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  • 特許-肥料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】肥料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 7/00 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
C05F7/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024090979
(22)【出願日】2024-06-04
【審査請求日】2024-06-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524212844
【氏名又は名称】TOMASEIホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515156681
【氏名又は名称】株式会社とませい
(74)【代理人】
【識別番号】110004392
【氏名又は名称】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】湊 崇
(72)【発明者】
【氏名】寺田 誠
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102942394(CN,A)
【文献】特開平07-172966(JP,A)
【文献】特開2018-145338(JP,A)
【文献】特開2000-296170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F
B09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水処理または排水処理の過程で生じる有機汚泥に対して、塩化マグネシウムおよびリン酸を添加し、アンモニアの発生を抑制するアンモニア発生抑制工程と、
バイオマスの燃焼灰であるバイオマス燃焼灰に対して、12~29wt%の硫酸を添加し、水素イオン指数(pH)を調整するpH調整工程と、
前記有機汚泥と前記バイオマス燃焼灰との重量全体を10とした場合、有機汚泥の重量比を1超9未満の配合割合で混合することにより、含水率を8%超65%未満に調整する含水率調整工程と、
を有する、肥料の製造方法。
【請求項2】
前記含水率調整工程では、前記有機汚泥と前記バイオマス燃焼灰との重量全体を10とした場合、前記有機汚泥の重量比を3~6の配合割合で混合することにより、含水率を22~43%に調整する、請求項1に記載の肥料の製造方法。
【請求項3】
前記バイオマス燃焼灰は、レーザ回折・散乱法によって測定された平均粒径が、44μm以下の飛灰である、請求項1に記載の肥料の製造方法。
【請求項4】
前記バイオマス燃焼灰は、80wt%未満の範囲内で、酸化カルシウムによって代替されている、請求項1に記載の肥料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理または排水処理の過程で生じる有機汚泥から肥料を製造するための製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理または排水処理の過程で生じる有機汚泥には、窒素、リン、カリウム等の肥料成分が豊富に含まれていることが知られている。このため、有機汚泥を再利用することを目的として、人為的に発酵させて堆肥化する等の処理が行われている。例えば、特開2013-72051号公報には、超好熱細菌により有機汚泥を発酵させることによって堆肥化する方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-72051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明を含め、従来の有機汚泥の堆肥化処理においては、発酵に長期間を要する。このため、発酵中の有機汚泥を保管しておくための設備が必要となる上、管理に手間が掛かり、設備コストや管理コストが増大するという問題がある。一方で、堆肥化処理していない有機汚泥は含水率が極めて高くて扱い難いため、そのままでは肥料として散布できないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、簡単かつ低コストでありながら、手軽に散布しやすい肥料を速やかに製造することができる肥料の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、下水処理または排水処理の過程で生じる有機汚泥と、バイオマスの燃焼灰であるバイオマス燃焼灰とを所定の配合割合で混合し、所定の含水率に調整することにより、上記目的を達成できることを見出し、以下に示す各発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明に係る肥料の製造方法は、簡単かつ低コストでありながら、手軽に散布しやすい肥料を速やかに製造するという課題を解決するために、下水処理または排水処理の過程で生じる有機汚泥と、バイオマスの燃焼灰であるバイオマス燃焼灰との重量全体を10とした場合、有機汚泥の重量比を1超9未満の配合割合で混合することにより、含水率を8%超65%未満に調整する含水率調整工程を有する。
【0008】
また、本発明の一態様として、肥料としての取り扱い易さを一層向上するという課題を解決するために、前記含水率調整工程では、前記有機汚泥と前記バイオマス燃焼灰との重量全体を10とした場合、前記有機汚泥の重量比を3~6の配合割合で混合することにより、含水率を22~43%に調整してもよい。
【0009】
さらに、本発明の一態様として、バイオマス燃焼灰による含水率の低減効果を向上するという課題を解決するために、前記バイオマス燃焼灰は、レーザ回折・散乱法によって測定された平均粒径が、44μm以下の飛灰であってもよい。
【0010】
また、本発明の一態様として、含水率の低減効果を促進するという課題を解決するために、前記バイオマス燃焼灰は、80wt%未満の範囲内で、酸化カルシウムによって代替されていてもよい。
【0011】
さらに、本発明の一態様として、アンモニアの発生を抑制し、肥料中の窒素成分をより多く残留させるという課題を解決するために、前記バイオマス燃焼灰に対して、12~29wt%の硫酸を添加し、水素イオン指数(pH)を調整するpH調整工程を有していてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様として、アンモニアの発生を抑制し、肥料中の窒素成分をより多く残留させるという課題を解決するために、前記有機汚泥に対して、塩化マグネシウムおよびリン酸を添加し、アンモニアの発生を抑制するアンモニア発生抑制工程を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単かつ低コストでありながら、手軽に散布しやすい肥料を速やかに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る肥料の製造方法の一実施形態を示す図である。
図2】本実施形態の肥料の製造方法を示すフローチャートである。
図3】実施例1の実験結果を示す表である。
図4】実施例2の実験結果を示す表である。
図5】実施例3の実験結果を示す表である。
図6】実施例4の実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る肥料の製造方法の一実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態の肥料の製造方法は、下水処理または排水処理の過程で生じる有機汚泥から肥料を製造するためのものであり、図1および図2に示すように、含水率調整工程(ステップS3)と、事前処理としてのアンモニア発生抑制工程(ステップS1)およびpH調整工程(ステップS2)を有している。以下、各工程について詳細に説明する。
【0016】
含水率調整工程は、肥料の含水率を調整する工程である。本実施形態において、含水率調整工程は、図1に示すように、下水処理または排水処理の過程で生じる有機汚泥と、バイオマスの燃焼灰であるバイオマス燃焼灰とを所定の配合割合で混合することにより、肥料を所定の含水率に調整する。
【0017】
有機汚泥は、下水処理または排水処理の各過程において、沈殿またはろ過等によって取り除かれる泥状の物質のうち、有機性のものである。また、バイオマス燃焼灰は、生物由来の有機性資源であるバイオマスを燃焼させて得られる灰である。本実施形態では、バイオマス発電所において、木質チップやパーム椰子殻(PKS:Palm Kernel Shell)等の植物由来の原料を燃焼して得られた飛灰をバイオマス燃焼灰として使用する。
【0018】
本実施形態では、後述する実施例1の結果に基づき、有機汚泥とバイオマス燃焼灰との重量全体を10とした場合、有機汚泥の重量比を1超9未満の配合割合で混合する。これにより、バイオマス燃焼灰が、有機汚泥中の水分を吸収するため、簡単かつ低コストで含水率が8%超65%未満に調整された肥料が製造される。
【0019】
含水率が8%超65%未満であれば、有機汚泥とバイオマス燃焼灰とが均一に混ざりやすいため、肥料としての品質が向上する。また、過度に乾燥させると肥料が粉体状化してしまうが、含水率が8%超であれば、そのようなこともないため、空中に舞い上がり難く、大量散布にも適した状態を保持する。さらに、含水率が65%未満であれば、適度に水分が抜けて取り扱いやすくなるため、運搬や散布しやすい状態となる。
【0020】
また、本実施形態において、含水率調整工程では、有機汚泥とバイオマス燃焼灰との重量全体を10とした場合、有機汚泥の重量比を3~6の配合割合でバイオマス燃焼灰と混合することがより好ましい。これにより、含水率が22~43%に調整されるため、肥料としての取り扱い易さが一層向上する。
【0021】
さらに、本実施形態では、後述する実施例2の結果に基づき、バイオマス燃焼灰は、レーザ回折・散乱法によって測定された平均粒径が、44μm以下の飛灰であることがより好ましい。これにより、バイオマス燃焼灰の比表面積が増大し、有機汚泥中の水分をより多く吸収するため、含水率の低減効果が向上する。
【0022】
また、本実施形態では、後述する実施例3の結果に基づき、バイオマス燃焼灰は、80wt%未満の範囲内で、生石灰等の酸化カルシウム(CaO)によって代替されていることがより好ましい。これにより、酸化カルシウムが、汚泥中の水分と激しく反応して吸収、発熱し、乾燥を促進するため、含水率の低減効果が向上する。
【0023】
なお、バイオマス燃焼灰には、少なくとも二酸化ケイ素(SiO)、酸化カルシウム(CaO)および酸化アルミニウム(Al)が含有されている。また、有機汚泥とバイオマス燃焼灰とは、図示しない攪拌装置等によって混合される。
【0024】
以上のような含水率調整工程によれば、有機汚泥とバイオマス燃焼灰とを所定の配合割合で混合し、所定の含水率に調整するだけでよいため、簡単かつ低コストでありながら、手軽に散布しやすい肥料を速やかに製造することができる。
【0025】
ただし、バイオマス燃焼灰はアルカリ性であるため、中性の有機汚泥と混合させると、水素イオン指数(pH)が上昇し、アンモニア(NH)が発生し易くなる。そうすると、肥料の三要素の一つである窒素成分が低減するとともに、悪臭が発生する。このため、本実施形態では、図1に示すように、アンモニアの発生を抑制するためのオプション的な処理として、pH調整工程と、アンモニア発生抑制工程とを有している。
【0026】
pH調整工程は、バイオマス燃焼灰の水素イオン指数を調整する工程である。具体的には、pH調整工程は、図1に示すように、有機汚泥と混合する前のバイオマス燃焼灰に対して、強い酸性を示す硫酸を添加し、水素イオン指数を調整する。本実施形態では、後述する実施例4の結果に基づき、バイオマス燃焼灰に対して、12~29wt%の硫酸を添加する。これにより、バイオマス燃焼灰の水素イオン指数が、中性域である8.5以下となるため、有機汚泥と混合されてもアンモニアの発生を抑制し、肥料中の窒素成分がより多く残留する。
【0027】
アンモニア発生抑制工程は、有機汚泥からアンモニアが発生するのを抑制する工程である。本実施形態において、アンモニア発生抑制工程では、バイオマス燃焼灰と混合する前の有機汚泥に対して、塩化マグネシウムおよびリン酸を添加する。これにより、有機汚泥中のアンモニウムイオンが、マグネシウムイオンおよびリン酸イオンと反応し、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP:Magnesium Ammonium Phosphate)として固定化される。このように、アンモニウムイオンが固定化された有機汚泥であれば、水素イオン指数が調整されていないバイオマス燃焼灰と混合されても、アンモニアの発生が抑制され、肥料中の窒素成分がより多く残留する。
【0028】
なお、pH調整工程により、バイオマス燃焼灰の水素イオン指数を中性(pH7)以下に調整すれば、アンモニアの発生は完全に抑制される。しかしながら、硫酸の原料コストがかかるため、硫酸の添加量を抑えつつ、アンモニア発生抑制工程と併用することで、肥料中の窒素成分をより多く残留させるためにかかるコストが低減する。
【0029】
以上のような本実施形態の肥料の製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.簡単かつ低コストでありながら、手軽に散布しやすい肥料を速やかに製造することができる。
2.最適な配合割合と含水率に調整することで、肥料としての取り扱い易さを一層向上することができる。
3.バイオマス燃焼灰として飛灰を使用することで、バイオマス燃焼灰による含水率の低減効果を向上することができる。
4.バイオマス燃焼灰の一部を酸化カルシウムによって代替することで、含水率の低減効果を促進することができる。
5.バイオマス燃焼灰の水素イオン指数を中性域以下に調整することで、アンモニアの発生を抑制し、肥料中の窒素成分をより多く残留させることができる。
6.有機汚泥中のアンモニウムイオンを固定化することで、アンモニアの発生を抑制し、肥料中の窒素成分をより多く残留させることができる。
【0030】
つぎに、本発明に係る肥料の製造方法の具体的な実施例について説明する。なお、本発明に係る技術的範囲は、以下に示す実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
本実施例1では、有機汚泥とバイオマス燃焼灰との好適な配合割合を特定する実験を行った。具体的には、有機汚泥としては、有機汚泥処理施設における脱水汚泥を使用した。また、バイオマス燃焼灰としては、バイオマス発電所においてストーカー式ボイラで燃焼された木質チップおよびパーム椰子殻(PKS)の飛灰を使用した。
【0032】
上述した有機汚泥およびバイオマス燃焼灰を重量比で、1:9~9:1の各配合割合で混合し、それぞれ2.5分間混合した後、含水率を測定した。その結果を図3に示す。図3に示すように、有機汚泥とバイオマス燃焼灰との重量比が1:9の場合、含水率が8%と低すぎるため、均一に混合させることが困難であった。また、有機汚泥とバイオマス燃焼灰との重量比が9:1の場合、含水率が65%と高すぎるため、均一に混合させることが困難であった。
【0033】
一方、有機汚泥とバイオマス燃焼灰とを重量比で2:8~8:2の配合割合で混合した場合、図3に示すように、含水率が18~62%と適度に調整されており、肥料として扱いやすい性状であることが確認された。また、有機汚泥とバイオマス燃焼灰とを重量比で3:7~6:4の配合割合で混合した場合は、含水率が22~43%に調整されており、肥料としての取り扱い易さが一層向上することが確認された。
【0034】
以上のような本実施例1の結果によれば、有機汚泥とバイオマス燃焼灰との重量全体を10とした場合、有機汚泥の重量比を1超9未満の配合割合で混合することにより、含水率を8%超65%未満に調整することが好ましいことが示された。この場合、バイオマス燃焼灰の重量比も1超9未満となる。また、有機汚泥の重量比を3~6の配合割合で混合することにより、含水率を22~43%に調整することがより好ましいことが示された。
【実施例2】
【0035】
本実施例2では、バイオマス燃焼灰として好適な平均粒径を特定する実験を行った。具体的には、バイオマス燃焼灰としては、図4に示すように、異なる3箇所のバイオマス発電所A~Cにおいて採取された飛灰を使用した。なお、バイオマス発電所Aの燃料は、パーム椰子殻(PKS)であり、バイオマス発電所Bの燃料はパーム椰子殻(PKS)および木質ペレットであり、バイオマス発電所Cの燃料はパーム椰子殻(PKS)、樹皮および間伐材等であった。
【0036】
上述した各バイオマス燃焼灰をメタノール内で攪拌することにより分散させた後、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所:LA-950)を用いて、レーザ回折・散乱法によって平均粒径を測定した。その結果を図4に示す。図4に示すように、いずれの飛灰も平均粒径が44μm以下であることが示された。
【0037】
以上のような実施例2の結果によれば、比表面積が大きく、有機汚泥中の水分をより多く吸収することで含水率の低減効果を向上させる飛灰は、レーザ回折・散乱法によって測定された平均粒径が、44μm以下であることが好ましいことが示された。
【実施例3】
【0038】
本実施例3では、バイオマス燃焼灰を酸化カルシウムによって代替する際の好適な割合を特定する実験を行った。具体的には、上述した実施例1で使用した有機汚泥とバイオマス燃焼灰とを重量比で5:5の配合割合で混合したものを基準サンプルとして用意した。また、基準サンプルにおいて、バイオマス燃焼灰を重量比で4:1~0:5の割合で酸化カルシウム(生石灰)に代替したものをそれぞれ作成した。
【0039】
そして、各サンプルについて肥料等試験法で定められた試験法を用いて、水分、窒素、リン酸、カリウム、炭素窒素比(C/N比)、銅、亜鉛、石灰の含有量(%)を分析した。その結果を図5に示す。図5に示すように、現物当たりおよび乾物当たりのいずれの結果を見ても、酸化カルシウムの代替割合によらず、肥料の三要素である窒素の含有量に大きな変化はみられなかった。
【0040】
また、他の二要素であるリン(P)やカリウム(KO)についても、酸化カルシウムの代替割合が2:3(60wt%)までは、ある程度含有されており、肥料として好ましい成分を有していることが確認された。一方、酸化カルシウムの代替割合が1:4(80wt%)になると、リンやカリウムが顕著に減少していることが確認された。
【0041】
以上のような実施例3の結果によれば、バイオマス燃焼灰は、80wt%未満の範囲内で、生石灰等の酸化カルシウム(CaO)によって代替することにより、肥料の三要素を保持しながら、含水率の低減効果を向上できることが示された。
【実施例4】
【0042】
本実施例4では、バイオマス燃焼灰の水素イオン指数を調整する際の硫酸の添加量を特定する実験を行った。具体的には、上述した実施例1で使用したバイオマス燃焼灰に様々な添加率で硫酸を添加した。そして、得られた生成物を10倍の水に投入し、5分間スターラーで混合させた後の液体の水素イオン指数を測定した。その結果を図6に示す。
【0043】
図6に示すように、バイオマス燃焼灰に対する硫酸の添加率が11wt%以下の場合、水素イオン指数が9を超えており、バイオマス燃焼灰は依然としてアルカリ性を示していることが確認された。一方、バイオマス燃焼灰に対する硫酸の添加率が12wt%以上の場合、水素イオン指数が8.5以下となり、バイオマス燃焼灰は中性域にまで中和されていることが確認された。
【0044】
ただし、上述したとおり、硫酸を添加しすぎると原料コストがかかる。この点、バイオマス燃焼灰に対する硫酸の添加率が29wt%の場合、水素イオン指数が7.0のほぼ中性となる。このため、硫酸を29wt%を超えて添加してもアンモニアの発生抑制効果はほぼ変わらないといえる。
【0045】
以上のような実施例4の結果によれば、バイオマス燃焼灰の水素イオン指数を調整する際、12~29wt%の硫酸を添加することにより、pHを所望の中性域に低減できることが示された。
【0046】
なお、本発明に係る肥料の製造方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0047】
例えば、上述した本実施形態では、アンモニアの発生を抑制するための事前処理として、アンモニア発生抑制工程(ステップS1)およびpH調整工程(ステップS2)を実行している。しかしながら、含水率調整工程(ステップS3)のみによって製造された肥料中に、所定の窒素成分が含有されている場合は、アンモニア発生抑制工程(ステップS1)やpH調整工程(ステップS2)を実行しなくてもよい。
【要約】
【課題】簡単かつ低コストでありながら、手軽に散布しやすい肥料を速やかに製造することができる肥料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る肥料の製造方法は、下水処理または排水処理の過程で生じる有機汚泥と、バイオマスの燃焼灰であるバイオマス燃焼灰との重量全体を10とした場合、有機汚泥の重量比を1超9未満の配合割合で混合することにより、含水率を8%超65%未満に調整する含水率調整工程を有する。また、前記有機汚泥の重量比を3~6の配合割合で混合することにより、含水率を22~43%に調整することがより好ましい。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6