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特許7595290予兆判断システム、統合システム、予兆判断方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】予兆判断システム、統合システム、予兆判断方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20241129BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20241129BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20241129BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20241129BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20241129BHJP
   G01N 15/06 20240101ALI20241129BHJP
   G01N 21/53 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B25/00 510M
G08B25/08 A
G08B17/00 C
G08B21/02
G01N15/06 D
G01N21/53 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020116696
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014393
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】珍坂 舞
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-115071(JP,A)
【文献】特開2014-126878(JP,A)
【文献】特表2008-546089(JP,A)
【文献】特開2014-241062(JP,A)
【文献】特開2006-202080(JP,A)
【文献】特開2018-106399(JP,A)
【文献】特開2017-063382(JP,A)
【文献】特開2017-076304(JP,A)
【文献】特開2019-079445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 25/04
G08B 25/00
G08B 25/08
G08B 17/00
G08B 21/02
G01N 15/06
G01N 21/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて前記対象空間における火災の有無を感知する複数の感知器から、前記検知データを取得する検知データ取得部と、
前記複数の感知器の各々から取得した前記検知データを累積した累積値を用いて、前記対象空間における火災の予兆の有無を判断する予兆判断部と、を備える、
予兆判断システム。
【請求項2】
前記複数の感知器は、同じ空間に配置されている、
請求項1に記載の予兆判断システム。
【請求項3】
前記予兆判断部は、前記複数の感知器の各々が有する前記センサが同じ検知期間に検知した前記検知データを累積して前記累積値を求める、
請求項1又は2に記載の予兆判断システム。
【請求項4】
前記予兆判断部は、前記累積値を時間積分して求めた時間積分値に基づいて前記予兆の有無を判断する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の予兆判断システム。
【請求項5】
前記複数の感知器の各々が有する前記センサの前記検知データに基づいて火災の有無を判断する火災判断部を更に備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の予兆判断システム。
【請求項6】
前記火災判断部は、前記煙の濃度に関する前記検知データと濃度閾値との比較結果に基づいて火災の有無を判断し、
前記火災判断部は、前記温度に関する前記検知データを、前記煙の濃度に関する前記検知データ又は前記濃度閾値の補正に用いる、
請求項5に記載の予兆判断システム。
【請求項7】
前記予兆判断部は、前記複数の感知器の各々が有する前記センサの前記検知データのうち外れ値以外の前記検知データを累積して前記累積値を求める、
請求項1~6のいずれか1項に記載の予兆判断システム。
【請求項8】
前記対象空間の少なくとも一部を撮影する撮像部から画像データを取得する画像データ取得部を更に備え、
前記予兆判断部は、前記累積値と、前記画像データとに基づいて、前記予兆の有無を判断する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の予兆判断システム。
【請求項9】
前記予兆判断部は、前記累積値に基づいて前記予兆の有無の一次判断を行い、前記一次判断において前記予兆が有ると判断した場合に前記画像データに基づいて前記予兆の有無の二次判断を行う、
請求項8に記載の予兆判断システム。
【請求項10】
前記予兆判断部は、前記累積値と予兆閾値との比較結果に基づいて前記予兆の有無を判断しており、
前記予兆閾値が変更可能である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の予兆判断システム。
【請求項11】
前記対象空間へのユーザの入退場を管理する入退場管理システムから前記ユーザの入退場に関連する入退場情報を取得する入退場情報取得部を更に備え、
前記予兆判断部は、前記入退場情報に基づいて前記予兆閾値を変更する、
請求項10に記載の予兆判断システム。
【請求項12】
前記入退場管理システムの管理対象である前記ユーザが使用する移動通信端末に、前記予兆判断部の判断結果を通知するための通知部を更に備え、
請求項11に記載の予兆判断システム。
【請求項13】
前記予兆が有ると前記予兆判断部が判断した場合、前記通知部は、前記入退場情報に基づき、前記対象空間に入場している前記ユーザが使用する前記移動通信端末に前記予兆判断部の判断結果を通知する、
請求項12に記載の予兆判断システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の予兆判断システムと、
前記複数の感知器と、を備える、
統合システム。
【請求項15】
対象空間における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて前記対象空間における火災の有無を感知する複数の感知器から、前記検知データを取得する検知データ取得処理と、
前記複数の感知器の各々から取得した前記検知データを累積した累積値を用いて、前記対象空間における火災の予兆の有無を判断する予兆判断処理と、を含む、
予兆判断方法。
【請求項16】
1以上のプロセッサに、請求項15に記載の予兆判断方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予兆判断システム、統合システム、予兆判断方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、火災の予兆を判断するための予兆判断システム、統合システム、予兆判断方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は救助活動支援システムを開示する。この救助活動支援システムは、監視対象の施設における火災の発生を感知する火災感知器と、施設内に設置された複数のカメラ装置とを備える。救助活動支援システムは、判定手段と、通知手段とを更に備える。火災感知器により火災の発生が感知されたとき、判定手段は、各カメラ装置によって取得された映像を表す映像信号に基づいて、各カメラ装置により撮影されたエリアに人がいるか否かを判定する。通知手段は、判定手段による判定結果を示す情報と、各カメラ装置の位置を示すカメラ位置情報とを、予め定められた通報先に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-186554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の救助活動支援システムは、火災感知器が火災の発生を感知したときに、通報先に火災の発生を通知するのであるが、より早い段階で火災を検知したいという要望があった。
【0005】
本開示の目的は、火災を早期に検知できる予兆判断システム、統合システム、予兆判断方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の予兆判断システムは、検知データ取得部と、予兆判断部と、を備える。前記検知データ取得部は、複数の感知器から前記検知データを取得する。前記複数の感知器は、対象空間における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて前記対象空間における火災の有無を感知する。前記予兆判断部は、前記複数の感知器の各々から取得した前記検知データを累積した累積値を用いて、前記対象空間における火災の予兆の有無を判断する。
【0007】
本開示の一態様の統合システムは、前記予兆判断システムと、前記複数の感知器と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の予兆判断方法は、検知データ取得処理と、予兆判断処理と、を含む。前記検知データ取得処理では、複数の感知器から検知データを取得する。前記複数の感知器は、対象空間における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて前記対象空間における火災の有無を感知する。前記予兆判断処理は、前記複数の感知器の各々から取得した前記検知データを累積した累積値を用いて、前記対象空間における火災の予兆の有無を判断する。
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、前記予兆判断方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、火災を早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る予兆判断システム及び統合システムの概略的なシステム構成図である。
図2図2は、同上の予兆判断システム及び統合システムが適用された施設の模式的な平面図である。
図3図3は、同上の統合システムが備える感知器の検知データ及びその累積値を示すグラフである。
図4図4は、同上の予兆判断システムの動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、変形例1に係る予兆判断システム及び統合システムの概略的なシステム構成図である。
図6図6は、変形例2に係る予兆判断システム及び統合システムの概略的なシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る予兆判断システム1は、図1に示すように、検知データ取得部141と、予兆判断部144と、を備える。検知データ取得部141は、複数の感知器20から検知データを取得する。複数の感知器20は、対象空間F2(図2参照)における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて、対象空間F2における火災の有無を感知する。予兆判断部144は、複数の感知器20の各々から取得した検知データを累積した累積値を用いて、対象空間F2における火災の予兆の有無を判断する。
【0013】
ここにおいて、対象空間F2(図2参照)は、例えば非住宅又は住宅の施設F1において、火災の有無を判断する対象の空間である。以下の実施形態では、施設F1が例えば複数の店(飲食店及び物販店等)が入居している複合商業施設であり、対象空間F2が施設F1内の店ごとの空間である場合について説明する。なお、対象空間F2は店ごとの空間に限定されず、施設F1内の共用空間でもよいし、施設F1の全体の空間でもよい。火災の前兆は、火災に発展する可能性がある前駆事象を含む。この種の前駆事象としては、対象空間F2において物体の温度が引火点又は発火点を超えない範囲で上昇している状態、対象空間F2において可燃物がくすぶっているために僅かに煙が発生している状態、及び、対象空間F2において液体又は気体の燃料が漏出している状態、等がある。
【0014】
予兆判断部144は、複数の感知器20の各々が備えるセンサの火災関連事象の検知データを累積した累積値を用いて火災の予兆を判断する。ここで、火災関連事象は、火災及び火災の前兆に伴って発生する事象であり、例えば温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む。なお、火災関連事象は、火災によって生じる不完全燃焼ガス(一酸化炭素、二酸化炭素など)の増加等を含んでもよいし、火災の要因となる事象(例えば液体燃料又は気体燃料の漏出、短絡事故などの発生)を含んでもよい。本実施形態では、一例として、複数の感知器20は、温度及び煙の濃度の検知データに基づいて火災の有無を感知し、火災に関する報知動作を行う。
【0015】
図3は、火災発生時における、複数の感知器20のうちの1台で検知された検知データ(例えば、煙の濃度の検知データ)、及び、複数の感知器20の検知データD1を累積した累積値D2の時間変化を示すグラフの一例である。火災の前兆が発生するタイミングから火災が拡大するにしたがって検知データD1の値が徐々に増加するのであるが、累積値D2は複数の感知器20の検知データD1を累積しているので、火災の拡大に伴う累積値D2の増加分は、個々の感知器20の検知データD1の増加分よりも大きくなる。予兆判断部144は、検知データD1を累積した累積値D2を用いることによって、火災の前兆で発生する検知データD1の微小な変化を捉えやすくなるので、火災の予兆を判断しやすくなり、火災を早期に検知することができる。
【0016】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る予兆判断システム1について図面を参照して詳しく説明する。なお、以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0017】
(2.1)構成
本実施形態の予兆判断システム1は、複数の店が入居する複合商業施設のような施設F1内の対象空間F2において火災の予兆を検知するために用いられる。図2は対象空間F2の一例を示す平面図である。図2の例では、施設F1内に入居する一つの店70内の空間が対象空間F2となる。店70は例えば飲食店であり、客席がある客席エリア71と、厨房となる厨房エリア72とを含んでいる。
【0018】
また、施設F1には、対象空間F2において火災の有無を感知するための複数の感知器20が設けられている。ここにおいて、施設F1には、予兆判断システム1と複数の感知器20とを備える統合システム2が適用されている。以下、統合システム2が備える感知器20及び予兆判断システム1について説明する。
【0019】
(2.1.1)感知器
対象空間F2となる店70には、例えば、客席エリア71及び厨房エリア72の天井に複数の感知器20が設置されている。つまり、複数の感知器20は、同じ空間に配置されている。ここにおいて、複数の感知器20が同じ空間に配置されるとは、複数の感知器20の各々が配置されている空間がつながっていることをいい、火災の前兆による影響が生じ得る一つの空間に配置されることをいう。したがって、同じ空間に配置されている複数の感知器20は、火災の前兆として発生する煙又は温度上昇を検知可能である。複数の感知器20の各々には個別の識別IDが割り当てられている。なお、本実施形態では対象空間F2に4台の感知器20が配置されており、4台の感知器20を区別して説明する場合、感知器21、22、23、24と記載する。
【0020】
複数の感知器20の各々は、温度センサ201と、煙センサ202と、報知部203と、通信部204と、制御部205と、を備える。
【0021】
温度センサ201は、例えばサーミスタ等の感温素子を含み、周囲の温度に応じた検知データを出力する。
【0022】
煙センサ202は、例えば光電式の煙検知部を有し、周囲の煙の濃度に応じた検知データを出力する。
【0023】
報知部203は、光及び音の少なくとも一方で警報を発する。
【0024】
通信部204は、予兆判断システム1と互いに通信可能に構成されている。本開示において「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又は中継器50若しくは内部ネットワークNT1を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。内部ネットワークNT1は施設F1内に設けられたLAN(Local Area Network)等のネットワークである。なお、本実施形態では、通信部204は無線通信方式で中継器50と通信を行い、中継器50及び内部ネットワークNT1を介して予兆判断システム1と通信を行う。また、本実施形態では、通信部204は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、電波を通信媒体として用いる無線通信を採用する。
【0025】
制御部205は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラムを実行することで、制御部205として機能する。プログラムは、ここでは制御部205のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0026】
制御部205は、温度センサ201及び煙センサ202から定期的に検知データを取得し、温度センサ201及び煙センサ202の検知データに基づいて、感知器20が配置された対象空間F2における火災の有無を検知する。具体的には、制御部205は、煙センサ202から入力される検知データに基づき、煙センサ202によって検知された煙の濃度と所定の濃度閾値との高低を比較する。制御部205は、煙の濃度が濃度閾値未満であれば火災は発生していないと判断し、煙の濃度が濃度閾値以上であれば火災が発生したと判断する。また、制御部205は、温度センサ201から入力される検知データに基づいて濃度閾値を補正する処理を行う。制御部205は、温度の検知データに基づき、温度が高くなるにつれて煙の濃度閾値を小さくするように、つまり高温時ほど感度が高くなるように濃度閾値を補正する。なお、制御部20が火災の有無を判断する判断手法は上記の手法に限定されず、適宜変更が可能である。
【0027】
制御部205は、火災が発生したと判断すると、報知部203を制御して報知動作を行わせる。これにより、感知器20は、当該感知器20の周囲にいる人に火災の発生を報知することができる。
【0028】
また、通信部204が、予兆判断システム1から温度センサ201及び煙センサ202の検知データの送信を要求する送信要求を受信すると、制御部205は、温度センサ201及び煙センサ202から検知データを取得する。そして、制御部205は、温度センサ201及び煙センサ202の検知データと当該感知器20の識別IDとを、通信部204から中継器50及び内部ネットワークNT1を介して予兆判断システム1へ送信させる。
【0029】
ところで、本実施形態において、複数の感知器20は、いわゆる連動型の防災機器であり、いずれの感知器で火災を検出しても、他の感知器と連動して(他の感知器と共に)、警報音の発報を行うように構成されている。火元の位置にある感知器(連動元)は、例えば、「ビュービュー火事です。」という警報音の発報を行う。一方、他の感知器(連動先)は、火元の位置を特定できるような警報音の発報を行う。
【0030】
例えば、感知器21で火災を検出すると、感知器21は、警報音を発報し、他の感知器20に施設5の火災を検知したこと(つまり、火災の発生を検知したこと)を通知する。他の感知器20は、上記通知を受け取ると、警報音を発報する。さらに、感知器21は、施設5の火災を検知したこと(検知結果)を、予兆判断システム1に送信する。
【0031】
なお、複数の感知器20のうち一の感知器20(例えば、感知器21)を親機とし、他の感知器20(例えば、感知器22,23,24)を子機としてもよい。子機である感知器22が火災を検出すると、感知器22は、警報音を発報するとともに、親機である感知器21に、施設5の火災を検知したこと(つまり、火災の発生を検知したこと)を表す情報を検知結果として送信する。感知器21は、検知結果を受け取ると、警報音を発報し、他の子機(感知器23,24)に発報指示を送信する。さらに、感知器21は、感知器22の検知結果を予兆判断システム1に送信する。感知器21から発報指示を受け取った感知器23,24は、警報音を発報する。また、感知器21が火災を検出すると、感知器21は、警報音を発報し、子機(感知器22~24)に発報指示を送信する。さらに、感知器21は、感知器21の検知結果を避難支援システム1に送信する。感知器21から発報指示を受け取った他の感知器20(感知器22~24)は、警報音を発報する。
【0032】
(2.1.2)予兆判断システム
予兆判断システム1は、複数の機能を1つの筐体に収容した予兆判断装置10で実現されている。この予兆判断装置10は、第1通信部11と、第2通信部12と、記憶部13と、制御部14とを備える。
【0033】
第1通信部11は、内部ネットワークNT1及び中継器50を介して複数の感知器20と通信可能に構成されている。予兆判断装置10の記憶部13には対象空間F2に配置されている複数の感知器20の識別IDが予め登録されており、第1通信部11は、記憶部13に登録されている識別IDを用いて、各感知器20と通信する。
【0034】
第2通信部12は、移動通信端末40と通信可能に構成されている。本実施形態では、第2通信部12と移動通信端末40とは外部ネットワークNT2を介して間接的に通信を行う。予兆判断装置10の記憶部13には移動通信端末40の識別ID(ネットワークアドレスなど)が予め登録されており、第2通信部12は、記憶部13に登録されている識別IDを用いて移動通信端末40と間接的に通信する。なお、移動通信端末40は、対象空間F2を利用するユーザが使用する携帯型の通信端末である。移動通信端末40は、例えばスマートフォン、通信機能を有するタブレット端末、又は通信機能を有するウェアラブル端末などである。なお、対象空間F2を利用するユーザは、対象空間F2が飲食店等の店である場合、店の従業員及び客等を含み得る。
【0035】
記憶部13は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等から選択されるデバイスで構成される。記憶部13は、複数の感知器20の識別ID、複数の感知器20から取得した検知データD1、及び検知データの累積値D2等を記憶する。
【0036】
制御部14は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラムを実行することで、制御部14として機能する。プログラムは、ここでは制御部14のメモリ又は記憶部13に予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0037】
制御部14は、検知データ取得部141、予兆判断部144、火災判断部145、及び通知部146の機能を有する。なお、制御部14が火災判断部145及び通知部146の機能を有することは必須ではなく、火災判断部145及び通知部146は適宜省略が可能である。また、制御部14が火災判断部145の機能を有していない場合に、制御部14は、感知器20から受信する火災の検知結果に基づいて、火災の発生を通知する通知処理を行ってもよい。
【0038】
検知データ取得部141は、第1通信部11経由で複数の感知器20に検知データの送信要求を定期的に送信する。検知データ取得部141は、送信要求に応じて各感知器20から送信された検知データを第1通信部11経由で取得し、取得した検知データを送信元の感知器20の識別IDと対応付けて記憶部13に記憶する。つまり、記憶部13には、複数の感知器20のそれぞれについて検知データが格納されている。
【0039】
予兆判断部144は、検知データ取得部141が取得した複数の感知器20の検知データ(例えば煙センサ202の検知データ)D1を累積することによって累積値D2を求める。具体的には、予兆判断部144は、複数の感知器20の各々が有するセンサ(例えば煙センサ202)が同じ検知期間に検知した検知データD1を累積して累積値D2を求める。ここにおいて、同じ検知期間に検知された検知データD1を累積するとは、複数の感知器20のセンサが検知した検知データD1であって、累積対象の検知期間に検知された検知データD1を累積することをいう。例えば、4つの感知器21~24からセンサの検知データを取得した場合、感知器21のセンサ、感知器22のセンサ、感知器23のセンサ、及び感知器24のセンサが、それぞれ、累積対象の検知期間に検知した検知データD1を累積することをいう。この累積値D2は、同じ検知期間に、複数の感知器20がそれぞれ有する複数のセンサ(例えば煙センサ202)によって検知された検知データ(煙の濃度の検知データ)D1の総和であり、複数のセンサの検知データD1を合計した値である。
【0040】
なお、複数のセンサによって同じ検知期間に検知された検知データとは、同時に検知された検知データに限らず、所定の期間内(例えば、検知データ取得部141が送信要求を送信する1周期の間)に検知された検知データでもよい。火災に至る前の前兆が発生している状態では、対象空間F2に発生する煙は少量であり、個々の感知器20が備える煙センサ202の検知データD1の変化分は微少であるため、個々のセンサの検知データD1から火災の前兆を検知することは難しい。そこで、予兆判断部144は、複数の感知器20が有する複数のセンサの検知データD1を累積することによって、個々のセンサの検知データD1に比べて火災の予兆が発生した場合の変化分が大きい累積値D2を算出する。そして、予兆判断部144は、検知データの累積値D2と所定の予兆閾値との大小を比較することによって、火災の予兆の有無を判断する。つまり、予兆判断部144は、累積値D2と予兆閾値との比較結果に基づいて予兆の有無を判断している。予兆判断部144は、検知データの累積値が予兆閾値以下であれば、火災の予兆がないと判断し、検知データの累積値が予兆閾値を超えると、火災の予兆があると判断する。なお、予兆判断部144による予兆の判断手法は一例であり、適宜変更が可能である。予兆判断部144は、複数の感知器20がそれぞれ備える複数の温度センサ201の検知データを累積した累積値と予兆閾値との高低を比較することによって、予兆の有無を判断してもよい。
【0041】
火災判断部145は、複数の感知器20の各々が有するセンサ(本実施形態では温度センサ201及び煙センサ202)の検知データD1に基づいて火災の有無を判断する。つまり、予兆判断システム1(予兆判断装置10)は個々の感知器20の検知データD1に基づいて火災の有無を判断する機能も備えている。
【0042】
例えば、火災判断部145は、感知器20と同様の手法で火災の有無を判断する。すなわち、火災判断部145は、煙の濃度に関する検知データ(煙センサ202の検知データ)と濃度閾値との比較結果に基づいて火災の有無を判断する。また、火災判断部145は、温度に関する検知データ(温度センサ201の検知データ)を、煙の濃度に関する検知データ又は濃度閾値の補正に用いる。本実施形態では、火災判断部145は、温度に関する検知データを濃度閾値の補正に用いている。火災判断部145は、温度が高いほど濃度閾値を低くするように濃度閾値を補正しており、高温時ほど感度を高くすることができる。なお、火災判断部145は、温度に関する検知データが高いほど、煙の濃度に関する検知データに乗算する補正係数を大きくするように、煙の濃度に関する検知データを補正してもよく、高温時ほど感度を高くすることができる。
【0043】
通知部146は、予兆判断部144及び火災判断部145の判断結果を、対象空間F2のユーザが使用する移動通信端末40に通知する通知処理を行う。通知部146は、第2通信部12から外部ネットワークNT2を介して移動通信端末40に、予兆判断部144及び火災判断部145の判断結果を通知する。
【0044】
(2.2)動作説明
本実施形態の予兆判断システム1(予兆判断装置10)の動作を図4等に基づいて説明する。なお、図4に示すフローチャートは、本実施形態に係る予兆判断方法の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0045】
予兆判断装置10の検知データ取得部141は、所定の判定周期(例えば数十秒から数分程度の周期)が経過するごとに、第1通信部11経由で複数の感知器20に検知データ(温度センサ201及び煙センサ202の検知データ)の送信要求を送信する。感知器20の通信部204が予兆判断装置10からの送信要求を受信すると、制御部205は、温度センサ201及び煙センサ202の検知データを通信部204から予兆判断装置10へ送信させる。検知データ取得部141は、送信要求に応じて各感知器20から送信された検知データを第1通信部11経由で取得すると、取得した検知データを送信元の感知器20の識別IDと対応付けて記憶部13に記憶する(S1)。
【0046】
検知データ取得部141が対象空間F2に配置された全ての感知器20から同じ検知期間で検知された検知データを受信すると、火災判断部145が、各感知器20の検知データ(温度センサ201及び煙センサ202の検知データ)を用いて火災の有無を判断する(S2)。火災判断部145は、各感知器20から取得した温度センサ201の検知データを用いて、煙の濃度に関する濃度閾値L1(図3参照)を設定する。そして、火災判断部145は、個々の感知器20から取得した煙の濃度の検知データと濃度閾値L1との高低を比較することによって、火災の有無を判断する。
【0047】
火災の判断処理S2において火災ありと判断された場合(S3:Yes)、通知部146は、火災の発生を通知する通知情報を第2通信部12から移動通信端末40に送信させる通知処理を行う(S4)。これにより、移動通信端末40のユーザは、対象空間F2での火災の発生を把握することが可能になる。
【0048】
また、火災の判断処理S2において火災なしと判断された場合(S3:No)、予兆判断部144は、例えば煙センサ202による煙の濃度の検知データを累積して累積値を算出する(S5)。
【0049】
なお、累積値の算出処理(S5)において、予兆判断部144は、複数の感知器20の各々が有するセンサの検知データのうち外れ値以外の検知データを累積して累積値D2を求めてもよい。外れ値は、複数のセンサによってそれぞれ検知された複数の検知データのうち他の値から大きく外れた検知データのことである。例えば、予兆判断部144は、複数のセンサによってそれぞれ検知された複数の検知データの代表値(中央値又は平均値等)を求め、代表値との差が所定の誤差許容値よりも大きい検知データを外れ値と判断する。そして、予兆判断部144は、複数のセンサによってそれぞれ検知された複数の検知データから、外れ値を除いた1以上の検知データを累積することで、累積値を求めており、ノイズ等による異常値を除いて累積値を求めることができる。なお、外れ値を除外して累積値を求める場合、予兆判断部144は、累積した検知データの個数に応じて予兆閾値を変化させることが好ましい。
【0050】
そして、予兆判断部144は、煙の濃度の累積値と予兆閾値L2(図3参照)との大小を比較することによって、火災の予兆の有無を判断する(S6)。予兆判断部144は、煙の濃度の累積値が予兆閾値L2以下であれば火災の予兆がないと判断し、煙の濃度の累積値が予兆閾値L2を超えると火災の予兆ありと判断する。
【0051】
予兆の判断処理S6において予兆なしと判断された場合(S7:No)、処理S1に戻って上記の処理を繰り返す。
【0052】
予兆の判断処理S6において予兆ありと判断された場合(S7:Yes)、通知部146は、予兆の発生を通知する通知情報を第2通信部12から移動通信端末40に送信させる通知処理を行う(S8)。これにより、移動通信端末40のユーザは、対象空間F2で火災の予兆が発生したことを把握でき、より早い段階で火災を検知することができる。例えば、図3の例では、検知データD1が濃度閾値L1を超えるタイミングt3よりも前に、累積値D2が予兆閾値L2を超えるので、火災判断部145及び感知器20が火災の発生を感知するよりも前に、予兆判断システム1は火災の予兆を検知することができる。したがって、火災の予兆が発生したタイミングt1から、ユーザが使用する移動通信端末40に通知情報が通知されるまでの時間が短くなり、ユーザはより早いタイミングで火災に対応することが可能になる。
【0053】
なお、累積値の算出処理S5において、予兆判断部144は、複数の感知器20から取得した複数の検知データ(例えば煙センサ202の検知データ)の総和を、前回の累積値(時間累積値)に加算することによって時間累積値を求めてもよい。つまり、予兆判断部144は、累積値を時間積分して求めた時間積分値に基づいて予兆の有無を判断してもよい。時間累積値を用いて予兆の有無を判断することによって、ノイズ等の影響による検知データの一時的な変動を吸収することができ、予兆の有無の誤判断を抑制できる。
【0054】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、予兆判断システム1と同様の機能は、予兆判断方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る予兆判断方法は、検知データ取得処理と、予兆判断処理と、を有する。検知データ取得処理では複数の感知器20から検知データを取得する。複数の感知器20は対象空間F2にそれぞれ配置される。複数の感知器20は、温度及び煙の濃度の少なくとも一方を検知対象とするセンサの検知データに基づいて、対象空間F2における火災の有無をそれぞれ感知する。予兆判断処理では、複数の感知器20の各々から取得した検知データを累積した累積値を用いて、対象空間F2における火災の予兆の有無を判断する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、1以上のプロセッサに、検知データ取得処理と、予兆判断処理と、を実行させるためのプログラムである。
【0055】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0056】
本開示における予兆判断システム1及び統合システム2は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における予兆判断システム1及び統合システム2としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0057】
また、予兆判断システム1及び統合システム2における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは予兆判断システム1及び統合システム2に必須の構成ではなく、予兆判断システム1及び統合システム2の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、予兆判断システム1及び統合システム2の少なくとも一部の機能、例えば、予兆判断システム1及び統合システム2の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0058】
上記の実施形態において、予兆判断部144は、温度センサ201の検知データを累積して累積値D2を求め、この累積値D2を用いて火災の予兆の有無を判断してもよい。また、予兆判断部144は、温度センサ201の検知データ及び煙センサ202の検知データ以外の火災関連事象の検知データを累積して累積値D2を求め、この累積値D2を用いて火災の予兆の有無を判断してもよい。
【0059】
上記の実施形態では、施設F1内の1つの店70内の空間が対象空間F2であるが、対象空間F2は複数の店70内の空間でもよいし、施設F1内の共有部分の空間でもよい。
【0060】
上記の実施形態では、施設F1が複合商業施設である場合を例に説明したが、施設F1は複合商業施設に限定されない。施設F1は、戸建の住宅又は集合住宅などの居住用の建物でもよいし、非住宅の建物でもよい。非住宅の建物としては、例えば、オフィスビル、劇場、映画館、公会堂、遊技場、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港等であってもよい。
【0061】
上記の実施形態では、予兆判断システム1は、予兆判断部144及び火災判断部145の判断結果をユーザが使用する移動通信端末40に通知しているが、施設F1の保安担当者、民間警備会社、又は消防などの公的な防災機間に判断結果を通知してもよい。
【0062】
上記の実施形態において、予兆判断システム1は、予兆判断部144及び火災判断部145の判断結果を、施設F1の設備(例えば照明システム)を管理する管理システムに送信してもよい。管理システムは、予兆判断部144及び火災判断部145の判断結果に基づいて、例えば施設F1の照明システムを点灯させることで、施設F1からの避難をしやすくすることができる。
【0063】
(3.1)変形例1
変形例1の予兆判断システム1及び統合システム2について図5を参照して説明する。変形例1の予兆判断システム1は、対象空間F2の少なくとも一部を撮影するカメラ30(撮像部)から画像データを取得する画像データ取得部142を更に備え、予兆判断部144が累積値と画像データとに基づいて予兆の有無を判断する点で上記の実施形態と相違する。なお、上記の実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0064】
対象空間F2には、複数の感知器20にそれぞれ対応して複数のカメラ30が配置されている。上記の実施形態では4台の感知器21~24が対象空間F2に配置されており、4台の感知器21~24にそれぞれ対応して4台のカメラ31~34が配置されている。
【0065】
複数のカメラ30の各々は、対応する感知器20が火災の有無を検知する検知エリアを撮影エリアとし、撮影エリアを定期的に撮影する。複数のカメラ30は、予兆判断システム1と通信可能に構成されており、例えば予兆判断システム1から画像データの送信要求を受け取ると、撮影エリアを撮影した画像データを予兆判断システム1に送信する。
【0066】
画像データ取得部142は、検知データ取得部141が複数の感知器20から検知データを収集するタイミングで、複数のカメラ30から画像データを収集する。そして、予兆判断部144は、累積値と画像データとに基づいて予兆の有無を判断しており、画像データに更に基づいて予兆の有無を判断することで、予兆の誤検知を低減することができる。
【0067】
ここで、予兆判断部144は、累積値に基づいて予兆の有無の一次判断を行い、一次判断において予兆が有ると判断した場合に画像データに基づいて予兆の有無の二次判断を行っている。画像データに基づいて予兆の有無を判断(二次判断)する処理は、累積値に基づいて予兆の有無を判断(一次判断)する処理に比べて、制御部14の処理量が大きいが、一次判断において予兆が有ると判断された場合のみ二次判断が行われるので、制御部14の処理の負荷を軽減できる。なお、予兆判断部144は、例えば火災の前兆が発生しているときの基準画像の画像データと、カメラ30の画像データとを比較することで、予兆の有無を判断するが、予兆の有無を判断する判断手法は適宜変更可能である。例えば、予兆判断部144は、火災の前兆が発生しているときの画像データを教師データとして生成された学習済モデルに、カメラ30の画像データを入力することで、対象空間F2における予兆の有無を判断してもよい。
【0068】
(3.2)変形例2
変形例2は、予兆判断部144が、予兆の有無の判断に用いる予兆閾値を変更可能にした点で上記の実施形態と相違する。すなわち、変形例2では、予兆判断部144が、複数の検知データの累積値と予兆閾値との比較結果に基づいて予兆の有無を判断しており、この予兆閾値が変更可能である。予兆判断部144は、例えば、対象空間F2にユーザが存在しない不在状態では、対象空間F2にユーザが存在する存在状態に比べて、予兆閾値を下げることで高感度にしており、不在状態では火災の予兆を高感度に検知できる。
【0069】
変形例2の予兆判断システム1及び統合システム2の具体例を図6に基づいて説明する。変形例2の予兆判断システム1は、対象空間F2へのユーザの入退場を管理する入退場管理システム60からユーザの入退場に関連する入退場情報を取得する入退場情報取得部143を更に備えている。そして、予兆判断部144は、入退場情報に基づいて予兆閾値を変更する。なお、入退場管理システム60及び入退場情報取得部143以外の構成は変形例1と同様であるので、上記の実施形態及び変形例1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0070】
入退場管理システム60は、対象空間F2の出入口に設置されたカードリーダを有している。また、入退場管理システム60は予兆判断システム1(予兆判断装置10)と通信可能に構成されている。入退場管理システム60では、対象空間F2に出入りするユーザのうち、管理対象のユーザ(例えば店70の店員等)に予めIDカードが付与されている。ユーザが対象空間F2に入場する際、又は、ユーザが対象空間F2から外に出る際に、ユーザがIDカードをカードリーダにかざすことによって、カードリーダはIDカードに記憶されたID情報を読み取る。入退場管理システム60は、カードリーダがIDカードから読み取ったID情報に基づいて、対象空間F2へのユーザの入退場を管理する。そして、入退場管理システム60は、予兆判断システム1からの送信要求を受信すると、ユーザの入退場に関連する入退場情報を予兆判断システム1に送信する。
【0071】
予兆判断システム1の入退場情報取得部143は、検知データ取得部141が複数の感知器20から検知データを収集するタイミングで、入退場管理システム60に入退場情報の送信を要求する要求信号を送信する。入退場管理システム60は予兆判断システム1から要求信号を受信すると、入退場情報を予兆判断システム1に送信する。このとき、予兆判断部144は、入退場情報に基づいて予兆閾値を変更しており、例えば、対象空間F2にユーザが存在しない不在状態では、対象空間F2にユーザが存在する存在状態に比べて、予兆閾値を下げている。これにより、予兆判断部144は、不在状態では存在状態に比べて高感度に予兆の発生を検知することができ、不在状態では火災の前兆を検知しやすくなる。
【0072】
ここで、火災の予兆が有ると予兆判断部144が判断すると、通知部146は、入退場管理システム60の管理対象であるユーザが使用する移動通信端末40に、予兆判断部144の判断結果を通知する。これにより、対象空間F2への入退場を管理する管理対象であるユーザに対して、予兆判断部144の判断結果を通知することが可能になる。なお、通知部146は、管理対象のユーザが使用する移動通信端末40に、火災判断部145の判断結果を通知してもよく、ユーザは対象空間F2における火災の発生を把握することができる。
【0073】
なお、火災の予兆が有ると予兆判断部144が判断した場合、通知部146は、入退場情報に基づき、対象空間F2に入場しているユーザが使用する移動通信端末40のみに予兆判断部144の判断結果を通知してもよい。対象空間F2に入場しているユーザに対して火災の予兆を通知することで、ユーザは、火災の拡大を防止する処置を行ったり、対象空間F2から避難したりする等の行動をとることができる。
【0074】
火災の予兆を検知した場合に、予兆判断システム1は、複数の感知器20に発報指令を出力し、複数の感知器20に発報動作を行わせることによって、火災の予兆をユーザに報知してもよい。
【0075】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の予兆判断システム(1)は、検知データ取得部(141)と、予兆判断部(144)と、を備える。検知データ取得部(141)と、複数の感知器(20)から検知データ(D1)を取得する。複数の感知器(20)は、対象空間(F2)における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサ(201,202)の検知データ(D1)に基づいて対象空間(F2)における火災の有無を感知する。予兆判断部(144)は、複数の感知器(20)の各々から取得した検知データ(D1)を累積した累積値(D2)を用いて、対象空間(F2)における火災の予兆の有無を判断する。
【0076】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0077】
第2の態様の予兆判断システム(1)では、第1の態様において、複数の感知器(20)は、同じ空間に配置されている。
【0078】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0079】
第3の態様の予兆判断システム(1)では、第1又は2の態様において、予兆判断部(144)は、複数の感知器(20)の各々が有するセンサ(201,202)が同じ検知期間に検知した検知データ(D1)を累積して累積値(D2)を求める。
【0080】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0081】
第4の態様の予兆判断システム(1)では、第1~3のいずれかの態様において、予兆判断部(144)は、累積値(D2)を時間積分して求めた時間積分値に基づいて予兆の有無を判断する。
【0082】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0083】
第5の態様の予兆判断システム(1)は、第1~4のいずれかの態様において、火災判断部(145)を更に備える。火災判断部(145)は、複数の感知器(20)の各々が有するセンサ(201,202)の検知データ(D1)に基づいて火災の有無を判断する。
【0084】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0085】
第6の態様の予兆判断システム(1)では、第5の態様において、火災判断部(145)は、煙の濃度に関する検知データ(D1)と濃度閾値との比較結果に基づいて火災の有無を判断する。火災判断部(145)は、温度に関する検知データ(D1)を、煙の濃度に関する検知データ(D1)又は濃度閾値の補正に用いる。
【0086】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0087】
第7の態様の予兆判断システム(1)では、第1~6のいずれかの態様において、予兆判断部(144)は、複数の感知器(20)の各々が有するセンサ(201,202)の検知データ(D1)のうち外れ値以外の検知データ(D1)を累積して累積値(D2)を求める。
【0088】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0089】
第8の態様の予兆判断システム(1)は、第1~7のいずれかの態様において、画像データ取得部(142)を更に備える。画像データ取得部(142)は、対象空間(F2)の少なくとも一部を撮影する撮像部(30)から画像データを取得する。予兆判断部(144)は、累積値(D2)と、画像データとに基づいて、予兆の有無を判断する。
【0090】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0091】
第9の態様の予兆判断システム(1)では、第8の態様において、予兆判断部(144)は、累積値(D2)に基づいて予兆の有無の一次判断を行い、一次判断において予兆が有ると判断した場合に画像データに基づいて予兆の有無の二次判断を行う。
【0092】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0093】
第10の態様の予兆判断システム(1)では、第1~9のいずれかの態様において、予兆判断部(144)は、累積値(D2)と予兆閾値との比較結果に基づいて予兆の有無を判断しており、予兆閾値が変更可能である。
【0094】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0095】
第11の態様の予兆判断システム(1)は、第10の態様において、入退場情報取得部(143)を更に備える。入退場情報取得部(143)は、対象空間(F2)へのユーザの入退場を管理する入退場管理システム(60)からユーザの入退場に関連する入退場情報を取得する。予兆判断部(144)は、入退場情報に基づいて予兆閾値を変更する。
【0096】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0097】
第12の態様の予兆判断システム(1)は、第11の態様において、通知部(146)を更に備える。通知部(146)は、入退場管理システム(60)の管理対象であるユーザが使用する移動通信端末(40)に、予兆判断部(144)の判断結果を通知する。
【0098】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0099】
第13の態様の予兆判断システム(1)では、第12の態様において、予兆が有ると予兆判断部(144)が判断した場合、通知部(146)は、入退場情報に基づき、対象空間(F2)に入場しているユーザが使用する移動通信端末(40)に予兆判断部(144)の判断結果を通知する。
【0100】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0101】
第14の態様の統合システム(2)は、予兆判断システム(1)と、複数の感知器(20)と、を備える。
【0102】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0103】
第15の態様の予兆判断方法は、検知データ取得処理と、予兆判断処理と、を含む。検知データ取得処理では、複数の感知器(20)から検知データ(D1)を取得する。複数の感知器(20)は、対象空間(F2)における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサ(201,202)の検知データ(D1)に基づいて対象空間(F2)における火災の有無を感知する。予兆判断処理は、複数の感知器(20)の各々から取得した検知データ(D1)を累積した累積値(D2)を用いて、対象空間(F2)における火災の予兆の有無を判断する。
【0104】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0105】
第16の態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、第15の態様の予兆判断方法を実行させるためのプログラムである。
【0106】
この態様によれば、火災を早期に検知することができる。
【0107】
上記態様に限らず、上記実施形態に係る予兆判断システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、予兆判断方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0108】
第2~第13の態様に係る構成については、予兆判断システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 予兆判断システム
2 統合システム
20 感知器
30 カメラ(撮像部)
40 移動通信端末
60 入退場管理システム
141 検知データ取得部
142 画像データ取得部
143 入退場情報取得部
144 予兆判断部
145 火災判断部
146 通知部
201 温度センサ(センサ)
202 煙センサ(センサ)
D1 検知データ
D2 累積値
F2 対象空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6