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特許7595309振動伝搬部材、およびこれを用いた送受波器、流体種類判別装置
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  • 特許-振動伝搬部材、およびこれを用いた送受波器、流体種類判別装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】振動伝搬部材、およびこれを用いた送受波器、流体種類判別装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/032 20060101AFI20241129BHJP
   G01N 29/42 20060101ALI20241129BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G01N29/032
G01N29/42
H04R1/28 330
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022025201
(22)【出願日】2022-02-22
(65)【公開番号】P2023121880
(43)【公開日】2023-09-01
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 慎
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】永原 英知
(72)【発明者】
【氏名】名和 基之
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-164128(JP,A)
【文献】特開2020-182038(JP,A)
【文献】特開2013-246065(JP,A)
【文献】特開2007-328763(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/070006(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00-G01N29/52
G01B17/00-G01B17/08
A61B 8/00-A61B 8/15
H04R 1/00-H04R31/00
G01F 1/667
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体の一つの面に接合して動作する振動伝搬部材であって、
天板と、底板と、側壁と、前記天板及び底板に対し概垂直に配置した複数の隔壁とで形成され、
前記天板と前記隔壁とで形成される複数の膜構造で発生する振動を用い、
前記複数の隔壁のうち一方の前記隔壁と当該一方の隔壁と隣り合う他方の前記隔壁との間隔を異なる値とすることにより前記複数の膜構造が異なる共振周波数を発生するようにした振動伝搬部材。
【請求項2】
振動体と、前記振動体の一つの面に接合した請求項1項に記載の振動伝搬部材とを備える送受波器。
【請求項3】
被計測流体を介在して配置された請求項2項に記載の一対の送受波器と、
前記一対の送受波器の一方から送信し、他方で受信する動作を構成する制御部と、
前記一対の送受波器の受信信号を処理する演算部と、を備え、
前記送受波器は、複数の共振周波数の送受信を行える構成とし、
前記演算部は、複数の共振周波数の受信信号の信号特性に基づき前記被計測流体の種類を判別する流体種類判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動体に接合して動作する振動伝搬部材において、一つの部材から複数の周波数の超音波を送出する構成に関するものである。また、それを用いた送受波器、および流体種類判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の周波数を送出してガス値(発熱量等)を測定する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、従来のトランスジューサを用いたガス値測定装置の概略構成図である。図9において、ガス値測定装置101は、ガスの入口102,および出口103を備えている。計測部104にて計測が行われるように、トランスジューサ105,106が配置されている。このトランスジューサ105,106は第一の周波数f1で送受信を行う。また、計測部107にて計測が行われるよう、超音波トランスジューサ108と、この超音波トランスジューサ108からの超音波を送受信するように配置された反射体109が対向して配置されている。この超音波トランスジューサ108は、第二の周波数f2で送受信を行う。この様にして、トランスジューサ105,106とで、計測システム110が構成されている。また、超音波トランスジューサ108と反射体109とで、計測システム111が構成されている。
【0004】
このような構成において、被測定ガスが入口102から流入し、計測部104を経て、出口103より流出する。この間、このガスは計測部107にも充満する。計測部104にて、トランスジューサ105,106間において送受される周波数f1の超音波により、ガスの減衰量が計測される。また、超音波トランスジューサ108と反射体109との間において送受される周波数f2の超音波により、ガスの減衰量が計測される。これら、周波数f1とf2における減衰量を用いて、予め記憶された周波数と減衰量に関係づけられたガス値(発熱量等)との関係を基に、測定されたガスのガス値が導き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表平11―511260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のガス値測定装置では、ガス種特定のために、2種類の周波数を用いるにあたり、3つのトランスジューサ、およびそれらにより構成される2つの計測システムが必要となるものであり、部品点数が多くなるため、構成が複雑になると共に、サイズも大きくなり、コストの増加につながるという課題を有するものであった。また、2種類の物理量からのガス値推定であるため、判別対象ガスの種類も限定され、精度も限定されるという課題を有するものであった。
【0007】
本発明は、上記課題に対応するものであり、振動体の一つの面に接合して動作する振動伝搬部材であって、天板と、底板と、側壁と、前記天板及び底板に対し概垂直に配置した隔壁とで形成され、前記天板と前記隔壁とで形成される複数の膜構造で発生する振動を用い、前記隔壁の間隔を異なる値とすることにより前記複数の膜構造が異なる共振周波数を発生するようにしたことにより、一つの部材で複数周波数の送受信を行うと共に、これを用いることにより、単一のシステムで流体種の判別を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の振動伝搬部材は、振動体の一つの面に接合して動作する振動伝搬部材であって、天板と、底板と、側壁と、前記天板及び底板に対し概垂直に配置した隔壁とで形成され、前記天板と前記隔壁とで形成される複数の膜構造で発生する振動を用い、前記隔壁の間隔を異なる値とすることにより前記複数の膜構造が異なる共振周波数を発生するようにしたことにより、一つの振動伝搬部材のみで複数周波数の送受信を行う構成が可能となり、これを用いた送受波器を用いることにより、単一のシステムで、精度の高い流体の種類判別ができるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の振動伝搬部材は、天板と、底板と、側壁と、前記天板及び底板に対し概垂直に配置した隔壁とで形成することで、複数の膜構造が異なる共振周波数を発生するようにしたことにより、一つの振動伝搬部材のみで複数周波数の送受信を行う構成が可能となり、これを用いた送受波器を用いることにより、単一のシステムで、精度の高い流体の種類判別ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1における振動伝搬部材の分解斜視図
図2】本発明の実施の形態1における振動伝搬部材の断面図
図3】本発明の実施の形態1における振動伝搬部材の形成方法を示す図
図4】本発明の実施の形態2における送受波器の断面図
図5】本発明の実施の形態2における送受波器の特性グラフ
図6】本発明の実施の形態3における流体種類判別装置の断面図
図7】本発明の実施の形態3における演算部の構成図
図8】本発明の実施の形態3におけるガスの周波数特性図
図9】従来のトランスジューサを用いたガス値測定装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、振動体の一つの面に接合して動作する振動伝搬部材であって、天板と、底板と、側壁と、前記天板及び底板に対し概垂直に配置した隔壁とで形成され、前記天板と前記隔壁とで形成される複数の膜構造で発生する振動を用い、前記隔壁の間隔を異なる値とすることにより前記複数の膜構造が異なる共振周波数を発生するようにしたことにより、一つの振動伝搬部材のみで複数周波数の伝達ができる。
【0012】
第2の発明は、振動体と、前記振動体の一つの面に接合した第1の発明の振動伝搬部材とを備える送受波器であり、一つの振動体とこれに取付けた一つの振動伝搬部材のみで複数周波数の送受が可能な送受波器を構成することができる。
【0013】
第3の発明は、被計測流体を介在して配置された第2の発明の一対の送受波器と、前記一対の送受波器の一方から送信し、他方で受信する動作を構成する制御部と、前記一対の送受波器の受信信号を処理する演算部と、を備え、前記送受波器は、複数の共振周波数の送受信を行える構成とし、前記演算部は、複数の共振周波数の受信信号の信号特性に基づき前記被計測流体の種類を判別する流体種類判別装置であり、複数周波数の送受が可能な超音波送受波器を一対用いることにより、精度の高い流体の種類判別ができる。
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0016】
(実施の形態1)
実施の形態1について、図1図2を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態1における振動伝搬部材の分解斜視図である。図1に示す様に、振動伝搬部材1は、天板2,底板3と、側壁4,5により囲まれた空間において、天板2,および底板3に対し、略垂直に配置された複数の隔壁6、7、8、9により構成されている。図1では、振動伝搬部材の内部構造を分かり易くするため、底板3,および側壁5を取り外した配置として示している。このような構成により、天板2は、隔壁6、7により区画された膜面10、隔壁7、8により区画された膜面11,隔壁8、9により区画された膜面12に分割される。
【0018】
図2は、図1における振動伝搬部材1の断面を示したものである。図2(a)は、図1のAA’水平断面であり、図2(b)は、図1のBB’垂直断面である。図2(a)に示すように、膜面10、膜面11、膜面12のそれぞれの幅(W)は等しいが、それぞれの長さ(Ma、Mb、Mc)は、下記の様な関係を有するように構成されている。この膜面長さは、隔壁間の間隔であるとも言える。
【0019】
Ma < Mb < Mc
一方、図2(b)に示すように、隔壁6、隔壁7,隔壁8、隔壁9の高さHは等しく、また、それぞれの隔壁6の厚さLa、隔壁7の厚さLb、隔壁8の厚さLc、隔壁9の厚さLdは、ほぼ等しく形成されている。
【0020】
これにより、振動伝搬部材1は、隔壁6,7、および膜面10で構成される膜構造13、隔壁7、8、および膜面11で構成される膜構造14、隔壁8、9、および膜面12で構成される膜構造15の3つの膜構造(それぞれ一点鎖線で示す)の振動部分を有することになる。
【0021】
なお、図1では、振動伝搬部材1を天板2,底板3,側壁4,5、および隔壁6、7、8、9として、別部材の構成としたが図3の様に、金属(例えば、SUS)の薄板をエッチングで所定の形状に形成した中間板54を複数枚積層して隔壁と側壁を形成し、その上下に天板52と底板53とを更に積層することで、振動伝搬部材51とすることもできる。
【0022】
この振動伝搬部材の動作説明は、次の実施の形態2の動作説明にて行う。
【0023】
(実施の形態2)
実施の形態2について、図4図5を用いて説明する。
【0024】
図4は送受波器16の断面図を示したものである。送受波器16は、実施の形態1にて説明した振動伝搬部材1の底板3に、振動体17を取付けたものである。振動体17は、例えば圧電体などである。振動伝搬部材1は、実施の形態1と同じものゆえ、図1,2と同じものには同じ番号を付している。
【0025】
次に、この送受波器16の動作を図4を用いて説明するが、それに先立ち、このような構成を有した振動伝搬部材1の基本特性について説明する。
【0026】
図4では、膜面10,11,12の長さが異なっているが、長さと膜面の共振周波数の関係を図5に示す。図5の横軸は膜面の長さ(=隔壁の間隔)を、縦軸は膜構造の共振周波数を示す。
【0027】
図5に示したように、膜構造の膜面長さが大きくなると、共振周波数が小さくなることがわかる。これは、大きい膜面長さをもつ膜構造は低い周波数で、小さい膜面長さを持つ膜構造は、高い周波数で共振することを意味している。従って、種々の膜面長さを有する膜構造を形成すると、複数の周波数の共振を生じさせることが可能となる。
【0028】
この様な振動伝搬部材1の基本特性に基づいた振動伝搬部材1の動作説明を図4により説明する。
【0029】
今、振動体17を振動膜の共振周波数成分を含む駆動信号で励振し、発生した振動が底板3を介して供給されると、振動はそれぞれ、隔壁6、隔壁7、隔壁8、隔壁9を介して天板2に伝達される。この時、先に述べた様に膜面10,11,12の長さが異なるので、膜面10,11,12は、異なる共振周波数で振動する。つまり、異なる周波数の超音波を膜面10,11,12から送出することになり、その周波数は、膜面長さの小さい膜面10の共振周波数が高く、膜面長さの大きい膜面12の共振周波数が低くなる。
【0030】
以上は、送受波器16を超音波の送波用に用いた場合であるが、受波用に用いた場合でも、膜面長さと共振周波数の関係は変わらないので、その関係を考慮して考えればよい。つまり図4において、超音波が膜面に到達した場合、膜面10、11,12の共振周波数の値は、この順に大きい方から小さい方へと対応することになる。
【0031】
従って、2つの送受波器16を対向して用いる場合には、図4において、膜面長さの等しいもの同士が真正面に対向するように配置することで、送波器から送波された超音波を受波器で受波することができる。
【0032】
以上、説明したように膜面長さを変化させることにより、共振周波数を制御することができ、その結果、天板から複数の共振周波数の超音波を送出することができる。つまり、一つの振動体と一つの振動伝搬体というシンプルな構成により、同時に複数の共振周波数の超音波を送出できるものである。
【0033】
(実施の形態3)
実施の形態3について、図6図8を用いて説明する。
【0034】
図6は、本発明の実施の形態3における流体種類判別装置20の断面を示す。図6に示す様に、被計測流体が流れる流路21には、一対の超音波送受波器22、23が対向するように配置されている。超音波送受波器22、23としては、実施の形態2で説明した送受波器を用いる。すなわち、膜面長さは、図4の様に形成されたものを用いる。矢印24は被計測流体の流れる方向を示している。一対の超音波送受波器22,23は、被計測流体を挟んで対向して配置されている。この場合、超音波送受波器22,23は、実施の形態2で述べた様に、膜面長さの等しいもの同士が真正面に対向するように配置されている。制御部25は、送信部26、受信部27、切替部28および演算部29を制御する。
【0035】
図7は、本発明の実施の形態3における演算部29の構成図である。
【0036】
図7に示す様に、演算部29は、入力信号のA/D変換器30、それぞれ予め定められた周波数f1、f2、f3に対応するフィルタA31,フィルタB32,フィルタC33
、フィルタA31,フィルタB32,フィルタC33を通過した信号の処理部A34、処理部B35、処理部C36、及び処理部A34、処理部B35、処理部C36で処理された信号の統合処理部37で構成されている。
【0037】
図8は、被計測流体であるガスの周波数特性図を模擬的に示した一例である。図8において、横軸は周波数f、縦軸は、対象ガスにおいて、所定の信号を送信したときの所定距離における受信強度Sである。ガスGaとガスGbとでは、その周波数特性(受信信号の信号特性)が異なっている、ガスGaは周波数f1、f2、f3の変化に対して単調減少であるが、ガスGaは極小値を有する。したがって、特定の周波数(例えば、f1、f2、f3)における受信強度がわかれば、その傾向や、値からガスGaとガスGbとの判別が可能となる。
【0038】
このように受信強度が変化するのは、端的に言えば、流体中を伝搬する超音波が、流体の分子あるいは原子と相互作用し、吸収あるいは散乱されるためである。
【0039】
この様にガス種により超音波の受信強度が周波数に依存する要因について詳述する。例えば、単原子気体、ヘリウム(He:4),ネオン(Ne:20)、アルゴン(Ar:40)の場合、原子の重さおよび大きさが大きく異なる。なお、( )内は。元素記号と原子量を表す。軽い元素からなる気体は、高い周波数まで超音波と相互作用すると考えられる、一方、重い元素からなる気体は、低い周波数領域においてのみ超音波と相互作用すると考えられる。
【0040】
このように、超音波との相互作用に周波数依存性が考えられるので、超音波の透過率がガス種により変化するものと考えられる。また、2原子気体、例えば、水素(H2:2)、窒素(N2:28)、酸素(O2:32)の場合、気体分子の重さが大きく異なり、さらに原子間の結合力も大きく異なるため、原子間に振動あるいは伸縮・膨張運動にも差異が発生する。更には、原子間の捻じれ振動などにも大きな差異があると考えられる。これらが、超音波との相互作用において周波数依存性を示すと考えられる。
【0041】
さらに、多原子気体、例えば、水蒸気(H2O:18)、二酸化炭素(CO2:44)、二酸化窒素(N2O:44)、メタン(CH4:16)、エタン(C2H6:30)などの場合、気体分子の重さが大きく異なるとともにその立体構造にも大きな差異がある。このため、超音波との相互作用に周波数依存性が発生すると考えられる。
【0042】
以上のようにガスの有する周波数特性を前提として構成された流体種類判別装置の動作について説明する。
【0043】
まず、制御部25が、送信部26および切替部28を制御し、超音波送受波器22に駆動信号を送信し、超音波を被計測流体中に送出する。被計測流体中に送出された超音波は、超音波送受波器23に向かって伝搬し、超音波送受波器23で受信される。
【0044】
既に説明した様に、超音波送受波器22,23は実施の形態2で説明した送受波器を使用しているため、超音波送受波器22から送信する場合、複数の周波数の超音波が送信される。また、超音波送受波器23では、超音波送受波器22の対応する膜面で複数の周波数の超音波が受信される。受信された信号は、切替部28を介して受信部27で受信され、制御部25を介して演算部29に到達する。
【0045】
次に、演算部29での処理内容を図7にて説明する。
【0046】
演算部29に入力された信号は、A/D変換器30により、デジタル信号に変換される
。その後、周波数f1のフィルタA31,周波数f2のフィルタB32、周波数f3のフィルタC33によりフィルタリングされ、それぞれ、処理部A34,処理部B35,処理部C36により,それぞれの周波数における受信強度を得る。
【0047】
これらの受信強度データは、統合処理部37において、予め記憶された図8の周波数f1、f2、f3における受信強度と比較されて、測定された被計測流体であるガスの種類を判別する。
【0048】
以上、説明した様に本発明の流体種類判別装置は、複数周波数の送受が可能な超音波送受波器を用いることにより、シンプルな構成で精度の高い被計測流体の種類判別ができる。
【0049】
なお、本実施例での周波数は3種類で説明したが、振動伝搬部材の隔壁の数を増やして膜面長さを異なる値とすることにより、3種類以上も可能である。その数が増えるほど、判別できるガスの種類を増やすことができ、また、判別精度の向上が図れるため、周波数特性曲線が接近していても判別が可能となる。
【0050】
また、判別装置の構成例として、一対の超音波送受波器を対向して配置したが、一つの超音波送受波器で、対向部分に反射部を設け、送信した超音波送受波器で受信する構成とすることも可能である。
【0051】
また、ガス種類の判別をするための基準として、周波数が変化したときの受信強度の特性を利用したが、受信強度以外の受信信号特性、例えば、減衰率等でも良い。また、膜面の形状として矩形状のものを示したが、これに限らず、円形、楕円形、多角形等であっても良い。また、膜構造の配列として、1次元状のものを示したが、2次元配列も可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明の振動伝搬部材は、少ない部品点数で複数周波数の送受信を行うことができ、また、その振動伝搬部材に圧電体を取付けた超音波送受波器として流体の種類判別に適用することにより幅広い種類の流体に対して、精度良く判別を行う構成とすることができるため、各種超音波流量計や、その応用製品であるガスメータなど、流体の種類判別を必要とする用途に幅広く使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、51 振動伝搬部材
2、52 天板
3、53 底板
4、5 側壁
6、7,8,9 隔壁
13、14,15 膜構造
16 送受波器
17 振動体
20 流体種類判別装置
22、23 超音波送受波器(送受波器)
25 制御部
29 演算部
54 中間板(側壁、隔壁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9