(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】嚥下容易な食肉加工食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/74 20230101AFI20241129BHJP
A23L 13/77 20230101ALI20241129BHJP
【FI】
A23L13/74
A23L13/77
(21)【出願番号】P 2024005252
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2022058886の分割
【原出願日】2022-03-31
【審査請求日】2024-01-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 令和3年6月17日 ウェブサイトのアドレス https://www.enotsuka.co.jp/ https://www.enotsuka.co.jp/news/826/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 令和3年6月17日 ウェブサイトのアドレス https://www.ieat.jp/ https://www.ieat.jp/news/post-2827/ https://www.ieat.jp/about/point/not-bite.html https://www.ieat.jp/kaigo/secret-story/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和3年6月19日 集会名、開催場所 第22回日本言語聴覚学会 ランチョンセミナー1 ウインクあいち(愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 令和3年7月 刊行物 あいーと通販カタログ 2021年7月発行
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和3年7月18日 集会名、開催場所 嚥下機能評価研修会 ~第26回PDN VEセミナー東京~ 東京慈恵会医科大学(東京都港区西新橋3-19-18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 令和3年7月20日 ウェブサイトのアドレス https://www.ieat-onlineshop.jp/ https://www.ieat-onlineshop.jp/ic/cat-014 https://www.ieat-onlineshop.jp/i/2203 https://www.ieat-onlineshop.jp/i/2202 https://www.ieat-onlineshop.jp/i/2201
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発売日 令和3年7月21日 販売したウェブサイトのアドレス https://www.ieat-onlineshop.jp/ https://www.ieat-onlineshop.jp/ic/cat-014 https://www.ieat-onlineshop.jp/i/2203 https://www.ieat-onlineshop.jp/i/2202 https://www.ieat-onlineshop.jp/i/2201
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発売日 令和3年10月6日など別紙記載のとおり 販売した場所 株式会社ダイショク(広島県福山市南手城町4丁目10-3-102)など別紙記載のとおり 特30条記事欠損あり
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和3年8月20日 集会名、開催場所 第26・27回日本摂食嚥下リハビリテーション学会 ランチョンセミナー4(現地開催:名古屋国際会議場(名古屋市熱田区熱田西町1番1号)) web開催:https://www.congre.co.jp/jsdr2021/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和3年12月11日 集会名、開催場所 第7回日本栄養材形状機能研究会学術集会 講演2 web開催:http://jsfsn.net/ http://jsfsn.net/society/program.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和4年1月21日 集会名、開催場所 第15回浜松嚥下フォーラム web開催:https://peatix.com/event/3084368
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年1月22日 集会名、開催場所 第21回横浜嚥下研究会ZOOM配信(第8期通年講座第7回講義配信) web開催:https://www.jsdr.or.jp/meeting/meeting_official/meeting_seminar_20220122.html https://yokohamaenge20220122.peatix.com/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和4年2月4日 集会名、開催場所 回復期リハビリテーション病棟協会第39回研究大会 ランチョンセミナー2(現地開催:グランドニッコー東京 台場(東京都港区台場2-6-1)) web開催:https://site.convention.co.jp/39kaifukuki-reha/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 令和4年2月23日 刊行物 嚥下医学 11巻1号日本嚥下医学会
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和4年2月26日 集会名、開催場所 第45回日本嚥下医学会総会ならびに学術講演会 ポストコングレスセミナー ランチョンセミナー(現地開催:電気ビルみらいホール(福岡市中央区渡辺通2-1-82電気ビル共創館3階)) web開催:http://gakkai.co.jp/enge45/index.html http://gakkai.co.jp/enge45/ondemand01.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 令和4年2月26日 刊行物 栄養士のためのスキルアップセミナー2022 冊子 株式会社日本医療企画
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 令和4年3月31日 刊行物 老年歯学医学2021年36巻4号 日本老年歯科医学会
(73)【特許権者】
【識別番号】502138359
【氏名又は名称】イーエヌ大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小田中 宏幸
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-151986(JP,A)
【文献】米国特許第05928690(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0025725(KR,A)
【文献】国際公開第2014/087705(WO,A1)
【文献】特開昭59-055153(JP,A)
【文献】特開2001-069950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク分解酵素を含む酵素液を用いて酵素処理した食肉原料の加熱処理物、及び、水、を含むペーストを成型した成型物を含み、
20℃における硬さが1,000~10,000(N/m
2)、及び、付着性が1,500(J/m
3)以下であ
る、食肉加工食品。
【請求項2】
45℃における硬さが、1,000~8,000(N/m
2
)、及び、付着性が1,200(J/m
3
)以下である、請求項1に記載の食肉加工食品。
【請求項3】
残渣率が、4.0%以下である、請求項1に記載の食肉加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下容易な食肉加工食品及びその製造方法に関し、特に、咀嚼機能や嚥下機
能の低下した対象のための食肉加工食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼機能や嚥下機能の低下した対象でも喫食可能な、様々な食品が開発されている。し
かしながら、例えば噛まなくてよいことを謳う商品の多くはペースト状であり、どろどろ
した外観が食欲低下に繋がっていた。さらに、料理そのものをペーストにしているものが
多く、素材ごとの風味を感じにくかった。
【0003】
また、家庭や給食で、ミキサーやフードプロセッサー等により調理されるペースト食は
、外観のみならず、食材由来の微粒子や繊維が残りざらついた(なめらかさに欠ける)食
感となるという問題もあった。ざらついた食感は、咀嚼や嚥下時に喫食者に不快な感覚を
与えるだけでなく、嚥下能力が低下した者においては微粒子や繊維が咽頭に残留し、むせ
等の原因になることがある。澱粉やタンパク質を豊富に含む食材においては、ミキサーや
フードプロセッサー等により撹拌されることで粘り気やべたつきが強くなったり、硬くな
ったりすることで咀嚼や嚥下しにくくなる場合もある。
【0004】
メッシュや篩でペースト食を濾すことで、ざらついた食感を低減させなめらかにするこ
とができるが、メッシュや篩の目開きよりも小さい粒子や繊維は除去できず、ざらついた
食感が依然残ることもある。また、目開きを微小にすると濾過が困難になり作業負荷が増
大する。
【0005】
ペースト食に水や油等の液体を添加することで、ざらついた食感、粘り気、べたつき及
び硬さを低減させなめらかにしたり、濾過の際の作業負荷を軽減させたりすることができ
るが、風味や質量当たりの栄養価が低減する。
【0006】
このような背景のもと、例えば特許文献1には、嚥下・咀嚼機能の低い喫食者用の、ハ
ンバーグのような食肉加工食品として、食肉(生肉)にフードプロセッサー等で機械的な
裁断を行った後、酵素で処理し、次いで裏ごし、成形、蒸煮して得られる食肉加工食品及
びその製造方法を開示している。
【0007】
特許文献2は、澱粉性食品の摂食・嚥下適正を改善するための、特定量のα-アミラー
ゼ、ネイテイブジェランガム及び寒天を含む品質改良剤等を開示する。
【0008】
酵素処理を用いた加工食品の製造方法として、例えば、特許文献3は、廃棄物として処
理されている帆立貝内臓を利用するために、プロテアーゼで液状化し、さらに増粘剤でペ
ースト化することを開示する。また、特許文献4は、里芋等のマンナン類含有食材のペー
スト化方法として、アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤を添加することを含む方法を
開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-151986号公報
【文献】特開2008-271985号公報
【文献】特開2011-92170号公報
【文献】特開2012-105568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のとおり、従来の咀嚼機能や嚥下機能の低下した喫食者用の食品は、半液体状の外
観や風味等の問題、ざらつき、粘り気等による咀嚼・嚥下容易性の問題、製造時の作業負
担、栄養価等の問題があった。特許文献1の方法で得られる加工食品は、咀嚼機能や嚥下
機能の低下した対象には喫食容易とはいえず、特許文献2の品質改良剤は澱粉性食品の改
良に特化しており、また、特許文献3及び4の方法では特定の食材を酵素で処理するのみ
で、本来の味や飲み込み易さといった問題が考慮されていなかった。
【0011】
以上のような背景のもと、本発明は、形状を有しているにも関わらず、咀嚼機能や嚥下
機能の低下した対象でも嚥下容易な、なめらかで均質な性状を有する食肉加工食品及びそ
の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、食肉の酵素処理を含む処理方法について
鋭意検討を重ねたところ、従来は、食品の軟化を意図して酵素処理する場合には、酵素を
全体に行きわたらせるために食材を破砕後に酵素処理していたところ、食肉を予め酵素処
理し、その後破砕することで、べたつきや粘り気等を低減することができ、また、作業負
担が軽い方法で、ざらつきのない非常になめらかなペーストが得られることを見出した。
さらに、このペーストを成型することで、形状を有しているにも関わらず、なめらかで驚
くほど嚥下容易な食肉加工食品が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち本発明は以下に関する。
<1>
食肉原料を酵素液で処理して酵素処理物を得ること、
前記酵素処理物を加熱して加熱処理物を得ること、
前記加熱処理物を、水及びゲル化剤とともに機械裁断して裁断物を得ること、
前記裁断物を裏ごししてペーストを得ること、及び、
前記ペーストを成型して成型物を得ること、
を含む、食肉加工食品の製造方法。
<2>
前記加熱処理物を、添加原料の総重量に対して40重量%以下の前記水を前記ゲル化剤
とともに機械裁断して裁断物を得ることを含む、前記<1>に記載の方法。
<3>
前記加熱処理物を、前記水及び前記ゲル化剤と油脂とともに機械裁断して裁断物を得る
ことを含む、前記<1>又は<2>に記載の方法。
<4>
前記成型に先だって、さらにペーストを脱気することを含む、前記<1>~<3>のい
ずれか一つに記載の方法。
<5>
前記酵素液が、プロテアーゼと、リン酸、クエン酸、炭酸及びそれらの塩から選択され
る塩類とを含む、前記<1>~<4>のいずれか一つに記載の方法。
<6>
前記<1>~<5>のいずれか一つに記載の方法で得られる食肉加工食品であって、2
0℃における硬さが1,000~10,000(N/m2)、付着性が1,500(J/
m3)以下であり、45℃における硬さが1,000~8,000(N/m2)、付着性
が1,200(J/m3)以下である食肉加工食品。
<7>
酵素処理した食肉原料の加熱処理物、及び、水、を含むペーストを成型した成型物を含
み、20℃における硬さが1,000~10,000(N/m2)、付着性が1,500
(J/m3)以下であり、45℃における硬さが1,000~8,000(N/m2)、
付着性が1,200(J/m3)以下であり、且つ、残渣率が4.0%以下である、食肉
加工食品。
<8>
ラインスプレッドテストにおける広がりが0.5cm以下である、前記<6>又は<7
>に記載の食肉加工食品。
<9>
タンパク質量が11重量%以上である、前記<6>~<8>のいずれか一つに記載の食
肉加工食品。
<10>
20℃の硬さに対する45℃の硬さの比が0.6~1.2であり、且つ、20℃の付着
性に対する45℃の付着性の比が0.6~1.2である、前記<6>~<9>のいずれか
一つに記載の食肉加工食品。
<11>
さらに、調味液を含み、20℃における硬さが10,000(N/m2)以下、付着性
が1,000(J/m3)以下、且つ、凝集性が0.9以下であり、45℃における硬さ
が8,000(N/m2)以下、付着性が1,000(J/m3)以下、且つ、凝集性が
0.9以下である、、前記<6>~<10>のいずれか一つに記載の食肉加工食品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、形状を有しているにも関わらず、なめらかで均質な性状を有し、嚥下
容易な食肉加工食品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に
説明する。なお、本発明は以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲
内で種々変形して実施することができる。
【0016】
一態様において、本実施形態の食肉加工食品の製造方法は、食肉原料を酵素液で処理し
て酵素処理物を得ること、酵素処理物を加熱して加熱処理物を得ること、加熱処理物を、
水及びゲル化剤とともに機械裁断して裁断物を得ること、裁断物を裏ごししてペーストを
得ること、及びペーストを成型して成型物を得ること、を含む。当該方法によれば、形状
を有しているにも関わらず、咀嚼機能や嚥下機能の低下した対象でも嚥下容易であり、且
つ、なめらかで均質な性状を有する成型物を得ることができる。また、本実施形態の製造
方法によれば、口どけがよい成型物(食肉加工食品)を得ることができるため、咀嚼機能
や嚥下機能の低下した対象でも嚥下が容易となる。
【0017】
原料となる食肉(食肉原料)は、食用の肉類であれば特に限定されず、牛、豚、馬、羊
、鶏、アヒル、七面鳥の肉等の畜肉が挙げられ、好ましくは、鶏肉、豚肉及び牛肉からな
る群から選択される。食肉を処理する酵素液は、肉類を軟化することが出来るタンパク質
分解酵素を含むものであれば特に限定されず、好ましくはアルカリ領域で活性を有するプ
ロテアーゼであり、例えば、パパイン、ブロメライン、フィシン、アクチニジン、トリプ
シン、カテプシン、ペプチダーゼ、その他微生物由来のタンパク質分解酵素等が挙げられ
、これらのうちの1種以上を用いることができる。例えば、パパイン、ブロメライン、ペ
プチダーゼの1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
酵素液のpHは、酵素が作用する限り特に限定されず、用いる酵素に応じて適宜変更す
ることができ、例えばpH7.5~11.0、好ましくは8.5~10.0とすることが
できる。酵素液中の酵素の濃度は酵素の種類及び処理時間に応じて適宜設定することがで
き、例えば酵素液の5.0×10-4重量%以上1.0重量%以下、好ましくは1.0×
10-3重量%以上0.1重量%以下とすることができる。
【0019】
酵素液は、使用する酵素の活性を妨げない範囲で他の成分を含むことができ、一態様に
おいて、酵素の至適pHとするためにpH調整剤を含むことが好ましい。pH調整剤とし
ては、食用に用いられる物であれば特に限定されない。食肉のタンパク質を分解しつつ離
水によるパサツキ感が生じることを防ぐために、酵素液用塩類としてリン酸、クエン酸、
炭酸及びそれらの塩を添加することが好ましく、これらによりpH調整をしてもよい。酵
素液用塩類としては、例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸
水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、炭酸ナトリ
ウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等を用いることができるがこれらに限定されな
い。一態様において、酵素液が、プロテアーゼと、リン酸、クエン酸、炭酸及びそれらの
塩から選択される塩類とを含むことができる。具体的には、酵素液がアルカリ領域で活性
を有するプロテアーゼを含む場合、酵素液用塩類として、酵素液がアルカリ性になるよう
、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水
素カリウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及
び炭酸カリウムから選択される1種以上を含むことができる。酵素液用塩類の濃度は、酵
素液のpHが酵素活性に適した所望の範囲内となり、かつ、食肉の食味を損なわない限り
特に限定されず、用いる塩に応じて適宜変更することができ、例えば酵素液の1.0重量
%以上7.0重量%以下、好ましくは3.0重量%以上7.0重量%以下、より好ましく
は5.0重量%以上7.0重量%以下とすることができる。これらに加えて、酵素液は、
糖類、アミノ酸、多糖類等を含んでもよい。
【0020】
酵素処理は、食肉に酵素を導入する工程(酵素導入処理)と、導入した酵素を食肉全体
に浸透させ酵素で食肉を分解する工程(酵素分解処理)に分けられる。酵素導入処理は、
食肉(非加熱)に酵素を導入させる手法であれば特に限定されず、例えば、食肉中に酵素
液を注入する注入法、食肉に酵素液を噴霧する噴霧法、食肉に酵素液を塗布する塗布法、
食肉を酵素処理液中に浸漬する浸漬法、食肉と酵素液を入れた処理槽を回転させ物理的な
衝撃により酵素液を揉みこむタンブリング法、これらを減圧下で行う方法等が挙げられ、
簡便に目的量の酵素液を食肉の内部まで注入可能な注入法が好ましい。処理する食肉の大
きさも、所望の酵素導入処理が実施できる限り特に限定されないが、例えば、注入法を用
いる場合、5mm以上、好ましくは10~100mm程度の食肉に、インジェクション装
置による注入法を用いて酵素導入処理を行うことで、短時間で食肉全体に酵素液を注入す
ることができる。
【0021】
インジェクション装置を用いる場合、インジェクション装置としては、例えば、fom
aco社製、ニッコー社製、東京食品機械社製、等の装置を用いることができ、食肉に対
して、好ましくは10~90重量%、より好ましくは30~80重量%の酵素液を注入す
ることができる。インジェクション後、食肉を適当な大きさにカットした状態で静置して
酵素分解処理へ移行してもよく、さらにカットした肉を酵素液に浸漬した状態で静置して
酵素分解処理へ移行してもよい。
【0022】
酵素分解処理の温度は、0~25℃程度であるのが好ましく、0~15℃程度であるの
がより好ましく、冷蔵室内で酵素分解処理することができる。これにより、酵素処理液中
に含まれるタンパク質分解酵素が不活化してしまうのを的確に抑制または防止した状態で
、酵素処理液を食肉に供給することができるため、酵素処理液を食肉中に均一に含浸させ
ることができる。酵素分解処理の時間は、前記温度範囲とする場合、1~24時間程度が
好ましく、5~18時間程度がより好ましい。食肉を予め酵素分解することで、ざらつい
た食感を低減させ、タンパク質由来の粘り気やべたつき及び硬さを低減させ、なめらかで
均質な咀嚼や嚥下しやすい物性とすることができる。
【0023】
次に、得られた酵素処理物を加熱して加熱処理物を得る。加熱処理は、均一に加熱可能
な蒸気下での加熱(蒸気加熱)が好ましく、例えば、飽和蒸気調理器(三浦工業社製等)
、スチームコンベクション(ラショナル社製、フジマック社製、マルゼン社製、等)、蒸
気釜、圧力釜、過熱水蒸気調理器等を用いて行うことができる。加熱は、異なる温度を組
み合わせて実施することもできる。一例として、50~70℃程度、例えば60℃前後で
の処理(第1の加熱処理)により酵素分解を促進し、その後、70~115℃程度、例え
ば90℃前後での処理(第2の加熱処理)により酵素失活をさせることができる。加熱時
間は温度に応じて適宜調節可能であるが、各加熱処理5~60分間程度であるのが好まし
く、10~30分間程度であるのがより好ましい。例えば、一例として飽和蒸気調理器を
用いる場合、100%RHにおいて、第1の加熱処理において60℃で10~20分間加
熱後、第2の加熱処理において90℃で10分間の加熱を実施することができる。加熱処
理物を得る際には、更なる加熱処理を組み込んでもよい。温度の異なる加熱処理により、
例えば、第1の加熱処理において酵素反応が進行することに加え、その後第2の加熱処理
において酵素を失活させることで、風味劣化が起こることを防止することができる。
【0024】
得られた加熱処理物を、機械裁断して裁断物を得る。機械裁断には、フードプロセッサ
ー(クイジナート社製、パナソニック社製、山善社製等)、ミキサー、ブレンダー、ジュ
ーサー等、食材を破砕・混合するための公知の機械を用いることができ、好ましくはフー
ドプロセッサーを用いて1,500~3,600rpmで破砕・混合することができる。
続く裏ごしにおいてメッシュを通過する程度(一例として、目開きφ2mm以下のメッシ
ュで裏ごし可能な程度)に均一に裁断されたら裁断を終了することができ、例えばフード
プロセッサーを用いる場合、1,800rpmで合計3分間程度裁断を行うことができる
。従来、酵素処理を食材全体に均一に実施するために、機械裁断後に酵素処理が実施され
ていたが、本実施態様においては、酵素処理し、加熱処理した加熱処理物に対して機械裁
断を実施することで、機械裁断時に粘り気が生じにくくなるとともに、機械裁断以降の工
程で周囲の環境や器具を汚染するリスクが低く、衛生的に加工食品を製造することができ
る。
【0025】
機械裁断時に、加熱処理物とともに水及びゲル化剤を加え、機械裁断して裁断物を得る
。この際、水の添加量を、添加原料の総重量に対して、例えば、40重量%以下、好まし
くは10重量%以上40重量%以下、さらに好ましくは15重量%以上30重量%以下、
より好ましくは20重量%以下とすることで裁断が容易になる。ここで、添加原料には、
酵素処理した食肉原料の加熱処理物、水及びゲル化剤に加え、機械裁断時に添加される全
ての原料を含む。水は、牛乳、豆乳といった、水を含む食用の液体の形で添加してもよい
。また、機械裁断時にゲル化剤を添加することで、その後の成型物の形状を保つことがで
きる。ゲル化剤は、食品に用いられているゲル化剤であれば特に限定されず、例えば、キ
サンタンガム、カラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、タマリンドガム、グァーガ
ム、ジェランガム、こんにゃく粉等から選択される1種以上を用いることができ、好まし
くはキサンタンガムを用いることができる。ゲル化剤の量は、得ようとする加工食品が形
状を保持できる量であれば特に限定されず、ゲル化剤の種類に応じて適宜変更することが
できる。例えば、ゲル化剤、好ましくはキサンタンガムを、添加原料の総重量に対して0
.2~1.0重量%、好ましくは0.3~0.8重量%、より好ましくは0.4~0.6
重量%用いることができる。
【0026】
水及びゲル化剤に加えて、機械裁断中、裁断前又は後に、油脂(鶏油、豚脂、牛脂等)
、調味料(鶏ガラスープの素、ビーフエキスパウダー、ポークエキスパウダー等)等を、
用いる食肉の種類に応じて添加してもよい。本実施形態の製造方法は、例えば、前記加熱
処理物を、前記水及び前記ゲル化剤と油脂とともに機械裁断して裁断物を得ることができ
る。添加量は、その種類及び得ようとする加工食品の風味等に応じて適宜調整することが
でき、一例として、調味料を添加原料の総重量に対して0.5~5重量%、好ましくは1
~3重量%程度添加することができる。また、油脂を用いる場合、一例として、形状を維
持しつつ咀嚼や嚥下に適した物性に調整し、更に温度による物性差を抑制する観点から、
添加原料の総重量に対して1~10重量%、好ましくは2~8重量%程度となるように、
油脂を添加することができる。
【0027】
次に、得られた裁断物を裏ごししてペーストを得る。裏ごしは、好ましくは目開きφ2
mm以下のメッシュを通過させて行うことができ、例えば、ザル、裏ごし器、篩、こし布
等を用いて行うことができる。好ましくは、目開きφ2mmのザルを用いることができる
。予め酵素処理することで裏ごし時の通過性が改善する。
【0028】
好ましくは、成型に先だって、さらにペーストを脱気することができる。裏ごし後のペ
ーストを成型する前に脱気することで、均一で、舌触りのよりなめらかな物性の加工食品
を得ることができる。脱気は、常法を用いて行うことができ、例えば、密封容器中で真空
包装機、減圧デシケータ―、真空缶等を用いて行うことができる。例えば、ポリ袋にペー
ストを入れ、真空包装機にて真空度が98%以上になるまで脱気することができる。
【0029】
得られたペーストを成型して成型物を得る。成型物の大きさは、喫食及び容器への充填
(例えば、複数個成型物をまとめた充填)に適した大きさで、かつ形状を保つという観点
から、例えば7.5cm四方以下、好ましくは5cm四方以下とすることができ、高さ3
cm以下、好ましくは1.5cm以下とすることができる。成型物の形状は、特に限定さ
れず、製品の対象や目的等に応じて適宜変更することができ、例えば円盤状、円柱状、角
柱状、円錐状、角錐状、素材や自然物を模した形状とすることができる。
【0030】
以上のような工程を含む方法で食肉加工食品を製造することができる。本実施形態の方
法は、各工程の間に、冷凍・保存・解凍等の工程を含んでもよい。
【0031】
このようにして得られた本実施形態の食肉加工食品は、一例として、水分量77重量%
以下、タンパク質量11重量%以上、脂質/タンパク質の質量比1.1以下、好ましくは
0.5~1.1、より好ましくは0.7~1.1であり、タンパク質量が多く栄養価が高
く、形状を有しているにもかかわらず、なめらかで均質な性状を示すことができる。
【0032】
本実施形態の食肉加工食品は、例えば、上述の本実施形態の製造方法で得ることができ
る。
本実施形態の食肉加工食品は、例えば、「特別用途食品の表示許可等について(消食表
第125号、消費者庁次長通知、令和3年3月29日)」に記載の「えん下困難者用食品
の試験方法」に準拠して測定した、20℃及び45℃における硬さ(一定速度で圧縮した
ときの応力)(N/m2)が1,000~10,000、好ましくは1,000~7,0
00、例えば2,000~5,000と非常にやわらかい。
また、上記「えん下困難者用食品の試験方法」に準拠して測定した、20℃及び45℃
における付着性(J/m3)が1,500以下、好ましくは500~1,500であり、
少なくとも、特別用途食品えん下困難者用食品における許可基準III相当の物性を有する
。以下に、特別用途食品えん下困難者用食品における規格基準を示す。なお、本明細書中
において、特筆しない限り、硬さ、付着性及び凝集性は、上記の「えん下困難者用食品の
試験方法」に準拠して測定した測定値を指す。
【0033】
【0034】
本実施形態の食肉加工食品の好ましい一態様は、本実施形態の製造方法によって得られ
た食肉加工食品である。より具体的には、本実施形態の製造方法によって得られた食肉加
工食品であって、20℃における硬さが1,000~10,000(N/m2)、付着性
が1,500(J/m3)以下であり、45℃における硬さが1,000~8,000(
N/m2)、付着性が1,200(J/m3)以下の食肉加工食品である。
また、本実施形態の食肉加工食品の好ましい他の態様は、酵素処理した食肉原料の加熱
処理物、及び、水、を含むペーストを成型した成型物を含み、20℃における硬さが1,
000~10,000N/m2、付着性が1,500J/m3以下であり、45℃におけ
る硬さが1,000~8,000(N/m2)、付着性が1,200(J/m3)以下で
あり、且つ、残渣率が4.0%以下の食肉加工食品である。
これら食肉加工食品はいずれも、有形且つなめらかで均質な性状を有しており、さらに
、嚥下容易とすることができる。
【0035】
本実施形態の食肉加工食品の硬さの好ましい範囲は上述に示す通りであるが、さらに具
体的には、例えば、有形でありながら適度なやわらかさを発揮する観点から、20℃にお
ける硬さを、好ましくは1,000~10,000N/m2、さらに好ましくは1,00
0~7,000N/m2とすることができる。例えば、20℃における硬さと後述の付着
性との組み合わせとしては、20℃における硬さが1,000~10,000N/m2、
且つ、付着性が1,500J/m3以下である。
【0036】
また、喫食時の加工食品の温度などを考慮に入れると、有形でありながら適度なやわら
かさを発揮する観点から、45℃における硬さを、好ましくは1,000~8,000N
/m2、さらに好ましくは1,000~5,000N/m2とすることができる。
例えば、45℃における硬さと後述の付着性との組み合わせとしては、45℃における
硬さ1,000~8,000N/m2、且つ、付着性が1,200J/m3以下とするこ
とができる。また、喫食時の加工食品の温度などを考慮に入れると、有形でありながら適
度なやわらかさを維持する観点から、20℃の硬さに対する45℃の硬さの比(硬さ(4
5℃/20℃)比)は、硬さが10,000N/m2以下の場合に、0.6~1.2が好
ましく、0.6~1.0が更に好ましい。
各温度における硬さは、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0037】
本実施形態の食肉加工食品の付着性の好ましい範囲は上述に示す通りであるが、さらに
具体的には、例えば、なめらかさを発揮する観点から、20℃における付着性を、好まし
くは1,500J/m3以下、さらに好ましくは800~1,500J/m3とすること
ができる。
また、喫食時の加工食品の温度などを考慮に入れると、なめらかさを発揮する観点から
、45℃における付着性を、好ましくは1,200J/m3以下、さらに好ましくは50
0~1,200J/m3とすることができる。さらに、喫食時の加工食品の温度などを考
慮に入れ、なめらかさを維持する観点から、20℃の付着性に対する45℃の付着性の比
(付着性(45℃/20℃)比)は、付着性が1,500J/m3以下の場合に、0.6
~1.2が好ましく、0.6~1.0が更に好ましい。
各温度における付着性は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定することができる
。
【0038】
本実施形態の食肉加工食品の凝集性の好ましい範囲は、例えば、まとまりの良さ、食塊
形成のしやすさを発揮する観点から、20℃における凝集性を0.9以下、さらに好まし
くは0.5~0.9とすることができる。
また、喫食時の加工食品の温度などを考慮に入れると、まとまりの良さ、食塊形成のし
やすさを発揮する観点から、45℃における凝集性を0.9以下、さらに好ましくは0.
5~0.9とすることができる。
各温度における凝集性は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定することができる
。
【0039】
本実施形態の食肉加工食品のラインスプレッドテストにおける広がりの好ましい範囲は
、例えば、保形性を発揮する観点から、0.5cm以下が好ましく、さらに好ましくは0
.2cm以下である。
ラインスプレッドテストは、例えば、後述の実施例に記載の方法で実施することができ
る。
【0040】
本実施形態の食肉加工食品の残渣率の好ましい範囲は、例えば、口どけがよく咽頭残留
感がほとんどない嚥下容易な食肉加工食品とする観点から、4.0%以下が好ましく、さ
らに好ましくは2.0%以下である。
残渣率は、例えば、後述の実施例に記載の方法で算出することができる。
【0041】
本実施形態の食肉加工食品は、ある程度のタンパク質量を確保しつつやわらかさを担保
することができる。本実施形態の食肉加工食品中のタンパク質量は、特に限定はないが、
11重量%以上であることが好ましく、やわらかさとのバランスから、11~17重量%
であることがさらに好ましい。
【0042】
本実施形態の食肉加工食品は、ある程度水分量を少なくすることができる。本実施形態
の食肉加工食品中の水分量は、特に限定はないが、77重量%以下が好ましく、やわらか
さとのバランスから、65~77重量%であることがさらに好ましい。
【0043】
本実施形態の食肉加工食品は、形状を維持しつつ咀嚼や嚥下に適したやわらかでなめら
かな物性に調整し、さらに、油脂、特に温度により形状が固体から液体に変わる動物性油
脂に関しては、油脂含量が多いほど成型物の温度による物性差が大きくなることから、特
に限定はないが、脂質量が12重量%以下であることが好ましく、6~12重量%である
ことがさらに好ましい。また、脂質/タンパク質の質量比は、タンパク質量が多く栄養価
が高く、形状を有しているにもかかわらず、なめらかで均質な性状を示す観点から、1.
0以下が好ましく、さらに好ましくは0.5~1.0、より好ましくは0.7~0.9で
ある。
【0044】
成型物に、さらに調味液を添加してもよく、好ましくは、成型物全体が浸る量の調味液
を添加する。適度なとろみのある調味液を添加することで、なめらか且つまとまりよく、
むせにくく、さらに喫食が容易になり、また、風味を付与することもできる。調味液の粘
度は、例えば、20℃で100~160mPa・s程度、45℃で100~130mPa
・s程度である。調味液の原料は、しょうゆ、みりん、砂糖、だし、エキス等一般的に食
品に使用されているものであれば限定されず、その組成も適宜変更することができる。上
記原料と食用増粘剤を水に添加し、必要に応じて加熱し、攪拌して調味液を得ることがで
きる。増粘剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、キサンタ
ンガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、タマリンドガム、グァーガム、ジェラン
ガム、こんにゃく粉、でん粉、加工でん粉等の1種以上を、上記の粘度になる量で用いる
ことができる。一態様において、全調味液に対してキサンタンガムを0.5~1.5重量
%、好ましくは0.75~1.25重量%、例えば0.9~1.1重量%添加することが
できる。
【0045】
このようにして得られた本実施形態の調味液入り食肉加工食品は、例えば、20℃で1
00~160mPa・s、45℃で100~130mPa・sの粘度の調味液を成型物全
体が浸る量添加した場合に、上記「えん下困難者用食品の試験方法」に準拠して測定した
硬さ(N/m2)が、20℃で10,000以下、好ましくは1,000~7,500、
より好ましくは1,000~5,000、例えば2,000~4,000であり、45℃
で8,000以下、好ましくは1,000~6,000、より好ましくは1,000~4
,000、例えば1,500~2,500であり、非常にやわらかい。また、上記「えん
下困難者用食品の試験方法」に準拠して測定した付着性(J/m3)が20℃で1,00
0以下、例えば500~800、45℃で1,000以下、好ましくは800以下、例え
ば400~500であり、凝集性が20℃及び45℃ともに0.9以下、好ましくは0.
2~0.8、例えば0.6~0.7であり、特別用途食品えん下困難者用食品における許
可基準II相当の物性を有する。これらの組み合わせとしては、例えば、調味液を加えた場
合等に、本実施形態の食肉加工食品の20℃における硬さが10,000N/m2以下、
付着性が1,000J/m3以下、且つ、凝集性が0.9以下とすることができる。同様
に、45℃における硬さが8,000N/m2以下、付着性が1,000J/m3以下、
且つ、凝集性が0.9以下とすることができる。
【0046】
本実施形態の食肉加工食品は、冷凍して保存及び流通することができ、一般家庭、病院
等で常法により解凍及び加温して上記の物性の加工食品として喫食者に提供することがで
きる。一例として、冷蔵庫で6時間以上解凍後、電子レンジ(500W)で40秒間加熱
して加温することができる。
【0047】
本実施形態の食肉加工食品は、一般的に硬く、咀嚼や嚥下能力が低下した喫食者が食べ
難いとされる食肉を、形状が残っていながらもやわらかく、なめらかで均質な食べやすい
性状及び物性に調整した加工食品である。また、離水の問題も生じにくく、食肉本来の風
味や色味を有する。咀嚼しなくても形状が崩れるほどのやわらかさと、均質で粒感やざら
つきもなく、咽頭残留やそれによるむせ等も起こりにくいなめらかさを備えているため、
従来技術が対象としている嚥下・咀嚼機能の低い者よりも更に嚥下・咀嚼機能の低下した
喫食者にも配慮した物性を有する食品である。調味液を添加した場合には、上記の物性は
、嚥下・咀嚼機能の低下した喫食者に、さらに適したものとなる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限され
るものではない。
【0049】
[実施例1]
生の鶏ムネ肉の1枚肉(重量約233g)に、インジェクション装置を用いて、酵素液
を食肉に対して50%となる重量を注入した。なお、酵素液は、プロテアーゼ(パパイン
、ブロメライン、ペプチダーゼ混合物)の濃度が9.3×10-3重量%、酵素液用塩類
(リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩混合物)の濃度が6.54重量%且つ酵素液のpHが9
.2になるよう、軟水に溶解し調製した。次に、酵素液注入後の鶏ムネ肉を約2cm四方
、厚さ約1cmの大きさにカットし、さらに上述のインジェクション装置で注入した酵素
液と同一の酵素液を添加後、冷蔵室内で18時間浸漬し、酵素反応させた。酵素液を廃棄
後、酵素処理後の鶏ムネ肉を、飽和蒸気調理機にて加熱した(60℃10分間、次いで9
0℃10分間)。
加熱後の鶏ムネ肉及び表1の原料をフードプロセッサーに投入し、1,800rpmで
1分間破砕・混合後、ヘラで壁面の原料をはがし更に1,800rpmで2分間破砕・混
合した。
目開きφ2mmのザルで裏ごしした後、ポリ袋に入れ、真空包装機にて真空度が98%
以上になるまで脱気した。内径45mm、高さ10mmの円形の型に入れた後、急速冷凍
し、型から外して容器に充填した。密封(シール)後、殺菌加熱(品温で85℃5分間相
当以上)し、急速冷凍して鶏肉加工食品を得た。
【0050】
[実施例2]
鶏ムネ肉の代わりに生の豚モモ肉の塊肉(重量約663g)を用い、飽和蒸気調理機で
の加熱を60℃20分間、93℃3分間、次いで90℃10分間とした以外は実施例1と
同様の手法により、豚肉加工食品を得た。
【0051】
[実施例3]
鶏ムネ肉の代わりに生の牛モモ肉の塊肉(重量約781g)を用いた以外は実施例1と
同様の手法により、牛肉加工食品を得た。
【0052】
【0053】
[実施例4]
実施例1において、最終的に容器に充填時、表2に示す調味液も充填した。
【0054】
[実施例5]
実施例2において、最終的に容器に充填時、表2に示す調味液も充填した。
【0055】
[実施例6]
実施例3において、最終的に容器に充填時、表2に示す調味液も充填した。
【0056】
調味液の作製方法:
表2の配合量で、市水に、食品調味料及びキサンタンガムを添加し、目視で溶け残りが
ないことが確認できるまで攪拌した。粘度は以下のとおりであった。
・使用粘度計:音叉振動式粘度計SV-10(エー・アンド・デイ社製)
粘度(20℃):100~160mPa・s
粘度(45℃):100~130mPa・s
【表2】
【0057】
[比較例1]
特許文献1の実施例に準じて、以下の方法で食肉加工食品を得た。
生の鶏ムネ肉の細切り肉(長さ6cm、幅1cm、高さ1cm)をフードプロセッサー
に投入して1,800rpmで目視にて明らかに破砕している程度まで破砕し、その後、
実施例1に示す酵素液(食肉原料に対して50%となる重量)に含まれる原料のうち、軟
水を除く原料と、表1に示す原料と、を順に投入し、更に1,800rpmで2分間破砕
・混合した。冷蔵室内で18時間静置して酵素反応させた後、裏ごしし、型入れ成型した
。95℃10分間での蒸煮後、急速冷凍し、型から外して容器に充填して密封(シール)
し、殺菌加熱(品温で85℃5分間相当以上)、急速冷凍して鶏肉加工食品を得た。特筆
しない限り、機器や容器は実施例1と同様のものを使用した。
【0058】
[比較例2]
鶏ムネ肉の代わりに生の豚モモ肉のスライス肉(長さ15cm、幅4cm、高さ2mm
)を用いた以外は比較例1と同様の手法により、豚肉加工食品を得た。
【0059】
[比較例3]
鶏ムネ肉の代わりに生の牛モモ肉のスライス肉(長さ15cm、幅4cm、高さ2mm
)を用いた以外は比較例1と同様の手法により、牛肉加工食品を得た。
【0060】
[製法の評価]
実施例1~3と比較例1~3とを比較すると、比較例においては、酵素処理が万遍なく
全体で行われるように破砕・混合時に酵素原料を投入したが、混合するにつれ粘り気が強
くなり、また、混合しにくく裏ごしに時間を要した。より具体的には、同量の破砕・混合
処理物を手で裏ごしした場合、実施例1~3においては5分間程度で裏ごしが完了したが
、比較例1~3ではその12倍(60分間)程度の時間を要した。さらに、成型時にも、
粘り気があるために型入れが困難であった。また、比較例においては、原料の種類やロッ
トで物性がバラつき、破砕・混合の処理時間や裏ごしの手間が実施例に比べバラつく傾向
にあった。予め酵素処理をしなかったことでバラつきが生じたと考えられた。
【0061】
さらに、比較例1~3においては、フードプロセッサーでの破砕から蒸煮までの工程は
生肉での作業となるため、病原微生物による汚染リスクがあり、フードプロセッサーを介
した異なるロット間での汚染リスクも高かった。一方、実施例1~3においては、加熱後
にフードプロセッサーでの破砕・混合、裏ごしを実施するため汚染リスクが低かった。
【0062】
[官能評価]
実施例1~3及び比較例1~3の加工食品について、6名の熟練したパネラーにより、
やわらかさ及びなめらかさの官能評価を実施した。なお、加工食品は冷蔵庫に16時間入
れて解凍後、電子レンジ(500W)で40秒間加温してから官能評価に供した。
以下の評価方法・基準を用いた。なお、パネラー間で、基準製品を用いた事前評価を行
い、評価指標を一致させた。
(やわらかさ)
3点 咀嚼しなくても形状が崩れる程やわらかい。
2点 ややかたく舌で咀嚼しなければ崩せない。
1点 かたく舌の咀嚼では崩せない。
(なめらかさ)
3点 均質でありなめらかである。
2点 やや不均質であり粒を感じる。
1点 不均質でありざらつく。
(判定)
6名のパネラーの平均点が2.0点を上回ったとき「適」とした。
【0063】
結果を表3に示す。やわらかさについて、実施例1~3は、咀嚼しなくても崩れるほど
のやわらかさで、比較例1~3(舌で崩せない~舌で崩せる程度)よりもやわらかいと評
価された。また、なめらかさについて、実施例1~3はなめらか且つ均質であり、比較例
1~3(ざらつきがある~なめらかだがやや不均質程度)よりもなめらかと評価された。
【表3】
【0064】
[物性評価1]
実施例1~6及び比較例1~3の加工食品の硬さ、付着性及び凝集性を、以下の条件で
測定した。
(試験数)
実施例1~3及び比較例1~3:N=6、実施例4~6:N=4
(解凍・加温方法)
冷蔵庫に16時間入れて解凍後、電子レンジ(500W)で40秒間加温したも
のを試料とした。
(測定方法)
※測定条件は「特別用途食品 えん下困難者用食品の試験方法(硬さ、付着性及
び凝集性の試験方法)」に準じた。
1.試料を容器(直径40mm、高さ15mm)に入れた。
2.クリープメータ(山電製、型式:RE2-33005B)を用いて以下の条件
で測定した。
(測定条件)
・サンプル容器:直径40mm、高さ15mm
・プランジャー:樹脂製、直径20mm、高さ8mm
・圧縮速度:10mm/sec
・クリアランス:5mm
・圧縮回数:2回
・測定温度:実施例1~3及び比較例1~3:20±2℃
実施例4~6:20±2℃及び45±2℃
【0065】
結果を表4及び5に示す。
表4に示すとおり、実施例1~3の硬さは20℃で3,000~5,000N/m2で
あり、比較例1~3の硬さ(20℃で17,000~52,000N/m2)に比べ低値
であった。
実施例1~3の付着性は20℃で1,100~1,500J/m3であり、比較例1~
3の付着性(20℃で300~1,400J/m3)に比べ高値か同程度であった。
実施例1~3の凝集性は20℃で0.6~0.8であり、比較例の製法の凝集性(20
℃で0.3~0.5)に比べ高値であった。比較例は固形状で、実施例に比べてまとまり
が劣ると考えられた。
実施例1~3の加工食品は特別用途食品えん下困難者用食品における許可基準III相当
の物性であることが示唆された。
【0066】
【0067】
表5に示すとおり、調味液入り加工食品である実施例4~6の硬さは20℃で2,00
0~4,000N/m2であり、調味液無しの実施例1~3に比べて更に低値を示した。
また45℃では硬さは1,500~2,500N/m2であった。
実施例4~6(調味液入)の付着性は20℃で500~800J/m3であり、実施例
1~3(調味液無)に比べ低値を示した。また45℃では付着性は400~500J/m
3であった。
実施例4~6(調味液入)の凝集性は20℃で0.6~0.7であり、実施例1~3(
調味液無)に比べ低値を示した。また45℃でも凝集性は0.6~0.7であった。
実施例4~6の加工食品は特別用途食品えん下困難者用食品における許可基準II相当の
物性であることが示唆された。
【0068】
【0069】
実施例4~6で得た加工食品を、専門家(医師、歯科医師及び管理栄養士)を対象に提
供したところ、やわらかく且つなめらかで嚥下しやすいとの評価を得た。
【0070】
[比較例4]
特許文献2では、澱粉食品を加熱後に、破砕し、酵素処理を行っている。この方法に準
じて、以下の方法で食肉加工食品を得た。
生の鶏ムネ肉の細切り肉(長さ6cm、幅1cm、高さ1cm)を沸騰水で茹でて処理
後、実施例1に示す酵素液(食肉原料に対して50%となる重量)に含まれる原料のうち
、軟水を除く原料と、表1(実施例1)に示す原料とを、ともにフードプロセッサーに投
入した。1,800rpmで1分間破砕・混合後、ヘラで壁面の原料をはがし更に1,8
00rpmで2分間破砕・混合した。冷蔵室内で16時間以上静置して酵素反応させた後
、裏ごしし、型入れ成型した。スチームコンベクションで60℃10分間、次いで95℃
10分間加熱後、急速冷凍し、型から外して容器に充填して密封(シール)し、殺菌加熱
(品温で85℃5分間相当以上)、急速冷凍して鶏肉加工食品を得た。特筆しない限り、
機器や容器は実施例1と同様のものを使用した。
【0071】
[物性評価2]
物性評価1と同様の手法を用いて、比較例4の物性を評価した。測定温度は20±2℃
であった。物性評価1で得た実施例1の結果と併せて結果を表6に示す。
表6に示すとおり、実施例1の硬さは20℃で約5,000N/m2であり、比較例4
の硬さ(20℃で約14,000N/m2)に比べ低値であった。
実施例1と比較例4の付着性は同程度であった。
実施例1の凝集性は20℃で約0.7であり、比較例4の凝集性(20℃で約0.4)
に比べ高値であった。比較例4は固形状で、実施例と比べるとまとまりがよくないため低
値を示したと考えられる。
【0072】
【0073】
なお、実施例1及び比較例4の加工食品を冷蔵庫に16時間入れて解凍後、電子レンジ
(500W)で40秒間加温してから喫食したところ、比較例4の方が、ざらつきが感じ
られ、微粒子が咽頭に残留した感覚が残った。
【0074】
実施例1~3における水分、タンパク質、脂質の含有量について以下に示す。なお、こ
れらの栄養成分については、「食品表示基準について(消食表第139号、消費者庁次長
通知、平成27年3月30日)」の「別添 栄養成分等の分析方法等」に準拠して分析し
た。
【0075】
【0076】
[実施例1,比較例1,市販品の比較]
上述で得られた実施例1及び比較例1の結果に加え、下記表8中の市販品1~4(比較
例5~8)について、各成分を比較し、官能評価、及び、物性評価を行った。これらの市
販品は、いずれも高齢者用食や介護食として販売されているものである。実施例1及び比
較例1は物性評価1に記載の“解凍・加温方法”に従って解凍、加温処理したものを試料
とした。市販品1~4は市販品のパッケージに記載の方法に従って加温処理したものを試
料とした。
下記表8において、“やわらかさ”“なめらかさ”については、上述の官能評価と同様
の手法により行った。また、栄養成分は実施例1と同様の手法によって分析した。
さらに、“硬さ”“付着性”“凝集性”については、上述の物性評価1と同様におこな
った(ただし、測定温度:20±2℃及び45±2℃、実施例1及び比較例1:N=6、
比較例5~8:N=3)
【0077】
下記表8中、“ラインスプレッド”“残渣率”は以下の物性評価3に従って算出した。
[物性評価3]
〔ラインスプレッドテスト(保形性)〕
・測定数
N=1
・測定方法
(1)試料を予め45℃に保温した(保温温度は、喫食時の食品の温度を想定した)。
(2)次いで、直径4cm、高さ1.5cmの円筒をメモリ付きシートの上に設置し、円
筒に試料をすりきりで充填した。なお、メモリ付きシート表面には、直径の異なる複数の
円が同心となるように表示されており、さらに、これら円の中心から円周に向かう8本の
直線により各々均等に8分割されている。またシートに各直線と最外円との交点には時計
方向からA~H点(8点)が付されている。上述の円筒は、シート表面に表示された円と
中心が重なるように配置した。
(3)次いで、円筒を上方向に取り除き、120秒間静置し、120秒後のA~H点(8
点)の長さを記録した。初めの直径4cmからの広がりを算出し、8点の平均値(rAv
e.)を算出しラインスプレッド(cm)とした。
ラインスプレッドが0.5cm以下の場合、保形性が良好であり、有形であると判断し
た。
【0078】
〔残渣率(なめらかさ)〕
・測定数
N=1
・測定方法
(1)サンプル管に試料10g(ws)及び軟水20gを加え、37℃に保温した。保温
温度は口腔内温度を想定した。
(2)サンプル管を試験管ミキサーで120秒間攪拌し、攪拌後、試料を予め重量(wm
)を測定した篩(目開き500μm)に通した。
(3)次いで、篩を溜水で軽く洗った後、篩に付着した水分をふき取り、篩+残渣重量(
wr)を測定した。
上述のws、wm、wrを用い、(wr-wm)/ws×100より残渣率(%)を算
出した。
残渣率が大きいほど口どけがわるく、咽頭残留感があり、4.0%以下の場合、口どけ
がよく、咽頭での残留感はほとんどないと判断した。試料の口どけがよく、咽頭での残留
感がないと、嚥下が容易となる。
【0079】
【0080】
上述の表8に示されるように、官能評価の結果、“やわらかさ”について、実施例1は
、咀嚼しなくても崩れるほどのやわらかさで、市販品2及び3と同程度であった。また、
市販品1よりもやややわらかく、比較例1及び市販品4よりもやわらかいと評価された。
このため、実施例1は、有形でありながら咀嚼しなくても崩れる程度のやわらかさであり
、やわらかすぎることなく適度にやわらかいことがわかる。
次に、“なめらかさ”について、官能評価の結果、実施例1は、比較例1及び市販品1
~4に比して、なめらか且つ均質であると評価された。
【0081】
また、物性測定の結果、“硬さ”について、実施例1は20℃で4,716N/m2、
45℃で3,385N/m2であり、比較例1及び市販品1,4(20℃で16,000
~18,000N/m2、45℃で10,000~19,000N/m2)に比べ低値で
あり、且つ、市販品2,3(20℃で1,800~3,100N/m2、45℃で500
~1,900N/m2)に比べ高値であることがわかった。当該結果からも、実施例1は
、やわらかすぎることなく適度にやわらかいことがわかる。更に、20℃の硬さに対する
45℃の硬さの比(硬さ(45℃/20℃)比)について、実施例1は0.72であり、
比較例1及び市販品1に比べ低値であり、且つ、市販品2~4に比べ高値であることがわ
かった。当該結果から、実施例1は、硬さが近い値を示す市販品2及び3に比べ、20℃
と45℃の硬さの差が小さいことがわかった。
【0082】
“付着性”について、実施例1は20℃で1,133J/m3、45℃で876J/m
3であり、比較例1、市販品2,3(20℃で500~700J/m3、45℃で100
~400J/m3)に比べ高値であり、市販品1(20℃で2,355J/m3、45℃
で1,264J/m3)に比べ低値であり、市販品4(20℃で1,030J/m3、4
5℃で520J/m3)に比べやや高値であった。また、20℃の付着性に対する45℃
の付着性の比(付着性(45℃/20℃)比)について、実施例1は0.77であり、比
較例1、市販品1~4に比べ高値であることがわかった。当該結果から、実施例1は、比
較例1、市販品1~4に比べ、20℃と45℃の付着性の差が小さいことがわかった。
【0083】
“ラインスプレッドテスト”について、実施例1は広がりが0.1cmであり、比較例
1、市販品1、3、4(0.0~0.2cm)と同程度であり、市販品2(1.9cm)
に比べ低値であった。このことから実施例1、比較例1、市販品1、3、4は保形性があ
ることが示唆され、市販品2は保形性がないことが示唆される。
“残渣率”について、実施例1は0.6%であり、比較例1及び市販品4(90~13
0%)に比べ顕著に低値であり、市販品1~3(4.1~12.4%)に比べ低値であっ
た。このことから実施例1は口どけがよく、咽頭残留感がほとんどないことが示唆される
。一方、比較例1及び市販品4は実施例1に比べ口どけが顕著にわるく、咽頭残留感があ
り、また、市販品1~3は実施例1に比べ口どけがややわるく、咽頭残留感があるかやや
あることが示唆された。なお、当該結果は、官能評価の“なめらかさ”の結果と凡そ一致
する結果であった。
【0084】
以上の結果から実施例1は官能評価のやわらかさ、物性評価の硬さ及びラインスプレッ
ドテストの結果から、比較的やわらかい物性でありながら保形性を有しており、且つ、官
能評価のなめらかさ及び物性評価の残渣率の結果から、均質且つなめらかで口どけがよい
食感であり、咽頭での残留感もほとんどないことが示唆された。さらに、実施例1は、水
分量が77重量%以下、タンパク質量が11重量%以上、脂質量が12重量%以下であり
ながら、有形且つなめらかで均質な性状を有していた。このため、比較例1、市販品1~
4のいずれと比べても特徴的な物性であり、実施例1は有形且つなめらかで均質な性状を
有し、嚥下容易なことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、介護食、咀嚼機能低下者用食、嚥下機能低下者用食、高齢者用食、乳幼児用
食、嚥下機能評価・検査用食等の分野において、産業上の利用可能性を有する。