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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】タッチ表面デバイス
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/043 20060101AFI20241129BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G06F3/043
G06F3/041 602
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020107834
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2021002349
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】1906816
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・ブネッサ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-セバスチャン・モレ
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0252411(US,A1)
【文献】特開2015-069267(JP,A)
【文献】特開2019-009782(JP,A)
【文献】特開平10-177448(JP,A)
【文献】特開2016-122725(JP,A)
【文献】特開2015-075893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041 - 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ表面デバイス(100)であって、
タッチ表面を形成する第1の面(104)及び前記第1の面(104)に対向する第2の面(106、107)を含む要素(102)と、
2つの電極(112、114)間に配置された圧電材料の少なくとも1つの部分(110)を含む音響波センサ(108)であって、前記圧電材料の部分(110)及び両電極(112、114)が、しわとして表面のうねりを形成することによって構造化され、前記しわの頂点または谷(116)が前記要素(102)の前記第2の面(106、107)と接触するように前記要素(102)の前記第2の面(106、107)に取り付けられた、音響波センサ(108)と、
前記音響波センサ(108)の前記電極(112、114)に結合され、前記音響波センサ(108)の前記電極(112、114)から出力されるように意図された電気信号から、前記タッチ表面上に形成された少なくとも1つのタッチジェスチャーを識別するように構成された、電子回路(118)と、を少なくとも含む、タッチ表面デバイス(100)。
【請求項2】
前記音響波センサ(108)の前記しわが、直線的であり、互いに対して平行である、請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
前記圧電材料がセラミック材料に対応する、請求項1または2に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
前記音響波センサ(108)が、少なくとも1つの接合層を介して前記要素(102)の前記第2の面(106)に取り付けられ、または前記音響波センサ(108)が前記要素(102)内に統合された、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
前記要素(102)が、前記第1の面と前記第2の面(104、106、107)との間で、前記センサ(108)に対して、2mmを超える高さの厚さを有する層を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項6】
前記しわが10μmよりも高い周期を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項7】
前記要素(102)の前記第2の面(106、107)に取り付けられたいくつかの音響波センサ(108)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項8】
音響波センサ(108)の前記圧電材料の部分(110)が、他の音響波センサ(108)の前記圧電材料の部分(110)から区別され、各音響波センサ(108)の前記電極(112、114)が、前記他の音響波センサ(108)の前記電極(112、114)から区別された、請求項7に記載のデバイス(100)。
【請求項9】
全ての前記音響波センサ(108)の前記圧電材料の部分(110)が、全ての前記音響波センサ(108)に共通する単一の連続的な圧電層によって形成され、各音響波センサ(108)の前記電極(112)の少なくとも1つが、前記他の音響波センサ(108)の前記電極(112)から区別される、請求項7に記載のデバイス(100)。
【請求項10】
前記音響波センサ(108)が、100μmよりも小さい厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項11】
タッチ表面デバイス(100)を形成するための方法であって、以下の、
2つの電極(112、114)の間に配置された圧電材料の少なくとも1つの部分(110)を含む少なくとも1つの音響波センサ(108)を提供する段階であって、前記圧電材料の部分(110)及び両電極(112、114)が、しわとして表面のうねりを形成することによって構造化された、音響波センサ(108)を提供する段階と、
タッチ表面を形成するための第1の面(104)と、前記第1の面(104)に対向する第2の面(106、107)と、を含む少なくとも1つの要素(102)を提供する段階と、
前記しわの頂点または谷(116)が、前記要素(102)の前記第2の面(106、107)と接触するように、前記音響波センサ(108)を前記要素(102)の前記第2の面(106、107)に取り付ける段階と、
前記音響波センサ(108)の前記電極(112、114)を、前記音響波センサ(108)の前記電極(112、114)から出力されるように意図された電気信号から、前記タッチ表面上で行われる少なくとも1つのタッチジェスチャーを識別するように構成された電子回路(118)に結合する段階と、を含む、タッチ表面デバイス(100)を形成するための方法。
【請求項12】
前記音響波センサ(108)を前記要素(102)の前記第2の面(106)に取り付ける段階が、前記要素(102)の前記第2の面(106)に対して前記音響波センサ(108)を接合する段階を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記要素(102)を提供し、前記音響波センサ(108)を前記要素(102)の前記第2の面(107)に取り付ける段階が、
前記音響波センサ(108)を支持部上に配置する段階と、
前記要素(102)を熱成型または射出モールディングする段階であって、その間に前記音響波センサ(108)が前記第2の面(107)に対して配置され、その終了時に前記音響波センサ(108)が前記要素(102)に統合される段階と、を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、ヒューマンマシンインターフェースまたはHMI(Human-Machine Interfaces)の分野であり、より一般には、タッチ機能または触覚機能を通してインターフェースする空間及び/または物体の分野である。本発明は特に、ホームオートメーション(domotics)の分野または、例えば水、油、塵、雪の存在下または高温もしくは低温にさらされる有害環境におけるHMIの実現に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
製造される表面の任意の形状に適用可能な、最も堅牢で安価であり形状形成可能な触覚タッチ解決手段は、静電容量型センサを採用する。静電容量型センサは、例えば、機能を付与される部品または物体の表面に配置され、小さな厚さを有するコーティングで覆われることもできる。センサが静電容量要素のアレイを含む場合、例えばタッチ表面上の指のスライドやスワイプを検出する、先進的なタッチ機能が可能である。
【0003】
しかし、表面を触覚性にするための静電容量型センサの使用は、いくつかの欠点を有する。
【0004】
まず、静電容量型センサのもろさにより、機能を付与される物体を製造する材料にこれらを組み込むことができない。そのため、物体への最適な組込みのために、センサを収容するために物体の表面に形成された印刷を提供することが必要である。さらに、センサを物体の表面に固定するために実施される技術は、接合及び冷間法に限定される。
【0005】
静電容量型センサがコーティングで覆われ、それによってタッチ表面として使用される場合、クローストーク、低すぎる信号/雑音比、擬陽性(望まないトリガー動作)または、センサ感度喪失問題、コーティングとして使用可能であり、センサによって行われる静電容量検出と干渉してはならない材料の性質に関する制限、2mmよりも小さくなければならないコーティングの厚さの制限などのその他の要件に適合されなければならない。
【0006】
2mmよりも高い厚さを有するコーティングが使用されなければならない場合、センサは、
-センサの複雑化、
-機能化される部分に関する成形可能性の喪失、
-センサ分解能の喪失につながるセンサ電極の大型化、
-タッチ表面上の指のスライドなどの先進的なタッチ機能の評価を低下させる、一般的なセンサ設計の大型化、などの制限を課される。
【0007】
2mmより高い厚さを有するコーティングが存在したとしても表面を触覚性にすることが可能な圧電センサが存在する。しかし、これらのセンサで対処可能なタッチ機能は、タッチ表面を押すなどの単純な機能に限定される。さらに、成形可能でない圧電要素の使用は、その使用を平面タッチ構造に限定することとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの目的は、従来技術の解決手段の欠点を有さず、静電容量性センサの制限を有さず、2mmに制限されないタッチ表面の厚さを有し、任意のタッチ表面形状に適合可能なタッチまたは触覚表面デバイスを提供することである。
【0009】
このために、本発明は、タッチ表面デバイスであって、
タッチ表面を形成する第1の面及び第1の面に対向する第2の面を含む要素と、
2つの電極間に配置された圧電材料の少なくとも1つの部分を含む音響波センサであって、圧電材料の部分及び両電極が、しわとして表面のうねりやリップルを形成することによって構造化され、しわの頂点もしくはピークまたは谷が要素の第2の面と接触するように要素の第2の面に取り付けられた、音響波センサと、
センサの電極に結合され、センサの電極から出力されるように意図された電気信号から、タッチ表面上に形成された少なくとも1つのタッチまたは触覚ジェスチャーを識別するように構成された、電子回路と、を少なくとも含む、タッチ表面デバイスを提供する。
【0010】
このデバイスにおいて、センサによるタッチジェスチャーの検出は、要素の材料内の音響波の伝達によってなされ、これらの音響波は、センサによって検出され、電子回路によって解釈される。この種類の検出は、静電容量型センサが使用される場合に生じる欠点を防ぐ。
【0011】
センサは表面のうねりを含み、これらのうねりは、共通してしわという用語で呼ばれ、振幅、波長及び配向によって特徴づけられる。しわを含んでいない平面型圧電センサと比較して、しわがセンサにより大きな変形性を提供し、そのため、圧力に対するより大きな感度及び、すなわちより大きな検出感度を提供する。しわを含むそのようなセンサの使用は、なされるタッチ検出に影響を与えることなくセンサが取り付けられる要素が2mmよりも大きな厚さを有することを可能にし、タッチ表面上の指のスライドを検出するなどの、複雑なタッチジェスチャーの検出を可能にする。
【0012】
さらに、しわにより、センサはタッチ表面上の指のスライドや、異なる種類の押し込み(長い、短い、同時にいくつかの指で行うなど)のような複雑なタッチ機能を検出することが可能になる。
【0013】
そのようなデバイスは、使用条件(暑い、寒い、雨、タッチ表面上の埃及び/または油の存在、手袋をした状態でのデバイスの使用など)に対し、検出される音響波がこれらの使用条件に影響を受けないため、影響を受けにくいという利点を有する。例えば、センサの表面に霜が現れるとすぐにもはや動作しなくなる静電容量性センサとは異なり、センサが0℃より小さい温度にさらされた場合に、提供されるデバイスが0℃よりも小さい温度にさらされた場合であっても動作可能な状態を持続する。
【0014】
要素の誘電率が、静電容量型センサとは異なり音響波センサに影響を与えないため、このデバイスはまた、センサを収容するための表面上に印刷が存在しないこと及び、タッチ表面(金属、プラスチック、木材などからなりうる)を形成する要素の材料の性質に制限がないことによって、タッチ表面の設計により大きな自由度をもたらすという利点も有する。要素は、例えば1つもしくは複数の曲線を含む複雑な幾何形状を有してもよく、または任意の形状(平行六面体、ピラミッド状など)を有してもよい。
【0015】
「要素」という用語は、音響波センサによって機能化される、タッチ、触覚のための任意の種類の物体、構造または部分を指すために使用される。
【0016】
電極は、少なくとも1つの導電性材料、例えば少なくとも1つの金属を含む。
【0017】
有利には、センサのしわは直線状、または直線的であり、互いに対して平行でありうる。そのようなしわは、タッチ表面上の、しわの配向に対して実質的に垂直な方向に沿った指のスライドを検出するために良好に適合される。
【0018】
有利には、圧電材料は、無機材料であるセラミック材料に対応しうる。そのような圧電材料は、ポリマー圧電材料とは異なり、高い温度(約300℃よりも高い)に適切に耐えるという利点を有する。セラミック圧電材料の使用は、特にセンサを、顕著な温度で段階を実行することを伴う熱成型または任意の他の方法によって形成された要素内に統合されることを可能にする。
【0019】
センサは、少なくとも1つの接合層を介して要素の第2の面に固定されてもよく、またはセンサは要素に統合されてもよい。センサを要素に統合することの利点は、特に、センサがそれによって要素の外側から見えなくなり、センサが全ての面において要素によって保護可能になることである。
【0020】
要素は、第1の面と第2の面との間で、センサに対して、2mmよりも高い厚さを有する層を形成しうる。そのような顕著な厚さは、しわを含む圧電センサの使用によって可能になる。要素のこの顕著な厚さは、デバイスにより大きな強度をもたらし、例えば、破壊に対するセンサのより強固な保護を与える。
【0021】
しわは、10μmよりも高い周期を有しうる。そのような周期は、デバイスのタッチ表面に対してなされるジェスチャーによって生じる音響波の検出に対し、良好に適合されたセンサを有することを可能にする。
【0022】
デバイスは、要素の第2の面に固定されたいくつかの音響波センサを含みうる。要素の第2の面に結合されたいくつかの音響波センサによって、例えば要素のタッチ表面上の指のスライドの方向などの複雑なタッチジェスチャーを検出すること、または更なる情報を得ることが可能になる。
【0023】
第1の実施形態によれば、デバイスがいくつかのセンサを含む場合、各センサの圧電材料の部分は、他のセンサの圧電材料の部分から区別され、すなわち分離され、または離隔されてもよく、各センサの電極は、他のセンサの電極から区別されてもよい。
【0024】
第2の実施形態によれば、デバイスがいくつかのセンサを含む場合、全てのセンサの圧電材料の部分が、全てのセンサに共通の単一の連続的な圧電層によって形成されてもよく、各センサの電極の少なくとも1つは、他のセンサの電極から区別されうる。
【0025】
電子回路は、しわが延在する方向に対して実質的に垂直な方向に従うタッチ表面上の指のスライドを識別するように構成されうる。
【0026】
センサは、100μmよりも小さな厚さを有しうる。そのようなセンサは、薄い要素に適合されうる。
【0027】
本発明はまた、タッチ表面デバイスを形成するための方法であって、以下の、
2つの電極の間に配置された圧電材料の少なくとも1つの部分を含む少なくとも1つの音響波センサを提供する段階であって、圧電材料の部分及び両電極が、しわとして表面のうねりを形成することによって構造化された、音響波センサを提供する段階と、
タッチ表面を形成することを意図された第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、を含む少なくとも1つの要素を提供する段階と、
しわの頂点もしくはピークまたは谷が、要素の第2の面と接触するように、センサを要素の第2の面に取り付ける段階と、
センサの電極を、センサの電極から出力されるように意図された電気信号から、タッチ表面上で行われる少なくとも1つのタッチジェスチャーを識別するように構成された電子回路に結合する段階と、を含む、タッチ表面デバイスを形成するための方法に関する。
【0028】
第1の実施形態によれば、センサを要素の第2の面に取り付ける段階は、センサを要素の第2の面に対して接合する段階を含みうる。
【0029】
第2の実施形態によれば、要素を提供し、センサを要素の第2の面に取り付ける段階は、
センサを支持部上に配置する段階と、
要素の熱成型または射出モールディングを行う段階であって、その間にセンサが第2の面に対して配置され、終了時にセンサが要素内に統合される、段階と、を含みうる。
【0030】
本発明は、添付された図面を参照して、純粋に例示のために、かつ限定の目的ではなく、与えられた例示的な実施形態の説明を読むことによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1の実施形態に従う、本発明の対象であるタッチ表面デバイスのセンサの断面図を示す。
図2】第1の実施形態に従う、本発明の対象であるタッチ表面デバイスのセンサの上面図を示す。
図3】第1の実施形態に従う、本発明の対象であるタッチ表面デバイスを示す。
図4】第2の実施形態に従う、本発明の対象であるタッチ表面デバイスを示す。
図5】第2の実施形態に従う、本発明の対象であるタッチ表面デバイスを示す。
図6】本発明の対象である、デバイスのタッチ表面上で行われるタッチジェスチャーの間に得られる電気信号の例を示す。
図7】本発明の対象である、デバイスのタッチ表面上で行われるタッチジェスチャーの間に得られる電気信号の例を示す。
図8】本発明の対象である、デバイスのタッチ表面上で行われるタッチジェスチャーの間に得られる電気信号の例を示す。
図9】本発明の対象である、デバイスのタッチ表面上で行われるタッチジェスチャーの間に得られる電気信号の例を示す。
図10】代替的な実施形態に従う、本発明の対象であるタッチ表面デバイスを示す。
図11】代替的な実施形態に従う、本発明の対象であるタッチ表面デバイスを示す。
図12】本発明の対象であるデバイスのタッチ表面で行われるタッチジェスチャーの間に得られる電気信号の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で説明される異なる図面の同一、類似または等価な部分は、1つの図面から別の図面に切り替えるのを容易にできるように、同じ参照符号を付す。
【0033】
図面に示された異なる部分は、図を読みやすくするために、必ずしも同一のスケールで描かれていない。
【0034】
様々な可能性(代替及び実施形態)は、互いに非排他的であるとして、また、互いに結合可能であるとして理解されるべきである。
【0035】
第1の実施形態に従うタッチ表面デバイス100を、これから図1から3を参照して説明する。図1は、デバイス100の音響波センサ108の断面図に対応する。図2は、センサ108の上面図に対応する。図3は、デバイス100の斜視図に対応する。
【0036】
デバイス100は、第1の面104を備える要素102を含む。第1の面104は、デバイス100のタッチ表面または触覚表面を形成し、これは、タッチジェスチャー(押す、スライドさせるなど)が、デバイス100の使用者によって行われることとなる表面である。要素102はまた、第1の面104に対向する第2の面106も含む。要素102はいかなる形状であってもよい。図3に示された例では、要素102は曲げられている。
【0037】
第1の実施形態において、本明細書では要素102によって形成された層の厚さeに対応する面104、106の間の距離は、2mmよりも高い。
【0038】
デバイス100は、音響波センサ108を含む。センサ108は、部分110の圧電材料の変形による圧電効果によって発生した電荷を確実に集める、2つの電極112、114の間に配置された圧電材料の部分を含む。
【0039】
有利には、部分110の圧電材料は、セラミック材料、すなわち例えばAlN、PZT、ZnO、LiNbO、LiTaO、KNbO、水晶、SrTiO、BaTiOまたはランガサイトなどの無機材料に対応する。代替的に、圧電材料がデバイス100を製造する顕著な温度にさらされない場合、圧電材料は、例えばP(VDF-TrFE)などのポリマーでありうる。
【0040】
電極112、114はそれぞれ、例えばアルミニウム、タングステン、チタン、銅、ニッケル、白金、パラジウム、金、銀またはこれらの金属のいくつかの合金などの金属材料を含む。可能な場合、電極112、114の1つまたはそれぞれは、例えばTiN及び/またはTaN及び/またはWNを含む1つまたは複数の拡散バリアを備える金属多層要素でありうる。電極112、114の1つまたはそれぞれはまた、以下の材料、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ドープ酸化亜鉛、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)もしくはPEDT、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸塩)もしくはPEDOT:PSS、ポリ(4,4-ジオクチルシクロペンタジチオフェン)などの導電性ポリマーのうちの1つに、例えば対応する少なくとも1つの透明導電酸化物を含みうる。電極112、114の1つまたはそれぞれは、グラフェンなどの、またはカーボンナノチューブ(CNT)を含む2次元材料系層に対応しうる。
【0041】
センサ108の長さLは、例えば1mmから、要素102の第2の面106の長さの間である。センサ108の幅lは、例えば0.5mmから要素102の第2の面106の幅の間である。圧電材料110の部分の厚さは、例えば500nmから20μmの間である。電極112(第2の面106に対向する側に配置された電極に対応する)は、約2μmから100μmの間の厚さを有しうる。電極112の表面積は、圧電材料110の部分のそれと等しいか、または圧電材料110の部分のそれよりも高くなりうる(要素102と直接接しうる電極112の部分)。電極114(第2の面106の側に配置され、要素102に対する電極に対応する)は、約3nmから2μmの間の厚さを有しうる。電極114の表面積は、約50μm×50μmの間であってもよく、圧電材料110の部分の表面積であってもよい。センサ108の厚さ(図1に「a」で示される)(部分110及び電極112、114の厚さの合計に対応する)は、好適には100μmよりも小さい。例として、センサ108は、以下の特性、
-長さL=10mm、
-幅l=3mm、
-部分110の厚さ=1μm、
-電極112(面106に対向する側に配置される)の厚さ=4μm、
-電極114(要素102に対し、面106の側に配置される)の厚さ=50nm、を有しうる。
【0042】
要素102の形状がどのようなものであれ、センサ108は、要素102のタッチ表面に対向する面に対して配置される。
【0043】
圧電層110及び電極112、114は、しわとして表面のうねりを形成することによって構造形成される。本明細書で説明される例示的な実施形態において、しわは直線的かつ互いに対して平行(さらに図1に示された軸Yに対して平行)である。しわは、例えば10μmに等しい振幅A及び周期λで形成される。有利には、周期λは10μmよりも高く、例えば50μmに等しい。周期λの値は、振幅Aのそれに比例する。振幅Aは、センサ108の同じ層のピーク-ピーク高さ2Aの半分に対応する。しわの頂点またはピークは、参照符号116を有し、しわの谷は参照符号117を有する。周期λは、2つの隣接する頂点またはピーク116の間の距離に対応する。
【0044】
センサ108及びより具体的にはしわ116を形成するために実施される方法の例が、例えば国際公開第2015/055788号、国際公開第2015/055783号及び国際公開第2015/055786号に記載されており、本明細書で説明されるセンサ108を作るのに適用可能である。
【0045】
センサ108は、しわの頂点またはピーク116が第2の面106に接触するように、要素102の第2の面106に取り付けられる。本明細書で説明される第1の実施形態において、センサ108は、接合を通して第2の面106に取り付けられ、接合は、センサ108と第2の面106との間に介在される接合層(図1から3には示されていない)を介する。センサ108を要素102の第2の面106に対して取り付けるために、他の種類の接合も実施されうる。
【0046】
第2の実施形態によれば、センサ108は、要素102に統合され、要素102によって少なくとも部分的に取り囲まれる。この第2の実施形態において、要素102は、例えば熱成型によって作られる。センサ108は、この場合、要素102内に配置され、要素102の材料によって完全に取り囲まれる。センサが対向して配置される要素102の面は、要素102の外面を形成する第2の面106には対応しないが、内部である、要素102の材料の部分内に形成され、電極114が対向して配置される、参照符号107で示された面に対応する。図4及び5は、この第2の実施形態に従うデバイス100を概略的に示す。
【0047】
第3の実施形態によれば、センサ108は、前述の2つの実施形態のうちの1つに従う、前述された統合に類似して、中間要素に対して、または中間要素内に統合されうる。この中間要素は、任意の機械的取付手段(ねじ、リベット、取り付けクリップなど)によって、要素102に組み立てられうる。この場合、センサ108は、実際には、しわの頂点、ピークまたは谷が、中間要素を介して要素102の第2の面と接触するように、要素102に結合される。
【0048】
前述の3つの実施形態において、デバイス100はまた、センサ108の電極112、114に接続された電子回路118を含む。回路118は、センサ108によって電極112、114から出力された電気信号から、第1の面104上である要素102のタッチ表面上でなされる1つまたは複数のタッチジェスチャーを識別するように構成される。有利には、電子回路118は、しわ116が沿って延在する方向に対して実質的に垂直な方向に沿った、第1の面104上の指のスライドを識別するように構成されうる。第2の実施形態において、電極112、114を電子回路118に接続する電気接続は、要素102を通過する。
【0049】
第1の面104上の指のスライド動作に加えて、前述の実施形態の両方に従うデバイス100は、第1の面104上でなされるその他のタッチジェスチャーを、例えば第1の面104上に1つまたは複数の指を(長くまたは短く)押し付け、離すこと、接触動作、振動動作などとして識別することを可能にする。
【0050】
図6は、デバイス100のタッチ表面104上の振動の間の、センサ108の電極112、114間で得られる電気信号の例を示す。
【0051】
図7は、デバイス100のタッチ表面104上の指の短い押しつけの間の、センサ108の電極112、114間で得られる電気信号の例を示す。
【0052】
図8は、デバイス100のタッチ表面104上の指の長い押しつけの間の、センサ108の電極112、114間で得られる電気信号の例を示す。
【0053】
図9は、デバイス100のタッチ表面104上の指のスライドの間の、センサ108の電極112、114間で得られる電気信号の例を示す。
【0054】
これらすべての信号は、これらの信号の処理の実施を介して、デバイス100のタッチ表面でなされるタッチジェスチャーの種類を識別するために、電子回路118によって使用される異なる特性(異なるピーク間隔、ピークの反復など)を示す。この処理の詳細は本明細書では説明されないが、この処理は、例えばデバイス100のセンサの電極によって出力される電気信号のデジタル及び/またはコンピュータ処理を介して、当業者によって容易に実施可能である。
【0055】
第1の実施形態に従うデバイス100を作るために、センサ108及び要素102は、まず、互いに対して独立に作られ、次いで、センサ108が一時基板上に配置され、例えば接合層を用いて、要素102の第2の面106に対して接合される。次いで、一時基板が除去されうる。次いで、センサ108の電極112、114は、電子回路118に結合される。
【0056】
第2の実施形態に従うデバイス100を作るために、センサ108は最初に作られ、次いで要素102が、センサ108を要素102内に統合することによって作られる。このために、センサ108は支持部上に配置され、要素102はセンサ108の周囲に熱成型によって作られうる。開口部が、電極112、114にアクセスするために要素102に作られうる。次いで、センサ108の電極112、114が、電子回路118に結合される。
【0057】
熱成型に加えて、要素102は、使用される材料の性質及び、要素102の幾何学的に特性に応じて、例えば、モールディング、凍結キャスティング、含浸または浸潤、熱分解、ストリップキャスティング、射出または押出モールディング、ブローまたは発泡加工、組み立て、インクジェット、エアロゾルスプレー、蒸着などのその他の技術によって作られうる。
【0058】
前述の実施形態の両方において、デバイス100は、要素102の第2の面106または107に対して配置された単一のセンサ108を含む。代替的に、デバイス100は、第2の面106または107に接触したいくつかのセンサ108を含みうる。
【0059】
図10は、同じ要素102の第2の面106に対する、互いに隣接して配置されたいくつかのセンサ108を含むデバイスの第1の例示的な実施形態を概略的に示している。センサ108は、全体として、要素102の第1の面104を機能化するために使用される。この第1の例示的な実施形態において、センサ108は、1つのセンサと別のセンサとで区別された圧電材料110及び電極112、114の部分を含む。換言すれば、センサ108のそれぞれの圧電材料の部分110は、別のセンサ108の圧電材料の部分110から間隔を開けて分離されている。同様に、センサ108のそれぞれの電極112、114は、別のセンサ108の電極112、114から間隔を開けて分離されている。
【0060】
図11は、同じ要素102の第2の面106に対する、互いに隣接して配置されたいくつかのセンサ108を含むデバイス100の第2の例示的な実施形態を概略的に示している。第1の例示的な実施形態と同様に、センサ108は、全体として、要素102の第1の面104を機能化するために使用される。この第2の励磁的な実施形態において、センサ108の圧電材料の部分110は、全てのセンサ108に共通した単一の連続的な圧電層によって形成される。さらに、各センサ108の電極112、114の少なくとも1つは、別のセンサ108の電極から区別され、別のセンサ108の電極から間隔を開けて離隔されている。図11に示された例において、センサ108のそれぞれの電極114は、連続する導電性材料によって形成された同じ層によって形成され、全てのセンサ108に共通しており(センサ108の全てに共通な電極を形成する)、各センサ108の電極112は、別のセンサ108の電極112を形成する導電性材料の部分から区別され、間隔を開けられた導電性材料の部分から形成される。
【0061】
デバイス100のどの例示的な実施形態であれ、同じ表面に関連付けられたいくつかのセンサ108の使用は、例えばタッチ表面上のいくつかの同時に生じた区別された押し込み動作や、タッチ表面上の指のスライド方向及びその速度の検出など、より複雑なタッチジェスチャーの識別を可能にする。
【0062】
デバイス100がいくつかのセンサ108を含む場合、これらのセンサのしわは、同じ方向に沿って、または異なる方向に沿って配向されうる。例えば、デバイス100は、第2の面106に取り付けられ、両センサ108のしわが互いに対して垂直に配向されるように配置された2つのセンサ108を含みうる。この場合、デバイス100は、互いに対して垂直な2つの方向に沿って、デバイス100のタッチ表面上のスライド動作、例えば上下方向に沿ったスライドおよび左右方向に沿ったスライドを区別するのに良好に適合される。デバイス100の第2の面106上のセンサ108のその他の組み合わせも実施されうる。
【0063】
図12は、このデバイス100のタッチ表面上の指のスライドの間、デバイス100の2つのセンサ108にわたって得られる電気信号の例を示す。両センサ108が存在することにより、指のスライド方向を、両信号間の時間オフセットに従ってデバイス100のタッチ表面上で識別することができる。
【0064】
デバイス100は、要素102が組み立てられうる1つまたは複数の他の部品または要素を含みうる。センサ108は特に、要素102とデバイス100の1つまたは複数のその他の要素との間に介在されうる。
【0065】
デバイス100の同じ表面上のいくつかのセンサ108の存在はまた、デバイス100が前述の第2の実施形態に対応する場合に可能であり、これはデバイス100の要素102内にセンサ108を統合することによる。
【0066】
どのような例示的な実施形態であっても、本発明はタッチ機能を有する物体、構造または部分の表面の機能化を可能にする。そのためこれらのタッチ機能を有して提供されると、表面はタッチ負荷に対して感度を有するようになり、直接的にまたは間接的に、これらの負荷に対する応答をトリガーしうる。この応答は、触覚(例えば触覚及び/もしくは視覚及び/もしくは音声及び/もしくは機械的な)フィードバック並びに/または1つもしくは複数の動作、例えばシステムの開閉などの機械的な、及び/もしくはスイッチのオンオフもしくは照明システムの光の変化などの電気的な動作のトリガーを含みうる。
【符号の説明】
【0067】
100 タッチ表面デバイス
102 要素
104 第1の面
106 第2の面
108 音響波センサ
110 部分
112、114 電極
116 しわの頂点
117 しわの谷
118 電子回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12