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特許7595415半導体装置、半導体装置の製造方法、半導体装置の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法、半導体装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241129BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020010742
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021118262
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-02-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】名古 肇
(72)【発明者】
【氏名】田島 純平
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 年輝
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】恩田 春香
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-85006(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118433(WO,A1)
【文献】特開2016-22557(JP,A)
【文献】特開2018-117064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/338
H01L29/778
H01L29/812
H01L21/336
H01L29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む第1半導体層と、
Alx2In1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含む第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられAlx3Ga1-x3N(0<x3≦1、x2<x3)を含む中間領域と、
を備え、
前記第2半導体層は第1面及び第2面を含み、
前記第1半導体層から前記第2半導体層への第1方向において、前記第2面は、前記中間領域と前記第1面との間にあり、
前記第2半導体層は、前記第1面に設けられた複数の第1ピットを含み、
前記複数の第1ピットの幅は、200nm以上であり、
前記複数の第1ピットの前記第1面における密度は、5×10/cm以上1×10/cm以下であり、
前記複数の第1ピットの少なくとも1つの底は、前記第1半導体層にあり、
前記第1半導体層の、前記第2半導体層側の部分に、2次元電子ガスが形成される、半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体層は、GaNを含み、
前記第2半導体層は、InAlNを含み、
前記中間領域は、AlNを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2半導体層におけるInの組成比は、0.15以上0.2以下である、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記中間領域の前記第1方向に沿う厚さは、0.5nm以上1.5nm以下である、請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
基板をさらに備え、
前記基板と前記第2半導体層との間に前記中間領域があり、
前記基板と前記中間領域との間に前記第1半導体層がある、請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板は、シリコンを含む、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
AlNを含む第4半導体層と、
AlGaNを含む第5半導体層と、
をさらに備え、
前記基板と前記第1半導体層との間に前記第5半導体層があり、
前記基板と前記第5半導体層との間に前記第4半導体層がある、請求項5または6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記中間領域は、島状または網状である、請求項1~のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
絶縁部材と、
をさらに備え、
前記第1電極から前記第2電極への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第3電極の前記第2方向における位置は、前記第1電極の前記第2方向における位置と、前記第2電極の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第1半導体層は、第1部分領域、第2部分領域、第3部分領域、第4部分領域、及び、第5部分領域を含み、
前記第1部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第2部分領域から前記第2電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第3部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第2部分領域との間にあり、前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第4部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第3部分領域との間にあり、
前記第5部分領域は、前記第2方向において前記第3部分領域と前記第2部分領域との間にあり、
前記第2半導体層は、第6部分領域及び第7部分領域を含み、
前記第4部分領域から前記第6部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第5部分領域から前記第7部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記絶縁部材は、前記第1方向において前記第3部分領域と前記第3電極との間に設けられた第1絶縁領域を含む、請求項1~のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置、半導体装置の製造方法、半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トランジスタなどの半導体装置において、特性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5758880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特性を向上できる半導体装置、半導体装置の製造方法、半導体装置の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、半導体装置は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む第1半導体層と、Alx2In1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含む第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられAlx3Ga1-x3N(0<x3≦1、x2<x3)を含む中間領域と、を含む。前記第2半導体層は第1面及び第2面を含む。前記第1半導体層から前記第2半導体層への第1方向において、前記第2面は、前記中間領域と前記第1面との間にある。前記第2半導体層は、前記第1面に設けられた複数の第1ピットを含む。前記複数の第1ピットの幅は、200nm以上である。前記複数の第1ピットの前記第1面における密度は、5×10/cm以上1×10/cm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図2図2は、半導体装置を例示する模式的断面図である。
図3図3は、半導体装置を例示する模式的断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図6図6は、半導体装置の試料を例示する模式的断面図である。
図7図7は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図8図8は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図9図9は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図10図10は、半導体装置を例示する模式的断面図である。
図11図11は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図12図12は、実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図13図13は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図14図14は、第3実施形態に係る半導体装置の製造装置を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る半導体装置110は、第1半導体層10、第2半導体層20、及び、中間領域30を含む。この例では、基板18s、第4半導体層14、及び、第5半導体層15が設けられる。基板18s、第4半導体層14、及び、第5半導体層15は、半導体装置110に含まれても良い。
【0009】
第1半導体層10は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。第1半導体層10は、例えば、GaNを含む。第1半導体層10におけるAlの組成比は、例えば、0以上0.05以下である。
【0010】
第2半導体層20は、Alx2In1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含む。第2半導体層20は、AInNを含む。第2半導体層20におけるAlの組成比は、例えば、0.05を越え、0.4以下である。
【0011】
中間領域30は、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられる。中間領域30は、Alx3Ga1-x3N(0<x3≦1、x2<x3)を含む。中間領域30は、例えばAlNを含む。中間領域30におけるAlの組成比は、例えば、0.5以上である。
【0012】
例えば、基板18sと第2半導体層20との間に、中間領域30がある。基板18sと中間領域30との間に、第1半導体層10がある。基板18sは、例えば、シリコンを含む。1つの例において、基板18sは、シリコン基板である。
【0013】
第4半導体層14は、AlNを含む。第5半導体層15は、AlGaNを含む。基板18sと第1半導体層10との間に、第5半導体層15がある。基板18sと第5半導体層15との間に、第4半導体層14がある。
【0014】
例えば、基板18sの上に、第4半導体層14が設けられる。第4半導体層14の上に、第5半導体層15が設けられる。第5半導体層15の上に、第1半導体層10が設けられる。第1半導体層10の上に、中間領域30が設けられる。中間領域30の上に、第2半導体層20が設けられる。
【0015】
例えば、第1半導体層10の、第2半導体層20の側の部分に、キャリア領域(例えば、2次元電子ガス)が形成される。このような半導体層を用いることで、高い移動度が得られる。半導体装置110は、例えば、HEMT(High Electron Mobility Transistor)となる。
【0016】
第1半導体層10から第2半導体層20への方向を第1方向とする。第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0017】
第1半導体層10及び第2半導体層20は、X-Y平面に沿って広がる層状である。
【0018】
図1に示すように、第2半導体層20は、第1面20a及び第2面20bを含む。第1半導体層10から第2半導体層20への第1方向(Z軸方向)において、第2面20bは、中間領域30と第1面20aとの間にある。第1面20aは、例えば、上面である。第2面20bは、下面である。
【0019】
図1に示すように、第2半導体層20は、第1ピット21を含む。第1ピット21は、第1面20aに設けられる。第1面20aに複数の第1ピット21が設けられる。図1では、複数の第1ピット21の1つが例示されている。
【0020】
複数の第1ピット21の幅(第1幅w1)は、200nm以上である。第1幅w1は、第1方向(Z軸方向)と交差する1つの方向に沿う、第1ピット21の長さに対応する。後述するように、第1面20aに、幅が200nm以下のピットが設けられても良い。第1面20aに設けられる複数のピットのうちで、幅が200nm以上のピットが第1ピット21に対応する。例えば、複数の第1ピット21の幅の最小値は、200nmである。
【0021】
図1に示すように、第1ピット21の開口部の幅は、Z軸方向に沿って変化しても良い。第1幅w1は、第1面20aの高さにおける開口部の幅に対応する。
【0022】
実施形態においては、中間領域30が設けられる。これにより、例えば高い移動度が得られる。特性を向上できる半導体装置が提供できる。
【0023】
以下、半導体装置におけるピットの例について説明する。
図2及び図3は、半導体装置を例示する模式的断面図である。
図2及び図3は、第2半導体層20の表面(第1面20a)のAFM像である。図2は、半導体装置110に対応する。図3は、参考例の半導体装置119に対応する。既に説明したように、半導体装置110においては、第1半導体層10と第2半導体層20との間に中間領域30(例えばAlN)が設けられる。半導体装置119においては、中間領域30が設けられず、第2半導体層20は、第1半導体層10と接する。
【0024】
図2に示すように、半導体装置110においては、第1面20aに複数のピット20Pがある。複数のピット20Pの少なくとも1つが、第1ピット21に対応する。図2に示すように、複数のピット20Pの一部が、幅が小さいピット(後述する第2ピット22など)を含んでも良い。
【0025】
図3に示すように、参考例の半導体装置119においては、第1面20aに複数のピット20Pが無い。
【0026】
半導体装置110及び半導体装置119の特性が測定される。半導体装置110において、移動度は1179cm/Vsである。半導体装置119において、移動度は392cm/Vsである。このように、ピットを有する半導体装置110においては、高い移動度が得られることが分かった。
【0027】
例えば、GaNなどの第1半導体層10とAlInNの第2半導体層20と、を組み合わせた構成において、第2半導体層20におけるAlの組成比を調整することで、第2半導体層20におけるa軸の格子長を第1半導体層10におけるa軸の格子長と整合させることができる。これにより、半導体層における歪みを0または小さくすることができる。これにより、例えば、格子歪みがある場合に比べて、自発分極効果が大きくなる。例えば、格子歪みがある場合比べて、障壁効果を高くすることができる。これにより、高い濃度のキャリア領域(2次元電子ガス)が得られる。
【0028】
しかしながら、上記の参考例の半導体装置119のように、中間領域30が設けられない場合は、移動度は小さいことが分かった。これは、Inの濃度のばらつきが特性に悪影響を与えることが原因と考えられる。例えば、Inを含む窒化物半導体においては、Inの濃度が不均一になりやすい。特に、第2半導体層20の成長温度が低い場合には、Inの濃度の不均一性が大きくなる。第2半導体層20の高濃度のInが第1半導体層10に拡散すると、キャリア領域が局所的に消失すると考えられる。これにより、半導体装置119においては、高い移動度が得られることが困難である。
【0029】
実施形態においては、第1半導体層10と第2半導体層20との間に中間領域30が設けられる。これにより、上記のようなInの悪影響が抑制されると考えられる。これにより、中間領域30が設けられることで高い移動度が得られると考えられる。
【0030】
半導体装置110において、第1半導体層10は、GaNを含み、第2半導体層20は、AInNを含み、中間領域30は、AlNを含む。中間領域30はAlNを含む場合、Inの濃度の影響が生じにくいため、キャリア領域の局所的な消失がより効果的に抑制できると考えられる。実施形態において、例えば、第2半導体層20におけるInの組成比は、0.15以上0.2以下である。例えば、第2半導体層20におけるInの組成比は、0.17以上0.18以下でも良い。格子長がより整合する。
【0031】
中間領域30の第1方向(Z軸方向)に沿う厚さt3(図1参照)は、0.5nm以上1.5nm以下である。第2半導体層20の第1方向に沿う厚さt2(図1参照)は、例えば、3nm以上20nm以下である。第1半導体層10の第1方向に沿う厚さt1は、例えば、1μm以上3μm以下である。
【0032】
半導体装置110の構成において、幅が200nm以上の第1ピット21が適切な濃度で設けられることで、高い移動度が得られる。以下、ピット20Pの幅(サイズ)の例について説明する。
【0033】
図4及び図5は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図2及び図1に示すように、複数の第1ピット21の幅(第1幅w1)は、200nm以上である。第1幅w1は、第1ピット21のX-Y平面に沿う長さの最大値に対応する。
【0034】
図2に示すように、第1面20aには、幅が小さいピット20Pも存在する。ピット20Pは、例えば、複数の第2ピット22を含む。ピット20Pは、例えば、複数の第3ピット23を含んでも良い。
【0035】
図4に示すように、第2半導体層20は、第1面20aに設けられた複数の第2ピット22を含む。複数の第2ピット22の幅(第2幅w2)は、60nm以上120nm以下である。第2幅w2は、第1方向(Z軸方向)と交差する1つの方向に沿う、第2ピット22の長さ(最大値)に対応する。
【0036】
図2及び図5に示すように、第2半導体層20は、第1面20aに設けられた複数の第3ピット23を含んでも良い、複数の第3ピット23の幅(第3幅w3)は、60nm以上200nm未満である。第3幅w3は、第1方向(Z軸方向)と交差する1つの方向に沿う、第3ピット23の長さ(最大値)に対応する。複数の第3ピット23の一部が、複数の第2ピット22に対応する。
【0037】
図6は、半導体装置の試料を例示する模式的断面図である。
図6に示すように、試料111において、電極として、Ti/Al/Ni/Auの積層膜が設けられる。これにより、移動度などが評価される。試料111の作成条件が変更される。種々の幅及び密度のピット20Pが生じる。
【0038】
図7は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図7は、上記の試料111の特性の評価結果を例示している。図7には、上記の参考例の半導体装置119の特性も例示されている。図7の横軸は、幅が200nm以上である第1ピット21の密度Dp1である。縦軸は、移動度μである。
【0039】
図7に示すように、参考例の半導体装置119において、第1ピット21の密度Dp1は実質的に0である。半導体装置119において、移動度μは低い。
【0040】
図7に示すように、試料111において、密度Dp1が、5×10/cm以上1×10/cm以下のときに高い移動度μが得られる。
【0041】
密度Dp1が過度に低いときは、第1半導体層10と中間領域30とにおける格子整合差による応力蓄積に伴い、中間領域30において欠陥が導入される考えられる。密度Dp1が過度に高いときは、力の蓄積は回避されるものの、不純物の導入、または、第2半導体層20の成分の拡散などが生じると考えられる。実施形態においては、密度Dp1は5×10/cm以上1×10/cm以下であることが好ましい。これにより、高い移動度μが得られる。
【0042】
適度な密度で、比較的大きい幅の第1ピット21が設けられることで、適正な結晶性を維持した中間領域30の形成が可能となる。これにより、第1半導体層10のキャリア領域との良好な界面形成が可能となると考えられる。
【0043】
図8は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図8は、上記の試料111の特性の評価結果を例示している。図の横軸は、幅が200nm以下の第2ピット22の密度Dp2である。縦軸は、移動度μである。
【0044】
図8に示すように、幅が小さい第2ピット22の密度Dp2が変化しても、移動度μに相関は見られない。
【0045】
図9は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図9は、上記の試料111の特性の評価結果を例示している。図7の横軸は、幅が80nm以上200nm未満の第3ピット23と、幅が200nm以上の第1ピット21と、の合計の密度DpTである。縦軸は、移動度μである。
【0046】
図9に示すように、種々の幅のピット20Pの密度DpTが変化しても、移動度μはあまり変化しない。
【0047】
図7図9から分かるように、移動度μには、幅が200nm以上の第1ピット21の密度Dp1が大きく関係していることが分かった。
【0048】
実施形態においては、幅が200nm以上の複数の第1ピット21の第1面20aにおける密度Dp1は、5×10/cm以上1×10/cm以下であることが好ましい。実施形態において、幅が80nm以上200nm未満の複数の第3ピット23の第1面20aにおける密度は、5×10/cm以上5×10/cm以下である。例えば、幅が60nm以上120nm以下の複数の第2ピット22の第1面20aにおける密度は、1×10/cm以上5×10/cm以下である。
【0049】
実施形態において、例えば、複数の第1ピット21の幅(第1幅w1)は、300nm以下である。幅が過度に大きいと、例えば、不純物(例えばCなど)が導入され易くなる。幅が過度に大きいと、例えば、第2半導体層20に含まれる元素の拡散などにより、特性が劣化し易くなる。
【0050】
図1に示すように、実施形態において、複数の第1ピット21の少なくとも1つの底21bは、第1半導体層10にある。
【0051】
実施形態において、例えば、中間領域30は、島状または網状でも良い。完全な膜状でない場合も、第2半導体層20から第1半導体層10への拡散(例えばInの拡散など)を抑制できると考えられる。
【0052】
図10は、半導体装置を例示する模式的断面図である。
図10は、第2半導体層20を形成する前の状態の中間領域30の状態を例示している。図10に示すように、中間領域30の上面30aにピット31が存在する。ピット31の底31bは、第1半導体層10中にある。第1半導体層10の成長中にピット31が形成される。ピット31は、中間領域30を形成した後も残る。このようなピット31を含む中間領域30の上に第2半導体層20が形成される。第2半導体層20の第1面20aに生じるピット20Pは、ピット31を起点としている。
【0053】
ピット31の第1方向(Z軸方向)に沿う深さを深さdzとする。以下、深さdzの例について説明する。
【0054】
図11は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図11の横軸は、中間領域30の形成の処理時間tmである。縦軸は、ピット31の深さdzである。ピット31の深さdzは、中間領域30の上面30aの高さを基準にした距離である。処理時間tmが長いと、中間領域30の厚さt3が厚くなる。
【0055】
図11に示すように、処理時間tmが長いと、深さdzが深くなる。このことから、中間領域30の形成中に、ピット31の底部及び側面が除去されると考えられる。中間領域30となる膜の形成と、ピット31の側壁のエッチングと、が同時に進行すると考えられる。
【0056】
例えば、深さdzが深いと、中間領域30の上に形成される第2半導体層20におけるピット20Pの幅が大きくできると考えられる。例えば、中間領域30の形成の処理時間を長くすることで、第2半導体層20におけるピット20Pの幅を大きくできる。
【0057】
図12は、実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図12に示すように、実施形態に係る半導体装置120は、第1半導体層10、第2半導体層20及び中間領域30に加えて、第1電極51、第2電極52、第3電極53及び絶縁部材61を含む。半導体装置120における、第1半導体層10、第2半導体層20及び中間領域30の構成は、半導体装置110における、第1半導体層10、第2半導体層20及び中間領域30の構成と同様で良い。以下、第1電極51、第2電極52、第3電極53及び絶縁部材61の例について説明する。
【0058】
第1電極51から第2電極52への方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する第2方向に沿う。第2方向は、例えば、X軸方向である。第3電極53の第2方向における位置は、第1電極51の第2方向における位置と、第2電極52の第2方向における位置と、の間にある。
【0059】
第1半導体層10は、第1部分領域10a、第2部分領域10b、第3部分領域10c、第4部分領域10d、及び、第5部分領域10eを含む。第1部分領域10aから第1電極51への方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。第2部分領域10bから第2電極52への方向は、第1方向に沿う。第3部分領域10cは、第2方向(例えばX軸方向)において、第1部分領域10aと第2部分領域10bとの間にある。第3部分領域10cから第3電極53への方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。
【0060】
第4部分領域10dは、第2方向(X軸方向)において、第1部分領域10aと第3部分領域10cとの間にある。第5部分領域10eは、第2方向において、第3部分領域10cと第2部分領域10bとの間にある。
【0061】
第2半導体層20は、第6部分領域20f及び第7部分領域20gを含む。第4部分領域10dから第6部分領域20fへの方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。第5部分領域10eから第7部分領域20gへの方向は、第1方向に沿う。
【0062】
絶縁部材61は、第1絶縁領域61pを含む。第1絶縁領域61pは、第1方向(Z軸方向)において、第3部分領域10cと第3電極53との間に設けられる。
【0063】
第1電極51は、例えば、ソース電極として機能する。第2電極52は、例えば、ドレイン電極として機能する。第3電極53は、例えば、ゲート電極として機能する。第1絶縁領域61pは、例えば、ゲート絶縁膜として機能する。
【0064】
半導体装置120において、高い移動度が得られる。
【0065】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図13に示すように、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む第1半導体層10の上に、Alx3Ga1-x3N(0<x3≦1、x2<x3)を含む中間領域30を形成する(ステップS110)。
【0066】
中間領域30の上に、Alx2In1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含む第2半導体層20を形成する(ステップS120)。
【0067】
中間領域30の形成は、Alを含むガスと、アンモニアを含むガスと、水素を含むガスと、を含む第1ガスを用いて中間領域30を形成することを含む。第2半導体層20の形成は、Alを含むガスと、Inを含むガスと、アンモニアを含むガスと、窒素を含むガスと、を含む第2ガスを用いて第2半導体層20を形成することを含む。
【0068】
このように、中間領域30の形成において、水素を含む第1ガスが用いられる。水素は、例えばキャリアガスである。このような第1ガスを用いることで、深く適切な幅のピット31が得られる。
【0069】
第2半導体層20の形成において、窒素を含む第2ガスが用いられる。窒素は、例えばキャリアガスである。このような第2ガスを用いることで、上記のような複数の第1ピット21を含む第2半導体層20が効率良く得られる。
【0070】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態に係る半導体装置の製造装置を例示する模式的断面図である。 図14に示すように、第3実施形態に係る半導体装置の製造装置510は、処理室525と、ステージ531と、を含む。ステージ531は、処理室525の中に設けられる。ステージ531には、処理体(ウェーハ)が置かれることが可能である。
【0071】
処理室525は、第1インレット521及び第2インレット522を含む。第1インレット521は、第1ガスg1及び第2ガスg2の少なくともいずれかを導入可能である。第1ガスg1は、Al、アンモニア及び水素を含む。第2ガスは、Al、In、アンモニア及び窒素を含む。第1ガスg1は、例えば、中間領域30の形成に用いられる。第2ガスg2は、第2半導体層20の形成に用いられる。
【0072】
第2インレット522は、第3ガスg3を導入可能である。第3ガスg3は、塩素を含む。第3ガスg3は、例えば、処理室525のクリーニングに用いられる。第3ガスg3用の第2インレット522を設け、必要なときに処理室525をクリーニングすることで、不要な残留元素を効果的に除去できる。
【0073】
図14に示すように、処理室525にドレイン523が設けられる。ドレイン523からガスが排出される。
【0074】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
【0075】
(構成1)
Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む第1半導体層と、
Alx2In1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含む第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられAlx3Ga1-x3N(0<x3≦1、x2<x3)を含む中間領域と、
を備え、
前記第2半導体層は第1面及び第2面を含み、
前記第1半導体層から前記第2半導体層への第1方向において、前記第2面は、前記中間領域と前記第1面との間にあり、
前記第2半導体層は、前記第1面に設けられた複数の第1ピットを含み、
前記複数の第1ピットの幅は、200nm以上であり、
前記複数の第1ピットの前記第1面における密度は、5×10/cm以上1×10/cm以下である、半導体装置。
【0076】
(構成2)
前記第2半導体層は、前記第1面に設けられた複数の第2ピットを含み、
前記複数の第2ピットの幅は、60nm以上120nm以下であり、
前記複数の第2ピットの前記第1面における密度は、1×10/cm以上5×10/cm以下である、構成1記載の半導体装置。
【0077】
(構成3)
前記第2半導体層は、前記第1面に設けられた複数の第3ピットを含み、
前記複数の第3ピットの幅は、80nm以上200nm未満であり、
前記複数の第3ピットの前記第1面における密度は、5×10/cm以上5×10/cm以下である、構成1記載の半導体装置。
【0078】
(構成4)
前記第1半導体層は、GaNを含み、
前記第2半導体層は、AInNを含み、
前記中間領域は、AlNを含む、構成1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0079】
(構成5)
前記第2半導体層におけるInの組成比は、0.15以上0.2以下である、構成4記載の半導体装置。
【0080】
(構成6)
前記中間領域の前記第1方向に沿う厚さは、0.5nm以上1.5nm以下である、構成1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0081】
(構成7)
前記第2半導体層の前記第1方向に沿う厚さは、3nm以上20nm以下である、構成1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0082】
(構成8)
前記第1半導体層の前記第1方向に沿う厚さは、1μm以上3μm以下である、構成1~7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0083】
(構成9)
基板をさらに備え、
前記基板と前記第2半導体層との間に前記中間領域があり、
前記基板と前記中間領域との間に前記第1半導体層がある、構成1~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0084】
(構成10)
前記基板は、シリコンを含む、構成9記載の半導体装置。
【0085】
(構成11)
AlNを含む第4半導体層と、
AlGaNを含む第5半導体層と、
をさらに備え、
前記基板と前記第1半導体層との間に前記第5半導体層があり、
前記基板と前記第5半導体層との間に前記第4半導体層がある、構成9または10に記載の半導体装置。
【0086】
(構成12)
前記複数の第1ピットの前記幅は、300nm以下である、構成1~11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0087】
(構成13)
前記複数の第1ピットの少なくとも1つの底は、前記第1半導体層にある、構成1~12のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0088】
(構成14)
前記複数の第1ピットの少なくとも1つは、前記第1半導体層中のピットを起点とする、構成1~13のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0089】
(構成15)
前記中間領域は、島状または網状である、構成1~14のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0090】
(構成16)
前記第2半導体層におけるInの組成比は、0.17以上0.18以下である、構成4記載の半導体装置。
【0091】
(構成17)
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
絶縁部材と、
をさらに備え、
前記第1電極から前記第2電極への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第3電極の前記第2方向における位置は、前記第1電極の前記第2方向における位置と、前記第2電極の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第1半導体層は、第1部分領域、第2部分領域、第3部分領域、第4部分領域、及び、第5部分領域を含み、
前記第1部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第2部分領域から前記第2電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第3部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第2部分領域との間にあり、前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第4部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第3部分領域との間にあり、
前記第5部分領域は、前記第2方向において前記第3部分領域と前記第2部分領域との間にあり、
前記第2半導体層は、第6部分領域及び第7部分領域を含み、
前記第4部分領域から前記第6部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第5部分領域から前記第7部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記絶縁部材は、前記第1方向において前記第3部分領域と前記第3電極との間に設けられた第1絶縁領域を含む、構成1~16のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0092】
(構成18)
Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む第1半導体層の上に、Alx3Ga1-x3N(0<x3≦1、x2<x3)を含む中間領域を形成し、
前記中間領域の上にAlx2In1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含む第2半導体層を形成し、
前記中間領域の形成は、Alを含むガスと、アンモニアを含むガスと、水素を含むガスと、を含む第1ガスを用いて前記中間領域を形成することを含み、
前記第2半導体層の形成は、Alを含むガスと、Inを含むガスと、アンモニアを含むガスと、窒素を含むガスと、を含む第2ガスを用いて前記第2半導体層を形成することを含む、半導体装置の製造方法。
【0093】
(構成19)
前記第2半導体層は、複数の第1ピットを含み、
前記複数の第1ピットの幅は、200nm以上であり、
前記複数の第1ピットの密度は、5×10/cm以上1×10/cm以下である、構成18記載の半導体装置の製造方法。
【0094】
(構成20)
処理室と、
前記処理室の中に設けられ処理体が置かれるステージと、
を備え、
前記処理室は、
Al、アンモニア及び水素を含む第1ガス、及び、Al、In、アンモニア及び窒素を含む第2ガスの少なくともいずれかを導入可能な第1インレットと、
塩素を含む第3ガスを導入可能な第2インレットと、
を含む、半導体装置の製造装置。
【0095】
実施形態によれば、特性を向上できる半導体装置、半導体装置の製造方法、半導体装置の製造装置を提供できる。
【0096】
実施形態において「窒化物半導体」は、BInAlGa1-x-y-zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含む。上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電形などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれる。
【0097】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置に含まれる半導体層、中間領域、電極及び絶縁部材などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0098】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0099】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置、半導体装置の製造方法、半導体装置の製造装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置、半導体装置の製造方法、半導体装置の製造装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0100】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
10…第1半導体層、 10a~10e…第1~第5部分領域、 14…第4半導体層、 15…第5半導体層、 18s…基板、 20…第2半導体層、 20P…ピット、 20a、20b…第1、第2面、 20f…第6部分領域、 20g…第7部分領域、 21…第1ピット、 21b…底、 22…第2ピット、 23…第3ピット、 30…中間領域、 30a…上面、 31…ピット、 31b…底、 51~53…第1~第3電極、 61…絶縁部材、 61p…第1絶縁領域、 μ…移動度、 110…半導体装置、 111…試料、 119、120…半導体装置、 510…製造装置、 521、522…第1、第2インレット、 523…ドレイン、 525…処理室、 531…ステージ、 Dp1、Dp2、DpT…密度、 dz…深さ、 g1~g3…第1~第3ガス、 t1~t3…厚さ、 tm…処理時間、 w1~w3…第1~第3幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14