(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/165 20200101AFI20241129BHJP
G01L 1/14 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G01L5/165
G01L1/14 L
(21)【出願番号】P 2021004229
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508282568
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 隆介
(72)【発明者】
【氏名】ミルザ サキーブ サーウォー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン ディー ダブリュー マッデン
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-015976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0157353(US,A1)
【文献】特開2016-167252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0093500(US,A1)
【文献】特開2017-049094(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080924(WO,A1)
【文献】特開2012-242210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0052640(US,A1)
【文献】特開2010-217967(JP,A)
【文献】特開2015-049848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0038877(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0078937(KR,A)
【文献】森成一郎、上里将史、島崎祐輔、中村達也,産業用タッチパネルの高性能化,三菱電機技報,日本,三菱電機株式会社,2017年6月号,pp.357-360,https://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/giho/2017/06/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/14,5/00-5/28
G06F 3/041,3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型センサを備えた計測装置であって、
前記静電容量型センサは、
誘電体から成る弾性変形可能な基材と、
前記基材の外部で該基材の表面に接近し得る外部物体との間の静電容量を自己容量方式で検出し得るように、前記基材に接した状態で配置された少なくとも1つの自己容量方式用電極と、
前記基材の厚み方向において前記自己容量方式用電極よりも該基材の表面から遠ざかる側に該自己容量方式用電極と離隔し、且つ該基材に接した状態で配置された少なくとも1つの第1電極と、
前記基材の厚み方向において前記第1電極よりも該基材の表面から遠ざかる側に該第1電極と離隔し、且つ、該第1電極との間に前記基材を介在させて該基材に接した状態で配置されると共に、該第1電極との間隔方向で見たとき、該第1電極と重なる部分を有するように配置された少なくとも1つの第2電極とを備えており、
前記自己容量方式用電極は、前記自己容量方式での静電容量の計測用の第1接続部と、接地された第2接続部とに選択的に接続され得るように、スイッチを介して該第1接続部及び該第2接続部に接続されており、
前記スイッチと、
前記自己容量方式用電極が前記スイッチを介して前記第1接続部に接続された状態で、該自己容量方式用電極と前記外部物体との間の静電容量を自己容量方式で計測する第1計測部と、
前記自己容量方式用電極が前記スイッチを介して前記第2接続部に接続された状態で、前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量を計測する第2計測部と、
前記スイッチの切換制御を行う制御部とをさらに備え
、
前記自己容量方式用電極は、前記第1電極と前記第2電極との間隔方向で、前記基材の表面側から見たとき、該第1電極及び該第2電極の全体を覆うように配置されていることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
請求項
1記載の計測装置において、
前記制御部は、前記スイッチの切換を前記自己容量方式用電極と前記第1接続
部又は前記第2接続部との接続を周期的に切り換えるように前記スイッチの切換制御を行うように構成され、
前記第1計測部及び前記第2計測部は、それぞれの計測処理を周期的に実行するように構成されていることを特徴とする計測装置。
【請求項3】
請求項
2記載の計測装置において、
前記制御部は、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記第1計測部及び前記第2計測部によりそれぞれ計測された静電容量のうちの少なくとも一方の静電容量の計測値に基づいて、前記基材の表面への前記外部物体の継続的な非接触状態であるか否かを判断する第1判断処理を実行し、該第1判断処理の判断結果が肯定的である場合には、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記自己容量方式用電極を前記第1接続部に接続する時間幅を、該第1判断処理の判断結果が否定的である場合よりも長くするように構成されていることを特徴とする計測装置。
【請求項4】
請求項
3記載の計測装置において、
前記制御部は、前記第1判断処理の判断結果が肯定的である場合には、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記自己容量方式用電極を前記第1接続部に接続する時間幅を、前記第2接続部に接続する時間幅よりも長くするように構成されていることを特徴とする計測装置。
【請求項5】
請求項
2~4のいずれか1項に記載の計測装置において、
前記制御部は、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記第1計測部及び前記第2計測部によりそれぞれ計測された静電容量のうちの少なくとも一方の静電容量の計測値に基づいて、前記基材の表面への前記外部物体の継続的な接触状態であるか否かを判断する第2判断処理を実行し、該第2判断処理の判断結果が肯定的である場合には、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記自己容量方式用電極を前記第2接続部に接続する時間幅を、該第2判断処理の判断結果が否定的である場合よりも長くするように構成されていることを特徴とする計測装置。
【請求項6】
請求項
5記載の計測装置において、
前記制御部は、前記第2判断処理の判断結果が肯定的である場合には、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記自己容量方式用電極を前記第2接続部に接続する時間幅を、前記第1接続部に接続する時間幅よりも長くするように構成されていることを特徴とする計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型センサを備えた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に見られるように、コンデンサを構成する第1電極と第2電極との間に弾性変形可能な誘電体を介在させた構造の静電容量型センサが知られている。特許文献1に見られるセンサでは、第1基板に装着された複数の第1電極と、第2基板に装着された複数の第2電極とを有し、センサに垂直抗力やせん断力が作用することで、誘電体が変形し、ひいては、第1電極と第2電極との間の相対変位が生じることによって、第1電極と第2電極との間の静電容量の変化が生じるようになっている。そして、当該センサでは、静電容量の変化に基づいてセンサに作用する垂直抗力とせん断力とを検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者は、誘電体により弾性変形可能に構成される基材(センサの基体)に、第1電極及び第2電極を基材の厚み方向に離隔させて配置する共に、第1電極及び第2電極よりも基材の表面側に、該基材の表面に沿って並ぶように第3電極及び第4電極を配置した構成の静電容量型センサを開発した。
【0005】
この静電容量型センサでは、基材に作用する圧縮力やせん断力等の外力を第1電極及び第2電極の間の静電容量の計測値の変化に基づいて検知し得ると共に、基材の表面への外部物体の接近や、その近接度合いを第3電極及び第4電極の間の静電容量の計測値の変化に基づいて検知することが可能である。
【0006】
この場合、第1電極又は第2電極と、基材の表面に接近する外部物体との間の静電容量が、第1電極及び第2電極の間の静電容量の計測値に誤差を生じさせる要因となることから、第3電極及び第4電極と、第1電極及び第2電極との間に接地された静電遮蔽部材を配置するようにした。
【0007】
しかるに、かかる構成の静電容量型センサでは、第3電極及び第4電極と、静電遮蔽部材と、第1電極と、第2電極とが、基材の表面側から該基材の厚み方向に間隔を存して並ぶことになるため、基材の厚みが大きくなりやすい。ひいては、静電容量型センサの厚みを薄くしたり、小型化することの妨げになりやすい。
【0008】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、外部物体の接近と、外部物体から受ける外力とを検知し得るように構成されていると共に、薄型化や小型化を実現できる静電容量型センサを備えた計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の計測装置は、上記の目的を達成するために、
静電容量型センサを備えた計測装置であって、
前記静電容量型センサは、
誘電体から成る弾性変形可能な基材と、
前記基材の外部で該基材の表面に接近し得る外部物体との間の静電容量を自己容量方式で検出し得るように、前記基材に接した状態で配置された少なくとも1つの自己容量方式用電極と、
前記基材の厚み方向において前記自己容量方式用電極よりも該基材の表面から遠ざかる側に該自己容量方式用電極と離隔し、且つ該基材に接した状態で配置された少なくとも1つの第1電極と、
前記基材の厚み方向において前記第1電極よりも該基材の表面から遠ざかる側に該第1電極と離隔し、且つ、該第1電極との間に前記基材を介在させて該基材に接した状態で配置されると共に、該第1電極との間隔方向で見たとき、該第1電極と重なる部分を有するように配置された少なくとも1つの第2電極とを備えており、
前記自己容量方式用電極は、前記自己容量方式での静電容量の計測用の第1接続部と、接地された第2接続部とに選択的に接続され得るように、スイッチを介して該第1接続部及び該第2接続部に接続されており、
前記スイッチと、
前記自己容量方式用電極が前記スイッチを介して前記第1接続部に接続された状態で、該自己容量方式用電極と前記外部物体との間の静電容量を自己容量方式で計測する第1計測部と、
前記自己容量方式用電極が前記スイッチを介して前記第2接続部に接続された状態で、前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量を計測する第2計測部と、
前記スイッチの切換制御を行う制御部とをさらに備え、
前記自己容量方式用電極は、前記第1電極と前記第2電極との間隔方向で、前記基材の表面側から見たとき、該第1電極及び該第2電極の全体を覆うように配置されていることを特徴とする(第1発明)。
【0010】
かかる第1発明によれば、自己容量方式用電極を第1接続部に接続するようにスイッチを作動させた状態では、基材の表面に接近する外部物体と自己容量方式用電極との間の静電容量を自己容量方式で計測できる。そして、該静電容量の計測値に基づいて、基材の表面への外部物体の接近を検知すること可能となる。
【0011】
また、自己容量方式用電極を第2接続部に接続するようにスイッチを作動させた状態では、該自己容量方式用電極は第2接続部を介して接地された状態になる。このため、自己容量方式用電極を、第1電極又は第2電極と、基材の表面に接近する外部物体との間の静電遮蔽用の部材として機能させることができる。
【0012】
そして、このように自己容量方式用電極を接地させた状態では、第1電極又は第2電極と、基材の表面に接近する外部物体との間の静電容量の影響を低減して、該第1電極及び第2電極の間の静電容量を計測できる。従って、自己容量方式用電極を接地させた状態での第1電極及び第2電極の間の静電容量の計測値に基づいて、基材に接触した外部物体から該基材が受ける外力を適切に検知することが可能となる。
【0013】
さらに、自己容量方式用電極は、スイッチの切換制御によって、外部物体との間の静電容量の計測用の電極としての機能に加えて、第1電極又は第2電極と外部物体との間の静電遮蔽用の部材としての機能を持つため、第1電極又は第2電極と外部物体との間の静電遮蔽用の部材を、自己容量方式用電極と、第1電極及び第2電極との間に別途備える必要がない。
【0014】
よって、第1発明の静電容量型センサを備えた計測装置によれば、外部物体の接近と、外部物体から受ける外力とを検知し得るように構成されていると共に、薄型化や小型化を実現できる。さらに、自己容量方式用電極と外部物体との間の静電容量を第1計測部により計測することと、第1電極と第2電極との間の静電容量を第2計測部により計測することとを、スイッチの切換状態に適合させて実行することができる。
【0016】
これによれば、自己容量方式用電極を接地させるようにスイッチを作動させた状態で、基材の表面に接近する外部物体と、第1電極及び第2電極との間の静電遮蔽を該自己容量方式用電極により適切に実現できる。
【0019】
上記第1発明では、前記制御部は、前記スイッチの切換を前記自己容量方式用電極と前記第1接続部又は前記第2接続部との接続を周期的に切り換えるように前記スイッチの切換制御を行うように構成され、前記第1計測部及び前記第2計測部は、それぞれの計測処理を周期的に実行するように構成されているという態様を採用し得る(第2発明)。
【0020】
これによれば、自己容量方式用電極と外部物体との間の静電容量を第1計測部により計測することと、第1電極と第2電極との間の静電容量を第2計測部により計測することとをタイミングをずらして周期的に実行できる。このため、基材の表面への外部物体の接近状態の変化や、該外部物体から基材に作用する外力の変化を逐次観測することが可能となる。
【0021】
上記第2発明では、前記制御部は、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記第1計測部及び前記第2計測部によりそれぞれ計測された静電容量のうちの少なくとも一方の静電容量の計測値に基づいて、前記基材の表面への前記外部物体の継続的な非接触状態であるか否かを判断する第1判断処理を実行し、該第1判断処理の判断結果が肯定的である場合には、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記自己容量方式用電極を前記第1接続部に接続する時間幅を、該第1判断処理の判断結果が否定的である場合よりも長くするように構成されていることが好ましい(第3発明)。
【0022】
これによれば、基材の表面への外部物体の継続的な非接触状態では、第1計測部により静電容量の計測を行い得る時間幅が、外部物体の継続的な非接触状態でない場合よりも長くなるので、該静電容量(自己容量方式用電極と外部物体との間の静電容量)の計測値の信頼性を高めることが可能となる。このため、該静電容量の計測値から、基材の表面への外部物体の接近状態や、近接度合い等を適切に検知することが可能となる。
【0023】
上記第3発明では、前記制御部は、前記第1判断処理の判断結果が肯定的である場合には、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記自己容量方式用電極を前記第1接続部に接続する時間幅を、前記第2接続部に接続する時間幅よりも長くするように構成され得る(第4発明)。
【0024】
これによれば、スイッチの切換制御の各周期の時間幅のうち、第1計測部により静電容量の計測を行い得る時間幅を極力長くすることができるので、該静電容量(自己容量方式用電極と外部物体との間の静電容量)を、過渡的な影響を極力低減して計測することが可能となり、該静電容量の計測値の信頼性を適切に高めることが可能となる。
【0025】
上記第2~第4発明では、前記制御部は、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記第1計測部及び前記第2計測部によりそれぞれ計測された静電容量のうちの少なくとも一方の静電容量の計測値に基づいて、前記基材の表面への前記外部物体の継続的な接触状態であるか否かを判断する第2判断処理を実行し、該第2判断処理の判断結果が肯定的である場合には、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記自己容量方式用電極を前記第2接続部に接続する時間幅を、該第2判断処理の判断結果が否定的である場合よりも長くするように構成されていることが好ましい(第5発明)。
【0026】
これによれば、基材の表面への外部物体の継続的な接触状態では、第2計測部により静電容量の計測を行い得る時間幅が、外部物体の継続的な接触状態でない場合よりも長くなるので、該静電容量(第1電極と第2電極との間の静電容量)の計測値の信頼性を高めることが可能となる。このため、該静電容量の計測値から、基材の表面への外部物体の接近状態や、近接度合い等を適切に検知することが可能となる。
【0027】
上記第5発明では、前記制御部は、前記第2判断処理の判断結果が肯定的である場合には、前記スイッチの周期的な切換制御の各周期において、前記自己容量方式用電極を前記第2接続部に接続する時間幅を、前記第1接続部に接続する時間幅よりも長くするように構成され得る(第6発明)。
【0028】
これによれば、スイッチの切換制御の各周期の時間幅のうち、第2計測部により静電容量の計測を行い得る時間幅を極力長くすることができるので、該静電容量(第1電極と第2電極との間の静電容量)を、過渡的な影響を極力低減して計測することが可能となり、該静電容量の計測値の信頼性を適切に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態の静電容量型センサを平面視で示すと共に、該静電容量型センサを含む計測装置の全体構成を示す図。
【
図3】
図3A及び
図3Bはそれぞれ、基材への外部物体の接触・非接触の状態の第1の例と、該第1の例に対応するスイッチの切換制御のパターンとを示す図。
【
図4】
図4A及び
図4Bはそれぞれ、基材への外部物体の接触・非接触の状態の第2の例と、該第2の例に対応するスイッチの切換制御のパターンとを示す図。
【
図5】
図5A及び
図5Bはそれぞれ、基材への外部物体の接触・非接触の状態の第3の例と、該第3の例に対応するスイッチの切換制御のパターンとを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態を
図1~
図5Bを参照して以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態の計測装置は、静電容量型センサ1(以降、単にセンサ1ということがある)と、スイッチ10と、計測処理部20とを備える。センサ1は、基材2、第1電極3(3(1),3(2),3(3),3(4))、第2電極4、及び自己容量方式用電極5を備える。なお、
図1では、基材2の一部を点描部で示し、残部の外形を二点鎖線で示している。また、自己容量方式用電極5の一部を実線で示し、残部の外形を二点鎖線で示している。
【0031】
基材2は、センサ1の基体を構成するものであり、弾性変形可能な誘電体により構成されている。例えば、基材2は、ポリ塩化ビニル(PVC)のゲル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいは、これらの複合材料等から成る柔軟な誘電体により弾性変形可能に構成され得る。
【0032】
本実施形態では、基材2は、ほぼ一定の厚みを有する形状、例えば、直方体形状に形成されている。そして、
図2に示すように、基材2の厚み方向の両面2a,2bのうちの一方の面2b(以降、基材2の裏面2bという)が、任意の取付対象物体Wの表面に固着される。
【0033】
例えば、センサ1を接触力等を検知するための触覚センサとして使用する場合、基材2の裏面2bは、ロボットハンド等の取付対象物体Wの表面に固着され得る。この場合、基材2の厚み方向の他方の面2a(以降、基材2の表面2aという)は、外界物Aとの接触面となる。
【0034】
第1電極3、第2電極4、及び自己容量方式用電極5は、いずれも導体により構成される。例えば、第1電極3、第2電極4、及び自己容量方式用電極5のそれぞれは、炭素、銀、金、液体金属等の金属、チオフェン系導電性高分子、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等の導電性樹脂、あるいは、これらの複合材料から成る導体により構成され得る。
【0035】
センサ1は、第1電極3及び第2電極4をそれぞれ1つ以上備える。本実施形態では、センサ1は、例えば、4つの第1電極3(1),3(2),3(3),3(4)と、1つの第2電極4とを備える。
【0036】
第2電極4は、少なくとも一部が基材2に接した状態で配置されている。具体的には、本実施形態では、第2電極4は、例えば方形板状に形成されている。そして、第2電極4は、
図2に示すように、基材2の厚み方向における裏面2b寄りの位置で、基材2の表裏面2a,2bと平行な姿勢で基材2の内部に埋設されている。従って、第2電極4は、その外表面のほぼ全体が基材2に接した状態で配置されている。ただし、例えば、第2電極4の厚み方向の両面のうち、基材2の裏面2b側の面の全体もしくは一部が、基材2の外方に露出されていてもよい。
【0037】
以降の説明では、便宜上、
図1及び
図2に示すように、基材2の厚み方向をZ軸方向とする3軸直交座標系(XYZ座標系)Csを想定し、基材2の厚み方向をZ軸方向と称する場合がある。また、当該座標系CsのX軸方向及びY軸方向については、Z軸方向で見た第2電極4の4つの辺のうち、互いに平行な2つの辺の延在方向(
図1では紙面の左右方向)をX軸方向、他の2つの辺の延在方向(
図1では紙面の上下方向)をY軸方向と定義する。
【0038】
4つの第1電極3(1)~3(4)のそれぞれは、いずれも、少なくとも一部が基材2に接し、且つ、第2電極4との間に基材2を介在させた状態で該第2電極4からZ軸方向(基材2の厚み方向)に離隔して配置されていると共に、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれの一部が第2電極4と重なるように配置されている。
【0039】
具体的には、本実施形態では、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれは、例えば、第2電極4よりも面積が小さい所定サイズの方形板状に形成されている。そして、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれは、基材2の表面2a寄りのZ軸方向位置で、基材2の表裏面2a,2bと平行な姿勢(Z軸方向に直交する姿勢)で基材2の内部に埋設されている。
【0040】
これにより、各第1電極3(1)~3(4)は、そのほぼ全体が基材2に接し、且つ、第2電極4との間に基材2を介在させた状態で該第2電極4からZ軸方向に離隔して配置されている。従って、Z軸方向は、換言すれば、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと、第2電極4との間の間隔方向である。また、第2電極4は、Z軸方向において、第1電極3(1)~3(4)よりも基材2の表面2aから遠ざかる側に第1電極3(1)~3(4)と離隔して配置されていることになる。また、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれは、本実施形態では、基材2に埋設されているので、各第1電極3(1)~3(4)のほぼ全体が基材2に接している。
【0041】
第1電極3(1)~3(4)は、さらに詳細には、第2電極4とZ軸方向に一定の間隔を有し、且つ、基材2の表面2a側からZ軸方向で見たとき、第2電極4の4つの辺のそれぞれの中央部上に各々位置するように配置されている。また、各第1電極3(1)~3(4)は、基材2の表面2a側からZ軸方向で見たとき、その4つの辺のうちの互いに平行な2つの辺がX軸方向及びY軸方向の一方の軸方向に延在し、他の2つの辺が他方の軸方向に延在するように配置されている。そして、各第1電極3(1)~3(4)は、基材2の表面2a側からZ軸方向で見たとき、その一部が第2電極4に重なり、残部が第2電極4の外方に張り出すように配置されている。
【0042】
上記のように第1電極3(1)~3(4)と第2電極4とが基材2に配置されているので、各第1電極3(1)~3(4)と第2電極4との重なり部分(Z軸方向で見たときの重なり部分)は、該重なり部分の間に誘電体である基材2を有するコンデンサを構成する。この場合、各第1電極3(1)~3(4)と第2電極4との重なり部分に構成されるコンデンサは、その重なり部分の面積と、間隔(Z軸方向の間隔)とに応じた静電容量を有する。
【0043】
そして、基材2にX軸方向のせん断力が作用すると、そのせん断力の大きさに応じて、第1電極3(1)~3(4)が第2電極4に対して相対的にX軸方向に変位するように基材2が弾性変形する。このため、第1電極3(1)~3(4)のうち、X軸方向に並ぶ2つの第1電極3(1),3(3)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の面積が変化し、ひいては、該第1電極3(1),3(3)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量が変化する。このとき、Y軸方向に並ぶ2つの第1電極3(2),3(4)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の面積は変化しないので、該第1電極3(2),3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量はほぼ一定に保たれる。
【0044】
また、基材2にY軸方向のせん断力が作用すると、そのせん断力の大きさに応じて、第1電極3(1)~3(4)が第2電極4に対して相対的にY軸方向に変位するように基材2が弾性変形する。このため、第1電極3(1)~3(4)のうち、Y軸方向に並ぶ2つの第1電極3(2),3(4)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の面積が変化し、ひいては、該第1電極3(2),3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量が変化する。このとき、X軸方向に並ぶ2つの第1電極3(1),3(3)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の面積は変化しないので、該第1電極3(1),3(3)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量はほぼ一定に保たれる。
【0045】
また、基材2にZ軸方向の荷重(圧縮力又は引っ張り力)が作用すると、その荷重の大きさに応じて、第1電極3(1)~3(4)が第2電極4に対して相対的にZ軸方向に変位するように基材2が弾性変形する。このため、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との重なり部分のZ軸方向の間隔が変化し、ひいては、該第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量が変化する。
【0046】
以上のように第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の静電容量が、X軸方向及びY軸方向の2軸方向のせん断力、あるいは、Z軸方向の荷重により基材2に発生する弾性変形に応じて変化する。このため、それらの静電容量を計測することで、該静電容量の計測値から、基材2の弾性変形量(応力ひずみ)や、基材2に作用した2軸方向(X軸方向及びY軸方向)のせん断力、もしくはZ軸方向の荷重を計測することが可能となる。
【0047】
このような計測を行うために、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極のそれぞれは、基材2の外部の計測処理部20に、配線6(1)~6(5)のそれぞれを介して接続されている。これらの配線6(1)~6(5)は、それぞれ、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれと同様の導体により構成され、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれから適宜の配線パターンで基材2の内部を通って該基材2の外部に引き出されている。
【0048】
この場合、配線6(1)~6(5)の材質は、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれと同一材質、あるいは、異なる材質のいずれであってもよい。また、配線6(1)~6(5)のそれぞれは、基材2の内部の部分と外部の部分とが異なる材質の導体で構成されていてもよい。また、配線6(1)~6(5)のそれぞれの、基材2の外部の部分の全体もしくは一部は、例えば、回路基板に形成された配線であってもよい。
【0049】
自己容量方式用電極5は、第1電極3(1)~3(4)よりも基材2の表面2a寄りのZ軸方向位置で、少なくとも一部が基材2に接した状態で配置されている。具体的には、本実施形態では、自己容量方式用電極5は、例えば方形板状に形成されている。そして、自己容量方式用電極5は、
図2に示すように、第1電極3(1)~3(4)よりも基材2の表面2a寄りのZ軸方向位置で、基材2の表裏面2a,2bと平行な姿勢(Z軸方向に直交する姿勢)で基材2の内部に埋設されている。
【0050】
従って、自己容量方式用電極5は、その外表面のほぼ全体が基材2に接した状態で配置されている。ただし、例えば、自己容量方式用電極5の厚み方向の両面のうち、基材2の表面2a側の面の全体もしくは一部が、基材2の外方に露出されていてもよい。
【0051】
該自己容量方式用電極5は、上記のように基材2に配置されているので、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4よりも基材2の表面2a側に位置する。このため、任意の外部物体A(基材2の外部の物体)が、基材2の外部で基材2の表面2aに接近した場合、自己容量方式用電極5と外部物体Aとの間に、該外部物体Aの基材2の表面に対する近接度合いに応じて変化する静電容量を有するコンデンサが形成され得る。そして、該静電容量は、自己容量方式用電極5を介して、公知の自己容量方式で検出することが可能である。
【0052】
なお、自己容量方式用電極5は、第1電極3(1)~3(4)よりも基材2の表面2a側で、第1電極3(1)~3(4)から離隔して配置されているので、第1電極3(1)~3(4)は、自己容量方式用電極5よりも基材2の表面2aから遠ざかる側で、自己容量方式用電極5と離隔して配置されていることになる。
【0053】
図1に示すように、自己容量方式用電極5は、基材2の外部に設けられたスイッチ10に配線6(6)に接続されている。配線6(6)は、前記配線&(1)~6(6)と同様の導体により構成され、自己容量方式用電極5から基材2の内部を通って、基材2の外部に引き出されている。
【0054】
スイッチ10は、自己容量方式用電極5の接続先として、自己容量方式での静電容量の計測用の第1接続部10aと、基材2の外部の接地箇所に接地された第2接続部10bとを有し、配線6(5)を介して接続された自己容量方式用電極5を、第1接続部10a及び第2接続部10bのいずれか一方に選択的に接続し得るように構成されている。かかるスイッチ10は、例えば半導体スイッチ、リレー等により構成され、計測処理部20により切換制御を行い得るように計測処理部20に接続されている。また、スイッチ10の第1接続部10aは、配線6(7)を介して計測処理部20に接続されている。配線6(7)は、前記配線6(1)~6(6)の、基材2の外部の部分と同様に構成され得る。
【0055】
計測処理部20は、図示しない電源回路、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路等を含む。なお、計測処理部20は、スイッチ10を含んでいてもよい。
【0056】
そして、計測処理部20は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、スイッチ10の切換制御を行う制御部21としての機能と、自己容量方式用電極5と、基材2の表面2aに接近する外部物体Aとの間の静電容量を計測する処理を実行する第1計測部22としての機能と、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量を計測する処理を実行する第2計測部23としての機能とを有する。
【0057】
制御部21は、詳細な説明は後述するが、自己容量方式用電極5を、第1接続部10aに接続することと、第2接続部10bに接続することとを一定の周期で交互に行うようにスイッチ10の切換制御を行うことが可能である。
【0058】
第1計測部22は、スイッチ10が、第1接続部10a側に制御されている状態(自己容量方式用電極5が第1接続部10aに接続されている状態)で、自己容量方式用電極5と計測処理部20の接地部との間に計測用の電圧を印加することと、該電圧の印加時に、自己容量方式用電極5と外部物体Aとの間の静電容量に応じた検出信号を生成することとを行い、該検出信号から自己容量方式で静電容量を計測し得るように構成されている。
【0059】
この場合、自己容量方式用電極5と外部物体Aとの間の静電容量は、基材2の表面2aに外部物体Aが接近するに伴い大きくなる。このため、該静電容量の計測値から、基材2の表面2aへの外部物体Aの近接度合いを検知することが可能である。また、例えば、該静電容量の計測値が所定の閾値を超えたときに、基材2の表面2aへの外部物体Wの接触を検知することが可能である。
【0060】
第2計測部23は、、スイッチ10が、第2接続部10b側に制御されている状態(自己容量方式用電極5が第2接続部10bに接続され、ひいては、接地されている状態)で、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間に計測用の電圧を印加することと、各第1電極3(1)~3(4)への電圧の印加時に、各第1電極3(1)~3(4)と第2電極4との間の静電容量に応じた検出信号を生成することとを行い、該検出信号から各第1電極3(1)~3(4)と第2電極4との間の静電容量を計測し得るように構成されている。
【0061】
この場合、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量は、前記したように、基材2に作用するせん断力やZ軸方向の荷重による該基材2の弾性変形に応じて変化するので、該静電容量の計測値から、基材2に作用するせん断力やZ軸方向の荷重の大きさ及び向きを検出することが可能である。
【0062】
また、第2計測部23による静電容量の計測は、自己容量方式用電極5がスイッチ10を介して接地された状態で行われると共に、当該接地される自己容量方式用電極5は、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4の全体を覆うように配置されている。このため、外部物体Aが基材2の表面2aに近接した状態、もしくは接触した状態であっても、自己容量方式用電極5は、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4と、外部物体Aとの間の静電遮蔽部材として機能する。
【0063】
その結果、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量の計測値が、外部物体Aと、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれ、あるいは第2電極4との間の静電容量のの影響を受けて変化するのが防止される。ひいては、第2計測部23による静電容量の計測値の信頼性(基材2の弾性変形に応じて変化する静電容量としての信頼性)を高めることができる。
【0064】
次に、スイッチ10の切換制御について、より具体的に説明する。計測処理部20の制御部21は、自己容量方式用電極5を、第1接続部10aに接続することと第2接続部10bに接続することとを一定の周期で交互に行うように、制御部21によりスイッチ10の切換制御を行いながら、各周期において第1計測部22及び第2計測部23により計測される静電容量の計測値を取得する。
【0065】
そして、制御部21は、基材2の表面2a(接触面)への外部物体Aの継続的な非接触状態であるか否かを判断する第1判断処理と、基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な接触状態であるか否かを判断する第2判断処理とを周期的に実行する。
【0066】
ここで、基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な非接触状態というのは、より詳しくは、所定の時間幅の期間内で、基材2の表面2aに外部物体Aが接触していない状態が継続的に維持された状態である。同様に、基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な接接触状態というのは、より詳しくは、所定の時間幅の期間内で、基材2の表面2aに外部物体Aが接触している状態が継続的に維持された状態である。そして、上記所定の時間幅の期間は、本実施形態では、例えば、スイッチ10の切換制御の1周期の所定数倍(2倍以上)の時間幅の期間である。
【0067】
なお、基材2の表面2aへの外部物体Aの非接触状態は、該外部物体Aが基材2の表面2aから離れている状態だけでなく、外部物体Aと基材2との間の接触力が十分に微小なもの(≒0)となる状態で該外部物体Aが基材2の表面2aに軽く接した状態を含み得る。
【0068】
制御部21は、上記第1判断処理及び第2判断処理を実行するために、スイッチ10の切換制御の各周期で、基材2の表面2aに外界物体Aが接触しているか否かを判断する処理を、第1計測部22により計測された静電容量と、第2計測部23により計測された静電容量とのうちの少なくとも一方の静電容量の計測値に基づいて、次のように実行する。
【0069】
例えば、制御部21は、スイッチ10の切換制御の各周期の期間のうち、スイッチ10を第1接続部10a側に制御している期間において、第1計測部22により計測された静電容量(自己容量方式用電極5と外部物体Aとの間の静電容量)の計測値を所定の閾値(以降、第1閾値という)と比較し、該静電容量の計測値が第1閾値よりも大きい場合に、基材2の表面2aに外界物体Aが接触していると判断し、該静電容量の計測値が第2閾値よりも小さい場合に、基材2の表面2aに外界物体Aが接触していないと判断する。
【0070】
あるいは、制御部21は、スイッチ10の切換制御の各周期の期間のうち、スイッチ10を第2接続部10b側に制御している期間において、第2計測部23により計測された静電容量(第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量)の計測値から、基材2へのZ軸方向の荷重(基材2の圧縮方向の荷重)を推定し、該Z軸方向の荷重の推定値を所定の閾値(以降、第2閾値という)と比較する。そして、制御部21は、該Z軸方向の荷重が第2閾値よりも大きい場合に、基材2の表面2aに外界物体Aが接触していると判断し、該Z軸方向の荷重が第2閾値よりも小さい場合に、基材2の表面2aに外界物体Aが接触していないと判断する。
【0071】
あるいは、制御部21は、第1計測部22により計測された静電容量の計測値と、第2計測部23により計測された静電容量の計測値との両方に基づいて、基材2の表面に外界物体Aが接触しているか接触していないかを判断することも可能である。
【0072】
例えば、スイッチ10の切換制御の各周期において、第1計測部22による静電容量の計測値が前記第1閾値よりも大きく、且つ、第2計測部23による静電容量の計測値から推定したZ軸方向の荷重(基材2の圧縮方向の荷重)が前記第2閾値よりも大きい場合に、基材2の表面2aに外界物体Aが接触していると判断し、それ以外の場合には、基材2の表面2aに外界物体Aが接触していないと判断してもよい。
【0073】
あるいは、スイッチ10の切換制御の各周期において、第1計測部22による静電容量の計測値が前記第1閾値よりも小さく、且つ、第2計測部23による静電容量の計測値から推定したZ軸方向の荷重(基材2の圧縮方向の荷重)が前記第2閾値よりも小さい場合に、基材2の表面2aに外界物体Aが接触していないと判断し、それ以外の場合には、基材2の表面2aに外界物体Aが接触していると判断してもよい。
【0074】
制御部21は、スイッチ10の切換制御の各周期において、上記の如く、基材2の表面2aに外界物体Aが接触しているか接触していないかを判断する処理を実行し、さらに、その判断結果を用いて、前記第1判断処理及び第2判断処理を実行する。
【0075】
この場合、制御部21は、前記第1判断処理では、例えば
図3Aに示す如く、スイッチ10の切換制御の1周期の所定数倍の時間幅の期間(例えば4周期分の期間)の各周期において外界物体Aが基材2の表面2aに接触していないと判断された場合に、基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な非接触状態であると判断する(第1判断処理の判断結果が肯定的であると決定する)。そして、それ以外の場合には、制御部21は、第1判断処理の判断結果が否定的である(基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な非接触状態ではない)と決定する。
【0076】
また、制御部21は、前記第2判断処理では、例えば
図4Aに示す如く、スイッチ10の切換制御の1周期の上記所定数倍の時間幅の期間(例えば4周期分の期間)の各周期において、外界物体Aが基材2の表面2aに接触していると判断された場合に、基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な接触状態であると判断する(第2判断処理の判断結果が肯定的である決定する)。そして、それ以外の場合には、制御部21は、第2判断処理の判断結果が否定的である(基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な接触状態ではない)と決定する。
【0077】
従って、例えば、
図5Aに示す如く、外界物体Aが基材2の表面2aに接触しているという判断と、外界物体Aが基材2の表面2aに接触してないという判断とが、いずれも、スイッチ10の切換制御の1周期の上記所定数倍の時間幅の期間(例えば4周期分の期間)で、連続しない場合には、第1判断処理の判断結果と第2判断処理の判断結果との両方が否定的であると決定される。
【0078】
そして、制御部21は、第1判断処理及び第2判断処理の判断結果に基づいて、スイッチ10の以降の切換制御の各周期において、スイッチ10を第1接続部10a側に制御する期間(自己容量方式用電極5をスイッチ10を介して計測処理部20に接続する期間)の時間幅と、第2接続部10b側に制御する期間(自己容量方式用電極5をスイッチ10介して接地する期間)の時間幅とを決定する。
【0079】
具体的には、制御部21は、第12判断処理の判断結果が肯定的である場合(基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な非接触状態であると判断された場合)には、
図3Bに例示する如く、スイッチ10の以降の切換制御の各周期ΔTの期間において、スイッチ10を第1接続部10a側に制御する期間の時間幅Taを、スイッチ10を第2接続部10b側に制御する期間の時間幅Tbよりも長くするように、これらの時間幅Ta,Tbをあらかじめ定められた所定値に決定する。
【0080】
これにより、第1計測部22により、自己容量方式用電極5と外部部材aとの間の静電容量を計測し得る時間幅(=Ta)が長くなる。このため、自己容量方式用電極5と外部部材aとの間の静電容量を、過渡的な変動の影響を適切に低減して計測することができ、該静電容量の計測値の信頼性を高めることができる。ひいては、基材2の表面2aへの外部物体Aの接近や、その近接度合いの検知精度を高めることができる。
【0081】
なお、上記のようにTa>Tbとなるように時間幅Ta,Tbを設定した状態では、外部物体Aが基材2の表面2aに接触しているか接触していないかの判断を、第1計測部22による静電容量の計測値だけに基づいて、あるいは、該静電容量の計測値を主たる参照データとして用いて、行うようにしてもよい。
【0082】
また、制御部21は、第2判断処理の判断結果が肯定的である場合(基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な接触状態であると判断された場合)には、
図4Bに例示する如く、スイッチ10の以降の切換制御の各周期ΔTの期間において、スイッチ10を第2接続部10b側に制御する期間の時間幅Tbを、スイッチ10を第1接続部10a側に制御する期間の時間幅Taよりも長くするように、これらの時間幅Ta,Tbをあらかじめ定められた所定値に決定する。
【0083】
これにより、第2計測部23により、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極との間の静電容量を計測し得る時間幅(=Tb)が長くなる。このため、基材2の表面2aに外部物体Aが接触した状態で、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極との間の静電容量を、過渡的な変動の影響を適切に低減して計測することができ、該静電容量の計測値の信頼性を高めることができる。ひいては、外部物体Aから基材2に作用するZ軸方向の荷重やせん断力の検知精度を高めることができる。
【0084】
なお、上記のようにTa<Tbとなるように時間幅Ta,Tbを設定した状態では、外部物体Aが基材2の表面2aに接触しているか、接触していないかの判断を、第2計測部23による静電容量の計測値から推定されるZ軸方向の荷重だけに基づいて、あるいは、該荷重の推定値を主たる参照データとして用いて、行うようにしてもよい。
【0085】
また、制御部21は、第1判断処理の判断結果と第2判断処理の判断結果との両方が否定的である場合には、
図5Bに例示する如く、スイッチ10を第1接続部10a側に制御する期間の時間幅Taを、第1判断処理の判断結果が肯定的である場合よりも短い時間幅に設定すると共に、スイッチ10を第2接続部10b側に制御する期間の時間幅Tbを、第2判断処理の判断結果が肯定的である場合よりも短い時間幅に設定する。例えば、制御部21は、時間幅Ta,Tbを両方とも、1周期ΔTの半分の時間幅(=ΔT/2)に決定する。
【0086】
これにより、第1計測部22による静電容量の計測値と、第2計測部23による静電容量の計測値との信頼性をバランスよく確保することができる。このため、第1判断処理の判断結果と第2判断処理の判断結果との両方が否定的になる状況から、基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な非接触状態又は継続的な接触状態のいずれの状態に変化しても、その変化後の状態を第1判断処理及び第2判断処理のいずれかの判断処理により適切に検知することができる。
【0087】
なお、第1判断処理の判断結果と第2判断処理の判断結果との両方が否定的である場合の時間幅Ta,Tbは、互いに異なる時間幅に設定されてもよい。例えば、第1計測部22による静電容量の計測処理の必要時間と、第2計測部23による静電容量の計測処理の必要時間との違い等を反映させて、時間幅Ta,Tbを互いに異なる時間幅に設定してもよい。
【0088】
本実施形態では、以上説明した如く、スイッチ10の切換制御が周期的に行われる。この場合、スイッチ10の切換制御の各周期のうち、スイッチ10を第1接続部10a側に制御する期間(自己容量方式用電極5を計測処理部20の接続する期間)の時間幅Taは、第1判断処理の判断結果が肯定的である場合(基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な非接触状態であると判断される場合)には、該判断結果が否定的である場合よりも長い時間幅(>ΔT/2)に設定される。このため、第1計測部22による、自己容量方式用電極5と外部物体Aとの間の静電容量の計測値の信頼性を高めることができ、ひいては、基材2の表面2aへの外部物体Aの接近や、その近接度合いの検知精度を高めることができる。
【0089】
また、スイッチ10の切換制御の各周期のうち、スイッチ10を第2接続部10b側に制御する期間(自己容量方式用電極5を接地する期間)の時間幅Tbは、第2判断処理の判断結果が肯定的である場合(基材2の表面2aへの外部物体Aの継続的な接触状態であると判断される場合)には、該判断結果が否定的である場合よりも長い時間幅(>ΔT/2)に設定される。このため、第2計測部23による、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量の計測値の信頼性を高めることができ、ひいては、外部物体Aから基材2に作用するZ軸方向の荷重やせん断力の検知精度を高めることができる。
【0090】
また、スイッチ10の切換制御によって、自己容量方式用電極5は、外部物体Aとの間の静電容量を自己容量方式で計測するための電極としての機能と、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4と外部物体Aとの間の静電遮蔽用の部材としての機能とを併せもつことができる。このため、これらの機能を、各別の部材で実現するようにセンサを構成する場合に比べて、本実施形態のセンサ1の厚みを薄くできると共に、該センサ1の構成要素を低減できる。このため、センサ1の小型化を図ることができる。
【0091】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に、他の実施形態をいくつか例示する。
例えば、前記実施形態のセンサ1は、第2電極4は単一の電極であるが、該第2電極4は、複数の電極に分割されていてもよい。
【0092】
また、前記実施形態のセンサ1では、第1電極3を4つの電極により構成すると共に、第2電極4を単一の電極により構成したが、例えば、これと逆に、第1電極を単一の電極により構成し、第2電極を4つの電極により構成してもよい。
【0093】
また、前記実施形態のセンサ1では、第1電極3(3(1)~3(4))を基材2の表面2a側、第2電極4を基材2の裏面2b側に配置したが、これと逆に、第1電極3(3(1)~3(4)を基材2の裏面2b側、第2電極4を基材2の表面2a側に配置してもよい。
【0094】
また、前記実施形態のセンサ1では、X軸方向及びY軸方向の2軸方向のせん断力と、Z軸方向の荷重とを計測し得るように第1電極3(3(1)~3(4))及び第2電極4センサ1を配置したが、例えば1軸方向のせん断力と、Z軸方向の荷重とを計測し得るように第1電極3及び第2電極4が配置されていてもよい。
【0095】
例えば、前記センサ1から、Y軸方向に並ぶ第1電極3(2),3(4)とこれらに接続された配線6(2),6(4)を除去することで、X軸方向のせん断力と、Z軸方向の荷重とを計測し得るように第1電極3(1),3(3)及び第2電極4を配置したセンサを構成できる。
【0096】
また、例えば、第2電極4よりも小さい面積を有する板状の第1電極を第2電極4の中央部にZ軸方向で対向させて配置することで、Z軸方向の荷重だけを計測し得るように第1電極及び第2電極を配置したセンサを構成できる。
【符号の説明】
【0097】
1…静電容量型センサ、2…基材、3(3(1)~3(4))…第1電極、4…第2電極、5……自己容量方式用電極5、10…スイッチ、10a…第1接続部、10b…第2接続部、21…制御部、22…第2計測部、23…第2計測部。