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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】断熱部材の取付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/18 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
F16L59/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021173357
(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公開番号】P2023063078
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2024-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】鬼山 典久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康介
(72)【発明者】
【氏名】三ツ屋 智弘
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-009770(JP,U)
【文献】特開2009-167683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材に設けられている棒状の固定部材に作業治具を用いて断熱部材を取付ける方法であって、
前記固定部材の先端部には、ねじ部が設けられており、
前記作業治具は、前記固定部材の長さよりも長い細長い形状、かつ少なくとも一方端に開口部を有している長手中空部材であり、
前記断熱部材に設けられている貫通孔に前記作業治具を挿入する治具挿入工程、
前記作業治具が前記貫通孔に挿入されたまま、前記開口部に前記棒状の固定部材が組込まれている状態となるように前記断熱部材を前記棒状の固定部材に取付ける治具組込み断熱部材取付け工程、及び
前記貫通孔に前記棒状の固定部材が挿入された状態が維持されるように前記作業治具を取外す治具取外し工程、を備える断熱部材の取付け方法。
【請求項2】
部材に設けられている棒状の固定部材に作業治具を用いて断熱部材を取付ける方法であって、
前記固定部材の先端部には、ねじ部が設けられており、
前記作業治具は、前記固定部材の長さよりも長い細長い形状、かつ少なくとも一方端に開口部を有している長手中空部材であり、
前記棒状の固定部材が前記作業治具の前記開口部に挿入されている状態となるように前記作業治具を前記棒状の固定部材に取付ける治具取付け工程、
前記棒状の固定部材が前記開口部に挿入されたまま、前記棒状の固定部材が前記断熱部材に設けられている貫通孔に組込まれている状態となるように前記断熱部材を前記棒状の固定部材に取付ける断熱部材取付け工程、及び
前記貫通孔に前記棒状の固定部材が挿入された状態が維持されるように前記作業治具を取外す治具取外し工程、を備える断熱部材の取付け方法。
【請求項3】
部材に設けられている棒状の固定部材に作業治具を用いて断熱部材を取付ける方法であって、
前記作業治具は細長い形状、かつ少なくとも一方端に開口部を有している長手中空部材であり、
前記断熱部材に設けられている貫通孔に前記作業治具を挿入する治具挿入工程、
前記作業治具が前記貫通孔に挿入されたまま、前記開口部に前記棒状の固定部材が組込まれている状態となるように前記断熱部材を前記棒状の固定部材に取付ける治具組込み断熱部材取付け工程、及び
前記貫通孔に前記棒状の固定部材が挿入された状態が維持されるように前記作業治具を取外す治具取外し工程、を備え
前記作業治具は、前記一方端に先細部を有し、
前記先細部は、前記先細部の先端側端部である先細先端部、及び前記先細先端部に対し前記先細部の反対側端部である先細基端部を有し、
前記開口部は前記棒状の固定部材が挿入可能に形成されており、
前記先細部は、先細基端部から先細先端部に向かうにつれて、前記作業治具の長手方向に対し直角方向における前記先細部の外寸が連続的、又は断続的に縮小されて形成されており、
前記先細先端部の前記外寸は、前記棒状の固定部材の長手方向に対し直角方向における前記棒状の固定部材の先端の外寸より小さく形成されている断熱部材の取付け方法。
【請求項4】
部材に設けられている棒状の固定部材に作業治具を用いて断熱部材を取付ける方法であって、
前記作業治具は細長い形状、かつ少なくとも一方端に開口部を有している長手中空部材であり、
前記棒状の固定部材が前記作業治具の前記開口部に挿入されている状態となるように前記作業治具を前記棒状の固定部材に取付ける治具取付け工程、
前記棒状の固定部材が前記開口部に挿入されたまま、前記棒状の固定部材が前記断熱部材に設けられている貫通孔に組込まれている状態となるように前記断熱部材を前記棒状の固定部材に取付ける断熱部材取付け工程、及び
前記貫通孔に前記棒状の固定部材が挿入された状態が維持されるように前記作業治具を取外す治具取外し工程、を備え
前記作業治具は、前記一方端に先細部を有し、
前記先細部は、前記先細部の先端側端部である先細先端部、及び前記先細先端部に対し前記先細部の反対側端部である先細基端部を有し、
前記開口部は前記棒状の固定部材が挿入可能に形成されており、
前記先細部は、先細基端部から先細先端部に向かうにつれて、前記作業治具の長手方向に対し直角方向における前記先細部の外寸が連続的、又は断続的に縮小されて形成されており、
前記先細先端部の前記外寸は、前記棒状の固定部材の長手方向に対し直角方向における前記棒状の固定部材の先端の外寸より小さく形成されている断熱部材の取付け方法。
【請求項5】
前記作業治具は、前記一方端に先細部を有しており、
前記先細部は、前記作業治具の長手方向とのなす角が鋭角となるような平面で切り取られて形成された端面を含んでいる、請求項3又は4に記載された、断熱部材の取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材に設けられている固定部材への断熱部材の取付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電所、製鉄所、ゴミ焼却場等の燃焼装置から排出された排気等の流体を移送するダクトの連結部には、ダクトの熱膨張や振動等を吸収するために伸縮継手が設けられている。特許文献1に開示されている伸縮継手は、伸縮継手の両側のダクトにそれぞれ接続されている1対のフランジ、及び積層されている複数の断熱部材を備えている。断熱部材はフランジの周方向長さに相当する長さに形成されており、伸縮継手の1対のフランジ間において、フランジの周方向に沿って筒状に取付けられて流路の全周を囲っている。
【0003】
1対のフランジには、各々のフランジが対向している側の環状端部の周方向全周において、スタッドボルト類などの固定部材が等間隔に配置されている。断熱部材をフランジに取付ける際には、断熱部材の一方面側にスタッドボルトの先端部を押し当て、他方面側から断熱部材をハンマーでたたいて、断熱部材にスタッドボルトで孔を開けて貫通させる。これを繰り返して、全てのスタッドボルトを断熱部材に貫通させて、断熱部材をフランジに固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-150561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、断熱部材は、柔軟な断熱材を網目状の繊維クロスと金属製デミスターとで包んだ構造のため、ハンマーでたたいて断熱部材にスタッドボルトの先端部で孔を開ける作業は容易ではなく、手間と時間がかかっていた。また、ハンマーによりスタッドボルトの先端部で強引に断熱部材に孔を開けるため、必要以上に大きな孔となる場合があり、ダクト内部の熱が伝達されやすくなる可能性があった。さらに、スタッドボルトの頭を直接ハンマーで打つと、先端部が変形し、押さえ金具、ナットを取付けることができないといった懸念があった。また、断熱部材を垂直に立てて孔開け作業をする際に、スタッドボルトの先端部に押しつけながら孔開け作業をすると、断熱部材の内部の柔軟な断熱材が自重により下方に撓む場合があり、この場合、断熱部材を保持しながら孔開け作業をするため、作業に手間と時間がかかっていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、断熱部材を棒状の固定部材に容易に取付ける方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の断熱部材の取付け方法は、細長い形状、かつ少なくとも一方端に開口部を有している長手中空部材の作業治具を用いて断熱部材を取付ける方法であって、断熱部材に設けられている貫通孔に作業治具を挿入する治具挿入工程、作業治具が貫通孔に挿入されたまま、開口部に棒状の固定部材が組み込まれている状態となるように断熱部材を棒状の固定部材に取付ける治具組込み断熱部材取付け工程、及び貫通孔に棒状の固定部材が挿入された状態が維持されるように作業治具を取外す治具取外し工程を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の断熱部材の取付け方法では、作業治具が断熱部材の貫通孔に挿入されたまま、断熱部材を棒状の固定部材に取付けて、断熱部材の貫通孔に棒状の固定部材が組み込まれている状態とするため、容易に棒状の固定部材が貫通孔に挿入された状態とすることができる。したがって、断熱部材を棒状の固定部材に容易に取付けることができる。
【0009】
また、本発明の断熱部材の取付け方法は、細長い形状、かつ少なくとも一方端に開口部を有している長手中空部材の作業治具を用いて断熱部材を取付ける方法であって、棒状の固定部材が作業治具の開口部に組み込まれている状態となるように作業治具を棒状の固定部材に取付ける治具取付け工程、棒状の固定部材が開口部に挿入されたまま、棒状の固定部材が断熱部材に設けられている貫通孔に組み込まれている状態となるように断熱部材を棒状の固定部材に取付ける断熱部材取付け工程、及び貫通孔に棒状の固定部材が挿入された状態が維持されるように作業治具を取外す治具取外し工程を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の断熱部材の取付け方法では、棒状の固定部材が作業治具の開口部に挿入されたまま、断熱部材を棒状の固定部材に取付け、断熱部材の貫通孔に棒状の固定部材が挿入されている状態とする。そのため、容易に棒状の固定部材が貫通孔に組み込まれている状態とすることができる。したがって、断熱部材を棒状の固定部材に容易に取付けることができる。
【0011】
また、本発明の断熱部材の取付け方法に用いる作業治具の開口部は棒状の固定部材が挿入可能に形成されており、先細部は、先細基端部から先細先端部に向かうにつれて、作業治具の長手方向に対し直角方向における前記先細部の外寸が連続的、又は断続的に縮小されて形成されており、先細先端部の外寸は、前記棒状の固定部材の先端の外寸より小さく形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の作業治具は、先細先端部に向かうにつれて外寸が小さくなるように形成されている先細部を有しているので、作業治具を断熱部材の貫通孔に容易に通すことができる。したがって、断熱部材を棒状の固定部材に容易に取付けることができる。
【0013】
また、本発明の断熱部材の取付け方法に用いる作業治具は、作業治具の一方端に設けられている先細部が、作業治具の長手方向とのなす角が鋭角となるような平面で切り取られて形成された端面を含んで形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の作業治具は、先細部が作業治具の長手方向とのなす角が鋭角となるような平面で切り取られた端面を含んで形成されているので、作業治具を棒状の固定部材の側面からあてがうことができる。したがって、断熱部材を棒状の固定部材に容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の実施の形態1及び2が適用される伸縮継手を示す斜視図である。
図1B図1Aの側面図である。
図2図1BのII-II断面図である。
図3図2の断熱部材の一部を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1及び2の取付け方法において用いられる作業治具を示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態1の取付け方法における孔開け工程を示す概要図である。
図6】本発明の実施の形態1の取付け方法における治具挿入行程を示す概要図である。
図7】本発明の実施の形態1の取付け方法における治具組込み断熱部材取付け工程を示す概要図である。
図8】本発明の実施の形態1の取付け方法における治具取外し工程を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態1>
本発明の取付け方法を説明する前に、添付図面を参照して本発明が適用される伸縮継手100を説明する。図1Aは、本発明の取付け方法が適用される一例である円形の伸縮継手100である。また、図1Bは、図1Aの伸縮継手100の側面図である。また、図2は、図1BのII-II断面を示した断面図である。
【0017】
伸縮継手100は、火力発電所、製鉄所、ゴミ焼却場等の燃焼装置などから排出された排気等の流体を移送するダクトとダクトとの間を連結する装置である。伸縮継手100は、燃焼装置などから排出される高温で腐食性がある流体を流すことができるとともに、ダクトの熱収縮、及び振動を吸収できる継手である。伸縮継手100の寸法、及び形状は、接続されるダクトにあわせて決定される。伸縮継手100の直径は、例えば1m以下から10m、又はそれ以上である。図に示されている伸縮継手100は、内部に流れる流体の流れ方向に垂直な断面形状が丸形の伸縮継手100である。伸縮継手100は、接続されるダクトの接続部形状に合わせて、前記断面形状が丸形、長方形を含む角形、又は異形形状から選択される。
【0018】
図1A、及び図1Bに加えて、図2を参照して、伸縮継手100の細部形状を説明する。伸縮継手100はフランジ10、断熱部材61~65、及びベローズ90を備えている。また、フランジ10は、上流側ダクトに接続されるフランジ部材11、及び下流側ダクトに接続されるフランジ部材21を有している。上流側ダクトに接続されるフランジ部材11は、本体部材12、第2リブ37、及びバッフル38を有している。なお、図2には、フランジ部材11が接続される上流側ダクトのフランジLが示されている。
【0019】
本体部材12は、第1フレーム部材13、第2フレーム部材16、第1リブ19、第1固定部材31、第2固定部材32、及びカバー33を有している。
【0020】
第1フレーム部材13と第2フレーム部材16とは、組み合わされて環状のフレーム構造を構成している。第1フレーム部材13は、第1内面部14、及び環状に形成されている第1フランジ部15を有している。第1フランジ部15は、第1フランジ部15の内径側周端を第1内面部14の上流側の端部に、互いの中心軸線を一致させた状態で固定されている。また、第2フレーム部材16は、環状に形成されている第2垂直部17、及び第2フランジ部18を有している。第2フランジ部18は円筒形状に形成され、第2垂直部17の中心軸線と一致させた状態で、第2垂直部17の外径端部に円筒形状の下流側端部を固定されている。
【0021】
第2フレーム部材16は、第1フレーム部材13の第1内面部14の外周面上に、第2フレーム部材16の内径端部を接して溶接で固定されている。第1フランジ部15には、締結部材を固定する孔が周方向に一定間隔で設けられており、上流側ダクトのフランジLと締結部材で固定されている。第1フレーム部材13、及び第2フレーム部材16をつなぐように、両者に垂直に配置された平板状の第1リブ19が取付けられている。第1リブ19は、周方向一定間隔で複数配置されており、第1フレーム部材13、及び第2フレーム部材16に溶接されており、本体部材12を補強して、本体部材12の強度、剛性を向上させている。
【0022】
第1内面部14には、後述する断熱部材62~65を固定する第1固定部材31、及び第2固定部材32が設けられている。第1内面部14の流体流れ方向Xの下流側端部の外周面上には、第1固定部材31が第1内面部14の外周面に対して垂直に周方向一定間隔で設けられている。また、第1内面部14の内周面上には、第2固定部材32が第1内面部14の内周面に対して垂直に、周方向一定間隔で設けられている。一定間隔で環状に配置されている第2固定部材32は、流体流れ方向Xにおいて、第1内面部14の略中央付近、及び下流側端部付近のそれぞれに配置され、合計2列設けられている。
【0023】
固定部材である、第1固定部材31、及び第2固定部材32は、先端にねじ部が設けられている。断熱部材62~65に設けられた貫通孔78に対応する第1固定部材31、又は第2固定部材32をそれぞれ通して、断熱部材62~65が保持される。第1固定部材31、及び第2固定部材32は、例えば、スタッドボルト又はスタッドピンである。断熱部材62、63は、押さえ部材とナットで固定される。押さえ部材は、例えばワッシャ92、及びタイバンド93である。ワッシャ92は角形の板部材から形成され、ワッシャ92の流体流れ方向Xにおける両端部を下方、すなわち断熱部材62側に折り曲げて形成されている。タイバンド93は柔軟性がある金属製のロッドであり、断熱部材62の全周にわたって巻回するように配置され、断熱部材62を外面から押さえている。ワッシャ92は第1固定部材31に取付けられてタイバンド93を保持している。変形例として、押さえ部材は、断熱部材62を保持する平板状のワッシャのみで構成されてもよい。又は、第1固定部材31、及び第2固定部材32は、先端部のねじ部の代わりに、凹凸嵌合等による係合金具に対応する嵌合形状を有する係合部を設けられ、係合金具と対応する嵌合形状を嵌合するように構成されていてもよい。
【0024】
また、第2固定部材32は、後述する第1内面部14の内面側(流体側)に配置されている断熱部材65を保持した状態で断熱部材の外面を覆うカバー33を固定している。カバー33は、流路内を流れる高温及び腐食性の流体から断熱部材を保護する部材である。カバー33は金属製で、外周側が開放された長方形断面に形成されている。カバー33は、断熱部材にかぶせるように取付けられ、カバー33の内面側平面部34に設けられている貫通孔に第2固定部材32が通されて、断熱部材とともにナットで固定される。
【0025】
カバー33の内面側平面部34には、板状のバッフル38がバッフル38の上流側端部の平面部を接して取付けられている。バッフル38には、板状の第2リブ37がバッフル38の流体流れ方向Xにおける全長にわたって、バッフル38に対し垂直に固定されている。第2リブ37は、流体流れ方向Xに細長い多角形状に形成されている。バッフル38は、伸縮継手100の中心軸線方向から外周面に向かう流体を遮るように固定され、伸縮継手100の内周面において周方向一定間隔で設けられている。バッフル38は、高温で腐食性の流体が、フランジ部材11、21間に配置されている断熱部材61~65にあたって損傷する可能性を低減させる。
【0026】
下流側ダクトに接続されるフランジ部材21は、本体部材22を有している。なお、図2には、フランジ部材21が接続される下流側ダクトのフランジMが示されている。本体部材22は、第1フレーム部材23、第2フレーム部材26、第1リブ29、第1固定部材31、第2固定部材32、及びカバー43を有している。
【0027】
第1フレーム部材23と第2フレーム部材26とは、組み合わされて環状のフレーム構造を構成している部材である。第1フレーム部材23は、第1内面部24、及び環状に形成されている第1フランジ部25を有している。第1フランジ部25は、内径端を第1内面部24の下流側の端部に互いの中心軸線を一致させた状態で固定されている。また、第2フレーム部材26は、環状に形成されている第2垂直部27、及び第2フランジ部28を有している。第2フランジ部28は円筒形状に形成され、互いの中心軸線を一致させた状態で第2垂直部27の外径端部に円筒形状の上流側端部を固定されている。
【0028】
第2フレーム部材26は、第1フレーム部材23の第1内面部24の外周面上に、第2垂直部27の内径端部を接して溶接で固定されている。第1フランジ部25には、締結部材を固定する孔が周方向に一定間隔で開けられており、下流側ダクトのフランジMと締結部材で固定されている。第1内面部24、及び第2垂直部27をつなぐように、両者に垂直に平板状の第1リブ29が取付けられている。第1リブ29は、周方向一定間隔で複数が溶接されており、本体部材22を補強して、本体部材22の強度、剛性を向上させている。
【0029】
第1内面部24には、後述する断熱部材を固定する第1固定部材31、及び第2固定部材32が設けられている。第1内面部24の流体流れ方向Xの上流側端部の外周面上には、第1固定部材31が第1内面部24の外周面に対して垂直に、周方向一定間隔で設けられている。また、第1内面部24の内周面上には、第2固定部材32が第1内面部24の内周面に対して垂直に、周方向一定間隔で設けられている。一定間隔で環状に配置されている第2固定部材32は、流体流れ方向Xにおいて、第1内面部24の略中央付近、及び上流側端部付近のそれぞれに配置され、合計2列設けられている。
【0030】
第2固定部材32は、後述する第1内面部24の内面側に配置されている断熱部材を保持した状態で断熱部材の外面を覆うカバー43を固定している。カバー43は、ダクト内を流れる高温及び腐食性の流体から断熱部材を保護する部材である。カバー43は金属製で、外周側が開放された長方形断面に形成されている。カバー43は、断熱部材にかぶせるように取付けられ、カバー43の内面側平面部44に設けられている貫通孔に第2固定部材32が通されて、断熱部材とともにナットで固定される。
【0031】
第1フレーム部材13、23の第2フランジ部18、28には、周方向一定間隔で締結具用孔が設けられており、締結具により取付け具52、52がそれぞれ固定されている。取付け具52、52は平面部同士が直角で接続された断面L字形状の部材であり、両方の平面部に締結具用孔が設けられている。取付け具52、52は、それぞれの一方の平面部を第2フランジ部18、28に当接し、他方の平面部を互いに隣接する側に配置されて固定されている。取付け具52、52のそれぞれの他方の平面部に設けられている締結具用孔には、シッピングボルト51の両端部がそれぞれ通されており、ナットにより締結されている。シッピングボルト51は、伸縮継手100が設置されるまでの間にフランジ部材11とフランジ部材21とを連結状態に保つボルトであり、フランジ部材11、21が接続されるダクトのフランジL、Mに接続されている状態では取外されている。
【0032】
次に、伸縮継手100に備えられている断熱部材61~65の配置を説明する。図2に示されているように、伸縮継手100は複数の断熱部材61~65を備えている。断熱部材61~65は、所定幅、かつフランジ部材11、21の周方向の全周長に相当する長さに形成されている。伸縮継手100の外周側には、第2垂直部17と第2垂直部27との間において、断熱部材61~63が積層されて配置されている。断熱部材61~63のうちの内側の断熱部材62、及び63は、断熱部材62、及び63の流体流れ方向Xに平行な方向における両端部において、あらかじめ設けられた貫通孔78に第1固定部材31が組み込まれている状態となるように取付けられて、ワッシャ等の押さえ部材及びナットで固定されている。断熱部材62の外周側には、断熱部材61が配置されている。断熱部材61の外周側には、ベローズ90が配置されて、断熱部材61の外周面全周を覆っている。断熱部材61~63の流体流れ方向Xに平行な方向における両端部は、周方向の全周にわたって第2垂直部17、及び第2垂直部27の互いに対向する面に隙間なく接している。そのため、断熱部材61~63と、第2垂直部17、及び第2垂直部27との間から熱が漏れないようにされている。
【0033】
また、伸縮継手100の内周側には、第1フランジ部15から第1フランジ部25の間において、断熱部材64、及び断熱部材65、65が積層されて設けられている。断熱部材64の流体流れ方向Xに平行な方向における長さは、第1フランジ部15から第1フランジ部25間の寸法と同じ寸法に形成されている。断熱部材64、及び断熱部材65、65は、それぞれ第2固定部材32に対応して、あらかじめ設けられた貫通孔78に、第2固定部材32が挿入され、押さえ金具、及びカバー33、43がナットで固定されている。
【0034】
図2に加え、図3を参照して、断熱部材61~65を説明する。断熱部材61~65は複数の材料を含んでおり、断熱材71、第1補強材72、第2補強材73を含んでいる。なお、図3以降においては、一例として断熱部材63を記載する。
【0035】
断熱材71は耐熱性繊維であり、例えばグラスフェルトである。断熱材71に用いられる耐熱性繊維の材料の事例として、無機繊維では、アルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、ケイ酸アルカリ土類金属塩繊維、グラスウール、グラスファイバー、ロックウール、スラグウール、炭化ケイ素繊維、カーボン繊維、シリカアルミナマグネシア繊維、シリカアルミナジルコニア繊維、シリカマグネシアカルシア繊維、バサルト繊維、生体溶解性無機繊維、等が挙げられる。また、有機繊維では、アラミド繊維やPBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維、ポリイミド繊維、等が挙げられる。さらに金属繊維としてはボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ステンレス鋼繊維等が挙げられる。断熱材71の厚さは、伸縮継手100が適用される装置に応じて決定されるが、通常は20mm~100mmの範囲で形成される。
【0036】
断熱材71は、断熱材71を第1補強材72により包み込まれている。第1補強材72は、耐熱性ガラス繊維である。第1補強材72は、例えばガラスクロスである。第1補強材72は、断熱効果を有するとともに、伸縮継手100に取付けしやすいように、断熱材71をまとまった形状に維持している。第1補強材72の材料としては、断熱材71と同様な上記の無機繊維、及び有機繊維が挙げられる。第1補強材72の材料は、断熱材71の材料と同じでもよい。第1補強材72の厚さは、伸縮継手100が取付けられる装置に応じて決定されるが、0.3mm~5mmに形成される。好ましくは、断熱材72の厚さは1.5mm~2mmである。シート状に形成された第1補強材72は、断熱材71を包み込んだ形態とされて、端部同士が全長にわたって縫製処理等して接続されている。
【0037】
断熱部材61~65は、断熱材71を第1補強材72により包み込まれ、さらに第2補強材73で包み込まれている。第2補強材73は、例えばデミスターである。デミスターは、金属ワイヤを所定の形状で編んで形成されている。金属ワイヤは、伸縮継手100が取付けられる装置に応じて決定されるが、例えば、軟質ステンレス鋼線(SUS316L)が用いられる。金属ワイヤの線径は、0.1mm~0.3mmであり、好ましくは、φ0.12mm、又はφ0.25mmである。
【0038】
断熱部材61~65は、上記のように、断熱材71を第1補強材72により包み込み、さらに第2補強材73により包んで形成されている。このように形成された断熱部材61~65は、伸縮継手100の外周側(大気側)、及び内周側(流体側)において、積層されて固定されている。なお、断熱材71、第1補強材72、及び第2補強材73の形状、厚さ、枚数は、伸縮継手100が取付けられる装置に応じて適宜決定される。また、断熱材71を包み込む第1補強材72、及び第2補強材73は、流体の温度、流体内に含まれる粒子状物質の有無等により、必要に応じて何れか一方のみとしてもよい。
【0039】
図2を参照して、ベローズ90を説明する。ベローズ90は、最外層の断熱部材61の外側に配置されて、フランジ部材11、21間を伸縮自在に接続している。ベローズ90は、ベローズ90の流れ方向Xに平行な方向における両端部の周方向全周を、第2フレーム部材16、26の第2フランジ部18、28と、取付け具52との間にそれぞれ挟まれて固定されている。ベローズ90は、1つ以上の部材により形成されている。図2の実施例においては、ベローズ90は複数の部材により形成され、例えば、内周側(流体側)から外周側(大気側)に、PTFE、ガラスクロス、及びSUS編入ガラスクロスが順に積層されて形成されている。または、ベローズ90は上記部材の何れか1つにより形成されていてもよい。
【0040】
図4図8は、本発明の実施の形態である、伸縮継手100の断熱部材62~65の取付けに用いる装置、及び断熱部材62~65の取付け方法を示している。本発明の実施の形態では、貫通孔78を有する断熱部材62~65の孔開け作業はドリルで行われ、断熱部材62~65をフランジ部材11、21に取付ける時には作業治具80が用いられる。なお図4図8では、理解し易いように、断面形状が角形に形成された伸縮継手100の実施例を示しており、第1内面部14、24は円筒形でなく、角形の一部を形成する平面部分として示されている。
【0041】
図4を参照して作業治具80を説明する。作業治具80は、断熱部材62~65をフランジ部材11、21に取付ける時に用いられる治具である。作業治具80は、開口部である第1開口部82を有する一方端81、他方端84、及び作業治具80の内部に中空部85を備えている。作業治具80の長さは、第1及び第2固定部材31、32の長さより20cm~40cm程度長いものが用いられる。作業治具80の長さは、例えば40cm~80cmである。第1及び第2固定部材31、32の長さと、使い勝手とを考慮すると、作業治具80の長さは、50cm~70cmが好ましい。作業治具80の長さは、設置する伸縮継手100の第1及び第2固定部材31、32の長さより、10cm~20cm以上長ければ使用可能である。種類が異なる伸縮継手100により第1及び第2固定部材31、32の長さが複数ある場合にも対応できるように、作業治具80の長さは50cm~70cmが好ましい。作業治具80は、外径が全長に渡って一定の長手中空部材である。なお、以降の説明では、作業治具80が断面丸形の長手中空部材から形成されている場合について説明しているが、作業治具は、断面が多角形の長手中空部材からでも形成可能である。例えば、断面が三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、等、の長手中空部材から作業治具を形成可能である。
【0042】
作業治具80の他の変形例として、作業治具の長手方向に垂直な断面が円形、又は多角形の長手中空部材であって、長手中空部材の一部が一方端81から他方端84にわたって切り取られたスリット状の隙間部が設けられている断面C型形状の長手中空部材であってもよい。また、前記隙間部は一方端81から他方端84の間で幅が一定、又は少なくとも一部の幅が他の部分に対して異なる幅であってもよい。何れの場合でも、前記隙間部の最小幅は棒状の固定部材31、32の長手方向に垂直な方向の外寸より小さく形成され、前記隙間部から棒状の固定部材31、32が抜けないような寸法及び形状関係に形成される。前記隙間部を有する断面C型形状の長手中空部材の場合、作業治具を手で握ることで作業治具の長手方向に対し直角方向の外寸を小さくすることができ、貫通孔78に作業治具80を通しやすい。
【0043】
作業治具80の中空部85の内径は、全長に渡って一定に形成されている。中空部85の内径は、断熱部材62~65を取付ける第1及び第2固定部材31、32の外径より若干大きく、中空部85に第1及び第2固定部材31、32が容易に挿入できる内径である。中空部85に第1及び第2固定部材31、32を挿入したときに、若干の隙がある内径であることが好ましい。
【0044】
作業治具80の外径は、第1及び第2固定部材31、32に形成されているねじ部の外径に対して、必要な肉厚分を加えた寸法でよい。例えば、中空部85の内径に対し、片側1mm~3mm程度の肉厚を含む外径でよい。作業治具80の外径は、第1及び第2固定部材31、32よりわずかに大きい程度である方が、断熱部材62~65に設けられている貫通孔78に通しやすい。
【0045】
作業治具80は、一方端81、及び他方端84を有している。作業治具80は、少なくとも一方端81に第1開口部82を有している。また、作業治具80は第1開口部82が連通する中空部85を有している。また、一方端81は、一方端81の先端部に先細部86を有している。先細部86は、一方端81先端側の先細先端部87、及び先細基端部88を有している。先細部86は、例えば先細基端部88から先細先端部87まで外径が徐々に縮径されて形成された円錐状部である。先細部86について、先細基端部から先細先端部に向かうにつれて、作業治具の長手方向に対し直角方向における前記先細部の外寸が連続的、又は断続的に縮小されて形成されており、先細先端部87の外寸は、棒状の固定部材の長手方向に対し直角方向における棒状の固定部材の先端の外寸より小さく形成されている、一方端81は一方端81の先端部に、先細形状に形成されている先細部86を有しているため、作業治具80を断熱部材62~65に開けられた貫通孔78に容易に差し込むことができる。
【0046】
先細部86は、作業治具80の長手方向である中心軸線Yとのなす角が鋭角となるような平面である第1端面83で切り取られた端面を含んで形成されている。したがって、断熱部材62~65に開けられた貫通孔78に作業治具80を容易に差し込むことができる。また、第1及び第2固定部材31、32の中空部85への挿入に先立ち、一方端81に形成されている先細部86に第1及び第2固定部材31、32を側面からあてがうことができるため、断熱部材62~65に差し込まれた状態の作業治具80の第1開口部82に、第1及び第2固定部材31、32が組み込まれている状態とすることを容易にできる。なお、変形例として、第1端面83は、作業治具80の長手方向である中心軸線Yとのなす角が垂直な面を含んで形成されていてもよい。他方端84に形成される端面も同様に、作業治具80の長手方向である中心軸線Yとのなす角が垂直な面を含んで形成されていてもよい。この場合は端面の加工が容易なため、作業治具80をより容易に作成することができる。
【0047】
図5図8を参照して、フランジ部材11の第1固定部材31に断熱部材63を取付ける場合を説明する。
【0048】
[孔開け工程(準備工程)]
図5は、孔開け工程を示している。孔開け工程では、断熱部材63の所定位置に貫通孔78を孔開け加工する。孔開け作業はドリルを用いて行われ、第1固定部材31の外径に応じた直径の貫通孔78が開けられる。貫通孔78は、断熱部材63を取付けるフランジ部材11に設けられている第1固定部材31に対応する断熱部材63の全ての位置に開けられる。断熱部材63の孔開け作業は、ハンマーではなくドリルでされるため、一定の孔径の孔が得られ、必要以上の大きさの孔を開けることがない。そのため、熱漏れの可能性が低減される。また、過大に加工された貫通孔78が断熱部材61~65の破損の起点となって広がる可能性が低減される。また、ドリルによる孔開けのため、ハンマーの場合ほど工数がかからず、短時間で作業できる。なお、貫通孔78の孔加工は断熱部材63の取付け施工現場で行うのではなく、断熱部材63の取付け施工現場以外の前工程で行われてもよい。貫通孔78の孔加工は、例えば、断熱部材63の製造工程、又は断熱部材63を作製する工程内で行われてもよい。
【0049】
[治具挿入工程(第1工程)]
図6は、治具の貫通孔への挿入工程を示している。断熱部材63に設けられている貫通孔78に作業治具80を1本ずつ挿入する。作業治具80は先細部86が形成されている一方端81から挿入する。作業治具80は、作業治具80の先端が挿入面の反対面から10cm~20cm程度出るまで挿入する。
【0050】
[治具組込み断熱部材取付け工程(第2工程)]
図7は、断熱部材63に取付けられた治具の固定部材への取付け工程を示している。貫通孔78に作業治具80が挿入されている状態の断熱部材63を持ち上げ、全ての作業治具80の中空部85に第1開口部82から第1固定部材31が組み込まれた状態となるように第1固定部材31に取付ける。挿入後、断熱部材63全体を手で押して断熱部材63を押し込み、フランジ部材11、21との間に隙間がないようにする。なお、図7では第1フランジ部15、25は省略されている。
【0051】
上記作業方法によれば、次のような効果を得ることができる。断熱部材63に作業治具80を貫通したまま作業治具80の第1開口部82に第1固定部材31が組み込まれた状態となるように、断熱部材63を第1固定部材31に取付けるので、断熱部材63を地面に対して垂直にして立てた場合でも上記構成部材のそれぞれの孔位置の位置ずれが起きず、断熱部材63を第1固定部材31に容易に組込むことができる。また、第1固定部材31の外周を断熱部材63に接触させない状態で貫通孔78を通すため、第1固定部材31の先端のねじ部に断熱部材63が引っかかることがなく、円滑に作業ができると同時に、前記ねじ部、及び断熱部材63を互いの接触から傷つけることがない。さらに、断熱部材63の孔開け作業後、断熱部材63を移動させる際に断熱部材63に貫通させた作業治具80を掴むことで断熱部材63を持ち上げることができるため、断熱部材63を容易に持ち運ぶことができる。特に、長い断熱部材63の場合にはその効果は顕著である。
【0052】
[治具取外し工程(第3工程)]
図8は、治具取外し工程を示している。全ての貫通孔78に第1固定部材31が通された状態のままで、各第1固定部材31に取付けられている全ての作業治具80を抜き取って取外す。その後は、上記と同様に断熱部材62も取付け、第1固定部材31の先端部に押さえ部材であるワッシャ92と、タイバンド93とを取付け、ナットで締め付けて、断熱部材62、63を第1フレーム部材13に固定する。
【0053】
本実施の形態は、断熱材71が第1補強材72に加えて、第2補強材73で包み込まれ、貫通孔78が設けられる断熱部材62~65であるときに特に効果が顕著である。したがって、本実施の形態は、特に断熱材71、第1補強材72、及び第2補強材73を有し、貫通孔78が設けられる断熱部材62~65を取付ける時に用いてもよい。また、断熱部材63以外の何れかの場合、第1固定部材31でなく第2固定部材32の場合、又はフランジ部材11でなくフランジ部材21に設けられた第1及び第2固定部材31、32の場合の何れか、又はそれらの組み合わせの場合の取付け方法も、上記と同じ取付け方法である。作業治具80は繰り返し使用が可能であり、一度作成した作業治具80は半永久的に使用できるので、治具製造コストが低減できる。上記断熱部材62~65の伸縮継手100への取付け方法により、作業時間は従来に比べて約2/3に減少させることができた。したがって、本発明によれば、作業工数を大幅に低減でき、工期短縮、及び伸縮継手100の施工作業に関わる作業者数を低減することができる。
【0054】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を説明する。実施の形態1では、作業治具80を貫通孔78に挿入した状態で断熱部材63を取付け、断熱部材63に第1固定部材31を挿入した状態とした。実施の形態2では、第1固定部材31に作業治具80を取付けてから、その状態で断熱部材63を第1固定部材31に取付ける。この点以外、実施の形態2は実施の形態1と同じである。以下に、本発明の実施の形態2に係る各工程を説明する。
【0055】
[孔開け工程(準備工程)]
準備工程では、断熱部材63の所定位置に貫通孔78を孔開け加工する。実施の形態2の孔開け工程の説明は、上記の実施の形態1の孔開け工程と同じ内容であり、省略する。実施の形態2の孔開け工程は、次の治具の固定部材への取付け工程の後に行ってもよい。
【0056】
[治具取付け工程(第5工程)]
作業治具80の中空部85に第1固定部材31を1本ずつ挿入した状態にするように、作業治具80を固定部材へ取付ける。作業治具80は先細部86が形成された一方端81から挿入する。
【0057】
[断熱部材取付け工程(第6工程)]
断熱部材63を持ち上げ、第1固定部材31が挿入されている状態の全ての作業治具80を断熱部材63の貫通孔78に挿入する。挿入後、断熱部材63全体を手でフランジ部材11、21側に押し込み、フランジ部材11、21との間に隙間がないようにする。
【0058】
第1固定部材31の外周を作業治具80で囲んだ状態で貫通孔78を通すため、第1固定部材31の先端のねじ部に断熱部材63が引っかかることがなく、円滑に作業ができると同時に、第1固定部材31の先端部のねじ部、及び断熱部材63を互いの接触から傷つけることがない。
【0059】
[治具取外し工程(第7工程)]
全ての貫通孔78に第1固定部材31が通された状態で、各第1固定部材31に取付けられている全ての作業治具80を抜き取って取外す。その後は、上記と同様に断熱部材62も取付け、第1固定部材31の先端部に押さえ部材であるワッシャ92と、タイバンド93とを取付け、ナットで締め付けて、断熱部材62、63をフランジ部材11に固定する。
【0060】
本実施の形態は、断熱材71が第1補強材72に加えて、第2補強材73で包み込まれ、貫通孔78が設けられる断熱部材62~65であるときに特に効果が顕著である。したがって、本実施の形態は、特に断熱材71、第1補強材72、及び第2補強材73を有し、貫通孔78が設けられる断熱部材62~65を取付ける時に用いてもよい。また、断熱部材63以外の何れかの場合、第1固定部材31でなく第2固定部材32の場合、又はフランジ部材11でなくフランジ部材21に設けられた第1及び第2固定部材31、32の場合の何れか、又はそれらの組み合わせの場合の取付け方法も、上記と同じ取付け方法である。作業治具80は繰り返し利用が可能であり、本発明によれば、一度作成した作業治具80は半永久的に使用でき、コストも低減できる。上記断熱部材62~65の伸縮継手100への取付け方法により、作業時間は従来に比べて約2/3程度に減少させることができた。したがって、作業工数を大幅に低減でき、工期短縮、及び伸縮継手100に関わる作業者数を低減することができた。
【0061】
なお、本発明の断熱材の取付け方法は、伸縮継手以外に、建築物の壁、構造部材、等、スタッドボルト等の棒状の固定部材により固定される断熱部材の取付けに適用可能である。また、作業治具80の一方端81又は他方端84の内面に、相手部材である固定部材と嵌合するねじ部を設けて、作業治具80を固定部材に取付けている間の誤落下防止のための固定部材への係合構造を備えることも可能である。
【0062】
本発明によれば、断熱部材を棒状の固定部材に容易に取付ける方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
31 第1固定部材、 32 第2固定部材、 71 断熱材、 72 第1補強材、
73 第2補強材、 78 貫通孔、 80 作業治具、 81 一方端、
82 第1開口部、 83 第1端面、 85 中空部、 86 先細部、
87 先細先端部、 88 先細基端部、 100 伸縮継手。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8