特許 7595301 玉縁及びその製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-11-28

(45)【発行日】2024-12-06

(54)【発明の名称】玉縁及びその製造方法

(51)【国際特許分類】

   A47C 31/02 20060101AFI20241129BHJP

   D03D 1/00 20060101ALI20241129BHJP

   D03D 15/587 20210101ALI20241129BHJP

   D06C 7/00 20060101ALI20241129BHJP

   D06H 7/04 20060101ALI20241129BHJP

【ＦＩ】

A47C31/02 K

D03D1/00 Z

D03D15/587

D06C7/00 Z

D06H7/04

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2021083002

(22)【出願日】2021-05-17

(65)【公開番号】P2022176521

(43)【公開日】2022-11-30

【審査請求日】2023-10-25

(73)【特許権者】

【識別番号】000241500

【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】596024426

【氏名又は名称】槌屋ティスコ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000394

【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】今井 美希

(72)【発明者】

【氏名】大竹 宏幸

(72)【発明者】

【氏名】太田 敏彰

【審査官】白土 博之

(56)【参考文献】

【文献】特許第６１１６７７５（ＪＰ，Ｂ２）

【文献】特開２０１９－０１３３７４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平１１－３０９０４８（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ａ４７Ｃ ２７／００－２７／２２

Ａ４７Ｃ ３１／００－３１／１２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

長尺の柱状の柱状部と該柱状部の側面に沿って帯状に一体に形成された脚部とを有し、前記柱状部の外表面と前記脚部とが布帛体によって形成された玉縁であって、
前記柱状部は樹脂製の中実柱状の芯材部を前記布帛体の一部である第１布帛体部で覆って形成されており、
前記脚部は前記布帛体の一部である第２布帛体部で形成されており、
前記芯材部の表面には加熱により溶融する溶融糸が巻き付けられて配設されており、
前記第２布帛体部の中には前記溶融糸が配設されているとともに、前記第１布帛体部の中には前記溶融糸は配設されておらず、
前記第１布帛体部と前記第２布帛体部が前記芯材部と共に一体に製織されたのち加熱され前記溶融糸が溶融したのち冷却されて固化した状態で形成されている玉縁。

【請求項2】

請求項１において、前記芯材部の表面に、前記溶融糸が、右巻き、又は左巻き、又は右巻きと左巻きの両方に巻き付けられることで配設されている玉縁。

【請求項3】

請求項１において、前記芯材部の表面に、前記溶融糸が、製紐加工により組紐構造として巻き付けられることで配設されている玉縁。

【請求項4】

請求項１ないし請求項３において、前記芯材部および前記溶融糸の材質が、ナイロンである玉縁。

【請求項5】

請求項１ないし請求項４において、前記脚部は前記柱状部と反対側の端部が前記脚部に対して垂直な方向から見て波状に形成されている玉縁。

【請求項6】

長尺の柱状の柱状部と該柱状部の側面に沿って帯状に一体に形成された脚部とを有し、前記柱状部の外表面と前記脚部とが布帛体によって形成された玉縁であって、
前記柱状部は中実柱状の芯材部を前記布帛体の一部である第１布帛体部で覆って形成されており、
前記脚部は前記布帛体の一部である第２布帛体部で形成されており、
前記第１布帛体部の中及び前記芯材部の表面に加熱により溶融する溶融糸が配設される場合には、前記芯材部の表面には前記溶融糸が隙間なく巻き付けられた状態で配設されており、
前記第１布帛体部の中に前記溶融糸が配設されず、前記芯材部の表面にのみ前記溶融糸が配設される場合には、前記芯材部の表面には前記溶融糸が隙間なく巻き付けられた状態で配設されており、
前記第２布帛体部の中には前記溶融糸が配設されており、
前記第１布帛体部と前記第２布帛体部が前記芯材部と共に一体に製織されたのち加熱され前記溶融糸が溶融したのち冷却されて固化した状態で形成されている玉縁。

【請求項7】

請求項５の玉縁の製造方法であって、
２つの前記第１布帛体部の間に前記第２布帛体部が配置されるように経糸を整経する工程であって、前記第１布帛体部に対応する前記経糸である第１経糸には前記溶融糸が含まれておらず前記第２布帛体部に対応する前記経糸である第２経糸には前記溶融糸が含まれている第１工程と、
前記芯材部の周りに前記溶融糸を巻き付けて被覆芯材部を得る第２工程と、
前記第１経糸と前記被覆芯材部と前記第２経糸に対して緯糸を通しながら製織する工程であって、２つの前記被覆芯材部を覆った前記第１布帛体部の間に前記第２布帛体部が配置された中間布帛体を製織する第３工程と、
該中間布帛体を加熱して前記溶融糸を軟化させたのちに冷却して固化させる第４工程と、
該第４工程の後に前記中間布帛体の前記第２布帛体部を面外方向から見て波状の前記端部を有するように切断して２つの玉縁を得る第５工程と、を有している玉縁の製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、自動車用シート等に用いられる玉縁及びその製造方法に関する。

【背景技術】

【0002】

自動車用シート等における表皮材であるシートカバーでは、意匠性を向上させるためにパーツの縫製部に玉縁を配置することがある。このような玉縁の中には、外観に現れる円柱状の部分である柱状部の表面が布帛で覆われた状態で形成されているものがある。特許文献１に記載される玉縁においては、略矩形状の縫い代部と、この縫い代部の幅方向の端部に連接された筒状部と、筒状部の中に挿入された糸により形成される芯材部と、が一体的に製織されて形成されている。そして、筒状部に芯材部が挿入された部分が柱状部を構成する。これによって、特許文献２に記載されるような、中実の円柱状の芯材を細長の帯状布帛を二つ折りして包み込んで柱状部を形成するとともに、帯状布帛の重なり部を互いに接着して縫い代部を形成する技術に比べて生産性に優れるという利点があった。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】国際公開第２０１５／１７０６７５号

【文献】実開昭５７－１６６７７４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に開示される玉縁においては、生産性はよいのであるが、芯材部が糸の束で形成されているため柱状部の剛性が低く、シートカバーのパーツの縫製部に柱状部を配置した時よたり易いので外観を悪化させるおそれがあった。また、縫い代部が布帛製であるため剛性に欠けてそれによっても柱状部がよたり易くなるとともに、縫い代部を切断した時切断端部から糸がほつれやすいという問題があった。そこで、生産性の良さを維持しながら、柱状部の剛性が高いとともに、縫い代部の剛性が確保され切断したときの糸のほつれが少ない玉縁及びその製造方法の提供が望まれていた。

【0005】

このような要請に鑑み本発明の課題は、表面が布帛製の玉縁であって、柱状部の剛性が高く、縫い代部の剛性が確保されるとともに糸のほつれが少ない玉縁及びその製造方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の第１発明は、長尺の柱状の柱状部と該柱状部の側面に沿って帯状に一体に形成された脚部とを有し、前記柱状部の外表面と前記脚部とが布帛体によって形成された玉縁であって、前記柱状部は中実柱状の芯材部を前記布帛体の一部である第１布帛体部で覆って形成されており、前記脚部は前記布帛体の一部である第２布帛体部で形成されており、前記第１布帛体部の中及び／又は前記芯材部の表面には加熱により溶融する溶融糸が配設されており、前記第２布帛体部の中には前記溶融糸が配設されており、前記第１布帛体部と前記第２布帛体部が前記芯材部と共に一体に製織されたのち加熱され前記溶融糸が溶融したのち冷却されて固化した状態で形成されていることを特徴とする。

【0007】

第１発明によれば、玉縁の柱状部が中実柱状の芯材部の表面を第１布帛体部で覆って形成されているので、柱状部の剛性が高くパーツの縫製部に柱状部を配置した時よたって外観を悪化させるおそれが少ない。また、第１布帛体部の中及び／又は芯材部の表面と第２布帛体部の中には溶融糸が配設されており、第１布帛体部と第２布帛体部が、芯材部と共に一体に製織されたのち加熱され溶融糸が溶融したのち冷却されて固化した状態で形成されている。これによって、第１布帛体部と芯材部との密着性が増して柱状部の表面に膨れ、浮きなどの外観不具合発生を抑制でき、脚部の剛性が高まるとともに脚部を切断したときの切断端部からの糸のほつれを抑制できる。

【0008】

本発明の第２発明は、上記第１発明において、前記脚部は前記柱状部と反対側の端部が前記脚部に対して垂直な方向から見て波状に形成されていることを特徴とする。

【0009】

第２発明によれば、玉縁は脚部の面内方向へ曲がりやすくなるのでシートカバー等のパーツの縫製部に沿わせやすく良好な外観とすることができる。

【0010】

本発明の第３発明は、上記第２発明において、前記第１布帛体部の中には前記溶融糸が含まれず、前記芯材部の表面に前記溶融糸が配置されていることを特徴とする。

【0011】

第３発明によれば、外観に露出する柱状部の表面には溶融固化した溶融糸が現れないので意匠性を悪化させるおそれを抑制できる。

【0012】

本発明の第４発明は、上記第３発明の玉縁の製造方法であって、２つの前記第１布帛体部の間に前記第２布帛体部が配置されるように経糸を整経する工程であって、前記第１布帛体部に対応する前記経糸である第１経糸には前記溶融糸が含まれておらず前記第２布帛体部に対応する前記経糸である第２経糸には前記溶融糸が含まれている第１工程と、前記芯材部の周りに前記溶融糸を巻き付けて被覆芯材部を得る第２工程と、前記第１経糸と前記被覆芯材部と前記第２経糸に対して緯糸を通しながら製織する工程であって、２つの前記被覆芯材部を覆った前記第１布帛体部の間に前記第２布帛体部が配置された中間布帛体を製織する第３工程と、該中間布帛体を加熱して前記溶融糸を軟化させたのちに冷却して固化させる第４工程と、該第４工程の後に前記中間布帛体の前記第２布帛体部を面外方向から見て波状の前記端部を有するように切断して２つの玉縁を得る第５工程と、を有していることを特徴とする。

【0013】

第４発明によれば、玉縁を連続して製造できるので生産性が良い。

【図面の簡単な説明】

【0014】

【図1】本発明の一実施形態の玉縁が使用された自動車用シートの斜視図である。

【図2】図１のＩＩ－ＩＩ矢視線断面図である。

【図3】上記実施形態の玉縁を長手方向に見た側面図である。

【図4】上記実施形態の玉縁を長手方向に対して垂直な方向から見た正面図である。

【図5】上記実施形態の玉縁を製造する工程のうち第１工程の整経工程を説明する図である。

【図6】上記実施形態の玉縁を製造する工程のうち第２工程の被覆芯材部を形成する工程を説明する図である。

【図7】上記実施形態の玉縁を製造する工程のうち第３工程の製織工程を説明する図である。

【図8】上記実施形態の玉縁を製造する工程のうち第４工程の熱セット工程を説明する図である。

【図9】上記実施形態の玉縁を製造する工程のうち第５工程の切断工程を説明する図である。

【図10】上記実施形態の玉縁を製造する工程のうち第２工程の被覆芯材部を形成する工程の変形例を説明する図である。

【発明を実施するための形態】

【0015】

図１は、本発明の一実施形態である玉縁１０を使用した自動車用シート１を示している。自動車用シート１は、シートクッション２と、シートバック３と、ヘッドレスト４と、を備えている。シートクッション２は、骨格としてのクッションフレーム（図示せず）の上にクッション材としてのクッションパッド（図示せず）が載置され、その表面を表皮材としてのクッションカバー５で覆って形成されている。クッションカバー５は、複数のパーツが縫製により一体化されて形成されており、天板部５ａとかまち部５ｂを有している。天板部５ａとかまち部５ｂとの間の縫製部には玉縁１０が一体的に縫製されて取付けられている。シートバック３も基本的にシートクッション２と同一の構成であり、骨格としてのバックフレーム（図示せず）の上にクッション材としてのバックパッド（図示せず）が載置され、その表面を表皮材としてのバックカバー６で覆って形成されている。バックカバー６は、複数のパーツが縫製により一体化されて形成されており、天板部６ａとかまち部６ｂと背面部（図示せず）とを有している。天板部６ａとかまち部６ｂとの間の縫製部には玉縁１０が一体的に縫製されて取付けられている。

【0016】

図２に示すように、バックカバー６の天板部６ａは、ファブリックや皮革製の表皮６ａ１の裏側にウレタンスラブ製のカバーパッド６ａ２がラミネートされた２層構造をしている。バックカバー６のかまち部６ｂは、ファブリックや皮革製の表皮のみからなり、この表皮は天板部６ａの表皮６ａ１と同一のものであってもよいし異なっていてもよい。玉縁１０は、長尺の円柱状の柱状部１１と、柱状部１１の側面に沿って帯状に一体に形成された脚部１２とを有する。玉縁１０の脚部１２は、天板部６ａの端末部における表皮６ａ１の表面側と、かまち部６ｂの端末部の表面側との間に挟まれた状態で縫製糸７によって一体的に縫製されている。そして、天板部６ａとかまち部６ｂの境界部分に玉縁１０の柱状部１１が配置されることによって装飾性を高めている。クッションカバー５における天板部５ａとかまち部５ｂの境界部分についてもバックカバー６と同様であるので説明を省略する。

【0017】

図２～図４に示すように、玉縁１０の柱状部１１は、樹脂製で長尺の円柱状の芯材部１１ａと、芯材部１１ａを包み込む布帛製で円筒状の筒状部１１ｂと、を有する。玉縁１０の脚部１２は、布帛製で板状をしているとともに柱状部１１と反対側の端部１２ａが面外方向（脚部１２の延びる方向に対して垂直な方向）から見て波状に形成されている。具体的には、脚部１２は、帯状に延びる部材の柱状部１１と反対側の端部が所定間隔で略三角形の切欠き１２ｂが設けられることによって波状に形成されている。筒状部１１ｂと脚部１２は、織機で一体的に製織されて形成されている。脚部１２には、加熱により溶融軟化する溶融糸が含まれているが、筒状部１１ｂには溶融糸は含まれていない。これは、製織の際の経糸が脚部１２と筒状部１１ｂで異なり、脚部１２を形成する経糸のみに溶融糸が含まれていることによる。ここで、筒状部１１ｂと脚部１２が、それぞれ特許請求の範囲の「第１布帛体部」と「第２布帛体部」に相当する。

【0018】

図５～図１０に基いて玉縁１０の製造方法について説明する。図５に示す第１工程である整経工程において、経糸を巻いた複数のコーン２１を整経機に仕掛けて筒状部１１ｂと脚部１２に対応する経糸をビーム２２に巻き取っていく。このとき後述する第３工程である製織工程で、筒状部１１ｂを製織する両方の側部２３においては経糸の一部である第１経糸に溶融糸を含めず、脚部１２を製織する中央部２４においては経糸の一部である第２経糸に溶融糸を含めるようにする。具体的には、両方の側部２３にはポリエステル製で太さが２２０Ｔ（デシテックス）である糸を３４本／２５．４ｍｍの密度で並べる。また、中央部２４にはポリエステル製で太さが２２０Ｔである糸に融点の低いポリエステル製で太さが３３Ｔである第１溶融糸２５を所定の割合で加えて１３３本／２５．４ｍｍの密度で並べる。ここで、第１溶融糸２５が、特許請求の範囲の「溶融糸」に相当する。

【0019】

図６に示す第２工程では、後述する第３工程である製織工程で、被覆芯材部２６ａとなるナイロン製の柱状体２６にナイロン製の溶融糸である第２溶融糸２７を巻き付けたものを製造する。図６には右巻きを示すが、左巻きであってもよく、さらには右巻きと左巻きの両方向に巻き付けてもよい。また、図１０に示すように、第２溶融糸２７を製紐加工により組紐構造として巻き付けてもよい。この構造とすることで、被覆芯材部２６ａを筒状部１１ｂに挿入する際、柱状体２６に対する第２溶融糸２７のずれを効果的に防止することができる。柱状体２６と第２溶融糸２７の融点は、第１溶融糸２５の融点とほぼ等しい。第２工程は、第１工程とは切り離して行うことができ、第１工程の後で行っても前又は並行して行ってもよい。ここで、第２溶融糸２７が、特許請求の範囲の「溶融糸」に相当する。

【0020】

図７に示す第３工程である製織工程では、２つの筒状部１１ｂとその間に位置する脚部１２を一体に製織する。具体的には、経糸が巻き付けられたビーム２２における２つの第１溶融糸２５を含まない側部２３から繰り出された第１経糸と、第１溶融糸２５を含む中央部２４から繰り出された第２経糸に対してポリエステル製で太さが２２０Ｔである緯糸を１１２本／２５．４ｍｍの密度で通して中間布帛体３０を製織する。このとき、２つの筒状部１１ｂは袋織とされるとともにその中に第２工程で製造された被覆芯材部２６ａが製織とともに挿入される。中間布帛体３０は、内部に被覆芯材部２６ａが配置された２つの筒状部１１ｂの間に脚部１２が一体化された長尺物である。

【0021】

図８に示す第４工程である熱セット工程では、第３工程で製織された中間布帛体３０を順次加熱するとともに冷却する。すると、柱状体２６に巻き付けられた第２溶融糸２７は溶融固化してそれを包む筒状部１１ｂの内側面と柱状体２６を接着する。また、脚部１２に織り込まれた第１溶融糸２５も溶融固化して脚部１２に織り込まれた第１溶融糸２５以外の経糸及び緯糸を接着する。これによって、柱状体２６は筒状部１１ｂに対して固定されて芯材部１１ａを形成する。このとき、筒状部１１ｂには第１溶融糸２５が含まれていないので柱状部１１の表面の風合いを損傷することが抑制される。また、脚部１２は第１溶融糸２５以外の経糸及び緯糸が互いに接着されるので生地の厚みが薄くても剛性が確保されるとともに次の第５工程において切断されても切断端部から糸がほつれにくくなる。この熱セット工程は第３工程の製織工程の下流で製織工程に同期して連続的に行われるようになっている。

【0022】

図９に示す第５工程である切断工程では、円柱の側面に周方向に延びる波状の切断刃２８を有する切断ローラ２９で脚部１２を押圧することにより脚部１２を波状に切断して２本の玉縁１０を得る。詳しくは、切断刃２８は切断ローラ２９の側面から径方向に突出した凸部として形成されており、脚部１２を挟んで切断ローラ２９の反対側には軸が平行に配置された円筒状のローラ（図示せず）が配設されて両ローラの間に脚部１２を通すと両ローラにより脚部１２が押圧されて切断刃２８により波状に切断されるようになっている。この切断工程は第４工程の熱セット工程の下流で熱セット工程に同期して連続的に行われるようになっている。このとき、脚部１２は第１溶融糸２５以外の経糸及び緯糸が第１溶融糸２５の溶融固化によって互いに接着されているので切断されても切断端部から糸がほつれにくい。さらに、切断を熱溶断、レーザ切断、超音波切断とし、切断面を溶融固化させることで、効果的にほつれにくくすることができる。

【0023】

以上のように構成される本実施形態の玉縁１０は、以下のような作用効果を奏する。玉縁１０の柱状部１１が樹脂製で長尺の中実円柱状の芯材部１１ａの表面を筒状部１１ｂで覆って形成されているので、剛性が高くシートカバーを構成するパーツの縫製部に柱状部１１を配置した時よたって外観を悪化させるおそれが少ない。また、芯材部１１ａは柱状体２６に溶融糸である第２溶融糸２７が巻き付けられて構成されており、脚部１２の中には第１溶融糸２５を所定の割合で織り込まれている。そして、芯材部１１ａを中に通した状態の筒状部１１ｂと脚部１２が、一体に製織されたのち加熱され第１溶融糸２５と第２溶融糸２７が溶融したのち冷却されて固化した状態で形成されている。これによって、筒状部１１ｂと芯材部１１ａとの密着性が増して柱状部１１の表面に膨れなどの外観不具合発生を抑制でき、脚部１２の剛性が高まるとともに脚部１２を切断したときの切断端部からの糸のほつれを抑制できる。

【0024】

また、脚部１２は柱状部１１と反対側の端部１２ａが脚部１２に対して垂直な方向から見て波状に形成されている。これによって、玉縁１０は脚部１２の面内方向へ曲がりやすくなるのでシートカバー等のパーツの縫製部に沿わせやすく良好な外観とすることができる。さらに、筒状部１１ｂの中には溶融糸が含まれず、柱状体２６に溶融糸である第２溶融糸２７が巻き付けられて芯材部１１ａが構成されている。これによって、外観に露出する柱状部１１の表面には溶融固化した溶融糸が含まれないので意匠性を悪化させるおそれを抑制できる。

【0025】

以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。

【0026】

１．上記実施形態においては、芯材部１１ａを断面が円形の柱状のものとしたが、これに限らず、断面が楕円形や多角形の柱状、中空状のものとすることもできる。

【0027】

２．上記実施形態においては、玉縁１０を製造する工程のうち第４工程と第５工程を第３工程の製織工程と同期して連続的に行うように構成したが、これに限らず第４工程及び／又は第５工程をバッチ処理することとしてもよい。

【0028】

３．上記実施形態においては、本発明の玉縁１０を自動車のシートに適用したが、飛行機、船、電車等に搭載のシートに適用しても良い。

【符号の説明】

【0029】

１ 自動車用シート
３ シートバック
６ バックカバー
６ａ 天板部
６ｂ かまち部
７ 縫製糸
１０ 玉縁
１１ 柱状部
１１ａ 芯材部
１１ｂ 筒状部（第１布帛体部）
１２ 脚部（第２布帛体部）
１２ａ 端部
２２ ビーム
２３ 側部
２４ 中央部
２５ 第１溶融糸（溶融糸）
２６ 柱状体
２６ａ 被覆芯材部
２７ 第２溶融糸（溶融糸）
３０ 中間布帛体

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】