(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】船舶上で互いの上に積み重ねられた2つのコンテナを接続するための結合部品
(51)【国際特許分類】
B63B 25/00 20060101AFI20241129BHJP
B65D 90/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B63B25/00 101A
B63B25/00 101K
B65D90/00 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020001119
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】10 2019 100 844.1
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505063304
【氏名又は名称】セク シップエクイップメント センター ブレーメン ゲーエムベーハー アンド ツェーオー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】SEC Ship’s Equipment Centre Bremen GmbH
【住所又は居所原語表記】Speicherhof 5, 28217 Bremen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】ベデアーク クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ティーレォ ヴォルフガング
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/051781(WO,A1)
【文献】特表2008-510664(JP,A)
【文献】特表2005-536413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0203287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/00
B65D 88/12
B65D 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶上で一方の上に他方が積まれることにより積み重ねられた2つのコンテナを接続するための結合部品(10)であって、
上側コンテナの下側角部の取付け具(12)内に挿入可能かつ事前固定可能な第1の結合突出部(11)、
結合状態において、下側コンテナの上側角部の取付け具内に係合する第2の結合突出部(13)、
前記結合状態において、前記上側コンテナの前記下側角部の取付け具(12)にある内側リムの上に載る前記第1の結合突出部(11)の固定ヘッド(18)の支圧面(20)、および
前記結合部品(10)が、前記上側コンテナの前記下側角部の取付け具(12)内に特定の向きでのみ挿入可能となるような前記第1の結合突出部(11)のスペーサ(27)、を備え、
前記スペーサ(27)が支圧面(28)を備え、前記支圧面(28)が前記第1の結合突出部(11)の前記支圧面(20)と面一であり、前記結合状態において、前記上側コンテナの前記下側角部の取付け具(12)にある前記内側リムの上に載り、
長穴(16)の長手方向における
固定ヘッド(18)の長さとスペーサ(27)の長さの和である全長(L)が、前記下側角部の取付け具(12)の前記長穴(16)の
直線をなす縁の長さ(A)よりも大きく、
前記長穴(16)の長手方向と前記長穴(16)のうち直線をなす縁とは、同じ方向に伸びており、
前記結合状態において、前記スペーサ(27)は、前記下側角部の取付け具(12)内にある長穴(16)の長手方向へ、前記固定ヘッド(18)から
前記下側角部の取付け具(12)の隅に向かって突出しており、
前記スペーサ(27)に近傍する
前記下側角部の取付け具(12)の側壁(21)側の側面(29)および
前記長穴(16)側の側面(30)が、前記スペーサ(27)の突出につれて、くさび形の形態で互いに近寄ることを特徴とする結合部品。
【請求項2】
止め板(14)が前記第1の結合突出部
(11)の軸(15)に連結され、前記止め板(14)の上面から前記第1の結合突出部(11)の
固定ヘッド(18)の支圧面(20)へ測定した前記軸
(15)の長さ(D)が、前記下側角部の取付け具(12)の内側に伸び前記長穴(16)を形成する板(17)の厚さ(C)と同じ長
さとすることを特徴とする
、請求項1に記載の結合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上側コンテナの下側角部の取付け具内に、挿入可能かつ事前固定可能な第1の結合突出部、結合状態において下側コンテナの上側角部の取付け具内に係合する第2の結合突出部、結合状態において、上側コンテナの下側角部の取付け具にある内側リムの上に載る第1の結合突出部の支圧面、および結合部品が、上側コンテナの下側角部の取付け具内に特定の向きでのみ挿入可能となるような第1の結合突出部のスペーサを備える、船舶上で互いの上に積み重ねられた2つのコンテナを接続するための結合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
このような結合部品は、本出願人の欧州特許第1784348(B1)号から知られている。
【0003】
このような結合部品は、船舶の甲板上(ハッチカバー上)でコンテナスタックとして輸送されるコンテナを、相互に接続する役割を果たす。この過程において、最下段のコンテナは、そして、時にはラッシングブリッジによってより高い段のコンテナも、ラッシングロッドを用いて補助的に固定される。しかし多くの場合、結合部品が、より高い段のコンテナを、海上輸送中に遺失してしまうことから守るための唯一の手段である。
【0004】
コンテナ積み込み(荷積み)の間、まず最初に、岸壁上の港湾労働者が、それぞれの結合部品を、その第1(上側)の結合突出部を用いて、荷積みされるコンテナの4つの下側角部の取付け具内に挿入し、それらをそこへ事前固定する。次に、コンテナはクレーン(コンテナブリッジ)により船舶の甲板上へ持ち上げられ、そこに既に積み込まれているコンテナの上に置かれる。この過程において、第2(下側)の結合突出部が、既に積み込まれたコンテナの4つの上側角部の取付け具内へ入り込む。この時点ではコンテナが積み重ねられている状態で、第2の結合突出部が、既に積み込まれているコンテナ、この時点では下側であるコンテナの上側角部の取付け具内に係合し、このようにして、新たに積み込まれた、この時点では上側であるコンテナが、海上輸送中に遺失してしまうことから守られる。本開示の範囲において、この状態を結合状態と呼ぶこととする。
【0005】
冒頭に言及した欧州特許第1784348(B1)号は、いわゆる完全自動ツイストロック(FAT)に関する。特にこの種の結合部品では、結合部品が港湾労働者によって、上側コンテナの下側角部の取付け具内に、常に特定の向きで挿入され、事前固定されることが重要であり、というのは、そうしないと陸揚げ(荷降ろし)中に、コンテナを再び、互いから取り外すことができなくなる恐れがあるからである。この目的のために、欧州特許第1784348(B1)号では、結合部品が間違った向きに挿入され事前固定されることを防止するスペーサが提案されている。
【0006】
結合部品は、結合状態において、角部の取付け具のリムをC形の形態で取り囲む。したがって、大波によって引き起こされるコンテナ吊り上げ力による結合部品に対する引張り力は、結合部品に弾性曲げをもたらす。さらには、コンテナの角部の取付け具も、弾性的に変形する。特に高い力の場合、これらの2つの弾性変形の合計によって、結合部品が角部の取付け具から外れてしまう(いわゆる取り外し効果)恐れがあり、最悪の結果、コンテナを遺失するか、船員が事故に遭うことさえある。そのため、いわゆる船級協会は、特定の結合部品に対して、専門家の間では引き抜き力と呼ばれる最大の許容引張り力に限度を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このことから始まって、本発明により解決しようとする問題は、取り外し効果が減少し、その結果、引き抜き力を増加できるような、冒頭に言及した種類の結合部品をさらに開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題の解決のため、本発明による結合部品は、スペーサが支圧面を備え、その支圧面が第1の結合突出部の支圧面と位置合わせされ、かつ結合状態において、やはり上側コンテナの下側角部の取付け具にある内側リムの上に載ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の結合突出部の支圧面は、スペーサの支圧面によって、それ相当に大きくなる。2つの支圧面は、第1の結合突出部に連結した支圧面を、角部の取付け具の内側リムの上に形成する。よって、同一の引張り力での、上側コンテナの下側角部の取付け具のリムの上における圧力は減少する。さらには、この圧力は角部の取付け具の内側壁の近くにも作用し、これにより、てこの腕(lever arm)が短くなる。したがって、角部の取付け具のリムの変形が、より少なくなる。このようにして取り外し効果を減らすことができ、それ故に引き抜き力を増加することができる。このことにより、所定の積荷での、結合部品の安全余裕(safety buffer)が増加する。反対に、同一の安全余裕で、積荷を増加できる可能性がある。さらには、変形がより少ないことにより、コンテナ角部内の結合部品の鉛直方向の遊びも小さくなり、これも良い影響を及ぼす。同時に、それでもやはり、角部の取付け具内にうまく挿入かつ事前固定できることが、試作品で意外にも明らかになった。
【0011】
上側結合突出部の、上側コンテナの下側角部の取付け具内への入り込みを容易にする、または、さらに耐荷重性を改善するといった、本発明による結合部品のさらに発展的な実施形態が、従属請求項の主題である。
【0012】
以下に、本発明について、図面に例示した実施形態で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】上側コンテナの下側角部の取付け具内に事前固定された、本発明の特徴を有する結合部品の側面図である。
【
図4】
図1に準ずる結合部品内への、力の導入の概略図である。
【
図5】
図1に準ずる結合部品内への、荷重下での、力の導入の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図は、船舶上で互いの上に積み重ねられた2つのコンテナを、角部の取付け具において接続するための、結合部品10、つまり具体的には、いわゆる完全自動ツイストロック(FAT)を例示している。
【0015】
結合部品10は、岸壁上で、詳細には例示していない上側コンテナの下側角部の取付け具12内に港湾労働者によって挿入される、第1の上側結合突出部11を備える。この目的のため、コンテナはクレーンによって吊り上げられる。その後、港湾労働者は、それぞれの結合部品10の上側結合突出部11を、それぞれの4つの角部の取付け具12内に挿入する。次に、コンテナはクレーンにより船舶上に持ち上げられ、既にそこに積み込まれたコンテナ(下側コンテナ)の上に置かれる。この過程において、第2の下側結合突出部13が、下側コンテナの上側角部の取付け具内へ入り込み、この角部の取付け具と完全に自動的に係合状態となる。コンテナ陸揚げ中に、上側コンテナがクレーンによって吊り上げられた際、下側結合突出部13は、下側コンテナの上側角部の取付け具から、また完全に自動的に外れる。それにもかかわらず、結合部品10は、海上輸送中の吊り上げや遺失からコンテナを確実に守る。このことは、例えば、欧州特許第1534612(B1)号、冒頭に言及した欧州特許第1784348(B1)号、または欧州特許第2892828(B1)号に詳細に記述されている。最後に言及した欧州特許第2892828(B1)号は、本発明の結合部品10の下側結合突出部13に相当する下側結合突出部を例示している。
【0016】
本発明の場合、上側結合突出部11と下側結合突出部13の間に止め板14が設けられており、この止め板は、コンテナ角部の取付け具12が互いの上に直接置かれる場合は、例示された形の代替として、単にコンテナ角部の取付け具12の長穴に面取りで形成された溝内に係合するビード(bead)形を有しても良い。
【0017】
止め板14から始まって、上側結合突出部11は軸15を備え、上側結合突出部11は、軸15によって角部の取付け具12の長穴16を通って伸びる。止め板14の上面から測定した軸15の長さDは、長穴16が配置された下側板17の厚さCに適合する。通常、軸15の長さDは、板17の厚さCと同じか、わずかに長い(
図2)。長さDは、厚さCと比べて長すぎないようにすべきであり、というのは、長すぎると結合部品10の鉛直方向の遊びが増えることにもなるからである。理想的には、少なくとも通常の製造公差内で、D=Cである。この場合、角部の取付け具12内での上側結合突出部11の鉛直方向の遊びは、「ゼロ」に等しくなる(D-C=0)。
【0018】
軸15には、止め板14と反対の側(上側)に固定ヘッド18が連結しており、前記固定ヘッドは、側方、すなわち下側結合突出部で突出する固定ノーズ19と同じ側に突出している。したがって、コンテナが互いの上に積み重ねられた(結合状態にある)場合、結合部品10は、その固定ヘッド18および固定ノーズ19によって、C形の形態で角部の取付け具を取り囲む。このことが、
図4および
図5に、ハッチングされたエリアによって示されている。固定ヘッド18の下側支圧面20は、板17の上に載る。固定ヘッド18は、軸15に対して幅Bで突出し、幅Bは、長穴16の長手方向の縁から長穴16に隣接した側壁21までの距離B1と合致している。言い換えれば、幅Bは、支圧面20の下に位置する、長穴16の周りにある板17のリムの幅B1と合致している。具体的に、B=B1か、わずかに小さい。一般に、BおよびB1の寸法は、長穴16に対する軸15の横方向の遊びが、固定ヘッド18と側壁21の間の遊びにおおむね相当するようにするべきである。理想的には、両方の遊びは等しい。
【0019】
さらには、仮想円22が
図3にプロットされており、その円の直径Eの中心が、長穴16の中心(
短手軸線23および
長手軸線24の交差点)となっている。長穴のアーチ状の表面25も、
図3に明確に示されているように、この円22の輪郭をたどっている。したがって、直径Eは長穴16の最大長に相当している。
【0020】
図3でも認識されるように、固定ヘッド18は、
長手軸線24から始まってEの半径の長さに相当する寸法Fだけ突出している。この場合、固定ヘッド18の側面の縁26は、仮想円22の接線をなしている。あるいは、FはEの半径より大きくてもよい。したがって、F≧E/2があてはまる。
【0021】
記述した結合部品10はさらに、結合部品10が逆に組み込まれることを防止するスペーサ27を備える。このスペーサは、冒頭に言及した欧州特許第1784348(B1)号に詳細に記述されている。しかし、本発明のスペーサ27は、実質的な態様において、この従来技術と異なっている。
【0022】
本発明のスペーサ27は、固定ヘッド18の支圧面20と位置合わせされた、支圧面28を備える。したがって、スペーサ27の支圧面28も、角部の取付け具12の板17の上に載る。言い換えれば、支圧面20と28が、板17の上に、固定ヘッド18の一様な支圧面を形成する。言い換えれば、スペーサによって減少した固定ヘッド18の長さAが、固定ヘッドの全長Lに拡大する。全長Lは、長穴の横の直線の縁の長さ(本件ではAでもある)よりも大きくなり、さらには本件ではEよりも大きくなる。
【0023】
例示した実施形態では、
図3からわかるように、スペーサは、本来の固定ヘッド18から離れスペーサの固定されていない前方端部へと、くさび形の形態で先細りになる。具体的には、スペーサ27の壁側の側面29(外側にあり、側壁21に面している)は、側壁21(側壁21は長穴16の長手方向の長手軸線24と平行に延在する)に対して角度Zで配置される。
長穴側の側面30(側壁21と反対方向に面している)は、長穴16の長手方向の長手軸線24に対して角度Yで延在する。図面からわかるように、壁側の側面29、および
長穴側の側面30は、くさび形の形態で互いに近寄る。角度YおよびZは等しいか、さもなければ互いに異なってよい。角度YおよびZは、それぞれ0度と30度の間の範囲に及ぶ。好ましくは、これらは10度である。
【0024】
スペーサ27の上面31も、本来の固定ヘッド18から離れ固定されていない端部へと、傾斜路様の形態で、すなわち角度W(
図1)で傾斜している。この角度Wもまた、0度と30度の間の範囲に及ぶことができ、ここでも10度が特に好ましい。
【0025】
最後に、固定ヘッド18とスペーサ27の連結した上面32は、外の方へ(側壁21に向かって)傾斜路様の形態で、すなわち角度X(
図2)で傾斜している。この角度Xは30度と60度の間の範囲に及び、45度が特に好ましい。
【0026】
角度YおよびZも、上側結合突出部11が長穴16内へ、より容易に入り込むことに寄与する。角度WおよびXは、実質的に重量を減らす役割を果たす。
【0027】
図1でも認識されるように、軸15は止め板に隣接して、それ自体が軸15よりも格段に長い軸段差33を備える。上から見て、この軸段差33は、長穴16の輪郭に相当する輪郭を備え、したがって、上側結合突出部11を角部の取付け具12内に挿入することを妨害することなく、特に長穴16の長手方向(
長手軸線24)で見た、結合部品10の長穴16に対する遊びを減らす。
【符号の説明】
【0028】
10 結合部品
11 結合突出部
12 角部の取付け具
13 結合突出部
14 止め板
15 軸
16 長穴
17 板
18 固定ヘッド
19 固定ノーズ
20 支圧面
21 側壁
22 円
23 短手軸線
24 長手軸線
25 表面
26 縁
27 スペーサ
28 支圧面
29 壁側の側面
30 長孔側の側面
31 上面
32 上面
33 軸段差
A 長穴16の縁長さ
B 幅
B1 距離
C 板厚
D 軸長さ
E 直径
F 寸法
L 全長
W 角度
X 角度
Y 角度
Z 角度