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特許7595300統合データ生成システム、施工計画管理システム、統合データ生成方法、施工計画管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】統合データ生成システム、施工計画管理システム、統合データ生成方法、施工計画管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20241129BHJP
【FI】
G06Q50/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021058423
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155087
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮井 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】西 哲也
(72)【発明者】
【氏名】笹井 厚希
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004227(JP,A)
【文献】特開2002-163304(JP,A)
【文献】特開2013-164681(JP,A)
【文献】特開平10-115096(JP,A)
【文献】特開2021-033550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象となる建築物の3次元形状を表す3次元モデルにおいて前記建築物の一部に対応する対象エリアに、前記建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクトを紐付ける紐付け部と、
少なくとも前記作業オブジェクトが前記対象エリアに紐付けられている前記3次元モデルのデータを含む統合データを記憶する記憶部と、を備え
前記作業オブジェクトの属性は、前記作業の種別を含み、
前記3次元モデルは、前記建築物を構成する少なくとも1つの要素に対応する要素モデルを備え、
前記要素モデルは、前記要素を対象とする前記作業の情報である要素別情報を予め設定されている要素オブジェクトを含み、
前記紐付け部は、前記対象エリアが前記要素モデルに対応すれば、前記要素別情報を前記作業オブジェクトの前記属性に設定することで、前記対象エリアに前記作業オブジェクトを紐付け
統合データ生成システム。
【請求項2】
前記3次元モデル、及び前記紐付け部が前記対象エリアに紐付けた前記作業オブジェクトに基づいて、前記統合データを生成する統合データ生成部を更に備える
請求項1の統合データ生成システム。
【請求項3】
前記紐付け部は、前記建築物の空間に対応する前記対象エリアを設定できる
請求項1又は2の統合データ生成システム。
【請求項4】
前記紐付け部は、前記建築物の外部の情報である外部情報を前記3次元モデルに紐付ける
請求項1乃至3のいずれか1つの統合データ生成システム。
【請求項5】
前記作業オブジェクトの前記属性は、前記作業が行われる位置及び前記作業に要する時間を更に含む
請求項1乃至4のいずれか1つの統合データ生成システム。
【請求項6】
前記要素別情報は、前記要素を対象とする前記作業の種別を示す要素別種別情報、及び前記要素を対象とする前記作業に要する時間を示す要素別時間情報を含む
請求項5の統合データ生成システム。
【請求項7】
前記要素別情報は、前記要素を対象とする前記作業の難易度を示す要素別レベル情報を更に含む
請求項6の統合データ生成システム。
【請求項8】
前記紐付け部は、前記要素別情報が前記作業オブジェクトに適合するか否かを判定し、前記要素別情報が前記作業オブジェクトに適合すると判定すれば、前記要素別情報を前記作業オブジェクトの前記属性に設定する
請求項6又は7の統合データ生成システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つの統合データ生成システムの前記統合データに基づいて、前記建築物の施工計画を作成する施工計画作成部と、
前記施工計画のデータを出力するデータ出力部と、を備える
施工計画管理システム。
【請求項10】
前記作業オブジェクトは、前記作業の種別である作業種別、前記作業が行われる位置である作業位置、及び前記作業に要する時間である作業時間の各情報を含み、
前記統合データは、前記作業オブジェクトを複数含んでおり、
前記施工計画作成部は、
前記複数の作業オブジェクトのそれぞれに含まれている前記作業位置の情報に基づいて、前記作業オブジェクトのそれぞれに対応する前記作業を行う順番を決定し、
前記作業オブジェクトのそれぞれの前記作業種別毎の前記作業を並列的に展開する、ことによって、
前記複数の作業オブジェクトのそれぞれに含まれている前記作業の流れを示す最適作業フローを作成する
請求項9の施工計画管理システム。
【請求項11】
フィードバック部を更に備え
前記3次元モデルは、前記建築物を構成する少なくとも1つの要素に対応する要素モデルを備え、
前記要素モデルは、前記要素を対象とする前記作業の情報である要素別情報を予め設定されている要素オブジェクトを含み、
前記作業オブジェクトは、前記対象エリアが前記要素モデルに対応すれば、前記作業の情報として前記要素別情報を含み、
前記フィードバック部は、前記建築物における前記作業の実績に応じた実績データを取得し、前記実績データに基づいて前記要素別情報を更新する
請求項9又は10の施工計画管理システム。
【請求項12】
施工対象となる建築物の3次元形状を表す3次元モデルにおいて前記建築物の一部に対応する対象エリアに、前記建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクトを紐付ける紐付けステップと、
少なくとも前記作業オブジェクトが前記対象エリアに紐付けられている前記3次元モデルのデータを含む統合データを記憶する記憶ステップと、を含み、
前記作業オブジェクトの属性は、前記作業の種別を含み、
前記3次元モデルは、前記建築物を構成する少なくとも1つの要素に対応する要素モデルを備え、
前記要素モデルは、前記要素を対象とする前記作業の情報である要素別情報を予め設定されている要素オブジェクトを含み、
前記紐付けステップでは、前記対象エリアが前記要素モデルに対応すれば、前記要素別情報を前記作業オブジェクトの前記属性に設定することで、前記対象エリアに前記作業オブジェクトを紐付ける
統合データ生成方法。
【請求項13】
請求項12の統合データ生成方法の前記統合データに基づいて、前記建築物の施工計画を作成する施工計画作成ステップと、
前記施工計画のデータを出力するデータ出力ステップと、を含む
施工計画管理方法。
【請求項14】
コンピュータシステムに請求項12の統合データ生成方法を実行させる
プログラム。
【請求項15】
コンピュータシステムに請求項13の施工計画管理方法を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、統合データ生成システム、施工計画管理システム、統合データ生成方法、施工計画管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の施工支援方法は、加工場において加工された複数の加工部材の施工現場への搬送、及び搬送された複数の加工部材の設置、を通して施工される施工対象物の施工を支援する。この施工支援方法は、施工図取得ステップと、施工対象BIMモデル作成ステップと、加工部材BIMモデル作成ステップと、統合BIMモデル作成ステップと、を備える。
【0003】
施工図取得ステップは、施工対象物を施工するための施工図を取得する。
【0004】
施工対象BIMモデル作成ステップは、施工図に基づいて、施工対象物の3次元モデルである施工対象BIMモデルを作成する。
【0005】
加工部材BIMモデル作成ステップは、加工形状情報抽出ステップ及び設置位置情報抽出ステップを有して、施工図に基づいて作成される、複数の加工部材を加工するための加工図に基づいて、複数の加工部材の各々の加工部材BIMモデルを作成する。加工形状情報抽出ステップは、複数の加工部材の各々の形状および寸法を含む加工形状情報を加工図から抽出する。設置位置情報抽出ステップは、施工対象物内における複数の加工部材の各々の設置位置を含む設置位置情報を加工図から抽出する。
【0006】
統合BIMモデル作成ステップは、加工形状情報および設置位置情報に基づいて、複数の加工部材の各々の加工部材BIMモデルを施工対象BIMモデルに組み込むことにより、施工対象BIMモデルと複数の加工部材の各々の加工部材BIMモデルとが統合された統合BIMモデルを作成する。
【0007】
上述の特許文献1の施工支援方法は、施工図と加工図とを作成する主体が異なる場合でも、製造(加工作業)時に従うべき加工図の情報が統合BIMモデルに反映されることにより、統合BIMモデルを用いて施工図への加工図の整合性を検証することができる。
【0008】
さらに、妥当性が事前に検証された加工図を用いて製造を行うことが可能となるので、施工図との整合性が欠如した加工部材を製造するリスクが低減される。
【0009】
すなわち、上述の特許文献1の施工支援方法では、施工対象BIMモデルと複数の加工部材の各々の加工部材BIMモデルとが統合された統合BIMモデルを作成することで、施工図と加工図との整合性を検証することができ、整合性が欠如した加工部材を製造するリスクが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-21190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の施工支援方法では、建築物の3次元モデルを用いて建築物と加工部材とを整合させることはできるが、建築物の3次元モデルを用いて施工現場での具体的な作業、スケジュールなどの施工工程を管理することはできなかった。
【0012】
本開示の目的は、建築物の3次元モデルを用いて施工工程を管理することができる統合データ生成システム、施工計画管理システム、統合データ生成方法、施工計画管理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様に係る統合データ生成システムは、紐付け部と、記憶部と、を備える。前記紐付け部は、施工対象となる建築物の3次元形状を表す3次元モデルにおいて前記建築物の一部に対応する対象エリアに、前記建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクトを紐付ける。前記記憶部は、少なくとも前記作業オブジェクトが前記対象エリアに紐付けられている前記3次元モデルのデータを含む統合データを記憶する。前記作業オブジェクトの属性は、前記作業の種別を含む。前記3次元モデルは、前記建築物を構成する少なくとも1つの要素に対応する要素モデルを備える。前記要素モデルは、前記要素を対象とする前記作業の情報である要素別情報を予め設定されている要素オブジェクトを含む。前記紐付け部は、前記対象エリアが前記要素モデルに対応すれば、前記要素別情報を前記作業オブジェクトの前記属性に設定することで、前記対象エリアに前記作業オブジェクトを紐付ける。
【0014】
本開示の一態様に係る施工計画管理システムは、施工計画作成部と、データ出力部と、を備える。前記施工計画作成部は、前記統合データ生成システムの前記統合データに基づいて、前記建築物の施工計画を作成する。前記データ出力部は、前記施工計画のデータを出力する。
【0015】
本開示の一態様に係る統合データ生成方法は、紐付けステップと、記憶ステップと、を含む。前記紐付けステップは、施工対象となる建築物の3次元形状を表す3次元モデルにおいて前記建築物の一部に対応する対象エリアに、前記建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクトを紐付ける。前記記憶ステップは、少なくとも前記作業オブジェクトが前記対象エリアに紐付けられている前記3次元モデルのデータを含む統合データを記憶する。前記作業オブジェクトの属性は、前記作業の種別を含む、前記3次元モデルは、前記建築物を構成する少なくとも1つの要素に対応する要素モデルを備える。前記要素モデルは、前記要素を対象とする前記作業の情報である要素別情報を予め設定されている要素オブジェクトを含む。前記紐付けステップでは、前記対象エリアが前記要素モデルに対応すれば、前記要素別情報を前記作業オブジェクトの前記属性に設定することで、前記対象エリアに前記作業オブジェクトを紐付ける。
【0016】
本開示の一態様に係る施工計画管理方法は、施工計画作成ステップと、データ出力ステップと、を含む。前記施工計画作成ステップは、前記統合データ生成方法の前記統合データに基づいて、前記建築物の施工計画を作成する。前記データ出力ステップは、前記施工計画のデータを出力する。
【0017】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに上述の統合データ生成方法を実行させる。
【0018】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに上述の施工計画管理方法を実行させる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本開示は、建築物の3次元モデルを用いて施工工程を管理することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態の統合データ生成システムを備える施工計画管理システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、同上の施工計画管理システムの3次元モデルの一例を示す斜視図である。
図3図3は、同上の統合データ生成システムの動作を示すフローチャートである。
図4図4は、同上の統合データ生成システムにおける対象エリアの設定を説明するための図である。
図5図5は、同上の統合データ生成システムにおける作業オブジェクトを示す図である。
図6図6は、同上の統合データ生成システムにおける3次元モデルが有する要素モデルを示す図である。
図7図7は、同上の統合データ生成システムにおける要素オブジェクトを示す図である。
図8図8は、同上の統合データ生成システムにおける作業オブジェクトの紐付けを説明するための図である。
図9図9Aは、同上の統合データ生成システムにおける第1作業オブジェクトに要素別情報を設定する処理を説明するための図である。図9Bは、同上の要素別情報を設定された第1作業オブジェクトを示す図である。
図10図10は、同上の統合データ生成システムにおける第2作業オブジェクトを示す図である。
図11図11は、同上の施工計画管理システムの動作を示すフローチャートである。
図12図12は、同上の施工計画管理システムにおいて紐付けられた作業オブジェクトを示す図である。
図13図13Aは、同上の施工計画管理システムが作成した施工フローを示す図である。図13Bは、同上の作業フローを示す図である。
図14図14Aは、同上の施工計画管理システムが作成した最適作業フローを示す図である。図14Bは、同上の工程フローを示す図である。
図15図15Aは、同上の第1変形例における要素オブジェクトを示す図である。図15Bは、同上の変形例における作業オブジェクトを示す図である。
図16図16は、同上の第2変形例における外部情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施形態は、一般に統合データ生成システム、施工計画管理システム、統合データ生成方法、施工計画管理方法、及びプログラムに関する。より詳細に、以下の実施形態は、建築物の3次元モデルを用いる統合データ生成システム、施工計画管理システム、統合データ生成方法、施工計画管理方法、及びプログラムに関する。
【0022】
(1)概要
一般に、建造物の工事には、A工事、B工事、及びC工事という3つの形態がある。A工事は、建造物の所有者(貸主)が費用を負担し、所有者が指定した業者が施工する工事である。また、B工事は、建造物の借主が費用を負担し、所有者が指定した業者が施工する工事である。また、C工事は、借主が費用を負担し、借主が指定した業者が施工する工事である。
【0023】
近年、A工事となるスケルトン(建物の構造体)関連の施工を中心に、意匠・設計ステップから、建築物の3次元モデルを含むBIM(Building Information Modelling)の活用が進んでいる。一方、C工事の施工、及びA工事の中でも施工工程の下流にあるインフィル(内装、設備)関連の施工は、主に現場監督又は専門業者の経験でなされており、BIMなどのデジタル技術の活用が進んでいない。
【0024】
C工事、及びA工事のインフィル関連の施工では、工程の標準化が進んでいるA工事のスケルトン関連の施工と比較して、扱う設備の種類が多く、施工方法も作業者のノウハウに頼っている。また、施工現場毎、案件毎に様々な要素の組合せが存在している。また、施工現場での工事の進捗度合及び作業者に起因する変更等が日々発生し、工事の進捗状況などに合わせた細やかな変更が必要になる。また、高度なスキルが必要なBIM関連の技術を扱える現場関係者が少ない。このような要因によって、C工事、及びA工事のインフィル関連の施工では、工程の標準化が難しく、施工現場での作業にBIMなどのデジタル技術を活用し難かった。また、設備を開発するメーカでは、施工に関するデータを蓄積することが困難であり、省施工に繋がる新たな設備商材やソリューション開発が進みにくい要因の1つとなっている。
【0025】
そこで、本実施形態では、C工事、及びA工事のインフィル関連の施工であっても、建築物の3次元モデルを用いて施工工程を管理することができる統合データ生成システム、施工計画管理システム、統合データ生成方法、施工計画管理方法、及びプログラムについて説明する。
【0026】
本実施形態の施工計画管理システムは、建築物の施工に関する施工計画を管理する。建築物の施工は、建築物の改修(リフォーム、リノベーション、改築、及び増築など)、及び建築物の新築などで行われる各種工事を含む。なお、建築物は、戸建住宅、集合住宅、工場、店舗、事務所、オフィスビル、及び各種施設などのいずれであってもよく、建築物の用途、規模、及び形状などは特定の用途、規模、及び形状などに限定されない。また、施工内容は、建設工事、電気工事、給排水工事、及び土木工事などのように、建築物の施工に関する工事であればよい。建築物の施工例としては、オフィスの照明器具、空調設備、及び換気設備の工事、内装工事、電力線配線工事、情報配線工事、無線工事、ビル管理システムの設置工事などがある。
【0027】
図1に示す施工計画管理システムA1は、測定部1、統合データ生成システム2、データ処理部3、データ出力部4、及び出力装置5を備える。統合データ生成システム2は、紐付け部21、統合データ生成部22、通信部23、通信部24、統合データ取得部25、及び記憶部26を備える。
【0028】
上述の測定部1、紐付け部21、統合データ生成部22、及び通信部23の各機能は、例えばタブレット端末又はスマートフォンなどの携行型の情報端末B1によって実現されることが好ましい。情報端末B1は、建築物の施工業者又は設計業者などの業者が管理している情報端末であり、業者によって操作される。情報端末B1の操作(以降、端末操作と称す)は、情報端末B1のタッチパネルディスプレイ、キーボード、及び音声認識装置などの操作部に対して行われる。
【0029】
なお、情報端末B1は、コンピュータシステムを備えている。このコンピュータシステムがプログラムを実行することによって、測定部1、紐付け部21、統合データ生成部22、及び通信部23の一部又は全部の機能が実現される。コンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、若しくはULSI(ultra large scale integration) と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、非一時的記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して非一時的記録媒体に供給されてもよい。
【0030】
上述の通信部24、統合データ取得部25、記憶部26、データ処理部3、及びデータ出力部4の各機能は、例えばサーバ装置C1によって実現されることが好ましい。サーバ装置C1は、インターネットを含む通信ネットワークNT1を介して情報端末B1と通信可能に構成されている。また、サーバ装置C1は、建築物の施工業者又は設計業者などの業者、及び施工計画管理システムA1の管理会社のいずれかによって管理されている。
【0031】
なお、サーバ装置C1は、コンピュータシステムを備えている。このコンピュータシステムがプログラムを実行することによって、通信部24、統合データ取得部25、記憶部26、データ処理部3、及びデータ出力部4の一部又は全部の機能が実現される。
【0032】
測定部1は、情報端末B1が備えるカメラで撮像した建築物の内部及び外観の画像に基づいて、建築物の全体又は一部の3次元モデルを作成することが好ましい。3次元モデルには、建築物の間取りに加えて、各部屋における机及び本棚などの什器、照明器具、空調装置、換気扇、制気口、火災報知機、テレビ、及び配線器具などの設備、ドア、並びに窓、のそれぞれの形状及び位置などが反映される。また、測定部1は、情報端末B1が備えるカメラで建築物が建っている敷地も撮像することで、建築物だけでなく敷地も含む3次元モデルを作成することができる。撮像対象となる建築物は、改修前又は改修途中の建築物、及び新築工事中の建築物のいずれであってもよい。
【0033】
測定部1は、例えば情報端末B1が3次元モデル作成用のアプリケーションを実行することで実現される。施工現場ではBIMソフトなどを実行可能な高性能なパーソナルコンピュータを持ち歩くことは困難であり、携行が容易なタブレット端末又はスマートフォンなどの情報端末B1が用いられる。このため、測定部1が作成する建築物の3次元モデルは、データ容量が比較的小さいデータとなる。また、情報端末B1が備える加速度センサ又はジャイロセンサをカメラと併用して、3次元モデルを作成してもよい。
【0034】
また、測定部1は、情報端末B1とは別体のLiDAR(light detection and ranging)又は3次元レーザスキャナなどを用いて3次元モデルを作成してもよい。
【0035】
図2は、3次元モデルの一例として、3次元モデルM1を示す。3次元モデルM1は、部屋モデルM11、及び要素モデルM12などで構成される。部屋モデルM11は、建築物が有する部屋の3次元モデルである。要素モデルM12は、部屋を構成する部材、並びに部屋に設置されている設備等の要素の3次元モデルである。なお、部材は、建材、配管、及び配線などである。設備は、照明器具、空調装置、換気扇、制気口、火災報知機、テレビ及び配線器具などの機器、配線、机及び本棚などの什器、ドア、並びに窓などである。
【0036】
統合データ生成システム2は、紐付け部21と、記憶部26と、を主構成として備える。紐付け部21は、建築物の3次元形状を表す3次元モデルにおいて建築物の一部に対応する対象エリアに、建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクトを紐付ける。記憶部26は、少なくとも作業オブジェクトが対象エリアに紐付けられている3次元モデルのデータを含む統合データを記憶する。
【0037】
例えば、図2では、3次元モデルM1に2つの対象エリア9が設定されている。一方の対象エリア9は、要素モデルM12に対応している要素対象エリア91であり、設備及び部材などの要素に対応する。他方の対象エリア9は、建築物内の空間(部屋の隅、中央、上部、又は下部など)に対応している空間対象エリア92である。以降、要素に対応している対象エリア9を要素対象エリア91、建築物内の空間に対応している対象エリア9を空間対象エリア92と称すことがある。そして、対象エリア9のそれぞれには、要素の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクトが紐付けられる。
【0038】
施工計画管理システムA1は、施工計画作成部31と、データ出力部4と、を主構成として備える。施工計画作成部31は、統合データに基づいて、建築物の施工計画を作成する。データ出力部4は、施工計画のデータを出力装置5に出力する。
【0039】
出力装置5は、ディスプレイ装置を有するタブレット端末、スマートフォン、又はパーソナルコンピュータなどであり、データ出力部4から施工計画のデータを受け取り、施工計画のデータをディスプレイ装置に表示する。ディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ装置又は有機ELディスプレイ装置などである。なお、出力装置5には、基本的にはディスプレイ装置が用いられるが、プリンタが併用されてもよい。
【0040】
上述の統合データ生成システム2は、少なくとも作業オブジェクトが対象エリア9に紐付けられている3次元モデルのデータを含む統合データを生成し、統合データを記憶部26に記憶させている。統合データ生成システム2は、統合データを記憶しておくことによって、建築物の3次元モデルを用いて施工工程を管理することができる。
【0041】
また、施工計画管理システムA1は、統合データに基づく施工計画のデータを作成、出力することで、建築物の3次元モデルを用いて施工工程を管理することができる。
【0042】
(2)統合データ生成システム
統合データ生成システム2は、紐付け部21、統合データ生成部22、通信部23、通信部24、統合データ取得部25、及び記憶部26を備える。そして、統合データ生成システム2は、図3のフローチャートに示す3次元モデル取得ステップS1、紐付けステップS2、統合データ作成ステップS3、及び記憶ステップS4の各処理を行う。
【0043】
(2.1)3次元モデル取得ステップ
まず、3次元モデル取得ステップS1において、統合データ生成部22は、建築物の3次元形状を表す3次元モデルのデータを測定部1から取得する。
【0044】
なお、3次元モデル取得ステップS1では、統合データ生成部22は、建築物の2次元図面のデータから変換された3次元モデルのデータを取得してもよい。また、A工事であれば、統合データ生成部22は、総合建設業者などの元請業者で作成した建築物の3次元モデルを取得してもよい。
【0045】
(2.2)紐付けステップ
次に、紐付けステップS2において、紐付け部21は、3次元モデルの対象エリアに、作業オブジェクトを紐付ける。以下、紐付けステップS2で処理について詳述する。
【0046】
(2.2.1)対象エリア
紐付け部21は、統合データ生成部22が測定部1から取得した3次元モデルのデータを情報端末B1のディスプレイに表示する。情報端末B1のディスプレイにおける3次元モデルの表示形態は、斜視図及び間取り図(平面図)のいずれでもよく、端末操作によって表示形態を切り替え可能であることが好ましい。
【0047】
例えば、図4は、情報端末B1のディスプレイG1に表示された3次元モデルM2の間取図を示す。3次元モデルM2は、構造物モデルM20、部屋モデルM21-M24、要素モデルM26、及び敷地モデルM27を備える。敷地モデルM27は、建築物が建っている敷地の3次元モデルである。構造物モデルM20は、建築物の外観構造の3次元モデルである。部屋モデルM21-M24は、建築物が備える各部屋の3次元モデルである。要素モデルM26は、建築物が有する要素の3次元モデルである。
【0048】
紐付け部21は、端末操作によって、対象エリア9として要素モデルM26が選択されると、要素モデルM26に対応する要素対象エリア91を自動的に作成する。そして、紐付け部21は、要素対象エリア91に、建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクトを紐付ける。
【0049】
また、紐付け部21は、端末操作によって、対象エリア9として3次元モデルM2の空間に対応する空間対象エリア92を作成する。ディスプレイG1がタッチパネルディスプレイであれば、ディスプレイG1の表面に対して指などでタップ、ピンチ、ドラッグなどの操作が行われることで、空間対象エリア92が設定される。そして、紐付け部21は、空間対象エリア92に作業オブジェクトを紐付ける。
【0050】
(2.2.2)作業オブジェクト
紐付け部21は、対象エリア9に、図5に示す作業オブジェクトOAを紐付ける。作業オブジェクトOAは、属性として「作業種別」、「作業位置」、及び「作業時間」を有し、各属性に情報を設定できるデータ構造のオブジェクトである。図5の作業オブジェクトOAは、各属性に情報を設定していない未設定の状態である。
【0051】
作業オブジェクトOAには、上述の要素対象エリア91に紐付けられる第1作業オブジェクトOA1と、上述の空間対象エリア92に紐付けられる第2作業オブジェクトOA2と、がある。
【0052】
紐付け部21は、第1作業オブジェクトOA1の各属性に、後述の要素オブジェクトOBに含まれている要素別情報を設定する。
【0053】
紐付け部21は、第2作業オブジェクトOA2の各属性に、端末操作に応じた情報を設定する。第2作業オブジェクトOA2の各属性には、建築物の施工に伴う工事の内容、規模、及び範囲などに応じた情報が、端末操作によって設定される。例えば、作業時間は、作業者1名での標準作業時間であることが好ましい。具体的に、作業種別が運搬であれば、作業者1名による運搬距離1m当たりの標準作業時間とする。あるいは、作業時間は、作業者の個人差を考慮して、標準作業時間に付加時間を加算した時間であってもよい。
【0054】
また、作業オブジェクトOAの内容をわかりやすくするためには、作業オブジェクトOAに名称、アイコンなどを設定することが好ましい。
【0055】
(2.2.3)要素オブジェクト
図6は、3次元モデルが有する4つの要素モデルM26として、要素モデルM261-M264を例示する。要素モデルM261の上面に要素モデルM262、M263が配置され、要素モデルM262と要素モデルM263との間は要素モデルM264によって接続されている。この場合、要素モデルM261は、基材などの部材P1の3次元モデルである。要素モデルM262は、電気機器などの設備P2の3次元モデルである。要素モデルM263は、電気機器などの設備P3の3次元モデルである。要素モデルM264は、配線などの部材P4の3次元モデルである。
【0056】
要素モデルM26は、要素別情報を予め設定されている要素オブジェクトOBを含む。要素別情報は、要素を対象とする作業の情報である。
【0057】
要素オブジェクトOBは、属性として「要素オブジェクト名」、「作業位置」、「作業種別」及び「作業時間」を有し、各属性に設定されている情報が要素別情報に相当する。要素オブジェクトOBの属性「要素オブジェクト名」には、要素オブジェクトOBに対応する要素の名称が要素別名称情報として設定されている。要素オブジェクトOBの属性「作業位置」には、要素オブジェクトOBに対応する要素モデルM26の要素対象エリア91が要素別位置情報として設定されている。要素オブジェクトOBの属性「作業種別」には、建築物の施工時に要素モデルM26に対して行われる作業の種別(名称)が要素別種別情報として設定されている。作業の種別は、例えば「運搬」、「配線」、「配管」、「組立準備」、「組立」、「検査」などである。要素オブジェクトOBの属性「作業時間」には、「作業種別」に設定されている作業に要する時間が要素別時間情報として設定されている。なお、要素オブジェクトOBは、属性「作業種別」及び「作業時間」の組を1つ有していてもよいし、属性「作業種別」及び「作業時間」の組を複数有していてもよい。
【0058】
図7に、要素モデルM261-M264の各要素オブジェクトOBである要素オブジェクトOB1-OB4を示す。要素モデルM261の要素オブジェクトOB1は、「要素オブジェクト名」に部材P1が設定され、「作業位置」に対象エリア911が設定され、「作業種別」及び「作業時間」の組にもそれぞれの情報が設定されている。要素モデルM262の要素オブジェクトOB2は、「要素オブジェクト名」に設備P2が設定され、「作業位置」に対象エリア912が設定され、「作業種別」及び「作業時間」の組にもそれぞれの情報が設定されている。要素モデルM263の要素オブジェクトOB3は、「要素オブジェクト名」に設備P3が設定され、「作業位置」に対象エリア913が設定され、「作業種別」及び「作業時間」の組にもそれぞれの情報が設定されている。要素モデルM264の要素オブジェクトOB4は、「要素オブジェクト名」に部材P4が設定され、「作業位置」に対象エリア914が設定され、「作業種別」及び「作業時間」の組にもそれぞれの情報が設定されている。
【0059】
(2.2.4)紐付け
紐付け部21は、対象エリア9(要素対象エリア91、空間対象エリア92)のそれぞれに、作業オブジェクトOA(第1作業オブジェクトOA1、第2作業オブジェクトOA2)を紐付ける。
【0060】
(第1作業オブジェクト)
ユーザの端末操作によって、情報端末B1のディスプレイG1に表示された3次元モデルの要素モデルM26に、第1作業オブジェクトOA1のモデルである作業オブジェクトモデルOM(図8参照)が重なると、紐付け部21は、第1作業オブジェクトOA1に要素モデルM26の要素オブジェクトOB1を設定する。作業オブジェクトモデルOMはディスプレイG1に表示され、ディスプレイG1に対して指などでドラッグなどの操作が行われることで、ディスプレイG1内を移動する。図8では、ユーザが作業オブジェクトモデルOMを移動させて、作業オブジェクトモデルOMを要素モデルM261に重ねている。なお、要素モデルM26に作業オブジェクトモデルOMを重ねる処理は、要素モデルM26に第1作業オブジェクトOA1を貼り付ける処理に相当する。
【0061】
この場合、紐付け部21は、図9Aに示すように、要素モデルM261の要素オブジェクトOB1の要素別情報を、作業オブジェクトモデルOMの第1作業オブジェクトOA1に設定する(上書きする)。具体的に、紐付け部21は、要素オブジェクトOB1の作業位置、作業種別、作業時間の各要素別情報を、第1作業オブジェクトOA1の属性「作業位置」、「作業種別」、「作業時間」にそれぞれ設定する。図9Bは、要素オブジェクトOB1の要素別情報を設定された第1作業オブジェクトOA1を示す。第1作業オブジェクトOA1は、属性「作業位置」に設定された要素対象エリア91の情報によって、対象エリア9に紐付けられている。
【0062】
なお、紐付け部21は、要素オブジェクトOB1の各属性に設定されている要素別情報が第1作業オブジェクトOA1に適合するか否かを判定することが好ましい。紐付け部21は、要素別情報が第1作業オブジェクトOA1に適合すると判定すれば、要素オブジェクトOB1の要素別情報を第1作業オブジェクトOA1の各属性に設定する。具体的に、紐付け部21は、要素オブジェクトOB1の各属性と第1作業オブジェクトOA1の各属性とを比較し、第1作業オブジェクトOA1が有する属性に対応する要素別情報を、第1作業オブジェクトOA1に設定する。紐付け部21は、第1作業オブジェクトOA1が有する属性に対応しない要素別情報を、第1作業オブジェクトOA1に設定しない。
【0063】
(第2作業オブジェクト)
紐付け部21は、ユーザの端末操作によって、情報端末B1のディスプレイG1に表示された3次元モデルの空間対象エリア92(図4参照)に、第2作業オブジェクトOA2を紐付ける。図10は、各属性に情報を設定された第2作業オブジェクトOA2を示す。第2作業オブジェクトOA2の属性「作業位置」、「作業種別」、「作業時間」には、ユーザの端末操作によって情報が設定されている。第2作業オブジェクトOA2の属性「作業位置」には、空間対象エリア92が設定される。第2作業オブジェクトOA2の属性「作業種別」には、建築物の施工時に空間対象エリア92に対して行われる作業の種別(名称)が設定される。作業の種別は、例えば「解体」、「解体運搬」、「墨出し」、「清掃」などである。属性「作業時間」には、「作業種別」に設定されている作業に要する時間が設定される。
【0064】
(2.3)統合データ作成ステップ
統合データ作成ステップS3では、統合データ生成部22は、測定部1が作成した3次元モデル、及び紐付け部21が3次元モデルの対象エリア9に紐付けた作業オブジェクトOAに基づいて、統合データを生成する。
【0065】
本実施形態の統合データ生成部22は、作業オブジェクトOAを紐付けられた3次元モデルのデータの形式を、特定のデータ形式の3D(three dimensions)データ又はビルディングインフォメーションモデリング(Building Information Modelling)データ(BIMデータ)に変換し、変換後のデータを統合データとする。なお、BIMデータは、属性情報の設定の自由度及びリアルタイム性がより高くなるので、統合データをBIMデータとすることが好ましい。
【0066】
測定部1が作成する3次元モデルのデータ形式は、csv、json、xml、yaml、dxfなどを拡張子とする汎用のデータ形式である。このような汎用のデータ形式の3次元モデルのデータをBIMデータに変換するためには、例えばAPI(Application Programming Interface)を利用する。あるいは、サーバ上のWebアプリケーションを利用してBIMデータに変換することも可能である。
【0067】
なお、統合データ生成部22は、測定部1が作成した3次元モデルを作業オブジェクトOAと紐付けたデータを、データ形式の変換を行うことなく、統合データとしてもよい。すなわち、統合データは、測定部1が作成した3次元モデル、及び紐付け部21が3次元モデルの対象エリア9に紐付けた作業オブジェクトOAを含むデータであればよい。
【0068】
(2.4)通信部、統合データ取得部、及び記憶部
情報端末B1の通信部23とサーバ装置C1の通信部24とは、インターネットを含む通信ネットワークNT1を介して互いに通信可能に構成されている。
【0069】
情報端末B1の通信部23は、統合データ生成部22が生成した統合データを、通信ネットワークNT1を介してサーバ装置C1へ送信する。
【0070】
サーバ装置C1では、通信部24が通信ネットワークNT1経由で送信されてきた各種データを受け取る。サーバ装置C1の統合データ取得部25は、通信部24が受け取った各種データから統合データを抽出し、抽出した統合データを記憶部26に格納する。すなわち、記憶部26は統合データを記憶するデータベースとして機能する。
【0071】
統合データ生成システム2は、統合データを記憶しておくことによって、施工現場での具体的な作業、及びスケジュールなどの施工工程を管理することができる。言い換えると、統合データ生成システム2は、建築物の3次元モデルを用いて施工工程を管理することができる。すなわち、統合データ生成システム2は、建築物の施工前及び施工中の各時点で、施工対象の建築物の3次元モデルの対象エリア9に作業オブジェクトOAを紐付けることで、建築物のエリア毎に作業に関する情報をデジタル化して一元管理できる。この結果、統合データ生成システム2は、データ管理の簡便化を実現でき、さらには複数の部門でデータ管理の共通化を図ることもできる。
【0072】
また、統合データがBIMデータであれば、建築物の3次元モデル、作業オブジェクトOA、及び要素オブジェクトOB以外に、施工のスケジュール、施工の労働資源、施工費、施工前の企画、及び施工に携わる業者などに関する他の情報も統合データに含むことが容易になる。
【0073】
(3)施工計画管理システム
施工計画管理システムA1は、測定部1、統合データ生成システム2、データ処理部3、データ出力部4、及び出力装置5を備える。データ処理部3は、施工計画作成部31,及びフィードバック部32を備える。そして、施工計画管理システムA1は、図11のフローチャートに示すS11-S22の各ステップの処理を行う。例えば、C工事の建築業務では、現場代理人が現場調査を行って、概略施工図及び施工計画を作成し、事務所のCADオペレータが製図を担当することが多い。C工事の例としては、例えばオフィスの照明器具、空調設備、及び換気設備などの設置工事、内装工事、電力線配線工事、ビル内の情報配線工事、無線設備工事、及びビル管理システムの据え付け工事などがある。
【0074】
(3.1)3次元モデル取得ステップ
3次元モデル取得ステップS11では、図3に示す統合データ生成方法の3次元モデル取得ステップS1と同様に、統合データ生成部22は、建築物の3次元形状を表す3次元モデルのデータを測定部1から取得する。
【0075】
なお、3次元モデル取得ステップS11では、統合データ生成部22は、建築物の2次元図面のデータから変換された3次元モデルのデータを取得してもよい。また、A工事であれば、統合データ生成部22は、元請業者で作成した建築物の3次元モデルを取得してもよい。
【0076】
(3.2)統合データステップ
次に、統合データステップS12は、図3に示す統合データ生成方法の紐付けステップS2、統合データ作成ステップS3、及び記憶ステップS4と同様の処理を行う。すなわち、3次元モデル取得ステップS11及び統合データステップS12での各処理によって、3次元モデル、及び3次元モデルの対象エリア9に紐付けた作業オブジェクトOAを含む統合データが、記憶部26に記憶される。
【0077】
この時点で、現場代理人は、施工現場の状況や施主、元請業者などの現場監督からの要望を確認しながら、概略工程設計を行うことができる。現場代理人は、概略工程設計として、各日の作業対象を3次元モデルで特定する。作業対象は、3次元モデルの対象エリア9に作業オブジェクトOAを紐付けることで特定される。例えば、紐付け部21は、現場代理人の端末操作に応じて、3次元モデルの要素モデルM26に第1作業オブジェクトOA1を貼り付けることで、要素モデルM26の要素対象エリア91に第1作業オブジェクトOA1を紐付ける。また、紐付け部21は、現場代理人の端末操作に応じて、3次元モデルに空間対象エリア92を設定し、空間対象エリア92に第2作業オブジェクトOA2を紐付ける。
【0078】
そして、現場代理人は、3次元モデルの対象エリア9(要素対象エリア91、空間対象エリア92)に貼り付けた作業オブジェクトOA(第1作業オブジェクトOA1、第2作業オブジェクトOA2)を、情報端末B1のディスプレイG1に表示したガントチャート(Gantt chart)に配置することで、日毎の概略工程フローを簡便に作成できる。また、施主、他の施工業者、又は物流業者との取り決めで、建築物に用いる設備又は部材が変更されたり、設備の配置位置が変更されたりしたときも、変更点のみを統合データから抽出することで、概略工程フローを自動的に修正することができる。また、作業オブジェクトOAを入れ替えることで、概略工程フローを変更することもできる。また、過去の施工の概略工程フローにおいてガントチャートを作成、変更した手順を教師データとして、機械学習によって構築した学習モデルを用いれば、概略工程設計を自動的に作成でき、現場代理人の作業負担を軽減できる。
【0079】
(3.3)作業オブジェクト確認ステップ、及び通知ステップ
次に、作業オブジェクト確認ステップS13では、施工計画作成部31は、記憶部26の統合データにおける作業オブジェクトOAの設定漏れの有無を判定する。
【0080】
具体的に、現場代理人は、概略工程フローを作成すると、情報端末B1のディスプレイG1に表示させた統合データの3次元モデルに対して、対象となる範囲を指定する。施工計画作成部31は、指定された範囲に含まれる全ての作業オブジェクトOAを抽出し、抽出した作業オブジェクトOAの各属性に情報が設定されているか否かを判定する。作業オブジェクト確認ステップS13では、施工計画作成部31は、少なくとも1つの属性に情報が設定されていない作業オブジェクトOAを未設定作業オブジェクトとする。
【0081】
施工計画作成部31は、未設定作業オブジェクトがあれば、未設定作業オブジェクトの情報を情報端末B1に送信する。情報端末B1は、未設定作業オブジェクトの情報をディスプレイG1に表示することで、作業オブジェクトOAの設定漏れがあることを現場代理人に通知する(通知ステップS20)。すなわち、施工計画管理システムA1は、作業オブジェクトOAの設定漏れがあれば、情報端末B1が設定漏れの箇所を表示し、現場代理人に作業オブジェクトOAの設定(例えば手動設定)を促す。
【0082】
施工計画作成部31は、作業オブジェクトOAの設定漏れがなくなるまで、統合データステップS12、作業オブジェクト確認ステップS13、及び通知ステップS20を繰り返す。
【0083】
図12は、設定漏れがない3つの第1作業オブジェクトOA1の例として、第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13を示す。第1作業オブジェクトOA11は、対象エリア911(図6参照)に紐付けられた(要素モデルM261に貼り付けられた)第1作業オブジェクトOA1である。第1作業オブジェクトOA12は、対象エリア912(図6参照)に紐付けられた(要素モデルM262に貼り付けられた)第1作業オブジェクトOA1である。第1作業オブジェクトOA13は、対象エリア913(図6参照)に紐付けられた(要素モデルM263に貼り付けられた)第1作業オブジェクトOA1である。
【0084】
(3.4)フロー作成ステップ
次に、フロー作成ステップS14では、施工計画作成部31は、複数の作業オブジェクトOAのそれぞれに含まれている作業位置の情報に基づいて、作業オブジェクトOAのそれぞれに対応する作業を行う順番を決定する。そして、施工計画作成部31は、作業オブジェクトOAのそれぞれの作業種別毎の作業を並列的に展開する。そして、施工計画作成部31は、複数の作業オブジェクトOAのそれぞれに含まれている作業の流れを示す最適作業フローを作成する。さらに、施工計画作成部31は、最適作業フローに基づいて工程フローを作成することが好ましい。なお、このフロー作成処理は、ガントチャート上で行われてもよい。
【0085】
以下、図12の第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13を用いて、フロー作成処理について説明する。
【0086】
施工計画作成部31は、第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13のそれぞれの属性「作業位置」に設定されている位置情報(対象エリア91の位置)に基づいて、第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13の作業順番を決定する。例えば、施工計画作成部31は、第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13のそれぞれの属性「作業位置」に基づいて、作業員の動線、要素の入荷状況、作業員の状況などに基づいて、効率よく作業を進めることができる作業順番を決定する。ここでは、図13Aに示すように、施工計画作成部31は、第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13の順に進む施工フローF1を作成している。
【0087】
次に、施工計画作成部31は、図13Bに示すように、第1作業オブジェクトOA1を、第1作業オブジェクトOA1に含まれている各作業種別に展開して、作業フローF2を作成する。第1作業オブジェクトOA11は、第1作業オブジェクトOA11に含まれている4つの作業種別に対応する作業種別W11-W14に展開される。第1作業オブジェクトOA12は、第1作業オブジェクトOA12に含まれている4つの作業種別に対応する作業種別W21-W24に展開される。第1作業オブジェクトOA13は、第1作業オブジェクトOA13に含まれている4つの作業種別に対応する作業種別W31-W34に展開される。作業種別W11、W21、W31は「運搬」である。作業種別W12、W22、W32は「配線」である。作業種別W13、W23、W33は「組立」である。作業種別W14、W24、W34は「検査」である。
【0088】
次に、施工計画作成部31は、図14Aに示すように、作業フローF2の作業種別W11-W14、作業種別W21-W24、及び作業種別W31-W34を並列的に展開することで、最適作業フローF3を作成する。図14Aでは、施工計画作成部31は、最大3人の作業者による分業を想定して、最大3つの作業種別が同時に進行する最適作業フローF3を作成している。すなわち、最適作業フローF3は、分業可能な作業者の人数で、第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13の各作業を最短で完了できるように、作業フローF2の各作業種別の流れを最適化したフローである。
【0089】
次に、施工計画作成部31は、図14Bに示すように、最適作業フローF3に基づいて、第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13の作業スケジュールを最適化した工程フローF4を作成する。ここで、「作業スケジュールの最適化」とは、分業可能な作業者の人数で、第1作業オブジェクトOA11、OA12、OA13の各作業を最短で完了できる工程フローF4を作成することを意味する。
【0090】
例えば、施工計画作成部31は、作業種別毎の作業時間を用いて、最適作業フローF3を自動的に作成できる。また、施工計画作成部31は、施主、物流業者、又は他業種の業者との取り決めで、最適作業フローF3が変更になった場合、変更点のみを読み取って、工程フローF4を変更できる。また、施工計画作成部31は、工程フローF4の総作業時間が1日当たりの規定作業時間を超えると判断したときは、作業者の勤務時間を延長する、又は翌日の施工フロー(又はガントチャート)へ一部の作業オブジェクトOAを移動させて、当日の施工フローF1、作業フローF2、最適作業フローF3、及び工程フローF4を修正できる。
【0091】
さらに、現場代理人は、施工現場の状況や計画された施工費用から活用可能な作業者を想定しながら作業種別を移動させることで、最適作業フローF3を修正できる。
【0092】
(3.5)フロー確認ステップ、及び通知ステップ
次に、フロー確認ステップS15では、現場代理人は、情報端末B1のディスプレイG1に表示させた最適作業フローF3又は工程フローF4に対して、対象となるフロー範囲を指定する。施工計画作成部31は、指定されたフロー範囲に含まれる全ての作業種別を抽出し、フローにおける作業種別の設定漏れの有無を判定する。
【0093】
施工計画作成部31は、作業種別の設定漏れがあれば、作業種別の設定漏れの情報を情報端末B1に送信する。情報端末B1は、作業種別の設定漏れの情報をディスプレイG1に表示することで、作業種別の設定漏れがあることを現場代理人に通知する(通知ステップS21)。すなわち、施工計画管理システムA1は、作業種別の設定漏れがあれば、情報端末B1が設定漏れの箇所を表示し、現場代理人へ作業種別の設定(例えば手動設定)を促す。
【0094】
施工計画作成部31は、フローにおける作業種別の設定漏れがなくなるまで、フロー確認ステップS15、及び通知ステップS21を繰り返す。
【0095】
施工計画作成部31は、フローにおける作業種別の設定漏れがなくなれば、作成した最適作業フローF3及び工程フローF4の各データを統合データに含めて、記憶部26に記憶させる。すなわち、統合データは、建築物の3次元モデル、作業オブジェクトOA、要素オブジェクトOB、最適作業フローF3、及び工程フローF4の各データを含む。したがって、施工計画管理システムA1は、統合データによって、施工現場の各情報を一元管理できる。
【0096】
データ出力部4は、最適作業フローF3及び工程フローF4の各データを出力装置5に出力する。出力装置5は、最適作業フローF3及び工程フローF4の各データを受け取り、最適作業フローF3及び工程フローF4の各データをディスプレイ装置に表示する。
【0097】
(3.6)施工計画作成ステップ
次に、施工計画作成ステップS16では、施工計画作成部31は、最適作業フローF3及び工程フローF4に基づいて、作業種別と作業時間とを用いた日毎の施工計画を作成する。施工計画作成部31は、最適作業フローF3及び工程フローF4の少なくとも一方を施工計画として用いてもよい。
【0098】
現場代理人は、作業者の確保状況、施工現場の状況、及び計画された施工費用などに基づいて、活用可能な作業者の数などを想定し、施工計画を修正できる。
【0099】
施工計画作成部31は、現場代理人による施工計画の修正に連動して、最適作業フローF3及び工程フローF4に対する変更の必要性が生じれば、最適作業フローF3及び工程フローF4を変更する。
【0100】
(3.7)計画確認ステップ、及び通知ステップ
次に、計画確認ステップS17では、施工計画作成部31は、施工計画作成ステップS16で作成された施工計画の妥当性を判断する。
【0101】
例えば、施工計画作成部31は、施工計画作成ステップS16で作成された施工計画の誤りの有無を判定する。施工計画作成部31は、施工計画に誤りがあれば、誤りの情報を情報端末B1に送信する。情報端末B1は、誤りの情報をディスプレイG1に表示することで、施工計画に誤りがあることを現場代理人に通知する(通知ステップS22)。すなわち、施工計画管理システムA1は、施工計画に誤りがあれば、情報端末B1が誤りの箇所を表示し、現場代理人に誤りの修正(例えば手動修正)を促す。
【0102】
また、施工計画作成部31は、作業計画の中で作業効率が低いボトルネック作業があれば、ボトルネック作業の情報を付加して、ボトルネック作業の情報を情報端末B1に送信する。情報端末B1は、ボトルネック作業の情報をディスプレイG1に表示することで、ボトルネック作業があることを現場代理人に通知する(通知ステップS22)。すなわち、施工計画管理システムA1は、ボトルネック作業に応じた施工計画の修正を現場代理人に促す。
【0103】
施工計画作成部31は、施工計画の誤り、及びボトルネック作業がなくなるまで、計画確認ステップS17、及び通知ステップS22を繰り返す。
【0104】
施工計画作成部31は、施工計画の誤り、及びボトルネック作業がなくなれば、作成した施工計画のデータを統合データに含めて、記憶部26に記憶させる。すなわち、統合データは、建築物の3次元モデル、作業オブジェクトOA、要素オブジェクトOB、最適作業フローF3、工程フローF4、及び施工計画の各データを含む。したがって、施工計画管理システムA1は、統合データによって、施工現場の各情報を一元管理できる。
【0105】
データ出力部4は、施工計画のデータを出力装置5に出力する。出力装置5は、施工計画のデータを受け取り、施工計画のデータをディスプレイ装置に表示する(データ出力ステップ)。
【0106】
(3.8)見積書作成ステップ
次に、見積書作成ステップS18では、施工計画作成部31は、計画確認ステップS17で作成された施工計画に基づいて、施工の見積り書を作成する。
【0107】
具体的に、施工計画作成部31は、各作業の作業時間及び作業者単価を積算することで、作業人件費を求める。
【0108】
また、施工計画作成部31は、3次元モデル内の要素オブジェクトOBに対応する要素の価格を積算することで、材料費を求める。
【0109】
また、施工計画作成部31は、作業に使用する重機及び工具などのツールに要する費用、及びその他の必要経費などを求める。
【0110】
そして、施工計画作成部31は、作業人件費、材料費、ツールに要する費用、及びその他の必要経費などの各情報を用いて、施工の見積り書を作成する。
【0111】
施工計画作成部31は、作成した見積り書のデータを統合データに含めて、記憶部26に記憶させる。すなわち、統合データは、建築物の3次元モデル、作業オブジェクトOA、要素オブジェクトOB、最適作業フローF3、工程フローF4、施工計画、及び見積り書の各データを含む。したがって、施工計画管理システムA1は、統合データによって、施工現場の各情報を一元管理できる。
【0112】
データ出力部4は、見積り書のデータを出力装置5に出力する。出力装置5は、見積り書のデータを受け取り、見積り書のデータをディスプレイ装置に表示する。
【0113】
(3.9)実作業フィードバックステップ
施工現場では、上述のS1-S18、S20-S22の各処理によって作成された施工計画に沿って、各作業が行われる。
【0114】
現場代理人は、各業者との取り決め、物流トラブルによる部材、設備の延着、及び作業者関連のトラブルなどによって施工計画が変更になると、現状の作業計画に関わらず、作業開始時刻、及び作業者の勤務時間など変更できる。
【0115】
例えば、現場代理人は、ある作業に要する時間が1日当たりの規定作業時間を大幅に超えると判断すると、作業員の勤務時間を延長する、又は翌日の施工フロー(又はガントチャート)へ一部の作業オブジェクトOAを移動させる。
【0116】
また、作業計画のデータには、現場代理人以外の作業管理者及び作業者もアクセス可能であり、作業管理者及び作業者は、作業の進捗状況を作業計画に容易に反映させることができる。あるいは、施工計画管理システムA1は、施工現場に設置されたカメラなどのIoT機器によって、作業の進捗状況を自動的に収集することもできる。
【0117】
上述の現場代理人による施工計画の変更、作業管理者及び作業者による作業の進捗状況の入力、及びIoT機器が収集した作業の進捗状況は、建築物における作業の実績を反映しており、作業の実績に応じた実績データに相当する。
【0118】
そこで、実作業フィードバックステップS19において、フィードバック部32は、実績データを取得し、実績データに基づいて統合データ内の要素オブジェクトOBの要素別情報を更新する。更新される要素別情報は、例えば属性「作業時間」の情報であるが、後述の属性「作業レベル」の情報であってもよい。
【0119】
例えば、フィードバック部32は、実績データを基に、作業種別毎に、作業人員、作業時間、作業者のレベルを測定又は検出して記憶部26に蓄積する。そして、フィードバック部32は、設計情報(取付位置、周囲状況など)、施工環境情報(天候、前工程の遅れ、スケジュールの見直しなど)、作業の学習効果(建築物の上層へ進むほど、実際の作業時間が短くなるなど)、及び作業者の特性(週末は作業効率が低下するなど)などの影響因子情報を、機械学習で構築した学習モデルを活用して分析し、作業時間のばらつきなどを予測する。
【0120】
このように、フィードバック部32は、実績データをフィードバックすることで、施工現場での課題を把握し、統合データ、特に要素オブジェクトの要素別情報、を実際の作業に合った情報に更新することができる。
【0121】
(4)第1変形例
図15Aは、要素オブジェクトOBの変形例を示す。要素オブジェクトOBは、属性として、「要素オブジェクト名」、「作業位置」、「作業種別」及び「作業時間」に加えて、「作業レベル」を更に有していてもよい。要素オブジェクトOBの属性「作業レベル」には、「作業種別」に設定されている作業の難易度を示す要素別レベル情報が設定されている。図15Aでは、難易度を1、2、3のいずれかの数字で表しており、難易度は、数字が大きい程高くなる。
【0122】
図15Bは、作業オブジェクトOAの変形例を示す。作業オブジェクトOAは、属性として「作業種別」、「作業位置」、及び「作業時間」に加えて、「作業レベル」を更に有する。紐付け部21は、作業オブジェクトOAが第1作業オブジェクトOA1であれば、要素オブジェクトOBに含まれている要素別レベル情報を、第1作業オブジェクトOA1の属性「作業レベル」に設定する。
【0123】
紐付け部21は、作業オブジェクトOAが第2作業オブジェクトOA2であれば、端末操作に応じた要素別レベル情報を、第1作業オブジェクトOA1の属性「作業レベル」に設定する。
【0124】
本変形例では、要素オブジェクトOB及び作業オブジェクトOAの各属性に「作業レベル」を加えることで、作業の難易度を考慮した施工計画を作成できる。
【0125】
(5)第2変形例
紐付け部21は、建築物の外部の情報である外部情報を3次元モデルに紐付けることが好ましい。
【0126】
外部情報は、建築物の外部の情報である。建築物の外部とは、建築物の周囲の敷地、建築物の近隣の住宅、店舗、学校、及び道路などである。
【0127】
建築物の周囲の敷地に関する外部情報は、建築物の外壁と敷地の外縁との間の寸法などの工事通路情報、工事に関する隣家との取り決めなどの隣家情報、及び近隣にある店舗などの店舗情報などを含む。なお、外部情報の具体的な内容は上記内容に限定されず、建築物の外部の情報であればよい。
【0128】
例えば、図16は、情報端末B1のディスプレイG1に表示された3次元モデルM2の間取図を示す。そして、紐付け部21は、端末操作によって指定された外部情報エリア8に、端末操作によって入力された外部情報を紐付ける。1つの外部情報エリア8には少なくとも1つの外部情報が紐付けられ、1つの外部情報エリア8に複数の外部情報が紐付けられてもよい。
【0129】
図16では、外部情報エリア8として、外部情報エリア81、82が設定されている。外部情報エリア81は、敷地モデルM27の外側に形成されており、外部情報エリア81には「○○さん宅との取り決め:工事時間は午前9時~午後5時まで可能」という隣家との取り決めに関する外部情報(隣家情報)が紐付けられている。外部情報エリア82は構造物モデルM20と敷地モデルM27の外縁との間のスペースに形成されており、外部情報エリア82には「通路幅:3m、道路の状態:水はけ注意」という外部情報(工事通路情報)が紐付けられている。
【0130】
なお、外部情報エリア8が近隣の店舗のモデルに設定されれば、外部情報は、店舗の種類及び営業時間、並びに店舗までの所要時間などの店舗情報を含む。
【0131】
上述のように、統合データ生成システム2は、外部情報を外部情報エリア8に紐付けることで、建築物の周辺の情報を3次元モデルM2に反映させることができる。この結果、外部情報は統合データに含まれる。
【0132】
(6)第3変形例
施工計画管理システムA1の各機能を複数の装置に分散して、複数の装置が施工計画管理システムA1を構成してもよい。例えば、施工計画管理システムA1は、クラウドコンピューティング技術によって実現されてもよい。
【0133】
また、施工計画管理システムA1は、パーソナルコンピュータなどの1つの装置で構成されてもよい。
【0134】
また、施工計画管理システムA1は、少なくとも施工計画作成部31と、データ出力部4と、を備えていればよい。
【0135】
また、データ出力部4は、データ出力ステップにおいて施工計画のデータを出力装置5に出力する。データ出力部4は、記憶部26の統合データに施工計画が含まれていれば、任意のタイミングで施工計画のデータを出力することができる。
【0136】
(まとめ)
上述の実施形態に係る第1の態様の統合データ生成システム(2)は、紐付け部(21)と、記憶部(26)と、を備える。紐付け部(21)は、施工対象となる建築物の3次元形状を表す3次元モデル(M1-M2)において建築物の一部に対応する対象エリア(9)に、建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクト(OA)を紐付ける。記憶部(26)は、少なくとも作業オブジェクト(OA)が対象エリア(9)に紐付けられている3次元モデル(M1-M2)のデータを含む統合データを記憶する。
【0137】
上述の統合データ生成システム(2)は、建築物の3次元モデル(M1-M2)を用いて施工工程を管理することができる。
【0138】
上述の実施形態に係る第2の態様の統合データ生成システム(2)は、第1の態様において、3次元モデル(M1-M2)、及び紐付け部(21)が対象エリア(9)に紐付けた作業オブジェクト(OA)に基づいて、統合データを生成する統合データ生成部(22)を更に備えることが好ましい。
【0139】
上述の統合データ生成システム(2)は、建築物の3次元モデル(M1-M2)を用いて施工工程を管理することができる。
【0140】
上述の実施形態に係る第3の態様の統合データ生成システム(2)では、第1又は第2の態様において、紐付け部(21)は、建築物の空間に対応する対象エリア(92)を設定できることが好ましい。
【0141】
上述の統合データ生成システム(2)は、空間に対する作業オブジェクト(OA)を3次元モデル(M1-M2)に反映させることができる。
【0142】
上述の実施形態に係る第4の態様の統合データ生成システム(2)では、第1乃至第3の態様のいずれか1つにおいて、紐付け部(21)は、建築物の外部の情報である外部情報を3次元モデル(M1-M2)に紐付けることが好ましい。
【0143】
上述の統合データ生成システム(2)は、建築物の周辺の情報を3次元モデル(M1-M2)に反映させることができる。
【0144】
上述の実施形態に係る第5の態様の統合データ生成システム(2)では、第1乃至第4の態様のいずれか1つにおいて、作業オブジェクト(OA)の属性は、作業の種別を含むことが好ましい。
【0145】
上述の統合データ生成システム(2)は、作業種別に応じた作業オブジェクト(OA)を対象エリア(9)に紐付けることができる。
【0146】
上述の実施形態に係る第6の態様の統合データ生成システム(2)では、第5の態様において、作業オブジェクト(OA)の属性は、作業が行われる位置及び作業に要する時間を更に含むことが好ましい。
【0147】
上述の統合データ生成システム(2)は、作業種別に作業位置及び作業時間を対応付けた作業オブジェクト(OA)を対象エリア(9)に紐付けることができる。
【0148】
上述の実施形態に係る第7の態様の統合データ生成システム(2)では、第5又は第6の態様において、3次元モデル(M1-M2)は、建築物を構成する少なくとも1つの要素に対応する要素モデル(M12、M26)を備えることが好ましい。要素モデル(M12、M26)は、要素を対象とする作業の情報である要素別情報を予め設定されている要素オブジェクト(OB)を含む。紐付け部(21)は、対象エリア(9)が要素モデル(M12、M26)に対応すれば、要素別情報を作業オブジェクト(OA1)の属性に設定することで、対象エリア(9、91)に作業オブジェクト(OA1)を紐付ける。
【0149】
上述の統合データ生成システム(2)は、3次元モデル(M1-M2)の要素モデル(M12、M26)に作業オブジェクト(OA1)を対応付けることで、作業オブジェクト(OA)を対象エリア(9、91)に紐付けることができる。
【0150】
上述の実施形態に係る第8の態様の統合データ生成システム(2)では、第7の態様において、要素別情報は、要素を対象とする作業の種別を示す要素別種別情報、及び要素を対象とする作業に要する時間を示す要素別時間情報を含むことが好ましい。
【0151】
上述の統合データ生成システム(2)は、作業オブジェクト(OA1)に要素別時間情報を反映させることができる。
【0152】
上述の実施形態に係る第9の態様の統合データ生成システム(2)では、第8の態様において、要素別情報は、要素を対象とする作業の難易度を示す要素別レベル情報を更に含むことが好ましい。
【0153】
上述の統合データ生成システム(2)は、作業オブジェクト(OA1)に要素別レベル情報を反映させることができる。
【0154】
上述の実施形態に係る第10の態様の統合データ生成システム(2)では、第7乃至第9の態様のいずれか1つにおいて、紐付け部(21)は、要素別情報が作業オブジェクト(OA1)に適合するか否かを判定することが好ましい。紐付け部(21)は、要素別情報が作業オブジェクト(OA1)に適合すると判定すれば、要素別情報を作業オブジェクト(OA1)の属性に設定する。
【0155】
上述の統合データ生成システム(2)は、作業オブジェクト(OA1)に要素別情報を自動的に反映させることができる。
【0156】
上述の実施形態に係る第11の態様の施工計画管理システム(A1)は、施工計画作成部(31)と、データ出力部(4)と、を備える。施工計画作成部(31)は、施工対象となる建築物の3次元形状を表す3次元モデル(M1-M2)において建築物の一部に対応する対象エリア(9)に、建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクト(OA)が紐付けられている、3次元モデル(M1-M2)のデータを含む統合データに基づいて、建築物の施工計画を作成する。データ出力部(4)は、施工計画のデータを出力する。
【0157】
上述の施工計画管理システム(A1)は、建築物の3次元モデル(M1-M2)を用いて施工工程を管理することができる。
【0158】
上述の実施形態に係る第12の態様の施工計画管理システム(A1)では、第11の態様において、作業オブジェクト(OA)は、作業の種別である作業種別、作業が行われる位置である作業位置、及び作業に要する時間である作業時間の各情報を含む。統合データは、作業オブジェクト(OA)を複数含む。施工計画作成部(31)は、複数の作業オブジェクト(OA)のそれぞれに含まれている作業位置の情報に基づいて、作業オブジェクト(OA)のそれぞれに対応する作業を行う順番を決定する。施工計画作成部(31)は、作業オブジェクト(OA)のそれぞれの作業種別毎の作業を並列的に展開する。そして、施工計画作成部(31)は、複数の作業オブジェクト(OA)のそれぞれに含まれている作業の流れを示す最適作業フロー(F3)を作成することが好ましい。
【0159】
上述の施工計画管理システム(A1)は、作業を並列的に進める最適作業フロー(F3)を作成するので、効率のよい作業フローを提案できる。
【0160】
上述の実施形態に係る第13の態様の施工計画管理システム(A1)は、第11又は第12の態様において、フィードバック部(32)を更に備えることが好ましい。3次元モデル(M1、M2)は、建築物を構成する少なくとも1つの要素に対応する要素モデル(M12、M26)を備える。要素モデル(M12、M26)は、要素を対象とする作業の情報である要素別情報を予め設定されている要素オブジェクト(OB)を含む。作業オブジェクト(OA1)は、対象エリア(9)が要素モデルに対応すれば、作業の情報として要素別情報を含む。フィードバック部(32)は、建築物における作業の実績に応じた実績データを取得し、実績データに基づいて要素別情報を更新する。
【0161】
上述の施工計画管理システム(A1)は、実績データをフィードバックすることで、要素オブジェクトの要素別情報を実際の作業に合った情報に更新することができる。
【0162】
上述の実施形態に係る第14の態様の統合データ生成方法は、紐付けステップ(S2)と、記憶ステップ(S4)と、を備える。紐付けステップ(S2)は、施工対象となる建築物の3次元形状を表す3次元モデル(M1-M2)において建築物の一部に対応する対象エリア(9)に、建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクト(OA)を紐付ける。記憶ステップ(S4)は、少なくとも作業オブジェクト(OA)が対象エリア(9)に紐付けられている3次元モデル(M1-M2)のデータを含む統合データを記憶する。
【0163】
上述の統合データ生成方法は、建築物の3次元モデル(M1-M2)を用いて施工工程を管理することができる。
【0164】
上述の実施形態に係る第15の態様の施工計画管理方法は、施工計画作成ステップ(S16)と、データ出力ステップと、を備える。施工計画作成ステップ(S16)は、施工対象となる建築物の3次元形状を表す3次元モデル(M1-M2)において建築物の一部に対応する対象エリア(9)に、建築物の施工時に行われる作業の情報を含む作業オブジェクト(OA)が紐付けられている、3次元モデル(M1-M2)のデータを含む統合データに基づいて、建築物の施工計画を作成する。データ出力ステップは、施工計画のデータを出力する。
【0165】
上述の施工計画作成方法は、建築物の3次元モデル(M1-M2)を用いて施工工程を管理することができる。
【0166】
上述の実施形態に係る第16の態様のプログラムは、コンピュータシステムに第14の態様の統合データ生成方法を実行させる。
【0167】
上述のプログラムは、建築物の3次元モデル(M1-M2)を用いて施工工程を管理することができる。
【0168】
上述の実施形態に係る第17の態様のプログラムは、コンピュータシステムに第15の態様の施工計画管理方法を実行させる。
【0169】
上述のプログラムは、建築物の3次元モデル(M1-M2)を用いて施工工程を管理することができる。
【0170】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0171】
2 統合データ生成システム
21 紐付け部
22 統合データ生成部
26 記憶部
31 施工計画作成部
32 フィードバック部
4 データ出力部
9 対象エリア
91 要素対象エリア(対象エリア)
92 空間対象エリア(対象エリア)
A1 施工計画管理システム
F3 最適作業フロー
M1-M2 3次元モデル
M12、M26 要素モデル
OA 作業オブジェクト
OA1 第1作業オブジェクト(作業オブジェクト)
OA2 第2作業オブジェクト(作業オブジェクト)
OB 要素オブジェクト
S2 紐付けステップ
S4 記憶ステップ
S16 施工計画作成ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16