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特許7595459ざ瘡を治療するためのプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)バクテリオファージを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ざ瘡を治療するためのプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)バクテリオファージを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20241129BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 38/44 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20241129BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61K35/76 ZNA
A61K31/19
A61P17/10
A61P43/00 121
A61K38/43
A61K33/04
A61K31/05
A61K31/015
A61K31/07
A61K45/00
A61K38/47
A61K38/48 100
A61K38/44
A61K35/74 Z
A61K9/10
A61K9/08
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020507498
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018028556
(87)【国際公開番号】W WO2018195415
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】62/488,326
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519375099
【氏名又は名称】ピー・エイチ・アイ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルマー,ユグ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・プローイェン,ナンシー
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09526738(US,B2)
【文献】特表2017-505820(JP,A)
【文献】特表2015-512255(JP,A)
【文献】特表2009-501018(JP,A)
【文献】特開2008-297241(JP,A)
【文献】国際公開第2016/130024(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0141385(KR,A)
【文献】Front. Microbiol.,2017年,Vol.8:164,pp.1-11
【文献】Clinical Micriobiology Reviews,2014年,Vol.27(3),pp.419-440
【文献】Frontiers in Cellular and Infection Microbiology,2014年,Vol.4, Article 178,pp.1-9
【文献】Journal of Bacteriology,2007年,Vol.189(11),pp.4161-4167
【文献】mBio,Vol. 3, Issue 5, e-00279-12,2012年,pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61K 45/00
A61K 38/00
A61K 31/00
A61K 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バクテリオファージから成るバクテリオファージ活性剤であって、少なくとも1つのバクテリオファージは、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)バクテリオファージであるバクテリオファージ活性剤
(b)サリチル酸を含む少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び
(c)薬学的に許容される担体を含む、ざ瘡を治療する必要がある対象において、ざ瘡を治療するための、単一組成物に製剤化された組成物であって、
ここで、P.アクネスバクテリオファージのゲノムが、配列番号1のヌクレオチド配列に少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヌクレオチド配列を含む、組成物。
【請求項2】
さらに酵素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
サリチル酸が、
(a)0.5%~2%(重量/体積)の濃度又は、
(b)0.5%未満であるが、約0.1%(重量/体積)を超える濃度、
で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらに硫黄を含む組成物であって、
硫黄が
(a)3%~10%(重量/体積)の濃度又は、
(b)3%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%又は2.5%(重量/体積)を超える濃度、
で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
組成物がさらに、
(a)レゾルシノールを含み、レゾルシノールは2%の濃度で存在してもよく、
(b)レゾルシノールモノアセテートを含み、レゾルシノールモノアセテートが3%の濃度で存在してもよく、又は
(c)過酸化ベンゾイルを含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が、さらに抗生物質、レチノイド又はアルファヒドロキシ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージが、(a)溶菌性P.アクネスバクテリオファージである、(b)線状二本鎖DNAゲノムを含む、又は(c)バクテリオファージシホウイルス(Siphoviridae)科内にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
酵素が、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、スブチリシン、セラチオペプチダーゼ、ディスパーシン、アルギン酸リアーゼ、アミラーゼ又はセルラーゼである、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
(a)グリコシダーゼがグリコシドヒドロラーゼである、
(b)酵素が、N-アセチル-D-グルコサミンの線状ポリマーの加水分解を触媒する、
(c)酵素がβ-ヘキソサミニダーゼである、
(d)酵素が、アセチルグルコサミンポリマーのβ-1,6-グリコシド結合を加水分解する、
請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
酵素がディスパーシンB、プロテイナーゼK又はスブチリシンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
抗老化酵素をさらに含み、該抗老化酵素がスーパーオキシドジスムターゼ又はペルオキシダーゼであってもよい、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
さらに、プロバイオティク細菌を含み、プロバイオティク細菌が、(a)プロバイオティクP.菌種(P. sp.)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)菌種及び/又はコリネバクテリウム(Corynebacterium)菌種細菌又は(b)ベータプロテオバクテリア(Betaproteobacteria)綱内の細菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
プロバイオティク細菌が、プロバイオティクP.アクネス菌である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
P.アクネス菌が、
(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT992C変異のある16S rDNA配列を含み;
(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT838C変異のある16S rDNA配列を含み;
(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてC1322T変異のある16S rDNA配列を含み;
(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてC986T変異のある16S rDNA配列を含み;
(e)配列番号3の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(f)配列番号4の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(g)線状プラスミドを含まず;
(h)病原性因子を含むプラスミドを含まず;並びに/又は
(i)染色体外リパーゼ及び/若しくは密着性病原性因子をコードするプラスミドを含まない、
請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
P.アクネス菌が、
(a)浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約20%未満を産生し;
(b)付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約10%未満を産生し;
(c)上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも50%少なく、及び/又は
(d)病原性P.アクネス株より炎症性ではない、
請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌をさらに含む、請求項13に記載の組成物であって、少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌が、プロピオニバクテリウム・グラニューロサム(Propionibacterium granulosum)
及び/又はプロピオニバクテリウム・アビダム(Propionibacterium avidum)を含む組成物。
【請求項17】
病原性P.アクネス株が、
(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C変異のある16S rDNA配列を含み;
(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C及びA1201C変異のある16S rDNA配列を含み;
(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG529A変異のある16S rDNA配列を含み;
(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1004A及びT1007C変異のある16S rDNA配列を含み;
(e)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1268A変異のある16S rDNA配列を含み;
(f)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT554C及びG1058C変異のある16S rDNA配列を含み;
(g)配列番号5の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(h)配列番号6の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(i)配列番号7の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(j)配列番号8の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(k)配列番号9の配列に同一である16S rDNA配列を含み;及び/又は
(l)配列番号10の配列に同一である16S rDNA配列を含む、
請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
(a)薬学的に許容される担体が、乳剤、水中油型乳剤、油中水型乳剤である又は(b)組成物が、クリーム、ローション、懸濁液又は水溶液の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
(a)バクテリオファージから成るバクテリオファージ活性剤であって、少なくとも1つのバクテリオファージは、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)バクテリオファージであるバクテリオファージ活性剤、
(b)サリチル酸を含む、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物、及び
(c)薬学的に許容される担体
を含む、ざ瘡を治療するための組み合わせてなる製剤であって、
ここで、P.アクネスバクテリオファージのゲノムが、配列番号1のヌクレオチド配列に少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヌクレオチド配列を含み、
前記少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ、前記少なくとも1つの抗ざ瘡化合物、及び前記薬学的に許容される担体のそれぞれが、容器内で単一組成物として製剤化され
前記組み合わせてなる製剤が、(d)少なくとも1つのさらなる抗ざ瘡化合物を含む別の容器を含む、組み合わせてなる製剤。
【請求項20】
(a)少なくとも1つのさらなる抗ざ瘡化合物が過酸化ベンゾイルである、
(b)少なくとも1つのさらなる抗ざ瘡化合物が過酸化ベンゾイルであって、過酸化ベンゾイルが2.5%~10%(重量/体積)の濃度で存在している、又は
(c)少なくとも1つのさらなる抗ざ瘡化合物が過酸化ベンゾイルであって、過酸化ベンゾイルが2.5%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%又は2%(重量/体積)を超える濃度で存在している、
請求項19に記載の組み合わせてなる製剤。
【請求項21】
組成物が局所的に投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2017年4月21日提出の米国特許仮出願第62/488,326号の優先権の利益を主張するものであり、前記特許文献はこれによって参照によりその全体をあらゆる目的のために組み込む。
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所により与えられる認可番号1R43AR068172-01の元で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明にある特定の権利を有する。
【0003】
「052004-503001WO_配列表.TXT」と名付けられたテキストファイルの内容は、2018年4月20日に作成されサイズは101,782バイトであるが、これによって参照によりその全体を組み込む。
【背景技術】
【0004】
ざ瘡は世界中のすべての人のうち80%以上が冒されるほぼ普遍的な状態である。この慢性的皮膚状態は複雑であるが、主な病原体はプロピオニバクテリウムアクネスであり、その異常増殖により面皰を引き起こす炎症をもたらす。技術革新のはっきりした必要性があるにもかかわらず、30年以上新規の面皰薬はなかった。過酸化ベンゾイル及び抗生物質を含む現在の治療は効果が極めて不十分であり、最も効果のある治療であるイソトレチノインは、危険な副作用(先天性欠損、肝損傷及び自殺を含む)のためにわずかな患者に限定されている。
【0005】
ざ瘡を治療するための新しい方法及び組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、ざ瘡を予防するか、又は治療するための組成物、組合せ、システム及び方法が本明細書で提供される。
【0007】
態様では、少なくとも1つのプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含み、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる組成物が本明細書で提供される。
【0008】
態様では、少なくとも1つのプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ、1つ以下の抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含む組成物が本明細書で提供される。
【0009】
態様では、少なくとも1つのプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ及び1つ以下の抗ざ瘡化合物からなる活性成分、並びに薬学的に許容される担体を含む組成物が本明細書で提供される。
【0010】
態様では、少なくとも1つのプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含み、プロバイオティク細菌を含まない組成物が本明細書で提供される。
【0011】
態様では、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組成物が本明細書で提供される。
【0012】
態様では、少なくとも1つのプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ、及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物を含み、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる組合せであって、少なくとも1つのプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物のそれぞれが、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物中にある組合せが本明細書で提供される。
【0013】
態様では、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組合せが本明細書で提供される。
【0014】
態様では、ざ瘡の治療を必要とする対象においてざ瘡を予防するか、又は治療する方法であって、本明細書で提供される組成物又は組合せの有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】P.アクネス(ざ瘡を引き起こす、左半分プレート)又はP.グラヌローサム(P.granulosum)(共生、右半分プレート)菌をRCM寒天ペトリ皿に播種した。ミノサイクリン又はPHIT-101(10pfu/mL)のいずれかに浸漬した無菌半パッドをそれぞれのプレートに置いた。37℃で3日間の嫌気的インキュベーション後、殺菌帯(矢印)が現れ、ミノサイクリンは病原菌と共生細菌の両方を殺菌し、PHIT-101はざ瘡を引き起こす菌を殺菌して共生のP.グラヌローサムを害さないことが示されている。
図2】P.アクネス、P.グラヌローサム及びP.アビダム(P.avidum)を含む合成皮膚マイクロバイオームは試験管でコンフルエンスまで生育させた。次に、この合成皮膚マイクロバイオームはPHIT-101の存在又は非存在下で48時間インキュベートした。3つの菌種の組成比は、Illumina MiSeqプラットホームを使用して洗浄した細菌ペレットの16S増幅産物のNGS塩基配列決定により定量化した。PHIT-101は、ざ瘡を引き起こすP.アクネスをほぼ完全に全滅させることができ、その他の2つの共生菌種の成長には影響を及ぼさなかった。
図3】P.アクネス内での生物膜産生は高度に変化しやすい。96株のP.アクネスが96ウェルポリスチレンマイクロタイタープレートにおいて生育されて生物膜産生を刺激され、それぞれの株により産生された生物膜を定量化した。このセットの株内で示された変わりやすさは、ヒトの毛穴で見つかる成長条件にもっと類似する成長条件下で生物膜形成を定量化する必要性を実証している。
図4】P.アクネス生物膜を分解することが可能な酵素を選択するためのスクリーニング。P.アクネスはポリスチレンマイクロタイタープレートにおいて生育されて生物膜産生を刺激された。酵素を0.01mg/mLでウェルに添加して、30℃で30分間インキュベートした。分解された生物膜はリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗い流し、それぞれのウェル中の残留生物膜は、クリスタルバイオレットで染色し590nmで吸光度を記録することにより定量化した。プロテイナーゼK及びスブチリシンのようなプロテアーゼは良好な活性を示し、ディスパーシン(dispersin)は試験したものの中で最良の配糖体デポリメラーゼであった。
図5】生物膜分解酵素(BDE)を用いたファージの増強は殺菌能を大幅に増加させる。固着P.アクネス細胞はPBS(非処理)、PHIT-101、又はPHIT-101とディスパーシンと一緒にインキュベートした。細胞生存はCellTiter-Blue試薬を使用して測定し、蛍光は560Ex/590Emで記録した。PHIT-101は液体培養におけるほど効果的にP.アクネスを殺菌できなかったが、生物膜分解酵素ディスパーシンを加えると液体培養に類似するレベルにまで殺菌能は大幅に増加した。
図6】プロバイオティク株が付着培養において産生するリパーゼのレベルは低い。既知の遺伝子型を有するプロバイオティクP.アクネス株をマイクロタイタープレートにおいて生物膜条件下で生育した。72時間の成長後、培養上清を濾過減菌し、4-MUパルミテートと一緒に37℃で4時間インキュベートして細胞外リパーゼ産生を判定した。プロバイオティク株(Pr#X)のリパーゼ産生は病原菌と比べて非常に低く、炎症誘発性が比較的低いことを示している。
図7】プロバイオティク株は病原性P.アクネスに比べて上皮細胞への付着が有意に少ない。選んだプロバイオティク株をコンフルエントA-431上皮細胞と一緒にインキュベートした(MOI10)。ウェルを洗浄後、細胞は0.1%のTween80を使用して持ち上げてBHIプレートに播種した。72時間の嫌気的インキュベーションの後、コロニーを数えた。データによれば、プロバイオティク株が示す上皮細胞への結合が有意に低くなっていることが明らかになった(p<0.05、**p<0.005)。
図8A】マウス耳炎症モデルにおけるプロバイオティク株のより低い炎症誘発性。CBA/Jマウス(コホートあたり5匹のマウス)にP.アクネス株を注射し、5日目にサイトカイン分析を実施した。プロバイオティク株Pr#Cは、病原性株と比べて有意に低いレベル(p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)の炎症性サイトカインIL-1β(図8A)、IL-6(図8B)、IL-17(図8C)及びTNFα(図8D)を示した。Pr-CはProII 16S配列を有する。
図8B】マウス耳炎症モデルにおけるプロバイオティク株のより低い炎症誘発性。CBA/Jマウス(コホートあたり5匹のマウス)にP.アクネス株を注射し、5日目にサイトカイン分析を実施した。プロバイオティク株Pr#Cは、病原性株と比べて有意に低いレベル(p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)の炎症性サイトカインIL-1β(図8A)、IL-6(図8B)、IL-17(図8C)及びTNFα(図8D)を示した。Pr-CはProII 16S配列を有する。
図8C】マウス耳炎症モデルにおけるプロバイオティク株のより低い炎症誘発性。CBA/Jマウス(コホートあたり5匹のマウス)にP.アクネス株を注射し、5日目にサイトカイン分析を実施した。プロバイオティク株Pr#Cは、病原性株と比べて有意に低いレベル(p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)の炎症性サイトカインIL-1β(図8A)、IL-6(図8B)、IL-17(図8C)及びTNFα(図8D)を示した。Pr-CはProII 16S配列を有する。
図8D】マウス耳炎症モデルにおけるプロバイオティク株のより低い炎症誘発性。CBA/Jマウス(コホートあたり5匹のマウス)にP.アクネス株を注射し、5日目にサイトカイン分析を実施した。プロバイオティク株Pr#Cは、病原性株と比べて有意に低いレベル(p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)の炎症性サイトカインIL-1β(図8A)、IL-6(図8B)、IL-17(図8C)及びTNFα(図8D)を示した。Pr-CはProII 16S配列を有する。
図9】P.アクネス株は、浮遊及び固着培養物において異なるリパーゼプロファイルを有する。セットの2つの病原性(Path-1、Path-2)及び2つの生菌(Pr-1からPr-6)P.アクネス株は、浮遊(灰色バー)及び固着(黒色バー)培養物におけるリパーゼ産生について評価した。プロバイオティク株のリパーゼ産生は液体(浮遊)培養では病原性株と有意に異なってはいなかったが、付着培養でのリパーゼ産出量は対応する病原性培養物と比べて一貫して低かった。興味深いことに、プロバイオティク株間でのリパーゼ産生の変わりやすさが観察された。最も低いリパーゼ活性を有する株を選択した。
図10】は、例示的バクテリオファージの生活環を図示している。下左から反時計回りで:ファージ粒子は宿主細菌を認識してその表面に吸着する。ファージゲノムは細菌内に注入される。溶原サイクルでは、このDNAは細菌ゲノムに組み込まれて数サイクル細菌ゲノムと一緒に複製する。溶菌サイクルでは、ファージゲノムは組み込まれず、続けて宿主の機構を乗っ取ってファージのゲノム及びファージの構造成分を複製する。次に、完全に組み立てられたファージは、典型的には感染の後期段階でエンドリシン及びホリンを産生することにより細胞を溶解する。この時点で、解放されたファージは自由に新しい宿主細菌を捜し出して感染し、溶解サイクルをもう1度開始する。
図11】は、例示的細菌生物膜の形成を図示している。細菌細胞は、成長に有利な条件を有する表面に着地し接着する。細菌細胞は複製してコロニーを形成し、ついには、ある特定の閾値の細胞密度(クオラム)になると生物膜形成を始動させる。生物膜は、多糖、タンパク質、DNA及び脂質の混合物を変化する割合で含む。生物膜は、細菌コロニーを厳しい外部条件から保護し、抗生物質、毒素及び免疫細胞への耐性を付与する物理的障壁である。
図12】は、3つの構成要素の行為の実施形態を一斉に図示しており;その効果は解説のために連続して描かれている。炎症を起こした面皰は典型的には、共生皮膚細菌(B)と共に、成長しすぎたP.アクネスにより産生される生物膜(A)で詰まっている。生物膜分解酵素(稲妻)はP.アクネス生物膜を破壊し、その他の成分へのアクセスをよくする。次に、バクテリオファージ(六角形)は病原性P.アクネスを編集するか、又は特異的に殺菌し、感染を取り除く。最後に、プロバイオティク細菌(C)は毛穴に入植して病原体のニッチを占め、病原体が成長して元に戻ることがないように防ぎ、マイクロバイオームを健康な状態まで再調整する。
図13】は、非限定的なプロバイオティク細菌スクリーニングプロセスの模式図である。
図14】は、病原性株がPBS対照よりも有意に高い耳炎症を引き起こし、リードプロバイオティク株Pr-CはPBS対照と有意差のない耳炎症を誘導することを示すグラフである。
図15】は、ファージが低(0.5%w/v)及び高(2%w/v)濃度のサリチル酸の存在下で安定なままであることを示すグラフである。
図16】は、ファージが60日にわたり過酸化ベンゾイルの存在下でその生存能力を失っていくことを示すグラフである。ファージ生存能力の減少速度は、低いほうの濃度(2.5%w/v)と比べて高いほうの濃度(10%w/v)のほうが大きい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特に、ざ瘡を治療する及び予防するための組成物、組合せ、方法及びシステムが本明細書で提供される。
【0017】
サリチル酸及び過酸化ベンゾイルは店頭(OTC)製品では最も一般的に使用されている抗ざ瘡剤である。特に、ファージは外部の物理的及び化学的要因に対するその安定性及び応答が広く分岐しているので、これらの抗ざ瘡剤と組み合わせた場合のファージの安定性は分かっていない。過酸化ベンゾイル及び硫黄の酸化還元性は、ファージのタンパク質膜の分解を引き起こすことが潜在的に可能である。過去の研究で、過酸化物への曝露は、タンパク質を不安定化してタンパク質分解に対する感受性を高めることによりタンパク質の分解速度を増加させることが明らかにされている(Fligielら、Protein degradation following treatment with hydrogen peroxide.Am J Pathol 1984年、115(3)、418~25頁;Kochaら、Hydrogen peroxide-mediated degradation of protein:different oxidation modes of copper- and iron-dependent hydroxyl radicals on the degradation of albumin.Biochim Biophys Acta 1997年、1337(2)、319~26頁)。サリチル酸は、そのタンパク質結合能力で知られており(Leeら、Protein binding of acetylsalicylic acid and salicylic acid in porcine and human serum.Vet Hum Toxicol 1995年、37(3)、224~5頁;Verbeeck and Cardinal、Plasma protein binding of salicylic acid、phenytoin、chlorpromazine、propranolol and pethidine using equilibrium dialysis and ultracentrifugation.Arzneimittelforschung 1985年、35(6)、903~6頁)、カプシドのタンパク質膜又は尾部線維に対する高親和性により、ファージは生存不能になると考えられる。
【0018】
驚くべきことに、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージはサリチル酸を含む組成物の中で安定していることが見出された。例えば、図15を参照されたい。このように、サリチル酸は、ファージが十分耐性があることが示されており、合剤に適した抗ざ瘡剤である。実施形態において、サリチル酸の抗角質溶解活性は、ファージのより深い浸透を可能にすることによりファージ活動を補完し、それによってファージの殺菌効率が高められる。実施形態において、本明細書に記載されるファージは、ざ瘡を予防し、治療するために組成物中でサリチル酸と組み合わせてもよい。
【0019】
過酸化ベンゾイルは、例えば、数日よりも長く保存される製剤では、試験されたファージとの合剤には適していない(図16参照)が、過酸化ベンゾイルは抗ざ瘡組合せ(例えば、キット)の一部としてファージ産物と一緒に使用することが可能である。実施形態において、過酸化ベンゾイルはクレンザー中の活性成分であり、クレンザーはファージ組成物/製剤の適用に先立って皮膚に適用して洗い落とされる。実施形態において、過酸化ベンゾイルの抗角質溶解及び一過性の抗菌作用は、バクテリオファージによるP.アクネスの特定のより深い選択的殺菌を補完する。
【0020】
実施形態において、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ及び抗ざ瘡化合物(サリチル酸及び/又は硫黄のような)は、対象の皮膚に局所的に投与される単一組成物中にある。実施形態において、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ及び抗ざ瘡化合物を(例えば、ビンのような別々の容器に)含むキットが提供される。実施形態において、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージは、1つの組成物中にあり、抗ざ瘡化合物(過酸化ベンゾイル、サリチル酸及び/又は硫黄のような)は別の組成物中にあり、それぞれの組成物は対象の皮膚に局所的に投与される。実施形態において、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージが対象に投与され、次に抗ざ瘡化合物が対象に投与される。実施形態において、抗ざ瘡化合物が対象に投与され、次にプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージが対象に投与される。実施形態において、対象の顔は、抗ざ瘡化合物及びプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ(いずれの順でも)が対象の顔に局所的に投与されるその間に洗浄される。
【0021】
実施形態において、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージと組み合わせて使用される場合の抗ざ瘡化合物(過酸化ベンゾイル、サリチル酸又は硫黄のような)の有効量は、抗ざ瘡化合物を単独で使用した場合に必要とされるよりも少ない。実施形態において、プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージと組み合わせて使用される場合の抗ざ瘡化合物(過酸化ベンゾイル、サリチル酸又は硫黄のような)の有効量は、抗ざ瘡化合物を単独で使用した場合に必要とされるよりも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%未満少ない。
【0022】
定義
以下の定義は本主題を理解する目的で及び添付の特許請求の範囲を構成するために含まれる。本明細書で使用される略字は化学的及び生物学的技術内でのその従来の意味を有する。
【0023】
本発明の種々の実施形態及び態様が本明細書で明らかにされ記載されるが、そのような実施形態及び態様は例としてのみ提供されることは当業者には明らかである。多数の変形、変更、置き換えが、本発明から逸脱することなく今や当業者には思い浮かぶ。本明細書に記載される本発明の実施形態の種々の代替え案を、本発明を実行する際に用いてもよいことは理解するべきである。
【0024】
本明細書で使用されるセクション見出しは、組織的目的のためだけであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。本出願において引用されるすべての文書又は文書の一部は、以下に限定するものではないが、特許、特許出願、記事、書籍、説明書及び論文を含み、これによりその全体をいずれかの目的のため参照により明確に組み込む。
【0025】
他の方法で定義されていなければ、本明細書で使用される専門用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解しているのと同じ意味を有する。例えば、Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 第2版、J.Wiley&Sons(New York、NY 1994年);Sambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor、NY 1989年)を参照されたい。本明細書に記載されるものと類似するか、又はこれと同等な任意の方法、装置及び材料を本発明の実施において使用可能である。以下の定義は、本明細書において頻繁に使用されるある特定の用語の理解を促進するために提供され、本開示の範囲を限定することを意図されていない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「プロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ」は、P.アクネス細胞に感染し、この内部で複製し、これを殺菌するバクテリオファージである。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは溶菌性のP.アクネスバクテリオファージである。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージはP.アクネス菌を溶解することができ、P.アクネス以外のいかなる細菌も溶解できない。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは細菌内で溶原性を維持することはできない。実施形態において、P.アクネスを溶解することはできるが溶原性を維持することはできないバクテリオファージを使用するのは、バクテリオファージが細菌内で休止状態のままでいることはできないが、必ず細菌を溶解し、したがって細菌を殺菌するという利点がある。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、溶原性を維持するのに必要な少なくとも1つの遺伝子を発現する能力に欠けている。用語「溶原性を維持するのに必要な少なくとも1つの遺伝子を発現する能力に欠けている」とは、1つ以上の点突然変異又はゲノムの完全な若しくは部分的な欠失の結果として、P.アクネスバクテリオファージが溶原性を維持するのに必要な完全に機能的なタンパク質産物を産生する能力に欠けていることを示すことが意図されている。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、溶原性を維持するのに必要な少なくとも1つの遺伝子のすべて又は一部が欠けているゲノムを有する(例えば、人工的であれ天然であれ、例えば、株は溶原性を維持するのに必要な少なくとも1つの遺伝子のすべて又は一部が欠けている株であるか、又は株由来である。)。しかしながら、実施形態において、アクネ菌バクテリオファージは、ゲノム統合部位(例えば、a/att/部位)又はリプレッサー結合部位の欠陥などの、溶原性を維持するファージの能力に影響を及ぼす可能性のある非コード領域のゲノムの欠陥(例えば、突然変異、挿入又は欠失)を含む場合もある。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、天然に存在しており単離され、人工的な突然変異をバクテリオファージ中に導入する必要がないという追加の利点がある。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、P.アクネス菌の複数の株を溶解することができる。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、P.アクネス菌の少なくとも約5、10、15、20、25、30又はそれよりも多くの株を溶解することができる。P.アクネスバクテリオファージの非限定的例は本明細書に開示されている。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、配列番号1に少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、95%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%の配列同一性を有するゲノムを有する。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、配列番号1の配列を有するゲノムを有するか、又は配列番号1の配列を含む。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージのゲノムは、配列番号1に比べて、挿入も欠失もない。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージのゲノムは、配列番号1に比べて挿入も欠失もなく、保存的置換のみを有する。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、ブタペスト条約の条項下、産業、海洋及び食物細菌の国立コレクション(NCIMB)、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen、AB21 9YA、United Kingdomに、以下の受託番号で寄託されているP.アクネスバクテリオファージの以下の例示的単離物の1つである:受託番号NCIMB 41332(単離物PA6);受託番号NCIMB 41334(単離物1874);受託番号NCIMB 41333(単離物1878);受託番号NCIMB 41335(単離物1905);受託番号NCIMB 41349(単離物1894);受託番号NCIMB 41350(単離物103609);受託番号NCIMB 41351(単離物103672)。実施形態において、宿主細菌、P.アクネスの非限定的例、AT1はNCIMB 41336として寄託されている。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、受託番号NCIMB 41349で寄託されたバクテリオファージのゲノムに少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するゲノムを有する。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、受託番号NCIMB 41350で寄託されたバクテリオファージのゲノムに少なくとも87%の配列同一性を有するゲノムを有する。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、受託番号NCIMB 41351で寄託されたバクテリオファージのゲノムに少なくとも88%の配列同一性を有するゲノムを有する。P.アクネスバクテリオファージに関連する追加の非限定的記述は、2015年6月30日に発行された米国特許第9,068,159号B2に提供されており、前記特許文献の全内容は参照により本明細書に組み込む。用語「ファージ」と「バクテリオファージ」は本明細書では互換的に使用される。
【0027】
本明細書で使用される場合、生物膜を「分解する」は、生物膜の一部を形成する少なくとも1つの化合物の共有結合を切断する(例えば、酵素活性により)ことを意味する。生物膜の一部を形成してもよい化合物の非限定的例は、ポリマー、配糖体、タンパク質、多糖及び核酸を含む。本明細書で使用される場合、「P.アクネス生物膜分解酵素」は、P.アクネス生物膜の一部を形成する少なくとも1つの化合物を分解する酵素である。
【0028】
本明細書で提供される酵素は、酵素活性を維持する(天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%活性以内)いかなる天然に存在する形態、相同体、アソフォーム又は変異体を含む。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200連続アミノ酸部分)にまたがって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%アミノ酸配列同一性を有する。
【0029】
用語「単離された」は、細菌又はバクテリオファージに適用された場合、(1)最初に生み出されたとき(天然であれ実験的状況であれ)にそれに付随していた構成要素の少なくともいくつかから分離されている、並びに/又は(2)例えば、プレート上で及び/若しくは発酵槽で生育するような(ただし、これらに限定されない)人工的培養条件を使用して、人の手で生成、調製、精製及び/若しくは製造された細菌又はバクテリオファージのことである。単離された細菌は、そのような培養物がモノ培養物ではないにしても、培養される細菌を含む。実施形態では、単離された細菌はモノ培養物として培養される(例えば、プレート上で又は発酵槽のような液体培養で)細菌である。単離された細菌及びバクテリオファージは、それに最初に付随していたその他の構成要素の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約99%又はこれよりも多く(例えば、重量で)から分離されていてもよい。実施形態において、単離された細菌は、約80%よりも多く、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%よりも多く(例えば、重量で)純粋である。実施形態において、単離されたバクテリオファージは、約80%よりも多く、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%よりも多く(例えば、重量で)純粋である。実施形態において、本明細書で提供される組成物は1つ以上の単離されたバクテリオファージを含む。実施形態において、本明細書で提供される組成物は単離されたバクテリオファージを含む。実施形態において、投与されるバクテリオファージは単離されたバクテリオファージである。実施形態において、本明細書で提供される組成物は1つ以上の単離された細菌を含む。実施形態において、本明細書で提供される組成物は単離された細菌を含む。実施形態において、投与される細菌は単離された細菌である。
【0030】
「対照」試料又は値とは、試験試料との比較のために、基準として、通常は既知の基準としての役割を果たす試料のことである。例えば、試験試料は、試験条件から、例えば、試験化合物(例えば、酵素)若しくはファージの存在下で採取し、試験化合物、ファージ若しくは細菌の非存在下(陰性対照)又は既知の化合物、ファージ若しくは細菌の存在下(陽性対照)などの既知の条件で採取した試料と比べることが可能である。対照はいくつかの試験又は結果から集めた平均値を表すことも可能である。当業者であれば、対照は、任意の数のパラメータの評価のために設計することが可能であることを認識する。例えば、対照は、薬理学的データ(例えば、半減期、生物膜若しくはこの構成要素の分解、又は細菌細胞溶解)又は治療方針(例えば、副作用の比較)に基づいて治療効果を比較するように考案することが可能である。当業者であれば、所与の状況においてどの対照が役立つのかを理解し、対照値との比較に基づいてデータを分析することができる。対照は、データの重要性を判定するのにも役立つ。例えば、所与のパラメータの値が対照において大きく異なる場合、試験試料のばらつきは有意であるとはみなされない。
【0031】
「核酸」とは、ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)及び一本、二本若しくは複数鎖形態でのこれらのポリマー又はこれらの相補体のことである。用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「オリゴ」又は同類の物とは、通常の習慣的な意味で、ヌクレオチドの直線状の配列のことである。オリゴヌクレオチドは、典型的には、約5、6、7、8、9、10、12、15、25、30、40、50又はもっと長いヌクレオチド~約100ヌクレオチド長までである。ポリヌクレオチドは、任意の長さのポリマーであり、もっと大きな長さ、例えば、200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10000、20000、30000、40000等を含む。ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドは一般に、リン酸ジエステル結合を含有するが、一部の場合、例えば、ホスホロアミド酸、ホスホロチオエート、ジチオリン酸又はO-メチルホスホロアミダイト連鎖(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、Oxford University Press参照)を含む別の骨格;並びにペプチド核酸骨格及び連鎖を有することがある核酸類似物が含まれる。他の類似物核酸は、米国特許第5,235,033号及び米国特許第5,034,506号並びにChapters 6 and 7、ASC Symposium Series 580、Carbohydrate Modifications in Antisense Research、Sanghui & Cook、edsに記載される骨格を含む、陽性骨格、非イオン性骨格及び非リボース骨格を有する核酸を含む。1つ以上の炭素環式糖を含有する核酸も核酸の1つの定義内に含まれる。リボース-リン酸骨格の改変は、種々の理由で、例えば、生理的環境での又はバイオチップ上のプローブとしてのそのような分子の安定性及び半減期を増やすために、行ってもよい。天然に存在する核酸と類似物の混合物を作成することが可能であり、代わりに、異なる核酸類似物の混合物、及び天然に存在する核酸と類似物の混合物を作成してもよい。
【0032】
用語「bp」及び同類の物は、通常の習慣的な意味で、示された数の塩基対のことである。
【0033】
「配列同一性のパーセント」は比較窓で2つの最適に整列させた配列を比較することにより決定され、そこではポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の比較窓での一部は2つの配列の最適整列のための参照配列(付加も欠失も含まない)と比べた場合、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含んでいてもよい。実施形態において、パーセントは、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列に存在している位置の数を決定し、マッチした位置の数を比較窓の全位置数で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセントを出すことにより計算される。
【0034】
用語「同一の」又はパーセント「同一性」とは、2つ又はそれよりも多い核酸又はポリペプチド配列という文脈では、比較窓又は以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、若しくは手動アライメント及び目視検査により測定した指定された領域にわたって比較し、最適一致になるよう整列させた場合、同じであるか、又は同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの特定のパーセント(すなわち、例えば、全核酸若しくはポリペプチド配列又は核酸若しくはポリペプチドの個々の部分若しくはドメインの特定の領域にわたり50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれよりも多い同一性)を有する2つ又はそれよりも多い配列若しくはサブシーケンスのことである。次に、そのような配列は「実質的に同一」と言われる。この定義は、試験配列の相補体にも及ぶ。実施形態において、同一性は、約20、50、100、1000、2500、5000、7500、10000、15000、20000、25000、若しくは30000アミノ酸又はヌクレオチド長、又は少なくとも約20、50、100、1000、2500、5000、7500、10000、15000、20000、25000、若しくは30000アミノ酸又はヌクレオチド長~約31000、32000、33000、34000若しくは35000アミノ酸又はヌクレオチド長、約31000、32000、33000、34000若しくは35000アミノ酸又はヌクレオチド長未満、又は少なくとも約31000、32000、33000、34000又は35000アミノ酸又はヌクレオチド長である領域にわたって存在する。任意選択的に、同一性は、少なくとも約10~約100、約20~約75、約30~約50アミノ酸又はヌクレオチド長である領域にわたって存在する。任意選択的に、同一性は、少なくとも約50アミノ酸長である領域にわたって、又はさらに好ましくは、100~500若しくは1000若しくはそれよりも多いアミノ酸長である領域にわたって存在する。配列番号1、11、13、15、17、19、21、23、25又は27のうちのいずれかに実質的に同一である配列を有する核酸(例えば、ゲノム又はこの一部)を含むファージが本明細書に含まれる。本明細書で提供されるファージの非限定的例は、配列番号1に実質的に同一である配列を有するゲノムを含む。
【0035】
配列比較では、典型的には1つの配列は参照配列として機能し、これと試験配列は比べられる。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列をコンピュータに入れ、必要であればサブシーケンス座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。好ましくは、デフォルトプログラムパラメータを使用することが可能であるか、又は代わりのパラメータを指定することが可能である。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列と比べた試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0036】
「比較窓」は、本明細書で使用される場合、2つの配列が最適に整列された後、配列を同じ数の連続する位置の参照配列と比べてもよい連続する位置の数のいずれか1つのセグメントへの言及を含む。実施形態において、比較窓は、約20、50、100、1000、2500、5000、7500、10000、15000、20000、25000、若しくは30000、又は少なくとも約20、50、100、1000、2500、5000、7500、10000、15000、20000、25000、若しくは30000~約31000、32000、33000、34000若しくは35000、約31000、32000、33000、34000若しくは35000未満又は少なくとも約31000、32000、33000、34000若しくは35000の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、約20又は少なくとも約20~約31000、約31000未満又は少なくとも約31000の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、約25000又は少なくとも約25000~約31000、約31000未満又は少なくとも約31000の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、約26000又は少なくとも約26000~約31000、約31000未満又は少なくとも約31000の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、約27000又は少なくとも約27000~約31000、約31000未満又は少なくとも約31000の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、約28000又は少なくとも約28000~約31000、約31000未満又は少なくとも約31000の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、約29000又は少なくとも約29000~約31000、約31000未満又は少なくとも約31000の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、約30000又は少なくとも約30000~約31000、約31000未満又は少なくとも約31000の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、約20~約600、約50~約200、又は約100~約150の連続する位置を含む。実施形態において、比較窓は、バクテリオファージゲノムの配列のような、参照配列の全長である。比較のための配列の整列の方法は当技術分野では周知である。実施形態において、比較のための配列の最適整列は、例えば、Smith&Waterman、Adv.Appl.Math.2:482頁(1981年)の局地的相同性アルゴリズムにより、Needleman&Wunsch、J.Mol.Biol.48:443頁(1970年)の相同性整列アルゴリズムにより、Pearson&Lipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444頁(1988年)の類似探索法により、これらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)のコンピュータ化された実行により、又は手動整列及び目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、編.1995年補遺)参照)により遂行することが可能である。
【0037】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschulら、Nuc.Acids Res.25:3389~3402頁(1977年)及びAltschulら、J.Mol.Biol.215:403~410頁(1990年)に記載されている。当業者であれば認識するように、BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、the National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトを通じて公開されている。実施形態において、本明細書に記載されているパラメータを用いて、BLAST及びBLAST2.0を使用して核酸及びタンパク質についてのパーセント配列同一性を決定する。実施形態において、BLASTアルゴリズムは、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することにより高スコアリング配列対(HSP)を先ず同定することを含み、このワードはデータベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合、一部の正の値閾値スコアーTとマッチするか、又はこれを満たす。実施形態において、Tは近隣ワードスコアー閾値と呼ばれる(Altschulら、上記)。実施形態において、これらの最初の近隣ワードヒットは、それを含有するもっと長いHSPを見つける検索を開始するためのシーズとして機能する。実施形態において、ワードヒットは、累積アライメントスコアーを増やすことができる限り、それぞれの配列に沿って両方向に延長される。実施形態において、累積スコアーは、ヌクレオチド配列ではパラメータM(マッチしている残基の対についてのリワードスコアー;常に>0)及びN(ミスマッチ残基についてのペナルティースコアー;常に<0)を使用して計算される。実施形態において、アミノ酸配列では、スコアリングマトリックスを使用して蓄積スコアーを計算する。実施形態において、それぞれの方向でのワードヒットの延長は、累積アライメントスコアーがその最大達成値から量X減る;累積スコアーが、1つ以上のマイナススコアリング残基アライメントの蓄積により、ゼロ以下まで下がる;又はどちらかの配列の末端まで到達すると停止される。実施形態において、BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXはアライメントの感度及び速度を決定する。実施形態において、NCBI BLASTN又はBLASTPプログラムを使用して配列を整列させる。実施形態において、BLASTN又はBLASTPプログラムは、NCBIが使用するデフォルトを使用する。実施形態において、BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)はデフォルトとして:28のワードサイズ(W);10の期待閾値(E);0に設定されたクエリー範囲中の最大マッチ;1、-2のマッチ/ミスマッチスコアー;線形ギャップコスト;使用された低コンプレキシティー領域のためのフィルター;及び使用されるルックアップテーブルのためだけのマスクを使用する。実施形態において、BLASTPプログラム(アミノ酸配列用)はデフォルトとして:3のワードサイズ(W);10の期待閾値(E);0に設定されたクエリー範囲中の最大マッチ;BLOSUM62マトリックス(Henikoff&Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915頁(1992年)参照);イグジステンスのギャップコスト:11及びイクステンション:1;並びに条件付き組成スコアーマトリックスアジャストメントを使用する。
【0038】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」はアミノ酸残基のポリマーを指すのに本明細書では互換的に使用される。用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然には存在しないアミノ酸ポリマーに当てはまる。
【0039】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在する及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸に類似する方法で機能するアミノ酸類似物及びアミノ酸模倣物のことである。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによりコードされたアミノ酸、並びに後に改変されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似物とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合しているα炭素を有する化合物のことである。そのような類似物は改変R基(例えば、ノルロイシン)又は改変ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なっているが、天然に存在するアミノ酸に類似する方法で機能する構造を有する化学化合物のことである。
【0040】
アミノ酸は、一般的に知られている3文字記号により又はIUPAC-IUB生化学命名法委員会が推奨する1文字記号により本明細書では言及される場合がある。ヌクレオチドは、同様に、その一般に受け入れられている1文字コードにより言及される場合がある。
【0041】
「保存的改変変異体」はアミノ酸と核酸配列の両方に適用する。特定の核酸配列に関しては、保存的改変変異体とは、同じ若しくは本質的に同じアミノ酸配列をコードしている核酸、又は核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合は、本質的に同じ配列のことである。遺伝コードの縮重のために、多数の機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードしている。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUはすべてアミノ酸アラニンをコードしている。したがって、アラニンがコドンにより指定されているすべての位置では、コドンは、コードされているポリペプチドを変更することなく記載された対応するコドンのいずれにも変更することが可能である。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、これは保存的改変変異の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列は、核酸の考えられるすべてのサイレント変異も記述している。当業者であれば、核酸のそれぞれのコドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG及び通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除いて)は改変しても機能的に同一の分子をもたらすことが可能であることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレント変異は、発現産物に関してはそれぞれの記載される配列に暗に含まれているが、実際のプローブ配列に関しては含まれていない。
【0042】
アミノ酸配列に関して、当業者であれば、単一のアミノ酸を変更するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列への個々の置換は、変更によりアミノ酸が化学的に類似するアミノ酸で置換される「保存的改変変異体」であることを認識している。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野では周知である。そのような保存的改変変異体は、多型変異体、種間相同体及び対立遺伝子に追加され、これらを排除しない。
【0043】
以下の8つの群それぞれが互いに対して保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(l)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984年)参照)。
【0044】
用語「疾患」とは、哺乳動物の正常な健康からの任意の逸脱のことであり、疾患症状が存在しているときの状態、並びに逸脱(例えば、ディスバイオシス、感染、遺伝子突然変異、遺伝的欠陥等)が起きているが、症状はまだはっきり表れていない状態を含む。実施形態において、疾患はざ瘡である。実施形態において、疾患は皮膚ディスバイオシスを含む。実施形態において、本明細書で提供される方法、組成物、システム、ファージ及びプロバイオテック細菌は、限定せずに、霊長類(ヒトのような)、家畜、使役動物及び愛玩動物(例えば、伴侶動物)を含む、脊椎動物綱、哺乳類のメンバーである対象において使用するのに適している。実施形態において、対象はヒト対象である。本明細書で使用される場合、疾患の「症状」は疾患に伴う臨床又は実験室徴候を含むが、対象が感じるか、又は観察することができるものに限定されない。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「皮膚ディスバイオシス」は、健康な又は母集団と比べて皮膚微生物叢の違いを意味する。実施形態において、ディスバイオシスは、皮膚表面に、皮膚内に(例えば、皮領域又は皮膚細胞の層内)、腺内に及び/又は皮膚の毛穴内にある。実施形態において、ディスバイオシスは汗及び/又は皮脂内にある。実施形態において、皮膚は顔面(例えば、対象の額、1つ以上の頬、鼻又は顎)にある。実施形態において、皮膚は肩、胸又は背中にある。実施形態において、皮膚ディスバイオシスは健康な又は母集団と比べた場合、微生物叢共生菌種多様性の変化を含み、有益な微生物の減少及び/又は病原性共生生物(病原性又は潜在的に病原性の微生物)の増加及び/又は全体的微生物叢菌種多様性の減少を含んでいてもよい。ホルモン変化(例えば、思春期中の)、稀な洗浄、化粧品の使用、抗生物質の使用、心理的及び肉体的ストレス、放射線並びに食事の変化を含む多くの要因がディスバイオシスをもたらす可能性がある。
【0046】
実施形態において、組成物はざ瘡に罹っている対象に「治療有効用量」で投与される。この使用に効果的な量は、疾患の重症度及び患者の健康の全身状態に依拠してもよい。組成物の単回又は複数回投与は、患者が必要とし、許容する投薬量及び回数に応じて施してもよい。「患者」又は「対象」は、ヒトと他の動物、特に哺乳動物の両方を含む。したがって、方法はヒト治療と獣医応用の両方に適用可能である。
【0047】
「薬学的に許容される賦形剤」及び「薬学的に許容される担体」とは、活性薬剤の対象への投与及び対象による吸収を支援し、患者に対し著しい有害毒性効果を引き起こさずに本発明の組成物に含むことが可能な物質のことである。薬学的に許容される賦形剤の非限定的例には、水、NaCl、正常食塩溶液、乳酸リンゲル液、正常サクロース、正常グルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、被覆剤、甘味料、香料、塩類溶液(リンゲル液のような)、アルコール、オイル、ゼラチン、ラクトース、アミロース又はデンプンのような炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン(polyvinyl pyrrolidine)及び顔料並びに同類の物が含まれる。そのような調製物は無菌化し、必要に応じて、潤滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、バッファー、着色及び/又は芳香物質並びに同類の物のような、バクテリオファージ、プロバイオティク細菌及び/又は本発明の化合物と有害な反応をしない補助剤と混合することが可能である。当業者であれば、本発明では他の薬学的賦形剤が有用であることを認識する。
【0048】
用語「接触させる」は、2つの化学種を反応させる、相互作用させるか、又は物理的に触れさせることを含んでいてもよく、2つの化学種は、例えば、本明細書に記載される酵素及び酵素の基質を含む生物膜でもよい。別の例では、2つの化学種はバクテリオファージ及びバクテリオファージが感染する菌種の細胞でもよい。実施形態において、接触させることは、例えば、本明細書に記載されるバクテリオファージをP.アクネス細胞と相互作用させることを含む。実施形態において、接触させることは、例えば、本明細書に記載される酵素をP.アクネス生物膜と相互作用させることを含む。
【0049】
「患者」又は「治療を必要とする対象」とは、指示された障害に罹っているか、又は罹る可能性のある動物界の生きているメンバーのことである。実施形態において、対象は自然に疾患に罹る個体を含む種のメンバーである。実施形態において、対象は哺乳動物である。哺乳動物の非限定的例には、齧歯類(例えば、マウス及びラット)、霊長類(例えば、キツネザル、ブッシュベイビー、サル、類人猿及びヒト)、ウサギ、イヌ(例えば、コンパニオンドッグ、介助犬又は警察犬、軍用犬、レース犬若しくはショードッグのようなワークドッグ)、ネコ(例えば、家猫)、家畜(ブタ、ウシ、ロバ、ラバ、バイソン、ヤギ、ラクダ及びヒツジ)及びシカが含まれる。実施形態において、対象はヒトである。
【0050】
用語「対象」、「患者」、「個体」等は限定的であることを意図されておらず、一般的に置き換えが可能である。すなわち、「患者」として記載される「個体」は必ずしも所与の疾患を持たず、医師の診断を求めているだけでもよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、菌種を表す略字「sp.」は、指示された属の少なくとも1つの菌種(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はこれよりも多い菌種)を意味する。菌種を表す略字「spp.」は、指示された属の2つ又はそれよりも多い菌種(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10又はこれよりも多い)を意味する。実施形態において、本明細書で提供される方法及び組成物は、指示された属(genus)若しくは指示された属(genera)内の単一菌種、又は指示された属(genus)若しくは指示された属(genera)内の2つ若しくはそれよりも多い(例えば、2よりも多くを含む複数)菌種を含む。実施形態において、示された菌種の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくはこれよりも多い、又はすべては単離される。実施形態において、示された菌種は一緒に投与される。実施形態においては、示された菌種のそれぞれは菌種のそれぞれを含む単一の組成物中に存在する。実施形態において、菌種のそれぞれは同時に、例えば、互いから約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、30又は60、1~5、1~10、1~30、1~60又は5~15秒又は分以内に投与される。
【0052】
本開示では、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(containing)」及び「有する(having)」並びに同類の物は、米国特許法においてこれらの単語に帰せられる意味を有することが可能であり、「含む(includes)」、「含んでいる(icluding)」及び同類の物を意味することが可能である。したがって、「含んでいる(including)」、「含有する(containing)」又は「により特徴付けられる(characterized by)」と同義である移行語「含んでいる(comprising)」は、包括的であるか、又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない特長、整数、ステップ、操作、要素及び/又は構成要素を排除しない。「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「本質的になる(consisting essentially)」は同様に、米国特許法において帰せられる意味を有し、用語はオープンエンドであり、列挙されている物の基本的又は新規の特徴が列挙されている物よりも多くの物の存在により変更されない限り、列挙されている物よりも多くの物の存在を許すが、先行技術実施形態を排除する。これとは対照的に、移行句「からなる(consisting of)」は、明記されていないいかなる特長、整数、要素、ステップ、操作、構成要素及び/又は成分も排除する。
【0053】
本明細書で使用される場合、数値又は範囲という文脈での用語「約(about)」は、文脈がもっと限定された範囲を必要としなければ、列挙又は請求された数値又は範囲から±10%を意味する。
【0054】
本明細書の記載では及び特許請求の範囲では、「の少なくとも1つ」又は「の1つ以上」のような語句は、要素又は特長の接続一覧の前に存在してよい。用語「及び/又は」は2つ又はそれよりも多い要素又は特長の一覧にも存在していてよい。他の方法ではその語句が使用されている文脈が暗に又は明白に矛盾しなければ、そのような語句は、一覧に載せられた要素若しくは特長のいずれかを個別に、又は列挙された要素若しくは特長のいずれかをその他の列挙された要素若しくは特長のいずれかと組み合わせて意味することが意図されている。例えば、語句「A及びBの少なくとも1つ」、「A及びBの1つ以上」、並びに「A及び/又はB」は、それぞれが「A単独、B単独又はAとB一緒」を意味することが意図されている。3つ又はそれよりも多い項目を含む一覧についても類似する解釈が意図されている。例えば、語句「A、B及びCの少なくとも1つ」、「A、B及びCの1つ以上」並びに「A、B及び/又はC」は、それぞれが「A単独、B単独、C単独、AとB一緒、AとC一緒、BとC一緒、又はAとBとC一緒」を意味することが意図されている。さらに、本明細書及び特許請求の範囲での用語「に基づく」の使用は、列挙されていない特長又は要素も許容されるように、「少なくとも一部に基づく」を意味することが意図されている。
【0055】
パラメータ範囲が提供される場合、その範囲内のすべての整数及びこの10分の1も本発明により提供されることは理解される。例えば、「0.2~5mg」は、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg等5.0mgまで及びこれを含む開示である。
【0056】
本明細書の記載で及び続く特許請求の範囲全体で使用される場合、「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「それ(the)」の意味は、文脈から他の方法ではっきりと指示されていなければ、複数の参照を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、状態、疾患若しくは障害又は状態、疾患若しくは障害に伴う症状を「治療する」又はこの「治療」とは、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチのことである。有益な又は所望の臨床結果は、1つ以上の症状又は状態の軽減又は回復、状態、障害又は疾患の程度の減退、状態、障害又は疾患の状態の安定化、状態、障害又は疾患の発症の予防、状態、障害又は疾患の広がりの予防、状態、障害又は疾患進行の遅延又は緩徐化、状態、障害又は疾患発病の遅延又は緩徐化、状態、障害又は疾患状態の回復又は緩和、及び部分的であれ全体的であれ、寛解を含むがこれらに限定されない。「治療する」は、状態、障害又は疾患の進行を阻害すること、状態、障害又は疾患の進行を一時的に緩徐化することを意味することも可能であるが、いくつかの例では、状態、障害又は疾患の進行を永久に停止することを含む。ざ瘡を治療する場合、用語は、例えば、皮膚ディスバイオシス及び/又は嚢胞性病変、稗粒腫(閉じた塞がれた毛穴)、黒色面皰(開いた塞がれた毛穴、空気に曝された油は濃い色、例えば、茶色又は黒色を有する)、モールレッド(mall red)、テンダーバンプ(丘疹)、吹き出物(膿疱;先端が膿んでいる丘疹)、皮膚の表面下の大きく硬く痛いしこり(小結節)の数若しくはサイズを低減することを指すことが可能である。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」及び「予防する」は、絶対的な用語であることが意図されていない。実施形態において、治療は、罹患している疾患、状態又は疾患若しくは状態の症状の重症度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の低減を指すことが可能である。実施形態において、疾患を治療するための方法は、対照と比べて対象における疾患の1つ以上の症状に10%の低減がある場合には治療であるとみなされる。したがって、低減は、天然又は対照レベルと比べた場合、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%又は10%~100%でのいかなるパーセント低減でも可能である。治療は必ずしも、疾患、状態又は疾患若しくは状態の症状の治癒又は完全な切除を指すわけではないことは理解されている。実施形態において、減少する、低減するか、又は阻害するへの言及は、対照レベルと比べた場合、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれよりも大きな変化を含み、そのような用語は完全な除去を含むことが可能であるが、必ずしもこれを含まない。治療は、発症の任意の遅延、症状の回復、患者皮膚外見の改善等を指すことが可能である。治療の効果は、治療を受けていない個体又は個体のプールと、又は治療前若しくは治療中の異なる時期の同じ患者と比べることが可能である。実施形態において、疾患の重症度は、例えば、投与前の個体と又は治療を受けていない対照個体と比べた場合、少なくとも10%は低減される。一部の態様では、疾患の重症度は少なくとも25%、50%、75%、80%若しくは90%低減されるか、又は一部の場合、もはや標準診断技法を使用しても検出が不可能である。実施形態において、治療はざ瘡の少なくとも1つの症状を低減するのに効果的である。実施形態において、治療は、対象の顔、額、胸、背中及び/又は肩の吹き出物(膿疱)のレベルを低減するのに効果的である。実施形態において、治療は、対象の顔、額、胸、背中及び/又は肩の稗粒腫(閉じた塞がれた毛穴)のレベルを低減するのに効果的である。実施形態において、治療は、対象の顔、額、胸、背中及び/又は肩の黒色面皰(開いた塞がれた毛穴)のレベルを低減するのに効果的である。実施形態において、治療は、対象の顔、額、胸、背中及び/又は肩の丘疹のレベルを低減するのに効果的である。実施形態において、治療は、対象の顔、額、胸、背中及び/又は肩の皮膚の表面下の硬く痛いしこり(小結節)のレベルを低減するのに効果的である。実施形態において、治療は、対象の顔、額、胸、背中及び/又は肩の嚢胞性病変のレベルを低減するのに効果的である。実施形態において、レベル(例えば、数)は、治療が開始した前と比べて低減される。実施形態において、レベル(例えば、数)は、ざ瘡に苦しめられているが、治療は受けたことがない対応する対象と比べて低減される。実施形態において、レベル(例えば、数)は、ざ瘡に苦しめられているが、バクテリオファージを含む治療は受けたことがない対応する対象と比べて低減される。
【0059】
用語「有効量」、「有効用量」、「治療有効量」等とは、本明細書に記載される障害を回復するのに十分な薬剤の量のことである。例えば、所与のパラメータでは、治療有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%又は少なくとも100%の増加又は減少を示す。治療効果は「倍」の増加又は減少として表すことも可能である。例えば、治療有効量は、対照に対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍又はそれよりも多い効果を有することが可能である。
【0060】
用語「診断」とは、対象が所与の代謝障害を有する相対的確率のことである。症状及び診断基準は本明細書に要約されている。同様に、用語「予後」とは、ある特定の将来の結果が対象において発生し得る相対的確率のことである。例えば、本発明という文脈では、予後は、個体がざ瘡を発症する可能性を指すことが可能である。
予後は疾患のありそうな重症度(例えば、症状の重症度、機能低下の速度等)を指すことが可能である。医療診断の分野の当業者であれば認識するように、用語は絶対的であることを意図されていない。
【0061】
バクテリオファージを含む組成物及び組合せ
態様において、少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含み、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる組成物が本明細書で提供される。
【0062】
態様において、少なくとも1つのプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ、1つ以下の抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含む組成物が本明細書で提供される。
【0063】
態様において、少なくとも1つのプロピオニバクテリウムアクネスバクテリオファージ及び1つ以下の抗ざ瘡化合物からなる活性成分並びに薬学的に許容される担体を含む組成物が本明細書で提供される。
【0064】
態様において、少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含み、プロバイオティク細菌を含まない組成物が本明細書で提供される。
【0065】
実施形態において、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物は過酸化ベンゾイルである。実施形態において、過酸化ベンゾイルは、2.5%~10%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、過酸化ベンゾイルは、2.5%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%又は2%(重量/体積)を超える濃度で存在している。実施形態において、過酸化ベンゾイルは、2.5%~10%、例えば、約2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%又は10%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、過酸化ベンゾイルは、2.5%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%又は2%(重量/体積)を超える濃度で存在している。
【0066】
実施形態において、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物はサリチル酸である。実施形態において、サリチル酸は、0.5%~2%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、サリチル酸は、0.5%未満であるが、約0.1%(重量/体積)を超える濃度で存在している。実施形態において、サリチル酸は、0.5%~2%、例えば、約0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%又は2%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、サリチル酸は、0.5%未満であるが、約0.1%(重量/体積)を超える濃度で存在している。
【0067】
実施形態において、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物は硫黄である。実施形態において、硫黄は、3%~10%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、硫黄は、3%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%又は2.5%(重量/体積)を超える濃度で存在している。実施形態において、硫黄は、3%~10%、例えば、約3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%又は10%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、硫黄は、3%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%又は2.5%(重量/体積)を超える濃度で存在している。実施形態において、レゾルシノールは2%の濃度で存在し、硫黄は3%~8%(例えば、約2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%又は8%)(重量/体積)の濃度で存在している。
【0068】
実施形態において、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物はレゾルシノール及び硫黄である。実施形態において、レゾルシノールは2%の濃度で存在し、硫黄は3%~8%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、レゾルシノールは2%の濃度で存在し、硫黄は3%~8%(例えば、約2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%又は8%)(重量/体積)の濃度で存在している。
【0069】
実施形態において、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物はレゾルシノールモノアセテート及び硫黄を含む。実施形態において、レゾルシノールモノアセテートは3%の濃度で存在し、硫黄は3%~8%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、レゾルシノールモノアセテートは3%の濃度で存在し、硫黄は3%~8%(例えば、約2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%又は8%)(重量/体積)の濃度で存在している。
【0070】
実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×106×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、又は1×1011プラーク形成単位(pfu)の量で存在している。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、約1×10~1×1011pfuの量で存在している。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは、約1×10~1×10、約1×10~1×10、約1×10~1×1010、約1×10~1×1011又は約1×1010~1×1011pfuの量で存在している。
【0071】
実施形態において、プロバイオティク細菌は、約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×106×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、又は1×1011コロニー形成単位(cfu)の量で存在している。実施形態において、プロバイオティク細菌は、約1×10~1×1011cfuの量で存在している。実施形態において、プロバイオティク細菌は、約1×10~1×10、約1×10~1×10、約1×10~1×1010、約1×10~1×1011又は約1×1010~1×1011cfuの量で存在している。
【0072】
実施形態において、抗ざ瘡化合物は、抗生物質、レチノイド又はアルファヒドロキシ酸である。
【0073】
態様において、P.アクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組成物が本明細書で提供される。
【0074】
態様において、少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物を含み、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる組合せであって、少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物のそれぞれが、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物中にある組合せが本明細書で提供される。
【0075】
態様において、P.アクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組合せが本明細書で提供される。
【0076】
実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは線状二本鎖DNAゲノムを有する。
【0077】
実施形態において、P.アクネスバクテリオファージはバクテリオファージシホウイルス科(Siphoviridae)内にある。
【0078】
実施形態において、バクテリオファージは野生型バクテリオファージである。実施形態において、バクテリオファージは、野生型アクネスバクテリオファージのゲノム配列に少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%同一であるヌクレオチド配列を持つゲノムを有する。野生型アクネスバクテリオファージのゲノム配列の非限定的例は以下の通りである。
【0079】
【化1】
【0080】
実施形態において、バクテリオファージは、受託番号NCIMB 41349、41350又は41351の下で寄託されたバクテリオファージである。実施形態において、バクテリオファージは、受託番号NCIMB 41349の下で寄託されたバクテリオファージのゲノムに少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%同一であるヌクレオチド配列を持つゲノムを有する。実施形態において、バクテリオファージは、受託番号NCIMB 41350の下で寄託されたバクテリオファージのゲノムに少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%同一であるヌクレオチド配列を持つゲノムを有する。実施形態において、バクテリオファージは、受託番号NCIMB 41351の下で寄託されたバクテリオファージのゲノムに少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%同一であるヌクレオチド配列を持つゲノムを有する。
【0081】
実施形態において、バクテリオファージは、配列番号1のヌクレオチド配列に少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%同一であるヌクレオチド配列を持つゲノムを有する。実施形態において、バクテリオファージは、配列番号1のヌクレオチド配列に同一であるヌクレオチド配列を持つゲノムを有する。
【0082】
実施形態において、バクテリオファージのゲノムは、5’から3’末端まで、小ターミナーゼ、大ターミナーゼ、ポータルタンパク質、gp4、スキャフォールドタンパク質、主頭部タンパク質、gp7、gp8、gp9、gp10、主尾部タンパク質、gp12、gp13、巻き尺タンパク質、小尾部サブユニット、任意選択的に、プロテアーゼ、gp17、gp18、尾部タンパク質、アミダーゼ、ホリン、gp22、gp23、シグマ因子、gp25、gp26、gp27、gp28、gp29、gp30、DNAプリマーゼ、DNAプリマーゼ2、gp33、DNAヘリカーゼ、gp35、gp36、エキソヌクレアーゼ、p38、gp39、gp40、gp41、gp42、gp43、gp44、gp45、gp46、gp47及びgp48をコードする。
【0083】
実施形態において、組成物はP.アクネス生物膜分解酵素をさらに含む。
【0084】
実施形態において、酵素は抗老化酵素である。実施形態において、抗老化酵素はスーパーオキシドジスムターゼ又はペルオキシダーゼである。
【0085】
実施形態において、酵素はP.アクネス生物膜分解酵素である。実施形態において、酵素は、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ又は制限エンドヌクレアーゼである。実施形態において、酵素はグリコシダーゼである。実施形態において、グリコシダーゼはグリコシドヒドロラーゼである。実施形態において、酵素はN-アセチル-D-グルコサミンの線状ポリマーの加水分解を触媒する。実施形態において、酵素はβ-ヘキソサミニダーゼである。実施形態において、酵素は、アセチルグルコサミンポリマーのβ-1,6-グリコシド結合を加水分解する。実施形態において、酵素はデオキシリボヌクレアーゼI、制限エンドヌクレアーゼ、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、スブチリシン、セラチオペプチダーゼ、ディスパーシン、アルギン酸リアーゼ、アミラーゼ又はセルラーゼである。実施形態において、酵素はディスパーシンBである。実施形態において、酵素はプロテアーゼであり、プロテアーゼはプロテイナーゼK又はスブチリシンである。
【0086】
実施形態において、酵素はディスパーシンである。実施形態において、酵素はディスパーシンBである。実施形態において、酵素は、酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)ディスパーシン(ディスパーシンBのような)の天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。ディスパーシンBをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0087】
【化2】
【0088】
ディスパーシンBアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0089】
【化3】
【0090】
実施形態において、酵素はアルギン酸リアーゼである。実施形態において、酵素は、アルギン酸リアーゼの酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)アルギン酸リアーゼの天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。アルギン酸リアーゼをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0091】
【化4】
【0092】
アルギン酸リアーゼアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0093】
【化5】
【0094】
実施形態において、酵素はアミラーゼである。実施形態において、酵素は、アミラーゼの酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)アミラーゼの天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。アミラーゼをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0095】
【化6】
【0096】
アミラーゼアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0097】
【化7】
【0098】
実施形態において、酵素はセルラーゼである。実施形態において、酵素は、セルラーゼの酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)セルラーゼの天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。セルラーゼをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0099】
【化8】
【0100】
セルラーゼアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0101】
【化9】
【0102】
実施形態において、酵素はプロテイナーゼKである。実施形態において、酵素は、プロテイナーゼKの酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)プロテイナーゼKの天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。プロテイナーゼKをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0103】
【化10】
【0104】
プロテイナーゼKアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0105】
【化11】
【0106】
実施形態において、酵素はスブチリシンである。実施形態において、酵素は、スブチリシンの酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)スブチリシンの天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。スブチリシンをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0107】
【化12】
【0108】
スブチリシンアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0109】
【化13】
【0110】
実施形態において、酵素はトリプシンである。実施形態において、酵素は、トリプシンの酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)トリプシンの天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。トリプシンをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0111】
【化14】
【0112】
トリプシンアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0113】
【化15】
【0114】
実施形態において、酵素はセラチオペプチダーゼである。実施形態において、酵素は、セラチオペプチダーゼの酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)セラチオペプチダーゼの天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。セラチオペプチダーゼをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0115】
【化16】
【0116】
セラチオペプチダーゼアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0117】
【化17】
【0118】
実施形態において、酵素はデオキシリボヌクレアーゼである。実施形態において、酵素は、デオキシリボヌクレアーゼの酵素活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比べて少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性内)デオキシリボヌクレアーゼの天然に存在する形態、相同体、アイソフォーム又は変異体である。実施形態において、変異体は、天然に存在する形態と比べて全配列又は配列の一部(例えば、50、100、150又は200の連続するアミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態において、酵素はデオキシリボヌクレアーゼIである。実施形態において、デオキシリボヌクレアーゼIはウシ膵臓デオキシリボヌクレアーゼIである。ウシ膵臓デオキシリボヌクレアーゼIをコードするDNA配列の非限定的例は以下の通りである。
【0119】
【化18】
【0120】
ウシ膵臓デオキシリボヌクレアーゼIアミノ酸配列の非限定的例は以下の通りである。
【0121】
【化19】
【0122】
実施形態において、組成物又は組合せはプロバイオティク細菌を含む。
【0123】
実施形態において、プロバイオティク細菌は、P.属種(P. sp.)、スタフィロコッカス属種(Staphylococcus sp.)及び/又はコリネバクテリウム属種(Corynebacterium sp.)細菌である。
【0124】
実施形態において、プロバイオティク細菌は、ベータプロテオバクテリア(Betaproteobacteria)綱内の細菌である。
【0125】
実施形態において、プロバイオティク細菌は、プロバイオティクP.アクネス菌である。
【0126】
実施形態において、P.アクネス菌は(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT992C突然変異のある16SリボソームDNA(rDNA)配列を有し;(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT838C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてC1322T突然変異のある16S rDNA配列を有し;(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてC986T突然変異のある16S rDNA配列を有し;(e)配列番号3の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(f)配列番号4の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(g)線状プラスミドを含まず;(h)病原性因子を含むプラスミドを含まず;並びに/又は(i)染色体外リパーゼ及び/若しくは密着性病原性因子をコードするプラスミドがない。
【0127】
実施形態において、P.アクネス菌は(a)浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%未満を産生する;(b)付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%未満を産生する;(c)上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも50%少ない;及び/又は(d)病原性P.アクネス株より炎症性ではない。
【0128】
実施形態において、組合せ又は組成物は少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌を含む。実施形態において、少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌はプロピオニバクテリウム・グラヌローサム(Propionibacterium granulosum)及び/又はプロピオニバクテリウム・アビダム(Propionibacterium avidum)を含む。
【0129】
実施形態において、病原性P.アクネス株は(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C及びA1201Cのある16S rDNA配列を有し;(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG529A突然変異のある16S rDNA配列を有し;(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1004A及びT1007C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(e)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1268A突然変異のある16S rDNA配列を有し;(f)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT554C及びG1058C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(g)配列番号5の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(h)配列番号6の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(i)配列番号7の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(j)配列番号8の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(k)配列番号9の配列に同一である16S rDNA配列を有し;及び/又は(l)配列番号10の配列に同一である16S rDNA配列を有する。
【0130】
実施形態において、組合せ又は組成物は、少なくとも1つの追加のP.アクネスバクテリオファージをさらに含む。
【0131】
実施形態において、組合せ又は組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。実施形態において、薬学的に許容される担体は乳剤を含む。実施形態において、乳剤は水中油型乳剤又は油中水型乳剤である。実施形態において、組合せ又は組成物は、クリーム、ローション、懸濁液又は水溶液を含む又はこれらの形態である。
【0132】
実施形態において、バクテリオファージを含む組成物が提供される。実施形態において、組成物は、皮膚への局所適用のために処方される(すなわち、組成物は局所組成物である)。実施形態において、組成物は医薬組成物である。
【0133】
態様において、野生型P.アクネスバクテリオファージ及び単離されたプロバイオティクP.アクネス菌を含む医薬組成物が提供される。実施形態において、組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0134】
態様において、バクテリオファージ及び/又は単離されたプロバイオティクP.アクネス菌及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0135】
実施形態において、医薬組成物は皮膚への局所投与用に処方される。実施形態において、薬学的に許容される担体は乳剤を含む。実施形態において、乳剤は水中油型乳剤又は油中水型乳剤である。実施形態において、医薬組成物は、クリーム、ローション、懸濁液又は水溶液の形態である。
【0136】
実施形態において、組成物又は組合せは少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9又は10のP.アクネスバクテリオファージを含む。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは1つよりも多い型のP.アクネスバクテリオファージを含む。
【0137】
実施形態において、単離されたプロバイオティクP.アクネス菌を含む組合せ又は組成物は、少なくとも1つの追加の細菌をさらに含んでもよい。
【0138】
実施形態において、P.アクネス菌は、配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、T992C、T838C、C1322T及び/又はC986T突然変異を含む16S rDNA配列を有する。実施形態において、P.アクネス菌は、配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、T838C及びC1322T突然変異のある16S rDNA配列を含む。実施形態において、P.アクネス菌はProI株である。実施形態において、P.アクネス菌は、配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、C986T及びT992C突然変異のある16S rDNA配列を含む。実施形態において、P.アクネス菌はProII株である。実施形態において、P.アクネス菌は、(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、T992C突然変異のある16S rDNA配列を含み;(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、T838C突然変異のある16S rDNA配列を含み;(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、C1322T突然変異のある16S rDNA配列を含み;(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、C986T突然変異のある16S rDNA配列を含み;(e)配列番号3の配列に同一である16S rDNA配列を含み;(f)配列番号4の配列に同一である16S rDNA配列を含み;(g)線状プラスミドを含まず;(h)病原性因子を含むプラスミドを含まず;並びに/又は(i)染色体外リパーゼ及び/若しくは密着性病原性因子をコードするプラスミドを含まない。実施形態において、P.アクネス菌は、配列番号3又は4の配列に同一である16S rDNAを有する。
【0139】
実施形態において、P.アクネス菌は(a)浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%未満を産生する;(b)付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%未満を産生する;(c)上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも50%少ない;及び/又は(d)病原性P.アクネス株より炎症性ではない。実施形態において、病原性P.アクネス株は(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C及びA1201Cのある16S rDNA配列を有し;(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG529A突然変異のある16S rDNA配列を有し;(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1004A及びT1007C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(e)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1268A突然変異のある16S rDNA配列を有し;(f)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT554C及びG1058C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(g)配列番号5の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(h)配列番号6の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(i)配列番号7の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(j)配列番号8の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(k)配列番号9の配列に同一である16S rDNA配列を有し;及び/又は(l)配列番号10の配列に同一である16S rDNA配列を有する。
【0140】
配列番号2は、KPA171202基準株を表す16S rDNA配列であり、以下の通りである。
【0141】
【化20】
【0142】
配列番号3はProIプロバイオティク株を表す16S rDNA配列であり、以下の通りである。
ヌクレオチド838..838
ProI突然変異T838C
ヌクレオチド1322..1322
ProI突然変異C1322T
【0143】
【化21】
【0144】
配列番号4はProIIプロバイオティク株を表す16S rDNA配列であり、以下の通りである。
ヌクレオチド986..986
ProII突然変異C986T
ヌクレオチド992..992
ProII突然変異T992C
【0145】
【化22】
【0146】
実施形態において、P.アクネス菌は、浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約1~5%、1~10%、1~20%、1~30%、5~50%、5~40%、5~30%、5~20%、5~10%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~50%、20~40%、又は20~30%を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約5%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約10%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約20%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約30%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約40%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約50%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約5%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約10%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約20%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約30%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約40%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約50%未満を産生する。実施形態において、P.アクネス菌は、付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約1~5%、1~10%、1~20%、1~30%、5~50%、5~40%、5~30%、5~20%、5~10%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~50%、20~40%、又は20~30%を産生する。実施形態において、リパーゼは細胞外リパーゼである。
【0147】
実施形態において、P.アクネス菌(例えば、プロバイオティク又は病原性P.アクネス菌、比較のためのような)により産生されるリパーゼのレベルは、培養液上清中のリパーゼのレベルである。実施形態において、培養液上清は濾過される。実施形態において、培養液上清は液体(浮遊性)培養由来である。実施形態において、培養液上清は付着培養由来である。リパーゼのレベルを検出するための方法の非限定的例は、吸光度、ブラッドフォードタンパク質アッセイ、ビュレット試験由来アッセイ、フルオレサミン、アミノブラック、コロイド金、窒素検出、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、タンパク質免疫沈降、免疫電気泳動及びウェスタンブロットを含む。
【0148】
実施形態において、P.アクネス菌は、上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%少ない。実施形態において、P.アクネス菌は、上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも約50%少ない。実施形態において、P.アクネス菌は、上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも約60%少ない。実施形態において、P.アクネス菌は、上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも約70%少ない。実施形態において、P.アクネス菌は、上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも約80%少ない。実施形態において、P.アクネス菌は、上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも約90%少ない。実施形態において、P.アクネス菌は、上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも1~5%、1~10%、1~20%、1~30%、5~50%、5~40%、5~30%、5~20%、5~10%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~50%、20~40%、又は20~30%、50~60、50~70、50~80、50~90、60~80、70~90少ない。
【0149】
実施形態において、上皮細胞へのP.アクネス菌(例えば、プロバイオティク又は病原性P.アクネス菌、比較のためのような)の接着は、A-432上皮細胞を使用して判定される。実施形態において、上皮細胞は、組織培養プレート又はフラスコにコンフルエントである。実施形態において、接着は、培養された上皮細胞に接着しているP.アクネス菌により形成されるいくつかのコロニーを決定することにより検出される。
【0150】
実施形態において、P.アクネス菌は病原性P.アクネス株より炎症性ではない。
【0151】
実施形態において、病原性P.アクネス株又は病原性P.アクネス株の細菌により産生される化合物と比べて、より低いレベルの炎症性サイトカイン(例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%少ない)がP.アクネス菌又はP.アクネス菌により産生される化合物に接触する免疫細胞により放出されるならば、P.アクネス菌は病原性P.アクネス株より炎症性ではない。実施形態において、より低いレベルの炎症性サイトカインがP.アクネス菌に接触している組織(皮膚組織のような)において放出されるならば、P.アクネス菌は病原性P.アクネス株より炎症性ではない。実施形態において、組織は皮膚組織である。実施形態において、組織は、例えば、マウスの耳組織である。実施形態において、炎症性サイトカインは、IL-1β、IL-6、IL-17若しくはTNFα、又はこの任意の組合せである。
【0152】
実施形態において、病原性P.アクネス株は(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C及びA1201Cのある16S rDNA配列を有し;(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG529A突然変異のある16S rDNA配列を有し;(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1004A及びT1007C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(e)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1268A突然変異のある16S rDNA配列を有し;(f)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT554C及びG1058C突然変異のある16S rDNA配列を有し;(g)配列番号5の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(h)配列番号6の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(i)配列番号7の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(j)配列番号8の配列に同一である16S rDNA配列を有し;(k)配列番号9の配列に同一である16S rDNA配列を有し;及び/又は(l)配列番号10の配列に同一である16S rDNA配列を有する。
【0153】
配列番号5は以下の通りである(基準株KPA171202の16SA配列と比べた突然変異は下線が施されている)。
【0154】
【化23】
【0155】
配列番号6は以下の通りである(基準株KPA171202の16S配列と比べた突然変異は下線が施されている)。
【0156】
【化24】
【0157】
配列番号7は以下の通りである(基準株KPA171202の16S配列と比べた突然変異は下線が施されている)。
【0158】
【化25】
【0159】
配列番号8は以下の通りである(基準株KPA171202の16S配列と比べた突然変異は下線が施されている)。
【0160】
【化26】
【0161】
配列番号9は以下の通りである(基準株KPA171202の16S配列と比べた突然変異は下線が施されている)。
【0162】
【化27】
【0163】
配列番号10は以下の通りである(基準株KPA171202の16S配列と比べた突然変異は下線が施されている)。
【0164】
【化28】
【0165】
実施形態において、少なくとも1つの追加の細菌は、プロバイオティク細菌を含み、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10の細菌株及び/若しくは菌種、約10、9、8、7、6、5、4、3若しくは2未満の細菌株及び/若しくは菌種、又は1~10、2~10、3~10、4~10、5~10、1~5、2~5、3~5若しくは4~5の細菌株及び/若しくは菌種を含む。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、複数の細菌株及び/又は菌種、例えば、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10の細菌株及び/又は菌種を含む。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、単離されたプロピオニバクテリウム・グラヌローサム菌、単離されたプロピオニバクテリウム・アビダム菌、単離されたスタフィロコッカス・エピデルミデス(Staphylococcus epidermidis)菌、単離されたスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)菌及び/又は単離されたコリネバクテリウム・ジェイケイアム(Corynebacterium jeikeium)菌を含む。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、単離されたプロピオニバクテリウム・グラヌローサム菌、単離されたプロピオニバクテリウム・アビダム菌、単離されたスタフィロコッカス・エピデルミデス菌、単離されたスタフィロコッカス・アウレウス菌及び/又は単離されたコリネバクテリウム・ジェイケイアム菌のうちの1つ、2つ(の任意の組合せ)、3つ(の任意の組合せ)、4つ(の任意の組合せ)又は5つを含む。
【0166】
実施形態において、本明細書で提供される組成物又は組合せは増強ペプチド又は酵素を含む。実施形態において、増強ペプチド又は酵素は以下の特性:生物膜分解、皮膚浸透の改善、抗菌性の、炎症(例えば、皮膚の)の緩和、過敏(例えば、皮膚の)の緩和、発赤(例えば、皮膚の)の緩和、皮膚の引き締め、皺の除去、小皺の除去又は外観の(例えば、皮膚の)その他の点の改善のうちの1つ以上又は任意の組合せを有する。
【0167】
態様において、P.アクネスバクテリオファージ及び抗ざ瘡化合物を含む組成物が提供される。実施形態において、組成物は薬学的に許容される担体を含む。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージの用量は、安定性のために調整される(例えば、増やされるか、又は減らされる)。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージの用量は、抗ざ瘡化合物と組み合わせたその安定性のために抗ざ瘡化合物に応じて上下に調整される。
【0168】
態様において、P.アクネスバクテリオファージ及び1つ以上の抗ざ瘡化合物を含む組合せ又はシステムが提供される。例では、バクテリオファージは1つの組成物内に(例えば、ビン、チューブ又は他の容器のような1つの容器内に)あり、1つ以上の抗ざ瘡化合物は別の組成物中に(例えば、ビン、チューブ又は他の容器のような別の容器内に)ある。実施形態において、バクテリオファージを含む組成物は、薬学的に許容される担体を含む。実施形態において、抗ざ瘡化合物を含む組成物は、薬学的に許容される担体を含む。実施形態において、追加の1つ以上の化合物(例えば、酵素、ハイドレーティング化合物、紫外線吸収又は遮断化合物等)は、バクテリオファージを含む組成物、1つ以上の抗ざ瘡化合物を含む組成物又は第3の別の組成物中に(例えば、ビン、チューブ又は他の容器のような第3の容器内に)存在している。実施形態において、1つ以上のプロバイオティク細菌は、バクテリオファージを含む組成物、1つ以上の抗ざ瘡化合物を含む組成物又は第3の別の組成物中に(例えば、ビン、チューブ又は他の容器のような第3の容器内に)存在している。実施形態において、組合せ又はシステムは投与のための説明書をさらに含む。実施形態において、組合せ又はシステムは少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9又は10のP.アクネスバクテリオファージを含む。
【0169】
態様において、P.アクネスバクテリオファージ及び1つ以上のプロバイオティク細菌及び/又は1つ以上の化合物(1つ以上の酵素又は抗ざ瘡化合物のような)を含む組合せ又はシステムが提供される。例では、バクテリオファージは1つの組成物内に(例えば、ビン、チューブ又は他の容器のような1つの容器内に)あり、1つ以上のプロバイオティク細菌は別の組成物中に(ビン、チューブ又は他の容器のような別の容器内に)あり、任意選択的に、追加の1つ以上の化合物は、バクテリオファージを含む組成物、1つ以上のプロバイオティク細菌を含む組成物又は第3の別の組成物中に(ビン、チューブ又は他の容器のような第3の容器内に)存在している。実施形態において、組合せ又はシステムは投与のための説明書をさらに含む。実施形態において、組合せ又はシステムは少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9又は10のP.アクネスバクテリオファージを含む。
【0170】
実施形態において、システム、組合せ又は組成物は、生物膜分解酵素又は抗老化酵素のような酵素を含む。生物膜分解酵素の非限定的例は、デオキシリボヌクレアーゼ(例えば、デオキシリボヌクレアーゼI)、プロテアーゼ(例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、スブチリシン又はセラチオペプチダーゼ)、グリコシダーゼ(例えば、ディスパーシン、アルギン酸リアーゼ、アミラーゼ又はセルラーゼ)を含む。抗老化酵素の非限定的例は、スーパーオキシドジムスターゼ及びペルオキシダーゼを含む。
【0171】
実施形態において、システム、組合せ又は組成物は、局所レチノイド、抗生物質及び/又はアルファヒドロキシ酸を含む。実施形態において、システム又は組成物は局所レチノイドをさらに含む。実施形態において、システム又は組成物は抗生物質をさらに含む。実施形態において、システム又は組成物はアルファヒドロキシ酸をさらに含む。実施形態において、システム又は組成物は、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、硫黄、レゾルシノール、レゾルシノールモノアセテート又はこの任意の組合せをさらに含む。実施形態において、過酸化ベンゾイルは、2.5%~10%、例えば、約2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%又は10%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、過酸化ベンゾイルは、2.5%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%又は2%(重量/体積)を超える濃度で存在している。実施形態において、サリチル酸は、0.5%~2%、例えば、約0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%又は2%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、サリチル酸は、0.5%未満であるが、約0.1%(重量/体積)を超える濃度で存在している。実施形態において、硫黄は、3%~10%、例えば、約3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%又は10%(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、硫黄は、3%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%又は2.5%(重量/体積)を超える濃度で存在している。実施形態において、レゾルシノールは2%の濃度で存在し、硫黄は3%~8%(例えば、約2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%又は8%)(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、レゾルシノールモノアセテートは3%の濃度で存在し、硫黄は3%~8%(例えば、約2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%又は8%)(重量/体積)の濃度で存在している。実施形態において、レゾルシノールは、2%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%(重量/体積)を超える濃度で存在している。実施形態において、レゾルシノールモノアセテートは、3%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%又は2.5%(重量/体積)を超える濃度で存在している。
【0172】
実施形態において、本明細書で提供される組成物は保湿剤を含む。
【0173】
ざ瘡を治療する方法
態様において、本明細書で提供されるのは、ざ瘡の治療を必要とする対象においてざ瘡を予防するか、又は治療する方法であって、本方法は、本明細書で提供される組成物又は組合せの有効量を投与することを含む。実施形態において、少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含み、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる組成物の有効量が対象に投与される。実施形態において、少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含む組成物の有効量で、プロバイオティク細菌を含まない組成物が、対象に投与される。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組成物の有効量が対象に投与される。
【0174】
実施形態において、この実施形態を含む、本明細書に記載されるバクテリオファージを含む組成物の有効量が対象に投与される。実施形態において、バクテリオファージは野生型バクテリオファージである。
【0175】
実施形態において、バクテリオファージは局所的に投与される。実施形態において、バクテリオファージは、薬学的に又は化粧用に許容される担体をさらに含む組成物(例えば、医薬又は化粧用組成物)中にある。
【0176】
実施形態において、方法は、プロバイオティク細菌を対象に投与することをさらに含む。
【0177】
態様において、ざ瘡の治療を必要とする対象においてざ瘡を治療する方法が提供される。方法は、プロバイオティクP.アクネス菌の有効量を対象に投与することを含む。実施形態において、方法は、バクテリオファージを対象に投与することをさらに含む。
【0178】
実施形態において、P.アクネス菌は、配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、T992C、T838C、C1322T及び/又はC986T突然変異を含む16S rDNA配列を有する。実施形態において、P.アクネス菌は、配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、T838C及びC1322T突然変異のある16S rDNA配列を含む。実施形態において、P.アクネス菌はProI株である。実施形態において、P.アクネス菌は、配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、C986T及びT992C突然変異のある16S rDNA配列を含む。実施形態において、P.アクネス菌はProII株である。
【0179】
実施形態において、P.アクネス菌は、(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、T992C突然変異のある16S rDNA配列を含み;(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、T838C突然変異のある16S rDNA配列を含み;(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、C1322T突然変異のある16S rDNA配列を含み;(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べて、C986T突然変異のある16S rDNA配列を含み;(e)配列番号3の配列に同一である16S rDNA配列を含み;(g)配列番号4の配列に同一である16S rDNA配列を含み;(h)線状プラスミドを含まず;(i)病原性因子を含むプラスミドを含まず;並びに/又は(j)染色体外リパーゼ及び/若しくは密着性病原性因子をコードするプラスミドを含まない。
【0180】
実施形態において、方法は、少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌を対象に投与することをさらに含む。
【0181】
実施形態において、少なくとも1つの追加の細菌は、プロバイオティク細菌を含み、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10の細菌株及び/若しくは菌種、約10、9、8、7、6、5、4、3若しくは2未満の細菌株及び/若しくは菌種、又は1~10、2~10、3~10、4~10、5~10、1~5、2~5、3~5若しくは4~5の細菌株及び/若しくは菌種を含む。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、複数の細菌株及び/又は菌種、例えば、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10の細菌株及び/又は菌種を含む。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、プロピオニバクテリウム属種、スタフィロコッカス属種及び/又はコリネバクテリウム属種細菌を含む。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、ベータプロテオバクテリア綱内の細菌を含む。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、単離されたプロピオニバクテリウム・グラヌロサム菌、単離されたプロピオニバクテリウム・アビダム菌、単離されたスタフィロコッカス・エピデルミデス菌、単離されたスタフィロコッカス・アウレウス菌及び/又は単離されたコリネバクテリウム・ジェイケイアム菌を含む。実施形態において、少なくとも1つの細菌は、単離されたプロピオニバクテリウム・グラヌロサム菌、単離されたプロピオニバクテリウム・アビダム菌、単離されたスタフィロコッカス・エピデルミデス菌、単離されたスタフィロコッカス・アウレウス菌及び/又は単離されたコリネバクテリウム・ジェイケイアム菌のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は5つを含む。
【0182】
実施形態において、対象はこの実施形態を含む、本明細書に記載されるバクテリオファージを投与されている。
【0183】
実施形態において、対象はP.アクネスを殺菌する抗生物質を投与されている。実施形態において、抗生物質は、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン若しくはテトラサイクリン、又はクリンダマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン若しくはテトラサイクリンの誘導体である。
【0184】
実施形態において、抗生物質は、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン若しくはテトラサイクリン、又はクリンダマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン若しくはテトラサイクリンの誘導体である。
【0185】
実施形態において、方法は、生物膜分解酵素又は抗老化酵素のような酵素を対象に投与することをさらに含む。生物膜分解酵素の非限定的例は、デオキシリボヌクレアーゼ(例えば、デオキシリボヌクレアーゼI)、制限エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼ(例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、スブチリシン又はセラチオペプチダーゼ)、グリコシダーゼ(例えば、ディスパーシン、アルギン酸リアーゼ、アミラーゼ又はセルラーゼ)を含む。抗老化酵素の非限定的例は、スーパーオキシドジスムターゼ及びペルオキシダーゼを含む。
【0186】
実施形態において、方法は、局所レチノイド、抗生物質及び/又はアルファヒドロキシ酸を投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、局所レチノイドを投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、抗生物質を投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、アルファヒドロキシ酸を投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、硫黄、レゾルシノール及び/又はレゾルシノールモノアセテートを対象に投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、過酸化ベンゾイルを投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、サリチル酸を投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、硫黄を投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、レゾルシノール及び/又は硫黄を投与することをさらに含む。実施形態において、方法は、レゾルシノール及び/又はレゾルシノールモノアセテートを投与することをさらに含む。
【0187】
実施形態において、方法は増強ペプチド又は酵素を投与することをさらに含む。実施形態において、増強ペプチド又は酵素は以下の特性:生物膜分解、皮膚浸透の改善、抗菌性の、炎症(例えば、皮膚の)の緩和、過敏(例えば、皮膚の)の緩和、発赤(例えば、皮膚の)の緩和、皮膚の引き締め、皺の除去、小皺の除去又は外観の(例えば、皮膚の)その他の点の改善のうちの1つ以上又は任意の組合せを有する。
【0188】
実施形態において、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9又は10のP.アクネスバクテリオファージが対象に投与される。実施形態において、P.アクネスバクテリオファージは1つよりも多いタイプのP.アクネスバクテリオファージを含む。
【0189】
ざ瘡を治療するための例示的方法及び組成物
態様において、バクテリオファージを含む組成物が本明細書で提供される。実施形態において、バクテリオファージは、治療又は化粧用組成物のような組成物中に存在する。実施形態において、組成物はプロバイオティク細菌の株をさらに含む。実施形態において、組成物は、ヒト皮膚毛穴において又はこの上で細菌生物膜(例えば、この構成要素)を分解する酵素をさらに含む。実施形態において、酵素は、バクテリオファージ及び/又はプロバイオティク細菌の浸透を増強する。実施形態において、バクテリオファージ(「ファージ」)は、有益な皮膚細菌を殺菌せずに、P.アクネスのざ瘡を引き起こす(すなわち、病原性の)株を高度な特異性及び有効性で破壊する。実施形態において、生物膜分解酵素は生物膜を溶解して病原菌の感受性を高める(例えば、宿主細胞への病原菌接着を低減することにより、及び/又は病原性細胞へのバクテリオファージの接近を増加することにより)。実施形態において、プロバイオティク細菌はバクテリオファージに免疫がある(例えば、細菌はバクテリオファージが特異的に結合する細胞受容体を欠く)。実施形態において、プロバイオティク細菌は、殺菌されたP.アクネス病原性株が残したニッチを占める。実施形態において、プロバイオティク細菌は、病原性細菌よりも長く生き延びることにより対象の皮膚(毛穴のような)での再コロニー形成又は成長を低減させるか、又は予防する。
【0190】
態様において、皮膚疾患ざ瘡の治療的処置のための組成物が提供される。実施形態において、組成物は溶菌性P.アクネスバクテリオファージ、任意選択的に、健康な皮膚を発生源とするプロバイオティク細菌及び/又は任意選択的に、活性構成要素の浸透を高めるアジュバンドとしての組成物中の生物膜分解酵素を含む。
【0191】
実施形態において、溶菌性P.アクネスバクテリオファージは皮膚面皰において病原性P.アクネスに感染する。実施形態において、バクテリオファージはP.アクネス内で複製しこれを溶解する。実施形態において、P.アクネスは溶解すると、新しいビリオンを放出する。実施形態において、酵素は遮断された面皰の詰まりを取り除き、P.アクネス生物膜を溶解し、P.アクネスへのビリオンの接近を増やす。実施形態において、溶菌性P.アクネスファージの指数関数的な増殖は、有益な皮膚共生細菌の成長を妨害することなく、P.アクネスを高い特異性で速やかに殺菌する。実施形態において、P.アクネスにより空けられたニッチは次に、プロバイオティク細菌により満たされる。実施形態において、細菌は健康な皮膚を発生源とし、拡大してニッチを占め、それによっていかなる生き残ったP.アクネス菌も成長して元に戻ることがないように防ぐ。実施形態において、この戦略は対象において皮膚マイクロバイオームの均衡を保つ一助となり、健康な皮膚細菌集団に向けてそのマイクロバイオームを再調整する。実施形態において、生物膜分解酵素は、遮断された面皰の詰まりを取り除いて毛穴へのファージ及びプロバイオティク細菌の接近を増やす一助となるアジュバンドとして製剤中にある。
【0192】
態様において、バクテリオファージ、プロバイオティク細菌及び(任意選択的に)バクテリオファージの浸透を増強する酵素を含む組合せが提供される。実施形態において、病原菌は殺菌され、プロバイオティク細菌が病原菌に取って代わる。実施形態において、「殺菌し取って代わる」アプローチを使用してざ瘡を治療する。実施形態において、ざ瘡を引き起こす病原性細菌を選択的に殺菌する生物製剤が対象に投与される。実施形態において、健康な皮膚を発生源とするプロバイオティク細菌が適用されて殺菌された病原菌のニッチを占める。実施形態において、このアプローチは抗生物質に関連する手に負えない薬物耐性という問題を回避する。実施形態において、活発に分裂するプロバイオティク細菌の存在は、いかなる病原菌も成長して元に戻ることがないようにすることにより再発を防ぐ。実施形態において、対象の皮膚上のディスバイオシスが治療される。実施形態において、ざ瘡に伴うマイクロバイオームは健康なマイクロバイオームに再調整される。
【0193】
実施形態において、バクテリオファージは天然に存在するP.アクネスバクテリオファージである。
【0194】
バクテリオファージと同時投与してもよい酵素の非限定的例は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のBL00275;デオキシリボヌクレアーゼI;制限エンドヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ(例えば、スタフィロコッカス・アウレウスサーモヌクレアーゼ、B.リケニフォルミスNucB、デオキシリボヌクレアーゼ1L2由来);グリコシドヒドロラーゼ(例えば、ディスパーシンB、アルギン酸リアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、グリカナーゼ);及びプロテアーゼ(例えば、スブチリシン、プロテイナーゼK、トリプシン、セラチオペプチダーゼ)を含む。
【0195】
投与されてもよいし又はシステム若しくは組成物中に存在してもよいプロバイオティク細菌の非限定的例は、以下の細菌種:プロピオニバクテリウム・アクネス、プロピオニバクテリウム・グラニューロサム、プロピオニバクテリウム・アビダム、スタフィロコッカス・エピデルミデス、スタフィロコッカス・アウレウス、及びコリネバクテリウム・ジェイケイアムのうちの1つ以上又は任意の組合せを含む。実施形態において、プロバイオティク細菌株は、(a)低リパーゼ活性及びヒトケラチノサイトへの接着が少ないことを特徴とし、有害な免疫応答を誘発せずに皮膚に定着する;並びに(b)プロピオニバクテリウム・アクネスに類似するニッチを占めるその能力に基づいて選択される。
【0196】
実施形態において、生物膜分解酵素が製剤中に存在しており、活性成分(バクテリオファージのような)の有効性を高めるアジュバンドとして作用する。実施形態において、酵素は、P.アクネス生物膜をインビトロで分解する能力を有する。
【0197】
実施形態
本発明のより完全な理解を促進するために以下に実施形態及び実施例が提供される。以下の実施形態及び実施例は、本発明を作成し実行する例示的な様式を説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれらの実施形態及び実施例に開示される特定の実施形態に限定されず、これらの実施形態及び実施例は、代わりの方法を利用すれば類似する結果が得られるので、説明のみを目的とするものである。
【0198】
実施形態は、以下の実施形態P1からP56を含む。
【0199】
実施形態P1.少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体から本質的になる組成物。
【0200】
実施形態P2.少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含み、プロバイオティク細菌は含まない組成物。
【0201】
実施形態P3.組成物がP.アクネス生物膜分解酵素をさらに含む、実施形態P2の組成物。
【0202】
実施形態P4.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が過酸化ベンゾイルである、実施形態P1~P3のいずれか1つの組成物。
【0203】
実施形態P5.過酸化ベンゾイルが2.5%~10%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態P4の組成物。
【0204】
実施形態P6.過酸化ベンゾイルが、2.5%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%又は2%(重量/体積)を超える濃度で存在している、実施形態P4の組成物。
【0205】
実施形態P7.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物がサリチル酸である、実施形態P1~P3のいずれか1つの組成物。
【0206】
実施形態P8.サリチル酸が0.5%~2%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態P7の組成物。
【0207】
実施形態P9.サリチル酸が、0.5%未満であるが、約0.1%(重量/体積)を超える濃度で存在している、実施形態P7の組成物。
【0208】
実施形態P10.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が硫黄である、実施形態P1~P3のいずれか1つの組成物。
【0209】
実施形態P11.硫黄が3%~10%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態P10の組成物。
【0210】
実施形態P12.硫黄が、3%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%又は2.5%(重量/体積)を超える濃度で存在している、実施形態P10の組成物。
【0211】
実施形態P13.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物がレゾルシノール及び硫黄である、実施形態P1~P3のいずれか1つの組成物。
【0212】
実施形態P14.レゾルシノールが2%の濃度で存在し、硫黄が3%~8%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態P13の組成物。
【0213】
実施形態P15.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が、レゾルシノールモノアセテート及び硫黄を含む、実施形態P1~P3のいずれか1つの組成物。
【0214】
実施形態P16.レゾルシノールモノアセテートが3%の濃度で存在し、硫黄が3%~8%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態P15の組成物。
【0215】
実施形態P17.抗ざ瘡化合物が、抗生物質、レチノイド又はアルファヒドロキシ酸である、実施形態P1~P3のいずれか1つの組成物。
【0216】
実施形態P18.プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組成物。
【0217】
実施形態P19.P.アクネスバクテリオファージが溶菌性P.アクネスバクテリオファージである、実施形態P1~P18のいずれか1つの組成物。
【0218】
実施形態P20.P.アクネスバクテリオファージが線状二本鎖DNAゲノムを含む、実施形態P1~P19のいずれか1つの組成物。
【0219】
実施形態P21.P.アクネスバクテリオファージが、バクテリオファージシホウイルス科内にある、実施形態P1~P20のいずれか1つの組成物。
【0220】
実施形態P22.P.アクネスバクテリオファージのゲノムが、配列番号1のヌクレオチド配列に少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヌクレオチド配列を含む、実施形態P1~P21のいずれか1つの組成物。
【0221】
実施形態P23.酵素がP.アクネス生物膜分解酵素である、実施形態P18~P21のいずれか1つの組成物。
【0222】
実施形態P24.酵素が、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ又は制限エンドヌクレアーゼである、実施形態P3又はP18~P23のいずれか1つの組成物。
【0223】
実施形態P25.酵素がグリコシダーゼである、実施形態P3又はP18~P24のいずれか1つの組成物。
【0224】
実施形態P26.グリコシダーゼがグリコシドヒドロラーゼである、実施形態P25の組成物。
【0225】
実施形態P27.酵素が、N-アセチル-D-グルコサミンの線状ポリマーの加水分解を触媒する、実施形態P26の組成物。
【0226】
実施形態P28.酵素がβ-ヘキソサミニダーゼである、実施形態P27の組成物。
【0227】
実施形態P29.酵素が、アセチルグルコサミンポリマーのβ-1,6-グリコシド結合を加水分解する、実施形態P28の組成物。
【0228】
実施形態P30.酵素が、デオキシリボヌクレアーゼI、制限エンドヌクレアーゼ、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、スブチリシン、セラチオペプチダーゼ、ディスパーシン、アルギン酸リアーゼ、アミラーゼ又はセルラーゼである、実施形態P3又はP18~P24のいずれか1つの組成物。
【0229】
実施形態P31.酵素がディスパーシンBである、実施形態P3又はP18~P24のいずれか1つの組成物。
【0230】
実施形態P32.酵素がプロテアーゼであり、プロテアーゼがプロテイナーゼK又はスブチリシンである、実施形態P3又はP18~P24のいずれか1つの組成物。
【0231】
実施形態P33.酵素が抗老化酵素である、実施形態P18~P22のいずれか1つの組成物。
【0232】
実施形態P34.抗老化酵素が、スーパーオキシドジスムターゼ又はペルオキシダーゼである、実施形態P33の組成物。
【0233】
実施形態P35.プロバイオティク細菌をさらに含む、実施形態P18~P34のいずれか1つの組成物。
【0234】
実施形態P36.プロバイオティク細菌が、プロバイオティクP.属種、スタフィロコッカス属種及び/又はコリネバクテリウム属種細菌である、実施形態P35の組成物。
【0235】
実施形態P37.プロバイオティク細菌が、ベータプロテオバクテリア綱内の細菌である、実施形態P35の組成物。
【0236】
実施形態P38.プロバイオティク細菌が、プロバイオティクP.アクネス菌である、実施形態P36の組成物。
【0237】
実施形態P39.P.アクネス菌が、
(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてT992C突然変異のある16S DNA配列を含み;
(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてT838C突然変異のある16S DNA配列を含み;
(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてC1322T突然変異のある16S DNA配列を含み;
(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてC986T突然変異のある16S DNA配列を含み;
(e)配列番号3の配列に同一である16S DNA配列を含み;
(f)配列番号4の配列に同一である16S DNA配列を含み;
(g)線状プラスミドを含まず;
(h)病原性因子を含むプラスミドを含まず;並びに/又は
(i)染色体外リパーゼ及び/若しくは密着性病原性因子をコードするプラスミドを含まない、
実施形態P38の組成物。
【0238】
実施形態P40.P.アクネス菌が、
(a)浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約20%未満を産生し;
(b)付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約10%未満を産生し;
(c)上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも50%少なく、及び/又は
(d)病原性P.アクネス株より炎症性ではない、
実施形態P38の組成物。
【0239】
実施形態P41.少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌をさらに含む、実施形態P35~P40のいずれか1つの組成物。
【0240】
実施形態P42.前記少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌が、プロピオニバクテリウム・グラニューロサム及び/又はプロピオニバクテリウム・アビダムを含む、実施形態P41の組成物。
【0241】
実施形態P43.前記病原性P.アクネス株が、
(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてG1058C突然変異のある16S DNA配列を含み;
(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてG1058C及びA1201C突然変異のある16S DNA配列を含み;
(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてG529A突然変異のある16S DNA配列を含み;
(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてG1004A及びT1007C突然変異のある16S DNA配列を含み;
(e)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてG1268A突然変異のある16S DNA配列を含み;
(f)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S DNA配列と比べてT554C及びG1058C突然変異のある16S DNA配列を含み;
(g)配列番号5の配列に同一である16S DNA配列を含み;
(h)配列番号6の配列に同一である16S DNA配列を含み;
(i)配列番号7の配列に同一である16S DNA配列を含み;
(j)配列番号8の配列に同一である16S DNA配列を含み;
(k)配列番号9の配列に同一である16S DNA配列を含み;及び/又は
(l)配列番号10の配列に同一である16S DNA配列を含む、
実施形態P40の組成物。
【0242】
実施形態P44.少なくとも1つの追加のP.アクネスバクテリオファージをさらに含む、実施形態P18~P43のいずれか1つの組成物。
【0243】
実施形態P45.薬学的に許容される担体を含む、実施形態P1~P44のいずれか1つの組成物。
【0244】
実施形態P46.薬学的に許容される担体が乳剤を含む、実施形態P45の組成物。
【0245】
実施形態P47.乳剤が水中油型乳剤又は油中水型乳剤である、実施形態P46の組成物。
【0246】
実施形態P48.クリーム、ローション、懸濁液又は水溶液の形態である、実施形態P1~P47のいずれか1つの組成物。
【0247】
実施形態P49.少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物から本質的になる組合せであって、少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物のそれぞれが、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物中にある組合せ。
【0248】
実施形態P50.少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が別々の組成物内にある、実施形態P49の組合せ。
【0249】
実施形態P51.少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が別々の容器内にある、実施形態P50の組合せ。
【0250】
実施形態P52.プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組合せ。
【0251】
実施形態P53.P.アクネスバクテリオファージ及び酵素が別々の組成物内にある、実施形態P52の組合せ。
【0252】
実施形態P54.P.アクネスバクテリオファージ及び酵素が別々の容器内にある、実施形態P53の組合せ。
【0253】
実施形態P55.ざ瘡の治療を必要とする対象においてざ瘡を治療する方法であって、実施形態P1~P46のいずれか1つの組成物又は実施形態P49~P54のいずれか1つの組合せの有効量を対象に投与することを含む方法。
【0254】
実施形態P56.組成物が局所的に投与される、実施形態P55の方法。
【0255】
追加の実施形態は以下の実施形態1~55を含む。
【0256】
実施形態1.少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【0257】
実施形態2.プロバイオティク細菌を含まない、実施形態1の組成物。
【0258】
実施形態3.組成物がP.アクネス生物膜分解酵素をさらに含む、実施形態1又は2の組成物。
【0259】
実施形態4.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物がサリチル酸である、実施形態1~3のいずれか1つの組成物。
【0260】
実施形態5.サリチル酸が0.5%~2%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態4の組成物。
【0261】
実施形態6.サリチル酸が、0.5%未満であるが、約0.1%(重量/体積)を超える濃度で存在している、実施形態5の組成物。
【0262】
実施形態7.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が硫黄である、実施形態1~3のいずれか1つの組成物。
【0263】
実施形態8.硫黄が3%~10%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態7の組成物。
【0264】
実施形態9.硫黄が、3%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%又は2.5%(重量/体積)を超える濃度で存在している、実施形態7の組成物。
【0265】
実施形態10.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物がレゾルシノール及び硫黄である、実施形態1~3のいずれか1つの組成物。
【0266】
実施形態11.レゾルシノールが2%の濃度で存在し、硫黄が3%~8%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態10の組成物。
【0267】
実施形態12.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が、レゾルシノールモノアセテート及び硫黄を含む、実施形態1~3のいずれか1つの組成物。
【0268】
実施形態13.レゾルシノールモノアセテートが3%の濃度で存在し、硫黄が3%~8%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態12の組成物。
【0269】
実施形態14.抗ざ瘡化合物が、抗生物質、レチノイド又はアルファヒドロキシ酸である、実施形態1~3のいずれか1つの組成物。
【0270】
実施形態15.プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージが天然に存在するプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージである、実施形態1~14のいずれか1つの組成物。
【0271】
実施形態16.P.アクネスバクテリオファージが溶菌性P.アクネスバクテリオファージである、実施形態1~15のいずれか1つの組成物。
【0272】
実施形態17.P.アクネスバクテリオファージが線状二本鎖DNAゲノムを含む、実施形態1~16のいずれか1つの組成物。
【0273】
実施形態18.P.アクネスバクテリオファージが、バクテリオファージシホウイルス科内にある、実施形態1~17のいずれか1つの組成物。
【0274】
実施形態19.P.アクネスバクテリオファージのゲノムが、配列番号1のヌクレオチド配列に少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヌクレオチド配列を含む、実施形態1~19のいずれか1つの組成物。
【0275】
実施形態20.酵素がP.アクネス生物膜分解酵素である、実施形態3~19のいずれか1つの組成物。
【0276】
実施形態21.酵素が、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ又は制限エンドヌクレアーゼである、実施形態3~20のいずれか1つの組成物。
【0277】
実施形態22.酵素がグリコシダーゼである、実施形態3~21のいずれか1つの組成物。
【0278】
実施形態23.グリコシダーゼがグリコシドヒドロラーゼである、実施形態22の組成物。
【0279】
実施形態24.酵素が、N-アセチル-D-グルコサミンの線状ポリマーの加水分解を触媒する、実施形態23の組成物。
【0280】
実施形態25.酵素がβ-ヘキソサミニダーゼである、実施形態24の組成物。
【0281】
実施形態26.酵素が、アセチルグルコサミンポリマーのβ-1,6-グリコシド結合を加水分解する、実施形態25の組成物。
【0282】
実施形態27.酵素が、デオキシリボヌクレアーゼI、制限エンドヌクレアーゼ、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、スブチリシン、セラチオペプチダーゼ、ディスパーシン、アルギン酸リアーゼ、アミラーゼ又はセルラーゼである、実施形態3~20のいずれか1つの組成物。
【0283】
実施形態28.酵素がディスパーシンBである、実施形態3~20のいずれか1つの組成物。
【0284】
実施形態29.酵素がプロテアーゼであり、プロテアーゼがプロテイナーゼK又はスブチリシンである、実施形態3~20のいずれか1つの組成物。
【0285】
実施形態30.抗老化酵素をさらに含む、実施形態1~29のいずれか1つの組成物。
【0286】
実施形態31.抗老化酵素が、スーパーオキシドジスムターゼ又はペルオキシダーゼである、実施形態30の組成物。
【0287】
実施形態32.プロバイオティク細菌をさらに含む、実施形態1~31のいずれか1つの組成物。
【0288】
実施形態33.プロバイオティク細菌が、プロバイオティクP.属種、スタフィロコッカス属種及び/又はコリネバクテリウム属種細菌である、実施形態32の組成物。
【0289】
実施形態34.プロバイオティク細菌が、ベータプロテオバクテリア綱内の細菌である、実施形態32の組成物。
【0290】
実施形態35.プロバイオティク細菌が、プロバイオティクP.アクネス菌である、実施形態33の組成物。
【0291】
実施形態36.P.アクネス菌が、
(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT992C突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT838C突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてC1322T突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてC986T突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(e)配列番号3の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(f)配列番号4の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(g)線状プラスミドを含まず;
(h)病原性因子を含むプラスミドを含まず;並びに/又は
(i)染色体外リパーゼ及び/若しくは密着性病原性因子をコードするプラスミドを含まない、
実施形態35の組成物。
【0292】
実施形態37.P.アクネス菌が、
(a)浮遊培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約20%未満を産生し;
(b)付着培養において成長させた場合の病原性P.アクネス株により産生されるリパーゼのレベルの約10%未満を産生し;
(c)上皮細胞への接着が病原性P.アクネス株よりも少なくとも50%少なく、及び/又は
(d)病原性P.アクネス株より炎症性ではない、
実施形態35又は36の組成物。
【0293】
実施形態38.少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌をさらに含む、実施形態32~37のいずれか1つの組成物。
【0294】
実施形態39.前記少なくとも1つの追加のプロバイオティク細菌が、プロピオニバクテリウム・グラニューロサム及び/又はプロピオニバクテリウム・アビダムを含む、実施形態38の組成物。
【0295】
実施形態40.前記病原性P.アクネス株が、
(a)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(b)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1058C及びA1201C突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(c)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG529A突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(d)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1004A及びT1007C突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(e)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてG1268A突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(f)配列番号2として示されるKPA171202基準株16S rDNA配列と比べてT554C及びG1058C突然変異のある16S rDNA配列を含み;
(g)配列番号5の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(h)配列番号6の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(i)配列番号7の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(j)配列番号8の配列に同一である16S rDNA配列を含み;
(k)配列番号9の配列に同一である16S rDNA配列を含み;及び/又は
(l)配列番号10の配列に同一である16S rDNA配列を含む、
実施形態37の組成物。
【0296】
実施形態41.少なくとも1つの追加のP.アクネスバクテリオファージをさらに含む、実施形態1~40のいずれか1つの組成物。
【0297】
実施形態42.薬学的に許容される担体が乳剤を含む、実施形態1~41のいずれか1つの組成物。
【0298】
実施形態43.乳剤が水中油型乳剤又は油中水型乳剤である、実施形態42の組成物。
【0299】
実施形態44.クリーム、ローション、懸濁液又は水溶液の形態である、実施形態1~44のいずれか1つの組成物。
【0300】
実施形態45.少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物を含む組合せであって、少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物のそれぞれが、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物中にある組合せ。
【0301】
実施形態46.少なくとも1つのP.アクネスバクテリオファージ及び少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が別々の組成物内にある、実施形態45の組合せ。
【0302】
実施形態47.少なくとも1つの抗ざ瘡化合物が過酸化ベンゾイルである、実施形態46の組合せ。
【0303】
実施形態48.過酸化ベンゾイルが2.5%~10%(重量/体積)の濃度で存在している、実施形態47の組合せ。
【0304】
実施形態49.過酸化ベンゾイルが2.5%未満であるが、約0.1%、0.5%、1%、1.5%又は2%(重量/体積)を超える濃度で存在している、実施形態47の組合せ。
【0305】
実施形態50.ざ瘡の治療を必要とする対象においてざ瘡を治療する方法であって、実施形態1~44のいずれか1つの組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【0306】
実施形態51.組成物が局所的に投与される、実施形態50の方法。
【0307】
実施形態52.ざ瘡の治療を必要とする対象においてざ瘡を治療する方法であって、実施形態45~49のいずれか1つの組合せの有効量を対象に投与することを含む方法。
【0308】
実施形態53.プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組成物。
【0309】
実施形態54.プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び酵素を含む組合せ。
【0310】
実施形態55.少なくとも1つのプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ、少なくとも1つの抗ざ瘡化合物及び薬学的に許容される担体から本質的になる組成物。
【実施例
【0311】
以下の実施例は本発明のある特定の実施形態を説明しており、本発明の範囲を限定することを意図されていない。
【0312】
本明細書の実施形態は以下の実施例及び詳細なプロトコルによりさらに説明される。しかし、実施例は実施形態を説明することを意図されているだけであり、本明細書の範囲を限定すると解釈するべきではない。本出願全体で引用されているあらゆる参考文献及び公開された特許及び特許出願の内容は、これによって参照により組み込む。
【0313】
[実施例1] P.アクネスバクテリオファージPHIT-101はP.アクネスを選択的に及び効率的に殺菌する
P.アクネスバクテリオファージは、遺伝的に高度に類似しており、P.アクネスの複数の株に対して広いレンジを示すことが明らかにされている。リードバクテリオファージ(PHIT-101)は実験用に使用された。PHIT-101は、試験されたP.アクネスのすべての株型を殺菌したただ1つの溶菌性ファージである(データは示されず。)。PHIT-101は配列番号1の配列を有する。このファージの有効性及び特異性を紹介するため、プレートアッセイを以下の通り実施した。P.アクネスKPA171202及びP.グラニューロサム(密接に関係しているが良性の皮膚細菌)を別々のBHI寒天プレート上に播種した。滅菌綿パッドをそれぞれのプレート上に置いた。滅菌綿パッドは、ざ瘡を治療するのに一般に使用されている抗生物質であるミノサイクリン又は2×10pfu/mLのタイターを持つファージ溶液に浸漬させた。プレートを37℃で72時間嫌気的にインキュベートした後、ミノサイクリンパッドは細菌を無差別に殺菌し、ざ瘡を引き起こすP.アクネス及び共生P.グラニューロサムの両方で殺菌帯を示した(図1)。これとは対照的に、PHIT-101パッドはP.アクネスのみを殺菌し、有益なP.グラニューロサムの成長を妨げることはなかった。
【0314】
選択的に殺菌するPHIT-101の能力のさらなる証拠は、合成皮膚マイクロバイオームアッセイにおいて得られた。皮膚毛穴における細菌叢の60~80%を構成する3つの皮膚細菌である、P.アクネス、P.グラニューロサム及びP.アビダムを含む合成皮膚マイクロバイオームが考案された[Science(2009年)324:1190~1192頁]。この合成皮膚マイクロバイオームを、PHIT-101の存在下で又は非存在下で嫌気的に生育した(最終濃度5×10pfu/mL)。37℃での48時間インキュベーション後、細胞はペレット化して洗浄し、3つの菌種の相対的な割合は、Illumina MiSeq上で16Sアンプリコン次世代シーケンシング(NGS)を使用して決定した。図2の結果では、PHIT-101がP.アクネスをほぼ完全に殺菌することができ、共生P.グラニューロサム及びP.アビダムの成長に否定的な影響を及ぼさないことが示されている。
【0315】
P.アクネス生物膜を破壊する生物膜分解酵素(BDE)をスクリーニングする
いくつかの最近のレポート(Exp Dermatol(2014年)23:687頁、Br J Dermatol(2015年)172:13頁)により、P.アクネスが皮膚毛穴に著しい量の生物膜を生成し、そのために抗生物質浸透が妨げられて、治療成績が不十分になることが確証されていた。これを立証するため、P.アクネスのいくつかの株の生物膜生成が定量化された。図3は、単一の対象の細菌叢から単離された複数の株の付着培養物が類似する条件下で著しく異なったレベルの生物膜を生成することを示している。したがって、浮遊細胞を使用する以前の概念実証は、P.アクネスが皮膚上で成長する真の条件を反映していなかった。
【0316】
いかなる科学的な理論にも縛られずに、本発明者らは、生物膜が固着P.アクネス細胞のファージ殺菌にとって著しい障壁となる可能性があるという仮説を立てた。この仮説は、浮遊P.アクネス(99%殺菌、図2)と違って、PHIT-101が生物膜に包まれるP.アクネス細胞の約50%しか殺菌できなかったことを示した細胞生存アッセイ(図5)において確証された。生物膜分解がファージ殺菌を改善するか否かを判定するため、P.アクネスに特異的なBDEを見つけるためにいくつかの酵素をスクリーニングした。スクリーニングは、生物膜で見つかる可能性のあるタイプの物質:DNA、多糖及びタンパク質を分解しうる3つのクラスの酵素を含んでいた。図4は、スクリーニングでは、デオキシリボヌクレアーゼが中程度の活性を有し、最良の生物膜分解速度はプロテアーゼ及びアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)由来のグリコシドヒドロラーゼであるディスパーシンで見出されたことを示している。
【0317】
ファージとペアを組むBDEの選択において、ディスパーシンが2つの理由で選択された。第1に、グリコシドヒドロラーゼであるので、ディスパーシンはファージそれ自体のタンパク膜を攻撃する可能性がなく、それによってファージの考えられる分解が回避された。第2に、P.アクネスはスタフィロコッカス・アウレウスと共に頑強な生物膜を形成し[Anaerobe(2016年)40:63~67頁]、ディスパーシンは両方の生物由来の生物膜に対して活性である。ディスパーシンを添加することにより固着P.アクネスでのファージ殺菌の効率が増加するか否かを判定した。図5は、PHIT-101の殺菌がディスパーシンの存在下で増強され、ファージの約99%の殺菌効率を回復したことを示している。
【0318】
[実施例2] プロバイオティク細菌
プロバイオティク株の遺伝子型特徴付け
P.アクネスの株は、病原性及びプロバイオティク株型への系統学的分類をもたらす16S rDNA配列中の点突然変異並びに病原性因子を保有する病原性株において見出される線状プラスミドの非存在に基づいて特徴付けられた。16S特異的プライマーを使用して、それぞれのP.アクネス株の完全16S rDNA配列を増幅してサンガー配列決定した。プロバイオティク株は、ProI及びProIIのリボシーケンス(RS)を有することが確認された。ProI株は、KPA171202基準株の16S rDNA配列(NIH受託番号NC_006085.1)と比べてT838C及びC1322T突然変異を有する。ProII株は、KPA171202配列と比べてC986T及びT992C突然変異を有する。さらに、特異的なプライマー対を使用して、それぞれの株内での線状プラスミドの有無を判定した。プロバイオティク株は、染色体外リパーゼ並びにTad(密着性)病原性因子を保有する、このプラスミドを欠いていることが確認された。
【0319】
実施形態において、プロバイオティク株は、主にその16S配列、例えば、配列番号3及び配列番号4により特徴付けられる。実施形態において、プロバイオティク株は、染色体外リパーゼ及びTad遺伝子座のような病原性因子を保有するプラスミドを欠くことにより遺伝子型で同定することが可能である。
【0320】
プロバイオティク株のコホートはその免疫原性可能性についてさらに特徴付けられた。リードプロバイオティク候補は、2つの要因:低リパーゼ産生及び上皮細胞への密着性の低下に基づいていた。これらの特長の表現型確認は、プロバイオティクリード候補を選択する際に重要であった。
【0321】
プロバイオティクP.アクネス株の免疫原性可能性を試験する:リパーゼ活性
リパーゼは、皮脂トリグリセリドを加水分解し、刺激性の遊離脂肪酸を毛嚢脂腺濾胞に放出することにより、ざ瘡の病態形成において重要な役割を果たしている。リパーゼは強い走化性及び炎症促進性抗原である。したがって、リパーゼは、抗ざ瘡薬のための薬理学的標的として極めて興味深い。実施形態において、全体的な戦略は、高レベルのリパーゼを分泌する病原性P.アクネスを低分泌性プロバイオティクP.アクネスで置き換えることである。本発明者らのパネルの株ごとにリパーゼ発現表現型を定量化するため、プロバイオティクP.アクネス株のリパーゼ産生を、蛍光リパーゼ活性アッセイを用いて病原性P.アクネス株と比較した。
【0322】
最も興味深い知見の1つは、浮遊培養対付着培養で成長させた場合、それぞれの株が異なる量のリパーゼを分泌することであった。これはP.アクネス株で以前報告されている[Res Microbiol、(2007年)158:386~392頁]。さらに、データによれば、これらの株を液体培養で成長させた場合、病原性とプロバイオティク株のリパーゼ産生量の間には有意差はないことが示された。しかし、これらの株を生物膜条件下で成長させた場合、興味深い変化が見られた。株間の産生の変わりやすさは依然観察することができたが、いくつかのプロバイオティク株は病原性株よりもリパーゼ活性が有意に少なかった(図11)。興味深いことに、プロバイオティクコホート内のすべての株でリパーゼ活性が低かったわけではなかった。例えば、株Pr-1及びPr-5のリパーゼ産生はプロバイオティク株の閾値を超えており、それ以上は進展しなかった。したがって、固着P.アクネス細胞におけるリパーゼ産生を定量化することにより、プロバイオティク株の中からスクリーニングし、最も一貫して低レベルのリパーゼ活性を有するリード候補を選択することが可能であった。
【0323】
このように、病原性及びプロバイオティク株は浮遊培養では類似する量のリパーゼを分泌したが、付着培養ではプロバイオティク株が分泌したリパーゼは病原性株よりもはるかに少なかった。図8は、上位のプロバイオティク候補が病原性株と比べて低いリパーゼプロファイルであったことを示している。
【0324】
プロバイオティクP.アクネス株の免疫原性可能性を試験する:細胞接着
入手可能な病原性株は、他の哺乳動物病原菌の病原性において役割を果たす密着性(tad)遺伝子座を有することが確認された[J Bacteriol(2000年)182:6169~6176頁;Nat Rev Microbiol(2007年)5:363~375頁;PNAS(2003年)100:7295~7300頁]。宿主細胞へのより大きな接着は、病原性を高めるか、又は炎症性宿主応答を誘導する可能性がある。プロバイオティク株は、tad遺伝子座を含有しないことが以前遺伝子型で立証されていたため、上皮細胞への接着はそれほど堅固ではないと予想されていた。接着に明らかな違いがあるか否かを評価するため、A-431皮膚上皮細胞への病原性及びプロバイオティク株の接着を比較した。図9は、上位3つのプロバイオティク候補が上皮細胞への接着が病原性株ほど堅固ではなかったことを示している。興味深いことに、細胞接着において、わずかであるが歴然とした違いがP.アクネスの異なる株ファミリー間で改めて見出された。このように、ProIリボシーケンスを有するP.アクネスの株のほうがわずかに高い細胞接着を示し(図9でのPr-2)、ProII株のほうが細胞への接着は堅固ではなかった(図9でのPr-B、Pr-C)。
【0325】
マウス耳炎症モデルにおける病原性とプロバイオティクP.アクネスの比較
リパーゼの産生がより少なく、上皮細胞への接着がより堅固ではないことを示し、プロバイオティク株の低い免疫原性可能性を立証したのを受け、これらの株の炎症応答について、確立されたモデルとして、これまでもざ瘡という状況でのP.アクネスの炎症誘発性の評価に用いられてきたマウス耳炎症モデルによって試験を行った。病原性株及びプロバイオティク株の炎症誘発性を以下の研究で比較した。1010cfuの株をCBA/Jマウスの耳に注射した。5匹のマウスのコホートをそれぞれの株に割り当てた。5日後、耳を切除し炎症について調べた。いくつかの炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-17、TNFα)のレベルを測定し、組織切片は組織学的検査により調べた。図10は、病原性株がプロバイオティク株と比べて有意に高いレベルのIL-1β、IL-6、IL-17及びTNFαを有していたことを示している。
【0326】
ミニブタ皮膚モデルにおけるプロバイオティク株の急性皮膚安全性及び毒性
ミニブタモデルを使用して皮膚刺激についてプロバイオティク株を試験した。ブタはトランスレーショナルリサーチにおいて使用される主要動物の1つであり、ブタ皮膚はヒト皮膚に生理的に、解剖学的に、生化学的に及び免疫学的に類似している。ミニブタは特に、ざ瘡のようなヒト皮膚疾患及び状態をモデル化するのに一般的に使用されている[Vet Pathol(2012年)49:344~356頁]。プロバイオティク株は、3頭の別々のミニブタの皮膚の区切られた皮膚領域に2つの用量、10cfu及び10cfuで適用された。動物の臨床徴候を毎日観察し、投与部位皮膚は、投与前、用量投与0.5、1、4、8及び24時間後にドレイズスコアリング方式を使用してスコアー化した。全期間中リードプロバイオティク株に関連する紅斑又は浮腫はなく(表1)、ドレイズスコアー0が全体を通じて観察された。これは、動物皮膚モデルにおいて本発明者らのプロバイオティク株の急性曝露に対する安全性を実証している。
【0327】
表1:ミニブタ皮膚モデルにおける急性皮膚安全性/毒性は、プロバイオティク株の良好な安全性プロファイルを示している。プロバイオティク株は、3頭のオスミニブタにおいて区切られた皮膚領域に正常(10cfu)及び急性(10cfu)用量で適用され、適用後24時間モニターされた。紅斑及び浮腫はドレイズスコアリング方式を使用して定量化した。ドレイズスコアーは紅斑及び浮腫の相対的重症度を提供する。ドレイズスコアー0は、紅斑及び浮腫が全くないことを示すが、モニター期間中ずっとすべての皮膚領域で観察された。
【0328】
【表1】
【0329】
[実施例3] 抗ざ瘡化合物のある組成物中でのバクテリオファージの安定性
ファージがサリチル酸又は過酸化ベンゾイル(BPO)との合剤中で安定しているか否かを判定するため、ファージをこれらの薬剤と一緒に低濃度及び高濃度でコインキュベートした。濃度の範囲は、一般用医薬品用の米国食品医薬品局(FDA)ざ瘡モノグラフに明記されているこれらの薬剤の許可された濃度により決定した。サリチル酸では、これは0.5%~2%(w/v)であり、BPOでの範囲は2.5%~10%(w/v)である。ファージの緩衝液をこれらの薬剤に添加し、4℃でのその安定性を60~90日にわたり試験した。図15は、ファージが、サリチル酸の低用量と高用量の両方の存在下で安定であることを示している。これとは対照的に、図16は、過酸化ベンゾイルがファージを不安定化し、観察されたファージの生存率の減少速度は、BPOの高いほうの濃度ほど急勾配であることを示している。
【0330】
[実施例4] (仮想実施例)バクテリオファージとサリチル酸の組合せを用いた治療
プラセボ、プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ単独及びサリチル酸単独を用いるこの治療の効力比較を判定するために、プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及びサリチル酸を含む組成物の二重盲検プラセボ対照研究を行う。0.5%及び2%(w/v)の濃度のサリチル酸をプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージと一緒に、及びなしで投与する。プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージを含むすべての条件では、ファージは1用量あたり10pfu(プラーク形成単位)の用量で存在する。比較的重度のざ瘡を有する10例の対象は以下の群ごとに治療を受ける:
(i)プラセボ(活性薬剤なし)
(ii)唯一の活性薬剤として0.5%のサリチル酸
(iii)唯一の活性薬剤として2%のサリチル酸
(iv)唯一の活性薬剤としてプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ
(v)0.5%のサリチル酸とプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージの組合せ(単一組成物で)
(vi)2%のサリチル酸とプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージの組合せ(単一組成物で)
【0331】
プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージとサリチル酸の組合せは、ざ瘡を治療するのに相加効果以上、すなわち、相乗効果を達成する(バクテリオファージとサリチル酸の組合せ効果は、それぞれの薬剤が別々に使用される場合のバクテリオファージとサリチル酸の効果の合計よりも大きい。)。治療の有効性は、病変数及びIGA(調査員総合評価)スコアーを使用して測定する。
【0332】
[実施例5] 仮想実施例)バクテリオファージと硫黄の組合せを用いた治療
プラセボ、プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ単独及び硫黄単独を用いるこの治療の効力比較を判定するために、プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及び硫黄を含む組成物の二重盲検プラセボ対照研究を行う。3%及び10%(w/v)の濃度の硫黄をプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージと一緒に、及びなしで投与する。プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージを含むすべての条件では、ファージは1用量あたり10pfuの用量で存在する。比較的重症のざ瘡を有する10例の対象は以下の群ごとに治療を受ける:
(i)プラセボ(活性薬剤なし)
(ii)唯一の活性薬剤として3%の硫黄
(iii)唯一の活性薬剤として10%の硫黄
(iv)唯一の活性薬剤としてプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ
(v)3%の硫黄とプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージの組合せ(単一組成物で)
(vi)10%の硫黄とプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージの組合せ(単一組成物で)
【0333】
プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージと硫黄の組合せは、ざ瘡を治療するのに相加効果以上、すなわち、相乗効果を達成する(バクテリオファージと硫黄の組合せ効果は、それぞれの薬剤が別々に使用される場合のバクテリオファージと硫黄の効果の合計よりも大きい。)。治療の有効性は、病変数及びIGA(調査員総合評価)スコアーを使用して測定する。
【0334】
[実施例6] (仮想実施例)バクテリオファージと過酸化ベンゾイルの組合せを用いた治療
プラセボ、プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ単独及びBPO単独を用いるこの治療の効力比較を判定するために、プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ及びBPOを含む組成物の二重盲検プラセボ対照研究を行う。2.5%及び10%(w/v)の濃度のBPOをプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージと一緒に、及びなしで投与する。プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージを含むすべての条件では、ファージは1用量あたり10pfuの用量で存在する。比較的重症のざ瘡を有する10例の対象は以下の群ごとに治療を受ける:
(i)プラセボ(活性薬剤なし)
(ii)唯一の活性薬剤として2.5%のBPO
(iii)唯一の活性薬剤として10%のBPO
(iv)唯一の活性薬剤としてプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ
(v)2.5%のBPOとプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージの組合せ(単一組成物で)
(vi)10%のBPOとプロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージの組合せ(単一組成物で)
【0335】
プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージとBPOの組合せは、ざ瘡を治療するのに相加効果以上、すなわち、相乗効果を達成する(バクテリオファージとBPOの組合せ効果は、それぞれの薬剤が別々に使用される場合のバクテリオファージとBPOの効果の合計よりも大きい。)。治療の有効性は、病変数及びIGA(調査員総合評価)スコアーを使用して測定する。
【0336】
[実施例7] (仮想実施例)バクテリオファージと過酸化ベンゾイルの組合せを用いたアッセイ
浮遊及び固着病原性P.アクネス細菌を殺菌する際の(i)BPO;(ii)プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ;又は(iii)プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージ+BPOの有効性を判定するためにインビトロ試験が実施される。
【0337】
プロピオニバクテリウム・アクネスバクテリオファージとBPOの組合せは、固着病原性P.アクネス細菌を殺菌する際の相加効果以上、すなわち、相乗効果を達成する(バクテリオファージとBPOの組合せ効果は、それぞれの薬剤が別々に使用される場合のバクテリオファージとBPOの効果の合計よりも大きい。)。BPOの角質溶解作用(サリチル酸及びレチノイドに類似している)は、ファージが皮膚毛穴に浸透して毛穴内深くにいるP.アクネスに接近するのを支援する。
図1
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【配列表】
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