(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】緩衝部材、蓄電モジュールおよび緩衝部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20241129BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20241129BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20241129BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20241129BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20241129BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20241129BHJP
H01M 10/6554 20140101ALN20241129BHJP
H01M 10/647 20140101ALN20241129BHJP
H01M 10/6556 20140101ALN20241129BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20241129BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/262 E
H01M50/209
H01G2/02 101E
H01G11/10
H01G11/78
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/647
H01M10/6556
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2021548898
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035648
(87)【国際公開番号】W WO2021060221
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2019176409
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】乗峯 笙汰
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 光俊
(72)【発明者】
【氏名】粂 信吾
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207607(WO,A1)
【文献】特開2015-185463(JP,A)
【文献】特開2019-067665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01G 11/10
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの蓄電装置と、
前記蓄電装置とともに第1方向に配列されて、前記蓄電装置から第1方向に荷重を受ける緩衝部材と、を備え、
前記緩衝部材は、前記第1方向に配列される第1層部および第2層部を少なくとも有し、
前記第1層部は、前記第1方向に自身を貫通する貫通孔または前記第1方向に凹む凹部で構成される第1軟化部を有し、
前記第2層部は、前記第1方向に自身を貫通する貫通孔または前記第1方向に凹む凹部で構成される第2軟化部を有し、
前記第1軟化部および前記第2軟化部は、前記第1方向から見て少なくとも一部分がずれて
おり、
前記第1軟化部は、複数の第1離間部と、複数の第1重畳部とを含み、
前記第1離間部は、前記第1方向から見て前記第2軟化部に対して全体がずれている前記第1軟化部であり、
前記第1重畳部は、前記第1方向から見て前記第2軟化部に対して一部分がずれている前記第1軟化部である、
蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1層部は、前記第1軟化部を除く部分である第1残部を有し、
前記第2層部は、前記第2軟化部を除く部分である第2残部を有し、
前記緩衝部材は、前記第1残部および前記第2残部が重なる積層部を有する、
請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第1方向から見て、前記緩衝部材の単位面積に占める前記積層部の面積の割合は、前記緩衝部材の外縁部側より中心部側が小さい、
請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記蓄電装置は、筐体と、前記筐体の第1面に配置される一対の出力端子と、前記筐体に収容される電極体と、を有し、
前記筐体は、前記第1方向と交わる方向に広がる側面を有し、
前記第1方向から見て、前記緩衝部材の単位面積に占める前記積層部の面積の割合は、前記側面の外縁部側よりも中心部側が小さい、
請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記蓄電装置は、筐体と、前記筐体の第1面に配置される一対の出力端子と、前記筐体に収容される電極体と、を有し、
前記電極体は、前記第1方向に並ぶ正極および負極を有し、
前記第1方向から見て、前記緩衝部材の単位面積に占める前記積層部の面積の割合は、前記電極体の外縁部側よりも中心部側が小さい、
請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記第1方向から見て、前記第2残部よりも前記第1残部の方が面積が小さい、
請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記第1層部の密度は、前記第1方向から見て前記第1層部の外縁部側よりも中心部側が小さい、
請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記複数の第1重畳部の少なくとも1つは、前記複数の第1離間部よりも、前記第1方向から見て前記緩衝部材の中心部側に配置される、
請求項
1に記載の蓄電モジュール。
【請求項9】
前記蓄電装置は、筐体と、前記筐体の第1面に配置される一対の出力端子と、前記筐体に収容される電極体と、を有し、
前記筐体は、前記第1方向と交わる方向に広がる側面を有し、
前記複数の第1重畳部の少なくとも1つは、前記複数の第1離間部よりも、前記第1方向から見て前記側面の中心部側に配置される、
請求項
1または
8に記載の蓄電モジュール。
【請求項10】
前記蓄電装置は、筐体と、前記筐体の第1面に配置される一対の出力端子と、前記筐体に収容される電極体と、を有し、
前記電極体は、前記第1方向に並ぶ正極および負極を有し、
前記複数の第1重畳部の少なくとも1つは、前記複数の第1離間部よりも、前記第1方向から見て前記電極体の中心部側に配置される、
請求項
1,8,9のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項11】
前記第2層部の密度は、前記第1方向から見て前記第2層部の外縁部側よりも中心部側が小さい、
請求項
1,7
,8,9,10のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項12】
少なくとも1つの蓄電装置と、
前記蓄電装置とともに第1方向に配列されて、前記蓄電装置から第1方向に荷重を受ける緩衝部材と、を備え、
前記緩衝部材は、前記第1方向に配列される第1層部および第2層部を少なくとも有し、
前記第1層部は、前記第1方向に自身を貫通する貫通孔または前記第1方向に凹む凹部で構成される第1軟化部を有し、
前記第2層部は、前記第1方向に自身を貫通する貫通孔または前記第1方向に凹む凹部で構成される第2軟化部を有し、
前記第1軟化部および前記第2軟化部は、前記第1方向から見て少なくとも一部分がずれており、
前記第2
軟化部は、
複数の第2離間部と、複数の第2重畳部とを含み、
前記第2離間部は、前記第1方向から見て前記第1軟化部に対して全体がずれている
前記第2軟化部であり、
前記第2重畳部は、前記第1方向から見て前記第1軟化部に対して一部分がずれている
前記第2軟化部である
、
蓄電モジュール。
【請求項13】
前記複数の第2重畳部の少なくとも1つは、前記複数の第2離間部よりも、前記第1方向から見て前記緩衝部材の中心部側に配置される、
請求項
12に記載の蓄電モジュール。
【請求項14】
前記蓄電装置は、筐体と、前記筐体の第1面に配置される一対の出力端子と、前記筐体に収容される電極体と、を有し、
前記筐体は、前記第1方向と交わる方向に広がる側面を有し、
前記複数の第2重畳部の少なくとも1つは、前記複数の第2離間部よりも、前記第1方向から見て前記側面の中心部側に配置される、
請求項
12または
13に記載の蓄電モジュール。
【請求項15】
前記蓄電装置は、筐体と、前記筐体の第1面に配置される一対の出力端子と、前記筐体に収容される電極体と、を有し、
前記電極体は、前記第1方向に並ぶ正極および負極を有し、
前記複数の第2重畳部の少なくとも1つは、前記複数の第2離間部よりも、前記第1方向から見て前記電極体の中心部側に配置される、
請求項
12乃至
14のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項16】
少なくとも1つの蓄電装置とともに第1方向に配列されて、前記蓄電装置から第1方向に荷重を受ける緩衝部材であって、
前記第1方向に配列される第1層部と第2層部とを少なくとも備え、
前記第1層部は、前記第1方向に自身を貫通する貫通孔または前記第1方向に凹む凹部で構成される第1軟化部を有し、
前記第2層部は、前記第1方向に自身を貫通する貫通孔または前記第1方向に凹む凹部で構成される第2軟化部を有し、
前記第1軟化部および前記第2軟化部は、前記第1方向から見て少なくとも一部分がずれて
おり、
前記第1軟化部は、複数の第1離間部と、複数の第1重畳部とを含み、
前記第1離間部は、前記第1方向から見て前記第2軟化部に対して全体がずれている前記第1軟化部であり、
前記第1重畳部は、前記第1方向から見て前記第2軟化部に対して一部分がずれている前記第1軟化部である、
緩衝部材。
【請求項17】
少なくとも1つの蓄電装置とともに第1方向に配列されて、前記蓄電装置から第1方向に荷重を受ける緩衝部材の製造方法であって、
厚さ方向に自身を貫通する貫通孔または厚さ方向に凹む凹部で構成される第1軟化部を有する第1シートと、厚さ方向に自身を貫通する貫通孔または厚さ方向に凹む凹部で構成される第2軟化部を有する第2シートと、を前記第1軟化部および前記第2軟化部の少なくとも一部分がずれるようにして積層することを含
み、
前記第1軟化部は、複数の第1離間部と、複数の第1重畳部とを含み、
前記複数の第1離間部は、前記第1方向から見て前記第2軟化部に対して全体がずれている前記第1軟化部であり、
前記複数の第1重畳部は、前記第1方向から見て前記第2軟化部に対して一部分がずれている前記第1軟化部である、
緩衝部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緩衝部材、蓄電モジュールおよび緩衝部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の、高い出力電圧が要求される電源として、複数個の蓄電装置(例えば電池)が直列接続された蓄電モジュールが知られている。一般に蓄電モジュールは、複数の蓄電装置と、隣接する蓄電装置間に配置される複数のセパレータと、蓄電装置の配列方向における両端に配置される一対のエンドプレートと、一対のエンドプレート間に掛け渡されて複数の蓄電装置を配列方向に拘束するバインドバーと、を備えていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に蓄電装置は、様々な要因により膨張する。従来の蓄電モジュールでは、エンドプレートおよびバインドバーでこの膨張を押さえ込んでいた。また、蓄電モジュールでは、蓄電装置間の電気的接続の保持や、外部からの衝撃等による蓄電装置の飛び出しを防止するために、バインドバーの拘束力で蓄電装置を固定していた。
【0005】
近年、蓄電モジュールのさらなる高容量化が求められており、この要求を満たすために蓄電装置の高容量化が進んでいる。蓄電装置が高容量化すると蓄電装置の膨張量が増大し、バインドバーにかかる荷重も増大する。したがって、バインドバーの破損を防いで蓄電モジュールの信頼性を保つ対策が必要となる。バインドバーの拘束力を弱めればバインドバーにかかる荷重を低減できるため、バインドバーの破損を抑制することができる。しかしながら、バインドバーの拘束力を弱めると、蓄電装置の位置決めが疎かになるおそれがあり、蓄電モジュールの信頼性が低下し得る。
【0006】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電モジュールの信頼性を高めるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、蓄電モジュールである。この蓄電モジュールは、少なくとも1つの蓄電装置と、蓄電装置とともに第1方向に配列されて、蓄電装置から第1方向に荷重を受ける緩衝部材と、を備える。緩衝部材は、第1方向に配列される第1層部および第2層部を少なくとも有する。第1層部は、第1方向に自身を貫通する貫通孔または第1方向に凹む凹部で構成される第1軟化部を有する。第2層部は、第1方向に自身を貫通する貫通孔または第1方向に凹む凹部で構成される第2軟化部を有する。第1軟化部および第2軟化部は、第1方向から見て少なくとも一部分がずれている。
【0008】
本開示の他の態様は、少なくとも1つの蓄電装置とともに第1方向に配列されて、蓄電装置から第1方向に荷重を受ける緩衝部材である。この緩衝部材は、第1方向に配列される第1層部と第2層部とを少なくとも備える。第1層部は、第1方向に自身を貫通する貫通孔または第1方向に凹む凹部で構成される第1軟化部を有する。第2層部は、第1方向に自身を貫通する貫通孔または第1方向に凹む凹部で構成される第2軟化部を有する。第1軟化部および第2軟化部は、第1方向から見て少なくとも一部分がずれている。
【0009】
本開示の他の態様は、少なくとも1つの蓄電装置とともに第1方向に配列されて、蓄電装置から第1方向に荷重を受ける緩衝部材の製造方法である。この製造方法は、厚さ方向に自身を貫通する貫通孔または厚さ方向に凹む凹部で構成される第1軟化部を有する第1シートと、厚さ方向に自身を貫通する貫通孔または厚さ方向に凹む凹部で構成される第2軟化部を有する第2シートと、を第1軟化部および第2軟化部の少なくとも一部分がずれるようにして積層することを含む。
【0010】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、蓄電モジュールの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る蓄電モジュールの斜視図である。
【
図3】各蓄電装置が膨張する様子を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る緩衝部材の正面図である。
【
図5】
図5(A)は、緩衝部材が備える第1層部の正面図である。
図5(B)は、緩衝部材が備える第2層部の正面図である。
【
図6】
図6(A)~
図6(D)は、緩衝部材の一部分の断面図である。
【
図7】
図7(A)は、変形例1に係る緩衝部材の斜視図である。
図7(B)は、緩衝部材の正面図である。
【
図8】
図8(A)は、変形例2に係る緩衝部材の斜視図である。
図8(B)は、緩衝部材の正面図である。
【
図9】
図9(A)は、変形例5に係る緩衝部材の斜視図である。
図9(B)は、
図9(A)のA-A線に沿った断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
図1は、実施の形態に係る蓄電モジュールの斜視図である。
図2は、蓄電モジュールの分解斜視図である。
図2では、緩衝部材40の図示を簡略化している。蓄電モジュール1は、一例として電池積層体2と、一対の拘束部材6と、冷却板8と、を備える。電池積層体2は、複数の蓄電装置10と、複数のセパレータ12と、複数の緩衝部材40と、一対のエンドプレート4と、を有する。
【0015】
各蓄電装置10は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池や、電気二重層キャパシタなどのキャパシタである。本実施の形態の蓄電装置10は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の筐体13を有する。筐体13は、外装缶14および封口板16で構成される。外装缶14は、一面に略長方形状の開口を有し、この開口を介して外装缶14に正極38a、負極38bおよび多孔質セパレータ38dを含む電極体38(
図3参照)や電解液等が収容される。外装缶14は、シュリンクチューブ等の図示しない絶縁フィルムで被覆される。外装缶14の表面を絶縁フィルムで被覆することで、隣り合う蓄電装置10間の短絡と、蓄電装置10とエンドプレート4、拘束部材6および冷却板8のそれぞれとの間の短絡とを抑制することができる。外装缶14の開口には、開口を塞いで外装缶14を封止する封口板16が設けられる。封口板16は、筐体13の第1面13aを構成する。
【0016】
電極体38は、複数のシート状の正極38aと複数のシート状の負極38bとが多孔質セパレータ38dを介して交互に積層された構造を有する(
図3参照)。正極38aおよび負極38bは、第1方向Xに並ぶ。したがって、積層方向において両端に位置する電極は、筐体13の後述する長側面と向かい合う。なお、電極体38は、帯状の正極と帯状の負極とが多孔質セパレータを介して巻き回され、正極と負極とが平らに広がる平坦部と、正極と負極とが屈曲する屈曲部と、を有する扁平巻回型の電極体であってもよい。この場合、電極体38は、平坦部が第1方向Xと交わる(例えば直交する)方向に広がるように配置される。つまり、平坦部の厚さ方向が第1方向Xと平行になるように配置される。
【0017】
封口板16、つまり筐体13の第1面13aには、長手方向の一端寄りに電極体38の正極38aと電気的に接続される出力端子18が設けられ、他端寄りに電極体38の負極38bと電気的に接続される出力端子18が設けられる。以下では適宜、正極38aに接続される出力端子18を正極端子18aと称し、負極38bに接続される出力端子18を負極端子18bと称する。また、一対の出力端子18の極性を区別する必要がない場合、正極端子18aと負極端子18bとをまとめて出力端子18と称する。外装缶14および封口板16は導電体であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス等の金属で構成される。封口板16と外装缶14とは、例えばレーザー、摩擦攪拌接合、ろう接等で接合される。あるいは、外装缶14および封口板16は、絶縁性の樹脂で構成される。
【0018】
外装缶14は、封口板16と対向する底面を有する。また、外装缶14は、開口および底面をつなぐ4つの側面を有する。4つの側面のうち2つは、開口および底面の対向する2つの長辺に接続される一対の長側面である。各長側面は、外装缶14が有する面のうち面積の最も大きい面、すなわち主表面である。また、各長側面は、第1方向Xと交わる(例えば直交する)方向に広がる側面である。2つの長側面を除いた残り2つの側面は、外装缶14の開口および底面の対向する2つの短辺に接続される一対の短側面である。外装缶14の底面、長側面および短側面は、それぞれ筐体13の底面、長側面および短側面に対応する。
【0019】
本実施の形態の説明では、便宜上、筐体13の第1面13aを蓄電装置10の上面とする。また、筐体13の底面を蓄電装置10の底面とし、筐体13の長側面を蓄電装置10の長側面とし、筐体13の短側面を蓄電装置10の短側面とする。また、蓄電モジュール1において、蓄電装置10の上面側の面を蓄電モジュール1の上面とし、蓄電装置10の底面側の面を蓄電モジュール1の底面とし、蓄電装置10の短側面側の面を蓄電モジュール1の側面とする。また、蓄電モジュール1の上面側を鉛直方向上方とし、蓄電モジュール1の底面側を鉛直方向下方とする。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本開示において上面と規定された部分は、底面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。よって、封口板16は、外装缶14の底面よりも上方に位置するとは限らない。
【0020】
封口板16には、一対の出力端子18の間に安全弁(図示せず)が設けられる。安全弁は、筐体13の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、筐体13の内部のガスを放出できるように構成される。安全弁は、例えば、封口板16の一部に設けられる他部よりも厚さが薄い薄肉部と、この薄肉部の表面に形成される線状の溝とで構成される。この構成では、筐体13の内圧が上昇すると、溝を起点に薄肉部が裂けることで安全弁が開弁する。
【0021】
複数の蓄電装置10は、隣り合う蓄電装置10の長側面どうしが対向するようにして所定の間隔で並設される。本実施の形態では、複数の蓄電装置10が並ぶ方向を第1方向Xとする。また、各蓄電装置10の出力端子18は、互いに同じ方向を向くように配置される。本実施の形態では、各蓄電装置10の出力端子18は、便宜上、鉛直方向上方を向くように配置される。なお、各蓄電装置10の出力端子18は、異なる方向を向くように配置されてもよい。
【0022】
隣接する2つの蓄電装置10は、一方の蓄電装置10の正極端子18aと他方の蓄電装置10の負極端子18bとが隣り合うように配列(積層)される。正極端子18aと負極端子18bとは、バスバー(図示せず)を介して直列接続される。なお、隣接する複数個の蓄電装置10における同極性の出力端子18どうしをバスバーで並列接続して蓄電装置ブロックを形成し、蓄電装置ブロックどうしを直列接続してもよい。
【0023】
セパレータ12は、絶縁スペーサとも呼ばれ、隣接する2つの蓄電装置10の間に配置されて、当該2つの蓄電装置10間を電気的に絶縁する。セパレータ12は、例えば絶縁性を有する樹脂で構成される。セパレータ12を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂が例示される。複数の蓄電装置10と複数のセパレータ12とは、交互に積層される。また、セパレータ12は、蓄電装置10とエンドプレート4との間にも配置される。
【0024】
セパレータ12は、平面部20と、壁部22と、を有する。平面部20は、隣接する2つの蓄電装置10の対向する長側面間に介在する。これにより、隣り合う蓄電装置10の外装缶14どうしがより確実に絶縁される。
【0025】
壁部22は、平面部20の外縁部から蓄電装置10が並ぶ第1方向Xに延び、蓄電装置10の上面の一部、側面、および底面の一部を覆う。これにより、隣り合う蓄電装置10間、あるいは蓄電装置10とエンドプレート4との間の沿面距離を確保することができる。また、蓄電装置10の筐体13と、拘束部材6とがより確実に絶縁される。また、出力端子18が並ぶ第2方向Yや、蓄電装置10の上面と底面とが並ぶ第3方向Zにおける蓄電装置10の位置を規制あるいは固定することができる。第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zは、互いに直交する方向である。
【0026】
壁部22は、蓄電装置10の底面が露出するよう切り欠き24を有する。切り欠き24を設けることで、蓄電装置10と冷却板8との間の熱的な接続がセパレータ12によって阻害されることを回避することができる。また、セパレータ12は、第2方向Yにおける両端部に、上方を向く付勢受け部26を有する。
【0027】
緩衝部材40は、複数の蓄電装置10とともに第1方向Xに配列される。緩衝部材40は、シート状であり、例えば各蓄電装置10の長側面と各セパレータ12の平面部20との間に介在する。隣り合う2つの蓄電装置10の間に配置される緩衝部材40の数は、1枚でも複数枚でもよい。緩衝部材40は、平面部20の表面に接着等により固定することができる。あるいは、平面部20に凹部が設けられ、この凹部に緩衝部材40が嵌め込まれてもよい。緩衝部材40の構造および作用については、後に詳細に説明する。
【0028】
並設された複数の蓄電装置10、複数のセパレータ12および複数の緩衝部材40は、一対のエンドプレート4で第1方向Xに挟まれる。一対のエンドプレート4と第1方向Xにおける両端に配置する蓄電装置10との間には、セパレータ12が配置される。これにより、蓄電装置10の外装缶14と、エンドプレート4とがより確実に絶縁される。エンドプレート4は、例えば金属板や樹脂板からなる。エンドプレート4には、エンドプレート4を第1方向Xに貫通し、ねじ28が螺合するねじ穴4aが設けられる。
【0029】
一対の拘束部材6は、バインドバーとも呼ばれ、第1方向Xを長手方向とする長尺状の部材である。一対の拘束部材6は、第2方向Yにおいて互いに向かい合うように配列される。一対の拘束部材6の間には、電池積層体2が介在する。各拘束部材6は、本体部30と、支持部32と、複数の付勢部34と、一対の固定部36と、を備える。
【0030】
本体部30は、第1方向Xに延在する矩形状の部分である。本体部30は、各蓄電装置10の側面に対して平行に延在する。支持部32は、第1方向Xに延在するとともに、本体部30の下端から第2方向Yに突出する。支持部32は、第1方向Xに連続する板状体であり、電池積層体2を支持する。
【0031】
複数の付勢部34は、本体部30の上端に接続され、第2方向Yに突出する。支持部32と各付勢部34とは、第3方向Zにおいて対向する。また、複数の付勢部34は、所定の間隔をあけて第1方向Xに配列される。各付勢部34は、各蓄電装置10に対応して配置される。各付勢部34は板ばね状であり、各蓄電装置10を支持部32に向けて付勢する。
【0032】
一対の固定部36は、第1方向Xにおける本体部30の両端部から第2方向Yに突出する板状体である。一対の固定部36は、第1方向Xにおいて対向する。各固定部36には、ねじ28が挿通される貫通孔36aが設けられる。一対の固定部36により、拘束部材6は電池積層体2に固定される。
【0033】
冷却板8は、複数の蓄電装置10を冷却するための機構である。冷却板8は、金属等の熱伝導性を有する材料で構成される。電池積層体2は、一対の拘束部材6で拘束された状態で冷却板8の主表面上に載置され、支持部32の貫通孔32aと冷却板8の貫通孔8aとにねじ等の締結部材(図示せず)が挿通されることで、冷却板8に固定される。各蓄電装置10は、冷却板8との間で熱交換することで冷却される。冷却板8には、冷媒が内部を流通する冷媒管(図示せず)が設けられてもよい。
【0034】
蓄電モジュール1は、例えば以下の方法で組み立てられる。すなわち、蓄電装置10、緩衝部材40およびセパレータ12がこの順に繰り返し配列され、一対のエンドプレート4で第1方向Xに挟まれることで、電池積層体2が形成される。電池積層体2は、一対の拘束部材6で第2方向Yに挟まれる。各拘束部材6は、貫通孔36aがエンドプレート4のねじ穴4aと重なるように位置合わせされる。この状態で、ねじ28が貫通孔36aに挿通され、またねじ穴4aに螺合される。このように、一対の拘束部材6が一対のエンドプレート4に係合されることで、複数の蓄電装置10が拘束される。電池積層体2は、第1方向Xに所定の圧力がかけられた状態で拘束部材6により締結される。
【0035】
各蓄電装置10は、拘束部材6によって第1方向Xに締め付けられることで、第1方向Xの位置決めがなされる。また、各蓄電装置10は、底面が支持部32によって支持される。各蓄電装置10の底面と支持部32との間にはセパレータ12の壁部22が介在する。また、各蓄電装置10に対応する付勢受け部26には、付勢部34が当接する。各付勢部34は、付勢受け部26を介して各蓄電装置10を支持部32に向けて付勢する。すなわち、支持部32と複数の付勢部34とにより、各蓄電装置10が第3方向Zに挟み込まれる。この結果、各蓄電装置10の第3方向Zの位置決めがなされる。
【0036】
一例として、これらの位置決めが完了した後に、各蓄電装置10の出力端子18にバスバーが取り付けられて、複数の蓄電装置10の出力端子18どうしが電気的に接続される。例えばバスバーは、溶接により出力端子18に固定される。その後、電池積層体2の上面は、カバー部材(図示せず)で覆われる。カバー部材により、蓄電装置10の出力端子18、バスバー、安全弁等への結露水や塵埃等の接触が防止される。カバー部材は、例えば絶縁性を有する樹脂からなり、ねじや周知の係止機構を含む周知の固定構造(図示せず)により、電池積層体2の上面に固定することができる。
【0037】
拘束部材6およびカバー部材が取り付けられた電池積層体2は、冷却板8に載置され、貫通孔8aおよび貫通孔32aに締結部材が挿通されることで冷却板8に固定される。以上の工程により、蓄電モジュール1が得られる。なお、電池積層体2を冷却板8に設置した上で、電池積層体2と冷却板8とをまとめて拘束部材6により固定して蓄電モジュール1を製造してもよい。この場合、冷却板8は一対の拘束部材6の内側に配置される。
【0038】
図3は、各蓄電装置10が膨張する様子を模式的に示す断面図である。
図3では、蓄電装置10の個数を間引いて図示している。また、蓄電装置10の内部構造およびセパレータ12の図示を簡略化し、緩衝部材40の図示を省略している。
図3に示すように、各蓄電装置10の内部には電極体38が収容される。蓄電装置10は、充放電等にともなって外装缶14が膨張と収縮とを繰り返す。外装缶14の膨張は、主に電極体38の膨張によって引き起こされる。各蓄電装置10の外装缶14が膨張すると、電池積層体2には第1方向Xの外側へ向かう荷重G1が発生する。一方、電池積層体2には、拘束部材6によって荷重G1に対応する荷重G2がかけられる。これにより、各蓄電装置10の膨張が押さえ込まれる。
【0039】
拘束部材6で複数の蓄電装置10を拘束する構造では、蓄電装置10が膨張すると拘束部材6に荷重がかかる。蓄電装置10の高容量化により膨張量が増大すると、拘束部材6にかかる荷重も増大する。拘束部材6にかかる荷重が過剰になれば、拘束部材6が破損するおそれがある。破損を防ぐために拘束部材6の強度を高めようとすると、拘束部材6ひいては蓄電モジュール1の大型化やコスト増につながり得る。また、拘束部材6で蓄電装置10の膨張を押さえ込むと、電極体38(特に多孔質セパレータ38d)が過度に押圧されて、蓄電装置10の性能の低下や短寿命化を招き得る。
【0040】
拘束部材6による蓄電装置10の拘束を緩めれば、拘束部材6にかかる荷重を低減することができる。しかしながら、蓄電モジュール1内での位置決めのためには、各蓄電装置10にある程度の荷重をかける必要がある。このため、蓄電装置10の拘束を単純に緩めることはできない。
【0041】
これに対し、本実施の形態に係る蓄電モジュール1は、緩衝部材40を備える。
図4は、実施の形態1に係る緩衝部材40の正面図である。
図5(A)は、緩衝部材40が備える第1層部の正面図である。
図5(B)は、緩衝部材40が備える第2層部の正面図である。
図6(A)~
図6(D)は、緩衝部材40の一部分の断面図である。
図4では、蓄電装置10とともに第1方向Xに配列された状態にある緩衝部材40を図示している。また、セパレータ12の図示を省略している。また、第1層部42が紙面奥側に、第2層部44が紙面手前側に配列された状態を図示している。
【0042】
緩衝部材40は、蓄電装置10とともに第1方向Xに配列されて、蓄電装置10から第1方向Xに荷重を受ける部材である。緩衝部材40は、第2方向Yおよび第3方向Zに広がるシート状である。緩衝部材40は、第1方向Xに配列される第1層部42および第2層部44を少なくとも有する。本実施の形態の緩衝部材40は、第1層部42および第2層部44のみで構成される。なお、緩衝部材40の層数は2層に限定されず、3層以上であってもよい。また、緩衝部材40は、第1層部42や第2層部44と同じ素材で構成されるとともに貫通孔や凹部のない層部を含んでもよい。第1層部42および第2層部44は、ともにシート状である。第1層部42は第1シート42aで構成され、第2層部44は第2シート44aで構成される。
【0043】
第1層部42は、複数の第1軟化部46と、第1残部47とを有する。同様に、第2層部44は、複数の第2軟化部48と、第2残部49とを有する。なお、第1軟化部46および第2軟化部48は、それぞれ1つであってもよい。
図6(A)~
図6(C)に示すように、本実施の形態の第1軟化部46は、第1方向Xに第1シート42aを貫通する貫通孔で構成される。同様に、本実施の形態の第2軟化部48は、第1方向Xに第2シート44aを貫通する貫通孔で構成される。なお、
図6(D)に示すように、第1軟化部46および第2軟化部48は、第1方向Xに凹む凹部で構成されてもよいし、貫通孔と凹部とが組み合わされてもよい。軟化部は、その形状から肉抜き部とも言える。第1残部47は、複数の第1軟化部46を除く中実部分である。第2残部49は、複数の第2軟化部48を除く中実部分である。
【0044】
図4~
図5(B)に示すように、各第1軟化部46および各第2軟化部48は、第1方向Xから見て円形である。また、各第1軟化部46および各第2軟化部48の大きさは、均一である。なお、第1軟化部46および第2軟化部48の形状や大きさは、場所によって異ならせてもよい。例えば、第1軟化部46および第2軟化部48はそれぞれ、直線状の溝やスリット孔であってもよい。
【0045】
第1層部42は、第1軟化部46の配置される部分が第1軟化部46の配置されない部分、つまり第1残部47に比べて変形しやすくなる。同様に第2層部44は、第2軟化部48の配置される部分が第2軟化部48の配置されない部分、つまり第2残部49に比べて変形しやすくなる。この場合の変形とは、第1方向Xへの圧縮変形である。各層部における、軟化部に隣接するとともに蓄電装置10と当接する部分は、蓄電装置10からの力を受けて圧縮された際に、一部分が軟化部側に変位することができる。つまり、軟化部に隣接する部分の一部は、軟化部内に逃げることができる。したがって、第1軟化部46および第2軟化部48を設けることで、各軟化部の周縁部を変形しやすくすることができる。言い換えれば、各層部の全体が同一の材料で構成される場合であっても、各軟化部の周縁領域における見かけ上の弾性率(圧縮弾性率)を小さくすることができる。
【0046】
第1層部42の密度は、第1方向Xから見て第1層部42の外縁部側よりも中心部側が小さい。言い換えれば、第1層部42の単位面積に占める第1軟化部46の面積の割合は、第1方向Xから見て第1層部42の外縁部側よりも中心部側が大きい。同様に第2層部44の密度は、第1方向Xから見て第2層部44の外縁部側よりも中心部側が小さい。言い換えれば、第2層部44の単位面積に占める第2軟化部48の面積の割合は、第1方向Xから見て第2層部44の外縁部側よりも中心部側が大きい。本明細書における「外縁部側」および「中心側」は、対象部材における2か所を比較して、対象部材の中心部に近い箇所が「中心側」と定義され、対象部材の中心部から遠い箇所が「外縁部側」と定義される。対象部材の中心部は、例えば第1方向Xから見た対象部材の外径の幾何中心である。
【0047】
つまり、第1軟化部46は、第1層部42の中心部に近いほど多く設けられ、第2軟化部48は、第2層部44の中心部に近いほど多く設けられる。したがって、第1層部42および第2層部44は、中心部側が変形しやすく、外縁部側が変形しにくい。緩衝部材40の中心部は、例えば第1方向Xから見た緩衝部材40の外径の幾何中心である。緩衝部材40の外縁部は、例えば緩衝部材40における第2方向Yの端部および第3方向Zの端部を含む領域である。
【0048】
上述のように、蓄電装置10の膨張は、主に電極体38の膨張によって引き起こされる。また、電極体38は、中心部38Cに近い部分ほど大きく膨張する。したがって、蓄電装置10が膨張すると、筐体13の長側面の中心部13Cに近い部分、あるいは電極体38の中心部38Cに近い部分ほど第1方向Xに大きく変位し、筐体13の長側面の外縁部に近い部分、あるいは電極体38の外縁部に近い部分ほど小さく変位する。これに対し、緩衝部材40は、外縁部側が相対的に変形しにくく、中心部側が相対的に変形しやすい。このため、蓄電装置10の大きい変位によって生じる大きい荷重を変形しやすい部分で受け、蓄電装置10の小さい変位によって生じる小さい荷重を変形しにくい部分で受けるように、蓄電装置10に対して緩衝部材40を配置しやすくすることができる。
【0049】
第1層部42および第2層部44が第1方向Xに積層されることで、緩衝部材40が得られる。第1層部42および第2層部44は、第1方向Xから見て互いの外縁部が一致するように重ねられる。第1層部42および第2層部44の積層により、緩衝部材40には、第1軟化部46および第2軟化部48の少なくとも一方が配置される部分と、第1軟化部46および第2軟化部48の両方が配置されない部分、つまり第1残部47および第2残部49が重なる積層部45とが形成される。
【0050】
第1層部42および第2層部44の位置決め方法として、第1層部42と第2層部44の外縁部付近に互いに重なる第1軟化部46および第2軟化部48を設け、この一対の軟化部に、セパレータ12に設けた凸部もしくは位置決め用の別部材を嵌合させることで、第1層部42および第2層部44を位置決めしてもよい。また、第1層部42と第2層部44とは、拘束部材6による第1方向Xの締め付けのみによって互いに固定されてもよいし、接着等の公知の固定方法によって互いに固定されてもよい。
【0051】
この状態で、第1軟化部46および第2軟化部48は、第1方向Xから見て少なくとも一部分がずれるように、第1層部42および第2層部44に配置される。「第1方向Xから見て少なくとも一部分がずれる」とは、第1方向Xから見て、一方の軟化部の開口縁の少なくとも一部が、他方の軟化部の開口縁と重ならないことを意味する。したがって、第1方向Xから見て、一方の軟化部の開口縁の全周が他方の軟化部の開口縁の内側または外側に位置することも含まれる。
【0052】
例えば、
図6(A)に示すように、一部の第1軟化部46は、第1方向Xから見て第2軟化部48に対して全体がずれるように配置される。また、
図6(B)および
図6(C)に示すように、他の一部の第1軟化部46は、第1方向Xから見て第2軟化部48に対して一部分がずれるように配置される。同様に、
図6(A)に示すように、一部の第2軟化部48は、第1方向Xから見て第1軟化部46に対して全体がずれるように配置される。また、
図6(B)および
図6(C)に示すように、他の一部の第2軟化部48は、第1方向Xから見て第1軟化部46に対して一部分がずれるように配置される。
【0053】
以下では適宜、第1方向Xから見て第2軟化部48に対して全体がずれている第1軟化部46を第1離間部46aといい、第1方向Xから見て第2軟化部48に対して一部分がずれている第1軟化部46を第1重畳部46bという。本実施の形態の第1層部42は、複数の第1離間部46aと、複数の第1重畳部46bとを有する。また、第1方向Xから見て第1軟化部46に対して全体がずれている第2軟化部48を第2離間部48aといい、第1方向Xから見て第1軟化部46に対して一部分がずれている第2軟化部48を第2重畳部48bという。本実施の形態の第2層部44は、複数の第2離間部48aと、複数の第2重畳部48bとを有する。
【0054】
つまり、第1離間部46aは、第1方向Xから見ていずれの第2軟化部48とも全く重ならず、第1離間部46aの第2層部側の開口は、第2残部49により塞がっている。第1重畳部46bは、第1方向Xから見ていずれかの第2軟化部48と一部分が重なる。同様に、第2離間部48aは、第1方向Xから見ていずれの第1軟化部46とも全く重ならず、第2離間部48aの第1層部側の開口は、第1残部47により塞がっている。第2重畳部48bは、第1方向Xから見ていずれかの第1軟化部46と一部分が重なる。
【0055】
第1重畳部46bおよび第2重畳部48bには、
図6(B)に示すように、相対的にずれ量が多い、つまり第1重畳部46bと第2重畳部48bとが重なる部分が小さいものと、
図6(C)に示すように相対的にずれ量が少ない、つまり第1重畳部46bと第2重畳部48bとが重なる部分が大きいものとが含まれる。なお、全体が第2軟化部48と重なる第1軟化部46が含まれていてもよいし、全体が第1軟化部46と重なる第2軟化部48が含まれていてもよい。
【0056】
緩衝部材40では、積層部45に比べて、第1軟化部46および第2軟化部48の少なくとも一方が配置される部分の方が変形しやすい。また、第1重畳部46bと第2重畳部48bとの重なりが大きくなるほど、より変形しやすくなる。すなわち、軟化部を設けることで、軟化部に隣接する部分を変位しやすくすることができる。そして、第1重畳部46bおよび第2重畳部48bの重なる部分が大きいほど、単位面積当たりに含まれる、軟化部に隣接する部分の量が増えることになる。言い換えれば、当該重なる部分が大きいほど第1重畳部46bや第2重畳部48bの周囲に位置する積層部45の面積が減る傾向にある。積層部45は中実であるため、緩衝部材40において第1軟化部46および第2軟化部48が配置される部分よりも変形しにくい。このため、第1軟化部46と第2軟化部48との重なりが大きくなるほど、その部分において緩衝部材40はより変形しやすくなる。
【0057】
したがって、
図6(A)に示すように、緩衝部材40において第1離間部46aあるいは第2離間部48aが配置される領域に比べて、
図6(B)や
図6(C)に示すように、第1重畳部46bあるいは第2重畳部48bが配置される領域の方が変形しやすい。
【0058】
よって、緩衝部材40に第1離間部46a、第2離間部48a、第1重畳部46bおよび第2重畳部48bを設けることで、緩衝部材40の変形しやすさを場所によって細かく調整することが可能となる。言い換えれば、第1離間部46a、第2離間部48a、第1重畳部46bおよび第2重畳部48bを並べることで、これらの軟化部の周囲に配置される積層部45の形状、大きさ、位置、数量を簡便に調整することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、複数の第1重畳部46bの少なくとも1つは、複数の第1離間部46aよりも、第1方向Xから見て緩衝部材40の中心部側に配置される。同様に、複数の第2重畳部48bの少なくとも1つは、複数の第2離間部48aよりも、第1方向Xから見て緩衝部材40の中心部側に配置される。これらにより、緩衝部材40の外縁部側に対して中心部側をより変形しやすくすることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、複数の第1重畳部46bの少なくとも1つは、複数の第1離間部46aよりも、第1方向Xから見て筐体13の長側面の中心部13C側に配置される。これにより、緩衝部材40において筐体13の外縁部側と重なる部分に対して筐体13の中心部13C側と重なる部分をより変形しやすくすることができる。筐体13の長側面の中心部13Cは、例えば第1方向Xから見た筐体13の外形の幾何中心である。筐体13の長側面の外縁部は、例えば長側面における第2方向Yの端部および第3方向Zの端部を含む領域である。
【0061】
同様に、複数の第2重畳部48bの少なくとも1つは、複数の第2離間部48aよりも、第1方向Xから見て筐体13の長側面の中心部13C側に配置される。これにより、緩衝部材40において筐体13の長側面の外縁部側と重なる部分に対して、筐体13の長側面の中心部13C側と重なる部分をより変形しやすくすることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、複数の第1重畳部46bの少なくとも1つは、複数の第1離間部46aよりも、第1方向Xから見て電極体38の中心部38C側に配置される。これにより、緩衝部材40において電極体38の外縁部側と重なる部分に対して電極体38の中心部38C側と重なる部分をより変形しやすくすることができる。電極体38の中心部38Cは、例えば第1方向Xから見た電極体38の外形の幾何中心である。電極体38の外縁部は、例えば電極体38における第2方向Yの端部および第3方向Zの端部を含む領域である。
【0063】
同様に、複数の第2重畳部48bの少なくとも1つは、複数の第2離間部48aよりも、第1方向Xから見て電極体38の中心部38C側に配置される。これにより、緩衝部材40において電極体38の外縁部側と重なる部分に対して電極体38の中心部38C側と重なる部分をより変形しやすくすることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、第1方向Xから見て、緩衝部材40の単位面積に占める積層部45の面積の割合は、緩衝部材40の外縁部側より中心部側の方が小さい。また、第1方向Xから見て、緩衝部材40の単位面積に占める積層部45の面積の割合は、筐体13の長側面の外縁部側よりも中心部13C側が小さい。また、第1方向Xから見て、緩衝部材40の単位面積に占める積層部45の面積の割合は、電極体38の外縁部側よりも中心部38C側が小さい。
【0065】
緩衝部材40の外縁部側より中心側において積層部45を少なくすることにより、緩衝部材40の中心側を変形しやすくすることができる。また、筐体13の長側面の外縁部側よりも中心側において積層部45を少なくすることにより、緩衝部材40における筐体13の中心側と重なる部分をより変形しやすくすることができる。また、電極体38の外縁部側よりも中心側において積層部45を少なくすることにより、緩衝部材40における電極体38の中心側と重なる部分をより変形しやすくすることができる。緩衝部材40における積層部45の分布の偏りは、第1軟化部46および第2軟化部48の配置により調整することができる。
【0066】
第1方向Xから見て、第2残部49よりも第1残部47の方が面積が小さくてもよい。つまり、第1層部42に占める第1残部47の割合は、第2層部44に占める第2残部49の割合よりも小さくてもよい。この場合、第1層部42により多くの第1軟化部46を設けることが可能となる。これにより、第1層部42と蓄電装置10との接触面積を小さくする、つまり蓄電装置10に接する空隙を増やすことができる。この結果、第1層部42が蓄電装置10の膨張を吸収しやすくなる。
【0067】
第1層部42および第2層部44(つまり第1シート42aおよび第2シート44a)を構成する材料としては、例えば天然ゴム、合成ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマーや、ポリスチレン、オレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性エラストマー等が例示される。なお、これらの材料は、発泡させたものであってもよい。また、シリカキセロゲル等の多孔質材が担持された断熱材も例示される。したがって、緩衝部材40は絶縁性を有し、蓄電装置10と外部(例えば、隣接する蓄電装置10、エンドプレート4、拘束部材6等)とを絶縁するセパレータ12の一部として機能することができる。
【0068】
(緩衝部材の製造方法)
緩衝部材40は、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、まず第1シート42aと、第2シート44aとをそれぞれ用意する。第1シート42aには予め第1軟化部46が設けられ、第2シート44aには予め第2軟化部48が設けられる。例えば、ロール状に巻き回された長尺のシートに打ち抜き加工等を施して、シートの厚さ方向にシートを貫通する貫通孔を形成する。あるいは、シートにプレス加工等を施して、シートの厚さ方向に凹む凹部を形成する。そして、貫通孔あるいは凹部を形成したシートを所定の長さに裁断する。これにより、複数の第1シート42aおよび第2シート44aを大量に製造することができる。
【0069】
続いて、第1シート42aと第2シート44aとを、第1軟化部46および第2軟化部48の少なくとも一部分がずれるようにして積層する。本実施の形態では、第1シート42aおよび第2シート44aが同じ大きさである。そして、第1シート42aの外縁部と第2シート44aの外縁部とを揃えた状態で、つまり第1シート42aと第2シート44aとをぴったり一致させた状態で、第1軟化部46および第2軟化部48の位置がずれている。したがって、第1シート42aと第2シート44aとを外縁部を揃えるようにして積層することで、第1軟化部46と第2軟化部48とをずらすことができる。
【0070】
以上の工程により、第1層部42および第2層部44を備える緩衝部材40を製造することができる。本製造方法によれば、打ち抜き加工やプレス加工を施したシートを重ねるだけで緩衝部材40を製造することができるため、緩衝部材40を簡単且つ安価に製造することができる。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態に係る蓄電モジュール1は、蓄電装置10と、蓄電装置10とともに第1方向Xに配列されて、蓄電装置10から第1方向Xに荷重を受ける緩衝部材40と、を備える。緩衝部材40は、第1方向Xに配列される第1層部42および第2層部44を少なくとも有する。第1層部42は、第1方向Xに自身を貫通する貫通孔または第1方向Xに凹む凹部で構成される第1軟化部46を有する。第2層部44は、第1方向Xに自身を貫通する貫通孔または第1方向Xに凹む凹部で構成される第2軟化部48を有する。第1軟化部46および第2軟化部48は、第1方向Xから見て少なくとも一部分がずれている。
【0072】
第1層部42に第1軟化部46を設けることで、第1軟化部46が設けられる部分において緩衝部材40を変形させやすくすることができる。同様に、第2軟化部48に第2軟化部48を設けることで、第2軟化部48が設けられる部分において緩衝部材40を変形させやすくすることができる。言い換えれば、第1軟化部46と第2軟化部48とを設けることにより、第1層部42における第1残部47と、第2層部44における第2残部49とが重なった積層部45を、緩衝部材40の平面内で部分的に減らすことができる。これにより、緩衝部材40の平面内で、変形しやすい部分と変形しにくい部分とを設けることができる。
【0073】
また、第1軟化部46および第2軟化部48の少なくとも一部分をずらして配置することで、緩衝部材40の変形しやすさを平面内で細かく設定することができる。例えば、緩衝部材40の平面内の一方から他方に向かって徐々に変形しやすくするといった設定も可能である。
【0074】
つまり、本実施の形態の緩衝部材40は、複数の貫通穴または凹部が設けられたシートが複数枚積層され、各シートの中実部分が重なる領域(受圧部)で荷重を受ける構成を有する。これにより、蓄電装置10から荷重を受ける面積を部分的に減らすことができ、見かけ上の圧縮弾性率を下げることができる。また、1枚のシートでは作成困難な微小面積の受圧部を作成することができる。また、受圧部の位置や面積の調整により、マクロな領域当たりの見かけ上の弾性率を任意に設定することができる。また、弾性率の大きさにグラデーションをつけることができる。また、比較的硬いシートを用いることもできるため、弾性率が低く均一なシートを用いる場合に比べて、緩衝部材40や蓄電モジュール1の組立の際等に取り扱いが容易である。また、緩衝部材40を構成するシートに突起を設ける場合は成形用の金型が必要になるが、貫通孔あるいは凹部で構成される軟化部はシートの打ち抜き加工といった簡単な方法で形成することができる。よって、緩衝部材40を簡便に作成することができる。
【0075】
したがって、本実施の形態によれば、蓄電装置10において膨張の小さい部分を変形しにくい部分で押さえて蓄電装置10を位置決めしつつ、蓄電装置10からの大きな荷重を変形しやすい部分で吸収して拘束部材6にかかる荷重を低減するように、緩衝部材40の配置設計が可能となる。これにより、蓄電装置10の高容量化にともなって蓄電装置10の膨張量が増大したとしても、蓄電装置10を位置決めしつつ蓄電装置10の膨張をより確実に吸収して、拘束部材6にかかる荷重を低減することができる。よって、拘束部材6の破損抑制と蓄電装置10の位置決めとを両立することができる。この結果、蓄電モジュール1の信頼性を高めることができる。
【0076】
また、一般に蓄電装置10は、使用期間の経過にともない膨張量が増大する。つまり、蓄電装置10は、寿命初期と寿命末期とで膨張量が変化する。これに対し、本実施の形態によれば、寿命初期における蓄電装置10の小さい膨張に合わせて拘束部材6による電池積層体2の拘束力を設定し、これにより蓄電装置10をより確実に位置決めするとともに、寿命末期における蓄電装置10の大きい膨張は緩衝部材40で吸収し、これにより拘束部材6にかかる荷重を低減することができる。よって、寿命初期と寿命末期とで蓄電装置10の膨張量が変化しても、各段階の膨張量に応じた適切な拘束力で蓄電装置10を保持することができる。
【0077】
また、拘束部材6の高強度化を避けることができるため、拘束部材6ひいては蓄電モジュール1の大型化、重量化、コスト増等を抑制することができる。また、蓄電装置10にかかる荷重が増大して、蓄電装置10の性能が低下したり寿命が縮むことも抑制できる。
【0078】
また、緩衝部材40は、第1軟化部46を有する第1シート42aと、第2軟化部48を有する第2シート44aとを第1軟化部46および第2軟化部48の少なくとも一部分がずれるようにして積層するだけで製造することができる。このため、簡単かつ安価に緩衝部材40を製造することができる。また、平面内での変形しやすさの調整をより簡単に実現することができる。さらに、緩衝部材40の平面内に、蓄電装置10からの力を受ける、微小面積の受圧部をより簡単に形成することができる。
【0079】
また、本実施の形態の第1層部42は、第1軟化部46を複数有し、第1層部42の密度は、第1方向Xから見て第1層部42の外縁部側よりも中心部側が小さい。また、第2層部44は、第2軟化部48を複数有し、第2層部44の密度は、第1方向Xから見て第2層部44の外縁部側よりも中心部側が小さい。また、第1方向Xから見て、緩衝部材40の単位面積に占める積層部45の面積の割合は、緩衝部材40の外縁部側より中心部側が小さい。これにより、中心部側が変形しやすく、外縁部側が変形しにくい緩衝部材40を得ることができる。よって、拘束部材6の破損抑制と蓄電装置10の位置決めとをより確実に実現することができる。
【0080】
また、一部の第1軟化部46(第1離間部46a)は、第1方向Xから見て第2軟化部48に対して全体がずれるように配置され、他の一部の第1軟化部46(第1重畳部46b)は、第1方向Xから見て第2軟化部48に対して一部分がずれるように配置される。同様に、一部の第2軟化部48(第2離間部48a)は、第1方向Xから見て第1軟化部46に対して全体がずれるように配置され、他の一部の第2軟化部48(第2重畳部48b)は、第1方向Xから見て第1軟化部46に対して一部分がずれるように配置される。これにより、緩衝部材40の変形しやすさを場所によってより細かく調整することができ、蓄電装置10の膨張に対して緩衝部材40の変形をより高精度に追従させることができる。よって、蓄電装置10の膨張吸収と位置決めとを両立することができる。
【0081】
また、第1重畳部46bの少なくとも1つは、第1離間部46aよりも、第1方向Xから見て緩衝部材40の中心部側に配置される。同様に、第2重畳部48bの少なくとも1つは、第2離間部48aよりも、第1方向Xから見て緩衝部材40の中心部側に配置される。これにより、緩衝部材40の外縁部側に対して中心部側をより変形しやすくすることができる。
【0082】
また、第1重畳部46bの少なくとも1つは、第1離間部46aよりも、第1方向Xから見て筐体13の長側面の中心部13C側に配置される。同様に、第2重畳部48bの少なくとも1つは、第2離間部48aよりも、第1方向Xから見て筐体13の長側面の中心部13C側に配置される。また、第1方向Xから見て、緩衝部材40の単位面積に占める積層部45の面積の割合は、筐体13の長側面の外縁部側よりも中心部13C側が小さい。これにより、緩衝部材40において、筐体13の長側面の外縁部側と重なる部分に対して、長側面の中心部13C側と重なる部分をより変形しやすくすることができる。
【0083】
また、第1重畳部46bの少なくとも1つは、第1離間部46aよりも、第1方向Xから見て電極体38の中心部38C側に配置される。同様に、第2重畳部48bの少なくとも1つは、第2離間部48aよりも、第1方向Xから見て電極体38の中心部38C側に配置される。また、第1方向Xから見て、緩衝部材40の単位面積に占める積層部45の面積の割合は、電極体38の外縁部側よりも中心部38C側が小さい。これにより、緩衝部材40において、電極体38の外縁部側と重なる部分に対して、電極体38の中心部38C側と重なる部分をより変形しやすくすることができる。
【0084】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。また、各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0085】
(変形例1)
図7(A)は、変形例1に係る緩衝部材40の斜視図である。
図7(B)は、緩衝部材40の正面図である。実施の形態に係る緩衝部材40は、第1層部42および第2層部44の2層構造を有するが、層数は特に限定されない。例えば、本変形例に係る緩衝部材40は、第1層部42、第2層部44および第3層部50の3層構造を有する。第1層部42、第2層部44および第3層部50は、この順に第1方向Xに配列される。第3層部50は、第1方向Xに自身を貫通する貫通孔または第1方向Xに凹む凹部で構成される第3軟化部52を有する。
図7(A)および
図7(B)には、貫通孔で構成される第3軟化部52が図示されている。各軟化部は、各層部を構成するシートのおおよそ全体に、等間隔で均等に配置されている。
【0086】
また、実施の形態に係る緩衝部材40では、第1層部42と第2層部44とをぴったり一致させた状態で、第1軟化部46および第2軟化部48の位置がずれている。一方、変形例1に係る緩衝部材40では、第1層部42、第2層部44および第3層部50は、各軟化部の配置を含めて同一の形状を有する。そして、第1層部42および第2層部44が互いの外縁部がずれるように配列されることで、第1軟化部46および第2軟化部48が互いにずれている。また、第2層部44および第3層部50が互いの外縁部がずれるように配列されることで、第2軟化部48および第3軟化部52が互いにずれている。
【0087】
本変形例の緩衝部材40によっても、実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、本変形例では第1層部42~第3軟化部52が同一形状を有するため、緩衝部材40の製造工程をより簡略化することができる。また、第1層部42と第3層部も互いにずれるように配列され、第1軟化部46および第3軟化部52が互いにずれている。これにより、緩衝部材40の変形しやすさをより細かく調整することができる。
【0088】
(変形例2)
図8(A)は、変形例2に係る緩衝部材40の斜視図である。
図8(B)は、緩衝部材40の正面図である。実施の形態に係る緩衝部材40が有する第1軟化部46および第2軟化部48は、第1方向Xから見て円形であるが、各軟化部の形状は特に限定されない。例えば、本変形例に係る緩衝部材40が有する第1軟化部46および第2軟化部48は、第1方向Xから見て略長方形状である。また、第1層部42および第2層部44は、六角形等の多角形状等であってもよい。
【0089】
(変形例3)
緩衝部材40は、隣り合う2つの蓄電装置10の組み合わせの全てに対して設けられてもよいし、一部の組み合わせに対して設けられてもよい。また、緩衝部材40は、2つの蓄電装置10の間に設けられることに加えて、蓄電装置10とエンドプレート4との間にも設けられてもよい。さらに、緩衝部材40は、蓄電装置10とエンドプレート4との間のみに設けられてもよい。
【0090】
(変形例4)
蓄電モジュール1が備える蓄電装置10の数は特に限定されず、蓄電モジュール1は蓄電装置10を少なくとも1つ有していればよい。エンドプレート4や拘束部材6の構造を含む蓄電モジュール1の各部の構造は、特に限定されない。
【0091】
(変形例5)
図9(A)は、変形例5に係る緩衝部材40の斜視図である。
図9(B)は、
図9(A)のA-A線に沿った断面斜視図である。本変形例に係る緩衝部材40は、一例として第1層部42、第2層部44、第3層部50、第4層部54および第5層部56の5層構造を有する。第1層部42、第2層部44、第3層部50、第4層部54および第5層部56は、この順に第1方向Xに配列される。第3層部50は第3軟化部52を有し、第4層部54は第4軟化部58を有する。第1軟化部46~第4軟化部58は、それぞれ貫通孔で構成される。第5層部56は、軟化部を有しない。
【0092】
各層部の軟化部は同心円状に配置される。また、第1軟化部46~第4軟化部58は、この順に開口面積が徐々に小さくなっている。したがって、緩衝部材40には、第1層部42側に近づくにつれて広がるように湾曲する内側面を有する凹部が設けられる。第1層部42側に配置された蓄電装置10が膨張した場合、蓄電装置10の膨れる部分をこの凹部に収容することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 蓄電モジュール、 10 蓄電装置、 13 筐体、 38 電極体、 40 緩衝部材、 42 第1層部、 42a 第1シート、 44 第2層部、 44a 第2シート、 46 第1軟化部、 48 第2軟化部。