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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20241129BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/34 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021073642
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167682
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】512041296
【氏名又は名称】株式会社名構設計
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】大谷 智▲徳▼
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-348886(JP,A)
【文献】特開2003-049438(JP,A)
【文献】特開2000-248562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/12
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭と、その杭に支持される上部構造と、を備える建築物において、
前記上部構造および杭の間に配設される中間プレートと、その中間プレート及び上部構造の間に配設されるエネルギー吸収鋼材と、前記中間プレート及び杭の間に配設される接続手段と、を備え、
前記エネルギー吸収鋼材は、前記杭および接続手段よりも水平方向の曲げ剛性が低く構成され、前記上部構造および中間プレートに接続され、
前記接続手段は、前記杭の外径と略同一の外径の円筒状に形成され前記中間プレートおよび前記杭に接続される同径部と、その同径部の内周面に接続され前記同径部と前記杭との接続部から前記中間プレート側に離れた位置に配設される補強部とを備え、
前記補強部は、複数の板部材から構成され、それら板部材の一側の側端面を前記中間プレート側に向けた姿勢で配設され、
前記複数の板部材は、前記一側が前記中間プレートに接続され、前記一側の側端面の少なくとも一部が前記杭の軸方向視において前記エネルギー吸収鋼材と前記中間プレートとの接続部に重なる位置に配設されることを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記補強部は、前記一側の側端面の少なくとも一部が、前記杭の軸方向視における前記エネルギー吸収鋼材と略同一の形状および大きさに構成されることを特徴とする請求項1記載の建築物。
【請求項3】
前記補強部は、前記杭の軸方向視において前記複数の板部材を直交する方向に交差させた格子状に配設して構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に関し、特に、杭の上端側が部分的に変形することを抑制できる建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、杭とその杭に支持される上部構造との間に金属製のエネルギー吸収鋼材を介在させ、地震や風の水平力が建築物に作用する際には、エネルギー吸収鋼材を変形させることで杭頭部にかかる曲げモーメントを低減する建築物がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-49438号公報(段落0012~0017及び図1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の建築物では、エネルギー吸収鋼材が杭の外径よりも細く形成される。従って、地震や風の水平力が建築物に作用した際には、エネルギー吸収鋼材が接続される杭の上端の一部にエネルギー吸収鋼材を介して杭に伝わる力が集中する。そのため、杭の上端の鉄板が部分的に変形するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、杭の上端側が部分的に変形することを抑制できる建築物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の建築物は、杭と、その杭に支持される上部構造と、を備えるものであり、前記上部構造および杭の間に配設される中間プレートと、その中間プレート及び上部構造の間に配設されるエネルギー吸収鋼材と、前記中間プレート及び杭の間に配設される接続手段と、を備え、前記エネルギー吸収鋼材は、前記杭および接続手段よりも水平方向の曲げ剛性が低く構成され、前記上部構造および中間プレートに接続され、前記接続手段は、前記杭の外径と略同一の外径の円筒状に形成され前記中間プレートおよび前記杭に接続される同径部と、その同径部の内周面に接続され前記同径部と前記杭との接続部から前記中間プレート側に離れた位置に配設される補強部とを備え、前記補強部は、複数の板部材から構成され、それら板部材の一側の側端面を前記中間プレート側に向けた姿勢で配設され、前記複数の板部材は、前記一側が前記中間プレートに接続され、前記一側の側端面の少なくとも一部が前記杭の軸方向視において前記エネルギー吸収鋼材と前記中間プレートとの接続部に重なる位置に配設される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の建築物によれば、接続手段は、杭の外径と略同一の外径の円筒状に形成され中間プレートおよび杭に接続される同径部と、その同径部の内周面に接続され同径部と杭との接続部から中間プレート側に離れた位置に配設される補強部とを備え、補強部は、複数の板部材から構成され、それら板部材の一側の側端面を中間プレート側に向けた姿勢で配設され、複数の板部材は、一側が中間プレートに接続され、一側の側端面の少なくとも一部が杭の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材と中間プレートとの接続部に重なる位置に配設されるので、杭の軸方向視において、接続手段(同径部)と杭との接続部に対し、接続手段(補強部)と中間プレートとの接続部の少なくとも一部が、エネルギー吸収鋼材と中間プレートとの接続部に近い位置に配設される。従って、接続手段(補強部)の中間プレート側の接続部よりも、接続手段(同径部)の杭側の接続部を杭の軸芯から径方向に離れた位置に設けることができる。そのため、エネルギー吸収鋼材が杭に接続される場合に比べて、接続手段と杭との接続領域を大きくできる。よって、エネルギー吸収鋼材が杭に接続される場合に比べて、地震や風の水平力が建築物に作用した際に、杭の上端側が接続手段から力を受ける領域を大きくできる。その結果、接続手段を介して伝わる力が杭の上端側の一部に集中することを抑制でき、杭の上端側が部分的に変形することを抑制できる。
【0008】
なお、同径部は、杭の外径と略同一の外径の円筒状に形成されるので、杭の上端に配設される接続手段(同径部)と杭との接続領域を最大にできる。よって、地震や風の水平力が建築物に作用した際に、杭の上端側が接続手段(同径部)から力を受ける領域を最大にできる。その結果、接続手段を介して伝わる力が杭の上端側の一部に集中することを抑制でき、杭の上端側が部分的に変形することを抑制できる。
【0009】
請求項記載の建築物によれば、複数の板部材は、一側が中間プレートに接続され、一側の側端面の少なくとも一部が杭の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材と中間プレートとの接続部に重なる位置に配設されるので、接続手段(補強部)と中間プレートとの接続部から、エネルギー吸収鋼材と中間プレートとの接続部までの水平方向の距離を最短にできる。よって、中間プレートに上下方向の力が作用する位置(力点)から、中間プレートが接続手段(補強部)に接続される位置(支点)までの水平方向の距離を最短にできる。その結果、中間プレートに作用する上下方向の曲げモーメントが大きくなることを抑制でき、中間プレートが曲がることを抑制できる。
【0010】
請求項1記載の建築物によれば、同径部および補強部が中間プレートに接続されるので、エネルギー吸収鋼材の水平方向外側で中間プレートを同径部により支持することができる。そのため、杭の軸に対してエネルギー吸収鋼材の配設位置が水平方向にずれたとしても、エネルギー吸収鋼材の変形に伴って中間プレートに作用する上下方向の力で中間プレートが曲がることを抑制できる
【0011】
請求項1記載の建築物によれば、補強部は、同径部と杭との接続部から中間プレート側に離れた位置に配設されるので、杭の埋設深さがずれて杭頭部が所定の高さに配設されていない場合に、同径部の杭の軸方向一方側(補強部が配設されていない側)を切断して、杭に支持される上部構造の配設高さを調整できる。また、補強部が同径部と杭との接続部から中間プレート側に離れた位置に配設されているので、同径部を切断した際に、接続手段の同径部以外の部分(補強部)が切断されることを抑制できる。よって、接続手段を伝わる力の伝わり方が接続手段の切断前後で変わることを抑制できる。その結果、接続手段の切断後に、杭の上端側が部分的に変形しやすくなることを抑制できる。
【0012】
請求項記載の建築物によれば、請求項記載の建築物の奏する効果に加え、補強部は、一側の側端面の少なくとも一部が、杭の軸方向視におけるエネルギー吸収鋼材と略同一の形状および大きさに構成されるので、接続手段(同径部)の外形と、エネルギー吸収鋼材との外形の形状が異なる場合であっても、補強部により、杭の軸方向視において接続手段と中間プレートとの接続部をエネルギー吸収鋼材と中間プレートとの接続部に重なる位置に配設できる。よって、エネルギー吸収鋼材の外形形状の自由度を向上することができ、設計の自由度を向上できる。
【0013】
請求項3記載の建築物によれば、請求項1又は2に記載の建築物の奏する効果に加え、補強部は、杭の軸方向視において複数の板部材を直交する方向に交差させた格子状に配設して構成されるので、補強部の強度を確保できる。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、第1実施形態における建築物の断面模式図であり、(b)は、図1(a)のIb-Ib線における建築物の断面模式図である。
図2】(a)は、第2実施形態における建築物の断面模式図であり、(b)は、第3実施形態における建築物の断面模式図である。
図3】(a)は、第4実施形態における建築物の断面模式図であり、(b)は、第5実施形態における建築物の断面模式図である。
図4】(a)は、第6実施形態における建築物の断面模式図であり、(b)は、図4(a)のIVb-IVb線における建築物の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態における建築物10について説明する。図1(a)は、第1実施形態における建築物10の断面模式図であり、図1(b)は、図1(a)のIb-Ib線における建築物10の断面模式図である。
【0024】
なお、図1(a)では、地盤に建築物10が建築された状態において、建築物10を杭20の軸芯に沿って切断した断面が模式的に図示される。また、図1(b)では、中間プレート50の下面に接続(溶接)される接続手段40の上端面42が破線で図示される。さらに、図1では、後述する杭20、上部構造30、接続手段40、中間プレート50、及び、エネルギー吸収鋼材60がそれぞれ溶接により接続されており、それぞれの接続部に形成される溶接痕を含めた状態の断面が図示される。なお、図2から図4においても図1と同様に溶接痕を含めた状態の断面が図示される。
【0025】
図1に示すように、第1実施形態における建築物10は、地盤の所定の深さに埋設される杭20と、その杭20に支持される上部構造30と、杭20の上部に配設される接続手段40と、その接続手段40の上部に配設される中間プレート50と、中間プレート50及び上部構造30の間に配設されるエネルギー吸収鋼材60と、を備える。
【0026】
上部構造30は、金属製のH型鋼、角型鋼管、又は、丸形鋼管などの一般的な型鋼から形成される複数の柱31及び複数の梁32を備え、長手方向を上下方向に向けた状態で配設される複数の柱31に、長手方向を水平方向に向けた状態で地盤よりも上方側に配設される複数の梁32を接続することで構成される。
【0027】
また、柱31は、梁32が接続される部分と梁32が非接続とされる部分との境界で上下方向に分割され、その分割部分に鉄板から形成されるダイアフラム33が配設される。なお、梁32は、柱31とダイアフラム33とに接続される。これにより、地震や風の水平力が建築物10に作用して、梁32から柱31に水平方向の力が伝達される場合に柱31が変形することを抑制できる。
【0028】
なお、本実施形態では、ダイアフラム33を柱31の分割部分に配設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ダイアフラム33を鋼管から形成される柱31の内側に配設しても良く、ダイアフラム33を柱31の外面に沿って配設しても良い。また、ダイアフラム33を備えず梁32が柱31の外面のみに接続されるものであっても良い。
【0029】
杭20は、既製品のSC杭から形成され、地盤内の所定の深さまで埋設される杭本体21と、その杭本体21の杭頭側の端部に配設される天プレート22とを主に備えて形成される。杭本体21は、円筒状に形成される金属製の丸形鋼管23と、その丸形鋼管23の内面に沿って所定の厚みで配設されるコンクリート24とを備える。
【0030】
接続手段40は、鋼管から形成され、軸方向を杭20の軸方向と一致させた状態で配設される。また、接続手段40は、後述する中間プレート50の下面に接続される上端面42と、杭20の天プレート22の上面に接続される下端面43と、それら上端面42及び下端面43とを繋ぐと共に、外形の形状が円錐台に形成され内部に外形よりも径方向における寸法が一回り小さい円錐台の空間を有する拡径部41とを備える。
【0031】
接続手段40は、拡径部41により、上端面42の外径が下端面43の外径よりも小さくされ、上端面42から下端面43までが略一定の厚みとされる。また、接続手段40は、中間プレート50及び杭20に接続される前の状態において、接続手段40(拡径部41)の上端および下端に溶接時の開先を備える。接続手段40は、上端および下端の開先が溶接により埋められることで、中間プレート50に接続される上端面42が接続手段40の上端に形成され、杭20に接続される下端面43が接続手段40の下端に形成される。
【0032】
さらに、接続手段40の下端は、接続手段40から杭20に力が伝達される際に杭20との溶接部が破損しないように、杭20に接続される前の状態(即ち、溶接により下端面43が形成される前の状態)において、杭20の外径よりも小さい外径に形成される。これにより、接続手段40の下端を杭20の上端に接続する溶接部の厚み(杭20の径方向(図1(a)左右方向)における寸法)を確保して、接続手段40と杭20との溶接部が破損することを抑制できる。
【0033】
なお、接続手段40が杭20に接続され、溶接により下端面43が形成された後では、下端面43の外径が杭20の外径と略同一の外径に設定される。接続手段40の下端面43の外径が杭20の外径と「略同一」とは、杭20の外径に対し±1%の範囲の領域内に下端面43の外周縁が収容されることである。また、以下の記載でする「略同一」との記載についても同様の意味である。
【0034】
また、接続手段40の製造方法は、円筒形状の鋼管を、その鋼管の軸を中心に回転させると共に径方向外側から内側に向かって外周面を押圧して変形させることで円錐台の外形形状に形成される。また、接続手段40は、この製造方法に限られるものではなく、例えば、円柱体の内外を削り出して形成しても良いし、円筒形状の鋼管を円錐台形の金型に装着すると共にプレス機によりプレスして形成しても良い。
【0035】
中間プレート50は、接続手段40とエネルギー吸収鋼材60とを接続するための部材であり、金属製の鉄板から形成され、一対の平坦面を水平方向と平行にした状態で配設される。また、中間プレート50は、杭20の軸方向視において正方形状に形成され、対角線の長さが、杭20の直径よりも小さく設定されると共に後述するエネルギー吸収鋼材60の対角線の長さよりも大きく設定される。なお、中間プレート50には、上面側に後述するエネルギー吸収鋼材60の下端面62が接続されると共に、下面側に接続手段40の上端面42が接続される。
【0036】
エネルギー吸収鋼材60は、4枚の鉄板を角型鋼管の形状に組み合わせると共に、それぞれの隣り合う各鉄板同士を接続することで形成される。また、エネルギー吸収鋼材60は、角型鋼管の形状に形成され開口する両端の開口部同士を結ぶ方向を杭20の軸方向と一致させた状態で配設される。
【0037】
なお、エネルギー吸収鋼材60がダイアフラム33及び中間プレート50に接続される前の状態では、エネルギー吸収鋼材60の上端および下端に溶接時の開先を備える。エネルギー吸収鋼材60は、上端および下端の開先が溶接により埋められることで、ダイアフラム33に接続される上端面63がエネルギー吸収鋼材60の上端に形成され、中間プレート50に接続される下端面62がエネルギー吸収鋼材60の下端に形成される。
【0038】
また、第1実施形態におけるエネルギー吸収鋼材60は、杭20の軸方向視において下端面62の外縁側の対角線の距離が接続手段40の上端面42の外径よりも大きく設定され、下端面62の内縁側の対角線の距離が接続手段40の上端面42の内径よりも小さく設定される。これにより、杭20の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材60の下端面62の四隅の角部と、接続手段40の上端面42とが重なる状態とされる。
【0039】
なお、第1実施形態では、杭20の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材60の四隅の角部と、接続手段40の上端面42とが重なる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、杭20の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材60と接続手段40の上端面42とが中間プレート50を介して少なくとも一部で重なる状態とされれば、接続手段40の上端面42の外径を他の値にしても良い。即ち、接続手段40の上端面42の外径をエネルギー吸収鋼材60の対向する一対の鉄板の対向面同士の間の距離と略同一とする大きさから、接続手段40の上端面42の内径をエネルギー吸収鋼材60の外縁側の対角線の距離と略同一とする大きさまでの間で接続手段40の上端面42の外径を変更可能とされる。
【0040】
次いで、建築物10の建築方法について説明する。第1実施形態における建築物10は、初めに杭20が地盤の所定の深さまで打ち込まれる(埋設される)。その後、中間プレート50に上端面42が接続された状態の接続手段40が杭20の天プレート22の上面に配設され、接続手段40の下端面43と杭20の天プレート22とが接続される。
【0041】
なお、接続手段40を中間プレート50や杭20に接続する際には、接続手段40の上端および下端のそれぞれに、接続手段40の上端および下端のそれぞれの内縁に沿う外縁形状に形成される円環状のリング部材(図示しない)が、接続手段40と中間プレート50及び杭20とのそれぞれの接続部の内側に配設され、接続手段40の上端および下端に形成される開先を介して、リング部材と共に接続手段40が中間プレート50及び杭20に溶接される。
【0042】
また、接続手段40の上端を中間プレート50の下面に接続する際には、接続手段40の上端の外縁に沿う内縁形状に形成される円環状のリング部材(図示しない)を接続手段40と中間プレート50との接続部の外側に配設し、接続手段40の内側に形成した開先を介して、リング部材と共に接続手段40と中間プレート50とを溶接しても良い。
【0043】
次に、中間プレート50の上面側にエネルギー吸収鋼材60を配設して、中間プレート50の上面とエネルギー吸収鋼材60の下端面62とを接続すると共に、エネルギー吸収鋼材60の上方側にダイアフラム33を配設して、エネルギー吸収鋼材60の上端面63とダイアフラム33の下面とを接続する。その後、ダイアフラム33に柱31及び梁32が接続され、建築物10が建築される。
【0044】
なお、エネルギー吸収鋼材60を中間プレート50やダイアフラム33に接続する際には、エネルギー吸収鋼材60の上端の内縁に沿う外縁形状に形成される角型の環状部材(図示しない)がそれぞれの接続部の内側に配設され、エネルギー吸収鋼材60の上端及び下端に形成される開先を介して、角型の環状部材と共にエネルギー吸収鋼材60が中間プレート50及びダイアフラム33に溶接される。
【0045】
また、建築物10の建築方法は、上記の建築方法に限られるものではなく、例えば、中間プレート50に、接続手段40だけでなくエネルギー吸収鋼材60及びダイアフラム33を接続した状態で、接続手段40を杭20に接続しても良い。
【0046】
以上のように建築される建築物10によれば、杭20の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材60の対向する一対の鉄板の外側面同士の間の距離が杭20の外径よりも小さく形成され、水平方向におけるエネルギー吸収鋼材60の曲げ剛性が杭20の水平方向の曲げ剛性よりも小さく形成される。
【0047】
これにより、地震や風の水平力が建築物10に作用した際には、エネルギー吸収鋼材60を杭20よりも先に変形させることができる。その結果、地震や風の水平力が建築物10に作用した際に、杭20の杭頭部に作用する曲げモーメントを低減することができる。
【0048】
ここで、杭20の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材60の対向する一対の鉄板の外側面同士の間の距離が杭20の外径よりも小さく形成される(即ち、エネルギー吸収鋼材60が杭20よりも細く形成される)ものでは、エネルギー吸収鋼材60の下端面62を杭20の天プレート22に接続した場合に、杭20とエネルギー吸収鋼材60との接続領域(杭20の軸方向視において杭20にエネルギー吸収鋼材60が重なる領域)が小さくなる。そのため、地震や風の水平力が建築物10に作用した際には、エネルギー吸収鋼材60が接続される杭20の上端の一部にエネルギー吸収鋼材60から杭20に伝わる力が集中して、杭20の天プレート22が部分的に変形する恐れがあった。
【0049】
これに対し、本実施形態では、中間プレート50を介してエネルギー吸収鋼材60の下方側に、円錐台の外形に形成される拡径部41を有する接続手段40が配設される。これにより、エネルギー吸収鋼材60の下端面62が杭20の天プレート22に接続される場合に比べて、杭20と接続手段40との接続領域を大きくできる。その結果、接続手段40を介して伝わる力が杭20の天プレート22の一部に集中することを抑制でき、杭20の天プレート22が部分的に変形することを抑制できる。
【0050】
また、エネルギー吸収鋼材60が中間プレート50を介して接続手段40の上側に配設されるので、杭20の天プレート22に接続される接続手段40の形状および太さを変更すれば杭20の天プレート22が部分的に変形することを抑制でき、杭20の天プレート22が部分的に変形することを抑制するためにエネルギー吸収鋼材60の形状および太さを変更する必要がない。従って、エネルギー吸収鋼材60の水平方向の曲げ剛性を杭20および接続手段40の水平方向の曲げ剛性よりも小さくしやすくできる。その結果、地震や風の水平力が建築物に作用した場合には、エネルギー吸収鋼材60を変形させて杭頭部にかかる曲げモーメントを低減しやすくできる。
【0051】
さらに、上記したように、エネルギー吸収鋼材60は、4枚の鉄板を組み合わせて形成されるので、4枚の各鉄板の板厚および幅寸法を変更して、エネルギー吸収鋼材60の外形寸法および高さ寸法を変更することができる。
【0052】
即ち、エネルギー吸収鋼材60が既製品の鋼管から形成される場合には、その外形や板厚が既製品の値に設定されるところ、第1実施形態のエネルギー吸収鋼材60は、4枚の鉄板を組み合わせて形成されるので、エネルギー吸収鋼材60の外形寸法および高さ寸法を変更しやすくできる。そのため、エネルギー吸収鋼材60の曲げ剛性を設計上の必要な値に設定できる。その結果、地震や風の水平力が建築物10に作用する際に、エネルギー吸収鋼材60が塑性変形や座屈することを抑制できると共に、エネルギー吸収鋼材60を弾性変形させて杭20の杭頭部にかかる曲げモーメントを低減できる。
【0053】
また、第1実施形態における建築物10では、中間プレート50を介して接続手段40の上側にエネルギー吸収鋼材60を配設するので、地震や風の水平力が建築物10に作用した際に、エネルギー吸収鋼材60から中間プレート50に上下方向の力が作用する。そのため、中間プレート50が上下方向に曲がるという新たな問題が生じる恐れがある。
【0054】
これに対し、第1実施形態における建築物10では、円錐台の外形に形成される拡径部41を接続手段40が有し、杭20の軸方向視において、接続手段40の上端面42と中間プレート50の下面との接続部が、エネルギー吸収鋼材60の下端面62と中間プレート50の上面との接続部と少なくとも一部で重なる状態とされるので、接続手段40の上端面42と中間プレート50の下面との接続部から、エネルギー吸収鋼材60の下端面62と中間プレート50の上面との接続部までの水平方向の距離を最短にできる。
【0055】
よって、エネルギー吸収鋼材60を介して中間プレート50に上下方向の力が作用する位置から、中間プレート50が接続手段40に接続される位置までの水平方向の距離を最短にできる。その結果、エネルギー吸収鋼材60を介して中間プレート50に作用する上下方向の曲げモーメントが大きくなることを抑制でき、中間プレート50が曲がることを抑制できる。
【0056】
また、第1実施形態における建築物10では、接続手段40が円錐台形の外形に形成される拡径部41を有するので、地震や風の水平力が建築物10に作用することにより接続手段40に上下方向の力が作用する場合に、その上下方向の力を拡径部41で水平方向に分散できる。従って、上下方向の力を水平方向に分散する分、接続手段40を介して杭20の天プレート22に作用する上下方向の力を弱めることができる。その結果、杭20の天プレート22が上下方向に変形することを抑制しやすくできる。
【0057】
さらに、拡径部41の下端面43は、杭20の外径と略同一の外径に設定されるので、杭20の天プレート22に配設される接続手段40の下端面と杭20の天プレート22との接続領域を最大にできる。
【0058】
よって、エネルギー吸収鋼材60の下端面62が杭20の天プレート22に接続される場合に比べて、地震や風の水平力が建築物10に作用する際に、杭20の天プレート22が接続手段40から力を受ける領域を大きくできる。その結果、接続手段40を介して伝わる力が杭20の天プレート22の一部に集中することを抑制でき、杭20の天プレート22が部分的に変形することを抑制できる。
【0059】
また、第1実施形態における建築物10では、接続手段40が円錐台形の外形に形成される拡径部41を有するので、既製品の杭から形成される杭20の天プレート22の上面に別途鉄板を配設しなくても、接続手段40を杭20に配設することができる。
【0060】
即ち、一般的に既製品のSC杭やPHC杭などは、遠心力を利用してコンクリート内に残る気泡を排除しコンクリートを締め固めると共に、コンクリート中の余剰な水分を脱水して成形される。そのため、既製品の杭は中空形状に形成される。
【0061】
従って、エネルギー吸収鋼材60が杭20に接続される場合には、杭20の軸芯に形成される円柱状の空間の分、エネルギー吸収鋼材60を杭20に接続する領域を確保することが困難となる。そのため、この場合には、天プレート22の上面に別の鉄板を配設して、その鉄板に接続手段40を接続する必要があり、別の鉄板を配設する分、建築物10の建築作業が複雑になるという問題が生じる。
【0062】
これに対し、第1実施形態における建築物10では、接続手段40が円錐台形の外形に形成される拡径部41を有するので、杭20が既製品の杭から形成され、軸芯に円柱状の空間が形成される場合であっても、接続手段40の下端面43を杭20の天プレート22に接続することができる。その結果、建築物10の建築作業を簡易にできる。
【0063】
また、接続手段40が円錐台形の外形に形成される拡径部41を有するので、地震や風の水平力が建築物10に作用することにより接続手段40に力が作用する場合に、その力が接続手段40の一部に集中することを抑制できる。
【0064】
例えば、外径が異なる2種類の円筒形状の鋼管を軸方向に並設すると共に、それら2種類の鋼管を径方向に広がる円板型の板部材で接続して接続手段が形成される場合には、接続手段に力が作用した際に、2種類の鋼管とそれら2種類の鋼管を接続する板部材との接続部に力が集中する。そのため、接続手段が破損しやすくなる。
【0065】
これに対し、拡径部41が中間プレート50から杭20に向かって拡径されるので、接続手段40に力が作用した際に、その力が接続手段40の一部に集中することを抑制できる。その結果、接続手段40が破損することを抑制できる。
【0066】
次いで、図2(a)を参照して、第2実施形態における建築物210について説明する。上記第1実施形態では、接続手段40の拡径部41の下端面43が杭20の天プレート22に接続される場合について説明したが、第2実施形態では、接続手段240の同径部244の下端面244aが杭20の天プレート22に接続される場合について説明する。なお、上記した第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0067】
図2(a)は、第2実施形態における建築物210の断面模式図である。なお、図2(a)では、図1(a)に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0068】
図2(a)に示すように、第2実施形態における建築物210は、地盤の所定の深さに埋設される杭20と、その杭20に支持される上部構造30と、杭20の上部に配設される接続手段240と、鉄板から形成され接続手段240の上部に配設される中間プレート50と、その中間プレート50及び上部構造30(図1(a)参照)の間に配設されるエネルギー吸収鋼材60と、を備える。
【0069】
接続手段240は、上端側の外径が下端側の外径よりも小さい円錐台の外形の鋼管から形成される拡径部41と、その拡径部41の下端側の外径と略同一の外径に形成されると共に拡径部41の下端に接続される円筒形の同径部244とを主に備える。
【0070】
同径部244は、杭20に支持される上部構造30(図1(a)参照)の配設高さを調整する部分であり、杭20の外径と略同一の外径に形成されると共に、杭20の軸方向に延設される。また、同径部244は、杭20の天プレート22の上面に接続される下端面244aと、拡径部41の下端面43に接続される上端面244bとを備える。
【0071】
なお、同径部244が杭20に接続される前の状態では、同径部244の下端に溶接時の開先を備える。同径部244は、下端の開先が溶接により埋められることで、杭20に接続される下端面244aが同径部244の下端に形成される。
【0072】
第2実施形態における接続手段240は、拡径部41の下端面43と同径部244の上端面244bとが接続され、1の部材として形成される。拡径部41と同径部244との接続時には、拡径部41の下端の内縁に沿う外縁形状に形成される円環状のリング部材(図示しない)が、拡径部41と同径部244との接続部の内側に配設され、拡径部41の下端に形成される開先を介して、リング部材と共に拡径部41が同径部244に溶接される。この場合、拡径部41の下端に形成される開先が溶接により埋められ、拡径部41の下端に同径部244の上端面244bに接続される下端面43が形成される。
【0073】
なお、第2実施形態における接続手段240は、拡径部41と同径部244とが別部材から形成されるものでなくても良い。例えば、拡径部41と同径部244とを合わせた軸方向長さに切断した筒状部材の一端側の外径を小さくすることで、拡径部41と同径部244とを同一の部材から形成するものであっても良い。
【0074】
次いで、第2実施形態における建築物210の建築方法について説明する。第2実施形態における建築物210は、杭20を地盤に打設した後、杭20の杭頭部の配設高さを計測し、その計測高さに応じて接続手段240の同径部244が切断される。
【0075】
次に、接続手段240を拡径部41の上端面42に接続された中間プレート50と共に杭20の天プレート22に接続する。なお、中間プレート50の上面側にエネルギー吸収鋼材60を接続すると共に、エネルギー吸収鋼材60の上端面63とダイアフラム33を接続する工程については、上記第1実施形態と同一であるため詳しい説明は省略する。
【0076】
以上のように建築される第2実施形態における建築物210によれば、第1実施形態にける建築物10の奏する効果に加え、同径部244を切断して、接続手段240の上部に配設される上部構造30(図1(a)参照)の配設高さを調整できる。
【0077】
この場合、第1実施形態のように拡径部41の下端面43が杭20の天プレート22に接続されるものである場合には、拡径部41を切断した際に拡径部41の下端面43の外径が変化する。そのため、杭20の軸に対して拡径部41の軸を同軸上に配置できたとしても、杭20に対する接続手段40の下端面43の接続位置が接続手段40の切断量によって杭20の径方向に変化する。よって、杭20の地盤への埋設深さのばらつきにより接続手段40から各杭20に伝わる力が異なり、一部の杭20に力が集中するという問題点がある。
【0078】
これに対し、第2実施形態における建築物210では、同径部244を切断して上部構造30の配設高さを調整することができるので、杭20の軸に対して同径部244の軸を同軸上に配置すれば、杭20に対する接続手段240の下端面244aの接続位置を接続手段240の切断前後で同一にできる。その結果、接続手段240から各杭20に伝わる力を同一にすることができ、一部の杭20に力が集中することを抑制できる。
【0079】
次いで、図2(b)を参照して、第3実施形態における建築物310について説明する。上記第1実施形態では、接続手段40の拡径部41の下端面43が杭20の天プレート22に接続される場合について説明したが、第3実施形態では、接続手段340の同径部344の下端面344aが杭20の天プレート22に接続される場合について説明する。なお、上記した各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0080】
図2(b)は、第3実施形態における建築物310の断面模式図である。なお、図2(a)では、図1(a)に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0081】
図2(b)に示すように、第3実施形態における建築物310は、地盤の所定の深さに埋設される杭20と、その杭20に支持される上部構造30と、杭20の上部に配設される接続手段340と、鉄板から形成され接続手段340の上部に配設される中間プレート50と、その中間プレート50及び上部構造30(図1(a)参照)の間に配設されるエネルギー吸収鋼材60と、を備える。
【0082】
接続手段340は、上端側の外径が下端側の外径よりも小さい円錐台の外形の鋼管から形成される拡径部41と、その拡径部41の下端側の少なくとも一部を内嵌する内径の円筒形状に形成される同径部344とを主に備える。
【0083】
同径部344は、杭20に支持される上部構造30(図1(a)参照)の配設高さを調整する部分であり、杭20の外径と略同一の外径に形成されると共に、杭20の軸方向に延設される。また、同径部344は、杭20の天プレート22の上面に接続される下端面344aと、拡径部41の下端面43を超えて中間プレート50側に配置される上端面344bとを備える。
【0084】
また、第3実施形態における接続手段340は、拡径部41の下端面43の外径が同径部344の内径よりも若干小さく形成され、拡径部41の下端側を同径部344の上端側から同径部344の内側に挿入可能とされる。接続手段340の拡径部41は、下端側が同径部344の内側に挿入された状態で、拡径部41の下端側の外周面が同径部344の内周面に溶接により接続される。これにより、拡径部41と同径部344とが一体の部材として形成される。
【0085】
第3実施形態では、第2実施形態における接続手段240と同様に、杭20を地盤に打設した後、杭20の杭頭部の配設高さを計測し、その計測高さに応じて接続手段340の下端部を切断し、接続手段340の上部に配設される上部構造30(図1(a)参照)の配設高さを調整できる。
【0086】
そのため、接続手段340の切断前後で杭20に対する接続手段340の下端面344aの接続位置が水平方向に位置ずれすることを抑制できる。その結果、接続手段240から各杭20に伝わる力を同一にすることができ、一部の杭20に力が集中することを抑制できる。
【0087】
なお、第3実施形態では、接続手段340の同径部344を切断して、接続手段340の上部に配設される上部構造30(図1(a)参照)の配設高さを調整する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第3実施形態では、同径部344の内側に拡径部41の下端側が挿入して配設されるので、同径部344に対する拡径部41の下端側の挿入位置を調整することで、接続手段340の上部に配設される上部構造30(図1(a)参照)の配設高さを調整しても良い。
【0088】
次いで、図3(a)を参照して、第4実施形態における建築物410について説明する。上記第1実施形態では、接続手段40の拡径部41の下端面43が杭20の天プレート22に接続される場合について説明したが、第4実施形態では、接続手段440が拡径部41の下端面43が杭420の杭本体421に接続される場合について説明する。なお、上記した各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0089】
図3(a)は、第4実施形態における建築物410の断面模式図である。なお、図3(a)では、図1(a)に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0090】
図3(a)に示すように、第4実施形態における建築物410は、地盤の所定の深さに埋設される杭420と、その杭420に支持される上部構造30と、杭420の上部に配設される接続手段440と、鉄板から形成され接続手段440の上部に配設される中間プレート50と、その中間プレート50及び上部構造30(図1(a)参照)の間に配設されるエネルギー吸収鋼材60と、を備える。
【0091】
杭420は、鋼管杭であり、地盤の所定の深さまで埋設される丸形鋼管の杭本体421から形成される。
【0092】
接続手段440は、上端側の外径が下端側の外径よりも小さい円錐台の外形の鋼管から形成される拡径部41と、鉄板から形成され拡径部41の下端側に内嵌される拘束部材445とを主に備える。
【0093】
なお、第4実施形態では、杭420に接続される前の状態における接続手段440の内周面から外周面までの板厚と、杭420の杭本体421の内周面から外周面までの板厚とが同等の寸法に形成される。この場合、杭420に接続される前の状態における接続手段440の下端の外径は、接続手段440の下端を杭420の上端に接続する溶接部の厚み(杭420の径方向(図3(a)左右方向)における寸法)を、接続手段440の内周面から外周面までの板厚と同等の寸法分確保できる大きさに設定される。
【0094】
第4実施形態における拘束部材445は、円盤状の鉄板から形成され、外周縁の全域を拡径部41の内周面に当接させた状態で、拡径部41の内周面に接続される。なお、拘束部材445の外周縁の全域を拡径部41の内周面に接続するものでなくても、拡径部41の周方向において断続的に拘束部材445を拡径部41の内周面に接続するものであっても良い。この場合には、拘束部材445と拡径部41との接続部が拡径部41の周方向に沿って均等に設定されることが好ましい。
【0095】
拡径部41の内周面に拘束部材445を接続する際には、拘束部材445の外形と略同一の外形の円環状に形成されるリング部材(図示せず)が拘束部材445の上面と拡径部41との間に配設され、拡径部41の内側が円錐台に形成されることにより拘束部材445の外周面と拡径部41の内周面との間に形成される隙間を介して、リング部材と共に拘束部材445と拡径部41とが溶接される。この場合、拘束部材445の外周面と拡径部41の内周面との間に形成される隙間が溶接により埋められ、拘束部材445の外周面が拡径部41の内周面に沿う形状とされる。
【0096】
ここで、第4実施形態における建築物410では、上記したように杭420が鋼管の杭本体421のみで形成される。また、拡径部41が中間プレート50から杭420に向かって拡径して形成されるので、拡径部41に上方から力が加わると、径方向に広がる方向のスラスト力が拡径部41に作用する。そのため、杭420が鋼管のみで形成される場合には、拡径部41に作用するスラスト力により、拡径部41と共に杭本体421の上端側が水平方向に部分的に変形するという問題点がある。
【0097】
なお、杭本体421の頭部に鉄板を配設して、杭本体421の水平方向への変形を抑制した場合には、杭420を地盤に埋設した後に杭本体421の頭部に鉄板を配設する作業が必要となり、建築物10を建築する現場での作業工程が増えるという問題点がある。
【0098】
これらに対し、第4実施形態では、杭本体421の上端に接続される接続手段440の拡径部41に拘束部材445が配設されるので、拡径部41の水平方向への変形を拘束部材445により抑制できる。その結果、杭本体421の杭頭部に別の鉄板の配設を不要にできると共に、拡径部41の下端面43が接続される杭本体421の上端側が水平方向に部分的に変形することを抑制できる。
【0099】
また、拘束部材445は、拡径部41の内周面に接続されるので、接続手段440を杭420に接続する際に拘束部材445が邪魔になることを抑制できる。その結果、接続手段440と杭20とを接続する際の作業性が悪くなることを抑制できる。
【0100】
なお、拡径部41に対する拘束部材445の配設位置は、拡径部41の上端側よりも下端側に配設されることが好ましい。拡径部41に作用するスラスト力に対して、拡径部41が水平方向に変形することを拘束部材445により抑制しやすくできるからである。
【0101】
次いで、図3(b)を参照して、第5実施形態における建築物510について説明する。上記第1実施形態における建築物10では、杭20に支持される上部構造30の基礎が柱31と梁32とから形成される場合について説明したが、第5実施形態における建築物510では、上部構造530の基礎が鉄筋コンクリートから形成される場合について説明する。なお、上記した各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0102】
図3(b)は、第5実施形態における建築物510の断面模式図である。なお、図3(b)では、図1(a)に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0103】
図3(b)に示すように、第5実施形態に建築物510は、地盤の所定の深さに埋設される杭20と、その杭20に支持される上部構造530と、杭20の上部に配設される接続手段40と、その接続手段40の上部に配設される中間プレート50と、中間プレート50及び上部構造530の間に配設されるエネルギー吸収鋼材60と、を備える。
【0104】
上部構造530は、鉄筋コンクリートから形成されるRC基礎534と、そのRC基礎534の下面に沿って配設されると共に、エネルギー吸収鋼材60の上端面63が接続される支持部材535とを主に備えて形成される。なお、RC基礎534の上方には、柱31及び梁32(図1(a)参照)が接続され上部構造530が構成される。
【0105】
支持部材535は、鉄板から形成される支持部535aと、鉄板から形成され支持部535aの上面に接続される複数の(第5実施形態では4枚)の被埋設部535bとを主に備える。
【0106】
支持部535aは、下面にエネルギー吸収鋼材60の上端面63が接続される部材であり、RC基礎534の下面に沿って杭20の上方側に配設される。支持部535aにエネルギー吸収鋼材60の上端面63が接続されることで、上部構造530がエネルギー吸収鋼材60、中間プレート50、及び、接続手段40を介して杭20に支持される。
【0107】
被埋設部535bは、支持部535aとRC基礎534とを接続するための部材であり、支持部535aの上面からRC基礎534側に向けて突出した状態で配設されると共に、RC基礎534の鉄筋コンクリートに埋め込まれた状態で配設される。
【0108】
なお、被埋設部535bは、支持部535aとRC基礎534とを接続できるものであれば、形状が半円弧状であっても良く、枚数が単数であっても良い。また、被埋設部535bにRC基礎534の鉄筋を連結した上で、RC基礎534のコンクリートを打設して、支持部材535とRC基礎534との接続強度を向上するものであっても良い。
【0109】
次いで、図4を参照して、第6実施形態における建築物610について説明する。上記第1実施形態における建築物10では、接続手段40が円錐台の外形に形成される拡径部41を備えて形成される場合について説明したが、第6実施形態における建築物610では、接続手段640が円錐台の外形に形成される鋼管を備えず、接続手段640が円筒形状の同径部644から主に構成される場合について説明する。なお、上記した各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0110】
図4(a)は、第6実施形態における建築物610の断面模式図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb-IVb線における建築物610の断面模式図である。なお、図4(a)では、図1(a)に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0111】
図4に示すように、第6実施形態における建築物610は、地盤の所定の深さに埋設される杭20と、その杭20に支持される上部構造630と、杭20の上部に配設される接続手段640と、その接続手段640の上部に配設される中間プレート50と、中間プレート50及び上部構造30の間に配設されるエネルギー吸収鋼材60と、を備える。
【0112】
上部構造630は、金属製のH型鋼、角型鋼管、又は、丸形鋼管などの一般的な型鋼から形成される複数の柱31及び複数の梁32を備え、長手方向を上下方向に向けた状態で配設される複数の柱31に、長手方向を水平方向に向けた状態で地盤よりも上方側に配設される複数の梁32を接続することで構成される。
【0113】
また、柱31は、梁32が接続される部分と梁32が非接続とされる部分との境界で上下方向に分割され、その分割部分に鉄板から形成されるダイアフラム33が配設される。なお、梁32は、柱31とダイアフラム33とに接続される。なお、上部構造630の下面に配設され、エネルギー吸収鋼材60の上端面63が接続されるダイアフラム33には、上面に補強部材636が配設され、その補強部材636が角型鋼管から形成される柱31の内部に収容される。
【0114】
補強部材636は、地震や風の水平力が建築物610に作用して、その水平力が上部構造630を介してエネルギー吸収鋼材60に伝達される際に、ダイアフラム33に作用する上下方向の力でダイアフラム33が上下方向に曲がることを抑制する部材であり、杭の軸方向視において、エネルギー吸収鋼材60の上端面と少なくとも一部で重なる位置に配設される。
【0115】
なお、第6実施形態における補強部材636は、後述する接続手段640の補強部材645と同様に、杭20の軸方向視において一方向に延設される一対の鉄板と、一方向と直交する方向に延設される一対の鉄板とを、杭20の軸方向視において略「#」状に組み合わせて形成される。
【0116】
接続手段640は、杭20の外径と略同一の外径の円筒形状に形成され、下端面647が杭20の天プレート22に接続されると共に、上端面648が中間プレート50に接続される同径部644と、その同径部644の中間プレート50側の内周面に接続される補強部材645とを主に備える。
【0117】
補強部材645は、杭20の軸方向視において一方向に延設される一対の第1鉄板645aと、一方向と直交する方向に延設される一対の第2鉄板645bとを、備え、それら一対の第1鉄板645aと一対の第2鉄板645bとが杭20の軸方向視において略「#」状に組み合わせて形成される。
【0118】
なお、補強部材645は、一対の第1鉄板645a又は一対の第2鉄板645bのどちらか一方がそれらの交差部分で分割して形成され、一対の第1鉄板645a又は一対の第2鉄板645bのどちらか他方の対向間および対向間の外側に分割された一対の第1鉄板645a又は一対の第2鉄板645bの一方が配設され、一対の第1鉄板645a及び一対の第2鉄板645bの交差部分が接続される。
【0119】
また、一対の第1鉄板645aの対向方向外側の側面同士の離間距離および一対の第2鉄板645bの対向方向外側の側面同士の離間距離は、杭20の軸方向視において角型鋼管の形状に形成されるエネルギー吸収鋼材60の対向する一対の鉄板の外側面同士の間の距離と略同一に形成される。これにより、杭20の軸方向視において、一対の第1鉄板645aおよび第2鉄板645bが交差されることで形成される角型状の角型部645cが、エネルギー吸収鋼材60と略同一形状、及び、大きさとされる。なお、この場合における略同一とは、杭20の軸方視において、エネルギー吸収鋼材60に対し±1%の範囲の領域内に角型部645cが収容されることである。
【0120】
さらに、補強部材645は、杭20の軸方向視において一方向に向けて延設される一対の第1鉄板645aの両端部と、他方向に向けて延設される一対の第2鉄板645bの両端部とが同径部644の内周面に接続される。また、補強部材645は、上方側の端面645dが中間プレート50の下面に接続される。
【0121】
また、補強部材645は、杭20の軸方向における寸法が同径部644よりも短く形成され、上方側の端面645dが同径部644の上端面648と略同一の高さに配置される。これにより、同径部644の杭20側の内周面間に所定の空間を形成することができる。なお、略同一の高さとは、端面645dと上端面648とを中間プレート50の下面に溶接により接続可能な高さに配設されることである。
【0122】
以上のように形成される第6実施形態における建築物610によれば、第1実施形態における建築物10と同様に、杭20よりも水平方向における曲げ剛性が小さく形成されるエネルギー吸収鋼材60を備えるので、地震や風の水平力が建築物10に作用した際には、エネルギー吸収鋼材60を杭20よりも先に変形させることができる。その結果、地震や風の水平力が建築物10に作用した際に、杭20の杭頭部に作用する曲げモーメントを低減することができる。
【0123】
また、中間プレート50を介してエネルギー吸収鋼材60の下方側に、補強部材645を有する接続手段640が配設される。これにより、エネルギー吸収鋼材60の下端面62が杭20の天プレート22に接続される場合に比べて、杭20と接続手段640との接続領域を大きくできる。その結果、接続手段640を介して伝わる力が杭20の天プレート22の一部に集中することを抑制でき、杭20の天プレート22が部分的に変形することを抑制できる。
【0124】
さらに、第6実施形態における建築物610では、補強部材645の角型部645cが杭20の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材60と略同一の形状、及び、大きさに形成され、中間プレート50の下面に接続されるので、同径部644の外形と、エネルギー吸収鋼材60との外形の形状が異なる場合であっても、補強部材645により、杭20の軸方向視において接続手段640と中間プレート50との接続部をエネルギー吸収鋼材60と中間プレート50との接続部に重なる位置に配設できる。よって、エネルギー吸収鋼材60の外形形状の自由度を向上することができ、設計の自由度を向上できる。
【0125】
また、第6実施形態における接続手段640は、同径部644の杭20側の内面同士が対面されるので、杭20の埋設深さがずれて杭頭部が所定の高さに配設されていない場合に、同径部644の杭20側を切断して、杭20に支持される上部構造630の配設高さを調整できる。
【0126】
また、少なくとも杭20側の内面同士が対面されるので、同径部644を切断した際に、接続手段640の補強部材645が切断されることを抑制できる。よって、接続手段640を伝わる力の伝わり方が同径部644の切断前後で変わることを抑制できる。その結果、同径部644の切断後に、杭20の天プレート22が部分的に変形しやすくなることを抑制できる。
【0127】
さらに、同径部644の上端面648は中間プレート50の下面に接続されるので、エネルギー吸収鋼材60の水平方向外側で中間プレート50を同径部644により支持することができる。そのため、杭20の軸に対してエネルギー吸収鋼材60の配設位置が水平方向にずれたとしても、エネルギー吸収鋼材60の変形に伴って中間プレート50に作用する上下方向の力で中間プレート50が曲がることを抑制できる。
【0128】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0129】
上記第1~第6実施形態では、接続手段40,240,340,440,640の中間プレート50との接続部が、杭20,420の軸方向視においてエネルギー吸収鋼材60と少なくとも一部で重なる状態とされる場合について説明したが、接続手段40,240,340,440,640の中間プレート50との接続部が重ならない状態とされるものであっても良い。
【0130】
例えば、接続手段40,240,340,440,640の中間プレート50との接続部が、杭20,420の軸方向視において、接続手段40,240,340,440,640の杭20,420との接続部よりも、エネルギー吸収鋼材60の中間プレート50との接続部に近い位置に配置されるものであれば良い。これによれば、エネルギー吸収鋼材60が杭20,420に接続される場合に比べて、杭20,420の上端に対する接続手段40,240,340,440,640の接続領域を大きくできるので、接続手段40,240,340,440,640から杭20,420に伝わる力が集中することを抑制できる。その結果、杭20,420の上端側が部分的に変形することを抑制できる。
【0131】
上記第1~第6実施形態では、接続手段40,240,340,440,640の下端側の外径が、杭20,420の外径と略同一に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものでななく、杭20,420の軸方向において接続手段440,240,340,440,640の下端の少なくとも一部が、杭20,420の丸形鋼管23又は杭本体421と重なる位置に配設される範囲内で、杭20,420の外径に対して、接続手段40,240,340,440,640の下端側の外径を変更しても良い。即ち、杭20,420の外径に対して、丸形鋼管23又は杭本体421の板厚の範囲内で接続手段40,240,340,440,640の下端側の外径を変更しても良い。
【0132】
この場合には、丸形鋼管23又は杭本体421の上方で接続手段40,240,340,440,640を杭20,420に接続できる。そのため、接続手段40,240,340,440,640から杭20,420に力が伝わる際に、丸形鋼管23又は杭本体421の鋼管部分に力を伝達することができる。その結果、杭20,420が破損することを抑制できる。
【0133】
また、上記第1~第3、第5、第6実施形態では、接続手段40,240,340,640の下端側の外径が、杭20の外径と略同一に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、接続手段40,240,340,640の下端の外径を、接続手段40,240,340,640の上端の中間プレート50の下面との接続部の外径よりも大きく、かつ、杭20の外径よりも小さく形成しても良い。
【0134】
この場合も同様に、エネルギー吸収鋼材60の下端面62が杭20の天プレート22に接続される場合に比べて、杭20と接続手段40,240,340,640との接続領域を大きくできる。その結果、接続手段40,240,340,640を介して伝わる力が杭20の天プレート22の一部に集中することを抑制でき、杭20の天プレート22が部分的に変形することを抑制できる。
【0135】
上記第1~第5実施形態では、拡径部41の上端面42が中間プレート50の下面に接続される場合について説明したが、拡径部41と中間プレート50との間に円筒形状の別部材が配設されても良い。
【0136】
上記第1~第5実施形態では、接続手段40,240,340,440の拡径部41が円錐台の外形に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、拡径部41の上端側の外径が拡径部41の下端側の外径よりも小さく形成されるものであれば、お椀型のように湾曲して形成されるものであっても良い。
【0137】
また、上記第1~第5実施形態では、接続手段40,240,340,440の拡径部41が円錐台の外形に形成され、拡径部41が上端側から下端側に向けて拡径される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、外径が異なる2種類の円筒形状の鋼管を軸方向に並設すると共に、それら2種類の鋼管を径方向に広がる円板型の板部材で接続して拡径部41を形成しても良い。
【0138】
上記第1~第6実施形態では、エネルギー吸収鋼材60が4枚の板を組み合わせて形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、エネルギー吸収鋼材60をH型鋼、角型鋼管、又は、丸形鋼管などの一般的な型鋼から形成するものであっても良い。また、4枚以外の枚数の鉄板を組み合わせて管状のエネルギー吸収鋼材60を形成するものであっても良い。
【0139】
上記第1~第3、第5、第6実施形態では、杭20が既製品のSC杭から形成され、上記第4実施形態では、杭420が鋼管杭から形成される場合についてそれぞれ説明したが、20,420は、他の杭(例えば、SC杭、PHC杭、鋼管杭、場所打ちコンクリート杭)から形成されて良い。
【0140】
上記第1、第4、第5実施形態では、接続手段40,440が杭20,420に接続される前の状態において、接続手段40,440の下端の外径が杭20,420の外径よりも小さく形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、接続手段40,440が杭20,420に接続される前の状態において、接続手段40,440の下端の外径を杭20,420の外径と略同一に形成すると共に、溶接により形成される下端面43の外径を杭20,420の外径と略同一に形成するものであっても良い。
【0141】
上記第3実施形態では、拡径部41を同径部344に接続する際に、拡径部41の下端側の外周面を同径部344の内周面に接続する場合について説明したが、拡径部41の下端面43を同径部344の内周面に接続しても良い。
【0142】
上記第4実施形態では、杭420に接続される前の状態における接続手段440の内周面から外周面までの板厚と、杭420の杭本体421の内周面から外周面までの板厚とが同等の寸法に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、杭420の杭本体421の内周面から外周面までの板厚を、杭420に接続される前の状態における接続手段440の内周面から外周面までの板厚よりも大きく形成しても良い。
【0143】
上記第4実施形態では、拘束部材445が円盤状の鉄板から形成され、拘束部材445の外縁部の全域が拡径部41の内周面に接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、拘束部材445の一部が拡径部の内周面に接続されるものであっても良い。
【0144】
なお、この場合には、少なくとも拡径部41の内周面を周方向に3等分以上に分割したそれぞれの分割点で拘束部材445が部分的に接続される。これによれば、拘束部材445が拡径部41の内周面に3点以上で接続されるので、拡径部41にスラスト力が作用する場合に、拡径部41が径方向の外側に向かって変形することを拘束部材445により抑制できる。
【0145】
上記第4実施形態では、接続手段440の拡径部41に拘束部材445を配設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、地震や風の水平力が建築物410に作用する際に、杭420の杭本体421や接続手段440の拡径部41が曲がらない設計強度とされる場合には、拡径部41に拘束部材445を配設しなくても良い。
【0146】
また、上記第4実施形態では、拡径部41の内周側に拘束部材445が接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、円環形状に形成される拘束部材445が拡径部41の外周側に接続されるものであっても良い。
【0147】
上記第6実施形態では、補強部材636,645が杭20の軸方向視において、略「#」状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、補強部材636,645が杭20の軸方向視において、十字の形状に形成されるものであっても良く、略「=」状に一対の鉄板が配設されるものであっても良い。
【0148】
上記第6実施形態では、同径部644の上端面648が中間プレート50の下面に接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、補強部材645の端面645dが中間プレート50の下面に接続されれば、同径部644の上端面648を中間プレート50の下面から離れる位置に配置しても良い。
【符号の説明】
【0149】
10 建築物
20,420 杭
30,530 上部構造
40 接続手段
44 同径
45 補強部材(補強部)
645a 第1鉄板(板部材)
645b 第2鉄板(板部材)
645c 角型部(一側の側端面の一部)
645d 上方側の端面(一側の側端面)
50 中間プレート
60 エネルギー吸収鋼材
図1
図2
図3
図4