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特許7595371トリコプルシア・ニの蛹における組み換えタンパク質の発現
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】トリコプルシア・ニの蛹における組み換えタンパク質の発現
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20241129BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241129BHJP
   D01B 7/00 20060101ALI20241129BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20241129BHJP
   C12N 15/866 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
C12P21/02 C
C12M1/00
D01B7/00 301Z
C12N15/34 ZNA
C12N15/866 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023064436
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2020109979の分割
【原出願日】2016-09-19
(65)【公開番号】P2023098990
(43)【公開日】2023-07-11
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】15382451.1
(32)【優先日】2015-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518085933
【氏名又は名称】オルタナティブ ジーン エクスプレッション, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルチネス エスクリバノ ホセ アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】アルバラード フラデュア カルメン
(72)【発明者】
【氏名】レイター サアベドラ イーデル
(72)【発明者】
【氏名】シード フェルナンデス ミゲル
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519068(JP,A)
【文献】特開平09-215499(JP,A)
【文献】特開平09-051742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0314562(US,A1)
【文献】GOMEZ-SEBASTIAN, Silvia et al.,PLOS One,2014年05月13日,Vol.9, Issue.5, Article No. e96562,DOI: 10.1371/journal.pone.0096562
【文献】Autographa californica nucleopolyhedrovirus, complete genome,NCBI Reference Sequence: NC_001623.1,2018年08月13日,URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NC_001623.1
【文献】佐々木 香織 他,BmNPVバクミドシステムを用いたカイコでのタンパク質の大量生産,蛋白質科学会アーカイブ,2011年09月10日,Vol.4,e063
【文献】CAPINERA, John L.,"cabbage looper - Trichoplusia ni(Huebner)",,EENY-116,2014年02月,URL:https://web.archive.org/web/20150907230752/https://entnemdept.ufl.edu/creatures/veg/leaf/cabbage_looper.htm
【文献】小泉憲治、佐々木隆,ジャガイモガPhthorimaea operculella ZELLERの在来天敵(予報),植物防疫所調査研究報告,1966年04月,第4号,pp. 66-69
【文献】JINN, Tzyy-Rong et al.,Biotechnology Progress,2009年03月30日,Vol. 25, No. 2,pp. 384-389,DOI: 10.1002/btpr.148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12M 1/00- 3/00
C12P 1/00-41/00
A01K 67/02-67/03
D01B 1/00- 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの組み換えタンパク質を産生する方法であって、以下(a)~(f)を含む方法:
(a)絹繭に含まれるトリコプルシア・ニ種に属する蛹を準備する工程と、
(b)それぞれの蛹の前記絹繭を除去する工程と、
(c)絹を含まない、外部殺菌された蛹を得る工程と、
(d)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)に由来し、かつ前記組み換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組み換えバキュロウイルスを工程(c)の蛹に注入する工程と、
ただし、
(i)前記蛹は、中心に穴を有する蓋をそれぞれ備える小孔のマトリクス又はアレイに置かれ、ここで、針だけが穴を通り抜けることができるように前記蓋の穴は蛹より小さく、かつ
(ii)前記注入は、精密ポンプと、モバイル機械アームと、流体を蛹の内部に注入するのに適した針とを備える装置により行われ、
ただし、
-前記装置が、前記蛹を含む少なくとも一つの前記小孔に自動的に少なくとも一つの針を配置して、前記針が前記蓋の穴を通って前記蛹にアクセスするようにし、かつ
-前記針が、前記蛹を穿孔し、前記蛹の体内に前記組み換えバキュロウイルスを含む溶液を投与し、
-前記針は、前記蛹及び前記小孔から取り除かれて、前記小孔に前記蛹が残り、
(e)少なくとも1つの組み換えタンパク質が発現するのに十分な期間に亘って工程(d)の接種を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(f)少なくとも1つの組み換えタンパク質を含む蛹を得る工程。
【請求項2】
前記絹繭が次亜塩素酸の塩の溶液に溶解することにより除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バキュロウイルスが、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて、転写調節因子として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの発現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作動可能に連結された組み換え相同領域(hr)とを含み、
前記タンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの発現を可能とする前記核酸配列が、
)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸配列、
)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、組み換えバキュロウイルスにおける転写調節因子として機能し得るタンパク質をコードする、核酸配列、
)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸をコードする核酸配列、並びに、
)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列類似性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し得るアミノ酸配列をコードする核酸配列、
からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、エンハンサー領域との組み合わせを含む核酸配列が、配列番号15~配列番号20を含む群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
さらに、
(g)前記組み換えバキュロウイルスを採取する工程
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらに、
(h)前記組み換えバキュロウイルスを精製する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に含まれるものとすることができ、また特に、昆
虫蛹、特にトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)(T.ニ)の蛹における組み換えタ
ンパク質の工業生産に関する、組み換えタンパク質の発現効率を増すための(その工業生
産の最適化を含む)手段及び方法を包含する。またさらに、本発明は、バキュロウイルス
を含む蛹自体、バキュロウイルス又はバクミドに感染した、それらにより形質転換された
、形質導入された、又はトランスフェクトされた蛹に関する。
【背景技術】
【0002】
バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)は、組み換えタンパク質、例えばワクチ
ン、治療用分子又は診断用試薬として使用されるタンパク質の産生に対する確立した方法
である。その過剰発現の可能性及び急速な発生により、BEVSは、任意の目的の組み換
えタンパク質の産生に対する最も魅力的な選択肢の1つである。組み換えタンパク質発現
の業界で最も採用されるバキュロウイルスベクターは、好適な発現宿主としてスポドプテ
ラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)9(Sf9)又は21(Sf21)の昆虫
細胞を用いるオートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルス(Autographa califor
nica multinuclear polyhedrosis virus)(AcMNPV)(非特許文献1)、及び生体
バイオファクトリーとしてのトリコプルシア・ニ(T.ニ)の昆虫幼虫(非特許文献2)
に基づくものである。BEVSが80年代に開発されてから(非特許文献3)、バキュロ
ウイルスに感染した昆虫細胞においてサイトゾル酵素から膜結合型タンパク質に及ぶ何百
もの組み換えタンパク質の産生に成功してきた。
【0003】
最近、新たなバキュロウイルスベクターが記載された。例えば、特許文献1及び特許文
献2は、昆虫及び昆虫細胞における組み換えタンパク質の発現に対する組み換えDNAエ
レメントを記載している。
【0004】
低価値の基材である桑の葉を高価値のタンパク質系製品である絹へと変換するプロセス
で毎年約70000トンの絹が世界的に生産される。昆虫は加速した代謝のため、非常に
効果的なタンパク質生産者である。ボムビークス・モリ(Bombyx mori)(B.モリ、カ
イコ)、又はT.ニ(イラクサキンウワバ(cabbage looper))等の鱗翅目は、バイオテ
クノロジーで最も使用される昆虫のうちの2つである。それらは、2週間未満のうちに約
5000倍にサイズを増し、B.モリ昆虫1匹当たり1キロメートル超の絹を産生する。
絹糸腺に由来する細胞が1日当たり1細胞当たり約80μgのタンパク質を産生し得るの
に対し、最良の哺乳動物細胞培養系は1日当たり1細胞当たりわずか約50pgのタンパ
ク質を産生するにすぎない。
【0005】
したがって、生体バイオファクトリーとしての昆虫は、産生汎用性、拡張性、自動化可
能性、発生の効率及び速度により、昆虫細胞、従来の発酵技術、また植物由来タンパク質
に対する有望な代替物を構成する。例えば、生体バイオファクトリーとしての昆虫は、例
えば昆虫細胞におけるタンパク質発現のためのバイオリアクターの必要を回避する。バイ
オリアクターは、非効率的で高価であり、技術的に複雑である(構築に数年を要し、検証
が困難であり、操作に高い技術を持つ個人を必要とし、汚染を生じやすく、信頼がおけな
い)ことから、新たな及び既存の組み換えタンパク質の産生に対して技術的及び経済的な
障壁である。さらに、バイオリアクターは、拡張性の制限という問題に直面する。
【0006】
B.モリの幼虫は、バキュロウイルス発現ベクター系を使用する組み換えタンパク質発
現用の生体バイオファクトリーとして広く使用されている(非特許文献4、非特許文献5
、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。
【0007】
また、T.ニの幼虫も組み換えタンパク質の発現に使用される(非特許文献10、非特
許文献2、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14、非特許
文献15、非特許文献16、非特許文献17)。
【0008】
カイコにおいては、比較研究は、大半のタンパク質について、蛹に代えて幼虫で最も高
い発現収率(expression yields)が得られたことを実証した(非特許文献18、非特許
文献19)。また、蛹の齢と関連してカイコにおけるバキュロウイルス感染に対する蛹の
感受性の減少が記載された(非特許文献20)。さらに、幼虫では、生産のスケールアッ
プのため、バキュロウイルスの感染を接種(注入)に代えて一般に経口で行う。蛹は、経
口で感染できないことから、手作業で注入しなければならず、この作業は長々しく手間が
かかる。さらに、カイコの蛹は、ウイルスの接種が行われる前に、一般的に長々しいプロ
セスで(手作業で)除去されなければならない厚い繭で覆われている。
【0009】
一般的なカイコ蛹におけるより低いタンパク質発現収率及びその操作の難しさのため、
組み換えタンパク質の産生に対する幼虫の使用が普遍的に好まれるようになった。
【0010】
ヒアロフォラ・セクロピア(Hyalophora cecropia)の蛹等の他の系で同様の不利益が
見られる。H.セクロピアの蛹における特定のタンパク質の発現は、T.ニ幼虫よりも低
い(非特許文献21)。さらに、ヒアロフォラ・セクロピアの蛾は飼育が難しく、厳密に
一化性(1年当たり1世代)であり、1サイクル当たりの卵が非常に少量であり、繭が高
密度である(ウイルスの接種を行う前に厚い繭を(手作業で)除去しなければならず、一
般に手間のかかる作業である)。これらの不利益は全て、組み換えタンパク質の発現に対
して、ヒアロフォラ・セクロピアの蛹を不十分な系、特に組み換えタンパク質の発現に対
して効率、拡張性及び自動化に乏しい系とする。
【0011】
BEVSを使用する昆虫での組み換えタンパク質の発現のため、特にBEVSを使用す
る昆虫での組み換えタンパク質の工業的発現のためのシステムをより効率的で容易に自動
化(スケールアップ)する要求が存在する。
【0012】
徹底的な研究の後、本発明者らは、上記の課題の解決策、すなわち鱗翅目に属する、よ
り好ましくはトリコプルシア・ニ種に属する蛹における、幼虫での発現よりも効率的で、
更にはほぼ完全な自動化(スケールアップ)を可能とし、特に工業規模で、効率を増し、
組み換えタンパク質の発現に関連するコストを下げる、タンパク質発現系を見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2012/168493号
【文献】国際公開第2012168492号
【非特許文献】
【0014】
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【文献】Gomez-Casado E, Gomez-Sebastian S, Nunez MC, Lasa-Covarrubias R, Martinez-Pulgarin S, Escribano JM. Insect larvae biofactories as a platform for influenza vaccine production. Protein Expr Purif. 79: 35-43. 2011
【文献】Smith, G.E., M.D. Summers, and M.J. Fraser. 1983. Production of human beta interferon in insect cells infected with a baculovirus expression vector. Mol. Cell. Biol. 3: 2156-2165
【文献】Wang, DN; Liu, JW; Yang, GZ; Zhang, WJ; Wu, XF. 2002. Cloning of anti-LPS factor cDNA from Tachypleus tridentatus, expression in Bombyx mori larvae and its biological activity in vitro. Molecular Biotechnology, 21(1), 1-7
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【文献】Perez-Martin, E., Gomez-Sebastian, S., Argilaguet, J.M., Sibila, M., Fort, M., Nofrarias, M., Kurtz, S., Escribano, J.M., Segales, J., Rodriguez, F., 2010. Immunity conferred by an experimental vaccine based on the recombinant PCV2 Cap protein expressed in Trichoplusia ni-larvae. Vaccine 28 (11), 2340-2349
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【文献】Perez-Filgueira, D. A.; Gonzalez-Camacho, F.; Gallardo, C.; Resino-Talavan, P.; Blanco, E.; Gomez-Casado, E.; Alonso, C.; Escribano, J. M.. 2006. Optimization and validation of recombinant serological tests for African swine fever diagnosis based on detection of the p30 protein produced in Trichoplusia ni larvae. Journal of Clinical Microbiology, 44(9), 3114-3121
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【文献】Akihiro Usami et al (Akihiro Usami, Seiji Ishiyama, Chiaki Enomoto, Hironobu Okazaki, Keiko Higuchi, Mashahiro Ikeda, Takeshi Yamamoto, Mutsumi Sugai, Yukiko Ishikawa, Yumiko Hosaka, Teruyuki Koyama, Yoneko Tobita, Syoko Ebihara, Toshiko Mochizuki, Yoshimi Asano and Hidekazu Nagaya, Comparison of recombinant protein expression in a baculovirus system in insect cells (Sf9) and silkworm, J. Biochem. 2011;149(2):219-227
【文献】Chazarra S, Aznar-Cervantes S, Sanchez-del-Campo L, Cabezas-Herrera J, Xiaofeng W, Cenis JL, Rodriguez-Lopez JN, Purification and kinetic properties of human recombinant dihydrofolate reductase produced in Bombyx mori chrysalides, Appl Biochem Biotechnol. 2010 Nov;162(7):1834-46
【文献】Journal of General Virology (1992), 73, 3195-320
【文献】Hellers, M. and Steiner, H.; Insect Biochem. Molec. Biol., Vol 22, Bo.1, pp. 35-39, 1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は、診断薬、ワクチン及び治療的処置に使用される組み換えタンパ
ク質を産生するため、オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイル
ス(Autographa californica multicapsid nucleopolyhedrovirus)(AcMNPV)に
由来するバキュロウイルスベクターと組み合わせた、鱗翅目に属する、より好ましくはト
リコプルシア・ニ種に属する蛹(サナギ(chrysalises))の使用に関する。組み換えタ
ンパク質発現に対するトリコプルシア・ニ種に由来する蛹(サナギ)の使用、特に組み換
えタンパク質発現に対するトリコプルシア・ニ種に由来する蛹(サナギ)の工業的使用に
ついては、まだ報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(Ac
MNPV)に由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はトランスファーベクター/バ
クミドを含む蛹を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調
節因子として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラ
グメントの内因性レベルを超える発現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパク質の発
現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作動可能に連結された組み換え相同領域(
hr)とを含む蛹を提供する。
【0018】
また、本発明は、組み換えタンパク質の発現に対する、本発明の蛹の使用に関する。
【0019】
さらに、本発明は、
(a)蛹を準備する工程と、
(b)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMN
PV)に由来する組み換えバキュロウイルスを工程(a)の蛹に接種する工程と、
(c)少なくとも1つの組み換えタンパク質が発現するのに十分な期間に亘って工程(
b)の接種を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(d)少なくとも1つの組み換えタンパク質を含む蛹を得る工程と、
(e)任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク質を採取する工程と、
(f)任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク質を精製する工程と、
を含む、少なくとも1つの組み換えタンパク質を産生する方法を提供する。
【0020】
さらに、本明細書には、
(a)繭に含まれる蛹を準備する工程と、
(b)好ましくは特別に設計した装置によって、繭に含まれる蛹を次亜塩素酸の塩、好
ましくは次亜塩素酸ナトリウムの溶液で処理する工程と、
(c)絹を含まない(また任意に、本質的に外部殺菌された)蛹を得る工程と、
を含む、鱗翅目に属する絹を含まない蛹を産生するための操作を減らすように自動化し得
る方法が提供される。
【0021】
組み換えバキュロウイルスを産生する方法が、
(a)蛹を準備する工程と、
(b)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMN
PV)に由来する組み換えバキュロウイルスを産生するのに適したトランスファーベクタ
ー/バクミドで工程(a)の蛹をトランスフェクトする工程と、
(c)組み換えバキュロウイルスを産生するのに十分な期間に亘って工程(b)の接種
を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(d)上記組み換えバキュロウイルスを含む蛹を得る工程と、
(e)任意に、上記組み換えバキュロウイルスを採取する工程と、
(f)任意に、上記組み換えバキュロウイルスを精製する工程と、
を含む。
【0022】
また、本発明は、精密ポンプと、モバイル機械アームと、鱗翅目、好ましくはトリコプ
ルシア(Trichoplusia)属、ラキプルシア(Rachiplusia)属、スポドプテラ(Spodopter
a)属、ヘリオチス(Heliothis)属、マンズカ(Manduca)属、ヘリコベルパ(Helicover
pa)属、アスカラファ(Ascalapha)属、又はサミア(Samia)属、より好ましくはトリコ
プルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、又はヘリコベルパ属、よ
り一層好ましくはトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)種、ラキプルシア・ヌ(Rachi
plusia nu)種、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)種、ヘリオチス
・ヴィレッセンス(Heliothis virescens)種、ヘリコベルパ・アルミゲラ(Helicoverpa
armigera)種、ヘリコベルパ・ジー(Helicoverpa Zea)種、マンズカ・セクスタ(Mand
uca sexta)種、アスカラファ・オドラタ(Ascalapha odorata)種、又はサミア・シンシ
ア(Samia cynthia)種に属する蛹に流体を注入するのに適した(移動可能な)針(複数
の場合がある)とを備える装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】大規模使い捨てT.ニ昆虫飼育モジュールの図である。昆虫飼育モジュールにおいて成長している5齢期幼虫の図である。
図2】ボムビークス・モリ及びトリコプルシア・ニ鱗翅目によって形成された繭(画像の左部分)及び絹を含まない蛹(画像の右部分)の比較の図である。
図3】T.ニの繭からの絹の除去のための半自動式装置の図である。使い捨ての飼育モジュールが配置される、2個のコンテナと1つの機械アームとを備える機械の略図である。第1のコンテナは次亜塩素酸と、繭を含む飼育モジュールを通して液体を放出するシステム(該システムは、蛹を取り囲む絹をより効率的に溶解することを補助する)とを備える。第2のコンテナは蛹を洗浄するためであり、該コンテナはサナギに水を噴霧する。このコンテナの蓋には、蛹を乾燥するために空気を与えるシステムがある。プロセスの終わりには、蛹は絹を含まず、感染に使用する用意ができている、又は使用まで冷蔵保存する用意ができている。
図4】緑色蛍光タンパク質(GFP)の産生に使用したバキュロウイルス発現カセットの図である。A)ポリヘドリンプロモーター(例えば配列番号23)を使用する従来のバキュロウイルス発現カセットの図である。B)ポリヘドリンプロモーターの制御下で発現されるトランス活性化因子のIE1及びIE0をコードするAc-ie-01のcDNA;GFPの発現を駆動するエンハンサー配列hr1及びキメラプロモーターp6.9-p10(例えば配列番号17及びGPFをコードする核酸配列、例えば配列番号38)を含むTB発現カセットの図である。
図5】組み換えバキュロウイルスを注入するロボットによるT.ニ蛹の自動接種の図である。A)接種ロボットの略図である。B)昆虫蛹が配置される小孔のマトリクスの略図である。蛹を含むこれらの小孔は、穴の開いた蓋を有し、積み重ねが可能であり、生産実験室への蛹の輸送を容易にし、接種ロボットと適合性である。同じパネルにおいて、蛹を含む小孔の及び蓋を含む実際の写真画像を示す。C)ロボットアームと接続される針による蛹の接種の略図である。
図6】従来のバキュロウイルスTB(-)(ポリヘドリンプロモーター、例えば配列番号23)又はTB改変バキュロウイルスTB(+)を使用することによる感染した蛹におけるGFPタンパク質の発現収率の比較分析の図である。A)TB(-)又はTB(+)のバキュロウイルスに感染した蛹に由来するタンパク質抽出物を分離するSDS-PAGEのクマシーブルー染色の図である。(-)は感染していない対照蛹に由来する抽出物に対応する。B)蛹バイオマス1g当たりのmgで表される、分析した各バキュロウイルスに感染した蛹で得られたGFP産生収率の定量の図である。
図7】ブタサーコウイルス2型由来カプシドタンパク質(Cap)(例えば配列番号26)又はインフルエンザウイルス由来ヘマグルチニン(HA)(例えば配列番号30)を産生するため使用したバキュロウイルス発現カセットの図である。A)ポリヘドリンプロモーターを使用する従来のバキュロウイルス発現カセットの図である。B)ポリヘドリンプロモーターの制御下で発現されるトランス活性化因子のIE1及びIE0をコードするAc-ie-01のcDNA;上で言及されるタンパク質の発現を駆動するエンハンサー配列hr1及びキメラプロモーターp6.9-p10を含むTB発現カセットの図である。
図8】従来のバキュロウイルスTB(-)(ポリヘドリンプロモーター、配列番号10、配列番号28)、又はTB改変バキュロウイルスTB(+)(例えば配列番号27又は配列番号29)を使用することによる感染した蛹におけるCapタンパク質(例えば配列番号26)の発現収率の比較分析の図である。A)TB(-)又はTB(+)のバキュロウイルスに感染した蛹に由来するタンパク質抽出物を分離するSDS-PAGEのクマシーブルー染色の図である。(-)は感染していない対照蛹に由来する抽出物に対応する。B)蛹バイオマス1g当たりのmgで表される、分析した各バキュロウイルスに感染した蛹で得られたCap産生収率の定量の図である。
図9】従来のバキュロウイルスTB(-)(ポリヘドリンプロモーター、配列番号10)又はTB改変バキュロウイルスTB(+)(例えば配列番号31)を使用することによる感染した蛹におけるHAタンパク質(配列番号30)の発現収率の比較分析の図である。A)TB(-)又はTB(+)のバキュロウイルスに感染した蛹に由来するタンパク質抽出物を分離するSDS-PAGEのクマシーブルー染色の図である。(-)は感染していない対照蛹に由来する抽出物に対応する。B)蛹バイオマス1g当たりのmgで表される、分析した各バキュロウイルスに感染した蛹で得られたHA産生収率の定量の図である。
図10】T.ニの幼虫及び蛹において、GFP、Cap(配列番号26)、HA(配列番号30)、及びウサギ出血性疾患ウイルス(RHDV、配列番号32又は配列番号33)に由来するVP60タンパク質を産生するため使用したバキュロウイルス発現カセットの図である。ポリヘドリンプロモーターの制御下で発現されるトランス活性化因子のIE1及びIE0をコードするAc-ie-01のcDNA;上で言及されるタンパク質の発現を駆動するエンハンサー配列hr1及びキメラプロモーターp6.9-p10を含むTB発現カセットの略図である。
図11】感染した蛹及び幼虫におけるGFPタンパク質の発現収率の比較分析の図である。A)TB(+)バキュロウイルスに感染した蛹(P)又は感染した幼虫(L)に由来するタンパク質抽出物を分離するSDS-PAGEのクマシーブルー染色の図である。(-)は感染していない対照蛹に由来する抽出物に対応する。B)感染した蛹又は幼虫で得られたGFP産生収率の定量の図であり、昆虫バイオマス1g当たりのmgで表される。
図12】感染した蛹及び幼虫におけるCapタンパク質の発現収率の比較分析の図である。A)TB(+)バキュロウイルスに感染した蛹(P)又は感染した幼虫(L)に由来するタンパク質抽出物を分離するSDS-PAGEのクマシーブルー染色の図である。(-)は感染していない対照蛹に由来する抽出物に対応する。B)感染した蛹又は幼虫で得られたCap産生収率の定量の図であり、昆虫バイオマス1g当たりのmgで表される。
図13】感染した蛹及び幼虫におけるHAタンパク質の発現収率の比較分析の図である。A)TB(+)バキュロウイルスに感染した蛹(P)又は感染した幼虫(L)に由来するタンパク質抽出物を分離するSDS-PAGEのクマシーブルー染色の図である。(-)は感染していない対照蛹に由来する抽出物に対応する。B)感染した蛹又は幼虫で得られたHA産生収率の定量の図であり、昆虫バイオマス1g当たりのmgで表される。
図14】感染した蛹及び幼虫におけるRHDVカプシドVP60タンパク質(G1及びRHDVb)の発現収率の比較分析の図である。A)TB(+)バキュロウイルスに感染した蛹(P)又は感染した幼虫(L)に由来するタンパク質抽出物を分離するSDS-PAGEのクマシーブルー染色の図である。(-)は感染していない対照蛹に由来する抽出物に対応する。B)感染した蛹又は幼虫で得られたRHDVカプシドタンパク質産生収率の定量の図であり、TB(+)バキュロウイルスによる昆虫バイオマス(L)1g当たりのmgで表す。(-)は感染していない対照蛹に由来する抽出物に対応する。B)感染した蛹又は幼虫で得られたRHDVカプシドタンパク質産生収率の定量の図であり、昆虫バイオマス1g当たりのmgで表す。
図15】RHDV G1及びRHDVbに由来するVP60タンパク質を発現するTB(+)バキュロウイルスによるT.ニ蛹の感染後に形成されたVLPの図である。最適な生産時間での各バキュロウイルスに感染した蛹からの抽出物をVLP精製用に処理した。陰性染色を使用して電子顕微鏡法によって試料を観察した。図は2種類の倍率でVLPを示す。2つのバキュロウイルスにより得られたVLPは同一のサイズ及び形状を提示した。顕微鏡写真は分析した視野を代表するものである。
図16】昆虫細胞培養物がない状態で感染した蛹からウイルスの接種物を得る手順の概要例の図である。
図17】3工程で感染した蛹から精製された組み換えタンパク質を得るための上流及び下流処理手順の概要例の図である。A)T.ニのサナギの産生、それらの操作及び組み換えタンパク質産生に対する最終目的地(例えば製薬会社)への任意の輸送の図である。B)in situでの処理前に数ヶ月に亘って保存が可能な、又は下流処理を進めるため他の場所へと容易に輸送することが可能な、蛹の保存、本発明の装置を使用する組み換えバキュロウイルスのロボット接種、インキュベーション、及び昆虫バイオマス凍結の図である。C)均質化、接線流濾過、及びタンパク質精製を含む、凍結バイオマスの従来の手段による下流処理の図である。
図18】昆虫細胞及び昆虫蛹において従来のバキュロウイルス及びTopBacによって改変されたバキュロウイルスを使用することによる昆虫細胞でのブタサーコウイルスのCapタンパク質の発現収率の比較の図である。
図19】感染した蛹からウイルス接種物を得る手順の概要例の図である。
図20】感染した蛹から精製された組み換えタンパク質を得る下流処理手順の概要例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本明細書で使用される「蛹(pupa)」は、変態を経る或る昆虫の生活段階を指す。蛹期
は、完全変態を経る昆虫(完全変態型昆虫)で見られる。これらの昆虫は、胚、幼虫、蛹
及び成虫の4つの生活段階を経る。蝶の蛹もサナギ(chrysalis)と呼ばれる。昆虫は、
多くの昆虫の蛹を保護する絹糸のケーシングである繭で覆って蛹を保護する場合がある。
【0025】
本明細書で使用される「バキュロウイルス」は、無脊椎動物に対する感染性ウイルスの
ファミリー(主に昆虫及び節足動物に感染する)を指す。「組み換えバキュロウイルス」
は、例えば相同組み換え又は遺伝子転位を通じて更に導入された組み換えDNAを有する
。組み換えバキュロウイルスはオートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体
病ウイルス(AcMNPV)から生じるものであってもよい。
【0026】
本明細書で使用される「発現カセット」は、遺伝子自体及び/又はこの遺伝子の発現を
制御するエレメント(例えばプロモーター)等の特定の遺伝子の発現に関与する組み換え
DNAエレメントを含む。例えば、本発明において有用な発現カセットは以下の組み換え
DNAエレメントを含む。
1.本明細書において下記の組み換えタンパク質等の組み換えタンパク質の発現を可能
とする核酸配列、及び好ましくはその発現を制御する核酸配列(少なくともプロモーター
)、並びに、
2.昆虫細胞又は昆虫のバキュロウイルス感染の間に得られる上記調節因子の正常な、
すなわち内因性のレベルを超えるIE-1及びIE-0等のバキュロウイルス転写調節因
子の発現を可能とする核酸配列。
【0027】
幾つかの実施形態では、上記発現カセットは、組み換えタンパク質をコードする上記配
列のプロモーターに作動可能に連結されたhr1等のエンハンサー相同領域(hr)を更
に含む。本発明の発現カセットの組み換えDNAエレメント形成部は、単一の核酸分子中
に存在してもよい。発現カセットの組み換えDNAエレメント形成部は異なる核酸分子中
に存在してもよい。異なる核酸分子が同じ細胞内に存在することが好ましい。
【0028】
本明細書で使用される「組み換えDNA」は、1以上のDNA鎖の組み合わせ又は挿入
によって操作されることにより通常は共に生じないDNAが組み合わせられた人工DNA
の形態を指す。
【0029】
本明細書で使用される「組み換えDNAエレメント」は、プロモーター、エンハンサー
又は遺伝子等の組み換えDNA内の機能エレメントを指す。
【0030】
本明細書で使用される「転写調節因子」は、例えばエンハンサー又はリプレッサーの領
域に結合すること及び/又は転写に関与する更なるタンパク質を補充することによって、
特定遺伝子の転写を調節する能力を有する調節タンパク質を指す。IE-1及びそのスプ
ライス変異体IE-0は、バキュロウイルス感染の間に内因性に発現される転写調節因子
である。タンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの発
現レベルは、定量的PCR又はウェスタンブロッット分析等の当業者に従来知られている
方法によってmRNAとタンパク質の両レベルにおいて特定され得る。
【0031】
本発明によれば、IE-1、IE-0及び/又はそれらのフラグメントは、バキュロウ
イルス感染の間に内因性レベルを超えてこれらのタンパク質の総レベルを増加させるよう
に組み換え発現され得る。これは、例えば内因性遺伝子の更なるコピーを導入すること、
又は内因性遺伝子のプロモーターの発現を操作することによって達成され得る。内因性遺
伝子の更なるコピーを、polh又はpB2等の好適なプロモーターの制御下の導入遺
伝子として導入することができる。
【0032】
IE-1、IE-0及びそれらのフラグメントは、配列番号1(Ac-ie-01とも
呼ばれる)~配列番号5の核酸によってコードされ得る。配列番号1は、IE-1及びI
E-0の両方をコードするAc-ie-01のcDNAであり、配列番号2はIE-1の
コード配列(CDS)であり、配列番号3はIE-0のCDSである。配列番号4及び配
列番号5は、それぞれ、触媒的転写調節活性を保持するIE-1及びIE-0のN末端ド
メインのCDSである。配列番号2~配列番号5によってコードされるタンパク質は、そ
れぞれ配列番号6~配列番号9によって表される。
【0033】
本発明で参照される核酸及びアミノ酸の配列は、それぞれデフォルトパラメーターでE
MBOSS Needleを使用して特定される(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emb
oss_needle/)それらの配列同一性又は配列類似性の程度によって他の核酸配列及びアミ
ノ酸配列と識別されるものとする。かかる変異体の生成方法として、ランダム突然変異誘
発又は部位特異的突然変異誘発、部位飽和突然変異誘発、PCRベースフラグメントアッ
センブリ、DNAシャフリング、in vitro又はin vivoでの相同組み換え
、及び遺伝子合成の方法が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される「変異体」は、その核酸又はアミノ酸の配列が親核酸又は親アミ
ノ酸の配列と1以上の位置で異なる核酸又はアミノ酸であり、相違は核酸又はアミノ酸の
残基の付加、欠失及び/又は置換であり得る。
【0035】
本明細書で使用される「相同領域」(hr)は、それらの中心近くの不完全な30bp
のパリンドロームを有する約70bpの反復単位で構成される。例えば、相同領域は、両
側に2回~8回の繰り返しを伴ってAcMNPVゲノム中の8つの場所で繰り返される。
相同領域は、転写エンハンサーとバキュロウイルスDNA複製開始点の両方として意味づ
けられる。
【0036】
本明細書で使用される「エンハンサー領域」は、転写調節因子が結合することにより関
連する遺伝子の転写レベルを増加させる制御配列を指す。
【0037】
本明細書で使用される「組み換えタンパク質」は、組み換えDNAから生じるタンパク
質を指す。かかるタンパク質をヒト及び動物の利益のため使用することができ、工業上、
商業上又は治療の用途を有してもよい。
【0038】
本明細書で使用される「作動可能に連結される」は、例えば転写調節の点で、一方が他
方に影響を及ぼすように接続される2つの核酸配列を指す。
【0039】
本明細書で使用される「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合することで転写
を開始させることができるDNA配列を指す。該配列は、転写因子等の転写を調節する様
々なタンパク質に対する結合部位を更に含んでもよい。プロモーター配列は、DNA配列
において密接に局在する種々のプロモーターフラグメント(異なる又は同一のフラグメン
トのいずれか)で構成されていてもよく、リンカー又はスペーサーによって分離されてい
てもよい。かかるプロモーターはキメラプロモーターと呼ばれる。
【0040】
本明細書で使用される「トランスファーベクター」は、バキュロウイルスゲノム中への
遺伝子情報の挿入を可能とするベクター(すなわち遺伝物質を保持するためのビヒクルと
して使用されるDNA分子)である。
【0041】
本明細書で使用される「バクミド」は、細胞又は昆虫へトランスフェクトされた場合に
バキュロウイルスを生成するのに十分なDNA配列を含むプラスミド構築物を指す。
【0042】
本明細書で使用される「クローニングベクター」は、クローニングに適した任意のベク
ターを指し、一般に制限部位、細菌増殖用の複製開始点、及び選択マーカーの存在を含む
【0043】
本発明で使用され得るクローニングベクターは、(i)タンパク質IE-0、タンパク
質IE-1及び/又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超える発現に対する配列に
加えて、(iii)組み換えタンパク質の発現を駆動するのに適したプロモーターに連結
された(ii)組み換え相同領域(hr)を含むことが好ましい。例えば、クローニング
ベクターは、組み換えタンパク質をコードする核酸配列を含んでいてもよい(すなわち発
現カセットを含むクローニングベクターである「ドナーベクター」とも呼ばれる)。或い
は、クローニングベクターはかかる配列を欠く。
【0044】
本明細書で使用される「ワクチン」は、好ましくは、特定の疾患に対して能動的後天性
免疫を提供する組み換えタンパク質を含む生物学的製剤として定義され得る。
【0045】
本明細書で使用される「約」の用語は、その値の表示値±1%を意味する、又は「約」
の用語はその値の表示値±2%を意味する、又は「約」の用語はその値の表示値±5%を
意味する、「約」の用語はその値の表示値±10%を意味する、又は「約」の用語はその
値の表示値±20%を意味する、又は「約」の用語はその値の表示値±30%を意味する
、好ましくは「約」の用語は正確に表示値(±0%)を意味する。
【0046】
詳細な説明
本発明は、組み換えバキュロウイルス及び/又はトランスファーベクター/バクミドを
含む蛹を提供する。本発明は、驚いたことに、組み換えバキュロウイルス、特に内因性レ
ベルを超えるバキュロウイルス転写調節因子の発現を引き起こす配列の昆虫蛹への導入、
及び任意に、エンハンサー相同領域(hr)配列、プロモーター又はプロモーターの組み
合わせの導入が、組み換えタンパク質の産生を先例がないレベルに増加させることができ
ることを示す。これは、in vivoでの組み換えタンパク質の発現に対する、特にi
n vivoでの組み換えタンパク質の工業生産に対するこの系の有用性を示す。
【0047】
本発明の蛹
本発明は、組み換えバキュロウイルス、及び/又はトランスファーベクター、及び/又
はバクミドを含む蛹を提供する。組み換えバキュロウイルス、及び/又はトランスファー
ベクター、及び/又はバクミドは、オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多
角体病ウイルス(AcMNPV)に由来することが好ましい。蛹は、鱗翅目、好ましくは
トリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリ
コベルパ属、アスカラファ属、又はサミア属、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシ
ア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、又はヘリコベルパ属、より好ましくはトリコプル
シア・ニ種、ラキプルシア・ヌ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、ヘリオチス・ヴィレ
ッセンス種、ヘリコベルパ・アルミゲラ種、ヘリコベルパ・ジー種、マンズカ・セクスタ
種、アスカラファ・オドラタ種、又はサミア・シンシア種に属することが好ましい。蛹は
トリコプルシア・ニ種に属することがより一層好ましい。好ましい実施形態では、本発明
の蛹はボムビークス・モリ種に属さない。好ましい実施形態では、本発明の蛹はヒアロフ
ォラ・セクロピア種に属さない。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明の蛹は、オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシ
ド核多角体病ウイルス(AcMNPV)に由来する組み換えバキュロウイルス及び/又は
トランスファーベクター/バクミドを含む、トリコプルシア属、好ましくはトリコプルシ
ア・ニ種に属する蛹である。
【0049】
本発明の蛹、特にT.ニの蛹は、特に自動化され拡張可能なプロセスにおいて、組み換
えタンパク質の発現に対して幾つかの利点を与える。例えば、T.ニの蛾のつがいは、1
サイクル当たり約1000個の卵を持つ場合がある。さらに、T.ニの蛹によって産生さ
れる繭は、他の種(例えばボムビークス・モリ、又はヒアロフォラ・セクロピア等)の蛹
を覆う繭ほど厚くなく、このため、自動化され拡張可能な生産プロセス(組み換えタンパ
ク質の工業生産)での蛹の使用に対してT.ニの蛹は特に適している。したがって、好ま
しくはオートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNP
V)に由来する組み換えバキュロウイルス、及び/又はトランスファーベクター、及び/
又はバクミドに感染したT.ニの蛹は、組み換えタンパク質産生に対して効率的で拡張可
能であり、自動化が容易な系を提供する。この系の更なる利点は、その高い生産能(バイ
オリアクターの最大20倍の生産力)、技術的に単純で実施及び検証が容易であるという
事実、費用削減(バイオリアクターの使用に関する固定資本投資の90%超の減少)、よ
り低価の商品、短時間の発生(バキュロウイルス系)、産生困難なタンパク質の高効率化
、並びに製造された製品の高い品質及び安全性である。
【0050】
本出願の発明者らは、驚いたことに、蛹、特に鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属、
ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカ
ラファ属、又はサミア属、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ
属、ヘリオチス属、又はヘリコベルパ属、より好ましくはトリコプルシア・ニ種、ラキプ
ルシア・ヌ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ヘリコ
ベルパ・アルミゲラ種、ヘリコベルパ・ジー種、マンズカ・セクスタ種、アスカラファ・
オドラタ種、又はサミア・シンシア種に属する蛹における組み換えタンパク質の発現が幼
虫における発現に匹敵し、更にはそれよりも高いことを見出した。
【0051】
特許文献2として公開された特許出願は、本発明の蛹に含まれ得る組み換えバキュロウ
イルス及びトランスファーベクター及びバクミドを開示している。
【0052】
本発明による蛹に含まれる組み換えバキュロウイルス、及び/又はトランスファーベク
ター、及び/又はバクミドは組み換えDNAを含み得ることが好ましい。例えば、本発明
による蛹に含まれる組み換えバキュロウイルス、及び/又はトランスファーベクター、及
び/又はバクミドは、組み換えタンパク質をコードする核酸配列を含み、該組み換えタン
パク質は、サブユニット単量体ワクチン、サブユニット多量体ワクチン、ウイルス様粒子
、治療用タンパク質、抗体、酵素、サイトカイン、血液凝固因子、抗凝血剤、受容体、ホ
ルモン、診断用タンパク質試薬、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)からなる群から選択
されることが好ましく、及び/又は、該組み換えタンパク質は、以下に記載されるように
、蛹によって内因性に産生されるタンパク質でないことが好ましい。例えば、本発明によ
る蛹に含まれる組み換えバキュロウイルス、及び/又はトランスファーベクター、及び/
又はバクミドは、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因
子として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0、及び/又はそれらのフラグ
メントの内因性レベルを超える発現を可能とする核酸配列を含む(例えば、内因性レベル
を超える発現は、組み換えバキュロウイルスにおいて、タンパク質IE-1、タンパク質
IE-0、及び/又はそれらのフラグメントの発現を可能とする核酸配列の追加のコピー
の存在によって得ることができる)。本発明による蛹に含まれる組み換えバキュロウイル
ス、及び/又はトランスファーベクター、及び/又はバクミドは、組み換えタンパク質の
発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作動可能に連結された組み換え相同領域
(hr)を更に含むことが好ましい。
【0053】
本発明の蛹に含まれ得るトランスファーベクターは、(i)タンパク質IE-0、タン
パク質IE-1、及び/又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超える発現に対する
配列に加えて、(iii)組み換えタンパク質の発現を駆動するのに適したプロモーター
に連結された(ii)組み換え相同領域(hr)を含むことが好ましい。好ましい一態様
では、トランスファーベクターは上記組み換えタンパク質をコードする核酸配列を含むが
、別の好ましい実施形態では、トランスファーベクターはかかる配列を欠く。好ましい実
施形態では、トランスファーベクターはバクミドである。
【0054】
トランスファーベクター及び/又はバクミドは、商業的に入手可能なバキュロウイルス
発現系である「Bac-to-Bac(商標)」(invitrogen(商標))、「BacPA
K(商標)」(Clontech(商標))、「FlashBAC(商標)」(Oxford Expressio
n Technologies(商標))、「BacuVance(商標)」(GenScript(商標))、
「Bac-N-Blue DNA(商標)」(invitrogen(商標))、「BaculoD
irect(商標)」(invitrogen(商標))、「BacVector(商標)」100
0、2000、3000(Novagen(商標))、「DiamondBac(商標)」(Sig
ma-Aldrich(商標))、又は「BaculoGold(商標)」(BD biosciences(商標
))のいずれかに由来してもよい。
【0055】
本発明の蛹(好ましくは鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポ
ドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しくはサ
ミア属、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属
、若しくはヘリコベルパ属、より好ましくはトリコプルシア・ニ種、ラキプルシア・ヌ種
、スポドプテラ・フルギペルダ種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ヘリコベルパ・アル
ミゲラ種、ヘリコベルパ・ジー種、マンズカ・セクスタ種、アスカラファ・オドラタ種、
若しくはサミア・シンシア種、又はAcMNPVに感染しやすい他の鱗翅目、より一層好
ましくはトリコプルシア属、及びトリコプルシア・ニ種に属する)は、バキュロウイルス
感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因子として機能するタンパク質IE-
1、タンパク質IE-0、及び/又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超える発現
を可能とする核酸配列を含んでもよい。上に記載される組み換えDNAエレメントは、組
み換えバキュロウイルスによって蛹に導入されることが好ましい。
【0056】
本発明によるバキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因子
として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメン
トの発現を可能とする核酸配列は、
(a)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
(b)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも7
0%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは
少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも9
5%の配列同一性を有し、組み換えバキュロウイルスにおける転写調節因子として機能し
得るタンパク質をコードする、核酸配列、
(c)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸をコ
ードする核酸配列、並びに、
(d)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも70%
、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少な
くとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%
の配列類似性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し得る
アミノ酸配列をコードする核酸配列、
からなる群から選択されることが好ましい。
【0057】
配列番号1~配列番号5の変異体の配列は、配列番号1~配列番号5の配列に対して少
なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より
好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少
なくとも95%同一である。
【0058】
配列番号6~配列番号9の変異体の配列は、配列番号6~配列番号9の配列に対して少
なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より
好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少
なくとも95%類似する。
【0059】
本発明の蛹は、組み換えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに
作動可能に連結された組み換え相同領域(hr)を更に含む、核酸配列、及び/又は組み
換えバキュロウイルス、及び/又はトランスファーベクター、及び/又はバクミドを更に
含んでもよい。
【0060】
組み換え相同領域(hr)は、配列番号21に示される配列(hr1)であることが好
ましい。
【0061】
上記組み換えタンパク質の発現を駆動するプロモーターは、
(a)配列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~
配列番号13のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、並びに、
(b)組み換えバキュロウイルスにおいてプロモーターとして機能することができ、配
列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~配列番号1
3のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも7
5%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好まし
くは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する核酸
配列、
を含む核酸の群から選択されることが好ましい。
【0062】
好ましい実施形態では、組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、
エンハンサー領域との組み合わせを含む核酸配列(本発明の蛹に含まれる核酸配列)が、
配列番号15~配列番号20からなる群から選択される。
【0063】
本発明の組み換えプロモーター、転写調節因子をコードする配列、及びエンハンサー領
域である、は、単一分子の一部を形成する必要はなく、代わりに、これらの配列は、それ
らが作動可能に連結される、すなわち、蛹内の同じ細胞内に含まれる限り、異なる分子の
一部を形成してもよい。
【0064】
本発明の蛹、及び/又は組み換えバキュロウイルス、及び/又はトランスファーベクタ
ー、及び/又はバクミドは、組み換えタンパク質をコードする核酸配列を更に含んでもよ
い。この核酸配列は、タンパク質IE-1、タンパク質IE-0、及び/又はそれらのフ
ラグメントの内因性レベルを超える発現を可能とする核酸配列、及び任意に相同領域(h
r)に作動可能に連結されることが好ましく、これらの配列は上に記載されるものである
【0065】
組み換えタンパク質は、サブユニット単量体ワクチン、サブユニット多量体ワクチン、
ウイルス様粒子、治療用タンパク質、抗体、酵素、サイトカイン、血液凝固因子、抗凝血
剤、受容体、ホルモン、診断用タンパク質試薬、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)から
なる群から選択されることが好ましい。
【0066】
好ましい実施形態では、組み換えタンパク質はウイルス様粒子タンパク質であり、好ま
しくは以下からなる群から選択される:
(a)ブタサーコウイルス、好ましくはブタサーコウイルス2型に由来するカプシドタ
ンパク質(例えば配列番号26)、
(b)口蹄疫ウイルスVP1タンパク質、VP3タンパク質又はVP0タンパク質、
(c)イヌパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、
(d)ブタパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、
(e)ヒトノロウイルス(ジェノグループI又はII)カプシドタンパク質、
(f)カリシウイルスカプシドタンパク質、
(g)ヒトパピローマウイルス、好ましくはヒトパピローマウイルス16に由来するL
1タンパク質、
(h)E型肝炎タンパク質E2、
(i)伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスVP1タンパク質、VP2タンパク質及びV
P3タンパク質、
(j)アストロウイルスORF2コード化タンパク質、
(k)インフルエンザウイルスHAタンパク質(例えば配列番号30)、NAタンパク
質及びM1タンパク質、
(l)B型肝炎のコア抗原及び表面抗原、
(m)ウサギカリシウイルス、好ましくはウサギ出血性疾患ウイルスRHDVb及びR
HDVG1(例えば配列番号32及び配列番号33)に由来するVP60タンパク質、
(n)ヒトパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質。
【0067】
例えば、組み換えタンパク質は、下記のものであってもよい。
【0068】
ブタサーコウイルス、好ましくはブタサーコウイルス2型に由来するカプシドタンパク
質、例えば、配列番号26のアミノ酸配列によって表わされる、又は配列番号25の核酸
配列によってコードされる。
【0069】
口蹄疫ウイルス(FMDV)VP1、VP3及びVP0のタンパク質、その配列は、例
えば、以下の配列に示されるか、又はそれらに由来してもよい:
-FMDV血清型O全ゲノム:GenBank JX570650.1
-FMDV血清型A全ゲノム:GenBank HQ832592.1
-FMDV血清型C全ゲノム:GenBank AY593810.1
-FMDV血清型SAT1全ゲノム:GenBank AY593846.1
-FMDV血清型SAT2全ゲノム:GenBank JX014256.1
-FMDV血清型ASIA1全ゲノム:GenBank HQ631363.1。
【0070】
イヌパルボウイルスVP1及びVP2タンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に
示されるか、又はそれらに由来してもよい:
-カプシドタンパク質VP1に対するイヌパルボウイルスVP1遺伝子、部分cds、株
:1887/f/3。GenBank:AB437434.1。
-カプシドタンパク質VP1に対するイヌパルボウイルスVP1遺伝子、部分cds、株
:1887/M/2。GenBank:AB437433.1。
-イヌパルボウイルスVP2遺伝子、全cds、株:HNI-2-13。GenBank
:AB120724.1。
-イヌパルボウイルスVP2遺伝子、全cds、株:HNI-3-4。GenBank:
AB120725.1。
-イヌパルボウイルスVP2遺伝子、全cds、株:HNI-3-11。GenBank
:AB120726.1。
-イヌパルボウイルスVP2遺伝子、全cds、株:HNI-4-1。GenBank:
AB120727.1。
-イヌパルボウイルスVP2遺伝子、全cds、株:HNI-1-18。GenBank
:AB120728.1。
-イヌパルボウイルスVP2タンパク質(VP2)遺伝子、全cds。GenBank:
DQ354068.1。
-イヌパルボウイルスVP2遺伝子、全cds、株:HCM-6。GenBank:AB
120720.1。
-イヌパルボウイルス単離株Taichung VP2遺伝子、全cds。GenBan
k:AY869724.1。
-イヌパルボウイルスVP2遺伝子、全cds、株:HCM-8。GenBank:AB
120721.1。
-イヌパルボウイルス1型タンパク質VP1及びVP2:GenBank AB5188
83.1
-イヌパルボウイルス2a型VP1及びVP2。GenBank:M24003.1
-イヌパルボウイルス2b型VP2:GenBank FJ005265.1
-イヌパルボウイルス2C型VP2:GenBank FJ005248.1
【0071】
ブタパルボウイルスVP1及びVP2タンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に
示されるか、又はそれらに由来してもよい:
-ブタパルボウイルス株693a。GenBank:JN400519.1
-ブタパルボウイルス株8a。GenBank:JN400517.1
【0072】
ヒトパルボウイルスVP1及びVP2タンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に
示されるか、又はそれらに由来してもよい:
-ヒトパルボウイルスB19株VP1全cds。GenBank:AF264149.1
-ヒトパルボウイルスB19単離株Vn115 NS1(NS1)、7.5kDaタンパ
ク質(NS1)、VP1(VP1)、9.5kDaタンパク質(VP1)、及びVP2(
VP2)の遺伝子、全cds。GenBank:DQ357065.1
-B19ウイルス単離株FoBe VP1(VP1)及びVP2(VP2)の遺伝子、全
cds。GenBank:AY768535.1
-B19ウイルス単離株Br543 NS1(NS1)、VP1(VP1)及びVP2(
VP2)の遺伝子、全cds。GenBank:AY647977.1
-ヒトパルボウイルス4単離株VES065CSF NS1、VP1及びVP2の遺伝子
、全cds。GenBank:HQ593532.1
-ヒトパルボウイルス4単離株VES085CSF NS1遺伝子、部分cds;並びに
VP1遺伝子及びVP2遺伝子、全cds。GenBank:HQ593531.1
-パルボウイルスB19株BB-2 NS1、VP1及びVP2の遺伝子、全cds。G
enBank:KF724387.1
【0073】
ヒトノロウイルス(ジェノグループI又はII)カプシドタンパク質、その配列は、例
えば、以下の配列に示されるか、又はそれらに由来してもよい:
-ノーウォークウイルス:GenBank M87661、NP056821
-サザンプトンウイルス:GenBank L07418
-メキシコウイルス:GenBank U22498
-セトウイルス:GenBank AB031013
-チバウイルス:GenBank AB042808
-ローズデールウイルス:GenBank X86557
-スノーマウンテンウイルス:GenBank U70059
-ハワイウイルス:GenBank U07611
【0074】
ウサギ出血性疾患ウイルスVP60タンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に示
されるか、又はそれらに由来してもよい:
-RHDV AST/89全ゲノム:GenBank:Z49271.2
-RHDV N11全ゲノム:GenBank:KM878681.1
-RHDV CBVal16全ゲノム;GenBank:KM979445.1
-配列番号32
-配列番号33
【0075】
ヒトパピローマウイルスL1タンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に示される
か、又はそれらに由来してもよい:
-HPV6:GenBank:JN252323.1
-HPV11:GenBank:JQ773411.1
-HPV16:GenBank DQ155283.1
-HPV18:GenBank FJ528600.1
【0076】
E型肝炎ウイルスE2タンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に示されるか、又
はそれらに由来してもよい:
-E型肝炎ウイルス、全ゲノムNCBI参照配列:NC_001434.1
-ブタE型肝炎ウイルス単離株ITFAE11カプシドタンパク質遺伝子。GenBan
k:JN861806.1
【0077】
伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスのVP1タンパク質、VP2タンパク質及びVP3
タンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に示されるか、又はそれらに由来してもよ
い:
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスVP1(VP1)遺伝子、全cds。GenBan
k:AY099457.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス単離株PT VP1遺伝子、全cds。GenBa
nk:DQ679814.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス単離株OE/G2 VP1遺伝子、全cds。Ge
nBank:DQ679813.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス単離株OA/G1 VP1遺伝子、全cds。Ge
nBank:DQ679812.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス単離株HOL VP1遺伝子、全cds。GenB
ank:DQ679811.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス株TL2004 VP1遺伝子、全cds。Gen
Bank:DQ118374.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス単離株CA-K785 VP1遺伝子、全cds。
GenBank:JF907705.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス単離株D495 VP1遺伝子、全cds。Gen
Bank:JF907704.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス株A-BH83 VP1 mRNA、全cds。G
enBank:EU544149.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス株Cro-Pa/98 VP1遺伝子、全cds。
GenBank:EU184690.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスVP2 mRNA、全cds。GenBank:A
Y321509.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスVP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、全c
ds。GenBank:M97346.1
-伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスVP2遺伝子、全cds。GenBank:AF5
08177.1
【0078】
カリシウイルスカプシドタンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に示されるか、
又はそれらに由来してもよい:
-ネコカリシウイルスカプシドタンパク質遺伝子、全cds。GenBank:L097
19.1
-ネコカリシウイルスカプシドタンパク質遺伝子、全cds。GenBank:L097
18.1
-カプシドタンパク質(ORF2)に対するヒトカリシウイルスHU/NLV/Wort
ley/90/UK RNA、株HU/NLV/Wortley/90/UK。GenB
ank:AJ277618.1
-カプシドタンパク質(ORF2)に対するヒトカリシウイルスHU/NLV/This
tlehall/90/UK RNA、株HU/NLV/Thistlehall/90
/UK。GenBank:AJ277621.1
-カプシドタンパク質(ORF2)に対するヒトカリシウイルスHU/NLV/Vale
tta/95/Malta RNA、株HU/NLV/Valetta/95/Malt
a。GenBank:AJ277616.1
-ヒトカリシウイルスNLV/Stav/95/Norカプシドタンパク質遺伝子、全c
ds。GenBank:AF145709.1
-ウシ腸カリシウイルス株Bo/CV500-OH/2002/USカプシドタンパク質
遺伝子、全cds。GenBank:AY549155.1
-ヒトカリシウイルスNLV/Mora/97/SEカプシドタンパク質遺伝子、全cd
s。GenBank:AY081134.1
-ヒトカリシウイルスNLV/Potsdam 196/2000/DEカプシドタンパ
ク質遺伝子、全cds。GenBank:AF439267.1
-ヒトカリシウイルスNLV/1581-01/SWEカプシドタンパク質遺伝子、全c
ds。GenBank:AY247442.1
-ヒトカリシウイルス、Hu/NLV/GII/MD134-10/1987/USカプ
シドタンパク質遺伝子、全cds。GenBank:AY030313.1
【0079】
アストロウイルスORF2コード化タンパク質、その配列は、例えば、以下の配列に示
されるか、又はそれらに由来してもよい:
-ブタアストロウイルス4 ORF1b遺伝子、部分cds;及びORF2遺伝子、全c
ds。GenBank:JX684071.1
-アストロウイルスMLB1 HK05、全ゲノム。NCBI参照配列:NC_0143
20.1
-アストロウイルスwild boar/WBAstV-1/2011/HUN、全ゲノ
ム。NCBI参照配列:NC_016896.1
-ヒトアストロウイルスBF34、全ゲノム。NCBI参照配列:NC_024472.

-アストロウイルスMLB1株Hu/ITA/2007/PR326/MLB1 RNA
依存性RNAポリメラーゼ(ORF1b)遺伝子、部分cds;及びカプシドタンパク質
(ORF2)遺伝子、全cds。GenBank:KF417713.1
-ヒトアストロウイルス5株Hu/Budapest/HUN5186/2012/HU
N 非構造タンパク質(ORF1a)遺伝子及び非構造タンパク質(ORF1b)遺伝子
、部分cds;並びにカプシドタンパク質(ORF2)遺伝子、全cds。GenBan
k:KF157967.1。
-ヒトアストロウイルス1単離株Shanghaiカプシドタンパク質(ORF2)遺伝
子、全cds。GenBank:FJ792842.1
-カプシドタンパク質に対するヒトアストロウイルス8型orf2遺伝子。GenBan
k:Z66541.1
【0080】
インフルエンザウイルスHAタンパク質、NAタンパク質及びM1タンパク質、その配
列は、例えば、以下の配列に示されるか、又はそれらに由来してもよい:
-配列番号30
-ヘマグルチニンに対するインフルエンザAウイルス(A/duck/Chiba/25
-51-14/2013(H7N1))HA遺伝子、全cds。GenBank:AB8
13060.1
-合成構築物ヘマグルチニン(HA)mRNA、全cds。GenBank:DQ868
374.1
-インフルエンザウイルスA(A/swine/Shandong/2/03(H5N1
))ヘマグルチニン(HA)遺伝子、全cds。GenBank:AY646424.1
-インフルエンザA型のHAをコードするcDNA。GenBank:E01133.1
-インフルエンザAウイルス(A/swine/Korea/S452/2004(H9
N2))NA遺伝子、全cds。GenBank:AY790307.1
-インフルエンザAウイルス(A/Thailand/2(SP-33)/2004(H
5N1))ノイラミニダーゼ(NA)遺伝子、全cds。GenBank:AY5551
52.3
-ノイラミニダーゼに対するインフルエンザAウイルス(A/swine/Binh D
oung/02_16/2010(H1N2))NA遺伝子、全cds。GenBank
:AB628082.1
-インフルエンザAウイルス(A/chicken/Jalgaon/8824/200
6(H5N1))ノイラミニダーゼ(NA)遺伝子、全cds。GenBank:DQ8
87063.1
-インフルエンザAウイルスSC35M M2遺伝子及びM1遺伝子、全cds。Gen
Bank:DQ266100.1
-インフルエンザウイルス型/Leningrad/134/47/57(H2N2)M
1及びM2 RNA、全cds。GenBank:M81582.1
-インフルエンザAウイルスSC35M M2遺伝子及びM1遺伝子、全cds。Gen
Bank:DQ266100.1
-マトリクスタンパク質2、マトリクスタンパク質1に対するインフルエンザAウイルス
(A/Tochigi/2/2010(H1N1))M2遺伝子、M1遺伝子、全cds
。GenBank:AB704481.1
【0081】
B型肝炎のコア抗原及び表面抗原、その配列は、例えば、以下の配列に示されるか、又
はそれらに由来してもよい:
-B型肝炎ウイルス株HBV248プレコアタンパク質遺伝子及びコアタンパク質遺伝子
、全cds。GenBank:KP857118.1
-B型肝炎ウイルス株HBV401プレコアタンパク質遺伝子及びコアタンパク質遺伝子
、全cds。GenBank:KP857113.1
-B型肝炎ウイルス株HBV403プレコアタンパク質遺伝子及びコアタンパク質遺伝子
、全cds。GenBank:KP857068.1
-B型肝炎表面抗原に対するB型肝炎ウイルスS遺伝子、部分cds、単離株:B050
3327(PTK)。GenBank:AB466596.1
【0082】
上記組み換えタンパク質は、蛹によって内因性に産生されるタンパク質ではないことが
好ましい。例えば、組み換えタンパク質は、ヒアロフォラ・セクロピア種の蛹等の蛹によ
って内因性に産生されるタンパク質ではない。例えば、組み換えタンパク質はセクロピン
A又はアタシン(attacin)ではない。
【0083】
本発明の蛹は、絹を含まない蛹であってもよく、又は絹繭の内部にあってもよい。蛹が
絹を含まない蛹でない場合、当業者は繭糸(cocoon silk)を除去する方法を知っている
。例えば、繭糸を好ましくは塩、好ましくは次亜塩素酸(HClO)の塩、好ましくは次
亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の溶液(本明細書では「溶解液(dissolving solutio
n)」とも呼ぶ)で溶解してもよい。図3に示されるように、この手順は特別に設計され
た装置によって自動化されてもよい。
【0084】
組み換えタンパク質の発現のための本発明の蛹の使用
本発明の蛹は、そのあらゆる変異体で、組み換えタンパク質の発現に使用され得る。し
たがって、本発明は、組み換えタンパク質、好ましくは本明細書において上に詳述される
組み換えタンパク質の発現のための本発明の蛹の使用を提供する。
【0085】
本発明の組み換えタンパク質を産生する方法
また、本発明は、組み換えタンパク質(既に上に記載されるように、蛹によって内因性
に産生されるタンパク質ではないことが好ましい)を産生する方法を提供する。例えば、
本発明による少なくとも1つの組み換えタンパク質を得る方法は、
(a)蛹を準備する工程と、
(b)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMN
PV)に由来する組み換えバキュロウイルスを工程(a)の蛹に接種する工程と、
(c)少なくとも1つの組み換えタンパク質が発現するのに十分な期間に亘って工程(
b)の接種を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(d)少なくとも1つの組み換えタンパク質を含む蛹を得る工程と、
(e)任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク質を採取する工程と、
(f)任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク質を精製する工程と、
を含む、或いはそれらからなる。
【0086】
上記の方法の工程(a)の蛹は、好ましくは、上に詳細に記載されるように、本発明に
よる蛹であり得る。工程(a)の蛹は、鱗翅目に属することが好ましい。蛹は、鱗翅目、
好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズ
カ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、又はサミア属、好ましくはトリコプルシア属、
ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、又はヘリコベルパ属、より好ましくは
トリコプルシア・ニ種、ラキプルシア・ヌ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、ヘリオチ
ス・ヴィレッセンス種、ヘリコベルパ・アルミゲラ種、ヘリコベルパ・ジー種、マンズカ
・セクスタ種、アスカラファ・オドラタ種、又はサミア・シンシア種、より一層好ましく
はトリコプルシア・ニ種に属することが好ましい。既に上に記載されるように、上記蛹は
組み換えタンパク質の発現を可能とする核酸配列を含んでもよい。既に上に記載されるよ
うに、上記蛹は、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因
子として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメ
ントの内因性レベルを超える発現を可能とする核酸配列を含んでもよい(上記「本発明の
蛹」を参照されたい)。
【0087】
上記の工程(a)の蛹は、卵から発達させてもよい。例えば、上記の工程a)の蛹は、
例えば特別に設計された使い捨て又は再利用可能な飼育器において、15日間~18日間
、卵から蛹まで発達させてもよい。また、工程a)の蛹は、既に蛹の形態で提供されても
よい。
【0088】
上記の工程(a)の蛹が繭の内部にある場合、本発明の組み換えタンパク質を産生する
方法は、蛹から繭糸を除去する工程を更に含んでもよい。例えば、繭糸を、好ましくは例
えば0.1%~5%重量/体積、例えば0.1%、0.2%、0.5%、1%、3%又は
5%重量/体積等の濃度の次亜塩素酸(HClO)を含む塩、好ましくは次亜塩素酸ナト
リウム(NaClO)の溶液で溶解し得ることが好ましい。例えば、蛹を0.1%~5%
重量/体積の濃度の次亜塩素酸ナトリウムの溶液に浸漬してもよく、又は該溶液を蛹に噴
霧してもよい。繭糸の溶解は、数秒間~数分間を要する場合がある。工程(a)の蛹から
の繭糸の選除は、蛹が繭の内部にいる場合、半自動化又は自動化の形態(ロボット化され
た絹の選除)で行われることが好ましい。この点について、ヒアロフォラ・セクロピア又
はボムビークス・モリ等の幾つかの種の繭が、厚い繭であるという事実は、他の属又は種
(トリコプルシア属、特にトリコプルシア・ニ種等)に対して不利である。トリコプルシ
ア属、特にトリコプルシア・ニ種の蛹は、それほど密ではない絹の繭を有し、容易に溶解
され得る。これは、自動化又は半自動化の形態で全プロセスを行うことができため、効率
を増加させ、全体のコストを下げることができる利点を意味する
【0089】
上記繭は、絹繭の溶解に要する時間を減少させるため、好ましくは圧縮された空気擾乱
(air turbulence)によって繭に適用される溶解液を含むレシピエントを備えてもよい、
半自動式機械で除去され得る。その後、微量の溶解液を除去するため、絹を含まない蛹を
洗浄コンテナで洗浄した後、風乾してもよい。
【0090】
したがって、後に工程(b)を行うのがより容易であることから、絹を含まない蛹が好
ましい。したがって、非常に密な繭を有する蛹はあまり好ましくはない。例えば、ボムビ
ークス・モリの蛹は非常に密で厚い、緻密な繭を有し、上に記載されるように、数分間、
塩溶液で溶解することによって容易に除去することができない。ヒアロフォラ・セクロピ
アの蛹についても同じことが言える。ボムビークス・モリ及び/又はヒアロフォラ・セク
ロピアの蛹の繭は、手作業で除去しなくてはならない。
【0091】
これに反して、T.ニ等の他の種の蛹はそれほど密ではない絹の繭を含み、上に記載さ
れるように容易に溶解することができる。したがって、自動又は半自動の手順によってそ
れらの繭を除去することができることから、これらの蛹は本発明の組み換えタンパク質を
産生する方法に対して好ましく、組み換えバキュロウイルスを注入する(工程(b))用
意ができている蛹の取得に対してスケールアップを容易にする。
【0092】
繭糸を除去した後、微量の塩溶液(例えば次亜塩素酸ナトリウム)を除去するため蛹を
水で洗浄することが好ましい。絹を含まない蛹をその後乾燥し、工程(b)を行う前に、
低温(例えば4℃)で保存してもよい。例えば、絹を含まない蛹を、工程(b)を行う前
に、低温(例えば4℃)で最長1ヶ月間保存してもよい。
【0093】
したがって、また本発明は、
(a)繭に含まれた蛹(好ましくは上に記載される本発明の蛹)を準備する工程と、
(b)上に詳細に記載されるように、塩の溶液、好ましくは次亜塩素酸の塩、好ましく
は次亜塩素酸ナトリウムの溶液で繭に含まれる上記蛹を処理する工程と、
(c)絹を含まない(好ましくは本質的に殺菌された)蛹を得る工程と、
を含む、絹を含まない蛹(好ましくは鱗翅類に属する絹を含まない蛹、好ましくは本発明
の蛹)を産生する方法を提供する。
【0094】
したがって、本発明はまた、本質的に絹を含まない(すなわち繭を有しない)本発明の
蛹を提供する。好ましい実施形態では、本発明の本質的に絹を含まない蛹はボムビークス
・モリ種に属さない。好ましい実施形態では、本発明の本質的に絹を含まない蛹はヒアロ
フォラ・セクロピア種に属さない。好ましい実施形態では、本発明の本質的に絹を含まな
い蛹は、トリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ
属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、又はサミア属、好ましくはトリコプルシア属、ラ
キプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、又はヘリコベルパ属に属する。好ましい
実施形態では、本発明の本質的に絹を含まない蛹は、トリコプルシア・ニ種、ラキプルシ
ア・ヌ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ヘリコベル
パ・アルミゲラ種、ヘリコベルパ・ジー種、マンズカ・セクスタ種、アスカラファ・オド
ラタ種、又はサミア・シンシア種、より一層好ましくはトリコプルシア・ニ種に属する。
【0095】
本発明の方法の工程(b)は、オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角
体病ウイルス(AcMNPV)に由来する組み換えバキュロウイルスによる、工程(a)
の蛹の接種に関する。本発明の蛹に含まれ得る組み換えバキュロウイルスは上に詳細に記
載され、また例示的な模式図を図4Bに示す。したがって、工程(b)では、上に記載さ
れる組み換えバキュロウイルスを含む本発明による蛹を提供するため、本発明の蛹に組み
換えバキュロウイルスを接種することが好ましい。特許文献2として公開された特許出願
は、本発明の組み換えタンパク質を産生する方法の工程(b)において、本発明による蛹
に接種され得る組み換えバキュロウイルスを開示している。組み換えバキュロウイルスは
、組み換えタンパク質、好ましくは本明細書において上に定義される群から選択される組
み換えタンパク質をコードする核酸配列(発現カセット)を含む。
【0096】
後の組み換えバキュロウイルスによる接種がより容易で、自動又は半自動で行うことが
可能であり、上記方法のスケールアップ及び再現性を促すことから、絹を含まない蛹が好
ましい。
【0097】
工程(b)による組み換えバキュロウイルスの接種は、当業者に対して当該技術分野で
知られている技術によって行われ得る。本明細書で定義される「接種」は、身体への物質
の導入であり、この場合、蛹への組み換えバキュロウイルスの導入を指す。また、接種を
「注入」と呼ぶ場合もある。幼虫はバキュロウイルスによる接種を受けることから、この
プロセスもまた本明細書では「バキュロウイルスによる幼虫の感染」と呼ぶ場合がある。
【0098】
上記接種は、少なくとも1つのバキュロウイルスを含む所定量の溶液を蛹に注入するこ
とによって行われることが好ましい。注入は、蛹を穿孔し、蛹の体内にバキュロウイルス
を含む所定量の溶液を投与する針を用いて行われることが好ましい。この工程も自動化す
ることができ、蛹は例えば、小孔のマトリクス又はアレイに置かれてもよく、接種の装置
又はロボット(以下に記載される)は自動的に蛹内にバキュロウイルスを投与してもよい
。例えば、蛹を小孔のマトリクス(又はアレイ)に置いてもよく、接種の装置又はロボッ
ト(例えばロボットアームに針を備える)が小孔に自動的に針を配置して、針が蓋の穴を
通って蛹にアクセスするように、該マトリクスは中心に穴を有する蓋を備える。上記針は
蛹の体を、例えば約1ミリメートル~5ミリメートル、好ましくは約3mm穿通し(これ
も自動化可能である)、蛹内部にバキュロウイルスを含む溶液を投与する。上記装置又は
ロボットは、蛹に正確な量のバキュロウイルス(例えばバキュロウイルスを含む約0.5
マイクロリットル~10マイクロリットルの量の溶液、好ましくは約5μl)を投与する
ことができる精密ポンプを備えてもよい。上記ロボットは、精密位置で蛹にバキュロウイ
ルスを注入することができる1以上の針を備えるアームを備えてもよい。一旦これが行わ
れると、ロボットを小孔から出しても、蛹が置かれるマトリクスの蓋のおかげで、容易に
蛹をマトリクス小孔に残し、また、針だけが穴を通り抜けることができるようにマトリク
スの蓋の穴は蛹より小さいため、ロボットアームが蛹から針を取り除く際に蛹は小孔から
取り除かれず、したがって、針は蛹及び小孔マトリクスから取り除かれて、小孔に蛹が残
る。この好ましい配置により、接種プロセスは自動で迅速であり、効率的で、高度に再現
可能である(蛹はいずれも、同じ手順でバキュロウイルスを含む同じ量の溶液を受ける)
。上記ロボットは、移動可能であってもよく、毎時、蛹約3000個~約10000個の
速度で蛹にバキュロウイルスを接種し得る、幾つかの接種針(すなわち精密位置で蛹にバ
キュロウイルスを接種又は注入することができる針)を有してもよい。
【0099】
例えば、約50超のプラーク形成単位(PFU)の量のバキュロウイルスを各蛹に接種
する。例えば、約50、約100、約500、約1000、約5000、約10000、
約15000、約20000、約25000、約30000、約40000、約5000
0、約60000、約75000以上のPFU(更には約1000000)を各蛹に接種
する。例えば、既に上に言及されるように、バキュロウイルスは溶液に含まれるため、バ
キュロウイルスを含む特定量の溶液を蛹に注入する。例えば、該溶液はバキュロウイルス
を含む細胞培養液であってもよい。例えば、該溶液は、バキュロウイルスを含む1×PB
S pH7.4、1mM PMSF(プロテアーゼ阻害剤)、及び5mM DTTの溶液
等のバキュロウイルスを含む緩衝溶液であってもよい。例えば、上記蛹には、約0.5μ
l~10μl、例えば約0.5μ1、例えば1μl~10μl、例えば約1μl、約2μ
l、約3μl、約5μl、約7μl又は約10μlの量のバキュロウイルスを含む溶液が
接種され得る。例えば、各蛹は、50PFU~1000000PFUを含む0.5μl~
10μlの溶液を受ける。
【0100】
接種の自動化のおかげで、上記ロボットは、毎時約3000個以上、例えば毎時約30
00個~約10000個の蛹の接種を行い得る。上記ロボットは、マトリクス又はアレイ
で提供される蛹に流体を送達するのに適している。
【0101】
本発明の方法の工程(c)は、少なくとも1つの組み換えタンパク質が発現するのに十
分な期間に亘って工程(b)の接種を受けた蛹をインキュベートすることを含む。このイ
ンキュベーション工程は、少なくとも約72時間、例えば(接種後)約72時間、約96
時間、約100時間、約125時間、約150時間、約168時間以上の期間に亘って行
われ得ることが好ましい。上記インキュベーション時間は、接種後約96時間~168時
間、又は接種後約72時間~168時間であることが好ましい。接種工程は、好ましくは
光又は湿度管理の必要のないインキュベーターにおいて約22℃~28℃の温度で行われ
ることが好ましい。接種を受けた蛹(好ましくはマトリクスの小孔に置かれる)は、上記
の期間(インキュベーション)に亘ってマトリクスの小孔に残されてもよい。別の実施形
態では、蛹はマトリクスから取り除かれ、インキュベーション時間の間、袋又は蒸散可能
な任意のレシピエント等のどこか他の場所に入れられる(インキュベーションは、完全に
閉じたコンテナ中ではなくガス交換があるコンテナで行われることが好ましいとされる)
【0102】
当業者は、発現するタンパク質に応じ、先の実験に基づいて各蛹及び各組み換えタンパ
ク質に対して必要なインキュベーション時間及びインキュベーション条件を計算する。
【0103】
本発明の方法の工程(d)は、インキュベーション工程(c)の間に発現した少なくと
も1つの組み換えタンパク質を含む蛹を得ることを含む。少なくとも1つの組み換えタン
パク質を含む蛹は、マトリクス/アレイ(又はインキュベーション場所)から収集し得る
。少なくとも1つの組み換えタンパク質を含むこれらの蛹は、後の処理用に(凍結又は凍
結乾燥されて)保存してもよい。例えば、少なくとも1つの組み換えタンパク質を含む蛹
は、(好ましくは真空下で)パッケージに包装してもよい。蛹を含むパッケージを保存し
、輸送し、及び/又は更に処理してもよい。
【0104】
また本発明は、本発明の蛹を含み、好ましくは該蛹が少なくとも1つの組み換えタンパ
ク質を含む、パッケージを提供する。好ましくは、上記蛹は、真空下で包装され、本発明
のパッケージは、したがって、例えば、酸化を回避するため凍結又は凍結乾燥された真空
の蛹を含む。これは、より容易な操作及びより長い保存期間を可能とする。
【0105】
また、上記の方法の工程(d)に従って得られた蛹を凍結し、更なる処理のために保存
してもよい。例えば、蛹を、更に処理するまで、蛹を収集した直後に約-20℃、又は約
-80℃で凍結してもよい。例えば、少なくとも1つの組み換えタンパク質を含む蛹を、
組み換えタンパク質を抽出するまで、例えば約-20℃~-70℃の温度で凍結してもよ
い。組み換えタンパク質を含む蛹を、例えば1年超等に亘って長期間凍結保存してもよい
【0106】
本発明の方法の(任意の)工程(e)は、任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク
質を採取することを含む。当業者は、工程(d)で得られた蛹に含まれる少なくとも1つ
の組み換えタンパク質を採取する方法及びプロトコルを知っている。当然ながら、これら
の方法及び/又はプロトコルは、発現した組み換えタンパク質の性質に依存し得る。
【0107】
例えば、タンパク質は、好ましくは中性pHのバッファーの存在下で、蛹をホモジナイ
ズすることによって(例えば、ブレンダーホモジナイザー又はロータ-ステータホモジナ
イザー等のホモジナイザー機又はホモジナイザーミキサーにおいて少なくとも数秒間/数
分間)抽出してもよく、該バッファーは酸化防止剤(還元剤)、プロテアーゼ阻害剤及び
適切な洗浄剤を含むことが好ましい。例えば、上記バッファーは、約1mM~25mMの
還元剤、及び約0.01%~2%(体積/体積)の洗浄製品を含む。該バッファーは、プ
ロテアーゼ阻害剤の混合物を更に含むことが好ましい。
【0108】
均質化の後、抽出物を超音波処理及び/又は遠心分離(例えば15000G~2000
0G)して、昆虫の残骸を排除し、濾過してもよい。
【0109】
例えば、抽出手段(蛹に含まれる少なくとも1つの組み換えタンパク質を採取する方法
及びプロトコル)は、物理的に蛹を破砕すること、遠心分離、接線流濾過工程、超音波処
理、クロマトグラフ法、及び/又は滅菌濾過を含む。
【0110】
好ましい実施形態では、ホモジェネートの粘度は珪藻土(例えばCelite)を用い
るインキュベーション(濾過)によって減少し得る。タンパク質沈澱工程を含めることも
できる。
【0111】
抽出物は、当業者が組み換えタンパク質の性質に応じて選択するのに利用可能なフィル
タを使用する、接線流濾過によって浄化され得る。ダイアフィルトレーションプロセスに
よって(例えば同じ接線流濾過装置において)バッファーを変更してもよい。
【0112】
本発明の方法の(任意の)工程(f)は、任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク
質を精製することを含む。当業者は、タンパク質の精製技術を知っている。例えば、精製
はクロマトグラフィー精製、濾過又は超遠心分離によって達成され得る。
【0113】
精製した組み換えタンパク質はこのように得ることができる。この方法の一実施形態の
模式図を図17に示す。
【0114】
本発明の方法によって入手可能な組み換えタンパク質は、高純度を有し、ワクチン、診
断、化粧品、又は治療において使用され得る。
【0115】
本発明の組み換えバキュロウイルスを産生する方法
本発明はさらに、
(a)蛹を準備する工程と、
(b)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMN
PV)に由来する組み換えバキュロウイルスを産生するのに適したバクミドで工程(a)
の蛹をトランスフェクトする工程と、
(c)組み換えバキュロウイルスを産生するのに十分な期間に亘って工程(b)の接種
を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(d)上記組み換えバキュロウイルスを含む蛹を得る工程と、
(e)任意に、上記組み換えバキュロウイルスを採取する工程と、
(f)任意に、上記組み換えバキュロウイルスを精製する工程と、
を含む、組み換えバキュロウイルスを産生する方法を提供する。
【0116】
工程(a)で準備した蛹は、上に規定される絹を含まない蛹であることが好ましい。蛹
は、トリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、
ヘリコベルパ属、アスカラファ属、又はサミア属、好ましくはトリコプルシア属、ラキプ
ルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、又はヘリコベルパ属、より好ましくはトリコ
プルシア・ニ種、ラキプルシア・ヌ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、ヘリオチス・ヴ
ィレッセンス種、ヘリコベルパ・アルミゲラ種、ヘリコベルパ・ジー種、マンズカ・セク
スタ種、アスカラファ・オドラタ種、又はサミア・シンシア種、より一層好ましくはトリ
コプルシア・ニ種に属することが好ましい。
【0117】
工程(b)では、工程(a)の蛹をオートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核
多角体病ウイルス(AcMNPV)に由来する組み換えバキュロウイルスを産生するのに
適したバクミドベクターでトランスフェクトする。
【0118】
またこの工程(b)は、上に記載される組み換えタンパク質を産生する方法の工程(b
)と同じように(しかし、バキュロウイルスを接種する代わりに、バクミドベクターを接
種する)、すなわち本発明の装置を使用して自動的に又は半自動的に(下記にも記載され
る)行われ得ることから、「接種工程」と呼ばれることがある。該装置は、上に記載され
るように針で注入することによって蛹に接種されるトランスファーベクター及び/又はバ
クミドを含む所定量の溶液を蛹(好ましくは穴を有する蓋(tap)を備える小孔のマトリ
クスに入れられる)に接種してもよい。
【0119】
バクミドベクターは、例えば、クローニングベクター、ドナーベクター、トランスファ
ーベクター、及び最終的にバクミドベクターを連続して生成することにより、当業者に知
られている手順によって生成され得る。例えば、バクミドベクターの生成は国際公開第2
014/086981号として公開された特許出願に記載される。
【0120】
好ましい実施形態では、このトランスファーベクター及び/又はバクミドが、バキュロ
ウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因子として機能するタンパク
質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超え
る発現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意の
プロモーターに作動可能に連結された組み換え相同領域(hr)とを含む、或いはそれら
からなる。これらの核酸配列は既に上に記載されている。例えば、タンパク質IE-1、
タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの発現を可能とする核酸配列は、
(a)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
(b)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも7
0%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは
少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも9
5%の配列同一性を有し、組み換えバキュロウイルスにおける転写調節因子として機能し
得るタンパク質をコードする、核酸配列、
(c)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸をコ
ードする核酸配列、並びに、
(d)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも70%
、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少な
くとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%
の配列類似性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し得る
アミノ酸配列をコードする核酸配列、
からなる群から選択されることが好ましい。
【0121】
さらに、上記組み換えタンパク質の発現を駆動するプロモーターは、
(a)配列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~
配列番号13のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、並びに、
(b)組み換えバキュロウイルスにおいてプロモーターとして機能することができ、配
列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~配列番号1
3のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも7
5%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好まし
くは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する核酸
配列、
を含む核酸の群から選択されることが好ましい。
【0122】
上記組み換え相同領域(hr)は配列番号21に示される配列(hr1)であることが
好ましい。組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、エンハンサー領
域との組み合わせを含む核酸配列は、配列番号15~配列番号20を含む群から選択され
ることが好ましい。
【0123】
蛹に接種するベクターはバクミドであることが好ましい。
【0124】
工程(c)は、組み換えバキュロウイルスを産生するのに十分な期間に亘る、工程(b
)の接種を受けた蛹のインキュベーションを指す。例えば、T.ニの蛹に対するこの期間
は、ウイルス用量及び温度に応じて約72時間~約7日間とし得る。当業者は、組み換え
バキュロウイルスが産生されるのに十分な期間を計算することができる。
【0125】
その後、組み換えバキュロウイルスを含む蛹が得られる(工程(d))。組み換えバキ
ュロウイルスを含む蛹を更なる処理のため保存してもよい。例えば、酸化プロセスを抑え
、それらの操作を容易にして、安全な保存時間を延ばすため、上記蛹を真空で包装しても
よい。例えば、更に処理する前に、組み換えバキュロウイルスを含む蛹を凍結してもよい
(例えば-20℃~-80℃で)。例えば、更に処理する前に、組み換えバキュロウイル
スを含む蛹を凍結乾燥してもよい。
【0126】
任意に、組み換えバキュロウイルスを採取し、精製してもよい(工程(e)及び工程(
f))。
【0127】
本発明の装置
また、本発明は、精密ポンプと、モバイル機械アームと、蛹に(好ましくは本発明の蛹
に、ここで、該蛹は絹を含まないことが好ましく、鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属
、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アス
カラファ属、又はサミア属、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテ
ラ属、ヘリオチス属、又はヘリコベルパ属、より好ましくはトリコプルシア・ニ種、ラキ
プルシア・ヌ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ヘリ
コベルパ・アルミゲラ種、ヘリコベルパ・ジー種、マンズカ・セクスタ種、アスカラファ
・オドラタ種、又はサミア・シンシア種に属することが好ましい)流体(好ましくはバキ
ュロウイルス又はバクミドベクターを含む溶液)を注入するのに適した(移動可能な)針
とを備える、装置(本発明ではロボットとも呼ばれる)を提供する。
【0128】
上記に詳細に記載されるように、上記装置が自動的に蛹を容易に配置することができる
ように、蛹はマトリクス(又はアレイ)で提供され得る、すなわち蛹をマトリクスの小孔
に置くことが好ましい。上記マトリクスは、蛹よりも小さい穴を有する蓋(taps)を備え
ることが好ましい(すなわち、蛹はその穴を通過することができない)。
【0129】
上記装置は、針の位置(及び/又は機械アームの位置)を規定する、及び/又は針の先
端(末端)から蛹まで距離及び/又は蛹への針の穿通距離及び/又は蛹に接種する液体(
好ましくはバキュロウイルス又はバクミドベクターを含む溶液)の容量を計算するコンピ
ュータプログラムを更に備えてもよい。さらに、本発明の装置は、蛹への接種時間及び/
又は種々の接種間の時間を計算するコンピュータプログラムを更に備えてもよい。上記装
置は、針の位置を規定するカメラを更に備えてもよい。
【0130】
好ましい実施形態では、本発明の装置によって注入される流体は、組み換えバキュロウ
イルスを含む。別の実施形態では、本発明の装置によって注入される流体は、本明細書に
おいて上に記載される、AcMNPVに由来する組み換えバキュロウイルスの産生に適し
たバクミドベクターを含む。
【0131】
本発明の装置は、本発明の組み換えタンパク質を産生する方法の工程(b)、及び本発
明の組み換えバキュロウイルスを得る方法の工程(b)の実施に適している。
【0132】
例えば、本発明の装置は、約0.5μL~約10.0μLの範囲、例えば約0.5μL
、例えば約1μL~約10μL、例えば約1μL、約2μL、約3μL,約5μL、約7
μL、又は約10μLの流体の量を蛹に注入(接種)するのに適している。
【0133】
例えば、本発明の装置に備えられる針は、蛹に約1mm~約4.5mm、好ましくは約
3mmの距離で穿通され得る。
【0134】
例えば、本発明の装置は、幾つかの移動可能な接種針を備え、1時間当たり蛹約300
0個~10000個の速度で流体(好ましくはバキュロウイルス又はバクミドベクターを
含む溶液)を接種することができる。
【0135】
例えば、本発明の装置によって注入される流体は、好ましくは各蛹に注入される用量当
たり50PFU~10PFUの量でバキュロウイルスを含む。例えば、本発明の装置は
、約50超、又は約100超、又は約500超のプラーク形成単位(PFU)のバキュロ
ウイルスの量を各蛹に注入(接種)する。例えば、約50、約100、約300、約50
0、約1000、約5000、約10000、約15000、約20000、約2500
0、約30000、約40000、約50000、約100000、約500000以上
のPFU、例えば約1000000PFUを各蛹に接種する。
【0136】
本発明の装置は、該装置が高精度で蛹に所望の容量の流体(好ましくはバキュロウイル
ス又はバクミドベクターを含む溶液)を接種することを可能とする高精密ポンプを備える
ことが好ましい。
【0137】
本発明の装置は、マトリクス又はアレイで提供される蛹に流体を送達するのに適してい
る。
【0138】
本発明の装置は、各蛹にバキュロウイルスを含む液体を投与するのに十分な時間とされ
る、蛹への接種時間及び/又は接種間の時間を計算するコンピュータプログラムを更に備
えることが好ましい。
【0139】
本発明の装置は、針の位置を規定するカメラを更に備えることが好ましい。
【0140】
本発明は、絹を選除する装置(絹選除装置)を更に提供する。本発明の絹選除装置の例
の略図を図3に表す(T.ニの繭から絹選除を行う半自動式装置)。
【0141】
上に説明されるように、本発明の絹選除装置(「絹選除機」とも呼ばれる)は、絹溶解
液を含む少なくとも1つのコンテナを備える。例えば、該コンテナは次亜塩素酸を含む。
また、第1のコンテナは、繭を含む飼育モジュールを通して液体を放出するシステム(該
システムは、蛹を囲む絹をより効率的に溶解することを補助する)を備えることが好まし
い。圧縮された空気擾乱によって溶解液を繭に適用し、絹繭を溶解するのに要する時間を
減少させることが好ましい。
【0142】
本発明の絹選除装置は、第2のコンテナを更に備えることが好ましく、該コンテナは洗
浄コンテナであり、蛹から微量の絹及び絹溶解液を除去するのに適した、水等の溶液を含
む及び/又は該溶液を分散させる。溶液(好ましくは水)をサナギ(蛹)に噴霧すること
が好ましい。このコンテナの蓋に蛹を乾燥するため空気を与えるシステムが存在すること
が好ましい。したがって、蛹の洗浄後、該蛹を風乾させることが好ましい。プロセスの終
わりに、蛹は絹を含まず、感染に対して又は使用までの保存(冷蔵)に対して用意ができ
ている。
【0143】
【表1】
【実施例
【0144】
実施例1.T.ニの蛹の産生
卵から蛹まで15日間~18日間に亘って発達させた数百匹の幼虫を含む、再利用可能
な又は使い捨ての飼育器で昆虫幼虫を育てた(図1)。その後、飼育器全体又は集めた蛹
を、0.1%重量/体積~5%重量/体積の濃度の次亜塩素酸ナトリウムの溶液に浸漬す
るか、又は蛹に該溶液を噴霧して繭の絹繊維を溶解した。数分で絹を溶解した後、蛹を水
で洗浄して微量の次亜塩素酸塩を除去した。その後、蛹を乾燥し、バキュロウイルス接種
まで4℃で保存した。図2に見られるように、このプロセスは、T.ニ鱗翅目の絹トリー
ツ(silk treats:絹処理物)の密度が低いことから、ボムビークス・モリの繭と同じ操
作に対してより簡単となる。ボムビークス・モリの繭は蛹を解放するのに手作業の介入を
必要とするのに対し、T.ニの絹は溶解するのが容易であり、自動又は半自動の手順によ
って除去され、組み換えタンパク質産生用の組み換えバキュロウイルスを注入する用意が
できている蛹の取得をスケールアップすることを容易にする。
【0145】
実施例2.キメラプロモーター(p6.9及びp10)に作動可能に連結されたエンハン
サー配列(hr1)を含むデュアル組み換えバキュロウイルス、並びに過剰発現したIE
-1及びIE-0トランス活性化因子は、昆虫蛹における組み換えタンパク質の産生にお
いて非常に効率的である
バキュロウイルス相同反復配列hr1によって増強され、過剰発現したIE-1因子及
びIE-0因子によってトランス活性化されたキメラプロモーターの制御下で駆動される
組み換えタンパク質発現を、従来のバキュロウイルスを使用して得られたものと昆虫蛹(
T.ニ)において比較した。組み換え緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子
を、従来の手段によりポリヘドリンプロモーターの制御下で従来のAcMNPVバキュロ
ウイルスにクローニングした(図4A)。上で言及された調節エレメントを含むカセット
(TB発現カセット)によって改変された別のAcMNPVバキュロウイルスもGFPを
コードする遺伝子を含んで生成された(図4B)。マイクロリットル量のウイルス接種物
を投与可能な精密ポンプと、精密位置でウイルスを注入可能なロボットアームとを備える
接種ロボットによって蛹に50000PFUの各バキュロウイルスを感染させた(図5A
)。各小孔の中心に、穴を有する蓋と共に小孔のマトリクスに蛹を配置した(図5B)。
接種針(移動可能)は穴を通って蛹にアクセスし、蛹に数ミリメートル穿通してバキュロ
ウイルスを注入した(図5C)。0.5マイクロリットル~10マイクロリットル(μl
)に含まれる組み換えウイルスを蛹へ投与し、針を引き抜く間、蛹を蓋により小孔に保持
した。この接種ロボットは、当業者による手作業での接種の少なくとも6倍の速度である
、毎時少なくとも蛹3000個の接種速度を示した。
【0146】
接種後96時間~168時間のインキュベーション期間の後、蛹を収集し、酸化防止剤
、プロテアーゼ阻害剤、及び非イオン性界面活性剤を含む中性pHバッファー(例えば、
1×PBS pH 7.4+5mMジチオスレイトール(DTT)+1mMフッ化フェニ
ルメチルスルホニル(PMSF)+0.1%Brij35+0.5%サルコシル)の存在
下、ホモジナイザー機でタンパク質を抽出した。抽出物を15000g~20000gで
遠心分離し、濾過した。抽出物をSDS-PAGE電気泳動によって分析し、ゲルをクマ
シーブルーで染色した(図6A)。感染した蛹における各バキュロウイルスによって産生
されたGFPタンパク質の産生収率(バイオマス単位当たりのミリグラムとして表される
)をウシ血清アルブミン(BSA)曲線を使用するデンシトメトリーによって計算した。
この分析は、従来のバキュロウイルス(すなわち、例えば発現カセット中にいかなる他の
調節エレメントも有しないポリヘドリンプロモーターを含むバキュロウイルス)を用いて
得られたものに対して、TBカセットで遺伝子改変されたバキュロウイルスによって得ら
れた蛹のGFP生産能を約5.6倍増加させた(図6B)。
【0147】
実施例3.T.ニ蛹におけるTB改変バキュロウイルスによる種々のタンパク質の発現
TB(TopBac)発現カセット(配列番号17)を更なるタンパク質発現に使用す
る利益を分析するため、2つの遺伝子をTBカセットにクローニングし、ポリヘドリンプ
ロモーター(polh)の制御下で遺伝子を発現する従来のバキュロウイルスと同様に、
対応する組み換えバキュロウイルスを得た(図7)。組み換えバキュロウイルスを得るた
めに使用した2つの遺伝子は、PCV2a GER3株に由来するブタサーコウイルス2
型によるタンパク質Cap(配列番号25及び配列番号27)、及びウイルス株A/PR
/8/34に由来するインフルエンザウイルス(H1)によるヘマグルチニン(配列番号
30及び配列番号31)をコードするものであった。得られたTB(-)(すなわち発現
カセット中にタンパク質を発現するためのポリヘドリンプロモーターを含むが、TopB
ac(TB)発現カセットによって改変されていない従来のバキュロウイルス)及びTB
(+)のバキュロウイルスをT.ニ蛹におけるそれらの生産能について、実施例2で使用
され記載されるものと同じ感染及びタンパク質抽出のプロトコルを使用して比較した。
【0148】
従来の(TB(-))バキュロウイルス又はTB改変(TB(+))バキュロウイルス
によって媒介された感染した蛹における産生収率(バイオマス単位当たりミリグラムで表
される)の比較は、両方のタンパク質について、発現カセットTBが産生収率を増加させ
たことを示した。ブタサーコウイルスCapタンパク質の場合、従来のバキュロウイルス
に感染した蛹と比較して、蛹がTB改変バキュロウイルスに感染した時のタンパク質産生
は2.79倍増加した(図8)。インフルエンザウイルスによるHAタンパク質について
は、この増加は2.04倍であった(図9)。これらの結果は、TBカセットがT.ニ蛹
における組み換えタンパク質の産生を著しく増加させることを確認した。
【0149】
実施例4.バキュロウイルス感染T.ニ蛹における組み換えタンパク質の産生は幼虫より
も効率的である
T.ニの蛹及び幼虫におけるTB(+)バキュロウイルス中の5つの組み換えタンパク
質の相対的な発現を行った。発現したタンパク質は次の通りであった:GFP(配列番号
23)、Cap(配列番号25)、HA(配列番号30)、及び2つのウサギ出血カリシ
ウイルス株(RHDVジェノグループ1及びRHDVb;配列番号32及び配列番号33
)に由来するVP60(カプシドタンパク質)(図10)。蛹及び幼虫を50000PF
Uの対応するTB(+)バキュロウイルスに感染させた。感染した昆虫(幼虫及び蛹)を
感染の96時間後に収集した。可溶性タンパク質抽出物をクマシーブルーで染色したSD
S-PAGE電気泳動によって分析した(図11A図12A図13A及び図14A
。BSA曲線を使用するデンシトメトリーにより組み換えタンパク質を定量し、産生収率
をバイオマス単位当たりのミリグラムとして表した(図11B図12B図13B及び
図14B)。いずれの場合にも、蛹は1.06~3.64の増加比率で幼虫よりも多い量
の組み換えタンパク質を発現した。
【0150】
実施例5.T.ニ蛹における組み換えウイルス様粒子(VLP)の産生
感染した蛹におけるVLPの産生の実証するため、実施例4で分析した2つのウサギカ
リシウイルス株に由来するVP60タンパク質を発現するTB(+)バキュロウイルスに
感染させた蛹からのタンパク質抽出物をVLP精製のため処理した。洗浄剤(PBS(0
.2Mリン酸ナトリウム、0.1M NaCl、pH6.0)中2%サルコシル(Sigma
)及び5mM EDTA(Sigma))、及びプロテアーゼ阻害剤(RocheのComplet
e(商標)の存在下での遠心分離によって、感染から96時間後に感染した蛹からVLP
を抽出し、4℃で一晩インキュベートした。その後、それらを37℃で1時間DNAse
I(Roche Diagnostics)で処理した。追加の遠心分離(2000×g、5分間)の後
、上清を超遠心分離(131453×g;2.5時間)に供した。沈殿物をVertre
l(Sigma)で2回抽出し、2度目の超遠心分離(131453×g;2.5時間)を行
った。最後に、沈殿物を1×PBSに再懸濁し、分析まで4℃で保存した。
【0151】
従来の手段によって行われる透過型電子顕微鏡法により沈殿物を分析した。簡潔には、
精製したVLP(およそ5μl)をグロー放電炭素被覆グリッドに2分間適用した。試料
を2%(重量/体積)水性酢酸ウラニルで陰性染色した。顕微鏡写真図をEM 2000
Ex顕微鏡(日本国のJEOL)により記録した。図14に示されるように、RHDVに対応
する予想されたサイズ及び形状のVLPが観察され、バキュロウイルスに感染した蛹組織
において修正されたフォールディング及び自己組織化が行われることを実証した(図15
)。
【0152】
実施例6.感染したT.ニ蛹におけるウイルス接種物の産生
スポドプテラ・フルギペルダ(Sf21及びSf9)の細胞株を10%熱不活性化ウシ
胎児血清(PAN Biotech GmbH)及びゲンタマイシン(50μg/ml)(PAN Biotech Gm
bH)を含むTNMFH培地(ドイツ国のPAN Biotech GmbH)中、27℃で培養した。細胞
の密度及び生存率をトリパンブルー染色によって判断した。細胞生存率を感染後の様々な
時間において細胞総数に関する生存細胞の割合に基づいて計算した。
【0153】
懸濁液中で培養したSf9細胞を、2×10細胞/mlの細胞密度でスピナーフラス
コ(80mlの培養液)において感染させた。感染時の細胞の生存率は、懸濁液中で99
%超であった。Sf9細胞を0.01~0.1の感染効率(MOI:multiplicity of in
fection)で組み換えバキュロウイルスによりin vitroで感染させた。感染後7
2時間~96時間にウイルス接種物を遠心分離した後、上清から回収した。ウイルス力価
をプラーク形成単位(pfu)アッセイによって計算し、1ml当たり10ウイルス~
10ウイルスのウイルス力価を得た。
【0154】
5×10pfu~10pfuの範囲の用量でウイルスを使用してT.ニ蛹を感染さ
せた。3日後~7日後、蛹を細胞培養液中、又はDTT及びプロテアーゼ阻害剤PMSF
を含む特殊なPBSバッファー中でホモジナイズして感染性ウイルスを収集した。蛹ホモ
ジェネートを5000×gで30分間遠心分離して蛹の残骸を排除した。その後、ウイル
スを含む上清を0.45ミクロン及び0.22ミクロンのフィルタによって連続して濾過
し、得られたウイルス調製物をグリセロールと混合することにより保存した後、凍結又は
凍結乾燥することができた。T.ニの5齢幼虫においてウイルスストックを力価測定し(
titrated)、具体的にはKarber法を使用してLID50(幼虫感染量(larvae inf
ectious dose)50)を特定した。このように計算した1感染量の統計学的意味は、ID
50で感染した幼虫の集団が50%の感染した個体を示すであろうということである。臨
床症状を検出し、蛹までのそれらの発達を経過観察するため、少なくとも96時間に亘っ
て幼虫を観察した。典型的なウイルス力価はウイルス調製物1ml当たり10pfu~
10pfuであった。さらに、細胞培養物において先のバキュロウイルスベクターの生
成なしにバキュロウイルス接種物を得ることができる。遺伝子転位の手順によって細菌に
おいて得られたバクミドを用いて蛹をトランスフェクトすることができる。図16は、無
細胞系によって蛹でウイルスストックを得るための基本手順を表す。
【0155】
実施例7.細胞培養物及びウイルス
スポドプテラ・フルギペルダSf21又はSf9の細胞株を6ウェル組織培養プレート
(1×10細胞/ウェル)において、10%熱不活性化ウシ胎児血清(ドイツ国のPan
Biotech(商標))を含むTNM-FH昆虫培地(ドイツ国のPan Biotech(商標))中、
27℃にて培養した。「Bac-to-Bac(商標)」バキュロウイルス発現系(米国
のinvitrogen(商標))によってAcMNPV組み換えバキュロウイルスを得た。組み換
えDNA調節エレメントを含む種々のTB(+)トランスファーベクターはpFastB
ac(商標)-DUALプラスミド(invitrogen(商標))を使用して生成された。これ
らのトランスファーベクターを使用してCellfectin(商標)(米国のinvitrog
en(商標))によりSf21細胞をトランスフェクトした。その後、Sf21細胞の感染
の結果得られた組み換えバキュロウイルスを細胞において2回継代し、プラークアッセイ
法によって力価測定した。得られたTB(+)バキュロウイルス発現カセットの遺伝子構
築物を、遺伝子発現に関与する遺伝子調節エレメントの組み合わせ(polhAc-ie
-01/hr1p6.9p10、配列番号17、加えて所望のタンパク質をコードする遺
伝子の配列、例えば配列番号26、配列番号30、配列番号32及び配列番号33)を示
図4図7及び図10に概略的に示す。種々の発現カセットを使用して、図6図8
図9図11図12図13及び図14に示される実施例で使用される組み換えバキュ
ロウイルスを生成した。
【0156】
実施例8.クローニングベクターの生成
クローニングベクターは、ビヒクル及び外来DNAを、同じオーバーハングを作る制限
酵素で処理した後、フラグメントを共にライゲートすることによって外来DNAフラグメ
ントを挿入することができる、TB(+)バキュロウイルス発現カセットを含むDNAの
小片である。クローニングベクターの本質的な特徴は、それが選択された向きの外来遺伝
子、細菌において実際に形質転換された細胞及び増殖用の機能的な複製開始点(ORI)
の選択を可能とする、抗生物質耐性のもの等の選択マーカーの挿入を容易にする合成マル
チクローニングサイト(MCS)を含まなければならないことである。
【0157】
実施例9.本発明のバキュロウイルス発現カセットを含むドナーベクターの生成
ドナーベクターは、適切な制限酵素を使用して外来遺伝子がクローニングされたバキュ
ロウイルス発現カセットを含むクローニングベクター、例えばpUC57プラスミドから
なる。使用されるTB(+)バキュロウイルス発現カセットを、次のDNA配列のライゲ
ーションにより合成した:(i)polhプロモーター(例えば配列番号10)等のプロ
モーター配列の下流及びHSV TKポリアデニル化シグナルの上流に配列Ac-ie-
01をコードするバキュロウイルス転写調節因子(例えば、配列番号1~配列番号5)、
並びに(ii)別の遺伝子座において、エンハンサー配列、例えば(iii)プロモータ
ー配列、例えばp6.9p10(例えば配列番号13)の上流の相同領域hr1に続く、
目的の遺伝子のクローニング用のマルチクローニングサイト(MCS)、及びMCSの下
流のp10ポリアデニル化シグナル(図4図7及び図10)。バキュロウイルス発現カ
セットは、市販のバキュロウイルス生成システムのトランスファーベクターへのサブクロ
ーニングを容易にするため(遺伝子転位、例えば「Bac-to-Bac(商標)」シス
テム(invitrogen(商標))に基づく、又は相同組み換え、例えば「flashBAC(
商標)」(Oxford Expression Technologies(商標))、「Baculogold(商標
)」(BD Biosciences(商標))、「BacPAK6(商標)」(Clontech(商標))、
「Bac-N-Blue DNA(商標)」(invitrogen(商標))に基づく)、特定の
制限部位によって挟まれる(例えば5’末端のBgl II及びBstZ17lと、3’
末端のBgl II及びSgf I)。
【0158】
コーディング外来遺伝子をNco I及びSpe Iの制限部位を使用してクローニン
グベクターのMCSへとクローニングし、ドナープラスミドベクターを生成した。
【0159】
実施例10.本発明のバキュロウイルスの発現カセットを含むトランスファーベクターの
生成
トランスファーベクターを、5’フランキング部位のBstZ17 1とXba Iと
を含むドナーベクターを消化し、同様に同じ酵素で消化したトランスファーベクターpF
astBac(商標)1へとクローニングすることにより生成した。この場合、サブクロ
ーニングの結果、バキュロウイルス発現カセットのSV40ポリアデニル化シグナルはト
ランスファーベクターに由来するp10ポリアデニル化シグナルと交換される。これとは
別に、発現カセットの全てのエレメントはpFastBacトランスファーベクターに含
まれ、オリジナルの市販のトランスファーベクターのpolhプロモーター及びMCSを
置換する。
【0160】
実施例11.「Bac-to-Bac(商標)」システムを使用する本発明のバキュロウ
イルス発現カセットを含むバキュロウイルス発現ベクターの生成
改変トランスファーベクターpFastBac(商標)1及びTB(+)バキュロウイ
ルス発現カセットを用いて、「Bac-to-Bac(商標)」バキュロウイルス発現系
を使用することによって組み換えバキュロウイルスを生成した。より具体的には、バキュ
ロウイルスシャトルベクター(バクミド)及びヘルパープラスミドを含む改変トランスフ
ァーベクターを使用してE.コリ(E.coli)宿主株DH10Bac(商標)を形質転換し
、発現カセットの遺伝子転位に続いて組み換えのバクミドを生成させた。その後、本発明
のTB(+)バキュロウイルス発現カセットと、種々の外来コード遺伝子とを含む組み換
えバクミドのDNAを使用し、Cellfectin(商標)を使用して昆虫細胞、例え
ばSf21細胞をトランスフェクトした。また、そのバクミドを使用して昆虫の蛹をトラ
ンスフェクトした。1日齢~5日齢のトリコプルシア・ニ(イラクサキンウワバ)蛹をこ
の実験に使用した。トランスフェクションの72時間後、細胞又は蛹を採取して処理し、
最初の組み換えバキュロウイルスの生成を得た。その後、従来のプロトコルに従って、こ
の組み換えバキュロウイルスを更に増幅及び/又は力価測定をすることができた。同様の
手順を用いて、市販のBEVSによって提供される他のトランスファーベクターによる組
み換えバキュロウイルスを生成することができる。
【0161】
実施例12.昆虫蛹の感染
1日齢~5日齢のトリコプルシア・ニ(イラクサキンウワバ)の蛹を全ての実験に使用
した。各蛹の標準体重はおよそ200mg~300mgであり、手動で又は特別に設計し
たロボットによって、選択した用量当たりのプラーク形成単位(PFU)の数に達するよ
うに細胞培養液又は1×PBSで希釈した組み換えバキュロウイルス1μl~10μlを
蛹に注入した。蛹を感染後72時間~168時間に収集した。収集した蛹を直ちに凍結し
、組み換えタンパク質の定量のため処理するまで-20℃又は-80℃で保存した。バキ
ュロウイルスに感染した凍結T.ニ蛹に由来する全可溶性非変性タンパク質(TSNDP
:Total soluble, non-denatured proteins)を、抽出バッファーの存在下で、数分間、
ブレンダー又はホモジナイザーミキサーを使用する均質化によって得た。
【0162】
実施例13.昆虫蛹の下流処理
凍結した蛹をホモジナイザーで破砕して、1mM~25mMの濃度の還元剤、0.01
%~2%の濃度の洗浄剤、及びプロテアーゼ阻害剤の混合物を含む粗抽出物を得た。粗抽
出液の粘度を、その所定期間に亘る珪藻土とのインキュベーションによって減少させた後
、遠心分離により昆虫の残骸を除去し、濾過して珪藻土を除去した。その後、該抽出物を
、組み換えタンパク質の性質に応じて適切なフィルタを使用する接線流濾過によって浄化
した。最後に、同じ接線流濾過装置でダイアフィルトレーションプロセスを行い、更なる
クロマトグラフィー精製の前にバッファーを変更した。図17は、バキュロウイルスに感
染した蛹から可溶性組み換えタンパク質抽出物を得る一般的な手順を表す。
【0163】
本発明の項目(I):
1.オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV
)に由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバクミドを含む蛹。
【0164】
2.上記蛹が鱗翅目に属する、項1に記載の蛹。
【0165】
3.上記蛹がトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マン
ズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しくはサミア属、好ましくはトリコプルシ
ア・ニ種、マンズカ・セクスタ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、スポドプテラ・リト
ラリス種、アスカラファ・オドラタ種、ヘリコベルパ・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッセ
ンス種、ラキプルシア・ヌ種、若しくはサミア・シンシア種に属する、又はAcMNPV
に由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバクミドに感染しやすい任意の他の蛹で
ある、項1に記載の蛹。
【0166】
4.上記バキュロウイルスが、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超え
て転写調節因子として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれ
らのフラグメントの内因性レベルを超える発現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパ
ク質の発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作動可能に連結された組み換え相
同領域(hr)とを含む、項1~3のいずれか一項に記載の蛹。
【0167】
5.バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因子として機能
するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの内因性
レベルを超える発現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパク質の発現を駆動するのに
適した任意のプロモーターに作動可能に連結された組み換え相同領域(hr)とを含む蛹
【0168】
6.上記蛹が鱗翅目に属する、項5に記載の蛹。
【0169】
7.上記蛹がトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マン
ズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しくはサミア属、好ましくはトリコプルシ
ア・ニ種、マンズカ・セクスタ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、スポドプテラ・リト
ラリス種、アスカラファ・オドラタ種、ヘリコベルパ・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッセ
ンス種、ラキプルシア・ヌ種、若しくはサミア・シンシア種に属する、又はAcMNPV
に由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバクミドに感染しやすい任意の他の蛹で
ある、項6に記載の蛹。
【0170】
8.上記蛹がトリコプルシア・ニ種に属する、項1~7のいずれか一項に記載の蛹。
【0171】
9.上記タンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの発
現を可能とする核酸配列が、
(a)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
(b)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも7
0%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは
少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも9
5%の配列同一性を有し、組み換えバキュロウイルスにおける転写調節因子として機能し
得るタンパク質をコードする、核酸配列、
(c)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸をコ
ードする核酸配列、並びに、
(d)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも70%
、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少な
くとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%
の配列類似性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し得る
アミノ酸配列をコードする核酸配列、
からなる群から選択される、項4~8のいずれか一項に記載の蛹。
【0172】
10.上記組み換えタンパク質の発現を駆動するプロモーターが、
(a)配列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~
配列番号13のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、並びに、
(b)組み換えバキュロウイルスにおいてプロモーターとして機能することができ、配
列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~配列番号1
3のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも7
5%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好まし
くは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する核酸
配列、
を含む核酸の群から選択される、項4~9のいずれか一項に記載の蛹。
【0173】
11.上記組み換え相同領域(hr)が配列番号21に示される配列(hr1)である、
項4~10のいずれか一項に記載の蛹。
【0174】
12.組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、エンハンサー領域と
の組み合わせを含む核酸配列が、配列番号15~配列番号20を含む群から選択される、
項4~11のいずれか一項に記載の蛹。
【0175】
13.組み換えタンパク質をコードする核酸配列を更に含む、項4~12のいずれか一項
に記載の蛹。
【0176】
14.上記組み換えタンパク質が、サブユニット単量体ワクチン、サブユニット多量体ワ
クチン、ウイルス様粒子、治療用タンパク質、抗体、酵素、サイトカイン、血液凝固因子
、抗凝血剤、受容体、ホルモン、診断用タンパク質試薬、及び緑色蛍光タンパク質(GF
P)からなる群から選択される、項13に記載の蛹。
【0177】
15.上記組み換えタンパク質が、
(a)ブタサーコウイルス、好ましくはブタサーコウイルス2型に由来するカプシドタ
ンパク質(例えば配列番号26)、
(b)口蹄疫ウイルスVP1タンパク質、VP3タンパク質又はVP0タンパク質、
(c)イヌパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、
(d)ブタパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、
(e)ヒトノロウイルス(ジェノグループI又はII)カプシドタンパク質、
(f)カリシウイルスカプシドタンパク質、
(g)ヒトパピローマウイルス、好ましくはヒトパピローマウイルス16に由来するL
1タンパク質、
(h)E型肝炎タンパク質E2、
(i)伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスVP1タンパク質、VP2タンパク質及びV
P3タンパク質、
(j)アストロウイルスORF2コード化タンパク質、
(k)インフルエンザウイルスHAタンパク質(例えば配列番号30)、NAタンパク
質及びM1タンパク質、
(l)B型肝炎のコア抗原及び表面抗原、
(m)ヒトパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、並びに、
(n)ウサギカリシウイルス、好ましくはウサギ出血性疾患ウイルスに由来するVP6
0タンパク質(例えば配列番号32及び配列番号33)、
からなる群から選択されるウイルス様粒子タンパク質である、項14に記載の蛹。
【0178】
16.組み換えタンパク質の発現のための、項1~15のいずれか一項に規定される蛹の
使用。
【0179】
17.上記組み換えタンパク質が、サブユニット単量体ワクチン、サブユニット多量体ワ
クチン、ウイルス様粒子、治療用タンパク質、抗体、酵素、サイトカイン、血液凝固因子
、抗凝血剤、受容体、ホルモン、診断用タンパク質試薬、及び緑色蛍光タンパク質(GF
P)からなる群から選択される、項16に記載の使用。
【0180】
18.上記組み換えタンパク質が、
(a)ブタサーコウイルス、好ましくはブタサーコウイルス2型に由来するカプシドタ
ンパク質(例えば配列番号26)、
(b)口蹄疫ウイルスVP1タンパク質、VP3タンパク質又はVP0タンパク質、
(c)イヌパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、
(d)ブタパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、
(e)ヒトノロウイルス(ジェノグループI又はII)カプシドタンパク質、
(f)カリシウイルスカプシドタンパク質、
(g)ヒトパピローマウイルス、好ましくはヒトパピローマウイルス16に由来するL
1タンパク質、
(h)E型肝炎タンパク質E2、
(i)伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスVP1タンパク質、VP2タンパク質及びV
P3タンパク質、
(j)アストロウイルスORF2コード化タンパク質、
(k)インフルエンザウイルスHAタンパク質(例えば配列番号30)、NAタンパク
質及びM1タンパク質、
(l)B型肝炎のコア抗原及び表面抗原、
(m)ヒトパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、並びに、
(n)ウサギカリシウイルス、好ましくはウサギ出血性疾患ウイルスに由来するVP6
0タンパク質(例えば配列番号32及び配列番号33)、
からなる群から選択されるウイルス様粒子タンパク質である、項17に記載の使用。
【0181】
19.
(a)蛹を準備する工程と、
(b)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMN
PV)に由来する組み換えバキュロウイルスを工程(a)の蛹に接種する工程と、
(c)少なくとも1つの組み換えタンパク質が発現するのに十分な期間に亘って工程(
b)の接種を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(d)少なくとも1つの組み換えタンパク質を含む蛹を得る工程と、
(e)任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク質を採取する工程と、
(f)任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク質を精製する工程と、
を含む、少なくとも1つの組み換えタンパク質を産生する方法。
【0182】
20.上記蛹が鱗翅目に属する、項19に記載の方法。
【0183】
21.上記蛹がトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マ
ンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しくはサミア属、好ましくはトリコプル
シア・ニ種、マンズカ・セクスタ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、スポドプテラ・リ
トラリス種、アスカラファ・オドラタ種、ヘリコベルパ・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッ
センス種、ラキプルシア・ヌ種、及びサミア・シンシア種に属する、又はAcMNPVに
由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバクミドに感染しやすい任意の他の蛹であ
る、項20に記載の方法。
【0184】
22.上記蛹がトリコプルシア・ニ種に属する、項21に記載の方法。
【0185】
23.上記組み換えバキュロウイルスが、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レ
ベルを超えて転写調節因子として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び
/又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超える発現を可能とする核酸配列と、組み
換えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作動可能に連結された
組み換え相同領域(hr)とを含む、項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
24.上記タンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの
発現を可能とする上記核酸配列が、
(a)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
(b)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも7
0%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは
少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも9
5%の配列同一性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し
得るタンパク質をコードする核酸配列、
(c)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸をコ
ードする核酸配列、並びに、
(d)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも70%
、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少な
くとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%
の配列類似性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し得る
アミノ酸配列をコードする核酸配列、
からなる群から選択される、項23に記載の方法。
【0187】
25.上記組み換えタンパク質の発現を駆動する上記プロモーターが、
(a)配列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~
配列番号13のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、並びに、
(b)組み換えバキュロウイルスにおいてプロモーターとして機能することができ、配
列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~配列番号1
3のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも7
5%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好まし
くは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する核酸
配列、
を含む核酸の群から選択される、項23又は24に記載の方法。
【0188】
26.上記組み換え相同領域(hr)が配列番号21に示される配列(hr1)である、
項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【0189】
27.組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、エンハンサー領域と
の組み合わせを含む核酸配列が、配列番号15~配列番号20を含む群から選択される、
項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【0190】
28.上記蛹が組み換えタンパク質をコードする核酸配列を更に含む、項19~27のい
ずれか一項に記載の方法。
【0191】
29.上記組み換えタンパク質が、サブユニット単量体ワクチン、サブユニット多量体ワ
クチン、ウイルス様粒子、治療用タンパク質、抗体、酵素、サイトカイン、血液凝固因子
、抗凝血剤、受容体、ホルモン、診断用タンパク質試薬、及び緑色蛍光タンパク質(GF
P)からなる群から選択される、項28に記載の方法。
【0192】
30.上記組み換えタンパク質が、
(a)ブタサーコウイルス、好ましくはブタサーコウイルス2型に由来するカプシドタ
ンパク質(例えば配列番号26)、
(b)口蹄疫ウイルスVP1タンパク質、VP3タンパク質又はVP0タンパク質、
(c)イヌパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、
(d)ブタパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、
(e)ヒトノロウイルス(ジェノグループI又はII)カプシドタンパク質、
(f)カリシウイルスカプシドタンパク質、
(g)ヒトパピローマウイルス、好ましくはヒトパピローマウイルス16に由来するL
1タンパク質、
(h)E型肝炎タンパク質E2、
(i)伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスVP1タンパク質、VP2タンパク質及びV
P3タンパク質、
(j)アストロウイルスORF2コード化タンパク質、
(k)インフルエンザウイルスHAタンパク質(例えば配列番号30)、NAタンパク
質及びM1タンパク質、
(l)B型肝炎のコア抗原及び表面抗原、
(m)ヒトパルボウイルスVP1タンパク質及びVP2タンパク質、並びに、
(n)ウサギカリシウイルス、好ましくはウサギ出血性疾患ウイルスに由来するVP6
0タンパク質(例えば配列番号32及び配列番号33)、
からなる群から選択されるウイルス様粒子タンパク質である、項29に記載の方法。
【0193】
31.上記蛹が絹を含まない蛹である、項19~30のいずれか一項に記載の方法。
【0194】
32.上記絹を含まない蛹が、次亜塩素酸の塩、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムの溶液
でT.ニの蛹を含む繭の絹を溶解することによって入手可能である、項31に記載の方法
【0195】
33.組み換えバキュロウイルスによる上記蛹の接種が、上記蛹に上記バキュロウイルス
を注入することにより行われる、項19~32のいずれか一項に記載の方法。
【0196】
34.工程(b)の接種を受けた上記蛹が、項1~15のいずれか一項に規定される蛹で
ある、項19~33のいずれか一項に記載の方法。
【0197】
35.上記蛹に蛹1匹当たり50PFU~10PFUの量のバキュロウイルスを接種す
る、項19~34のいずれか一項に記載の方法。
【0198】
36.
(a)繭に含まれる蛹を準備する工程と、
(b)蛹を含む上記繭を次亜塩素酸の塩、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムの溶液で処
理する工程と、
(c)絹を含まない、殺菌された蛹を得る工程と、
を含む、鱗翅目に属する絹を含まない蛹を産生する方法。
【0199】
37.上記蛹がボムビークス・モリ種に属さない、項36に記載の方法。
【0200】
38.上記蛹がトリコプルシア・ニ種に属する、項36又は37に記載の方法。
【0201】
39.上記蛹がマトリクス(又はアレイ)で提供される、項36~38のいずれか一項に
記載の方法。
【0202】
40.
(a)蛹を準備する工程と、
(b)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMN
PV)に由来する組み換えバキュロウイルスを産生するのに適したバクミドで工程(a)
の蛹をトランスフェクトする工程と、
(c)組み換えバキュロウイルスを産生するのに十分な期間に亘って工程(b)の接種
を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(d)上記組み換えバキュロウイルスを含む蛹を得る工程と、
(e)任意に、上記組み換えバキュロウイルスを採取する工程と、
(f)任意に、上記組み換えバキュロウイルスを精製する工程と、
を含む、組み換えバキュロウイルスを産生する方法。
【0203】
41.上記蛹が項36~39のいずれか一項に規定される蛹である、項39に記載の方法
【0204】
42.上記蛹が鱗翅目に属する、項40又は41に記載の方法。
【0205】
43.上記蛹がトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マ
ンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しくはサミア属、好ましくはトリコプル
シア・ニ種、マンズカ・セクスタ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、スポドプテラ・リ
トラリス種、アスカラファ・オドラタ種、ヘリコベルパ・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッ
センス種、ラキプルシア・ヌ種、若しくはサミア・シンシア種に属する、又はAcMNP
Vに由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバクミドに感染しやすい任意の他の蛹
である、項42に記載の方法。
【0206】
44.上記蛹がトリコプルシア・ニ種に属する、項43に記載の方法。
【0207】
45.オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNP
V)に由来する組み換えバキュロウイルスの産生に適した上記バクミドが、バキュロウイ
ルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因子として機能するタンパク質I
E-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超える発
現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意のプロ
モーターに作動可能に連結された組み換え相同領域(hr)とを含む、或いはそれらから
なる、項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【0208】
46.上記タンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの
発現を可能とする上記核酸配列が、
(a)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
(b)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも7
0%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは
少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも9
5%の配列同一性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し
得るタンパク質をコードする核酸配列、
(c)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸をコ
ードする核酸配列、並びに、
(d)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも70%
、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少な
くとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%
の配列類似性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し得る
アミノ酸配列をコードする核酸配列、
からなる群から選択される、項45に記載の方法。
【0209】
47.上記組み換えタンパク質の発現を駆動する上記プロモーターが、
(a)配列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~
配列番号13のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、並びに、
(b)組み換えバキュロウイルスにおいてプロモーターとして機能することができ、配
列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~配列番号1
3のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも7
5%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好まし
くは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する核酸
配列、
を含む核酸の群から選択される、項45又は46に記載の方法。
【0210】
48.上記組み換え相同領域(hr)が配列番号21に示される配列(hr1)である、
項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【0211】
49.組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、エンハンサー領域と
の組み合わせを含む核酸配列が、配列番号15~配列番号20を含む群から選択される、
項45~48のいずれか一項に記載の方法。
【0212】
50.上記蛹が絹を含まない蛹である、項40~49のいずれか一項に記載の方法。
【0213】
51.上記絹を含まない蛹が、次亜塩素酸の塩、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムの溶液
でT.ニの蛹を含む繭を溶解することによって入手可能である、項50に記載の方法。
【0214】
52.工程(b)の上記トランスフェクトされた蛹が項5~15のいずれか一項に規定さ
れる蛹である、項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【0215】
53.上記蛹がマトリクスで提供される、項40~52のいずれか一項に記載の方法。
【0216】
54.精密ポンプと、モバイル機械アームと、鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属、ラ
キプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラ
ファ属、若しくはサミア属、より好ましくはトリコプルシア・ニ種、マンズカ・セクスタ
種、スポドプテラ・フルギペルダ種、スポドプテラ・リトラリス種、アスカラファ・オド
ラタ種、ヘリコベルパ・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ラキプルシア・ヌ種、
若しくはサミア・シンシア種に属する蛹、又はAcMNPVに由来する組み換えバキュロ
ウイルス及び/又はバクミドに感染しやすい任意の他の蛹に流体を注入するのに適した(
移動可能な)針とを備える、装置。
【0217】
55.上記蛹がマトリクス又はアレイで提供される、項54に記載の装置。
【0218】
56.上記装置が、上記針の位置を規定する、及び/又は上記針から上記蛹までの距離及
び/又は上記蛹への針の穿通距離及び/又は上記蛹に接種する液体の容量を計算する、及
び/又は上記接種針の座標を決定する、及び/又は上記蛹の上記接種の容量及び/又は時
間及び/又は接種間の時間を計算するコンピュータプログラムを更に備える、項54又は
55に記載の装置。
【0219】
57.上記蛹の接種時間及び/又は接種間の時間を計算するコンピュータプログラムを更
に備える、項56に記載の装置。
【0220】
58.上記装置が上記針の位置を規定するカメラを更に備える、項54~57のいずれか
一項に記載の装置。
【0221】
59.上記蛹が項1~15のいずれか一項に規定される蛹である、項54に記載の装置。
【0222】
60.上記注入した流体が組み換えバキュロウイルス又はバクミドを含む、項54~59
のいずれか一項に記載の装置。
【0223】
61.上記装置が項19及び/又は項40のいずれか一項に規定される工程(b)を行う
のに適している、項54~60のいずれか一項に記載の装置。
【0224】
62.上記蛹に注入される流体が約0.5μL~約10.0μL、好ましくは約5μLの
範囲である、項54~61のいずれか一項に記載の装置。
【0225】
63.上記針が約1mm~約5mm、好ましくは約3mmの距離で上記蛹に穿通する、項
54~62のいずれか一項に記載の装置。
【0226】
64.上記蛹に注入される流体が、好ましくは各蛹に注入される用量当たり50PFU~
10PFUの量でバキュロウイルスを含む、項54~63のいずれか一項に記載の装置
【0227】
本発明の項目(II):
1.オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV
)に由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバクミドを含む蛹であって、好ましく
は、該蛹が鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテラ属、ヘ
リオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しくはサミア属、より一
層好ましくはトリコプルシア・ニ種、マンズカ・セクスタ種、スポドプテラ・フルギペル
ダ種、スポドプテラ・リトラリス種、アスカラファ・オドラタ種、ヘリコベルパ・ジー種
、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ラキプルシア・ヌ種、若しくはサミア・シンシア種に
属する、又はAcMNPVに由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバクミドに感
染しやすい任意の他の蛹である、蛹。
【0228】
2.上記バキュロウイルスが、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超え
て転写調節因子として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれ
らのフラグメントの内因性レベルを超える発現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパ
ク質の発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作動可能に連結された組み換え相
同領域(hr)とを含む、項1に記載の蛹。
【0229】
3.バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因子として機能
するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの内因性
レベルを超える発現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパク質の発現を駆動するのに
適した任意のプロモーターに作動可能に連結された組み換え相同領域(hr)とを含む蛹
であって、好ましくは、該蛹が鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、
スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しく
はサミア属、より一層好ましくはトリコプルシア・ニ種、マンズカ・セクスタ種、スポド
プテラ・フルギペルダ種、スポドプテラ・リトラリス種、アスカラファ・オドラタ種、ヘ
リコベルパ・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ラキプルシア・ヌ種、若しくはサ
ミア・シンシア種に属する、又はAcMNPVに由来する組み換えバキュロウイルス及び
/又はバクミドに感染しやすい任意の他の蛹である、蛹。
【0230】
4.上記タンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの発
現を可能とする核酸配列が、
(a)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
(b)配列番号1~配列番号5のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも7
0%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは
少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも9
5%の配列同一性を有し、組み換えバキュロウイルスにおける転写調節因子として機能し
得るタンパク質をコードする、核酸配列、
(c)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸をコ
ードする核酸配列、並びに、
(d)配列番号6~配列番号9のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも70%
、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少な
くとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%
の配列類似性を有し、組み換えバキュロウイルスにおいて転写調節因子として機能し得る
アミノ酸配列をコードする核酸配列、
からなる群から選択され、
上記組み換えタンパク質の発現を駆動するプロモーターが、
(a)配列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~
配列番号13のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む核酸、並びに、
(b)組み換えバキュロウイルスにおいてプロモーターとして機能することができ、配
列番号10~配列番号14のいずれかに示される、好ましくは配列番号11~配列番号1
3のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも7
5%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好まし
くは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する核酸
配列、
を含む核酸の群から選択され、
上記組み換え相同領域(hr)が配列番号21に示される配列(hr1)である、項2又
は3に記載の蛹。
【0231】
5.上記組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、エンハンサー領域
との組み合わせを含む核酸配列が、配列番号15~配列番号20を含む群から選択される
、項2~4のいずれか一項に記載の蛹。
【0232】
6.上記蛹が、好ましくはサブユニット単量体ワクチン、サブユニット多量体ワクチン、
ウイルス様粒子、治療用タンパク質、抗体、酵素、サイトカイン、血液凝固因子、抗凝血
剤、受容体、ホルモン、診断用タンパク質試薬、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)から
なる群から選択される組み換えタンパク質をコードする核酸配列を更に含む、項2~5の
いずれか一項に記載の蛹。
【0233】
7.項1~6のいずれか一項に規定される蛹の使用であって、好ましくはサブユニット単
量体ワクチン、サブユニット多量体ワクチン、ウイルス様粒子、治療用タンパク質、抗体
、酵素、サイトカイン、血液凝固因子、抗凝血剤、受容体、ホルモン、診断用タンパク質
試薬、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)からなる群から選択される組み換えタンパク質
の発現のための、蛹の使用。
【0234】
8.
(a)蛹、好ましくは絹を含まない蛹を準備する工程と、
(b)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMN
PV)に由来する組み換えバキュロウイルスを工程(a)の蛹に接種する工程と、
(c)少なくとも1つの組み換えタンパク質が発現するのに十分な期間に亘って工程(
b)の接種を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(d)少なくとも1つの組み換えタンパク質を含む蛹を得る工程と、
(e)任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク質を採取する工程と、
(f)任意に、少なくとも1つの組み換えタンパク質を精製する工程と、
を含み、
好ましくは、上記蛹が鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプ
テラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しくはサミア
属、より一層好ましくはトリコプルシア・ニ種、マンズカ・セクスタ種、スポドプテラ・
フルギペルダ種、スポドプテラ・リトラリス種、アスカラファ・オドラタ種、ヘリコベル
パ・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ラキプルシア・ヌ種、若しくはサミア・シ
ンシア種に属する、又はAcMNPVに由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバ
クミドに感染しやすい任意の他の蛹である、少なくとも1つの組み換えタンパク質を産生
する方法。
【0235】
9.上記組み換えバキュロウイルスが、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベ
ルを超えて転写調節因子として機能するタンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/
又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超える発現を可能とする核酸配列と、組み換
えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作動可能に連結された組
み換え相同領域(hr)とを含み、好ましくは、バキュロウイルス感染の間に得られる内
因性レベルを超えて転写調節因子として機能する上記タンパク質IE-1、タンパク質I
E-0及び/又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超える発現を可能とする上記核
酸配列、並びに組み換えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作
動可能に連結された上記組み換え相同領域(hr)が、請求項4に規定されるようなもの
である、項8に記載の方法。
【0236】
10.組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、エンハンサー領域と
の組み合わせを含む核酸配列が、配列番号15~配列番号20を含む群から選択される、
項11に記載の方法。
【0237】
11.上記蛹が、好ましくは、サブユニット単量体ワクチン、サブユニット多量体ワクチ
ン、ウイルス様粒子、治療用タンパク質、抗体、酵素、サイトカイン、血液凝固因子、抗
凝血剤、受容体、ホルモン、診断用タンパク質試薬、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)
からなる群から選択される組み換えタンパク質をコードする核酸配列を更に含む、項8~
10のいずれか一項に記載の方法。
【0238】
12.
(a)絹繭に含まれる蛹を準備する工程と、
(b)蛹を含む上記絹繭を次亜塩素酸の塩、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムの溶液で
処理する工程と、
(c)絹を含まない、殺菌された蛹を得る工程と、
を含む、鱗翅目、好ましくはT.ニ種に属する絹を含まない蛹を産生する方法。
【0239】
13.
(a)好ましくは鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属、ラキプルシア属、スポドプテ
ラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラファ属、若しくはサミア属
、より一層好ましくはトリコプルシア・ニ種、マンズカ・セクスタ種、スポドプテラ・フ
ルギペルダ種、スポドプテラ・リトラリス種、アスカラファ・オドラタ種、ヘリコベルパ
・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ラキプルシア・ヌ種、若しくはサミア・シン
シア種に属する蛹、又はAcMNPVに由来する組み換えバキュロウイルス及び/又はバ
クミドに感染しやすい任意の他の蛹、好ましくは絹を含まない蛹を準備する工程と、
(b)オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMN
PV)に由来する組み換えバキュロウイルスの産生に適したバクミドで工程(a)の蛹を
トランスフェクトする工程と、
(c)組み換えバキュロウイルスを産生するのに十分な期間に亘って工程(b)の接種
を受けた蛹をインキュベートする工程と、
(d)上記組み換えバキュロウイルスを含む蛹を得る工程と、
(e)任意に、上記組み換えバキュロウイルスを採取する工程と、
(f)任意に、上記組み換えバキュロウイルスを精製する工程と、
を含む、組み換えバキュロウイルスを産生する方法。
【0240】
14.オートグラファ・カリフォルニカマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNP
V)に由来する組み換えバキュロウイルスを産生するのに適した上記バクミドが、バキュ
ロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転写調節因子として機能するタンパ
ク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれらのフラグメントの内因性レベルを超
える発現を可能とする核酸配列と、組み換えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意
のプロモーターに作動可能に連結された組み換え相同領域(hr)とを含み、或いはそれ
らからなり、好ましくは、バキュロウイルス感染の間に得られる内因性レベルを超えて転
写調節因子として機能する上記タンパク質IE-1、タンパク質IE-0及び/又はそれ
らのフラグメントの内因性レベルを超える発現を可能とする上記核酸配列、並びに組み換
えタンパク質の発現を駆動するのに適した任意のプロモーターに作動可能に連結された上
記組み換え相同領域(hr)が、請求項4に規定されるようなものである、項13に記載
の方法。
【0241】
15.組み換えプロモーターと、転写調節因子をコードする配列と、エンハンサー領域と
の組み合わせを含む核酸配列が、配列番号15~配列番号20を含む群から選択される、
項14に記載の方法。
【0242】
16.精密ポンプと、モバイル機械アームと、鱗翅目、好ましくはトリコプルシア属、ラ
キプルシア属、スポドプテラ属、ヘリオチス属、マンズカ属、ヘリコベルパ属、アスカラ
ファ属、若しくはサミア属、より一層好ましくはトリコプルシア・ニ種、マンズカ・セク
スタ種、スポドプテラ・フルギペルダ種、スポドプテラ・リトラリス種、アスカラファ・
オドラタ種、ヘリコベルパ・ジー種、ヘリオチス・ヴィレッセンス種、ラキプルシア・ヌ
種、若しくはサミア・シンシア種に属する蛹、又はAcMNPVに由来する組み換えバキ
ュロウイルス及び/又はバクミドに感染しやすい任意の他の蛹に流体を注入するのに適し
た(移動可能な)針とを備え、好ましくは該蛹がマトリクス又はアレイで提供される、装
置。
【0243】
17.上記装置が、上記針の位置を規定する、及び/又は上記針から上記蛹までの距離及
び/又は上記蛹への針の穿通距離及び/又は上記蛹に接種する液体(好ましくは組み換え
バキュロウイルス又はバクミドを含む)の容量を計算するコンピュータプログラムを更に
備え、上記装置が、好ましくは、例えば上記接種針の座標を決定する、及び/又は上記蛹
の上記接種の容量及び/又は時間及び/又は接種間の時間を計算するコンピュータプログ
ラムを更に備える、項16に記載の装置。
図1
図2
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図20
【配列表】
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