30と、開口部30の下辺31から後方に向かって下方傾斜して延出し、カード2が載置される面であるカード載置面41と、開口部30の左辺32から後方に向かって延出する面である左内側面42と、開口部30の右辺33から後方に向かって延出する面である右内側面43と、左内側面42の後方の辺と右内側面43の後方の辺とに繋がる面である内奥面44とを備え、左内側面42または右内側面43の少なくとも一方には、開口部30の下辺31から後方に向かって、カード載置面41が狭くなるよう内側壁51、52が設けられている。
【0046】
この構成によれば、ユーザがカード2をカード載置面41に載置した場合、載置されたカード2は次のように移動する。すなわち、カード2は、左内側壁51及び右内側壁52の少なくとも一方にガイドされながら、下方傾斜しているカード載置面41上を、後方に向かって滑走し、内奥壁53に衝突して停止する。ここで、内側壁51、52は、開口部30の下辺31から後方に向かって、狭くなるように構成されているため、カード2は滑走していくにつれて左右方向の位置も規制される。したがって、ユーザは、開口部30の入口部分でのカード2を載置する位置を厳密に調整しなくとも、カード2をカード定置領域102内に定置させることができる。
【0047】
また、カード載置面41において、開口部30の下辺31から後方へ向かう途中の屈折位置45までの傾斜角度は、当該屈折位置45から内奥壁53までの傾斜角度よりも小さくてよい。
【0048】
この構成によれば、カード2が内奥壁53に到達するまでの滑走距離が短くなるため、
カード2が滑走途中で停止してしまう可能性を低減できる。
【0049】
また、所定位置が、開口部30の下辺31から後方へ向かう方向におけるカード定置領域102の端と略一致してよい。
【0050】
この構成によれば、カード定置領域102が明確になるので、ユーザはカード2がカード定置領域102に正しく定置されているか否かを一目で確認できる。
【0051】
また、カード読み取り装置1は、左内側面42よりも右方に位置し、カード載置面41上において後方に向かって形成され、左内側面42に向かって上方に傾斜している上面を備える壁である左内側壁51と、右内側面43よりも左方に位置し、カード載置面41上において後方に向かって形成され、右内側面43に向かって上方に傾斜している上面を備える壁である右内側壁52との少なくとも一方をさらに備えてよい。
【0052】
この構成によれば、左内側壁上面54、又は、右内側壁上面55に乗り上げてしまったカード2は、壁上面54、55の傾斜により、カード定置領域102内に滑り落ちる。すなわち、ユーザが、カード2をカード載置面41よりも高い位置で離したとしても、カード2は、壁上面54、55を滑り落ちる過程でカード定置領域102に自動的に移動する。したがって、ユーザはカード2を投入する際に高さ方向の位置を意識せずとも、カード2をカード定置領域102に定置させることができる。また、この構成によれば、左内側壁上面54、又は、右内側壁上面55によって、左右方向のカード2の位置が調整されるため、カード2の左端又は右端に読み取るべき文字等が記載されている場合に、その文字等をより確実にカード定置領域102に含ませることができる。
【0053】
また、左内側壁51および右内側壁52のうちの少なくとも1つの上面に凹凸加工が施されてよい。この構成によれば、壁上面54、55に乗り上げたカード2の滑りが向上する。
【0054】
また、カード読み取り装置1は、内奥面44よりも前方に位置し、カード載置面41上において左右方向に向かって形成され、内奥面44に向かって上方に傾斜している上面を備える壁である内奥壁53をさらに備えてよい。
【0055】
この構成によれば、内奥壁上面56に乗り上げてしまったカード2は、壁上面56の傾斜により、カード定置領域102内に滑り落ちる。また、ユーザが、カード2をカード載置面41よりも高い位置で離したりしたとしても、カード2は、壁上面56を滑り落ちる過程でカード定置領域102に自動的に移動する。したがって、ユーザはカード2を投入する際に高さ方向の位置を意識せずとも、カード2をカード定置領域102に定置させることができる。また、この構成によれば、内奥壁上面56によって、奥行き方向のカード2の位置が調整されるため、カード2の上端又は下端に読み取るべき文字等が記載されている場合に、カード2の投入方向を意識せずとも、カード2の表面の文字等をより確実にカード定置領域102に含ませることができる。
【0056】
また、内奥壁53の上面に凹凸加工が施されてよい。この構成によれば、壁上面56に乗り上げたカード2の滑りが向上する。
【0057】
また、カード載置面41の表面は、カード2の面積より狭い範囲で凹凸が含まれる形状を有してもよい。この構成によれば、カード載置面41に載置されたカード2の滑りが向上する。
また、カード載置面41にシボ加工が施されてよい。この構成によれば、カード載置面41に載置されたカード2の滑りが向上する。
【0058】
また、カード載置面41に前方から後方に向かう複数の直線状の凸線61が設けられてよい。この構成によれば、カード載置面41に載置されたカード2の滑りが向上する。
【0059】
また、カード読み取り装置1は、筐体10内において開口部30よりも上方に設けられ、カード載置面41に載置されたカード2の表面を撮像する撮像部20と、を備え、カード定置領域102は、撮像部20が撮像可能な領域に包含されてよい。
【0060】
この構成によれば、カード定置領域102は撮像領域101に包含されているので、カード読み取り装置1は、カード定置領域102に定置されたカード2の表面を撮像して、
カード2の表面の文字等を正常に読み取ることができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示の技術は、カードの表面に印刷された文字等を読み取るための装置に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 カード読み取り装置
2 カード
10 筐体
11 前面
12 後面
13 左側面
14 右側面
15 底面
16 上面
20 撮像部
22 表示部
30 開口部
31 開口部の下辺
32 開口部の左辺
33 開口部の右辺
40 カード投入空間
41 カード載置面
42 左内側面
43 右内側面
44 内奥面
45 屈折位置
51 左内側壁
52 右内側壁
53 内奥壁
54 左内側壁上面
55 右内側壁上面
56 内奥壁上面
61 凸線
101 撮像領域
102 カード定置領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7