(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】人間または動物の体の表面形状を検出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20241129BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61B5/107 100
G01B7/00 103M
(21)【出願番号】P 2022532742
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2020083588
(87)【国際公開番号】W WO2021110547
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-07-11
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】522216282
【氏名又は名称】ベルヴァルト テーエーツェー ゲーエムベーハー - エンヴェーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レップ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】パスカル、ヨリス
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハー、ラルフ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108195336(CN,A)
【文献】特開2005-245937(JP,A)
【文献】特表2017-528737(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006004514(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第105877753(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムであって、
複数の表面領域で前記体表面をスキャンし、複数の関連する表面信号を生成するように設計された、複数のセンサを備えたセンサ領域(1)と、
前記複数のセンサの前記複数の表面信号から前記体表面の前記表面形状を決定するように適合された信号処理ユニット(5)と
を含む、システムにおいて、
前記センサ領域(1)の近傍の少なくとも1つの磁場を生成するための磁場発生器(7)と、
前記センサ領域(1)を形成し、前記体表面に載るように相互に配置された複数の磁場センサ(2)であって、前記磁場センサ(2)は、前記磁場内での前記磁場センサ(2)の
前記体表面に対する方向と
前記磁場センサ(2)の位置に関する位置信号を表面信号として生成するように設計されて
おり、前記位置信号は、それぞれの磁場センサの3つの空間成分を含む、磁場センサ(2)とを含み、
前記信号処理ユニット(5)は、前記複数の位置信号から前記体表面の前記表面形状を決定するようになっていることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記複数の磁場センサ(2)は、前記センサ領域(1)内に規則的な格子状に配置され、好ましくは格子列の格子間隔が可変であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサ領域(1)の前記複数の磁場センサ(2)は、変形可能なセンサ平面内に相互に関連して配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサ領域(1)の前記複数の磁場センサ(2)の少なくとも一部は、互いに直列に接続されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記センサ領域(1)の前記複数の磁場センサ(2)は、繊維材料内または繊維材料上に取り付けられることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記繊維材料は、伸縮可能であることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記磁場センサ(2)は、ホールセンサまたは磁気抵抗センサとして設計されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記磁場センサ(2)は、三次元測定用に設計および配置された2つ以上のセンサユニットを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記磁場発生器(7)は、三軸磁場源として設計されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記磁場発生器(7)は、前記センサ領域(1)の近傍に強度10nT~100mTの磁場を生成することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサ領域(1)は、前記複数の表面領域での圧力および/または温度に対応する信号を決定するように適合された他の複数の圧力および/または温度センサを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
人間または動物の体表面の表面形状を検出する方法であって、
前記体表面の複数の表面領域上のセンサ領域(1)内に相互に配置された複数の磁場センサ(2)を配置するステップと、
前記センサ領域(1)の近傍に少なくとも1つの磁場を生成するステップと、
前記磁場センサ(2)を使用して、前記表面領域に属する複数の表面信号を生成するステップであって、前記表面信号は、前記磁場内の前記磁場センサの
前記体表面に対する方向と
前記磁場センサ(2)の位置に関する位置信号の形態であ
り、前記位置信号は、それぞれの磁場センサの3つの空間成分を含む、ステップと、
信号処理ユニット(5)を使用して、前記磁場センサ(2)の前記複数の位置信号から前記体表面の前記表面形状を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記磁場センサ(2)は、前記複数の磁場センサ(2)が前記体表面の複数の表面領域上に載置されるように体表面上に配置された繊維材料内または繊維材料上に取り付けられ、前記磁場センサ(2)は、関連する表面領域の方向および位置に従ってそれらの位置を調整する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維材料は、前記磁場センサ(2)どうし間の所定の距離が変化するように前記体表面上に引き伸ばされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記人間または動物の体表面の周辺表面のデジタルデータセット(8)が、前記複数の位置信号から作成される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間または動物の体の表面形状を検出するためのシステムおよび方法に関するものであり、特に、人間または動物の体の手足の三次元形状をデジタル的に検出するためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間またはさらには動物の体の表面の空間的形状を検出できるようにするための大きな非常に様々な必要性がある。例えば、奇形または位置異常のある患者は、副子およびコルセットなどの個々の治療ソリューションを作り出し適合させることができるようにするために、光学的方法を使用して測定される。プロテーゼの製造では、プロテーゼが断端に最適にフィットすることを保証できるようにするために、手足の断端の三次元形状を知る必要もある。
【0003】
治療分野、ここでは特に整形外科技術では、例えば、療法士または外科医が体に対して治療活動を実行している間、または体が支持装置上に載っている間に、患者のスキャンを実行できる必要がある。例えば、真っ直ぐな位置を保持するための副子を開発するために、下肢の痙攣性変形の矯正中にスキャンが行われる。
【0004】
今日のシステムは、例えば、後の光学デジタル化を伴う石膏キャストを使用するか、または外部から見える身体領域を、その領域で反射された光を検出することによってスキャンする光学デジタル化システムが使用される。
【0005】
体に対する治療活動中に体表面をデジタル化するために光学的スキャン法を使用する場合、外科医の手または支持装置が光学的スキャンと衝突する可能性がある。特許文献1で説明されている手足を測定するための装置などの整形外科技術で利用可能なデジタルスキャンおよびモデリング装置は、この欠陥を無視している。
【0006】
したがって、スキャン中に覆われており、したがって測定されなかった領域を、例えば手動で再加工するか、または外挿法または再構成法を使用してそれらを補足するのが通例である。測定が行われた後にのみ、記録された表面データは、欠落したデータの精巧で不確実な再構成によって閉じた表面モデルに処理され、その後、整形外科用補助器具のデジタル生産に利用できるようになる。
【0007】
また、整形外科では、例えば、コンピュータ断層撮影法または磁気共鳴断層撮影法などの透視画像法が、特に、体内の構成要素の形状を検出および画像化するために使用される。しかしながら、このような方法は、放射線被曝と高い磁場強度のために健康に害を及ぼす可能性があるが、それでもデータ品質が低下することがよくある。また、それらは使用するのが面倒で高価であり、高いエネルギー消費を必要とする。
【0008】
より小さな装置が、例えば、特許文献2に開示されており、オペレータによる身体部分の検査中に、器官、筋肉、脂肪または他の組織などの内部身体部分のパラメータを検出するための光学スキャン装置が示されている。腫瘍などの身体部分の異常は検出できるが、体表面の外部形状は検出できない。
【0009】
また、他の健康および医療分野向けに様々なスキャンおよびデータ取得方法が開発されているが、これらは体表面の三次元取得には適していない。特に、センサが統合された繊維が開発されており、これは、例えば、衣服の形態で体に着用することができ、Smart Electro-Clothing Systemsという名前で知られている。そのようなシステムは、例えば、生体電気的、生体磁気的、または生化学的信号を含む生体信号を検出することができる。これには、例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計など、様々なタイプのセンサを繊維に統合することが含まれる。センサシステムは、検出された信号を処理ユニットに送信して、健康関連情報を評価および表示する。
【0010】
例えば、特許文献3から、静電容量センサを統合した伸縮自在の織物が知られており、これにより、織物の伸縮、したがって伸縮を引き起こす身体部分の動きを検出することができる。また、足の裏または手のひらの圧力印加および圧力分布を測定するために、電気センサを備えた大面積のセンサ領域を有する靴下または手袋が知られている。
前述のように、このような高性能の電気衣類システムでは、体表面の三次元形状を検出することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許出願公開第19822956号明細書
【文献】国際公開第2005/013814号
【文献】国際公開第2014/204323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、人間または動物の体の表面形状を検出するためのシステムおよび方法であって、この表面形状を確実かつ完全に検出することができ、検出された表面データを後処理なしで可能な限り管理し、コストとエネルギーを節約する方法で操作でき、体にリスクをもたらさない、システムおよび方法を提供することである。
【0013】
本発明は、特に、例えば、整形外科的形状などの整形外科用補助器具への治療的アプローチについて信頼できる陳述を行うことを可能にする、体表面の三次元形状を検出するためのシステムおよび方法を提供することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載のシステムおよび請求項12に記載の方法によって解決される。本発明の有利な実施形態および異なる変形は、従属請求項に記載される。
【0015】
本発明に係る人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムは、体表面の複数の表面領域で体表面をスキャンし、複数の関連する表面信号を生成するように設計された、複数のセンサを備えたセンサ領域を含む。また、システムは、多数のセンサの多数の表面信号から体表面の表面形状を決定するように設計された信号処理ユニットを有する。この場合、センサ領域のセンサは、それぞれ少なくとも1つの表面領域に割り当てられ、この領域に割り当てられた表面信号を供給する。したがって、体表面の表面形状は、表面信号の全体から決定することができる。
【0016】
本発明によれば、システムは、センサ領域の近傍に少なくとも1つの磁場を生成するための磁場発生器を含む。したがって、磁場は、形状が決定される体表面の近傍に存在する。また、センサ領域は、体表面上に相互に配置された多数の磁場センサによって形成される。これにより、多数の磁場センサが多数の表面領域に割り当てられ、磁場センサが体表面に沿って分布できるようになる。磁場センサは、磁場内でのそれらの方向と位置に関して、表面信号として位置信号を生成するように設計されている。磁場センサの位置信号は、少なくとも磁場内のセンサの空間的方向に関する情報を提供する。好ましくは、位置信号はまた、磁場内のセンサの位置に関する情報を含む。また、位置信号は、センサ領域内のまたは他のセンサに対するセンサの位置に関する情報を提供できる。したがって、体表面の表面領域の位置および方向は、関連する磁場センサによって表される。この場合、表面領域は、磁場センサが置かれている体表面の少なくとも1つの領域に対応する。しかしながら、表面領域は、これを超えて、隣接する表面領域が始まる点まで拡張することもできる。したがって、磁場センサの位置信号は、体表面全体、および適切な場合は体の周辺表面全体を画像化することができる表面信号のネットワークを提供する。したがって、信号処理ユニットは、複数の位置信号から体表面の表面形状を決定し、閉じた表面モデルを提供することができる。
【0017】
有利なことに、信号処理ユニットは、体表面の表面形状をデジタル化するので、検出された体表面のデジタルデータセットが存在し、これは、患者の治療または整形器具などの医療補助器具の開発に直接使用することができる。したがって、システムは、三次元の人間または動物の体表面の任意の三次元表面形状を検出することができる。有利には、例えば、手足の場合に存在するような、閉じた体の周辺表面が検出される。
【0018】
センサ領域による体表面のスキャンは、磁場発生器の磁場による磁場センサの結合および励起によって行われる。センサ領域を体表面に広げることで、広域スキャンが可能になる。
【0019】
本発明に係る人間または動物の体表面の表面形状を検出する方法は、好ましくは、上記のような検出システムを使用する。本発明に係る方法では、センサ領域内に相互に配置された多数の磁場センサが、体表面の多数の表面領域に配置される。また、センサ領域近傍の磁場発生器により磁場が生成される。結果として、表面領域に属する多数の表面信号が、磁場センサを使用することによって生成され、表面信号は、磁場内の磁場センサの調整および位置に関する位置信号の形態である。次に、体表面の表面形状は、磁場センサの多数の位置信号から信号処理ユニットによって決定される。
【0020】
本発明に係るシステムおよび方法は、位置信号のスキャンを妨げることなく、治療および支持装置がセンサ領域の上方の体表面に容易に作用することができるので、表面形状を確実かつ完全に検出することができる。したがって、スキャン中に手または補助器具で覆われている身体領域もスキャンすることができる。記録された表面データのその後の処理、例えば、スキャンされなかった領域を橋渡しするための処理は必要ではなく、その結果、体表面の正確で詳細な記録が可能である。
【0021】
有利な一実施形態では、複数の磁場センサが、規則的な格子内のセンサ領域内に配置される。センサは、好ましくは、互いに所定の格子間隔で格子内に配置される。格子間隔は、例えば、表面検出の必要な精度に従って選択することができる。センサ領域は、格子間隔が異なるセクターに分割することもできる。したがって、例えば、表面形状が大きく変化する体表面の領域では、より均一な表面形状を有する領域よりも短い距離を選択することができる。典型的には、磁場センサ間の距離は、1mm~500mmの範囲にあり、好ましくは5mm~50mmの範囲にある。例えば、50mm~500mmの大きな距離では、例えば大きな動物の、大きな体表面をスキャンできる。センサ用の材料とそれらの相互接続も、長距離を使用する場合に節約される。
【0022】
センサ領域内の格子列の格子間隔は可変であることが好ましい。これは、体表面の状態または体の動きに応じて、格子の間隔を拡大または縮小できることを意味する。磁場センサを体表面に正確に取り付けることを可能にするために、磁場センサを体表面に配置するとき、センサ領域の格子間隔も変化することができる。
【0023】
有利には、センサ領域の複数の磁場センサは、変形可能なセンサ平面内に互いに対して配置される。したがって、隣り合って配置された磁場センサ全体がセンサの平面を形成する。この平面は、隣接するセンサを相互に移動させることで変形することができる。したがって、センサ平面は体表面に倣うことができるため、平面の形状は体表面の形状に対応する。この平面にまたがるために、2つ以上のセンサを、例えば、糸またはケーブルなどの可撓性接続手段によって、互いに接続することができる。表面信号を拾い上げるための電線を使用して、センサを相互に接続することも可能である。センサ平面は、自己完結型で、一種の円周平面を形成することもできる。
一実施形態では、センサ領域の複数の磁場センサまたは複数の磁場センサの一部は、互いに直列に接続される。これは、磁場センサが互いに直線的に、または一列に接続されることを意味する。1つの磁場センサは、最大2つの他のセンサに接続される。互いに直列に接続された磁場センサは、広げられてセンサ平面を形成できる一種のセンサチェーンを形成する。それにより、センサチェーンは、例えば、直線、曲線、またはループで広がることができる。あるいはまた、磁場センサは、磁場センサの少なくともいくつかが少なくとも3つの他のセンサに接続される一種のセンサネットワークを形成することができる。次いで、センサネットワークは、センサ平面にまたがることができる。
【0024】
好ましい一実施形態では、センサ領域の複数の磁場センサは、繊維材料の中または上に取り付けられる。体表面の形状を検出できるようにするために、磁場センサを備えた繊維材料は、多数の磁場センサが体表面の関連する多数の表面領域に位置するようになるように体表面に配置される。この場合、磁場センサは、関連する表面領域の方向に従ってそれらの位置を調整する。したがって、繊維材料は、互いに対する磁場センサの単純な取り付け、および体表面へのセンサの単純で快適な配置にも役立つことができる。繊維材料の可撓性により、材料は体の表面に適応し、表面の方向に応じて磁場センサを表面に自動的に配置する。
【0025】
繊維材料は、好ましくは伸縮性があるように設計される。したがって、センサ領域は、体の表面上に、特に体の周辺表面の周りに伸ばすことができ、そこでしっかりと適所に保持される。また、繊維材料は、磁場センサ間の所定の距離が変化するように、体の表面上に伸ばすことができる。所定の距離の変化から体表面の形状を推測することができる。したがって、変化は磁場センサの位置信号の成分である可能性がある。
【0026】
本発明に係るシステムの単純な一変形例では、繊維材料は、例えば、体表面上またはその周囲に配置することができる磁場センサを備えた繊維布として設計される。しかしながら、磁場センサを備えた繊維材料は、例えば、靴下、ストッキング、手袋、袖などの中に処理することもできるので、患者は、手足を介して繊維材料を装着することができる。あるいはまた、繊維材料は、オペレータが着用する手袋に使用することもできる。オペレータは、手袋を使用して、測定する患者の体表面をスキャンできる。オペレータは、手袋をしたまま手を体の表面に置く。オペレータは、手袋で体の表面を感じることもできる。
【0027】
磁場センサは、三次元磁場センサとして設計される。本発明に係る人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムの一実施形態では、磁場センサは、ホールセンサとして設計される。ホールセンサを使用すると、磁場発生器によって生成された磁場の磁束密度を測定でき、磁場内のおよび他のセンサに対するセンサの位置をそこから決定できる。また、磁気抵抗(MR)センサまたは電子コンパスの形態のセンサ(例えば、TMR、AMR、またはGMRセンサ)を磁場センサとして使用できる。異なるタイプのセンサを混在させることも可能である。
【0028】
一実施形態では、磁場センサはそれぞれ、三次元測定用に設計および配置された2つ以上のセンサユニットを含む。例えば、互いに垂直に配置された2つ以上のセンサユニットが提供される。磁場センサは、磁場内のそれらの方向と位置に属する場のベクトル情報を検出する。
【0029】
本発明に係るシステムの一実施形態では、磁場発生器は、三軸磁場源として設計される。例えば、電磁石、コイル、または可動永久磁石を磁場源として使用することができる。三軸磁場源を使用して、3つの重畳磁場を生成できる。磁場の各々は磁場センサによって検出できるため、結果として得られるセンサの位置信号は3つの空間成分で構成され、その結果、各々のセンサの正確な位置情報を取得できる。三軸磁場源の代替として、3つの個別の磁場源は、例えば、互いに三角形に配置することもできる。3つの磁場源は、磁場センサで測定するための重畳された全磁場を形成する。
【0030】
有利には、磁場発生器は、センサ領域の近傍に、10nT、好ましくは100nT~100mTの強度を有する磁場を生成する。例えば、前腕をスキャンするための検出システムの一変形例では、2mTが使用された。
例えば、磁気共鳴断層撮影法などの表面形状を検出するための従来の磁気画像法と比較して、本発明に係る方法で使用される磁場は、1000万~3000万分の1小さい。したがって、本発明に係るプロセスは、より少ないエネルギーを必要とし、より費用対効果が高い。
【0031】
本発明に係る人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムのさらなる一実施形態では、センサ領域は、圧力および/または温度センサの形態のさらなる多数のセンサを有する。これらのセンサは、体表面の多数の表面領域での圧力および/または温度に対応する信号を決定するように設計される。この場合、これらのセンサの表面領域は、磁場センサに割り当てられた領域と一致する必要はない。また、これらのセンサには、磁場センサと同じ数の領域を提供する必要はない。
【0032】
しかしながら、磁場センサと圧力および/または温度センサは、有利に組み合わされてセンサコンポーネントを形成し、センサ領域内と、磁場センサに割り当てられた表面領域に、共に提供することができる。圧力および/または温度センサを使用して、関連する表面領域での圧力および/または温度信号を決定することができる。したがって、磁場センサの位置信号と組み合わせて、体表面の面圧および/または温度分布を決定することができる。
【0033】
したがって、本発明に係る人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムおよび方法を用いて、人間または動物の体表面の周辺表面のデジタルデータセットを、多数の位置信号から生成することができる。一例として、データ格子の細かさは、大型動物の場合は1mm~50cmの範囲にあり、人間の場合は1mm~10cmの範囲にある。システムは、単純な構成要素で構成されており、持ち運び可能なサイズである。これにより、外来患者ベースでもこの方法を使用できるようになる。検出方法は使いやすく、磁場強度が低いため健康上のリスクがなく、費用対効果の高い方法で操作できる。特に、副子、装具、プロテーゼなどの整形外科用補助器具の構築および適合については、体の周辺表面のすべての領域をスキャンでき、したがって、取得したデータセットの後処理は必要ないことが有利である。このようにして、補助器具のフィット感と装着感を大幅に向上させることができる。
【0034】
本発明は、単に説明するのに役立ち、限定的な方法で解釈されるべきではない図とともに以下に示されている。図から明らかになる本発明の構成は、本発明の開示に属するものとして、個別におよび任意の組み合わせで見なされる必要がある。図示されるものは、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明に係る、人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムのセンサ領域の第1の変形例の概略図である。
【
図2】本発明に係る、人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムのセンサ領域の第2の変形例の概略図である。
【
図3】本発明に係る人間または動物の体表面の表面形状を検出する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示すように、本発明によれば、複数の磁場センサを備えたセンサ領域を含む、人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムが提供される。センサ領域は、体表面が複数の表面領域に細分化されるように、三次元の体の表面を網羅するために提供される。各々の磁場センサは、それに割り当てられた表面領域をスキャンし、体表面上のその位置に関する情報を含む位置信号を生成する。したがって、複数の磁場センサおよび関連する表面領域に対応する複数の表面信号が生成される。
【0037】
図1に見られるように、センサユニットは、可撓性のまたは伸縮自在のプリント回路基板(PCB)の形態でキャリア4に統合されている。したがって、磁場センサ2は、三軸磁場センサとして提供される。磁場センサ2はそれぞれ、体表面に対するそれぞれのセンサの方向に関する情報、および有利には、互いに対する磁場センサの局所位置に関する情報を備えた位置信号を生成する。
【0038】
図1から分かるように、磁場センサ2は、互いから所定の規則的な距離を有する格子内のセンサ領域1内に配置されている。格子は、例えば、繊維材料(図示せず)内に磁場センサを取り付けることによって実現することができる。磁場センサのデジタル位置信号を中継するための導体(図示せず)もまた、繊維材料内または上に提供することができる。センサは有利には直列に接続されているので、すべてのセンサが互いに接続されているわけではなく、材料を節約することができる。
【0039】
本発明に係る検出システムの有利な一変形例では、センサ領域は、
図1に示されるように、変形可能なセンサ平面を形成する。この目的のために、例えば、磁場センサが上に配置されている繊維材料は、可撓性があり伸縮自在であるため、個々の磁場センサの互いに対する方向およびそれらの互いからの距離も可変である。したがって、センサ平面は、体表面の任意の所望の形状に適応し、それぞれの表面領域の方向に従って磁場センサを調整することができる。
図1cに示されるように、図示のセンサ平面は、例えば、図面の平面から外向きに膨らんでいる。
【0040】
図2は、磁場センサが直列に配置されている、人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムの代替の一実施形態を示している。磁場センサ2は4本の線3と直列に接続され、一種のセンサチェーンを形成している。センサチェーンは、次いで、繊維材料に取り付けることができる。図示の例では、センサチェーンは、3つの略平行な列が生じるように曲げられており、これらが一緒になってセンサ平面を形成する。このようにして、多数の磁場センサと数本の線のみがシステムに提供される。
【0041】
図3は、本発明に係る人間または動物の体表面の表面形状を検出する方法を実施するための図を示す。信号処理ユニット5は、磁場発生器7を作動させるために、作動信号をパワーエレクトロニクス6に送信する。この変形例では、磁場発生器7は、例えば、三軸コイルの形態などの三軸磁場源として提供される。
【0042】
磁場発生器7は、センサ領域1の近傍に磁場を発生させる。したがって、磁場は、体表面の多数の表面領域に属する多数の磁場センサ2を取り囲み、磁場センサ2の磁気励起をトリガーする。磁場センサ2は、磁場の強さ、および磁場中のそれらの角度方向および位置に従って、磁場励起に応答して表面信号を生成し、これらは、次に、体表面およびそれらの相互の距離に従ってそれらの方向に依存する。この情報は、磁場源までの距離と磁場の角度方向に伴う磁場強度の減少に関する物理法則に基づいて決定できる。次に、この情報は、複数の磁場センサ2によって、複数の位置信号として信号処理ユニット5に送信される。したがって、位置信号は、表面領域の方向と範囲をマッピングするので、信号処理ユニット5は、そこから体表面の形状を決定し、それを表面形状のデジタルデータセット8として出力することができる。このデジタルデータセットは、例えば、整形外科用補助器具を構築するためのCADプログラムに直接供給することができる。
【0043】
静的な表面形状決定の一例を参照して検出方法を説明したが、本発明に係るシステムおよび方法により、例えば、スキャン中の患者の動きに応じて、体表面の形状が変化する動的な形状決定を行うことは非常に可能である。患者が磁場発生器によって生成された磁場内で運動することを確実にすることだけが必要である。結果として、例えば、患者の運動中に整形外科用補助器具のぴったりとした適合を決定することが可能である。
【0044】
したがって、本発明に係る人間または動物の体表面の表面形状を検出するためのシステムおよび方法は、幅広い可能な用途を有し、同時に、費用対効果が高く、エネルギーを節約する方法で使用することができる。また、それらは検出された表面形状の高度な精度を可能にする。特に、整形外科技術で頻繁に必要とされるように、例えば、手、腕、足などの周りに、閉じた表面モデルを生成することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 センサ領域
2 磁場センサ
3 線
4 ビーム
5 信号処理ユニット
6 パワーエレクトロニクス
7 磁場発生器
8 デジタルデータセット