(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/356 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
F04C18/356 N
F04C18/356 A
F04C18/356 P
(21)【出願番号】P 2019000520
(22)【出願日】2019-01-07
【審査請求日】2021-12-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】江崎 郁男
(72)【発明者】
【氏名】小川 真
(72)【発明者】
【氏名】宇野 将成
(72)【発明者】
【氏名】島谷 紘史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓朗
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
【審判官】米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-61273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に収容されるシリンダ本体、前記シリンダ本体に形成された円柱状の圧縮室、及び前記シリンダ本体に形成され、前記圧縮室と連通しており、前記圧縮室の内周面から前記シリンダ本体の径方向外側に延びるブレード収容溝を有するシリンダと、
前記圧縮室の上端を塞ぐように、前記シリンダの上面に配置された上軸受と、
前記圧縮室の下端を塞ぐように、前記シリンダの下面に配置された下軸受と、
前記上軸受及び前記下軸受により回転可能な状態で支持されるとともに、前記圧縮室に挿入されたシャフト本体、及び前記シャフト本体に設けられ、前記圧縮室に配置された偏心軸部を有するシャフトと、
前記偏心軸部の外側に設けられ、前記圧縮室の内周面に沿って転動するピストンロータと、
少なくとも一部が前記ブレード収容溝内に配置され、前記圧縮室側に配置された先端が前記ピストンロータの外周面に当接された状態で前記シリンダ本体の径方向に移動し、前記圧縮室を低圧室と高圧室とに分離するブレードと、
前記ブレード収容溝内に設けられ、前記ブレードの先端を前記ピストンロータの外周面に押し当てるブレード押圧部材と、
を備え、
前記圧縮室の内径をDc、前記シリンダ本体の径方向における前記ブレードの長さをL、前記シリンダ本体の周方向における前記ブレードの厚さをtとした場合、下記(1)式、下記(2)式
、下記(3)式
及び下記(4)式を満た
し、
L/Dc≦0.4 ・・・(1)
0.2≦t/L ・・・(2)
0.2≦L/Dc ・・・(3)
t/L≦0.5 ・・・(4)
前記ブレードは、ブレード本体と、前記ブレード本体の表面を覆う硬質被膜と、を有し、
前記ブレードが前記圧縮室に飛び出す量であるブレード飛び出し量の最大値は、前記ブレードの長さLの50%以上70%以下であるロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置や空気調和装置等に使用される圧縮機の一つとして、ロータリ圧縮機がある(例えば、特許文献1参照)。
このようなロータリ圧縮機は、シリンダと、シャフトと、上軸受と、下軸受と、ピストンロータと、ブレード(ベーン)と、これらを収容するハウジングと、を備える。
【0003】
シリンダは、円柱状の圧縮室、及び径方向に延びるブレード収容溝を有する。シャフトは、圧縮室を貫通するシャフト本体と、シャフト本体に設けられ、圧縮室に配置された偏心軸部と、を有する。
上軸受は、圧縮室の上端を塞ぐように、シリンダの上端に配置されている。下軸受は、圧縮室の下端を塞ぐように、シリンダの下端に配置されている。上軸受及び下軸受は、シャフト本体を回転可能な状態で支持している。
【0004】
ピストンロータは、偏心軸部の外周に設けられている。ピストンロータの外周面の一部は、圧縮室の内周面と接触している。ピストンロータは、圧縮室の内周面に沿って転動する。
ブレードは、ブレード収容溝に配置され、ピストンロータの外周面に当接された状態で径方向に移動する。ブレードは、圧縮室を低圧室と高圧室とに分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ロータリ圧縮機の外径(ハウジングの外径)の小型化を図る観点から、ブレードの強度の低下を抑制した上で、シリンダの外径を小型化して、ロータリ圧縮の外径の小型化を図りたいという要望がある。
【0007】
そこで、本発明は、ブレードの強度の低下を抑制した上で、ロータリ圧縮機の外径の小型化を図ることの可能なロータリ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るロータリ圧縮機は、 ハウジング内に収容されるシリンダ本体、前記シリンダ本体に形成された円柱状の圧縮室、及び前記シリンダ本体に形成され、前記圧縮室と連通しており、前記圧縮室の内周面から前記シリンダ本体の径方向外側に延びるブレード収容溝を有するシリンダと、前記圧縮室の上端を塞ぐように、前記シリンダの上面に配置された上軸受と、 前記圧縮室の下端を塞ぐように、前記シリンダの下面に配置された下軸受と、前記上軸受及び前記下軸受により回転可能な状態で支持されるとともに、前記圧縮室に挿入されたシャフト本体、及び前記シャフト本体に設けられ、前記圧縮室に配置された偏心軸部を有するシャフトと、 前記偏心軸部の外側に設けられ、前記圧縮室の内周面に沿って転動するピストンロータと、 少なくとも一部が前記ブレード収容溝内に配置され、前記圧縮室側に配置された先端が前記ピストンロータの外周面に当接された状態で前記シリンダ本体の径方向に移動し、前記圧縮室を低圧室と高圧室とに分離するブレードと、 前記ブレード収容溝内に設けられ、前記ブレードの先端を前記ピストンロータの外周面に押し当てるブレード押圧部材と、を備え、 前記圧縮室の内径をDc、前記シリンダ本体の径方向における前記ブレードの長さをL、前記シリンダ本体の周方向における前記ブレードの厚さをtとした場合、下記(1)式、下記(2)式、下記(3)式及び下記(4)式を満たし、
L/Dc≦0.4 ・・・(1)
0.2≦t/L ・・・(2)
0.2≦L/Dc ・・・(3)
t/L≦0.5 ・・・(4)
前記ブレードは、ブレード本体と、前記ブレード本体の表面を覆う硬質被膜と、を有し、
前記ブレードが前記圧縮室に飛び出す量であるブレード飛び出し量の最大値は、前記ブレードの長さLの50%以上70%以下である。
【0009】
本発明よれば、上記(1)式及び上記(2)式を満たすように、ブレードの長さL及びブレードの厚さtを設定することで、ブレードの長さLを短くした上で、ブレードの強度を保つことの可能な厚さtにすることが可能となる。
【0010】
例えば、ブレードの厚さを変えないで、ブレードの長さを短くした場合、シリンダの周方向に配置されたブレードの側面の面積が小さくなるため、ブレードの側面が受ける単位面積当たりの力は大きくなる。
一方、上述したように、ブレードの長さLを短くするとともに、ブレードの強度を保つことの可能な厚さtにすることで、ブレードの強度の低下を抑制することが可能となる。
そして、ブレードの長さLを短くすることで、シリンダの外径を小さくすることが可能となるので、ロータリ圧縮機の外径(ハウジングの外径)の小型化を図ることができる。
【0011】
また、ブレードの長さLを短くすることで、ブレードと圧縮室の内周面とが交わるブレードの位置(支点)からブレード収容溝内に収容されたブレードの後端までの距離が短くなる。これにより、転動するピストンロータからブレードの先端が受ける力に起因するブレードの後端が受けるモーメントを小さくすることができる。
【0013】
このように、上記(3)式を満たすように、圧縮室の内径Dc、及びブレードの長さLを設定することで、ブレード収容溝からブレードが抜け落ちることを抑制できる。
【0015】
このように、上記(4)式を満たすように、ブレードの長さL、及びブレードの厚さtを設定することで、ブレードの長さLに対してブレードの厚さtが薄くなりすぎることを抑制可能となる。これにより、ブレードの強度が低下することを抑制できる。
【0017】
このように、ブレードがブレード本体の表面を覆う硬質被膜を有することで、ブレード本体の強度を補強することが可能となる。これにより、ブレードの強度を向上させることができる。
【0019】
例えば、ブレードの飛び出し量の最大値(以下、「ブレードの最大飛び出し量」という)がブレードの長さの50%よりも小さいと、シリンダの外径を小さくする効果が小さくなってしまう。
一方、ブレードの最大飛び出し量がブレードの長さの70%よりも大きいと、ブレード収容溝内に収容されるブレードの長さが短くなりすぎるため、ブレードの先端側がピストンロータの周方向に大きく揺動されてしまう。
これにより、ピストンロータの外周面に対するブレードの先端の当接状態が悪くなる可能性がある。このため、ブレードを用いて、低圧室52Aと高圧室52Bとを分離することが困難となる可能性がある。
したがって、ブレードの長さLの50%以上70%以下とすることで、ブレードを用いて低圧室と高圧室とを分離した上で、シリンダの外径を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブレードの強度の低下を抑制した上で、ロータリ圧縮機の外径の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るロータリ圧縮機の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示すロータリ圧縮機のA
1-A
2線方向の断面図である。
【
図3】
図2に示すブレードの長さ方向に対して直交する仮想面でブレードを切断した断面図であり、切断面をB方向から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
図1~
図3を参照して、本実施形態のロータリ圧縮機10について説明する。
図1において、O
1はシャフト24の軸線(以下、「軸線O
1」という)、O
2は偏心軸部39の軸線(以下、「軸線O
2」という)、Zはロータリ圧縮機10の高さ方向(鉛直方向)をそれぞれ示している。
また、
図1において、R
1はハウジング17(筒状部33)の外径(以下、「外径R
1」という)、R
2はシリンダ38の外径(以下、「外径R
2」という)をそれぞれ示している。
【0023】
図2において、Dcは円柱状とされた圧縮室52の内径(以下、「内径Dc」という)、Lはブレード45の長さ(以下、「長さL」という)、Lsは、ブレード収容溝53の長さ(以下、「長さLs」という)、Pmaxはブレード45が圧縮室52に飛び出す量であるブレード飛び出し量の最大値(以下、「最大飛び出し量Pmax」という)をそれぞれ示している。
また、
図2において、tはシリンダ本体51の周方向におけるブレードの厚さ(以下、「厚さt」という)、P1は転動するピストンロータ41からブレード45の先端45Aが受ける外力(以下、「外力P1」)、P2は外力によりブレード45の側面45aが受ける反力(反力P2)をそれぞれ示している。
図1~
図3において、同一構成部分には同一符号を付す。
【0024】
ロータリ圧縮機10は、圧縮機本体11と、アキュムレータ12と、ブラケット13と、吸入管14と、を有する。
圧縮機本体11は、ハウジング17と、ガイドパイプ18と、圧縮部21と、シャフト24と、上軸受26と、下軸受27と、電動部29と、吐出管31と、を有する。
【0025】
ハウジング17は、密閉型のハウジングであり、柱状とされた内部空間Aを区画している。ハウジング17は、筒状部33と、底部34と、蓋部35と、を有する。
【0026】
筒状部33は、Z方向に延びており、上端及び下端が開放端とされている。筒状部33の下部には、吸入孔33Aが形成されている。
【0027】
底部34は、上部が筒状部33の下端に挿入された状態で、筒状部33に固定されている。これにより、底部34は、筒状部33の下端を塞いでいる。底部34の下部は、筒状部33の下端から下方に突出している。
【0028】
蓋部35は、下部が筒状部33の上端に挿入された状態で、筒状部33に固定されている。蓋部35は、上部が筒状部33の上端から突出している。
蓋部35には、貫通部35Aが形成されている。
【0029】
ガイドパイプ18は、両端が開放端とされた筒状の部材であり、吸入孔33Aに挿入された状態で、筒状部33に固定されている。ガイドパイプ18には、吸入管14が挿入されている。ガイドパイプ18は、吸入管14が延びる方向を案内している。
【0030】
圧縮部21は、ハウジング17内に収容されており、内部空間Aの下部に配置されている。
圧縮部21は、シリンダ38と、シャフト24を構成する偏心軸部39と、ピストンロータ41と、ブレード45と、ブレード押圧部材47と、を有する。
【0031】
シリンダ38は、シリンダ本体51と、圧縮室52と、ブレード収容溝53と、冷媒供給路55と、吐出穴(図示せず)を有する。
シリンダ本体51は、外周面の一部が筒状部33の下部の内周面33aに固定されている。
圧縮室52は、シリンダ本体51の中央部を貫通するように形成されている。圧縮室52は、円柱状とされており、内周面52aを有する。
【0032】
ブレード収容溝53は、シリンダ本体51に形成されている。ブレード収容溝53は、圧縮室52と連通しており、圧縮室52の内周面52aからシリンダ本体51の径方向外側に延びている。ブレード収容溝53の端部のうち、シリンダ本体51の外周側に配置された端部は、シリンダ本体51内に配置されている。つまり、ブレード収容溝53は、シリンダ本体51を径方向に貫通していない。
【0033】
冷媒供給路55は、シリンダ本体51に形成されている。冷媒供給路55は、圧縮室52の外側に配置されたシリンダ本体51を径方向に貫通している。
これにより、冷媒供給路55の端部のうち、圧縮室52側に位置する一方の端は、圧縮室52に連通している。
冷媒供給路55の他方の端は、筒状部33に形成された吸入孔33Aと対向するように配置されている。冷媒供給路55の他方の端部は、吸入管14の先端部14Aを装着可能な形状とされている。
上記構成とされた冷媒供給路55は、吸入管14から供給される気相冷媒を圧縮室52へと導く。
【0034】
吐出穴(図示せず)は、シリンダ本体51の所定位置に設けられている。吐出穴は、圧縮部21の外部に圧縮された気相冷媒(以下、「圧縮冷媒」という)を導出可能な状態で、圧縮室52と連通している。吐出穴には、リード弁(図示せず)が設けられている。
【0035】
偏心軸部39は、シャフト24を構成し、かつZ方向に延びるシャフト本体56のうち、圧縮室52に挿入された部分に設けられている。これにより、偏心軸部39は、圧縮室52に配置されている。偏心軸部39は、円柱形状とされている。
偏心軸部39の軸線O2は、シャフト本体56の軸線O1からオフセットされた位置に配置されている。
【0036】
ピストンロータ41は、偏心軸部39を収容する収容部41Aを有する。これにより、ピストンロータ41は、偏心軸部39の外側に配置されるとともに、圧縮室52に配置される。ピストンロータ41は、偏心軸部39が回転した際、圧縮室52の内周面52aに沿って転動する。
【0037】
ブレード45は、板状の部材であり、少なくとも一部がブレード収容溝53内に配置されている。ブレード45は、ブレード収容溝53が延びる方向と同じ方向に延びている。
ブレード45は、先端45Aと、後端45Bと、側面45a,45bと、を有する。
先端45Aは、転動するピストンロータ41の外周面41aに当接される部分である。後端45Bは、先端45Aとは反対側に配置された端であり、ブレード収容溝53に収容されている。
【0038】
側面45a,45bは、シリンダ本体51の周方向に配置されている。側面45aは、圧縮室52のうち、低圧室52A側に配置された面である。側面45aは、ブレード45の先端45Aが外力P1を受けた際、反力P2を受ける。側面45bは、側面45aの反対側に配置された面である。
【0039】
ブレード45は、ピストンロータ41の外周面41aに当接された状態でシリンダ本体51の径方向に移動する。つまり、ブレード45は、ピストンロータ41が転動することで、ブレード収容溝53内に収容されるブレード45の長さ(言い換えれば、圧縮室52に突出するブレード45の突出量)が変わる。
ブレード45は、圧縮室52を圧力の低い低圧室52Aと、低圧室よりも圧力の高い高圧室52Bと、に分離している。
【0040】
ブレード45は、例えば、ブレード本体45Cと、ブレード本体45Cの表面45Caを覆う硬質被膜45Dと、で構成してもよい。
硬質被膜45Dとしては、例えば、DLC(Diamond-Like-Carbon)被膜、PVD法で形成されたクロムナイトライド膜又はタングステンカーバイド膜等を用いることが可能である。
【0041】
このように、ブレード45がブレード本体45Cの表面45Caを覆う硬質被膜45Dを有することで、ブレード本体45Cの強度を補強することが可能となる。これにより、ブレード45の強度を向上させることができる。
【0042】
ブレード45の長さL、及びブレード45の厚さtは、圧縮室52の内径をDcとした場合、下記(5)式及び下記(6)式を満たすように設定するとよい。
L/Dc≦0.4 ・・・(5)
0.2≦t/L ・・・(6)
【0043】
このように、上記(5)式及び上記(6)式を満たすように、ブレード45の長さL及びブレード45の厚さtを設定することで、ブレード45の長さLを短くした上で、ブレード45の強度を保つことの可能な厚さtにすることが可能となる。
【0044】
例えば、ブレード45の厚さを変えないで、ブレード45の長さを短くした場合、シリンダ38の周方向に配置されたブレード45の側面の面積が小さくなるため、ブレードの側面が受ける単位面積当たりの力は大きくなる。
一方、上述したように、ブレード45の長さLを短くするとともに、ブレード45の強度を保つことの可能な厚さtにすることで、ブレード45の強度の低下を抑制することが可能となる。
そして、ブレード45の長さLを短くすることで、シリンダ38の外径R2を小さくすることが可能となるので、ロータリ圧縮機10の外径(ハウジング17(筒状部33)の外径)の小型化を図ることができる。
【0045】
また、ブレード45の長さLを短くすることで、ブレード45と圧縮室52の内周面52aとが交わるブレード45の位置(支点)からブレード収容溝53内に収容されたブレード45の後端45Bまでの距離が短くなる。これにより、転動するピストンロータからブレード45の先端45Aが受ける力に起因するブレード45の後端45Bが受けるモーメントを小さくすることができる。
【0046】
また、圧縮室52の内径Dc、及びブレードの長さLは、例えば、下記(7)も満たすように設定することが好ましい。
0.2≦L/Dc ・・・(7)
このように、上記(7)式を満たすように、圧縮室52の内径Dc、及びブレードの長さLを設定することで、ブレード収容溝53からブレード45が抜け落ちることを抑制できる。
【0047】
また、ブレード45の長さL、及びブレード45の厚さtは、例えば、下記(8)式を満たすように設定することが好ましい。
t/L≦0.5 ・・・(8)
このように、上記(8)式を満たすように、ブレード45の長さL、及びブレード45の厚さtを設定することで、ブレード45の長さLに対してブレード45の厚さtが薄くなりすぎることを抑制可能となる。これにより、ブレード45の強度が低下することを抑制できる。
【0048】
また、ブレード45の最大飛び出し量Pmaxは、例えば、ブレード45の長さLの50%以上70%以下の範囲内で設定することが好ましい。さらに、ブレード45の最大飛び出し量Pmaxは、例えば、ブレード45の長さLの60%以上70%以下の範囲内で設定することがより好ましい。
例えば、ブレード45の最大飛び出し量Pmaxがブレード45の長さの50%よりも小さいと、シリンダ38の外径R2を小さくする効果が小さくなってしまう。
一方、ブレード45の最大飛び出し量Pmaxがブレード45の長さの70%よりも大きいと、ブレード収容溝53内に収容されるブレード45の長さが短くなりすぎるため、ブレード45の先端45A側がピストンロータ41の周方向に大きく揺動されてしまう。
【0049】
これにより、ピストンロータ41の外周面41aに対するブレード45の先端45Aの当接状態が悪くなる可能性がある。このため、ブレード45を用いて、低圧室52Aと高圧室52Bとを分離することが困難となる可能性がある。
したがって、ブレード45の長さLの50%以上70%以下の範囲内でブレード45の最大飛び出し量Pmaxを設定することで、ブレード45を用いて低圧室52Aと高圧室52Bとを分離した上で、シリンダ38の外径R2を小さくすることができる。
【0050】
ブレード押圧部材47は、ブレード45の後端45B側に位置するブレード収容溝53に配置されている。ブレード押圧部材47は、ブレード45の先端45Aをピストンロータ41の外周面41aに押し当てるための部材である。
ブレード押圧部材47としては、例えば、ブレード押圧ばねを用いることが可能である。この場合、ブレード押圧ばねの一端をブレード45の後端45Bに固定し、ブレード押圧ばねの他端をシリンダ本体51に固定することで、ブレード45の先端45Aをピストンロータ41の外周面41aに押し当てることが可能となる。
【0051】
上記構成とされた圧縮室52では、圧縮室52内に気相冷媒が導入されると、ピストンロータ41の偏心転動により、圧縮室52の容積が徐々に減少して気相冷媒が圧縮される。
そして、圧縮された冷媒の圧力が高まると、リード弁(図示せず)が押し開かれて、シリンダ38の外部に圧縮冷媒が吐出される。
圧縮冷媒は、ハウジング17の上部に設けられた吐出管31を介して、吐出管31と接続された配管(図示せず)内に排出される。
【0052】
シャフト24は、ハウジング17内に収容されており、シャフト本体56と、シャフト本体56に設けられた偏心軸部39と、を有する。
シャフト本体56は、圧縮室52を貫通するように、Z方向に延びている。軸線O1は、ハウジング17の軸線と一致している。
【0053】
上軸受26は、ハウジング17内に収容されている。上軸受26は、圧縮室52の上端(開放端)を塞ぐように、シリンダ38の上面に配置されている。上軸受26は、シリンダ38の直上に位置するシャフト本体56の外周面を囲んでいる。上軸受26は、軸線O1回りにシャフト本体56が回転可能な状態で、シャフト本体56を支持している。
【0054】
下軸受27は、ハウジング17内に収容されている。下軸受27は、圧縮室52の下端(開放端)を塞ぐように、シリンダ38の下面に配置されている。下軸受27は、シリンダ38の直下に位置するシャフト本体56の外周面を囲んでいる。下軸受27は、軸線O1回りシャフト本体56が回転可能な状態で、シャフト本体56を支持している。
【0055】
電動部29は、ロータ61と、ステータ62と、を有する。ロータ61は、シャフト本体56の上部に設けられている。
ステータ62は、ロータ61の外側に配置されている。ステータ62は、ハウジング17の内周面に固定されている。
上記構成とされた電動部29は、シャフト24を介して、圧縮部21を電動駆動させる。
【0056】
吐出管31は、貫通部35Aに挿入された状態で、蓋部35に固定されている。吐出管31は、圧縮部21により生成された圧縮冷媒を外部に導出するための管である。吐出管31は、例えば、軸線O1が通過する位置に配置させてもよい。
【0057】
アキュムレータ12は、板状のブラケット13を介して、溶接やボルト等の固定手段によって筒状部33に固定されている。アキュムレータ12は、上端に冷媒を吸入する吸入口12Aを有する。アキュムレータ12は、吸入口12Aから冷媒を取り込み、該冷媒を気液分離させる。
【0058】
吸入管14は、一端がアキュムレータ12内の気相に到達しており、他端が圧縮部21を構成する冷媒供給路55と接続されている。
吸入管14は、ガイドパイプ18を介して、ハウジング17内に挿入されている。吸入管14は、ガイドパイプ18に固定されている。
吸入管14は、圧縮室52にアキュムレータ12内の気相冷媒を供給する。
【0059】
本実施形態のロータリ圧縮機10によれば、上記(5)式及び上記(6)式を満たすように、ブレード45の長さL及びブレード45の厚さtを設定することで、ブレード45の長さLを短くした上で、ブレード45の強度を保つことの可能な厚さtにすることが可能となる。
【0060】
このように、ブレード45の長さLを短くするとともに、ブレード45の強度を保つことの可能な厚さtにすることで、ブレード45の強度の低下を抑制することが可能となる。
そして、ブレード45の長さLを短くすることで、シリンダ38の外径R2を小さくすることが可能となるので、ロータリ圧縮機10の外径(ハウジング17(筒状部33)の外径)の小型化を図ることができる。
【0061】
また、ブレード45の長さLを短くすることで、ブレード45と圧縮室52の内周面52aとが交わるブレード45の位置(以下、「支点」という)からブレード収容溝53内に収容されたブレード45の後端45Bまでの距離が短くなる。これにより、転動するピストンロータからブレード45の先端45Aが受ける力に起因するブレード45の後端45Bが受けるモーメントを小さくすることができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0063】
なお、本実施形態では、軸線O1方向に1つの圧縮部21を設けた場合を例に挙げて説明したが、軸線O1方向に複数の圧縮部を設けたロータリ圧縮機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…ロータリ圧縮機
11…圧縮機本体
12…アキュムレータ
12A…吸入口
13…ブラケット
14…吸入管
14A…先端部
17…ハウジング
18…ガイドパイプ
21…圧縮部
24…シャフト
26…上軸受
27…下軸受
29…電動部
31…吐出管
33…筒状部
33A…吸入孔
33a,52a…内周面
34…底部
35…蓋部
35A…貫通部
38…シリンダ
39…偏心軸部
41…ピストンロータ
41a…外周面
45…ブレード
45a,45b…側面
45A…先端
45B…後端
45C…ブレード本体
45Ca…表面
45D…硬質被膜
47…ブレード押圧部材
51…シリンダ本体
52…圧縮室
52A…低圧室
52B…高圧室
53…ブレード収容溝
55…冷媒供給路
56…シャフト本体
61…ロータ
62…ステータ
A…内部空間
Dc…内径
L,Ls…長さ
O1,O2…軸線
P1…外力
P2…反力
Pmax…最大飛び出し量
t…厚さ
R1,R2…外径