IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7595417セリウム分およびスズ分を含む蛍光ガラスセラミックおよびガラス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】セリウム分およびスズ分を含む蛍光ガラスセラミックおよびガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/00 20060101AFI20241129BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 6/833 20200101ALI20241129BHJP
   C03C 3/095 20060101ALI20241129BHJP
   A61C 5/70 20170101ALN20241129BHJP
【FI】
C03C10/00
A61C13/00 A
A61K6/833
C03C3/095
A61C5/70
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020021187
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2020132517
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】19157303
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク ディトマー
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ヘングスト
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0083706(US,A1)
【文献】特開平11-314938(JP,A)
【文献】特表2005-519997(JP,A)
【文献】国際公開第2007/007651(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/106659(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/103942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム分およびスズ分を含むガラスまたはガラスセラミックであって、以下の成分:
成分 重量%
SiO 42.0~80.0
Al 0.1~42.0
CeOとして計算されるセリウム 0.5~10.0
SnOとして計算されるスズ 0.1~4.0
LiO以外のアルカリ金属酸化物 0~13.0
を含有し、
他のガラスまたは他のガラスセラミックの蛍光を調節するための配合成分として使用するための、ガラスまたはガラスセラミック。
【請求項2】
46.0~77.0重量%、特に59.0~76.0重量%、好ましくは64.0~75.0重量%、そして特に好ましくは70.0~74.0重量%のSiOを含有する、請求項1に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項3】
0.3~39.0重量%、特に0.5~30.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%、特に好ましくは1.5~10.0重量%、そして最も好ましくは2.0~6.0重量%のAlを含有する、請求項1または2に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項4】
0.7~7.5重量%、特に1.0~7.0重量%、好ましくは1.5~5.0重量%、そして特に好ましくは2.0~4.0重量%の、CeOとして計算されるセリウムを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項5】
0.2~3.0重量%、特に0.3~2.0重量%、そして好ましくは0.4~1.0重量%の、SnOとして計算されるスズを含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項6】
CeOとして計算されるセリウム対SnOとして計算されるスズのモル比が、10:1から1:5まで、特に5:1~1:2.5、好ましくは3:1~1:1.5、そして特に好ましくは2:1~1:1の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項7】
0~2.0重量%、特に0.05~1.5重量%、好ましくは0.1~1.0重量%、そして特に好ましくは0.3~0.7重量%の、Tbとして計算されるテルビウムを含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項8】
0~18.0重量%、特に1.0~17.0重量%、好ましくは3.0~16.0重量%、そして特に好ましくは7.5~10.0重量%のLiOを含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項9】
0~10.0重量%、特に0~5.0重量%、そして好ましくは0~1.0重量%のBaOを含有し、最も好ましくはBaOを実質的に含まない、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項10】
以下の成分:
成分 重量%
SiO 46.0~77.0
Al 0.3~39.0
CeOとして計算されるセリウム 0.7~7.5
SnOとして計算されるスズ 0.2~3.0
Tbとして計算されるテルビウム 0~2.0
LiO 0~18.0
MeIIO 0~22.0
MeIII 0~10.0
MeIV 0~10.0
Me 0~8.0
MeVI 0~6.0
フッ素 0~5.0
のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを、特定された量で含有し、ここで
MeIIOは、特にMgO、CaO、SrOおよび/またはZnOから選択され、
MeIII は、特にB、Y、La、Gaおよび/またはInから選択され、
MeIVは、特にZrOおよび/またはGeOから選択され、
Me は、特にP、V、Taおよび/またはNbから選択され、そして
MeVIは、特にWOおよび/またはMoOから選択される、
請求項1~9のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項11】
結晶化のための核を含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の、セリウム分およびスズ分を含むガラスまたはガラスセラミックを、好ましくは0.1から50重量%まで、特に0.2~40重量%、好ましくは0.5~30重量%、特に好ましくは1~20重量%、そしてより好ましくは5~10重量%の量で含有する、ガラスまたはガラスセラミック。
【請求項13】
前記ガラスおよび前記ガラスセラミックが、粉末、顆粒、ブランクまたは歯科修復物の形態で存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミック。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミックの調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、スズが、少なくとも部分的に二価の形態で、特にSnOとして使用される、プロセス。
【請求項15】
請求項1~10、12および13のいずれか1項に記載のガラスセラミックの調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、請求項1~13のいずれか1項に記載のガラスが、700から950℃までの温度での少なくとも1回の加熱処理に、特に5~120分間、好ましくは10~60分間の持続時間供される、プロセス。
【請求項16】
(a) 前記ガラスの粉末が、必要に応じてさらなる成分の添加後に、圧縮されて粉末コンパクトを形成し、そして
(b) 該粉末コンパクトが、700から950℃までの温度での加熱処理に、特に5から120分間の持続時間にわたって供されるか、
または
(a’) 前記ガラスの融解物が、特に型に注ぎ込むことによって、成形されてガラスブランクを形成し、そして
(b’) 該ガラスブランクが、700から900℃までの温度での加熱処理に、特に5から120分間の持続時間にわたって供される、
請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
他のガラスまたは他のガラスセラミックの蛍光を調節するための配合成分としての、請求項1~11のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミックの使用。
【請求項18】
前記他のガラスまたは他のガラスセラミックが、歯科材料として、特に歯科修復物の調製のための使用される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記他のガラスまたは前記他のガラスセラミックが、所望の歯科修復物、特に、インレー、アンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、前装、咬合局面または支台の形状を、圧縮、焼成または機械加工によって、特にCAD/CAMプロセスにおいて与えられる、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
歯科修復物、特に、インレー、アンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、前装、咬合局面または支台の調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、請求項1~11のいずれか1項に記載のガラスまたはガラスセラミックを含む前記他のガラスまたは前記他のガラスセラミックが、所望の歯科修復物の形状を、圧縮、焼成または機械加工によって、特にCAD/CAMプロセスにおいて与えられる、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウムおよびスズを含有し、そして特に、蛍光特性が自然の歯の蛍光特性と大いに対応している歯科修復物の製造に適している、ガラスセラミックおよびガラスに関する。本発明はまた、本発明によるガラスセラミックおよびガラスの調製のためのプロセス、ならびに歯科材料としての、特に、歯科修復物の調製のための、これらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスセラミックは、これらの良好な機械特性および光学特性に起因して、特に歯科用クラウンおよび小型ブリッジの製造のために、歯学において使用される。
【0003】
欧州特許出願公開第0916625号は、二ケイ酸リチウムを主要結晶相として含有する二ケイ酸リチウムガラスセラミックであって、それらの高い半透明性および非常に良好な機械特性に起因して、特に歯科分野において、そして主としてクラウンおよびブリッジの製造のために使用される、二ケイ酸リチウムガラスセラミックを記載する。ガラスセラミック製品の色を自然の歯の材料の色に合わせる目的で、これらのガラスセラミックは、色成分および蛍光成分を有し得、これらの成分は、好ましくは、CeO、V、Fe、MnO、TiO、Y、Er、Tb、Eu、Yb、Gd、Nd、Pr、Dy、AgO、SnOおよびTaからなる群より選択される。
【0004】
国際公開第2015/173394号は、SiOを主要結晶相として有し、そして同様に、歯科修復物の製造のために適している、ガラスセラミックを記載する。これらのガラスセラミックは、特に、Sc、Mn、Fe、Co、Pr、Nd、Tb、Er、Dy、Gd、EuおよびYbの酸化物を、着色剤または蛍光剤として含有し得る。
【0005】
W.Buchalla,「Comparative Fluorescence Spectroscopy Shows Differences in Non-Cavitated Enamel Lesions」,Caries Res.2005,39,150-156から、紫外光下では、自然の歯は、400から650nmまでの範囲の波長を有する青白色蛍光を示すことが公知である。
【0006】
Rukmaniら,J.Am.Ceram.Soc.2007,90,706-711は、VおよびMn着色剤の、Ceをドープされた二ケイ酸リチウムガラスセラミックの結晶化挙動および光学特性に対する影響を記載する。ガラスセラミックの製造のために、出発物質であるSiO、ZrO、LiCO、KCO、MgCOおよびAl(POと、CeO、VおよびMnOとの混合物が生成され、この混合物が白金るつぼ内で1500℃で融解され、冷却され、次いで、空気供給口を備える管状炉内で数回の加熱処理に供される。
【0007】
しかし、技術水準から公知であるガラスおよびガラスセラミックは、満足ではない蛍光特性を有し、そして特にUV光下では、自然の歯の材料の蛍光特性を十分に模倣し得ないことが示されている。これによって、このようなガラスセラミックから製造された歯科修復物は、特にUV光の影響下では、修復物として認識可能であるか、または抜けた歯もしくは欠損と認められる。
【0008】
改善された蛍光特性を有するガラスおよびガラスセラミックの製造のためのプロセスもまた、記載されている。
【0009】
従って、国際公開第2015/173230号は、ケイ酸リチウムガラスまたはケイ酸リチウムガラスセラミックの製造のための方法を記載し、この方法において、セリウムイオンを含有する出発ガラスの融解物が還元条件に供される。これによって、この出発ガラスに含まれるCe4+イオンは、Ce3+イオンに完全にかまたは部分的に還元され、5d→4f遷移により320から500nmまでの波長範囲の蛍光を示すはずである。SiOを主要結晶相として含むガラスセラミック、またはSiOの結晶化のための核を含有するガラスの製造のための対応する方法は、国際公開第2017/080853号から公知である。
【0010】
しかし、公知のプロセスの欠点は、Ce3+イオン対Ce4+イオンの比が、部分的にのみ制御され得ることである。さらに、この方法で製造されるガラスおよびガラスセラミックの場合、この比は、酸化条件下での加熱処理によって、例えば焼成中に、Ce4+イオンが優勢になるようにシフトし得、これによって、蛍光特性が大いに損なわれ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第0916625号
【文献】国際公開第2015/173394号
【文献】国際公開第2015/173230号
【文献】国際公開第2017/080853号
【非特許文献】
【0012】
【文献】W.Buchalla,「Comparative Fluorescence Spectroscopy Shows Differences in Non-Cavitated Enamel Lesions」,Caries Res.2005,39,150-156
【文献】Rukmaniら,J.Am.Ceram.Soc.2007,90,706-711
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
セリウム分およびスズ分を含むガラスまたはガラスセラミックであって、以下の成分:
成分 重量%
SiO 42.0~80.0
Al 0.1~42.0
CeOとして計算されるセリウム 0.5~10.0
SnOとして計算されるスズ 0.1~4.0
を含有する、セリウム分およびスズ分を含むガラスまたはガラスセラミック。
(項目2)
46.0~77.0重量%、特に59.0~76.0重量%、好ましくは64.0~75.0重量%、そして特に好ましくは70.0~74.0重量%のSiOを含有する、上記項目に記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目3)
0.3~39.0重量%、特に0.5~30.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%、特に好ましくは1.5~10.0重量%、そして最も好ましくは2.0~6.0重量%のAlを含有する、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目4)
0.7~7.5重量%、特に1.0~7.0重量%、好ましくは1.5~5.0重量%、そして特に好ましくは2.0~4.0重量%の、CeOとして計算されるセリウムを含有する、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目5)
0.2~3.0重量%、特に0.3~2.0重量%、そして好ましくは0.4~1.0重量%の、SnOとして計算されるスズを含有する、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目6)
CeOとして計算されるセリウム対SnOとして計算されるスズのモル比が、10:1から1:5まで、特に5:1~1:2.5、好ましくは3:1~1:1.5、そして特に好ましくは2:1~1:1の範囲である、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目7)
0~2.0重量%、特に0.05~1.5重量%、好ましくは0.1~1.0重量%、そして特に好ましくは0.3~0.7重量%の、Tbとして計算されるテルビウムを含有する、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目8)
0~18.0重量%、特に1.0~17.0重量%、好ましくは3.0~16.0重量%、そして特に好ましくは7.5~10.0重量%のLiOを含有する、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目9)
0~10.0重量%、特に0~5.0重量%、そして好ましくは0~1.0重量%のBaOを含有し、最も好ましくはBaOを実質的に含まない、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目10)
以下の成分:
成分 重量%
SiO 46.0~77.0
Al 0.3~39.0
CeOとして計算されるセリウム 0.7~7.5
SnOとして計算されるスズ 0.2~3.0
Tbとして計算されるテルビウム 0~2.0
LiO 0~18.0
Me O 0~13.0
MeIIO 0~22.0
MeIII 0~10.0
MeIV 0~10.0
Me 0~8.0
MeVI 0~6.0
フッ素 0~5.0
のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを、特定された量で含有し、ここで
Me Oは、特にNaO、KO、RbOおよび/またはCsOから選択され、
MeIIOは、特にMgO、CaO、SrOおよび/またはZnOから選択され、
MeIII は、特にB、Y、La、Gaおよび/またはInから選択され、
MeIVは、特にZrOおよび/またはGeOから選択され、
Me は、特にP、V、Taおよび/またはNbから選択され、そして
MeVIは、特にWOおよび/またはMoOから選択される、
上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目11)
結晶化のための核をさらに含有する、上記項目のいずれかに記載のガラス。
(項目12)
上記項目のいずれかに記載の、セリウム分およびスズ分を含むガラスまたはガラスセラミックを、好ましくは0.1から50重量%まで、特に0.2~40重量%、好ましくは0.5~30重量%、特に好ましくは1~20重量%、そしてより好ましくは5~10重量%の量で含有する、ガラスまたはガラスセラミック。
(項目13)
前記ガラスおよび前記ガラスセラミックが、粉末、顆粒、ブランクまたは歯科修復物の形態で存在する、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミック。
(項目14)
上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミックの調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、スズが、少なくとも部分的に二価の形態で、特にSnOとして使用される、プロセス。
(項目15)
上記項目のいずれかに記載のガラスセラミックの調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、上記項目のいずれかに記載のガラスが、700から950℃までの温度での少なくとも1回の加熱処理に、特に5~120分間、好ましくは10~60分間の持続時間供される、プロセス。
(項目16)
(a) 前記ガラスの粉末が、必要に応じてさらなる成分の添加後に、圧縮されて粉末コンパクトを形成し、そして
(b) 該粉末コンパクトが、700から950℃までの温度での加熱処理に、特に5から120分間の持続時間にわたって供されるか、
または
(a’) 前記ガラスの融解物が、特に型に注ぎ込むことによって、成形されてガラスブランクを形成し、そして
(b’) 該ガラスブランクが、700から900℃までの温度での加熱処理に、特に5から120分間の持続時間にわたって供される、
上記項目に記載のプロセス。
(項目17)
ガラスまたはガラスセラミックの蛍光を調節するための配合成分としての、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミックの使用。
(項目18)
歯科材料としての、特に歯科修復物の調製のための、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミックの使用。
(項目19)
前記ガラスまたは前記ガラスセラミックが、所望の歯科修復物、特に、インレー、アンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、前装、咬合局面または支台の形状を、圧縮、焼成または機械加工によって、特にCAD/CAMプロセスにおいて与えられる、上記項目のいずれかに記載の使用。
(項目20)
歯科修復物、特に、インレー、アンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、前装、咬合局面または支台の調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、上記項目のいずれかに記載のガラスまたはガラスセラミックが、所望の歯科修復物の形状を、圧縮、焼成または機械加工によって、特にCAD/CAMプロセスにおいて与えられる、プロセス。
【0014】
摘要
本発明は、セリウム分およびスズ分を含むガラスセラミックおよびガラスに関し、このガラスセラミックおよびガラスは、以下の成分:
成分 重量%
SiO 42.0~80.0
Al 0.1~42.0
CeOとして計算されるセリウム 0.5~10.0
SnOとして計算されるスズ 0.1~4.0
を含有し、蛍光特性が自然の歯の蛍光特性に大いに対応している歯科修復物の調製のために特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的は、自然の歯の材料に匹敵する蛍光を示し、そして加熱処理および酸化条件に大いに感受性が低く、従って、良好な機械特性を有するのみでなく、関連するUV範囲全体にわたる励起波長で自然の歯の材料の蛍光特性を大いに模倣することも可能である、歯科修復物を製造するのに特に適している、ガラスセラミックおよびガラスを提供することである。特に、このガラスセラミックおよびガラスはまた、他のガラスまたはガラスセラミックの蛍光特性を調節するための配合成分として適しているはずである。
【0016】
この目的は、本発明に従って、セリウム分およびスズ分を含むガラスまたはガラスセラミックによって達成され、このガラスまたはガラスセラミックは、以下の成分:
成分 重量%
SiO 42.0~80.0
Al 0.1~42.0
CeOとして計算されるセリウム 0.5~10.0
SnOとして計算されるスズ 0.1~4.0
を含有する。
【0017】
驚くべきことに、本発明によるガラスおよび本発明によるガラスセラミックは、特にUV光の作用下で、技術水準と比較して改善された蛍光特性を示し、そしてこれらの蛍光特性は、正確に再現性良く調節され得、そして加熱処理および酸化条件に対して大いに安定であることが示された。
【0018】
特定の理論に限定されないが、Ce3+/Ce4+とSn2+/Sn4+との間の平衡が、本発明によるガラスおよびガラスセラミックにおいて形成されると想定される。Ce3+イオン対Ce4+イオンの比が、これによって安定化され、そしてこの比のCe4+イオンに向かう望ましくないシフト(例えば、特に酸化条件下での加熱処理の場合)が、大いに抑制される。5d→4f遷移に起因して、Ce3+イオンは、320から500nmまでの波長範囲で蛍光を示す。このことは、自然の歯の材料の蛍光特性を模倣するために特に適している。さらに、Ce4+イオンは、ガラスおよびガラスセラミックに黄色の着色をもたらす。自然の歯の材料の蛍光特性および色特性の特に良好な模倣が、このようにして可能にされる。
【0019】
本発明によれば、ガラスおよびガラスセラミックは、46.0~77.0重量%、特に59.0~76.0重量%、好ましくは64.0~75.0重量%、そして特に好ましくは70.0~74.0重量%のSiOを含有することが好ましい。
【0020】
ガラスおよびガラスセラミックは、0.3~39.0重量%、特に0.5~30.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%、特に好ましくは1.5~10.0重量%、そして最も好ましくは2.0~6.0重量%のAlを含有することが、さらに好ましい。
【0021】
ガラスおよびガラスセラミックは、好ましくは0.7~7.5重量%、特に1.0~7.0重量%、好ましくは1.5~5.0重量%、そして特に好ましくは2.0~4.0重量%の、CeOとして計算されるセリウムを含有する。
【0022】
ガラスおよびガラスセラミックは、0.2~3.0重量%、特に0.3~2.0重量%、そして好ましくは0.4~1.0重量%の、SnOとして計算されるスズを含有することが、さらに好ましい。
【0023】
さらに、CeOとして計算されるセリウム対SnOとして計算されるスズのモル比は、10:1から1:5まで、特に5:1~1:2.5、好ましくは3:1~1:1.5、そして特に好ましくは2:1~1:1の範囲であることが好ましい。
【0024】
特定の実施形態において、ガラスおよびガラスセラミックは、テルビウムをさらに含有する。ガラスおよびガラスセラミックは、好ましくは0~2.0重量%、特に0.05~1.5重量%、好ましくは0.1~1.0重量%、そして特に好ましくは0.3~0.7重量%の、Tbとして計算されるテルビウムを含有する。本発明によれば、セリウムイオンとテルビウムイオンとの組み合わせによって、蛍光特性および色特性が、自然の歯の材料の蛍光特性および色特性を特に良好に模倣し得るガラスおよびガラスセラミックが得られ得ることが、驚くべきことに示された。技術水準においては、セリウムイオンにより誘導される蛍光の減少または消失さえもが、d元素の存在下で観察されたにもかかわらず、本発明によるガラスおよびガラスセラミックの場合、セリウムイオンにより誘導される蛍光がテルビウムイオンの存在下においても大いに維持されることは、特に驚くべきことである。
【0025】
ガラスおよびガラスセラミックは、0~18.0重量%、特に1.0~17.0重量%、好ましくは3.0~16.0重量%、そして特に好ましくは7.5~10.0重量%のLiOを含有することが、さらに好ましい。LiOは特に、出発ガラスの融解性を改善するように働く。
【0026】
ガラスおよびガラスセラミックは、さらなるアルカリ金属酸化物Me Oを、0~13.0重量%、特に1.0~7.0重量%、そして好ましくは3.0~5.0重量%の量で含有することもまた、好ましい。用語「さらなるアルカリ金属酸化物Me O」とは、LiO以外のアルカリ金属酸化物をいい、ここでこのMe Oは、特にNaO、KO、RbOおよび/またはCsOから選択され、好ましくはNaOおよび/またはKOから選択され、そして特に好ましくはKOである。特に好ましくは、ガラスおよびガラスセラミックは、以下のさらなるアルカリ金属酸化物Me Oのうちの少なくとも1つ、特に全てを、特定される量で含有する:
【0027】
成分 重量%
NaO 0~8.0
O 0~5.0
RbO 0~7.0
CsO 0~13.0。
【0028】
さらに、ガラスおよびガラスセラミックは、0~22.0重量%、特に1.0~16.0重量%、好ましくは2.0~10.0重量%、そして特に好ましくは3.0~6.0重量%の、二価元素のさらなる酸化物MeIIOを含有することが好ましい。用語「二価元素のさらなる酸化物MeIIO」とは、BaOおよびSnO以外の二価酸化物をいい、ここでこのMeIIOは、特にMgO、CaO、SrOおよび/またはZnOから選択される。特に好ましくは、ガラスおよびガラスセラミックは、以下の二価元素の酸化物MeIIOのうちの少なくとも1つ、特に全てを、特定される量で含有する:
【0029】
成分 重量%
MgO 0~13.0
CaO 0~4.0
SrO 0~3.0
ZnO 0~4.0。
【0030】
ガラスおよびガラスセラミックは、0~10.0重量%、特に0~5.0重量%、そして好ましくは0~1.0重量%のBaOを含有すること、最も好ましくはBaOを実質的に含まないことが、さらに好ましい。
【0031】
0~10.0重量%、特に0.5~4.0重量%、そして好ましくは1.0~2.5重量%の、三価元素のさらなる酸化物MeIII を含有するガラスおよびガラスセラミックがさらに好ましい。用語「三価元素のさらなる酸化物MeIII 」とは、AlおよびCe以外の三価酸化物をいい、ここでこのMeIII は、特にB、Y、La、Gaおよび/またはInから選択され、そして好ましくは、B、Yおよび/またはLaから選択される。特に好ましくは、ガラスおよびガラスセラミックは、以下の三価元素のさらなる酸化物MeIII のうちの少なくとも1つ、特に全てを、特定される量で含有する:
【0032】
成分 重量%
0~5.0
0~3.0
La 0~2.0
Ga 0~2.0
In 0~1.0。
【0033】
さらに、ガラスおよびガラスセラミックは、四価元素のさらなる酸化物MeIVを、0から10.0重量%まで、特に0.5~4.0重量%、そして好ましくは1.0~2.5重量%の量で含有し得る。用語「四価元素のさらなる酸化物MeIV」とは、SiO、CeO、SnOおよびTiO以外の四価酸化物をいい、ここでこのMeIVは、特にZrOおよび/またはGeOから選択される。特に好ましくは、ガラスおよびガラスセラミックは、以下の四価元素のさらなる酸化物MeIVのうちの少なくとも1つ、特に全てを、特定される量で含有する:
【0034】
成分 重量%
ZrO 0~8.0
GeO 0~5.0。
【0035】
ガラスおよびガラスセラミックは、0~5.0重量%、特に0~2.5重量%、そして好ましくは0~1.0重量%のTiOを含有すること、最も好ましくはTiOを実質的に含まないことがさらに好ましい。
【0036】
好ましい実施形態において、ガラスおよびガラスセラミックは、五価元素の酸化物Me を、0から8.0重量%まで、特に1.0~6.0重量%、好ましくは2.0~5.0重量%、そして特に好ましくは3.0~4.0重量%の量でさらに含有し、ここでこのMe は、特にP、V、Taおよび/またはNbから選択され、好ましくはPおよび/またはTaから選択され、そして特に好ましくはPである。Pは特に、核形成剤として働き得る。しかし、核形成剤の存在は、本発明によれば、必ずしも絶対的に必要であるわけではない。特に好ましくは、ガラスおよびガラスセラミックは、以下の五価元素のさらなる酸化物Me のうちの少なくとも1つ、特に全てを、特定される量で含有する:
【0037】
成分 重量%
0~5.0
0~6.0
Ta 0~5.0
Nb 0~5.0。
【0038】
さらに、ガラスおよびガラスセラミックは、0~6.0重量%の六価元素の酸化物MeVIを含有し得、ここでこのMeVIは、特にWOおよび/またはMoOから選択される。特に好ましくは、ガラスおよびガラスセラミックは、以下の酸化物MeVIのうちの少なくとも1つ、特に全てを、特定される量で含有する:
【0039】
成分 重量%
WO 0~6.0
MoO 0~5.0。
【0040】
さらに、ガラスおよびガラスセラミックは、さらなるf元素の酸化物、例えば、Pr、Nd、Gd、Dy、ErおよびYbの酸化物、特に、Erの酸化物を含有し得る。
さらに、ガラスおよびガラスセラミックは、0~5.0重量%、そして特に0~2.0重量%のフッ素を含有し得る。
【0041】
以下の成分のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを、特定される量で含有する、ガラスおよびガラスセラミックが、特に好ましい:
成分 重量%
SiO 46.0~77.0
Al 0.3~39.0
CeOとして計算されるセリウム 0.7~7.5
SnOとして計算されるスズ 0.2~3.0
Tbとして計算されるテルビウム 0~2.0
LiO 0~18.0
Me O 0~13.0
MeIIO 0~22.0
MeIII 0~10.0
MeIV 0~10.0
Me 0~8.0
MeVI 0~6.0
フッ素 0~5.0
ここでMe O、MeIIO、MeIII 、MeIV、Me およびMeVIは特に、上で特定された意味を有する。
【0042】
さらに特に好ましい実施形態において、ガラスおよびガラスセラミックは、以下の成分のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを含有する:
成分 重量%
SiO 46.0~77.0
Al 0.3~39.0
CeOとして計算されるセリウム 0.7~7.5
SnOとして計算されるスズ 0.2~3.0
Tbとして計算されるテルビウム 0~2.0
LiO 0~18.0
NaO 0~8.0
O 0~5.0
RbO 0~7.0
CsO 0~13.0
MgO 0~13.0
CaO 0~4.0
SrO 0~3.0
ZnO 0~4.0
BaO 0~10.0
0~5.0
0~3.0
La 0~2.0
Ga 0~2.0
In 0~1.0
ZrO 0~8.0
GeO 0~5.0
TiO 0~5.0
0~5.0
0~6.0
Ta 0~5.0
Nb 0~5.0
WO 0~6.0
MoO 0~5.0
Er 0~1.0
フッ素 0~5.0。
【0043】
本発明はまた、対応する組成を有する前駆物質に関し、これから本発明によるガラスセラミックが加熱処理によって製造できる。これらの前駆物質は、対応する組成を有するガラス(出発ガラスとも称される)、および対応する組成を有し、核を含有するガラスである。用語「対応する組成」とは、これらの前駆物質が、ガラスセラミックと同じ成分を同じ量で含有することを意味し、ここでフッ素以外の成分は、ガラスおよびガラスセラミックの場合に慣習的であるように、酸化物として計算される。
【0044】
本発明はまた、結晶化のための核を含有する、本発明によるガラスに関する。本発明によるガラスの加熱処理によって、本発明による核を含有するガラスが最初に製造され得、これが次に、さらなる加熱処理によって、本発明によるガラスセラミックに転換され得る。
【0045】
本発明はまた、本発明によるガラスまたは本発明によるガラスセラミックの調製のためのプロセスに関し、このプロセスにおいて、スズが、二価の形態で、特にSnOとして使用される。
【0046】
本発明によるガラスは特に、適切な出発物質(例えば、炭酸塩、酸化物、リン酸塩およびフッ化物)の混合物が、特に1500から1800℃までの温度で0.5~10時間融解されるような方法で、製造される。特に高い均質性を達成する目的で、得られるガラス融解物は、ガラス顆粒を形成する目的で水に注がれ得、そして得られる顆粒が次いで、再度融解され得る。
【0047】
次いで、融解物は、ガラスのブランク(いわゆる固体ガラスブランクまたはモノリシックブランク)を製造する目的で、型(例えば、鋼または黒鉛の型)に注がれ得る。通常、これらのモノリシックブランクは、例えば450~600℃で5~120分間維持されることによって、最初に緩和される。
【0048】
顆粒を生成する目的で、融解物を再度水に入れることもまた可能である。次いで、この顆粒は、粉砕および必要に応じてさらなる成分の添加後に圧縮されて、ブランク(いわゆる粉末コンパクト)を形成し得る。このガラスはまた、顆粒化の後に、最後に粉末を形成するように加工され得る。
【0049】
次いで、核を含有するガラスが、このガラスから加熱処理によって製造され得る。これは、核形成プロセスとも称される。従って、本発明はまた、核を含有するガラスの調製のためのプロセスに関し、このプロセスにおいて、ガラスは、450から600℃まで、特に500~550℃の温度での加熱処理に、特に5から120分間まで、そして好ましくは10~60分間の持続時間にわたって供される。
【0050】
本発明によるガラスセラミックは、核を含有するガラスから、加熱処理によって形成され得る。従って、本発明はまた、本発明によるガラスセラミックの調製のためのプロセスに関し、このプロセスにおいて、ガラス、特に核を含有するガラスは、700から950℃までの温度での少なくとも1回の加熱処理に、特に5~120分間、そして好ましくは10~60分間の持続時間にわたって供される。
【0051】
本発明によるガラスまたは本発明による核を含有するガラスは、少なくとも1回の加熱処理に、例えばモノリシックガラスブランクまたは粉末コンパクトの形態で、供され得る。
【0052】
本発明によるプロセスにおいて行われる少なくとも1回の加熱処理はまた、(特にモノリシックガラスブランクの)ホットプレス中に、または(特に粉末の)表面での焼成(sintering-on)中に、行われ得る。
【0053】
従って、好ましい実施形態において、本発明は、本発明によるガラスセラミックの調製のためのプロセスに関し、このプロセスにおいて、
(a) 本発明によるガラスの粉末が、必要に応じてさらなる成分(例えば、他のガラス、ガラスセラミックおよび/または圧縮剤)の添加後に、圧縮されて粉末コンパクトを形成し、そして
(b) この粉末コンパクトが、700から950℃までの温度での加熱処理に、特に5から120分間の持続時間にわたって供される。
【0054】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、本発明によるガラスセラミックの調製のためのプロセスに関し、このプロセスにおいて、
【0055】
(a’) ガラスの融解物が、特に型に注ぐことによって、成形されてガラスブランクを形成し、そして
(b’) このガラスブランクが、700から900℃までの温度での加熱処理に、特に5から120分間までの持続時間にわたって供される。
【0056】
本発明によるプロセスの両方の好ましい実施形態において、核形成が必要に応じて、工程(b)または(b’)における加熱処理の前に行われ得る。
【0057】
本発明はさらに、CIE色空間で白色がかった青色の蛍光を有する、本発明によるガラスおよび本発明によるガラスセラミックに関する。
【0058】
本発明による、セリウム分およびスズ分を含むガラスおよびガラスセラミックは、特に、他のガラスおよびガラスセラミックの蛍光特性を調節するための配合成分として適している。従って、本発明によるセリウム分およびスズ分を含むガラスまたは本発明によるセリウム分およびスズ分を含むガラスセラミックを含有する、ガラスまたはガラスセラミックは、本発明のさらなる主題を表す。本発明によるセリウム分およびスズ分を含むガラスまたは本発明によるセリウム分およびスズ分を含むガラスセラミックを、0.1から50重量%、特に0.2~40重量%、好ましくは0.5~30重量%、特に好ましくは1~20重量%、そしてより好ましくは5~10重量%の量で含有する、ガラスおよびガラスセラミックが特に好ましい。
【0059】
セリウム分およびスズ分を含む、本発明によるガラスまたは本発明によるガラスセラミックは、特に、無機-無機複合材料の成分として、または種々の他のガラスおよび/もしくはガラスセラミックと組み合わせて使用され得、ここでこれらの複合材料または組み合わせ物は、特に、歯科材料として使用され得る。特に好ましくは、これらの複合材料または組み合わせ物は、焼成されたブランクの形態で存在し得る。無機-無機複合材料および組み合わせ物の製造のための、他のガラスおよびガラスセラミックの例は、ドイツ特許出願公開第4314817号、ドイツ特許明細書4423793号(一次公報)、ドイツ特許明細書4423794号(一次公報)、ドイツ特許出願公開第4428839号、ドイツ特許出願公開第19647739号、ドイツ特許出願公開第19725552号、ドイツ特許出願公開第10031431号、欧州特許出願公開第0827941号、欧州特許出願公開第0916625号、国際公開第00/34196号、欧州特許出願公開第1505041号、欧州特許出願公開第1688398号、欧州特許出願公開第2287122号、欧州特許出願公開第2377831号、欧州特許出願公開第2407439号、国際公開第2013/053863号、国際公開第2013/053864号、国際公開第2013/053865号、国際公開第2013/053866号、国際公開第2013/053867号、国際公開第2013/053868号、国際公開第2013/164256号、国際公開第2014/170168号、国際公開第2014/170170号、国際公開第2015/067643号、国際公開第2015/155038号、国際公開第2015/173394号、国際公開第2016/120146号、国際公開第2017/032745号、および国際公開第2017/055010号に開示されている。これらのガラスおよびガラスセラミックは、シリケート、ボレート、ホスフェートまたはアルミノシリケートの群に属する。好ましいガラスおよびガラスセラミックは、SiO-Al-KOタイプ(立方晶系もしくは正方晶系の格子の結晶を有する)、SiO-B-NaOタイプ、アルカリ-シリケートタイプ、アルカリ-亜鉛-シリケートタイプ、シリコ-ホスフェートタイプおよび/またはSiO-ZrOタイプのガラスおよびガラスセラミックである。特に好ましいものは、ケイ酸リチウムガラスセラミックであり、そして特に、メタケイ酸リチウムまたは二ケイ酸リチウムを主要結晶相として含有し、そして必要に応じて、さらなる結晶相(例えば、アパタイト、透輝石、石英および/またはウォラストナイト)を含むガラスセラミック、ならびにSiOを、特に低温型石英の形態で、主要結晶相として含有するガラスセラミックである。このようなガラスまたはガラスセラミックを、本発明によるセリウム分およびスズ分を含むガラスおよび/またはガラスセラミックと混合することによって、その蛍光特性が所望のように特に調節され得る。
【0060】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラス(特に、複合材料および組み合わせ物の形態のもの)は、特に、任意の形状およびサイズの粉末、顆粒またはブランクの形態(例えば、小板状、直方体もしくは円筒などのモノリシックブランク、または未焼成、部分焼成もしくは緻密焼成された形態の粉末コンパクト)で存在する。これらの形態で、これらは容易にさらに加工されて、例えば、歯科修復物を形成し得る。しかし、これらはまた、歯科修復物(例えば、インレー、アンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、前装、咬合局面または支台)の形態でも存在し得る。
【0061】
歯科修復物(例えば、インレー、アンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、前装、咬合局面または支台)は、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラス(特に、複合材料および組み合わせ物の形態のもの)から製造され得る。従って、本発明は、歯科材料としてのこれらの使用、特に、歯科修復物の調製のためのこれらの使用に関する。ガラスセラミックまたはガラスは、所望の歯科修復物の形状を、圧縮または機械加工によって与えられることが好ましい。
【0062】
圧縮は通常、高圧下で高温で行われる。圧縮は、700から1150℃まで、そして特に700~1000℃の温度で行われることが好ましい。圧縮は、10から30barまでの圧力で行われることが、さらに好ましい。圧縮中に、使用される材料の粘性流によって、所望の形状変化が達成される。本発明によるガラスおよび本発明による核を含有するガラス、ならびに好ましくは、本発明によるガラスセラミックは、圧縮のために使用され得る。本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、任意の形状およびサイズのブランクの形態(例えば、モノリシックブランクまたは粉末コンパクトであり、例えば、未焼成、部分焼成または緻密焼成された形態)で使用され得る。
【0063】
機械加工は通常、材料除去プロセスによって、特に、ミーリングおよび/または粉砕において、行われる。機械加工は、CAD/CAMプロセスにおいて行われることが、特に好ましい。本発明によるガラス、本発明による核を含有するガラス、および本発明によるガラスセラミックは、機械加工のために使用され得る。本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、任意の形状およびサイズのブランクの形態(例えば、モノリシックブランクまたは粉末コンパクトであり、例えば、未焼成、部分焼成または緻密焼成された形態)で使用され得る。本発明によるガラスセラミックは、好ましくは、機械加工のために使用される。本発明によるガラスセラミックはまた、完全には結晶化していない形態で使用され得、これは、より低い温度での加熱処理によって生成される。これにより、より容易な機械加工という利点が与えられ、従って、機械加工のためのより簡単な装置の使用が可能になる。このような部分的に結晶化した材料の機械加工の後に、この材料は通常、さらなる結晶化をもたらすためのさらなる加熱処理に供される。
【0064】
しかし、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラス(特に、複合材料および組み合わせ物の形態のもの)はまた、例えば、セラミック、ガラスセラミックおよび金属のための、コーティング材料としても適している。従って、本発明はまた、特にセラミック、ガラスセラミックおよび金属をコーティングするための、本発明によるガラスまたは本発明によるガラスセラミックの使用に関する。
【0065】
本発明はまた、セラミック、ガラスセラミックおよび金属をコーティングするためのプロセスに関し、このプロセスにおいて、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラス(特に、複合材料および組み合わせ物の形態のもの)は、このセラミック、ガラスセラミックまたは金属に塗布され、そして少なくとも600℃の温度に曝露される。
【0066】
これは、特に表面での焼成(sintering-on)、そして好ましくは表面での圧縮(pressing-on)によって、行われ得る。表面での焼成の場合、ガラスセラミックまたはガラスが、コーティングされるべき材料(例えば、セラミック、ガラスセラミックまたは金属)に、通常の方法で、例えば粉末として塗布され、次いで焼成される。好ましい表面での圧縮の場合、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスが、例えば粉末コンパクトまたはモノリシックブランクの形態で、例えば700から1150℃まで、そして特に700~1000℃の高温で、例えば10~30barの圧力を加えながら、表面に圧縮される。これのために、欧州特許第231773号に記載される方法およびそこに開示される圧縮炉が、特に使用され得る。適切な市販の炉は、Ivoclar Vivadent AG,Liechtenstein製のProgramatタイプの炉である。
【0067】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスの上記特性に起因して、これらは、歯学における使用に特に適している。従って、本発明の主題はまた、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラス(特に、複合材料および組み合わせ物の形態のもの)の、歯科材料としての、そして特に、歯科修復物の調製のための、または歯科修復物(例えば、クラウン、ブリッジおよび支台)のためのコーティング材料としての、使用である。
【0068】
従って、本発明はまた、歯科修復物(特に、インレー、アンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、前装、咬合局面または支台)の調製のためのプロセスに関し、このプロセスにおいて、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラス(特に、複合材料および組み合わせ物の形態のもの)は、所望の歯科修復物の形状を、圧縮、焼成または機械加工によって、特にCAD/CAMプロセスにおいて与えられる。
【0069】
本発明は、以下において、非限定的な実施例を参照しながらさらに詳細に記載される。
【実施例
【0070】
合計18種類の、本発明によるガラスを、表Iに特定される組成を用いて製造した。ここで特定の酸化物の酸化状態は、使用される原材料の酸化状態に関するものである。これらのガラスを、表IIに従って、ガラスセラミックから結晶化させた。ここで、
【0071】
は、DSCによって決定されたガラス転移温度を表し、
およびtは、融解のために使用された温度および時間を表し、
およびtは、核形成のために使用された温度および時間を表し、
およびtは、結晶化のために使用された温度および時間を表し、
SinterおよびtSinterは、焼成のために使用された温度および時間を表す。
【0072】
この実施例において、表Iに特定される組成を有する出発ガラスを、最初に、100から200gまでの規模で、通常の原材料から、Tの温度で、tの持続時間にわたって融解した。これらの融解した出発ガラスを水に注ぐことによって、ガラスフリットを生成した。下に特定される4つの変法A)~D)を、ガラスフリットのさらなる加工のために使用した:
【0073】
A) 焼成粉末コンパクトの調製
実施例1~3(本発明による)および4(比較)において、得られたガラスフリットの蛍光を、UV灯下で目視により決定した。全てのガラスフリットが、蛍光を示した。
【0074】
その後、得られたガラスフリットを、酸化ジルコニウムミル内で、112μm未満の粒径まで粉砕した。約4gのこれらの粉末を圧縮して、円柱形のブランクを形成し、そして温度Tでの加熱処理に持続時間tにわたって供し、これによって、核形成が起こり得た。次いで、これらのブランクを、減圧下で、焼成炉(Ivoclar Vivadent AG製のProgramat(登録商標))内で、温度TSinterで、tSinterの保持時間にわたり焼成して、緻密ガラスセラミック体を形成した。このように得られたガラスセラミック体の蛍光をUV灯下で目視により決定した。全てのガラスセラミック体が、蛍光を示した。
【0075】
これらの実験を、焼成を空気中で行って繰り返した。本発明による実施例1~3の場合、蛍光が得られ、減圧下での焼成と比較してわずかに減少したのみであったが、比較例4(スズなし)の場合、目に見える蛍光は観察されなかった。
【0076】
B) モノリシックガラスブロック
実施例5~15(本発明による)および16(比較)において、得られたガラスフリットを、温度Tで、持続時間tにわたって、再度融解した。次いで、得られた出発ガラスの融解物を、モノリシックガラスブロックを製造する目的で、黒鉛の型に注いだ。その後、ガラスモノリスを、温度Tで、持続時間tにわたって緩和し、これによって、核形成が起こり得た。次いで、ガラスモノリスの蛍光を、UV灯下で目視により決定した。比較例16(スズなし)以外の全てのガラスモノリスが、蛍光を示した。
【0077】
次いで、実施例6~15(本発明による)および16(比較)において、ガラスセラミックを形成する目的で、ガラスモノリスを、温度Tまで、tにわたって加熱した。次に、得られたガラスセラミックの蛍光を、UV灯下で目視により決定した。比較例16(スズなし)以外の全てのガラスセラミックが、蛍光を示した。
【0078】
C) ガラスフリット
実施例17~19において、得られたガラスフリットの蛍光を、UV灯下で目視により決定した。全てのガラスフリットが、蛍光を示した。
【0079】
D) 配合成分としての本発明によるガラス
実施例20により得られたガラスフリットを粉砕し、そして国際公開第2015/173394号による組成を有する粉砕したガラス粉末に、様々な量(混合物に対して5重量%、10重量%、20重量%および30重量%)で添加した。各場合に、約4gのこれらの混合物を、次いで圧縮して円柱形ブランクを形成し、そして焼成炉(Ivoclar Vivadent AG製のProgramat(登録商標))内で、860℃の温度で、60分間の保持時間にわたり焼成して、緻密ガラスセラミック体を形成した。次いで、蛍光をUV灯下で目視により決定した。全ての緻密ガラスセラミック体が、蛍光を示した。
【0080】
【表1-1】
【0081】
【表1-2】
【0082】
【表2-1】
【0083】
【表2-2】