(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】生体分子を抽出するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241129BHJP
B04B 5/02 20060101ALI20241129BHJP
B04B 15/10 20060101ALI20241129BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20241129BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20241129BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20241129BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
B04B5/02 A
B04B15/10
B01D63/08
C07K1/14
C12N15/10 100Z
G01N1/28 J
(21)【出願番号】P 2022196832
(22)【出願日】2022-12-09
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522480436
【氏名又は名称】ラブターボ バイオテック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タイ チ-シェン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ シー ジェン
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103721567(CN,A)
【文献】特表2003-527568(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052386(WO,A1)
【文献】特表2021-536267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子を抽出するためのデバイスであって、
上部部分および下部部分を備えるメンブレンチューブであって、前記上部部分は、上部開口部を有し、前記下部部分は、透過性メンブレンを収容しており、下部開口部を有する、メンブレンチューブと、
上部部分および下部部分を備える容器であって、前記上部部分は、開口部を有し、前記開口部は、前記メンブレンチューブが前記容器の前記上部部分の前記開口部内に押し込まれることを可能にし、液密シールが、
前記メンブレンチューブの壁と前記容器の壁との係合によって、前記メンブレンチューブと前記容器との間に形成され、前記容器の前記下部部分は、閉鎖端を有する、容器と
を備える、デバイス。
【請求項2】
メンブレンチューブを使用して生体分子を抽出する方法であって、
請求項1に記載の容器に適量の液体を追加することと、
請求項1に記載のメンブレンチューブを前記容器内に押し込むことであって、それによって、前記容器内の前記液体は、
前記透過性メンブレンを通して流れ、前記メンブレンチューブ内へと入る、ことと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生体分子を抽出するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
生体試料中の特定のタンパク質、核酸、および他の生体分子を抽出するために、メンブレンチューブが、しばしば使用される。メンブレンチューブは、筒状の形状であり、透過性メンブレンが、その中に含まれている。メンブレンチューブの上部部分は、開口部を有し、下部部分は、透過性メンブレンを収容しており、下部開口部を有する。メンブレンチューブを使用する従来の手法において、液体が、メンブレンチューブに追加され、次いで、遠心分離機によって発生させられた遠心力、または真空ポンプによって発生させられた圧力差が、メンブレンチューブに加えられる。抽出を遂行する方法は、一般に3つの基本プロセスを含む。
1.集積。液体試料をメンブレンチューブ内に追加し、適切な力を加えて液体試料をメンブレンチューブの下部開口部から押し出す。集積プロセス中、液体試料中の特定の生体分子が、メンブレン上に集積される。
2.洗浄。清浄液をメンブレンチューブに追加し、力を加えて、メンブレンチューブ内に残った不純物がメンブレンを通過し、メンブレンチューブから排出されることをさせる。
3.回収。溶解液をメンブレンチューブに追加してメンブレン上の標的生体分子を溶解し、力を加えてそれらをチューブから押し出し、別の新しい容器内へと入り、標的生体分子を回収する目的を達成する。
【0003】
上述の従来の動作方法は、集積、洗浄、および回収などのプロセスを遂行するために、メンブレンを通して下部開口部へと流れ出るようにメンブレンチューブ内の液体を押す力を発生させるための遠心分離機または真空ポンプなどのデバイスを利用することを必要とする。遠心分離デバイスの動作は、比較的複雑であり、多数の検体を処理することに適していない。回収プロセスにおいて真空ポンプが使用される場合、汚染のない条件下で回収プロセスが遂行されることを確実にするために、集積および洗浄プロセスにおいて使用される真空ポンプと異なる専用真空ポンプが使用されるべきである。しかしながら、真空ポンプの追加のセットは、自動化機器の設計および実装における困難のいくつかを増大させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
本発明の目的は、検体の処理を単純化する方法、および方法を適用して自動化された処理を容易にするための装置を開発することである。本発明では、メンブレンチューブが容器内に押し込まれるときに発生させられる圧搾力が、容器内の液体をメンブレンチューブに、その下部開口部を通して進入させる。動作方法において、適量の液体が、容器内に追加され、次いで、メンブレンチューブは、容器内に押し込まれ、液密シールが、メンブレンチューブと容器との間に形成される。メンブレンチューブが容器内に押し込まれ続けると、容器内の液体は、メンブレンチューブによって圧搾され、メンブレンチューブの下部部分にある開口部、およびメンブレンを通して流れ、メンブレンチューブ内へと入る。本発明は、従来の方法と比較して、メンブレンチューブおよび容器などの単純なデバイスのみを必要とし、遠心分離機または真空ポンプなどのデバイスを要求しない。先行技術では、試料液は、最初、メンブレンチューブ内にあり、次いで、それから流れ出るが、本発明では、試料液は、最初、容器内にあり、次いで、メンブレンチューブの下部部分の開口部を通して流れ、メンブレンチューブ内へと入る。液体がメンブレンチューブ内で流れることの2つの方向は、反対である。本発明において、圧搾力を発生させるための機構も、比較的単純であり、シリンジのようであり、ピストンロッドが、シリンジ内に押し込まれ、シリンジと液密状態を形成し、圧搾力が、液体を注入するために発生させられる。本発明において、メンブレンチューブがピストンロッドに相当し、容器がシリンジに相当するが、シリンジの前端は、穴を有し、本発明の容器は、閉鎖されている。シリンジの前端にある開口部は、メンブレンチューブの下部部分に変更されている。シリンジデバイスは本発明と異なるが、動作方法は、類似している。本発明は、メンブレンチューブおよび容器を備える単純な押出デバイスを使用することによって、特に回収プロセスの単純化において、従来の遠心分離機および真空ポンプに取って代わることができ、回収プロセスの単純化では、溶解液は、もとのメンブレンチューブに残され、そのまま使用されることができ、溶解液を受け取るための追加の容器が、必要なく、そのため、動作デバイスおよびプロセスは、単純化されることができる。さらに、メンブレンチューブから生体分子を抽出する方法は、自動化された機械上により容易に実装されることができる。
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
生体分子を抽出するためのデバイスであって、
上部部分および下部部分を備えるメンブレンチューブであって、前記上部部分は、上部開口部を有し、前記下部部分は、透過性メンブレンを収容しており、下部開口部を有する、メンブレンチューブと、
上部部分および下部部分を備える容器であって、前記上部部分は、開口部を有し、前記開口部は、前記メンブレンチューブが前記容器の前記上部部分の前記開口部内に押し込まれることを可能にし、液密シールが、前記メンブレンチューブと前記容器との間に形成され、前記容器の前記下部部分は、閉鎖端を有する、容器と
を備える、デバイス。
(項目2)
メンブレンチューブを使用して生体分子を抽出する方法であって、
上記項目に記載の容器に適量の液体を追加することと、
上記項目に記載のメンブレンチューブを前記容器内に押し込むことであって、それによって、前記容器内の前記液体は、透過性メンブレンを通して流れ、前記メンブレンチューブ内へと入る、ことと
を含む、方法。
(摘要)
生体分子を抽出するためのデバイスは、メンブレンチューブおよび容器を含む。メンブレンチューブは、上部部分および下部部分を有する。メンブレンチューブの上部部分は、開放端を有する。メンブレンチューブの下部部分は、透過性メンブレンを含み、開放端を有する。容器は、上部部分および下部部分を有する。容器の上部部分は、開放端を有し、開放端は、メンブレンチューブが容器内に押し込まれることを可能にし、メンブレンチューブと容器との間に液密を形成する。容器の下部部分は、閉鎖端を有する。本デバイスが使用されるとき、適量の液体が、容器に追加され、次いで、メンブレンチューブは、容器内に押し込まれ、それによって、容器内の液体は、生体分子の抽出の目的を達成するために、メンブレンチューブによって圧搾され、メンブレンチューブの下部開放端およびメンブレンを通過し、メンブレン上方のメンブレンチューブ内の空間内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、メンブレンチューブを図示している。
【
図3】
図3は、液体を充填された容器の状態を図示している。
【
図4】
図4は、メンブレンチューブが容器内に押し込まれた状態を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(詳細な説明)
本発明の生体分子を抽出するためのデバイスは、メンブレンチューブ10および容器20を含む。
図1および
図2は、それぞれ、メンブレンチューブ10および容器20を示す。
【0007】
メンブレンチューブ10は、生体分子を抽出するプロセスにおいて使用される一般的なデバイスであり、概ね円管の形状であり、上部部分11および下部部分12を備える。上部部分11は、上部開口部13を有し、下部部分12は、透過性メンブレン14を含み、下部開口部15を有する。
【0008】
図2は、容器20を示す。容器20も、概ね筒状であり、上部部分21および下部部分22を備える。容器の上部部分21は、開口部23を有し、下部部分22は、閉鎖端24を有する。
【0009】
本デバイスが使用されるとき、液体が、容器20に追加され(
図3を参照)、メンブレンチューブ10が、容器20内に押し込まれる(
図4を参照)。容器20内の液体は、メンブレンチューブ10によって圧搾され、メンブレンチューブ10の下部開口部15および透過性メンブレン14を通過し、メンブレンチューブ10内へと流れる。
【0010】
メンブレンチューブ10は、容器20に適合するように構成され、それによって、それが容器20内に押し込まれたとき、接触部分は、液密であるはずであり、容器20内の液体は、接触部分から漏れず、メンブレンチューブ下部部分の開口部15を通して流れ、透過性メンブレン14を通して流れ、メンブレンチューブ10内へと入る。
【0011】
生体分子を抽出するための上述のメンブレンチューブ10および容器20の使用は、従前の方法より自動化に適している。生体分子を抽出する回収手順において、溶解液が、容器20内に追加され、次いで、透過性メンブレン14を含むメンブレンチューブ10が、容器20の上部開口部23を通して容器20内に押し込まれる。容器20およびメンブレンチューブ10の間は液密であるので、容器20内の液体は、メンブレンチューブ10によって圧搾され、メンブレンチューブ10の下部開口部15、および透過性メンブレン14を通過し、メンブレンチューブ10内へと入る。
【0012】
本発明は、回収プロセスにおいて従来の方法と大きく異なる。従来の方法では、溶解液が、メンブレンチューブに追加され、溶解液は、生体分子をメンブレンから引き離すことができ、次いで、溶解液をメンブレンチューブから押し出すために、力(遠心力または空気圧など)が加えられる。生体分子を含む溶解液を受け取るための容器が、標的生体分子を回収する目的を達成するために提供される。本発明の方法では、溶解液が、容器20に追加され、次いで、メンブレンチューブ10は、容器20の上部開口部23から容器20内に押し込まれる。それによって、容器20内の溶液は、メンブレンチューブ10によって圧搾され、メンブレンチューブ10の下部開口部15を通して流れ、透過性メンブレン14を通して流れ、次いで、メンブレンチューブ10内へと流れる。透過性メンブレン14を通過する溶解液(すなわち、回収液)は、メンブレンチューブ10内に含まれ、故に、溶解液を別の新しい容器に収集するために遠心分離機または真空ポンプデバイスを使用する必要がなく、したがって、自動化の実装および動作は、単純化されることができる。メンブレンチューブから生体分子を抽出する方法は、自動化された機械上に実装されることがより容易である。
【0013】
上記に説明された本発明の内容は、本発明を実装するための可能な手法の1つにすぎない。上述の実施形態に対してなされた修正、置換、組み合わせは、本発明の分野の当業者によって容易に完成されることができ、発明概念の範囲内である。