(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム及び回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20241129BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20241129BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20241129BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20241129BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20241129BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241129BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H05K9/00 G
B32B7/025
B32B15/04 Z
C09J7/30
C09J9/02
C09J201/00
H05K1/02 P
(21)【出願番号】P 2019173735
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 努
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一義
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】北元 健太
【審判官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/095919(WO,A1)
【文献】特開2019-73622(JP,A)
【文献】特開2018-177949(JP,A)
【文献】特開2019-121731(JP,A)
【文献】特開2019-65069(JP,A)
【文献】「光学測定装置OLS4100」,[online],2013年6月21日,オリンパス株式会社,[2024年6月11日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20130621170844/http://www.olympus-ims.com:80/ja/metrology/ols4100/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 1/02
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含むシールド層と、前記シールド層の一方の面に接して積層された絶縁樹脂層と、前記シールド層の他方の面に接して積層された導電性接着剤層と、を備える電磁波シールドフィルムであって、
前記導電性接着剤層は導電性粒子を含み、
前記導電性接着剤層における、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が25~98%である、電磁波シールドフィルム。
ここで、前記負荷面積率Smr(50%)は、レーザーマイクロスコープ(OLS4100、オリンパス社製)を用い、ISO 25178-2:2012に準拠して測定した値である。
【請求項2】
前記導電性粒子の体積平均粒子径が2~30μmである、請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
ただし、前記体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法で測定された体積平均粒子径である。
【請求項3】
前記導電性接着剤層の厚みが、前記導電性粒子の体積平均粒子径よりも薄く、かつ、5~10μmである、請求項2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
基板の少なくとも一方の面に回路が設けられた回路基板本体と、
前記一方の面に接して配置された絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルムの表面に接して配置された請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルムと、
を備え、
前記電磁波シールドフィルムにおける前記導電性接着剤層が、前記絶縁フィルムに接着している、回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルム及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板から発生する電磁波ノイズや外部からの電磁波ノイズを遮蔽するために、金属を含むシールド層と、シールド層の一方の面に接して積層された絶縁樹脂層と、シールド層の他方の面に接して積層された導電性接着剤層と、を備える電磁波シールドフィルムを、絶縁フィルム(カバーレイフィルム)を介してプリント配線板の表面に設けることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層は、プリント配線板の表面に設けられた絶縁フィルム(カバーレイフィルム)と60~80℃、2~5MPa、10~20秒程度の低温短時間で仮接着したのち、160~180℃、3~5MPa、120~150秒程度の高温長時間で強固に本接着するとともに、絶縁フィルムに設けられた開口部から露出しているグランドパターンと良好な導通を確保することが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、プリント配線板との仮接着性、本接着性及び接続抵抗に優れた電磁波シールドフィルム及びその電磁波シールドフィルムを備える回路基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 金属を含むシールド層と、前記シールド層の一方の面に接して積層された絶縁樹脂層と、前記シールド層の他方の面に接して積層された導電性接着剤層と、を備える電磁波シールドフィルムであって、
前記導電性接着剤層は導電性粒子を含み、
前記導電性接着剤層における、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が25~99%である、電磁波シールドフィルム。
[2] 前記導電性粒子の体積平均粒子径が2~30μmである、[1]に記載の電磁波シールドフィルム。
ただし、前記体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法で測定された体積平均粒子径である。
[3] 前記導電性接着剤層の厚みが、前記導電性粒子の体積平均粒子径よりも薄く、かつ、5~10μmである、[2]に記載の電磁波シールドフィルム。
[4] 基板の少なくとも一方の面に回路が設けられた回路基板本体と、
前記一方の面に接して配置された絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルムの表面に接して配置された[1]~[3]のいずれか1つに記載の電磁波シールドフィルムと、
を備え、
前記電磁波シールドフィルムにおける前記導電性接着剤層が、前記絶縁フィルムに接着している、回路基板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プリント配線板との接着性及び接続抵抗の両方に優れた電磁波シールドフィルム及びその電磁波シールドフィルムを備える回路基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の回路基板の実施形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の両側の数値を範囲内に含むものとする。
フィルム(キャリアフィルム、保護フィルム等)、電磁波シールドフィルムの各層の厚みは、デジタル測長機(ミツトヨ社製、ライトマチックVL-50-B)を用いて無作為に選ばれた5箇所の厚みを測定し、平均した値である。
金属薄膜層の厚みは、渦電流式膜厚計を用いて無作為に選ばれた5箇所の厚みを測定し、平均した値である。
貯蔵弾性率は、測定対象に与えた応力と検出したひずみから算出され、温度又は時間の関数として出力する動的粘弾性測定装置を用いて、粘弾性特性の一つとして測定される。
表面抵抗は、10
6Ω/□未満の場合は、低抵抗抵抗率計(例えば、三菱ケミカル社製、ロレスタGP、ASPプローブ)を用い、四端子法(JIS K 7194:1994及びJIS R 1637:1998に準拠する方法)で測定される表面抵抗率であり、10
6Ω/□以上の場合は、高抵抗抵抗率計(例えば、三菱ケミカル社製、ハイレスタUP、URSプローブ)を用い、二重リング法(JIS K 6911:2006に準拠する方法)で測定される表面抵抗率である。
図1及び
図2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0010】
[電磁波シールドフィルム]
図1に示す本実施形態の電磁波シールドフィルム1は、金属を含むシールド層20と、前記シールド層20の一方の面に接して積層された絶縁樹脂層10と、前記シールド層20の他方の面に接して積層された導電性接着剤層30と、を備える。
【0011】
<絶縁樹脂層>
絶縁樹脂層10は、シールド層20の保護層として機能する。
絶縁樹脂層10としては、光硬化性樹脂と光ラジカル重合開始剤とを含む塗料を塗布し、半硬化又は硬化させて形成された塗膜(塗布膜);熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、半硬化又は硬化させて形成された塗膜;熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し、乾燥させて形成された塗膜;熱可塑性樹脂を含む組成物を溶融成形したフィルムからなる層等が挙げられる。はんだリフロー工程に供される際の耐熱性の点から、光硬化性樹脂と光ラジカル重合開始剤とを含む塗料を塗布し、半硬化若しくは硬化させて形成された塗膜、又は熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、半硬化若しくは硬化させて形成された塗膜が好ましい。
絶縁樹脂層10がシールド層20に対して塗布することにより形成された塗布膜であると、絶縁樹脂層10のシールド層20に対する接着性が向上するので好ましい。
【0012】
光硬化性樹脂としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、光硬化性樹脂の種類に応じた公知の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、アミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、紫外線硬化アクリレート樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、耐熱性に優れる点から、アミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
硬化剤としては、熱硬化性樹脂の種類に応じた公知の硬化剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、芳香族ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルホン、ポリフェニレンサルフィド、ポリフェニレンサルフィドサルホン、ポリフェニレンサルフィドケトン等が挙げられる。
【0013】
絶縁樹脂層10は、回路基板の回路を隠蔽したり、電磁波シールドフィルム付き回路基板に意匠性を付与したりするために、着色剤(顔料、染料等)及びフィラーのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。
着色剤及びフィラーのいずれか一方又は両方としては、耐候性、耐熱性、隠蔽性の点から、顔料又はフィラーが好ましく、回路の隠蔽性、意匠性の点から、黒色顔料又は黒色顔料と他の顔料又はフィラーとの組み合わせがより好ましい。
絶縁樹脂層10は、難燃剤を含んでいてもよい。絶縁樹脂層10は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0014】
絶縁樹脂層10の表面抵抗は、電気的絶縁性を高くすることから、1.0×106Ω/□以上が好ましく、5.0×106Ω/□以上がより好ましい。絶縁樹脂層10の表面抵抗の上限は、特に限定されないが、実用上、1.0×1019Ω/□が好ましい。
【0015】
絶縁樹脂層10の厚みは、0.1~30μmが好ましく、0.5~20μmがより好ましく、1~15μmがさらに好ましい。絶縁樹脂層10の厚みがこの範囲内であると、絶縁樹脂層10が保護層としての機能を十分に発揮でき、かつ、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。
【0016】
<シールド層>
シールド層20は、少なくとも金属を含む層であり、金属のみからなる層であってもよいし、金属以外の成分を含む層であってもよい。シールド層20に含まれる金属は、薄膜状でもよいし、粒子状でもよいし、その他の形状でもよい。金属以外の成分としては、例えば、金属粒子同士を結着させるバインダー樹脂が挙げられる。
シールド層20は、少なくとも1層の金属薄膜層を含むことが好ましい。
【0017】
(金属薄膜層)
金属の薄膜からなる金属薄膜層は、面方向に広がるように形成されていることから、面方向に導電性を有し、電磁波をシールドする層として機能する。
【0018】
金属薄膜層は、例えば、物理蒸着(真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム蒸着又は電子ビーム蒸着)若しくは化学蒸着によって形成された蒸着膜、めっきによって形成されためっき膜又は金属箔である。
【0019】
金属薄膜層は、面方向の導電性に優れることから、蒸着膜又はめっき膜が好ましく、厚みを薄くでき、かつ厚みが薄くても面方向の導電性に優れ、ドライプロセスにて簡便に形成できることから、蒸着膜がさらに好ましく、物理蒸着による蒸着膜がさらに好ましい。
【0020】
金属薄膜層を構成する金属は、例えば、銀、銅、アルミニウム、ニッケル又は金であるが、電気伝導度が優れることから、銀又は銅が好ましい。
金属薄膜層のなかでも、電磁波遮蔽性が高く、しかも金属薄膜層を容易に形成しやすいことから、金属蒸着層が好ましく、銀蒸着層又は銅蒸着層がより好ましい。
【0021】
金属薄膜層の表面抵抗は、0.001~1Ω/□以下が好ましく、0.001~0.5Ω/□がより好ましい。金属薄膜層の表面抵抗がこの範囲内であると、金属薄膜層を十分に薄くでき、かつ金属薄膜層が電磁波シールド層として十分に機能できる。
【0022】
金属薄膜層の厚みは、0.01~5μmが好ましく、0.05~3μmがより好ましく、0.1~1.5μmがさらに好ましい。金属薄膜層の厚みがこの範囲内であると、面方向の導電性及び電磁波ノイズの遮蔽効果がより良好になり、かつ電磁波シールドフィルム1を薄くでき、電磁波シールドフィルム1の生産性及び可とう性がより良好になる。
【0023】
<導電性接着剤層>
本実施形態の導電性接着剤層30は、導電性粒子を含み、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が25~98%である。
【0024】
導電性粒子は、特に限定されないが、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、カーボン粒子及びこれらの混合物を使用することができる。金属粒子としては、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀コート銅粒子、金コート銅粒子、銀コートニッケル粒子、及び金コートニッケル粒子等を挙げることができる。これら金属粒子は、電解法、アトマイズ法、又は還元法等により作製することができる。中でも銀粒子、銀コート銅粒子及び銅粒子からなる群から選択されるいずれか1種が好ましい。
【0025】
導電性粒子は、体積平均粒子径が2~30μmであることが好ましく、3~20μmであることがより好ましく、4~15μmであることがさらに好ましい。
ただし、前記体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法で測定された体積平均粒子径である。
前記導電性粒子の平均粒子径がこの範囲内であると、前記導電性接着剤層の厚みを確保することができ、十分な接着強度を得ることができる。また、前記導電性接着剤層の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができる。
【0026】
導電性粒子の形状は特に限定されず、球状、フレーク状、樹枝状、又は繊維状等とすることができる。
【0027】
導電性粒子の含有量は、用途に応じて適宜選択することができるが、導電性接着剤層の全固形分中で、1~30体積%が好ましく、2~15体積%がより好ましい。
導電性粒子の含有量がこの範囲内であると、前記導電性接着剤層の導電性がより良好になる。また、前記導電性接着剤層の接着性及び流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)がより良好になる。さらに、電磁波シールドフィルムの可とう性がより向上する。
【0028】
導電性接着剤層30は、さらに、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方を含んでもよい。
【0029】
前記熱可塑性樹脂は、例えば、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物又はアクリル系樹脂組成物を用いることができる。これらの熱可塑性樹脂組成物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて、使用できる。
【0030】
前記熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物又はアルキッド系樹脂組成物を用いることができる。活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物である。これらの熱硬化性樹脂組成物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて、使用できる。
【0031】
熱硬化性樹脂組成物は、反応性の第1の官能基を有する第1樹脂成分と、第1の官能基と反応する第2の官能基を有する第2樹脂成分とを含むことが好ましい。
第1の官能基は、例えば、エポキシ基、アミド基又はヒドロキシ基とすることができる。
第2の官能基は、第1の官能基に応じて選択すればよい。
【0032】
第1の官能基がエポキシ基である場合、第2の官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基又はアミノ基が好ましい。第1樹脂成分をエポキシ樹脂とした場合には、第2樹脂成分として、例えば、エポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシ基変性ポリエステル樹脂、カルボキシ基変性ポリアミド樹脂、カルボキシ基変性アクリル樹脂、カルボキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂又はウレタン変性ポリエステル樹脂を用いることができる。これらの中でも、カルボキシ基変性ポリエステル樹脂、カルボキシ基変性ポリアミド樹脂、カルボキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂又はウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0033】
第1の官能基がヒドロキシ基である場合、第2樹脂成分は、例えば、エポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシ基変性ポリエステル樹脂、カルボキシ基変性ポリアミド樹脂、カルボキシ基変性アクリル樹脂、カルボキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂又はウレタン変性ポリエステル樹脂を用いることができる。これらの中でも、カルボキシ基変性ポリエステル樹脂、カルボキシ基変性ポリアミド樹脂、カルボキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂又はウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0034】
導電性接着剤層30の厚みは、前記導電性粒子の体積平均粒子径よりも薄く、かつ、5~10μmが好ましい。
導電性接着剤層30の厚みが導電性粒子の体積平均粒子径よりも薄いことで、電磁波シールドフィルム1の導電性接着剤層30とプリント配線板3の絶縁フィルム40とを接触させ、互いに圧着させた際に、絶縁フィルム40に形成された貫通孔において、導電性粒子がシールド層20及び回路54と接触し、シールド層20と回路54との間が電気的に接続されやすくなる。
【0035】
導電性接着剤層30の被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)は、25~98%であり、30~98%が好ましく、35~98%がより好ましい。
導電性接着剤層30の被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)は、導電性接着剤を塗布して導電性接着剤層を形成する際の塗布量を制御することによって制御できる。塗布量を、少なくすることにより負荷面積率Smr(50%)を高くでき、多くすることにより負荷面積率Smr(50%)を低くできる。
また、導電性接着剤層30の被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)は、導電性接着剤層の固形分中の導電性粒子の含有量を制御することによっても制御できる。導電性粒子の含有量を少なくすることにより負荷面積率Smr(50%)を高くでき、多くすることにより負荷面積率Smr(50%)を低くできる。
また、導電性接着剤層30の被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)は、導電性接着剤層に含まれる導電性粒子の体積平均粒子径を制御することによっても制御できる。導電性粒子の体積平均粒子径を小さくすることにより負荷面積率Smr(50%)を高くでき、大きくすることにより負荷面積率Smr(50%)を低くできる。
これらは、相乗的に作用するため、複数の条件を組み合わせて、負荷面積率Smr(50%)を制御できる。
【0036】
ここで、負荷面積率Smr(50%)は、レーザーマイクロスコープ(OLS4100、オリンパス社製)を用い、ISO 25178-2:2012に準拠して測定した値である。
【0037】
<キャリアフィルム>
電磁波シールドフィルム1は、絶縁樹脂層10のシールド層20とは反対側に隣接するキャリアフィルム(図示省略)を有してもよい。
【0038】
キャリアフィルムは、絶縁樹脂層10及びシールド層20を補強及び保護する支持体であり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。特に、絶縁樹脂層10として、薄いフィルム、具体的には、厚みが3~10μmのフィルムを用いた場合には、キャリアフィルムを有することによって、絶縁樹脂層10の破断を防ぐことができる。
キャリアフィルムは、電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に貼り付けた後には、絶縁樹脂層10から剥離される。
【0039】
キャリアフィルムは、キャリアフィルム本体(図示省略)と、キャリアフィルム本体の絶縁樹脂層10側の表面に設けられた離型剤層(図示省略)とを有する。
【0040】
キャリアフィルム本体の樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ということもある。)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム、液晶ポリマー等が挙げられる。樹脂材料としては、電磁波シールドフィルム1を製造する際の耐熱性(寸法安定性)及び価格の点から、PETが好ましい。
【0041】
キャリアフィルム本体は、着色剤(顔料、染料等)及びフィラーのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。
着色剤及びフィラーのいずれか一方又は両方としては、絶縁樹脂層10と明確に区別でき、熱プレスした後にキャリアフィルムの剥がし残しに気が付きやすい点から、絶縁樹脂層10とは異なる色のものが好ましく、白色顔料、フィラー、白色顔料と他の顔料の組み合わせ、又は白色顔料とフィラーとの組み合わせがより好ましい。
【0042】
キャリアフィルム本体の180℃における貯蔵弾性率は、8×107~5×109Paが好ましく、1×108~8×108Paがより好ましい。キャリアフィルム本体の180℃における貯蔵弾性率がこの範囲内であると、キャリアフィルムが適度の硬さを有するようになり、熱プレスの際のキャリアフィルムにおける圧力損失を低減でき、かつ、キャリアフィルムの柔軟性が良好となる。
【0043】
キャリアフィルム本体の厚みは、3~75μmが好ましく、12~50μmがより好ましい。キャリアフィルム本体の厚みがこの範囲内であると、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性が良好となり、かつ、絶縁フィルムの表面に電磁波シールドフィルム1の導電性接着剤層30を熱プレスする際に導電性接着剤層30に熱が伝わりやすい。
【0044】
離型剤層は、キャリアフィルム本体の表面を離型剤で処理して形成される。キャリアフィルムが離型剤層を有することによって、キャリアフィルムを絶縁樹脂層10から剥離する際に、キャリアフィルムを剥離しやすく、絶縁樹脂層10が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
【0045】
離型剤層の厚みは、0.05~30μmが好ましく、0.1~20μmがより好ましい。離型剤層の厚みが前記範囲内であれば、キャリアフィルムをさらに剥離しやすくなる。
【0046】
キャリアフィルムの厚みは、25~125μmが好ましく、38~100μmがより好ましい。キャリアフィルムの厚みがこの範囲内であると、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性が良好となり、かつ、絶縁フィルムの表面に電磁波シールドフィルム1の導電性接着剤層30を熱プレスする際に導電性接着剤層30に熱が伝わりやすい。
【0047】
<離型フィルム>
電磁波シールドフィルム1は、導電性接着剤層30のシールド層20とは反対側に隣接する離型フィルム(図示省略)を有してもよい。
【0048】
離型フィルムは、導電性接着剤層30を保護するものであり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。離型フィルムは、電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に貼り付ける前に、導電性接着剤層30から剥離される。
【0049】
離型フィルムは、例えば、離型フィルム本体(図示省略)と、離型フィルム本体の導電性接着剤層30側の表面に設けられた離型剤層(図示せず)とを有する。
【0050】
離型フィルム本体の樹脂材料としては、キャリアフィルム本体の樹脂材料と同様なものが挙げられる。
離型フィルム本体は、着色剤、フィラー等を含んでいてもよい。
離型フィルム本体の厚みは、5~500μmが好ましく、10~150μmがより好ましく、25~100μmがさらに好ましい。
【0051】
離型剤層は、離型フィルム本体の表面を離型剤で処理して形成される。離型フィルムが離型剤層を有することによって、離型フィルムを導電性接着剤層30から剥離する際に、離型フィルムを剥離しやすく、導電性接着剤層30が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
【0052】
離型剤層の厚みは、0.05~30μmが好ましく、0.1~20μmがより好ましい。離型剤層の厚みがこの範囲内であると、離型フィルムをさらに剥離しやすくなる。
【0053】
<電磁波シールドフィルムの製造方法>
本発明の電磁波シールドフィルムは、積層フィルムを形成する公知方法を適用することにより製造することができる。容易に歩留まり良く均質な電磁波シールドフィルムを製造する観点から、例えば、次の好適な製造方法が挙げられる。
【0054】
電磁波シールドフィルム1を製造する方法としては、下記の方法(A1)又は方法(A2)が挙げられる。
【0055】
方法(A1)は、下記の工程(A1-1)~(A1-4)を有する方法である。
工程(A1-1):キャリアフィルム(図示省略)の片面に絶縁樹脂層10を形成する工程。
工程(A1-2):絶縁樹脂層10のキャリアフィルムとは反対側の面にシールド層20を形成する工程。
工程(A1-3):シールド層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面に導電性接着剤層30を形成する工程。
工程(A1-4):導電性接着剤層30のシールド層20とは反対側の面に離型フィルム(図示省略)を積層する工程。
以下、方法(A1)の各工程について詳細に説明する。
【0056】
工程(A1-1)における絶縁樹脂層10の形成方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
・キャリアフィルムの離型剤層(図示省略)側の面に、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、半硬化又は硬化させる方法。
・キャリアフィルムの離型剤層側の面に、熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し、乾燥させる方法。
・キャリアフィルムの離型剤層側の面に、熱可塑性樹脂を含む組成物を押出成形により成形したフィルムを直接積層する方法。
これらの方法のなかでも、はんだ付け等の際の耐熱性の点から、キャリアフィルムの離型剤層側の面に、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、半硬化又は硬化させる方法が好ましい。
塗料の塗布方法としては、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の各種コーターを用いた方法を適用することができる。
熱硬化性樹脂を半硬化又は硬化させる際には、ヒータ、赤外線ランプ等の加熱器を用いて加熱すればよい。
【0057】
工程(A1-2)におけるシールド層20の形成方法としては、物理蒸着、CVD(化学気相蒸着)によって蒸着膜を形成する方法、めっきによってめっき膜を形成する方法、金属箔を貼り付ける方法等が挙げられる。面方向の導電性に優れる金属薄膜層を形成できる点から、物理蒸着、CVDによって蒸着膜を形成する方法、又はめっきによってめっき膜を形成する方法が好ましい。金属薄膜層の厚みを薄くでき、かつ厚みが薄くても面方向の導電性に優れる金属薄膜層を形成でき、ドライプロセスにて簡便に金属薄膜層を形成できる点から、物理蒸着、CVDによって蒸着膜を形成する方法がより好ましく、物理蒸着によって蒸着膜を形成する方法がさらに好ましい。
【0058】
工程(A1-3)では、シールド層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面に、導電性接着剤塗料を塗布する。
導電性接着剤塗料は、導電性粒子と、所望により、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方と、溶剤とを含む。
導電性粒子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、導電性接着剤層30について説明したとおりである。
導電性接着剤塗料に含まれる溶剤としては、エステル(酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリールモノメチルエーテル、プロピレングルコール等)等が挙げられる。
導電性接着剤塗料の塗布方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の各種コーターを用いた方法を適用することができる。
塗布した導電性接着剤塗料より溶剤を揮発させることにより、異方導電性接着剤層24を形成する。
【0059】
工程(A1-4)では、離型フィルム(図示省略)を、導電性接着剤層30のシールド層20とは反対側の面に、離型剤層(図示せず)が導電性接着剤層30に接するように積層する。
離型フィルムを導電性接着剤層30に積層した後には、キャリアフィルム、絶縁樹脂層10、シールド層20、導電性接着剤層30及び離型フィルムからなる積層体に、各層同士の密着性を高めるための加圧処理を施してもよい。
加圧処理における圧力としては、0.1~100kPaが好ましく、0.1~20kPaがより好ましく、1~10kPaがさらに好ましい。
加圧処理と同時に加熱してもよい。その際の加熱温度としては50~100℃が好ましい。
【0060】
方法(A2)は、下記の工程(A2-1)~(A2-4)を有する方法である。
工程(A2-1):キャリアフィルム(図示省略)の片面に絶縁樹脂層10を形成する工程。
工程(A2-2):絶縁樹脂層10のキャリアフィルムとは反対側の面にシールド層20を形成して積層体Iを得る工程。
工程(A2-3):離型フィルム(図示省略)の片面に導電性接着剤層30を形成して積層体IIを得る工程。
工程(A2-4):積層体Iと積層体IIとを、積層体Iのシールド層20と積層体IIの導電性接着剤層30とが接するように貼り合せる工程。
【0061】
工程(A2-1)及び工程(A2-2)は、前記方法(A1)における工程(A1-1)及び工程(A1-2)と同様である。
【0062】
工程(A2-3)では、離型フィルムの離型剤層(図示省略)が設けられた面に導電性接着剤塗料を塗布する。塗布した導電性接着剤塗料より溶剤を揮発させることにより、導電性接着剤層30を形成する。導電性接着剤塗料及び塗布方法は、前記方法(A1)における工程(A1-3)と同様である。
【0063】
工程(A2-4)における積層体Iと積層体IIとの貼り合せでは、積層体Iと積層体IIとの密着性を高めるための加圧処理を施してもよい。加圧条件は、工程(A1-4)における加圧処理と同様である。また、工程(A2-4)においても、工程(A1-4)と同様に加熱してもよい。
【0064】
[回路基板]
図2に示す本実施形態の回路基板2は、基板52の少なくとも一方の面に回路54が設けられた回路基板本体50と、前記一方の面に接して配置された絶縁フィルム40と、前記絶縁フィルム40の表面に接して配置された電磁波シールドフィルム1と、を備え、前記電磁波シールドフィルム1における前記導電性接着剤層30が、前記絶縁フィルム40に接着している。
【0065】
<電磁波シールドフィルム>
電磁波シールドフィルム1は、上述したものである。
【0066】
<回路基板本体>
回路基板本体50は、銅張積層板の銅箔を公知のエッチング法により所望のパターンに加工して回路54としたものである。
銅張積層板としては、基板52の片面又は両面に接着剤層(図示省略)を介して銅箔を貼り付けたもの;銅箔の表面に基板52を形成する樹脂溶液等をキャストしたもの等が挙げられる。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
接着剤層の厚みは、0.5~30μmが好ましい。
【0067】
(回路)
回路54を構成する銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。回路54は、例えば、信号回路、グランド回路、グランド層等として使用される。
銅箔の厚みは、1~50μmが好ましく、18~35μmがより好ましい。
回路54の長さ方向の端部(端子)は、ハンダ接続、コネクター接続、部品搭載等のため、電磁波シールドフィルム1に覆われず、露出している。
【0068】
(基板)
基板52としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
【0069】
基板52の表面抵抗は、電気的絶縁性を高くすることから、1.0×106Ω/□以上が好ましく、5.0×106Ω/□以上がより好ましい。基板52の表面抵抗の上限は、特に限定されないが、実用上、1.0×1019Ω/□が好ましい。
【0070】
基板52の厚みは、5~200μmが好ましく、屈曲性がより良好になることから、6~50μmがより好ましく、10~25μmがさらに好ましい。
【0071】
<絶縁フィルム>
絶縁フィルム40(カバーレイフィルム)は、絶縁フィルム本体(図示省略)の片面に、接着剤の塗布、接着剤シートの貼り付け等によって接着剤層(図示省略)を形成したものである。
絶縁フィルム本体の表面抵抗は、電気的絶縁性を高くすることから、1.0×106Ω/□以上が好ましく、5.0×106Ω/□以上がより好ましい。絶縁フィルム本体の表面抵抗の上限は、特に限定されないが、実用上、1.0×1019Ω/□が好ましい。
【0072】
絶縁フィルム本体としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
【0073】
絶縁フィルム本体の厚みは、1~100μmが好ましく、可とう性がより良好になることから、3~25μmがより好ましい。
【0074】
接着剤層の材料は、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン又はポリオレフィンである。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシ変性ニトリルゴム等)を含んでいてもよい。
【0075】
接着剤層の厚みは、1~100μmが好ましく、1.5~60μmがより好ましい。
【0076】
絶縁フィルム40には、通常、貫通孔(図示省略)が形成される。
貫通孔は、回路基板本体50の回路54に対応する位置に形成される。電磁波シールドフィルム1の導電性接着剤層30は、絶縁フィルム40に形成された貫通孔を通って回路54に電気的に接続される。
貫通孔の開口部の形状は、特に限定されない。貫通孔の開口部の形状としては、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。
【0077】
<回路基板の製造方法>
図2に示す本実施形態の回路基板2は、例えば、下記の工程(a)~(d)を有する方法によって製造できる。
工程(a):回路基板本体50の回路54が設けられた側の表面に、絶縁フィルム40を設け、プリント配線板3を得る。
工程(b):工程(a)の後、プリント配線板3と、電磁波シールドフィルム1とを、絶縁フィルム40の表面に導電性接着剤層30が接触するように重ね、互いに圧着する。この際、導電性接着剤層30を加熱して、軟化させた状態で圧着させてもよい。
【0078】
工程(a)は、回路基板本体50に絶縁フィルム40を積層して、プリント配線板3を得る工程である。
具体的には、まず、回路基板本体50に、絶縁フィルム40を重ねる。このとき、絶縁フィルム40には、回路54に対応する位置に貫通孔が形成されていることが好ましい。次いで、回路基板本体50の表面に絶縁フィルム40の接着剤層(図示省略)を接着し、接着剤層を硬化させることによって、プリント配線板3を得る。回路基板本体50の表面に絶縁フィルム40の接着剤層を仮接着し、工程(b)にて接着剤層を本硬化させてもよい。
接着剤層の接着及び硬化は、例えば、プレス機(図示省略)等による熱プレスによって行うことが好ましい。
【0079】
工程(b)は、プリント配線板3に電磁波シールドフィルム1を圧着する工程である。
具体的には、プリント配線板3に、電磁波シールドフィルム1を重ね、熱プレス等により圧着する。これにより、絶縁フィルム40の表面に導電性接着剤層30を接着する。絶縁フィルム40の回路54に対応する位置に貫通孔が形成されていれば、導電性接着剤層30が貫通孔内に押し込まれ、貫通孔内を埋めて回路54に電気的に接続する。これにより、回路基板2を得る。
【0080】
導電性接着剤層30の接着及び硬化は、例えば、プレス機(図示省略)等による熱プレスによって行うことが好ましい。
熱プレスの時間は、20秒~60分が好ましく、30秒~30分がより好ましい。熱プレスの時間がこの範囲内であると、絶縁フィルム60の表面に導電性接着剤層26を容易に接着でき、かつ、回路基板の製造時間を短縮できる。
【0081】
熱プレスの温度(プレス機の熱盤の温度)は、140~190℃が好ましく、150~175℃がより好ましい。熱プレスの温度がこの範囲内であると、絶縁フィルム40の表面に導電性接着剤層30を容易に接着でき、かつ、電磁波シールドフィルム1、プリント配線板3等の劣化等を容易に抑えることができる。
【0082】
熱プレスの圧力は、0.5~20MPaが好ましく、1~16MPaがより好ましい。熱プレスの圧力がこの範囲内であると、絶縁フィルム40の表面に導電性接着剤層30を容易に接着でき、熱プレスの時間を短縮できるとともに、電磁波シールドフィルム1、プリント配線板3等の破損等を抑えることができる。
【0083】
電磁波シールドフィルム1が離型フィルムを有する場合は、工程(b)の間に、さらに、離型フィルムを剥離する工程〔工程(c)〕を有していてもよい。
具体的には、工程(c)は、電磁波シールドフィルム1の導電性接着剤層30から離型フィルムを剥離する工程である。
【0084】
電磁波シールドフィルム1がキャリアフィルムを有する場合は、工程(b)の後に、さらに、キャリアフィルムを剥離する工程〔工程(d)〕を有していてもよい。
具体的には、工程(d)は、キャリアフィルムが不要になった際に、絶縁樹脂層10からキャリアフィルムを剥離する工程である。
【実施例】
【0085】
[測定方法]
<Smr(50%)>
製造した電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層の被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)を、レーザーマイクロスコープ(OLS4100、オリンパス社製)を用い、ISO 25178-2:2012に準拠して測定した。
【0086】
<仮接着性>
プリント配線板の上に電磁波シールドフィルムを配置し、60℃、0.5MPa、20秒の条件で仮圧着した際にしっかり接着されているものをOKと評価し、しっかり接着されていないものとNGと評価した。
【0087】
<本接着性>
電磁波シールドフィルム付き回路基板の絶縁樹脂層の表面に、ボンディングシート(D3410、デクセリアルズ社製)を介して、厚み25μmの補強用ポリイミドフィルムを熱圧着して試験片を作製した。補強用ポリイミドフィルム及びプリント配線板の基板に試験機(オートグラフAGS-20NX、島津製作所社製)のチャックを取り付け、JIS Z 0237:2009に準拠して、180°剥離方向、引張速度50mm/分の条件で剥離試験を行い、電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層とプリント配線板の絶縁フィルム(カバーシート)の剥離強度を求めた。
以下の基準によって接着性を評価した。
◎:剥離強度4.0N/cm以上
○:剥離強度3.0N/cm以上4.0N/cm未満
△:剥離強度2.0N/cm以上3.0N/cm未満
×:剥離強度2.0N/cm未満
【0088】
<接続抵抗>
電磁波シールドフィルム付き回路基板について、絶縁フィルムの貫通孔の部分で導電性接着剤層を介してシールド層と接続する回路のグランドと、シールド層との間の接続抵抗を、デジタルマルチメータを用いて測定した。
以下の基準によって接続抵抗を評価した。
◎:接続抵抗0.5Ω以下
〇:接続抵抗0.5超0.8Ω以下
△:接続抵抗0.8Ω超
【0089】
[原材料]
絶縁樹脂層形成用塗料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER(登録商標)828、三菱ケミカル社製)の100質量部、硬化剤(ショウアミンX(登録商標)、昭和電工社製)の20質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾールの2質量部、カーボンブラックの2質量部を溶剤(メチルエチルケトン)の200質量部に溶解した塗料を用意した。
キャリアフィルム及び離型フィルムとして、非シリコーン系離型剤にて片面が離型処理されたPETフィルム(T157、リンテック社製;離型フィルム本体の厚み=50μm;離型剤層の厚み=0.1μm)を用意した。
【0090】
プリント配線板は、下記のようにして作製した。
厚み25μmのポリイミドフィルム(基板)の表面に厚み12.5μmの銅箔を有する銅張積層板を用意した。
厚み12.5μmのポリイミドフィルム(絶縁フィルム本体)の表面に接着剤層が形成され、かつ回路基板本体の回路(グランド)に対応する位置に貫通孔が形成された絶縁フィルムを用意した。
銅張積層板の銅箔をエッチングして回路を形成し、基板上に回路を形成した回路基板本体を得た。回路基板本体と絶縁フィルムとを熱プレスによって圧着して、プリント配線板を得た。
【0091】
[実施例1]
キャリアフィルムの離型剤層の表面に絶縁樹脂層形成用塗料を塗布し、60℃で2分間加熱し、塗料を乾燥、半硬化させて、絶縁樹脂層(厚さ:10μm)を形成した。
絶縁樹脂層の表面に、電子ビーム蒸着法にて銅を物理的に蒸着させ、金属薄膜層(蒸着膜、厚さ:70nm)を形成した。
熱硬化性導電性接着剤組成物として、熱硬化性接着剤(エポキシ樹脂(DIC社製、EXA-4816)の100質量部と硬化剤(味の素ファインテクノ社製、PN-23)の20質量部とを混合してなる潜在硬化性エポキシ樹脂)及び導電性粒子(平均粒子径B:5.02μmの銅粒子)の6質量部を、溶剤(メチルエチルケトン)の200質量部に溶解又は分散させたものを用意した。
金属薄膜層の表面に熱硬化性導電性接着剤組成物を、ダイコーターを用いて塗布し、溶剤を揮発させてBステージ化することによって、異方導電性接着剤層(接着剤の厚さA:3μm、銅粒子割合C:5質量%)を形成し、電磁波シールドフィルムを得た。
異方導電性接着剤表面の負荷面積率Smr(50%)を測定し、表1に示す。
絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板に、離型フィルムを剥離した電磁波シールドフィルムを重ねて仮接着した。電磁波シールドフィルムが仮接着されたフレキシブルプリント配線板を、プレス機によって180℃3MPa150秒の条件で本圧着し、高温槽(楠本化成社製、HT210)を用い、温度:160℃で1時間加熱することによって、異方導電性接着剤層を本硬化させ、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。
仮接着性、本接着性及び接続抵抗を上述した方法及び基準によって評価した。
接着剤の厚さ(厚さA)、銅粒子の平均粒子径(平均粒子径B)、異方導電性接着剤層中の銅粒子の割合(割合C)及びSmr(50%)の数値、並びに、仮接着性、本接着性及び接続抵抗の評価を表1に示す。
【0092】
[実施例2~4、比較例1~2]
表1に示すように、接着剤の厚さ(厚さA)、銅粒子の平均粒子径(平均粒子径B)及び異方導電性接着剤層中の銅粒子の割合(割合C)うちの1つ以上を変更した以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルム及び電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。
仮接着性、本接着性、接続抵抗を上述した方法及び基準によって評価した。
接着剤の厚さ(厚さA)、銅粒子の平均粒子径(平均粒子径B)、異方導電性接着剤層中の銅粒子の割合(割合C)及びSmr(50%)の数値、並びに、仮接着性、本接着性及び接続抵抗の評価を表1に示す。
【0093】
【0094】
[結果の説明]
導電性接着剤層の被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が25~98%の範囲内である実施例1~4は、範囲外である比較例1、2と比べて、仮接着性、本接着性及び接続抵抗がいずれも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の電磁波シールドフィルムは、スマートフォン、携帯電話、光モジュール、デジタルカメラ、ゲーム機、ノートパソコン、医療器具等の電子機器用のプリント配線板における、電磁波シールド用部材として有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 電磁波シールドフィルム
2 回路基板
3 プリント配線板
10 絶縁樹脂層
20 シールド層
30 導電性接着剤層
40 絶縁フィルム
50 回路基板本体
52 基板
54 回路