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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】フィルタプレート
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/02 20060101AFI20241129BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20241129BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B01D35/02 Z
B01D29/04 530A
B01D29/04 510B
B01D63/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024540637
(86)(22)【出願日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2024008978
【審査請求日】2024-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501278065
【氏名又は名称】シーエステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 義隆
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-227032(JP,A)
【文献】特開平01-311273(JP,A)
【文献】特開2008-261743(JP,A)
【文献】特開2008-076306(JP,A)
【文献】特開平08-257318(JP,A)
【文献】特開平03-249926(JP,A)
【文献】実開昭63-107743(JP,U)
【文献】実開平04-091725(JP,U)
【文献】特表2002-511931(JP,A)
【文献】米国特許第06586585(US,B1)
【文献】国際公開第2024/057703(WO,A1)
【文献】特許第7461097(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-37/04
G01N 1/10- 1/20
G01N 35/00-35/10
G01N 33/48-33/98
B04B 1/00-15/12
C12M 1/00- 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口した試料収容部を有する試料容器に取り付けて用いられるフィルタプレートであって、
a)前記試料収容部に対応する位置に、試料液を流通させる第1貫通孔が設けられた基材と、
b) 前記第1貫通孔に設けられた第1フィルタと、
c) 前記第1フィルタの、前記試料液が流出する側に隣接して配置され、シート状物に接着シートを貼り合わせたものに該第1フィルタのポアサイズよりも大きい第2貫通孔を形成して成り、該接着シートの接着面に該第1フィルタが接着される第2フィルタと
を備えることを特徴とするフィルタプレート。
【請求項2】
前記フィルタプレートが、複数のウェルを有するマイクロプレートに使用されるものであり、該マイクロプレートの各ウェルに対応する位置の基材に前記第1貫通孔が設けられており、
前記第1フィルタが、全ての第1貫通孔を覆うように該基材の一方の面に配置されたシート状のフィルタである
ことを特徴とする、請求項1に記載のフィルタプレート。
【請求項3】
前記第2貫通孔の径が、前記第1貫通孔の径よりも小さ
ことを特徴とする、請求項1に記載のフィルタプレート。
【請求項4】
前記第2貫通孔の径が、0.1μm以上1mm以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のフィルタプレート。
【請求項5】
前記第2フィルタの、前記試料液が流出する側に配置され、前記複数のウェルのそれぞれに対応する位置に第3貫通孔が設けられた、柔軟性を有する板状のパッキン材
を備えることを特徴とする、請求項に記載のフィルタプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプレートなどの試料容器に取り付けて試料液を濾過するために用いられるフィルタプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生体由来等の試料液をマイクロプレートのウェルに注入する際、試料液から不純物を除去したり目的物を抽出したりするためにフィルタが用いられている。こうしたフィルタの目(ポアサイズ)は小さく、試料液をフィルタ上に滴下しただけでは試料液がフィルタを通過しないことが多い。そのため、各ウェルに対応して設けられたフィルタに試料液を滴下した後に、遠心機を用いて遠心力を付与することにより試料液をウェル内に引き込むという操作(遠心濾過)が行われている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-519440号公報
【文献】特表2007-509633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体由来の試料液を遠心濾過する際にはポアサイズが小さく薄いフィルタを使用することが多く、遠心濾過など、該フィルタに対して力が加えられる操作を行ったときに破れやすいという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、試料液を遠心濾過するなど、該フィルタに対して力が加えられる操作を行う際に、フィルタが破れるのを抑えることができるフィルタプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明は、上部が開口した試料収容部を有する試料容器に取り付けて用いられるフィルタプレートであって、
a) 前記試料収容部に対応する位置に、試料液を流通させる第1貫通孔が設けられた基材と、
b) 前記第1貫通孔に設けられた第1フィルタと、
c) 前記第1フィルタの、前記試料液が流出する側に隣接して配置され、該第1フィルタのポアサイズよりも大きい第2貫通孔が形成された支持体と
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフィルタプレートは、試料容器の試料収容部の開口の位置と基材の第1貫通孔の位置が一致するように、また、支持体がフィルタよりも試料容器側に位置するように、試料容器に固定して用いられる。本発明に係るフィルタプレートでは、試料容器に固定される基材の第1貫通孔に、遠心濾過等に用いる第1フィルタが設けられている。本発明に係るフィルタプレートは、さらに、第1フィルタの、試料液が流出する側に隣接して配置された支持体が備えられている。そのため、遠心濾過など、該フィルタに対して力が加えられる操作を行う際にフィルタが裏側(試料容器の側)から支持され、第1フィルタの破損が抑えられる。また、支持体には、遠心濾過等に使用する第1フィルタのポアサイズよりも大きい第2貫通孔が形成されているため、フィルタを通過した試料液が試料容器の試料収容部に導入されるのを妨げることがない。
【0008】
本発明に係るフィルタプレートにおいて、
前記フィルタプレートが、複数のウェルを有するマイクロプレートに使用されるものであり、該マイクロプレートの各ウェルに対応する位置の基材に前記第1貫通孔が設けられており、
前記第1フィルタが、全ての第1貫通孔を覆うように該基体の一方の面に配置されたシート状のフィルタであることが好ましい。
【0009】
本発明に係るフィルタプレートは、上記態様のように、複数のウェルを有するマイクロプレートに使用することができる。その場合には、上記態様のように、全ての第1貫通孔を覆うように該基体の一方の面に配置されたシート状のフィルタを使用することで、第1フィルタを簡便に取り付けることができる。
【0010】
本発明に係るフィルタプレートにおいて、
前記支持体は、シート状物に接着シートを貼り合わせたものに前記第2貫通孔を形成し成る第2フィルタであることが好ましい。
【0011】
上記態様のフィルタプレートでは、支持体の接着シートによって第1フィルタと第2フィルタを接着することにより、両者の間に試料液が流入するのを防ぐことができる。
【0012】
本発明に係るフィルタプレートは、さらに、
前記支持体の、前記試料液が流出する側に配置され、前記複数のウェルのそれぞれに対応する位置に第3貫通孔が設けられた、柔軟性を有する板状のパッキン材
を備えることが好ましい。
【0013】
上記態様のフィルタプレートでは、基材の第1貫通孔から流通試料液を液漏れさせることなく該貫通孔に対応するウェルへと導入することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフィルタプレートを用いることにより、試料液を遠心濾過など、該フィルタに対して力が加えられる操作を行う際に、フィルタが破損するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るフィルタプレートの第1実施形態を示す上面図(a)、a-a縦断面図(b)、及び下面図(c)。
図2】第1実施形態のフィルタプレートの製造時に基材に貼付する、フィルタ及びパッキン材を含むフィルタ・パッキン材付きシールを示す縦断面図。
図3】第1実施形態におけるフィルタ・パッキン材付きシールの分解斜視図。
図4】第1実施形態のフィルタプレートをマイクロプレートに装着した状態を示す縦断面図。
図5】マイクロプレート及び第1実施形態のフィルタプレートを遠心機に装着した状態を示す模式図。
図6】本発明に係るフィルタプレートの第2実施形態を示す上面図(a)、b-b縦断面図(b)、及び下面図(c)。
図7】第2実施形態のフィルタプレートの縦断面部分拡大図(a)、及び下面部分拡大図(b)。
図8】第2実施形態のフィルタプレートをマイクロプレートに装着した状態を示す縦断面部分拡大図。
図9】第1実施形態の変形例のフィルタプレートを示す部分縦断面図。
図10】本発明に関連する実施形態のフィルタプレートの縦断面図。
図11】関連実施形態のフィルタプレートの製造時に基材に貼付する、フィルタ及びパッキン材を含むフィルタ・パッキン材付きシールを示す縦断面図。
図12】関連実施形態におけるフィルタ・パッキン材付きシールの分解斜視図。
図13】関連実施形態における第2フィルタシートの部分拡大図。
図14】関連実施形態において1つの第1貫通孔の内部にピペットチップを挿入し、第2フィルタシートに押し当てて試料液を抽出する様子を示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図9を用いて、本発明に係るフィルタプレートの実施形態を説明する。
【0017】
(1) 第1実施形態
図1に、第1実施形態のフィルタプレート10を示す。図1(a)はフィルタプレート10の上面図、図1(b)はフィルタプレート10のa-a縦断面図、図1(c)はフィルタプレート10の下面図である。このフィルタプレート10は、基材11と、第1フィルタシート12と、第2フィルタシート13と、パッキン材14とを有する。
【0018】
基材11は、平面形状が長方形であるプラスチック製の板状部材111と、該板状部材111に設けられ平面形状が円形である複数の第1貫通孔112とを有する。第1貫通孔112は、前記長方形の長辺に平行に12個、短辺に平行に8個、それぞれ並ぶように、合計96個設けられている。この第1貫通孔112の配置は、フィルタプレート10が装着される96穴マイクロプレートのウェルの配置に対応している。基材11の上面のうち、長辺側の端部には第1貫通孔112が並ぶ列に合わせて1~12の数字が記載されていると共に、短辺側の端部には第1貫通孔112が並ぶ行に合わせてA~Hの8個のアルファベットが記載されている。これらの数字及びアルファベットは、各第1貫通孔112を特定するための記号である。
【0019】
基材11(板状部材111)の長方形の4個の角のうち一方の短辺を介して隣り合う2つの角には、該短辺に対して45°の角度で切り落とされたC面113が形成されている。C面113を設けたことにより、フィルタプレート10の向きを容易に認識することができる。
【0020】
基材11の下面には、該下面の外周縁から下方に向けて、基材11と同じ材料から成る矩形枠状の囲み壁114が延びている。本実施形態の囲み壁114は、第1フィルタシート12及び第2フィルタシート13の表面に対して垂直に(鉛直方向に)設けられているが、囲み壁114は、マイクロプレート挿入空間115を取り囲むように設けられていればよく、鉛直方向には限定されない。
【0021】
基材11の下面の下方であって囲み壁114で囲まれた部分は、96穴マイクロプレートが挿入されるマイクロプレート挿入空間115となる。マイクロプレート挿入空間115にマイクロプレートが挿入されることで、該マイクロプレートと基材11が相互に位置決めされ固定される。マイクロプレート挿入空間115は基本的には直方体であるが、当該直方体のうち基材11がC面113で切り落とされた部分の直下には囲み壁114と同じ材料から成るコーナー部116(図1(c)参照)が設けられている。つまり、マイクロプレート挿入空間115の平面形状と基材11の上面の平面形状は、ほぼ同じである。
【0022】
第1フィルタシート12は、ナイロン66製の目開き(ろ過粒度)が30μmのフィルタ材からなる。第1フィルタシート12は、基材11の下面のうち囲み壁114で囲まれた領域とほぼ同じ形状であり、その領域を覆うように基材11の下面に取り付けられている。第1フィルタシート12のうち第1貫通孔112に面する部分が、本発明におけるフィルタとして機能する。
【0023】
第2フィルタシート13は、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート131の一方の表面に接着シート132を貼り合わせたシート材(両面接着シートの一方の接着面をPETシート131に貼り合わせたもの)にレーザ光を照射することにより複数の貫通孔を形成したものである(貫通孔は図3のみに模式的に図示し、図1及び図2では貫通孔の図示を省略している)。第2フィルタシート13も、基材11の下面のうち囲み壁114で囲まれた領域とほぼ同じ形状であり、第1フィルタシート12の下面を覆うように取り付けられている。第2フィルタシート13は、本発明における支持体として機能する。第2フィルタシート13に設けられている貫通孔は本発明における第2貫通孔に相当する。第2フィルタシート13には、第1フィルタシート12のポアサイズよりも大きく、第1貫通孔112の径よりも小さい貫通孔を形成したものを用いる。
【0024】
第2フィルタシート13の貫通孔が小さすぎると、第1フィルタシート12を通過した試料液が第2フィルタシート13を通過しにくい場合がある。また、第2フィルタシート13の貫通孔が大きすぎると第1フィルタシート12と接触する面積が少なくなり、第1フィルタシート12を支持する領域が狭くなる。これらを考慮すると、第2フィルタシート13に形成される貫通孔の径(直径)は、0.1μm以上1mm以下であることが好ましい。また、第1フィルタシート12のポアサイズに関わらず使用することを考慮すると1μm以上500μm以下であることがより好ましい。これにより、第1フィルタシート12のポアサイズに関わらず、該第1フィルタシート12を通過した試料液をスムーズに通過させ、かつ該第1フィルタシート12をより確実に支持することができる。
【0025】
パッキン材14は、基材11の第1貫通孔112に対応する位置に第3貫通孔142が形成された、第1フィルタシート12及び第2フィルタシート13よりも厚い板状部材141からなる。パッキン材14は第1フィルタシート12及び第2フィルタシート13とほぼ同じ平面形状を有しており、第1フィルタシート12及び第2フィルタシート13を間に挟むようにして基材11の下面に設けられている。パッキン材14の板状部材141はシリコーンゴム製であり、柔軟性を有する。
【0026】
図2及び図3に示すように、第2フィルタシート13とパッキン材14は、パッキン材14の第3貫通孔142に対応する位置に孔が設けられた第1両面接着フィルム15により互いに接着されている(図1では第1両面接着フィルム15の図示を省略)。なお、図2では各構成要素を明瞭に表示するために横方向と縦方向の縮尺を異ならせて(縦方向に長くなるように)描いている。また、第1フィルタシート12と第2フィルタシート13は、第2フィルタシート13の上面に位置する接着シート132により互いに接着されている。さらに、第1フィルタシート12と基材11は、基材11の第1貫通孔112に対応する位置に孔が設けられた第2両面接着フィルム16により互いに接着されている(図1では第2両面接着フィルム16の図示を省略)。第1両面接着フィルム15と第2両面接着フィルム16はいずれも、第1フィルタシート12、第2フィルタシート13、及びパッキン材14と同じ平面形状である。即ち、第1フィルタシート12、第2フィルタシート13、パッキン材14、第1両面接着フィルム15、及び第2両面接着フィルム16の、基材11の2個のC面に対応する箇所には、部材毎に2個の切り欠き123、133、143、153、163が設けられている(図3参照)。
【0027】
フィルタプレート10を製造する際は、まずは、パッキン材14、第1両面接着フィルム15、第2フィルタシート13、第1フィルタシート12、及び第2両面接着フィルム16を、下から順に、それぞれの切り欠き143、153、133、123、163の位置を合わせて重ね、貼り合わせて一体化する。なお、第2フィルタシート13は、接着シート132が上面となるように配置する。次に、この一体化物(これを「フィルタ・パッキン材付きシール20」と呼ぶ。)を、その切り欠きと基材11のコーナー部116の位置を合わせて、基材11の下面の囲み壁114で囲まれた空間(マイクロプレート挿入空間115)に嵌め込み、第2両面接着フィルム16によって基材11の下面に貼付する。これにより、フィルタプレート10が完成する。
【0028】
接着シート132の表面(第1フィルタシート12が取り付けられる側の面)に剥離紙を取り付けておき、フィルタプレート10の製造時は剥離紙を接着シート132に付けたままの状態にし、フィルタ・パッキン材付きシール20の製造時に接着シート132から剥離紙を剥がすようにしてもよい。また、パッキン材14の裏面(マイクロプレートが取り付けられる側の面)に剥離紙を取り付けておき、フィルタ・パッキン材付きシール20の製造時、フィルタプレート10の製造時は剥離紙をパッキン材14に付けたままの状態にし、該フィルタプレート10をマイクロプレートに装着する直前にパッキン材14から剥離紙を剥がすようにしてもよい。剥離紙で接着シート132の表面やパッキン材14の裏面を覆っておくことにより、フィルタプレート10の製造時等に接着シート132の表面やパッキン材14の裏面にゴミが付着することを防止できる。さらには、マイクロプレートのウェル内にゴミが混入することを防止できる。
【0029】
以下、図4及び図5を参照しつつ、第1実施形態のフィルタプレート10の使用方法を説明する。
【0030】
まず、フィルタプレート10のマイクロプレート挿入空間115に対応する形状の96穴のマイクロプレート90を準備する。そして、このマイクロプレート90のC面とフィルタプレート10のコーナー部116の位置を合わせて、マイクロプレート90をフィルタプレート10のマイクロプレート挿入空間115に下から挿入する(図4)。次に、マイクロプレート90とフィルタプレート10を互いに相手側に押しつける。このとき、マイクロプレート90と基材11の間に位置するパッキン材14は柔軟性を有することから、マイクロプレート90とフィルタプレート10が互いに相手側に押しつけられることにより両者が隙間無く、液密状態で連結される。
【0031】
続いて、マイクロプレート90にフィルタプレート10を固定した状態で、マイクロピペット(図示せず)を使って、基材11の各第1貫通孔112に所定量の試料液80を滴下する。このとき、滴下した試料液80がフィルタの上に載ればよく、マイクロピペットのノズルに装着されたチップの先端を第1フィルタシート12の表面に強く押しあてる必要がない。そのため、前記チップを第1貫通孔112に深く進入させなくてもよい。例えば、複数のノズルを有するマルチチャンネルマイクロピペットを使用して複数の第1貫通孔112に対して同時に試料液80を滴下する作業を容易に行うことができる。
【0032】
フィルタプレート10の第1貫通孔112に試料液80を滴下した後、マイクロプレート90及びフィルタプレート10を鉛直方向近くまで傾斜させた状態で、遠心機70の保持具701にセットする(図5参照)。遠心機70の保持具701にセットされたマイクロプレート90とフィルタプレート10の密着状態を維持するために、ゴムバンドやクリップ等で両者を締結するようにしてもよい。その後、遠心機70を駆動して、鉛直方向に延びる回転軸71を中心に高速で保持具701を回転させる。これにより、フィルタプレート10の第1貫通孔112内の試料液80が第1フィルタシート12に押し当てられ、該第1フィルタシート12のポアサイズよりも大きいもの(ゴミなど)が除去されて試料液が濾過され、マイクロプレート90のウェル91内に引き込まれる。
【0033】
フィルタプレートには様々なポアサイズを有するものが存在し、使用目的に応じたフィルタプレートが用いられる。例えば、生体由来の試料液を遠心濾過したり、細胞内物質(核酸等)を捕獲したりする際にはポアサイズが小さく薄いフィルタを使用することが多い。このようにポアサイズが小さいフィルタプレートは薄く強度が低いために、従来のフィルタプレートでは、遠心濾過を行うと破れてしまうことがあった。
【0034】
これに対し、本実施形態のフィルタプレート10では、試料を濾過する目的で用いられる第1フィルタシート12の下面(試料液が流出する側)に隣接して第2フィルタシート13が配置されている。また、第2フィルタシート13はメッシュ状のものではなく、シート材に複数の貫通孔を形成したものであり、点や線ではなく面で第1フィルタシート12と接触している。そのため、遠心濾過を行う際に第1フィルタシート12が裏側(マイクロプレート90の側)から第2フィルタシート13によって支持され、第1フィルタシート12の破損が抑えられる。また、第2フィルタシート13には第1フィルタシートのポアサイズよりも大きい貫通孔が形成されているため、第1フィルタシート12を通過した試料液がマイクロプレート90のウェル91に引き込まれるのを妨げることがない。
【0035】
また、フィルタプレート10とマイクロプレート90が、柔軟性を有するパッキン材14によって液密状態で連結されているため、第1貫通孔112内の試料液80が遠心力でウェル91に引き込まれる際に該試料液が他のウェル91に流入することが阻止される。そのため、異なる試料液同士が混ざりあった状態でウェル91に供給されることを防ぐことができる。
【0036】
(2) 第2実施形態
図6及び図7に、第2実施形態のフィルタプレート30を示す。図6(a)はフィルタプレート30の上面図、図6(b)はフィルタプレート30のb-b縦断面図、図6(c)はフィルタプレート30の下面図である。また、図7(a)は図6(b)の部分拡大図、図7(b)は図6(c)の部分拡大図である。
【0037】
フィルタプレート30は、基材31と、フィルタシート32と、補強シート材33と、パッキン材34と、筒体37とを有する。
【0038】
基材31は、平面形状が長方形であるプラスチック製の板状部材から成り、その長辺に平行に24個、短辺に平行に16個、それぞれ並ぶように配置された、合計384個の平面形状が円形の第1貫通孔312を有している。第1貫通孔312の配置は、フィルタプレート30が装着される384穴マイクロプレートのウェルの配置に対応している。
【0039】
基材31は、第1基材3111と、該第1基材3111の下部に取り付けられた第2基材3112から成る。第1基材3111の下面には、その外周縁から下方に向けて矩形枠状の囲み壁3114が延びている。本実施形態においても、囲み壁3114は、フィルタシート32及び補強シート材33の表面に対して垂直に(鉛直方向に)設けられているが、囲み壁3114は、マイクロプレート挿入空間115を取り囲むように設けられていればよく、鉛直方向には限定されない。
【0040】
第1基材3111の下面の囲み壁3114で囲まれた部分にフィルタシート32、補強シート材33、及び第2基材3112が、第1基材3111側から順に取り付けられている。囲み壁3114の長さはフィルタシート32、補強シート材33、及び第2基材3112を合わせた厚さよりも大きく、第2基材3112よりも下方であって囲み壁3114で囲まれた空間がマイクロプレート挿入空間315となる。第1基材3111と第2基材3112は、それぞれ384個の貫通孔3121、3122を有しており、第1基材3111と第2基材3112を上下に重ねたときに対応して位置する貫通孔3121、3122から第1貫通孔312が構成されている。貫通孔3121は、その内径が深さ方向(図7(a)における上下方向)で一様な円筒状であるのに対して、貫通孔3122は、その内径が上部よりも下部の方が小さい、先細形状になっている。
【0041】
第2基材3112の下面には、第1貫通孔312の周囲から下側に延びるように筒体37が設けられている。筒体37は第2基材3112と同じプラスチックから成り、該第2基材3112と一体成形されている。筒体37の外径は384穴マイクロプレートのウェルの内径よりも僅かに小さく、筒体37の内径は第2基材3112の下面における貫通孔3122の内径と等しい。筒体37の長さは384穴マイクロプレートのウェルの深さよりも短い。
【0042】
フィルタシート32と補強シート材33は、第1基材3111と第2基材3112の間に介装されている。フィルタシート32の材料及び目開きの大きさは第1実施形態の第1フィルタシート12と同じである。また、補強シート材33(本発明における支持体に相当)は、例えば、後記するパッキン材34を構成するシリコーンゴムよりも硬質の樹脂製のシートの表面に接着シートを貼り合わせたシート材であって、第1実施形態における第2フィルタシート13と同様に、フィルタシート32のポアサイズよりも大きく、第1貫通孔312の径よりも小さい径の貫通孔(本発明における第2貫通孔に相当)が多数、形成されている。
【0043】
補強シート材33がフィルタシート32のポアサイズよりも大きな径の貫通孔を有することにより、補強シート材33がフィルタシート32を通過した試料液の流通を妨げることがない。また、補強シート材33が第1貫通孔312の径よりも小さい径の貫通孔を有するため、該貫通孔が形成されている位置に関わらず、第1貫通孔312の内部においてフィルタシート32を支持することができる。第2実施形態においても、第1実施形態において説明した理由により、貫通孔の径は0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上500μm以下であることがより好ましい。第1実施形態と同様、フィルタシート32及び補強シート材33は、第2基材3112の上面の全体を覆っており、フィルタシート32のうち第1貫通孔312内に位置する部分が本発明におけるフィルタとして機能する。
【0044】
パッキン材34は、シリコーンゴム製の板状部材から成り、第2基材3112の下面のうち筒体37以外の部分を覆うように該第2基材3112に取り付けられている。そのため、パッキン材34は、筒体37に対応する第3貫通孔342を有している。
【0045】
詳しい説明及び図示は省略するが、第1基材3111とフィルタシート32、補強シート材33と第2基材3112、及び第2基材3112とパッキン材34は、それぞれ接着剤、又は両面に接着剤が塗布された接着シートにより貼り合わされている。フィルタシート32と補強シート材33は、補強シート材33が有する接着シートによって貼り合わされている。
【0046】
フィルタプレート30は次のように使用される。まず、384個のウェル91Aを有する(384穴の)マイクロプレート90Aを用意する。そして、図8に示すように、マイクロプレート90Aをフィルタプレート30のマイクロプレート挿入空間315に下から挿入する。その際、マイクロプレート90Aの各ウェル91Aに、その位置に対応する筒体37が挿入されるようにする。次に、マイクロプレート90Aとフィルタプレート30を互いに相手側に押しつける。このようにマイクロプレート90Aとフィルタプレート30を押しつけることにより、柔軟性を有するパッキン材34がマイクロプレート90Aの上面に隙間無く密着し、これにより、フィルタプレート30とマイクロプレート90Aが液密状態で連結される。第1貫通孔312への試料液80の滴下から遠心力の付与によるウェル91Aへの試料液80の供給までの動作は、第1実施形態の場合と同様である。
【0047】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、フィルタシート32の下面(試料液が流出する側)に隣接して補強シート材33が配置されている。また、補強シート材33はメッシュ状のものではなく、シート材に複数の貫通孔を形成したものであり、点や線ではなく面でフィルタシート32と接触している。そのため、遠心濾過を行う際にフィルタシート32が裏側(マイクロプレート90Aの側)から補強シート材33によって支持され、フィルタシート32の破損が抑えられる。また、補強シート材33には第1フィルタシートのポアサイズよりも大きい貫通孔が形成されているため、フィルタシート32を通過した試料液がマイクロプレート90Aのウェル91Aに導入されるのを妨げることがない。
【0048】
また、フィルタプレート30が、柔軟性を有するパッキン材34によってマイクロプレート90Aと液密状態で連結されるため、第1貫通孔312内に滴下した試料液80を遠心力でマイクロプレート90Aの引き込む際に該試料液が漏れ出して他のウェル91Aに流入することが阻止される。また、フィルタプレート30の基材31の下面に筒体37を設けたため、フィルタシート32を通過した液体試料をマイクロプレート90Aのウェル91Aの底部付近まで導くことができる。
【0049】
第2実施形態のフィルタプレート30は、フィルタシート32が補強シート材33とともに第1基材3111と第2基材3112に挟まれて固定されており、第1貫通孔312のそれぞれにフィルタが強く張られた状態にある。そこで、試料液のろ過以外に、例えば血液や細胞培養液に含まれる細胞内の核酸やエクソソームなどの細胞内物質を回収するために用いることができる。
【0050】
試料液に含まれる細胞から細胞内物質を回収するときは、ポアサイズが1μm以下のフィルタシート32を使用し、試料液をろ過するときよりも遠心機70の保持具701を高速で回転させる。これにより、大きな遠心力が発生し、試料液中の細胞がフィルタシート32に強く押しつけられる。フィルタプレート30は、各第1貫通孔312にフィルタシート32が強く張られた状態にあるので、該フィルタシート32に強く押しつけられた細胞にはフィルタシート32から大きな垂直抗力が働き、遠心力と該垂直抗力とによって該細胞を破壊することができる。破壊された細胞と細胞内物質は、フィルタシート32の目開きを適切に設定することによって分離することができる。あるいは、適宜のフィルタシート32を用いることで細胞内の核酸を捕獲することもできる。このように、ポアサイズが1μm以下と小さいフィルタシート32が強く張った状態で該フィルタシート32に細胞が強く押し当てるといった操作を行うと、特にフィルタシート32が破損しやすい。しかし、第2実施形態では、フィルタシート32が補強シート材33によって支持されているためフィルタの破損を防止することができる。
【0051】
(3) 変形例
本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0052】
上記各実施形態で示した基材11、31、第1フィルタシート12、32、第2フィルタシート13、補強シート材33、及びパッキン材14、34の材料は一例であって、他の材料を用いてもよい。例えば、パッキン材14、34の材料には、シリコーンゴムの代わりに、エチレンプロピレンゴム(EPM(EPR)又はEPDM(EPT))、ウレタンゴム等を用いてもよい。また、第1フィルタシート12、32には、ナイロン66の代わりに、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子材料から成るものを用いてもよいし、金属等、高分子材料以外の材料から成るものを用いてもよい。第2フィルタシート13のPETシート131に代えて、他の材料から成るシートを用いてもよい。
【0053】
第1フィルタシート12、32の目開きは、フィルタプレート10、30の使用目的に応じた適宜の大きさにすることができる。例えば、目開きは1μm、10μm、40μm、70μm、100μm等とすることができる。あるいは、目開きが1μm未満(いわゆるサブミクロン)である精密濾過フィルタ(メンブレンフィルタ)を用いてもよい。例えば細胞内物質としてエクソソームを回収する場合は、フィルタシートの目開きを0.1μm~5μmとするとよい。いずれの場合でも、第2フィルタシート13には、第1フィルタシート12、32のポアサイズよりも大きく、第1貫通孔112の径よりも小さい径の貫通孔を形成したものを用い、補強シート材33にも、第1フィルタシート12、32のポアサイズよりも大きく、第1貫通孔312の径よりも小さい貫通孔が形成されたものを用いればよい。
【0054】
本発明における支持体に相当する構成要素として、第1実施形態では第2フィルタシート13を用い、第2実施形態では補強シート材33を用いたが、支持体には様々な形態のものを用いることができる。ただし、支持体には、第1フィルタシート12、32と、点や線ではなく、面で接触するもの(即ち、第1フィルタシート12、32を面で支持するもの)を用いることが好ましい。また、第1実施形態における第2フィルタシート13とパッキン材14、第2実施形態における補強シート材33とパッキン材34を1つの部材で構成してもよい。その場合には、パッキン材として機能させるために柔軟性を有する材料で支持体を構成する。また、フィルタプレートをマイクロプレートに押し当てたときに貫通孔が変形することが想定されるため、それによって試料液の流通が妨げられるのを防ぐために、支持体に形成する貫通孔の大きさを、第1実施形態及び第2実施形態において説明したものよりも大きくしておくとよい。
【0055】
第1実施形態及び第2実施形態では、第2フィルタシート13や補強シート材33として、接着シートを予め貼り合わせたものを用いたが、PETシート131等と接着シートを個別に用意してもよい。また、第1実施形態及び第2実施形態では、両面接着フィルムや接着シートを用いてフィルタ・パッキン材付きシールを一体的に構成したが、必ずしもこれらを一体化しなくてもよい。上記実施形態のように、各部材には切り欠きが設けられているため、マイクロプレート挿入空間115、315に、各部材の切欠きの位置を併せながら順に挿入していけば、両面接着フィルムを用いてフィルタ・パッキン材付きシールを一体的に構成しなくても各部材の位置合わせを行うことができる。
【0056】
第1実施形態では96穴マイクロプレート90のウェル91に対応する数及び位置の第1貫通孔及び第3貫通孔を有するフィルタプレートを、第2実施形態では384穴マイクロプレート90Aのウェル91Aに対応する数及び位置の第1貫通孔及び第3貫通孔を有するフィルタプレートをそれぞれ示したが、第1実施形態のフィルタプレート10及び第2実施形態のフィルタプレート30は、マイクロプレート90、90Aのウェル91、91Aに対応する数及び位置に第1貫通孔及び第3貫通孔を設けることにより、種々のマイクロプレートに適用可能である。また、マイクロプレートに限らず、Dish(シャーレ)、チューブ、ボトル、フラスコ、バックに適用可能である。
【0057】
また、第1実施形態及び第2実施形態ではマイクロプレート90、90Aのウェル91、91Aの全てに対応する位置に第1貫通孔(基材)及び第3貫通孔(パッキン材)を設け、それら全てのウェル(試料収容部)を覆うようにフィルタシート12、13、32や補強シート材33を配置したが、一部のウェル(複数の試料収容部のうちの一部)のみを使用する場合には、それら一部のウェルに対応する位置のみに第1貫通孔(基材)及び第3貫通孔(パッキン材)を設け、それら一部のウェルに対応する位置のみを覆うようにフィルタシート12、13、32や補強シート材33を配置してもよい。
【0058】
第1実施形態のフィルタプレートでは基材11のマイクロプレート挿入空間115にコーナー部116を設けたが、コーナー部116は省略してもよい。コーナー部116を省略することにより、C面を有しないマイクロプレートにもフィルタプレートを使用することができる。
【0059】
第1及び第2実施形態では全ての第1貫通孔に対応するフィルタを1枚の第1フィルタシート12、32で構成し、その背面に1枚の第2フィルタシート13や補強シート材33を配置したが、図9に示すフィルタプレート10Aのように、複数の第1貫通孔112それぞれに、個別の第1フィルタ12Aと第2フィルタ13A(第1フィルタ12Aのポアサイズよりも大きいポアサイズを有するフィルタ)を設けるようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態では、第1貫通孔112、312の平面形状を円形としたが、正方形等の四角形、正六角形等の六角形、あるいはその他の形状としてもよい。第1実施形態及び第2実施形態において説明した貫通孔の径は、貫通孔が円形である場合のものであり、円形以外の貫通孔の場合には、上記径の円の面積と同じ面積を有する大きさ及び形状の貫通孔とすればよい。また、第1貫通孔112、312の縦断面の形状も上記の例には限定されない。
【0061】
(4) 関連実施形態
次に、関連実施形態のフィルタプレート40について説明する。第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0062】
図10に、関連実施形態のフィルタプレート40を縦断面図で示す。図10は、第1実施形態で説明した図1(a)におけるa-a縦断面図に相当する。このフィルタプレート40は、基材11と、第1フィルタシート42と、第2フィルタシート43と、パッキン材14とを有する。基材11及びパッキン材14は、第1実施形態におけるものと同じである。
【0063】
図11は、関連実施形態のフィルタプレート40の製造時に基材に貼付する、フィルタ及びパッキン材を含むフィルタ・パッキン材付きシール50を示す縦断面図である。また、図12は、フィルタ・パッキン材付きシール50の分解斜視図である。
【0064】
第1フィルタシート42は、第1実施形態における第1フィルタシート12と同じ部材である(但し、配置が第1実施形態と異なる)。第2フィルタシート43は、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート431の一方の表面に接着シート432を貼り合わせたシート材(両面接着シートの一方の接着面をPETシート431に貼り合わせたもの)にレーザ光を照射することにより複数の貫通孔を形成したものである。ただし、第1実施形態と異なり、図13に第2フィルタシート43の部分拡大縦断面図で示すように、接着シート432はPETシート431の下側に位置している。また、上側から下側(接着シート432の側)に向かって径が小さくなるテーパ状の貫通孔433が形成されている。
【0065】
図11及び図12に示すように、第1フィルタシート42とパッキン材14は、パッキン材14の第3貫通孔142に対応する位置に孔が設けられた第1両面接着フィルム45により互いに接着されている(図10では第1両面接着フィルム45の図示を省略)。第1両面接着フィルム45には、第1実施形態における第1両面接着フィルム15と同じものを用いればよい。また、第1フィルタシート42と第2フィルタシート43は、第2フィルタシート43の下面に位置する接着シート432により互いに接着されている。さらに、第2フィルタシート43と基材11は、第2両面接着フィルム46により互いに接着されている。第2両面接着フィルム46にも、第1実施形態における第1両面接着フィルム16と同じものを用いればよい。第1両面接着フィルム45と第2両面接着フィルム46はいずれも、第1フィルタシート42、第2フィルタシート43、及びパッキン材14と同じ平面形状である。即ち、第1フィルタシート42、第2フィルタシート43、パッキン材14、第1両面接着フィルム45、及び第2両面接着フィルム46の、基材11の2個のC面に対応する箇所には、部材毎に2個の切り欠き423、433、143、453、463が設けられている(図3参照)。
【0066】
以下、関連実施形態のフィルタプレート40の使用方法を説明する。
【0067】
まず、フィルタプレート40のマイクロプレート挿入空間115に対応する形状の96穴のマイクロプレートを準備する。そして、このマイクロプレートのC面とフィルタプレート40のコーナー部116の位置を合わせて、マイクロプレートをフィルタプレート40のマイクロプレート挿入空間115に下から挿入する。次に、マイクロプレートとフィルタプレート40を互いに相手側に押しつける。このとき、マイクロプレートと基材11の間に位置するパッキン材14は柔軟性を有することから、マイクロプレート90とフィルタプレート40が互いに相手側に押しつけられることにより両者が隙間無く、液密状態で連結される。
【0068】
続いて、マルチチャンネルマイクロピペットの複数のノズルのそれぞれにピペットチップ60を装着し、そこに試料液を吸引する。そして、各ピペットチップ60を、基材11の第1貫通孔112に差し込み、各ピペットチップ60の先端を第2フィルタシート43に押し当てて試料液80を吐出する。これにより、一列に並ぶ複数のウェル91に対応する複数の第1貫通孔112に、同時に試料液80を分注することができる。図14は、1つの第1貫通孔112の内部にピペットチップ60を挿入し、第2フィルタシート43に押し当てて試料液80を抽出する様子を示す部分拡大図である。これにより、試料液80が第1フィルタシート42の側に押し出され、遠心機70を使用することなく短時間で第1フィルタシート42により試料液80を濾過することができる。ここでは、複数のノズルを有するマルチチャンネルピペットを用いて試料液80を効率よく分注する好適な一例を説明したが、1つのノズルのみを有するピペットを用いてもよい。
【0069】
上記のように、薄いフィルタシートに直接、チップの先端を押し当てて試料液80を分注すると、フィルタシートが破損しやすい。これに対し、関連実施形態では、第1フィルタシート42の上部に第2フィルタシート43を配置し、ピペットチップ60の先端が直接第1フィルタシート42に触れないように構成しているため、第1フィルタシート42が破損するのを防止することができる。また、第2フィルタシート43に設けられている貫通孔が、上部(試料液80が流入する側)から下部(試料液80が流出する側)に向かって径が小さくなるテーパ状である。即ち、試料液80の流路が徐々に狭くなっている。そのため、ピペットチップ60の先端から吐出された試料液80が、第1フィルタシート42に対して強い力で押し込まれ、それによって、遠心機を用いることなく試料液を濾過することができる。なお、第2フィルタシート43の厚さについては、第1フィルタシート42の強度、第2フィルタシート43に形成される貫通孔の径などに応じて適宜に設定すればよい。
【0070】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0071】
(第1項)
本発明の一態様は、上部が開口した試料収容部を有する試料容器に取り付けて用いられるフィルタプレートであって、
a)前記試料収容部に対応する位置に、試料液を流通させる第1貫通孔が設けられた基材と、
b) 前記第1貫通孔に設けられた第1フィルタと、
c) 前記第1フィルタの、前記試料液が流出する側に隣接して配置され、該第1フィルタのポアサイズよりも大きい第2貫通孔が形成された支持体と
を備える。
【0072】
第1項に係るフィルタプレートは、試料容器の試料収容部の開口の位置と基材の第1貫通孔の位置が一致するように、また、支持体がフィルタよりも試料容器側に位置するように、試料容器に固定して用いられる。本発明に係るフィルタプレートでは、試料容器に固定して使用される基材の第1貫通孔に遠心濾過に用いるフィルタが設けられている。第1項に係るフィルタプレートは、さらに、第1フィルタの、試料液が流出する側に隣接して配置された支持体が備えられている。そのため、遠心濾過など、該フィルタに対して力が加えられる操作を行う際にフィルタが裏側(試料容器の側)から支持され、第1フィルタの破損が抑えられる。また、支持体には、遠心濾過等に使用する第1フィルタのポアサイズよりも大きい第2貫通孔が形成されているため、フィルタを通過した試料液がマイクロプレートのウェルに導入されるのを妨げることがない。
【0073】
(第2項)
第2項に係るフィルタプレートは、第1項に係るフィルタプレートにおいて、
前記フィルタプレートが、複数のウェルを有するマイクロプレートに使用されるものであり、該マイクロプレートの各ウェルに対応する位置の基材に前記第1貫通孔が設けられており、
前記第1フィルタが、全ての第1貫通孔を覆うように該基体の一方の面に配置されたシート状のフィルタである。
【0074】
第1項に係るフィルタプレートは、第2項に記載のように、複数のウェルを有するマイクロプレートに使用することができる。その場合には、第2項に記載のように、全ての第1貫通孔を覆うように該基体の一方の面に配置されたシート状のフィルタを使用することで、第1フィルタを簡便に取り付けることができる。
【0075】
(第3項)
第3項に係るフィルタプレートは、第1項又は第2項に係るフィルタプレートにおいて、
前記第2貫通孔の径は、前記第1貫通孔の径よりも小さい。
【0076】
第3項に係るフィルタプレートでは、支持体において第2貫通孔が設けられている位置に関わらず、第1貫通孔の内部においてフィルタを支持体で支持することができる。
【0077】
(第4項)
第4項に係るフィルタプレートは、第1項から第3項のいずれかに係るフィルタプレートにおいて、
前記支持体は、シート状物に接着シートを貼り合わせたものに前記第2貫通孔を形成し成る第2フィルタである。
【0078】
第4項に係るフィルタプレートでは、支持体の接着シートによって第1フィルタと第2フィルタを接着することにより、両者の間に試料液が流入して液漏れが生じるのを防ぐことができる。
【0079】
(第5項)
第5項に係るフィルタプレートは、第1項から第4項のいずれかに係るフィルタプレートにおいて、
前記第2貫通孔の径が、0.1μm以上1mm以下である。
【0080】
第2貫通孔が小さすぎると、第1フィルタを通過した試料液が第2フィルタを通過しにくい場合がある。また、第2貫通孔が大きすぎると第1フィルタと第2フィルタが接触する面積が少なくなり、第1フィルタを支持することができる領域が狭くなる。これらを考慮すると、第2貫通孔の径を第6項に定める範囲とすることが好ましい。なお、これは貫通孔が円形断面を有するものであることを想定したものであり、円形以外の貫通孔の場合には、上記径の円の面積と同じ面積を有する大きさ及び形状の貫通孔とすればよい。
【0081】
(第6項)
第6項に係るフィルタプレートは、第1項から第5項のいずれかに係るフィルタプレートにおいて、さらに、
前記支持体の、前記試料液が流出する側に配置され、前記複数のウェルのそれぞれに対応する位置に第3貫通孔が設けられた、柔軟性を有する板状のパッキン材
を備える。
【0082】
第6項に係るフィルタプレートでは、基材の第1貫通孔から流入する試料液を液漏れさせることなく該第1貫通孔に対応するウェルへと導入することができる。
【符号の説明】
【0083】
10、10A、30、40…フィルタプレート
11…基材
111…板状部材
112…第1貫通孔
113…C面
114…囲み壁
115…マイクロプレート挿入空間
116…コーナー部
12、42…第1フィルタシート
12A…第1フィルタ
13、43…第2フィルタシート
131、431…PETシート
132、432…接着シート
13A…第2フィルタ
14…パッキン材
141…板状部材
142…第3貫通孔
15…第1両面接着フィルム
16…第2両面接着フィルム
20、50…フィルタ・パッキン材付きシール
31…基材
3111…第1基材
3112…第2基材
3114…囲み壁
312…第1貫通孔
3121…第1基材の貫通孔
3122…第2基材の貫通孔
315…マイクロプレート挿入空間
32…フィルタシート
33…補強シート材
34…パッキン材
342…第3貫通孔
37…筒体
433…第2フィルタシートの貫通孔(第2貫通孔)
60…ピペットチップ
70…遠心機
701…保持具
71…回転軸
80…試料液
90、90A…マイクロプレート
91、91A…ウェル
【要約】
上部が開口した試料収容部を有する試料容器に取り付けて用いられるものであって、試料収容部に対応する位置に、試料液を流通させる第1貫通孔(112、312)が設けられた基材(11、31)と、第1貫通孔に設けられた第1フィルタ(12、32)と、第1フィルタの、試料液が流出する側に隣接して配置され、第1フィルタのポアサイズよりも大きい第2貫通孔が形成された支持体(13、33)とを備えるフィルタプレート(10)。フィルタプレート(10)の一態様は、複数のウェルを有するマイクロプレートに使用されるものであり、該マイクロプレートの各ウェルに対応する位置の基材に前記第1貫通孔が設けられており、第1フィルタが、全ての第1貫通孔を覆うように該基体の一方の面に配置されたシート状のフィルタである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14