(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】溶接システム、溶接ロボット制御プログラム作成装置、溶接ロボット制御プログラム作成方法、および溶接ロボット制御プログラムの作成プログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20241129BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20241129BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20241129BHJP
B23K 9/127 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 H
B23K9/12 331F
B23K9/127 509B
(21)【出願番号】P 2022530091
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021019024
(87)【国際公開番号】W WO2021251087
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2020101188
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】内方 章雅
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 嘉幸
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176255(JP,A)
【文献】特開2014-097517(JP,A)
【文献】特開2012-024867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
G05B 19/18 ~ 19/416
19/42 ~ 19/46
B23K 9/12
B23K 9/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーチを備えた溶接ロボットと、溶接ロボット制御プログラム作成装置とを有する溶接システムであって、
前記溶接ロボット制御プログラム作成装置は、
操作者が把持可能なコントローラの位置から、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点の位置情報と、前記溶接開始点と前記溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得し、
前記位置情報および前記姿勢情報に基づいて、前記溶接開始点から前記溶接終了点まで溶接を行う溶接ロボット制御プログラムを作成し、
前記溶接ロボットは、前記溶接ロボット制御プログラムに基づいて前記ワークに対して溶接を行
い、
前記溶接ロボット制御プログラム作成装置は、
前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定する姿勢固定区間において、前記姿勢固定区間の始点での前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を保ったまま前記姿勢固定区間の終点まで前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成する、 溶接システム。
【請求項2】
操作者が把持可能なコントローラ、をさらに備え、
前記溶接ロボット制御プログラム作成装置は、前記溶接教示点に向けた前記コントローラの姿勢を示す情報であるコントローラ姿勢情報を、前記姿勢情報として取得する、
請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記溶接ロボット制御プログラム作成装置と一体化されている、
請求項2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記トーチと同一形状の先端部を有する、
請求項2または3に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記溶接線上の溶接教示点が、少なくとも1つの中間点を含む、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記溶接ロボット制御プログラム作成装置は、前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定しない姿勢非固定区間において、前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を、前記姿勢情報に基づいて特定された前記トーチの姿勢に追随するように前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成
し、
前記姿勢固定区間と前記姿勢非固定区間とは切り替え可能である、
請求項
1に記載の溶接システム。
【請求項7】
処理部を備え、
前記処理部が、
操作者が把持可能なコントローラの位置から、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点の位置情報と、前記溶接開始点と前記溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、溶接ロボットが備えるトーチの前記溶接線に対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得し、
前記位置情報および前記姿勢情報に基づいて、前記溶接開始点から前記溶接終了点まで溶接を行う溶接ロボット制御プログラム
であって、前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定する姿勢固定区間において、前記姿勢固定区間の始点での前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を保ったまま前記姿勢固定区間の終点まで前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成する、
溶接ロボット制御プログラム作成装置。
【請求項8】
溶接ロボット制御プログラム作成装置による、溶接ロボット制御プログラム作成方法であって、
操作者が把持可能なコントローラの位置から、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点の位置情報と、前記溶接開始点と前記溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、溶接ロボットが備えるトーチの前記溶接線に対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得し、 前記位置情報および前記姿勢情報に基づいて、前記溶接開始点から前記溶接終了点まで溶接を行う前記溶接ロボットの制御プログラム
であって、前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定する姿勢固定区間において、前記姿勢固定区間の始点での前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を保ったまま前記姿勢固定区間の終点まで前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成する、
溶接ロボット制御プログラム作成方法。
【請求項9】
溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムであって、
溶接ロボット制御プログラム作成装置に、
操作者が把持可能なコントローラの位置から、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点の位置情報と、前記溶接開始点と前記溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、溶接ロボットが備えるトーチの前記溶接線に対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得させ、
前記位置情報および前記姿勢情報に基づいて、前記溶接開始点から前記溶接終了点まで溶接を行う前記溶接ロボットの制御プログラム
であって、前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定する姿勢固定区間において、前記姿勢固定区間の始点での前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を保ったまま前記姿勢固定区間の終点まで前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成させる、
溶接ロボット制御プログラムの作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接システム、溶接ロボット制御プログラム作成装置、溶接ロボット制御プログラム作成方法、および溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スポット溶接ロボットのティーチング装置が記載されている。ティーチング装置は、相対位置情報の入力を受け付ける相対位置入力受付手段と、溶接打点入力受付手段と、空走ポイント決定手段と、動作プログラム生成手段とを備える。相対位置情報は、スポット溶接ロボットが溶接を行うワーク上の溶接打点の位置との関係において、スポット溶接ロボットに設けられた溶接ガンの先端に位置する溶接チップをどれだけ当該ワークから離すかを示す距離情報を含む。相対位置情報は溶接ガンをワークに対して溶接打点の位置する側にどれだけ移動させるかを示す第1移動情報、および、溶接ガンをワークに対して溶接打点の位置しない側にどれだけ移動させるかを示す第2移動情報を含む。溶接打点入力受付手段は、ワーク上の複数の溶接打点の位置と溶接順序、および、当該溶接打点に関する溶接動作を含む溶接打点情報の入力を溶接打点ごとに受け付ける。空走ポイント決定手段は、相対位置入力受付手段により入力が受け付けられた相対位置情報および溶接打点入力受付手段により入力が受け付けられた溶接打点情報に基づいて、溶接打点入力受付手段により入力が受け付けられた溶接動作に関する溶接ガンの空走ポイントを決定する。動作プログラム生成手段は、空走ポイント決定手段により決定された空走ポイントに基づいて、溶接ガンの姿勢を維持したままスポット溶接ロボットが溶接動作を行うための動作プログラムを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、操作しやすいティーチングにより、溶接線に沿って溶接開始点から溶接終了点までを溶接することができる、溶接システム、溶接ロボット制御プログラム作成装置、溶接ロボット制御プログラム作成方法、および溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、トーチを備えた溶接ロボットと、溶接ロボット制御プログラム作成装置とを有する溶接システムであって、前記溶接ロボット制御プログラム作成装置は、操作者が把持可能なコントローラの位置から、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点の位置情報と、前記溶接開始点と前記溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得し、前記位置情報および前記姿勢情報に基づいて、前記溶接開始点から前記溶接終了点まで溶接を行う溶接ロボット制御プログラムを作成し、前記溶接ロボットは、前記溶接ロボット制御プログラムに基づいて前記ワークに対して溶接を行い、前記溶接ロボット制御プログラム作成装置は、前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定する姿勢固定区間において、前記姿勢固定区間の始点での前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を保ったまま前記姿勢固定区間の終点まで前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成する、溶接システムを提供する。
【0006】
また、本開示は、処理部を備え、前記処理部が、操作者が把持可能なコントローラの位置から、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点の位置情報と、前記溶接開始点と前記溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、溶接ロボットが備えるトーチの前記溶接線に対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得し、前記位置情報および前記姿勢情報に基づいて、前記溶接開始点から前記溶接終了点まで溶接を行う溶接ロボット制御プログラムであって、前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定する姿勢固定区間において、前記姿勢固定区間の始点での前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を保ったまま前記姿勢固定区間の終点まで前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成する、溶接ロボット制御プログラム作成装置を提供する。
【0007】
また、本開示は、溶接ロボット制御プログラム作成装置による、溶接ロボット制御プログラム作成方法であって、操作者が把持可能なコントローラの位置から、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点の位置情報と、前記溶接開始点と前記溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、溶接ロボットが備えるトーチの前記溶接線に対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得し、前記位置情報および前記姿勢情報に基づいて、前記溶接開始点から前記溶接終了点まで溶接を行う前記溶接ロボットの制御プログラムであって、前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定する姿勢固定区間において、前記姿勢固定区間の始点での前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を保ったまま前記姿勢固定区間の終点まで前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成する、溶接ロボット制御プログラム作成方法を提供する。
【0008】
また、本開示は、溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムであって、溶接ロボット制御プログラム作成装置に、操作者が把持可能なコントローラの位置から、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点の位置情報と、前記溶接開始点と前記溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、溶接ロボットが備えるトーチの前記溶接線に対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得させ、前記位置情報および前記姿勢情報に基づいて、前記溶接開始点から前記溶接終了点まで溶接を行う前記溶接ロボットの制御プログラムであって、前記溶接線の中の、前記トーチの姿勢を固定する姿勢固定区間において、前記姿勢固定区間の始点での前記トーチの前記溶接線に対する姿勢を保ったまま前記姿勢固定区間の終点まで前記溶接線に沿って溶接を行う、前記溶接ロボットの制御プログラムを作成させる、溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、操作しやすいティーチングにより、溶接線に沿って溶接開始点から溶接終了点までを溶接することができる、溶接システム、溶接ロボット制御プログラム作成装置、溶接ロボット制御プログラムの作成方法、および溶接ロボット制御プログラムを作成するプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】本開示の溶接ロボット制御プログラム作成装置によって作成された溶接ロボット制御プログラムに従った、トーチの動きを示す概念図
【
図4】溶接線が折れ曲がっている場合の、溶接ロボット制御プログラムに従ったトーチの動きを示す概念図
【
図5】溶接線が湾曲している場合の、溶接ロボット制御プログラムに従ったトーチの動きを示す概念図
【
図6】物体が溶接線の近傍にある場合の、溶接ロボット制御プログラムに従ったトーチの動きを示す概念図
【
図7】ワークの壁の内側を溶接する場合の、溶接ロボット制御プログラムに従ったトーチの動きを示す概念図
【
図8】第1の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図9】第2の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図10】第3の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図11】第4の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図12】第5の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図13】第6の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図14】第7の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図15】第8の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図16】第9の溶接教示点に対応する、表示部による表示例
【
図17】ティーチングを行って、溶接線に沿って溶接開始点から溶接終了点までを溶接する場合の、トーチの姿勢を示す比較図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示に至る経緯)
ワークに対して溶接を行う、トーチを備えたロボット装置が公知である。特許文献1に、スポット溶接ロボットのティーチング装置およびティーチング方法が記載されている。特許文献1には、実空間をコンピュータの仮想空間に投影し、実空間のスポット溶接ロボットに対応する仮想ロボットモデルを仮想空間に作成し、仮想ロボットモデルを用いてスポット溶接ロボットの動作をプログラミングする技術が記載されている。
【0012】
特許文献1で行われている溶接は、点接合のスポット溶接であり、特許文献1に記載の技術では、溶接線に沿って溶接開始点から溶接終了点までを溶接することはできない。また、特許文献1において、ティーチング装置に対するユーザの指示を入力するための操作手段は、キーボードまたはマウス等の入力装置である。キーボードまたはマウス等の入力装置は、溶接ロボットのトーチの動きを直感的に模した指示入力を操作者が行う事が困難になる。
【0013】
そこで、以下の実施の形態では、操作しやすいティーチングにより、溶接線に沿って溶接開始点から溶接終了点までを溶接することができる、溶接システム、溶接ロボット制御プログラム作成装置、溶接ロボット制御プログラの作成方法、および溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムについて詳述する。
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る溶接システム、溶接ロボット制御プログラム作成装置、溶接ロボット制御プログラム作成方法、および溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムを具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0015】
(溶接ロボットシステム100の概要)
図1は、溶接ロボットシステム100の一例を示す概念図である。溶接ロボットシステム100は、溶接ロボット1と、溶接ロボット1が備えるトーチ2と、ロボット制御装置3と、を備える。溶接ロボットシステム100は、ティーチペンダント4をさらに備えてよい。溶接ロボットシステム100は、操作ボックス5をさらに備えてよい。
【0016】
溶接ロボット1は、ワークに対して溶接を行うロボットである。溶接ロボット1は、多関節のロボットアーム11を備えてよい。ロボットアーム11の先端部は、エンドエフェクタ12が接続される。エンドエフェクタ12は、典型的には1本以上のフィンガを有するロボットハンドであるが、指を持たないエンドエフェクタであってもよい。
【0017】
ロボットアーム11上あるいは、ロボットアーム11とエンドエフェクタ12との接続部分近傍等に、カメラ等の撮像手段が設けられてよい。ロボットアーム11の3次元上の動きは、ロボットアーム11に接続されたロボット制御装置3によって制御される。ロボットアーム11およびエンドエフェクタ12の動きは、カメラ等の撮像手段によって撮像された画像に基づいて制御されてもよい。
【0018】
トーチ2は、例えばアーク溶接などの溶接において、ワークに対して溶接を行う際に用いられる。ガス溶接、レーザー溶接等の溶接の種類、溶接の種類に応じたトーチの種類については、ここでは限定しない。
【0019】
ロボット制御装置3は、溶接ロボット1に接続され、溶接ロボット1の挙動を制御する。ロボット制御装置3は、操作者がティーチペンダント4を操作することにより、溶接ロボット1の挙動を制御してよい。ロボット制御装置3は、操作者が操作ボックス5を操作することにより、溶接ロボット1の挙動を制御してよい。ロボット制御装置3は、溶接ロボット1の制御プログラム(つまり、溶接ロボット制御プログラム)に基づいて、溶接ロボット1の挙動を制御してよい。
【0020】
ティーチペンダント4は、操作者がティーチペンダント4を操作して、溶接ロボット1に教示を行うユーザインタフェースとしての役割を有する入力装置である。ティーチペンダント4として、従来技術のティーチペンダントが用いられてよく、ここでは限定しない。操作ボックス5は、操作者がロボット制御装置3を制御するスイッチやボタン等を備える入力装置である。操作ボックス5も、従来技術のものが用いられてよく、ここでは限定しない。
【0021】
(溶接システム300の概要)
図2は、溶接システム300の一例を示す概念図である。
【0022】
溶接システム300は、
図1を参照して説明した溶接ロボットシステム100と、溶接ロボット制御プログラム作成システム200と、を備える。溶接ロボット制御プログラム作成システム200は、ヘッドマウントディスプレイHMDと、コントローラCTRと、1台以上のベースステーションIRと、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tと、を備えている。
【0023】
コントローラCTRは、機械装置のモーション制御に用いられる機器である。本実施の形態は、コントローラCTRは
図1に示されたトーチ2のモーション制御に用いられる。
【0024】
コントローラCTRは、操作者が把持可能な外形形状を有している。本実施の形態では、操作者はコントローラCTRをトーチ2に見立てて把持する。操作者がコントローラCTRを把持しながら溶接ロボット1のトーチ2が通過する溶接教示点を直感的に指定できるように、コントローラCTRは、トーチ2と同一形状の先端部を有してよい。コントローラCTRは、図示を省略するボタンやスイッチ、レバー等のユーザインタフェースとして機能する入力部を備えている。操作者は、トーチ2の先端に対応するコントローラCTRの先端を、溶接対象物であるワーク(図示省略)に実際に当接させた状態で、上述のボタンを押下するなどして、溶接教示点をコントローラCTRに記憶させる。また、操作者は、コントローラCTRが備えるボタン等のユーザインタフェースを介して、後述の姿勢固定機能のオンオフを切り換えることができる。
【0025】
コントローラCTRは、ヘッドマウントディスプレイHMDとの間でデータの入出力が可能となるように接続される。なお、コントローラCTRとヘッドマウントディスプレイHMDとの間のデータ通信は無線を介して行われてもよく、有線を介して行われてもよい。
【0026】
コントローラCTRは、操作者が指定した溶接教示点の位置情報と、後述の姿勢情報とを、ヘッドマウントディスプレイHMD経由で溶接ロボット制御プログラム作成装置Tに送信してよい。溶接教示点は、ワークに対する溶接の溶接開始点および溶接終了点が含まれてよい。なお、ヘッドマウントディスプレイHMDが用いられない場合、コントローラCTRは、溶接教示点の位置情報と、後述の姿勢情報とを、ヘッドマウントディスプレイHMDを介さずに溶接ロボット制御プログラム作成装置Tに直接送信してよい。
【0027】
(姿勢情報)
姿勢情報は、溶接開始点と溶接終了点とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、溶接ロボット1が備えるトーチ2の溶接線に対する姿勢を特定可能な情報である(
図3以降参照)。例えば、溶接教示点に先端を向けたコントローラCTRの姿勢を示す情報であるコントローラ姿勢情報は、姿勢情報の一例である。コントローラ姿勢情報は、コントローラCTRをトーチ2に見立ててティーチングに用いる場合、3次元空間上のコントローラCTRの先端の向きと、トーチ2の先端の3次元空間上の向きとが一致するように、ロボット制御装置3が溶接ロボット1を制御する。そのため、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、コントローラ姿勢情報に基づいて、トーチ2の溶接線に対する姿勢を特定可能である。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、溶接教示点に向けたコントローラCTRの姿勢を示すコントローラ姿勢情報を、姿勢情報として取得してよい。
【0028】
なお、操作者は、コントローラCTRではなく、トーチ2そのものを用いて溶接教示点を指定することもできる。この場合、ティーチペンダント4等からの操作入力に応じて変動するトーチ2の姿勢を示す情報を、例えばロボット制御装置3が取得可能である。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、トーチ2の姿勢を示す情報を姿勢情報としてロボット制御装置3から取得してよい。なお、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、上述の位置情報もロボット制御装置3から取得してよい。
【0029】
ヘッドマウントディスプレイHMDは、ヘッドマウントディスプレイHMDを装着した者(以下、装着者)にVR画像を表示することができる。装着者は、上述の操作者とは異なる人物であってもよいし、同一の人物であってもよい。ヘッドマウントディスプレイHMDは、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tとの間でデータの入出力が可能となるように接続される。例えば、ヘッドマウントディスプレイHMDと溶接ロボット制御プログラム作成装置Tとは、ディスプレイケーブルやUSBケーブル等によって接続されてよい。ただし、接続の態様はこれには限られず、ヘッドマウントディスプレイHMDと溶接ロボット制御プログラム作成装置Tとが相互に無線通信を行ってもよい。
【0030】
ここで、本実施の形態においては、コントローラCTRと溶接ロボット制御プログラム作成装置Tとの間のデータ交換を中継する為の機器として、ヘッドマウントディスプレイHMDが用いられている。しかし、溶接ロボット制御プログラム作成システム200は、ヘッドマウントディスプレイHMDを備えずに、コントローラCTRと溶接ロボット制御プログラム作成装置Tとの間のデータ通信が直接行われてもよい。
【0031】
ベースステーションIRは、溶接ロボット制御プログラム作成装置TがコントローラCTRの位置情報および姿勢情報を取得するために用いられる。本実施の形態の溶接ロボット制御プログラム作成システム200は、2つのベースステーションIRを備えている。ベースステーションIRは、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tとの間でデータの入出力が可能となるように接続されてよい。2つのベースステーションIRは、コントローラCTRへ向けて赤外線を照射する。例えば、ベースステーションIRは、フラッシュを点灯させ、次に、下から上に赤外線レーザーを照射し、次に、フラッシュを点灯させ、次に、左から右に赤外線レーザーを照射する。ベースステーションIRは、上記の4種類の処理を繰り返し行う。一方、コントローラCTRは、図示を省略する受光部を備える。コントローラCTRは、受光部によってベースステーションIRから受光した光の到達時間や角度情報等に基づいて、溶接教示点の位置情報(操作者によりコントローラCTRのボタンが押下された時のコントローラCTRの先端部の位置情報等)およびコントローラ姿勢情報を算出する。なお、コントローラCTRの代わりに、ヘッドマウントディスプレイHMDや溶接ロボット制御プログラム作成装置Tが、溶接教示点の位置情報およびコントローラ姿勢情報を算出してもよい。
【0032】
溶接教示点の位置情報およびコントローラ姿勢情報の取得方法は、上述の例には限られない。例えばベースステーションIRは、構造光の投影機能と赤外線カメラの機能とを備え、コントローラCTRに投影された構造光を赤外線カメラで撮像して、撮像された画像を画像処理すれば、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tが上述の位置情報およびコントローラ姿勢情報を取得できる。また、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、複数台のベースステーションIRの代わりに複数台のカメラを設けて、ワークとコントローラCTRとをカメラが撮像し、撮像画像に含まれる特徴点等に基づいて上述の位置情報およびコントローラ姿勢情報を算出してもよい。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、これら以外の方式で、上述の位置情報およびコントローラ姿勢情報を取得してもよい。
【0033】
溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、ヘッドマウントディスプレイHMD、ベースステーションIR、およびロボット制御装置3との間でデータの入出力が可能となるように接続される。ヘッドマウントディスプレイHMDが用いられない場合、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、コントローラCTRとの間でデータの入出力が可能となるように接続されてもよい。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tと他の機器との接続は、例えばLANケーブルにより行われてよく、その他の接続ケーブル、あるいは無線を介して接続されてもよい。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、例えばゲーミングPC等であってよいが、これには限られない。
【0034】
溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、処理部101と、記憶部102と、入力部103と、表示部104とを備えてよい。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、それ以外の構成要素を備えてもよい。
【0035】
処理部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。処理部101は、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tの各部の動作を全体的に統括するための制御処理、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tの各部との間のデータもしくは情報の入出力処理、データの計算処理、およびデータもしくは情報の記憶処理を行う。
【0036】
記憶部102は、HDD(Hard Disk Drive)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んでいてよく、処理部101によって実行される各種プログラム(OS(Operating System)、アプリケーションソフト等)、各種データを格納している。記憶部102は、溶接ロボット1の制御プログラムを作成するプログラム(以下、溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021)を格納していてよい。溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021は、処理部101によって実行されてよい。
【0037】
入力部103は、トラックパッドやキーボードやマウス等を含んでいてよく、操作者との間のヒューマンインターフェースとしての機能を有し、操作者の操作を入力する。言い換えると、入力部103は、処理部101により実行される各種の処理における、入力または指示に用いられる。
【0038】
表示部104は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)等の表示用デバイスを用いて構成されてよい。表示部104は、例えば処理部101が溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021と、上述の溶接教示点の位置情報およびコントローラ姿勢情報とに基づいて、どのような溶接ロボット制御プログラムを作成するかを表示してよい。
【0039】
(溶接教示点の記憶)
図3は、本開示の溶接ロボット制御プログラム作成装置Tによって作成された溶接ロボット制御プログラムに従った、トーチ2の動きを示す概念図である。
図2を併せて参照する。操作者は、把持したコントローラCTRを動かして、コントローラCTRの先端がワークの溶接開始点Sおよび溶接終了点Eに来た時に、ボタン押下等を行う。すると、溶接開始点および溶接終了点Eは、溶接教示点としてコントローラCTRに記憶される。なお、記憶される溶接教示点は、溶接開始点Sと溶接終了点Eのみとは限らない。例えば、溶接開始点Sと溶接終了点Eとを結ぶ溶接線L上の任意の中間点Mは、溶接教示点として記憶されてもよい。また、溶接教示点は、溶接開始点Sと溶接終了点Eとを結ぶ溶接線Lにはない点であってもよく、例えば
図8~
図16に基づいて後述する空走点や、溶接ロボット1が待機姿勢にある場合の、トーチ2の先端の位置であってもよい。
【0040】
溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、溶接開始点Sおよび溶接終了点Eの位置情報と、コントローラCTRの先端が溶接開始点Sおよび溶接終了点Eの位置に居る時のコントローラCTRのそれぞれの姿勢を示す姿勢情報とを、コントローラCTRから取得する。
【0041】
処理部101は、取得した位置情報および姿勢情報に基づいて、ワークの溶接開始点Sから溶接終了点Eまでの溶接を行う溶接ロボット制御プログラムを作成する。処理部101は、作成した溶接ロボット制御プログラムをロボット制御装置3に送信する。ロボット制御装置3は、受信した溶接ロボット制御プログラムを実行し、溶接ロボット1を動かす。溶接ロボット1は、トーチ2を用いて、操作者が設定した溶接教示点(溶接開始点Sおよび溶接終了点E等)に基づいて、ワークへの溶接を行う。
【0042】
図17は、ティーチングを行って、溶接線Lに沿って溶接開始点Sから溶接終了点Eまでを溶接する場合の、トーチ2の姿勢を示す比較図である。
図3に示した本開示の例と、
図17に示した例とは、トーチ2の溶接線Lに対する姿勢が異なる。
【0043】
操作者がコントローラCTRを把持して溶接開始点Sおよび溶接終了点E等を溶接教示点として手動で指定する場合、溶接線Lに対するトーチ2の姿勢を一定に保ち続けることは困難である。
図17に示した例の場合、溶接線Lの中間部分(例えば中間点M)でのトーチ2の溶接線Lに対する姿勢は、溶接開始点Sでのトーチ2の溶接線Lに対する姿勢と、溶接終了点Eでのトーチ2の溶接線Lに対する姿勢との間を補間する姿勢になっている。より具体的には、トーチ2は溶接開始点Sから溶接終了点Eに至るまで、トーチ2の先端とは反対側が溶接線Lに向かって徐々に倒れこむように姿勢を変化させている。
【0044】
一方、溶接開始点Sから溶接終了点Eに至るまで、トーチ2は、溶接線Lに対する姿勢が一定になるように溶接することができれば、溶接の品質が安定するので好適である。そのため、本開示の溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、
図3に示されているように、溶接開始点Sから溶接終了点Eに向かって、溶接線Lに沿って、溶接開始点Sでのトーチ2の溶接線Lに対する姿勢を保ったまま溶接を行う溶接ロボットの制御プログラムを作成する。
【0045】
なお、後述の
図7に示されている例のように、そもそもトーチ2の溶接線Lに対する姿勢を最初から最後まで一定に保つことが出来ない状況も考えられる。この場合、トーチ2が溶接線L上を構成する複数の区間のそれぞれについて、姿勢を一定に保つようにしてもよい。
【0046】
(姿勢固定機能の切り換え)
溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021は、2つの制御モードを備えていてよい。第1の制御モードは、姿勢固定機能がオン状態になった、姿勢固定モードである。第2の制御モードは、姿勢固定機能がオフ状態になった、姿勢非固定モードである。
【0047】
姿勢固定モードの場合、作成された溶接ロボット制御プログラムに従って動作する溶接ロボット1が有するトーチ2の姿勢は、コントローラCTRの姿勢変化に追随せず、一定の姿勢を保ち続ける。例えば、溶接開始点Sでのトーチ2の溶接線Lに対するなす角が相対的に変化しないままトーチ2が移動する(
図3参照)。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、溶接線Lの中の、トーチ2の姿勢を固定する姿勢固定区間において、姿勢固定区間の始点でのトーチ2の溶接線Lに対する姿勢を保ったまま姿勢固定区間の終点まで溶接線Lに沿って溶接を行う、溶接ロボット制御プログラムを作成する。
【0048】
姿勢非固定モードの場合、作成された溶接ロボット制御プログラムに従って動作する溶接ロボット1が有するトーチ2の姿勢は、コントローラCTRの姿勢変化に追随して、変化する。例えば、溶接開始点Sでのトーチ2の溶接線Lに対するなす角が変化しながら、トーチ2が移動する(
図6、
図7参照)。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、溶接線Lの中の、トーチ2の姿勢を固定しない姿勢非固定区間において、トーチ2の溶接線Lに対する姿勢を、姿勢情報に基づいて特定されたトーチ2の姿勢に追随するように溶接線Lに沿って溶接を行う、溶接ロボット制御プログラムを作成する。
【0049】
姿勢固定モードと姿勢非固定モードとの間のモード切り換えは、コントローラCTRが備える押しボタン等のユーザインタフェース(上述参照)によって行われてよい。モード切り換え操作は、その他、ヘッドマウントディスプレイHMDを装着した操作者の視線によって行われてもよい。モード切り換え操作は、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tの入力部103に含まれる、マウスやキーボード等によってモード切り換えが行われてもよい。
【0050】
図3に示されているように、トーチ2を備えた溶接ロボット1は、溶接ロボット制御プログラム作成時に操作者が把持したコントローラCTRの先端部の動きにあわせて、ワークに対応する溶接線Lに沿って、溶接開始点Sから溶接終了点Eまでの溶接を行う。姿勢固定モードの場合、操作者が把持するコントローラCTRの姿勢が手ブレ等を原因として変化した場合であっても、その姿勢変化はトーチ2の姿勢には反映されず、トーチ2は、溶接線Lに対して所定の姿勢を維持したまま、溶接線Lに沿って、溶接開始点Sから溶接終了点Eまでの溶接を行う。
【0051】
(姿勢固定区間)
上述のように、そもそもトーチ2は、溶接線Lに対する姿勢を最初から最後まで一定に保つことが出来ない状況も考えられる。そのため、溶接線Lの中の、トーチ2の姿勢を固定する区間を対象として、トーチ2の姿勢が固定されてよい。溶接線Lの中の、トーチ2の姿勢を固定する姿勢固定区間が、溶接開始点Sから溶接終了点Eまでであった場合、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、姿勢固定区間の始点、すなわち溶接開始点Sについてのトーチの溶接線Lに対する姿勢を一定に保ったまま、姿勢固定区間の終点すなわち溶接終了点Eまで、溶接線Lに沿って溶接を行うような溶接ロボット制御プログラムを作成する。
【0052】
なお、姿勢固定区間の始点は、溶接開始点Sでなくともよい。例えば、姿勢固定区間の始点は、溶接開始点Sと溶接終了点Eとの間の点であってもよい(
図7参照)。同様に、姿勢固定区間の終点は、溶接終了点Eでなくともよい。例えば、姿勢固定区間の終点は、溶接開始点Sと溶接終了点Eとの間の点であってもよい(
図7参照)。姿勢固定区間の始点は、姿勢固定区間の終点よりも、溶接開始点Sに近い。
【0053】
図4は、溶接線Lが折れ曲がっている場合の、溶接ロボット制御プログラムに従ったトーチ2の動きを示す概念図である。
図5は、溶接線Lが湾曲している場合の、溶接ロボット制御プログラムに従ったトーチ2の動きを示す概念図である。
【0054】
操作者は、コントローラCTRを操作して、溶接線L上の複数の溶接教示点を設定するために、溶接ロボット1に対するティーチングを行う。つまり、操作者は、溶接対象物であるワークに、トーチ2の先端に相当するコントローラCTRの先端を当接させ、溶接開始点S、中間点M、および溶接終了点Eの3つの点を溶接教示点として、コントローラCTRに記憶させる。なお、コントローラCTRが備えるボタン等のユーザインタフェース(上述参照)は、溶接教示点を記憶させるために用いられる。
【0055】
これにより、溶接教示点の情報(位置情報、コントローラ姿勢情報、姿勢固定モードまたは姿勢非固定モードなどの制御情報等)は、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tに送信される。溶接教示点についての情報の送信タイミングは、その情報がコントローラCTRによって記憶された時であってよい。その他、溶接教示点についての情報は、コントローラCTRにある程度蓄積されたタイミングで送信されてもよく、所定の時間間隔をあけて定期的に送信されてもよい。
【0056】
溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021は、溶接線L上に溶接開始点Sと溶接終了点E以外の溶接教示点がある場合の、溶接線Lの決定モードを、2つ以上備えていてよい。溶接線Lの第1の決定モードは、溶接教示点と溶接教示点とを直線でつなぐように溶接線Lを決定する決定モードである。溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021は、第1の決定モードに従って、溶接開始点S、中間点M、および溶接終了点Eの3つの点を溶接教示点として用いて溶接線Lを決定すると、
図4に示されているように、溶接開始点Sから中間点Mまでの線分L1と、中間点Mから溶接終了点Eまでの線分L2とで構成された、折れ曲がった溶接線Lを決定する。
【0057】
姿勢固定モードの場合、溶接ロボット制御プログラムに従って動作する溶接ロボット1が備えるトーチ2は、溶接線Lに対して所定の姿勢を保ったまま溶接を行う。そのため、
図4に示された例の場合、トーチ2は、溶接線Lに含まれる、溶接開始点Sから中間点Mまでの線分L1に対して所定の角度を保ったまま、溶接線Lに沿って溶接を行う。トーチ2の先端は中間点Mに到達した所で、トーチ2は向きを変え、溶接線Lに含まれる、中間点Mから溶接終了点Eまでの線分L2に対して所定の角度を保った維持したまま、溶接線Lに沿って溶接を行う。
【0058】
溶接線Lの第2の決定モードは、3つ以上の溶接教示点を曲線で滑らかにつなぐように溶接線Lを決定する決定モードである。溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021は、第2の決定モードに従って、溶接開始点S、中間点M、および溶接終了点Eの3つの点を溶接教示点として用いて溶接線Lを決定すると、
図5に示されているように、溶接開始点S、中間点M、および溶接終了点Eまでを滑らかにつないだ曲線状の溶接線Lが決定される。
【0059】
溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021は、予め初期値として溶接線Lの決定モードを示す設定値を有していてよい。また、溶接線Lの決定モードの変更は、コントローラCTR、ヘッドマウントディスプレイHMD、および溶接ロボット制御プログラム作成装置Tの入力部103の、いずれを介して行われてもよい。
【0060】
姿勢固定モードの場合、溶接ロボット制御プログラムに従って動作する溶接ロボット1が備えるトーチ2は、溶接線Lに対して所定の姿勢を保ったまま溶接を行う。そのため、
図5に示された例の場合、トーチ2は、溶接線Lに対する角度を保つように、空間における角度を少しずつ変えながら、溶接線Lに沿って溶接開始点Sから溶接終了点Eまで溶接を行う。
【0061】
図6は、物体OBJが溶接線Lの近傍にある場合の、溶接ロボット制御プログラムに従ったトーチ2の動きを示す概念図である。
【0062】
ワークに対して溶接を行う際に、溶接線Lの近傍に治具などの物体OBJが存在することがある。姿勢固定モードの場合、トーチ2は、溶接開始点Sでの姿勢を保ちつつ溶接終了点Eまで移動する。そのため、トーチ2は物体OBJにぶつかる可能性がある。このような場合、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは姿勢非固定モードを用いて、トーチ2が物体OBJを回避するように姿勢を変えながら移動する溶接ロボット制御プログラムを作成する。
【0063】
トーチ2が物体OBJを回避しつつ溶接線Lに沿って溶接を行うために、操作者は例えば、以下のような操作をコントローラCTRに対して行う。
【0064】
操作者は、トーチ2に見立てたコントローラCTRの先端が、溶接対象物であるワークの溶接開始点Sの位置に来たときに、制御モードを姿勢固定モードにした状態で、溶接開始点Sを溶接教示点として、コントローラCTRに記憶させる。なお、制御モードの切り換え、および溶接教示点の記憶は、コントローラCTRが備えるボタン等のユーザインタフェースを用いて行われてよい。
【0065】
操作者は、コントローラCTRを移動させる。トーチ2に見立てたコントローラCTRの先端が、溶接線L上の物体OBJの近傍の点M1まで移動したら、操作者は、制御モードを姿勢固定モードから姿勢非固定モードへと切り換える。この時、点M1が、溶接教示点としてコントローラCTRに記憶されてよい。
【0066】
操作者は、コントローラCTRを所定の角度傾ける。ここで上述のように、姿勢非固定モードの場合、溶接ロボット制御プログラムに従って動作する溶接ロボット1が有するトーチ2の姿勢は、コントローラCTRの姿勢変化に追随して変化する。そのため、溶接時のトーチ2は
図6に示されているように、溶接線Lに対する角度が変わった状態(点M1付近)となる。トーチ2の姿勢が変わったことにより、トーチ2が物体OBJにぶつかる可能性はなくなる。
【0067】
操作者は、再びコントローラCTRを操作して、制御モードを姿勢固定モードに切り換える。そして、トーチ2に見立てたコントローラCTRの先端が、溶接線L上の物体OBJの近傍の点M2まで来るように、操作者はコントローラCTRを移動させる。姿勢固定モードの場合、トーチ2の姿勢が固定された状態でトーチ2が移動するように溶接ロボット制御プログラムが作成されるので、
図6に示されているように、トーチ2の溶接線Lに対する姿勢は、点M1付近から点M2付近まで一定のまま保たれる。トーチ2の姿勢が変わったままトーチ2の先端が点M1から点M2へと移動するため、トーチ2は物体OBJにぶつからない。
【0068】
操作者は、制御モードを姿勢固定モードから姿勢非固定モードへと切り換える。この時、点M2は、溶接教示点としてコントローラCTRに記憶されてよい。操作者は、コントローラCTRを所定の角度傾ける。姿勢非固定モードの場合、トーチ2の姿勢がコントローラCTRの姿勢に追随するため、操作者は溶接時のトーチ2の姿勢を、ほぼ元の姿勢(
図6の溶接開始点Sでのトーチ2の姿勢)に戻すことができる。操作者は再びコントローラCTRを操作して、制御モードを姿勢固定モードに切り換える。
【0069】
姿勢固定モードに切り換わったら、操作者は、コントローラCTRを移動させる。トーチ2に見立てたコントローラCTRの先端が、溶接線Lの溶接終了点Eの位置に来たときに、溶接終了点Eを溶接教示点として、コントローラCTRに記憶させる。
【0070】
操作者が例えば上述のような操作をコントローラCTRに対して行った場合、コントローラCTRから上述の位置情報および姿勢情報を取得した溶接ロボット制御プログラム作成装置Tの処理部101は、取得した情報に基づいて溶接ロボット制御プログラムを作成して、ロボット制御装置3に送信する。
図6に示されているように、ロボット制御装置3は、作成された溶接ロボット制御プログラムに従って、トーチ2が物体OBJを回避するように姿勢を変えながら移動するように、溶接ロボット1を制御する。
【0071】
図7は、ワークWkの壁の内側を溶接する場合の、溶接ロボット制御プログラムに従ったトーチ2の動きを示す概念図である。本実施の形態の溶接対象物であるワークWkは、
図7に示されているように、3つの壁がコの字を形成するような形状を呈している。
【0072】
ワークWkの壁の内側を溶接する場合、トーチ2が壁にぶつからないように、トーチ2の向きを、ワークWkの壁に沿って変えながら溶接が行われる。この場合、トーチ2の溶接線Lに対する姿勢をそもそも一定に保つことが出来ない。そこで、トーチ2は溶接線L上の途中の区間だけ、姿勢を一定に保つようにしてよい。そのような溶接動作を溶接ロボット1に教示するために、操作者は例えば、以下のようにコントローラCTRを操作してよい。
【0073】
操作者は、制御モードを姿勢非固定モードにした状態で、トーチ2に見立てたコントローラCTRの先端を、ワークWkの溶接開始点Sの位置に当接させる。本実施の形態においては、溶接開始点Sは、ワークWkを形成する2つの壁が接する箇所にある。
【0074】
コントローラCTRの先端を、ワークWkの溶接開始点Sの位置に当接させたまま、操作者はコントローラCTRのボタンを押すなどして、溶接開始点Sを、溶接教示点としてコントローラCTRに記憶させる。
【0075】
次に、操作者は、コントローラCTRの先端を、ワークWkの溶接開始点Sから少し離れた溶接線L上の点(図示省略)に当接させて、制御モードを姿勢非固定モードから姿勢固定モードに切り換える。制御モード切り換え時に、コントローラCTRの先端が当接する溶接線L上の点は、溶接教示点としてコントローラCTRに記憶されてよい。以後、次の溶接教示点までの区間について、トーチ2の溶接線Lに対する姿勢が一定の姿勢(例えば、
図7に示されている中間点Mでの姿勢)に保たれる。
【0076】
本実施の形態においては、溶接終了点Eは、溶接開始点Sと同様にワークWkを形成する2つの壁が接する箇所にある。操作者は、溶接終了点Eの付近で再びコントローラCTRを操作して、制御モードを姿勢固定モードから姿勢非固定モードに切り換える。制御モード切り換え時に、コントローラCTRの先端が当接する溶接線L上の点は、溶接教示点としてコントローラCTRに記憶されてよい。
【0077】
操作者は、コントローラCTRの先端を、溶接終了点Eの位置に当接させる。そして、操作者はコントローラCTRのボタンを押すなどして、溶接終了点Eを、溶接教示点としてコントローラCTRに記憶させる。
【0078】
操作者が例えばコントローラCTRを以上のように操作することにより、作成された溶接ロボット制御プログラムに従って、トーチ2の動きは次のようになる。溶接線Lの溶接開始点S付近と、溶接終了点E付近とは、トーチ2の姿勢がコントローラCTRの姿勢に追随する。溶接線Lのそれ以外の区間については、トーチ2の姿勢は固定される。そのため、トーチ2はワークWkの内壁にぶつからずに、溶接線Lに沿った溶接を行う事ができる。
【0079】
図8~
図16はそれぞれ、第1~第9の溶接教示点に対応する、表示部104による表示例である。
【0080】
図8~
図16に記載されている表示例は、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tの処理部101が溶接ロボット制御プログラム作成プログラム1021を実行する際に、表示部104に表示される画像に相当する。ただし、これらの画像は、ヘッドマウントディスプレイHMD、それ以外の機器が備える画面等に表示されてもよい。操作者は、表示部104等に表示された画像を見ながら、コントローラCTRを操作して、溶接ロボット1に対するティーチングを行う。
【0081】
本実施の形態において、表示部104等に表示されたウィンドウWは、第1ペインP1、第2ペインP2、および第3ペインP3の3つのペインに分割されている。ただし、ウィンドウWのペイン分割はあくまで一例であり、他の表示態様が採用されてもよい。
【0082】
第1ペインP1は、トーチ2を備えた溶接ロボット1の仮想モデルが表示される。第1ペインP1は、溶接ロボット1が備えたトーチ2の動作軌跡が併せて表示されてよい。図示されているx軸、y軸およびz軸は、互いに直交した座標軸である。本例においては、トーチ2の向きがx軸になっている。
【0083】
第2ペインP2は、トーチ2の動作軌跡上の溶接教示点に係る情報が表示されている。溶接教示点に係る情報として、例えば以下の情報が表示されてよい。・トーチ2を移動させる移動コマンドの種類(MOVEL、MOVEP等)・溶接教示点の識別子(P001等)・トーチ2の移動速度
【0084】
第3ペインP3は、第2ペインP2で表示選択されている溶接教示点についての、各種の制御パラメータの値が表示される。表示される制御パラメータは、例えば以下の通りである。・溶接(ONなら溶接を行う、OFFなら溶接を行わない)・トーチ2の移動スピード(AUTOならプログラムが移動スピードを自動設定。数値指定ならその数値に従った移動スピード)・トーチ姿勢固定(ONなら上述の姿勢固定モード、OFFなら上述の姿勢非固定モード、AUTOならONまたはOFFが自動設定される)
【0085】
図8は、トーチ2の先端が第1の溶接教示点を指している状態を示す。第1の溶接教示点は、溶接ロボット1が待機姿勢にある場合の、トーチ2の先端の位置に相当する。溶接ロボット1の待機姿勢は、溶接ロボット1が溶接を始める際の初期位置にある場合の姿勢である。
【0086】
図9は、トーチ2の先端が第2の溶接教示点を指している状態を示す。
図10は、トーチ2の先端が第3の溶接教示点を指している状態を示す。第2の溶接教示点および第3の溶接教示点は、空走点である。空走は、トーチ2がワークに対して溶接を行わずに移動することである。
【0087】
図11は、トーチ2の先端が第4の溶接教示点を指している状態を示す。第4の溶接教示点は、溶接開始点である。溶接開始点は、
図3~
図7に示されている溶接開始点Sに相当する。なお、溶接開始点から溶接終了点まで溶接を行うので、第3ペインP3に表示される制御パラメータの値は、溶接についてON、トーチ姿勢固定についてONとなっている。また、第2ペインP2で選択表示(ハイライト表示)されている第4の溶接教示点に係る情報の左側に、白い丸が表示されている。本実施の形態では、白い丸は、その溶接教示点から先について溶接を行うことを示しており、黒い丸は、その溶接教示点から先について溶接を行わないことを示している。
【0088】
図12は、トーチ2の先端が第5の溶接教示点を指している状態を示す。第5の溶接教示点は、溶接終了点である。溶接終了点は、
図3~
図7に示されている溶接終了点Eに相当する。溶接終了点まで溶接を行ったトーチ2は空走するので、第3ペインP3に表示される制御パラメータの値は、溶接についてOFF、トーチ姿勢固定につきAUTO(なお、ONでもOFFでも良い)となっている。
【0089】
図13は、トーチ2の先端が第6の溶接教示点を指している状態を示す。
図14は、トーチ2の先端が第7の溶接教示点を指している状態を示す。第6の溶接教示点および第7の溶接教示点は、空走点である。
【0090】
図15は、トーチ2の先端が第8の溶接教示点を指している状態を示す。第8の溶接教示点は、溶接ロボット1が待機姿勢にある場合の、トーチ2の先端の位置に相当する。溶接ロボット1の待機姿勢は、溶接完了後の終了位置にある時の、溶接ロボット1の姿勢である。本例においては、溶接ロボット1の開始位置(
図8参照)および終了位置(
図15参照)は同じであり、第1の溶接教示点と第8の溶接教示点は同一である。ただし、第1の溶接教示点と第8の溶接教示点は、互いに位置が異なっていてもよい。
【0091】
図16は、トーチ2の先端が第9の溶接教示点を指している状態を示す。第9の溶接教示点は、トーチ2が治具等の物体を回避するために、第4の溶接教示点(溶接開始点S)と第5の溶接教示点(溶接終了点E)との間に追加的に設けられた中間点である。この中間点は、
図6に示されている点M1または点M2に相当する。
図11と
図16とを対比すると、第9の溶接教示点でのトーチ2の溶接線に対する角度が、第4の溶接教示点でのトーチ2の溶接線に対する角度と異なっている。これを可能とするために、
図16の第3ペインP3に表示される制御パラメータの値は、溶接についてON、トーチ姿勢固定につきOFFとなっている。
【0092】
(変形例)
図2において、ロボット制御装置3と、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tと、コントローラCTRとは、それぞれ別個の装置であった。しかし、これらの装置が1つの装置に統合されてもよい。例えば、ロボット制御装置3は溶接ロボット制御プログラム作成装置Tと一体化されてよい。また、コントローラCTRは溶接ロボット制御プログラム作成装置Tと一体化されてもよい。
【0093】
溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、位置情報および姿勢情報を、コントローラCTRを用いずに取得してもよい。
図1および
図2に示されているティーチペンダント4または操作ボックス5が、コントローラCTRの代わりに用いられてもよい。
【0094】
また、操作者が把持可能な、トーチ2を模した物体として、コントローラCTR以外の物体が用いられてもよい。例えば、コントローラCTRの代わりに、トーチ2の形状を模したモックアップ(模型)が用いられてもよい。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、モックアップの位置情報および姿勢情報をカメラによる撮像画像に基づいて取得し、これらの情報を、溶接開始点Sおよび溶接終了点Eの位置情報と、トーチ2の溶接線Lに対する姿勢を特定可能な姿勢情報として用いる。
【0095】
以上のように、溶接システム300は、トーチ2を備えた溶接ロボット1と、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tとを有する。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、ワークWkに対する溶接の溶接開始点Sおよび溶接終了点Eの位置情報と、溶接開始点Sと溶接終了点Eとを結ぶ溶接線L上の溶接教示点での、トーチ2の溶接線Lに対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得する。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、位置情報および姿勢情報に基づいて、溶接開始点Sから溶接終了点Eまで溶接を行う溶接ロボット制御プログラムを作成する。溶接ロボット1は、溶接ロボット制御プログラムに基づいてワークWkに対して溶接を行う。これにより、操作しやすいティーチングにより、溶接ロボット1は、溶接線Lに沿って溶接開始点Sから溶接終了点Eまでを溶接することができる。
【0096】
溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、処理部101を備える。処理部101は、ワークWkに対する溶接の溶接開始点Sおよび溶接終了点Eの位置情報と、溶接開始点Sと溶接終了点Eとを結ぶ溶接線L上の溶接教示点での、溶接ロボット1が備えるトーチ2の溶接線Lに対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得する。処理部101は、位置情報および姿勢情報に基づいて、溶接開始点Sから溶接終了点Eまで溶接を行う溶接ロボット制御プログラムを作成する。これにより、操作しやすいティーチングにより、溶接ロボット1は、溶接線Lに沿って溶接開始点Sから溶接終了点Eまでを溶接することができる。
【0097】
溶接ロボット制御プログラム作成装置Tによる、溶接ロボット制御プログラム作成方法において、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、ワークWkに対する溶接の溶接開始点Sおよび溶接終了点Eの位置情報と、溶接開始点Sと溶接終了点Eとを結ぶ溶接線L上の溶接教示点での、溶接ロボット1が備えるトーチ2の溶接線Lに対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得する。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、位置情報および姿勢情報に基づいて、溶接開始点Sから溶接終了点Eまで溶接を行う溶接ロボット制御プログラムを作成する。これにより、操作しやすいティーチングにより、溶接ロボット1は、溶接線Lに沿って溶接開始点Sから溶接終了点Eまでを溶接することができる。
【0098】
溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムは、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tに、ワークWkに対する溶接の溶接開始点Sおよび溶接終了点Eの位置情報と、溶接開始点Sと溶接終了点Eとを結ぶ溶接線L上の溶接教示点での、溶接ロボット1が備えるトーチ2の溶接線Lに対する姿勢を特定可能な姿勢情報とを取得させる。溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムは、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tに、位置情報および姿勢情報に基づいて、溶接開始点Sから溶接終了点Eまで溶接を行う溶接ロボット制御プログラムを作成させる。これにより、操作しやすいティーチングにより、溶接ロボット1は、溶接線Lに沿って溶接開始点Sから溶接終了点Eまでを溶接することができる。
【0099】
溶接システム300は、操作者が把持可能なコントローラCTRをさらに備える。溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、溶接教示点に向けたコントローラCTRの姿勢を示す情報であるコントローラ姿勢情報を、姿勢情報として取得する。これにより、操作者は、コントローラCTRの姿勢を活用して、トーチ2の動作のティーチングを簡単に行うことができる。
【0100】
コントローラCTRは、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tと一体化されていてよい。これにより、ユーザが操作するコントローラは、溶接ロボット制御プログラムの作成を行うことができる。
【0101】
コントローラCTRは、トーチ2と同一形状の先端部を有する。これにより、操作者はコントローラCTRを把持しながら溶接ロボット1のトーチ2が通過する溶接教示点を直感的に指定できる。
【0102】
溶接線L上の溶接教示点は、少なくとも1つの中間点Mを含む。これにより、操作者は溶接ロボット1が実際の溶接時にトーチ2を3次元的に動かして溶接する動作を柔軟に指定できる。
【0103】
溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、溶接線Lの中の、トーチ2の姿勢を固定する姿勢固定区間において、姿勢固定区間の始点でのトーチ2の溶接線Lに対する姿勢を保ったまま姿勢固定区間の終点まで溶接線Lに沿って溶接を行う、溶接ロボット1の制御プログラムを作成する。これにより、ティーチング時にコントローラやトーチの姿勢が変わってしまったとしても、溶接ロボット1は、トーチが溶接線に対して一定の姿勢を保ったまま溶接を行うことができ、溶接の品質が安定する。
【0104】
溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、溶接線Lの中の、トーチ2の姿勢を固定しない姿勢非固定区間において、トーチ2の溶接線Lに対する姿勢を、姿勢情報に基づいて特定されたトーチ2の姿勢に追随するように溶接線Lに沿って溶接を行う、溶接ロボットの制御プログラムを作成する。これにより、溶接ロボット制御プログラム作成装置Tは、そもそもトーチの姿勢を一定にすることができない姿勢非固定区間についても、操作者がトーチの動きを柔軟にティーチングすることができる。
【0105】
以上、図面を参照して、本開示に係る溶接システム、溶接ロボット制御プログラム作成装置、溶接ロボット制御プログラム作成方法、および溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムについて説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0106】
なお、本出願は、2020年6月10日出願の日本特許出願(特願2020-101188)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示は、操作しやすいティーチングを行って、溶接線に沿って溶接開始点から溶接終了点までを溶接する、溶接システム、溶接ロボット制御プログラム作成装置、溶接ロボット制御プログラム作成方法、および溶接ロボット制御プログラムの作成プログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 溶接ロボット
2 トーチ
3 ロボット制御装置
4 ティーチペンダント
5 操作ボックス
11 ロボットアーム
12 エンドエフェクタ
100 溶接ロボットシステム
101 処理部
102 記憶部
1021 溶接ロボット制御プログラム作成プログラム
103 入力部
104 表示部
200 溶接ロボット制御プログラム作成システム
300 溶接システム
CTR コントローラ
HMD ヘッドマウントディスプレイ
IR ベースステーション
L 溶接線
M 中間点
OBJ 物体
P1 第1ペイン
P2 第2ペイン
P3 第3ペイン
S 溶接開始点
E 溶接終了点
T 溶接ロボット制御プログラム作成装置
W ウィンドウ
Wk ワーク