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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】抜型用反発材
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20241129BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20241129BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20241129BHJP
   B26F 1/38 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B26F1/44 G
B26F1/40 B
B26D7/18 F
B26F1/38 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024161013
(22)【出願日】2024-09-18
【審査請求日】2024-09-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-56348(JP,A)
【文献】特開平9-201798(JP,A)
【文献】特開平8-90497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/00 - 1/46
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の弾性部材からなり、板状のベースに形成された溝に切刃が埋め込まれた抜型において前記切刃に沿うように前記ベースに設置される抜型用反発材であって、
前記ベースと接触する取付面と平行をなすように上面が平坦に形成され、前記取付面と前記上面の間の側面に凹部が設けられている接触部と、
この接触部の前記取付面に、下方へ突出するとともに前記抜型に設けられた嵌合孔に対して嵌挿可能に形成されて半円柱状又は半円筒状をなす一対の突起部と、を備え、
前記突起部は、横断面の輪郭線が円弧状をなす第1の突起部側面と、横断面の輪郭線が直線状をなす第2の突起部側面と、を有し、
前記抜型は、横断面が長孔状をなすように前記嵌合孔が前記ベースに設けられ、
前記第1の突起部側面には、薄板状の係合部が側方へ突出し、かつ、弾性変形により前記突起部を前記嵌合孔に対して嵌挿可能に設けられていることを特徴とする抜型用反発材。
【請求項2】
一対の前記突起部は、一方の前記第2の突起部側面が他方の前記第1の突起部側面の第1の接平面に対して近接配置されるとともに、他方の前記第2の突起部側面が一方の前記第1の突起部側面の第2の接平面に対して近接配置されていることを特徴とする請求項1に記載の抜型用反発材。
【請求項3】
一対の前記突起部は、基端側の前記第1の突起部側面同士が連結部材を介して互いに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の抜型用反発材。
【請求項4】
前記連結部材は、一対の前記突起部とともに前記嵌合孔に対して嵌挿可能に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の抜型用反発材。
【請求項5】
直方体状をなす前記接触部の前記側面は、互いに平行をなす第1の側面及び第2の側面を備えており、
前記凹部は、前記第1の側面に設けられた第1の凹部と、前記第2の側面に設けられた第2の凹部と、からなり、
前記接触部が前記上面に平行な仮想平面によって前記第1の凹部及び前記第2の凹部を横切るように切断された状態において前記接触部を前記上面側から見た場合に、前記第1の凹部及び前記第2の凹部が互い違いに設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の抜型用反発材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜型を用いて打抜き加工を行う際に製品の離型性を高める目的で抜型に設置される反発材に係り、特に、接触部が変形し易く、かつ、抜型に設けられる嵌合孔のサイズを従来に比べて小さくすることが可能な抜型用反発材に関する。
【背景技術】
【0002】
紙や段ボールなどのシート材料並びにウレタンなどの発泡体の打ち抜き加工に用いられる抜型には、トムソン型(平型)の他に、ロータリーダイカッターに用いられるロータリー型が知られている。
図8(a)に示すように、トムソン型(平型)と呼ばれる抜型50aは、ベニヤ板、樹脂板、金属板などからなるベース51aに形成された溝(図示せず)に埋め込まれた金属製の切刃52aに沿って、ウレタンやスポンジなどからなる反発材が配設されている。そして、この抜型50aは、反発材の圧縮変形に伴って、シート材料のうち、切刃52aの刃先に当接した部分が切刃52aの形状通りに打ち抜かれた後、ベース51aをシート材料から離れる方向へ移動させた際に、反発材の形状が弾性的に回復することによりシート材料が切刃52aから離脱する構造となっている。
また、図8(b)に示すように、平行に設置されて互いに逆方向に回転するダイシリンダとアンビルシリンダを備えたロータリーダイカッター(図示せず)に用いられる抜型50bは、ベニヤ板、樹脂板、金属板などからなり、横断面が円弧状をなすベース51bに形成された溝(図示せず)に金属製の切刃52bが埋設された構造となっている。
【0003】
反発材は製品の離型性を高めるという機能を有しており、抜型50a、50bには欠かすことのできないものであるが、従来の反発材は、両面テープなどを用いてベース51a、51bの表面に貼り付けられていたため、使い終わった後にその反発材を抜型50a、50bから取り外して再利用することは困難であった。
このような課題に対処するものとして、例えば、特許文献1に「抜型用反発材とそれが用いられる抜型」という名称で、適度な弾力性を有し、シート材料並びにウレタンなどの発泡体に対して打痕や変形が生じ難く、ベースに対する着脱が容易であって、しかも抜型の使用後にベースから取り外すことにより再利用が可能となる抜型用反発材に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7223383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された抜型用反発材に係る発明は、ポリエチレンの発泡体やウレタン、あるいはエラストマー樹脂などの弾性部材からなる接触部と、この接触部の下面に下方へ突出するように設けられて、抜型の嵌合孔に対して抜出可能に嵌挿される円柱状の突起部と、を備えた構造であり、嵌合孔から突起部を抜出することで抜型から抜型用反発材を容易に取り外すことが可能になっているものの、抜型の嵌合孔のサイズを小さくする目的で突起部の直径を小さくすると、嵌合孔から突起部が簡単に抜けてしまうという課題があった。
また、当該発明においては、接触部の側面に対する凹部の設け方により、接触部の柔軟性が十分に発揮されない場合があった。
本発明は、このような課題に対処してなされたものであり、接触部の柔軟性を十分に発揮させることが可能であって、かつ、特許文献1に開示された従来の抜型用反発材が用いられる抜型よりも嵌合孔のサイズを小さくした場合でも嵌合孔から突起部が抜け難い抜型用反発材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明は、プラスチック製の弾性部材からなり、板状のベースに形成された溝に切刃が埋め込まれた抜型において切刃に沿うようにベースに設置される抜型用反発材であって、ベースと接触する取付面と平行をなすように上面が平坦に形成され、取付面と上面の間の側面に凹部が設けられている接触部と、この接触部の取付面に、下方へ突出するとともに抜型に設けられた嵌合孔に対して嵌挿可能に形成されて半円柱状又は半円筒状をなす一対の突起部と、を備え、突起部は、横断面の輪郭線が円弧状をなす第1の突起部側面と、横断面の輪郭線が直線状をなす第2の突起部側面と、を有し、抜型は、横断面が長孔状をなすように嵌合孔がベースに設けられ、第1の突起部側面には、薄板状の係合部が側方へ突出し、かつ、弾性変形により突起部を嵌合孔に対して嵌挿可能に設けられていることを特徴とする。
なお、第1の発明において「半円柱状又は半円筒状をなす一対の突起部」には、「略半円柱状又は略半円筒状をなす一対の突起部」も含まれるものとする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、一対の突起部は、一方の第2の突起部側面が他方の第1の突起部側面の第1の接平面に対して近接配置されるとともに、他方の第2の突起部側面が一方の第1の突起部側面の第2の接平面に対して近接配置されていることを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1の発明において、一対の突起部は、基端側の第1の突起部側面同士が連結部材を介して互いに連結されていることを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第3の発明において、連結部材は、一対の突起部とともに嵌合孔に対して嵌挿可能に形成されていることを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかにおいて、直方体状をなす接触部の側面は、互いに平行をなす第1の側面及び第2の側面を備えており、凹部は、第1の側面に設けられた第1の凹部と、第2の側面に設けられた第2の凹部と、からなり、接触部が上面に平行な仮想平面によって第1の凹部及び第2の凹部を横切るように切断された状態において接触部を上面側から見た場合に、第1の凹部及び第2の凹部が互い違いに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明では、円柱状又は円筒状の突起部を備えた抜型用反発材を用いる場合に比べて、抜型に設けられる嵌合孔の幅を略半分にできるため、切刃が埋め込まれる2つの溝の間隔が狭く、円柱状又は円筒状の突起部を嵌挿するための嵌合孔を設けるとベースが割れてしまうおそれがあるという理由で、これまで従来の円柱状又は円筒状の突起部を嵌挿するための嵌合孔を設けることができなかったような箇所に対しても、その略半分の幅の嵌合孔を設けて接触部を設置することが可能である。
なお、第1の発明における一対の突起部は、従来の円柱状又は円筒状の突起部を半分に分けた状態に相当するため、それらに設けられている係合部の数は従来の円柱状又は円筒状の突起部の場合と変わらない。そのため、第1の発明によれば、抜型の嵌合孔に対する突起部の係合力を低下させることなく、抜型に設けるべき嵌合孔の幅を狭く設定することができる。
【0012】
一対の突起部において2つの第2の突起部側面が同一平面内に配置されている場合でも、抜型に設けるべき嵌合孔の幅を突起部の直径よりも狭く設定することができる。ただし、この場合には、一対の突起部にそれぞれ設けられている係合部がともに嵌合孔の一対の内壁面の一方のみに係合することになり、突起部と嵌合孔の間の係合状態が安定しないおそれがある。これに対し、第2の発明では、一対の突起部を抜型の嵌合孔に嵌挿した際に、両者の第2の突起部側面が嵌合孔の一対の内壁面に対してそれぞれ近接配置され、各係合部が上記嵌合孔の一対の内壁面に対してそれぞれ係合することから、第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、突起部と嵌合孔の間の係合状態が安定するという効果を奏する。
【0013】
一対の突起部を抜型の嵌合孔に嵌挿した際に、それらの先端側が互いに近づく方向へ倒れ込むような変形が発生すると、抜型の嵌合孔と突起部の間の係合状態が不十分となり、嵌合孔から突起部が簡単に抜けてしまうおそれがある。これに対し、第3の発明では、一対の突起部が連結部材を介して基端側の第1の突起部側面同士が互いに連結されていることから、連結部材が上述の変形を阻止するように作用する。したがって、第3の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、抜型の嵌合孔に対して突起部が十分な状態で係合するという効果を奏する。
【0014】
第4の発明では、一対の突起部が嵌合孔に嵌挿された際に、連結部材も係合部とともに嵌合孔に係合するため、抜型の嵌合孔に対して突起部が十分な状態で係合するという第3の発明の効果がより一層発揮される。
【0015】
第5の発明において、接触部が上面に平行な仮想平面によって切断された状態を考えた場合、接触部のうち、第1の凹部及び第2の凹部が設けられていない部分が変形に対する抗力を発生させるリブとして作用する。そして、このリブは接触部の第1の側面や第2の側面に平行な第1のリブと、この第1のリブから延設される第2のリブによって構成される。
一方、従来の抜型用反発材における接触部のように第1の側面及び第2の側面に対して第1の凹部及び第2の凹部が互い違いに設けられていない場合、上述の第1のリブと第2のリブが十字をなすように交差する部分が生じる。そして、この部分が接触部の変形に対する抗力を高めるように作用するため、接触部が変形し難くなる。逆に言えば、第5の発明では、従来の抜型用反発材における接触部に比べて接触部が容易に変形するため、接触部の緩衝効果が十分に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る抜型用反発材の外観斜視図である。
図2】(a)は図1に示した抜型用反発材の正面図であり、(b)は同図(a)におけるA-A線矢視断面図である。
図3】(a)は従来技術に係る抜型用反発材の正面図であり、(b)は同図(a)におけるB-B線矢視断面図である。
図4】(a)及び(b)は図1に示した抜型用反発材及びその変形例における接触部の下面を突起部の側から見た図である。
図5】(a)及び(b)はそれぞれ図2(a)及び図3(a)に示した抜型用反発材が設置される抜型(トムソン型)の一部を表した平面図である。
図6】(a)及び(b)はそれぞれ図3(a)におけるD方向矢視図及び図2(a)におけるC方向矢視図である。
図7】(a)及び(b)はそれぞれ図1に示した抜型用反発材が設置される抜型(トムソン型及びロータリー型)の外観斜視図である。
図8】(a)及び(b)はそれぞれトムソン型(平型)及びロータリー型と呼ばれる抜型の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の抜型用反発材の構造とそれに基づいて発揮される作用及び効果について図1乃至図7を参照しながら具体的に説明する。なお、本発明の抜型用反発材はシート材料並びにウレタンなどの発泡体の打抜きに用いられる抜型のベースに取り付けられるものであるため、以下の説明ではベースに取り付けられた状態でシート材料に接触する側及びベースに接触する側をそれぞれ「上面」及び「下面」と表現し、ベース側を「下方」と表現している。
【実施例
【0018】
本発明の抜型用反発材について図1及び図2を用いて説明する。なお、図1では図が煩雑になるのを避けるため、一部の係合部4についてのみ、符号を付している。
図1並びに図2(a)及び図2(b)に示すように、本発明の抜型用反発材1はポリエチレンの発泡体やウレタン、あるいはエラストマー樹脂などのプラスチック製の弾性部材からなり、互いに平行をなす第1の側面2c及び第2の側面2dに対して凹部2eがそれぞれ2つずつ設けられた略直方体状の接触部2と、この接触部2の下面2bに下方へ突出するように設けられて半円柱状をなす一対の突起部3、3と、を備えている。
【0019】
下面2bと平行をなすように平坦に形成されている接触部2の上面2aには、シート材料との間に生じる摩擦力を小さくして離型の際にシート材料が離れ易くなるように微小な凹凸2fが設けられている。また、横断面の輪郭線が円弧状をなす突起部3の第1の突起部側面3aには、薄板状の係合部4が側方へ突出するように設けられており、横断面の輪郭線が直線状をなす突起部3の第2の突起部側面3bには、突起部3の軸方向に沿って所定の長さを有する棒状の補強部5が設けられている。さらに、一対の突起部3、3は、基端側(接触部2の下面2bに近い側)の第1の突起部側面3a同士が板状の連結部材6を介して互いに連結されている。
なお、係合部4は、第1の突起部側面3aに対して、突起部3の軸方向へ所定の間隔をあけた状態でそれぞれ設けられた3つのツバ部4a~4cによって構成されている。
【0020】
図2(b)に示すように、凹部2eは、接触部2の第1の側面2cに設けられた第1の凹部16aと、第2の側面2dに設けられた第2の凹部16bと、からなる。
抜型用反発材1では、接触部2が上面2aに平行な仮想平面によって第1の凹部16a及び第2の凹部16bを横切るように切断された状態において接触部2を上面2a側から見た場合に、第1の凹部16a及び第2の凹部16bが互い違いに設けられており、接触部2のうち、第1の凹部16a及び第2の凹部16bが設けられていない部分が変形に対する抗力を発生させるリブとしての機能を発揮する。
なお、図2(b)に示すように、上述のリブは、第1の側面2cや第2の側面2dに平行な第1のリブ2gと、この第1のリブ2gから延設される第2のリブ2hによって構成されるが、第1のリブ2g及び第2のリブ2hについては、後述する第1のリブ8f及び第2のリブ8gの場合とは異なり、両者が交差する部分は生じない。
【0021】
つぎに、従来の抜型用反発材の構造の一例について図3(a)及び図3(b)を用いて説明する。
図3(a)及び図3(b)に示すように、従来技術に係る抜型用反発材7はポリエチレンの発泡体やウレタン、あるいはエラストマー樹脂などのプラスチック製の弾性部材からなり、互いに平行をなす第1の側面8c及び第2の側面8dにそれぞれ凹部8eが4つずつ設けられた略直方体状の接触部8と、この接触部8の下面8bに下方へ突出するように設けられて円柱状をなす突起部9と、を備えている。また、接触部8の上面8aは下面8bと平行をなすように平坦に形成されており、突起部9の側面9aには薄板状の係合部10が側方へ突出するように設けられている。
なお、係合部10は、突起部9の軸方向へ所定の間隔をあけた状態で側面9aにそれぞれ設けられた3つのツバ状部10a~10cによって構成されている。
【0022】
図3(b)に示すように、凹部8eは、接触部8の第1の側面8cに設けられた第1の凹部17aと、第2の側面8dに設けられた第2の凹部17bと、からなる。
抜型用反発材7では、接触部8が上面8aに平行な仮想平面によって第1の凹部17a及び第2の凹部17bを横切るように切断された状態において接触部8を上面8a側から見た場合に、第1の凹部17a及び第2の凹部17bが互い違いに設けられておらず、接触部8のうち、第1の凹部17a及び第2の凹部17bが設けられていない部分が接触部8の変形に対する抗力を発生させるリブとして機能を発揮する。
なお、図3(b)に示すように、上述のリブは、第1の側面8c及び第2の側面8dに平行な第1のリブ8fと、それに直交する第2のリブ8gによって構成されるが、第1のリブ8fと第2のリブ8gが十字をなすように交差する部分が生じ、この部分が接触部8の変形に対する抗力を高めるように作用する。そのため、接触部8は接触部2に比べて変形し難い。逆に言えば、抜型用反発材1は接触部2が抜型用反発材7の接触部8よりも変形が容易であると言える。これにより、抜型用反発材1では、接触部2の緩衝効果が抜型用反発材7の接触部8に比べて十分に発揮される。
【0023】
一対の突起部3、3の形状について図4(a)及び図4(b)を用いて、さらに詳しく説明する。なお、図4(a)は図2(a)におけるC方向矢視図であり、図4(b)は抜型用反発材1の変形例に係る抜型用反発材1aを図4(a)と同じ方向から見た図である。また、図4(a)及び図4(b)に示した太い破線は、抜型用反発材1、1aがそれぞれ設置される抜型の嵌合孔11、11aの輪郭線を表している。
図4(a)及び図4(b)に示すように、嵌合孔11、11aの輪郭線は、長方形を構成する2本の長辺の両端が半円を介してそれぞれ互いに接続された長孔状をなしている。したがって、嵌合孔11、11aは、互いに平行をなす一対の内壁面12a、12a(図7(a)を参照)と、輪郭線が半円弧状をなす一対の内壁面12b、12b(図7(a)を参照)を有している。
【0024】
抜型用反発材1の一対の突起部3、3は、図4(a)に示すように、一方の突起部3における第2の突起部側面3bが、他方の突起部3における第1の突起部側面3a(図2(a)を参照)の第1の接平面14aに対して近接配置されるとともに、他方の突起部3における第2の突起部側面3bが、一方の突起部3における第1の突起部側面3a(図2(a)を参照)の第2の接平面14bに対して近接配置された構造となっている。
従来の抜型用反発材7では嵌合孔の幅(図5(b)に示した嵌合孔11bの直径)を突起部9の直径よりも広くする必要があるが、上記構造の抜型用反発材1では、第1の接平面14aと第2の接平面14bとの間隔Lが突起部3の直径の略半分であるため、嵌合孔11の幅W(一対の内壁面12a、12aの間隔)を突起部3の直径よりも狭くすることができる。これにより、突起部3と突起部9の直径が同じ場合には、抜型用反発材1が設置される抜型の嵌合孔11の幅Wが従来の抜型用反発材7が設置される抜型の嵌合孔の幅(図5(b)に示した嵌合孔11bの直径)よりも狭くなる。
なお、一対の突起部3、3における第2の突起部側面3b、3bが同一平面内に配置されている場合も嵌合孔11の幅W(一対の内壁面12a、12aの間隔)を突起部3の直径よりも狭く設定することができる。ただし、この場合には、一対の突起部3、3にそれぞれ設けられている係合部4がともに嵌合孔11の一対の内壁面12a、12aの一方のみに係合することになり、突起部3と嵌合孔11の間の係合状態が安定しないおそれがあるため、好ましくない。これに対し、抜型用反発材1では、一対の突起部3、3を抜型の嵌合孔11に嵌挿した際に、両者の第2の突起部側面3bが嵌合孔11の一対の内壁面12a、12aに対してそれぞれ近接配置され、各係合部4が嵌合孔11の一対の内壁面12a、12aに対してそれぞれ係合する。したがって、抜型用反発材1は、突起部3と嵌合孔11の間の係合状態が安定するという独自の効果を有している。
【0025】
このように、抜型用反発材1では、円柱状又は円筒状の突起部を備えた抜型用反発材(例えば、図3(a)に示した抜型用反発材7を参照)を用いる場合に比べて、抜型50a、50b(図8(a)及び図8(b)を参照)に設けられる嵌合孔の幅(例えば、図7(a)に示した一対の内壁面12a、12aの間隔に相当)を略半分にできるため、図5(a)及び図5(b)を用いて後述するように、切刃52a、52b(図8(a)及び図8(b)を参照)が埋め込まれる2つの溝15(図5(a)又は図5(b)を参照)の間隔が狭く、円柱状又は円筒状の突起部を嵌入させるための嵌合孔を設けるとベース51a、51b(図8(a)及び図8(b)を参照)が割れてしまうおそれがあるという理由で、これまで上述の突起部を嵌挿させるための嵌合孔を設けることができなかったような箇所に対しても、その略半分の幅の嵌合孔11を設けて接触部2を設置することが可能である。
なお、一対の突起部3、3は従来の円柱状又は円筒状の突起部を半分に分けた状態に相当するため、それらに設けられている係合部4の数は従来の円柱状又は円筒状の突起部の場合と変わらない。そのため、抜型用反発材1によれば、抜型の嵌合孔11に対する突起部3の係合力を低下させることなく、抜型に設けるべき嵌合孔11の幅を狭く設定することができる。
【0026】
また、一対の突起部3、3を抜型の嵌合孔11に嵌挿した際に、それらの先端側が互いに近づく方向へ倒れ込むような変形が発生すると、抜型の嵌合孔11と突起部3の間の係合状態が不十分となり、嵌合孔11から突起部3が簡単に抜けてしまうおそれがある。これに対し、抜型用反発材1では、既に説明したように一対の突起部3、3が連結部材6を介して基端側(接触部2の下面2bに近い側)の第1の突起部側面3a同士が互いに連結されている。そのため、図4(a)に示すように一対の突起部3、3が抜型の嵌合孔11に嵌挿された際に、一対の突起部3、3における先端側が互いに近づく方向へ倒れ込むような変形が連結部材6によって阻止される。したがって、抜型用反発材1は、抜型の嵌合孔11に対して突起部3が十分な状態で係合するという効果を有している。
さらに、連結部材6は、図4(a)に示すように一対の突起部3、3とともに嵌合孔11に対して嵌挿可能に形成されている。したがって、抜型用反発材1では、一対の突起部3、3が嵌合孔11に嵌挿された際に、連結部材6が係合部4とともに嵌合孔11に係合する。これにより、嵌合孔11に対する突起部3の係合力が高まるため、抜型の嵌合孔11に対して突起部3が十分な状態で係合するという効果がより一層発揮される。
【0027】
一方の突起部3における第2の突起部側面3bが他方の第1の突起部側面3a(図2(a)を参照)の第1の接平面14aに対して近接配置されておらず、例えば、図4(b)に示すように、第1の接平面14aと第2の接平面14bとの間隔Lが突起部3の直径と略等しい抜型用反発材1aの場合、設置される抜型の嵌合孔11aの幅W(一対の内壁面12a、12aの間隔)は、従来の抜型用反発材7が設置される抜型の嵌合孔の幅(図5(b)に示した嵌合孔11bの直径)と同程度になる。
なお、既に述べたように、抜型用反発材1では、抜型の嵌合孔11の幅W図4(a)を参照)を従来の抜型用反発材7が設置される抜型の嵌合孔の幅(図5(b)に示した嵌合孔11bの直径)よりも狭くすることができる。
【0028】
つぎに、抜型の嵌合孔の幅を狭くすることによるメリットについて図5(a)及び図5(b)を用いて説明する。なお、図5(a)及び図5(b)はそれぞれ抜型用反発材1が設置される抜型13及び従来の抜型用反発材7が設置される抜型13aの一部を表した平面図である。
突起部3の直径と突起部9の直径が同じ抜型用反発材1と抜型用反発材7において、図5(a)及び図5(b)に示すように、抜型用反発材1が設置される抜型13と、抜型用反発材7が設置される抜型13aとで、切刃52aが埋め込まれる一対の溝15、15の間隔Lが同じ場合、上述したように、抜型用反発材1では抜型13における嵌合孔11の幅W図4(a)を参照)を抜型用反発材7が設置される抜型13aの嵌合孔11bの幅(図5(b)に示した嵌合孔11bの直径)よりも狭くすることができる。
図5(b)において破線で囲んだ部分では、切刃52aが埋め込まれる溝15の近くに嵌合孔11bが設けられていることから、抜型13aでは、当該箇所においてベース51aが割れてしまうおそれがある。
これに対し、図5(a)に示した抜型13では、切刃52aが埋め込まれる溝15の近くに嵌合孔11が設けられることがないため、上述の溝15の近くでベース51aが割れてしまうおそれはない。したがって、抜型用反発材1では、抜型13において切刃52aが埋め込まれる2つの溝15、15の間隔が狭く、従来の大きさの嵌合孔11bを設けるとベースが割れてしまうおそれがあるという理由で、これまで嵌合孔11bを設けることができなかったような箇所に対しても、嵌合孔11を設けて接触部2を設置することができるため、抜型13の設計時の自由度が高い。
【0029】
抜型用反発材7の係合部10及び抜型用反発材1の係合部4の形状について図6(a)及び図6(b)を用いて説明する。なお、図6(a)及び図6(b)はそれぞれ図3(a)におけるD方向矢視図及び図2(a)におけるC方向矢視図である。
図6(a)に示すように抜型用反発材7の係合部10を構成するツバ部10a~10cは、接触部8の下面8bに垂直な方向に見た場合に、変形を容易にする目的で円の4か所が切りかかれた構造であり、具体的には略十字をなすように4方向へ突出した形状をなしている。
一方、抜型用反発材1の係合部4を構成するツバ部4a~4cは、抜型用反発材7の突起部9及びツバ部10a~10cが突起部9の軸を含む平面によって単に半分に切断された構造ではなく、ツバ部10bがツバ部10a、10cに対して突起部9の軸を中心として90度回転した状態で突起部9及びツバ部10a~10cが上記平面によって半分に切断された構造となっている。
【0030】
抜型用反発材1の突起部3及びツバ部4a~4cが、上記平面によって抜型用反発材7の突起部9及びツバ部10a~10cを単に半分に切断した構造に相当する場合、抜型用反発材1の突起部3及びツバ部4a~4cを接触部2の下面2bに垂直な方向に見ると、ツバ部4a~4cにおいて上述の切り欠かれた箇所が一致することになるため、抜型の嵌合孔11に突起部3を嵌挿させた際に、嵌合孔11に対して係合部4が十分に係合しないおそれがある。
これに対し、抜型用反発材1の突起部3及びツバ部4a~4cが、抜型用反発材7においてツバ部10bがツバ部10a、10cに対して突起部9の軸を中心として90度回転した状態で、上記平面によって突起部9及びツバ部10a~10cを半分に切断した構造に相当する場合、図6(b)に示すように抜型用反発材1のツバ部4a~4cを接触部2の下面2bに垂直な方向に見ると、ツバ部4a、4cと、ツバ部4bとで、上述の切り欠かれた箇所が一致しないため、ツバ部4bにおける上述の切り欠かれた箇所にツバ部4a、4cの突出した部分が配置された状態になる。そのため、抜型用反発材1では、抜型の嵌合孔11に突起部3を嵌挿させた際に、嵌合孔11に対して係合部4が十分に係合するという作用が発揮される。
【0031】
抜型用反発材1が設置される抜型(トムソン型及びロータリー型)の構造について、図7(a)及び図7(b)を用いて説明する。
図7(a)及び図7(b)に示すように、抜型用反発材1が用いられる抜型13、13bはベニヤ板、樹脂板、金属板などからなるベース51a、51bに対し、レーザ加工などによって溝(図示せず)が形成されている。そして、この溝に、それと同じ形状に折り曲げられた金属製の切刃52a、52bが埋め込まれるとともに、切刃52a、52bに沿って抜型用反発材1の突起部3を嵌挿するための嵌合孔11が設けられている。
なお、抜型用反発材1は、突起部3が係合部4の弾性変形によって嵌合孔11に対して嵌挿可能となっており、係合部4は突起部3の第1の突起部側面3aと嵌合孔11の内壁面12a、12bの隙間を埋めるように弾性変形することで、突起部3と嵌合孔11の間に大きな摩擦力を生じさせるという作用を有している。そのため、抜型用反発材1では、抜型13に設置された後に、ベース51a、51bの嵌合孔11から突起部3が不用意に抜けてしまうおそれがない。
【0032】
抜型用反発材1の接触部2は、抜型13に設置される際に下面2b(図1(a)及び図1(b)を参照)がベース51a、51bと接触する取付面となるが、このとき、下面2bと平行をなすように平坦に形成された上面2a(図1を参照)はベース51aに対して平行な状態となる。
このような構造の抜型用反発材1においては、シート材料と接触部2の上面2aが平坦であって、かつ、抜型13に設置された状態で接触部2の上面2aがベース51aと平行をなすことから、シート材料を抜型13によって打ち抜く際に、接触部2の上面2aとシート材料の接触する面積が広くなる。これにより、シート材料の表面に凹凸がある場合でも、打抜き時に抜型用反発材1からシート材料へ押圧力が均等に作用する。したがって、抜型13に抜型用反発材1を用いると、抜型13による打抜き力がシート材料の一部に集中しないため、打抜き後のシート材料に打痕が付き難い。
また、抜型用反発材1では、凹部2eの形状や大きさ、あるいは個数を変えることにより、接触部2の弾力性が変化する。すなわち、抜型用反発材1は、接触部2の材質を変えなくとも、凹部2eの形状や大きさ、あるいは個数を変えることで、接触部2の弾力性を容易に調節可能な構造となっている。したがって、抜型用反発材1によれば、接触部2の弾力性を調節することにより、製品の離型性を高めることができる。
さらに、抜型用反発材1は突起部3を嵌合孔11に嵌挿することによって接触部2がベース51aに固定され、突起部3を嵌合孔11から引き抜くことによってその固定状態が解消されるため、抜型13に対する取り付け作業及び取り外し作業を容易に行うことができる。そして、抜型13から取り外した抜型用反発材1は再利用することが可能である。
【0033】
図7(b)に示すように、抜型用反発材1が用いられる抜型13bは平行に設置されて互いに逆方向に回転するダイシリンダとアンビルシリンダを備えたロータリーダイカッター(図示せず)に用いられるものであり、ベニヤ板、樹脂板、金属板などからなり、横断面が円弧状をなすベース51bに形成された溝に金属製の切刃52bが埋設されるとともに、切刃52bに沿って抜型用反発材1の突起部3を嵌挿するための嵌合孔11aが設けられている。すなわち、抜型13bは従来の抜型50b(図8(b)を参照)において、抜型用反発材1が設置される箇所に嵌合孔11aが設けられた構造となっている。
また、抜型用反発材1では、突起部3が係合部4の弾性変形によって嵌合孔11aに対して嵌挿可能な構造となっている。そして、係合部4は突起部3の第1の突起部側面3aと嵌合孔11aの内壁面12a、12bの隙間を埋めるように弾性変形することで、突起部3と嵌合孔11aの間に大きな摩擦力を生じさせるという作用を有している。そのため、抜型用反発材1では、抜型13bに設置された後に、ベース51bの嵌合孔11aから突起部3が不用意に抜けてしまうおそれがない。
なお、嵌合孔11aの中に、横断面が円形をなすものもあるが、そのような嵌合孔11aに対しては、抜型用反発材1において接触部2の下面2bの横断面が円弧状をなした構造の抜型用反発材を用いることが望ましい。
【0034】
本発明の抜型用反発材は、上述の実施例に示した構造に限定されるものではない。例えば、抜型用反発材1は、接触部2の第1の側面2c及び第2の側面2dに対して凹部2eがそれぞれ設けられる代わりに、第1の側面2cから第2の側面2dまで貫通するような孔が設けられていても良いし、第1の側面2c及び第2の側面2dのいずれか一方のみに凹部2eが設けられた構造、あるいは第1の側面2c及び第2の側面2d以外の側面にも凹部2eが設けられた構造であっても良い。
また、接触部2に対し、突起部3を別部材として、接触部2の下面2bに突起部3の上面が接合された構造とすることもできる。さらに、突起部3は円柱状をなす代わりに円筒状をなすような構造であっても良いし、角柱状又は角筒状をなした構造であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の抜型用反発材は、ベースがベニヤ板、樹脂板、金属板によって形成されたトムソン型と呼ばれる抜型やロータリー型と呼ばれる抜型に設置されるものであり、紙や段ボールなどのシート材料並びにウレタンなどの発泡体の打抜きを行う場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1、1a…抜型用反発材 2…接触部 2a…上面 2b…下面 2c…第1の側面 2d…第2の側面 2e…凹部 2f…凹凸 2g…第1のリブ 2h…第2のリブ 3…突起部 3a…第1の突起部側面 3b…第2の突起部側面 4…係合部 4a~4c…ツバ部 5…補強部 6…連結部材 7…抜型用反発材 8…接触部 8a…上面 8b…下面 8c…第1の側面 8d…第2の側面 8e…凹部 8f…第1のリブ 8g…第2のリブ 9…突起部 9a…側面 10…係合部 10a~10c…ツバ部 11、11a、11b…嵌合孔 12a、12b…内壁面 13、13a、13b…抜型 14a…第1の接平面 14b…第2の接平面 15…溝 16a、17a…第1の凹部 16b、17b…第2の凹部 50a、50b…抜型 51a、51b…ベース 52a、52b…切刃 L~L…間隔 W、W…幅
【要約】
【課題】接触部の柔軟性を十分に発揮させることが可能であって、かつ、従来の抜型よりも嵌合孔のサイズを小さくした場合でも嵌合孔から突起部が抜け難い抜型用反発材を提供する。
【解決手段】本発明の抜型用反発材1は、プラスチック製の弾性部材からなり、互いに平行をなす第1の側面2c及び第2の側面2dに対して凹部2eがそれぞれ2つずつ設けられた略直方体状の接触部2と、この接触部2の下面2bに下方へ突出するように設けられて半円柱状をなす一対の突起部3、3と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8